説明

生体情報計測装置

【課題】 生体情報が常時計測でき、被計測者の体調が悪化する前に、被計測者自身と、その介護者や監視者などに警告できる生体情報計測装置を得る。
【解決手段】 腕時計型に形成された生体情報計測装置10は、手首に装着されることで、ベルトホルダ34に配置されている磁気センサ28Bが皮膚に密着する。この磁気センサ28Bによって、血液中に含まれる鉄分(ヘモグロビン)が動脈流によって変化することで発生する磁気力の周波を検出する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生体情報計測装置に係り、より詳しくは、生体の被測定部に磁界を形成し、血流によって磁界内に起こる磁気力の変化を検出して生体情報を得る携帯型の生体情報計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、健康管理や生活習慣病の予防のため、家庭でも手軽に使用できるパーソナル血圧計が広く知られている。
【0003】このような生体情報計測装置としての血圧計は、一般に、上腕や手首にカフ(駆血帯)を巻き付け、本体側のスタートボタンを押すなどの簡単な操作により、血圧や脈拍といった生体情報を自動的に計測することができる。
【0004】すなわち、使用者がカフをセットした後に計測開始の指示を行うと、血圧計本体側に設けられた電動ポンプがカフに空気を送り、カフで圧迫された被測定部の動脈の拍動が、静電容量式圧力センサ、あるいは半導体圧力センサ等で検出され(いわゆる「オシロメトリック法」)、これにより、最高/最低血圧値、並びに心拍数が算出されて、表示部としてのLCD等に表示される構成である。
【0005】また、近年では、動脈流を検出するための検出素子に、光センサを用いたものもある。例として、血液中の特定の成分に応答する所定波長領域の光を照射、受光する光センサを、プローブや筒状のカフ部等に取りつけたタイプがある。
【0006】このプローブ等を被測定部としての指等に装着することで、被測定部に向けて光を照射した光センサが、血流による特定成分の変化量をその反射光や透過光の光量変化から検出し、これにより、心拍数等が計測される構成である。
【0007】さらに、この光センサ方式の血圧計には、オフィスや外出先などでも利用しやすいように、プローブやカフ部を含む計器全体を、オシロメトリック方式の血圧計と比べて小型・軽量に構成し、携帯性を向上させているものもある。
【0008】したがって、これらのパーソナル血圧計を用いることにより、家庭やオフィスなどでの定期的な計測が容易に行え、休息中と仕事中など、精神状態の変化に伴う血圧値の詳細な変動等も把握しやすくなっている。
【0009】また、このようにして刻々と変化する自分の血圧が健康なレベルであるかを知ることは、飲食や喫煙、あるいは運動などの、日頃の健康管理や生活習慣のチェックを行う上で、今や欠かせない要素になっている。
【0010】ところで、人は、中・高年齢に達すると高血圧(症)が増え、加齢にともなう血管の老化や、LDL−コレステロールの増加による動脈硬化の症状が出てきてしまう。また、これらの症状が進行すると、脳卒中や狭心症、心筋梗塞などの危険な病気を引き起こしやすくなってくる。
【0011】特に、心筋梗塞症などの重い心臓病を持つ人は、心臓に過度の負担が掛からないよう行動を自重し、動悸などの自覚症状が少しでも現れたら、すぐ安静にするなど、普段から細心の注意を払っているものである。
【0012】しかし、気をつけてはいるものの、仕事や様々なストレスから、また、飲酒や入浴などの日々な行動において、さらに、場合によっては睡眠中に、意識せずとも心身に負荷を掛けてしまっていることがある。そして、心臓発作を起こしたり心筋梗塞を発症してしまい、最悪は死に至ってしまうケースも少なくはない。
【0013】このように、心筋梗塞症などは、本人の自覚や注意のみでは、体調の変化や危険の兆候を十分に察知できない場合がある。
【0014】そこで、自分のコンディションが、血圧値や心拍数をもとに常時把握できれば、危険な状態に陥ることを回避する上で有効であると考えられ、例えば、上述したパーソナル血圧計を用いて計測の頻度を上げるなどにより、体調の変化をある程度は正確に把握することも可能である。
【0015】しかしながら、この従来の血圧計は、小型・軽量化により携帯性がよくなっているとはいえ、計測時は、計器本体を卓上等に載置して使用するタイプが一般的である。また、計測毎に、計測開始の操作をする必要があるため、コンディションの変化に追従するような計測結果を得るには、操作が煩雑となってしまう。
【0016】したがって、行動中の血圧値などをリアルタイムでモニタするような用途では、やはり使い勝手がよくない。
【0017】また、上述した光センサ方式では、発光部(LD)の寿命が短く(数万時間程度)、さらには、投受光窓の汚れによって特性が大きく変化してしまうなど、検出素子の信頼性において改善すべき課題がある。
【0018】一方で、例えば、高齢者などがこの血圧計を使用する場合、高齢者自身が計器をセットしたり操作することは困難な場合もある。むしろ、その家族や介護者が計測をしてあげることで高齢者の容態を把握し、本人に分かりやすく伝えてあげたり、介護の仕方などに役立てた方が好ましいケースもある。
【0019】また、このような高齢者が、ひとりでいるときに急に体調を崩した場合、本人の力だけでは救助を求められないこともある。さらに、上述した心筋梗塞などは、睡眠中に発症することもあり、突然襲ってくる発作や激痛によって、やはり、身動きがとれなくなってしまうことが多い。そこで、他者が、そのような非常事態を早い段階で知ることができれば、それら急病人を生命の危機から救うことも可能となってくる。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事実を考慮して、生体情報が常時計測できると共に、被計測者の体調が悪化する前に、被計測者自身、及び、その介護者や監視者などに警告することができる生体情報計測装置を提供することを課題とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の生体情報計測装置は、生体の被測定部に磁界を形成し、前記磁界内における前記被測定部の血流の増減に略同期して発生する磁気力の周波を検出するための磁気検出手段と、前記磁気検出手段によって検出された前記磁気力の周波に基づいて前記生体の心拍数を演算する演算手段と、前記演算手段によって演算された演算結果を表示する表示手段と、前記磁気検出手段を前記被測定部に位置決めして固定する固定手段と、を有することを特徴としている。
【0022】すなわち本発明では、磁気検出手段が、固定手段によって生体の被測定部に位置決めして固定され、その状態で磁界を形成し、磁界内における被測定部の血流の増減に略同期して発生する磁気力の周波を検出する。
【0023】この磁気力の周波とは、血液中に含まれる鉄分(ヘモグロビン)が動脈流などの血流によって体内を巡る際、心臓の拍動に同期して、磁界内を通過する量が増減することにより発生するものである。
【0024】よって、演算手段は、この磁気力の周波に基づいて生体の心拍数を演算することができ、さらにこの演算結果は、表示手段によって表示される。これにより、生体の心拍数が計測可能となる。
【0025】また、動脈流の検出に磁気検出手段が用いられることにより、従来の検出に使用された帯状のカフ、あるいは、加圧のためのポンプ等は不要となり、装置全体が小型化に構成できる。したがって、生体の行動中における心拍数を常時計測する上での装置の携帯性が向上させられる。
【0026】さらに、磁気を利用した検出手段であれば、光センサのような投受光窓の汚れによる特性変化はないため、検出手段としての信頼性も向上させられる。
【0027】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の生体情報計測装置において、前記演算手段は、前記磁気検出手段によって検出された前記磁気力の周波の振幅に基づいて、さらに前記生体の血圧値を演算することを特徴としている。
【0028】請求項2の発明では、演算手段は、磁気検出手段によって検出された磁気力において、磁気力の強度をあらわす周波の振幅に基づいて、生体の血圧値を演算する。これにより、磁気検出手段を用いた血圧値の計測が可能となる。
【0029】請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のにおいて、前記演算手段によって演算された演算結果を、通信媒体を介して伝送可能とする出力手段が設けられていることを特徴としている。
【0030】請求項3の発明では、演算手段によって演算された演算結果を、電話回線や電波等の通信媒体を介して伝送可能とする出力手段が設けられているため、装置を使用している被計測者の心拍数及び血圧値を、被計測者の介護者や監視者等も把握することができる。
【0031】これにより、例えば、被計測者が寝たきりの高齢者等の場合、介護者が常時付き添わなくても被計測者の健康状態を確認することができ、容態が急変しても、素早い対応を取ることができる。また、ひとりで暮らす高齢者の体調等を、まとめて何人か集中して管理することも可能となる。
【0032】さらに、複数の患者の容態をナースセンターにて集中管理するような病院での用途にも、対応することができる。
【0033】請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の生体情報計測装置において、前記演算手段によって演算された演算結果が、予め設定された閾値を超えたことを告知する告知手段が設けられていることを特徴としている。
【0034】請求項4の発明では、演算手段によって演算された演算結果が、予め設定された閾値を超えたことを告知する告知手段が設けられているため、被計測者は、例えば、自分の健康状態等に応じた心拍数、あるいは血圧値の閾値を予め設定しておくことにより、計測される心拍数及び血圧値が閾値を超えたことを知ることができる。
【0035】これにより、被計測者は、行動に集中しているときや睡眠中などにおいても、心拍数などの変化による容態の変化を、素早く、しかも正確に知ることができる。したがって、心臓に負担が掛かる行動を即座に押さえたり、また、場合によってはすぐに救助を求めるなど、自分が危険な状態に陥ってしまう前に、迅速、かつ、適確な対応が取れる。
【0036】請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の生体情報計測装置において、前記告知手段の作動時に、前記生体の位置情報を無線通信によって発信する位置情報発信手段が設けられていることを特徴としている。
【0037】請求項5の発明では、告知手段の作動時に、生体の位置情報を無線通信によって発信する位置情報発信手段が設けられているため、ひとりでいる被計測者の容態が急変し、被計測者のみでは身動きが取れない場合でも、無線発信手段によって知らさせる生体の位置情報によって、異常事態からの迅速な救出が可能となる。
【0038】請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の生体情報計測装置において、前記固定手段を含む装置全体が、腕時計型の一体構造に形成されていることを特徴としている。
【0039】請求項6の発明では、固定手段を含む装置全体を、腕時計型の一体構造としたことにより、被測定部としての手首への装着性、及び、操作性が向上し、さらに、計測結果の表示も確認しやすくなる。
【0040】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0041】図1には、本発明の一実施形態に係る生体情報計測装置10が示されている。生体情報計測装置10は、計測器本体12と、計測器本体12の上下両端部に取り付けられた固定手段としてのベルト14、16と、によって構成され、図に示すような腕時計型とされている。なお、ここでの生体情報計測装置10には、一般的なデジタル腕時計と同等の時計機能やアラーム機能等が備えられているが、それらについては説明を省略する。
【0042】計測器本体12の表面側には、時間や、血圧値等の計測結果を表示する表示手段としてのLCD表示部20、及び、計測中などの動作モードを点灯により表示するLEDランプ22が設けられている。
【0043】また、同じく本体表面、及び、側面には、表示内容や計測モードを切り替えたり、各種機能を設定するための操作ボタン24が設けられ、さらに、本体側面には、外部機器とのデータ通信を行う際の入出力用端子となる、コネクタ部26(出力手段)が設けられている。
【0044】また、図2に示されるように、計測器本体12の裏面側には、面の中央部付近に、磁気検出手段としての磁気センサ28Aが埋設されている。磁気センサ28Aの磁気検出部(露出面)は、裏面から多少突出しており、これによって、生体情報計測装置10が手首に装着されると、磁気センサ28Aは皮膚表面に密着することができる。
【0045】なお、磁気センサ28Aは、血液中に含まれる鉄分(ヘモグロビン)が検出できるよう構成されたものであり、本実施の形態では、渦電流式のセンサが適用されている。
【0046】この渦電流式磁気センサとは、センサ内に設けられたコイルに交流電圧が加えられることで交流磁界が形成され、このコイル部分が導電体である検出対象に近づけられると、交流磁界によって導電体に渦電流が発生する、電磁誘導作用を利用したセンサである。
【0047】この渦電流によって発生する磁界は、コイルによってつくられた磁界と逆方向であり、これら2つの磁界が重なり合うことでコイルの出力は影響を受け、コイルを流れる電流の強さ及び位相が変化する。したがって、コイルに流れる電気信号を取り出すことにより、導電体の検出ができる。
【0048】したがって、磁気センサ28Aによって、磁界内を流れる血液中の鉄分の変化を磁気力の変動として検出し、その検出信号を演算処理することにより、心拍数、及び血圧値の算出が可能となる。
【0049】一方、ベルト部については、ベルト14の先端側にフック部30が設けられ、ベルト16のベルト本体には、フック部30と係合することでベルトの長さを調整する複数の孔32が設けられており、これによって、使用者の手首の太さに合わせたサイズ調整が可能となっている。
【0050】また、ベルト14のベルト本体には、装置を手首に装着した際に、ベルト16の先端側に生じる弛み部分を保持するための、筒状のベルトホルダ34も通されている。
【0051】次に、生体情報計測装置10の回路構成について、図3に示すブロック図を用いて説明する。
【0052】計測器本体12内には、磁気センサ28Aを駆動するための駆動回路40、及び、磁気センサ28Aから出力される検出信号を増幅するための増幅回路42が設けられている。また、増幅回路42から出力される信号に基づいて、心拍数、及び血圧値を演算する、演算手段としての信号処理部44、及び、信号処理部44での演算結果が記憶されるメモリ部46も設けられている。また、これらの各ブロックは、CPU48にそれぞれ接続されており、このCPU48が操作ボタン24によって指示を受けることにより、各動作モードに合わせ、各ブロックを制御するようになっている。
【0053】なお、ここでの動作モードには、動脈の拍動を磁気センサ28Aによって連続的に検出し、信号処理する計測モードが設けられており、これによって、リアルタイムでの計測が行われるようになっている。
【0054】また、計測された心拍数、及び血圧値は、メモリ部46に接続されているLCD表示部20に表示されるようになっている。
【0055】さらに、CPU48及び信号処理部44は、各計測値(心拍数・血圧値)を、予め設定された心拍数及び血圧値(閾値)に基づいて判定する判定機能も備えている。この閾値は、操作ボタン24からの入力で任意に設定・変更・解除することができ、例えば、使用者の健康状態(心臓病の有無)や体調等に応じて決めることができる。
【0056】したがって、計測された心拍数や血圧値が閾値を超えた場合、つまり、心拍数などが上昇して使用者の体調に影響を及ぼしそうになったり、あるいは、心臓が一時的に停止し、脈拍が検出不可能になったことが、CPU48及び信号処理部44によって判定される。
【0057】またこのときは、内蔵されているアラーム機能に設けられた、告知手段としての警告アラーム発生部50によって、警告アラームが鳴るようにされている。これにより、被計測者は、行動に集中しているときや睡眠中などにおいても、心拍数などの変化による容態の変化を、素早く、しかも正確に知ることができるようになる。
【0058】さらに、この警告アラーム発生部50には、無線通信を利用した、位置情報発信手段としての電波発信器部52が接続され、アラーム音の発生時には、連動して所定周波数の電波が発信されるようになっている。
【0059】この電波が、所定の基地局や通信衛星などで受信されることにより、被計測者の位置が割り出せるようにされている。
【0060】したがって、この電波発信器部52からの電波を受信することにより、被計測者が危険な状態に陥ったことやその場所を、被計測者の体調を監視している者などが把握でき、これにより、被計測者がひとりでいるときに容態が急変して身動きが取れくなったような場合でも、迅速な救出ができるようになる。
【0061】なお、このアラーム音の発生や電波の発信機能については、操作ボタン24によって、任意に設定・解除できる構成である。
【0062】また、メモリ部46に記憶された計測結果は、コネクタ部26に繋がれているデータ送信部54にも出力されるようになっている。これにより、装置がコネクタ部26を介して電話回線等に接続されることにより、同じく電話回線を利用した受信装置によって、遠隔地にいる被計測者の介護者や監視者等でも計測データの確認ができるようになる。
【0063】なお、ここでのコネクタ部26は、CPU48へ各信号を伝送するデータ受信部56にも繋がれており、これにより、外部からのデータ入力やリモートコントロール機能にも対応させた構成とされている。
【0064】以下に、本実施の形態の作用を説明する。
【0065】図4には、生体情報計測装置10を被計測者の手首に装着した使用状態が示されている。
【0066】図に示すように、ベルト16をベルト14のフック部30に通し、孔32をフック部30に係合させることにより、手首への装着状態が保たれる。つまり、このベルト14、16によって、計測器本体12の裏面に設けられた磁気センサ28Aは被測定部となる手首に位置決めされ(手の甲側)、皮膚表面にほぼ密着した状態に固定されることで、血流の検出が可能となる。
【0067】図5には、磁気センサ28Aによる血流の検出過程が模式的に示されている。
【0068】磁気センサ28Aにより、皮膚100に向けて形成された磁界は、皮膚100の表面近傍に位置する動脈102に達している。
【0069】ここで、図5(A)に示す血管の弛緩状態では、動脈102内を流れる血液の量が多くなることでヘモグロビン104も増え、つまり、磁界内を通過する鉄分の総量が増加することで磁気センサ28Aの出力信号は高くなる。
【0070】また、図5(B)に示す血管の収縮状態では、逆に、動脈102内の血液の量が少なくなることで、磁界内に存在するヘモグロビン104も減り、よって、磁気センサ28Aの出力信号は低くなる。
【0071】このように、磁気センサ28Aからの出力信号は、図6に示したように、動脈の拍動(血流の変化)にほぼ同期した周期Tで繰り返される周波Sとしてあらわれる。したがって、1分間当たりに発生する周波Sの数が、心拍数ということになる。
【0072】しかし、実際に信号処理部44で行われる心拍数Pの演算は、[P=60(sec)/T(sec)]の式によって求められており、心拍数が刻々と変化する場合でも、周期Tを連続的に検出することで心拍数の算出が迅速に行われ、図7に示すように、LCD表示部20に表示されるようになっている。
【0073】一方、血圧は、磁気センサ28Aによって検出された磁気力の強度を示す、周波Sの振幅Hに基づいて、算出されるようになっている。
【0074】ここで、血液中に含まれるヘモグロビンの量には個人差があるため、正確な血圧値を求めるには、予めその補正をしておく必要がある。
【0075】この補正は種々の方法が適用できるが、最も簡単な例としては、生体情報計測装置10によって検出される振幅Hの上限値及び下限値を、従来の血圧計などにより同時に計測して求めた最高/最低血圧値に合わせ込んで設定しておくことである。
【0076】これにより、図5に示した、動脈102の弛緩と収縮において、そのときの血液の量がそれぞれ変化してヘモグロビン104の総量が変わった場合、振幅Hの上限値及び下限値も変わり、その各値に基づいて信号処理部44で演算、及び補正が行われ、最高/最低血圧値が求められる。
【0077】以上説明したように、本実施の形態に係る生体情報計測装置10は、磁気センサ28Aが、ベルト14、16によって被計測者の手首に密着するようにして位置決め固定され、その状態で磁界を形成する。これにより、動脈102を流れるヘモグロビン104の量の変化が、磁気力の周波S、及びその周波の振幅Hとして検出され、心拍数及び血圧値が計測できる。
【0078】また、この動脈流の検出に渦電流式の磁気センサ28Aを用いたことで、従来の血圧計に比べて装置全体が小型化に構成でき、さらに、装置の形状を腕時計型の一体構造としたことにより、手首への装着性や、行動中における生体情報のリアルタイムモニタを行う上での携帯性も向上する。
【0079】また、磁気センサは、光センサのような投受光窓の汚れによる特性変化がなく、寿命も長い(半永久)ため、磁気センサ28Aを用いた本形態では、検出素子の信頼性が改善でき、検出精度も向上させられる。
【0080】さらに、信号処理部44によって演算された心拍数及び血圧値を、コネクタ部26から電話回線を介して伝送できるため、装置を使用している被計測者の生体情報を、被計測者の介護者や監視者等も把握することができる。
【0081】したがって、被計測者が寝たきりの高齢者等の場合でも、介護者は、常時付き添うことなく被計測者の健康状態が確認でき、容態が急変しても、迅速な対応が取れる。また、ひとり暮らしの高齢者を何人かまとめて集中して管理したり、病院のナースセンターで、複数の患者を集中管理するようなの用途にも利用できる。
【0082】さらに、計測された心拍数及び血圧値が、自分の健康状態等に応じて予め設定しておいた閾値を超えた場合に、アラーム音にて知らせる警告アラーム発生部50が設けられていることにより、被計測者は、行動に集中しているときや睡眠中でも、体調の変化を、素早く、正確に知ることができる。これにより、心臓に負担が掛かる行動を押さえ、場合によっては救助を求めるなど、自分が危険な状態に陥ってしまう前に、迅速な対応が取れる。
【0083】また、警告アラーム発生部50の作動時に、被計測者の位置情報を無線通信によって発信する電波発信器部52が設けられていることにより、ひとりでいる被計測者の容態が急変した場合でも、図9に示すように、電波発信器部52から発信される電波を、受信装置60によって受信することにより、被計測者の居場所を知ることができる。よって、異常事態からの迅速な救出ができる。
【0084】なお、本実施の形態では、磁気センサを計測器本体12の裏面に1個配置した形態にて説明したが、センサの取りつけ位置や個数は、これらに限定されるものではない。
【0085】例えば、図8に示すように(図1、及び図4R>4参照)、磁気センサ28Bをベルトホルダ34個の裏面側に設け、計測器本体12とはケーブル36によって接続するなどの形態を取ることもできる。
【0086】さらにこの場合、計測器本体12及びベルトホルダ34にそれぞれ設けられた磁気センサ28A、28Bを同時に作動させ、手首の2箇所で動脈流の検出を行うことも可能であり、これにより、精度よい計測結果を得ることも可能である。
【0087】さらに、磁気センサの種類は、本形態で説明した渦電流式磁気センサに限定するものではなく、ホール効果を利用したホールセンサに置きかえることも可能である。
【0088】このホールセンサでは、磁界を形成するための磁石等をセンサ以外に設ける必要があるが、例えば、計測器本体12にホールセンサを設け(磁気センサ28Aに相当する位置)、ベルトホルダ34に磁石を配置する(磁気センサ28Bに相当する位置)などすれば、磁石によって形成された磁界内での血流の変化をホールセンサによって検出することができる。
【0089】
【発明の効果】本発明の生体情報計測装置は上記構成としたので、生体情報が常時計測可能となり、さらに、被計測者の体調が悪化する前に、被計測者自身、及び、その介護者や監視者などに警告することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る生体情報計測装置の正面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る生体情報計測装置における計測器本体の裏面を拡大した裏面拡大図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る生体情報計測装置における回路部の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る生体情報計測装置の使用状態を示す斜視図である。
【図5】磁気センサによる動脈流の検出過程を説明する概略断面図であり、(A)は動脈の弛緩状態であり、(B)は動脈の収縮状態である。
【図6】磁気センサによる動脈流の検出時における出力信号の変化を説明するための図である。
【図7】計測結果の表示内容を説明するためのLCD表示部の拡大図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る生体情報計測装置の裏面を示し、磁気センサの他の取り付け形態を説明するための裏面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る生体情報計測装置による位置情報の発信状態を説明するための概略図である。
【符号の説明】
10 生体情報計測装置
14、16 ベルト(固定手段)
20 LCD表示部(表示手段)
26 コネクタ部(出力手段)
28A、28B 磁気センサ(磁気検出手段)
34 ベルトホルダ(固定手段)
44 信号処理部(演算手段)
50 警告アラーム発生部(告知手段)
52 電波発信器部(位置情報発信手段)
100 皮膚(被測定部)
S 周波

【特許請求の範囲】
【請求項1】 生体の被測定部に磁界を形成し、前記磁界内における前記被測定部の血流の増減に略同期して発生する磁気力の周波を検出するための磁気検出手段と、前記磁気検出手段によって検出された前記磁気力の周波に基づいて前記生体の心拍数を演算する演算手段と、前記演算手段によって演算された演算結果を表示する表示手段と、前記磁気検出手段を前記被測定部に位置決めして固定する固定手段と、を有することを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項2】 前記演算手段は、前記磁気検出手段によって検出された前記磁気力の周波の振幅に基づいて、さらに前記生体の血圧値を演算することを特徴とする請求項1に記載の生体情報計測装置。
【請求項3】 前記演算手段によって演算された演算結果を、通信媒体を介して伝送可能とする出力手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の生体情報計測装置。
【請求項4】 前記演算手段によって演算された演算結果が、予め設定された閾値を超えたことを告知する告知手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の生体情報計測装置。
【請求項5】 前記告知手段の作動時に、前記生体の位置情報を無線通信によって発信する位置情報発信手段が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の生体情報計測装置。
【請求項6】 前記固定手段を含む装置全体が、腕時計型の一体構造に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の生体情報計測装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図8】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図9】
image rotate


【公開番号】特開2001−112725(P2001−112725A)
【公開日】平成13年4月24日(2001.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−293571
【出願日】平成11年10月15日(1999.10.15)
【出願人】(597077746)ダイヤシステム株式会社 (1)
【Fターム(参考)】