説明

生体情報測定方法及びシステム

【課題】被験者に非接触で違和感を与えることなく、肺呼吸量をベースとする生体情報を測定する。
【解決手段】生体情報測定システムS1は、被験者Hが入浴する浴槽10の内周壁に配置される一対の電極21、22と、電極21、22間に周波数が10Hz以上の高周波交流電圧を印加する電源31と、電極間のインピーダンス値を測定するインピーダンス測定装置33と、前記インピーダンス値に基づいて被験者の生体情報を導出する制御装置40とを含む。制御装置40は、被験者の吸気時に得られる第1のインピーダンス値と、呼気時に得られる第2のインピーダンス値とから、肺呼吸量の変化とインピーダンス値の変動との関係を示すテーブルを参照して、被験者Hの肺呼吸量を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に浸かっている被験者、例えば浴槽の湯に浸かっている被験者の生体情報、特に肺呼吸量を、無拘束、無意識条件下で測定することができる方法及びシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人体の肺呼吸量は、一般にスパイロメータ(Spiro meter)で測定されている。スパイロメータは、口(若しくは鼻)から流入、流出する気体の量を測定する装置であり、測定時に被験者はマウスピースをくわえて息を吸ったり吐いたりする。特許文献1には、この種の肺活量測定装置が開示されている。
【0003】
スパイロメータによれば、安静時一回の呼吸で肺に出入りする気体の量である一回換気量、最大吸気後に随意的に最大呼気して呼出される気体の量である肺活量、機能的残気量より随意的に最大努力して吸気できる気体の量である最大吸気量、最大吸気量と一回換気量との差である予備吸気量、機能的残気量より随意的に最大努力して呼気できる気体の量である予備呼気量などの各種肺呼吸量を測定することができる。
【特許文献1】特開平11−42219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の測定方法では、被験者はマウスピースをくわえる負担を強いられることとなる。従って、例えば入浴中に肺呼吸量を測定し、その測定結果に基づき入浴中のエネルギー消費量を推定しようとしても、被験者の協力は得られ難い。また、マウスピースをくわえることで被験者が意識をし、本来の肺呼吸量が計測されない懸念もある。
【0005】
本発明は上記のような実情に鑑みて為されたもので、被験者に非接触で違和感を与えることなく、肺呼吸量をベースとする生体情報を測定することができる生体情報測定方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の一局面に係る生体情報測定方法は、水中内に被験者が入水する領域として予定された測定領域を挟んで配置された一対の電極間に、周波数が10Hz以上の高周波交流電圧を印加すると共に、前記電極間のインピーダンス値を監視し、被験者の吸気時に得られる第1のインピーダンス値と、呼気時に得られる第2のインピーダンス値とを取得し、予め求められた肺呼吸量の変化とインピーダンス値の変動との関係を示すテーブルを参照して、前記第1のインピーダンス値と前記第2のインピーダンス値とから被験者の肺呼吸量を求めることを特徴とする(請求項1)。
【0007】
被験者の胸腔内空気量は、吸気時と呼気時とで変化する。このため、電極間に挟まれた状態で水中にある被験者が呼吸を行うと、吸気時と呼気時とで変化する胸腔内空気量に基づき、電極間の誘電率が変化することになる。本発明者らは、この誘電率の変化を、10Hz以上の高周波交流電圧を電極間に印加したときに、電極間のインピーダンス値の変化として検出できることを見出した。従って、吸気時における胸腔内空気量の状態で検知される第1のインピーダンス値と、呼気時における胸腔内空気量の状態で得られる第2のインピーダンス値とを取得し、これらを予め求められているテーブルに適用することで、被験者の肺呼吸量を、無拘束、無意識状態で電気的に測定することができる。
【0008】
上記方法において、被験者の最大吸気時に前記第1のインピーダンス値を取得すると共に、最大呼気時に前記第2のインピーダンス値を取得することで、被験者の肺活量を求めることができる(請求項2)。この方法によれば、被験者に非接触で肺活量を求めることができる。
【0009】
上記方法において、求められた肺呼吸量から酸素摂取量を算出することで、被験者のエネルギー消費量を推定することが望ましい(請求項3)。肺呼吸量が求められると、肺の効率は略一定であることから、酸素摂取量を算出できる。また、エネルギー消費量は酸素摂取量に比例するので、その推定値も求めることができる。
【0010】
上記いずれかの方法において、前記測定領域は浴槽の貯水領域であって、前記一対の電極は前記浴槽の内周壁に配置されることが望ましい(請求項4)。この方法によれば、被験者の肺呼吸量を、被験者が入浴している間に、無拘束、無意識状態で測定することができる。
【0011】
本発明の他の局面に係る生体情報測定システムは、水中内に入水した被験者の生体情報を測定するためのシステムであって、水を貯留する槽の内周壁に配置される一対の電極と、前記電極間に周波数が10Hz以上の高周波交流電圧を印加する電源と、電極間のインピーダンス値を測定するインピーダンス測定手段と、予め求められた肺呼吸量の変化とインピーダンス値の変動との関係を示すテーブルを記憶する記憶手段と、前記インピーダンス値に基づいて被験者の生体情報を導出する演算手段と、を備え、前記インピーダンス測定手段は、被験者の吸気時に得られる第1のインピーダンス値と、呼気時に得られる第2のインピーダンス値とを取得し、前記演算手段は、前記テーブルを参照して、前記第1のインピーダンス値と前記第2のインピーダンス値とから被験者の肺呼吸量を求めることを特徴とする(請求項5)。
【0012】
この構成によれば、周波数が10Hz以上の高周波交流電圧が電極を介して被験者が入浴している浴槽内に印加される。そして、電極間のインピーダンス値がインピーダンス測定手段により求められ、演算手段により被験者の生体情報を導出するための演算処理が行われる。演算手段は、前記第1のインピーダンス値と前記第2のインピーダンス値とから被験者の肺呼吸量を求める。従って、被験者の肺呼吸量を、無拘束、無意識状態で電気的に測定することができる。
【0013】
上記構成において、前記演算手段は、求められた肺呼吸量から酸素摂取量を算出し、さらに被験者のエネルギー消費量を算出するエネルギー算出部を備えることが望ましい(請求項6)。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被験者の肺呼吸量を、マウスピースのような接触部品を用いることなく、無拘束、無意識状態で電気的に測定することができる。従って、例えば被験者が入浴している間に、被験者がリラックスしている状態を損なうことなく、肺呼吸量を測定することが可能である。さらに、得られた肺呼吸量に基づき、入浴中のエネルギー消費量を算出することが可能になるので、健康管理やダイエット等に有用な情報を提供することができる。
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る生体情報測定システムS1の構成を示すブロック図である。この生体情報測定システムS1は、浴槽10の内部に配置される一対の電極21、22、電源31、スイッチング素子32、インピーダンス測定装置33(インピーダンス測定手段)、制御装置40(演算手段)及び表示装置50を備えて構成されている。
【0016】
一対の電極21、22は、導電性金属からなる平板電極であって、浴槽10の一方の側内壁11に一方の電極21が、前記側内壁11と対向する他方の側内壁12に他方の電極22がそれぞれ固着され、測定領域としての浴槽内空間を挟んで対向配置されている。浴槽10には湯Wが張られ、被験者Hが入浴するのであるが、一対の電極21、22はこの被験者Hを挟むように配置されることとなる。かかる配置により、電極21、22間には湯W及び被験者Hを経由する電流経路が形成され、電圧が印加されると湯W及び被験者Hのインピーダンス値に応じた電流が電極21、22間に流れるようになる。
【0017】
電極21、22の配置態様は適宜に定めることができるが、図1に示すように電極同士を互いに正対させて配置することが、被験者Hの呼吸に伴うインピーダンス値の変動を検知し易くする点で望ましい。特に、浴槽10が上面視で長方形を呈するものである場合は、感度を上げるために、その短辺側の浴槽内空間を挟んで電極21、22を対向配置させることが望ましい。
【0018】
電源31は、一対の電極21、22間に周波数が10Hz以上の高周波交流電圧を印加するための電源である。この電源31としては、100kHz〜10MHz程度の交流電圧を発生する交流電源を用いることができる。スイッチング素子32は、電極21、22に対する電圧印加のON−OFF制御を行うためのもので、制御装置40によりそのON−OFF動作が制御される。
【0019】
インピーダンス測定装置33は、電極21、22間に印加されている電圧値と、電極21、22間を流れる電流値とから、電極21、22間のインピーダンス値を求めるものである。このインピーダンス測定装置33は、インピーダンス値に加え、インピーダンス値の実部である抵抗成分と、虚部であるキャパシタンス成分及びリアクタンス成分とを求めることができる測定装置(LCRメータ等)を用いることが望ましい。
【0020】
制御装置40は、電極21、22間への電圧印加制御、インピーダンス測定装置33による電極21、22間のインピーダンスの測定制御、測定されたインピーダンス値の解析処理、被験者Hの吸気時に得られる第1のインピーダンス値と、呼気時に得られる第2のインピーダンス値とから、肺呼吸量を求める演算処理等を行う。この制御装置40の具体的構成については、図6に基づいて後記で詳述する。
【0021】
表示装置50は、液晶ディスプレイ等からなり、制御装置40において求められた肺呼吸量、この肺呼吸量から求められるエネルギー消費量等を表示する。
【0022】
次に、被験者Hの吸気と呼気とに起因するインピーダンス値の変動について、図2及び図3に基づいて説明する。図2は、呼気時において測定されるインピーダンス値(第2のインピーダンス値)を説明するための模式図である。図2(a)に示すように、呼気時においては被験者H(ここでは被験者Hを電極対向方向の断面として簡略的に描いている)の肺に吸引されている空気の容積である胸部容積Lは、比較的少ないV1となる。
【0023】
この場合、湯Wの部分のインピーダンスを除いて考えると、図2(b)に示すように、電極21、22間のインピーダンスZ1は、被験者Hの肺周囲の体組織に沿った抵抗R1と、胸部容積L=V1に相当するキャパシタンスC1との合成値Z1となり、電極21、22間に高周波電圧を印加した場合には、次式
Z1=1/(2πfC1) 但し、fは高周波電圧の周波数、πは円周率
で近似される。呼気時においては、電極21、22間に高周波電圧を印加した場合にインピーダンス値に大きい影響を与えるキャパシタンスC1は、胸部容積Lが少ないことに起因して比較的小さい値となる。
【0024】
これに対し、図3は、吸気時(肺が膨らんでいる状態)において測定されるインピーダンス値(第1のインピーダンス値)を説明するための模式図である。図3(a)に示すように、吸気時においては被験者Hの胸部容積Lは、呼気時のV1よりも大きいV2となる。この場合、図3(b)に示すように、電極21、22間のインピーダンスZ2は、被験者Hの肺周囲の体組織に沿った抵抗R2と、胸部容積L=V2に相当するキャパシタンスC2との合成値Z2となり、電極21、22間に高周波電圧を印加した場合には、次式
Z2=1/(2πfC2) 但し、fは高周波電圧の周波数、πは円周率
で近似される。吸気時においては、胸部容積Lが大きいことに起因して、キャパシタンスC2は比較的大きい値となる。
【0025】
以上のように、電極21、22間において、呼気時と吸気時とでは状態変化(誘電率の変化)が生ずることから、その状態変化を電極21、22間インピーダンスの変化として把握することが可能となる。すなわち、周波数が10Hz以上の高周波交流電圧を電極21、22間に印加した場合においては、呼気時におけるインピーダンスZ1よりも吸気時におけるインピーダンスZ2が大きくなる。従って、このインピーダンス値の差と、肺呼吸量との関係を予め把握しておけば、インピーダンス値の差に基づいて、一回換気量や肺活量などの肺呼吸量を求めることができる。
【0026】
図4は、胸腔内空気量と電極21、22間のインピーダンス値(絶対値)との関係を示すグラフであり、横軸は電源周波数の対数である。また、胸腔内空気量を肺領域の半径として、10cm、8cm、6cm、4cmの別で示している。ここでは、肺領域の半径が10cmのときが(最大)吸気時、4cmのときが(最小)呼気時であると考えることができる。
【0027】
図5は、吸気時〜呼気時における胸腔内空気量の変化が一定であるとした場合の、電源周波数の変化に伴う呼気時インピーダンスZ1と吸気時インピーダンスZ2との相違を示すグラフである。因みに、図5のデータは、電極21、22間を流れる電流が141μAになるように電源を定電流制御して取得したデータである。
【0028】
これら図4、図5のグラフから明らかな通り、電極21、22間に印加する交流電圧の周波数が10Hz以下であるときは、吸気時と呼気時とにおいてコンダクタンスやインピーダンス値の差異はさほど認められない。これに対し、交流電圧の周波数が10Hz以上となると、吸気時と呼気時とにおいてコンダクタンスやインピーダンス値に差異が生じている。従って、電源31から周波数が10Hz以上の高周波交流電圧を電極21、22間に印加することで、吸気時と呼気時とにおいて有意差のある電気的データを取得できる。
【0029】
続いて、制御装置40の詳細構成について説明する。図6は、制御装置40の機能構成を示す機能ブロック図である。この制御装置40は、演算処理部41と、出力処理部42と、全体制御部43とを備えて構成されている。また、演算処理部41は、インピーダンス解析部411と、肺呼吸量算出部412と、エネルギー算出部413と、記憶部414とを含んでいる。
【0030】
インピーダンス解析部411は、インピーダンス測定装置33により計測される電極21、22間のインピーダンス値を所定のサンプリング周期で取り込み、これを時間軸に展開して時間解析が可能なデータを生成する。すなわち、インピーダンス値の時間変化からそのピーク値(第1のインピーダンス値)とボトム値(第2のインピーダンス値)とを一呼吸単位で求め、一回換気量(若しくは肺活量)を導出するために用いられるインピーダンス値を特定する。
【0031】
図7は、電極21、22間のインピーダンス値の時間変化であるインピーダンス波形Zaを示すグラフである。これは、電極21、22間を流れる電流を141μA、電源周波数を1MHzとして取得したグラフである。インピーダンス解析部411は、インピーダンスの計測値に基づきこのインピーダンス波形Zaに相当するデータを生成し、ピーク値及びボトム値を特定する。例えばインピーダンス解析部411は、インピーダンス波形Zaの生データにフィルタ処理を施して近似曲線波形を求めた上で、その近似曲線波形のピーク値及びボトム値を検出する。
【0032】
なお、図7には、実際の呼吸波形Vaを併記している。呼吸波形Vaは、被験者の鼻下に取り付けたサーミスタの出力電圧波形であって、鼻呼吸に伴う温度変化を検出したものである。この呼吸波形Vaとインピーダンス波形Zaとを対比すると明らかな通り、両者の波動周期はほぼ一致しており、インピーダンスの時間変化が呼吸動作と良くマッチングしていることが分かる。
【0033】
肺呼吸量算出部412は、記憶部414に格納されている、予め求められた肺呼吸量の変化とインピーダンス値の変動との関係を示すテーブルを参照して、前記インピーダンス値のピーク値とボトム値とから被験者Hの肺呼吸量を求める。例えば、図7に示すピーク値Za1とボトム値Za2とを持つ一呼吸(一回換気量)に着目すると、ピーク値Za1は1280オーム、ボトム値Za2は1205オームである。このようなインピーダンス値と、人体の胸部容積の大きさとの関係が、予めテーブル化して記憶部414に記憶されている。肺呼吸量算出部412は、インピーダンス解析部411で特定されたピーク値Za1とボトム値Za2とを前記テーブルに当てはめて、インピーダンス値の差分に基づき一回換気量を導出する。なお、肺活量を測定する場合は、被験者Hに最大吸気と最大呼気とを実行させた上で、インピーダンス値のピーク値及びボトム値を取得すれば良い。
【0034】
エネルギー算出部413は、肺呼吸量算出部412にて求められた肺呼吸量から酸素摂取量を算出し、さらに被験者Hのエネルギー消費量を算出する処理を行う。肺呼吸量が求められると、肺の効率は略一定であることから、酸素摂取量を算出できる。また、エネルギー消費量は酸素摂取量に比例するので、その推定値も求めることができる。エネルギー算出部413は、例えば一対のピーク値及びボトム値毎に求められる酸素摂取量を積算し、被験者Hの入浴中におけるエネルギー消費量(カロリー消費量)を求める。
【0035】
記憶部414は、RAM(Random Access Memory)等からなり、上述した通り、予め求められた肺呼吸量の変化とインピーダンス値の変動との関係を示すテーブルが格納されている。また、記憶部414は、インピーダンス測定装置33から所定のサンプリング周期毎に与えられるインピーダンス値を一時的に格納する。上記インピーダンス解析部411は、この記憶部414に格納されたデータを読み出して、所定の演算を行う。
【0036】
出力処理部42は、肺呼吸量算出部412で求められた肺呼吸量や、エネルギー算出部413で求められたエネルギー消費量等を、所定の表示形態で表示装置50において表示させる処理を行う。
【0037】
全体制御部43は、ユーザから操作部44を介して与えられる操作信号を受けて、スイッチング素子32をON−OFF制御し一対の電極21、22への通電制御を行うと共に、インピーダンス測定装置33によるインピーダンス測定動作を制御して、所定のサンプリング周期毎にインピーダンス測定値を演算処理部41へ出力させる。さらに全体制御部43は、上記の動作を行う演算処理部41及び出力処理部42を適時に動作させる全体制御を行う。
【0038】
操作部44は、キーボードや液晶タッチパネル等からなり、ユーザからの操作情報の入力を受け付ける。
【0039】
以上の通り構成された生体情報測定システムS1の動作について、図8に示すフローチャートに基づいて説明する。システムの動作が開始されると、全体制御部43によりサンプリング周期であるか否かが確認される(ステップS1)。サンプリング周期が到来すると(ステップS1でYES)、全体制御部43は、スイッチング素子32をONに制御して、電源31から一対の電極21、22へ交流電圧を印加させる(ステップS2)。
【0040】
続いて全体制御部43は、インピーダンス測定装置33を動作させて、電極21、22間のインピーダンスを測定させる(ステップS3)。このインピーダンス測定値は、演算処理部41の記憶部414に一時的に格納される(ステップS4)。そして、インピーダンス解析部411により前記インピーダンス測定値が読み出され、これを時間軸に展開して時間解析が可能なデータ(例えば図7に示したインピーダンス波形Za)が生成される。さらにインピーダンス解析部411は、インピーダンス値の時間変化からそのピーク値とボトム値とを一呼吸単位で求める。
【0041】
次いで、肺呼吸量算出部412により、一呼吸についてのピーク値及びボトム値(図8に示すピーク値Za1及びボトム値Za2)が取得されたか否かが確認される(ステップS5)。ピーク値及びボトム値が取得されていない場合(ステップS5でNO)、ステップS1に戻って処理が繰り返される。
【0042】
一方、ピーク値及びボトム値が取得された場合(ステップS5でYES)、肺呼吸量算出部412は、記憶部414に格納されているテーブルを参照し(ステップS6)、取得されたピーク値及びボトム値に基づいて1回換気量を導出する(ステップS7)。この1回換気量の値は、時刻情報に関連づけて記憶部414に格納される(ステップS8)。
【0043】
その後全体制御部43は、エネルギー消費量を導出する指令が操作部44から与えられているか否かを判定する(ステップS9)。エネルギー消費量を導出する場合(ステップS9でYES)、エネルギー算出部413は、肺呼吸量算出部412にて求められた肺呼吸量から酸素摂取量を算出し(ステップS10)、この酸素摂取量から一呼吸当たりのエネルギー消費量を算出する(ステップS11)。算出されたエネルギー消費量は、記憶部414に累積的に記憶される(ステップS12)。なお、エネルギー消費量を導出しない場合は(ステップS9でNO)、上記ステップS10〜S12はスキップされる。
【0044】
そして、システムの動作を終了するか否かが引き続き確認され(ステップS13)、動作が継続される場合(ステップS13でNO)は、前記ステップS1に戻って処理が繰り返される。一方、操作部44から動作終了指示が与えられたような場合は(ステップS13でYES)、ここで生体情報測定システムS1の動作は終了する。
【0045】
以上説明した本実施形態に係る生体情報測定システムS1によれば、被験者Hの肺呼吸量を、マウスピースのような接触部品を用いることなく、無拘束、無意識状態で電気的に測定することができる。すなわち、被験者Hが浴槽10へ入浴している間に、被験者Hがリラックスしている状態を損なうことなく、肺呼吸量を測定することができる。さらに、得られた肺呼吸量に基づき、エネルギー算出部413によって入浴中のエネルギー消費量を算出することができるので、健康管理やダイエット等に有用な情報を提供することができる。
【0046】
以上、本発明の各種実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば下記[1]〜[3]の変形実施形態を取ることができる。
【0047】
[1]上記実施形態では、1回換気量や肺活量を検出する例を示した。これに限らず、検出されたインピーダンス値の変動度合いから、例えば予備吸気量、予備呼気量、機能的残気量、全排気量、最大吸気量などを求めるようにしても良い。
【0048】
[2]上記実施形態では、浴槽10内に配置する電極21、22として、一組の平板状電極を配置する例を示した。このような配置は一例に過ぎず、電極の配置位置、電極サイズ、電極材料、電極の組数等は、状況に応じて適宜設定すれば良い。
【0049】
[3]本発明は浴槽に類する他の水槽にも適用可能であり、この場合でも、水中内に被験者が入水する領域として予定された領域を挟むように一対の電極を配置すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る生体情報測定システムS1の構成を示すブロック図である。
【図2】(a)、(b)は、呼気時において測定されるインピーダンス値を説明するための模式図である。
【図3】(a)、(b)は、吸気時において測定されるインピーダンス値を説明するための模式図である。
【図4】胸腔内空気量と電極間のインピーダンス値(絶対値)との関係を示すグラフである。
【図5】電源周波数の変化に伴う呼気時インピーダンスZ1と吸気時インピーダンスZ2との相違を示すグラフである。
【図6】制御装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図7】電極間のインピーダンス値の時間変化であるインピーダンス波形Zaを示すグラフである。
【図8】生体情報測定システムS1の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
10 浴槽(槽)
21、22 電極
31 電源
32 スイッチング素子
33 インピーダンス測定装置(インピーダンス測定手段)
40 制御装置(演算手段)
41 演算処理部
411 インピーダンス解析部
412 肺呼吸量算出部
413 エネルギー算出部
414 記憶部(記憶手段)
42 出力処理部
43 全体制御部
44 操作部
50 表示装置
H 被験者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中内に被験者が入水する領域として予定された測定領域を挟んで配置された一対の電極間に、周波数が10Hz以上の高周波交流電圧を印加すると共に、前記電極間のインピーダンス値を監視し、
被験者の吸気時に得られる第1のインピーダンス値と、呼気時に得られる第2のインピーダンス値とを取得し、
予め求められた肺呼吸量の変化とインピーダンス値の変動との関係を示すテーブルを参照して、前記第1のインピーダンス値と前記第2のインピーダンス値とから被験者の肺呼吸量を求めることを特徴とする生体情報測定方法。
【請求項2】
被験者の最大吸気時に前記第1のインピーダンス値を取得すると共に、最大呼気時に前記第2のインピーダンス値を取得することで、被験者の肺活量を求めることを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定方法。
【請求項3】
求められた肺呼吸量から酸素摂取量を算出することで、被験者のエネルギー消費量を推定することを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定方法。
【請求項4】
前記測定領域は浴槽の貯水領域であって、前記一対の電極は前記浴槽の内周壁に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の生体情報測定方法。
【請求項5】
水中内に入水した被験者の生体情報を測定するためのシステムであって、
水を貯留する槽の内周壁に配置される一対の電極と、
前記電極間に周波数が10Hz以上の高周波交流電圧を印加する電源と、
電極間のインピーダンス値を測定するインピーダンス測定手段と、
予め求められた肺呼吸量の変化とインピーダンス値の変動との関係を示すテーブルを記憶する記憶手段と、
前記インピーダンス値に基づいて被験者の生体情報を導出する演算手段と、を備え、
前記インピーダンス測定手段は、被験者の吸気時に得られる第1のインピーダンス値と、呼気時に得られる第2のインピーダンス値とを取得し、
前記演算手段は、前記テーブルを参照して、前記第1のインピーダンス値と前記第2のインピーダンス値とから被験者の肺呼吸量を求めることを特徴とする生体情報測定システム。
【請求項6】
前記演算手段は、求められた肺呼吸量から酸素摂取量を算出し、さらに被験者のエネルギー消費量を算出するエネルギー算出部を備えることを特徴とする請求項5に記載の生体情報測定システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate