説明

生体情報測定装置

【課題】通常の使用頻度における待機状態よりも長い、長期間にわたる不使用状態が続いた後であっても容易に正常状態に機能復帰させることができる生体情報測定装置を提供する。
【解決手段】生体情報測定装置10は、トイレ内の壁際に載置された本体11と、便器100のリム上に取り付けられた採尿手段12と、採尿手段12を構成する採尿アーム20とを備えている。本体11の上部には操作部41と表示部42とが設けられ、操作部41には、通常状態にある生体情報測定装置10を休眠状態に設定する指令を出すための休眠状態設定スイッチ41aと、休眠状態にある生体情報測定装置10を通常状態に復帰させる指令を出すための復帰スイッチ41bとが設けられている。また、生体情報測定装置10が休眠状態または通常状態のいずれの状態にあるかは、表示部42に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄した尿中の特定成分の濃度などの生体情報を測定するため洋式便器などに併設される生体情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の生体情報測定装置においては、使用者が排泄した尿と接する部分である採尿手段などを洗浄するための洗浄水を供給する手段として、上水を一時貯留するための通水補助タンクや上水を採尿手段まで送るための配管経路などが設けられている。しかしながら、これらの補助タンク内や配管経路中に存在する上水は必ずしも無菌状態ではないので、時間の経過とともに、補助タンク内や配管経路中にカビや藻などの雑菌が繁殖して、衛生上の問題がでたり、測定機能が阻害されたりすることがあった。
【0003】
また、生体情報測定装置の使用環境が氷点下となった場合、当該生体情報測定装置まで上水を通水するための配管経路が凍結してしまい、測定機能に支障が生じたり、配管経路が損傷したりすることもあった。そこで、このような問題を解決するため、上水を通水している配管経路に配管洗浄剤を送液するもの(例えば、特許文献1参照。)、配管経路に加熱液体を供給するもの(例えば、特許文献2参照。)あるいは通水補助タンクに制菌手段を設けたもの(例えば、特許文献3参照。)などが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−139768号公報
【特許文献2】特開2002−98692号公報
【特許文献3】特開2003−344392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3に記載された技術を採用することにより、少なくとも1日に数回程度は生体情報測定装置が使用される、通常の使用状態においては、通水経路中や補助タンク内の雑菌の繁殖や水垢の発生などを防止することができる。
【0006】
しかしながら、何ヶ月も家を留守にするなどの理由により、生体情報測定装置を長期間にわたって使用しない場合、補助タンク内や通水経路中にカビや藻などの雑菌が繁殖して、衛生上の問題がでたり、測定機能が阻害されたりすることがある。特に、上水中に消毒用として添加された塩素成分は時間の経過とともに抜けてしまうので、生体情報測定装置を長期間使用しない場合、配管経路中の上水の水質は急速に悪化していき、前述したカビや藻などの雑菌の繁殖は顕著となる。補助タンク内や通水経路中にカビや藻などの雑菌の繁殖が生じると、その後、生体情報測定装置の使用を再開する際に正常状態に復帰できなくなることが多い。
【0007】
また、生体情報測定装置の周囲の気温が氷点下になると、上水で満たされている配管経路が凍結してしまうので、配管経路が損傷したり、使用再開が困難になったりすることがある。特に、生体情報測定装置を長期間にわたって使用しない状況下において配管経路が凍結で損傷した場合、その後の気温上昇で氷が溶けて水漏れが生じても、その状態が長期間発見されないおそれがある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、通常使用における待機状態よりも長い、長期間にわたる不使用状態が続いた後であっても、容易に正常状態に機能復帰させることのできる生体情報測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の生体情報測定装置は、尿中の特定成分の濃度などの生体情報を測定する測定手段と、使用者が排泄した尿を採取する採尿手段と、前記採尿手段で採取した尿を測定手段へ送る採尿ポンプと、少なくとも前記採尿手段を洗浄するための洗浄水を供給する洗浄水供給手段とを備えた生体情報測定装置において、休眠指示手段からの指示により前記洗浄水供給手段を休眠状態に設定する休眠設定手段と、復帰指示手段からの指示により前記洗浄水供給手段を休眠状態から通常状態に復帰させる復帰手段と、を設けたことを特徴とする。
【0010】
ここで、通常状態とは、日常の使用状態、即ち、生体情報測定装置がいつでも作動できるように待機している状態をいい、休眠状態とは、一定の指示を行えば前記通常状態に復帰できるように待機している状態をいう。また、洗浄水供給手段とは、通常の待機状態において洗浄水が存在している部分、例えば、洗浄水ポンプ、補助タンクおよび配管経路などを含む部分をいう。
【0011】
このような構成とすれば、休眠指示手段から休眠設定手段に指示を与えて洗浄水供給手段を休眠状態に設定すれば、いつでも通常状態に復帰できるように待機した状態となるため、長期間にわたって不使用状態を保つことができ、その後、復帰指示手段から復帰手段に指示を与えれば洗浄水供給手段は通常状態に復帰するので、長期間にわたる不使用状態が続いた後であっても容易に正常状態に機能復帰させることができる。
【0012】
この場合、前記休眠状態は、前記洗浄水供給手段から洗浄水を排出した状態または前記洗浄水供給手段が殺菌作用を有する薬液で充填された状態のいずれかとすることができる。休眠状態は、洗浄水供給手段から洗浄水を排出した状態となるようにすれば、水中におけるカビや藻などの雑菌の繁殖がなくなり、水の凍結も生じないので、水に起因するトラブルを解消することができる。また、休眠状態は、洗浄水供給手段が殺菌作用を有する薬液で充填された状態となるようにすれば、カビや藻などの雑菌の繁殖を防止することができることに加え、洗浄水供給手段に空気が内在しない状態に維持できるので、正常状態に復帰させるときの空気抜きが不要となり、迅速なる復帰を行うことができる。
【0013】
また、洗浄水供給手段から洗浄水を排出した状態を休眠状態とする場合、前記休眠設定手段は、前記洗浄水供給手段から洗浄水を排出する機能と、前記洗浄水供給手段に殺菌作用を有する薬液を充填、排出する機能と、前記洗浄水供給手段に空気を充填する機能とを備えたものとすることが望ましい。このような構成とすれば、洗浄水供給手段から洗浄水を完全に排出し、且つ、殺菌、乾燥した後に休眠状態に設定可能となるため、休眠状態における雑菌繁殖防止作用を高めることができる。
【0014】
さらに、前記休眠設定手段に、前記休眠状態における前記測定手段中に保持される薬液を一定量に維持する機能を設けることもできる。このような構成とすれば、測定手段に配置されている生体センサの機能が、休眠中に劣化するのを抑制することができる。
【0015】
また、前記薬液として、前記測定手段で生体情報を測定する際に使用される緩衝液に殺菌剤を添加したものを使用することもできる。このような薬液を使用すれば、生体情報測定装置に常備されている緩衝液を利用することが可能となるため、新たな薬液タンクなどを設ける必要がなくなり、装置の簡素化およびコンパクト化を図ることができる。
【0016】
一方、前記休眠指示手段および前記復帰指示手段が電気通信回線に接続されたサーバーであれば、生体情報測定装置が配置された自宅より離れた場所から前記休眠指示手段および前記復帰指示手段を操作することが可能となるため、利便性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、通常の使用頻度における待機状態よりも長い、長期間にわたる不使用状態が続いた後であっても、生体情報測定装置を容易に正常状態に機能復帰させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態である生体情報測定装置について説明する。図1は本発明の実施の形態である生体情報測定装置を備えた洋式トイレを示す斜視図、図2は図1に示す生体情報測定装置の構成を示す概略図、図3は図1に示す生体情報測定装置の構成を示すブロック図、図4は図1に示す生体情報測定装置を構成するロータリバルブシリンジを示す分解斜視図である。
【0019】
図1〜図3に示すように、本実施形態の生体情報測定装置10は、トイレ内の壁際に載置された本体11と、便器100のリム上に取り付けられた採尿手段12と、採尿手段12を構成する採尿アーム20とを備えている。止水栓106の分岐金具107から配管21を経由して取り出された洗浄水Wが、ロータンク105とは別に設けられた補助タンク22内に貯留されており、補助タンク22から本体11へ洗浄水Wを供給するための配管5が設けられている。
【0020】
補助タンク22内には、洗浄水Wの収容量を検知するセンサSが設けられており、洗浄水Wが減少すると、それを検知したセンサSがコントローラ51へ信号を送り、コントローラ51からの指令で給水バルブ23が開き、洗浄水Wが一定量に達するまで上水を供給する。また、補助タンク22内の洗浄水Wが過剰となった場合には、オーバーフロー管24の上端開口部から排水バルブ25を経由して排出される。
【0021】
便器100には、便座102と便蓋104とが開閉自在に取り付けられている。採尿手段12の採尿アーム20は、モータ13(図3参照)により便器100のボウル内を回動し、使用者が排泄した尿を採取する。採尿アーム20で採取された尿は尿搬送管P1を経由して本体11へ送られ、尿中の特定成分の濃度などの生体情報が測定される。
【0022】
図3に示すように、本体11内には、ロータリバルブシリンジ43(以下、RVS43と記す。)と、生体情報の測定手段である尿糖センサ44と、校正液タンク45と、緩衝液タンク46と、洗浄水ポンプ47とオーバーフロー溜48と、コントローラ51と、各種の配管および配線とが設けられている。配管5の上流側の端部は、ストレーナ5aが取り付けられた状態で補助タンク22内に差し込まれ、配管5の下流側の端部は、本体11内の洗浄水ポンプ47に連通する給水管P5に接続されている。
【0023】
配管21の下流側は、給水バルブ23を経て、補助タンク22内に開口している。補助タンク22内には、上端が開口したオーバーフロー管24が立設され、その下流側は、排水バルブ25およびU字管状のトラップ部26を経由して排水管27に接続されている。給水バルブ23および排水バルブ25は、本体11内のコントローラ51によって制御される。通常状態においては、前述したように、センサSの働きにより、補助タンク22内の洗浄水は一定量に保たれている。
【0024】
図1に示すように、本体11の上部には操作部41と表示部42とが設けられ、図2に示すように、操作部41には、通常状態にある生体情報測定装置10を休眠状態に設定する指令を出すための休眠状態設定スイッチ41aと、休眠状態にある生体情報測定装置10を通常状態に復帰させる指令を出すための復帰スイッチ41bとが設けられている。また、生体情報測定装置10が休眠状態または通常状態のいずれの状態あるかは、表示部42に表示される。
【0025】
図4に示すように、RVS43は、注射器状のシリンジ43Aの上端側に、ロータリーバルブ43Bが設けられたものであり、液体および気体の吸引と排出とを高精度で行うことのできるポンプの一種である。シリンジ43Aは、シリンジモータ43aの回転によってピストン43bをシリンダ43c内で往復運動させることにより、シリンダ孔43gを介して、シリンダ43c内への液体、気体の吸引と、シリンダ43c内にある液体、気体の排出を行うことができる。ロータリーバルブ43Bは、シリンダ孔43gに連通する中央孔B1およびL字状に90度屈曲した6つの選択孔B2を有するステータ43dと、切替モータ43eによって回動され、ステータ43dの中央孔B1と選択孔B2のいずれかとを選択的に連通させるロータ43fとで構成されている。
【0026】
ステータ43dの選択孔B2の各端部は、配管を介して、校正液タンク45と緩衝液タンク46とに連通し、給水管P5と配管5とを介して補助タンク22に連通し、尿搬送管P1等を介して採尿アーム20側に連通し、また、捨て管P2等を介して排出ノズル17に連通し、センサ入口管P6を介して尿糖センサ44に連通している。
【0027】
従って、RVS43は、シリンジモータ43aおよび切替モータ43eの連係作動により、尿、校正液、緩衝液をそれぞれ所定量だけ尿糖センサ44に送給することができるとともに、不要な液体を便器100側に排出したり、補助タンク22内の洗浄水Wで、配管中やシリンジ43A中を洗浄したりして、その洗浄排水を便器100側へ排出できるようになっている。
【0028】
尿糖センサ44は、酵素であるグルコースオキシダーゼ(GOD)を用い、トランスデューサとして過酸化水素電極を用いて尿中の糖分(尿中に含まれるグルコース)を定量分析するものである。この尿糖センサ44は、採取された一定量の尿と緩衝液との混合液から、尿中の尿糖を計測して、その値をコントローラ51に送信する。
【0029】
この場合、分析に用いる酵素(GOD)は、時間の経過とともに活性を失い、経時的に出力が低下するため、所定時間ごと(例えば、1日1回)に、グルコースを所定濃度含む校正液を送り込むことによって、尿糖センサ44の出力値の校正が行われる。
【0030】
校正液タンク45は、校正液を所定量収容するものであり、液レベルの検知器を有していて、校正液の収容状態がコントローラ51に伝達されている。緩衝液タンク46は、KCl、NaClおよびリン酸等の緩衝剤を含む緩衝液を所定量収容するものであり、液レベルの検知器を有していて、緩衝液の収容状態がコントローラ51に伝達されている。緩衝液は、尿糖分析時の電極の電位安定化を図るとともに、支持塩としての作用を有している。
【0031】
図3に示すように、洗浄水ポンプ47は、入口側が配管P5に接続され、出口側が洗浄水管P3に接続されており、補助タンク22内の洗浄水Wを加圧して、尿採取手段12の洗浄ノズル15に供給する。オーバーフロー溜48は、RVS43のシリンジ43Aからの漏水やオーバーフロー水を受けるためのものである。
【0032】
コントローラ51は、生体情報測定装置10の制御を行うためのものであり、演算や制御を行う中央処理ユニットとしてのCPUと、制御プログラム等を記憶するROMと、CPUの作業用メモリとして機能するRAM等とを備えている。コントローラ51は、操作部41や他の制御機器からの入力と制御プログラムの内容に従って、所定のタイミングでRVS43、アームモータ13などを作動させて、採取された尿中の尿糖値の算出および算出された尿糖値の表示部42への表示を行うとともに、校正液タンク45中の校正液を使用して尿糖センサ44の出力値の校正を行う機能も有している。
【0033】
また、コントローラ51は、補助タンク22から送られる洗浄水Wにより、採尿アーム20、RVS43のシリンジ43A、尿搬送管P1、捨て管P2等の洗浄を行う機能も有している。さらに、コントローラ51は、後述するように、生体情報測定装置10を休眠状態に設定する際の処理工程、この休眠状態を維持する工程および休眠状態にある生体情報測定装置10を休眠状態から通常状態に復帰させる際の処理工程を実行する機能も具備している。
【0034】
ここで、図5を参照しながら、コントローラ51によって実行される、生体情報測定装置10の通常状態における処理工程について説明する。図5は図1に示す生体情報測定装置の通常状態における処理工程を示すフローチャートである。
【0035】
図5に示すように、まず、校正を開始すべきか否かが判断される(S10)。例えば、1日のうちの所定時刻に校正時刻が設定されており、その時刻になると、尿糖センサ44の出力値の校正が自動的に行われる。校正時刻になっていなければ、使用者が操作部41のスタートスイッチを操作したか否かが判断され(S11)、使用者が便器100の便座102上に着座して、スタートスイッチを操作すれば、アームモータ13が作動して、採尿アーム20が待機位置から採取位置まで回動する(S12)。
【0036】
続いて、採尿アーム20側で尿が検知されたか否かが判断され(S13)、使用者が便器100内に尿を排出して採尿器28中に尿が溜められると、尿検知電極がこれを検知して、RVS43による尿の吸引が行われる(S14)。そして、吸引された所定量の尿がセンサ入口管P6側に押し出された後、このセンサ入口管P6側に緩衝液が押し出されることにより、緩衝液と混合された尿が尿糖センサ44に送り込まれて、糖濃度の測定がなされるとともに、採尿アーム20が待機位置に戻る(S15)。この場合、採尿器28の尿取込口が下向きに回動して、採尿器28へのカビ胞子等の落下付着が防止される。続いて、表示部42に測定された糖濃度の表示がなされるとともに、RVS43により、センサ入口管P6側の尿や緩衝液が尿搬送管P1側へ送られて、便器100内へ排出される。
【0037】
この後、採尿アーム20と尿搬送管P1側の流路内の洗浄が行われる(S16)。即ち、洗浄水ポンプ47が作動して、待機位置にある採尿アーム20のアームカバーから洗浄水Wが噴射され、採尿アーム20の洗浄が行われる。また、補助タンク22内の洗浄水Wを、RVS43により、尿搬送管P1に送り込み、この尿搬送管P1内と尿搬送路Q1内の洗浄が行われる。そして、この後、RVS43を作動させて、尿搬送管P1や尿搬送路Q1内等の洗浄水を捨て管P2側へ排出する空引きが行われ(S17)、次に、捨て管P2側への洗浄水Wの充填(捨て管充填)が行われる(S18)。
【0038】
続いて、センサ入口管P6やセンサ出口管P4等に緩衝液を充填する緩衝液充填が行われる(S19)。そして、RVS43のピストン43bの位置出しや、ピストン43bのロック防止、ロータ43fの位置出し等を行う、次回測定準備が行われた(S20)後、最初の校正開始判断状態(S10)に戻る。
【0039】
一方、校正を開始すべきか否かが判断される段階(S10)おいて、校正が行われる場合は、校正液タンク45内の校正液をRVS43にて吸引して(S21)、この校正液をセンサ入口管P6側へ押し出した後、センサ入口管P6側へ緩衝液を押し出すことにより、これらの混合液が尿糖センサ44に送り込まれ、この尿糖センサ44中の校正液の測定が行われて(S22)、尿糖センサ44の校正が行われる。そして、センサ入口管P6側の校正液や緩衝液が尿搬送管P1を介して便器100内へ排出された後、S16へ移される。
【0040】
また、S13において尿検知が行われない場合は、尿検知まで所定時間(例えば、1分)が経過したか否かが判断され(S23)、所定時間が経過すれば、採尿アーム20が待機位置へ戻り(S24)、尿搬送管P1等の洗浄(S25)と空引き(S26)、捨て管P2側への洗浄水Wの充填(S27)が行われた後、S20に移行される。
【0041】
次に、図6〜図8に基づいて、通常状態にある生体情報測定装置10を休眠状態に設定する工程、その休眠状態を維持する工程および休眠状態にある生体情報測定装置10を通常状態に復帰させる工程について説明する。図6は図1に示す生体情報測定装置を休眠状態に設定する際の工程を示すフローチャート、図7は図1に示す生体情報測定装置が休眠状態にあるときの工程を示すフローチャート、図8は図1に示す生体情報測定装置が休眠状態から通常状態に復帰する際の工程を示すフローチャートである。
【0042】
図1,図2で示したように、本体11の上部に操作部41と表示部42とが設けられ、操作部41には、通常状態にある生体情報測定装置10を休眠状態に設定するための指示を出す休眠状態設定スイッチ41aと、休眠状態にある生体情報測定装置10を通常状態に復帰させるための指示を出す復帰スイッチ41bとが設けられている。
【0043】
まず、図6を参照して、通常状態にある生体情報測定装置10を休眠状態に設定する際の工程について説明する。生体情報測定装置10を長期間使用しない状況になった場合、使用者が、操作部41にある休眠状態設定スイッチ41aを操作すると(S30)、補助タンク22の排水が開始される(S31)。この場合、排水管27からの臭気の逆流を防止するため排水バルブ25が閉止された(S32)後、補助タンク22内の洗浄水Wの排水が行われる(S33)。具体的には、洗浄水ポンプ47を作動させて補助タンク22内の洗浄水Wを配管5および給水管P5を経由して吸引し、洗浄水管P3および洗浄水路Q3を経由して洗浄ノズル15から便器100内へ排出される。
【0044】
補助タンク22内の洗浄水Wが減少し、ストレーナ5aから洗浄水ポンプ47内に空気が流入して洗浄水ポンプ47が充分に機能しなくなると、RVS43が作動して補助タンク22内の洗浄水Wを配管5、給水管P5および配管Aを経由して吸引し、配管Eおよび捨て管P2を経由して排出ノズル17から便器100内に排出する。そして、補助タンク22内の洗浄水Wがなくなると、洗浄水ポンプ47およびRVS43が停止して、排水工程が終わる。なお、洗浄水ポンプ47とRVS43の作動制御については、洗浄ポンプ47を予め定められた時間だけ作動させた後、RVS43を作動させる方式、洗浄ポンプ47に空気が流入したことを検知してRVS43を作動させる方式、あるいは洗浄ポンプ47およびRVS43を並行して同時に作動させる方式のいずれかを選択することができる。
【0045】
洗浄水排出が終わると、切替モータ43eでロータリーバルブ43Bが切り替えられ、配管Bとシリンダ43cとが連通した後、RVS43が作動して緩衝液を吸い込む。続いて、切替モータ43eでロータリーバルブ43Bが切り替えられ、シリンダ43cと配管Aとが連通した後、RVS43が作動して、シリンダ43c内の緩衝液を配管A内に充填する(S34)。
【0046】
次に、RVS43が作動して配管A内の緩衝液をシリンダ43c内に再び吸い込んだ後、切替モータ43eでロータリーバルブ43Bが切り替えられ、シリンダ43cと配管Eとが連通した後、RVS43が作動して、シリンダ43c内の緩衝液を配管Eおよび捨て管P2から排出ノズル17を経由して便器100内へ排出する(S35)。
【0047】
このように、洗浄水排出を行った後、緩衝液の充填、排出を行うことによって配管A内を緩衝液でリンスすることができるため、緩衝液に含まれる殺菌成分により、配管A内を殺菌することができる。
【0048】
緩衝液の充填、排出が終わると、切替モータ43eでロータリーバルブ43Bが切り替えられ、シリンダ43cと配管Aとが連通した状態およびシリンダ43cと配管Eとが連通した状態にし、それぞれの状態でRVS43を作動させることにより、配管Aおよび配管Eの空引きが行われる(S36)。なお、洗浄水排出工程(S33)の後、緩衝液充填(S34)および緩衝液排出(S35)を行わずに、この空引き工程(S36)を開始することも可能であるが、緩衝液充填(S34)および緩衝液排出(S35)を行った方が殺菌効果が高まるので望ましい。
【0049】
空引き工程が終わると、切替モータ43eでロータリーバルブ43Bが切り替えられ、RVS43を作動させて吸い込んだ緩衝液が、配管D内および配管E内に順次充填される(S37)。配管D内および配管E内に緩衝液が充填されると、生体情報測定装置10は休眠状態(S38)となって休眠設定が完了する。
【0050】
次に、図7を参照して休眠状態にある生体情報測定装置10の動作について説明する。休眠状態にある生体情報測定装置10においては、配管Dおよび配管Eに緩衝液が充填され、尿糖センサ44も緩衝液で充填された状態にあるが、このとき、尿糖センサ44周辺の緩衝液量が適切であるか否かモニタされている(S39)。そして、緩衝液量が適切であれば、そのまま休眠状態(S38)に保たれ、緩衝液量が不足すると、緩衝液充填工程(S37)に戻って、配管D内および配管E内に緩衝液が充填され、再び休眠状態(S38)となる。
【0051】
なお、尿糖センサ44周辺の緩衝液量のモニタ方法は、一定時間経過するごとに検知する方式、尿糖センサ44の出力変化を検知することによって緩衝液量を判断する方式あるいは配管D内または配管E内に配置した液量センサで検知する方式などを採用することができる。
【0052】
次に、図8を参照しながら、休眠状態にある生体情報測定装置10を通常状態に復帰させる工程について説明する。休眠状態にある生体情報測定装置10において、使用者が、操作部41にある復帰スイッチ41bを操作すると(S40)、排水バルブ25が開放された(S41)後、給水バルブ23が開放され(S42)、補助タンク22内へ上水が供給される。このとき、補助タンク22内のオーバーフロー管24から溢れてトラップ部26内に洗浄水Wが流入して、臭気逆流防止用の封水が形成される。
【0053】
続いて、RVS43を作動させて、配管A内および配管E内に洗浄水Wを充填する(S43)。配管5内および給水管P5内に空気が残存している状態で洗浄水ポンプ47を作動させても、洗浄水ポンプ47が機能しないので、この工程は、RVS43を作動させて洗浄水ポンプ47内に呼び水を溜める意味をもっている。
【0054】
補助タンク22内の洗浄水Wが所定量に達すると、給水バルブ23が閉止され(S44)、給水が停止した後、洗浄水ポンプ47が作動する(S45)。この工程により、採尿器28の洗浄が行われ、配管Aに洗浄水Wが充填されるとともに、補助タンク22内の洗浄水Wの水位がオーバーフロー管24の上端開口部よりも低い所定位置まで下げられる。この後、RVS43が作動して、配管A内および配管E内に緩衝液が充填されると(S46)、復帰工程が完了し、生体情報測定装置10は通常状態に復帰する。
【0055】
このように、本実施形態の生体情報測定装置10は、休眠状態設定スイッチ41aを操作すれば、コントローラ51に記憶されている処理手順に従って、洗浄水供給手段(補助タンク22、配管5、給水管P5、配管A、洗浄水ポンプ47および洗浄水管P3)が、図6で示した所定の処理工程を経て、空状態となって休眠状態に設定されるため、カビや藻などの雑菌が繁殖することがなくなり、水の凍結も生じないので、水に起因するトラブルを解消することができる。
【0056】
また、休眠状態にある生体情報測定装置10は、図7に示した工程によって常に自動管理されているため、本体11の復帰スイッチ41bを操作すれば、コントローラ51に記憶されている処理手順に従って、図8に示した処理工程を経ていつでも通常状態に復帰させることができる。従って、生体情報測定装置10は、長期間にわたって不使用状態を保つことができ、その後、復帰指示手段(復帰スイッチ41b)で指示を与えれば速やかに通常状態に復帰するので、長期間にわたる不使用状態が続いた後であっても容易に正常状態に機能復帰させることができる。
【0057】
また、生体情報測定装置10においては、休眠状態における尿糖センサ44部分に保持される緩衝液を一定量に維持する機能を設けているため、尿糖センサ44部分に配置されている生体センサの機能が、休眠中に劣化するのを抑制することができる。
【0058】
また、この緩衝液は、尿糖センサ44で生体情報を測定する際に使用される緩衝液に殺菌剤を添加したものを使用しているため、生体情報測定装置10に常備されている緩衝液をそのまま利用することが可能であり、新たな薬液タンクなどを設ける必要がないので、装置の簡素化およびコンパクト化を図ることができる。
【0059】
一方、図2に示すように、休眠状態設定スイッチ41aおよび復帰スイッチ41bと同じ機能を有するものを、電気通信回線に接続されたサーバー29に設ければ、生体情報測定装置10が配置された自宅より離れた場所から休眠状態設定スイッチ41aおよび復帰スイッチ41bを操作することが可能となるため、利便性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の生体情報測定装置は、一般家庭のトイレなどに設置されている洋式便器に併設される尿検査手段として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態である生体情報測定装置を備えた洋式トイレを示す斜視図である。
【図2】図1に示す生体情報測定装置の構成を示す概略図である。
【図3】図1に示す生体情報測定装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す生体情報測定装置を構成するロータリバルブシリンジを示す分解斜視図である。
【図5】図1に示す生体情報測定装置の通常状態における処理工程を示すフローチャートである。
【図6】図1に示す生体情報測定装置を休眠状態に設定する際の工程を示すフローチャートである。
【図7】図1に示す生体情報測定装置が休眠状態にあるときの工程を示すフローチャートである。
【図8】図1に示す生体情報測定装置が休眠状態から通常状態に復帰する際の工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
5 配管
5a ストレーナ
10 生体情報測定装置
11 本体
12 採尿手段
13 モータ
17 排出ノズル
20 採尿アーム
21 配管
22 補助タンク
23 給水バルブ
24 オーバーフロー管
25 排水バルブ
26 トラップ部
27 排水管
28 採尿器
29 サーバー
41 操作部
41a 休眠状態設定スイッチ
41b 復帰スイッチ
42 表示部
43A シリンジ
43B ロータリーバルブ
43a シリンジモータ
43b ピストン
43c シリンダ
43g シリンダ孔
43d ステータ
43e 切替モータ
43f ロータ
43 RVS
44 尿糖センサ
45 校正液タンク
46 緩衝液タンク
47 洗浄水ポンプ
48 オーバーフロー溜
51 コントローラ
100 便器
102 便座
104 便蓋
105 ロータンク
106 止水栓
107 分岐金具
A,B,C,D,E,F 配管
B1 中央孔
B2 選択孔
W 洗浄水
S センサ
P1 尿搬送管
P2 捨て管
P3 洗浄水管
P4 センサ出力管
P5 給水管
P6 センサ入口管
Q1 尿搬送路
Q3 洗浄水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿中の特定成分の濃度などの生体情報を測定する測定手段と、使用者が排泄した尿を採取する採尿手段と、前記採尿手段で採取した尿を測定手段へ送る採尿ポンプと、少なくとも前記採尿手段を洗浄するための洗浄水を供給する洗浄水供給手段とを備えた生体情報測定装置において、休眠指示手段からの指示により前記洗浄水供給手段を休眠状態に設定する休眠設定手段と、復帰指示手段からの指示により前記洗浄水供給手段を休眠状態から通常状態に復帰させる復帰手段と、を設けたことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項2】
前記休眠状態が、前記洗浄水供給手段から洗浄水が排出された状態または前記洗浄水供給手段が殺菌作用を有する薬液で充填された状態のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記休眠設定手段は、前記洗浄水供給手段から洗浄水を排出する機能と、前記洗浄水供給手段に殺菌作用を有する薬液を充填、排出する機能と、前記洗浄水供給手段に空気を充填する機能とを備えたことを特徴とする請求項1または2記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
前記休眠設定手段に、前記休眠状態における前記測定手段中に保持される薬液を一定量に維持する機能を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の生体情報測定装置。
【請求項5】
前記薬液が、前記測定手段で生体情報を測定する際に使用される緩衝液に殺菌剤を添加したものであることを特徴とする請求項3または4記載の生体情報測定装置。
【請求項6】
前記休眠指示手段および前記復帰指示手段が電気通信回線に接続されたサーバーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の生体情報測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−98222(P2006−98222A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285000(P2004−285000)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】