説明

生体情報評価システム

【課題】顕微鏡で観察するのと同時に生体関連物質の信号情報を透明バイオセンサで取得する場合に、その信号情報を正確に取得することができる生体情報評価システムを提供する。
【解決手段】透明基材とその透明基材上に設けられた薄膜トランジスタ素子部及び透明な生体関連物質感応部とを有し、その薄膜トランジスタ素子部が酸化物半導体膜を有する透明バイオセンサ10と、透明バイオセンサ10が有する生体関連物質感応部に載置される生体関連物質から信号情報を取得する電気信号測定装置101と、透明バイオセンサ10をステージ53上にセットし、透明バイオセンサ10に光源光62,74を照射して生体関連物質感応部に載置される生体関連物質を観察する顕微鏡90とを少なくとも備え、透明バイオセンサ10と光源光62,74との間に紫外線カットフィルタ51を設けた生体情報評価システム50により上記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報評価システムに関し、さらに詳しくは、顕微鏡で観察するのと同時に生体関連物質の信号情報を透明バイオセンサで取得する場合に、その信号情報を正確に取得することができる生体情報評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生物はμmオーダーの細胞から構成されており、その細胞はタンパク質、脂質又は核酸等のnmオーダーの構造の集合体である。一方、半導体加工技術の微細加工もnmオーダーであり、細胞の大きさと同程度である。こうした半導体加工技術で作製された素子を生物のナノ構造に対して適用することにより、例えば細胞の機能発現を制御したり、タンパク質や核酸等の生体分子情報を取得したりすることが可能になり、現在多方面で研究されている(非特許文献1)。
【0003】
特に、疾患の診断、薬物代謝に関する個人差の検出、又は、食品若しくは環境モニタ等の目的で、DNA、糖鎖又はタンパク質等の生体関連物質を検査する種々の方法が開発されており、生体分子(biomolecule)から電気的な信号情報を取得するバイオセンサの研究が進んでいる。最近では、電気的な信号の転換が速く、集積回路とMEMS(Micro Electro Mechanical System)との接続が容易であるという観点から、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)を使用して生物学的な反応を検出するバイオセンサについて、多くの研究がなされている。
【0004】
FETを用いたバイオセンサは、MOSFETからゲート電極を除き、絶縁膜上に感応膜を被着した構造を有しており、「ISFET(Ion Sensitive FET)」と呼ばれている。そして、感応膜上に酸化還元酵素、各種タンパク質、DNA、抗原又は抗体等を載置することによって、各種バイオセンサとして機能できるようになっている(特許文献1,2)。具体的には、バイオセンサに用いられるFETは、シリコン基板の表面にソース電極、ドレイン電極及びゲート絶縁膜が形成され、ソース電極とドレイン電極と間のゲート絶縁膜の表面に金属電極を有している。この金属電極の表面には、DNAプローブとアルカンチオールが載置されている。
【0005】
ところで、近年、酸化物半導体膜を用いた薄膜トランジスタ(以下「TFT」ともいう。)の研究が活発に行われている。特許文献3では、In、Ga及びZnからなる酸化物(「IGZO」と略す。)の多結晶膜を薄膜トランジスタの半導体膜に用いた例が提案され、非特許文献2と特許文献4では、IGZOの非晶質膜を薄膜トランジスタの半導体膜に用いた例が提案されている。これらのIGZOを半導体膜に用いた薄膜トランジスタは、室温での低温成膜が可能であり、プラスチック基板等の非耐熱性基板に熱ダメージを与えることなく形成できるとされている。このIGZO系の酸化物半導体は、可視光に対する透過率が高い透明材料であるとともに、ITO等の従来公知の透明導電材料をゲート電極、ソース電極又はドレイン電極とした場合であっても良好な電気的な接触特性が得られることから、透明材料のみを用いた透明な薄膜トランジスタも検討されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】松元亮、宮原裕二、「バイオセンサの現状と今後の課題」、応用物理、第80巻、第3号、p.205-210(2011).
【非特許文献2】K.Nomura et.al., Nature, vol.432, p.488-492(2004).
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−296228号公報
【特許文献2】特開2007−108160号公報
【特許文献3】特開2004−103957号公報
【特許文献4】特表2005−088726号公報
【特許文献5】特開2011−009293号公報
【特許文献6】特開平11−194277号公報
【特許文献7】特開2009−25630号公報
【特許文献8】特開2010−152409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
FETを用いたバイオセンサによって細胞又はDNA等の生体関連物質の状態を電気的な信号情報として検出する場合、得られた情報データは重要な評価要素となるが、その検出時の細胞又はDNAの状態を顕微鏡観察することも重要な評価手段である。細胞等の顕微鏡観察は、透過光により高倍率で直接観察することが望ましい。感応膜上の生体関連物質から電気的な信号情報を取得するのと同時にその状態を顕微鏡観察するためには、生体関連物質をバイオセンサの下側から観察することが好ましく、通常は倒立顕微鏡が用いられる。そのため、上記した透明なTFTでバイオセンサを構成することが好ましい。なお、倒立顕微鏡は、測定試料である透明バイオセンサを載置するステージの下方に対物レンズを配置した構造の顕微鏡であり、特許文献6〜8等で提案されている。
【0009】
酸化物半導体であるIGZO系の酸化物半導体膜の使用は、TFTを有するバイオセンサ全体の透明化も実現可能であるが、その酸化物半導体自体が紫外線、特に波長が200nm〜280nmのUV−Cに対して感応することが知られている(特許文献5)。しかしながら、そうした酸化物半導体膜を、電気的な信号情報を取得すると共に顕微鏡観察できる透明なバイオセンサに適用した場合、その透明バイオセンサに対し、顕微鏡で用いる光源光や観察時の照明光等が上方から又は下方から照射される。そのため、その光源光又は照明光等に含まれる紫外線によって、酸化物半導体膜からの出力信号が変動又は低下するおそれがある。その結果、顕微鏡観察と同時に取得する生体関連物質の信号情報と、顕微鏡観察と同時に取得しない生体関連物質の信号情報とが異なるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、顕微鏡で観察するのと同時に生体関連物質の信号情報を透明バイオセンサで取得する場合に、その信号情報を正確に取得することができる生体情報評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係る生体情報評価システムは、透明基材と該透明基材上に設けられた薄膜トランジスタ素子部及び透明な生体関連物質感応部とを有し、該薄膜トランジスタ素子部が酸化物半導体膜を有する透明バイオセンサと、前記生体関連物質感応部に載置される生体関連物質から信号情報を取得する電気信号測定装置と、前記透明バイオセンサをステージ上にセットし、該透明バイオセンサに光源光を照射して前記生体関連物質感応部に載置される生体関連物質を観察する顕微鏡とを少なくとも備え、前記透明バイオセンサと前記光源光との間に紫外線カットフィルタが設けられていることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、透明バイオセンサと光源光との間に紫外線カットフィルタが設けられているので、光源光に含まれる紫外線を紫外線カットフィルタでカットすることができる。その結果、薄膜トランジスタ素子部を構成する酸化物半導体膜が紫外線に感応するのを防いで、その薄膜トランジスタ素子部で検出する電気信号が変動又は低下するのを防ぐことができ、顕微鏡での状態観察と同時に取得する生体関連物質の信号情報を正確に取得することができる。
【0013】
本発明に係る生体情報評価システムにおいて、前記紫外線カットフィルタが、(i)前記透明バイオセンサをセットするステージの上面に設けられている紫外線カットフィルタ、又は、(ii)前記光源光を発する光源の光路に設けられている紫外線カットフィルタである、ように構成する。
【0014】
本発明に係る生体情報評価システムにおいて、前記紫外線カットフィルタが、測定時の照明光に含まれる紫外線を遮る紫外線カットフィルタであり、該紫外線カットフィルタが前記透明バイオセンサの側方又は上方に設けられているように構成する。
【0015】
この発明によれば、透明バイオセンサの側方又は上方に設けられた紫外線カットフィルタを前記紫外線カットフィルタに加えて設けるので、顕微鏡の光源光に含まれる紫外線と、観察時の照明光に含まれる紫外線とを遮ることができる。その結果、透明バイオセンサの薄膜トランジスタ素子部で検出する電気信号が変動又は低下するのを防ぐことができ、顕微鏡での状態観察と同時に取得する生体関連物質の信号情報を正確に取得することができる。
【0016】
本発明に係る生体情報評価システムにおいて、前記紫外線カットフィルタが、前記酸化物半導体膜のバンドギャップよりも小さいバンドギャップを持つ透明材料、又は、紫外線カット能を有するポリイミド系材料で構成されている。
【0017】
この発明によれば、光源光や照射光等のうち、酸化物半導体膜で電子を励起する紫外線をカットできる。
【0018】
本発明に係る生体情報評価システムにおいて、前記酸化物半導体膜が、IGZO系の酸化物半導体膜であることが好ましい。
【0019】
IGZO系酸化物半導体材料からなる酸化物半導体膜は、生体関連物質を顕微鏡観察する際に照射される光源光や照明光等光に含まれる紫外線に感応し易い。この発明によれば、その酸化物半導体膜からの出力信号が変動又は低下するのを防ぐことができるので、顕微鏡観察と同時に取得する生体関連物質の信号情報を正確に取得することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る生体情報評価システムによれば、光源光に含まれる紫外線を紫外線カットフィルタでカットすることができるので、薄膜トランジスタ素子部を構成する酸化物半導体膜が紫外線に感応するのを防いで、その薄膜トランジスタ素子部で検出する電気信号が変動又は低下するのを防ぐことができる。その結果、顕微鏡での状態観察と同時に取得する生体関連物質の信号情報を正確に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る生体情報評価システムの一例を示す模式的な全体構成図である。
【図2】図1に示す生体情報評価システムの側面に設けられたCCDカメラの模式的な構成図である。
【図3】紫外線カットフィルタの設置位置を例示する説明図である。
【図4】紫外線カットフィルタの設置位置を例示する説明図である。
【図5】ボトムゲート型TFTを有する透明バイオセンサの例を示す模式断面図である。
【図6】ボトムゲート型TFTを有する透明バイオセンサの他の例を示す模式断面図である。
【図7】トップゲート型TFTを有する透明バイオセンサの例を示す模式断面図である。
【図8】ISFET型の透明バイオセンサの例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る生体情報評価システムについて図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、その技術的思想を含む範囲内で以下の形態に限定されない。
【0023】
本発明に係る生体情報評価システム50は、図1〜図4に示すように、生体関連物質を測定する透明バイオセンサ10と、その生体関連物質から信号情報を取得する電気信号測定装置101と、透明バイオセンサ10をステージ53上にセットし、透明バイオセンサ10に光源光62,74を照射して生体関連物質を観察する顕微鏡90とを少なくとも備えている。その透明バイオセンサ10は、図5〜図8に示すように、透明基材1と、透明基材1上に設けられた薄膜トランジスタ素子部A(以下「TFT素子部A」ともいう。)及び透明な生体関連物質感応部Bとを有し、そのTFT素子部Aが酸化物半導体膜4を有している。
【0024】
本発明に係る生体情報評価システム50は、図1〜図4に示すように、透明バイオセンサ10と光源光62,74との間に、酸化物半導体膜4が紫外線に感応するのを防いで検出信号が変動又は低下するのを防ぐための紫外線カットフィルタ51を設けたことに特徴がある。
【0025】
以下、生体情報評価システム50の構成を説明する。なお、本発明において、「上」、「下」とは、顕微鏡90を置いたときの上、下のことであり、「右」、「左」とは、顕微鏡90の接眼レンズ81から見て右、左のことである。また、「紫外線をカットする」とは、紫外線を吸収又は反射することをいう。なお、以下では、好ましい顕微鏡として倒立顕微鏡(符号90)を用いて説明しているが、そうした倒立顕微鏡に限らず、その他の形態の顕微鏡を用いることもできる。
【0026】
[顕微鏡]
(基本構成)
顕微鏡90は、図1〜図4に示すように、生体関連物質(図示しない)を載せた透明バイオセンサ10が載置されるXYステージ53(図4中の53a,53b)と、XYステージ53の下方に配置された対物レンズ55と、対物レンズ55を介して生体関連物質を観察するためのCCD95(図2を参照)と、CCD95と対物レンズ55とを光学的に結合する光路切り換えプリズム86とを有している。顕微鏡90は、さらに、生体関連物質を観察するための接眼レンズ81と、接眼レンズ81と対物レンズ55とを光学的に結合するミラー85と、ミラー85と接眼レンズ81との間に配置されたリレーレンズ82,83とを有している。顕微鏡90は、さらに、光源71とコンデンサレンズ77とを含む透過照明光学系と、励起光源61と落射蛍光投光管65と蛍光フィルタカセット69とを含む落射蛍光照明系と、を有している。
【0027】
透過照明用の光源71からの光74は、透過照明支柱92に設けられた透過照明用の光学要素73,75,76及びコンデンサレンズ77を介して、透明バイオセンサ10上の生体関連物質を照明する。
【0028】
落射蛍光照明用の励起光源61からの照明光62は、落射蛍光投光管65を介して蛍光フィルタカセット69に配された励起フィルタ66により、生体関連物質に染色された蛍光色素を効率的に励起できる波長のみに選択的に透過されて励起光となる。その励起光は、ダイクロイックミラー67により観察光軸88(符号88は「平行光」をいう場合もある。)と同軸的に導光すると共に対物レンズ55に向けて反射される。反射した励起光は、対物レンズ55を介して生体関連物質に染色された蛍光色素を励起する。ここで、蛍光用フィルタである励起フィルタ66、ダイクロイックミラー67及び吸収フィルタ68は、蛍光フィルタカセット69にそれぞれ装着されており、必要に応じて設けられたターレット式等の切り換え機構により、使用する蛍光色素に合わせて光路上に挿脱、切り換えできるようになっている。また、符号63は、光学要素(レンズ)である。
【0029】
XYステージ53上に載せた透明バイオセンサ10は、図4に示すXYハンドル54により、透明バイオセンサ10上の生体関連物質の観察したい位置に移動できるようになっている。透明バイオセンサ10の下には、生体関連物質の像を無限遠に投影するための対物レンズ55がレボルバ57にねじ込まれている。図中には対物レンズ55は一本しか装着されていないが、レボルバ57は複数本の対物レンズが装着可能になっている。
【0030】
対物レンズ55から出射された無限遠に投影される平行光88は、結像レンズ87により対物レンズ一次像面84,98に結像される。ここで、蛍光観察の場合は、生体関連物質から発した蛍光が対物レンズ55から出射され、ダイクロイックミラー67を透過し、吸収フィルタ68により観察に必要な波長に選択的に透過され、結像レンズ87へと導かれて対物レンズ一次像面84,98へと結像する。
【0031】
光路切り換えプリズム86は、観察光軸88上に挿脱可能に保持されている。図2のCCD95で観察する場合は、光路切り換えプリズム86が観察光軸88上に挿入され、対物レンズ一次像98は光路切り換えプリズム86で反射され、CCD95で観察できるようになっている。一方、眼で観察する場合は、光路切り換えプリズム86が観察光軸88から外され、対物レンズ一次像面84はミラー85により接眼レンズ81へ向けて反射される。さらに、対物レンズ一次像面84は、リレーレンズ83,82によりリレーされ、接眼レンズ81により眼で観察できるようになっている。
【0032】
透過照明観察の場合も、蛍光フィルタを光路から外して観察を行うこと以外は蛍光観察の場合と同様である。
【0033】
(紫外光)
顕微鏡90において、落射蛍光照明用の励起光源61からの照明光62は、励起フィルタ66により生体関連物質に染色された蛍光色素を効率的に励起できる波長のみに選択的に透過されて励起光となるが、その励起光には、近紫外線(UV励起:334nm/365nm)、青色光(B励起:405nm/435nm/490nm)、緑色光(G励起:546nm)等が用いられる。そのため、蛍光色素の励起波長によって、励起光源61が任意に選択される。例えば、励起光源61として各種の生体関連物質を紫外線で励起する場合もあるため、汎用性のある水銀ランプを用いることが多い。したがって、このような場合は、励起光源61から紫外光域の波長を含む光が出射することになる。
【0034】
その紫外光は、本発明を構成する透明バイオセンサ10が有する酸化物半導体膜4(図4〜図8参照)を感応させて、その半導体特性を変化させてしまうという問題があったが、本発明では、汎用性のある水銀ランプを励起光源61とした場合であっても、図3に示すように、透明バイオセンサ10と光源光62,74との間に、紫外線カットフィルタ51,72を設けている。これにより、その光源光62,74に含まれる紫外線を紫外線カットフィルタ51,72でカットすることができるので、酸化物半導体膜4が紫外線に感応するのを防いで検出信号が変動又は低下するのを防ぐことができる。その結果、顕微鏡90での状態観察と同時に取得する生体関連物質の信号情報を正確に取得することができる。
【0035】
(紫外線カットフィルタ)
紫外線カットフィルタ51,72は、図3に示すように、透明バイオセンサ10と光源光62,74との間に設けられている。具体的には、落射蛍光照明系では、(i)XYステージ53の上面、すなわちXYステージ53とそのXYステージ上面の透明バイオセンサ10との間の光路に設けられた紫外線カットフィルタ51a、(ii)対物レンズ55と蛍光フィルタカセット69との間の光路に設けられた紫外線カットフィルタ51b、(iii)蛍光フィルタカセット69と落射蛍光投光管65との間の光路に設けられた紫外線カットフィルタ51c、及び、(iv)落射蛍光投光管65と励起光源61との間の光路に設けられた紫外線カットフィルタ51d等から選ばれるいずれかのカットフィルタ51を挙げることができる。ここで用いる紫外線カットフィルタ51は、厚さ100μm〜2mm程度の基材上に、厚さ5μm〜50μm程度の紫外線カットフィルムを設けたシート状又はパネル状のフィルタであることが好ましい。
【0036】
なお、本願でいう「光路」とは、光源61,71から発した光62,74が各光学要素で拡縮又は反射等されながら通過する領域をいい、光62,74の中心軸を表す光軸(例えば光軸88)を含んでいる。すなわち、光軸を中心に持つ光62,74が一定の幅がある場合には、その幅を有する光62,74が通過する路(みち)を指しているので、光路に設けられた紫外線カットフィルタ51,72は、通常、そうした光62,74が通過する大きさで設けられている。
【0037】
また、透過照明光学系では、(1)透過照明用の光源71と光軸上の光学要素75,76等との間の光路に設けられた紫外線カットフィルタ72a、(2)光学要素75,76とコンデンサレンズ77との間の光路に設けられた紫外線カットフィルタ72b、(3)透明バイオセンサ10とコンデンサレンズ77との間の光路に設けられた紫外線カットフィルタ72c等から選ばれるいずれかのカットフィルタ72を挙げることができる。ここで用いる紫外線カットフィルタ72も、厚さ100μm〜2mm程度の基材上に、厚さ5μm〜50μm程度の紫外線カットフィルムを設けたシート状又はパネル状のフィルタであることが好ましい。
【0038】
また、紫外線カットフィルタ51,72を透明バイオセンサ10と光源光62,74との間に設け、更に加えて、図4に示すように、測定時の照明光に含まれる紫外線を遮るための紫外線カットフィルタ52,53を、上記した光路以外の位置、すなわち透明バイオセンサ10の側方又は上方に設けてもよい。そうした紫外線カットフィルタ52,53としては、例えば、(ア)接眼レンズ81とXYステージ53との間の空間を遮るように設けられたパネル状の紫外線カットフィルタ52、(イ)XYステージ53上の透明バイオセンサ10の側方にその透明バイオセンサ10の周囲を囲むように設けられたパネル状の紫外線カットフィルタ53、等を挙げることができる。ここで用いる紫外線カットフィルタ52,53も、厚さ100μm〜2mm程度の基材上に、厚さ5μm〜50μm程度の紫外線カットフィルムを設けたシート状又はパネル状のフィルタであることが好ましい。
【0039】
紫外線カットフィルタ51,52,53,72の材料としては、例えば、(1)紫外線カット能を有する無機酸化物又は有機化合物材料、又は、(2)透明バイオセンサ10のTFT素子部Aを構成する酸化物半導体膜4のバンドギャップよりも小さいバンドギャップを持つ酸化物材料、等を挙げることができる。紫外線カットフィルタは、これらの材料で形成したり、これらの材料を所望の紫外線カット能を持つ程度に含有させたりして形成される。
【0040】
(1)紫外線カット能を有する無機酸化物としては、例えば、ITOやZnO等の紫外線カット材料を挙げることができる。これらの材料を含む紫外線カットフィルタ又はこれらの材料からなる紫外線カットフィルタは、その形成材料の種類等に応じた成膜手段とパターニング手段が適用される。成膜手段としては、スパッタリング法、各種CVD法、塗布等で成膜した後にフォトリソグラフィ等でパターニングすればよい。なお、紫外線カット材料を含有させる場合の含有量は、含有させる材料の特性によって任意に選択される。
【0041】
紫外線カット能を有する有機化合物材料としては、下記表1に示す紫外線カット能を有するポリイミド系樹脂や、同様の機能を有するアクリル系樹脂等を挙げることができる。表1に示すポリイミドは、特に可視光域で良好な光透過性を示し、紫外光域で良好な遮光性を示すので、紫外線カットフィルタとして機能でき、薄膜トランジスタ特性、すなわち半導体特性の劣化をより効果的に防ぐことができる。なお、表1は、光透過率及び反射率スペクトル測定装置(FilmTek3000、SCI社製)によって測定した結果であり、その透過率は、390nm以下の紫外光の透過率は10%以下であるのに対し、425nm以上の可視光の透過率は約80%以上である。
【0042】
【表1】

【0043】
紫外線カットフィルタの材料として、IGZO酸化物半導体を用いてもよい。このIGZO酸化物半導体の透過率の波長依存性も上記した表1に併せて示す。IGZO酸化物半導体は、特に可視光域で良好な光透過性を示し、紫外光域で良好な遮光性を示すので、紫外線カットフィルタとして機能でき、薄膜トランジスタ特性、すなわち半導体特性の劣化をより効果的に防ぐことができる。その透過率は、380nmまでの紫外光の透過率は80%未満であるのに対し、それを超える可視光の透過率は80%以上である。
【0044】
紫外線カットフィルタの形成は、その形成材料の種類等に応じた成膜手段とパターニング手段が適用される。例えば、ポリイミド、アクリル系樹脂又はIGZO酸化物半導体等で紫外線カットフィルタを形成する場合には、スパッタリング法、各種CVD法又は塗布等で成膜した後にフォトリソグラフィ等でパターニンすればよい。なお、紫外線カットフィルタの厚さは、通常、1μm〜10μm程度である。
【0045】
(2)透明バイオセンサ10のTFT素子部Aを構成する酸化物半導体膜4のバンドギャップよりも小さいバンドギャップを持つ酸化物材料は、例えば酸化物半導体膜4をIGZO酸化物半導体で形成した場合には、バンドギャップが3.1eV超、4.05V未満の範囲の材料で紫外線カットフィルタを形成することが好ましい。詳しくは、IGZO酸化物半導体のバンドギャップは最大4.05eVであり、一方、可視光域と紫外光域の境目はエネルギーが3.1eVの400nmである。そのため、紫外線カットフィルタとしては、400nm未満の紫外線を吸収し、IGZO酸化物半導体のバンドギャップよりも小さい範囲であることが好ましい。したがって、400nmの光のエネルギー(3.1eV)を超えるエネルギー(3.1eV超)から、IGZO酸化物半導体のバンドギャップ(最大4.05eV)未満のエネルギー(4.05eV未満)の範囲のバンドギャップを持つ材料で紫外線カットフィルタを作製すれば、その紫外線カットフィルタがその範囲のエネルギーの光を吸収でき、酸化物半導体膜4に紫外線の影響を及ぼさない。
【0046】
その結果、バンドギャップが4.05eVのIGZOで酸化物半導体膜4を構成した場合、その酸化物半導体膜4に、エネルギーが4.05eVよりも小さい光が照射しても、その光は酸化物半導体膜4を透過して電子を励起しない。一方、その酸化物半導体膜4に、エネルギーが4eVよりも大きい光が照射すると、その光は酸化物半導体膜4で吸収されて電子を励起する。したがって、紫外線カットフィルタは、酸化物半導体膜4が吸収するエネルギーの光、すなわち紫外線を吸収する材料で構成されていればよい。波長400nmの可視光のエネルギーは、3.1eV(400nm)〜1.55eV(800nm)であるので、これらの範囲の光は、バンドギャップが4.05eVのIGZO酸化物半導体膜4を透過し、電子が励起しないので、悪影響が生じない。なお、光エネルギーE(eV)は、1240/λ(波長:nm)で計算できる。
【0047】
この例では、バンドギャップが4.05eVのIGZOで酸化物半導体膜4を作製しているが、用いる酸化物半導体材料によってバンドギャップは違ってくる。そのため、上記同様の考え方で、用いた酸化物半導体膜4のバンドギャップに応じて、紫外線カットフィルタを構成する材料を選定する。例えば、紫外線カットフィルタに使用可能な材料としては、ITO(3.3eV)、IZO(3.3eV)、ZnO(3.2eV)、SnO(3.8ev)等を挙げることができる。中でも、ITO(3.3eV)、IZO(3.3eV)、ZnO(3.2eV)が好ましい。
【0048】
一方、そうした材料と組み合わされるIGZO酸化物半導体としては、In:Ga:Zn比が1.1:0.9:1(3.77eV)、In:Ga:Zn比が1:1:1(3.81eV)、In:Ga:Zn比が0.7:1.3:1(3.97eV)、In:Ga:Zn比が0.5:1.5:1(4.05eV)、In:Ga:Zn比が1.1:0.9:2(3.61eV)、In:Ga:Zn比が1:1:2(3.68eV)、In:Ga:Zn比が0.7:1.3:2(3.79eV)、In:Ga:Zn比が0.5:1.5:2(3.85eV)、等を挙げることができる。
【0049】
また、IGZO酸化物半導体以外の酸化物半導体としては、n型半導体では、ZnO(3.37eV)、In(3.75)、Ga(4.8eV)、SnO(3.57eV)を挙げることができ、p型半導体では、CuAlO(3.5eV)、LaCuOS(3.1eV)、LaCuOSe(3.1eV)、SrCu(3.2eV)等を挙げることができる。本発明では、透明であることがより好ましいので、IGZO酸化物半導体が好ましく用いられる。
【0050】
上記した材料からなる紫外線カットフィルタの成膜には、その形成材料の種類等に応じた成膜手段とパターニング手段が適用される。成膜手段としては、スパッタリング法、各種CVD法、塗布等で成膜した後にフォトリソグラフィ等でパターニングすればよい。なお、紫外線カットフィルタ用の材料を含有させる場合の含有量は、含有させる材料の特性によって任意に選択される。
【0051】
ここで説明したITO膜(バンドギャップ3.3eV)を紫外線カットフィルタとし、IGZO(バンドギャップ4.05eV)を酸化物半導体膜4としたときの半導体特性を測定した。具体的には、後述する透明バイオセンサ10のTFT素子部Aを構成するソース電極とドレイン電極との間のチャネル長さを10μmとし、チャネル幅を100μmとしたIGZO酸化物半導体膜を用いた。UVライトとしては、SPECTROLINE LONGGIFE_TM FILTER HIGHEST ULTRAVILET INTENSITY GUARANTEEDを用い、半導体膜とUVライトとの距離を13cmとして365nmの紫外光を照射した。このとき、ドレイン電圧を1V固定とし、ゲート電圧を15V〜−15Vの間で変化させたときの半導体特性(V−I特性)を測定した。ITO膜を紫外線カットフィルタとして遮蔽したときと遮蔽しないときの半導体特性の結果は、移動度で最大約10cm/(V・s)の差が確認できた。ITO膜で遮蔽しない場合は、遮蔽した場合と比較して、紫外線照射によりキャリアが増加してリーク電流が増加し、OFFレベルが上がって、ON/OFF比が悪化した。そして、キャリアが多くなったため、トランジスタがONし易くなり、閾値Vthがマイナスにシフトした。さらに、閾値Vthがマイナスにシフトした。
【0052】
以上のように、透明バイオセンサと光源光との間に紫外線カットフィルタ51,72が設けられているので、光源光に含まれる紫外線を紫外線カットフィルタ51,72でカットすることができる。その結果、TFT素子部Aを構成する酸化物半導体膜4が紫外線に感応するのを防いで、そのTFT素子部Aで検出する電気信号が変動又は低下するのを防ぐことができ、顕微鏡90での状態観察と同時に取得する生体関連物質の信号情報を正確に取得することができる。
【0053】
さらに、透明バイオセンサの側方又は上方に設けられた紫外線カットフィルタ52,53を前記の紫外線カットフィルタ51,72に加えて設ければ、顕微鏡90の光源光に含まれる紫外線と、観察時の照明光に含まれる紫外線とを遮ることができる。その結果、透明バイオセンサの薄膜トランジスタ素子部で検出する電気信号が変動又は低下するのをより一層防ぐことができる。
【0054】
[透明バイオセンサ]
透明バイオセンサの構成を、ボトムゲート型TFTを有するものと、トップゲート型TFTを有するものとに分けて詳しく説明する。なお、本発明において、「上に」とは、そのものの上に直に設けられていることを意味し、直に設けられていない場合は「上方に」と言い分ける。また、「覆う」とは、そのものの上に直接設けられるとともに、そのものの周りにも設けられていることを意味する。また、「紫外線をカットする」とは、紫外線を吸収又は反射することをいう。
【0055】
[ボトムゲート型TFTを有する透明バイオセンサ]
図5及び図6に示す透明バイオセンサ10は、ボトムゲート型の薄膜トランジスタ(以下「TFT」ともいう。)を有するTFT素子部Aと、生体関連物質感応部Bとを有している。
【0056】
図5(A)〜(C)に示すボトムゲート型TFTを有する透明バイオセンサ10A,10B,10Cは、透明基材1と、透明基材1上に設けられたTFT素子部A及び生体関連物質感応部Bとで構成されている。TFT素子部Aと生体関連物質感応部Bとは、平面視で重ならずに並んで設けられている。また、生体関連物質感応部Bの絶縁膜3’及び感応膜8の下に設けられた電極2’は、TFT素子部Aを構成するゲート電極2に接続されている。なお、図5(B)の透明バイオセンサ10Bは、感応膜8がTFT素子部A及び生体関連物質感応部Bの両方に設けられている場合であり、図5(C)の透明バイオセンサ10Cは、TFT素子部Aが隣接して設けられている場合である。
【0057】
TFT素子部Aは、ボトムゲート型TFTを有するものであり、図5(A)〜(C)に示すように、透明基材1上に設けられたゲート電極2と、ゲート電極2上に設けられたゲート絶縁膜3と、ゲート絶縁膜3上に設けられた酸化物半導体膜4と、酸化物半導体膜4の両側にトップコンタクト状に設けられたソース電極5及びドレイン電極6と、酸化物半導体膜4、ソース電極5及びドレイン電極6を覆う保護膜7とを有している。一方、生体関連物質感応部Bは、図5(A)〜(C)に示すように、透明基材1上にTFT素子部Aのゲート電極2と共に形成された電極2’と、その電極2’上にTFT素子部Aのゲート絶縁膜3と共に形成された絶縁膜3’と、その絶縁膜3’上に設けられた感応膜8とを有している。生体関連物質は、感応膜8上に載置される。
【0058】
図6(A)に示すボトムゲート型TFTを有する透明バイオセンサ10Dは、透明基材1と、透明基材1上に設けられたTFT素子部Aと、そのTFT素子部Aを覆う保護膜7と、その保護膜7上に設けられた生体関連物質感応部Bとで構成されている。TFT素子部Aと生体関連物質感応部Bとは、平面視で重ならずに並んで設けられている。また、生体関連物質感応部Bの絶縁膜3’及び感応膜8の下に設けられた電極2’は、TFT素子部Aを構成するゲート電極2と、絶縁膜3’及び感応膜8を上下に貫く配線2”を介して接続されている。
【0059】
このTFT素子部Aは図5のボトムゲート型TFTと同じ形態であるのでここではその説明を省略する。一方、生体関連物質感応部Bは、図6(A)に示すように、透明基材1と、透明基材1上に設けられた絶縁膜3’と、絶縁膜3’上に設けられた保護膜7’と、保護膜7’上に設けられた電極2’と、電極2’上に設けられた感応膜8とを有している。生体関連物質は、感応膜8のうち、電極2’が設けられた範囲の感応膜8上に載置される。
【0060】
図6(B)に示すボトムゲート型TFTを有する透明バイオセンサ10Eは、図6(A)とほぼ同じ形態である。異なる点は、生体関連物質感応部Bを構成する電極2’が、TFT素子部Aの上方にまで延びていることであり、それ以外は図6(A)と同じ形態であるのでここではその説明を省略する。生体関連物質は、感応膜8のうち、電極2’が設けられた範囲の感応膜8上に載置される。
【0061】
(透明基材)
透明基材1は、透明であればその種類や構造は特に限定されるものではなく、用途に応じてフレキシブルな材料や硬質な材料等が選択される。具体的には、例えば、ガラス、石英、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート等を挙げることができる。通常は、ITO付きガラス基板やITO付きプラスチック基板等が好ましく用いられる。なお、金属膜や透明導電膜がゲート電極として形成されたガラス基板やプラスチック基板等を用いてもよい。
【0062】
透明の定義は、透明基材1の下方から生体関連物質感応部Bに載置された生体関連物質を観察することができる程度に透明であればよい。例えば、(i)反射率で判断する場合には、波長350nm〜650nmの可視光域において、各膜の屈折率が約2以下で屈折率差が約0.5以下であることが好ましく、(ii)透過率で判断する場合には、波長350nm〜650nmの可視光域において、各膜の消光係数kが約0.1以下と低いことが好ましい。また、透明基材1の厚さは特に制限されないが、通常、1μm〜1mm程度である。透明基材1の形状は特に限定されないが、顕微鏡観察に利用できる形状であることが好ましく、例えばチップ状、カード状、ディスク状等を挙げることができる。
【0063】
(ゲート電極)
ゲート電極2は、図5及び図6に示すように、TFT素子部Aではゲート電極2として設けられ、生体関連物質感応部Bではゲート電極2が延びた電極2’として設けられており、いずれも透明基材1上にパターン形成されている。ゲート電極2の形成材料は、例えば、金、銀、銅、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、アルミニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン等の金属膜;ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO、ZnO等の透明導電膜を好ましく挙げることができる。なお、所望の導電性を有するものであれば、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体のような導電性高分子等であってもよい。TFT素子部Aに透明性が要求される場合には、透明電極であることが好ましく、例えばITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO、ZnO等の透明導電膜や、透明な導電性高分子を好ましく挙げることができる。
【0064】
ゲート電極2の形成は、ゲート電極材料の種類や透明基材1の耐熱性に応じた成膜手段とパターニング手段が適用される。例えば、金属膜又は透明導電膜でゲート電極2を形成する場合には、成膜手段として真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、各種CVD法等を適用でき、パターニング手段としてフォトリソグラフィを適用できる。ゲート電極2の形成に低温成膜が要求される場合には、成膜手段として低温成膜可能なスパッタリング法やプラズマCVD法を好ましく適用できる。また、導電性高分子でゲート電極2を形成する場合には、成膜手段として真空蒸着法やパターン印刷法等を適用でき、パターニング手段としてフォトリソグラフィを適用できる。ゲート電極2の形成工程時には、同時に、ゲート電極用配線、グラウンド配線及び電源配線等の回路配線群を、ゲート電極2と同一材料で形成してもよい。ゲート電極2の厚さ、及び、ゲート電極2の形成時に同時に形成する回路配線群(電極や配線)の厚さは、通常、0.05μm〜0.2μm程度である。
【0065】
(ゲート絶縁膜)
ゲート絶縁膜3は、図5及び図6に示すように、TFT素子部Aではゲート電極2を覆うゲート絶縁膜3として設けられ、生体関連物質感応部Bでは電極2’を覆うように絶縁膜3’として設けられている。ゲート絶縁膜3は、絶縁性が高く、誘電率が比較的高く、ゲート絶縁膜として適しているものであれば各種の材料を用いることができる。例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素又は酸窒化ケイ素等のケイ素の酸化物、窒化物又は酸窒化物等を好ましく挙げることができる。また、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化スカンジウム及びチタン酸バリウムストロンチウムのうち少なくとも1種又は2種以上を挙げることができる。TFT素子部Aに透明性が要求される場合には、酸化ケイ素、窒化ケイ素又は酸窒化ケイ素等のケイ素の酸化物、窒化物又は酸窒化物等が好ましい。
【0066】
ゲート絶縁膜3の形成は、ゲート絶縁膜材料の種類や透明基材1の耐熱性に応じた成膜手段とパターニング手段が適用される。例えば、ケイ素の酸化物、窒化物又は酸窒化物等でゲート絶縁膜3を形成する場合には、成膜手段としてスパッタリング法や各種CVD法等を適用でき、パターニング手段としてフォトリソグラフィを適用できる。ゲート絶縁膜3の成膜に低温成膜が要求される場合には、成膜手段として低温成膜可能なスパッタリング法やプラズマCVD法を好ましく適用できる。なお、ゲート絶縁膜3の厚さは、通常、0.1μm〜0.3μm程度である。
【0067】
(酸化物半導体膜)
酸化物半導体膜4は、図5及び図6に示すように、TFT素子部Aで、TFT素子部Aを構成するゲート絶縁膜3上であって、ゲート電極2の上方に所定のパターンで設けられている。酸化物半導体膜4は、TFTを構成するチャネル領域として使用できる程度の移動度を有するものであれば、その種類は特に限定されず、現在知られている酸化物半導体膜であっても、今後発見される酸化物半導体膜であってもよい。
【0068】
こうした酸化物半導体膜4は、例えばIGZO系酸化物半導体膜のように紫外線に感応し易いものが多く、生体関連物質を顕微鏡観察する際に照射される光に含まれる紫外線に感応して、酸化物半導体膜4からの出力信号が変動又は低下することがある。そのため、本発明では、顕微鏡90に紫外線カットフィルタを設けて紫外線をカットすることにより、酸化物半導体膜4からの出力信号が変動又は低下するのを防ぐことができ、顕微鏡90での観察と同時に取得する生体関連物質の信号情報を正確に取得することができる。
【0069】
酸化物半導体膜4を構成する酸化物としては、例えば、InMZnO(MはGa,Sn,Al及びFeのうち少なくとも1種)を主たる構成元素とするアモルファス酸化物を挙げることができる。特に、MがGaであるInGaZnO系のアモルファス酸化物が好ましく、この場合、In:Ga:Znの比が1:1:m(m<6)であることが好ましい。また、Mgをさらに含む場合には、In:Ga:Zn1-xMgxの比が1:1:m(m<6)で0<x≦1であることが好ましい。なお、組成割合は、蛍光X線(XRF)装置で測定したものである。InMZnOを含むアモルファス酸化物である酸化物半導体材料で酸化物半導体膜4を形成した場合、その酸化物半導体膜4は、特に可視光域で良好な光透過性を示すので好ましく適用できる。こうした酸化物半導体膜4は、TFT素子部Aに透明性が要求される場合に好ましく、特にMがGaであるInGaZnO系のアモルファス酸化物が好ましい。
【0070】
InGaZnO系のアモルファス酸化物については、InとGaとZnの広い組成範囲でアモルファス相を示す。この三元系でアモルファス相を安定して示す組成範囲としては、InGaZn(3x/2+3y/2+z)で比率x/yが0.4〜1.4の範囲であり、比率z/yが0.2〜12の範囲にあるように表すことができる。なお、ZnOに近い組成とInに近い組成で結晶質を示す。
【0071】
また、アモルファス酸化物が、InxGa1-x酸化物(0≦x≦1)、InxZn1-x酸化物(0.2≦x≦1)、InxSn1-x酸化物(0.8≦x≦1)、及びInx(Zn,Sn)1-x酸化物(0.15≦x≦1)から選ばれるいずれかのアモルファス酸化物であってもよい。
【0072】
InGaZnO系(以下「IGZO系」と略す)酸化物半導体膜は、可視光を透過して透明膜となるのでTFT素子部Aに透明性が要求される場合に好ましく用いられる。また、このIGZO系酸化物半導体膜には、必要に応じて、Al、Fe又はSn等を構成元素として加えたものであってもよい。このIGZO系酸化物半導体膜は、透明性を要求されるTFT素子部Aに好ましく用いられる。また、このIGZO系酸化物半導体膜は、スパッタリング法(特にRFスパッタリング法)により、室温から150℃程度の低温での成膜が可能であることから、ガラス転移温度が200℃未満の耐熱性に乏しいプラスチック基板に対して好ましく適用できる。
【0073】
酸化物半導体膜4の形成は、酸化物半導体材料の種類や透明基材1の耐熱性に応じた成膜手段とパターニング手段が適用される。例えば、成膜手段としてスパッタリング法やCVD法等を適用でき、パターニング手段としてフォトリソグラフィを適用できるが、低温成膜が要求される場合には、成膜手段としてスパッタリング法(特にRFスパッタリング法)やプラズマCVD法を好ましく適用できる。
【0074】
酸化物半導体膜4の厚さは、成膜条件によって任意に設計されるために一概には言えないが、通常10nm〜150nmの範囲内であることが好ましく、30nm〜100nmの範囲内であることがより好ましい。
【0075】
(ソース電極、ドレイン電極)
ソース電極5及びドレイン電極6は、図5及び図6に示すように、TFT素子部Aで、酸化物半導体膜4の両側にトップコンタクトするようにパターン形成されている。ソース電極材料及びドレイン電極材料は、酸化物半導体膜4のソース電極接続部(図示しない)及びドレイン電極接続部(図示しない)とのオーミック接触が考慮されて選択される。ソース電極材料及びドレイン電極材料としては、通常、導電性の良い金属膜又は導電性酸化物膜等が用いられる。金属膜としては、チタン膜、アルミニウム膜、アルミニウム膜上にチタン膜を設けた積層膜等を挙げることができ、導電性酸化物膜としては、ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO、ZnO等の透明導電膜を挙げることができる。また、所望の導電性を有するものであれば、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体のような導電性高分子等であってもよい。TFT素子部Aに透明性が要求される場合には、透明電極であることが好ましく、例えばITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO、ZnO等の透明導電膜や、透明な導電性高分子を好ましく挙げることができる。
【0076】
ソース電極5及びドレイン電極6の形成は、電極材料の種類や透明基材1の耐熱性に応じた成膜手段とパターニング手段が適用される。例えば、金属膜又は導電性酸化物でソース電極5及びドレイン電極6を形成する場合には、成膜手段として真空蒸着法、スパッタリング法又は各種のCVD法等を適用でき、パターニング手段としてフォトリソグラフィを適用できるが、低温成膜が要求される場合には、成膜手段として低温成膜可能なスパッタリング法やプラズマCVD法を好ましく適用できる。また、導電性高分子でソース電極5及びドレイン電極6を形成する場合には、成膜手段として真空蒸着法やパターン印刷法等を適用でき、パターニング手段としてフォトリソグラフィを適用できる。ソース電極5及びドレイン電極6の形成工程時には、同じ電極材料で、同時に、既に形成されている回路配線群への接続や新しい回路配線群の形成を行うことが好ましい。ソース電極5及びドレイン電極6の厚さは、通常、0.1μm〜0.3μm程度である。
【0077】
(保護膜)
保護膜7は、図5及び図6に示すように、TFT素子部Aで、酸化物半導体膜4、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うように形成されている。保護膜7は、TFT用の保護膜として用いられているものであれば特に限定されないが、TFT素子部Aに透明性が要求される場合には、透明な保護膜であることが好ましく、例えば、厚さ500nm〜1000nm程度のPVP(ポリビニルピロリドン)膜等の有機保護膜、又は厚さ100nm〜500nm程度の酸化ケイ素や酸窒化ケイ素等からなるガスバリア性の無機保護膜等を好ましく挙げることができる。また、上記した酸化物半導体膜4の構成材料と同じ酸化物半導体材料で形成してもよい。
【0078】
保護膜7の形成は、保護膜材料の種類や透明基材1の耐熱性に応じた成膜手段とパターニング手段が適用される。例えば、有機保護膜を形成する場合には、塗布法や蒸着法等を適用でき、無機保護膜を形成する場合には、スパッタリング法や各種のCVD法等を適用できる。また、パターニングする場合は、フォトリソグラフィを適用できる。
【0079】
(感応膜)
感応膜8は、図5及び図6に示すように、生体関連物質感応部Bで、絶縁膜3’上にパターン形成されている。感応膜8は、被検査流体に含まれる生体関連物質、例えば細胞、DNA、糖鎖、タンパク質、酸化還元酵素、抗原又は抗体等を載置可能な材料で形成される。感応膜8の形成材料としては、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si)、酸化タンタル(Ta)又は酸化アルミニウム(Al)等を挙げることができる。これらの材料で形成した感応膜8は、イオン感応性膜であり、測定したいイオン種に応じて適宜選定される。感応膜8は、単層であっても積層であってもよく、積層の場合は、例えば酸化ケイ素膜上に窒化ケイ素膜を設けてもよいし、さらにその上に酸化タンタル膜を設けてもよい。
【0080】
また、必要に応じて、DNA、タンパク質又は糖鎖等を固定化するための表面修飾を行うこともできる。感応膜8の周囲には、後述する隔壁9が設けられ、酸化物半導体膜4のチャネル領域(図示しない)上に、被検査流体に含まれる生体関連物質を載置する載置領域が設けられている。なお、感応膜8は絶縁性を有するので、例えばゲート電極2を覆う保護膜として利用してもよい。感応膜8の形成は、感応膜材料の種類や透明基材1の耐熱性に応じた成膜手段とパターニング手段が適用される。例えば、スパッタリング法や各種のCVD法等を適用でき、パターニング手段としてはフォトリソグラフィを適用できる。
【0081】
感応膜8の厚さは、通常、50nm〜500nm程度である。例えば厚さ100nmの酸化ケイ素膜を単層で形成したり、例えば厚さ100nmの酸化ケイ素膜上に厚さ100nmの窒化ケイ素膜を形成したりしてもよいし、さらにその上に厚さ100nmの酸化タンタル膜を形成したりしてもよい。
【0082】
[トップゲート型TFTを有する透明バイオセンサ]
図7(A)(B)に示す透明バイオセンサ20A,20Bは、トップゲート型のTFTを有するTFT素子部Aと、生体関連物質感応部Bとを有している。なお、このトップゲート型TFTを有する透明バイオセンサ20A,Bでは、紫外線カット能を有するゲート電極2を含め、TFT素子部A及び生体関連物質感応部Bの各構成要素は、図5及び図6のボトムゲート型TFTを有する透明バイオセンサ10の場合と同様である。そのため、図7では同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0083】
図7(A)に示すトップゲート型TFTを有する透明バイオセンサ20Aは、透明基材1と、透明基材1上に設けられたTFT素子部A及び生体関連物質感応部Bとで構成されている。TFT素子部Aと生体関連物質感応部Bとは、平面視で重ならずに並んで設けられている。また、生体関連物質感応部Bの感応膜8の下方に設けられた電極2’は、TFT素子部Aを構成するゲート電極2に接続されている。
【0084】
TFT素子部Aは、トップゲート型TFTを有するものであり、透明基材1上に設けられたソース電極5及びドレイン電極6と、そのソース電極5及びドレイン電極6にボトムコンタクト態様で両側で接続するように設けられた酸化物半導体膜4と、ソース電極5、酸化物半導体膜4及びドレイン電極6を覆うように設けられたゲート絶縁膜3と、ゲート絶縁膜3上に設けられたゲート電極2と、ゲート電極2上に設けられた保護層7とを有している。一方、生体関連物質感応部Bは、透明基材1上にTFT素子部Aのゲート絶縁膜3と共に形成された絶縁膜3’と、その絶縁膜3’上にTFT素子部Aのゲート電極2と共に形成された電極2’と、その電極2’上にTFT素子部Aの保護膜7と共に形成された保護膜7と、その保護膜7上に設けられた感応膜8とを有している。生体関連物質は、感応膜8上に載置される。
【0085】
なお、図7(A)の例では、感応膜8は、平面視でTFT素子部A以外の領域に設けられているが、TFT素子部Aの上方にも設けてもよい。そうすることで、感応膜8上での生体関連物質の載置面積を大きくし、観察範囲を広くすることができる。
【0086】
図7(B)に示すトップゲート型TFTを有する透明バイオセンサ20Bは、透明基材1と、透明基材1上に設けられたTFT素子部A及び生体関連物質感応部Bとで構成されている。図5に示すTFT素子部Aと生体関連物質感応部Bとは、平面視で重なるように上下の位置関係で設けられている。また、生体関連物質感応部Bの感応膜8の下方に設けられた電極は、感応膜8の検出電極2’とTFT素子部Aを構成するゲート電極2とを兼ねている。
【0087】
TFT素子部Aは、トップゲート型TFTを有するものであり、透明基材1上に設けられたソース電極5及びドレイン電極6と、そのソース電極5及びドレイン電極6にボトムコンタクト態様で両側で接続するように設けられた酸化物半導体膜4と、ソース電極5、酸化物半導体膜4及びドレイン電極6を覆うように設けられたゲート絶縁膜3と、ゲート絶縁膜3上に設けられたゲート電極2とを有している。なお、ゲート電極2と感応膜8との間には、保護膜7が設けられていてもよい。
【0088】
一方、生体関連物質感応部Bは、そのTFT素子部A上を構成するゲート電極2上に設けられたものである。そして、この生体関連物質感応部Bでは、TFT素子部Aが有するゲート電極2を、検出電極2’として併用し、その検出電極2’上には、感応膜8が設けられている。感応膜8が設けられた生体関連物質感応部Bの周縁には、隔壁9が設けられており、その隔壁9で囲まれた領域に、被検査流体に含まれる生体関連物質が投入され、透明バイオセンサによる電気的な信号情報と、顕微鏡観察とが同時に行われる。「周縁」とは、生体関連物質感応部Bに設けられた検出電極2’を平面視した場合に、その検出電極2’に重ならない外側位置のことを意味する。感応膜8上には、被検査流体に含まれる生体関連物質、例えば細胞、DNA、糖鎖、タンパク質、酸化還元酵素、抗原又は抗体等が、隔壁9,9間に配置される。
【0089】
隔壁9は、生体関連物質感応部Bの周縁の感応膜8上に設けられている。隔壁9は、水溶液又は培養液等の被検査流体を感応膜8上に滞留させるためのものであり、所定の高さで設けられる。障壁9の形成材料は、被検査流体を漏出させない材料であればよく、特に限定されるものではない。具体的には被検査流体の種類に応じて、各種の樹脂材料や金属材料から選択して適用できる。
【0090】
図7(B)に示す透明バイオセンサ20Bにおいては、紫外線カット能を有するゲート電極2は酸化物半導体膜4の上方に設けられているので、そのゲート電極2は、透明バイオセンサ20の上方から照射される光に含まれる紫外線をカットする。
【0091】
図8は、ISFET型透明バイオセンサ20C,20Dの例である。この透明バイオセンサ20C,20Dは、MOSFET構造からゲート電極を除き、絶縁膜3’上に感応膜8を設けたISFET(Ion Sensitive FET)構造である。そして、生体関連物質感応部Bの感応膜8上に、被検査流体に含まれる生体関連物質、例えば細胞、DNA、糖鎖、タンパク質、酸化還元酵素、抗原又は抗体等を載置して、その生体関連物質からの信号情報を検出するバイオセンサである。
【0092】
この透明バイオセンサ20C,20Dを構成する生体関連物質感応部Bは、図8に示すように、透明基材1と、透明基材1上に設けられた酸化物半導体膜4と、酸化物半導体膜4の両側にボトムコンタクトするように設けられたソース電極5及びドレイン電極6と、酸化物半導体膜4上に絶縁膜7を介して設けられた感応膜8とを有している。感応膜8が設けられた生体関連物質感応部Bには、隔壁31が設けられており、その隔壁31で囲まれた領域に、被検査流体に含まれる生体関連物質が投入され、透明バイオセンサによる電気的な信号情報と、顕微鏡による観察とが同時に行われる。なお、透明バイオセンサ20C,20Dを構成するTFT素子部Aは、図3に示すように、トップゲート型のTFT素子部Aを構成している。
【0093】
[電気信号測定装置]
電気信号測定装置101は、図1、図3及び図4に示すように、透明バイオセンサ10の生体関連物質感応部Bに載置される生体関連物質から信号情報を取得する装置である。生体関連物質感応部Bには、例えば、細胞、DNA、糖鎖、タンパク質等の生体関連物質が配置され、その生体関連物質から電気信号を取得するために、その生体関連物質に参照電極105を挿入して測定する。具体的には、電気信号測定装置101からリード線103を介してソース電極5とドレイン電極6との間に例えば0.1V〜1V程度の電圧VDSを印加しつつ、生体関連物質に挿入した参照電極105を介して可変電圧(参照電圧)Vを印加すると、感応膜8に生ずる電位(「膜電位」ともいう。)の変化に応じて、酸化物半導体膜4に形成されているチャネル領域が変化し、ドレイン電流Iの変化を検出することができる。
【0094】
こうした測定を行うことにより、参照電圧Vに基づくドレイン電流Iの変化、すなわちTFTとしての電流−電圧特性を、予め測定した生体関連物質の電流−電圧特性と比較することができる。その結果、測定に供される生体関連物質の種別を特定することができる。
【0095】
本発明では、顕微鏡90による状態観察と同時に、電気信号測定装置101による生体関連物質の電流−電圧特性の測定を行うことができ、しかも、紫外線カットフィルタを設けることによって、TFT素子部Aを構成する酸化物半導体膜4が紫外線に感応するのを防いで、そのTFT素子部Aで検出する電気信号が変動又は低下するのを防ぐことができる。その結果、顕微鏡90での状態観察と同時に取得する生体関連物質の信号情報を正確に取得することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 透明基材
2 ゲート電極
2’ 検出電極
2” 連結配線
3 ゲート絶縁膜
3’ 絶縁膜
4 酸化物半導体膜
5 ソース電極
6 ドレイン電極
7 保護膜
8 感応膜
9 隔壁
10,10A,10B,10C,10D,10E 透明バイオセンサ
20,20A,20B,20C,20D 透明バイオセンサ
A 薄膜トランジスタ素子部
B 生体関連物質感応部
【0097】
50 生体情報評価システム
51,51a,51b,51c,51d 紫外線カットフィルタ
52,53 紫外線カットフィルタ
53 XYステージ
53a Xステージ
53b Yステージ
54 XYハンドル
55 対物レンズ
57 レボルバ
61 励起光源
62,74 光源光又は照明光
63 光学要素(レンズ)
65 落射蛍光投光管
66 励起フィルタ
67 ダイクロイックミラー
68 吸収フィルタ
69 蛍光フィルタカセット
71 光源
72,72a,72b,72c 紫外線カットフィルタ
73,75,76 光学要素
74 照明光
77 コンデンサレンズ
81 接眼レンズ
82,83 リレーレンズ
84,98 対物レンズ一次像面
85 ミラー
86 光路切り換えプリズム
87 結像レンズ
88 光軸又は平行光
90 顕微鏡(倒立顕微鏡)
92 透過照明支柱
95 CCD
101 電気信号測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と該透明基材上に設けられた薄膜トランジスタ素子部及び透明な生体関連物質感応部とを有し、該薄膜トランジスタ素子部が酸化物半導体膜を有する透明バイオセンサと、
前記生体関連物質感応部に載置される生体関連物質から信号情報を取得する電気信号測定装置と、
前記透明バイオセンサをステージ上にセットし、該透明バイオセンサに光源光を照射して前記生体関連物質感応部に載置される生体関連物質を観察する顕微鏡と、を少なくとも備え、
前記透明バイオセンサと前記光源光との間に紫外線カットフィルタが設けられていることを特徴とする生体情報評価システム。
【請求項2】
前記紫外線カットフィルタが、前記透明バイオセンサをセットするステージの上面に設けられている紫外線カットフィルタである、請求項1に記載の生体情報評価システム。
【請求項3】
前記紫外線カットフィルタが、前記光源光を発する光源の光路に設けられている紫外線カットフィルタである、請求項1に記載の生体情報評価システム。
【請求項4】
前記紫外線カットフィルタが、測定時の照明光に含まれる紫外線を遮る紫外線カットフィルタであり、該紫外線カットフィルタが前記透明バイオセンサの側方又は上方に設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体情報評価システム。
【請求項5】
前記紫外線カットフィルタが、前記酸化物半導体膜のバンドギャップよりも小さいバンドギャップを持つ透明材料、又は、紫外線カット能を有するポリイミド系材料で構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体情報評価システム。
【請求項6】
前記酸化物半導体膜が、IGZO系の酸化物半導体膜である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体情報評価システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−96868(P2013−96868A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240508(P2011−240508)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】