説明

生体情報遠隔監視システム

【課題】簡便な方法で作業員の生体情報の遠隔監視を行うとともに作業員への指令を送る。
【解決手段】第1のイヤホンマイク11と、第1のイヤホンマイク11との間で音声通話を行う第2のイヤホンマイク23と、第1のイヤホンマイク11の取得した電気信号から生体情報信号を抽出して出力する信号処理回路12と、信号処理回路12と第1のイヤホンマイク11の取得した電気信号とを音声帯域の多重化信号に変調して音声通信回線17に出力する第1の変復調多重化処理機14と、音声通信回線17から入力される信号を復調して信号処理回路12から出力される生体情報信号を抽出してディスプレイ19に表示し、第1のイヤホンマイク11の取得した電気信号を音声信号として第2のイヤホンマイク23に出力する第2の変復調多重化処理機18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報を遠隔遠視するシステムの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
医療において、血圧、心拍、脳波、体温、呼吸などの生体情報を測定して診断に供することがおこなわれている。そして、この様な生体情報を取得する手段として、例えば、上腕式血圧計を用いて血圧を測定したり、水銀体温計やサーミスタを用いた電子式体温計で腋下や舌下で体温を測定したりすることが一般的である。
【0003】
近年、このような従来型の測定装置に加え、耳から生体情報を取得する方法が提案されてきている。例えば、外耳道に挿入したプローブで鼓膜及びその近傍から放射される赤外線から体温や心電波形を測定し、その温度や波形を表示器に表示する方法(例えば、特許文献1参照)や、また、耳穴に異なる波長を有する複数の光を照射し、耳穴の皮膚から反射された光を検出して酸素飽和度、脈拍、呼吸数などを測定し、ディスプレイに表示する方法(例えば、特許文献2参照)や、外耳道から鼓膜に向けて光を照射し、その反射光から得られる信号に基づいて血圧や脳波等を検出してその数値をディスプレイに表示する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。また外耳道を媒体として伝達される生体振動を電気信号に変換して可聴音に変換して出力する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。また、近年、イヤホンとマイクを一体型にしたイヤホンマイクの開発も行われている(例えば、特許文献5参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−217792号公報
【特許文献2】特開2007−54650号公報
【特許文献3】特開2007−21106号公報
【特許文献4】特開2010−22572号公報
【特許文献5】特開2009−232436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、遠隔地で危険な作業をする作業員の生体情報を監視し、それに基づいて作業員に適切な指令を送る要望が高まっている。しかし、特許文献1から4に記載された従来技術の生体情報検出装置では生体情報を送信するために別に大きな送信機が必要となることから、作業員に装着させた場合には作業の邪魔になってしまうという問題があった。また、送信機を装着した場合でも送信された生体情報に基づいて作業員に退避などの指示をするには更に別の通信機が必要となってしまい更に装置が大きくなってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、簡便な方法で作業員の生体情報の遠隔監視を行うとともに作業員への指令を送ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の生体情報遠隔監視システムは、外耳道圧を電気信号に変換すると共に、音声信号を音声に変換する第1のイヤホンマイクと、音声と音声信号との間の変換を行い、前記第1のイヤホンマイクとの間で音声通話を行う第2のイヤホンマイクと、前記第1のイヤホンマイクの取得した前記電気信号から生体情報信号を抽出して出力する信号処理回路と、前記第1のイヤホンマイクの取得した電気信号と、前記信号処理回路から出力される生体情報信号とが入力され、入力された該電気信号と該生体情報信号とを音声帯域の多重化信号に変調して音声通信回線に出力するとともに、前記音声通信回線から入力される音声帯域の多重化信号を復調して音声信号として第1のイヤホンマイクに出力する第1の変復調多重化処理機と、前記音声通信回線から入力される音声帯域の多重化信号を復調して前記信号処理回路から出力される生体情報信号と前記第1のイヤホンマイクの取得した電気信号とを抽出し、抽出した生体情報信号を表示装置に出力し、抽出した電気信号を音声信号として前記第2のイヤホンマイクに出力するとともに、前記第2のイヤホンマイクの取得した音声信号を音声帯域の多重化信号に変調して前記音声通信回線に出力する第2の変復調多重化処理機と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の生体情報遠隔監視システムにおいて、前記信号処理回路は、前記第1のイヤホンマイクから入力された電気信号を処理して、連続的な生体情報データを抽出すると共に、連続的な生体情報データを処理して生体数値情報を抽出し、連続的な前記生体情報データと前記生体数値情報とを前記第1の変復調多重化処理機に出力し、前記第1の変復調多重化処理機は、前記信号処理回路の出力する前記生体数値情報と所定の範囲の閾値と比較し、前記生体数値情報が所定の閾値の範囲内の場合には、前記生体数値情報を音声帯域の多重化信号に変調して音声通信回線に出力し、前記生体数値情報が所定の閾値の範囲を超える場合には、連続的な前記生体情報データを音声帯域の多重化信号に変調して音声通信回線に出力すること、としても好適である。
【0009】
本発明の生体情報遠隔監視システムにおいて、複数の前記第1のイヤホンマイクを含み、複数の前記第1のイヤホンマイクの中から前記第2のイヤホンマイクと音声通話を行う一部の前記第1のイヤホンマイクを選択する選択装置と、としても好適である。
【0010】
本発明の生体情報遠隔監視システムにおいて、前記選択装置に接続され、前記第1の変復調多重化処理機へのコマンドを入力する入力装置を備え、入力装置から入力されたコマンド信号は、前記第2のイヤホンマイクの取得した音声信号と共に音声帯域の多重化信号に変調されて前記第2の変復調多重化処理機から前記音声通信回線を通して前記第1の変復調多重化処理機に出力され、前記第1の変復調多重化処理機は、前記コマンド信号が入力された際には、前記生体数値情報にかかわらず連続的な前記生体情報データを音声帯域の多重化信号に変調して音声通信回線に出力すること、を特徴とする生体情報遠隔監視システム。
【0011】
本発明の生体情報遠隔監視システムにおいて、生体情報を電気信号に変換する生体情報センサを含み、前記信号処理回路は、前記生体情報センサから入力された電気信号を処理して、連続的な生体情報データを抽出すると共に、連続的な生体情報データを処理して生体数値情報を抽出し、連続的な前記生体情報データと前記生体数値情報とを前記第1の変復調多重化処理機に出力し、前記第1の変復調多重化処理機は、前記信号処理回路の出力する前記生体数値情報と所定の範囲の閾値と比較し、前記生体数値情報が所定の閾値内の場合には、前記生体数値情報を音声帯域の多重化信号に変調して音声通信回線に出力し、前記生体数値情報が所定の閾値の範囲を超える場合には、連続的な前記生体情報データを音声帯域の多重化信号に変調して音声通信回線に出力すること、としても好適である。
【0012】
本発明の生体情報遠隔監視システムにおいて、生体周辺の環境情報を電気信号として取得する環境センサと、生体の移動する際の加速度を検出する加速度センサと、を更に備え、前記第1の変復調多重化処理機は、更に、前記環境センサ及び前記加速度センサからの電気信号を音声帯域の多重化信号に変調して音声通信回線に出力し、前記第2の変復調多重化処理機は、更に、音声帯域の多重化信号を復調して前記環境センサ及び前記加速度センサから取得した電気信号を抽出して前記表示装置に出力すること、としても好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、簡便な方法で作業員の生体情報の遠隔監視を行うとともに作業員への指令を送ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態における生体情報遠隔監視システムの構成を示す系統図である。
【図2】本発明の実施形態における生体情報監視システムに用いられる装着ユニットを耳に取り付けた状態を示す説明図である。
【図3】本発明の他の実施形態における生体情報遠隔監視システムの構成を示す系統図である。
【図4】本発明の他の実施形態における生体情報監視システムに用いられる装着ユニットを耳に取り付けた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1に示すように、本発明の生体情報遠隔監視システム100は、外耳道圧を電気信号に変換すると共に、音声を音声信号(音声を電気信号に変換したもの)に変換するマイクとしての機能と音声信号を音声に変換するイヤホンまたはスピーカとしての機能とを合わせ持つ第1のイヤホンマイク11と、第1のイヤホンマイク11の取得した電気信号から生体情報信号を抽出して出力する信号処理回路12と、第1のイヤホンマイク11の取得した電気信号と、信号処理回路12から出力される生体情報信号とが入力さる第1の変復調多重化処理機14と、第1の変復調多重化処理機14と無線の音声通信回線17を介して接続される第2の変復調多重化処理機18と、第2の変復調多重化処理機18が抽出した生体情報信号を表示する表示装置であるディスプレイ19と、第2の変復調多重化処理機18と選択装置20を介して接続されるマイク21とスピーカ22と入力装置であるキーボード24を備えている。マイク21とスピーカ22とは、請求項に記載の第2のイヤホンマイク23を構成する。また、第1、第2の変復調多重化処理機14,18は、内部に情報処理を行うCPU及びDSPとプログラム、駆動用データ等を格納するメモリとを含むコンピュータであってもよい。また、信号処理回路12はコンピュータである第1の変復調多重化処理機14によって駆動される電子回路であってもよい。装着ユニット16は、図示しない内蔵電源又は外部電源から駆動用の電源が供給されている。
【0016】
図2に示すように、第1のイヤホンマイク11と、信号処理回路12と、第1の変復調多重化処理機14とは、作業員の耳30に装着される装着ユニット16の中に組み込まれている。装着ユニット16は、外耳道31に挿入される外耳道挿入部16aと外耳道31から耳殻に続く形状に合わせた形状の本体16bとから構成されている。
【0017】
図2に示すように、装着ユニット16の外耳道挿入部16aは、略耳穴の大きさと同様の直径の円筒で、内部に貫通孔25が設けられている。外形は円筒形状に限らず、耳穴の形状に沿って湾曲していても良い。外耳道挿入部16aと連続的に接続した本体16bは、外耳道31から耳殻にかけての形状に合わせた外形形状となっている。本体16bの内部には、貫通孔25がつながっている空洞26が設けられている。空洞26は、貫通孔25よりも大きな内径を持っている。そして空洞26には、外耳道圧を電気信号に変換する振動電気変換器27が取り付けられている。振動電気変換器27は、例えば、振動板の振動をマグネットによって電気信号に変換すると共に、入力された電気信号によってマグネットを駆動して振動板を振動させて音声として出力することができるものであってもよい。また、振動板の振動を圧電素子によって電気信号に変換すると共に、入力された電気信号によって圧電素子を駆動し、振動板を振動させて音声として出力することができるようなものであってもよい。本実施形態では、振動電気変換器27は空洞26を介して外耳道挿入部16aの貫通孔25を塞ぐよう構成されているが、直接貫通孔25を塞ぐように取り付けられていてもよい。外耳道挿入部16aと本体16bとは樹脂などによって構成されている。貫通孔25と空洞26と振動電気変換器27は図1に示す第1のイヤホンマイク11を構成する。
【0018】
装着ユニット16の外耳道挿入部16aは外耳道31の中にぴったりと嵌まり込んで、外部の音が外耳道31へ侵入するのを抑制する。また、装着ユニット16の本体16bは作業員の耳30の耳殻にフィットして装着ユニット16の位置を安定させる。空洞26を介して外耳道挿入部16aの貫通孔25を塞いでいる振動電気変換器27は、外耳道31の中にぴったりと嵌まり込んだ外耳道挿入部16aと共に外耳道31を閉じて鼓膜32との間に閉空間37を形成する。
【0019】
図2に示すように、鼓膜32は内耳33と外耳道31を含む外耳との境界に存在する膜であり、内耳33に通じる内耳道35から心拍音や呼吸音や肺の音などの生体音が圧力振動として鼓膜に伝達されてくる。内耳33から鼓膜32に伝達された生体音は鼓膜32を振動させる。鼓膜32の振動は外耳道挿入部16aの貫通孔25を通って空洞26から閉空間37を形成している振動電気変換器27に外耳道31の圧力の変化として伝達され、第1のイヤホンマイク11によって電気信号に変換される。このように、振動電気変換器27は外耳道31に伝達される圧力変動を検出して電気信号に変換して出力する。
【0020】
貫通孔25と空洞26と振動電気変換器27によって構成される第1のイヤホンマイク11は、小型の信号処理回路12に接続されている。信号処理回路12は第1のイヤホンマイク11によって変換された電気信号から雑音等を除去し、その信号の中からフィルタなどを用いて特定の周波数領域に存在する心拍や呼吸などの生体情報生体信号を抽出する。この生体情報信号は連続的なものである。そして、信号処理回路は抽出した連続的な生体情報のデータを処理し、その中から、例えば心拍数あるいは呼吸数等の生体数値情報を抽出する。また、信号処理回路は、第1のイヤホンマイクから取得した生体情報データを処理して、例えば、連続的な生体情報データである心拍波形等の送信用の生体情報信号を第1の変復調多重化処理機14に出力する。また、第1のイヤホンマイク11は、第1の変復調多重化処理機14に直接接続され、外耳道31の圧力変動を変換した電気信号をそのまま第1の変復調多重化処理機14にも出力する。
【0021】
図1に示すように、第2の変復調多重化処理機18と、ディスプレイ19と、選択装置20と、マイク21とスピーカ22とキーボード24は装着ユニット16を装着している作業員と離れた遠隔地の基地50に設けられている。そして、遠隔地の作業員が装着している装着ユニット16の第1の変復調多重化処理機14と第2の変復調多重化処理機18とは無線の音声通信回線17によって接続されている。音声通信回線17は例えば、携帯電話の通話回線であってもよいし、他の音声通信を行う無線回線であってもよく、例えば100Hzから3.6kHz程度の音声帯域の周波数の通信を行うことができるものであればよい。また、第1の変復調多重化処理機14は装着ユニット16を装着している作業員の所持している携帯電話との間の音声通信を行い、その携帯電話と基地50に設置されている第2の変復調多重化処理機18との間の通信を携帯電話の通話回線を用いて行うようにしてもよい。
【0022】
以上のように構成された生体情報遠隔監視システム100の動作について説明する。なお、以下の説明では、第1のイヤホンマイク11によって心拍数、心拍波形を取得する場合について説明する。
【0023】
先に説明したように、装着ユニット16を装着した作業員の外耳道31に伝わった心拍音によって外耳道31内の空気が振動し、その空気振動もが第1のイヤホンマイク11よって電気信号に変換され、その電気信号が信号処理回路12に入力される。信号処理回路12は、例えば電気信号をFFT(高速フーリエ変換)してピーク周波数を求め、これから生体数値情報である心拍数を算出するとともに、予め取得しておいた装着ユニット16を装着している作業員の心拍波形を算出した心拍数に合わせて出力する。心拍波形は連続的な前記生体情報データである。
【0024】
信号処理回路12から出力された心拍数、心拍波形の生体信号は、第1の変復調多重化処理機14に入力される。第1の変復調多重化処理機14は、心拍数、心拍波形の生体信号をデジタル化してビットストリームとして多重化する。そして、第1の変復調多重化処理機14はこの多重化したビットストリームのデータを100Hzから3.6kHz程度の音声帯域のアナログデータに変調して無線の音声通信回線17を介して作業者から離れた基地50に設けられている第2の変復調多重化処理機18に送信する。アナログデータを受信した第2の変復調多重化処理機18はアナログデータを復調して、信号処理回路12が出力した心拍数、心拍波形の生体信号をそれぞれ抽出してディスプレイ19に出力する。これによって遠隔地にいる作業員の心拍数、心拍波形がディスプレイ19に表示される。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の生体情報遠隔監視システム100の第2の変復調多重化処理機18は複数の装着ユニット16からアナログデータに変調された心拍数、心拍波形のデータを同時に受信し、ディスプレイ19の上に並べて表示することができる。基地50の監督者は、ディスプレイ19に表示されている各作業員の心拍数、心拍波形を監視する。そして、心拍数、心拍波形に異常が認められる作業員がいる場合には、選択装置20によって、その作業員の装着ユニット16を選択し、マイク21によって音声通話を行う。監督者の音声は、第2の変復調多重化処理機18から音声通信回線17を介して遠隔地にいる作業者が装着している装着ユニット16の第1の変復調多重化処理機14に送信される。第1の変復調多重化処理機14は送信された音声信号を第1のイヤホンマイク11に出力する。すると第1のイヤホンマイク11から出力された音声が鼓膜32を振動させ、作業員が基地50の監督者の音声を認識する。
【0026】
作業員が基地50の監督者の音声に応答すべく声を出した場合には、その音声により、外耳道31の中の空気の圧力が変動し、その圧力変動は第1のイヤホンマイク11によって検出されて電気信号に変換される。電気信号は、信号処理回路12を通らず直接、第1の変復調多重化処理機14に入力され、信号処理回路12から入力された心拍数、心拍波形の生体信号と一緒にデジタル化してビットストリームとして多重化される。そして、この多重化されたビットストリームのデータは音声帯域のアナログデータに変調されて無線の音声通信回線17を介して作業者から離れた基地50に設けられている第2の変復調多重化処理機18に送信される。アナログデータを受信した第2の変復調多重化処理機18はアナログデータを復調して、信号処理回路12が出力した心拍数、心拍波形の生体信号及び第1のイヤホンマイク11によって検出された電気信号をそれぞれ抽出し、心拍数、心拍波形をディスプレイ19に出力すると共に、第1のイヤホンマイク11によって検出されて電気信号を音声信号としてスピーカ22から出力する。これによって基地50にいる監督者は遠隔地にいる作業員の心拍数、心拍波形を見ながら作業員と音声通話ができる。
【0027】
監督者は作業員の応答に異常がなければそのまま作業を継続させ、作業員の応答に異常が感じられた場合には、マイク21を使って音声によって退避指示等の指令を行う。
【0028】
以上説明したように、基地50にいる監督者は遠隔地にいる作業員の心拍数、心拍波形を監視しながら、作業員と音声通話をすることができる。また、本実施形態の生体情報遠隔監視システム100では、第1、第2の変復調多重化処理機14,18によって心拍数、心拍波形、音声の信号を多重化した後、音声帯域の100Hzから3.6kHz程度の音声帯域のアナログデータに変調して携帯電話回線などの既存の音声通信回線を使って送受信し、受信したアナログデータを復調して心拍数、心拍波形、音声信号を抽出するので、携帯電話によって通話ができる地域ならどこの地域でも作業員の遠隔監視を行うことができ、広い地域の作業員の監視を行うことができる。
【0029】
以上述べた実施形態において、装着ユニット16から常時生体信号を基地50に送信していると装着ユニット16の消費電力が大きくなり駆動時間が短くなってしまう。そこで、装着ユニット16に組み込まれている第1の変復調多重化処理機14は、信号処理回路12から入力された生体数値情報である心拍数を予めメモリに格納された基準心拍数と比較し、心拍数と基準心拍数との差が所定の閾値の範囲内の場合、例えば、心拍数が所定の上限値と下限値との間にある場合には、心拍数は正常であると判断して、心拍数のみを出力する。そして、心拍数と基準心拍数との差が所定の閾値の範囲を越える場合、例えば、心拍数が所定の上限値を超えるか、あるいは所定の下限値よりも少ない場合、心拍数は異常であると判断して、心拍数と心拍波形の送信を行うようにし、駆動用電力の消費を抑えて生体情報を長時間監視することができるようにしてもよい。また、本実施形態では、信号処理回路12によって処理した心拍波形データを第1の変復調多重化処理機14によって多重化処理することとして説明したが、第1のイヤホンマイク11によって検出された電気信号をそのまま多重化処理して送信してディスプレイ19に表示するようにしてもよいし、第2の変復調多重化処理機18によって復調した電気信号を基地50に設けた他の信号処理回路によって処理して先に説明したと同様の心拍波形としてディスプレイ19に出力するようにしてもよい。
【0030】
また、以上述べた実施形態においては、監督者は作業員の応答に異常が感じられた場合には、キーボード24から例えば、監視している作業員の名前や番号などを入力する。入力されたコマンドは第2の変復調多重化処理機18によって音声信号と一緒にビットストリームとして多重化され、音声通信回線17を介して第1の変復調多重化処理機14に送信される。第1の変復調多重化処理機14は受信した信号を復調してその中かにら監視員の入力したコマンドを抽出し、そのコマンドが例えば、その作業員の名前であった場合には、信号処理回路12から入力された心拍数にかかわらず、心拍数と心拍波形を送信する。これにより、監督者は応答に異常が感じられた作業員のより詳細な生体信号を取得、監視することができると共に、常時多くの心拍波形の送信を行わないので、装着ユニット16の駆動時間を長くすることができる。また、作業員に異常がないと判断された場合には、心拍数、心拍波形の送信を所定の時間間隔を置いて間欠的に送信し、作業員に異常があると判断された場合には、キーボード24からのコマンドの入力によって連続的な送信とすることとしてもよい。
【0031】
図3、図4を参照しながら、本発明の他の実施形態について説明する。図1、図2と同様の部分には同様の部号を付して説明は省略する。図3に示すように、本実施形態は、外耳道の圧力を電気信号に変換する第1のイヤホンマイク11に加えて、装着ユニット16の内部に、体温、血中酸素濃度などの生体情報を取得する生体情報センサ13が組み込まれているものである。
【0032】
装着ユニット16に体温、血中酸素濃度などの生体情報を取得する生体情報センサ13が組み込まれている場合には、これらの生体情報も心拍数、心拍波形と共に基地50の監督者が監視することができ、基地50の監視者はより詳細に作業員の状態を遠隔監視することができ、音声によって適切な指示、指令を行うことができる。
【0033】
更に、装着ユニット16には装着ユニット16を装着している作業員の周辺の外気温や外気圧を検出する環境センサや、作業員の移動の際の加速度を検知する加速度センサが組み込まれている場合には、生体情報と同様にこれらのセンサのデータを多重化した後、音声帯域の100Hzから3.6kHz程度の音声帯域のアナログデータに変調して携帯電話回線などの既存の音声通信回線を使って送受信し、受信したアナログデータを復調して心拍数、心拍波形、音声信号とともに、体温、血中酸素濃度、外気温、外気圧、加速度などを抽出できるので、基地50の監視者はより詳細に作業員の状態を遠隔監視することができ、音声によって適切な指示、指令を行うことができる。
【符号の説明】
【0034】
11 第1のイヤホンマイク、12 信号処理回路、13 生体情報センサ、14 第1の変復調多重化処理機、16 装着ユニット、16a 外耳道挿入部、16b 本体、17 音声通信回線、18 第2の変復調多重化処理機、19 ディスプレイ、20 選択装置、21 マイク、22 スピーカ、23 第2のイヤホンマイク、25 貫通孔、26 空洞、27 振動電気変換器、31 外耳道、32 鼓膜、33 内耳、35 内耳道、37 閉空間、50 基地、100 生体情報遠隔監視システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外耳道圧を電気信号に変換すると共に、音声信号を音声に変換する第1のイヤホンマイクと、
音声と音声信号との間の変換を行い、前記第1のイヤホンマイクとの間で音声通話を行う第2のイヤホンマイクと、
前記第1のイヤホンマイクの取得した前記電気信号から生体情報信号を抽出して出力する信号処理回路と、
前記第1のイヤホンマイクの取得した電気信号と、前記信号処理回路から出力される生体情報信号とが入力され、入力された該電気信号と該生体情報信号とを音声帯域の多重化信号に変調して音声通信回線に出力するとともに、前記音声通信回線から入力される音声帯域の多重化信号を復調して音声信号として第1のイヤホンマイクに出力する第1の変復調多重化処理機と、
前記音声通信回線から入力される音声帯域の多重化信号を復調して前記信号処理回路から出力される生体情報信号と前記第1のイヤホンマイクの取得した電気信号とを抽出し、抽出した生体情報信号を表示装置に出力し、抽出した電気信号を音声信号として前記第2のイヤホンマイクに出力するとともに、前記第2のイヤホンマイクの取得した音声信号を音声帯域の多重化信号に変調して前記音声通信回線に出力する第2の変復調多重化処理機と、
を備えることを特徴とする生体情報遠隔監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の生体情報遠隔監視システムであって、
前記信号処理回路は、前記第1のイヤホンマイクから入力された電気信号を処理して、連続的な生体情報データを抽出すると共に、連続的な生体情報データを処理して生体数値情報を抽出し、連続的な前記生体情報データと前記生体数値情報とを前記第1の変復調多重化処理機に出力し、
前記第1の変復調多重化処理機は、前記信号処理回路の出力する前記生体数値情報と所定の範囲の閾値と比較し、
前記生体数値情報が所定の閾値の範囲内の場合には、前記生体数値情報を音声帯域の多重化信号に変調して音声通信回線に出力し、
前記生体数値情報が所定の閾値の範囲を超える場合には、連続的な前記生体情報データを音声帯域の多重化信号に変調して音声通信回線に出力すること、
を特徴とする生体情報遠隔監視システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の生体情報遠隔監視システムであって、
複数の前記第1のイヤホンマイクを含み、
複数の前記第1のイヤホンマイクの中から前記第2のイヤホンマイクと音声通話を行う一部の前記第1のイヤホンマイクを選択する選択装置と、
を有することを特徴とする生体情報遠隔監視システム。
【請求項4】
請求項3に記載の生体情報遠隔監視システムであって、
前記選択装置に接続され、前記第1の変復調多重化処理機へのコマンドを入力する入力装置を備え、
入力装置から入力されたコマンド信号は、前記第2のイヤホンマイクの取得した音声信号と共に音声帯域の多重化信号に変調されて前記第2の変復調多重化処理機から前記音声通信回線を通して前記第1の変復調多重化処理機に出力され、
前記第1の変復調多重化処理機は、前記コマンド信号が入力された際には、前記生体数値情報にかかわらず連続的な前記生体情報データを音声帯域の多重化信号に変調して音声通信回線に出力すること、
を特徴とする生体情報遠隔監視システム。
【請求項5】
請求項1から4に記載の生体情報遠隔監視システムであって、
生体情報を電気信号に変換する生体情報センサを含み、
前記信号処理回路は、前記生体情報センサから入力された電気信号を処理して、連続的な生体情報データを抽出すると共に、連続的な生体情報データを処理して生体数値情報を抽出し、連続的な前記生体情報データと前記生体数値情報とを前記第1の変復調多重化処理機に出力し、
前記第1の変復調多重化処理機は、前記信号処理回路の出力する前記生体数値情報と所定の範囲の閾値と比較し、
前記生体数値情報が所定の閾値の範囲内の場合には、前記生体数値情報を音声帯域の多重化信号に変調して音声通信回線に出力し、
前記生体数値情報が所定の閾値の範囲を超える場合には、連続的な前記生体情報データを音声帯域の多重化信号に変調して音声通信回線に出力すること、
を特徴とする生体情報遠隔監視システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の生体情報遠隔監視システムであって、
生体周辺の環境情報を電気信号として取得する環境センサと、
生体の移動する際の加速度を検出する加速度センサと、
を更に備え、
前記第1の変復調多重化処理機は、更に、前記環境センサ及び前記加速度センサからの電気信号を音声帯域の多重化信号に変調して音声通信回線に出力し、
前記第2の変復調多重化処理機は、更に、音声帯域の多重化信号を復調して前記環境センサ及び前記加速度センサから取得した電気信号を抽出して前記表示装置に出力すること、
を特徴とする生体情報遠隔監視システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−110560(P2012−110560A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263485(P2010−263485)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構 「SBIR技術革新事業/生体情報対応 小型・軽量 多目的受発信機に関する研究開発」委託研究、産業技術協力強化法19条の適応を受ける特許出願)
【出願人】(508219438)株式会社イノベンチャー・シー (5)
【Fターム(参考)】