説明

生体情報検出装置

【課題】簡便な手法によって外耳道を介して生体振動を検出し、診断に利用する。
【解決手段】外耳道に挿入される外耳道挿入部11と、外耳道を媒体として伝達される生体振動を電気信号に変換して出力する振動電気変換器15とを含む装着ユニット10と、振動電気変換器15からの電気信号に対して周波数変換処理を実行する信号変換器と、電気信号を可聴音に変換するスピーカ37と、を含む信号処理ユニット30とを備える。信号変換器は、振動電気変換器15から出力された電気信号から特定周波数帯域の信号成分を抽出して周波数変換を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報検出装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
医療において、血圧、心拍、脳波、体温、呼吸などの生体情報を測定して診断に供することがおこなわれている。そして、この様な生体情報を取得する手段として、例えば、上腕式血圧計を用いて血圧を測定したり、水銀体温計やサーミスタを用いた電子式体温計で腋下や舌下で体温を測定したりすることが一般的である。
【0003】
しかし、このような従来型の測定装置は、外気の影響を受けやすいことから、外気の影響を受けにくい外耳道において光線の変化に基づいて生体情報を検出する方法が提案されてきている。例えば、外耳道に挿入したプローブで鼓膜及びその近傍から放射される赤外線から体温や心電波形を測定し、その温度や波形を表示器に表示する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、耳穴に異なる波長を有する複数の光を照射し、耳穴の皮膚から反射された光を検出して酸素飽和度、脈拍、呼吸数などを測定し、ディスプレイに表示する方法(例えば、特許文献2参照)や、外耳道から鼓膜に向けて光を照射し、その反射光から得られる信号に基づいて血圧や脳波等を検出してその数値をディスプレイに表示する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、生体の耳の近傍に音センサを取り付け、その呼吸音を検出してスペクトルやソノグラフのような画像として表示する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−217792号公報
【特許文献2】特開2007−54650号公報
【特許文献3】特開2007−21106号公報
【特許文献4】実用新案登録第3130556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、光を用いて外耳道から生体情報を検出する方法は構造が複雑となってしまうという問題があった。本発明は、簡便な手法によって外耳道を介して生体振動を検出し、診断に利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の生体情報検出装置は、外耳道に挿入される外耳道挿入部と、外耳道を媒体として伝達される生体振動を電気信号に変換して出力する振動電気変換器と、を含む装着ユニットと、振動電気変換器からの電気信号を処理して出力する信号処理ユニットと、を備え、信号処理ユニットは、振動電気変換器からの電気信号に対して周波数変換処理を実行する信号変換器と、電気信号を可聴音に変換する音響変換器と、を含むこと、を特徴とする。
【0007】
本発明の生体情報検出装置において、信号変換器は、振動電気変換器から出力された電気信号から特定周波数帯域の信号成分を抽出して周波数変換を行うこととしても好適であるし、振動電気変換器は、外耳道挿入部が外耳道に挿入された際に外耳道挿入部と共に外耳道を閉じて鼓膜との間に閉空間を形成し、その閉空間を介して生体振動である音を検出する音検出器であること、としても好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、簡便な手法によって外耳道を介して生体振動を検出し、診断に利用することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態における生体情報検出装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態における生体情報検出装置の信号処理ユニットを示す系統図である。
【図3】本発明の実施形態における生体情報検出装置の装着ユニットを人体の耳に装着した状態を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態における生体情報検出装置による周波数変換を示すグラフである。
【図5】本発明の他の実施形態における生体情報検出装置の信号処理ユニットを示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、生体情報検出装置100は、外耳道に挿入される外耳道挿入部11と生体振動を電気信号に変換して出力する振動電気変換器15を含む装着ユニット10と、装着ユニット10とリード線16によって接続された信号処理ユニット30とを備えている。
【0011】
装着ユニット10の外耳道挿入部11は、略耳穴の大きさと同様の直径の円筒で、内部に貫通孔13が設けられている。外形は円筒形状に限らず、耳穴の形状に沿って湾曲していても良い。外耳道挿入部11と連続的に接続した基部12は、外耳道から耳殻にかけての形状に合わせた外形形状となっている。基部12の内部には、貫通孔13がつながっている空洞14が設けられている。空洞14は、貫通孔13よりも大きな内径を持っている。そして空洞14には、生体振動を電気信号に変換する振動電気変換器15が取り付けられている。振動電気変換器15は、例えば、圧電素子のようなものでも良いし、振動板の振動をマグネットによって電気信号に変換するようなものであってもよい。本実施形態では、振動電気変換器15は空洞14を介して外耳道挿入部11の貫通孔13を塞ぐよう構成されているが、直接貫通孔13を塞ぐように取り付けられていてもよい。外耳道挿入部11と基部12とは樹脂などによって構成されている。基部12に取り付けられた振動電気変換器15には電気信号を出力するリード線16が取り付けられ、リード線16は信号処理ユニット30に接続されている。
【0012】
信号処理ユニット30は装着ユニット10の振動電気変換器15からの電気信号を周波数変換し、周波数変換した電気信号を可聴音に変換して出力するもので、内部に音響変換器であるスピーカ37が設けられている。図2に示すように、信号処理ユニット30は、振動電気変換器15から入力された電気信号を増幅するアンプ31と、アンプ31で増幅された電気信号のうち特定周波数帯域としての低周波部分を取り出すローパスフィルタ32と、参照信号を発信する信号発振器33と、ローパスフィルタを通過した電気信号と信号発振器33が発信した参照信号とをミキシングするミキサ34と、ミキシングした電気信号から参照信号以外の信号を取り出すバンドパスフィルタ35と、バンドパスフィルタ35を通過した信号を増幅するアンプ36と、増幅された電気信号を可聴音に変換する音響変換器であるスピーカ37と、を備えている。
【0013】
ここで、ローパスフィルタ32は、振動電気変換器15から出力された電気信号の内、可聴周波数帯域以下の低周波数の振動を主に通すものである。人間の可聴周波数帯域にはバラつきがあるので、ローパスフィルタ32は一部、可聴周波数帯域にある信号も通すものである。そして、ローパスフィルタ32は、振動電気変換器15から出力された電気信号の中から、生体情報を多く含んでいる特定周波数帯域である低周波数帯域の信号成分だけを抽出するためのものである。また、信号発振器33は周波数変換のために所定の周波数の電気信号を発振するものである。本実施形態では、信号発振器33は可聴周波数帯域の周波数を持つ電気信号を発振するものである。
【0014】
以上のように構成された生体情報検出装置100の動作について説明する。本実施形態の生体情報検出装置100は図3に示すように人間の耳20に装着される。生体情報検出装置100が装着されると、装着ユニット10の外耳道挿入部11は外耳道21の中にぴったりと嵌まり込んで、外部の音が外耳道21へ侵入するのを抑制する。また、装着ユニット10の基部12は人間の耳の耳殻にフィットして装着ユニット10の位置を安定させる。図3に示すように、外耳道挿入部11が外耳道21に挿入されると、外耳道挿入部11の貫通孔13を空洞14を介して塞いでいる振動電気変換器15は、外耳道21の中にぴったりと嵌まり込んだ外耳道挿入部11と共に外耳道21を閉じて鼓膜22との間に閉空間27を形成する。
【0015】
図3に示すように、鼓膜22は内耳23と外耳道21を含む外耳との境界に存在する膜であり、内耳23に通じる内耳道25から呼吸音や肺の音が鼓膜に伝達されてくる。内耳23から鼓膜22に伝達された生体音は鼓膜22を振動させる。鼓膜22の振動は外耳道挿入部11の貫通孔13を通って空洞14から閉空間27を形成している振動電気変換器15に伝達され、振動電気変換器15によって電気信号に変換される。また、外耳道21には頭蓋骨を通して脳内の血流音などが伝わってくる。外耳道21に伝わった脳内の血流音によって外耳道21内の空気が振動し、その空気振動も同様に外耳道挿入部11の貫通孔13と空洞14から振動電気変換器15に伝達され、振動電気変換器15によって電気信号に変換される。このように、振動電気変換器15は外耳道21に伝達される様々な音を検出して電気信号に変換して出力することができ、特に閉空間27を利用することによって低波数帯域の音を効果的に検出することができる。また、場合によっては、閉空間27において生体音の共鳴が発生する場合もあり、このような場合にはより効果的に生体音の検出を行うことができる。
【0016】
図2では、鼓膜22と外耳道21と外耳道21に嵌まり込んだ外耳道挿入部11と振動電気変換器15とによって形成される閉空間27を模式的に表している。図2に示すように、振動電気変換器15によって電気信号に変換された信号は信号処理ユニット30のアンプ31に入力されて増幅され、ローパスフィルタ32に入力される。振動電気変換器15は先に説明したように外耳道21に伝達される様々な音を検出して電気信号に変換して出力しているのであるが、図4(a)の線aに示すように、生体情報は主に低周波帯域に多く存在している。特に人間の可聴周波数帯域よりも低い周波数帯域に多くの生体情報が含まれている。そこで、ローパスフィルタ32によってこのような低周波帯域の信号を抽出する。図4(a)に示すように、ローパスフィルタ32は人間の可聴周波数帯域cの下限周波数f2よりも若干高い周波数f1よりも低い周波数帯域bにある信号のみを通過させるもので、ローパスフィルタ32を通すことによって、多くの生体情報が含まれている周波数f1以下にある周波数帯域bの信号を抽出することができる。
【0017】
図2に示す信号処理ユニット30の信号発振器33は、図4(b)に示すように、人間の可聴周波数帯域cにある周波数f4の参照信号を発振する。そして、この参照信号はミキサ34に入力され、ローパスフィルタ32を通過した周波数帯域bの信号に掛け合わされる。このミキシングによって、図4(a)に示す周波数帯域bの信号は、参照信号の周波数f4の両側に広がる周波数帯域d1及びd2の信号に周波数変換される。この状態では参照信号が残っているので、当初の周波数帯域bの信号を周波数変換した信号として取り出すためには、参照信号を取り除く必要がある。そこで、ミキシングされた信号をバンドパスフィルタ35に通すことによって参照信号を除去する。本実施形態では、バンドパスフィルタ35は、参照信号の周波数よりも高い周波数帯域d1の信号のみを通過させるフィルタである。このバンドパスフィルタ35を通すことによって、生体情報の多く含まれている非可聴周波数帯域の周波数帯域bの信号を可聴周波数帯域cの中にある周波数帯域d1の信号に変換することができる。
【0018】
可聴周波数帯域cにある信号はアンプ36によって増幅され、スピーカ37によって可聴音に変換されて出力される。つまり、本実施形態の生体情報検出装置100は、装着ユニット10の振動電気変換器15から出力された特定の周波数数帯域にある電気信号を可聴周波数帯域cの電気信号に周波数変換し、その可聴周波数帯域cにある電気信号を音に変換して出力するものである。出力された音は、例えば、医師が聴音器によって心音などを聞いて患者の診断をする場合のように、患者の状態を直感的に把握することによって診断に利用することができる。また、本実施形態の生体情報検出装置100の装着ユニットは耳に簡単に装着することができ、患者の負担にならない上、装着が容易であるため、緊急時、例えば、交通事故などの救急搬送の際に患者の生体情報を簡単にモニタすることができる。
【0019】
このように、本実施形態の生体情報検出装置100は、簡便な手法によって外耳道21を介して特定の周波数数帯域の生体振動を検出し、診断に利用することができるという効果を奏する。また、振動電気変換器15によって形成された閉空間27を介して生体振動である生体音の検出を行うので生体音を効果的に検出することができるという効果を奏する。また、取得した生体情報を可聴音としてモニタすることができるので患者の状態を直感的に把握することができるという効果を奏する。更に、本実施形態の生体情報検出装置100は、頭蓋骨を通して外耳道21に伝わる脳内の血流音の検出もすることができることから、脳内の生体情報をモニタすることができるという効果を奏する。
【0020】
本実施形態では、振動電気変換器15は外耳道21に伝わる音を振動として検出することとして説明したが、耳骨などをから直接振動電気変換器15に伝達された振動を電気信号に変換して生体情報の検出を行うようにしてもよい。
【0021】
図5を参照しながら、他の実施形態について説明する。先に図1から図4を参照して説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。
【0022】
本実施形態の生体情報検出装置100は、振動電気変換器15からのアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するAD変換器51と、デジタル信号を処理するコンピュータ52と、処理したデジタル信号をアナログ電気信号に変換するDA変換器53と、処理結果を出力する出力装置54とを備えている。
【0023】
コンピュータ52は内部にCPUとメモリとを備え、CPUによってプログラムを実行することによって様々な信号変換を行うことができるものである。例えば、図2を参照して説明した実施形態に含まれるローパスフィルタ32、信号発振器33、ミキサ34、バンドパスフィルタ35の機能をプログラムによって実行させ、図2を参照して説明した実施形態と同様に、生体情報の多く含まれている非可聴周波数帯域の周波数帯域の信号を可聴周波数帯域の中にある周波数帯域の信号に変換することができる。そして、出力装置54としてスピーカを用い、この周波数変換した信号を可聴音として出力して生体情報をモニタすることとしてもよい。
【0024】
本実施形態では、コンピュータ52で信号処理を行うこととして説明したが、例えば、デジタル信号処理ICやFPGA(Field programable gate array)等を用いて同様の動作を行うことができるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0025】
10 装着ユニット、11 外耳道挿入部、12 基部、13 貫通孔、14 空洞、15 振動電気変換器、16 リード線、20 耳、21 外耳道、22 鼓膜、23 内耳、25 内耳道、30,50 信号処理ユニット、31,36 アンプ、32 ローパスフィルタ、33 信号発振器、34 ミキサ、35 バンドパスフィルタ、37 スピーカ、51 AD変換器、52 コンピュータ、53 DA変換器、54 出力装置、100 生体情報検出装置、b,d1,d2 周波数帯域、c 可聴周波数帯域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外耳道に挿入される外耳道挿入部と、外耳道を媒体として伝達される生体振動を電気信号に変換して出力する振動電気変換器と、を含む装着ユニットと、
振動電気変換器からの電気信号を処理して出力する信号処理ユニットと、
を備え、
信号処理ユニットは、振動電気変換器からの電気信号に対して周波数変換処理を実行する信号変換器と、電気信号を可聴音に変換する音響変換器と、を含むこと、
を特徴とする生体情報検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体情報検出装置であって、
信号変換器は、
振動電気変換器から出力された電気信号から特定周波数帯域の信号成分を抽出して周波数変換を行うことを特徴とする生体情報検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の生体情報検出装置であって、
振動電気変換器は、外耳道挿入部が外耳道に挿入された際に外耳道挿入部と共に外耳道を閉じて鼓膜との間に閉空間を形成し、その閉空間を介して生体振動である音を検出する音検出器であること、
を有することを特徴とする生体情報検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−179398(P2012−179398A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−116587(P2012−116587)
【出願日】平成24年5月22日(2012.5.22)
【分割の表示】特願2008−187071(P2008−187071)の分割
【原出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【出願人】(508219438)株式会社イノベンチャー・シー (5)
【出願人】(508219449)