説明

生体成分分析装置、生体成分分析装置の反応カートリッジおよび生体成分分析装置の抽出カートリッジ

【課題】被験者の負担を軽減することが可能な生体成分分析装置を提供する。
【解決手段】この血糖値測定装置(生体成分分析装置)100は、被験者から抽出されるグルコースを保持するための抽出媒体を保持可能に構成された抽出媒体保持部54aおよび54bを有する抽出ユニット1と、グルコースによって所定の反応を生じさせるセンサ部材94と、抽出媒体保持部54aに保持された抽出媒体をセンサ部材94に移送するための移送流路92とを含み、抽出ユニット1の抽出媒体保持部54aに着脱可能に構成された反応カートリッジ90と、センサ部材94で生じる所定の反応からグルコースを検出する検出部69と、グルコースを検出した結果を分析する制御部66とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体成分分析装置、生体成分分析装置の反応カートリッジおよび生体成分分析装置の抽出カートリッジに関し、特に、生体から抽出された生体成分を測定する生体成分分析装置、生体成分分析装置の反応カートリッジおよび生体成分分析装置の抽出カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体から抽出された生体成分を測定する生体成分分析装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示された生体成分分析装置は、被験者の腕の皮膚層から抽出されたグルコース(生体成分)を保持するとともに、グルコースに所定の反応を起こさせる抽出・反応チャンバと、抽出されたグルコースを検出する検出器と、検出器の検出結果を分析し、血糖値を算出する制御部と、制御部により算出された血糖値を表示するディスプレイとを備えている。被験者は、この装置を腕に装着することによって血糖値を測定する。
【0004】
【特許文献1】特開2005−246054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来の生体成分分析装置では、抽出・反応チャンバ、検出器、制御部およびディスプレイなどの多くの部品が設けられているため、装置全体が大型化するとともに装置の重量が大きくなるという不都合がある。このため、このような大型の生体成分分析装置を、グルコースの抽出、反応、検出、分析および表示が終了するまでの全期間にわたって腕に装着することは、被験者にとって負担になるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、被験者の負担を軽減することが可能な生体成分分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による生体成分分析方法は、被験者から抽出される抽出物を保持するための抽出媒体を保持可能に構成された抽出媒体保持部を備える抽出媒体保持装置を被験者の皮膚に配置するステップと、抽出媒体保持部に保持された抽出媒体に、被験者から抽出物を抽出するステップと、抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部を備え、抽出媒体保持装置の抽出媒体保持部に着脱可能で、かつ、抽出媒体保持部に保持された抽出媒体を反応部に移送可能に構成された反応カートリッジを、皮膚に配置された抽出媒体保持装置の抽出媒体保持部に装着するステップと、抽出媒体保持部に保持された抽出媒体を前記反応部に移送するステップと、反応部で生じる所定の反応から抽出物を検出するステップと、抽出物を検出した結果を分析するステップとを備えている。
【0008】
この第1の局面による生体成分分析方法では、上記のように、抽出媒体保持部に保持された抽出媒体に、被験者から抽出物を抽出するステップと、抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部を備え、抽出媒体保持装置の抽出媒体保持部に着脱可能で、かつ、抽出媒体保持部に保持された抽出媒体を反応部に移送可能に構成された反応カートリッジを、皮膚に配置された抽出媒体保持装置の抽出媒体保持部に装着するステップとを設けることによって、反応カートリッジが取り外された状態の抽出媒体保持装置を被験者に装着して抽出物を抽出することができるので、被験者が、抽出時に、大型で重量の大きい装置を装着する必要がなくなる。これにより、抽出時の被験者の負担を軽減することができる。
【0009】
また、この発明の第2の局面による生体成分分析装置は、被験者から抽出される抽出物を保持するための抽出媒体を保持可能に構成された抽出媒体保持部を有する抽出媒体保持装置と、抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部と、抽出媒体保持部に保持された抽出媒体を反応部に移送するための移送流路とを含み、抽出媒体保持装置の抽出媒体保持部に着脱可能に構成された反応カートリッジと、反応部で生じる所定の反応から抽出物を検出する検出部と、抽出物を検出した結果を分析する分析部とを備えている。
【0010】
この第2の局面による生体成分分析装置では、上記のように、抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部と、抽出媒体保持部に保持された抽出媒体を反応部に移送するための移送流路とを含み、抽出媒体保持装置の抽出媒体保持部に着脱可能に構成された反応カートリッジとを設けることによって、反応カートリッジが取り外された状態の抽出媒体保持装置を被験者に装着して抽出物を抽出した後に、反応カートリッジを抽出媒体保持装置の抽出媒体保持部に装着するとともに、抽出物を抽出媒体保持部から移送経路を介して反応部に移送することができるので、被験者が、抽出時に、大型で重量の大きい装置を装着する必要がなくなる。これにより、抽出時の被験者の負担を軽減することができる。
【0011】
上記第2の局面による生体成分分析装置において、好ましくは、移送流路は、毛細管現象により、抽出媒体保持部に保持された抽出媒体を反応部に移送するように構成されている。このように構成すれば、たとえば、ポンプなどの抽出媒体を移送させるための駆動装置を設けることなく、抽出媒体保持部に保持された抽出媒体を反応部に移送することができる。
【0012】
上記第2の局面による生体成分分析装置において、好ましくは、移送流路は、反応カートリッジが抽出媒体保持装置の抽出媒体保持部に装着されると、抽出媒体保持部に保持された抽出媒体に接触されるように構成されている。このように構成すれば、抽出媒体保持部に保持された抽出媒体を、容易に、移送することができる。
【0013】
上記第2の局面による生体成分分析装置において、好ましくは、検出部と、反応カートリッジを着脱可能に保持するカートリッジ保持部とを含む検出装置が設けられている。このように構成すれば、反応カートリッジを取り替え可能な検出装置を得ることができる。
【0014】
この場合において、好ましくは、検出装置には、分析部が含まれる。このように構成すれば、抽出物を検出するのみならず、検出結果を分析することが可能な検出装置を得ることができる。
【0015】
上記第2の局面による生体成分分析装置において、好ましくは、抽出媒体保持部から反応部に抽出媒体が移送されたことを監視する移送監視手段をさらに備える。このように構成すれば、抽出媒体が反応部に移送されていないにもかかわらず抽出物の検出および分析をしてしまうことによって誤った分析結果を生成してしまうことを防止することができる。
【0016】
上記第2の局面による生体成分分析装置において、好ましくは、抽出媒体保持装置は、抽出媒体保持部を有する抽出カートリッジと、抽出カートリッジを着脱可能に保持し、被験者の抽出物抽出位置に着脱可能に装着される装着部とを含む。このように構成すれば、測定毎に抽出カートリッジを交換することが可能となり、抽出物によって汚染した抽出媒体保持装置を洗浄する必要がなくなる。
【0017】
この場合において、好ましくは、抽出カートリッジは、抽出媒体保持部に保持される抽出媒体を収容し、抽出媒体保持部に接続された液体タンクを含む。このように構成すれば、抽出カートリッジに設けられた液体タンクから直接的に抽出媒体保持部に抽出媒体を供給することができるので、抽出媒体を外部から供給する場合と比べて、抽出媒体に不純物が混合されるのを抑制することができる。
【0018】
上記第2の局面による生体成分分析装置において、好ましくは、抽出媒体保持装置は、抽出物の抽出を促進する抽出促進部をさらに備える。このように構成すれば、抽出媒体保持部に供給された抽出媒体に、より短い時間で抽出物を抽出させることができる。
【0019】
上記第2の局面による生体成分分析装置において、好ましくは、抽出物は、グルコースであり、分析部は、検出部の検出結果を分析し、血糖値を取得する。このように構成すれば、グルコースを抽出することができるとともに、抽出したグルコースの検出結果に基づいた血糖値を取得可能な生体成分分析装置を得ることができる。
【0020】
また、この発明の第3の局面による反応カートリッジは、被験者から抽出された抽出物を分析する生体成分分析装置に用いる反応カートリッジであって、抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部と、毛細管現象により、抽出媒体を反応部に移送するように構成された移送流路とを備える。
【0021】
この第3の局面による反応カートリッジでは、上記のように、毛細管現象により、抽出媒体を反応部に移送するように構成された移送流路を設けることによって、たとえば、ポンプなどの抽出媒体を移送させるための駆動装置を設けることなく、抽出媒体保持部に保持された抽出媒体を反応部に移送することができる。
【0022】
また、この発明の第4の局面による抽出カートリッジは、被験者から抽出された抽出物を分析する生体成分分析装置に用いる抽出カートリッジであって、抽出媒体を保持する抽出媒体保持部と、抽出媒体保持部に保持される抽出媒体を収容し、抽出媒体保持部に接続された液体タンクと、液体タンクから抽出媒体保持部に抽出媒体を移動させるために抽出媒体保持部に設けられた空気穴とを備える。
【0023】
この第4の局面による抽出カートリッジでは、上記のように、抽出媒体を保持する抽出媒体保持部と、抽出媒体保持部に保持される抽出媒体を収容し、抽出媒体保持部に接続された液体タンクとを設けることによって、液体タンクから直接的に抽出媒体保持部に抽出媒体を供給することができるので、抽出媒体を外部から供給する場合と比べて、抽出媒体に不純物が混じるのを抑制することができる。また、液体タンクから抽出媒体保持部に抽出媒体を移動させるために抽出媒体保持部に空気穴を設けることによって、抽出媒体保持部の内部に存在する空気が空気穴から排出されるのに伴って、抽出媒体をスムーズに抽出媒体保持部に移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態による血糖値測定装置を示した斜視図である。図2は、図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の抽出ユニットを示した斜視図である。図3は、図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の抽出ユニットを被験者の腕に装着した状態を示した斜視図である。図4〜図12は、図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の構成を詳細に説明するための図である。まず、図1〜図12を参照して、本実施形態による血糖値測定装置100の構成について説明する。
【0026】
本実施形態による血糖値測定装置100は、生体から生化学成分の一つであるグルコースを抽出するとともに、抽出されたグルコースを分析することにより血糖値を算出する装置である。この血糖値測定装置100は、図1に示すように、抽出ユニット1および抽出ユニット1に対して着脱可能な抽出カートリッジ50(図2参照)を備える抽出媒体保持装置101と、検出ユニット60および検出ユニット60に対して着脱可能な反応カートリッジ90を備える検出装置102と備えている。抽出ユニット1は、抽出カートリッジ50を着脱可能に保持する装置本体10と、装置本体10を回動可能に保持する保持部材20と、保持部材20を被験者の腕110(図3参照)に着脱可能に装着される装着ベルト30とを含んでいる。
【0027】
抽出ユニット1の装置本体10は、図1および図2に示すように、表面側(図1の矢印Z2方向側)に配置され、検出ユニット60に装着された反応カートリッジ90を装着可能な検出ユニット装着穴11と、図1の矢印X1方向の端部側に配置された解除ボタン12と、裏面側に配置された抽出カートリッジ取付部13(図2参照)および係合爪14(図2参照)と、図1の矢印X2方向の端部側に配置されたヒンジ15と、内部に配置された直流方式の定電圧電源16(図4参照)と、定電圧電源16を制御する制御部17(図4参照)とを含んでいる。装置本体10の検出ユニット装着穴11は、図4に示すように、抽出ユニット1の装置本体10を貫通するように設けられており、検出ユニット60に装着された後述する反応カートリッジ90の移送流路92を挿入可能に構成されている。装置本体10の解除ボタン12は、図2に示すように、後述する保持部材20の係合孔20bと、装置本体10の係合爪14との係合を解除するために設けられている。
【0028】
装置本体10の抽出カートリッジ取付部13は、図2および図3に示すように、抽出カートリッジ50を取り付ける際のガイドとして機能する一対のリブ状の突出部13aと、抽出カートリッジ50を取り付けるための4つの係合部13bとを含んでいる。抽出カートリッジ取付部13の4つの係合部13bは、弾性変形可能に設けられることによって、抽出カートリッジ50を着脱可能に構成されている。装置本体10の係合爪14は、装置本体10が保持部材20に対して閉状態のとき(図1参照)に、後述する保持部材20の係合孔20bと係合するように設けられている。また、装置本体10のヒンジ15は、矢印Y1方向および矢印Y2方向に延びる軸線を中心に回動可能に構成されている。
【0029】
また、定電圧電源16は、図4に示すように、装置本体10の抽出カートリッジ取付部13に設けられた一対の端子13cおよび13dと接続されている。これら一対の端子13cおよび13dは、それぞれ、後述する抽出カートリッジ50の電極53aおよび53bと接触するように構成されている。また、制御部17は、定電圧電源16を制御することにより後述する電極53aおよび53bに電圧を印加する機能を有する。つまり、制御部17は、被験者の腕110からグルコースをスムーズに抽出可能に制御するために設けられている。
【0030】
また、保持部材20は、図3に示すように、装置本体10を回動可能に保持するとともに、被験者の腕110に対して隙間なく装着することが可能なように構成されている。具体的には、保持部材20は、装置本体10のヒンジ15を保持するヒンジ保持部20aと、図3の矢印X1方向の端部側に設けられた係合孔20bと、平面的に見て中央部近傍に設けられた開口部20cとを含んでいる。また、保持部材20は、ABSなどの樹脂により形成されている。また、保持部材20の下面部20dは、矢印Y1方向から見て円弧形状に形成されている。これにより、装着ベルト30により保持部材20が被験者の腕110に装着された際に、被験者の腕110との密着性を向上させることが可能となる。
【0031】
保持部材20の一対のヒンジ保持部20aには、装置本体10がヒンジ15を介して保持部材20に対してA方向およびB方向(図1参照)に回動可能に取り付けられている。保持部材20の係合孔20bは、装置本体10が保持部材20に対して閉状態のとき(図1参照)に、装置本体10の係合爪14と係合することにより、装置本体10が保持部材20に対してA方向(開く方向)に回動するのを規制する機能を有している。このとき、装置本体10に抽出カートリッジ50が取り付けられている場合には、図4に示すように、抽出カートリッジ50は、保持部材20の開口部20cから露出された被験者の腕110の表面に接触する。
【0032】
ここで、本実施形態では、抽出カートリッジ50は、図5および図6に示すように、アクリルなどの樹脂からなるカートリッジ本体51と、後述する一対の液体タンク55aおよび55bのそれぞれの一方面(図6の矢印Z2方向側の面)に貼り付けられたテープ52(図6参照)と、後述する一対の抽出媒体保持部54aおよび54bにそれぞれ接続された電極53aおよび53bとにより構成されている。また、カートリッジ本体51には、一対の抽出媒体保持部54aおよび54bと、一対の抽出媒体保持部54aおよび54bに供給される抽出媒体を収容する液体タンク55aおよび55bとが一体的に設けられている。
【0033】
カートリッジ本体51の一対の抽出媒体保持部54aおよび54bは、装置本体10が保持部材20に対して閉状態の場合(図1参照)に被験者の腕110の表面に接触する面側(図6の矢印Z1方向側)に設けられている。これら抽出媒体保持部54aおよび54bは、それぞれ、外周部分がカートリッジ本体51と一体的に形成されているとともに、抽出媒体保持部54aおよび54bの矢印Z2方向(図6参照)側の部分は、それぞれ、図6に示すように、電極53aおよび53bにより覆われている。また、抽出媒体保持部54aおよび54bは、互いに別々に形成されている。具体的には、抽出媒体保持部54aと抽出媒体保持部54bとの間には、仕切部54cが設けられている。そして、抽出媒体保持部54aは、図4に示すように、抽出媒体保持部54aと被験者の腕110とにより囲まれる領域に液体タンク55aから流入された抽出媒体を保持するように構成されているとともに、抽出媒体保持部54bは、抽出媒体保持部54bと被験者の腕110とにより囲まれる領域に液体タンク55bから流入された抽出媒体を保持するように構成されている。
【0034】
なお、抽出媒体保持部54aおよび54bに、液体タンク55aおよび55bからの抽出媒体に抽出媒体が流入したことを検知するとともに、抽出媒体保持部54aおよび54bに抽出媒体が保持されたことを確認する図示しない検知手段を設けてもよい。この検知手段(図示せず)は、電極53aと電極53bとの間に微小電圧を印加して、その抵抗値の変化を検出するようにして構成することが可能である。
【0035】
また、図5および図6に示すように、電極53aの抽出媒体保持部54aの矢印Z2方向(図6参照)側を覆う部分には、開口部53cが形成されている。この開口部53cは、抽出媒体保持部54aの矢印Z2方向側の開口の略中心に配置されている。また、開口部53cは、液体タンク55aから抽出媒体保持部54aに抽出媒体を流入させる際に抽出媒体保持部54a内部の空気を抜く機能を有するとともに、後述する反応カートリッジ90(図4参照)に抽出媒体が移送される際に抽出媒体保持部54aの内部に空気を流入させる機能を有する。
【0036】
また、電極53bの抽出媒体保持部54bの矢印Z2方向(図6参照)側を覆う部分には、空気穴53eが形成されている。この空気穴53eは、液体タンク55bから抽出媒体保持部54bに抽出媒体を流入させる際に抽出媒体保持部54b内部の空気を抜く機能を有する。
【0037】
また、液体タンク55aおよび55bには、それぞれ、抽出媒体保持部54aおよび抽出媒体保持部54bに供給する純水からなる抽出媒体が収容されている。これら液体タンク55aおよび55bは、それぞれ、抽出媒体保持部54aおよび54bと接続されているとともに、液体タンク55aおよび55bの内周面には、それぞれ、撥水加工された金属がコーティングされている。これにより、純水からなる抽出媒体をスムーズに抽出媒体保持部54aおよび抽出媒体保持部54bに供給することが可能となる。また、本実施形態では、液体タンク55aおよび55bの容積は、抽出媒体保持部54aおよび抽出媒体保持部54bの容積よりも少し大きい容積を有する。これにより、液体タンク55aから抽出媒体保持部54aに抽出媒体が流入された際に、抽出媒体保持部54a上部の電極53aに形成された開口部53cから抽出媒体を導出させることが可能となる。この開口部53cから導出された抽出媒体は、開口部53c近傍に差し込まれた後述する移送流路92に接触されるとともに、移送流路92の毛細管現象により、検出ユニット60(センサ部材94)に移送される。
【0038】
また、テープ52は、液体タンク55aおよび55bのそれぞれの一方面(図5の矢印Z2方向側の面)を覆うように貼り付けられている。また、液体タンク55aを覆うテープ52には、空気穴52aが形成されているとともに、液体タンク55bを覆うテープ52には、空気穴52bが形成されている。これら空気穴52aおよび52bは、それぞれ、液体タンク55aおよび55bから抽出媒体保持部54aおよび54bに抽出媒体を流入させる際に、液体タンク55aおよび55bに空気を流入させる機能を有する。
【0039】
また、電極53aは、負の電圧が印加されるとともに、電極53bは、正の電圧が印加されるように構成されている。これにより、抽出媒体保持部54aおよび54bに抽出媒体が保持されている状態で電極53aおよび53bに電圧が印加された場合に、抽出媒体保持部54aに保持された抽出媒体、被験者の腕110および抽出媒体保持部54bに保持された抽出媒体に電流が流れる。この際、被験者の腕110からグルコースが抽出される速度が大きくなる。
【0040】
また、検出ユニット60は、抽出ユニット1においてグルコースが抽出された抽出媒体を移送するように構成されているとともに、移送された抽出媒体からグルコースを検出する機能を有する。そして、検出ユニット60は、グルコースの検出結果を分析することにより、被験者の血糖値を取得する機能を有する。
【0041】
図1、図7および図8に示すように、検出ユニット60は、検出ユニット本体61と、検出ユニット本体61に設けられ、反応カートリッジ90を保持するカートリッジ保持部62(図8参照)と、検出ユニット本体61の図1の矢印X2方向側に設けられ、カートリッジ保持部62に対して開閉可能な扉部材63と、検出ユニット本体61の図1の矢印X1方向側に設けられた表示部64および操作ボタン65とにより主に構成されている。また、カートリッジ保持部62に配置される反応カートリッジ90は、図9に示すように、カートリッジ本体91と、カートリッジ本体91に取り付けられた移送流路92とにより主に構成されており、略T字形状を有している。
【0042】
カートリッジ保持部62は、図8に示すように、反応カートリッジ90を収納可能なように略T字形状を有するとともに、反応カートリッジ90の移送流路92を矢印Z1方向に突出可能に構成されている。つまり、カートリッジ保持部62の移送流路92が配置される部分の矢印Z1方向の長さは、反応カートリッジ90の移送流路92の長さよりも小さい長さを有している。また、カートリッジ保持部62には、2つの開口孔62aおよび62bが設けられている。開口孔62aは、検出ユニット本体61の内部の後述する光源68(図4参照)から照射される光を通すとともに、通された光を反応カートリッジ90の後述する回折格子97a(図9参照)に当てるために設けられている。また、開口孔62bは、反応カートリッジ90の後述する回折格子97b(図9参照)を通った光を検出ユニット本体61に取り入れるために設けられている。
【0043】
また、検出ユニット本体61のカートリッジ保持部62の矢印Y2方向側には、係合孔61aが設けられているとともに、検出ユニット本体61のカートリッジ保持部62の矢印Y1方向側には、一対のヒンジ部61bが設けられている。そして、一対のヒンジ部61bには、扉部材63が取り付けられている。これにより、扉部材63は、カートリッジ保持部62に対して開閉することが可能となる。また、扉部材63には、検出ユニット本体61の係合孔61aと係合可能な係合爪63aが設けられているとともに、係合孔61aに係合された係合爪63aを、係合孔61aに対して係合するのを解除可能な解除ボタン63bが設けられている。これにより、扉部材63をカートリッジ保持部62に対して閉状態でロックすることが可能となるとともに、容易に、ロック解除を行うことが可能となる。
【0044】
また、検出ユニット本体61の図1の矢印X1方向側の表示部64は、後述する制御部66(図4参照)により算出されたグルコース量および血糖値を表示するために設けられている。操作ボタン65は、被験者の操作に基づいて、測定の開始などの血糖値測定装置100を制御するために設けられている。これら表示部64および操作ボタン65には、図4に示すように、検出ユニット60を制御するための制御部66が接続されている。制御部66は、CPUにより構成されており、制御部66には、制御部66などに電力を供給する定電圧電源67が接続されている。また、制御部66には、LEDからなる光源68が接続されているとともに、フォトダイオードからなる検出部69が接続されている。
【0045】
ここで、本実施形態では、図9および図10に示すように、反応カートリッジ90のカートリッジ本体91は、樹脂製のベース93と、ベース93の矢印X1方向側に配置されるセンサ部材94と、ベース93とセンサ部材94との間に挟まれるように配置されたメッシュ部材95とにより構成されている。また、センサ部材94は、複数の両面テープ96a、96b、96c、96dおよび96eを用いることにより、ベース93に対して固定されている。
【0046】
センサ部材94は、ガラスからなる基板の下面側(矢印X2方向側)の矢印Y1方向および矢印Y2方向の中央部分(図9の斜線部分)にグルコースの分析を行う計測面94aを有している。この計測面94aには、グルコースが反応することに起因して発色する発色色素と、所定の酵素とを含む混合ゲルが塗布され、その混合ゲルを乾燥させる処理が施されている。具体的には、センサ部材94の計測面94aには、グルコースに対する触媒としての酸化酵素であるグルコースオキシダーゼ(GOD)と、グルコースがGODを触媒として反応することによって生成される過酸化水素(H)に対する触媒としての酸化還元酵素であるペルオキシダーゼ(POD)と、HがPODを触媒として反応することによって生成されるO(活性酸素)と反応して発色する発色色素とをゲルに混合した混合ゲルが塗布され、その混合ゲルを乾燥させる処理が施されている。
【0047】
また、センサ部材94の基板の下面側(矢印X2方向側)の矢印Y1方向側および矢印Y2方向側には、それぞれ、一対の回折格子97aおよび97bが設けられている。回折格子97aは、光源68(図4参照)により照射され、開口孔62a(図8参照)を通過した光(レーザ光)を計測面94a側に回折する機能を有するとともに、回折格子97bは、計測面94aを通過する光を開口孔62b(図8参照)側に回折する機能を有する。この光は、計測面94aを通過した際で、かつ、グルコースが反応することに起因して発色している場合に、発色した色(青色)により、その光量が減少される。これにより、グルコース量に応じて検出部69(図4参照)により検出される光量が変化するので、検出部69により検出される光の変化量に基づいて、制御部66(図4参照)により、血糖値を算出することが可能となる。
【0048】
また、メッシュ部材95は、回折格子97aと回折格子97bとの間を矢印Y1方向および矢印Y2方向に延びるとともに、回折格子97aと回折格子97bとの間の中間部分から移送流路92側(矢印Z1方向側)に突出するように分岐されたT字形状を有している。このメッシュ部材95の移送流路92側部分は、移送流路92の内部にまで延びるように配置されており、移送流路92により吸い上げられた抽出媒体をスムーズに計測面94a側に移動させることが可能なように構成されている。そして、抽出媒体は、メッシュ部材95の全体に略均等に保持され、計測面94a全体に抽出媒体を浸透させることが可能となる。
【0049】
また、両面テープ96aおよび両面テープ96cの間には、図9に示すように、所定の幅を有した隙間98aが形成されているとともに、両面テープ96bおよび両面テープ96cの間には、所定の幅を有した隙間98bが形成されている。両面テープ96aおよび両面テープ96dの間には、所定の幅を有した隙間98cが形成されているとともに、両面テープ96bおよび両面テープ96eの間には、所定の幅を有した隙間98dが形成されている。隙間98a、98b、98cおよび98dは、それぞれ、ベース93とセンサ部材94との間(メッシュ部材95)に存在する空気を抜くために設けられている。また、これら隙間98a、98b、98cおよび98dは、メッシュ部材95の矢印Y1方向側の上下端部(矢印Z2方向および矢印Z1方向の端部)近傍に設けられているとともに、メッシュ部材95の矢印Y2方向側の上下端部(矢印Z2方向および矢印Z1方向の端部)近傍に設けられているため、メッシュ部材95の矢印Y1方向側の上下端部と、メッシュ部材95の矢印Y2方向側の上下端部との4方向から略均等に空気を抜くことが可能となる。これにより、移送流路92から吸い上げられた抽出媒体をメッシュ部材95全体にスムーズに浸透させることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態では、反応カートリッジ90のカートリッジ本体91には、移送流路92が取り付けられている。移送流路92は、図10および図11に示すように、2枚の樹脂製のプレート92aおよび92bと、2枚のプレート92aおよび92bを張り合わせる両面テープ99aおよび99bとにより構成されている。また、移送流路92は、図10に示すように、センサ部材94の矢印Z1方向側部分から矢印Z1方向に向かって延びるように配置されている。また、移送流路92の抽出媒体が流通する部分92cは、図11に示すように、2枚の樹脂製のプレート92aおよび92bと、2つの両面テープ99aおよび99bとに囲まれる部分により構成されている。この移送流路92の抽出媒体が流通する部分92cの矢印X1方向および矢印X2方向の厚みは、両面テープ99aおよび99bの厚みと略同じ厚みを有する。具体的には、これら両面テープ99aおよび99bは、約90μmの厚みを有している。また、プレート92aおよび92bの抽出媒体が流通する部分92c側の面には、親水性のポリマー皮膜が設けられている。これにより、移送流路92の下端部(矢印Z1方向端部)に接触された抽出媒体保持部54aの抽出媒体を、毛細管現象により、センサ部材94(図9参照)に移送することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、制御部66は、図4に示すように、抽出媒体保持部54aからセンサ部材94に抽出媒体が移送されたことを監視する機能を有する。具体的には、図12に示すように、計測面94a(図9参照)に抽出媒体が浸透していない場合(時間t0と時間t1との間の場合)、光源68(図4参照)により照射された光はベース93と計測面94aに囲まれた部分に存在する屈折率の小さな空気によって反射されるため、検出部69に入射する光量が大きい。これにより、光源68により照射された光は、その光量がほぼ変わらない状態で、検出部69(図4参照)に検出される。その後、抽出媒体が計測面94aに浸透した場合(時間t1と時間t2との間の場合)、ベース93と計測面94aとに囲まれた部分に存在する空気が、屈折率の比較的大きな抽出媒体に置き換わるので、反射光が減少し、検出部69に入射する光量が減少する。この吸光度の変化に基づいて、制御部66(図4参照)は、センサ部材94(図4参照)に抽出媒体が移送されたか否かを判断することが可能となる。
【0052】
図13〜図16は、図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の使用手順を説明するための図である。図17は、図14に示した微細孔形成装置により微細孔が形成された皮膚の状態を示した断面図である。図18は、被験者が血糖値測定装置の使用する際の手順を説明するためのフローチャートである。次に、図2、図3、図4および図13〜図18を参照して、本実施形態による血糖値測定装置100の使用手順について説明する。
【0053】
まず、本実施形態では、図18のステップS1において、図13に示すように、装着ベルト30を被験者の腕110に巻きつけることにより、保持部材20を被験者の腕110に装着する。そして、ステップS2において、図14に示すように、微細孔形成装置120により、被験者の操作に基づいて、被験者の腕110に微細孔(抽出孔)111(図17参照)が形成される。具体的には、微細孔形成装置120を開口部20cに装着した後、被験者がボタン部121を押圧することにより、微細孔形成装置120の内部から微細針(図示せず)が突出する。これにより、被験者の腕110に微細孔(抽出孔)111(図17参照)が形成される。これにより、図17に示すように、被験者の腕110に、表皮を貫通し、真皮までは到達するが、皮下組織までは到達しない微細孔(抽出孔)111が形成されるので、これらの複数の微細孔(抽出孔)111を介して被験者の腕110から体液を抽出することが可能である。これにより、血糖値測定装置100を用いて被験者の腕110からグルコースを抽出する際に、被験者が感じる痛みを軽減することが可能である。この後、微細孔形成装置120を抽出ユニット1(保持部材20)から取り外す。
【0054】
次に、ステップS3において、図3に示すように、被験者により、抽出カートリッジ50が抽出ユニット1の4つの係合部13bに係合される。すなわち、抽出カートリッジ50が抽出カートリッジ取付部13に取り付けられる。
【0055】
その後、ステップS4において、被験者の腕110(微細孔111)から抽出媒体内にグルコースを抽出する。具体的には、図15に示すように、装置本体10がB方向(図2参照)に回動されて装置本体10が閉状態にされる。このとき、装置本体10の係合爪14(図3参照)と保持部材20の係合孔20b(図3参照)とが係合しているので、装置本体10が保持部材20に対してA方向に回動するのが規制される。このとき、図4に示すように、抽出カートリッジ50の抽出媒体保持部54aおよび54bが被験者の腕110に密着している。そして、液体タンク55aおよび55bから抽出媒体保持部54aおよび54bに抽出媒体が供給され、被験者の腕110と抽出媒体保持部54aおよび54bとに囲まれる部分に抽出媒体が保持される。その後、被験者の腕110と抽出媒体保持部54aおよび54bとに囲まれる部分に抽出媒体を保持したまま、所定の時間、被験者の腕110(微細孔111)からグルコースを抽出する。なお、この際、抽出ユニット1の制御部17により、グルコースの抽出を促進するように定電圧電源16が制御されている。この制御部17の制御については、後ほど詳細に説明する。
【0056】
そして、上記ステップS4において被験者の腕110からグルコースを所定の時間抽出している間、または、グルコースを所定の時間抽出した後、ステップS5において、検出ユニット60に反応カートリッジ90を装着する。その後、図16に示すように、ステップS6において、被験者により、反応カートリッジ90が装着された検出ユニット60が抽出ユニット1の検出ユニット装着穴11に装着される。
【0057】
そして、ステップS7において、検出ユニット60の制御部66により、グルコースの検出および血糖値の測定が行われる。この際、測定された血糖値の測定結果は、表示部64に表示され、血糖値測定装置100による測定が終了する。このステップS7における検出ユニット60の制御部66の動作は、後ほど詳細に説明する。
【0058】
図19は、図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の抽出ユニットにおいてグルコースを抽出する際の制御部の動作を説明するためのフローチャートである。次に、図4、図15および図19を参照して、本実施形態による血糖値測定装置100の抽出ユニット1においてグルコースを抽出する際の制御部17の処理動作について説明する。
【0059】
まず、本実施形態では、図15に示すように、ステップS11において、被験者の腕110と抽出媒体保持部54aおよび54bとに囲まれる部分に抽出媒体を保持したまま、所定の時間、被験者の腕110(微細孔111)からグルコースが抽出される。具体的には、制御部17(図4参照)の制御に基づいて、定電圧電源16(図4参照)は、電極53a(図4参照)に負の電圧を印加するとともに、電極53b(図4参照)に正の電圧を印加する。これにより、電極53aが設けられている抽出媒体保持部54a内の抽出媒体に向かって被験者の腕110(微細孔111)からスムーズにグルコースが抽出される。そして、所定の時間経過後、定電圧電源16は、電極53aおよび53bに対する電圧の印加を停止して、グルコースを抽出する際の制御部17の処理動作が終了される。
【0060】
図20は、図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の検出ユニットにおいてグルコースの検出および血糖値の測定を行う際の制御部の動作を説明するためのフローチャートである。次に、図4、図9、図12および図20を参照して、本実施形態による血糖値測定装置100の検出ユニット60においてグルコースの検出および血糖値の測定を行う際の制御部66の処理動作について説明する。
【0061】
まず、本実施形態では、図20に示すように、ステップS21において、検出ユニット60の制御部66により、抽出媒体がセンサ部材94に移送されたか否かが判断される。具体的には、図12に示すように、抽出媒体が移送流路92を流通することによりセンサ部材94の計測面94a(図9参照)に抽出媒体が浸透したか否かが判断される。制御部66は、計測面94aに抽出媒体が浸透していない状態(時間t0と時間t1との間の状態)の吸光度が大きい状態から抽出媒体が計測面94aに浸透した状態(時間t1の状態)の吸光度が小さい状態に変化した場合に、センサ部材94(計測面94a)(図4参照)に抽出媒体が移送されたことを判断する。そして、ステップS21において、抽出媒体がセンサ部材94に移送されていないと判断された場合には、制御部66は、ステップS21の判断を繰り返す。また、ステップS21において、抽出媒体がセンサ部材94に移送されたと判断された場合には、ステップS22に進む。
【0062】
その後、ステップS22において、グルコースの検出を開始する。具体的には、制御部66は、光源68の光がセンサ部材94の発色色素により吸収された吸光度を、図12の時間t1の時点から継続的に監視している。そして、ステップS23において、制御部66は、吸光度が実質的に飽和状態になった際(時間t2の時点)の吸光度に基づいて、血糖値を算出する。その後、ステップS24において、制御部66により、算出した血糖値が表示部64に表示され、検出ユニット60においてグルコースの検出および血糖値の測定を行う際の制御部66の処理動作が終了される。
【0063】
本実施形態では、上記のように、グルコースによって所定の反応を生じさせるセンサ部材94と、抽出媒体保持部54aおよび54bに保持された抽出媒体をセンサ部材94に移送するための移送流路92とを含み、抽出ユニット1(抽出カートリッジ50)の抽出媒体保持部54aおよび54bに着脱可能に構成された反応カートリッジ90とを設けることによって、反応カートリッジ90が取り外された状態の抽出ユニット1を被験者の腕110に装着してグルコースを抽出した後に、反応カートリッジ90を抽出ユニット1の抽出媒体保持部54aおよび54bに装着するとともに、グルコースを抽出媒体保持部54aおよび54bから移送流路92を介してセンサ部材94に移送することができるので、被験者が、抽出時に、大型で重量の大きい装置を装着する必要がなくなる。これにより、抽出時の被験者の負担を軽減することができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、移送流路92を、毛細管現象により、抽出媒体保持部54aおよび54bに保持された抽出媒体をセンサ部材94に移送するように構成することによって、たとえば、ポンプなどの抽出媒体を移送させるための駆動装置を設けることなく、抽出媒体保持部54aおよび54bに保持された抽出媒体をセンサ部材94に移送することができる。
【0065】
また、本実施形態では、上記のように、反応カートリッジ90(検出ユニット60)が抽出ユニット1の抽出媒体保持部54aに装着されると、移送流路92が抽出媒体保持部54aに保持された抽出媒体に接触されるように構成することによって、抽出媒体保持部54aに保持された抽出媒体を、容易に、移送することができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、抽出媒体保持部54aからセンサ部材94に抽出媒体が移送されたことを監視する制御部66を設けることによって、抽出媒体がセンサ部材94に移送される前に制御部66が抽出媒体のグルコースを分析する動作を行うのを抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、抽出ユニット1に、抽出カートリッジ50を着脱可能に保持し、被験者の腕110に着脱可能に装着される保持部材20および装着ベルト30を設けることによって、容易に、被験者の腕110に対して抽出ユニット1を装着することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、抽出カートリッジ50に、抽出媒体保持部54aおよび54bに保持される抽出媒体を収容し、抽出媒体保持部54aおよび54bに接続された液体タンク55aおよび55bを設けることによって、抽出カートリッジ50に設けられた液体タンク55aおよび55bから直接的に抽出媒体保持部54aおよび54bに抽出媒体を供給することができるので、抽出媒体を外部から供給する場合と比べて、抽出媒体に不純物が混合されるのを抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、抽出ユニット1に、グルコースの抽出を促進する端子13cおよび13dを設けるとともに、抽出カートリッジ50に、端子13cおよび13dに接触する電極53aおよび53bを設けることによって、抽出媒体保持部54aおよび54bに供給された抽出媒体に、より短い時間でグルコースを抽出させることができる。
【0070】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0071】
たとえば、上記実施形態では、生体成分分析装置の一例として血糖値測定装置について説明したが、本発明はこれに限らず、他の生体成分分析装置にも適用可能である。
【0072】
また、上記実施形態では、微細孔形成装置により、被験者の操作に基づいて、被験者の腕に微細孔(抽出孔)を形成するとともに、電極に電圧を印加することによりグルコースの抽出を促進する例について示したが、本発明はこれに限らず、上記被験者の腕に微細孔(抽出孔)を形成する工程、および、電極に電圧を印加することによりグルコースの抽出を促進する工程のいずれか一方の工程を省略してもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、検出ユニット内に検出部と制御部との両方を設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、検出部と制御部とを別々の装置により構成してもよい。この場合、検出ユニットに検出結果を無線により送信可能な送信機を設けるとともに、分析装置にその検出結果を受信する受信機を設けることが好ましい。
【0074】
また、上記実施形態では、抽出媒体を液体タンクから抽出媒体保持部に流入させるように構成した例について示したが、本発明はこれに限らず、抽出媒体を予め抽出媒体保持部に収容するように構成してもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、反応カートリッジをカートリッジ保持部に配置するとともに、扉部材によってカートリッジ保持部を覆うことにより、反応カートリッジを検出ユニットに装着した例について示したが、本発明はこれに限らず、検出ユニットおよび反応カートリッジに互いに係合可能で、かつ、反応カートリッジを検出ユニットに対して直接的に取り付け可能な係合部を設けることにより、反応カートリッジを検出ユニットに装着するように構成してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、移送流路を抽出媒体保持部に設けられた電極の開口部近傍に配置する(差し込む)とともに、開口部から流出した抽出媒体をセンサ部に移送する例について示したが、本発明はこれに限らず、移送流路を、抽出媒体保持部に設けられた電極の開口部近傍ではなく、開口部に挿入することにより、抽出媒体保持部の内部の抽出媒体を直接的に移送するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態による血糖値測定装置を示した斜視図である。
【図2】図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の抽出ユニットを示した斜視図である。
【図3】図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の抽出ユニットを被験者の腕に装着した状態を示した斜視図である。
【図4】図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の構成を詳細に説明するためのブロック図である。
【図5】図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の抽出ユニットに装着される抽出カートリッジを示した平面図である。
【図6】図5の200−200線に沿った断面図である。
【図7】図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の検出ユニットを示した正面図である。
【図8】図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の検出ユニットの構造を説明するための正面図である。
【図9】図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の検出ユニットに装着される反応カートリッジの構成を説明するための正面図である。
【図10】図9の300−300線に沿った断面図である。
【図11】図9の400−400線に沿った断面図である。
【図12】図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の検出ユニットに装着される反応カートリッジのセンサ部の吸光度を説明するための図である。
【図13】図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の使用手順を説明するための図である。
【図14】図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の使用手順を説明するための図である。
【図15】図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の使用手順を説明するための図である。
【図16】図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の使用手順を説明するための図である。
【図17】図14に示した微細孔形成装置により微細孔が形成された皮膚の状態を示した断面図である。
【図18】被験者が図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の使用する際の手順を説明するためのフローチャートである。
【図19】図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の抽出ユニットにおいてグルコースを抽出する際の制御部の動作を説明するためのフローチャートである。
【図20】図1に示した一実施形態による血糖値測定装置の検出ユニットにおいてグルコースの検出および血糖値の測定を行う際の制御部の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
1 抽出ユニット(抽出媒体保持装置)
13c、13d 端子(抽出促進部)
20 保持部材(装着部)
30 装着ベルト(装着部)
50 抽出カートリッジ
53a、53b 電極(抽出促進部)
54a、54b 抽出媒体保持部
55a、55b 液体タンク
60 検出ユニット(検出装置)
62 カートリッジ保持部
66 制御部(分析部、移送監視手段)
69 検出部
90 反応カートリッジ
92 移送流路
94 センサ部材(反応部)
100 血糖値測定装置(生体成分分析装置)
110 被験者の腕(生体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者から抽出される抽出物を保持するための抽出媒体を保持可能に構成された抽出媒体保持部を備える抽出媒体保持装置を被験者の皮膚に配置するステップと、
前記抽出媒体保持部に保持された前記抽出媒体に、被験者から前記抽出物を抽出するステップと、
前記抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部を備え、前記抽出媒体保持装置の抽出媒体保持部に着脱可能で、かつ、前記抽出媒体保持部に保持された前記抽出媒体を前記反応部に移送可能に構成された反応カートリッジを、前記皮膚に配置された前記抽出媒体保持装置の抽出媒体保持部に装着するステップと、
前記抽出媒体保持部に保持された前記抽出媒体を前記反応部に移送するステップと、
前記反応部で生じる所定の反応から前記抽出物を検出するステップと、
前記抽出物を検出した結果を分析するステップとを備える、生体成分分析方法。
【請求項2】
被験者から抽出される抽出物を保持するための抽出媒体を保持可能に構成された抽出媒体保持部を有する抽出媒体保持装置と、
前記抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部と、前記抽出媒体保持部に保持された前記抽出媒体を前記反応部に移送するための移送流路とを含み、前記抽出媒体保持装置の抽出媒体保持部に着脱可能に構成された反応カートリッジと、
前記反応部で生じる所定の反応から前記抽出物を検出する検出部と、
前記抽出物を検出した結果を分析する分析部とを備える、生体成分分析装置。
【請求項3】
前記移送流路は、毛細管現象により、前記抽出媒体保持部に保持された前記抽出媒体を前記反応部に移送するように構成されている、請求項2に記載の生体成分分析装置。
【請求項4】
前記移送流路は、前記反応カートリッジが前記抽出媒体保持装置の抽出媒体保持部に装着されると、前記抽出媒体保持部に保持された抽出媒体に接触されるように構成されている、請求項2または3に記載の生体成分分析装置。
【請求項5】
前記検出部と、前記反応カートリッジを着脱可能に保持するカートリッジ保持部とを含む検出装置が設けられている、請求項2〜4のいずれか1項に記載の生体成分分析装置。
【請求項6】
前記検出装置には、前記分析部が含まれる、請求項5に記載の生体成分分析装置。
【請求項7】
前記抽出媒体保持部から前記反応部に前記抽出媒体が移送されたことを監視する移送監視手段をさらに備える、請求項2〜6のいずれか1項に記載の生体成分分析装置。
【請求項8】
前記抽出媒体保持装置は、前記抽出媒体保持部を有する抽出カートリッジと、前記抽出カートリッジを着脱可能に保持し、被験者の抽出物抽出位置に着脱可能に装着される装着部とを含む、請求項2〜7のいずれか1項に記載の生体成分分析装置。
【請求項9】
前記抽出カートリッジは、前記抽出媒体保持部に保持される前記抽出媒体を収容し、前記抽出媒体保持部に接続された液体タンクを含む、請求項8に記載の生体成分分析装置。
【請求項10】
前記抽出媒体保持装置は、前記抽出物の抽出を促進する抽出促進部をさらに備える、請求項2〜9のいずれか1項に記載の生体成分分析装置。
【請求項11】
前記抽出物は、グルコースであり、
前記分析部は、前記検出部の検出結果を分析し、血糖値を取得する、請求項2〜10のいずれか1項に記載の生体成分分析装置。
【請求項12】
被験者から抽出された抽出物を分析する生体成分分析装置に用いる反応カートリッジであって、
抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部と、
毛細管現象により、抽出媒体を前記反応部に移送するように構成された移送流路とを備える、反応カートリッジ。
【請求項13】
被験者から抽出された抽出物を分析する生体成分分析装置に用いる抽出カートリッジであって、
抽出媒体を保持する抽出媒体保持部と、
前記抽出媒体保持部に保持される前記抽出媒体を収容し、前記抽出媒体保持部に接続された液体タンクと、
前記液体タンクから前記抽出媒体保持部に前記抽出媒体を移動させるために前記抽出媒体保持部に設けられた空気穴とを備える、抽出カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−219824(P2009−219824A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70652(P2008−70652)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】