説明

生体情報計測器、生体情報計測器を有する電子機器、生体情報計測方法及び生体情報計測プログラム

【課題】計測毎に皮膚とセンサの接触の程度が異なるような場合であっても正確に皮膚の水分量を測定する。
【解決手段】皮膚の水分量を測定するための生体情報計測器において、基板の上に形成した電極を有し、当該電極に接触した皮膚の電荷量を計測するセンサを備える。前記センサに交流信号を印加する。前記センサが前記電極に前記皮膚が接触してから離れるまでの間に計測した電荷量を一定時間毎に順次保存し、当該保存した電荷量を加算することにより計測した前記電荷量の合計量を算出する。算出した前記電荷量の合計量を、計測時間で除して単位時間あたりの平均電荷量を算出する。前記平均電荷量に基づいて、前記皮膚の水分量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体の皮膚表面における水分量の計測技術に関する。
【背景技術】
【0002】
IT(Information Technology)、ネットワーク技術の進展により、電子機器が扱う情報量及び蓄積される情報量は増大の一途をたどっている。また、電子部品の軽薄短小化により、携帯電話やノート型PCなどの小型電子機器が普及し利便性が高まっている。
【0003】
このような状況下で入力デバイスであるセンサから正確に情報を得て、それを正確に分析、判断、加工された有用情報として人に認知させることは、安心安全、快適、環境保全の社会を形成する上で重要な位置づけにある。
【0004】
また、社会の成熟と共に高齢化が進み、健康や加齢が顕著に現れる皮膚の生体情報を、場所を選ばず、安価、簡易かつ正確に計測する健康センサの実現が望まれている。生体センサを搭載した電子機器による健康情報サービスは上記の要望を満たすものである。
【0005】
この点、健康や加齢に伴う生体情報としては、人の皮膚に蓄えられる、もしくは皮膚表面から分泌される発汗に伴う水分量が挙げられる。人の水分量は、疲れやストレスなど、人の健康状態や心理状態と密接に関係していることが一般的に知られている。
【0006】
かかる人の皮膚の生体情報としての水分量を計測する方法として、静電容量式水分センサを利用した装置の発明が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1に記載の発明では、図17に記載されているように、正方形状の絶縁基板52の表面に面内で対向する一対の交差櫛状の電極53が形成され、静電容量式の水分センサ51を形成している。なお、図17は、特許文献1の図5に相当する図である。
【0008】
そして、このような構成を用いて人の皮膚が交差櫛電極表面に触れた際の静電容量の変化を知ることで、皮膚に含まれる水分量を計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−52212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように水分センサを用いることで皮膚の水分量の計測が可能となるが、上述したような一般的な水分センサは、以下に示すような課題を有している。
【0011】
第1の課題として皮膚の水分量を正確に計測ができない点が挙げられる。その理由の一つは、人の皮膚の水分量の計測に際して、計測毎に皮膚とセンサの接触の程度が異なるため、その値が異なり不正確となるためである。更に、もう一つの理由は、計測時に電極と皮膚の接触に伴う摩擦により、皮膚の温度上昇と皮膚の成分の脱落および付着がおこるためである。
【0012】
次に、第2の課題として皮膚の経時・経年変化情報を正確に捉え、それをユーザーに有益な情報に加工して、ユーザーに伝達するような電子機器や健康情報サービスが実現できていないという課題もある。これは、上述のように正確に水分量を計測する水分センサがないためである。
【0013】
そこで、本発明は正確に皮膚の水分量を計測することが可能な、生体情報計測器、生体情報計測器を有する電子機器、生体情報計測方法及び生体情報計測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の観点によれば、皮膚の水分量を測定するための生体情報計測器において、基板の上に形成した電極を有し、当該電極に接触した皮膚の電荷量を計測するセンサと、前記センサに交流信号を印加する発振手段と、前記センサが前記電極に前記皮膚が接触してから離れるまでの間に計測した電荷量を一定時間毎に順次保存し、当該保存した電荷量を加算することにより計測した前記電荷量の合計量を算出する電荷量加算手段と、前記電荷量加算手段が算出した前記電荷量の合計量を、計測時間で除して単位時間あたりの平均電荷量を算出する平均電荷量算出手段と、前記平均電荷量算出手段が算出した前記平均電荷量に基づいて、前記皮膚の水分量を算出する水分量算出手段と、を備えることを特徴とする生体情報計測器が提供される。
【0015】
本発明の第2の観点によれば、上記の生体情報計測器を搭載した電子機器において、前記生体情報計測器が計測した前記水分量を記憶する第1の記憶手段と、前記第1の記憶手段が記憶した前記水分量を蓄積する第2の記憶手段と、を備え、前記第1の記憶手段が蓄積した前記水分量に基づいて前記水分量の経時変化についての情報を提示することを特徴とする電子機器が提供される。
【0016】
本発明の第3の観点によれば、皮膚の水分量を測定するための生体情報計測方法において、基板の上に形成した電極を有し、当該電極に接触した皮膚の電荷量を計測するセンサを用意するステップと、前記センサに交流信号を印加する発振ステップと、前記センサが前記電極に前記皮膚が接触してから離れるまでの間に計測した電荷量を一定時間毎に順次保存し、当該保存した電荷量を加算することにより計測した前記電荷量の合計量を算出する電荷量加算ステップと、前記電荷量加算ステップにおいて算出した前記電荷量の合計量を、計測時間で除して単位時間あたりの平均電荷量を算出する平均電荷量算出ステップと、前記平均電荷量算出ステップにおいて算出した前記平均電荷量に基づいて、前記皮膚の水分量を算出する水分量算出ステップと、を備えることを特徴とする生体情報計測方法が提供される。
【0017】
本発明の第4の観点によれば、皮膚の水分量を測定するための生体情報計測プログラムにおいて、基板の上に形成した電極を有し、当該電極に接触した皮膚の電荷量を計測するセンサと、前記センサに交流信号を印加する発振手段と、前記センサが前記電極に前記皮膚が接触してから離れるまでの間に計測した電荷量を一定時間毎に順次保存し、当該保存した電荷量を加算することにより計測した前記電荷量の合計量を算出する電荷量加算手段と、前記電荷量加算手段が算出した前記電荷量の合計量を、計測時間で除して単位時間あたりの平均電荷量を算出する平均電荷量算出手段と、前記平均電荷量算出手段が算出した前記平均電荷量に基づいて、前記皮膚の水分量を算出する水分量算出手段と、を備える生体情報計測器としてコンピュータを機能させることを特徴とする生体情報計測プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば単位時間あたりの平均電荷量を算出し、その平均電荷量から、水分量を算出できることから皮膚の水分量を正確に計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態の基本的構成を表す図である。
【図2】本発明の実施形態の基本的動作について表す図である。
【図3】本発明の実施形態の計測時間と出力電圧の関係を説明する図である。
【図4】本発明の実施例1におけるセンサ10について表す図である。
【図5】本発明の実施例2におけるセンサ10について表す図である。
【図6】本発明の実施例3におけるセンサ10について表す図である。
【図7】本発明の実施例4におけるセンサ10について表す図である。
【図8】本発明の実施例5におけるセンサ10について表す図である。
【図9】本発明の実施例6におけるセンサ10について表す図である。
【図10】本発明の実施例7及び8におけるセンサ10について表す図である。
【図11】本発明の実施例9におけるセンサ10について表す図である。
【図12】本発明の実施例における計測対象の動きについて表す図である。
【図13】本発明の実施形態のである電子機器110について表す図である。
【図14】本発明の実施例における最大変動率について表す図(1/3)である。
【図15】本発明の実施例における最大変動率について表す図(2/3)である。
【図16】本発明の実施例における最大変動率について表す図(3/3)である。
【図17】引用文献に記載の発明について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態及び実施例について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施形態及び実施例の構成において、同一の構造については同一の符号を付して示し、重複する説明は省略する。また、以下の実施形態及び実施例の説明において、各寸法について具体的な数値を示して説明しているが、この数値はあくまで例示である。本発明の実施形態はこれら例示した寸法に限定されるものではなく、任意の寸法により実現することが可能である。
【0021】
更に、本実施形態及び実施例においては、便宜上、計測対象を人体と想定して説明しているが、これは本実施形態及び実施例の計測対象を限定するものではない。本実施形態及び実施例は人間以外の他の動物の皮膚を計測対象とすることも可能である。
【0022】
図1を参照すると、本発明の実施形態は、センサ10と、発振部11と、電荷量加算部12と、平均電荷量算出部13と、水分量算出部14を有する。
【0023】
センサ10は、皮膚の電荷量を計測する機能を有している。発振部11は、センサ10に交流信号を印加する機能を有している。
【0024】
電荷量加算部12は、電極に皮膚が接触してから離れるまでの間、センサ10が計測した電荷量を、一定時間毎に順次記憶し、保存する機能を有している。更に、電荷量加算部12は記憶し、保存した電荷量を加算する機能を有している。これにより、電荷量加算部12は、計測時間内に計測した電荷量の合計量(以下、適宜「合計電荷量」と記載する。)を算出することができる。
【0025】
平均電荷量算出部13は、電荷量加算部12が算出した合計電荷量を、計測時間で除して単位時間あたりの平均電荷量を算出する機能を有している。なお、具体的な計測時間及び単位時間の長さについては特に制限はなく、使用環境等に応じて任意の長さに設定することができる。
【0026】
水分量算出部14は、平均電荷量算出部13が算出した平均電荷量から、水分量を算出する機能を有している。なお、電荷量に基づく水分量の算出方法は任意の算出方法を用いることができ、本発明の要旨ではないため説明を省略する。
【0027】
次に、図2のフローチャートを用いて本実施形態の動作について説明する。
【0028】
まず、発振部11が、センサ10に交流信号を印加する(ステップS201)。
【0029】
次にセンサ10は、皮膚の電荷量の計測を開始する(ステップS202)。
【0030】
そして、計測に伴い電荷量加算部12が、センサ10が計測した電荷量を、一定時間毎に順次記憶し、保存する。併せて保存した電荷量を加算する(ステップS203)。
【0031】
ステップS202、ステップS203における、計測及び電荷量の加算は計測時間が終了するまで継続する(ステップS204においてNO)。
【0032】
一方、計測時間が終了すると(ステップS204においてYES)、平均電荷量算出部13が、電荷量加算部12が算出した合計電荷量を、計測時間で除して単位時間あたりの平均電荷量を算出する(ステップS205)。
【0033】
最後に水分量算出部14が、平均電荷量算出部13が算出した平均電荷量から、水分量を算出する(ステップS206)。
【0034】
次に図3を用いて本実施形態の計測時間と出力電圧の関係を説明する。
【0035】
図3に示すように、電極に皮膚が接触したときに電極間に蓄積できる電荷量に比例して出力する交流電圧信号20を整流し、直流電圧信号21を得る。
【0036】
今回は、計測の開始、および終了の判断は、この直流電圧信号21が100mV以上となる時を計測開始とし、100mV未満となるときに計測終了の閾値とした。ここで、発振部11から出力する交流信号は1kHz、1Vrmsとした。なお、本実施例及び以下の実施例で示した具体的な数値はあくまで例示である。
【0037】
図3に示すように、電極に皮膚が接触してから離れるまでの間、センサ10で計測した電荷量を、一定時間毎に順次保存し、その保存した電荷量を加算し計測時間で除して単位時間あたりの平均電荷量を算出することにより、電極と皮膚の接触の程度の差を低減できる。よって、正確に水分量の計測ができる。
【0038】
次に、上述の実施形態のセンサ10の具体的な形状毎に実施例を示して説明をする。
【実施例1】
【0039】
実施例1におけるセンサ10の構造は図4に示すように、センサ基板31の上に、一対の相対向する電極32を形成したというものである。また電極端子30a及び30bも併せて図示する。
【0040】
ここで、実装例として基板31には外形寸法が□100mm、厚さ(t):1mmで、誘電率7の低誘電率基板を使用し、電極寸法は、幅(a):0.25mm、長さ(W):9mm、電極間距離(p):0.25mmとした。
【0041】
図14に、本実施例による皮膚の水分量の計測値の変動率を示す。計測条件は、温度及び湿度が一定に保たれた環境下で、皮膚の同一部位を20回計測した。また、計測結果は、各計測値を初回計測値により規格化した。図14に示すように、本実施例において、一般的な水分センサと比較し、計測毎に変動が少ない正確な計測結果が得られた。
【0042】
ここで、「一般的な水分センサ」とは、本明細書における実施形態及び実施例を適用されていない水分センサのことを指すものとする。また、各図においてこの一般的な水分センサを用いた場合について、「一般例」と表記する。
【実施例2】
【0043】
実施例2におけるセンサ10の構造は図5に示すように、センサ基板31の上に、複数の相対向する交差櫛電極33を形成したというものである。また電極端子30a及び30bも併せて図示する。ここで、基板31には外形寸法が□100mm、厚さ(t):1mmで、誘電率7の低誘電率基板を使用し、電極寸法は、幅(a):0.25mm、長さ(W):9mm、電極間距離(p):0.25mm、電極対数:4対とした。
【0044】
相対向する電極間に蓄積される電荷量は、電極の対向する数を増やすと増加する。従って、図5に示すように、センサ基板31の上に複数の相対向する交差櫛電極を形成することで、センサ10が計測する電荷量が増加する。よって、正確に水分量の計測ができる。
【0045】
図14に、本実施例による皮膚の水分量の計測値の変動率を示す。計測条件は、温度及び湿度が一定に保たれた環境下で、皮膚の同一部位を20回計測した。また、計測結果は、各計測値を初回計測値により規格化した。図14に示すように、本実施例において、一般的な水分センサと比較し、計測毎に変動が少ない正確な計測結果が得られる。
【実施例3】
【0046】
実施例3におけるセンサ10の構造は図6に示すように、センサ基板31の上に、湾曲する一対の相対向する電極32を形成したというものである。また電極端子30a及び30bも併せて図示する。ここで、基板31には外形寸法が□100mm、厚さ(t):1mmで、誘電率7の低誘電率基板を使用し、電極寸法は、幅(a):0.25mm、長さ(W):9mm、電極間距離(p):0.25mmとした。
【0047】
図6に示すように、相対向する電極を湾曲形状とすることで、電極と皮膚が滑らかに接触する。従って、電極と皮膚の接触時の摩擦が低減し、摩擦によって生じる温度上昇を抑制できる。よって、正確に水分量の計測ができる。
【0048】
図14に、本実施例による皮膚の水分量の計測値の変動率を示す。計測条件は、温度及び湿度が一定に保たれた環境下で、皮膚の同一部位を20回計測した。また、計測結果は、各計測値を初回計測値により規格化した。図14に示すように、本実施例において、一般的な水分センサと比較し、計測毎に変動が少ない正確な計測結果が得られた。
【実施例4】
【0049】
実施例4におけるセンサ10の構造は図7に示すように、センサ基板31の上に、湾曲する複数の相対向する交差櫛電極33を形成したというものである。また電極端子30a及び30bも併せて図示する。ここで、基板31には外形寸法が□100mm、厚さ(t):1mmで、誘電率7の低誘電率基板を使用し、電極寸法は、幅(a):0.25mm、長さ(W):9mm、電極間距離(p):0.25mm、電極対数:4対とした。
【0050】
図7に示すように、センサ基板31の上に複数の相対向する交差櫛電極を形成することで、センサ10が計測する電荷量が増加する。さらに、相対向する電極を湾曲形状とすることで、電極と皮膚が滑らかに接触する。従って、電極と皮膚の接触時の摩擦が低減し、摩擦によって生じる温度上昇を抑制できる。よって、正確に水分量の計測ができる。
【0051】
図14に、本実施例による皮膚の水分量の計測値の変動率を示す。計測条件は、温度及び湿度が一定に保たれた環境下で、皮膚の同一部位を20回計測した。また、計測結果は、各計測値を初回計測値により規格化した。図14に示すように、本実施例において、一般的な水分センサと比較し、計測毎に変動が少ない正確な計測結果が得られた。
【実施例5】
【0052】
実施例5におけるセンサ10の構造は図8に示すように、センサ基板31の上に、複数の相対向する交差櫛電極33を形成し、形成する電極は、相対向する電極の電極間距離を、対向方向に徐々に広げたというものである。また電極端子30a及び30bも併せて図示する。ここで、基板31には外形寸法が□100mm、厚さ(t):1mmで、誘電率7の低誘電率基板を使用し、電極寸法は、幅(a):0.25mm、長さ(W):9mm、最小電極間距離:0.1mm、電極対数:4対とし、皮膚を動かす向きに電極間距離を図15に示す変化率をもって徐々に広げた。
【0053】
また、図12に示すように、計測方法として、電極に皮膚が接触してから離れるまでの間、対向する電極方向、すなわち一つの方向に動かされている皮膚を測定の対象とする。
【0054】
相対向する電極間に蓄積される電荷量は電極間距離に反比例する。よって、その電極間距離を広げると、電極間に蓄積する電荷量は減少する。従って、図8に示すように、センサ基板31の上に形成する電極33の電極間距離を局所的に変えることで、特定の電極間に蓄積する電荷量を増減できる。一方、はじめに電極に皮膚が接触するときに、電極に皮膚が引っ掛かり、皮膚の脱落などにより計測値が変動する。そこで、電極端部の電極間距離を広くした。これにより、正確に水分量の計測ができる。
【0055】
図14に、本実施例による皮膚の水分量の計測値の変動率を示す。計測条件は、温度及び湿度が一定に保たれた環境下で、皮膚の同一部位を20回計測した。また、計測結果は、各計測値を初回計測値により規格化した。図14に示すように、本実施例において、その電極間距離の変化率が大きくなるに従い、計測毎に変動が少ない正確な計測結果が得られた。
【実施例6】
【0056】
実施例6におけるセンサ10の構造は図9に示すように、センサ基板31の上に、一対の相対向する電極32を形成し、且つ、相対向する電極を形成する位置に、基板の厚み方向に凹形状34を形成したというものである。また電極端子30a及び30bも併せて図示する。ここで、基板31には外形寸法が□100mm、厚さ(t):1mmで、誘電率7の低誘電率基板を使用し、電極寸法は、幅(a):0.25mm、長さ(W):9mm、電極間距離(p):0.25mmとし、凹形状の曲率(κ)を20m−1<κ<100m−1で変化させた。
【0057】
図9に示すように、本発明は、相対向する電極を形成する位置に、基板の厚み方向に凹形状34を有する。この凹形状により、人の曲率を有する部位の皮膚に沿って、相対向する電極の全面が接触する。これにより、皮膚と電極との非接触箇所をなくすと共に、電極上で皮膚を動かす際の誘導路の役割を果たす。よって、正確に水分量の計測ができる。
【0058】
図16に、本実施例による皮膚の水分量の計測値の変動率を示す。計測条件は、温度及び湿度が一定に保たれた環境下で、皮膚の同一部位を20回計測した。また、計測結果は、各計測値を初回計測値により規格化した。図16に示すように、本実施例において、その凹形状の曲率が増加すると変動が少なくなった。皮膚の曲率と一致したときに最も変動が減少し、計測毎に変動が少ない正確な計測結果が得られた。その後、さらに曲率を大きくすると、電極と皮膚の非接触面が増加するため変動は大きくなる。
【実施例7】
【0059】
実施例7におけるセンサ10の構造は図10に示すように、センサ基板31の上に、湾曲した複数の相対向する交差櫛電極33を形成し、形成する電極は、相対向する電極の電極間距離を、対向方向に徐々に広げ、且つ、相対向する電極を形成する位置に、基板の厚み方向に凹形状34を形成したというものである。また電極端子30a及び30bも併せて図示する。ここで、基板31には外形寸法が□100mm、厚さ(t):1mmで、誘電率7の低誘電率基板を使用し、電極寸法は、幅(a):0.25mm、長さ(W):9mm、最小電極間距離:0.1mm、電極間距離の変化率:25%、凹形状の曲率(κ):60m−1とした。
【0060】
図16に、本実施例による皮膚の水分量の計測値の変動率を示す。計測条件は、温度及び湿度が一定に保たれた環境下で、皮膚の同一部位を20回計測した。また、計測結果は、各計測値を初回計測値により規格化した。図16に示すように、本実施例において、一般的な水分センサと比較し、計測毎に変動が少ない正確な計測結果が得られた。
【0061】
なお、センサ10において、電極を形成する基板の誘電率と人の皮膚の誘電率の差が大きいほど、電極に皮膚が接触したときの相対向する電極間に蓄積できる電荷量が増加する。よって、使用するセンサ基板として、誘電率10以下が望ましい。また、電極間に蓄積できる電荷量は距離に反比例するため、電極間距離が広がるとその電荷量が減少する。従って電極間距離は1mm以下が実用上望ましい。
【実施例8】
【0062】
実施例8におけるセンサ10の構造は図10に示すように、センサ基板31の上に、湾曲した複数の相対向する交差櫛電極33を形成し、形成する電極は、相対向する電極の電極間距離を、対向方向に徐々に広げ、且つ、相対向する電極を形成する位置に、基板の厚み方向に凹形状を形成したというものである。また電極端子30a及び30bも併せて図示する。さらに、センサ基板31と交差櫛電極33の上に撥水膜100を形成した。ここで、基板31には外形寸法が□100mm、厚さ(t):1mmで、誘電率7の低誘電率基板を使用し、電極寸法は、幅(a):0.25mm、長さ(W):9mm、最小電極間距離:0.1mm、電極間距離の変化率:25%、凹形状の曲率(κ):60m−1とし、撥水膜にはPTFE(Polytetrafluoroethylene)を使用した。
【0063】
図12に示すように、計測方法として、電極に皮膚が接触してから離れるまでの間、対向する電極方向、すなわち一つの方向に動かされている皮膚を測定の対象とする。
【0064】
図11に示すように、電極上で皮膚を動かす際の摩擦を低減できる。従って、電極と皮膚の摩擦により生じる、皮膚の温度上昇に伴う発汗を抑制できると共に、図12に示すような皮膚の脱落および、センサ表面への付着を抑制できる。よって、正確に水分量の計測ができる。
【0065】
図14に、本実施例による皮膚の水分量の計測値の変動率を示す。計測条件は、温度及び湿度が一定に保たれた環境下で、皮膚の同一部位を20回計測した。また、計測結果は、各計測値を初回計測値により規格化した。図14に示すように、本実施例において、一般的な水分センサと比較し、計測毎に変動が少ない正確な計測結果が得られた。
【実施例9】
【0066】
実施例9におけるセンサ10の構造は図11に示すように、センサ基板31の上に、湾曲した複数の相対向する交差櫛電極33を形成し、形成する電極は、相対向する電極の電極間距離を、対向方向に徐々に広げ、且つ、相対向する電極を形成する位置に、基板の厚み方向に凹形状34を形成したというものである。また電極端子30a及び30bも併せて図示する。さらに、センサ基板31と交差櫛電極33の上に撥水膜100を形成した。ここで、基板31には外形寸法が□100mm、厚さ(t):1mmで、誘電率7の低誘電率基板を使用し、電極寸法は、幅(a):0.25mm、長さ(W):9mm、最小電極間距離:0.1mm、電極間距離の変化率:25%、凹形状の曲率(κ):60m−1とし、撥水膜にはPTFEを使用した。
【0067】
図12に示すように、電極に皮膚が接触してから離れるまでの間、対向する電極方向、すなわち一つの方向に動かされている皮膚を測定の対象とすることで、広範囲の皮膚の水分量を計測できる。よって、正確に水分量の計測ができる。
【0068】
図14に、本実施例による皮膚の水分量の計測値の変動率を示す。計測条件は、温度及び湿度が一定に保たれた環境下で、皮膚の同一部位を20回計測した。また、計測結果は、各計測値を初回計測値により規格化した。図14に示すように、本実施の形態において、一般的な水分センサと比較し、計測毎に変動が少ない正確な計測結果が得られた。
【0069】
上述した各実施例のセンサを用いた実施形態として、図13に示す電子機器110のような実施形態が考えられる。
【0070】
本実施形態ではセンサ10を図13に示す位置に実装し、電子回路114と記憶装置112は電子機器110の筐体111内部にあるメイン基板113上に実装した。なお、記憶装置と予測装置はネットワークを介して別の電子機器に設けてもよく、必ずしも計測に使用する電子機器に限定しない。本発明による生体情報計測器を利用することで、正確に皮膚の水分量を計測できる。そして、電子回路114と記憶装置112が協働することにより、水分量を記憶することが可能となる。そして、電子回路114と記憶装置112が協働することにより、記憶した水分量を蓄積し、蓄積した水分量に基づいて人体の経時・経年変化をユーザーに正確に伝達することが可能となる。なお、ユーザーへの提示は電子機器110に表示部を更に設け、この表示部に経時・経年変化についての情報を表示するようにしてもよい。また、他の装置に経時・経年変化についての情報を伝達し、当該他の装置が経時・経年変化についての情報を表示するようにしてもよい。
【0071】
このようにして経時・経年変化についての情報を表示することからユーザーの利便性が向上した。
【0072】
なお、本発明の実施形態である生体情報計測器を有する電子機器は、ハードウェアにより実現することもできるが、コンピュータをその生体情報計測器を有する電子機器として機能させるためのプログラムをコンピュータがコンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み込んで実行することによっても実現することができる。
【0073】
また、本発明の実施形態による生体情報計測方法は、ハードウェアにより実現することもできるが、コンピュータにその方法を実行させるためのプログラムをコンピュータがコンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み込んで実行することによっても実現することができる。
【0074】
また、上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 センサ
11 発振部
12 電荷量加算部
13 平均電荷量算出部
14 水分量算出部
20 交流電圧信号
21 直流電圧信号
30a、30b 電極端子
31 センサ基板
32 電極
33 交差櫛電極
110 電子機器
111 筐体
112 記憶装置
113 メイン基板
114 電子回路
121 指
122 接触面
123 脱落した皮膚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の水分量を測定するための生体情報計測器において、
基板の上に形成した電極を有し、当該電極に接触した皮膚の電荷量を計測するセンサと、
前記センサに交流信号を印加する発振手段と、
前記センサが前記電極に前記皮膚が接触してから離れるまでの間に計測した電荷量を一定時間毎に順次保存し、当該保存した電荷量を加算することにより計測した前記電荷量の合計量を算出する電荷量加算手段と、
前記電荷量加算手段が算出した前記電荷量の合計量を、計測時間で除して単位時間あたりの平均電荷量を算出する平均電荷量算出手段と、
前記平均電荷量算出手段が算出した前記平均電荷量に基づいて、前記皮膚の水分量を算出する水分量算出手段と、
を備えることを特徴とする生体情報計測器。
【請求項2】
請求項1に記載の生体情報計測器において、前記センサが有する前記電極は、基板の上に形成した、一対の相対向する電極であることを特徴とする生体情報計測器。
【請求項3】
請求項1に記載の生体情報計測器において、前記センサが有する前記電極は、基板の上に形成した、湾曲する一対の相対向する電極であることを特徴とする生体情報計測器。
【請求項4】
請求項1に記載の生体情報計測器において、前記センサが有する前記電極は、基板の上に形成した、複数の相対向する交差櫛電極であることを特徴とする生体情報計測器。
【請求項5】
請求項1に記載の生体情報計測器において、前記センサが有する前記電極は、基板の上に形成した、湾曲する複数の相対向する交差櫛電極であることを特徴とする生体情報計測器。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の生体情報計測器において、前記相対向する複数の交差櫛電極は、電極間距離が異なることを特徴とする生体情報計測器。
【請求項7】
請求項6に記載の生体情報計測器において、前記センサが有する前記相対向する複数の交差櫛電極は、対向する電極方向にその電極間距離が25%毎に広がる交差櫛電極を形成することを特徴とする生体情報計測器。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の生体情報計測器において、前記センサが、相対向する電極を形成する位置に、センサ基板の厚み方向に凹形状を有することを特徴とする生体情報計測器。
【請求項9】
請求項8に記載の生体情報計測器において、前記センサが、前記測定の対象とする皮膚の曲率の大きい部位形状に沿った凹形状を有することを特徴とする生体情報計測器。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の生体情報計測器において、前記センサが、前記電極の表面に撥水膜を形成することを特徴とする請求項1から請求項9に記載の生体情報計測器。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の生体情報計測器を搭載した電子機器において、
前記生体情報計測器が計測した前記水分量を記憶する第1の記憶手段と、
前記第1の記憶手段が記憶した前記水分量を蓄積する第2の記憶手段と、
を備え、
前記第1の記憶手段が蓄積した前記水分量に基づいて前記水分量の経時・経年変化についての情報を提示することを特徴とする電子機器。
【請求項12】
皮膚の水分量を測定するための生体情報計測方法において、
基板の上に形成した電極を有し、当該電極に接触した皮膚の電荷量を計測するセンサを用意するステップと、
前記センサに交流信号を印加する発振ステップと、
前記センサが前記電極に前記皮膚が接触してから離れるまでの間に計測した電荷量を一定時間毎に順次保存し、当該保存した電荷量を加算することにより計測した前記電荷量の合計量を算出する電荷量加算ステップと、
前記電荷量加算ステップにおいて算出した前記電荷量の合計量を、計測時間で除して単位時間あたりの平均電荷量を算出する平均電荷量算出ステップと、
前記平均電荷量算出ステップにおいて算出した前記平均電荷量に基づいて、前記皮膚の水分量を算出する水分量算出ステップと、
を備えることを特徴とする生体情報計測方法。
【請求項13】
皮膚の水分量を測定するための生体情報計測プログラムにおいて、
基板の上に形成した電極を有し、当該電極に接触した皮膚の電荷量を計測するセンサと、
前記センサに交流信号を印加する発振手段と、
前記センサが前記電極に前記皮膚が接触してから離れるまでの間に計測した電荷量を一定時間毎に順次保存し、当該保存した電荷量を加算することにより計測した前記電荷量の合計量を算出する電荷量加算手段と、
前記電荷量加算手段が算出した前記電荷量の合計量を、計測時間で除して単位時間あたりの平均電荷量を算出する平均電荷量算出手段と、
前記平均電荷量算出手段が算出した前記平均電荷量に基づいて、前記皮膚の水分量を算出する水分量算出手段と、
を備える生体情報計測器としてコンピュータを機能させることを特徴とする生体情報計測プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−78689(P2011−78689A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235264(P2009−235264)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】