説明

生体情報処理装置、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラム

【課題】静脈を生体情報として利用する場合において、被写体が生体であるか否かを精度よく判別することができる、生体情報処理装置、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラムを提供する。
【解決手段】生体情報処理装置は、撮影によって被写体から静脈情報を取得する取得手段105と、被写体に外圧が印加されているか否かを検知する検知手段60と、検知手段が被写体に外圧が印加されていると検知した際の静脈情報に応じて、被写体が生体であるか否かを判定する判定手段70と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報処理装置、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体認証技術において、生体特徴を不正に複製した偽造物を用いることにより認証を成立させる「なりすまし」の可能性が指摘されている。特許文献1,2では、皮膚の電気的特性を測定することにより対象物が生体であるか否かを判別している。特許文献3〜5では、皮膚を光学的に検知することにより、対象物が生体であるか否かを判別している。
【0003】
特許文献6,7では、脈波を利用して対象物が生体であるか否かを判別している。特許文献8では、外部刺激に対する応答に基づいて、対象物が生体であるかを判別している。特許文献9では、認証後に指を加熱または冷却し、動静脈吻合の膨張または収縮を見て生体判定をおこなう技術が開示されている。特許文献10では、血圧変化により血管太さが変化することを利用して生体判定をおこなう技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−215807号公報
【特許文献2】特開2008−099783号公報
【特許文献3】特開平02−079181号公報
【特許文献4】特表2002−513188号公報
【特許文献5】特開2007−122237号公報
【特許文献6】特開2003−331268号公報
【特許文献7】特開2008−148862号公報
【特許文献8】特開2003−030659号公報
【特許文献9】特開2007−037652号公報
【特許文献10】国際公開10/070745号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2の技術では、導電率の近い素材で作成した偽造物を用いた模倣が指摘されている。特許文献3〜5の技術では、色や構造の模倣が指摘されている。特許文献6,7の技術では、静脈には明確な脈動が現れないため、静脈認証に適用が困難である。特許文献8の技術は、静脈認証に適用することが困難である。特許文献9の技術では、生体を温度制御し十分な効果を得るために長い時間を要する場合がある。特許文献10の技術では、判定が不確実となる場合がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、静脈を生体情報として利用する場合において、被写体が生体であるか否かを精度よく判別することができる、生体情報処理装置、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、明細書開示の生体情報処理装置は、撮影によって被写体から静脈情報を取得する取得手段と、前記被写体に外圧が印加されているか否かを検知する検知手段と、前記検知手段が前記被写体に外圧が印加されていると検知した際の前記静脈情報に応じて、前記被写体が生体であるか否かを判定する判定手段と、を備えるものである。
【0008】
上記課題を解決するために、明細書開示の生体情報処理方法は、撮影によって被写体から静脈情報を取得する取得ステップと、前記被写体に外圧が印加されているか否かを検知する検知ステップと、前記検知ステップにおいて前記被写体に外圧が印加されていると検知された際の前記静脈情報に応じて、前記被写体が生体であるか否かを判定する判定ステップと、を含むものである。
【0009】
上記課題を解決するために、明細書開示の生体情報処理プログラムは、コンピュータに、撮影によって被写体から静脈情報を取得する取得ステップと、前記被写体に外圧が印加されているか否かを検知する検知ステップと、前記検知ステップにおいて前記被写体に外圧が印加されていると検知された際の前記静脈情報に応じて、前記被写体が生体であるか否かを判定する判定ステップと、を実行させるものである。
【発明の効果】
【0010】
明細書開示の生体情報処理装置、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラムによれば、静脈を生体情報として利用する場合において、被写体が生体であるか否かを精度よく判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は静脈画像の例であり、(b)は手のひらを板に押し付ける状態を表す図であり、(c)は静脈パターンの推移を説明するための図である。
【図2】(a)は、実施例1に係る生体情報処理装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図であり、(b)および(c)は生体センサの模式図である。
【図3】生体情報処理プログラムの実行によって実現される各機能のブロック図である。
【図4】(a)および(b)は登録データベースに登録されている登録静脈パターンを説明するためのテーブルである。
【図5】(a)は接触センサの出力値と類似度との関係を説明するための図であり、(b)は接触センサの代わりに圧力センサを用いる場合の例であり、(c)は接触センサの代わりに距離センサを用いる場合の例である。
【図6】生体判定を表すフローチャートの一例である。
【図7】(a)〜(c)は生体判定の他の例を説明するための図である。
【図8】(a)および(b)は生体判定の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施例の説明に先立って、静脈認証について説明する。静脈認証は、撮影装置を用いて取得した静脈画像を用いて照合を行う認証方式である。血液中のヘモグロビンが近赤外線を吸収する性質を有しているため、近赤外線を手のひらなどの生体に照射することによって静脈画像を得ることができる。図1(a)は、静脈画像の例である。図1(a)を参照して、静脈画像には、静脈情報として、静脈パターンが含まれている。
【0013】
血管は、血液が詰まった比較的柔らかい管である。したがって、血管を圧迫すると、血液が当該血管を通りにくくなる。一例として、図1(b)を参照して、平板に手を押し付けると、手の押し付けた部分の静脈の血流が減少する(虚血)。したがって、図1(c)を参照して、平板に手を押し付ける前に観測されていた静脈パターンは、平板に手を押し付けた際に薄くなるか消失する。このように、通常の生体においては、外圧によって静脈パターンが変化する。したがって、外圧が印加されても静脈パターンが変化しない場合、当該被写体が偽造物であると判断することができる。なお、外圧とは、皮膚の外からの圧力のことである。
【0014】
以下、被写体に外圧が印加された際の静脈情報に応じて、当該被写体が生体であるか否かを判定する生体情報処理装置、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラムについて説明する。
【実施例1】
【0015】
図2(a)は、実施例1に係る生体情報処理装置100のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。図2(b)および図2(c)は、後述する生体センサ105の模式図である。図2(a)を参照して、生体情報処理装置100は、CPU101、RAM102、記憶装置103、表示装置104、生体センサ105、接触センサ106などを備える。これらの各機器は、バスなどによって接続されている。
【0016】
CPU(Central Processing Unit)101は、中央演算処理装置である。CPU101は、1以上のコアを含む。RAM(Random Access Memory)102は、CPU101が実行するプログラム、CPU101が処理するデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。
【0017】
記憶装置103は、不揮発性記憶装置である。記憶装置103として、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、ハードディスクドライブに駆動されるハードディスクなどを用いることができる。本実施例に係る生体情報処理プログラムは、記憶装置103に記憶されている。表示装置104は、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスパネル等であり、被認証ユーザへのメッセージ、生体情報処理の結果などを表示する。
【0018】
生体センサ105は、撮影によって取得した生体画像からユーザの静脈情報を取得するセンサである。生体センサ105の撮影対象は、特に限定されるものではないが、手のひら、指などである。本実施例においては、一例として、生体センサ105は、手のひらの静脈を取得する。
【0019】
図2(b)および図2(c)を参照して、生体センサ105は、撮影部107、光照射部108、距離センサ109および接触板110を含む。撮影部107は、生体画像を取得できるものであれば特に限定されるものではなく、一例としてCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラなどである。光照射部108は、少なくとも近赤外光を照射する照明であり、複数設けられていてもよい。距離センサ109は、撮影部107と被写体との距離を検出するセンサであり、複数設けられていてもよい。複数の距離センサ109の検出結果を用いれば、被写体の傾きを検出することもできる。接触板110は、撮影部107の撮影方向に配置された板であり、少なくとも近赤外光を透過する。また、接触板110は、ユーザの手のひらを押し付けても破損しない程度の強度を有している。撮影部107は、接触板110を介して、ユーザの手のひらを撮影する。接触センサ106は、接触板110にユーザの手のひらが接触しているか否かを検知するタッチセンサである。
【0020】
記憶装置103に記憶されている生体情報処理プログラムは、実行可能にRAM102に展開される。CPU101は、RAM102に展開された生体情報処理プログラムを実行する。それにより、生体情報処理装置100による各処理が実行される。
【0021】
図3は、生体情報処理プログラムの実行によって実現される各機能のブロック図である。図3を参照して、生体情報処理プログラムの実行によって、撮影制御部10、手のひら検出部20、静脈パターン抽出部30、静脈パターン照合部40、認証判定部50、押し付け判定部60、および生体判定部70が実現されている。登録データベース80は、記憶装置103に記憶されている。
【0022】
撮影制御部10は、生体センサ105の撮影部107による撮影を制御する。撮影制御部10が撮影指示を撮影部107に送信すると、撮影部107は、被写体を撮影し、生体画像を取得する。手のひら検出部20は、撮影部107が取得した生体画像から手のひらを検出する。手のひら検出部20は、輝度値などを用いて、手のひらを検出する。
【0023】
静脈パターン抽出部30は、手のひら検出部20が検出した手のひらから、静脈パターンを抽出する。登録データベース80には、ユーザIDに関連付けて、静脈パターン抽出部30が抽出した静脈パターンが登録静脈パターンとして登録されている。図4(a)および図4(b)は、登録データベース80に登録されている登録静脈パターンを説明するためのテーブルである。図4(a)を参照して、登録データベース80には、特定ユーザの登録静脈パターンのみが登録されていてもよい。または、図4(b)を参照して、登録データベース80には、複数(N人)のユーザの登録静脈パターンが登録されていてもよい。
【0024】
静脈パターン照合部40は、登録データベース80に登録されている登録静脈パターンと静脈パターン抽出部30が抽出した照合用静脈パターンとを照合する。照合の結果は、登録静脈パターンと照合用静脈パターンとの類似度などとして算出される。認証判定部50は、静脈パターン照合部40の照合結果に基づいて、認証成功および認証失敗を判定する。図4(a)の例では、認証判定部50は、登録静脈パターンと照合用静脈パターンとの類似度がしきい値以上であれば、被認証ユーザが本人であると判定する(1:1認証)。図4(b)の例では、認証判定部50は、被認証ユーザが、照合用静脈パターンとの類似度が最も高くかつしきい値以上となる登録静脈パターンに関連付けられたユーザであると判定する(1:N認証)。
【0025】
押し付け判定部60は、接触センサ106の検知結果に基づいて、接触板110に所定の圧力が印加されているか否かを判定する。手のひらが接触板110に押し付けられると、接触センサ106が所定値以上の信号を出力する。それにより、押し付け判定部60は、接触板110にユーザの手のひらが押し付けられていると判定する。言い換えれば、押し付け判定部60は、ユーザの手のひらに所定の外圧が印加されていると判定する。
【0026】
生体判定部70は、被写体が生体であるか否かの判定(生体判定)を行う処理部である。生体判定部70は、ユーザの手のひらに所定の外圧が印加されていると判定された場合に、静脈パターン抽出部30が抽出する静脈パターンに基づいて、ユーザの手のひらが生体であるか偽造物であるか判定する。一例として、生体判定部70は、登録データベース80に登録されている登録静脈パターンと静脈パターン抽出部30が抽出した照合用静脈パターンとの類似度の変化について説明する。
【0027】
図5(a)は、接触センサ106の出力値と上記類似度との関係を説明するための図である。接触センサ106の出力値は、手のひらが接触板110に接触している場合に高くなる。図5(a)において、横軸は経過時間を示し、縦軸は接触センサ106の出力値および類似度を示す。図5(a)の例は、ユーザが手のひらを接触板110に近づけ、押し付け、その後に接触板110から離す動作を行う場合の例である。
【0028】
図5(a)を参照して、ユーザが手のひらを接触板110に近づけると、生体センサ105(撮影部107)と手のひらとの距離が適正範囲に入るようになる。それにしたがって、類似度が高くなる。ユーザが手のひらを接触板110に押し付けると、接触センサ106の出力値が高くなる。この場合、手のひらに外圧が印加されるため、血流が低下する。それにより、静脈パターン抽出部30によって抽出される静脈パターンが薄くなる。その結果、類似度が低下する。ユーザが手のひらを接触板110から離すと、接触センサ106の出力値が低下する。この場合、血流が回復するため、静脈パターン抽出部30によって抽出される静脈パターンが濃くなる。それにより、類似度が再度上昇する。当該手のひらが偽造物であれば、図5(a)の点線のように、接触センサ106が手のひらの接触を検知しても、類似度の低下が見られない。
【0029】
このように、手のひらに外圧が印加された状態で類似度が所定値未満であり、手のひらに外圧が印加されていない状態で類似度が所定値を上回っていれば、当該手のひらが生体であると判定することができる。これに対して、手のひらに外圧が印加された状態でも、手のひらに外圧が印加されていない状態でも類似度が所定値を上回っていれば、当該手のひらが偽造物であると判定することができる。
【0030】
図5(b)は、接触センサ106の代わりに、圧力センサを用いる場合の例を説明するための図である。図5(b)を参照して、ユーザが手のひらを接触板110に近づけると、生体センサ105(撮影部107)と手のひらとの距離が適正範囲に入るようになる。それにしたがって、類似度が高くなる。ユーザが手のひらを接触板110に押し付けると、圧力センサが検知する圧力が上昇する。この場合、血流が低下するため、静脈パターン抽出部30によって抽出される静脈パターンが薄くなる。それにより、類似度が低下する。ユーザが手のひらを接触板110から離すと、圧力センサが検知する圧力が低下する。この場合、血流が回復するため、静脈パターン抽出部30によって抽出される静脈パターンが濃くなる。それにより、類似度が再度上昇する。当該手のひらが偽造物であれば、図5(b)の点線のように、圧力センサが検知する圧力が上昇しても、類似度の低下が見られない。
【0031】
図5(c)は、接触センサ106の代わりに、距離センサ109の検知結果を用いた場合の例である。図5(c)を参照して、ユーザが手のひらを接触板110に近づけると、生体センサ105(撮影部107)と手のひらとの距離が適正範囲に入るようになる。それにしたがって、類似度が高くなる。ユーザが手のひらを接触板110に押し付けると、手のひらと生体センサ105(撮影部107)との距離が、接触板110と生体センサ105(撮影部107)との距離にほぼ等しくなる。この場合、血流が低下するため、静脈パターン抽出部30によって抽出される静脈パターンが薄くなる。それにより、類似度が低下する。ユーザが手のひらを接触板110から離すと、血流が回復するため、静脈パターン抽出部30によって抽出される静脈パターンが濃くなる。それにより、類似度が再度上昇する。当該手のひらが偽造物であれば、図5(c)の点線のように、距離センサ109が手のひらと接触板110との接触を検知しても、類似度の低下が見られない。
【0032】
以上のように、接触センサ、圧力センサ、距離センサなどを用いて手のひらに外圧が印加されているか否かを検知することができる。また、手のひらに外圧が印加されている場合に登録静脈パターンと照合用静脈パターンとの類似度が低下することを利用して、当該手のひらが偽造物であるか否かを判定することができる。
【0033】
図6は、生体判定処理を表すフローチャートの一例である。図6を参照して、撮影制御部10は、接触センサ106が手のひらと接触板110との接触を検知したか否かを判定する、(ステップS1)。ステップS1において「No」と判定された場合、撮影制御部10は、撮影部107に対して撮影を指示する(ステップS2)。それにより、撮影部107は、被認証ユーザの手のひらの部分を撮影する。次に、手のひら検出部20は、撮影部107が取得した生体画像から手のひらを検出する(ステップS3)。手のひら検出部20は、手のひらが検出されたか否かを判定する(ステップS4)。なお、ステップS4においては、手のひらが適切な傾きを有しているかを検出してもよい。撮影部107に対して手のひらが適切な傾きを有していると、認証精度が向上するからである。なお、手のひらの傾きは、複数の距離センサ109を用いて検出することができる。
【0034】
ステップS4において「No」と判定された場合、ステップS2〜ステップS4が再度実行される。ステップS4において「Yes」と判定された場合、静脈パターン抽出部30は、当該手のひらから照合用静脈パターンを抽出する(ステップS5)。次に、静脈パターン照合部40は、登録データベース80に登録されている登録静脈パターンと静脈パターン抽出部30が抽出した照合用静脈パターンとを照合する(ステップS6)。
【0035】
次に、認証判定部50は、被認証ユーザが本人であるか否かを判定する(ステップS7)。具体的には、認証判定部50は、ステップS6で得られる類似度が所定値以上であるか否かを判定する。ステップS7で「Yes」と判定された場合、撮影制御部10は、接触センサ106が手のひらと接触板110との接触を検知したか否かを判定する(ステップS8)。ステップS8において「No」と判定された場合、ステップS8が再度実行される。
【0036】
ステップS8において「Yes」と判定された場合、撮影制御部10は、撮影部107に対して撮影を指示する(ステップS9)。それにより、撮影部107は、被認証ユーザの手のひらの部分を撮影する。次に、手のひら検出部20は、撮影部107が取得した生体画像から手のひらを検出する(ステップS10)。次に、手のひら検出部20は、手のひらが検出されたか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11において「No」と判定された場合、ステップS9〜ステップS11が再度実行される。
【0037】
ステップS11において「Yes」と判定された場合、静脈パターン抽出部30は、ステップS10で得られた手のひらから照合用静脈パターンを抽出する(ステップS12)。静脈パターン照合部40は、登録データベース80に登録されている登録静脈パターンとステップS12で抽出された照合用静脈パターンとを照合する(ステップS13)。次に、認証判定部50は、被認証ユーザが本人であるか否かを判定する(ステップS14)。具体的には、認証判定部50は、ステップS13で得られる類似度が所定値以上であるか否かを判定する。ステップS14で「No」と判定された場合、生体判定部70は、当該手のひらが生体であると判定する(ステップS15)。ステップS14で「Yes」と判定された場合、生体判定部70は、当該手のひらが偽造物であると判定する(ステップS16)。
【0038】
ステップS1で「Yes」と判定された場合、フローチャートの実行が終了する。ステップS7で「No」と判定された場合、被認証ユーザが本人ではないと判定される(ステップS17)。なお、ステップS1の実行前に、表示装置104は、被認証ユーザに、手のひらを接触板110から離した所定位置に配置するようにメッセージを表示してもよい。また、表示装置104は、ステップS8の実行前に、被認証ユーザに、手のひらを接触板110に押し付けるようにメッセージを表示してもよい。
【0039】
なお、図6のフローチャートでは、手のひらと接触板110との接触前の類似度と接触中の類似度とを比較しているが、それに限られない。例えば、接触中の類似度と接触後の類似度とを比較してもよいし、接触前後両方の類似度と接触中の類似度とを比較してもよい。また、ステップS7のしきい値とステップS14のしきい値は、異なっていてもよく、同じ値であってもよい。
【0040】
本実施例によれば、静脈を生体情報として利用する場合において、被写体が生体であるか否かを精度よく判別することができる。また、外圧に応じて静脈が動的に変化する偽造物を作成することは困難であるため、なりすましが困難である。認証と生体判定のための撮影が同時に実施され、生体と偽造物とのすり替えによる詐称も困難である。したがって、信頼性の高い生体判定が実現できる。また、認証だけを行う場合と同程度の時間で実施できるため、ユーザ負担が少ない。また、通常の認証手順と同じ操作方法で運用可能であり、使い勝手がよい。
【0041】
なお、特許文献10では、手を上下させたときの血圧変化による血管の太さをモニタすることによって生体・偽造物を判定している。しかしながら、血圧変化をモニタする手段がなく血管太さの時間変化として捕らえていたため、判定が不確実となる恐れがあった。このため、想定された使い方がされない場合(手を上げてからセンサにかざすまでに間が空いてしまった場合など)には、対象物が生体であるにも関わらず、十分な太さ変化が認められないために偽造物と判定されるなど使いにくい面があった。しかしながら、本実施例においては、生体に印加される外圧をセンサ出力(距離、接触、圧力など)により検出し、これを基に静脈情報の変化の判定を行っている。このように、基準量を利用できるため、判定が確実となる。また、使い方(手をかざすタイミング、速度など)の自由度が増し、使い勝手がよくなる。また、特許文献10では、1:N認証には適用できないが、本実施例においては、1:1認証にも1:N認証にも適用することができる。
【0042】
(他の例)
上記の例では、手のひらと接触板110との接触前後の2時点での類似度を比較しているが、それに限られない。例えば、さらに多くの時点または連続的に、類似度を比較してもよい。この場合、より精密な判定が可能となる。
【0043】
ここで、手のひらは、平坦ではなく凹凸を有している。したがって、手のひらを板に押し付ける際に、ふくらんでいる部分(凸部)から接触を開始する。このため、静脈パターンは、凸部から薄くなり、凹部では遅れて薄くなる。押し付け圧によっては、凹部の静脈パターンは消失しない場合もあり得る。手のひらの凹凸形状には個人差があるため、手のひらの領域内で静脈パターンが薄くなる場所、順番にも個人差が現れる。したがって、登録データベース80に当該場所と消失順を登録情報として記録しておき、当該登録情報を照合時に用いることにより、より精密な本人確認が可能となる。
【0044】
例えば、図7(a)を参照して、手のひら領域を複数に分割する。図7(a)の例では、手のひら領域は、外接四角形に近似され、さらに9つのブロック(3×3等分)に分割されている。静脈パターン照合部40は、ブロックごとに、登録静脈パターンと照合用静脈パターンとの類似度を算出する。認証判定部50は、ブロックごとに、認証成功(OK)および認証失敗(NG)を判定する。
【0045】
図7(b)は、押し付け圧レベル(レベル0〜レベル5)と各ブロックの認証結果との関係の一例を説明するための図である。図7(b)を参照して、手のひらが接触板110に接触していない場合には、各ブロックにおいて認証成功と判定されている。押し付け圧レベルが大きくなると、認証失敗と判定されるブロックが現れる。さらに押し付け圧レベルが大きくなると、多くのブロックにおいて認証失敗と判定されている。図7(b)の例では、押し付け圧レベルが「5」になると全てのブロックで認証失敗と判定されているが、押し付け圧を大きくしても認証成功と判定されるブロックが存在していてもよい。
【0046】
図7(c)は、図7(b)の例で、認証成功から認証失敗に切り替わる押し付け圧レベルを表す表である。図7(c)の情報を登録データベース80に登録データとして格納し、照合時に当該登録データを用いてもよい。例えば、被認証ユーザの手のひらを接触板110に押し付ける際に、認証成功から認証失敗に切り替わる押し付け圧レベルと登録データとが一致または所定割合以上が一致した場合に、被認証ユーザが本人であると判定してもよい。
【0047】
(他の例)
静脈パターン照合部40が照合に用いる領域と、生体判定部70が生体判定に用いる領域とは、異なっていてもよい。例えば、図8(a)を参照して、静脈パターン照合部40が照合に用いる領域は手のひらであり、生体判定部70が生体判定に用いる領域は1本以上の指であってもよい。また、図8(b)を参照して、静脈パターン照合部40が照合に用いる領域は手のひらの一部であり、生体判定部70が生体判定に用いる領域は、手のひらの残りの部分と1本以上の指であってもよい。
【0048】
なお、図8(a)および図8(b)の例で、接触板110として透明板を用いれば、撮影によって指の指紋を取得することができる。この指紋を用いてさらに認証精度を向上させることができる。例えば、手のひらおよび指の静脈パターンを用いて認証を行い、指が透明板に接触した状態で指の指紋を用いてさらに認証を行い、指が透明板に接触した状態で指の静脈パターンの変化に応じて生体判定を行ってもよい。この場合、静脈および指紋を用いた生体認証を行うことによって、認証精度を向上させることができる。また、指紋を精度よく検出するための板と、指に外圧を印加するための板を共通に用いることができる。
【0049】
なお、上記の例では、手のひらまたは指の静脈を用いているが、他の部位の静脈を対象としてもよい。また、外圧として板などを用いているが、それに限られない。例えば、風圧、超音波などを外圧として用いてもよい。また、生体判定において照合用静脈パターンと登録静脈パターンとの類似度を用いているが、それに限られない。例えば、外圧が印加されていない状態の静脈パターンの輝度値と、外圧が印加された状態の静脈パターンの輝度値との比較によって、被写体が生体であるか否かを判定してもよい。また、生体情報処理プログラムの実行によって実現された各部の代わりに、回路などの専用のハードウェアを用いてもよい。
【0050】
上記の例において、撮影部107が撮影によって被写体から静脈情報を取得する取得手段として機能する。接触センサ106が、被写体に外圧が印加されているか否かを検知する検知手段として機能する。生体判定部70が、被写体が生体であるか否かを判定する判定手段として機能する。静脈パターン照合部40が、照合用の静脈情報と登録静脈情報とを照合する照合手段として機能する。認証判定部50が、被認証ユーザの認証を行う認証部として機能する。
【0051】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 撮影制御部
20 手のひら検出部
30 静脈パターン抽出部
40 静脈パターン照合部
50 認証判定部
60 押し付け判定部
70 生体判定部70
80 登録データベース
100 生体情報処理装置
101 CPU
102 RAM
103 記憶装置
104 表示装置
105 生体センサ
106 接触センサ
107 撮影部
108 光照射部
109 距離センサ
110 接触板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影によって被写体から静脈情報を取得する取得手段と、
前記被写体に外圧が印加されているか否かを検知する検知手段と、
前記検知手段が前記被写体に外圧が印加されていると検知した際の前記静脈情報に応じて、前記被写体が生体であるか否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする生体情報処理装置。
【請求項2】
前記取得手段が取得する照合用の静脈情報とデータベースに登録された登録静脈情報とを照合する照合手段を備え、
前記判定手段は、前記照合手段の照合結果に応じて、前記被写体が生体であるか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の生体情報処理装置。
【請求項3】
前記照合手段は、前記照合用の静脈情報と前記登録静脈情報との類似度を算出し、
前記判定手段は、前記類似度に応じて、前記被写体が生体であるか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の生体情報処理装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記検知手段が前記被写体に外圧が印加されていると検知した場合の前記類似度が所定値を下回り、前記検知手段が前記被写体に外圧が印加されてないと検知した場合の前記類似度が所定値を上回る場合に、前記被写体が生体であると判定することを特徴とする請求項3記載の生体情報処理装置。
【請求項5】
前記検知手段は、前記被写体に外圧を印加するための外圧印加手段に対して前記被写体が接触しているか否かを検知する接触センサであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体情報処理装置。
【請求項6】
前記検知手段は、前記被写体に外圧を印加するための外圧印加手段から印加される圧力を検知する圧力センサであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体情報処理装置。
【請求項7】
前記検知手段は、前記被写体と前記取得手段との距離を検知する距離センサであり、前記被写体が前記被写体に外圧を印加するための外圧印加手段に接触しているか否かを検知することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体情報処理装置。
【請求項8】
前記照合手段の照合結果に応じて被認証ユーザの認証を行う認証部を備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の生体情報処理装置。
【請求項9】
前記照合手段は、複数のブロックに分割した前記静脈情報ごとに前記類似度を算出し、前記被写体に印加される外圧と前記ブロックごとの前記類似度との関係に応じて、被認証ユーザの認証を行うことを特徴とする請求項8記載の生体情報処理装置。
【請求項10】
前記判定部は、指の静脈パターンに応じて、前記被写体が生体であるか否かを判定し、
前記認証部は、手のひらの静脈パターンに応じて、被認証ユーザの認証を行うことを特徴とする請求項8または9記載の生体情報処理装置。
【請求項11】
撮影によって被写体から静脈情報を取得する取得ステップと、
前記被写体に外圧が印加されているか否かを検知する検知ステップと、
前記検知ステップにおいて前記被写体に外圧が印加されていると検知された際の前記静脈情報に応じて、前記被写体が生体であるか否かを判定する判定ステップと、を含むことを特徴とする生体情報処理方法。
【請求項12】
コンピュータに、
撮影によって被写体から静脈情報を取得する取得ステップと、
前記被写体に外圧が印加されているか否かを検知する検知ステップと、
前記検知ステップにおいて前記被写体に外圧が印加されていると検知された際の前記静脈情報に応じて、前記被写体が生体であるか否かを判定する判定ステップと、を実行させることを特徴とする生体情報処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−3735(P2013−3735A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132540(P2011−132540)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】