説明

生体情報測定装置

【課題】既に使用中のベッドマットレスに容易に設置でき、安価で製造でき、高感度の生体情報の検出ができる生体情報測定装置を提供することである。
【解決手段】空洞部を有する導波路体と、前記導波路体の任意の位置に配設し検出波を導波路内に送信する送信手段と、前記導波路体の任意の位置に配設し、前記送信手段から送信され前記導波路内を伝搬されてくる検出波を受信する受信手段と、前記受信手段で受信した、振幅変調された包絡線検波または位相変調された位相検波から、被験者の生体情報を測定する生体情報処理手段と、を含む手段からなる生体情報測定装置によって実現できた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に接触することなく、人体にかかる生体情報を計測する生体情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商用交流電圧によって寝具上の人体に静電誘導された電圧を検出する誘導電圧検出手段と、前記誘導電圧検出手段により検出された電圧に基づき、人体の姿勢、離床または体動に関する情報を得るデータ処理手段とを備え、前記誘導電圧検出手段は、寝具もしくは敷布上に設置された電極に接続され、高入力インピーダンス特性を有するインピーダンス変換器と、前記電極上に誘導された交流電圧を前記インピーダンス変換器を介して入力し、前記入力した交流電圧の飽和を防止するためのディジタルポテンシオメータと、前記入力した交流電圧に含まれる信号成分の中の商用交流電圧と等しい周波数の信号成分を通過させるバンドパスフィルタと、前記バンドパスフィルタからの出力信号の電圧の最大値を取り出す包絡線検波回路と、前記包絡線検波回路の出力を加算し増幅する加算増幅回路とを含む、寝具上の人体からの情報をモニターする情報モニタリング装置に関する技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
生体が接触するベッドマットレス内に設置した検出波送信機と、検出波受信機とを具備し、前記マットレス内の閉鎖空間の前記検出波送信機から検出波を送信して、前記ベッドマットレスの布地裏面で反射させ、前記検出波が前記ベッドマットレスの布地裏面に当たって反射する検出波を前記検出波受信機で受信し、前記生体の接触による前記ベッドマットレスの変形に対して受信した前記検出波の振幅信号により生体情報を検知するベッドマットレスの生体情報検出装置に関する技術が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4414152号公報
【特許文献2】特開2009−72396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の人体からの情報モニタリング装置は、寝具もしくは敷布上に設置した圧電素子や導電性織布電極等の導電性マテリアルの誘導電極等を用いて体動、呼吸、脈波、姿勢、離床前及び離床の人体からの情報を記録しモニターしているため、寝具もしくは敷布上に設置した圧電素子や導電性織布電極などの導電性マテリアルの誘導電極等のセンサーと生体とが直接接触しなければ検出することができない。このため、これらのセンサーを寝具もしくは敷布上に直接設置するので、敷布交換時におけるセンサーの取り除き・再設置という手間や、失禁等による汚れによりセンサーが短絡して誤作動を起こすという問題があった。
【0006】
また、センサーを直接生体に接触させて検出するため、センサーの着脱によってセンサーの装着位置や向きが変わった場合には生体に正しく接触されず、呼吸や脈波などの生体情報が正確に検出できないという問題があった。
【0007】
特許文献2に記載のベッドマットレスの生体情報検出装置は、超音波送受信機をベッドマットレス内の底中央部に装着する必要があるため、ベッドメーカーにおいてベッド製造段階で組み込まなければならないか、または使用中のベッドマトレスを開裂させて超音波送受信機を内設させなければならない。このため超音波送受信機が装着されていない使用中のベッドマットレスに新たに超音波送受信機を装着することが困難であるという問題があった。
【0008】
また、硬質の断面がU字型のレールや前記レール底面には反射板を複数設置しているため、ベット上に設置する装置部分の重量が重くなり持ち運びにくいという問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、生体情報測定用センサーが装着されていない使用中のベッドマットレスに容易に設置することができ、敷布等の寝具交換時におけるセンサーの取り除き・再設置という手間や、失禁等による汚れによる誤作動が生じない、生体とは非接触で生体情報測定可能な装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
「発明が解決しようとする課題」に記載した課題を解決するために、請求項1にかかる生体情報測定装置1の発明は、被験者の生体情報を測定する生体情報測定装置1であって、空洞部12を有する導波路体2と、前記導波路体2の任意の位置に配設し検出波を導波路内に送信する送信手段と、前記導波路体2の任意の位置に配設し、前記送信手段から送信され前記導波路内を伝搬されてくる検出波を受信する受信手段と、前記受信手段で受信した、振幅変調された包絡線検波または位相変調された位相検波から、被験者30の生体情報を測定する生体情報処理手段と、を含む手段からなることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の生体情報測定装置1の発明は、請求項1において、前記導波路体2が、被験者30の呼吸などによって生じる微小な振動に応じて変位する周壁を有する管で構成される管状導波路体9、溝又は貫通部を削成した平板14と、前記溝又は貫通部の開口面を塞ぐ薄板13とを組立てることにより空洞部12が形成され、前記空洞部12を形成する上下面の少なくとも一面が被験者30の呼吸などによって生じる微小な振動に応じて変位する面からなる組立式導波路体10、または単一の平板15内に空洞部12を形成し、少なくとも前記平板15の一面を被験者30の呼吸などによって生じる微小な振動に応じて変位する面とする一体式導波路体11であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の生体情報測定装置1の発明は、請求項1又は2において、前記導波路体2の空洞部12の経路の平面視形状が、直線形状、碁盤格子形状、又は両端を1本の経路に集約し中央部を複数の経路に分列配置した分岐形状などの形状からなることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の生体情報測定装置1の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記検出波が、超音波50または光であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の生体情報測定装置1の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記包絡線検波の回路からの出力信号を、バンドパスフィルタ54を通過させて、被験者30の体動を測定することを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の生体情報測定装置1の発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、前記包絡線検波の回路からの出力信号を、バンドパスフィルタ54を通過させて、被験者30の呼吸を測定することを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の生体情報測定装置1の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、前記包絡線検波の回路からの出力信号を、バンドパスフィルタ54を通過させて、被験者30の脈波42を測定することを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の生体情報測定装置1の発明は、請求項1乃至7のいずれかにおいて、前記位相検波の回路からの出力信号から、被験者30の体温を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明は、ベッド33上に設置する装置部分は、硬質のレール及び複数の反射板がなく、導波路体2と検出波の送受信器3、4との構成のみであるので、部品点数が減じられ構造が簡素化でき、軽量化でき、高い可搬性を実現させるという効果を奏する。
【0019】
送受信器3、4と導波路体2の装置をベッドマットレスの上34またはベッドマットレスの下35に置くのみで、ベッドマットレス32を開裂して内設させる必要がないため、既設のベッドマットレス32で容易に使用することができるという効果を奏するとともに、本発明の装置を自由かつ容易に設置または取り除くことができるという効果を奏する。
【0020】
本発明の検出波の送信器3及び受信器4の配置は、導波路体2の左右に分かれて配置してもよく、導波路体2の同じ側に配置してもよく、導波路体2の空洞部である導波路に面する位置であればどこでも生体情報を検出できるという効果を奏する。
【0021】
送信器3から送信された検出波を、ベッドマットレス32の布地裏面など反射させて受信する構造ではなく、直接に導波路内で伝搬させて受信する構造であるので高感度に生体情報の測定が可能であるという効果を奏する。
【0022】
敷布31の上でなく下に置くため、敷布31の交換時に検出波の送受信器3、4や導波路体2などからなるセンサーの取り除き・再設置という手間が生じないという効果、及び敷布31などの交換時によって前記導波路体2などからなるセンサーの設置位置や向きが変わらないので生体情報を正確に検出できるという効果を奏する。
【0023】
被験者30とは非接触状態で導波路体2などからなるセンサーを置くことができるため、失禁などによる汚れにより検出波の送受信器3、4などからなるセンサーが誤作動を起こすという問題が生じないという効果を奏する。
【0024】
超音波50の送受信器3、4をベッドマットレス32内に内設させベットマットレス32裏面に超音波50を反射させる場合の超音波発振に必要な電圧約17Vに対し、送受信器3、4をベッドマットレス32に内設せず置くだけで導波路内に超音波50を伝搬させる本発明は超音波発振に必要な電圧は2.6Vあればよく、超音波発振に必要な電圧を約6.5分の1に低減させることができるという効果を奏する。
【0025】
本発明の生体情報測定装置1は、微小な振動を検出できるので、警報機などと組み合わせることによって金庫の異常感知や地震予知にも利用可能性を有するという効果がある。
【0026】
請求項2の発明は請求項1の発明と同じ効果を奏する。さらに、導波路体2の部品点数が減じられ構造が簡素化できた上に、導波路体2が管のみで構成される管状導波路体9は高分子材料等を材質とする可撓性を有するチューブであればよいので、また導波路体2が、溝又は貫通部を削成した平板14と、前記溝又は貫通部の開口面を塞ぐシート状薄板13とを組立てることにより形成され組立式導波路体10の場合は、シート状薄板13がアクリル板、OHPシートなどの薄板13でよく、溝や貫通部が削成される平板14が発泡スチロール板でもよいので、さらに導波路体2が平板15内に空洞部12を形成した一体式導波路体11も高分子材料等を材質とする可撓性を有する平板15であればよいので、極めて軽量化でき安価で製造できるという効果を奏する。
【0027】
超音波50の送受信器3、4をベッドマットレス32内に内設させベットマットレス32裏面に超音波50を反射させる場合は検出波の通過部は断面U字型のレールを配設し、反射板など設置するため通過部の厚さが増したが、本発明は導波路体2が小径のチューブのみからなる管状導波路体9、また、薄い発泡スチロール板やアクリル薄板13で組み立てられた組立式導波路体10、さらに、薄い平板15内に空洞部12を形成した一体式導波路体11であればよいので、極めて薄くできるという効果を奏する。
【0028】
請求項3の発明は請求項1または2の発明と同じ効果を奏する。さらに、導波路体2の空洞部12である導波路の経路の平面視形状が、直線形状、碁盤格子形状、又は両端を1本の経路に集約し中央部を複数の経路に分列配置した分岐形状などの形状であっても、超音波50又は光が伝搬する空洞部12であれば、一対の送受信器3、4で生体情報を検出することができるという効果を奏する。
【0029】
請求項4の発明は請求項1乃至3のいずれかの発明と同じ効果を奏する。さらに、体動、呼吸及び脈波などを検出する検出波として超音波50または光を使用することができるという効果を奏する。
【0030】
請求項5の発明は請求項1乃至4のいずれかの発明と同じ効果を奏する。さらに、人体に非接触状態で被験者30がベッド33上で仰臥位61、側臥位62、またはベッド33からの離床60などの被験者30の体動を測定することができるという効果を奏する。
【0031】
請求項6の発明は請求項1乃至5のいずれかの発明と同じ効果を奏する。さらに、人体に非接触状態でベッド33上の被験者30の呼吸を測定することができるという効果を奏する。
【0032】
請求項7の発明は請求項1乃至6のいずれかの発明と同じ効果を奏する。さらに、人体に非接触状態でベッド33上の被験者30の脈波42を測定することができるという効果を奏する。
【0033】
請求項8の発明は請求項1乃至7のいずれかの発明と同じ効果を奏する。さらに、人体に非接触状態でベッド33上の被験者30の体温を測定することができるという効果を奏する。
【0034】
また、一対の送受信器3、4及び導波路体2で、体動、呼吸、脈波及び体温など種々の生体情報を検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態の一つである直線形状の管を使用した導波路からなる生体情報測定装置1の平面概要図である。
【図2】本発明の実施形態の一つである直線形状の導波路を組立てて形成した生体情報測定装置の平面概要図である。
【図3】本発明の実施形態の一つである直線形状の導波路を前後方向中心線における断面の正面概要図である。
【図4】本発明の実施形態の一つである直線部と分岐部を有する管状導波路体の平面概要図である。
【図5】本発明の実施形態の一つである分岐部を有する管状導波路体の平面概要図である。
【図6】本発明の実施形態の一つである直線部と分岐部を有する組立式導波路体で上側の薄板を除去したときの平面概要図である。
【図7】本発明の実施形態の一つである直線部と分岐部を多数有する組立式導波路体で上側の薄板を除去したときの平面概要図である。
【図8】本発明の実施形態の一つである略U字形溝を削成した平板を有する組立式導波路体を前後方向中心線における断面の正面概要図である。
【図9】本発明の実施形態の一つである、平面視で略長方形状の貫通部を削成した平板を有する組立式導波路体を前後方向中心線における断面の正面概要図である。
【図10】本発明の実施形態の一つである、単一の平板内に空洞部を形成した一体式導波路体の平面概要図である。
【図11】本発明の一つの使用形態の正面概要図である。
【図12】本発明の一つの使用形態の側面概要図である。
【図13】本発明の実施形態の一つである一対の送受信器を有する直線形状の管状導波路体を複数配置した平面概要図である。
【図14】(a)は受信し増幅した波形である。(b)は前記増幅した波形を包絡線検波回路で包絡線のみの図である。(c)は1〜18Hzのバンドパスフィルタを通過させた波形である。(d)は0.1〜0.7Hzバンドパスフィルタを通過させた波形である。
【図15】(a)は発振されたパルス波である。(b)は40kHzバンドパスフィルタを通過させた正弦波である。(c)は受信し増幅した波形である。(d)は位相差(時間差)である。
【図16】本発明の生体情報処理を示す概要ブロック図である。
【図17】直線部と分岐部からなる導波路体を使用した場合の在床、離床の体動波形の測定結果である。
【図18】(a)は直線部と分岐部からなる導波路体を使用した場合の呼吸波形である。(b)は圧電センサーによる波形である。
【図19】(a)は直線部からなる導波路体を使用した場合の脈波波形である。(b)は心電図による波形である。
【図20】(a)は直線部と分岐部からなる導波路体を使用した場合の呼吸波形である。(b)は圧電センサーによる波形である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1又は図2で説明する。本発明である生体情報測定装置1は、空洞部12を有する導波路体2と、前記導波路体2の任意の位置に配設し検出波を導波路内に送信する送信手段と、前記導波路体2の任意の位置に配設し、前記送信手段から送信され前記導波路内を伝搬されてくる検出波を受信する受信手段と、前記受信手段で受信した、振幅変調された包絡線検波または位相変調された位相検波から、被験者30の生体情報を測定する生体情報処理手段6と、を含む手段からなる。
【0037】
本発明で使用する検出波は、20〜500kHzの超音波50または光が用いられるが、以下、超音波50を用いた場合について説明する。
【0038】
送受信器3、4の配置位置について説明する。超音波50の送信手段である送信器3、及び超音波50の受信手段である受信器4は、一対の送受信器3、4として、図3、図4、図5、図6に示すように導波路体2の両端部に配設するか、又は図7に示すように、送信器3を任意の位置に配置し、受信器4の配置位置は、位置イ、位置ロ、位置ハ、位置ニ又は位置ホのうち選択した任意の一つの位置に配設することができる。送受信器3、4の配置位置は超音波50が伝搬される導波路である空洞部12に面して配置すれば任意の位置でよい。
【0039】
導波路体2の形態を説明する。導波路体2は、被験者30の呼吸などによって生じる微小な振動に応じて変位する周壁を有する管のみで構成される管状導波路9、または導波路体2が、溝又は貫通部を削成した平板14と、前記溝又は貫通部の開口面を塞ぐシート状薄板13とを組立てることにより空洞部12が形成され、前記空洞部12を形成する上下面の少なくとも一面が被験者30の呼吸などによって生じる微小な振動に応じて変位する面からなる組立式導波路体10、さらに単一の平板15内に空洞部12を形成し、前記平板15の上下面のうち少なくとも一面を被験者30の呼吸などによって生じる微小な振動に応じて変位する面からなる一体式導波路体11の形態がある。
【0040】
まず、管のみで構成される管状導波路10について図3で説明する。管の外側の周壁の材質は高分子材料、天然ゴム又は合成ゴムなどの可撓性を有する材料であり、管の外側の周壁は被験者30の呼吸などによって生じる微小な振動に応じて変位するように材質と厚みを選択する。
【0041】
管の内側の空洞部12の断面形状は、円形状、四角形状または異形状など特に限定されない。
【0042】
管状導波路体9が1本の管のみから構成される場合と複数の管から構成される場合がある。複数の管から構成される場合は、図4又は図5に示すように、管は直線部20と分岐部21の組み合わせからなる。ここで、分岐部21は、送受信器3、4を配置する管状導波路体9の両端部は1本の管に集約されており、管状導波路2の長手方向の中央部は複数の管をそれぞれ一定の間隔を設けて分列して配置させ、前記集約された1本の管の両端部近傍において他の分列した管の両端部を溶着しそれぞれの管の空洞部を連通させる。
【0043】
そして、複数の導波路から構成される管状導波路体9の場合は、図4又は図5に示すように、送信器3、受信器4及び管状導波路体9の結合体を一つの薄肉からなる可撓性を有する袋体5内に挿入、または送信器3と受信器4は袋体5に外接させて設け、管状導波路体9を袋体5内に挿入する。送信器3、受信器4及び管状導波路体9の結合体を一つの袋体5にまとめることによって、生体情報測定装置1の取扱が容易になる。
【0044】
次に、図6又は図7で、導波路体2が、溝又は貫通部を削成した平板14と、前記溝又は貫通部の開口面を塞ぐシート状薄板13とを組立てることにより空洞部12を形成する組立式導波路体10の場合について説明する。
【0045】
薄板13や平板14の材料は、例えばアクリル、プラスチック、樹脂、発泡スチロール、高分子材料、天然ゴム、合成ゴム、セラミックなど薄板や平板を製造できる材料から選択すればよく、組立式導波路体10の上下面のうち少なくとも一面の材料は、被験者30の呼吸などによって生じる微小な振動に応じて変位する可撓性を有する材料を選択する。
【0046】
溝又は貫通部を削成した平板14と薄板13とを組み立てることによって形成される空洞部12の断面形状は、円形状、四角形状または異形状など特に限定されない。
【0047】
組み立てることによって形成される空洞部12は導波路となる。組立式導波路体10は1本の導波路から構成される場合と複数の導波路から構成される場合がある。1本の導波路から構成される場合は、導波路は、図2に示すように直線部または曲線部を有する空洞部を形成するように平板を削成する。また、複数の導波路から構成される場合は、図6又は図7に示すように、導波路は直線部20と分岐部21を組み合わせた空洞部12を形成するように平板14を削成する。ここで、削成例として、前記平板14に、図8に示すような略U字形溝16、又は図9に示すような平面視で略長方形状の貫通部17が形成されるように削成する。
【0048】
前記組立式導波路体10の導波路である空洞部12を形成した上下面は、少なくとも一面に被験者30の呼吸などによって生じる微小な振動に応じて変位する薄板13(削成した形状が貫通部17又は略U字形溝16の場合)または平板14(削成した形状が略U字形溝16の場合)で構成する。
【0049】
そして、組立てられて導波路を形成した組立式導波路体10には任意の位置に検出波の送受信器3、4が配設されて、送信器3、受信器4及び導波路が一つの組立式導波路体10にまとめられているので、生体情報測定装置1の取扱が容易になる。
【0050】
次に、図10で、導波路体2が、単一の平板15内に空洞部12を形成した一体式導波路体11について説明する。前記空洞部12は、平板15に空洞部12を穿孔する方法、又は金型を使用し射出成形で空洞部12を有する平板15を製造する方法などでよって造られる。
【0051】
平板15の材料は高分子材料、樹脂、プラスチック、発泡スチロール、天然ゴム又は合成ゴムなどの可撓性を有する材料であり、形成された空洞部12の上下面のうち少なくとも一面に被験者30の呼吸などによって生じる微小な振動に応じて変位する面を設ける。
【0052】
単一の平板15内の空洞部12の断面形状は、円形状、四角形状または異形状など特に限定されない。
【0053】
単一の平板15内の空洞部12の経路の平面視形状は、少なくとも1カ所に開口部を設け直線形状や略碁盤格子形状などの形状からなる。
【0054】
一体式導波路体11は、単一の平板のみで導波路を形成しているので、生体情報測定装置1の取扱が容易になる。
【0055】
なお、管状導波路体9の形態、組立式導波路体10の形態、または一体式導波路体11の形態は、図1乃至図10のうちのいずれかの形態に限定されるものでない。
【0056】
次に、導波路体2を含むセンサーの使用態様について一例を説明する。図11又は図12に示すように、一対の送受信器3、4と、管状導波路体9、組立式導波路体10又は一体式導波路体11とを1セットとしてベッドマットレスの上34またはベッドマットレスの下35に置いてもよいし、図13に示すように、ベッドマットレスの上34またはベッドマットレスの下35(ベッド33の上)に、一対の送受信器3、4と、管状導波路体9、組立式導波路体10又は一体式導波路体11などの導波路体2とからなるセンサーを複数配置してもよい。
【0057】
ベッドマットレスの上34に置くと被験者30の生体情報をさらに高感度で受信することができ、ベッドマットレスの下35に置くと被験者30は生体情報測定装置1が設置されているという違和感がない。
【0058】
一対の送受信器3、4と、管状導波路体9、組立式導波路体10又は一体式導波路体11とを、ベッドマットレスの上34またはベッドマットレスの下35に置くことによって、被験者30の大きな動きから微小な動きまでの生体の動きが発生すると、前記生体の動きが前記管状導波路体9、組立式導波路体10又は一体式導波路体11の導波路に対しての圧力となって、前記導波路の断面積を変化させる。これにより、送信手段からの超音波50などの検出波の振幅又は位相が変調する。振幅変調または位相変調された検出波は生体情報処理回路で、被験者30の体動、呼吸、脈拍または体温などの個々の生体情報として取り出すように処理される。
【0059】
次に、図16は本発明の生体情報測定装置1のブロック図であり、本発明の生体情報測定装置1は、40kHz交流発振器、40kHzの超音波送信器3、超音波受信器4、受信・復調(包絡線検波回路51、位相検波回路52)回路、及びマイクロコンピュータ55を含む手段から構成される。
【0060】
検出波である超音波50を送信する送信手段は、空洞部12である導波路の一端に配設され、40kHz交流発振器で正弦波を発振させるか、またはマイクロコンピュータ55で40kHzパルス波を発生させ、40kHzのバンドパスフィルタ54を通過させて40kHzの正弦波に変換させた後、増幅器53により増幅された超音波50を導波路内に向かって送信する送信器3である。
【0061】
指向性の高い超音波50を送信することによって、人体の脈や呼吸などの器官の微小な動き、及び人体のベッド33上での仰臥位61や側臥位62、もしくはベッド33からの離床60などの大きな動きを検出波の振幅の変調や位相の変調として検出する。
【0062】
検出波を受信する受信手段は、前記導波路の任意の位置に配設され、導波路内を伝搬され振幅変調又は位相変調された超音波50の検出波を受信する受信器4である。
【0063】
次に、生体情報処理手段6は、受信器4により受信した振幅変調または位相変調された超音波50を、導波路体2と送受信器3、4の形態や、前記導波路体2と送受信器3、4の置かれたベッドマットレス32などの周囲条件に基づき、0〜200dBの範囲で最適な検出が可能になるように増幅器53で増幅させた後、包絡線検波回路51や位相検波回路52で処理して呼吸、心拍、体動及び体温を抽出する。
【0064】
前記検出波の振幅信号は、図14(a)に示すような波形になり、前記波形について説明する。
【0065】
被験者30がベッドマットレスの上34に在床か離床かは、検出した波形の包絡線40から判別できる。被験者30がベッドマットレスの上34に在床している場合は、被験者30の動きに応じて、直接に又はベッドマットレス32を介して導波路の断面積を大きく変化させるので、前記包絡線40の変化が大きく現れる。また、被験者30がベッドマットレスの上34から離床60の場合は、前記包絡線40の変化が現れないことで判別できる。
【0066】
被験者30がベッドマットレス32上に静かに寝ている場合は、呼吸や脈拍などの生体情報に応じた微小な変動を検出できる。具体的には、生体の呼吸や脈拍などの微小な振動が、直接に又はベッドマットレス32を介して導波路を微小に変形させ、この微小な変形が包絡線40に現れており、図14(a)に示す波形においては、呼吸波形41と脈波42は呼吸に対応する周波数の包絡線40に脈波42が重畳した波形を示している。
【0067】
次に、呼吸、心拍、体動及び体温などの生体情報の抽出について説明する。前記抽出は、包絡線検波回路52より、出力波から図14(b)に示すような包絡線40のみを取り出し、0.1〜18Hzのバンドパスフィルタ54により、0.1〜18Hz以外の出力波が取り除かれた出力波を増幅器53により増幅させて、体動の生体情報を抽出する。そして、前記抽出データをマイクロコンピュータ55に記録する。
【0068】
また、前記包絡線検波回路51より、出力波から包絡線40のみを取り出し、1〜18Hzのバンドパスフィルタ54により低周波が取り除かれた、図14(c)に示すような出力波を増幅器53により増幅させて、脈波42の生体情報を抽出する。そして、前記抽出データをマイクロコンピュータ55に記録する。
【0069】
前記包絡線検波回路51より、出力波から包絡線40のみを取り出し、0.1〜0.7Hzのバンドパスフィルタ54により、0.1〜0.7Hz以外の周波数が取り除かれた、図14(d)に示すような出力波を増幅器53により増幅させて、呼吸の生体情報を抽出する。そして、前記抽出データをマイクロコンピュータ55に記録する。
【0070】
受信器4で受信し位相変調し振幅変調した超音波波形と、送信器3で送信される40kHzの検出波の超音波波形とを、位相検波回路52に入力し位相差を求める。求められた位相差は増幅器53により増幅された後、マイクロコンピュータ55に入力し、前記位相差から体温の生体情報を抽出し、前記抽出データをマイクロコンピュータ55に記録する。
【0071】
ここで、位相差から体温を求める方法を説明する。位相差を時間差τ43で表し、音速をC、摂氏温度をtで表すと、位相差から体温を求める数式は、数式(1)、(2)及び(3)で算出することができる。
【0072】
【数1】

【0073】
数式(1)乃至(3)に音速や位相差の数値を当てはめて体温を求める。
【0074】
以上のように生体情報処理結果をマイクロコンピュータ55に記録することによって、前記マイクロコンピュータ55などの表示部に、生体の体動、呼吸並びに脈波42の波形、及び体温を表示することができる。
【0075】
次に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は実施例により限定されるものでない。
【実施例1】
【0076】
1対の超音波送信器3と受信器4に対して、導波路を形成する4面の一面がOHPシートと、他の3面が発泡スチロール製の板に削成させた略U字形溝16とから構成された導波路であって、図6に示すような直線部20と分岐部21とからなる導波路を有する組立式導波路体10を、ベッドマットレスの上34に配置した。前記構成や材質などの場合は、前記OHPシート及び発泡スチロールが被験者30の呼吸などによって生じる微小な振動に応じて変位する。
【0077】
図17に本発明により抽出した離床・在床信号と被験者30の動きとの関連を比較した。被験者30がベッド33から離床60したときは導波路は圧縮されず断面積が最も広い状態のため、送信された超音波50はあまり変調されないので離床60信号の電圧が高く現れ、離床60から在床して仰臥位61に移行すると、被験者30の体重による圧力が広い範囲で作用するので前記導波路の断面積がやや狭くなり、これによって電圧がやや低くなる。また、在床して仰臥位61から側臥位62に移行したときは、被験者30の体重による圧力が狭い範囲で作用するので前記導波路の断面積が狭くなるため電圧が低くなる。さらに、側臥位62から離床60に移行したときも電圧が変化することが示されている。
【0078】
次に、図18(a)に示す本発明により抽出した呼吸測定による波形と、図18(b)に示す圧電センサーによる呼吸の波形との関連を比較した。被験者30が呼吸して圧電センサーが検出した波形の高い部位と、本発明である導波路を使用して検出された波形の低い部位とがほぼ同期して現れており、かつ圧電センサーが検知した波形の低い部位と、本発明である導波路を使用して検出された波形の高い部位ともほぼ同期して現れていることが示されている。
【実施例2】
【0079】
1対の超音波送信器3と受信器4に対して、導波路を形成する4面の一面がOHOシートと、他の3面が発泡スチロール製の板に削成させた略U字形溝16とから構成された導波路であって、図2に示すような直線部20からなる導波路を有する組立式導波路体10を、ベッドマットレスの上34に配置した。
【0080】
図19(a)に示す本発明により抽出した心拍測定による脈波42と、図19(b)に示す心電図による脈波42との関連を比較した。心電図による脈波42の高い部位と、本発明により抽出した心拍測定による脈波42の高い部位とがほぼ同期して現れており、心電図による脈波42の低い部位と、本発明により抽出した心拍測定による脈波42の低い部位ともほぼ同期して現れていることが示されている。
【実施例3】
【0081】
1対の超音波送信器3と受信器4に対して、導波路を形成する4面の一面がOHPシートと、他の3面が発泡スチロール製の板に削成させた略U字形溝16とから構成された導波路であって、図6に示すような直線部20と分岐部21とからなる導波路を有する組立式導波路体10を、ベッドマットレスの下35に配置した。
【0082】
図20(a)に示す本発明により抽出した呼吸測定による波形と、図20(b)に示す圧電センサーによる呼吸の波形との関連を比較した。被験者30が呼吸して圧電センサーが検出した波形の高い部位と、本発明である導波路を使用して検出された波形の低い部位とが時間的に約0.7秒遅延で現れており、かつ圧電センサーが検出した波形の低い部位と、本発明である導波路を使用して検知された波形の高い部位とが時間的に約0.7秒遅延で現れていることが示されている。
【0083】
以上から、導波路体2をベッドマットレスの上34またはベッドマットレスの下35に置いた状態で、被験者30の体動、脈拍及び呼吸に関する生体情報のそれぞれの変化や振動をきっちりと検出して捉えているが示された。
【実施例4】
【0084】
次に、1対の超音波送信器3と受信器4に対して、導波路を形成する4面の一面がOHPシートと、他の3面が発泡スチロール製の板に削成させた略U字形溝16とから構成された導波路であって、図1に示すような直線部からなる管状導波路体9を構成し、ベッドマットレスの上34に配置した。
【0085】
位相差情報などから体温の生体情報を抽出する。まず、パルス発信回路で図15(a)に示す40kHzのパルス波が発生し、前記パルス波が40kHzバンドパスフィルタ54を通過して図15(b)に示す40kHzの正弦波へ変換された後、増幅器53により増幅された超音波50が送信器3から導波路内へ送信される。前記送信された超音波50を受信器4で受信し、図15(c)に示すように増幅された波形と、図15(b)に示す送信器3の40kHz波形とを位相検波回路52に入力し、図15(d)に示す位相差(時間差43τ)を求めると、2.2669msであった。
【0086】
導波路が全長80cmであるので、前記導波路を伝わる音の速さは、c=0.8m/τ(s)であるため、
t=((1.6/τ)−331)/0.6の式が導かれる。
したがって、体温は、
体温(℃)=((0.8/0.0022669)−331)/0.6
=(352.9−331)/0.6
=36.5
を導いて、体温が36.5℃であることを測定できた。
【符号の説明】
【0087】
1 生体情報測定装置
2 導波路体
3 送信器
4 受信器
5 袋体
6 生体情報処理手段
9 管状導波路体
10 組立式導波路体
11 一体式導波路体
12 空洞部
13 薄板
14 平板
15 平板
16 略U字形溝
17 平面視で略長方形状の貫通部
20 直線部
21 分岐部
30 被験者
31 敷布
32 ベッドマットレス
33 ベッド
34 ベッドマットレスの上
35 ベッドマットレスの下
40 包絡線
41 呼吸波形
42 脈波
43 時間差
50 超音波
51 包絡線検波回路
52 位相検波回路
53 増幅器
54 バンドパスフィルタ
55 マイクロコンピュータ
60 離床
61 仰臥位
62 側臥位
イ 位置
ロ 位置
ハ 位置
ニ 位置
ホ 位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の生体情報を測定する生体情報測定装置であって、空洞部を有する導波路体と、前記導波路体の任意の位置に配設し検出波を導波路内に送信する送信手段と、前記導波路体の任意の位置に配設し、前記送信手段から送信され前記導波路内を伝搬されてくる検出波を受信する受信手段と、前記受信手段で受信した、振幅変調された包絡線検波または位相変調された位相検波から、被験者の生体情報を測定する生体情報処理手段と、を含む手段からなることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項2】
前記導波路体が、被験者の呼吸などによって生じる微小な振動に応じて変位する周壁を有する管で構成される管状導波路体、溝又は貫通部を削成した平板と、前記溝又は貫通部の開口面を塞ぐ薄板とを組立てることにより空洞部が形成され、前記空洞部を形成する上下面の少なくとも一面が被験者の呼吸などによって生じる微小な振動に応じて変位する面からなる組立式導波路体、または単一の平板内に空洞部を形成し、少なくとも前記平板の一面を被験者の呼吸などによって生じる微小な振動に応じて変位する面とする一体式導波路体であることを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記導波路体の空洞部の経路の平面視形状が、直線形状、碁盤格子形状、又は両端を1本の経路に集約し中央部を複数の経路に分列配置した分岐形状などの形状からなることを特徴とする請求項1または2に記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
前記検出波が、超音波または光であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の生体情報測定装置。
【請求項5】
前記包絡線検波の回路からの出力信号を、バンドパスフィルタを通過させて、被験者の体動を測定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の生体情報測定装置。
【請求項6】
前記包絡線検波の回路からの出力信号を、バンドパスフィルタを通過させて、被験者の呼吸を測定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の生体情報測定装置。
【請求項7】
前記包絡線検波の回路からの出力信号を、バンドパスフィルタを通過させて、被験者の脈波を測定することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の生体情報測定装置。
【請求項8】
前記位相検波の回路からの出力信号から、被験者の体温を測定することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の生体情報測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−212388(P2011−212388A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85873(P2010−85873)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(507206262)有限会社コスモデザイン (2)
【出願人】(595115592)学校法人鶴学園 (39)
【Fターム(参考)】