説明

生体情報モニタリング装置および生体情報モニタリング方法

【課題】経時的に変化する生体信号についても、適切に異常をモニタリングできる生体モニタリング装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる生体情報モニタリング装置は、患者の生体情報を取得する取得部と、生体情報に基づいて患者の生体の状態について良否を判定する基準として、経時的に変化する閾値を記憶する記憶部と、取得部によって取得された生体情報を、取得時の時間に基づく閾値と比較して、患者の生体の異常を判定する判定部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報モニタリング装置および生体情報モニタリング方法に関し、特にアラームの閾値を適切に設定するようにした生体情報モニタリング装置および生体情報モニタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場において、患者の身体状態をモニタリングするために、患者の生命や健康の維持に関する生体情報を取得する医療機器が使用されている。生体情報とは、たとえば動脈血酸素飽和度、心拍数、血糖値、脳波等であり、生体に取り付けた受信機により生体信号として検出される。このような医療機器のうち、検出した生体信号について閾値を設定し、生体信号が閾値に達した場合に異常と判断して、アラームを鳴動させるものがある。アラームの鳴動に従って医療従事者が適宜処置することにより、患者の生命や健康の維持が図られる。
【0003】
これに関連する技術として、現在の生体情報を表示しながらタッチパネル上で閾値を容易に設定できるように構成された医療機器に関するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】2001−0070257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の技術では、現在の生体情報をモニタリングしながら閾値を設定できるものの、閾値は一定値にしか設定されない。正常な状態で時間的に変化する生体情報について、特許文献1記載の発明を適用しても、異常を検出できない場合がある。たとえば、時間と共に計測値が上昇する生体情報について、初期の許容範囲に基づいて下限の閾値を設定した場合、一度生体信号がその閾値を越えるとその後は常時下限の閾値以上であるので、閾値は意味をなさない。一方、最終的な許容範囲に基づいて下限の閾値を設定した場合、当該閾値に到達するまでアラームが鳴動し続けることになる。これでは、正常に生体信号が上昇している最中も異常と判断され、医療従事者に無用な心配をかけ、また周囲の人にストレスとなってしまう。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、経時的に変化する生体信号についても、適切に異常をモニタリングできる生体モニタリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の生体情報モニタリング装置は、取得部と、記憶部と、判定部を有する。取得部は、患者の生体情報を取得する。記憶部は、生体情報に基づいて患者の生体の状態について良否を判定する基準として、経時的に変化する閾値を記憶する。判定部は、取得部によって取得された生体情報を、取得時の時間に基づく閾値と比較して、患者の生体の異常を判定する。
【0008】
本発明の生体情報モニタリング方法は、センサにより患者の生体情報を取得して、閾値と比較する生体情報モニタリング装置により実行される。センサは、患者の生体情報を取得する。生体情報モニタリング装置は、生体情報に基づいて患者の生体の状態について良否を判定する基準として予め記憶された、経時的に変化する閾値のうち、取得時の時間に基づく閾値と、取得された生体情報とを比較して、患者の生体の異常を判定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、閾値が経時的に変化するように設定されるので、経時的に変化する生体情報についてもモニタリング対象に則した適切な閾値を設定することができる。したがって、より適切な処置を患者に提供することができ、またより快適な医療環境を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る生体情報モニタリング装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示される生体情報モニタリング装置により設定されうる閾値、および取得された計測値の例を概略的に示すグラフの例を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る閾値のグラフにおいて、設定された時間で閾値が切り替えられる例を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係る閾値のグラフにおいて、手動で閾値が切り替えられる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る生体情報モニタリング装置の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る生体情報モニタリング装置10は、ベッドサイドモニタとして構成され、センサ部11、信号処理部12、制御部13、記憶部14、操作部15、警報部16、表示部17および外部入力受信部18を有する。これらは信号をやり取りするためのバスまたはケーブル等を介して相互に接続されている。なお、生体情報モニタリング装置10は、侵襲的または非侵襲的に患者から生体情報を取得できる。
【0013】
センサ部11は、患者の生体に装着されて、取得部として生体から生体情報を取得する。たとえば、センサ部11は、プローブ、カフまたは電極パッド等である。センサ部11により取得された生体情報は、たとえばアナログ信号として、信号処理部12に伝達される。
【0014】
信号処理部12は、センサ部11により取得された生体情報を受け取り、生体情報を処理する。たとえば、信号処理部12は、生体情報の種類によって必要とされる、信号増幅、FFT(高速フーリエ変換)、A/D変換等を実行し、制御部13により解釈可能な信号として生体信号に変換する。信号処理部12により処理された生体信号は、制御部13に伝達される。なお、生体情報は、その種類によって、信号処理部12を介することなく制御部13に伝達され、生体信号として受信されることもある。
【0015】
制御部13は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)、およびインタフェース等から構成される。CPUは、プログラムにしたがって上記各部の制御や各種の演算処理を実行する。ROMまたはRAMは、各種プログラムや各種データを格納する。インタフェースは、外部入力信号受信部18からの信号を受信する。これらの構成要素は、制御部13の内部バスにより相互に接続されている。制御部13の各機能は、各機能に対応するプログラムをCPUが実行することにより発揮される。
【0016】
記憶部14は、フラッシュメモリまたはHDD(Hard Disk Drive)等から構成され、オペレーティングシステムを含む生体情報モニタリング装置10の各構成要素を制御するためのプログラムを記憶する。また、記憶部14は、生体情報ごとに設定された閾値等を記憶する。記憶部14は、生体が異常な状態となるなどの特定の生体状態において経時的に変化する生体情報については、閾値が経時的に変化するように、閾値と時間との組についての情報を記憶する。また、記憶部14は、上記特定の生体状態に陥る直前に、所定の経時的変化パターンを示す、あるいは所定の値を示す生体情報(上記特定の生体状態において経時的に変化する生体情報と必ずしも同じ生体情報であるとは限らない)については、センサ部11により計測された生体情報の経時的な変化のパターン(以下、生体情報の値そのものも含む)をリアルタイムで記憶する。また、記憶部14は、必要な生体情報に関しては、警報部16が発する異なる複数の警報のパターンや警報音レベルについての設定を記憶する。なお、記憶部14は、過去に発生した警報の履歴等を記憶するように構成されてもよい。
【0017】
操作部15は、医療従事者等を含むユーザによる閾値に関する設定を受け付ける。たとえば、操作部15は、時間と閾値との組についての設定値の入力を受け付け、当該入力された設定値を記憶部14に伝達して記憶させる。また、操作部15は、取得された生体情報の経時的な変化のパターンのモニタリングを開始するためのユーザによる指示を受け付け、当該指示に基づいて制御部13は生体情報のモニタリングを開始する。
【0018】
警報部16は、制御部13による判断に基づいて、警報を発する。具体的には、制御部13により生体信号が閾値に達したと判断される場合、制御部13による警報を発する指示が警報部16に伝達され、警報部16は警報を発する。なお、警報部16は、上記複数の閾値毎に異なる警報を発することができる。また、警報部16は、時間に対して段階的に変化する閾値について、当該閾値の段階毎に異なる警報を発するように構成されうる。また、警報は、表示部17に視覚的に表示されてもよい。
【0019】
表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)、OLED(Organic Light Emitting Diode)等であり、各種の情報を表示する。たとえば、表示部17は、制御部13により生成および送信される、生体情報の計測値についての画像データに基づいて、当該計測値と少なくとも1つの上記閾値とを表示する。計測値と閾値とは、たとえばトレンドグラフとして折れ線グラフの形態に表示される。なお、表示部17は、タッチパネルとして構成され、操作部15と一体となるように構成されてもよい。
【0020】
外部入力受信部18は、外部機器からの信号を受信する。外部入力受信部18は、外部機器からの入力信号を受信し、当該入力信号を制御部13に伝達する。当該入力信号と所定の記憶された情報とが制御部13により照合され、一致すると判断される場合、制御部13による生体情報の判定が開始される(詳細は後述する)。ここで、外部機器とは、たとえば、生体情報モニタリング装置10により取得される生体情報とは別の種類の生体情報を取得する医療機器である。
【0021】
なお、生体情報モニタリング装置10は、上述した構成要素以外の構成要素を含んでいてもよく、あるいは、上述した構成要素のうちの一部が含まれていなくてもよい。
【0022】
次に、上述の構成要素により閾値が設定され、設定された閾値と取得された生体情報とを比較して生体情報が閾値に達したかを判定し、警報が発せられる処理について説明する。閾値は、受付部としての操作部15を介してユーザにより入力され、当該入力が設定部としての制御部13に伝達され設定される。設定された閾値は、記憶部14に記憶される。操作部15を介するユーザによる入力または後述のモニタリング部による判断に基づいて、生体情報の異常判定が開始される。生体情報の異常判定の処理中、患者の生体情報はセンサ部11により取得され、取得された生体情報は信号処理部12により適宜処理され、制御部13により受信される。制御部13は、判定部として、受信した生体情報と記憶部14に記憶された閾値とを比較し、生体情報が閾値に達したかを判定する処理を実行する。生体情報が閾値に達したと判定される場合、制御部13は、警報部16に警報を発するように指示する。警報の指示を受信した警報部16は、警報を発する。なお、後述するように、警報は複数段階に設定でき、閾値毎にまたは閾値の段階毎に設定できる。
【0023】
次に、上記生体情報の異常判定開始のためのモニタリング部による判断について説明する。制御部13は、生体情報の異常を判定していない時も、モニタリング部として、信号処理部12を経てセンサ部11から受信された生体情報の経時的な変化のパターンをモニタリングする。このようなモニタリング処理中に取得された生体情報の経時的変化パターンは、記憶部14に記憶される。制御部13は、モニタリング中に取得された生体情報の経時変化パターンと記憶部14に記憶される基準パターン(以下、生体情報の値そのものに対応するものとして基準値も含む)とを照合し、一致するか否かを判断する。一致すると判断される場合、生体情報モニタリング装置10による生体情報の異常を判定する処理が開始される。なお、基準パターンとは、生体情報モニタリング装置10により検出される生体情報についての、生体の異常の前兆を示す既知のパターンである。たとえば、救急の脳障害において脳低温療法が行われることがある。この場合、冷却処置により低下した体温が設定値(基準値)に達した時、脳内圧目標値を治療結果の良いとされる低い値(例えば10mmHg)に切り替え、脳内圧の異常を判定する処理が開始される。脳低温療法中は脳内圧が管理目標値(閾値)から逸脱しないように冷却処置を継続して所要の処置が施され、脳内圧が管理目標値(閾値)から逸脱した際には警報にて通知される。所要の処置が終了し、復温処置にて体温が戻されたことを検出して、脳内圧の目標値は高い値(例えば20mmHg)に自動で切り替えられ、脳内圧が安定するまで判定処理が継続される。また、基準パターンは、情報モニタリング装置10により検出される種類の生体情報に限定されない。異なる種類の生体情報が外部入力受信部18から受信され、当該異なる種類の生体情報の基準パターンと照合されるようにしてもよい。
【0024】
以下、図2および図3を参照して、本実施形態に係る生体情報モニタリング装置により閾値を設定して警報を発生させるための設定について詳細に説明する。
【0025】
図2は図1に示される生体情報モニタリング装置により設定される閾値および取得された計測値の例を概略的に示すグラフの例を示す図、図3は第1の実施形態に係る閾値のグラフにおいて、設定された時間で閾値が切り替えられる例を示す図である。
【0026】
図2に示されるように、横軸として時間が設定され、縦軸として生体情報が設定されている。この生体情報の計測値は、正常な状態で経時的に上昇する。そのために、計測値に対して、第1および第2閾値が時間の経過にしたがって上昇するように設定される。また、図2に示されるように、時間的に変化しない閾値として、第3閾値が設定されてもよい。
【0027】
閾値と計測値とは、対比できるように表示されうる。図2には、計測値が第1閾値の上方、第3閾値の下方に示されている。すなわち、第1閾値が計測値の下限の閾値として設定され、第3閾値が上限の閾値として設定されている。また、第1閾値よりもより高い異常の度合としての閾値を設定するために、第2閾値が第1閾値よりも下方に設定されている。このように、本実施形態では、上限および下限の閾値の両方について、複数の異常の度合い毎に閾値を設定できる。
【0028】
次に、図3を参照して、図2に示される経時的に変化する生体情報に対して閾値を設定し、生体情報が閾値に達するかを判断して異常を判定する処理について、以下詳細に説明する。
【0029】
図3に示されるように、時間的に変化する生体情報の例として、出生直後の新生児の動脈血酸素飽和度(SpO)がある。SpOは、特に出生直後の新生児に対して心肺蘇生を施す際の重要な指標であり、出生時から10分間に、所定のSpO値を満たすように新生児に対して酸素供給を確保しなくてはならない。たとえば、出生直後の新生児の身体状況に応じて、出生時(基準時間)からSpOの測定を開始し、基準時間から1分後は60%以上、3分後は70%以上、5分後は80%以上、および10分後は90%以上のSpOを確保する必要がある。また、この間、新生児のSpOの上限は、95%を越えないように維持しなくてはならない。
【0030】
本実施形態では、このような生体情報に対して、経時的に変化する閾値を設定するために、所望の時間と閾値との組が設定されうる。閾値の経時的な変化は、図3に示されるように、時間に対して段階的に閾値が変化するように設定されうる。このような閾値を設定するための時間と閾値との組の例は、下記表1に示される通りである。
【0031】
【表1】

【0032】
表1に示される設定にしたがって時間に対して閾値が設定される様子は、図3に示される通りである。表1に示されるように、時間と閾値との組が第1〜第3閾値のそれぞれについて設定され、当該設定に対応して図3に示される閾値の経時変化が設定されうる。具体的には、図3の「基準時間」が表1の「開始」に対応し、「A」〜「D」が「1分」〜「10分」に対応する。なお、基準時間としては、たとえば、上述のように、モニタリング部によりモニタリングされる生体情報の経時変化パターンと基準パターンとが一致すると判断された時、ユーザ操作に基づく指示が制御部13により受信された時、または生体情報の異常判定を開始した時等が設定されうる。
【0033】
また、生体情報モニタリング装置10による生体情報の異常判定期間中、制御部13により生体情報の計測値が第1閾値に達したと判定される場合、表1に示される警報のレベル設定にしたがって、「低」レベルの警報が警報部16から発せられる。また、開始から3分までの期間中、生体情報の計測値が下限としての第1閾値よりさらに降下して、次の下限である第2閾値に達したと判定される場合、表1に示される警報の優先度にしたがって、「低」レベルであった警報が「中」レベルの警報に切り替えられる。すなわち、計測値が第2閾値に達したと判定されたことにより、より高度の異常の度合が判定されたことになる。また、全期間にわたって計測値が上限としての第3閾値に達した場合も、「中」レベルの警報が発生される。さらに、開始から3分以降の期間中に計測値が第2閾値に達した場合、制御部13は生体情報が第2閾値に達したと判定し、「低」レベルであった警報が「高」レベルの警報に切り替えられる。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、閾値と時間との組について設定することにより、経時的に変化する閾値を設定でき、経時的に変化する生体情報に則した適切な閾値を設定できる。したがって、生体情報が経時的に変化しても、当該生体情報についての閾値が無意味となったり、最終的な閾値の目標値について警報を発し続けたりする事態を防ぐことができる。これにより、より適切な処置を患者に提供することができ、より快適な医療環境を達成することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、図4を参照して、本発明の第2の実施形態について詳細に説明する。なお、生体情報モニタリング装置10の構成およびその他の第1の実施形態と同様の構成については、重複を避けるためその説明を省略する。
【0036】
図4は、本実施形態に係る閾値のグラフにおいて、手動により閾値が切り替えられる例を示す図である。本実施形態では、閾値が段階的に変化するように設定される場合、閾値変化のタイミングを手動により操作することができる。たとえば、下記表2に示されるように、開始からの経過時間とは無関係に、ユーザによる操作により閾値の段階が変化されうる。
【0037】
【表2】

【0038】
表2に示される設定にしたがって閾値が変化される様子は、図4に示される通りである。表2に示されるように、時間と閾値との組が第1および第2閾値のそれぞれについて設定され、当該設定に対応して図4に示される閾値の経時変化が設定される。具体的には、図4の「基準時間」が表2の「開始」に対応し、「E」〜「G」が「操作1」〜「操作3」に対応する。表2に示される第1閾値および第2閾値に対する警報のレベルの設定については、上記表1について説明した通りである。なお、閾値を次の段階に切り替える操作は、たとえば操作部15においてユーザ入力を受け付けることにより達成される。
【0039】
以上のように、第1の実施形態による効果に加え、本実施形態によれば、ユーザが医療現場において処置の進行状況に合わせて、臨機応変に閾値の段階を順次進めることができるので、より適切な処置を施すことができる。
【0040】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。
【0041】
閾値が時間に対して段階的に変化する第1の実施形態と、手動により閾値が切り替えられるようにした第2の実施形態とを組み合わせてもよい。手動により閾値を切り替えた場合、次の閾値に切り替わる時間は、開始から継続する経過時間でもよいし、予め設定されているその閾値における設定時間経過後でもよい。閾値が段階的に変化する時間は、標準的なものでもよいし、許容される最大値でもよい。このようにすれば、第1の実施形態および第2の実施形態の効果を併せ持つのみでなく、ユーザにとって、より柔軟性が生まれ、より適切な処置を施すことができる。
【0042】
上記では、具体例を用いて、閾値が段階的に変化する形態について述べた。しかし、これに限定されない。段階的にではなく、経時的に徐々に変化する閾値についても設定できる。たとえば、表1について述べた時間と閾値との組について、当該組の各々の時間間隔内における閾値が一定ではなく、たとえば1次または2次関数的に変化するように設定することもできる。こうすることで、経時的に連続的に変化する閾値が設定されうる。この場合、所定の閾値幅毎に異なる警報レベルを設定してもよい。
【0043】
上記実施形態では、SpOを経時的に変化する生体情報として述べた。しかし、これに限定されない。たとえば、本願発明を適用できる他の生体情報として、ビリルビンが挙げられる。光線治療中における新生児の体内のビリルビンは、経時的に変化するので、本願発明を適用することにより、より適切な処置を可能とする。
【0044】
また、上記実施形態では、表1および表2に示されるように、時間と閾値との組がルックアップテーブルとして実装される形態について述べた。しかし、これに限定されない。いかなるフォーマットが使用されてもよい。
【0045】
なお、警報レベルの設定は、操作部15を介するユーザ入力に基づいてもよいし、あるいは外部入力受信部18を介する外部機器(不図示)からの入力に基づいてもよい。たとえば、当該設定のための専用のアプリケーションがインストールされたPC(Personal Computer)が外部入力受信部18を介して接続され、当該PCにより設定できるように構成されうる。また、警報レベルは、当該入力に基づいて、制御部13により設定されうる。
【0046】
上記実施形態では、生体情報モニタリング装置としてベッドサイドモニタを例としたが、これに限定されない。無線や有線ネットワークを利用したセントラルモニタリングシステムに適用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 生体情報モニタリング装置、
11 センサ部、
12 信号処理部、
13 制御部、
14 記憶部、
15 操作部、
16 警報部、
17 表示部、
18 外部入力受信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の生体情報を取得する取得部と、
前記生体情報に基づいて前記患者の生体の状態について良否を判定する基準として、経時的に変化する閾値を記憶する記憶部と、
前記取得部によって取得された前記生体情報を、取得時の時間に基づく前記閾値と比較して、前記患者の生体の異常を判定する判定部と、
を有する生体情報モニタリング装置。
【請求項2】
任意の時間と当該任意の時間における前記閾値との組について、複数組の入力を受け付ける受付部と、
入力された複数組に基づいて、前記閾値の経時的な変化を設定する設定部と、
をさらに有する請求項1に記載の生体情報モニタリング装置。
【請求項3】
前記判定部は、取得した前記生体情報が前記閾値に達したかを判定し、
前記判定部により前記生体情報が前記閾値に達したと判定される場合、警報を発する警報部をさらに有する請求項1または請求項2に記載の生体情報モニタリング装置。
【請求項4】
前記記憶部は、経時的に変化する前記閾値を複数記憶し、
前記判定部は、何れの前記閾値に達したかによって、異常の度合を判定する請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体情報モニタリング装置。
【請求項5】
前記記憶部は、経時的に変化しない閾値をさらに記憶する請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体情報モニタリング装置。
【請求項6】
ユーザによる指示、外部機器による別の生体情報の検出結果、または前記時間の計時の開始に従って、前記判定部は、前記異常の判定を開始する請求項1〜5のいずれか一項に記載の生体情報モニタリング装置。
【請求項7】
取得された前記生体情報の経時的な変化のパターンをモニタリングするモニタリング部をさらに有し、
前記記憶部は、前記生体情報の経時的な変化の基準パターンを予め記憶しており、
前記判定部は、前記モニタリング部によりモニタリングされた前記生体情報の経時的な変化のパターンを、前記記憶部に記憶されている基準パターンと照合し、一致する場合に、前記異常の判定を開始する請求項1〜5のいずれか一項に記載の生体情報モニタリング装置。
【請求項8】
前記生体情報は、動脈血酸素飽和度についての情報である請求項1〜7のいずれか一項に記載の生体情報モニタリング装置。
【請求項9】
前記警報部は、異なる複数の警報を発することができ、
前記警報部は、前記判定部によって判定された異なる複数の異常の度合に対応する前記警報を発する請求項3〜8のいずれか一項に記載の生体情報モニタリング装置。
【請求項10】
表示部をさらに有し、
少なくとも一つの前記経時的に変化する閾値と、前記異常の判定中に取得された生体情報の経時的な変化のパターンとを前記表示部に表示させる請求項6〜9のいずれか一項に記載の生体情報モニタリング装置。
【請求項11】
前記閾値は、前記時間に対して段階的に変化する請求項1〜10のいずれか一項に記載の生体情報モニタリング装置。
【請求項12】
前記閾値は、さらにユーザ入力に基づいて段階的に順次切り替わる請求項11に記載の生体情報モニタリング装置。
【請求項13】
前記閾値は、ユーザ入力に基づいて段階的に順次切り替わる請求項1〜10のいずれか一項に記載の生体情報モニタリング装置。
【請求項14】
前記警報部は、前記段階的に変化する閾値の段階毎に、異なる警報を発する請求項11〜13のいずれか一項に記載の生体情報モニタリング装置。
【請求項15】
センサにより患者の生体情報を取得して、閾値と比較する生体情報モニタリング装置により実行され、
患者の生体情報を取得するステップと、
前記生体情報に基づいて前記患者の生体の状態について良否を判定する基準として予め記憶された、経時的に変化する閾値のうち、取得時の時間に基づく当該閾値と、前記取得された前記生体情報とを比較して、前記患者の生体の異常を判定するステップと、
を有する生体情報モニタリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−217724(P2012−217724A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88571(P2011−88571)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】