説明

生体情報検出器、生体情報測定装置および生体情報検出器における反射部の設計方法

【課題】 接触部材の接触面側での直接反射光による影響を低減すること。
【解決手段】 発光部14と、受光部16と、反射部18と、被検査体と接触する接触面を備える接触部材19−2を有すると共に、接触部材が発光部14が発する光の波長に対して透明な材料で構成され、かつ発光部14を保護する保護部19と、基板11と、を含み、発光部14から発せられた光が、保護部19における接触部材19−2の接触面側で一回反射して受光部16の受光領域に入射することが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報検出器、生体情報測定装置および生体情報検出器における反射部の設計方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
生体情報測定装置は、例えば人間の脈拍数、血液中の酸素飽和度、体温、心拍数等の生体情報を測定し、生体情報測定装置の一例は、脈拍数を測定する脈拍計である。また、脈拍計等の生体情報測定装置は、時計、携帯電話、ページャー、パーソナルコンピューター等の電子機器に組み込まれてもよく、又は電子機器と組み合わせてもよい。生体情報測定装置は、生体情報を検出する生体情報検出器を有し、生体情報検出器は、被検査体(ユーザー)の被検出部位(指や腕等)に向けて光を発光する発光部と、被検出部位からの生体情報を有する光を受光する受光部とを含む。
【0003】
特許文献1には、発光素子と受光素子とが同軸状に配置された反射型光センサーが開示されている。特許文献1に記載される反射型光センサーは、検知対象(人の指)が、発光素子から出射される光を透過する窓から所定距離だけ離隔した位置で、受光素子の検知感度が最大となるように設計されている。特許文献1の(0032)段落では、検知感度のピーク位置の設定のために、発光素子の照射角を変化させることができる点、基板の大きさを変化させることができる点、ならびに、反射面の曲率あるいは焦点を変化させることができる点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−337605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発光素子から出射される光は、被検査体の被検出部位に、光透過部材(特許文献1の窓部に相当)を経由して照射される。発光素子から発せられた光の一部は、光透過部材の表面(およびその近傍)で反射する。その反射光は、光透過部材の表面(およびその近傍)で直接に反射した反射光(つまり直接反射光)であり、直接反射光は、生体情報を有さない無効光(ノイズ光)である。直接反射光(無効光)が受光素子の受光領域に入射すると、受光素子から出力される生体情報の検出信号のS/N(Signal to Noise Ratio)が低下する。生体情報測定装置の測定感度の向上のためには、直接反射光(無効光)が、受光素子の受光領域に入射することを抑制することができるように、集光光学系(反射部)を設計することが重要となる。特許文献1のように、例えば、単に反射面の焦点距離を調整しただけでは、光透過部材(窓部)の表面側で反射する反射光(直接反射光)による影響(つまり、受光素子から出力される検出信号のS/N低下等)は避けられない。
【0006】
本発明の少なくとも一つの態様によれば、生体情報を検出する場合に、直接反射光による影響を軽減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の生体情報検出器の一態様は、発光部と、前記発光部から発せられた光が被検査体の被検出部位にて反射された、生体情報を有する光を受ける受光部と、前記生体情報を有する光を反射させる反射部と、前記被検出部位と接触する接触面を備える接触部材を有すると共に、前記接触部材が前記発光部が発する光の波長に対して透明な材料で構成され、かつ前記発光部を保護する保護部と、前記反射部と前記保護部との間に配置されると共に、前記保護部の側の第1面に前記発光部が配置され、前記反射部の側である前記第1面と対向する第2面に前記受光部が配置され、かつ前記発光部が発する光の波長に対して透明な材料で構成される基板と、を含み、前記発光部から発せられた光が、前記接触部材の前記接触面側で一回反射した一回反射光が前記受光部に入射することが抑制される。
【0008】
本態様では、発光部から発せられた光のうち、保護部における接触部材の接触面側(光透過部材である接触部材の接触面および接触面の近傍(接触面と被検出部位との界面、皮膚表面や皮膚の内側も含む))で一回反射した一回反射光(直接反射光)が、受光部に入射することが抑制される。
【0009】
一回反射光(直接反射光:無効光)が受光部に入射することが抑制されることから、受光部から出力される検出信号のS/Nの低下を抑制することができる。
【0010】
(2)本発明の生体情報検出器の他の態様では、前記発光部から発せられた光が、前記接触部材の前記接触面側で二回反射した二回反射光が前記受光部に入射することが抑制される。
【0011】
本態様では、発光部から発せられた光のうち、保護部における接触部材の接触面側(光透過部材である接触部材の接触面およびその近傍)で二回反射した二回反射光が、受光部に入射することが抑制される。
【0012】
二回反射光(直接反射光:無効光)が受光部の受光領域に入射することが抑制されることから、受光部から出力される検出信号のS/N低下を抑制することができる。
【0013】
(3)本発明の生体情報検出器の他の態様では、前記反射部は、球面の一部で構成される反射面を有し、平面視における前記反射部の外周円の直径は所定値に設定され、かつ、前記反射面の焦点距離範囲として、前記一回反射光が前記反射面で反射して前記受光部に入射する一回反射入射光の全受光量に対する比率が第1閾値よりも高い第1焦点距離範囲と、第2焦点距離範囲と、前記二回反射光が前記反射面で反射して前記受光部に入射する二回反射入射光の全受光量に対する比率が第2閾値よりも高い第3焦点距離範囲と、がある場合に、前記反射面の焦点距離は、前記第1焦点距離範囲と前記第3焦点距離範囲との間にある前記第2焦点距離範囲において設定されている。
【0014】
反射部は反射面を有し、反射面は、二次曲面である球面の一部で構成される。平面視における反射面の外周の形状は円であり、その円(つまり反射面の外周円)の直径(反射面の開口径)は所定値に設定される。
【0015】
ここで、例えば、反射面の焦点距離が徐々に大きくなるように変化させると、接触部材の接触面側で一回反射した一回反射光が、さらに反射面で反射して受光部に入射する光(一回反射入射光)の、受光部における全受光量に占める比率が所定の閾値(第1閾値)よりも高い焦点距離範囲が、まず出現する。この焦点距離範囲を第1焦点距離範囲とする。
【0016】
さらに反射面の焦点距離を増大させていくと、次に、直接反射光(一回反射光および二回反射光)が受光部にほとんど到達しない焦点距離範囲が出現する。この焦点距離範囲を第2焦点距離範囲とする。
【0017】
さらに反射面の焦点距離を増大させていくと、接触部材の接触面側で二回反射した二回反射光が、さらに反射面で反射して受光部の受光領域に入射する光(二回反射入射光)の、受光部における全受光量に占める比率が所定の閾値(第2閾値)よりも高い焦点距離範囲が出現する。この焦点距離範囲を第3焦点距離範囲とする。なお、第1閾値の値と第2閾値の値は同じであってもよく、また、異なっていてもよい。
【0018】
このような知見に基づいて、本態様では、反射部が有する反射面の焦点距離は、第1焦点距離範囲と第3焦点距離範囲との間にある、第2焦点距離範囲において設定される。反射面の焦点距離が定まると、反射面を構成する球面の曲率半径が定まる(曲率半径は焦点距離の2倍である)。よって、球面が一義的に定まる。また、反射面の開口径は既知である。このことは、球面を、例えばxy平面によりスライスする位置が一義的に定まることを意味する。よって、球面の一部で構成される反射面の3次元の形状(および高さ)が定まる。
【0019】
本態様によれば、一回反射光(直接反射光:無効光)および二回反射光(直接反射光:無効光)が受光部に入射することが抑制される。よって、接触部材の接触面側での反射光による影響(受光部から出力される検出信号のS/N低下等)を軽減することができる。
【0020】
(4)本発明の生体情報検出器の他の態様では、前記反射部の外周円の直径をφとし、前記反射面を構成する前記球面の曲率半径をrとし、前記曲率半径rおよび前記反射部の外周円の直径φに対応して定まる、光軸と前記反射面とが交差する点と前記第2面との距離を表す前記反射面の高さをhとし、前記反射面の高さhと前記反射面の曲率半径rとの差をΔhとしたとき、
【数1】

が成立する。
【0021】
本態様では、反射面を構成する球面の曲率半径rを規定する。すなわち、反射面の開口径をφとし、反射面を構成する球面の曲率半径rと開口径φとに対応して定まる反射面の高さをhとし、反射面の高さhと反射面の曲率半径rとの差をΔhとしたとき、曲率半径rは、上記(1)式によって表される。
【0022】
反射面の開口径φが既知であるとき、例えば、反射部の焦点距離dfを変化させると、反射面を構成する球面の曲率半径rが変化し、曲率半径rが変化すると、反射面の高さhと曲率半径rとの差Δhが変化する。反射面を構成する球面の焦点距離dfと差Δhとは一対一の対応関係があり、焦点距離dfが増大すると、差Δhも増大する。反射部の焦点距離dfが定まると、差Δhが定まり、三平方の定理から、上記(1)式が成立する。よって、反射面の好ましい焦点距離が定まると、上記(1)式によって、反射面の曲率半径rを一義的に定めることができ、これによって、反射面を構成する球面が定まる。また、反射面の開口径は既知であることから、反射面の3次元の形状と高さが一義的に特定される。
【0023】
よって、本態様によれば、接触部材の接触面側での反射光による影響(受光部から出力される検出信号のS/N低下等)を軽減することが可能なように設計された(例えば、最適設計された)、反射面を有する反射部を得ることができる。
【0024】
(5)本発明の生体情報検出器の他の態様では、前記反射部は、放物面の一部で構成される反射面を有し、互いに直交するx軸、y軸、z軸のうちの前記z軸を光軸としたとき、前記放物面は、前記z軸を回転軸とする回転放物面であり、かつ、前記z軸と前記回転放物面とが交差する点を原点とし、前記原点に接する球面の曲率半径をrとした場合に、前記回転放物面に関して、
【数2】

が成立し、また、平面視における前記反射部の外周円の直径は所定値に設定され、かつ、前記反射面の焦点距離範囲として、前記一回反射光が前記反射面で反射して前記受光部に入射する一回反射入射光の全受光量に対する比率が所定の閾値(第1閾値)よりも高い第1焦点距離範囲と、第2焦点距離範囲と、前記二回反射光が前記反射面で反射して前記受光部に入射する二回反射入射光の全受光量に対する比率が所定の閾値(第2閾値)よりも高い第3焦点距離範囲と、がある場合に、前記反射面の焦点距離は、前記第1焦点距離範囲と前記第3焦点距離範囲との間にある前記第2焦点距離範囲において設定されている。
【0025】
本態様では、反射部の反射面を構成する二次曲面として放物面を使用する。放物面としては、回転放物面を使用することができる。回転放物面は、3次元の空間を規定する、互いに直交するx軸、y軸、z軸のうちのz軸を光軸としたとき、放物線を、対称軸であるz軸を回転軸として回転させることによって得られる二次曲面(つまり、x、y、zの3元2次方程式によって表される曲面)である。z軸と回転放物面とが交差する点を原点(面原点)とし、原点に接する球面の曲率半径をrとした場合に、回転放物面は、上記(2)式によって表わすことができる。
【0026】
反射面の開口径φが既知であるとき、例えば、反射面の焦点距離dfと、反射面を構成する放物面の、上記原点に接する球面の曲率半径rとは一対一の対応関係にある。よって、好ましい焦点距離dfが定まれば、上記原点に接する球面の曲率半径rが定まり、上記(2)式によって回転放物面の形状が一義的に決定される。また、反射面の開口径は既知であることから、これによって、xy平面による回転放物面のスライス位置が決まる。よって、放物面により構成される反射面の3次元の形状と高さが一義的に特定される。
【0027】
また、回転放物面の一部からなる反射面を用いた場合でも、上述の、球面の一部からなる反射面を用いた場合と同様に、焦点距離dfを徐々に増大させていくと、まず、第1焦点距離範囲が出現し、次に、第2焦点距離範囲が出現し、次に、第3焦点距離範囲が出現する。本態様では、反射部が有する反射面の焦点距離は、第1焦点距離範囲と第3焦点距離範囲との間にある、第2焦点距離範囲において設定される。上述のとおり、反射面の焦点距離が定まると、反射面の3次元の形状と高さが一義的に特定される。よって、本態様によれば、例えば、最適化された反射面を有する反射部を得ることができる。よって、本態様によれば、接触部材の接触面側での反射光による影響(受光部から出力される検出信号のS/N低下等)を低減することが可能な、例えば最適化された反射面を有する反射部を得ることができる。
【0028】
(6)本発明の生体情報測定装置の一態様は、上記いずれかに記載の生体情報検出器と、前記受光部から出力される検出信号に基づいて前記生体情報を測定する生体情報測定部と、を含む。
【0029】
上記いずれかの態様の生体情報検出器は、接触部材の接触面側での反射光による影響(受光部から出力される検出信号のS/N低下等)を低減できるように設計されている。よって、その生体情報検出器を備える生体情報測定装置は、生体情報を高精度に測定することが可能である。生体情報測定装置の具体例としては、例えば、脈拍計、脈波計、動脈血酸素飽和度(SpO2)を測定するパルスオキシメーターが挙げられる。
【0030】
(7)本発明の生体情報測定装置の他の態様では、前記生体情報は脈拍数である。
本態様では、生体情報測定装置は脈拍計である。生体情報源である血管は、被検出部位(指、腕、手首等)における皮下組織の内部にある。脈拍計に設けられる発光部から出射された光は、血管に到達して反射されると共に、その一部は血管で部分的に吸収される。脈拍の影響により、血管での吸収率が変化することから、血管での反射光(被検出部位での反射光)の光量が、脈拍に対応して変化する。よって、血管での反射光は、生体情報としての脈拍数の情報を含む。よって、受光部から出力される生体情報の検出信号(脈拍に対応した脈動成分を含む)に基づいて、脈拍数を測定することができる。
【0031】
生体情報測定装置は、生体情報検出器を、例えば被検査体の手首(腕)に取り付け可能とするためのリストバンドを有することができ、これによって、例えば手首脈拍計(手首脈波計)が実現される。手首脈拍計を用いると、例えばユーザーがジョギング等の運動をしている最中の脈拍情報を時系列的に取得することができる。取得した脈拍情報は、ユーザーの体質改善等に幅広く利用できる。但し、ユーザーの運動によって手首脈拍計の位置がずれる、あるいは外光の影響を受けるといった事態も想定され、検出精度(測定精度)を低下させる要因が多くなる。したがって、高精度な測定を担保するために、接触部材(光透過部材)の表面付近で反射する反射光に起因するS/N低下に対しても十分な対策をして、少しでもS/Nを高める工夫をすることが好ましい。この点、上述のとおり、上記いずれかの態様の生体情報検出器は、接触部材の接触面側での反射光による影響(受光部から出力される検出信号のS/N低下等)を軽減できるように設計されていることから、本態様にかかる脈拍計は、高精度かつ高感度の脈拍検出が可能であり、手首脈拍計への応用も十分に可能である。
【0032】
(8)生体情報検出器における反射部の設計方法の一態様は、生体情報検出器における反射部の設計方法であって、前記生体情報検出器は、発光部と、前記発光部から発せられた光が被検査体の被検出部位にて反射された、生体情報を有する光を受ける受光部と、前記生体情報を有する光を反射させると共に、球面の一部または回転放物面の一部により構成される反射面を有し、平面視における前記反射面の外周円の直径が所定値に設定されている反射部と、前記被検出部位と接触する接触面を備える接触部材を有すると共に、前記接触部材が前記発光部が発する光の波長に対して透明な材料で構成され、かつ前記発光部を保護する保護部と、前記反射部と前記保護部との間に配置されると共に、前記保護部の側の第1面に前記発光部が配置され、前記反射部の側である前記第1面と対向する第2面に前記受光部が配置され、かつ前記発光部が発する光の波長に対して透明な材料で構成される基板と、を含み、前記反射面の焦点距離を変化させながら、前記接触部材の前記接触面側で一回反射した一回反射光が前記反射面で反射して前記受光部の受光領域に入射する一回反射入射光の全受光量に対する比率が第1閾値よりも高い第1焦点距離範囲を求め、前記反射面の焦点距離を変化させながら、前記接触部材の前記接触面側で二回反射した二回反射光が前記反射面で反射して前記受光部の受光領域に入射する二回反射入射光の全受光量に対する比率が第2閾値よりも高い第3焦点距離範囲を求め、前記第1焦点距離範囲と前記第3焦点距離範囲との間の第2焦点距離範囲において、前記反射面の焦点距離を設定する。
【0033】
本態様では、生体情報検出器における反射部の、好ましい設計方法が示される。生体情報検出器は、反射部を有する。反射部は反射面を有し、反射面は二次曲面の一部で構成される。本態様では、反射面は球面の一部もしくは回転放物面の一部により構成される。平面視における反射面の外周の形状は円である。例えば、3次元の空間を規定する、互いに直交するx軸、y軸、z軸のうちのz軸を光軸としたとき、球面をxy平面でスライスしたときの切断面の外周形状が円であり、その円の直径(反射面の開口径)は所定値に設定される。
【0034】
そして、反射面の焦点距離を変化させながら、受光部の全受光量に占める、接触部材(光透過部材)の接触面側(接触面および接触面付近)で反射し、受光部に入射する、直接反射光に対応した入射光の比率の挙動を調べる。
【0035】
例えば、反射面の焦点距離が徐々に大きくなるように変化させると、接触部材の接触面側で一回反射した一回反射光が、さらに反射面で反射して受光部に入射する光(一回反射入射光)の、受光部における全受光量に占める比率が所定の閾値(第1閾値)よりも高い焦点距離範囲が、まず出現する。この焦点距離範囲を第1焦点距離範囲とする。
【0036】
さらに反射面の焦点距離を増大させていくと、次に、直接反射光(一回反射光および二回反射光)が受光部にほとんど到達しない焦点距離範囲が出現する。この焦点距離範囲を第2焦点距離範囲とする。
【0037】
さらに反射面の焦点距離を増大させていくと、接触部材の接触面側で二回反射した二回反射光が、さらに反射面で反射して受光部に入射する光(二回反射入射光)の、受光部における全受光量に占める比率が所定の閾値(第2閾値)よりも高い焦点距離範囲が出現する。この焦点距離範囲を第3焦点距離範囲とする。
【0038】
そして、反射部が有する反射面の焦点距離を、第1焦点距離範囲と第3焦点距離範囲との間にある、第2焦点距離範囲において設定する。反射面の焦点距離が定まると、反射面の3次元の形状と高さは一義的に定まる。
【0039】
本態様によれば、一回反射光(直接反射光:無効光)および二回反射光(直接反射光:無効光)が受光部に入射することを抑制可能な、好ましい反射特性を有する反射面(すなわち反射部)を効率的に設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1(A)、図1(B)は、生体情報検出器の構成の一例と、反射部の好ましい設計について説明するための図
【図2】図2は、生体情報検出器の構成の具体例を示す図
【図3】光透過膜がコーティングされた基板の平面視における外観を示す図
【図4】図4(A)および図4(B)は、発光部が発する光の強度特性の一例ならびに受光部の感度特性の一例を示す図
【図5】光透過膜を有する基板における光の透過特性の一例を示す図
【図6】図6(A)および図6(B)は、球面の一部を用いた反射面をもつ反射部の設計に関係するパラメーターと、設計手法の例を説明するための図
【図7】図7は、生体情報検出器における主要な構成の寸法例を示す図
【図8】図8(A)および図8(B)は、df=1.18mm(Δh=0.4mm)の場合の、直接反射光の挙動を説明するための図
【図9】df=1.278mm(Δh=1.3mm)の場合の、直接反射光の挙動を説明するための図
【図10】df=1.556mm(Δh=2.2mm)の場合の、直接反射光の挙動を説明するための図
【図11】開口径φ=4.4mm、t=0.4mm、δ=0.53mmの条件の下で、焦点距離dfを徐々に増大させた場合における、受光部(フォトダイオード)に入射する、直接反射光の光量の比率(%)の変化を示す図
【図12】開口径φ=4.4mm、t=0.4mm、δ=0.53mmの条件の下で、焦点距離dfを徐々に増大させた場合における、受光部(フォトダイオード)に入射する、脈拍情報を有する有効光の比率(S/N)の変化を示す図
【図13】開口径φ=4.4mm、t=0.4mm、δ=0.53mmの条件の下で、Δhを徐々に増大させた場合における、受光部(フォトダイオード)に入射する、直接反射光の光量の比率(%)の変化を示す図
【図14】開口径φ=4.4mm、t=0.4mm、δ=0.53mmの条件の下で、Δhを徐々に増大させた場合における、受光部(フォトダイオード)に入射する、脈拍情報を有する有効光の比率(S/N)の変化を示す図
【図15】開口径φ=3.6mm、t=0.4mm、δ=0.53mmの条件の下で、焦点距離dfを徐々に増大させた場合における、受光部(フォトダイオード)に入射する、直接反射光の光量の比率(%)の変化を示す図
【図16】開口径φ=4.4mm、t=0.3mm、δ=0.3mmの条件の下で、焦点距離dfを徐々に増大させた場合における、受光部(フォトダイオード)に入射する、直接反射光の光量の比率(%)の変化を示す図
【図17】図17(A)および図17(B)は、放物面の一部で構成される反射面(放物面ミラー)について説明するための図
【図18】開口径φ=4.4mm、接触部材19−2の厚みt=0.4mm、スペーサー部材19−1の高さ(隙間)δ=0.53という条件の下で、焦点距離df=0.7mmとした場合の、直接反射光の挙動を説明するための図
【図19】開口径φ=4.4mm、接触部材19−2の厚みt=0.4mm、スペーサー部材19−1の高さ(隙間)δ=0.53という条件の下で、焦点距離df=1.0mmとした場合の、直接反射光の挙動を説明するための図
【図20】開口径φ=4.4mm、接触部材19−2の厚みt=0.4mm、スペーサー部材19−1の高さ(隙間)δ=0.53という条件の下で、焦点距離df=1.3mmとした場合の、直接反射光の挙動を説明するための図
【図21】開口径φ=4.4mm、t=0.4mm、δ=0.53mmの条件の下で、焦点距離dfを徐々に増大させた場合における、受光部(フォトダイオード)に入射する、直接反射光の光量の比率(%)の変化を示す図
【図22】生体情報検出器を含む生体情報測定装置の一例(手首脈拍計)の外観例を示す図
【図23】生体情報測定装置の内部構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0042】
(第1の実施形態)
まず、生体情報検出器と生体情報測定装置の構成の概要、発光部から出射された光の挙動例等について説明する。
【0043】
(生体情報検出器の構成の概要等)
図1(A)、図1(B)は、生体情報検出器の構成の一例と、反射部の好ましい設計について説明するための図である。図1(A)は、生体情報を有する反射光(有効光)が受光部の受光領域に入射する様子を示す。図1(B)は、保護部を構成する接触部材の接触面側での反射光(直接反射光:無効光)が受光部の受光領域に入射する様子を示す。なお、図1(A)および図1(B)に示される生体情報検出器200の構成は同じであり、各図において、共通する部分には同じ参照符号を付してある。
【0044】
まず、生体情報検出器200の構成について説明する。生体情報検出器200は、例えば、リストバンド等で人の手首に装着することが可能な脈拍計に搭載することができる(これに限定されるものではない)。生体情報は、脈拍情報(心拍情報)の他、血液中の酸素飽和度、体温等であってもよい。
【0045】
図1(A)および図1(B)に示されるように、生体情報検出器は、被検査体(例えば人体)2の被検出部位(指、腕、手首等)1に向かう光R1を発する発光部(発光素子:LED等)14と、発光部14が発する光R1が、被検出部位1の生体情報源である血管BVにて反射された、生体情報を有する光R1’を受ける受光部(受光素子:フォトダイオード等)16と、生体情報を有する光を反射させる反射部18と、保護部19と、光透過性の基板11と、を有する。
【0046】
受光部16は、反射部18側に受光領域(受光面)16−1を有している。反射部18は、二次曲面の反射面(反射ミラー)を有する。反射面は、発光部14と受光部16との間の光路に設けられるドームの内表面に設けることができる。例えば、樹脂で反射部18の本体を成形し、その内表面(受光部16側に形成される二次曲面)を鏡面加工する(例えば、その表面に金属膜等を形成する)ことによって、反射部(反射光学系)を構成することができる。
【0047】
保護部19は、被検査体(被測定体:例えば人体)と接触する(少なくとも接触する可能性がある)接触面SAを備える接触部材19−2と、スペーサー部材19−1とを有する。接触部材19−2およびスペーサー部材19−1は、発光部14が発する光R1の波長に対して透明な材料(例えばガラス)で構成される。すなわち、接触部材19−2は光透過部材である。保護部19は、発光部14を収容する収容部(収容容器、あるいは保護ケース)でもあり、発光素子14を保護する機能をもつ。
【0048】
基板11は、反射部18と保護部19との間に配置される。基板11は、2つの主面を有する。本明細書では、基板11の発光部14側の主面を第1面(あるいは裏面)ということがあり、基板11の反射部18側の主面を第2面(あるいは表面)ということがある。基板11の第1面(裏面)には発光部14が配置され、第2面(表面)には受光部16が配置される。発光部14と受光部16は平面視で重なりを有する。発光部16の基板11と接する面と、受光部16の基板11と接する面とは、基板11の厚みの分だけ離間して対向している。また、基板11は、発光部14が発する光の波長に対して透明な材料(例えばポリイミド、あるいはポリアリレート)で構成される。すなわち基板11は光透過性の基板である。
【0049】
基板11は、反射部18と保護部19との間に配置されるため、発光部14および受光部16が基板11に配置されたとしても、基板11それ自身を支持する機構を別途設ける必要がなく、部品点数が減少する。また、基板11は、発光波長に対して透明な材料で構成されるため、発光部14から受光部16に至る光路途中に基板11を配置できる。よって、基板11を光路以外の位置(例えば反射部18の内部)に格納する必要がない。このように、容易に組み立て可能な生体情報検出器を提供することができる。また、反射部18によって、受光部16に入射する光の光量を増加させることが可能であり、これによって生体情報検出器の検出精度(SN比)が向上する。なお、生体情報源(例えば血管BV)は、接触面SA付近にあってもよい。
【0050】
(発光部から出射された光の挙動例)
次に、図1(A)を参照して、生体情報を有する反射光の挙動の例について説明する。生体情報源である血管BVは、被検査体(例えば人体)2の被検査部位(例えば指、腕(狭義には手首))1の、例えば内部にある。発光部14から発せられる光R1(具体的には主光線:他の部材で反射された反射光を含まない光という意味合いの表現である)は、被検査部位1の内部に進み、表皮、真皮及び皮下組織で拡散または散乱するが、その後、光R1は、生体情報源である血管BVに到達し、血管BVで反射される。また、光R1の一部は、血管BVで吸収される。脈拍の影響により、血管での光の吸収率が変化することから、血管BVにおける反射光R1’の光量が変化し、したがって、生体情報(例えば、脈拍数)は、血管BVでの反射光R1’に反映される。
【0051】
血管BVでの反射光R1’は、皮下組織、真皮及び表皮で拡散又は散乱されるが、図1(A)の例では、反射光R1’は、基板11を通過し、さらに、反射部18で反射されて、受光部16の受光領域(受光面)16−1に直接に入射する。ここで、「直接に入射する」という表現は、例えば複雑な反射過程を経て入射するのではなく、例えば最小限の回数の反射を経て入射する(つまり単純な経路を経て入射する)という意味合いで使用している。受光部16から出力される生体情報の検出信号は、脈拍に対応した脈動成分を含んでいる。よって、検出信号に基づいて、脈拍数を測定することができる。
【0052】
次に、図1(B)を参照して、保護部19を構成する接触部材19−2の接触面SA側(接触面SAおよび接触面SAの近傍(接触面と被検出部位との界面、皮膚表面や皮膚の内側も含む))での反射光(無効光)の挙動の例について説明する。図1(B)において、発光部14から発せられる主光線R2は、接触部材19−2の接触面SA側の位置(例えば接触面SA上の地点)N1で一回反射する。一回反射した反射光(一回反射光)R2’は、基板11を通過し、さらに反射部18にて反射して、受光部16の受光領域16−1に入射する。
【0053】
また、発光部14から発せられる主光線R3は、接触部材19−2の接触面SA側の位置(例えば接触面SA上の地点)N2およびN3で二回反射し、二回反射した反射光(二回反射光)R3’は、基板11を通過し、さらに反射部18にて反射して、受光部16の受光領域16−1に入射する。
【0054】
一回反射光R2’や二回反射光R3’は、発光部14から出射された光が、光透過部材である接触部材19−2の表面(あるいはその近傍)で直接に反射した反射光(つまり直接反射光)であり、直接反射光は、生体情報を有さない無効光(ノイズ光)である。生体情報を有さない無効光が受光部16の受光領域16−1に入射すると、受光部16から出力される生体情報の検出信号のS/N(信号とノイズとの比)が低下する。生体情報検出器の検出精度の向上(生体情報測定装置の測定精度の向上)のためには、直接反射光(無効光)が、受光部16の受光領域16−1に入射することを抑制することができるように、集光光学系である反射部18を設計することが重要である。
【0055】
(生体情報検出器の構成の具体例および生体情報測定装置の構成例)
図2は、生体情報検出器の構成の具体例を示す図である。図2の上側には、生体情報検出器の断面構造例を示され、下側には、平面視における各部の位置関係が示されている。
図2において、図1と共通する部分には同じ参照符号を付している(このことは、以下の図面でも同様である)。
【0056】
図2に示されるように、反射部18の開口径はφである。反射部18の反射面18−1は、二次曲面(ここでは球面とする)の一部で構成されている(例えば略半球状面が使用される)。略半球状面の底部は、基板等を無視して考えれば開口されている。その開口部の平面視の形状(つまり、平面視における反射面の外周の形状)は、図2の下側に示されるように円であり、その直径(つまり開口径)はφである。
【0057】
また、保護部19におけるスペーサー部材19−1の高さ(あるいは、基板11と接触部材19−1の接触面SAと対向する面との間の隙間ということができる)はδであり、接触部材19−2の厚みはtである。
【0058】
図2の下側に示されるように、発光部14と受光部16は平面視で重なりを有する。また、発光部14、受光部16、反射部18の各々の、平面視における外周形状は同心円を構成する(中心はsである)。
【0059】
また、基板11は、光透過部材としての光学部品であると同時に、回路を形成するための配線基板でもある。基板11は、例えばプリント配線基板である。図2の上側に示すように、基板11の第1面(表面)には、受光部16のための配線62−1が形成され、基板11の第2面(裏面)には、発光部14のための配線62−2,62−3が形成されている。配線62−1と受光部16はボンディングワイヤー61で接続されている。配線62−2と発光部14はボンディングワイヤー63で接続されている。配線62−3と発光部14はボンディングワイヤー65で接続されている。
【0060】
プリント配線基板では、プリント配線の剥離防止のために、第1面(裏面)および第2面(表面)をある程度、粗面にすることが好ましい。但し、基板11の第1面および第2面を粗面とすると、光の散乱が増加するという不都合が生じる。そこで、図2の例では、基板11の光通過領域(配線等が形成されている遮光領域を除く領域ということもできる)における第1面(裏面)および第2面(表面)の各々には、光透過膜11−1および11−2の各々が形成されている。光透過膜11−1および11−2は、例えば光透過性のレジスト膜である。基板11の光通過領域に光透過膜11−1,11−2を形成することによって、基板11の裏面および表面における粗面が平坦化され、かつ、空気との屈折率差が小さくなる。よって、光が、基板11(広義には11−1,11−2を含む)の表面および裏面にて散乱されることが抑制される。また、基板11と空気との屈折率差が小さくなることから、基板11で光が屈折する程度を小さくすることができる。例えば、基板11の厚みを薄く設定すれば、基板11中を光がほとんど屈折せずに直進する、とみなすことも可能となる。このことは、光の挙動をシミュレーションすることを容易化し、また、生体情報検出器200の光学系の設計を容易化することに貢献する。
【0061】
また、図2の例では、リフレクター20が設けられている。なお、リフレクター20を第1反射部と言う場合には、二次曲面で構成される反射面18−1を有する反射部18は第2反射部と言うことができる。
【0062】
リフレクター20は、例えば、発光部14から出射される光の広がりを抑制して光の指向性を高め、被検出部位1以外に向けて出射される無効光を低減する効果を有する。また、発光部14は、第1発光面14Aと第2発光面(側面)14Bを有し、第2発光面14Bからも光が出射される。リフレクター20の周囲に設けられている突起部(内壁面が傾斜面や曲面である反射面を有する)は、発光部14の側面(第2発光面14B)から出射される光を反射し(この反射光が光R4である)、光R4を被検出部位1に向かわせる効果を有する。
【0063】
また、リフレクター20は、ある程度の幅を有する。よって、保護部19における接触部材19−2の接触面SA近傍で反射する直接反射光(無効光)の一部が、反射部18側に侵入するのを防止する効果も有する。例えば斜め下方から入射する直接反射光は、リフレクター20の端部等で反射され、これによって、直接反射光が反射部18側に侵入することが防止される。また、リフレクター20は、直接反射光の一部を反射させて、被検出部位1に向かわせ、これによって、無効光を有効光に転換するという効果も有する。
【0064】
このように、本発明による反射光学系の良好な反射特性の実現によるS/N改善の効果に、さらにリフレクター20によるS/N改善の効果が加わることによって、生体情報検出器200の検出精度がさらに向上する。
【0065】
図3は、光透過膜がコーティングされた基板の平面視における外観を示す図である。図3は、基板11の第1面(表面:受光部16側の面)の平面視における外観を示している。基板11の第1面上の光通過領域(遮光部以外の領域)には、光透過膜11−1が形成されている。なお、基板11の第2面(発光部14側の面)上の光通過領域(遮光部以外の領域)には、光透過膜11−2が形成されている。
【0066】
図4(A)および図4(B)は、発光部が発する光の強度特性の一例ならびに受光部の感度特性の一例を示す図である。図4(A)に示される発光強度の特性例では、520nmの波長を持つ光の強度が最大値を示し、その強度で他の波長を持つ光の強度は正規化されている。また、発光部14が発する光の波長の範囲は、470nm〜600nmである。なお、発光部14は、例えばLEDで構成される。LEDが発する光の波長は、例えば425nm〜625nmの範囲に強度の最大値(広義には、ピーク値)を持つことができ、発光部14からは、例えば緑色の光が発せられる。
【0067】
図4(B)は、受光部の感度特性の一例を示している。受光部16としては、例えば、GaAsPフォトダイオードやSiフォトダイオードを使用することができる。但し、GaAsPフォトダイオードが受ける光の波長は、例えば550nm〜650nmの範囲に感度の最大値(広義には、ピーク値)を持つ。生体(水やヘモグロビン)は、700nm〜1100nmの範囲に含まれる赤外線を透過させ易いので、GaAsPフォトダイオードで構成される受光部16は、例えばSiフォトダイオードで構成される受光部16と比較して、外光に起因するノイズ成分を減少させることができる。
【0068】
図4(B)に示される感度特性は、受光部16として、GaAsPフォトダイオードを使用した場合の感度特性である。図4(B)の例では、565nmの波長を持つ光の感度が、最大値を示し、その感度で他の波長の持つ光の感度は正規化されている。受光部16が受ける光の波長の感度の最大値は、図4(A)に示される発光部14が発する光の波長の範囲に入っている一方、生体の窓と呼ばれる700nm〜1100nmの範囲(つまり、生体中を通過し易い波長帯域)に入っていない。図4(B)の例において、700nm〜1100nmの範囲に含まれる赤外線の感度は、相対感度0.3(=30%)以下に設定されている。受光部16が受ける光の波長の感度の最大値(例えば、565nm)は、生体の窓の下限である700nmよりも、発光部14が発する光の波長の強度の最大値(520nm)の方に近いことが好ましい。
【0069】
図5は、光透過膜がコーティングされた基板を通る光の透過特性の一例を示す図である。図5に示される光の透過特性は、基板11を透過する前の光の強度と基板11を透過した後の光の強度とを用いて透過率を計算することによって得られたものである。
【0070】
図5の例において、生体の窓の下限である700nm以下の波長領域において、525nmの波長を持つ光の透過率が、最大値を示す。また、生体の窓の下限である700nm以下の波長領域において、光透過膜11−1および11−2の少なくとも一方を通る光の透過率の最大値は、例えば図4(A)に示される発光部14が発する光の波長の強度の最大値の±10%以内の範囲に入る。光透過膜11−1(11−2)は、発光部14が発する光(例えば、図1(A)に示される光R1が血管BVで反射された有効な反射光R1’)を選択的に透過させることが好ましい。
【0071】
(球面の一部を用いた反射面をもつ反射部の設計について)
次に、図6〜図16を参照して、球面の一部を用いた反射面をもつ反射部の設計について説明する。図6(A)および図6(B)は、球面の一部を用いた反射面をもつ反射部の設計に関係するパラメーターと、設計手法の例を説明するための図である。
【0072】
図6(A)の例では、3次元の空間を規定するために、互いに直交するx軸、y軸、z軸が示されており、z軸を光軸(主光学軸)とする。z軸と反射部18の反射面とが交差する点を原点(面原点)mとする。
【0073】
反射部18の反射面の開口径はφである。反射部18の反射面は、二次曲面である球面の一部で構成されている。図6(A)の例では、反射面は、球面の一部である略半球状面で構成されている。
【0074】
また、反射部18の焦点(つまり反射面を含む集光ミラーの焦点)をfとする。光軸(Z軸)と平行な光線LGが反射部18に入射すると、その光は、反射部18で反射されて焦点fに集光される。原点mと焦点fとの距離が焦点距離dfである。
【0075】
焦点距離dfの2倍が、反射面の曲率半径rに相当する。すなわち、焦点距離dfは、r/2である。また、図6(A)において、点pは、反射部18における反射面を構成する球面の中心点である。
【0076】
また、反射部18の反射面の高さをhとする。高さhは、基板11の第2面(反射部18側の面)から原点(面原点)mまでの距離によって定まる。すなわち、反射面の高さhは、光軸(Z軸)と反射面とが交差する点m(面原点m)と、基板11の第2面(つまり基板11の反射面側に位置する主面であり、基板11の表面)と、の間の距離を表している。反射面の高さhは、反射面の曲率半径rおよび開口径φに対応して一義的に定まる。また、反射面の高さhと反射面の曲率半径rとの差をΔhとする。差Δh(単に、Δhと記載する場合がある)は、基板11の第2面から反射面を構成する球面の中心点pまでの距離によって定まる。
【0077】
また、上述したように、保護部19におけるスペーサー部材19−1の高さ(基板11と接触部材19−2の接触面SAと対向する面との間の隙間)はδであり、接触部材19−2の厚みはtである。
【0078】
ここで、反射部18の開口径φと、スペーサー部材19−1の高さ(基板11と接触部材19−2の接触面SAと対向する面との間の隙間)δ、ならびに接触部材19−1の厚みtの各々を所定値に固定し、Δhまたは反射部18の焦点距離dfを変化させる場合を想定する。図6(B)は、その場合に、反射面(反射面を構成する球面)の曲率半径rと、反射部18の反射面の形状とが、どのように変化するかを示した図である。
【0079】
図6(B)において、Δh(反射面の高さhと反射面の曲率半径rとの差)は、Δh1、Δh2ならびにΔh3に設定される。これに対応して、反射面の曲率半径rは、r1、r2、r3と変化する。つまり、Δh1のときは曲率半径はr1となり、Δh2のときは曲率半径はr2となり、Δh3のときは曲率半径はr3となる。
【0080】
反射部18(反射集光ミラー)の焦点距離dfは、曲率半径rの1/2であることから、曲率半径rが変化すれば,焦点距離dfも、曲率半径rに対応して変化する。曲率半径がr1のときは焦点距離はdf1であり、このときの反射部18の焦点fはf1である。曲率半径がr2のときは焦点距離はdf2であり、このときの反射部18の焦点fはf2である。曲率半径がr3のときは焦点距離はdf3であり、このときの反射部18の焦点fはf3である。
【0081】
また、曲率半径rが変化すると、球面で構成される反射面の形状も、曲率半径rの変化に対応して変化する。つまり、開口径φは一定であることから、図6(B)において、開口径を規定するa点、b点の位置は固定であり、よって、曲率半径rが変化すれば、球面で構成される反射面の高さhも、その変化に対応して変化する。図6(B)において、曲率半径rがr1のときの反射面の形状は18aである。曲率半径rがr2のときの反射面の形状は18bである。曲率半径rがr3のときの反射面の形状は18cである。このように、Δhを変化させることによって、反射面の三次元の形状および高さを変化させることができる。
【0082】
以上の説明では、Δhを変化させて反射面の三次元の形状と高さを変化させているが、焦点距離dfを変化させることによって反射面の形状を変化させることもできる。すなわち、反射面の開口径φが固定値(既知)であるとき、例えば、反射部18(反射光学系)の焦点距離dfを変化させると、反射面(を構成する球面)の曲率半径rが変化し、曲率半径rが変化すると、反射面の高さhと曲率半径rとの差Δhが変化する。反射面の焦点距離dfと、反射面の高さhと曲率半径rとの差Δhは一対一の対応関係があり、焦点距離dfが増大すると、Δhも増大する。反射部18の焦点距離dfが定まると、Δhが定まる。
【0083】
反射面を構成する球面の曲率半径(つまり反射面の曲率半径)rは、下記の(3)式によって表すことができる(図6(A)の太線の矢印で示される直角三角形を参照)。
【数3】

【0084】
例えば、図6(B)の左下側に示される、斜線が施された直角三角形に着目する。三平方の定理より、曲率半径r3は、下記(4)式によって表されることがわかる。
【数4】

【0085】
よって、例えば反射面の好ましい焦点距離が定まると、上記(3)式によって、反射面の曲率半径rを一義的に定めることができ、これによって、反射面を構成する球面が定まる。また、反射面の開口径φ(平面視における反射面の外周円の直径)は固定(既知)であることから、反射面の高さhが一義的に特定される。つまり、開口径φが決まれば、これに対応して球面のスライス位置(球面をxy平面で切断する位置)が決まり、これによって反射面の3次元の形状と高さが一義的に特定される。
【0086】
以上説明した反射光学系の設計手法を用いて、反射部18を、図1(B)で示した、一回反射光や二回反射光(いずれも無効な直接反射光である)を低減できるように設計することができる。
【0087】
(焦点距離dfまたは差Δhを変化させた場合の反射光の挙動のシミュレーション)
以下、図7〜図16を用いて、焦点距離dfまたは差Δhを変化させた場合の反射光の挙動のシミュレーション結果等について説明する。図7は、生体情報検出器における主要な構成の寸法例を示す図である(但し、以下の寸法例は一例である)。図7に示すように、開口径φを4.4mmに設定し、保護部19のスペーサー部材19−1の高さ(あるいは隙間)δを0.53mmに設定し、接触部材19−2の厚さ(ガラスの厚み)tを0.4mmに設定する。
【0088】
また、図7に示されるように、受光部16の厚みtaは例えば0.28mmであり、リフレクター20の底部tbの厚みは例えば0.08mmであり、発光部14の厚みtcは例えば0.08mmであり、リフレクター20の最大高さtdは、例えば0.2mmである。
【0089】
また、基板11(光透過膜としての光透過性レジスト膜11−1,11−2を含む)の現実の厚みteは例えば0.07mm程度である。但し、基板11が十分に薄く、かつ上述のとおり、光透過性レジスト膜によって平坦性が確保され、空気との屈折率差も縮小されていることから、反射光の挙動のシミュレーションに際しては、基板11の厚みteは無視している(つまり、te=0として取り扱っている)。また、反射部18の反射面は、上述のとおり、二次曲面としての球面の一部で構成される。
【0090】
また、保護部19を構成するガラスの屈折率は、例えば1.52である。基板11を構成するポリイミドの屈折率は、例えば1.7である。透明基板用の材料としては、ポリアリレート(屈折率1.61))を使用することもできる。
【0091】
以下、図7に示される生体情報検出器200において、反射面(球面鏡)の焦点距離df(あるいは反射面の高さと反射面の曲率半径との差Δh)を変化させた場合(他のパラメータは固定)における、直接反射光(無効光あるいは無効反射光)の挙動、ならびに生体情報を有する光(有効光あるいは有効反射光)の挙動について考察する。
【0092】
図8(A)および図8(B)は、df=1.118mm(Δh=0.4mm)の場合の、直接反射光(無効光)の挙動を説明するための図である。図8(B)に示されるように、反射部18の反射面は、略半球状面である。なお、図8(A)において、反射部18の反射面18−1ならびにスペーサー部材19−1は、断面形状ではなく、空間的な奥行きを有する形状として描かれている(この点は、以降の図面でも同様である)。
【0093】
図8(A)において、発光部14から発せられた光(リフレクター等の他の部材で反射した光を含まない)が、保護部19における接触部材19−2の接触面SA側(接触面SAあるいはその近傍)で反射する直接反射光(無効光)の軌跡が、実線の矢印で示されている。
【0094】
図8(A)からわかるように、発光部14から発せられた光が接触部材19−2の接触面SA側で一回反射した一回反射光が、受光部16の受光領域(受光面)16−1に入射する確率が高い。つまり、一回反射入射光(一回反射光が反射面で反射されて受光部16に入射する場合の入射光)の光量の、受光部16における全受光量に占める比率が高くなる傾向が現れる。
【0095】
例えば、一回反射光A1は、接触部材19−2の接触面SA側の点N1で一回反射している。その一回反射光は基板11を通過し、さらに反射部18で反射されて受光部16の受光領域16−1に直接的に(つまり、複雑な反射や散乱等を受けることなく)到達している。また、一回反射光A2は、接触部材19−2の接触面SA側の点N2で一回反射している。その一回反射光は基板11を通過し、さらに反射部18で反射されて受光部16の受光領域16−1に直接的に到達(入射)している。また、一回反射光A3は、接触部材19−2の接触面SA側の点N3で一回反射している。その一回反射光が基板11を通過し、さらに反射部18で反射されて受光部16の受光領域16−1に直接的に到達(入射)している。
【0096】
一方、先に図1(A)を用いて説明したように、被検出部位BVからの反射光(生体情報をもつ有効反射光)R1’は、受光部16の受光領域(受光面)16−1に入射する。
【0097】
次に、図9を参照する。図9は、df=1.278mm(Δh=1.3mm)の場合の、直接反射光の挙動を説明するための図である。図9の例において、発光部14から発せられた光が、保護部19における接触部材19−2の接触面SA側(接触面SAあるいはその近傍)で反射する直接反射光(無効光)の軌跡が、実線の矢印で示されている。
【0098】
図9からわかるように、発光部14から発せられた光が接触部材19−2の接触面SA側で一回反射した一回反射光が、受光部16の受光領域(受光面)16−1に入射することがほとんど無い。また、発光部14から発せられた光が接触部材19−2の接触面SA側で二回反射した二回反射光も、受光部16の受光領域(受光面)16−1に入射することがほとんど無い。
【0099】
つまり、直接反射光(一回反射光および二回反射光等を含む)が反射面で反射されて受光部16に入射する場合の入射光(直接反射入射光)の光量の、受光部16における全受光量に占める比率が顕著に抑制される傾向が現れる。
【0100】
一方、先に図1(A)を用いて説明したように、被検出部位BVからの反射光(生体情報をもつ有効反射光)R1’は、受光部16の受光領域(受光面)16−1に到達(入射)する。
【0101】
次に、図10を参照する。図10は、df=1.556mm(Δh=2.2mm)の場合の、直接反射光の挙動を説明するための図である。図10の例において、発光部14から発せられた光が、保護部19における接触部材19−2の接触面SA側(接触面SAあるいはその近傍)で反射する直接反射光(無効光)の軌跡が、実線の矢印で示されている。
【0102】
図10からわかるように、発光部14から発せられた光が接触部材19−2の接触面SA側で二回反射した二回反射光が、受光部16の受光領域(受光面)16−1に入射する確率が高い。
【0103】
つまり、直接反射光(無効光)である二回反射光が反射面で反射されて受光部16に入射する場合の入射光(二回反射入射光)の光量の、受光部16における全受光量に占める比率が高くなる傾向が現れる。
【0104】
例えば、二回反射光A4は、接触部材19−2の接触面SA側の点N4およびN5で二回反射している。その二回反射光が基板11を通過し、さらに反射部18で反射されて受光部16の受光領域16−1に直接的に到達(入射)している。また、二回反射光A5は、接触部材19−2の接触面SA側の点N6およびN7で二回反射し、その二回反射光が基板11を通過し、さらに反射部18で反射されて受光部16の受光領域16−1に直接的に到達(入射)している。また、二回反射光A6は、接触部材19−2の接触面SA側の点N8およびN9で二回反射している。その二回反射光が基板11を通過し、さらに反射部18で反射されて受光部16の受光領域16−1に直接的に到達(入射)している。
【0105】
一方、先に図1(A)を用いて説明したように、被検出部位BVからの反射光(生体情報をもつ有効反射光)R1’は、受光部16の受光領域(受光面)16−1に入射する。
【0106】
このような直接反射光の挙動のシミュレーションを繰り返し実行して、反射面の焦点距離の変化と、受光部に入射する直接反射光(無効光)の光量の比率との相関関係を調べた結果が図11に示される。図11は、開口径φ=4.4mm、t=0.4mm、δ=0.53mmの条件の下で、焦点距離dfを徐々に増大させた場合における、受光部(フォトダイオード)に入射する直接反射光(無効光)の光量の、受光部16における全受光量に占める比率(%)の変化を示す図である。
【0107】
図11において、反射面の焦点距離dfを徐々に大きくしていくと、受光部16の受光領域16−1における受光量に占める、保護部19における接触部材19−2の接触面SA側で一回反射し、さらに反射面で反射して受光部の受光領域に直接に入射する光線の比率が、所定閾値である第1閾値(≒0%)よりも高い焦点距離範囲FA(つまり、焦点距離dfが1.1〜1.2の範囲)が、まず出現する。この焦点距離範囲FAを、第1焦点距離範囲とする。第1焦点距離範囲は、一回反射に対応した焦点距離範囲である。
【0108】
さらに反射面の焦点距離dfを増大させていくと、次に、一回反射光が受光部16の受光領域にほとんど到達しない焦点距離範囲FB(つまり焦点距離dfが1.2〜1.41の範囲)が出現する。この焦点距離範囲FBを、第2焦点距離範囲とする。第2焦点距離範囲は、直接反射光の受光部16への入射が抑制された焦点距離範囲である。
【0109】
さらに反射面の焦点距離dfを増大させていくと、次に、受光部16の受光領域における受光量に占める、保護部19における接触部材19−2の接触面SA側で二回反射し、さらに反射面で反射して受光部16の受光領域16−1に直接に入射する光線の比率が、所定閾値である第2閾値(≒0%)よりも高い焦点距離範囲FC(つまり焦点距離dfが1.41〜1.7の範囲)が出現する。この焦点距離範囲FCを第3焦点距離範囲とする。第3焦点距離範囲は、二回反射に対応した焦点距離範囲である。
【0110】
次に、無効光に加えて、生体情報を有する有効光(有効反射光:図1(A)に示される光R1’)を含めた反射光の挙動について説明する。無効光と有効光を含む反射光の挙動は、受光部16から出力される生体情報の検出信号(脈情報の検出信号等)のS/Nの変化を調べることによって明らかとなる。また、無効光(無効反射光)の挙動の傾向は、図11から明らかとされている。
【0111】
よって、受光部16から出力される検出信号のS/Nの変化の傾向と、図11に示される無効光(無効反射光)の挙動傾向とを比較することによって、生体情報を有する有効光(有効反射光)の挙動傾向を把握することも可能である。例えば、受光部16の受光領域16−1に到達する無効光の光量(つまりノイズN)が顕著に抑制されている焦点距離領域において、検出信号のS/Nが増大している焦点距離領域が出現するのならば、その焦点距離領域では、有効光の光量(つまりS)が増大していることになる。
【0112】
図12は、開口径φ=4.4mm、t=0.4mm、δ=0.53mmの条件の下で、焦点距離dfを徐々に増大させた場合における、脈情報の検出信号(脈情報を有する脈信号、およびノイズを含む全信号)に対する、脈信号の比率の変化(%)の一例を示す図である。
【0113】
図12から明らかなように、検出信号のS/Nは、焦点距離dfが1.28付近でピークを示す。このピークに対応した焦点距離df(=1.28)は、図11で示した、第2焦点距離範囲FB(焦点距離dfが1.2〜1.41の範囲)内にある。
【0114】
また、図11で示した第1焦点距離範囲FA(焦点距離dfが1.1〜1.2の範囲)ならびに第3焦点距離範囲FC(焦点距離dfが1.41〜1.7の範囲)の各々における検出信号のS/Nは、第2焦点距離範囲FB(焦点距離dfが1.2〜1.41の範囲)における検出信号のS/Nよりも総じて低くなっていることがわかる。
【0115】
先に説明したように、第2焦点距離範囲FBは、直接反射光(無効光)が顕著に抑制された焦点距離範囲である。よって、第2焦点距離範囲FBにおいて、他の焦点距離範囲(FA,FC)における検出信号のS/Nが高いということは、すなわち、第2焦点距離範囲FBにおいて、有効光(有効反射光)の比率が、他の焦点距離範囲(第1焦点距離範囲FA,第3焦点距離範囲FC)よりも高い(つまり、有効光が受光部16の受光領域16−1により多く入射する)ことを示している。
【0116】
つまり、第2焦点距離範囲FB(焦点距離dfが1.2〜1.41の範囲)では、直接反射光(無効光)の受光部16の受光領域16−1への入射が抑制される効果が得られると共に、生体情報としての脈拍情報を有する有効光(有効反射光:図1(A)の光R1’)が増加するという効果が得られる。したがって、反射部18の反射面18−1の焦点距離dfを、焦点距離範囲FB内に設定することによって、生体情報としての脈拍の検出信号のS/Nを向上させることができる。つまり検出信号のS/Nを改善することができ、よって、より高精度な検出が可能となる。特に、反射部18の反射面18−1の焦点距離dfを、検出信号のS/Nのピーク値付近に対応する焦点距離に設定することによって、検出精度を最も高くすることができる。
【0117】
以上の例では、焦点距離dfをパラメーターとして反射部の光学特性を解析したが、Δhをパラメーターとして用いた場合でも、同様の結果が得られる。
【0118】
図13は、開口径φ=4.4mm、t=0.4mm、δ=0.53mmの条件の下で、Δhを徐々に増大させた場合における、受光部(フォトダイオード)に入射する、直接反射光(無効光)の光量の比率(%)の変化を示す図である。先に説明したように、焦点距離dfと、反射面の高さhと曲率半径rとの差Δhとは一対一の対応関係があり、一方が増大すれば他方も増大する。図13の例では、Δhをパラメーター(変数)として、直接反射光の光量の比率(%)の変化を調べている。
【0119】
図13においても、一回反射に対応したΔh範囲QA(Δhが0.1〜1.0の範囲であり、この範囲で比率が1%以上になる:第1Δh範囲)と、直接反射光の受光部への入射が抑制されたΔh範囲QB(Δhが1.0〜1.6の範囲であり、この範囲で比率が1%以下になる:第2Δh範囲)と、二回反射に対応したΔh範囲QC(Δhが1.6〜2.8の範囲であり、この範囲で比率が1%以上になる:第3Δh範囲)と、が存在している。図13の例では、所定の閾値である第1閾値および第2閾値は共に1%である。
【0120】
図14は、開口径φ=4.4mm、t=0.4mm、δ=0.53mmの条件の下で、Δhを徐々に増大させた場合における、脈情報の検出信号(脈情報を有する脈信号、およびノイズを含む全信号)に対する、脈信号の比率の変化(%)の他の例を示す図である。図14から明らかなように、受光部16から出力される検出信号のS/Nは、Δhが1.28付近でピークを示す。このピークに対応したΔh(=1.28)は、図13で示した、直接反射光の受光部への入射が抑制されたΔh範囲QB(Δhが1.0〜1.6の範囲:第2Δh範囲)内にある。
【0121】
また、図13で示した一回反射に対応したΔh範囲QA(Δhが0.1〜1.0の範囲:第1Δh範囲)ならびに二回反射に対応したΔh範囲QC(Δhが1.6〜2.8の範囲:第3Δh範囲)の各々における検出信号のS/Nは、第2Δh範囲QBにおける検出信号のS/Nよりも総じて低くなっていることがわかる。つまり、第2Δh範囲QB(Δhが1.0〜1.6の範囲)では、直接反射光の受光部16の受光領域16−1への入射が抑制される効果が得られると共に、脈拍情報を有する有効光の入射光量が増大する効果が得られ、これによって、脈拍情報の検出信号のS/Nが、他のΔh範囲(第1Δh範囲QA,第3Δh範囲QC)に比べて高くなる(つまり検出信号のS/Nが改善される)ことがわかる。
【0122】
したがって、Δhを、第2Δh範囲QB内に設定することによって、生体情報としての脈拍の検出信号のS/Nを向上させることができる。つまり検出信号のS/Nを改善することができ、よって、より高精度な検出が可能となる。特に、Δhを、検出信号のS/Nのピーク値付近に対応する値に設定することによって、検出精度を最も高くすることができる。
【0123】
図15および図16は、前提となる寸法条件の一部を変更して、同様のシミュレーションを行った場合の結果を示している。
【0124】
すなわち、図15は、開口径φ=3.6mm、t=0.4mm、δ=0.53mmの条件の下で、焦点距離dfを徐々に増大させた場合における、受光部(フォトダイオード)に入射する、直接反射光の光量の比率(%)の変化を示す図である。図15の例では、開口径φが4.4mm(前掲の例)から3.6mmに変更されている。
【0125】
図15の例においても、第1焦点距離範囲FA’(焦点距離dfが0.9〜0.99の範囲)と、第2焦点距離範囲FB’(焦点距離dfが0.99〜1.22の範囲)と、第3焦点距離範囲FC’(焦点距離dfが1.22〜1.49の範囲)と、が存在していることがわかる。
【0126】
また、図16は、開口径φ=4.4mm、t=0.3mm、δ=0.3mmの条件の下で、焦点距離dfを徐々に増大させた場合における、受光部(フォトダイオード)に入射する、直接反射光の光量の比率(%)の変化を示す図である。図16の例では、接触部材19−2の厚みtが0.4mm(前掲の例)から0.3mmに変更されており、かつ、スペーサー部材19−1の高さ(隙間)δが0.53(前掲の例)から0.3mmに変更されている。
【0127】
図16の例においても、第1焦点距離範囲FA”(焦点距離dfが1.1〜1.14の範囲)と、第2焦点距離範囲FB”(焦点距離dfが1.14〜1.28の範囲)と、第3焦点距離範囲FC”(焦点距離dfが1.28〜1.62の範囲)と、が存在している。
【0128】
このように、開口径φ、接触部材19−2の厚みt、スペーサー部材19−1の高さ(隙間)δのいずれを変更した場合でも、第1焦点距離範囲と、第3焦点距離範囲との間に、第2焦点距離範囲が出現する。したがって、このような直接反射光の挙動に最も大きな影響を与える主パラメーターは、焦点距離df(あるいはΔh)であることがわかる。したがって、反射部18の好ましい反射特性を実現するための設計において、焦点距離df(あるいはΔh)を設計パラメーターとして利用することが有効である。
【0129】
このような知見に基づいた場合、反射部18が有する反射面の焦点距離dfは、第1焦点距離範囲FA(FA’,FA”)と、第3焦点距離範囲FC(FC’,FC”)との間にある、第2焦点距離範囲FB(FB’,FB”)において設定されるのが好ましい。
【0130】
上述のとおり、反射面の焦点距離dfが定まると、反射面を構成する球面の曲率半径が定まる。よって、球面が一義的に定まる。また、反射面の開口径は既知であることから、球面をxy平面によりスライスする位置が一義的に定まり、よって、球面の一部で構成される反射面の高さhが定まる。よって、反射部18が有する反射面の3次元の形状および高さが一義的に決定される。
【0131】
このような設計手法によって、反射部18の反射特性を調整することによって、一回反射光(無効光)および二回反射光(無効光)が受光部16の受光領域16−1に入射することが抑制され、かつ、生体情報を有する有効反射光が、受光部16の受光領域16−1に入射する確率を増加することができる。よって、接触部材19−2の接触面SA側での反射光(直接反射光)による悪影響(受光部16から出力される検出信号のS/N低下等)を抑制することができる。
【0132】
(第2の実施形態)
本実施形態では、反射部の反射面は、二次曲面である放物面の一部で構成される。前掲の実施形態では、反射部の反射面は、二次曲面である球面を利用して構成されていたが、非球面(つまり放物面)を利用して反射面を構成することも可能である。
【0133】
放物面としては、回転放物面を使用することができる。回転放物面は、3次元の空間を規定する、互いに直交するx軸、y軸、z軸のうちのz軸を光軸としたとき、放物線を、対称軸であるz軸を回転軸として回転させることによって得られる二次曲面(x、y、zの3元2次方程式によって表される曲面)である。
【0134】
図17(A)および図17(B)は、放物面の一部で構成される反射面(放物面鏡)について説明するための図である。図17(B)に示すように、3次元の空間を規定する、互いに直交するx軸、y軸、z軸のうちのz軸を光軸(主光学軸)としたとき、反射面を構成する放物面は、z軸を回転軸とする回転放物面とすることができる。z軸と回転放物面とが交差する点を原点(面原点)mとする。
【0135】
また、図17(A)に示すように、原点mに接する球面CQの曲率半径をrとした場合に、回転放物面に関して、下記の(5)式が成立する。
【数5】

【0136】
また、平面視における反射面18−1の外周形状は、前掲の実施形態と同様に円であり、その円の直径(つまり反射面の開口径)φは所定値に設定される。反射面の開口径φが既知であるとき、例えば、反射面の焦点距離dfと、反射面を構成する放物面における、上述の原点mに接する球面CQの曲率半径rとは一対一の対応関係にある。よって、好ましい焦点距離dfが定まれば、上述の原点mに接する球面の曲率半径rが定まり、上記(5)式によって回転放物面が一義的に決定される。また、反射面の開口径φは既知であることから、これによって、xy平面による回転放物面のスライス位置が決まり、反射面の高さhが一義的に特定される。よって、反射面の3次元の形状(ならびに高さ)が一義的に特定される。
【0137】
次に、図18〜図20を参照して、反射面(放物面鏡)18−1の焦点距離dfを変化させた場合(他のパラメータは固定)における、直接反射光(無効光)の挙動について考察する。
【0138】
図18は、開口径φ=4.4mm、接触部材19−2の厚みt=0.4mm、スペーサー部材19−1の高さ(隙間)δ=0.53という条件の下で、焦点距離df=0.7mmとした場合の、直接反射光の挙動を説明するための図である。図18に示される反射部18の反射面18−1は、回転放物面の一部で構成される。なお、図18において、反射部18の反射面は、断面形状ではなく、空間的な奥行きを有する形状として描かれている(この点は、以降の図面でも同様である)。
【0139】
図18において、発光部14から発せられた光(ここではリフレクター等の他の部材で反射した光を含まないものとする)が、保護部19における接触部材19−2の接触面SA側(接触面SAあるいはその近傍)で反射する直接反射光(無効光)の軌跡が、実線の矢印で示されている。
【0140】
図18からわかるように、発光部14から発せられた光が接触部材19−2の接触面SA側で一回反射した一回反射光が、受光部16の受光領域(受光面)16−1に入射する確率が高い。つまり、受光部16の全受光量に占める、一回反射入射光の光量の比率が高まる傾向が現れる。
【0141】
図19は、開口径φ=4.4mm、接触部材19−2の厚みt=0.4mm、スペーサー部材19−1の高さ(隙間)δ=0.53という条件の下で、焦点距離df=1.0mmとした場合の、直接反射光の挙動を説明するための図である。
【0142】
図19からわかるように、発光部14から発せられた光が接触部材19−2の接触面SA側で一回反射した一回反射光が、受光部16の受光領域(受光面)16−1に入射することがほとんど無い。また、発光部14から発せられた光が接触部材19−2の接触面SA側で二回反射した二回反射光が、受光部16の受光領域(受光面)16−1に入射することもほとんど無い。一方、先に説明した図1(A)の例と同様に、被検出部位からの反射光(生体情報をもつ有効反射光)は、受光部16の受光領域(受光面)16−1に入射する。
【0143】
図20は、開口径φ=4.4mm、接触部材19−2の厚みt=0.4mm、スペーサー部材19−1の高さ(隙間)δ=0.53という条件の下で、焦点距離df=1.3mmとした場合の、直接反射光の挙動を説明するための図である。
【0144】
図10からわかるように、発光部14から発せられた光が接触部材19−2の接触面SA側で二回反射した二回反射光が、受光部16の受光領域(受光面)16−1に入射する確率が高い。つまり、受光部16の全受光量に占める、二回反射入射光の光量の比率が高まる傾向が現れる。
【0145】
このような直接反射光の挙動のシミュレーションを繰り返し実行して、反射面の焦点距離の変化と、受光部16に入射する直接反射光の光量の比率との相関関係を調べた結果が図21に示される。図21は、開口径φ=4.4mm、t=0.4mm、δ=0.53mmの条件の下で、焦点距離dfを徐々に増大させた場合における、受光部(フォトダイオード)に入射する、直接反射光の光量の比率(%)の変化を示す図である。
【0146】
図21において、反射面の焦点距離dfを徐々に大きくしていくと、上述の球面の一部からなる反射面を用いた例と同様に、まず、第1焦点距離範囲FA(焦点距離dfが0.55mm〜1.0mmの範囲)が出現する。次に、第2焦点距離範囲FB(焦点距離dfが1.0mm〜1.15mmの範囲)が出現する。
【0147】
この焦点距離範囲FBにおいては、受光部に入射する直接反射光の光量の比率は1%以下に抑制されている(本例における、反射光の光量の高低を判断するための所定の閾値である第1閾値および第2閾値は、1%である)。また、焦点距離dfが1.1付近で、直接反射光の比率はほとんど零になる。
【0148】
反射面の焦点距離dfをさらに大きくしていくと、次に、第3焦点距離範囲FC(焦点距離dfが1.15mm〜1.55mm)が出現する。
【0149】
このような知見に基づく場合、反射部18が有する反射面(放物面鏡)の焦点距離は、第1焦点距離範囲FAと、第3焦点距離範囲FCとの間にある、第2焦点距離範囲FBにおいて設定されることが好ましい。これによって、直接反射光(無効光)に起因する、受光部16から出力される検出信号のS/N低下が抑制され、結果的に検出精度が向上する。また、焦点距離dfが1.1付近で、直接反射光の比率はほとんど零になることから、焦点距離を、1.1の近傍に定めることが最も好ましい。
【0150】
また、図示はしないが、検出信号のS/Nの変化を調べることによって、第2焦点距離範囲FBにおいては、生体情報を有する有効光(有効反射光)の受光光量が増加することが確認されている。
【0151】
したがって、焦点距離dfを、第2焦点距離範囲内に設定することによって、生体情報としての脈拍の検出信号のS/Nを向上させることができる。つまり検出信号のS/Nを改善することができ、より高精度な検出が可能となる。特に、焦点距離dfを、検出信号のS/Nのピーク値付近に対応する値(1.1)付近に設定することによって、検出精度を最も高くすることができる。
【0152】
上述のとおり、反射面の焦点距離dfが定まると、反射面の3次元の形状と高さが一義的に特定される。よって、上述の設計手法を用いることによって、直接反射光の影響を低減することが可能な、好ましい反射特性を有する反射部18を得ることができる。
【0153】
(第3実施形態)
【0154】
本実施形態では、生体情報検出器を含む生体情報測定装置について説明する。図22は、生体情報検出器を含む生体情報測定装置の一例(手首脈拍計)の外観例を示す図である。生体情報測定装置300は、生体情報検出器200を被検査体(人体)2の、被検出部位1である腕(狭義には、手首)に取り付け可能とするためのリストバンド150をさらに含むことができる。
【0155】
図22の例において、生体情報は脈拍数であり、生体情報測定装置300に備わる表示部165には、測定結果である脈拍数「72」が示されている。また、生体情報測定装置300は、腕時計を兼ねている。生体情報測定装置300に備わる表示部165には、時刻(例えば、午前8時15分)が示されている。
【0156】
なお、図示はしないが、腕時計型を兼ねる生体情報測定装置300の裏蓋には開口部が設けられ、開口部には、先に説明した保護部(保護ケース)19が露出する。
【0157】
図23は、生体情報測定装置の内部構成の一例を示す図である。生体情報測定装置300は、図1等に示される生体情報検出器200と、生体情報検出器の受光部16において生成される受光信号から生体情報を測定する生体情報測定部202とを含む。なお、図23では、時計としての機能を担う部分は省略されている。生体情報検出器200は、発光部14と、受光部16と、発光部14の制御回路161と、を有することができる。生体情報検出器200は、受光部16の受光信号の増幅回路162をさらに有することができる。生体情報検出器200は、加速度検出部166をさらに有することができる。
【0158】
生体情報測定部202は、受光部16の受光信号をA/D変換するA/D変換回路163と、脈拍数を算出する脈拍数算出回路164とを有することができる。生体情報測定部300は、脈拍数を表示する表示部165をさらに有することができる。
【0159】
上述のとおり、生体情報検出器200は、加速度検出部166を有することができ、この場合には、生体情報測定部202は、加速度検出部166の検出信号をA/D変換するA/D変換回路167と、デジタル信号を処理するデジタル信号処理回路168とをさらに有することができる。図23に示される生体情報測定装置300の構成は一例であり、この構成に限定されるものではない。
【0160】
脈拍数算出回路164は、例えば生体情報検出器200を組み込む電子機器のMPU(Micro Processing Unit)であってもよい。また、制御回路161は、発光部14を駆動する。制御回路161は、例えば、定電流回路であり、所与の電圧(例えば、6[V])を保護抵抗を介して発光部14に供給し、発光部14に流れる電流を所与の値(例えば、2[mA])に保つ。なお、制御回路161は、消費電流を低減するために、発光部14を間欠的に(例えば、128[Hz]で)駆動することができる。制御回路161は、例えばマザーボード(不図示)に形成され、制御回路161と発光部14との配線は、例えば、基板11に形成される。
【0161】
図23に示される増幅回路162は、受光部16において生成される受光信号(電流)から直流成分を除去し、交流成分だけを抽出し、その交流成分を増幅して、交流信号を生成することができる。また、増幅回路162は、例えばハイパスフィルターで所与の周波数以下の直流成分を除去し、例えばオペアンプで交流成分をバッファーする。なお、受光信号は、脈動成分及び体動成分を含む。増幅回路162又は制御回路161は、受光部16を例えば逆バイアスで動作させるための電源電圧を受光部16に供給することができる。発光部14が間欠的に駆動される場合、受光部16の電源も間欠的に供給され、また交流成分も間欠的に増幅される。増幅回路162は、例えばマザーボード(不図示)に形成され、増幅回路162と受光部16との配線は、例えば、基板11に形成される。また、増幅回路162は、ハイパスフィルターの前段で受光信号を増幅する増幅器を有してもよい。増幅回路162が増幅器を有する場合、増幅器は、例えば、基板11の端部において形成することができる。
【0162】
A/D変換回路163は、増幅回路162において生成される交流信号をデジタル信号(第1のデジタル信号)に変換する。また、加速度検出部166は、例えば3軸(X軸、Y軸及びZ軸)の重力加速度を検出して、加速度信号を生成する。体(腕)の動き、従って生体情報測定装置の動きは、加速度信号に反映される。A/D変換回路167は、加速度検出部166において生成される加速度信号をデジタル信号(第2のデジタル信号)に変換する。
【0163】
デジタル信号処理回路168は、第2のデジタル信号を用いて、第1のデジタル信号の体動成分を除去し又は低減させる。デジタル信号処理回路168は、例えば、FIRフィルター等の適応フィルターで構成することができる。デジタル信号処理回路168は、第1のデジタル信号及び第2のデジタル信号を適応フィルターに入力し、ノイズが除去又は低減されたフィルター出力信号を生成する。
【0164】
脈拍数算出回路164は、フィルター出力信号を例えば高速フーリエ変換(広義には、離散フーリエ変換)によって周波数解析する。脈拍数算出回路164は、周波数解析の結果に基づき脈動成分を表す周波数を特定し、脈拍数を算出する。
【0165】
図22に示した手首脈拍計を用いると、例えばユーザーがジョギング等の運動をしている最中の脈拍情報を時系列的に取得することができる。取得した脈拍情報は、ユーザーの体質改善等に幅広く利用することができる。但し、ユーザーの運動によって手首脈拍計の位置がずれる、あるいは外光の影響を受けるといった事態も想定され、検出精度(測定精度)を低下させる要因が多くなる。したがって、少しでも高精度な測定を担保するために、接触部材(光透過部材)の表面付近で反射する反射光に起因するS/N低下に対しても十分な対策をすることが好ましい。この点、上述のとおり、生体情報検出器200では、直接反射光(無効光)に対する対策が十分に採られている。よって、高精度な測定が可能な、新規な手首脈拍計を実現することができる。
【0166】
(第4の実施形態)
本実施形態では、生体情報測定装置300の他の例としての、パルスオキシメーターについて説明する。パルスオキシメーターに搭載される生体情報検出器(生体プローブ)は、前掲の実施形態と同じ構成(例えば図1(A)や図2に示される構成)を用いて実現することができる。
【0167】
ここでは、図1の構成に基づいて説明する。パルスオキシメーターにおける生体情報検出器200は、発光部14と受光部16で構成されている。発光部14は、例えば赤色光と赤外光を発し、これらの光が被検出部位1(指先、腕、手首等)にて反射した反射光を、受光部16で測定する。血液中のヘモグロビンは酸素との結合の有無により赤色光と赤外光の吸光度が異なる。よって、受光部16で反射光を測定して分析することにより、動脈血酸素飽和度(SpO2)を測定することができる。
【0168】
なお、全反射光に含まれる、動脈等によって反射された成分と、静脈や軟部組織によって反射された成分とは、例えば、拍動のある成分が動脈血によるものであることを利用して区別することができる。また、拍動のある脈波成分より、脈拍数を併せて計数することも可能である。
【0169】
パルスオキシメーター用の生体情報測定部の構成としては、図23に示される脈拍計用の生体情報測定部202の構成をそのまま利用することができる。但し、図23に示される脈拍算出回路164は、脈拍算出回路およびFFT等を用いた動脈血酸素飽和度分析回路164に置換される。
【0170】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【符号の説明】
【0171】
1 被検出部位(腕や手首等)、2 被検査体(例えば人体) 11 基板、
11−1,11−2 光透過膜(例えば光透過性レジスト膜)、
14 発光部、14A 第1の発光面、14B 第2の発光面、 16 受光部、
18 反射部(第2反射部)、18−1 反射面(反射ドームの内壁面)、
19 保護ケース(保護部)、19−1 スペーサー部材、
19−2 接触部材(光透過部材)、20 リフレクター(第1反射部)、
61,63,65 ボンディングワイヤー、62−1,62−2,62−3 配線、
150 リストバンド、 161 制御回路、162 増幅回路、
163,167 A/D変換回路、 164 脈拍数算出回路、
165 表示部、 166 加速度検出部、168 デジタル信号処理回路、
200 生体情報検出器、202 生体情報測定部、
SA 接触面(接触部材の表面、光透過部材の表面、肌の表面あるいは光透過部材と肌との界面)、BV 生体情報源(例えば血管)、
f 焦点、df 焦点距離、p 反射面を構成する二次曲面としての球面の中心、
r 球面の曲率半径、h 反射部の高さ、Δh 曲率半径rと反射部の高さhとの差、
m 原点(面原点)、
φ 開口径(平面視における反射面の外周形状である円の直径)
δ スペーサー部材の高さ(隙間)、
t 接触部材(光透過部材)の厚み、
R1 発光部から出射される第1の光、 R2 第2の光、R3 第3の光、
R1’反射光(有効光)、 R2’直接反射光(無効光)である一回反射光、
R3’直接反射光(無効光)である二回反射光


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と、
前記発光部から発せられた光が被検査体の被検出部位にて反射された、生体情報を有する光を受ける受光部と、
前記生体情報を有する光を反射させる反射部と、
前記被検出部位と接触する接触面を備える接触部材を有すると共に、前記接触部材が前記発光部が発する光の波長に対して透明な材料で構成され、かつ前記発光部を保護する保護部と、
前記反射部と前記保護部との間に配置されると共に、前記保護部の側の第1面に前記発光部が配置され、前記反射部の側である前記第1面と対向する第2面に前記受光部が配置され、かつ前記発光部が発する光の波長に対して透明な材料で構成される基板と、を含み、
前記発光部から発せられた光が、前記接触部材の前記接触面側で一回反射した一回反射光が前記受光部に入射することが抑制されることを特徴とする生体情報検出器。
【請求項2】
請求項1記載の生体情報検出器であって、
前記発光部から発せられた光が、前記接触部材の前記接触面側で二回反射した二回反射光が前記受光部に入射することが抑制されることを特徴とする生体情報検出器。
【請求項3】
請求項2記載の生体情報検出器であって、
前記反射部は、球面の一部で構成される反射面を有し、平面視における前記反射部の外周円の直径は所定値に設定され、
かつ、前記反射面の焦点距離範囲として、前記一回反射光が前記反射面で反射して前記受光部に入射する一回反射入射光の全受光量に対する比率が第1閾値よりも高い第1焦点距離範囲と、第2焦点距離範囲と、前記二回反射光が前記反射面で反射して前記受光部に入射する二回反射入射光の全受光量に対する比率が第2閾値よりも高い第3焦点距離範囲と、がある場合に、前記反射面の焦点距離は、前記第1焦点距離範囲と前記第3焦点距離範囲との間にある前記第2焦点距離範囲において設定されていることを特徴とする生体情報検出器。
【請求項4】
請求項3記載の生体情報検出器であって、
前記反射部の外周円の直径をφとし、
前記反射面を構成する前記球面の曲率半径をrとし、
前記曲率半径rおよび前記反射部の外周円の直径φに対応して定まる、光軸と前記反射面とが交差する点と前記第2面との距離を表す前記反射面の高さをhとし、前記反射面の高さhと前記反射面の曲率半径rとの差をΔhとしたとき、
【数6】

が成立することを特徴とする生体情報検出器。
【請求項5】
請求項2記載の生体情報検出器であって、
前記反射部は、放物面の一部で構成される反射面を有し、
互いに直交するx軸、y軸、z軸のうちの前記z軸を光軸としたとき、前記放物面は、前記z軸を回転軸とする回転放物面であり、かつ、前記z軸と前記回転放物面とが交差する点を原点とし、前記原点に接する球面の曲率半径をrとした場合に、前記回転放物面に関して、
【数7】

が成立し、
また、平面視における前記反射部の外周円の直径は所定値に設定され、
かつ、前記反射面の焦点距離範囲として、前記一回反射光が前記反射面で反射して前記受光部に入射する一回反射入射光の全受光量に対する比率が第1閾値よりも高い第1焦点距離範囲と、第2焦点距離範囲と、前記二回反射光が前記反射面で反射して前記受光部に入射する二回反射入射光の全受光量に対する比率が第2閾値よりも高い第3焦点距離範囲と、がある場合に、前記反射面の焦点距離は、前記第1焦点距離範囲と前記第3焦点距離範囲との間にある前記第2焦点距離範囲において設定されていることを特徴とする生体情報検出器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の生体情報検出器と、
前記受光部から出力される検出信号に基づいて前記生体情報を測定する生体情報測定部と、を含むことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項7】
請求項6記載の生体情報測定装置であって、
前記生体情報は、脈拍数であることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項8】
生体情報検出器における反射部の設計方法であって、
前記生体情報検出器は、発光部と、前記発光部から発せられた光が被検査体の被検出部位にて反射された、生体情報を有する光を受ける受光部と、前記生体情報を有する光を反射させると共に、球面の一部または回転放物面の一部により構成される反射面を有し、平面視における前記反射面の外周円の直径が所定値に設定されている反射部と、前記被検出部位と接触する接触面を備える接触部材を有すると共に、前記接触部材が前記発光部が発する光の波長に対して透明な材料で構成され、かつ前記発光部を保護する保護部と、前記反射部と前記保護部との間に配置されると共に、前記保護部の側の第1面に前記発光部が配置され、前記反射部の側である前記第1面と対向する第2面に前記受光部が配置され、かつ前記発光部が発する光の波長に対して透明な材料で構成される基板と、を含み、
前記反射面の焦点距離を変化させながら、前記接触部材の前記接触面側で一回反射した一回反射光が前記反射面で反射して前記受光部の受光領域に入射する一回反射入射光の全受光量に対する比率が第1閾値よりも高い第1焦点距離範囲を求め、
前記反射面の焦点距離を変化させながら、前記接触部材の前記接触面側で二回反射した二回反射光が前記反射面で反射して前記受光部の受光領域に入射する二回反射入射光の全受光量に対する比率が第2閾値よりも高い第3焦点距離範囲を求め、
前記第1焦点距離範囲と前記第3焦点距離範囲との間の第2焦点距離範囲において、前記反射面の焦点距離を設定する、
ことを特徴とする、生体情報検出器における反射部の設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−156313(P2011−156313A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22836(P2010−22836)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】