説明

生体情報処理装置、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラム

【課題】 認証の信頼度を向上させることができる、生体情報処理装置、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラムを提供する。
【解決手段】 生体情報処理装置は、複数の異なる生体情報を取得する生体センサと、生体センサが取得する複数の異なる生体情報のそれぞれについて、認証用の認証特徴を抽出する認証特徴抽出部と、複数の異なる生体情報のそれぞれについて、認証特徴と関連する補助特徴を抽出する補助特徴抽出部と、補助特徴抽出部によって抽出された複数の補助特徴を反映させた結合特徴を抽出する結合特徴抽出部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報処理装置、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体情報を用いて個人認証を行うバイオメトリック認証において、個人の認証に失敗する確率(本人拒否率)および他人を誤って本人と認証してしまう確率(他人受入率)を減少させるという課題がある。この課題を解決する手段の一つとして、複数の部位から取得される複数種類の生体情報を用いて認証を行う「マルチバイオメトリック認証」が挙げられる。
【0003】
マルチバイオメトリック認証に関して、特許文献1は、指紋および掌紋を用いたマルチバイオメトリック認証装置を開示している。また、特許文献2は、複数のセンサを利用するマルチバイオメトリック認証装置を開示している。また、特許文献3は、2指以上の位置関係を利用する技術を開示している。また、特許文献4は、指紋データを所定の時間間隔を空けて複数取り込む技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−217984号公報
【特許文献2】特開2006−277341号公報
【特許文献3】国際公開第2005/069212号
【特許文献4】特開2001−167280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜4の技術では、認証の信頼度の向上には限界がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、認証の信頼度を向上させることができる、生体情報処理装置、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、明細書開示の生体情報処理装置は、複数の異なる生体情報を取得する生体センサと、前記生体センサが取得する複数の異なる生体情報のそれぞれについて、認証用の認証特徴を抽出する認証特徴抽出部と、前記複数の異なる生体情報のそれぞれについて、前記認証特徴と関連する補助特徴を抽出する補助特徴抽出部と、前記補助特徴抽出部によって抽出された複数の補助特徴を反映させた結合特徴を抽出する結合特徴抽出部と、を備えるものである。
【0008】
上記課題を解決するために、明細書開示の生体情報処理方法は、生体センサが取得する複数の異なる生体情報のそれぞれについて、認証用の認証特徴を抽出し、前記複数の異なる生体情報のそれぞれについて、前記認証特徴と関連する補助特徴を抽出し、抽出された複数の補助特徴を反映させた結合特徴を抽出するものである。
【0009】
上記課題を解決するために、明細書開示の生体情報処理プログラムは、コンピュータに、生体センサが取得する複数の異なる生体情報のそれぞれについて、認証用の認証特徴を抽出するステップと、前記複数の異なる生体情報のそれぞれについて、前記認証特徴と関連する補助特徴を抽出するステップと、抽出された複数の補助特徴を反映させた結合特徴を抽出するステップと、を実行させるものである。
【発明の効果】
【0010】
明細書開示の生体情報処理装置、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラムによれば、認証の信頼度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は実施例1に係る生体情報処理装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図であり、(b)は生体センサの模式図である。
【図2】生体情報処理プログラムの実行によって実現される各機能のブロック図である。
【図3】生体データ登録処理の際に実現される各機能のブロック図である。
【図4】生体データ登録処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。
【図5】(a)は指の付け根部分を説明するための図であり、(b)は補助品質判定部が判定に用いるデータの一例を表す。
【図6】データベースに登録された登録データの一例を説明するためのテーブルである。
【図7】手のひら静脈画像から抽出される補助特徴の例を説明するための図である。
【図8】(a)は指紋画像から抽出される補助特徴の例を説明するための図であり、(b)は結合特徴の例を説明するための図である。
【図9】(a)は指紋画像から抽出される補助特徴の他の例を説明するための図であり、(b)は結合特徴の他の例を説明するための図である。
【図10】(a)は指紋画像から抽出される補助特徴の他の例を説明するための図であり、(b)は結合特徴の他の例を説明するための図である。
【図11】(a)は指紋画像から抽出される補助特徴の他の例を説明するための図であり、(b)は結合特徴の他の例を説明するための図である。
【図12】(a)は指紋中心の位置を説明するための図であり、(b)は指の付け根の端点および指の付け根の端点の中心点を説明するための図である。
【図13】指紋中心と指の付け根の端点の中心点とから求まる指の長さを結合特徴として用いる例を説明するための図である。
【図14】(a)は各生体情報から抽出された補助特徴の他の例を説明するためのテーブルであり、(b)は各補助特徴から抽出された結合特徴の一例を説明するためのテーブルである。
【図15】生体認証処理実行の際に実現される各機能のブロック図である。
【図16】生体認証処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。
【図17】入力データの一例を説明するための図である。
【図18】実施例2に係る生体情報処理プログラムの実行によって実現される各機能のブロック図である。
【図19】生体認証処理実行の際に実現される各機能のブロック図である。
【図20】生体認証処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。
【図21】照合候補絞り込み部の他の例を説明するためのブロック図である。
【図22】生体データ登録処理の際に実現される各機能のブロック図である。
【図23】生体データ登録処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。
【図24】生体認証処理実行の際に実現される各機能のブロック図である。
【図25】生体認証処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。
【図26】各生体情報の取得タイミングを説明するための図である。
【図27】実施例4に係る生体情報処理プログラムの実行によって実現される各機能のブロック図である。
【図28】生体データ登録処理の際に実現される各機能のブロック図である。
【図29】生体データ登録処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。
【図30】生体データ登録処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。
【図31】生体データ登録処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。
【図32】生体認証処理の際に実現される各機能のブロック図である。
【図33】生体認証処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。
【図34】生体認証処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。
【図35】生体認証処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。
【図36】指紋センサおよび静脈センサの固定について説明するための図である。
【図37】(a)は実施例6に係る生体情報処理装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図であり、(b)は実施例6に係る生体情報処理プログラムの実行によって実現される各機能のブロック図である。
【図38】(a)は補助特徴を説明するためのテーブルであり、(b)は(a)の各補助特徴から得られた結合特徴である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施例で利用可能な生体情報は、特に限定されるものではないが、指紋画像、掌紋画像、静脈画像などである。また、複数の指から取得された複数の指紋画像も利用可能である。また、以下の実施例で利用される認証特徴、補助特徴、結合特徴は、次のように定義される。
【0013】
認証特徴は、各々の生体情報から独自に抽出されて、個人認証に係る照合処理に利用されるデータである。例えば、認証特徴は、指紋画像のパターン、指紋のマニューシャの位置関係、手のひら静脈画像のパターンなどである。あるいは、認証特徴は、一部に照合候補の絞り込みに利用する特徴を含んでいてもよい。例えば、該認証特徴は、指紋画像のパターンと共に、指紋の紋様も備え、紋様分類による照合候補の絞り込みに利用されてもよい。
【0014】
補助特徴は、各々の生体情報から認証特徴と別に抽出され、認証特徴と関連し、結合特徴の抽出処理に利用されるデータである。補助特徴は、生体の位置、指の伸びる方向、指紋の隆線パターン、指紋中心の位置、指の付け根の位置などである。補助特徴は、抽出可能となる頻度を高めるため、認証特徴よりも本人と他人との識別精度が低くてもよい。補助特徴は、各々の生体情報から抽出された複数の補助特徴を組み合わせることによって新たな特徴の抽出が可能となるという特長を持つ。
【0015】
結合特徴は、同一ユーザの複数の補助特徴を組み合わせて反映させたデータであり、補助認証に係る照合処理に利用されるデータである。補助認証は、個人認証と同様に個人を特定する認証であってもよく、照合候補を絞り込むための認証であってもよい。
【0016】
以下、図面を参照しつつ、実施例について説明する。
【実施例1】
【0017】
図1(a)は、実施例1に係る生体情報処理装置100のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。図1(b)は、後述する生体センサ105の模式図である。図1(a)を参照して、生体情報処理装置100は、CPU101、RAM102、記憶装置103、表示装置104、生体センサ105、通信部106などを備える。これらの各機器は、バスなどによって接続されている。また、生体情報処理装置100は、ネットワークを介してサーバ200に接続されている。
【0018】
CPU(Central Processing Unit)101は、中央演算処理装置である。CPU101は、1以上のコアを含む。RAM(Random Access Memory)102は、CPU101が実行するプログラム、CPU101が処理するデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。
【0019】
記憶装置103は、不揮発性記憶装置である。記憶装置103として、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、ハードディスクドライブに駆動されるハードディスクなどを用いることができる。本実施例に係る生体情報処理プログラムは、記憶装置103に記憶されている。表示装置104は、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスパネル等であり、生体情報処理の結果などを表示する。
【0020】
生体センサ105は、複数の異なる生体を取得するセンサである。ここで、「複数の異なる生体」とは、指紋と静脈、顔と指紋のように異なる種類の生体のことである。したがって、人差し指の指紋と中指の指紋のように同じ種類の生体の組み合わせは含まない。本実施形態においては、生体センサ105は、一例として、指紋画像および手のひら静脈画像を取得する。図1(b)を参照して、生体センサ105は、指紋センサ107および静脈センサ108を備える。指紋センサ107は、光学式センサ、静電容量センサなどであり、1本以上の指の指紋画像を取得する。また、指紋センサ107として、接触型と非接触型のどちらも使用可能である。本実施例においては、指紋センサ107は、人差し指、中指、および薬指の指紋画像を取得可能な大きさを有する。静脈センサ108は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラなどである。静脈センサ108には、近赤外線を含む光を照射する照明などが設けられていてもよい。
【0021】
通信部106は、例えば、LAN(Local Area Network)などへの接続インタフェースである。生体情報処理装置100は、通信部106を介して、ネットワーク上のサーバ200と通信し、情報の受け渡しをする。サーバ200は、CPU201、RAM202、記憶装置203、通信部204などを備える。記憶装置203は、照合プログラムを記憶している。
【0022】
生体情報処理装置100の記憶装置103に記憶されている生体情報処理プログラムは、実行可能にRAM102に展開される。CPU101は、RAM102に展開された生体情報処理プログラムを実行する。それにより、生体情報処理装置100による各処理が実行される。生体情報処理プログラムが実行されることによって、生体データ登録処理、生体認証処理などが実行される。生体データ登録処理は、未登録の新規ユーザの認証特徴を、個人認証に係る照合処理用の認証特徴としてデータベースに登録し、当該ユーザの結合特徴を、補助認証に係る照合処理用の結合特徴としてデータベースに登録する処理である。生体認証処理は、生体センサ105によって取得された認証特徴とデータベースの認証特徴との照合に基づく個人認証によって被認証ユーザを特定する処理である。本実施例においては、生体認証処理の際に、生体センサ105によって取得された生体情報から抽出された結合特徴とデータベースの結合特徴との照合に基づく補助認証を行うことによって、被認証ユーザの特定精度を向上させる。
【0023】
図2は、生体情報処理プログラムの実行によって実現される各機能のブロック図である。生体情報処理プログラムの実行によって、認証品質判定部10、補助品質判定部20、認証特徴抽出部30、補助特徴抽出部40、結合特徴抽出部50、登録部60、および認証結果出力部70が実現される。なお、記憶装置203に記憶されている照合プログラムの実行によって、照合部210が実現される。
【0024】
(生体データ登録処理)
図3は、生体データ登録処理の際に実現される各機能のブロック図である。図4は、生体データ登録処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。以下、図3および図4を参照しつつ、生体データ登録処理の一例について説明する。
【0025】
生体センサ105は、新規ユーザの複数の異なる生体情報を取得する(ステップS1)。具体的には、指紋センサ107が指紋画像を取得し、静脈センサ108が手のひら静脈画像を取得する。認証品質判定部10は、各生体情報から認証特徴を抽出可能であるか否かを判定する(ステップS2)。具体的には、認証品質判定部10は、ステップS1で得られた指紋画像および手のひら静脈画像から認証特徴が抽出可能であるか否かを判定する。例えば、ステップS1で取得した生体画像の面積が所定値Th以上である場合などに、認証特徴が抽出可能であると判定してもよい。あるいは、指紋画像が、谷線と隆線との割合が一定の範囲内で湿潤や乾燥の過度な影響を受けておらず、明瞭である場合に、指紋の認証特徴が抽出可能であると判定してもよい。また、手のひらが水平である場合に、手のひら静脈の認証特徴が抽出可能であると判定してもよい。
【0026】
ステップS2で「Yes」と判定された場合、補助品質判定部20は、補助特徴を抽出可能な生体情報の組があるか否かを判定する(ステップS3)。具体的には、補助品質判定部20は、指紋画像から補助特徴を抽出可能でありかつ手のひら静脈画像から補助特徴を抽出可能である場合に、補助特徴を抽出可能な生体情報の組があると判定する。
【0027】
例えば、補助品質判定部20は、図5(a)を参照して、手のひら静脈画像中に指の付け根部分が存在する場合に、補助特徴を抽出可能であると判定してもよい。ステップS3の判定基準は、ステップS2の判定基準よりも低いことが好ましい。あるいは、手のひら静脈画像中に指の方向が判別可能となる所定の長さ以上の指の一部が存在する場合に、補助特徴を抽出可能であると判定してもよい。さらに、生体画像の面積が前記Thよりも低い所定値Th’以上である場合に、補助特徴を抽出可能であると判定してもよい。補助認証における認証精度は個人認証における認証精度よりも低くてもよいからである。なお、ステップS3において、補助品質判定部20は、補助特徴から結合特徴を抽出可能であるか否かを判定してもよい。例えば、補助品質判定部20は、複数の生体情報が取得された時間差が所定値以下であれば、当該複数の生体情報から結合特徴を抽出可能であると判定してもよい。図5(b)は、補助品質判定部20が判定に用いるデータの一例を表す。図5(b)の各データは、生体情報処理装置100の記憶装置103またはRAM102に一時的に記憶される。
【0028】
ステップS3で「Yes」と判定された場合、認証特徴抽出部30は、各生体情報から認証特徴を抽出する(ステップS4)。具体的には、認証特徴抽出部30は、指紋画像および手のひら静脈画像から認証特徴を抽出する。次に、補助特徴抽出部40は、各生体情報から補助特徴を抽出する(ステップS5)。具体的には、補助特徴抽出部40は、指紋画像および手のひら静脈画像から補助特徴を抽出する。
【0029】
次に、結合特徴抽出部50は、各補助特徴の組み合わせから、結合特徴を抽出する(ステップS6)。次に、登録部60は、新規ユーザのIDなどと関連付けて、各生体情報から得られた認証特徴、および結合特徴を登録データとしてデータベースに登録する(ステップS7)。図2の例では、データベースは、サーバ200の記憶装置203に記憶されている。ステップS7の実行後、フローチャートの実行が終了する。
【0030】
図6は、データベースに登録された登録データの一例を説明するためのテーブルである。図6の例では、各ユーザに対して、第1の指〜第3の指の認証特徴と手のひら静脈の認証特徴とが認証特徴として記録されている。また、手のひら静脈の補助特徴と第1の指〜第3の指の各補助特徴とから抽出された結合特徴が記録されている。
【0031】
なお、図6は、被認証ユーザと複数の登録ユーザとの照合を前提とした1:N認証に用いるテーブルである。被認証ユーザと1人の登録ユーザとの照合を前提とした1:1認証においては、上記データベースは、複数のユーザではなく1人のユーザの認証特徴および結合特徴を記録していてもよい。
【0032】
なお、ステップS2またはステップS3で「No」と判定された場合、表示装置104は、生体情報の再入力などの情報を表示する(ステップS8)。ステップS8の実行後、フローチャートの実行が終了する。
【0033】
図7は、手のひら静脈画像から抽出される補助特徴の例を説明するための図である。図7を参照して、指が伸びている方向を補助特徴として抽出してもよい。指が伸びている方向は、手のひら静脈画像において指の付け根の片方の輪郭が指先を指す方向としてもよい。または、指の付け根の両方の輪郭の中間線などを指の伸びている方向としてもよい。
【0034】
図8(a)は、指紋画像から抽出される補助特徴の例を説明するための図である。図8(a)を参照して、指紋の隆線パターンを補助特徴として抽出してもよい。図8(b)は、指紋画像から抽出された補助特徴と手のひら画像から抽出された補助特徴とを組み合わせて抽出された結合特徴の例を説明するための図である。図8(b)を参照して、指紋画像から抽出された隆線パターンを、指が伸びている方向がなす角度だけ回転させたものを結合特徴として抽出してもよい。例えば、指が伸びている方向が特定方向から角度αだけ傾いている場合、隆線パターンを当該特定方向にαだけ回転させ、回転後の隆線パターンを結合特徴として抽出してもよい。あらかじめ指紋画像を回転させておくことによって、照合時の角度調整を省略することができる。
【0035】
図9(a)は、各生体情報から抽出された補助特徴の一例を説明するためのテーブルである。図9(a)の例では、第1の指〜第3の指の隆線パターンが、指紋画像から抽出された補助特徴として記録されている。また、第1の指〜第3の指が伸びている方向(角度θ)が、手のひら画像から抽出された補助特徴として記録されている。図9(a)の各データは、結合特徴が抽出されるまで、生体情報処理装置100の記憶装置103またはRAM102に一時的に記憶される。
【0036】
図9(b)は、各補助特徴から抽出された結合特徴の一例を説明するためのテーブルである。図9(b)の例では、第1の指〜第3の指の回転角度を調整した後の指紋隆線パターンが、結合特徴として記録されている。本実施例においては、図9(b)の各データは、サーバ200の記憶装置203のデータベース内に記録される。
【0037】
なお、指紋画像から抽出される補助特徴として、指紋が存在する範囲を用いてもよい。また、手のひら画像から抽出される補助特徴として、左右の手の相違を考慮した指の付け根の位置および指が伸びている方向を用いてもよい。これらの補助特徴から抽出される結合特徴として、指紋画像に含まれる指の種類を用いてもよい。指の種類として、左右の手の10本の指を用いることができる。
【0038】
図10(a)は、各生体情報から抽出された補助特徴の他の例を説明するためのテーブルである。図10(a)の例では、第1の指〜第3の指の指紋が存在する範囲が、指紋画像から抽出された補助特徴として記録されている。また、第1の指〜第3の指の付け根の位置および第1の指〜第3の指が伸びている方向(角度θ)が、手のひら画像から抽出された補助特徴として記録されている。図10(a)の各データは、結合特徴が抽出されるまで、生体情報処理装置100の記憶装置103またはRAM102に一時的に記憶される。
【0039】
図10(b)は、各補助特徴から抽出された結合特徴の一例を説明するためのテーブルである。図10(b)の例では、第1の指〜第3の指の種類が、結合特徴として記録されている。本実施例においては、図10(b)の各データは、サーバ200の記憶装置203のデータベース内に記録される。
【0040】
また、指紋画像から抽出される補助特徴として、指紋画像全体を用いてもよい。また、手のひら画像から抽出される補助特徴として、左右の手の相違を考慮した指の付け根の位置および指が伸びている方向を用いてもよい。これらの補助特徴から抽出される結合特徴として、指紋画像全体の中から各指の指紋が存在すると推定される範囲を用いてもよい。なお、この場合、認証特徴抽出部30は、結合特徴から切り出した各指紋画像を認証特徴として抽出してもよい。結合特徴を用いて指紋画像の品質判定と切り出し範囲を制限することで、認証品質判定部10および認証特徴抽出部30の処理の高速化が可能となる。
【0041】
図11(a)は、各生体情報から抽出された補助特徴の他の例を説明するためのテーブルである。図11(a)の例では、指紋画像全体が、指紋画像から抽出された補助特徴として記録されている。また、第1の指〜第3の指の付け根の位置および第1の指〜第3の指が伸びている方向(角度θ)が、手のひら画像から抽出された補助特徴として記録されている。図11(a)の各データは、結合特徴が抽出されるまで、生体情報処理装置100の記憶装置103またはRAM102に一時的に記憶される。
【0042】
図11(b)は、各補助特徴から抽出された結合特徴の一例を説明するためのテーブルである。図11(b)の例では、第1の指〜第3の指の指紋が存在すると推定される範囲が、結合特徴として記録されている。本実施例においては、図11(b)の各データは、サーバ200の記憶装置203のデータベース内に記録される。
【0043】
また、指紋画像から抽出される補助特徴として、指紋の特定点を抽出してもよい。たとえば、指紋中心の位置または指紋画像の最も指先にある点を抽出してもよい。図12(a)は、指紋中心の位置を説明するための図である。図12(a)を参照して、指紋中心は、指紋に含まれる半円状の流れを示す点のことで、コアと呼ばれることもある。渦を巻いた指紋においては、渦の中心が指紋中心である。指紋中心を算出する方法として、例えば、特許第2790689号の技術内容を用いてもよい。
【0044】
また、手のひら画像から抽出される補助特徴として、指の付け根の特定点を抽出してもよい。たとえば、指の付け根の端点、または、1本の指をはさむ2箇所の付け根の端点の中心点を抽出してもよい。指の付け根の端点は、例えば、指の付け根の輪郭の曲率を求め、当該曲率が最大となる点である。または、指の付け根の端点は、中指の指先の方向に座標軸をとり、指の付け根の輪郭で当該座標値が極小となる点としてもよい。図12(b)は、指の付け根の端点および指の付け根の端点の中心点を説明するための図である。これらの補助特徴から抽出される結合特徴として、指紋の特定の点と指の付け根の特定の点との距離を抽出してもよい。図13は、指紋中心と指の付け根の端点の中心点とから求まる指の長さを結合特徴として用いる例を説明するための図である。
【0045】
図14(a)は、各生体情報から抽出された補助特徴の他の例を説明するためのテーブルである。図14(a)の例では、第1の指〜第3の指の指紋中心が、指紋画像から抽出された補助特徴として記録されている。また、第1の指〜第3の指の付け根の中心点が、手のひら画像から抽出された補助特徴として記録されている。図14(a)の各データは、結合特徴が抽出されるまで、生体情報処理装置100の記憶装置103またはRAM102に一時的に記憶される。
【0046】
図14(b)は、各補助特徴から抽出された結合特徴の一例を説明するためのテーブルである。図14(b)の例では、指紋中心と指の付け根の中心点とから求まる第1の指〜第3の指の長さが、結合特徴として記録されている。本実施例においては、図14(b)の各データは、サーバ200の記憶装置203のデータベース内に記録される。
【0047】
(生体認証処理)
被認証ユーザが生体情報処理装置100を備える端末などにログインしようとする際に、生体情報処理装置100は、生体認証処理を実行する。図15は、生体認証処理実行の際に実現される各機能のブロック図である。図16は、生体認証処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。以下、図15および図16を参照しつつ、生体認証処理の一例について説明する。なお、生体認証処理の際に、生体センサ105を介して取得された同一ユーザの複数の生体情報から抽出された認証特徴および結合特徴を入力データと称する。図17は、入力データの一例を説明するための図である。
【0048】
生体センサ105は、被認証ユーザの複数の異なる生体情報を取得する(ステップS11)。具体的には、生体センサ105は、指紋センサ107から指紋画像を取得し、静脈センサ108から手のひら静脈画像を取得する。認証品質判定部10は、各生体情報から認証特徴を抽出可能であるか否かを判定する(ステップS12)。具体的には、認証品質判定部10は、ステップS11で得られた指紋画像および手のひら静脈画像から認証特徴が抽出可能であるか否かを判定する。例えば、ステップS11で取得した生体情報の面積が所定値以上である場合などに、認証特徴が抽出可能であると判定してもよい。
【0049】
ステップS12で「Yes」と判定された場合、認証特徴抽出部30は、各生体情報から認証特徴を抽出する(ステップS13)。具体的には、認証特徴抽出部30は、指紋画像および手のひら静脈画像から認証特徴を抽出する。次に、補助品質判定部20は、補助特徴を抽出可能な生体情報の組があるか否かを判定する(ステップS14)。具体的には、補助品質判定部20は、指紋画像から補助特徴を抽出可能でありかつ手のひら静脈画像から補助特徴を抽出可能である場合に、補助特徴を抽出可能な生体情報の組があると判定する。なお、ステップS14において、補助品質判定部20は、補助特徴から結合特徴を抽出可能であるか否かを併せて判定してもよい。
【0050】
ステップS14で「Yes」と判定された場合、補助特徴抽出部40は、各生体情報から補助特徴を抽出する(ステップS15)。具体的には、補助特徴抽出部40は、指紋画像および手のひら静脈画像から補助特徴を抽出する。次に、結合特徴抽出部50は、各補助特徴を組み合わせることによって、結合特徴を抽出する(ステップS16)。次に、照合部210は、認証部として機能する。具体的には、照合部210は、ステップS16で抽出した結合特徴と登録データの結合特徴とを照合する。また、照合部210は、ステップS13で抽出した認証特徴と登録データの認証特徴とを照合し、照合スコアを算出する(ステップS17)。図16のフローチャートでは、結合特徴を用いた補助認証と認証特徴を用いた個人認証とが同時に行われる。
【0051】
ステップS17の照合スコアは、入力データの認証特徴と登録データの認証特徴との一致度(類似度)および入力データの結合特徴と登録データの結合特徴との一致度(類似度)に基づいて算出される。例えば、照合スコアは、認証特徴の一致度と結合特徴の一致度との合計値である。認証特徴の一致度は、例えば、指紋画像のパターン、指紋のマニューシャの位置関係、手のひら静脈画像のパターンなどの一致度である。結合特徴の一致度は、例えば、指紋の隆線パターン、指の種類、指の長さなどの一致度である。
【0052】
次に、照合部210は、ステップS17の照合により得られる照合スコアの一番高い登録データについて、当該照合スコアが所定のしきい値以上であるか否かを判定する(ステップS18)。ステップS18で「Yes」と判定された場合、照合部210は、被認証ユーザが、ステップS17の照合により得られる照合スコアの一番高い登録データのユーザであると特定し、当該特定結果を認証結果出力部70に送信する。それにより、認証結果出力部70は、認証成功の結果を出力する(ステップS19)。なお、ステップS12およびステップS18において「No」と判定された場合、認証結果出力部70は、認証失敗の結果を出力する(S20)。ステップS19またはステップS20の実行後、フローチャートの実行が終了する。
【0053】
本実施例に係る生体認証処理によれば、異なる複数の生体情報から抽出された補助特徴から結合特徴を抽出している。異なる複数の生体情報には、それぞれユーザに固有の特徴が含まれる。したがって、異なる複数の生体情報から抽出された結合特徴を用いる場合には、同じ生体情報から抽出される結合特徴を用いる場合と比較して、認証の信頼度が向上する。さらに、認証特徴および結合特徴の両方を用いて個人認証を行うことによって、認証の信頼度を向上させることができる。
【0054】
なお、複数の同じ生体情報から結合特徴を抽出するよりも、複数の異なる生体情報から結合特徴を抽出する方が困難となりやすい。例えば、指紋の取得に接触型の指紋センサを使用し、手のひら静脈の取得に非接触型の静脈センサを使用する場合、認証に利用するための良好な生体情報を得るタイミングは、指紋と手のひら静脈とで一致しにくい。
1)指紋が良好で、手のひら静脈が良好ではない場合
指先付近に力を加えると指紋は良好となりやすい。しかしながら、このとき、手のひらが下に押し込まれる、上に立ちあがるなどの要因により、手のひらが水平になり難くなる。その結果、手のひら静脈が良好になり難くなる。
2)手のひら静脈が良好で、指紋が良好ではない場合
リラックスして手のひらが水平に保たれた状態であると、採取された手のひら静脈情報は良好となりやすい。しかしならが、このとき、指先への力が弱くなる。その結果、良好な指紋が採取され難くなる。
上記のような場合であっても、本実施例では、認証品質判定処理よりも、判定基準が緩い補助品質判定処理を持つことで、結合特徴が抽出できる指紋画像と手のひら静脈画像とを選定することができ、結合特徴を安定して抽出することができる。
【0055】
なお、図16のフローチャートでは、1:N認証を対象にしているが、1:1認証を対象にしてもよい。この場合、ステップS17で得られる照合スコアがしきい値以上であれば、被認証ユーザが登録データのユーザであると判定することができる。
【実施例2】
【0056】
図18は、実施例2に係る生体情報処理プログラムの実行によって実現される各機能のブロック図である。生体情報処理プログラムの実行によって、認証品質判定部10、補助品質判定部20、認証特徴抽出部30、補助特徴抽出部40、結合特徴抽出部50、登録部60、および認証結果出力部70が実現される。なお、記憶装置203に記憶されている照合プログラムの実行によって、照合部210および照合候補絞り込み部220が実現される。
【0057】
生体データ登録処理は、実施例1と同様である。生体認証処理においては、照合候補絞り込み部220が照合候補のユーザを絞り込む。以下、本実施例に係る生体認証処理について説明する。図19は、生体認証処理実行の際に実現される各機能のブロック図である。図20は、生体認証処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。以下、図19および図20を参照しつつ、生体認証処理の一例について説明する。図20のステップS21〜S26は、図16のステップS11〜ステップS16と同様である。ステップS26の実行後、照合候補絞り込み部220は、照合候補のユーザを絞り込む(ステップS27)。
【0058】
照合候補絞り込み部220は、登録データの結合特徴と入力データの結合特徴との一致度がしきい値未満となるユーザを照合候補から除外する。例えば、結合特徴が指紋の隆線パターンである場合、照合候補絞り込み部220は、登録データの隆線パターンと入力データの隆線パターンとの一致度がしきい値未満となるユーザを照合候補から除外する。結合特徴が指の種類である場合、照合候補絞り込み部220は、登録データの指の種類と入力データの指の種類とが一致しないユーザを照合候補から除外する。あるいは、複数の指から複数の指紋画像を取得する場合は、所定の指の数だけ指の種類が一致しているユーザを照合候補として選択してもよい。結合特徴が指の長さである場合、照合候補絞り込み部220は、登録データの指の長さと入力データの指の長さとの比率、差分などから求めた一致度がしきい値未満となるユーザを照合候補から除外する。あるいは、照合候補絞り込み部220は、登録データの結合特徴と入力データの結合特徴との一致度が低い順に登録データを並べた際に、上位の所定人数のユーザを照合候補として選択してもよい。
【0059】
図21は、照合候補絞り込み部220の他の例を説明するためのブロック図である。図21を参照して、照合候補絞り込み部220は、複数の照合候補絞り込み部として機能してもよい。例えば、認証特徴および結合特徴は、必ずしも同時に抽出されるわけではない。各抽出時間に差が生じる可能性がある。そこで、照合候補絞り込み部220は、先に抽出された特徴を用いて照合候補を絞り込み、後に抽出された特徴を用いてさらに照合候補を絞り込んでもよい。このように、複数の照合候補絞り込み部が、抽出された特徴を用いて順次、照合候補を絞り込んでもよい。
【0060】
再度、図20を参照して、ステップS28〜ステップS31は、図16のステップS17〜S20と同様である。ステップS30またはステップS31の実行後、フローチャートの実行が終了する。
【0061】
本実施例に係る生体認証処理によれば、認証特徴および結合特徴の両方を用いて個人認証を行うことができる。それにより、認証の信頼度を向上させることができる。また、照合候補を絞り込むことができる。それにより、認証に要する時間を短縮化することができるとともに、認証精度が向上する。
【実施例3】
【0062】
実施例3においては、結合特徴を用いて認証特徴が抽出可能であるか否かを判定する例について説明する。
【0063】
(生体データ登録処理)
図22は、生体データ登録処理の際に実現される各機能のブロック図である。図23は、生体データ登録処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。以下、図22および図23を参照しつつ、生体データ登録処理の一例について説明する。
【0064】
生体センサ105は、新規ユーザの複数の異なる生体情報を取得する(ステップS41)。具体的には、生体センサ105は、指紋センサ107から指紋画像を取得し、静脈センサ108から手のひら静脈画像を取得する。補助品質判定部20は、補助特徴および結合特徴を抽出可能な生体情報の組があるか否かを判定する(ステップS42)。
【0065】
ステップS42で「Yes」と判定された場合、補助特徴抽出部40は、各生体情報から補助特徴を抽出する(ステップS43)。具体的には、補助特徴抽出部40は、指紋画像および手のひら静脈画像から補助特徴を抽出する。次に、結合特徴抽出部50は、各補助特徴を組み合わせることによって、結合特徴を抽出する(ステップS44)。
【0066】
次に、認証品質判定部10は、ステップS44で抽出された結合特徴を用いて、認証特徴が抽出可能であるか否かを判定する(ステップS45)。例えば、補助特徴として指紋画像全体を用い、結合特徴として各指の指紋が存在すると推定される範囲を抽出した場合、認証品質判定部10は、当該推定範囲の指紋画像の品質判定を行ってもよい。
【0067】
ステップS45において「Yes」と判定された場合、認証特徴抽出部30は、各生体情報から認証特徴を抽出する(ステップS46)。例えば、認証特徴抽出部30は、上記推定範囲の中で指紋画像を切り出すことによって、認証特徴を抽出してもよい。次に、登録部60は、新規ユーザのIDなどと関連付けて、各生体情報から得られた認証特徴、および結合特徴を登録データとしてデータベースに登録する(ステップS47)。その後、フローチャートの実行が終了する。
【0068】
なお、ステップS42またはステップS45で「No」と判定された場合、表示装置104は、生体情報の再入力などの情報を表示する(ステップS48)。ステップS48の実行後、フローチャートの実行が終了する。
【0069】
(生体認証処理)
図24は、生体認証処理実行の際に実現される各機能のブロック図である。図25は、生体認証処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。図25を参照して、ステップS51〜S56は、図23のステップS41〜S46と同様である。ステップS57〜ステップS61は、図20のステップS27〜ステップS31と同様である。ステップS60またはステップS61の実行後、フローチャートの実行が終了する。
【0070】
本実施例によれば、結合特徴を認証品質判定部10において利用することができる。それにより、品質判定の精度が向上する。
【実施例4】
【0071】
生体センサは、所定の時間間隔で生体情報を取得する場合がある。この場合、複数の生体情報を取得する際、各生体情報を取得するタイミングが異なる場合がある。例えば、図26を参照して、手のひら画像V1が取得された後、所定の時間経過後に手のひら画像V2が取得され、さらに所定の時間経過後に手のひら画像V3が取得されたものとする。指紋画像F1は、手のひら画像V1が取得された時刻と手のひら画像V2が取得された時刻との間で取得されたものとする。また、指紋画像F2は、手のひら画像V2が取得された時刻と手のひら画像V3が取得された時刻との間で取得されたものとする。手のひら画像V2が取得されてから次の手のひら画像V3が取得されるまでの間に指の位置が変化する場合がある。この場合、指紋画像F1と手のひら画像V2とから抽出された結合特徴と、指紋画像F2と手のひら画像V2とから抽出された結合特徴とが大きく異なる場合が生じうる。
【0072】
例えば、指紋画像F1と指紋画像F2との類似度が高い場合には、指が移動していないと判断することができる。このような場合に、手のひら画像V2と、手のひら画像V2の取得時刻と近い取得時刻の指紋画像F1とから結合特徴を抽出することによって、結合特徴の精度を向上させることができる。本実施例においては、生体情報を取得するタイミングが異なる場合において結合特徴の精度を向上させる例について説明する。
【0073】
図27は、実施例4に係る生体情報処理プログラムの実行によって実現される各機能のブロック図である。図27を参照して、生体情報処理プログラムの実行によって、認証品質判定部10、補助品質判定部20、認証特徴抽出部30、補助特徴抽出部40、結合特徴抽出部50、登録部60、認証結果出力部70、および生体情報選択部80が実現される。なお、記憶装置203に記憶されている照合プログラムが実行されることによって、照合部210および照合候補絞り込み部220が実現される。
【0074】
(生体データ登録処理)
図28は、生体データ登録処理の際に実現される各機能のブロック図である。図29〜図31は、生体データ登録処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。以下、図28〜図31を参照しつつ、生体データ登録処理の一例について説明する。
【0075】
生体センサ105は、新規ユーザの複数の異なる生体情報を所定の時間間隔で順次取得する(ステップS71)。具体的には、生体センサ105は、所定の時間間隔で指紋センサ107から指紋画像を順次取得し、所定の時間間隔で静脈センサ108から手のひら静脈画像を順次取得する。認証品質判定部10は、各生体情報から認証特徴を抽出可能であるか否かを判定する(ステップS72)。具体的には、認証品質判定部10は、ステップS71で得られた指紋画像および手のひら静脈画像から認証特徴が抽出可能であるか否かを判定する。例えば、ステップS71で取得した生体情報の面積が所定値以上である場合などに、認証特徴が抽出可能であると判定してもよい。
【0076】
ステップS72で「Yes」と判定された場合、生体情報選択部80は、時系列に連続して取得された一方の生体情報(例えば、指紋の生体情報)の組の類似度を算出する(ステップS73)。次に、生体情報選択部80は、類似度が所定数以上の生体情報の組があるか否かを判定する(ステップS74)。ステップS74において「Yes」と判定された場合、生体情報選択部80は、類似度が所定値以上の生体情報の組を、取得間隔が短い順に(F1,F1´)、(F2,F2´)のようにラベリングする(ステップS75)。次に、生体情報選択部80は、変数「i」に「1」を代入する(ステップS76)。
【0077】
次に、生体情報選択部80は、「Fi」の取得と「Fi´」の取得との間に取得された他方の生体情報V1,V2,…(例えば、手のひら静脈の生体情報)があるか否かを判定する(ステップS77)。ステップS77において「No」と判定された場合、生体情報選択部80は、変数「i」に「i+1」を代入する(ステップS78)。次に、生体情報選択部80は、(Fi,Fi´)の組が存在するか否かを判定する(ステップS79)。ステップS79において「Yes」と判定された場合、ステップS77が再度実行される。
【0078】
ステップS77において「Yes」と判定された場合、生体情報選択部80は、「Fi」とV1,V2,…あるいは「Fi´」とV1,V2,…の中で、取得間隔が最短の組を、関連付け可能な生体情報として選択する(ステップS80)。次に、補助品質判定部20は、ステップS80で選択された生体情報の組から、補助特徴および結合特徴が抽出可能であるか否かを判定する(ステップS81)。ステップS81において「Yes」と判定された場合、ステップS82〜S85が実行される。ステップS82〜S85は、図4のステップS4〜S7と同様である。
【0079】
ステップS72,S74,S77,S81において「No」と判定された場合、表示装置104は、生体情報の再入力などの情報を表示する(ステップS86)。ステップS86の実行後、フローチャートの実行が終了する。
【0080】
(生体認証処理)
図32は、生体認証処理の際に実現される各機能のブロック図である。図33〜図35は、生体認証処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。ステップS91〜S104は、図29〜図31のステップS71〜S84と同様である。ステップS105〜S109は、図20のステップS27〜S31と同様である。
【0081】
本実施例によれば、位置ずれが小さい生体から、精度の高い結合特徴を抽出することができる。精度の高い結合特徴を用いることによって、認証精度を向上させることができる。
【実施例5】
【0082】
複数の異なる生体情報を取得する際に、各生体センサの位置関係は固定されていることが好ましい。例えば、図36(a)および図36(b)を参照して、指紋センサ107と静脈センサ108との距離は固定されていることが好ましい。図36(a)および図36(b)の例では、指紋センサ107と静脈センサ108とが距離Dで固定されている。本実施例に係る生体センサ105は、例えば、指の長さを結合特徴として抽出する際に特に有効である。
【実施例6】
【0083】
上記各実施例においては、照合部210、照合候補絞り込み部220およびデータベースがサーバ200内に実現されていたが、1台のコンピュータ内に実現されてもよい。図37(a)は、実施例6に係る生体情報処理装置100aのハードウェア構成を説明するためのブロック図である。本実施例においては、データベースは、記憶装置103内に記憶されている。また、生体情報処理プログラムには、照合プログラムが組み込まれている。図37(b)は、本実施例に係る生体情報処理プログラムの実行によって実現される各機能のブロック図である。図37(b)を参照して、照合部210および照合候補絞り込み部220は、生体情報処理装置100a内に実現される。
【0084】
(他の結合特徴)
結合特徴として、生体センサ105が取得した生体情報が正当なものであるか否かの判定結果を用いてもよい。例えば、手のひら静脈画像から推定される指の形状と、当該指が伸びる方向に位置する指の形状とが一致しない場合には、生体センサ105が取得した生体情報は正当なものではない。このような場合には、認証失敗と判定してもよい。一例として、指紋画像から抽出される補助特徴として、指紋が存在する範囲を用いる。また、手のひら画像から抽出される補助特徴として、左右の手の相違を考慮した指の付け根の位置および指が伸びている方向を用いる。これらの補助特徴から、指の付け根の位置、指が伸びている方向から推定される指紋画像の位置を抽出することができる。この推定される指紋画像の位置と、指紋が存在する範囲との一致度がしきい値以上であれば、生体センサ105が取得した指紋画像が正当なものであると判定できる。この判定結果を、補助特徴から抽出される結合特徴として用いてもよい。なお、上記一致度として、指紋が存在する範囲に対する重複面積の比率などを用いることができる。
【0085】
または、補助特徴の「指が伸びている方向」と、指紋画像から抽出される補助特徴から導かれる「指が伸びている方向」との角度差が所定値以下であれば、生体センサ105が取得した指紋画像が正当なものであると判定できる。この判定結果を、補助特徴から抽出される結合特徴として用いてもよい。図38(a)は、この場合の補助特徴を説明するためのテーブルである。図38(b)は、図38(a)の各補助特徴から得られた結合特徴である。
【0086】
あるいは、指紋画像と静脈画像とがそれぞれ取得された時刻を補助特徴として用いてもよい。取得された時刻の差が所定値以下であれば、該指紋画像および該静脈画像は同一の手から採取された画像で、正当な入力による画像であると判定できる。この判定結果を、補助特徴から抽出される結合特徴として用いてもよい。上記の結合特徴を用いて入力の正当であるかを判定することで、不自然な手の置き換えや指の置き換えなどによる不正な入力を検知し、悪意のある攻撃を防ぐ効果を有する。
【0087】
(補助特徴の抽出頻度の向上)
補助品質判定部で、複数の生体情報が取得された時間の差が所定値を超えるものしかない場合、線形に補間する、または線形に補外することにより、補助情報を算出してもよい。
【0088】
例えば、一度の入力で静脈画像V1,V2、指紋画像F1が入力され、V1とF1、およびV2とF1のいずれも所定値の時間差以内に取得されなかった場合、F1が入力された時刻Tに対応した静脈側の補助情報を、V1とV2の補助情報を時間により線形に補間、あるいは補外することで算出してもよい。補間、あるいは補外する補助情報は、複数の指紋画像から算出してもよい。補間、あるいは補外できる補助情報として、指のつけねの位置、指紋中心の位置などが挙げられる。補間、あるいは補外による補助情報の算出により、補助情報と結合特徴を抽出できる頻度が増加し、認証精度を向上できる頻度が増加する効果を有する。
【0089】
(他の例)
上記各実施例においては、CPUによるプログラムの実行によって各機能が実現されていたが、それに限られない。例えば、専用の回路などを用いて各機能を実現してもよい。また、上記各実施例では指紋と静脈とのマルチバイオメトリックを例として説明したが、他の組み合わせを用いてもよい。また、上記各実施例においては、異なる種類の生体を取得するために、複数の生体センサを用いたが、1台の生体センサで複数種類の生体を取得し、当該複数種類の生体から結合特徴を抽出してもよい。
【0090】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0091】
10 認証品質判定部
20 補助品質判定部
30 認証特徴抽出部
40 補助特徴抽出部
50 結合特徴抽出部
60 登録部
70 認証結果出力部
80 生体情報選択部
100 生体情報処理装置
101 CPU
102 RAM
103 記憶装置
104 表示装置
105 生体センサ
106 通信部
200 サーバ
210 照合部
220 照合候補絞り込み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる生体情報を取得する生体センサと、
前記生体センサが取得する複数の異なる生体情報のそれぞれについて、認証用の認証特徴を抽出する認証特徴抽出部と、
前記複数の異なる生体情報のそれぞれについて、前記認証特徴と関連する補助特徴を抽出する補助特徴抽出部と、
前記補助特徴抽出部によって抽出された複数の補助特徴を反映させた結合特徴を抽出する結合特徴抽出部と、を備えることを特徴とする生体情報処理装置。
【請求項2】
結合特徴のデータベースに登録された結合特徴と、前記結合特徴抽出部が抽出した結合特徴との照合結果に応じて認証する認証部を備えることを特徴とする請求項1記載の生体情報処理装置。
【請求項3】
前記認証部は、前記結合特徴の照合結果に加えて、認証特徴のデータベースに登録された認証特徴と、前記認証特徴抽出部が抽出した認証特徴との照合結果に応じて認証することを特徴とする請求項2記載の生体情報処理装置。
【請求項4】
結合特徴データベースに登録された複数ユーザの結合特徴と前記結合特徴抽出部が抽出した結合特徴との照合により、前記複数ユーザから候補を絞り込む絞り込み部と、
認証特徴データベースに登録された複数ユーザの認証特徴のうち前記絞り込み部によって絞り込まれたユーザに係る認証特徴と前記認証特徴抽出部が抽出した認証特徴との照合結果に応じて認証する認証部と、を備えることを特徴とする請求項1記載の生体情報処理装置。
【請求項5】
前記結合特徴に反映される複数の補助特徴に係る生体情報の組み合わせを選択する生体情報選択部を備え、
前記生体センサは、複数の異なる生体のそれぞれについて、所定の時間間隔で生体情報を順次取得し、
前記生体情報選択部は、同一の生体から取得された生体情報のうち類似度が所定値以上となる時系列的に連続する2つの生体情報と、当該2つの生体情報が取得される間に他の生体から取得された生体情報とのうち、取得された時間が近い2つの生体情報を選択し、
前記補助特徴抽出部は、前記生体情報選択部が選択した2つの生体情報から補助特徴を抽出することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の生体情報処理装置。
【請求項6】
前記認証特徴抽出部は、前記結合特徴抽出部が抽出した結合特徴を利用して、前記認証特徴を抽出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の生体情報処理装置。
【請求項7】
前記生体センサは、複数の異なる生体情報を取得するための複数のセンサを備え、
前記複数のセンサの互いの相対位置は、固定されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の生体情報処理装置。
【請求項8】
前記生体センサは、指紋画像を取得するセンサおよび手のひら静脈画像を取得するセンサを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の生体情報処理装置。
【請求項9】
前記補助特徴は、前記指紋画像から得られる隆線パターン、および前記手のひら静脈画像から得られる指が伸びる方向であり、
前記結合特徴は、前記指が伸びる方向に応じて前記隆線パターンを回転させたものであることを特徴とする請求項8記載の生体情報処理装置。
【請求項10】
前記補助特徴は、前記手のひら静脈画像から得られる指の特定点および当該指が伸びる方向、ならびに、前記指紋画像から得られる指紋の位置範囲であり、
前記結合特徴は、前記指の特定点と前記指が伸びる方向と前記指紋の位置範囲とから決定される指の種類であることを特徴とする請求項8記載の生体情報処理装置。
【請求項11】
前記補助特徴は、前記指紋画像から得られる指紋の特定点、および、前記手のひら静脈画像から得られる指の特定点であり、
前記結合特徴は、前記指紋の特定点と前記指の特定点との距離であることを特徴とする請求項8記載の生体情報処理装置。
【請求項12】
前記結合特徴は、前記補助特徴が正当に取得された特徴であるか否かを判定した際の判定結果であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の生体情報処理装置。
【請求項13】
前記補助特徴抽出部によって抽出された複数の補助特徴から前記結合特徴が抽出可能か否かを判定する判定部を備え、
前記結合特徴抽出部は、前記判定部が前記結合特徴の抽出が可能であると判定した場合に、前記結合特徴を抽出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体情報処理装置。
【請求項14】
生体センサが取得する複数の異なる生体情報のそれぞれについて、認証用の認証特徴を抽出し、
前記複数の異なる生体情報のそれぞれについて、前記認証特徴と関連する補助特徴を抽出し、
抽出された複数の補助特徴を反映させた結合特徴を抽出する、ことを特徴とする生体情報処理方法。
【請求項15】
コンピュータに、
生体センサが取得する複数の異なる生体情報のそれぞれについて、認証用の認証特徴を抽出するステップと、
前記複数の異なる生体情報のそれぞれについて、前記認証特徴と関連する補助特徴を抽出するステップと、
抽出された複数の補助特徴を反映させた結合特徴を抽出するステップと、を実行させることを特徴とする生体情報処理プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate


【公開番号】特開2012−208682(P2012−208682A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73174(P2011−73174)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】