説明

生体吸収率が高い炭酸カルシウム及びその製造方法

【課題】 カルシウムの生体吸収率が高い炭酸カルシウム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 固形分5〜10wt%、温度15〜20℃の水酸化カルシウム水懸濁液に、炭酸ガス濃度が15容量%以上の炭酸ガス含有気体を水酸化カルシウム1kg当たり25L/分以上で吹き込み、炭酸化率90%以上まで炭酸化反応を行う第一炭酸化工程と、第一炭酸化工程終了後の懸濁液中に、第一炭酸化工程の仕込みに用いた水酸化カルシウム固形分量100部に対し、5〜20部の水酸化カルシウムを含むよう調製した水懸濁液を加えて、炭酸ガス濃度10容量%以上の炭酸ガス含有気体を水酸化カルシウム1kg当たり15L/分以上で吹き込み、pH6.5〜7.5、炭酸化率95%以上となるまで炭酸化反応を行う最終炭酸化工程と、最終炭酸化工程後の炭酸カルシウム水懸濁液を、その固形分が60%以下の状態で、乾燥する工程とを経ることにより、炭酸カルシウムを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体吸収率が高い炭酸カルシウム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルシウムは人間の体内に体重の約2.0%含まれ、その多くはリン酸カルシウムとして骨および歯に存在し人体を構成する。また、カルシウムは、リン、マグネシウムとともに、神経の伝達、筋肉の収縮、細胞膜の透過性などに密接に関わっており、慢性的に不足すると体内の生理活動が円滑に行われなくなる。ゆえに、カルシウムは、重要なミネラルのひとつとして、日本では第3次改定の「日本人の栄養所要量」(厚生省、1984年)で摂取の重要性や、熟年、老年での所要量が吟味され、その後も平成17年より実施の「日本人の食事摂取基準2005年版」まで、カルシウム重視の傾向は変わっていない。
【0003】
カルシウムは、食材では小魚、牛乳、小松菜等に多く含まれるが、現在ではカルシウム分を強化した加工食品も数多く市販されている。その種類は、清涼飲料水、菓子(ビスケット、スナック類、錠菓、ガム等)、即席麺、練り製品、乳飲料、ヨーグルト等、多岐にわたる。また、補給の必要性から育児用粉乳、病人用流動食等へも添加されている。
【0004】
従来、食品のカルシウム強化には、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等の指定添加物、貝殻未焼成カルシウム等の既存添加物、あるいは、乳清カルシウム等の食品素材が使用されているが、安価、保管安定性に優れる等の理由で、炭酸カルシウムの使用が多い。
【0005】
炭酸カルシウムの製法としては、石灰石を焼成して生石灰にし、水と反応させた石灰乳の中に炭酸ガスを吹き込み、炭酸カルシウム結晶を得た後、これを脱水、乾燥して粉末化するガス化合法(例えば特許文献1を参照)や、高純度石灰石を微粉砕し分級して得られる粉砕法や、水和した消石灰に、炭酸ナトリウムを反応させる方法等がある。
【特許文献1】特許第2881555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
炭酸カルシウムは、製法及び反応条件に応じて、粒子形状、比表面積、かさ比重等の物性が異なった粉末が得られるが、従来は、これら物性が違っても、消化吸収に差はなく、栄養的には同様のものと考えられていた。
【0007】
本発明は、このような従来の考えとは異なった知見が得られたことから為されたものであり、カルシウムの生体吸収率が高い炭酸カルシウム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る炭酸カルシウムは、固形分5〜10wt%、温度15〜20℃の水酸化カルシウム水懸濁液に、炭酸ガス濃度が15容量%以上の炭酸ガス含有気体を水酸化カルシウム1kg当たり25リットル/分以上で吹き込み、炭酸化率90%以上まで炭酸化反応を行う第一炭酸化工程と、第一炭酸化工程終了後の懸濁液中に、第一炭酸化工程の仕込みに用いた水酸化カルシウム固形分量100部に対し、5〜20部の水酸化カルシウムを含むよう調製した水懸濁液を加えて、炭酸ガス濃度10容量%以上の炭酸ガス含有気体を水酸化カルシウム1kg当たり15リットル/分以上で吹き込み、懸濁液のpHが6.5〜7.5、且つ炭酸化率95%以上となるまで炭酸化反応を行う最終炭酸化工程と、最終炭酸化工程後の炭酸カルシウム水懸濁液を、その固形分が60%以下の状態で、乾燥する工程とを経ることにより得られるものであり、この炭酸カルシウムは、ラットによるカルシウム出納試験に基づくカルシウムの生体吸収率が10%以上である。
【0009】
上記最終炭酸化工程後の炭酸カルシウム水懸濁液は、その固形分が30〜60%の範囲になるように脱水する脱水工程を経た後、上記乾燥工程を行うことが好ましい。また、上記第一炭酸化工程終了後の懸濁液中に、第一炭酸化工程の仕込みに用いた水酸化カルシウム固形分量100部に対し、5〜20部の水酸化カルシウムを含むよう調製した水懸濁液を加えて、炭酸ガス濃度10容量%以上の炭酸ガス含有気体を水酸化カルシウム1kg当たり15リットル/分以上で吹き込み、炭酸化率70〜95%まで炭酸化反応を行う第二炭酸化工程を1回以上繰り返した後、上記最終炭酸化工程を行うことが好ましい。
【0010】
本発明に係る炭酸カルシウムの製造方法は、固形分5〜10wt%、温度15〜20℃の水酸化カルシウム水懸濁液に、炭酸ガス濃度が15容量%以上の炭酸ガス含有気体を水酸化カルシウム1kg当たり25リットル/分以上で吹き込み、炭酸化率90%以上まで炭酸化反応を行う第一炭酸化工程と、第一炭酸化工程終了後の懸濁液中に、第一炭酸化工程の仕込みに用いた水酸化カルシウム固形分量100部に対し、5〜20部の水酸化カルシウムを含むよう調製した水懸濁液を加えて、炭酸ガス濃度10容量%以上の炭酸ガス含有気体を水酸化カルシウム1kg当たり15リットル/分以上で吹き込み、懸濁液のpHが6.5〜7.5、且つ炭酸化率95%以上となるまで炭酸化反応を行う最終炭酸化工程と、最終炭酸化工程後の炭酸カルシウム水懸濁液を、その固形分が60%以下の状態で、乾燥する工程とを含む。
【0011】
本発明に係る炭酸カルシウムの製造方法は、上記最終炭酸化工程後の炭酸カルシウム水懸濁液を、その固形分が30〜60%の範囲になるように脱水する脱水工程を更に含むことが好ましく、その場合、上記乾燥工程では、この脱水工程後の炭酸カルシウム水懸濁液を乾燥する。また、本発明に係る炭酸カルシウムの製造方法は、上記第一炭酸化工程終了後の懸濁液中に、第一炭酸化工程の仕込みに用いた水酸化カルシウム固形分量100部に対し、5〜20部の水酸化カルシウムを含むよう調製した水懸濁液を加えて、炭酸ガス濃度10容量%以上の炭酸ガス含有気体を水酸化カルシウム1kg当たり15リットル/分以上で吹き込み、炭酸化率70〜95%まで炭酸化反応を行う第二炭酸化工程を更に含むことが好ましく、その場合、この第二炭酸化工程が1回以上繰り返された後、上記最終炭酸化工程を行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カルシウムの生体吸収率が高い炭酸カルシウム及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る炭酸カルシウムの製造方法の一実施の形態について説明する。本発明に係る炭酸カルシウムの製造方法は、ガス化合法によるものであり、特許第2881555号公報に記載された方法を更に改良したものである。本実施の形態では、第一炭酸化工程と、第二炭酸化工程と、最終炭酸化工程と、脱水工程と、乾燥工程とを行う。
【0014】
第一炭酸化工程では、固形分5〜10wt%、温度15〜20℃の水酸化カルシウム水懸濁液に、炭酸ガス濃度が15容量%以上の炭酸ガス含有気体を水酸化カルシウム1kg当たり25リットル/分以上の流量で吹き込み、炭酸化率が90%以上になるまで炭酸化反応を行う。
【0015】
水酸化カルシウム水懸濁液の濃度は、固形分が5wt%未満の場合、炭酸カルシウムの異形粒子が生成するおそれがある。一方、10wt%を超える場合、粗大粒子が生成する傾向にある。水懸濁液の温度は、15℃未満の場合、異形粒子が生成するおそれがある。一方、20℃を超える場合、粗大粒子が生成する傾向にある。
【0016】
炭酸ガス含有気体の炭酸ガス濃度の上限は、反応条件等によるが、40容量%が好ましい。炭酸ガス以外のガス成分としては、炭酸化を阻害しなければ特に限定されず、例えば窒素等の不活性ガスや空気等が好ましい。炭酸ガス含有気体の流量は、水酸化カルシウム1kg当たり25リットル/分を下回ると、炭酸カルシウムの連鎖状粒子が生成しにくくなるので好ましくない。好ましくは30リットル/分以上とする。流量の上限は、反応条件等によるが、200リットル/分が好ましい。
【0017】
炭酸化率とは、以下の式により表わされるものである。
炭酸化率(%)=W/(W+W1)×100
(式中、Wは反応液中の炭酸カルシウムの重量、W1は反応液中の水酸化カルシウムの重量である。)第一炭酸化工程での炭酸化率が90%未満では、第二炭酸化工程以降で連鎖状粒子の空隙が詰まり、緻密な結晶が生成するという問題がある。90%以上の炭酸化率にすることで、所望の多孔質粒子を得ることができる。
【0018】
第二炭酸化工程では、第一炭酸化工程終了後の水懸濁液中に、第一炭酸化工程の仕込みに用いた水酸化カルシウム固形分量100部に対し、5〜20部の水酸化カルシウムを含むよう調製した水酸化カルシウム水懸濁液を加えて、炭酸ガス濃度10容量%以上の炭酸ガス含有気体を水酸化カルシウム1kg当たり15リットル/分以上で吹き込み、炭酸化率が70〜95%になるまで炭酸化反応を行う。
【0019】
第二炭酸化工程以降は、添加する水酸化カルシウム水懸濁液の温度条件は特に制限されない。第一炭酸化工程終了直後の水懸濁液が反応熱によって通常30〜50℃程度となっており、添加する水懸濁液の温度は炭酸化反応に特に大きな影響を与えるものではない。
【0020】
水酸化カルシウム水懸濁液の添加量が、第一炭酸化工程での水酸化カルシウム固形分量100重量部に対し、5重量部未満の場合、連鎖粒子の集合体が生成されにくくなる。一方、20重量部を上回る場合、新たに炭酸カルシウムが生成される結果、連鎖粒子の集合体がほとんど生成されなくなる。第二炭酸化工程は、1回以上繰り返すことが好ましく、1〜3回繰り返すことがより好ましい。
【0021】
最終炭酸化工程では、第一炭酸化工程の仕込みに用いた水酸化カルシウム固形分量100部に対し、5〜20部の水酸化カルシウムを含むよう調製した水懸濁液を加えて、炭酸ガス濃度10容量%以上の炭酸ガス含有気体を水酸化カルシウム1kg当たり15リットル/分以上で吹き込み、懸濁液のpHが6.5〜7.5、且つ炭酸化率95%以上となるまで炭酸化反応を行う。
【0022】
懸濁液のpHは、炭酸化率と同様に、反応残の水酸化カルシウム量を表す指標であり、水酸化カルシウム量が多く残ると、脱水工程に至るまでに再結晶が進み、緻密な粒子が生成され、所望の特性を得ることができない。懸濁液のpHが6.5〜7.5及び炭酸化率が95%以上となるまで炭酸化反応を行うことで、所望する多孔質粒子を得ることができる。
【0023】
第二炭酸化工程から最終炭酸化工程までの間に投入する水酸化カルシウムの量は、第一炭酸化工程の仕込みに用いた水酸化カルシウム固形分量100部に対し、累積で20部以上となるようにすることが好ましい。このような投入量とすることで、所望する多孔質粒子を得ることができる。この水酸化カルシウムの投入量の上限は、累積で30部が好ましく、35部がより好ましい。
【0024】
脱水工程では、生成した炭酸カルシウム粒子を壊さないように、最終炭酸化工程終了後の炭酸カルシウム水懸濁液を、固形分が30〜60%の範囲内に留まるように脱水する。多孔質な炭酸カルシウムは胃酸等の酸との反応がよく、消化吸収が他の炭酸カルシウムに比較して良い。しかしながら、炭酸化工程において多孔質な炭酸カルシウム粒子が生成されても、脱水工程中において固形分が60%よりも高くなるように脱水した場合、その生体吸収率が大きく低下するという知見を得た。
【0025】
これは、上記の値よりも高い脱水率で脱水すると、脱水工程中に炭酸カルシウム粒子中の空隙が潰されてしまうからであると推測する。一方、固形分が30%よりも低い値で脱水を止めてしまうと、脱水工程後の乾燥に費用および時間がかかりすぎ、現実的ではない。すなわち、上記の範囲が多孔質な炭酸カルシウムの2次粒子をつくるのに最適な脱水率である。より好ましい脱水率は、固形分が30〜40%の範囲内である。脱水機としては、ナイアガラ脱水機等を用いることが好ましい。
【0026】
脱水工程で所定の固形分まで脱水された脱水ケーキを乾燥工程で乾燥する。なお、常温〜80℃の乾燥機中で24時間以上、予備乾燥させた後に、乾燥機で乾燥させることが好ましい。乾燥機としては、フラッシュジェットドライヤー、トルネッシュドライヤー等の気流乾燥機を使用することが好ましい。乾燥機出口の温度は100〜110℃が好ましい。また、炭酸カルシウムの水分は2%以下にすることが好ましい。なお、乾燥後、炭酸カルシウム粉体が塊状となる場合、これを解砕することが好ましい。
【0027】
上記の方法で製造される本発明に係る炭酸カルシウムは、ラットによるカルシウム出納試験に基づくカルシウムの生体吸収率が10%以上と、従来の製法によるものに比べて有意に高い。
【0028】
また、本発明に係る炭酸カルシウムの製造方法により得られる炭酸カルシウムは、主としてカルサイト結晶で多孔質な形状をとり、以下の物性を有することが好ましい。
・かさ比重: 1.0g/mL以下。
・純度: 98%以上。
・鉛含有量: 20ppm以下。
・平均粒子径: 0.05〜15μm。
・BET比表面積:6〜50m2/g。
・空隙率: 0.5〜2.5mL/g。
・吸油量: 60〜160mL/100g。
・吸水量: 1.0〜2.5mL/g。
【0029】
このように本発明に係る炭酸カルシウムの製造方法により得られる炭酸カルシウムは、生体吸収率が高いことから、栄養強化用途として、食品に添加することが好ましい。本発明に係る炭酸カルシウムが添加される食品として、例えば、水産練製品、乳飲料、即席めん、菓子、パン、ゼリー、カルシウム錠菓、栄養補助食品などが挙げられる。本発明に係る炭酸カルシウムは、これらの食品に直接投入するか、又は食品添加物製剤等の組成物として添加することが好ましい。
【0030】
なお、上記の実施の形態では、第一、第二及び最終の少なくとも3つの炭酸化工程と、脱水工程と、乾燥工程とを行うことを説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、他の工程を加えたり、第二炭酸化工程や脱水工程を除いたりすることができる。
【0031】
例えば、最終炭酸化工程終了後に脱水工程を経ずに、炭酸カルシウム水懸濁液をスプレードライヤーにて乾燥させてもよい。この場合、炭酸カルシウム水懸濁液は、通常、固形分が60%以下の範囲であり、高い生体吸収率の炭酸カルシウム粉体を得ることができる。
【0032】
また、最終炭酸化工程終了後に、炭酸カルシウム水懸濁液をダイノーミル等にて湿式粉砕した後、脱水工程を行ってもよい。このように粉砕工程を行うことで、所定の粉体物性の炭酸カルシウムを安定して得ることができる。また、乾燥工程後に粉砕工程を行うこともできる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例について説明する。先ず、濃度8wt%、温度20℃に調製した水酸化カルシウム水懸濁液500kgを反応容器に入れ、これに濃度30容量%の炭酸ガスを水酸化カルシウム1kg当たり流量40リットル/分で吹き込み、炭酸化率が90%になるまで炭酸化した(第一炭酸化工程)。
【0034】
次いで、濃度8wt%、温度20℃に調製した水酸化カルシウム水懸濁液75kgを反応容器に加え、濃度25容量%の炭酸ガスを水酸化カルシウム1kg当たり流量40リットル/分で吹き込み、炭酸化率が87%になるまで炭酸化した(第二炭酸化工程)。
【0035】
さらに、濃度8wt%、温度20℃に調製した水酸化カルシウム水懸濁液75kgを反応容器に加え、濃度25容量%の炭酸ガスを水酸化カルシウム1kg当たり流量40リットル/分で吹き込み、水懸濁液のpHが6.8となるまで炭酸化を行った(最終炭酸化工程)。
【0036】
これにより得られた炭酸カルシウム懸濁液をプレス脱水機により脱水し、固形分が40〜45%のプレスケーキを得た(脱水工程)。
【0037】
そして、このプレスケーキを含水率が30〜40%になるまで予備乾燥した後、フラッシュジェットドライヤーにより乾燥粉砕して、多孔質炭酸カルシウム約70kgを得た。
【0038】
これにより得られた多孔質炭酸カルシウムの物性を、以下の測定方法により測定した。
・かさ比重: 石山式測定器による。
・純度: 食品添加物公定書の炭酸カルシウムの項に準ずる。
・鉛含量: 食品添加物公定書の炭酸カルシウムの項に準ずる
・平均粒子径: レーザー回折粒度分布測定装置SALD−2000J型(島津製作所製)による。
・BET比表面積:フローソーブII型(島津製作所製)による。なお、窒素ガスを用いた。
・細孔容積: 水銀圧入法によるポロシメーターによる。
・吸油量: 小倉法。
・吸水量: 小倉法。
【0039】
上記の測定結果を表1に示す。なお、比較のため、市販の炭酸カルシウム(試薬特級炭酸カルシウム、和光純薬製製品コード030−00385)の物性を併記した。
【0040】
【表1】

【0041】
次に、実施例および比較例の各炭酸カルシウムを「ラットによるカルシウム出納試験」に供し、実施例および比較例の各炭酸カルシウムについて、カルシウムの生体吸収率を測定した。その結果を表2及び表3に示す
【0042】
なお、本試験の詳細は以下の通りである。
・実験動物:28週齢Fisher系(F344)雄ラット各例6匹。
・飼育飼料:標準飼料AIN−93M組成に準じ、カルシウム源のみ実施例および比較例の各炭酸カルシウムに変更して調製した。
・飼育期間:予備飼育(AIN−93Mを給与)1週間。通常飼育期間31日。
・評価方法:通常飼育期間の24〜31日に糞尿を採取しそのカルシウム含量を測定し、カルシウム吸収量、カルシウム吸収率、カルシウム保留量、カルシウム保留率を算出した(表2)。また34日後にと殺し、その腎臓を摘出してカルシウム量を測定した(表3)。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
表2に示すように、実施例の炭酸カルシウムを供したラットのカルシウムの生体吸収率及び保留率は、比較例の炭酸カルシウムを供したラットのカルシウムの生体吸収率及び保留率と比較して、有意に高い値を示した(P<0.05)。また、表3に示すように、実施例の炭酸カルシウムを供したラットの腎臓のカルシウム量は、比較例の炭酸カルシウムを供したラットの腎臓のカルシウム量と比較して、有意に低い値を示した(P<0.05)。これらの結果から、実施例の炭酸カルシウムは、生体吸収率が高く、また腎臓中で結石が形成される可能性は低いことがわかった。すなわち、実施例の炭酸カルシウムは、生体吸収率が高く、且つ臓器中で結石が形成されにくいことから、生体利用性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分5〜10wt%、温度15〜20℃の水酸化カルシウム水懸濁液に、炭酸ガス濃度が15容量%以上の炭酸ガス含有気体を水酸化カルシウム1kg当たり25リットル/分以上で吹き込み、炭酸化率90%以上まで炭酸化反応を行う第一炭酸化工程と、
第一炭酸化工程終了後の懸濁液中に、第一炭酸化工程の仕込みに用いた水酸化カルシウム固形分量100部に対し、5〜20部の水酸化カルシウムを含むよう調製した水懸濁液を加えて、炭酸ガス濃度10容量%以上の炭酸ガス含有気体を水酸化カルシウム1kg当たり15リットル/分以上で吹き込み、懸濁液のpHが6.5〜7.5、且つ炭酸化率95%以上となるまで炭酸化反応を行う最終炭酸化工程と、
最終炭酸化工程後の炭酸カルシウム水懸濁液を、その固形分が60%以下の状態で、乾燥する工程と
を経ることにより得られる、ラットによるカルシウム出納試験に基づくカルシウムの生体吸収率が10%以上である炭酸カルシウム。
【請求項2】
上記最終炭酸化工程後の炭酸カルシウム水懸濁液を、その固形分が30〜60%の範囲になるように脱水する脱水工程を経た後、上記乾燥工程を行う請求項1に記載の炭酸カルシウム。
【請求項3】
上記第一炭酸化工程終了後の懸濁液中に、第一炭酸化工程の仕込みに用いた水酸化カルシウム固形分量100部に対し、5〜20部の水酸化カルシウムを含むよう調製した水懸濁液を加えて、炭酸ガス濃度10容量%以上の炭酸ガス含有気体を水酸化カルシウム1kg当たり15リットル/分以上で吹き込み、炭酸化率70〜95%まで炭酸化反応を行う第二炭酸化工程を1回以上繰り返した後、上記最終炭酸化工程を行う請求項1又は2に記載の炭酸カルシウム。
【請求項4】
固形分5〜10wt%、温度15〜20℃の水酸化カルシウム水懸濁液に、炭酸ガス濃度が15容量%以上の炭酸ガス含有気体を水酸化カルシウム1kg当たり25リットル/分以上で吹き込み、炭酸化率90%以上まで炭酸化反応を行う第一炭酸化工程と、
第一炭酸化工程終了後の懸濁液中に、第一炭酸化工程の仕込みに用いた水酸化カルシウム固形分量100部に対し、5〜20部の水酸化カルシウムを含むよう調製した水懸濁液を加えて、炭酸ガス濃度10容量%以上の炭酸ガス含有気体を水酸化カルシウム1kg当たり15リットル/分以上で吹き込み、懸濁液のpHが6.5〜7.5、且つ炭酸化率95%以上となるまで炭酸化反応を行う最終炭酸化工程と、
最終炭酸化工程後の炭酸カルシウム水懸濁液を、その固形分が60%以下の状態で、乾燥する工程と
を含む炭酸カルシウムの製造方法。
【請求項5】
上記最終炭酸化工程後の炭酸カルシウム水懸濁液を、その固形分が30〜60%の範囲になるように脱水する脱水工程を更に含み、上記乾燥工程では、この脱水工程後の炭酸カルシウム水懸濁液を乾燥する請求項4に記載の炭酸カルシウムの製造方法。
【請求項6】
上記第一炭酸化工程終了後の懸濁液中に、第一炭酸化工程の仕込みに用いた水酸化カルシウム固形分量100部に対し、5〜20部の水酸化カルシウムを含むよう調製した水懸濁液を加えて、炭酸ガス濃度10容量%以上の炭酸ガス含有気体を水酸化カルシウム1kg当たり15リットル/分以上で吹き込み、炭酸化率70〜95%まで炭酸化反応を行う第二炭酸化工程を更に含み、この第二炭酸化工程が1回以上繰り返された後、上記最終炭酸化工程を行う請求項4又は5に記載の炭酸カルシウムの製造方法。

【公開番号】特開2009−91180(P2009−91180A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261866(P2007−261866)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔発行者名〕 日本栄養・食糧学会大会 会頭 小川正 〔刊行物名〕 第61回日本栄養・食糧学会大会 講演要旨集 〔発行年月日〕 平成19年4月20日
【出願人】(593119527)白石カルシウム株式会社 (17)
【Fターム(参考)】