説明

生体器官拡張器具

【課題】プライミング作業が容易であり、かつ、ステント留置作業を容易かつ確実に行うことができる生体器官拡張器具を提供する。
【解決手段】生体器官拡張器具1は、先端側第1チューブ20と、先端側第1チューブの基端と先端が近接する先端側第2チューブ21と、基端側チューブ4と、固定チューブ8と、スライドチューブ7と、ステント収納用筒状部材5と、ステント3と、剛性付与部11を備える。先端側第1チューブは、剛性付与部との第1固定部24aを、先端側第2チューブは、剛性付与部との第2固定部46aを備える。第1固定部24aと第2固定部46a間には、先端側第1チューブの基端部および先端側第2チューブの基端部を収納し、かつ、先端側第1チューブ内および先端側第2チューブ内と生体器官拡張器具の先端側内部とを連通する流路45aを形成するチューブ状部材45が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道、消化管その他の臓器などの生体内に形成された狭窄部または閉塞部に、ステントを留置するための生体器官拡張器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、血管、胆管、食道、気管、尿道、消化管その他の臓器などの生体管腔または体腔に形成された狭窄部あるいは閉塞部にステントを留置して、管腔または体腔空間を確保する生体器官拡張器具が提案されている。
上記生体器官拡張器具を構成するステントとしては、機能および留置方法によって、バルーン拡張型ステントと自己拡張型ステントとがある。
【0003】
バルーン拡張型ステントは、ステント自身に拡張機能はなく、ステントを目的部位に留置するには、例えば、バルーン上にマウントしたステントを目的部位まで挿入した後、バルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的部位の内面に密着させて固定する。
このタイプのステントは上記のようなステントの拡張作業が必要であるが、収縮したバルーンにステントを直接取り付けて留置することができるので、留置に関してはさほど問題がない。
【0004】
これに対して、自己拡張型ステントは、ステント自身が収縮および拡張機能を有している。このステントを目的部位に留置するためには、収縮させた状態にて目的部位に挿入した後、収縮状態の維持のために負荷した応力を除去する。例えば、目的部位の内径より小さい外径のシース内にステントを収縮させて収納し、このシースの先端を目的部位に到達させた後、ステントをシースより押し出す。押し出されたステントは、シースより解放されることにより応力負荷が解除され、収縮前の形状に復元し拡張する。これにより、目的部位の内面に密着し固定する。
このタイプのステントは、ステント自身が拡張力を有しているので、バルーン拡張型ステントのような拡張作業は必要なく、血管の圧力等によって径が次第に小さくなり再狭窄を生じるといった問題もない。
【0005】
しかしながら、自己拡張型ステントは、バルーン拡張型ステントより、一般的に正確に留置しにくいと言われている。その理由は、バルーン拡張型ステントにおいては、ステントを目的の狭窄部に配置した後は、バルーンの中に液体を注入するだけであるため、ステントの拡張時にステントが前後に動くことがない。一方、自己拡張型ステントのデリバリーシステムの構造は、内管と外管の間にステントを収納して拘束し、内管のステント基端側にステントの動きを規制する係止部を設け、外管を基端側に引くことで、ステントの拘束を解放して自己拡張させるものである。このとき外管の体腔内でのたるみや、外管と体腔若しくは外管を導入しているカテーテルとの摩擦、または、システムを体内に導入するためのイントロデューサーといわれるデバイスの弁との摩擦などに起因して、ステントは拡張するときに前進しやすいといわれている。
【0006】
そこで、本件出願人は、特許文献1(特開2008−272374号公報)に示すものを提案している。
上記特許文献1および2の生体器官拡張器具1は、先端側チューブ2と、基端側チューブ4と、ステント収納用筒状部材5の基端に近接するように配置されたスライドチューブ7と、先端側チューブ2と基端側チューブ4が固定され、かつスライドチューブ7を収納可能な固定チューブ8と、筒状部材5を基端側に移動させるための牽引ワイヤ6a,6bを備える。
また、先端側チューブ2の基端部の側壁には、プライミング用開口(側孔)28a、28bが設けられている。そして、この開口28a、28bを用いることにより、固定チューブ8内、およびステント収納用筒状部材5の基端側部分内の空気をプライミング液と置換するプライミングを行うことができるようになっている。
【0007】
そして、この生体器官拡張器具は、先端側チューブの先端開口より挿入したガイドワイヤを出すための開口部が生体器官拡張器具の基端ではなく、固定チューブに設けられているため、ステント留置作業時において、他の生体器官拡張器具に交換する作業が容易である。そして、牽引ワイヤを基端側に牽引することにより、ステントを放出できるため、ステントの放出作業時におけるステントの位置移動が極めて少ない。さらに、ステント収納用筒状部材を基端側に牽引するワイヤの過剰巻取によるカテーテルの不必要な湾曲、損傷の発生がないという利点を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−272374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
生体器官拡張器具は、内部の空気を液体と置換するプライミング作業を行った後、生体内に挿入される。特許文献1のものでは、プライミング用開口28a、28b自体が小さいので、先端側チューブ2と、ステント収納用筒状部材5、スライドチューブ7および固定チューブ8間に形成される空間内のプライミング作業が必ずしも容易なものではなかった。
そこで、本発明の目的は、自己拡張型ステントを用いる生体器官拡張器具であって、使用前に行うプライミング作業が容易であり、かつ、ステント留置作業を容易かつ確実に行うことができる生体器官拡張器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) ガイドワイヤルーメンを有する先端側チューブと、前記先端側 チューブの基端開口より基端側に延びる基端側部材と、前記先端側チューブの先端側を被包しかつ前記先端側チューブの基端方向に摺動可能であるステント収納用筒状部材と、該ステント収納用筒状部材内に収納されたステントとを備える生体器官拡張器具であって、
前記ステントは、略円筒形状に形成され、中心軸方向に圧縮された状態にて前記ステント収納用筒状部材内に収納され、前記ステント収納用筒状部材からの放出時には外方に拡張可能なものであり、
前記生体器官拡張器具は、前記生体器官拡張器具の先端側内部に位置する剛性付与部を備え、
前記先端側チューブは、先端側第1チューブと、該先端側第1チューブの基端と近接する位置に先端を有する先端側第2チューブと、前記先端側第1チューブに設けられた前記剛性付与部との第1固定部と、前記先端側第2チューブに設けられた前記剛性付与部との第2固定部と、前記第1固定部と前記第2固定部間に位置し、前記先端側第1チューブの基端部および前記先端側第2チューブの先端部を収納し、かつ、前記先端側第1チューブ内および前記先端側第2チューブ内と前記生体器官拡張器具の先端側内部とを連通する流路を形成するチューブ状部材とを備え、
前記チューブ状部材は、前記ガイドワイヤルーメンの先端開口もしくは基端開口を閉塞した状態にて前記ガイドワイヤルーメンに注入された液体を前記流路を介して、前記生体器官拡張器具の先端側内部に流入可能である生体器官拡張器具。
【0011】
(2) 前記チューブ状部材の前記流路は、前記先端側第1チューブの基端と前記先端側第2チューブの先端間の間隙および前記先端側第1チューブまたは/および前記先端側第2チューブの外面と前記チューブ状部材の内面間により構成されている上記(1)に記載の生体器官拡張器具。
(3) 前記チューブ状部材の長さは、前記第1固定部と前記第2固定部間の距離より短いものである上記(1)または(2)に記載の生体器官拡張器具。
(4) 前記先端側第1チューブの基端部または/および前記先端側第2チューブの先端部は、前記チューブ状部材に固定されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(5) 前記チューブ状部材は、前記剛性付与部に固定されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(6) 前記剛性付与部は、該生体器官拡張器具の基端側より延び、前記生体器官拡張器具の先端側内部に侵入していることを特徴とする上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(7) 前記先端側第2チューブは、基端部に設けられ、該先端側第2チューブ内と前記生体器官拡張器具内とを連通する側孔を備えている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(8) 前記チューブ状部材は、補強層を備えている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(9) 前記先端側第1チューブは、前記先端側第2チューブより柔軟である上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【0012】
(10) 前記生体器官拡張器具は、前記先端側チューブの基端開口を閉塞しないように前記先端側チューブの基端部および前記基端側部材の先端部が固定された固定チューブを備えている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(11) 前記生体器官拡張器具は、前記ステント収納用筒状部材に一端部が固定され、前記基端側部材内を延びるとともに該基端側部材の基端側に牽引することにより、前記ステント収納用筒状部材を基端側に移動させるための少なくとも一つの牽引ワイヤを備えている上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(12) 前記生体器官拡張器具は、前記ステント収納用筒状部材の基端に近接するように配置されたスライドチューブを備え、かつ、前記固定チューブは、前記スライドチューブを基端側より収納可能もしくは前記スライドチューブが基端側より被嵌可能であり、前記スライドチューブは、前記牽引ワイヤの牽引により前記ステント収納用筒状部材とともに基端側に移動可能であり、かつ、前記ステント収納用筒状部材に固定されていないものとなっている上記(11)に記載の生体器官拡張器具。
(13) 前記基端側部材の基端部には、前記牽引ワイヤを巻き取り、前記ステント収納用筒状部材を基端側に移動させるための牽引ワイヤ巻取機構を備える操作部を有する上記(11)または(12)に記載の生体器官拡張器具。
【発明の効果】
【0013】
本発明の生体器官拡張器具では、ガイドワイヤルーメンを有する先端側チューブと、先端側チューブの基端開口より基端側に延びる基端側部材と、先端側チューブの先端側を被包しかつ先端側チューブの基端方向に摺動可能であるステント収納用筒状部材と、ステント収納用筒状部材内に収納されたステントと、生体器官拡張器具の先端側内部に先端側内部に位置する剛性付与部を備える。
そして、先端側チューブは、先端側第1チューブと、先端側第1チューブの基端と近接する位置に先端を有する先端側第2チューブと、先端側第1チューブに設けられた剛性付与部との第1固定部と、先端側第2チューブに設けられた剛性付与部との第2固定部と、第1固定部と第2固定部間に位置し、先端側第1チューブの基端部および先端側第2チューブの先端部を収納し、先端側第1チューブ内および先端側第2チューブ内と生体器官拡張器具の先端側内部とを連通する流路を形成するチューブ状部材とを備える。
このため、ガイドワイヤルーメンの先端開口もしくは基端開口を封止した状態にて、ガイドワイヤルーメン内に液体を注入することにより、チューブ状部材の流路を介して、生体器官拡張器具の先端側内部に液体を流入可能であるので、生体器官拡張器具の先端部内かつ先端側チューブの外側に形成される空間のプライミング作業を容易に行うことができる。また、先端側第1チューブの基端部と先端側第2チューブの先端部間は、上記のチューブ状部材が存在しかつ剛性付与部が、先端側第1チューブおよび先端側第2チューブに固定されているため、両者間でのキンクを防止し、また、先端側第1チューブの基端部と先端側第2チューブの先端部間の不要な離間を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の部分省略外観図である。
【図2】図2は、図1の生体器官拡張器具の先端部の拡大外観図である。
【図3】図3は、図1の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図4】図4は、図2のA−A線断面図である。
【図5】図5は、図2のB−B線断面拡大図である。
【図6】図6は、図2のC−C線断面拡大図である。
【図7】図7は、図2のD−D線断面拡大図である。
【図8】図8は、図2のE−E線断面拡大図である。
【図9】図8は、図2のF−F線断面拡大図である。
【図10】図10は、図1の生体器官拡張器具のステント収納用筒状部材の基端部およびスライドチューブの先端部付近の拡大断面図である。
【図11】図11は、図1の生体器官拡張器具の先端側第1チューブの基端部および先端側第2チューブの先端部付近の拡大断面図である。
【図12】図12は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端側第1チューブの基端部および先端側第2チューブの先端部付近の拡大断面図である。
【図13】図13は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端側第1チューブの基端部および先端側第2チューブの先端部付近の拡大断面図である。
【図14】図14は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端側第1チューブの基端部および先端側第2チューブの先端部付近の拡大断面図である。
【図15】図15は、図14のG−G線断面図である。
【図16】図16は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具のチューブ状部材を説明するための説明図である。
【図17】図17は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端側第1チューブの基端部および先端側第2チューブの先端部付近の拡大断面図である。
【図18】図18は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の作用を説明するための説明図である。
【図19】図19は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の作用を説明するための説明図である。
【図20】図20は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図21】図21は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図22】図22は、本発明の他の実施例の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図23】図23は、本発明の生体器官拡張器具に使用されるステントの一例の外観図である。
【図24】図24は、本発明の生体器官拡張器具の操作部付近の拡大正面図である。
【図25】図25は、本発明の生体器官拡張器具の操作部付近の拡大背面図である。
【図26】図26は、図24および図25に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
【図27】図27は、図24に示した生体器官拡張器具の操作部分のみの右側面図である。
【図28】図28は、図24ないし図27に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の生体器官拡張器具について実施例を用いて説明する。
本発明の生体器官拡張器具1は、ガイドワイヤルーメン20a,21aを有する先端側チューブ2と、先端側チューブ2の基端開口より基端側に延びる基端側部材(具体的には、基端側チューブ)4と、先端側チューブ2の先端側を被包しかつ先端側チューブ2の基端方向に摺動可能であるステント収納用筒状部材5と、ステント収納用筒状部材5内に収納されたステント3とを備える。
【0016】
ステント3は、略円筒形状に形成され、中心軸方向に圧縮された状態にてステント収納用筒状部材5内に収納され、ステント収納用筒状部材5からの放出時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するものである。
そして、生体器官拡張器具1は、生体器官拡張器具1の先端側内部に位置する剛性付与部(言い換えれば、剛性付与体)11を備える。また、先端側チューブ2は、先端側第1チューブ20と、先端側第1チューブ20の基端と近接する位置に先端を有する先端側第2チューブ21と、先端側第1チューブ20に設けられた剛性付与部11との第1固定部24aと、先端側第2チューブ21に設けられた剛性付与部11との第2固定部46aと、第1固定部24aと第2固定部46a間に位置し、先端側第1チューブ20の基端部および先端側第2チューブ21の先端部を収納し、かつ、先端側第1チューブ20内および先端側第2チューブ内と生体器官拡張器具1の先端側内部とを連通する流路45aを形成するチューブ状部材45とを備える。
そして、チューブ状部材45は、ガイドワイヤルーメン20a,21aの先端開口もしくは基端開口を閉塞した状態にてガイドワイヤルーメン20a,21aに注入された液体を流路45aを介して、生体器官拡張器具1の先端側内部に流入可能となっている。
【0017】
また、この実施例の生体器官拡張器具1では、基端側チューブ4の外径が、生体器官拡張器具1の基端側チューブ4より先端側における最大径部分の外径より小さいものとなっている。このため、開口23より基端側に延びるガイドワイヤを基端側チューブの側面に沿わせた状態においても生体器官拡張器具の基端側チューブより先端側における最大径部分の外径と同等程度のものとすることができ、細径の血管への挿入が可能である。
そして、この実施例の生体器官拡張器具1では、剛性付与部11は、生体器官拡張器具1の基端側より延び、生体器官拡張器具の先端側内部に侵入している。
そして、この実施例の生体器官拡張器具1は、先端側チューブ2の基端開口を閉塞しないように先端側チューブ2の基端部および基端側チューブ4の先端部が固定された固定チューブ8を備えている。
そして、この実施例の生体器官拡張器具1は、ステント収納用筒状部材5に一端部が固定され、基端側チューブ4内を延びるとともに基端側チューブ4の基端側に牽引することにより、ステント収納用筒状部材5を基端側に移動させるための少なくとも一つの牽引ワイヤ6(6a、6b)を備えている。
そして、この実施例の生体器官拡張器具1は、基端側チューブ4の基端部には、牽引ワイヤ6を巻き取り、ステント収納用筒状部材5を基端側に移動させるための牽引ワイヤ巻取機構を備えている。
この実施例の生体器官拡張器具1は、先端側チューブ2(先端側第1チューブ20、先端側第2チューブ21)、ステント3、基端側チューブ4、ステント収納用筒状部材5、牽引ワイヤ6、スライドチューブ7,固定チューブ8および牽引ワイヤ6の巻取機構を有する操作部10を備えている。そして、固定チューブ8は、先端側チューブ2と基端側チューブ4を接続するとともに、先端側チューブ2の基端開口と連通する開口23を備えている。
【0018】
先端側チューブ2は、図1ないし図4に示すように、先端から基端まで貫通するガイドワイヤルーメン20aを有する先端側第1チューブ20と、先端から基端まで貫通するガイドワイヤルーメン21aを有する先端側第2チューブ21と、先端側第1チューブ20の基端部および先端側第2チューブ21の先端部を収納するチューブ状部材45とにより構成されている。
そして、先端側第1チューブ20の先端に固定された先端部材25により、先端部が形成されており、その先端に、先端開口25aを備えている。なお、先端部は、先端側第1チューブ20と一体に形成してもよい。そして、先端側第2チューブ21は、基端部において、固定チューブ8に固定されている。また、先端側第2チューブ21の基端開口は、固定チューブ8に形成された開口23と連通している。また、先端側第2チューブ21の基端部は、図4に示すように、湾曲している。また、開口23は、図1および図4に示すように、基端側に向かって傾斜するように斜めに形成されている。これにより、ガイドワイヤの誘導を容易にしている。
先端側第1チューブ20と先端側第2チューブ21は、連続しないものとなっている。具体的には、図3、図4および図11に示すように、先端側第1チューブ20の基端と先端側第2チューブ21の先端は、両者間に間隙2aが形成されるように離間している。両者間の距離(離間距離)としては、0.1〜5.0mmが好ましく、特に、1.0〜2.0mmが好ましい。
【0019】
そして、先端側第1チューブ20の基端部には、固定チューブ8内、具体的には、図3、図4および図11に示すように、先端側固定チューブ81の基端部となる位置に、スライドチューブ係止部24が設けられている。そして、このスライドチューブ係止部24に、後述する剛性付与部11の先端が固定されている。つまり、剛性付与部11を先端側第1チューブ20に固定する第1固定部24aは、スライドチューブ係止部24が持つ物となっている。なお、第1固定部を有する部材は、スライドチューブ係止機能を持たないもの(言い換えれば、スライドチューブと当接しないもの)であってもよい。
また、先端側第2チューブ21の先端部には、固定チューブ8内、具体的には、図3、図4および図11に示すように、先端側固定チューブ81の基端部となる位置に、固定用部材46が設けられている。そして、この固定用部材46は、後述する剛性付与部11の先端より所定距離基端側となる部位が固定されている第2固定部46aを有するものとなっている。そして、第1固定部24a(言い換えれば、スライドチューブ係止部24)と第2固定部46a(言い変えれば、固定用部材46)間の距離(離間距離)は、1.0〜30.0mmが好ましく、特に、5.0〜10.0mmが好ましい。
さらに、この実施例の生体器官拡張器具1では、先端側第2チューブ21は、図4に示すように、基端部に、生体器官拡張器具内(具体的には、固定チューブ8内)と連通する細孔29を備えている。細孔29は、先端側第2チューブ21内(言い換えれば、ガイドワイヤルーメン21a)と固定チューブ8内とを連通する。細孔29は、図4に示すように、複数設けることが好ましく、また、先端側チューブの軸方向にずらして設けることが好ましい。この細孔29は、細孔29より先端側の生体器官拡張器具内部への液体の充填(プライミング)に用いられる。また、この生体器官拡張器具1では、細孔29内に位置する補強体28は、切断されることなく残存している。このため、細孔に起因するチューブの強度低下が少ない。
【0020】
そして、第1固定部24a(言い換えれば、スライドチューブ係止部24)と第2固定部46a(言い変えれば、固定用部材46)間には、チューブ状部材45が配置されている。チューブ状部材45は、先端側内部に、先端側第1チューブ20の基端部を収納し、基端側内部に先端側第2チューブ21の先端部を収納している。また、チューブ状部材45は、先端側第1チューブ20内(具体的には、先端側第1チューブ20の基端部内のガイドワイヤルーメン20a)および先端側第2チューブ21内(具体的には、先端側第2チューブ21の先端部内のガイドワイヤルーメン21a)と生体器官拡張器具1の先端側内部とを連通する流路45aを形成している。
特に、図11に示す実施例では、チューブ状部材45は、先端側第1チューブ20および先端側第2チューブ21のいずれにも固定されていない。そして、チューブ状部材45は、先端側第1チューブ20の基端部外面との間に隙間を持ち、同様に、先端側第2チューブ21の先端部の外面との間にも隙間を持ち、これらの隙間が、先端側第1チューブ20と先端側第2チューブ21間の間隙2aと連通することにより、流路45aを形成している。また、チューブ状部材45の長さは、第1固定部24aと第2固定部46a間の距離より短いものであることが好ましい。特に、図11に示す実施例では、チューブ状部材45は、スライドチューブ係止部24と固定用部材46間の距離(離間距離)より、長さが短いものとなっている。このため、チューブ状部材45の流路45aと生体器官拡張器具1の先端側内部(具体的には、固定チューブ8とチューブ状部材45との間に設けられた空間)との連通を確実なものとしている。よって、この実施例では、チューブ状部材45の流路45aは、先端側第1チューブ20の基端と先端側第2チューブ21の先端間の間隙2aおよび先端側第1チューブ20および先端側第2チューブ21の外面とチューブ状部材45の内面間により構成されている。なお、この実施例では、チューブ状部材45の流路45aは、先端側第1チューブ20の基端と先端側第2チューブ21の先端間の間隙2aおよび先端側第1チューブ20または先端側第2チューブ21の外面とチューブ状部材45の内面間により構成されているものであってもよい。
【0021】
先端側第1チューブ20としては、外径が0.3〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.5mmであり、内径が0.2〜1.5mm、好ましくは0.3〜1.2mm、長さが、50〜1,000mm、好ましくは、400〜800mmである。また、先端側第2チューブ21としては、外径が0.3〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.5mmであり、内径が0.2〜1.5mm、好ましくは0.3〜1.2mm、長さが、10〜900mm、好ましくは、20〜100mmである。そして、先端側第1チューブ20は、先端側第2チューブ21より柔軟なものであってもよい。また、先端側第2チューブ21は、先端側第1チューブ20より剛性の高いものであってもよい。
また、チューブ状部材45としては、外径が、0.4〜2.5mm、好ましくは0.6〜2.0mmであり、内径が0.3〜1.8mm、好ましくは0.4〜1.5mm、長さが、0.5〜29.5mm、好ましくは、4.5〜9.5mmである。また、チューブ状部材45は、内径が、先端側第1チューブ20の基端部の外径より、0.01〜0.2mm大きいものであることが好ましい。また、チューブ状部材45は、内径が、先端側第2チューブ21の先端部の外径より、0.01〜0.2mm大きいものであることが好ましい。
また、チューブ状部材45としては、全体にわたり同一外径であることが好ましいが、先端側あるいは基端側に向かって縮径もしくは拡径するものであってもよい。
【0022】
また、チューブ状部材45は、図12に示すように、剛性付与部11に固定されているものであってもよい。この実施例では、チューブ状部材45は、剛性付与部11との固定部45cを備えている。具体的には、チューブ状部材45は、側面より外方に突出する突出部を有し、この突出部が、固定部45cとなっている。チューブ状部材45に、このような剛性付与部11との固定部45cを設けることにより、チューブ状部材の移動を防止することができる。
さらに、チューブ状部材45は、先端側第1チューブ20の基端部または/および先端側第2チューブ21の先端部に固定されているものであってもよい。
図13に示す実施例では、チューブ状部材45は、先端側第2チューブ21の先端部に固定部121により固定されている。なお、この実施例では、チューブ状部材45は、先端側第1チューブ20には固定されないものとなっている。また、チューブ状部材45は、先端側第2チューブ21の先端部の側面の全周において固定部121により固定されている。なお、図13に示した実施例と逆に、チューブ状部材45は、先端側第1チューブ20の基端部に固定部により固定されていてもよい。なお、この場合には、チューブ状部材45は、先端側第2チューブ21には固定されないものとなる。また、この場合には、チューブ状部材45は、先端側第1チューブ20の基端部の側面の全周において固定部により固定されるものとなる。
【0023】
また、チューブ状部材45は、先端側第1チューブ20の基端部および先端側第2チューブ21の先端部に固定されているものであってもよい。
図14および図14のG−G線断面図である図15に示す実施例では、チューブ状部材45は、先端側第1チューブ20の基端部に固定部122により固定されており、先端側第2チューブ21の先端部に固定部123により固定されている。なお、この実施例では、図15に示すように、チューブ状部材45は、先端側第1チューブ20の基端部の外周側面に固定部122を部分的に設けることにより先端側第1チューブ20に固定されており、また、先端側第2チューブ21の先端部の外周側面に固定部123を部分的に設けることにより先端側第2チューブ21に固定されている。よって、チューブ状部材45と先端側第1チューブ20間およびチューブ状部材45と先端側第2チューブ21間の液体(プライミング液)流通を阻害しないものとなっている。
【0024】
また、チューブ状部材45は、図16に示す実施例のように、断面形状が楕円状となっているものであってもよい。特に、図16に示す実施例では、チューブ状部材45は、先端側第1チューブ20の基端部との接触部130,131において、先端側第1チューブ20に固定されている。同様に、チューブ状部材45は、先端側第2チューブ21の先端部との接触部において、先端側第2チューブ21に固定されている。なお、この実施例では、図16に示すように、チューブ状部材45は、先端側第1チューブ20および先端側第2チューブ21との非接触部を備えており、チューブ状部材45と先端側第1チューブ20間およびチューブ状部材45と先端側第2チューブ21間の液体(プライミング液)の流通を阻害しないものとなっている。
また、チューブ状部材140は、図17に示す実施例のように、先端が剛性付与部との第1固定部24aを有するスライドチューブ係止部24に当接し、基端が剛性付与部との第2固定部46aを有する固定用部材46に当接し、実質的に移動不能なものであってもよい。そして、この実施例のチューブ状部材140は、側壁に多数の細孔142を備えており、チューブ状部材140からの液体(プライミング液)の流出が可能なものとなっている。また、チューブ状部材140の内面と先端側第1チューブ20の外面および先端側第2チューブ21の外面間には、空隙141が形成されており、液体の細孔142への流通を確実なものとしている。
【0025】
そして、先端側第1チューブ20の先端に固定された先端部材25は、ステント収納用筒状部材5の先端より先端側に位置し、かつ、図1ないし図4に示すように、先端に向かって徐々に縮径するテーパー状に形成されていることが好ましい。このように形成することにより、狭窄部への挿入を容易なものとする。また、先端側第1チューブ20は、ステント3よりも先端側に設けられ、ステント収納用筒状部材の先端方向への移動を阻止するストッパーを備えることが好ましい。この実施例では、先端部材25の基端は、ステント収納用筒状部材5の先端と当接可能なものとなっており、上記のストッパーとして機能している。
なお、先端部材(先端部)25の最先端部の外径は、0.5mm〜1.8mmであることが好ましい。また、先端部材(先端部)25の最大径部の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。さらに、先端側テーパー部の長さは、2.0〜20.0mmであることが好ましい。
【0026】
また、先端側第1チューブ20は、図3および図4に示すように、ステント3の基端側への移動を規制するために、チューブ20の先端より所定距離基端側となる位置に設けられたステント基端部係止部22を備えている。係止部22は、環状突出部であることが好ましい。そして、このステント基端部係止部22より先端側が、ステント収納部位となっている。この係止部22の外径は、圧縮されたステント3の基端と当接可能な大きさとなっている。そして、ステント収納用筒状部材5が、基端側に移動しても、係止部22によりステント3はその位置を維持するため、ステント収納用筒状部材5より、結果的に放出される。
【0027】
そして、この実施例の生体器官拡張器具1では、先端側第1チューブ20は、図3および図4に示すように、ステント基端部係止部22より所定長(ほぼステントの軸方向長)先端側となる位置に設けられたステント先端部係止部26を備えている。ステント先端部係止部26は、図3および図4に示すように、ステント収納用筒状部材5の先端より、若干基端側に位置している。係止部26は、環状突出部であることが好ましい。そして、このステント先端部係止部26とステント基端部係止部22間が、ステント収納部位となっている。この係止部26の外径は、圧縮されたステント3の先端と当接可能な大きさとなっている。また、ステント先端部係止部26は、基端面が基端方向に向かって縮径するテーパー面となっている。このため、ステント放出時において、ステント先端部係止部26が障害となることがなく、また、ステント3の放出後の生体器官拡張器具1の回収(具体的には、ガイディングシースあるいはシース内への収納)が容易となる。
【0028】
ステント基端部係止部22およびステント先端部係止部26の外径は、0.5〜4.0mmであることが好ましい。なお、ステント基端部係止部22およびステント先端部係止部26は、図示するような環状突出部が好ましいが、ステント3の移動を規制し、かつ、押出可能であればよく、例えば、先端側第1チューブ20に一体にあるいは別部材で設けられた1つまたは複数の突起であってもよい。また、ステント基端部係止部22およびステント先端部係止部26は、X線造影性材料からなる別部材により形成されていてもよい。これにより、X線造影下でステントの位置を的確に把握することができ、手技がより容易なものとなる。X線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、白金、あるいはそれらの合金等が好適である。そして、突出部は、X線造影性材料によりワイヤを形成し先端側第1チューブの外面に巻きつけること、もしくはX線造影性材料によりパイプを形成しかしめる又は接着することにより取り付けられる。
【0029】
先端側第1チューブ20、先端側第2チューブ21、チューブ状部材45の形成材料としては、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。特に、上記のうち、ポリイミドが好ましい。なお、先端側チューブの外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する樹脂をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが好適に使用できる。
【0030】
また、先端部材25を先端側第1チューブと別部材により構成する場合には、先端部材25としては、柔軟性を有する材料を用いることが好ましい。例えば、オレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、ポリアミドエラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマー)、ポリウレタン、ウレタン系エラストマー、フッ素樹脂系エラストマーなどの合成樹脂エラストマー、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ラテックスゴムなどの天然ゴムなどのゴム類が使用される。
【0031】
さらに、先端側第1チューブ20、先端側第2チューブ21、チューブ状部材45は、全体もしくは部分的に設けられた補強層28、45bを備えていてもよい。また、先端側第1チューブ20、チューブ状部材45は、補強層を持たないものであってもよい。補強層は、網目状の補強層であることが好ましい。網目状の補強層は、ブレード線で形成することが好ましい。ブレード線は、例えば、線径0.01〜0.3mm、好ましくは0.03〜0.2mmのステンレス、弾性金属、超弾性合金、形状記憶合金等の金属線で形成することができる。または、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維で形成してもよい。
そして、先端側第1チューブ20の外面、ステント3の内面には、摺動性物質が被覆されていることが好ましい。加えて、先端側第1チューブ20の内面、先端側第2チューブ21の外面、先端側第2チューブ21の内面、ステント収納用筒状部材5の内面、スライドチューブ本体71の内面、固定チューブ8の内面、リング状部材41の内面にも摺動性物質が被覆されていることがより好ましい。なお、摺動性物質は、それぞれの面の全体に被覆されていることが好ましいが、一部であってもよい。このようにすることにより、ステント収納用筒状部材5およびリング状部材41の移動がより良好なものとなる。また、ガイドワイヤの摺動も良好となる。
摺動性物質としては、シリコーンオイルもしくはシリコーン樹脂であることが好ましい。シリコーンオイルとしては、シリコーン油基準(II:薬機第327号厚生省薬務局医療)又はこれと同等以上の外国の基準に適合するものが好適に用いられる。また、シリコーン樹脂としては、ジメチルポリシロキサンなどを主成分とするシリコーン溶液の固化物が好適である。
【0032】
そして、先端側第1チューブ20の外面、先端側第1チューブ20の内面、先端側第2チューブ20の外面、先端側第2チューブ21の内面、ステント3の内面、ステント収納用筒状部材5の内面、スライドチューブ本体71の内面、固定チューブ8の内面、リング状部材41の内面への摺動性物質の塗布は、チューブ状部材45の流路45aを用いたプライミングと同様の操作にて行うことができる。
具体的には、図18に示すように、先端部材25にキャップ部材47を取り付け、先端開口25aを閉塞し、この状態にて、固定チューブ8の開口23に摺動性物質含有液(例えば、液状シリコーン)を充填したシリンジ(図示せず)を取り付け、シリンジのプランジャを押圧して、摺動性物質含有液を先端側第2チューブ21内に注入する。この摺動性物質含有液の注入により、摺動性物質含有液は、チューブ状部材45の流路45aより、生体器官拡張器具の先端部内かつ先端側チューブの外側に形成される空間に流入する。そして、余剰の摺動性物質含有液を回収することにより、摺動性物質を被覆することができる。
また、この実施例の生体器官拡張器具1では、先端側第1チューブ20と先端部材25は、別部材にて形成されているとともに、先端側第1チューブ20は、先端部に、ストッパー部材27が固定されている。ストッパー部材27は、先端側第1チューブ20に固定された筒状部とこの筒状部より、テーパー状に広がるスカート部を備えている。そして、ストッパー部材27は、先端部材25内に埋設された状態となっており、先端部材25の離脱および先端側への移動を防止している。ストッパー部材27は、金属(例えば、ステンレス鋼)により形成することが好ましい。
【0033】
基端側チューブ4は、図1、図2および図4に示すように、先端から基端まで貫通したチューブ体であり、基端に固定された操作部10を備えている。基端側チューブ4の先端部は、固定チューブ8に、固定部材84により、接合されている。基端側チューブ4は、内部に牽引ワイヤ6を挿通可能な牽引ワイヤ用ルーメンを備えている。
基端側チューブ4としては、長さが300mm〜1500mm、より好ましくは、700〜1400mmであり、外径が0.5〜1.5mm、好ましくは0.6〜1.3mmであり、内径が0.3〜1.4mm、好ましくは0.5〜1.2mmである。
基端側チューブ4の中心軸と先端側第2チューブ21の中心軸とのずれの距離としては、0.1〜2.0mmが好ましく、特に、0.5〜1.5mmが好ましい。
基端側チューブの形成材料としては、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。なお、基端側チューブの外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する樹脂をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが使用できる。また、基端側チューブ4の形成材料としては、比較的剛性の高い材質を用いることもできる。例えばNi−Ti、真鍮、ステンレス鋼、アルミ等の金属、さらには、比較的剛性の高い樹脂、例えば、ポリイミド、塩化ビニル、ポリカーボネート等を用いることもできる。
【0034】
ステント収納用筒状部材5は、図1ないし図4および図18に示すように所定長を備える管状体である。先端および基端は開口している。先端開口は、ステント3を体腔内の狭窄部に留置する際、ステント3の放出口として機能する。ステント3は、図19に示すように、この先端開口より押し出されることにより応力負荷が解除されて拡張し圧縮前の形状に復元する。
ステント収納用筒状部材5の長さとしては、20mm〜400mmが好ましく、特に、30mm〜300mmが好ましい。また、外径としては、1.0〜4.0mmが好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、内径としては、1.0〜2.5mm程度が好ましい。
そして、このステント収納用筒状部材5は、基端部に設けられた小径部51aを備える筒状部材本体部51と、この小径部51aを被包するように設けられた筒状部52を備えている。なお、小径部51aの基端部は、筒状部52より突出している。そして、牽引ワイヤ6(6a、6b)の先端部69(69a,69b)は、小径部51aと筒状部52間に形成された空隙内に侵入し、空隙に充填された固定剤53により、ステント収納用筒状部材5に固定されている。小径部51aは、外径が基端側に向かって縮径するテーパー部とこのテーパー部より基端側に延びる短い円筒部を備えている。そして、筒状部材本体部51の縮径部51aを被包するように筒状部52は、筒状部材本体部51の基端部に固定されている。このため、筒状部材本体部51の小径部51aは、筒状部材5の内方かつ基端方向に突出する環状突出部を構成している。そして、この環状突出部とステント収納用筒状部材5(具体的には、筒状部52の先端部)内面間により、環状空隙部が形成されている。そして、この実施例では、牽引ワイヤ6(6a、6b)の先端部69(69a,69b)は、小径部51aの外面にて固定されている。そして、この空隙部には、固定剤(接着剤)が充填されており、筒状部材本体部51と筒状部52を一体化している。また、環状空隙部に充填された固定剤等により、後述する牽引ワイヤ6(6a,6b)の先端部(固定点)69(69a,69b)は、筒状部材5に固定されている。固定剤としては、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、シアノアクリレート系樹脂などの接着剤を用いることが好ましいが、熱融着であってもよい。
【0035】
そして、この実施例において用いられているステント収納用筒状部材5では、筒状部材本体部51および筒状部52は、ほぼ同じ外径を有するものとなっている。ステント収納部位の外径としては、1.0〜4.0mmが好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、ステント収納用筒状部材5の長さとしては、20〜400mmが好ましく、特に、30mm〜300mmが好ましい。また、筒状部材本体部51の長さとしては、10〜200mmが好ましく、特に、15mm〜150mmが好ましい。また、筒状部52の長さとしては、10〜200mmが好ましく、特に、15〜150mmが好ましい。
なお、ステント収納用筒状部材5としては、上述したような筒状部材本体部51と筒状部52からなるものに限定されるものではなく、一体物であってもよい。
【0036】
スライドチューブ7は、その先端が、ステント収納用筒状部材5の基端に近接するように配置されている。また、スライドチューブ7は、その基端側より固定チューブ8内に収納可能なものとなっている。なお、スライドチューブ7は、基端側より固定チューブ8に被嵌可能なものであってもよい。スライドチューブ7は、牽引ワイヤ6の牽引によりステント収納用筒状部材5とともに基端側に移動可能であり、かつ、ステント収納用筒状部材5に固定されていないものとなっている。
そして、本発明の生体器官拡張器具1では、図2ないし図11に示すように、スライドチューブ7は、スライドチューブ本体71と、スライドチューブ本体71の先端部に固定され、スライドチューブ本体71の先端を覆い、かつスライドチューブ本体71の先端より生体器官拡張器具1の先端側に延びる先端側筒状部材72とを備えている。そして、先端側筒状部材72は、先端側筒状部材72の先端と基端間に位置しかつ少なくとも内径が縮径した縮径部73を有する一体成形筒状体となっている。そして、この実施例では、縮径部73の内径は、スライドチューブ本体71の内径とほぼ等しいまたは若干大きいもしくは若干小さいものとなっている。さらに、この実施例の生体器官拡張器具1では、図2ないし図9に示すように、先端側筒状部材72は、少なくとも縮径部73以外の部分の外径および内径が、スライドチューブ本体71より大きいものとなっている。そして、縮径部73は、先端側筒状部材72の先端と基端間、具体的には、先端より若干基端側に位置するものとなっている。
【0037】
そして、この実施例における生体器官拡張器具1では、スライドチューブ本体71の先端と先端側筒状部材72の縮径部73間に、リング状部材41が収納されている。そして、牽引ワイヤ6a,6bは、リング状部材41に固定されている。そして、先端側筒状部材72の縮径部73の内径は、先端側第1チューブ20の外径より大きいものとなっている。このため、先端側筒状部材72は、先端側第1チューブ20に接触することなく、基端側に移動可能となっている。また、先端側筒状部材72の縮径部73の内径は、リング状部材41の外径より小さいものとなっている。このため、リング状部材41の先端方向への移動を規制する。そして、牽引ワイヤ6a,6bが基端側に牽引されることにより、スライドチューブ7は、リング状部材41とともに基端側に移動する。また、リング状部材41は、スライドチューブ本体71および先端側筒状部材72のいずれにも固定されておらず、スライドチューブ本体71の先端と先端側筒状部材72の縮径部73間に回動可能に収納されている。スライドチューブ7の先端側筒状部材72は、リング状部材41の回動を許容し、かつ軸方向への大きな移動を縮径部73とスライドチューブ本体71の先端により、実質的に阻止している。このように、リング状部材41が、スライドチューブ7に対して、回動可能であることにより、先端側筒状部材72(スライドチューブ7)の回動に対して、リング状部材41、牽引ワイヤの固定部および牽引ワイヤ自体が追従しにくいものとなる。
この実施例でのリング状部材41は、プラスチック製外筒部材42とこのプラスチック製外筒部材42内に挿入されたプラスチック製内筒部材43と、プラスチック製外筒部材42とプラスチック製内筒部材43間に充填された接着剤44により構成されている。そして、牽引ワイヤ6a,6bは、プラスチック製外筒部材42とプラスチック製内筒部材43間を貫通するとともに、接着剤44によりリング状部材41に固定されている。プラスチック製外筒部材42およびプラスチック製内筒部材43としては、摩擦抵抗の少ないものが好ましく、例えば、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。
【0038】
スライドチューブ7は、具体的には、図2ないし図11に示すように、スライドチューブ本体71と、その先端部に固定され、スライドチューブ本体71より外径および内径が大きい先端側筒状部材72とを備えている。そして、この実施例では、スライドチューブ7の先端側部材72は、図10に示すように、先端部74と基端部と、先端部と基端部間(具体的には、先端より若干基端側となる位置)に設けられた縮径部73を備えている。この実施例では、縮径部73は、外径および内径ともに縮径している。なお、縮径部73は、内径のみ縮径するものであってもよい。縮径部73の内径は、上述したように、先端側第1チューブ20の外径よりある程度大きく、リング状部材41の外径より小さいものとなっている。また、縮径部73は、所定長ほぼ同じ内径にて軸方向に延びるものとなっている。このため、牽引ワイヤの牽引時(言い換えれば、先端側筒状部材72の基端側への移動時)における先端側筒状部材72の変形を少なくし、良好な移動を可能としている。また、先端側筒状部材72の基端部は、接着剤77により、スライドチューブ本体71の先端部に固定されている。そして、リング状部材41と、スライドチューブ本体71の先端間には、樹脂リング76を配置し、接着剤77のリング状部材41への流入を防止している。
また、スライドチューブ本体71の先端部は、先端側筒状部材72の基端部内に侵入するとともに、縮径部73と所定距離離間している。これにより、スライドチューブ本体71の先端部と先端側筒状部材72の縮径部73間に、リング状部材保持部を構成する環状凹部が形成されている。そして、リング状部材保持部であるこの環状凹部内に、リング状部材41が、収納されている。リング状部材41は、スライドチューブ本体71および先端側筒状部材72のいずれにも固定されていないため、回動可能である。しかし、スライドチューブ7内における軸方向への移動は、クリアランスを除き不能となっている。そして、牽引ワイヤ6a,6bは、図5に示すように、リング状部材41の内部に固定されている。牽引ワイヤ6a,6bを牽引することにより、リング状部材41も牽引され、そして、リング状部材41により先端側より押されることにより、スライドチューブ7も生体器官拡張器具1の基端側に移動する。
【0039】
また、スライドチューブ7の先端側筒状部材72は、その先端部74が、ステント収納用筒状部材5の小径部51aの基端部を被包していることが好ましい。また、スライドチューブ7の先端側筒状部材72とステント収納用筒状部材5は、接合されていないことが好ましい。この実施例では、図3、図4および図10に示すように、接合されることなく、さらには、実質的に接触することなく、スライドチューブ7の先端側筒状部材72の先端部は、ステント収納用筒状部材5の小径部51aの基端部を被包している。
さらに、この実施例では、スライドチューブ本体71の全体にわたり補強層78を備えている。このような補強層を設けることにより、耐キンク性が向上し、スライドチューブ7のスライドが良好なものとなる。補強層は、網目状の補強層であることが好ましい。網目状の補強層は、ブレード線で形成することが好ましい。ブレード線は、例えば、線径0.01〜0.3mm、好ましくは0.03〜0.2mmのステンレス、弾性金属、超弾性合金、形状記憶合金等の金属線で形成することができる。または、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維で形成してもよい。
【0040】
固定チューブ8は、この実施例の生体器官拡張器具1では、図2ないし図4、図11および図18に示すように、外径の大きい先端側固定チューブ81と、この先端側固定チューブ81の基端部に固定された基端側固定チューブ82を備えている。そして、先端側固定チューブ81は、先端縮径部81aを備えており、先端縮径部81aの内面は、スライドチューブ7の基端部の外面に接触している。そして、スライドチューブ7は、先端側固定チューブ81に固定されておらず、基端側に摺動することにより、先端側固定チューブ81内に侵入し、収納される。
この実施例のように、スライドチューブ7が、固定チューブ8内にスライド収納されるタイプのものであることが好ましいが、これに限定されるものではなく、スライドチューブを基端側にスライドすることにより、固定チューブがスライドチューブにより被嵌されるタイプのものであってもよい。
基端側固定チューブ82の先端部は、先端側固定チューブ81の基端内に侵入し、固定部81bにより固定されている。また、先端側第1チューブ20の外面には、固定チューブ8内、具体的には、図11に示すように、先端側固定チューブ81の基端部となる位置に、スライドチューブ係止部24が設けられている。スライドチューブ7は、このスライドチューブ係止部24に当接するまで、基端側にスライド可能となっている。言い換えれば、スライドチューブ7は、このスライドチューブ係止部24に当接することにより、それ以上の基端側への移動が規制されている。
【0041】
さらに、この実施例では、図11に示すように、固定チューブ8の先端側部分、具体的には、先端側固定チューブ81は、そのほぼ全体にわたり補強層85を備えている。補強層としては、網目状のもの、螺旋状のものなどが好ましい。特に、網目状の補強層であることが好ましい。網目状の補強層としては、金属細線により網目状に形成されたものが好適である。金属細線としては、ステンレス鋼線が好ましい。さらに、図11に示すように、基端側固定チューブ82との接続部となる部分には、補強層が存在しないものとすることが好ましい。
先端側第2チューブ21の基端部には、その基端部を収納した筒状固着部材83が設けられており、また、基端側チューブ4の先端には、筒状固定部材84が設けられている。そして、図4および図7に示すように、基端側固定チューブ82に、筒状固着部材83および筒状固定部材84が固着されている。
また、図2および図3に示すように、この生体器官拡張器具1では、複数(具体的には、2本)の牽引ワイヤ6a,6bを備えており、牽引ワイヤ6a、6bは、上述した筒状部材5が備える空隙部にて、固定点69a、69b部分が、固定剤53により、ステント収納用筒状部材5の小径部の外側に固定されている。また、牽引ワイヤ6a,6bおよびこの固定点69a、69bは、所定長離間している。
【0042】
ステント収納用筒状部材5(筒状部材本体部51、筒状部52)、スライドチューブ7(スライドチューブ本体71、先端側筒状部材72)、固定チューブ8(先端側固定チューブ81、基端側固定チューブ82)の形成材料としては、ステント収納用筒状部材あるいは各チューブに求められる物性(柔軟性、硬度、強度、滑り性、耐キンク性、伸縮性)を考慮して、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、さらには、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ナイロン系(例えば、ポリアミドエラストマー)、ウレタン系(例えば、ポリウレタンエラストマー)、ポリエステル系(例えば、ポリエチレンテレフタレートエラストマー)、オレフィン系(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)の中から適宜選択される。
さらに、ステント収納用筒状部材5の外面には、潤滑性を呈するようにするための処理を施すことが好ましい。このような処理としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド−グリシジルメタクリレート共重合体等の親水性ポリマーをコーティング、または固定する方法などが挙げられる。また、ステント収納用筒状部材5の内面に、ステント3に対する摺動性を良好なものにするため、上述のものをコーティング、または固定してもよい。
また、ステント収納用筒状部材5は、上記のようなポリマーの2層構造(例えば、外面はナイロン、内面はPTFE)の組み合わせで形成しても良い。
【0043】
そして、生体器官拡張器具1は、ステント収納用筒状部材5の基端部に一端部が固定され、ステント収納用筒状部材5の基端を越え、スライドチューブ7,固定チューブ8を貫通し、基端側チューブ4内を延びる牽引ワイヤ6を備えている。そして、この牽引ワイヤ6を基端側チューブの基端側に牽引することにより、ステント収納用筒状部材5およびスライドチューブ7は、基端側に移動する。
そして、図1ないし図3、図5ないし図10に示すように、この生体器官拡張器具1では、複数(具体的には、2本)の牽引ワイヤ6a,6bを備えており、牽引ワイヤ6a、6bは、ステントに近い部分に設けられた固定点69a、69bにより、ステント収納用筒状部材5の基端部に固定されている。また、牽引ワイヤ6a,6bおよびこの固定点69a、69bは、所定距離離間するように配置されている。
さらに、この実施例では、牽引ワイヤ6a,6bは、牽引により移動する部材にも固定されている。具体的には、図10に示し、また、上述したように、牽引ワイヤ6a,6bは、スライドチューブ7が備えるリング状部材41にも固定されている。このため、この実施例の生体器官拡張器具1では、牽引ワイヤ6a,6bが、基端側に牽引されることにより、リング状部材41も基端側に牽引され、このリング状部材41にスライドチューブ7(スライドチューブ本体71)が当接することにより、スライドチューブも基端側に牽引される。よって、この実施例では、ステント収納用筒状部材5とスライドチューブ7とは、両者それぞれが別個に牽引されるものとなっており、牽引時に、ステント収納用筒状部材5とスライドチューブ7が当接しないものとなっている。また、牽引ワイヤ6a,6bの牽引時の力は、固定点69a、69bと牽引により移動する部材であるリング状部材41の固定部とに分散されるため、固定点69a、69bにおける牽引ワイヤ6a,6bとステント収納用筒状部材5間の固定が解除されることを確実に防止する。
【0044】
この実施例の生体器官拡張器具1では、牽引ワイヤ6は、図1に示すように、基端側チューブ4を貫通し、基端側チューブの基端より延出するものとなっている。
牽引ワイヤの構成材料としては、線材もしくは複数本の線材を撚ったものが好適に使用できる。また、牽引ワイヤの線径は、特に限定されないが、通常、0.01〜0.55mmが好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましい。
また、牽引ワイヤ6の形成材料としては、例えば、ステンレス鋼線(好ましくは、バネ用高張力ステンレス鋼線)、ピアノ線(好ましくは、ニッケルメッキあるいはクロムメッキが施されたピアノ線)、または超弾性合金線、Ni−Ti合金、Cu−Zn合金、Ni−Al合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、コバルト合金、タンタル等の各種金属により形成された線材や、ポリアミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂等の比較的高剛性の高分子材料により形成された線材、あるいは、これらを適宜組み合わせたものが挙げられる。
また、牽引ワイヤの側面に滑性を増加させる低摩擦性樹脂を被覆してもよい。低摩擦性樹脂としては、例えば、フッ素系樹脂、ナイロン66、ポリエーテルエーテルケトン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。この中でも、フッ素系樹脂がより好ましい。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン、パーフロロアルコキシ樹脂等が挙げられる。またシリコーンや各種親水性樹脂によるコーティングであってもよい。
【0045】
さらに、この実施例の生体器官拡張器具1では、上述したように、剛性付与部11を備えている。剛性付与部11は、図1、図4,図7に示すように、生体器官拡張器具1の基端側より延び、基端側チューブ4内を通り、さらに、固定チューブ8内に侵入している。そして、剛性付与部11の先端は、図4に示すように、第1固定部24aにおいてスライドチューブ係止部24に固定され、第2固定部46aにおいて固定用部材46に固定されている。牽引ワイヤ6a、6bは、図3に示すように、スライドチューブ係止部24に固定されておらず、スライドチューブ係止部24に形成された通路24b、24cを通過している。同様に、牽引ワイヤ6a、6bは、図3に示すように、固定用部材46に固定されておらず、固定用部材に形成された通路46b、46cを通過している。また、牽引ワイヤ6a、6bは、図3に示すように、チューブ状部材45に接触しないものとなっている。
さらに、この実施例の生体器官拡張器具1では、図4に示すように、剛性付与部11は、固定チューブ8に固着されている筒状固定部材84にも固定されている。筒状固定部材84には、図4に示すように、軸方向に所定長延びる剛性付与部固定部84aが形成されている。このように、剛性付与部11の先端部を3カ所において固定することにより、剛性付与部11の先端部による強い補強効果を発揮する。特に、スライドチューブ係止部24へのスライドチューブ7の当接時において、スライドチューブ係止部24を補強する。
そして、剛性付与部11は、基端部にて基端側チューブ4の基端部もしくは後述する操作部10に固定されていることが好ましい。このような剛性付与部11を設けることにより、牽引部材(牽引ワイヤ)の牽引時における生体器官拡張器具の変形を抑制できる。また、剛性付与部11の先端は、スライドチューブ係止部24による固定を確実にするために、平坦部となるように形成してもよい。さらに、側面に波状部分を形成して筒状固定部材からの抜け止めを設けてもよい。
【0046】
剛性付与部11としては、線材もしくは複数本の線材を撚ったものが好適に使用できる。また、剛性付与部11の太さは、特に限定されないが、通常、0.01〜1.5mmが好ましく、0.1〜1.0mmがより好ましい。
また、剛性付与部11としては、本体側部分(具体的には、基端側チューブ内となる部分)が剛性が高く(例えば、線径が太い)、先端側部分が剛性が低い(具体的には、線径が細い)ものであることが好ましい。さらに、両者の変化点は、線径がテーパー状に変形するテーパー部となっていることが好ましい。
また、剛性付与部11の形成材料としては、例えば、ステンレス鋼線(好ましくは、バネ用高張力ステンレス鋼線)、ピアノ線(好ましくは、ニッケルメッキあるいはクロムメッキが施されたピアノ線)、または超弾性合金線、Ni−Ti合金、Cu−Zn合金、Ni−Al合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、コバルト合金、タンタル等の各種金属により形成された線材が挙げられる。また、剛性付与部11は、牽引部材(牽引ワイヤ)より、硬質であることが好ましい。
【0047】
ステント収納用筒状部材5内には、ステント3が収納されている。
ステント3としては、いわゆる自己拡張型ステントであればどのようなものであってもよい。例えば、ステント3としては、図23(拡張して圧縮前の形状に復元した状態を示している)に示すような形状を有しているものが好適に使用できる。この例のステント3は、円筒状フレーム体30と、この円筒状フレーム体30を構成するフレーム36a,36bにより区画(囲撓)された開口34およびフレーム36aにより区画された切欠部35を有しており、フレーム体30は両端部33a,33bを有している。
【0048】
ステントは、例えば、留置される生体内部位に適合した外径を有する後述の超弾性合金製金属パイプを準備し、パイプの側面を、切削加工(例えば、機械的切削、レーザ切削)、化学エッチングなどにより部分的に除去して、側面に複数の切欠部または複数の開口を形成することにより作製される。
【0049】
このステント3はフレーム体30の端部に切欠部35を有するので、ステント3の端部33a,33bの変形が容易となり、特に、端部の部分的変形が可能となり、留置される血管の変形時に対する応答が良好である。また、端部33a、33bは、複数のフレーム36aの端部により形成されているため、つぶれにくく、十分な強度を有する。また、両端部間には、フレーム36a,36bにより囲まれた開口34が形成されており、この開口34は、フレーム36aの変形により容易に変形する。このため、ステント3はその中央部(フレーム体30の中央部)での変形も容易である。なお、切欠部および開口は図示した形状および個数に限定されるものではなく、切欠部としては、3〜10個、開口としては、3〜10個が好適である。
フレーム体30は、外径が2.0〜30mm、好ましくは、2.5〜20mm、内径が1.4〜29mm、好ましくは1.6〜28mmであり、長さは、10〜150mm、より好ましくは15〜100mmである。
【0050】
なお、ステントの形状は、図23に示すものに限定されるものではない。例えば、両端部に台形状の切欠部が形成されるとともに、中央部にハニカム状に複数の六角形の開口が形成されているもの、また、両端部に長方形状の切欠部が形成され、中央部に複数の長方形状(切欠部の二倍の長さを有する)の開口が形成されているものなどであってもよい。さらに、ステント3の形状は、挿入時に縮径可能であり、かつ、体内放出時に拡径(復元)可能なものであればよく、上述の形状に限定されるものではない。例えば、コイル状のもの、円筒状のもの、ロール状のもの、異形管状のもの、高次コイル状のもの、板バネコイル状のもの、カゴまたはメッシュ状のものでもよい。
【0051】
ステントを形成する材料としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金といわれ、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。好ましくは、49〜53原子%NiのTi−Ni合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性合金が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTi−Ni合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,Bなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0%原子で置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。また、上記のTi−Ni−X合金を用いて冷間加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。
【0052】
使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜200kgf/mm(22℃)、より好ましくは、8〜150kgf/mm、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kgf/mm(22℃)、より好ましくは、5〜130kgf/mmである。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、変形の解放後、加熱を必要とせずにほぼ圧縮前の形状に回復することを意味する。
また、本発明の生体器官拡張器具に使用されるステントは、略円筒形状に形成された縮径可能なステント本体と、ステント本体の側面を封鎖する筒状カバー(図示せず)を備えるものであってもよい。
【0053】
なお、本発明の生体器官拡張器具は、上述した実施例に限定されるものではない。例えば、図20に示す生体器官拡張器具30のようなものであってもよい。
この実施例の生体器官拡張器具30では、固定チューブ8は、上述した生体器官拡張器具1のように、先端側固定チューブ81と基端側固定チューブ82とを備えるものではなく、一体に形成された固定チューブ8aを備えるものとなっている。そして、図20に示すように、固定チューブ8aは、先端側より、先端側第2チューブ21に設けられた固定用部材46の配置付近まで延びる補強層85を備えている。補強層は、上述したものと同じである。
【0054】
さらに、上述したすべての実施例において、図21に示す生体器官拡張器具40のようなものであってもよい。
この実施例の生体器官拡張器具40では、牽引ワイヤ6a、6bの先端部(69a,69b)は、ステント収納用筒状部材5の小径部の51aに固定された金属リング54により、固定されている。そして、金属リング54の外面には、樹脂等により形成された被覆部55が設けられており、金属リング54および牽引ワイヤ6a、6bの先端を露出しないものとしている。この実施例の生体器官拡張器具30では、生体器官拡張器具1が備えるステント収納用筒状部材5の小径部の51aを被包する筒状部52を持たないものとなっている。
また、上述したすべての実施例において、図21に示す生体器官拡張器具40のスライドチューブ係止部24、固定用部材46のように、牽引ワイヤ6a、6bを貫通するための通路を備えず、牽引ワイヤ6a、6bが、スライドチューブ係止部24および固定用部材46の外側を通過するものであってもよい。
さらに、上述したすべての実施例において、上述のようなリング状部材41を持たないものであってもよい。
【0055】
さらに、上述したすべての実施例において、図22に示す生体器官拡張器具50のようなものであってもよい。
上述した実施例の生体器官拡張器具では、固定チューブ8は、牽引時において、スライドチューブ7を基端側より収納するタイプ、言い換えれば、スライドチューブ7のスライドチューブ本体71が、基端より、固定チューブ8内に侵入するタイプのものとなっている。
これに対して、この実施例の生体器官拡張器具50では、牽引時において、スライドチューブ7が基端側より固定チューブ8を被嵌するタイプ、言い換えれば、スライドチューブ7のスライドチューブ本体71aが、基端より、固定チューブ8の先端側固定チューブ81cを被包するものとなっている。
このため、スライドチューブ本体71aの内径は、固定チューブ8の先端側固定チューブ81cの外径とほぼ等しい、もしくは、若干大きいものとなっている。先端側固定チューブ81cは、固定部81bにより、その基端部において、基端側固定チューブ82の先端部に固定されている。また、この実施例では、部材24は、スライドチューブ係止部として機能しない。
【0056】
そして、本発明の生体器官拡張器具1は、図1,図24ないし図28に示すように、基端側チューブ4の基端に固定された操作部10を備えている。
図24は、本発明の生体器官拡張器具の操作部付近の拡大正面図である。図25は、図24に示した生体器官拡張器具の操作部付近の拡大背面図である。図26は、図24および図25に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。図27は、図24に示した生体器官拡張器具の操作部分のみの右側面図である。図28は、図24ないし図27に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
この実施例の生体器官拡張器具1における操作部10は、牽引ワイヤ巻取機構に加えて、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構および牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構を備えている。
【0057】
操作部10は、図24ないし図28に示すように、操作部ハウジング50を備える。操作部ハウジング50は、第1ハウジング50aと第2ハウジング50bにより構成されている。操作部ハウジング50は、基端側および中央部が屈曲しかつ丸みを帯びた形状となっており、把持しやすく、かつ、把持した状態におけるローラの操作を容易なものとしている。
そして、図26に示すように、基端側チューブ4の基端には、筒状コネクタ48の先端部が固定されている。また、操作部ハウジング50内には、コネクタ48の基端部に接続されたシール機構が収納されている。このシール機構は、図26に示すように、コネクタ48の基端部に固定された先端部を備えるシール機構筒状本体部材70と、筒状本体部材70の基端に固定されたキャップ部材70aと、筒状本体部材70とキャップ部材70a間に配置されたシール部材70bと、筒状本体部材内に収納された剛性付与部固定用部材70cを備えている。本体部材70およびキャップ部材70aは、貫通する開口部を備えている。シール部材70bは、牽引ワイヤ6(6a,6b)を液密状態かつ摺動可能に貫通させるための孔部もしくはスリットを備えている。また、剛性付与部固定用部材70cには、剛性付与部11の基端部が固定されている。そして、剛性付与部固定用部材70cは、筒状本体部材70内に固定されている。
【0058】
ハウジング50は、図24ないし図27に示すように、操作用回転ローラ61を部分的に突出させるための開口部58、ローラ61に設けられた歯車部62の突出部と係合するロック用リブ(図示せず)、ローラ61の回転軸の一端64bを収納する軸受部94b、ローラ61の回転軸の他端64aを収納する軸受部94aを備えている。ロック用リブは、ローラ61の歯車部62に形成された突起部間に侵入可能な形状となっている。また、軸受部94a、94bは、図24および図25に示すように、ローラ61の回転軸の一端64bおよび他端64aを収納するとともに、上述の開口部と離間する方向に延びる瓢箪状のものとなっている。なお、軸受部94a、94bは、瓢箪状に限定されるものではなく、ロック用リブとの係合が解除できる距離移動が可能なものであればよい。例えば、軸受部94a、94bの形状は、長円、矩形、楕円状などであってもよい。特に、この実施例の操作部10では、上記の軸受部94a、94bは、図24および図25に示すように、瓢箪状のものとなっている。このため、操作用回転ローラ61を押し、軸受部94a,94bの一端側空間に収納されているローラ61の回転軸の端部64a,64bを、軸受部94a,94bの中央部内側面に形成された向かい合うリブ部分を乗り越えさせることにより、ローラ61の回転軸の端部64a,64bは、軸受部94a,94bの他端側空間に収納された状態となる。図26に示す状態が、ローラ61が押圧された状態である。そして、この状態において、ローラ61は、付勢部材により押圧されるが、ローラ61の回転軸の端部64a,64bは、軸受部94a,94bの中央部内側面に形成された向かい合うリブ部分に当接するため、軸受部94a,94bの一端側空間に移動しない。このため、ローラ61は、回転可能な状態を維持するものとなっている。
【0059】
そして、この実施例では、図25および図28に示すように、操作部10は、カラー部材12を備えている。カラー部材12は、巻取シャフト部63を収納するとともに、巻取シャフト部63との間に環状空間を形成するカラー部14を有する。このカラー部14により、巻取シャフト部63に巻き取られた牽引ワイヤのゆるみが防止される。また、カラー部材12は、回転ローラの押圧時の移動の誘導および回転ローラのガタツキを抑制する機能も有する。カラー部材12のピン13が、第1ハウジング50aの突出部(軸受部)59および第2ハウジング50bの凹部(軸受部)158によって軸支されている。そして、軸受部94a、94bは、図24および図25に示すように、ピン13(軸受部59、158)を中心とする緩やかな円弧状に形成されており、かつ、ローラ61が、ロック用リブの高さ以上の距離を移動可能な長さを有するものとなっている。また、カラー部材12は、図28に示すように、側面よりカラー部14内の空間に到達する向かい合う2つの切欠部15を備えている。牽引ワイヤ6は、一方の切欠部15を貫通し、巻取シャフト部63に固定されている。
【0060】
そして、牽引ワイヤ巻取機構は、ローラ61と、このローラ61の回転により回転する巻取シャフト部63とにより構成されている。巻取シャフト部63は、牽引ワイヤ6の基端部を把持もしくは固定している。具体的には、図25に示すように、牽引ワイヤ6の基端部には、ワイヤ6より大きく形成されたアンカー部65を備えており、巻取シャフト部63には、牽引ワイヤ6を収納可能なスリット63aが設けられている。そして、アンカー部65がスリット63aの基端外方に位置するように、巻取シャフト部63のスリット63aに、牽引ワイヤ6の基端部が収納されている。これにより、巻取シャフト部63が回転することにより、ワイヤ6は、巻取シャフト部63外面に巻き取られる。なお、牽引ワイヤ6の巻取シャフト部63への把持もしくは固定は、上述のものに限定されるものではなく、どのような方式のものであってもよい。例えば、牽引ワイヤ6の基端もしくは基端部を直接、巻取シャフトに固定してもよい。
【0061】
また、牽引ワイヤ6の巻き取られる基端部は、巻取を容易なものとするために、柔軟なものとなっていることが好ましい。このような柔軟なものとする方法としては、牽引ワイヤ6の基端部を柔軟な材料により形成する方法、牽引ワイヤ6の基端部を細径とする方法などが挙げられる。
そして、この実施例では、巻取シャフト部63は、回転ローラ61と同軸となるように一体化されている。さらに、図28に示すように、巻取シャフト部63は、回転ローラ61の一方の側面側に設けられている。そして、回転ローラ61を回転させることにより、巻取シャフト部63も同時に回転する。そして、回転ローラの回転操作量に比べて、牽引ワイヤの巻取量が少ないことが好ましい。このようにすることにより、ゆっくりとした巻取を行うことができ、ステント収納用筒状部材の基端側への移動もゆっくりかつ良好なものとなる。この実施例では、巻取シャフト部の外径は、回転操作用ローラより小径となっているため、回転ローラの回転操作量に比べて、牽引ワイヤの巻取量が少ないものとなっている。
【0062】
また、巻取シャフト部63の外径としては、1〜60mmが好適であり、特に、3〜30mmが好ましく、回転ローラの外径としては、巻取シャフト部の外径の1〜20倍が好適であり、特に、1〜10倍が好ましい。また、回転ローラの外径としては、10〜60mmが好適であり、特に、15〜50mmが好ましい。
なお、回転ローラと巻取シャフト部は、このような一体的なものに限定されるものではなく、回転ローラが回転することにより、追従して回転する別部材により構成したものであってもよい。回転ローラの回転の伝達方式としては、ギア形式のもの、ベルト形式のものなどであってもよい。また、ローラ61を操作する際に接触する可能性のある表面部位は、滑りにくい表面となっていることが好ましい。例えば、ローラ61を操作する際に接触する可能性のある表面部位には、ローレット処理、エンボス処理、高摩擦材料被覆などを行うことが好ましい。
【0063】
そして、この実施例の操作部10は、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構を備えている。
操作用回転ローラ61は、図26、図28に示すように、同軸にかつ一体的に回動するように設けられた歯車部62を備えている。さらに、図28に示すように、歯車部62は、回転ローラ61の他方の側面側(言い換えれば、巻取シャフト部63が設けられた面と反対側の面)に設けられている。よって、歯車部62と巻取シャフト部63は、操作用ローラ部が構成する壁により仕切られた状態となっている。
また、操作用回転ローラ61は、部分的に開口部より露出しており、この部分が操作部となる。そして、回転ローラは、一方の側面(具体的には、歯車部の側面)に設けられた回転軸の他端64aおよび他方の側面(具体的には、巻取シャフトの側面)に設けられた回転軸の一端64bを備えている。
【0064】
さらに、ハウジング50内には、回転ローラ61をハウジングの開口部方向に付勢する付勢手段(付勢部材)80を備えている。具体的には、付勢手段80により、ローラ61は、付勢されている。さらに、ハウジング50には、付勢部材80により付勢された回転ローラ61の歯車部62の突起部間に侵入可能なロック用リブ(図示せず)が設けられている。このため、回転ローラ61は、付勢部材80により付勢された状態では、図25に示す状態となり、ロック用リブが歯車部62の突起部と係合するため、回転不能となっている。そして、回転ローラ61をロック用リブと離間する方向に押すと、回転ローラの回転軸の一端64bおよび他端64aは、ハウジング50に設けられた軸受部94aおよび94b内を移動し回転可能となる。よって、この実施例の操作部10は、回転ローラ61を押圧しない状態での回転を規制しており、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構を有するものとなっている。
【0065】
さらに、この実施例の操作部では、上記の付勢手段80と上述した歯車部62により、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構が構成されている。
操作部10内には、図24ないし図26に示すように、逆回転規制機構を備えている。この操作部10では、付勢部材80に逆回転規制機構が設けられており、付勢部材80は、逆回転規制部材でもある。逆回転規制機構は、逆回転規制部材(付勢部材でもある)80の先端部の上記操作用回転ローラ61の歯車部62と向かい合う部分に設けられ、歯車部と噛合可能な噛合部88と、弾性変形可能部86と、ハウジングへの装着部87を備えている。また、第1ハウジング50aは、内面に形成された第1の突出部(軸受部)59および第2の突出部79を備えている。第1の突出部59は、逆回転規制部材(付勢部材)80の弾性変形可能部86内に侵入するとともに、弾性変形可能部86の内面形状に対応した外面形状を有するものとなっている。具体的には、弾性変形可能部86の内面形状は、円弧状となっており、第1の突出部59は、その円弧形状に対応した円筒状となっている。そして、逆回転規制部材(付勢部材)80の装着部87は、第1ハウジング50aに形成された第1の突出部59と第2の突出部79間に装着可能な形状となっている。そして、逆回転規制部材(付勢部材)80は、その装着部87が、第1ハウジング50aの第1の突出部59と第2の突出部79間に装着されることにより、回動不能に装着されるとともに、弾性変形可能部86の弾性力により、操作用回転ローラ61を開口部58方向に付勢するものとなっている。また、逆回転規制部材(付勢部材)80の装着部87は、カラー部材12に設けられた円盤状の突出部13aにより、側面方向への移動が規制されている。
【0066】
そして、上述したように、ローラ61を押圧することにより、ローラは回転可能となる。しかし、図26の矢印方向(牽引ワイヤを巻き取る方向)への回転は可能であるが、逆方向にローラ61を回転させようとすると、歯車部62の1つの歯部と逆回転規制部材(付勢部材)80の噛合部88とが係合し、その回転を阻止する。これにより、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向へのローラの回転を規制する。また、この操作部10では、図27に示すように、逆回転規制部材(付勢部材)80は、第1ハウジング50aの内面と回転ローラ61の側面間に配置されている。このため、逆回転規制部材(付勢部材)80の横方向(水平方向)への動きが、第1ハウジング50aの内面と回転ローラ61の側面により規制されるものとなっている。
【0067】
歯車部62は、回転ローラより小径のものとなっており、歯車部62の外径としては、10〜60mmが好適であり、特に、15〜50mmが好ましく、歯数としては、4〜200が好適であり、特に、4〜70が好ましい。
そして、操作部10が備えるカラー部材12は、一端部がピン13により軸支されているとともに、他端側のカラー部14は、巻取シャフト部63を収納するとともに、巻取シャフト部63との間に環状空間を形成する。この環状空間はあまり大きな空間ではなく、巻き取ったワイヤの外面間により狭小な環状空間を形成するものである。
【0068】
次に、本発明の生体器官拡張器具1の使用方法について図面を用いて説明する。
使用準備として、プライミングを行う。図18に示すように、先端部材25にキャップ部材47を取り付け、先端開口25aを閉塞する。この状態にて、固定チューブ8の開口23に生理食塩水を充填したシリンジ(図示せず)を取り付ける。そして、シリンジのプランジャを押圧して、生理食塩水を先端側第2チューブ21のルーメン21a内に注入する。注入された生理食塩水は、一部が、先端側第1チューブ20のルーメン20a内に流入し、また、一部は、チューブ状部材45より流出して、生体器官拡張器具の先端部内かつ先端側第1チューブおよび先端側第2チューブの外側に形成される空間に流入し、プライミングが行われる。そして、先端部材25に装着したキャップ部材47を取り外す。なお、プライミング操作は、固定チューブ8の開口23をシール部材等により封止し、先端部材25に生理食塩水を充填したシリンジを装着することにより行ってもよい。
そして、プライミングが終了した生体器官拡張器具1の先端部材の開口部25aに、多くの場合は既に体内に留置されているガイドワイヤの末端を挿入し、開口23よりガイドワイヤ(図示せず)を出す。次に、生体内に挿入されているガイディングカテーテル(図示せず)内に挿入し、ガイドワイヤに沿わせて生体器官拡張器具1を押し進め、目的とする狭窄部内にステント収納用筒状部材5のステント収納部位を位置させる。
次に、操作部10の操作用回転ローラ61を押圧した後、ローラを図26の矢印方向に回転させる。これにより、牽引ワイヤ6は、巻取シャフト63の外周面に巻き取られるとともに、ステント収納用筒状部材5およびスライドチューブ7は、軸方向基端側に移動する。この時、ステント3はその基端面が先端側第1チューブ20のステント基端部係止部22の先端面に当接し係止されるので、ステント収納用筒状部材5の移動に伴って、ステント収納用筒状部材5の先端開口より放出される。この放出により、ステント3は、図19に示すように、自己拡張し狭窄部を拡張するとともに狭窄部内に留置される。
【符号の説明】
【0069】
1 生体器官拡張器具
2 先端側チューブ
3 ステント
4 基端側チューブ
5 ステント収納用筒状部材
6(6a,6b) 牽引ワイヤ
7 スライドチューブ
8 固定チューブ
10 操作部
20 先端側第1チューブ
21 先端側第2チューブ
11 剛性付与部
71 スライドチューブ本体
72 先端側筒状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤルーメンを有する先端側チューブと、前記先端側 チューブの基端開口より基端側に延びる基端側部材と、前記先端側チューブの先端側を被包しかつ前記先端側チューブの基端方向に摺動可能であるステント収納用筒状部材と、該ステント収納用筒状部材内に収納されたステントとを備える生体器官拡張器具であって、
前記ステントは、略円筒形状に形成され、中心軸方向に圧縮された状態にて前記ステント収納用筒状部材内に収納され、前記ステント収納用筒状部材からの放出時には外方に拡張可能なものであり、
前記生体器官拡張器具は、前記生体器官拡張器具の先端側内部に位置する剛性付与部を備え、
前記先端側チューブは、先端側第1チューブと、該先端側第1チューブの基端と近接する位置に先端を有する先端側第2チューブと、前記先端側第1チューブに設けられた前記剛性付与部との第1固定部と、前記先端側第2チューブに設けられた前記剛性付与部との第2固定部と、前記第1固定部と前記第2固定部間に位置し、前記先端側第1チューブの基端部および前記先端側第2チューブの先端部を収納し、かつ、前記先端側第1チューブ内および前記先端側第2チューブ内と前記生体器官拡張器具の先端側内部とを連通する流路を形成するチューブ状部材とを備え、
前記チューブ状部材は、前記ガイドワイヤルーメンの先端開口もしくは基端開口を閉塞した状態にて前記ガイドワイヤルーメンに注入された液体を前記流路を介して、前記生体器官拡張器具の先端側内部に流入可能であることを特徴とする生体器官拡張器具。
【請求項2】
前記チューブ状部材の前記流路は、前記先端側第1チューブの基端と前記先端側第2チューブの先端間の間隙および前記先端側第1チューブまたは/および前記先端側第2チューブの外面と前記チューブ状部材の内面間により構成されている請求項1に記載の生体器官拡張器具。
【請求項3】
前記チューブ状部材の長さは、前記第1固定部と前記第2固定部間の距離より短いものである請求項1または2に記載の生体器官拡張器具。
【請求項4】
前記先端側第1チューブの基端部または/および前記先端側第2チューブの先端部は、前記チューブ状部材に固定されている請求項1ないし3のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項5】
前記チューブ状部材は、前記剛性付与部に固定されている請求項1ないし4のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項6】
前記剛性付与部は、該生体器官拡張器具の基端側より延び、前記生体器官拡張器具の先端側内部に侵入していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項7】
前記先端側第2チューブは、基端部に設けられ、該先端側第2チューブ内と前記生体器官拡張器具内とを連通する側孔を備えている請求項1ないし6のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項8】
前記チューブ状部材は、補強層を備えている請求項1ないし7のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項9】
前記先端側第1チューブは、前記先端側第2チューブより柔軟である請求項1ないし8のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項10】
前記生体器官拡張器具は、前記先端側チューブの基端開口を閉塞しないように前記先端側チューブの基端部および前記基端側部材の先端部が固定された固定チューブを備えている請求項1ないし9のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項11】
前記生体器官拡張器具は、前記ステント収納用筒状部材に一端部が固定され、前記基端側部材内を延びるとともに該基端側部材の基端側に牽引することにより、前記ステント収納用筒状部材を基端側に移動させるための少なくとも一つの牽引ワイヤを備えている請求項1ないし10のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項12】
前記生体器官拡張器具は、前記ステント収納用筒状部材の基端に近接するように配置されたスライドチューブを備え、かつ、前記固定チューブは、前記スライドチューブを基端側より収納可能もしくは前記スライドチューブが基端側より被嵌可能であり、前記スライドチューブは、前記牽引ワイヤの牽引により前記ステント収納用筒状部材とともに基端側に移動可能であり、かつ、前記ステント収納用筒状部材に固定されていないものとなっている請求項11に記載の生体器官拡張器具。
【請求項13】
前記基端側部材の基端部には、前記牽引ワイヤを巻き取り、前記ステント収納用筒状部材を基端側に移動させるための牽引ワイヤ巻取機構を備える操作部を有する請求項11または12に記載の生体器官拡張器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−70775(P2012−70775A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215886(P2010−215886)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】