説明

生体成分測定装置及び生体成分測定装置の較正方法

【課題】装置全体として簡便に確実な較正を行い、正確な生体成分の測定が可能な生体成分測定装置1、およびこの発明の生体成分測定装置1の較正方法の提供。
【解決手段】体液採取装置3aで採取した体液を含むサンプルをサンプル流路11a,11d,11eおよびポンプ10bによりセンサ5に送液し、前記センサ5によりサンプル中の生体成分を測定する生体成分測定装置1であって、サンプル流路11a,11d,11eのポンプ10bの上流側に設けられた第一流路切替バルブ9bと、この第一流路切替バルブ9bに接続され、この第一流路切替バルブ9bの切替操作により、較正液を、サンプル流路11a,11d,11eを通じてセンサ5に供給可能にする較正液流路11hとを含んで成る生体成分測定装置1であり、第一流路切替バルブ9bを切り替えて較正液流路11hからサンプル流路11d,11eを経てセンサ5に較正液を導入することを特徴とする生体成分測定装置1の較正方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体成分測定装置及び生体成分測定装置の較正方法に関し、詳しくは、医療支援装置等に使用する生体成分測定装置であって、生体成分測定装置に含まれるセンサだけでなく装置全体の較正を簡便に行える生体成分測定装置、更にはワンタッチで流路搭載基板を装着することができて作業性が向上し、しかも衛生的であり、センサだけでなく装置全体の較正を簡便に行うことのできる生体成分測定装置、及び患者の生体成分を測定する期間中に、装置全体の較正を簡便に行うことのできる生体成分測定装置の較正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療現場等で使用される生体成分測定装置として、例えば血液中の血糖値を測定するグルコース測定装置がある。このグルコース測定装置を組み込んだ医療装置として人工膵臓装置がある。人工膵臓装置の中でも、例えば、連続的あるいは間欠的に体液である血液中のグルコース等の体液成分を測定し、それによりグルコースやインスリンなどの薬液を体内に注入し、患者の状態をコントロールするクローズドループ制御を行う人工膵臓装置は、長時間の使用でも正確に安全に運転できることが重要である。具体的には、人工膵臓装置においては、4時間から一週間程度にわたる期間中、正確な測定値の得られることが重要であるとされている。正確で変動のない測定値を得るためには定期的にセンサの較正を行い、患者への正確な必要薬液注入量を算出することが、人工膵臓装置の安全性を保持する上で非常に重要である。
【0003】
ところが、例えば、人工膵臓装置における各種の流路系(この流路系は、通常、柔軟で弾力性のあるチューブで形成されるので配管系とも称される。)、特に、採取された血液をグルコースセンサに送液する配管の途中に設けられた扱きポンプにおける配管が経時変化してしまうことによりグルコースセンサからの出力値が不正確なものとなる場合、センサ自体が経時変化してしまってセンサからの出力データである測定値が不正確なものとなる場合がある。
【0004】
そこで、従来の人工膵臓装置にあっては、患者からの採血や患者への薬液の注入を定期的に一時中断してセンサの較正を行っている。具体的には、例えば患者の静脈に留置している留置針を静脈から取り外すなどして人口膵臓装置と患者とを分離した上で、人工膵臓装置におけるセンサの較正を行い、較正操作が完了すると、再び患者の静脈に留置針を刺し留め、その後に人工膵臓装置により患者の血糖値を測定し、測定された血糖値に基づいて決定される量の薬液を患者に注入している。
【0005】
患者からの体液採取を中止することなくセンサの較正を行うことのできる生体成分測定装置として、例えば特許文献1には、血液中の成分を連続測定するための血中物質モニター装置の発明が開示されている。この発明によれば、血管留置カニューレから血液を連続的に採取し、血中物質をセンサにより測定しており、血液の採取を中断することなく、センサ供給液をセンサのすぐ上流で血液サンプルから較正液に切り替えてセンサを較正して、その後すぐに元に戻して測定を再開している。較正している間は短時間なので採取した血液サンプルは廃棄ラインから廃棄している。特許文献2には、グルコース測定装置用等のセンサの較正方法の発明が開示されている。この発明においても、較正液は血液サンプルの流路の送液ポンプより下流のセンサに近い部位で切り替えて導入されることを前提にしている。関連するその他の発明として、特許文献3には血液サンプル等を複数の希釈率で希釈しながら測定する体液中の特定成分の測定方法の発明が、特許文献4〜6には、連続的な血糖値測定から特定の方法によるインスリンの注入量制御による血糖値制御装置や人工膵臓装置の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−152537号公報
【特許文献2】特開昭52−135795号公報
【特許文献3】特開昭58−198351号公報
【特許文献4】特開昭54−82885号公報
【特許文献5】特開昭55−21905号公報
【特許文献6】特開昭56−28765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような生体成分測定装置においては、センサの較正を迅速、簡便に行うことができるという利点がある。しかし、生体成分測定装置におけるセンサだけを較正しているのでは、センサ以外の要素の経時変化により正確な測定値を得ることができない場合がある。すなわち、従来の生体成分測定装置では、センサ以外の生体成分測定装置の各要素が経時変化することにより、測定値が変動する。ポンプやサンプル流路の変化によるサンプル流量の変化や、特にサンプルと希釈液との希釈比の変化等があった場合にはセンサのみを較正しても、生体成分測定装置による測定値の変動を避けることができない。
【0008】
そこで、この発明は、このような従来の問題点を解消し、装置全体の較正を簡便かつ確実に行い、正確に生体成分の測定が可能な生体成分測定装置の提供を課題としている。この発明の他の課題はまた、この生体成分測定装置に含まれる各種の流路を清潔かつ簡便に交換することができ、しかも正確に生体成分の測定が可能な生体成分測定装置を提供することである。この発明の更に他の課題は、生体成分測定装置全体の安全、かつ確実で簡便な較正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、
請求項1は、
体液採取装置で採取した体液を含むサンプルをサンプル流路及びポンプによりセンサに送液し、前記センサによりサンプル中の生体成分を測定する生体成分測定装置であって、サンプル流路のポンプ上流側に設けられた第一流路切替バルブと、この第一流路切替バルブに接続され、この第一流路切替バルブの切替操作により、較正液をサンプル流路を通じてセンサに供給可能にする較正液流路とを含んで成る生体成分測定装置」であり、
請求項1は、
「 体液採取装置に体液希釈液を導入する体液希釈液流路を含んで成る請求項1に記載の生体成分測定装置」であり、
請求項2は、
「 前記体液希釈液流路の途中に設けられた第二流路切替バルブと、この第二流路切替バルブに接続され、この第二流路切替バルブの切替操作により、体液希釈液流路内の体液希釈液を前記較正液と混合可能にする第二体液希釈液流路とを含んでなる前記請求項1又は2に記載の生体成分測定装置」であり、
請求項3は、
「 サンプル流路の体液採取装置と第一流路切替バルブとの間に、及び/又は前記第二流路切替バルブと体液採取装置との間に、流路切替バルブを介して接続され、フラッシング液を流通させるフラッシング液流路を含んで成る請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体成分測定装置」であり、
請求項5は、
「 前記フラッシング液は、所定濃度の生体成分を含有してなる前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体成分測定装置」であり、
請求項6は、
「 サンプル流路に設けた第一流路切替バルブの下流に接続した、サンプル流路内のサンプルを希釈するための第一希釈液流路を含んで成る請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体成分測定装置」であり、
請求項7は、
「 第一希釈液流路、又は第一希釈液流路とサンプル流路との合流部に接続した気体流路を含んで成る請求項6に記載の生体成分測定装置」であり、
請求項8は、
「 生体成分測定装置本体とこの生体成分測定装置本体に着脱可能な流路搭載基板とで形成され、体液採取装置で採取した体液を含むサンプルをサンプル流路及びポンプによりセンサに送液し、前記センサによりサンプル中の生体成分を測定する生体成分測定装置であって
前記流路搭載基板は、
生体成分測定装置本体に着脱可能に形成された基板と、
体液採取装置に接続可能であり、体液採取装置で採取した体液を含むサンプル中の生体成分を測定するセンサに接続可能であり、前記サンプルをポンプによりセンサに送液可能に前記基板に搭載されたサンプル流路と、
較正液タンクに接続可能であり、サンプル流路の前記ポンプ上流側に第一流路切替バルブを設けて接続され、かつ、前記較正液タンク内の較正液をサンプル流路内に送液可能に前記基板に搭載された較正液流路と、
を有して成ることを特徴とする生体成分測定装置」であり、
請求項9は、
「 前記基板は、
体液希釈液タンクに接続可能であり、かつ、体液採取装置に体液希釈液タンク内の体液希釈液を導入する体液希釈液流路を搭載してなる前記請求項8に記載の生体成分測定装置」であり、
請求項10は、
「 前記体液希釈液流路の途中に設けられた第二流路切替バルブと、この第二流路切替バルブに接続され、この第二流路切替バルブの切替操作により、体液希釈液流路内の体液希釈液を前記較正液と混合可能にする第二体液希釈液流路とを含んでなる前記請求項8又は9に記載の生体成分測定装置」であり、
請求項11は、
「 前記基板は、
フラッシング液タンクに接続可能であり、かつ、サンプル流路の体液採取装置と第一流路切替バルブとの間に、及び/又は第二流路切替バルブと体液採取装置との間に接続され、フラッシング液を流通させるフラッシング液流路を搭載してなる前記請求項8〜10のいずれか1項に記載の生体成分測定装置」であり、
請求項12は、
「 前記フラッシング液は、所定濃度の生体成分を含有してなる前記請求項8〜11のいずれか1項に記載の生体成分測定装置」であり、
請求項13は、
「 前記基板は、
希釈液タンクに接続可能であり、かつ、サンプル流路に設けた第一流路切替バルブの下流に接続した第一希釈液流路を搭載してなる前記請求項8〜12のいずれか1項に記載の生体成分測定装置」であり、
請求項14は、
「 前記基板は、第一希釈液流路、又は第一希釈液流路とサンプル流路との合流部に接続した気体流路を搭載してなる前記請求項8〜13のいずれか1項に記載の生体成分測定装置」であり、
請求項15は、
「 較正液タンクが体液採取装置よりも低い位置に設置されてなることを特徴とする前記請求項8〜15のいずれか1項に記載の生体成分測定装置」であり、
請求項16は、
「 請求項1〜16のいずれか1項に記載の生体成分測定装置の較正方法であって、第一流路切替バルブを切り替えて較正液流路からサンプル流路を経てセンサに較正液を導入することを特徴とする生体成分測定装置の較正方法」であり、
請求項17は、
「 請求項4〜7、11〜15のいずれか1項に記載の生体成分測定装置の較正方法であって、生体成分を採取する前に希釈液を第一希釈液流路からサンプル流路に導入して生体成分測定装置のゼロ点較正をする操作と、生体成分の測定中に前記フラッシング液をサンプル流路に導入する操作と、前記フラッシング液をセンサ内に導入させることなく第一流路切替バルブを切り替えて較正液流路内の較正液をサンプル流路を通じてセンサに導入する操作とを含む生体成分測定装置の較正方法」であり、
請求項18は、
「 請求項4〜7、11〜15のいずれか1項に記載の生体成分測定装置の較正方法であって、生体成分の測定中にサンプル流量よりも多いフラッシング液をフラッシング液流路からサンプル流路に導入する操作と、フラッシング液がサンプル流路及びセンサ内に導入された後にサンプル流路に設けた第一流路切替バルブを切り替えて較正液をセンサに導入する操作と、較正液をセンサに導入する前記操作中にフラッシング液をサンプル流路に導入する前記操作において導入したフラッシング液よりも少ないフラッシング液を第一流路切替バルブよりも上流のサンプル流路及び体液採取装置に導入してこの部分への体液の流入を防止する操作とを含む生体成分測定装置の較正方法である。
【発明の効果】
【0010】
この発明によると、測定値を較正するための較正液を供給する較正液流路が、サンプル流路のポンプ上流側に、第一流路切替バルブを介して接続されているので、生体成分測定装置に組み込まれているセンサのみを較正するのではなく、生体成分測定装置における各要素例えばサンプル流路、ポンプ、及びセンサ等の経時的変化に基づいて生じる誤差を較正することができるので、生体成分測定装置として常に正確な測定が可能である。つまり、この生体成分測定装置においては、使用開始後から時間が経過すると、センサから出力される出力値が変動して不正確な測定値が出力表示されるのであるが、較正液を流通させることにより、センサから出力される出力値が初期のセンサの出力値との乖離を明らかにすることができ、較正後におけるセンサからの出力値を補正して正確な測定値としてこの生体成分測定装置で出力することができる。
【0011】
この発明に係る生体成分測定装置例えば人工膵臓装置は、体液採取装置に体液希釈液を導入するための体液希釈液流路が設けられている。体液採取装置から採取された体液例えば血液にこの体液希釈液を混合すると、採取された体液をサンプル流路を通じてセンサに送液する間に、体液中の例えば血液が凝固するのが防止される。体液例えば血液の凝固が防止されることにより、例えばサンプル流路内に血栓が生じることにより測定値が、この生体成分測定装置による測定開始時における初期測定値に対して変動するといった現象が無視可能な程度に小さくなる。したがって、この発明によると、サンプル流路中を流通する体液例えば血液が凝固するのを防止するとともに、体液を体液希釈液で希釈したサンプルが円滑にサンプル流路中を流通させることができる。血液の凝固を防止するには、ヘパリン等の抗凝固剤を体液希釈液に含有させるとさらに好ましい。この発明によると、また、体液希釈液を体液採取装置に供給するので体液採取量を低減することができ、センサの出力可能範囲に測定成分の濃度を調整することができる生体成分測定装置を提供することができる。
【0012】
この発明に係る生体成分測定装置は、体液希釈液流路に第二流路切替バルブを介装し、この第二流路切替バルブに第二体液希釈液流路を結合している。そして、この第二流路切替バルブを切り替えることにより、体液希釈液流路内の体液希釈液を較正液流路内の較正液に混合することができる。較正液に体液希釈液を混合することにより、体液希釈液で希釈された較正液が、サンプル流路及びセンサに流通することにより、体液希釈液で希釈された濃度の較正液で較正データが得られる。したがって、この発明によると、濃度の異なる較正液で較正することにより、正確に較正された測定値を出力することのできる生体成分測定装置が、提供される。
【0013】
更にまた、第一流路切替バルブ及び第二流路切替バルブを同時に切り替えて、体液希釈液を第二体液希釈液流路を介して較正液流路内の較正液と混合し、較正液と体液希釈液との混合液を第一流路切替バルブを介してサンプル流路を通じてセンサに送り込むことにより、サンプル流路内に介装されるポンプ及び体液希釈液を送液するポンプにおける吸引吐出量の経時変化に基づくセンサにおける測定値の変動を較正することができる。体液希釈液流路に体液希釈液を送液するポンプ、サンプル流路にサンプルを送液するポンプがいずれも扱きポンプ又は蠕動ポンプ等の、弾性体で形成されたチューブとこのチューブを押しつぶす部材例えばローラ部材とで形成されている場合には、このようなポンプを運転する間に前記チューブの内径の変化等の経時変化が生じてポンプにおける吸引吐出量が経時変化する。このようなポンプにおける経時変化に基づくセンサで出力される測定値の変動が、第一流路切替バルブ及び第二流路切替バルブの同時切替により、較正される。
【0014】
この発明によれば、サンプル流路の体液採取装置と第一流路切替バルブとの間、及び/又は体液希釈液流路を分岐するように体液希釈液流路上に設けられている第二流路切替バルブと体液採取装置との間に接続したフラッシング液流路を設けているので、フラッシング液流路から導出されるフラッシング液がサンプル流路、体液採取装置、及びセンサ内等を洗浄してサンプルとともに血栓やゲル化した体液等を生体成分測定装置から排出することができる。したがって、較正操作開始時又は開始直前に、サンプル流路、体液採取装置、センサ内を洗浄することでサンプル中の血液などの体液の凝固や変質を防ぐことができ、較正終了後すぐに測定を再開することができる。また、較正操作中には、体液採取装置と第一流路切替バルブとの間のサンプル流路に、フラッシング液を導入しておくことで、血液などの体液が凝固するのを防止することができる。
【0015】
また、フラッシング液中に体液中の被測定成分と同じ被測定成分が所定濃度で含有されていると、フラッシング液をセンサに流通させることにより、センサのみの較正を行うことができる。センサのみの較正を行うことができると、サンプル流路及びその途中に介装されたポンプの経時変化に基づく測定値の変動を検出することができる。その結果、ポンプがサンプル流路の一部とそれをしごく扱きローラとで形成されている場合には、サンプル流路の経時変化が測定値を不正確なものにしていると判断することができ、サンプル流路を交換するべきであると、容易に判断されることができる。
【0016】
この発明においては、較正液流路の第一流路切替バルブ上流に逆止弁を設けるのが好ましい。逆止弁が設けられていると、生体成分測定装置の故障、不具合、誤作動、人為的な誤動作等により体液採取装置で採取したサンプルが較正液流路に浸入することを防止することができるとともに、生体からの不用な体液漏出も防止することができる。したがって、人体の安全を損ねる可能性を確実に防ぐことができる。
【0017】
この発明においては、体液希釈液流路に逆止弁を設けるのが好ましい。逆止弁が設けられていると、生体成分測定装置の故障、不具合、誤作動、人為的な誤動作等により体液採取装置で採取したサンプルが体液希釈液流路に浸入することを防止することができるとともに、生体からの不用な体液漏出も防止することができる。したがって、人体の安全を損ねる可能性を確実に防ぐことができる。
【0018】
この発明によれば、サンプル流路に設けた第一流路切替バルブの下流に接続した第一希釈液流路を設けているので、第一希釈液流路に希釈液、例えばリン酸緩衝液や生理食塩水等を流通させることにより、センサの測定可能範囲に測定成分の濃度を調整することができること、及び測定安定性の向上を通じて、測定感度及び精度を向上させることができる。リン酸緩衝液は、生体成分センサが例えばグルコースセンサである場合には、体液採取装置から採取される流体中のpHを調整して生体成分センサにおける正確な測定を確保する。また、希釈液の流速を大きくすること及び/又はこの希釈液に界面活性剤を含有させることにより、体液採取装置で体液を採取してから生体成分センサで測定するまでの時間短縮つまり時定数の低減が実現される。界面活性剤を含有する希釈液は、流体の流動性を向上させるほかに、体液と希釈液との混合を促進する作用も発揮する。
【0019】
この発明によれば、第一希釈液流路、又は第一希釈液流路とサンプル流路との合流部に接続した気体流路を設けているので、空気や窒素等の不活性な気体を第一希釈液流路とサンプル流路との合流部に送気することができる。したがって、サンプルと希釈液との混合効率が向上し、サンプル流路内のサンプルの滞留時間を短くできるので、採取した生体成分を迅速に測定できる。
【0020】
この発明の生体成分測定装置は、生体成分測定装置本体とこの生体成分測定装置本体に着脱自在に形成された流路搭載基板とを有する。流路搭載基板は、使い捨て部品として使用されることができる。流路搭載基板は、少なくともサンプル流路と較正液流路とが搭載される。この流路搭載基板に搭載されたサンプル流路の一端は、流路搭載基板の外部に存在する体液採取装置に着脱自在に形成され、またサンプル流路の他端は流路搭載基板の外部に存在するセンサに着脱自在に形成される。サンプル流路の途中に設けられる第一流路切替バルブもまた、この流路搭載基板に設置されている。この流路搭載基板に搭載された前記較正液流路もまた、この流路搭載基板に設置固定されている。この較正液流路の他端、つまり第一流路切替バルブに結合された一端とは反対側の端部は、この流路搭載基板の外部に存在する較正液供給手段例えば較正液タンクに着脱自在に、結合される。サンプル流路の一端と体液採取装置とを着脱自在に結合する構造、サンプル流路の他端とセンサとを着脱自在に結合する構造、較正液タンクと較正液流路の端部とを着脱自在に結合する構造は、液密に結合することができ、結合操作を簡単に行うことができる限り様々の構造を採用することができる。
【0021】
流路搭載基板に固定設置されるサンプル流路内に存在する液状のサンプルは、ポンプによりセンサに向けて移送される。このポンプは、小型で簡単な構造であるならば、この流路搭載基板に設置固定してもよいが、流路搭載基板に設置固定されるサンプル流路の一部と、生体成分測定装置本体に設置され、かつ前記サンプル流路の一部をしごくことのできる回転ローラとで形成されることもできる。流路の一部と回転ローラと共同して流路内の液体を一方向に移送することができるポンプを、この生体成分測定装置におけるポンプとして採用することができる。
【0022】
この流路搭載基板には、目的に応じて、前記サンプル流路及び較正液流路に加えて、体液希釈液流路、第二体液希釈液流路、フラッシング液流路、第一希釈液流路、及び気体流路を搭載し、これらを基板に固定しておくことができる。
【0023】
前記体液希釈液流路は、体液採取手段で採取される体液を希釈するために使用される体液希釈液を流通させる流路として機能する。この体液希釈液流路の一端は、流路搭載基板とは別体であり、場合によっては生体成分測定装置本体の一部となっている体液希釈液タンクに着脱自在に形成され、また体液希釈液流路の他端は、体液採取装置に、着脱自在に形成される。着脱自在にする端部構造は、サンプル流路及び較正液流路の端部構造と同様にすることができる。
【0024】
この体液希釈液を体液採取装置に供給する理由については既に説明したとおりである。
【0025】
この発明の生体成分測定装置は、生体成分測定装置本体に装着される流路搭載基板における基板に、前記サンプル流路及び較正液流路、更には目的に応じて、又は必要に応じて体液希釈液流路、第二体液希釈液流路、フラッシング流路、第一希釈液流路、及び気体流路を整然とまとめて配置固定しておくのが好ましく、各流路の端部と流路搭載基板の外部に存在する他の部材例えば体液採取装置、体液希釈液タンク、較正液タンク、センサ等とを結合する際の誤動作を起こし難く、しかも簡便に流路部分の取替えが可能であり、生体成分測定装置の使い勝手が非常によく衛生的でもある。
【0026】
この発明に係る生体成分測定装置においては、この生体成分測定装置が流路搭載基板とこの流路搭載基板が着脱自在に装着される生体成分測定装置本体とから形成されている場合、及びそうではない場合において、較正液タンクが体液採取装置よりも低い位置に設置しておくのが好ましい。較正液タンクが体液採取装置よりも低い位置に設置しておくと、較正液タンクから較正液を、第一流路切替バルブを通じてサンプル流路に供給する場合に、何らかの原因によりサンプル流路を逆流して較正液が体液採取装置に到達するのが、防止される。つまり、この発明の生体成分測定装置において較正液タンクと体液採取装置との配置関係を高低の位置関係に調整することにより、生体成分測定装置の故障や誤作動による生体内への較正液の浸入などの事故を防ぐことができる。
【0027】
この発明の較正方法によれば、センサの経時変化による測定値の変動は勿論、サンプル流路やポンプの経時変化、希釈液の流量変化等による変動も、一回の較正操作で合わせて較正してしまうので、その結果、装置全体の較正に要する操作も簡単で、時間も短縮でき、測定者としては好都合である。また、一般に、生体成分測定装置のような医療機器で使用される、体液等を流通するための流路の材質は、実績のある限定された材質しか使用できず、同時に安価であることが要求される。このような場合にも、この発明によれば、流路の経時変化を較正することができるので、これまでに実績のない材質を使用することができ、安価で安全性の高い材質を有する流路を幅広く選定できるという利点がある。また、生体成分測定装置の較正のための時間が短くなれば、連続測定における測定中断時間が短くなり、この発明の生体成分測定装置は長時間の手術中の血糖値測定などにもほとんど連続測定ができ好適である。
【0028】
この発明の較正方法によれば、生体成分を採取する前に希釈液を第一希釈液流路からサンプル流路に導入して生体成分測定装置のゼロ点較正をすることができる。一般に、生体成分の測定中のゼロ点の変動はわずかなので生体成分を測定する前に一回ゼロ点較正をしておけば多くの場合、測定終了までゼロ点較正を必要としない。この場合、ゼロ点較正をするためにサンプル流路のセンサ下流に接続するように、通常に設置されている流路及びこの流路切替のための流路切替バルブを省略することができる。また、生体成分の測定中にフラッシング液をサンプル流路に導入し、前記フラッシング液がセンサ内に導入される前にサンプル流路上に設けたサンプルと較正液との第一流路切替バルブを切り替えて較正液をセンサに導入して生体成分測定装置を較正することができるので、較正にかかる全体の時間が短縮できる。
【0029】
また、このフラッシング液は、体液中に含まれる被測定成分たとえばグルコースを所定濃度で含むことができる。このように所定濃度の被測定成分を含有するフラッシング液を使用すると、センサのみの較正を行うことができる。センサのみの較正を行うことができると、既に説明したようにサンプル流路の交換の必要性等を判断することができる。つまり、この生体成分測定装置のメンテナンスを的確に行うことができる。
【0030】
この発明の較正方法によれば、生体成分の測定中にサンプル流量よりも多いフラッシング液をフラッシング液流路からサンプル流路に導入する操作(第一工程)を含むので、フラッシング液がサンプル流路、体液採取装置、及びセンサ内等を洗浄してサンプルとともに血栓やゲル化した体液等を生体成分測定装置から排出することができるとともに、フラッシング液が測定成分を含まないものであれば、体液採取装置と生体とが接続した状態でもゼロ点較正をすることができる。また、フラッシング液がサンプル流路及びセンサ内に導入された後にサンプル流路上に設けたサンプルと較正液との第一流路切替バルブを切り替えて較正液をセンサに導入して生体成分測定装置を較正する操作(第二工程)を含むので、特定の測定成分を含む較正液を使用することにより、特定の測定成分濃度におけるセンサの測定値を得ることができる。この測定値と第一工程において得られた測定値とにより検量線を作って生体成分測定装置全体として較正をすることができる。前記第二工程としての操作中に前記第一工程において導入したフラッシング液よりも少ないフラッシング液を第一流路切替バルブ上流のサンプル流路及び体液採取装置に導入してこの部分への体液の流入を防止しておく操作(第三工程)を含むので、較正操作中に体液採取装置と第一流路切替バルブとの間のサンプル流路に、血液などの体液が凝固するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の体液希釈液流路を備えた生体成分測定装置の態様例を示すフロー図である。
【図2】図2は、本発明のフラッシング液流路を備えた生体成分測定装置の態様例を示すフロー図である。
【図3】図3は、本発明の体液希釈液流路及び第一希釈液流路を備えた生体成分測定装置の態様例を示すフロー図である。
【図4】図4は、本発明のフラッシング液流路、体液希釈液流路、第一希釈液流路及び気体流路を備えた生体成分測定装置の態様例を示すフロー図である。
【図5】図5は、本発明の流路配置基板が装着された本発明の生体成分測定装置の態様例を示すフロー図である。
【図6】図6は、従来の生体成分測定装置の例を示すフロー図である。
【図7】図7は、チューブポンプの構造を示す模式図である。
【図8】図8は、ポンプの構造を示す模式図である。
【図9】図9は、混合器構造を示す断面図である。
【図10】図10は、混合器の構造を示す断面図であり、図9とは90度異なった面のからの断面図である。
【図11】図11は、ピロータイプの往復動ポンプの構造を示す模式図である。
【図12】図12は、図11に示した往復動ポンプの上から見た模式図である(押さえ板21eは図示せず。)。
【符号の説明】
【0032】
1:生体成分測定装置
2:被測定体
3a:体液採取装置
3b:較正液吸引装置
4a:体液希釈液タンク
4b:希釈液タンク
5:センサ
6:排液タンク
7:センサ信号演算出力装置
8:較正液タンク
9a:第二流路切替バルブ
9b:第一流路切替バルブ
9c,9d,9e:流路切替バルブ
10:ポンプ用チューブ
10a,10b,10c,10d,10e,10f:ポンプ
11a:サンプル流路
11b,11c:体液希釈液流路
11d,11e:サンプル流路
11f:排液流路
11g:第二体液希釈液流路
11h:較正液流路
11i,11j:第一希釈液流路
11q:第二希釈液流路
11k,11m,11r:フラッシング液流路
11n:気体流路
11o:サンプル流路
11p:排ガス流路
12:センサ信号伝送路
13:フラッシング液タンク
14,14a,14b,14c,14d:逆止弁
15:混合器
15a:混合器本体
15b:内部流通空間
15c:凹凸部
16:気液分離器
17:流路合流器
18:ヒーター
19:流路配置基板
20a:ローラ
20b:回転軸
20c:軸
20d:押さえ板
21:ポンプ
21a:押圧子
21b:偏芯回転カム
21c:回転軸
21d,21e:押さえ板
21f:開口部
21g:第一ポペットバルブ
21h:第二ポペットバルブ
21i:ピロー型に成形したチューブ
22:ピロータイプの往復動ポンプ
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
この発明は、人体をはじめとする生体内の体液の各種生体成分を測定・分析する生体成分測定装置の改良に関するものである。生体内の体液とは、例えば血液、尿、リンパ液、髄液、あるいはこれらの混合物等であり、生体成分の定性ないし定量分析を必要とする生体成分としては、例えばグルコース、尿素、尿酸、乳糖、ショ糖、ラクテート(乳酸)、エタノール、グルタミン酸、アンモニア、クレアチニン、酸素等が挙げられる。なお、医療行為を実施するときには場合により体液中のpH値、酸素濃度等を測定する必要がある。なお、この発明においては、生体成分なる概念に体液のpH値、酸素濃度等を含める。
【0034】
生体成分測定装置は、医療行為等を行う場合に生体の状態を正確に把握するために必要な医療支援装置である。このような医療支援装置として、例えば血液中の血糖値を測定して、その結果に基づいてインスリンを生体に供給する人工膵臓装置、透析を行う人工透析装置、生体の体液中に含まれる尿素の濃度を測定する尿素濃度計、生体の体液中に含まれる尿酸の濃度を測定する尿酸濃度計、体液中の乳糖、蔗糖等の糖分を測定する糖分測定装置、ラクテート等を測定する乳酸測定装置、グルタミン酸濃度を測定するグルタミン酸濃度計、アンモニア濃度を測定するアンモニア濃度計、クレアチニンの濃度を測定するクレアチニン濃度計等を挙げることができる。
【0035】
これら各種の生体成分測定装置は、医療行為を的確に行うために必要である。この発明は、このような生体成分測定装置の稼働を効率的かつ衛生的に行うことのできる。この生体成分測定装置で生体成分を測定するセンサは、生体成分の種類に応じて各種のセンサがある。センサとしては、例えば、酵素を用いた酵素センサ、微生物を用いた微生物センサ、酵素と微生物とを用いたハイブリッド型センサ等のバイオセンサが挙げられる。そして、このようなバイオセンサにおいて利用される酵素又は微生物は被測定対象成分、つまり生体成分に応じて選択される。例えば、被測定対象成分がグルコースであるときにはβ−D−グルコースオキシダーゼ又はPseudomonas fluorecens、被測定対象成分が尿素であるときにはウレアーゼ、被測定対象成分が尿酸であるときにはウリカーゼ、被測定対象成分がラクテートであるときにはラクテートオキシダーゼ、被測定対象成分が乳糖であるときにはラクターゼ又はβ−ガラクトシダーゼ、被測定対象成分がエタノールであるときにはアルコールオキシダーゼ又はTrichosporon brassicaes、被測定対象成分がグルタミン酸であるときにはグルタメートデヒドロゲナーゼ又はEscherichia coli、被測定対象成分がアンモニアであるときには硝化細菌等を選択することができる。
【0036】
グルコース測定の場合、センサとして例えばオスミウムポリマーをカーボン電極の上に塗布した後、室温で乾燥させ、その上に酵素溶液を重層し、グルタルアルデヒドのような架橋剤を用いて、固定化してなるバイオセンサを挙げることができる。このバイオセンサを採用すると、オスミウムポリマーにはペルオキシダーゼ酵素が固定化されているので、過酸化水素と酸化反応が起り、引続きオスミウムポリマー、ペルオキシダーゼと電極間で還元反応が起る。この時の反応条件は銀塩化銀電極に対して0mVである。よって、酸化反応系の酵素としてグルコースオキシダーゼを用いることにより、簡単にグルコースの検出及び濃度測定を行うことができる。グルコースセンサとしては、上記の外に、オスミウム(II)−ビピリジン錯体を利用したグルコースセンサ、ルテニウム錯体を利用したグルコースセンサ、トリス型オスミウム錯体導入ポリピロール修飾電極を有するグルコースセンサ等を採用することもできる。これら各種のグルコースセンサの中でも、オスミウムポリマーを用いた前記バイオセンサが好ましい。このバイオセンサである好適なグルコースセンサは、白金、銀又はカーボン等の作用極と、オスミウムポリマー層にペルオキシダーゼを含有させた酵素膜層とを備えて成る薄膜センサが好ましい。
【0037】
この発明に係る生体成分測定装置においては、測定可能な生体成分は一種であっても二種以上であってもよい。測定する生体成分が二種以上であるときには、生体から採取した体液を移送する生体成分測定流路の途中に二種以上のバイオセンサ等を接続すればよい。また、複数の生体成分を測定するときには、前記生体成分測定流路を複数に分岐させ、各分岐流路に一つ又は二つ以上のバイオセンサ等を接続させることもできる。なお、生体から採取した体液とは、採取したままの体液、例えば血液、尿、リンパ液、髄液等でもよく、生体から採取した体液と他の液、例えば生理食塩水、希釈液、緩衝液等との混合液でもよい。
【0038】
この発明の生体成分測定装置の構成について、図1に示したフロー図を参照にして説明する。この発明の生体成分測定装置1の基本的な構成は、体液採取装置3a、センサ5、体液採取装置3aからセンサ5に体液を移送するためのサンプル流路11a,11d,11e、サンプル流路11d,11eの間にあってサンプル流路11a,11d,11e中の体液を含むサンプルを強制的に移送するポンプ10b、較正液を入れてある較正液タンク8、較正液をサンプル流路11dに導くための較正液流路11h、及びサンプル流路11aと較正液流路11hとをサンプル流路11dに接続し採取したサンプルと較正液とを切り替えてサンプル流路11dに流通できるようにする第一流路切替バルブ9bを含んでいる。なお、この発明では、較正液タンク8は、タンクと表現しているがバック、缶、箱など液体を収納する容器を含むものである。後述の体液希釈液タンク、希釈液タンク、排液タンク、フラッシング液タンクなども同じように収納容器一般を指す言葉として使用している。
【0039】
センサはそれ自身で測定結果を処理して保存したり、表示・出力したりする機能を備えていてもよいが、図1に示すようにセンサ信号伝送路12によりマイクロコンピュータのようなセンサ信号演算出力装置7に信号を送り、センサ信号演算出力装置7により測定結果を処理して保存したり、表示・出力したりさらに結果を伝送したりすることが好ましい。また、現実の生体成分測定装置においては、体液を含むサンプル等のセンサでの測定後の排液は、センサ5から排液流路11fにより排液タンク6に導き衛生的に処理することが好ましい。通常、採取した体液の変化を防ぐため、体液採取装置3aには、抗凝血剤液等の体液希釈液を導入して、採取した体液を採取と同時に体液希釈液で希釈して測定用のサンプルとすることが好ましい。図1に示すように、体液希釈液タンク4aを設け、体液希釈液流路11c,11b及びポンプ10aにより体液希釈液を体液採取装置3aに導入してやればよい。この際、ポンプ10aの下流である体液希釈液流路11cの下流側に第二流路切替バルブ9a及びこれに接続した第二体液希釈液流路11gを設けて、体液希釈液を較正液タンク8から較正液流路11hに吸引するために設けた較正液吸引装置3bに体液希釈液を導入できるようにすることが好ましい。較正液吸引装置3bは体液採取装置3aと類似の構造をしており、体液採取装置3aにおける体液と体液希釈液との希釈比と、較正液吸引装置3bにおける較正液と体液希釈液との希釈比とが同じになるような構造が好ましい。通常は、較正液吸引装置3bとして希釈機能付きカテーテルなどの体液採取装置3aと同じものを使用すれば上述の希釈比同士も同じにできる。
【0040】
図1に示した生体成分測定装置1による生体成分の測定、及び較正方法について説明する。まず最初に測定可能な状態の生体成分測定装置1を準備し、第一流路切替バルブ9bは、サンプル流路11aとサンプル流路11dとを開通の状態として、較正液流路11h側は遮断しておく。なお、この操作は第一流路切替バルブ9bとして三方弁を使用すれば容易にできる。同様に、第二流路切替バルブ9aの状態としては、体液希釈液流路11bと体液希釈液流路11cとを開通して、第二体液希釈液流路11g側は遮断しておく。そして、ポンプ10a,10bを作動させて、体液希釈液を体液採取装置3aに供給しながら体液採取装置3aからサンプルを採取してセンサ5に導く。この際、希釈液供給量より体液採取装置3aからサンプル流路11aに導かれるサンプル量が多くなるように、ポンプ10a及びポンプ10bの送液量を調整する。サンプル流路11aに導かれるサンプル量が希釈液供給量以下になると体液採取装置3aから体液は採取できなくなる。なお、体液希釈液としては、生体に悪影響がなく、センサの測定を妨害せず、体液を変質させたり凝固させたりしない液体であればどのようなものでも良いが、生理食塩水あるいは、リンゲル液が好適である。少量であれば蒸留水、リン酸緩衝液なども使用できる。さらに、カテーテル先端などで血液あるいは体液がゲル化しないようにする必要があるため抗凝固剤が前記リンゲル液、生理食塩水、蒸留水に混合された液も好適である。抗凝固剤としては、ヘパリン、メシル酸ナファモスタット、ウロキナーゼなどがある。
【0041】
このようにして、採取された体液中の生体成分が測定され、このまま測定を続ければ連続的に測定が可能である(なお、採取された体液、又はこの採取された体液を希釈液で希釈した溶液をサンプルと呼ぶことがある。)。例えば、血糖値測定装置では1〜数日間の測定が可能である。しかし、血糖値測定センサをはじめとする生体成分測定用のセンサは、上述のように酵素や微生物を利用したバイオセンサが多く、数時間から数十時間で較正をしないと、正しい測定値が得られないことが多い。また、サンプル流路や希釈液流路などの流路及び流体移送のためのポンプは、衛生上の観点からいわゆるディスポーザブルタイプのものが多く、塩ビチューブやポリエチレンチューブなど安価なチューブが使われる場合が多い。これらの安価なチューブ等で作られた流路やポンプは、使用中の流路の太さ特に流路の内径つまり流通断面積等の経時変化、測定時の使用温度の変化、ポンプ性能の変化等によりサンプル量の流量変化や希釈比の変化が起こる虞がある。このようなサンプルの流量変化や希釈比の変化は、センサの較正だけでは対応できない。そこで、本発明においては、較正液をできるだけ体液採取装置3aに近いサンプル流路11aから導入して、サンプル流路、体液希釈液流路、ポンプ10b,10a及びセンサ5をまとめて全体として較正してしまうことにより、生体成分測定装置1としての正確な較正をすることができる。したがって、長時間使用した場合に、流路の太さ特に流路の内径つまり流通断面積等が変化してしまうような材質で作られた流路を使用することが可能となる。一般に、生体成分測定装置のような医療機器で使用される、体液等を流通するための流路の材質は、実績のある限定された材質しか使用できず、同時に安価であることが要求される。このような場合にも、この実施形態によれば、流路の経時変化を較正することができるので、これまでに実績のない材質を使用することができ、安価で安全性の高い材質を有する流路を幅広く選定できるという利点がある。このため、サンプル流路11aと較正液流路11hとの第一流路切替バルブ9bは、体液採取装置3aの出口付近のサンプル流路11aに配置することが好ましい。さらに、体液採取装置3aに体液希釈液を導入している場合は、較正の際、第二流路切替バルブ9aにより体液採取時と同じ量の体液希釈液を較正液吸引装置3bに導入して、較正液の体液希釈液による希釈比を体液の希釈比と同じにすると較正が簡単で好都合である。
【0042】
また、この発明の生体成分測定装置1は、体液採取装置3aをそれ以外の生体成分測定装置1を構成する装置・部品など、例えば体液希釈液タンク4a、較正液タンク8、センサ5及び排液タンク6より高い位置に配置して使用することが好ましい。
【0043】
実際の体液採取操作中において、体液採取装置3aと較正液タンク8との間はチューブポンプ等により遮断されていないため、生体よりも較正液タンク8が高い位置にあると、流路切替バルブが完全に流路を切り替え終わっていない間、あるいは流路切替バルブ等に作動不良が起こった場合、較正液が重力差によってフリーフローを起こし、生体内に流入する虞がある。較正液は、生体成分と同じ成分、例えばグルコース濃度測定では生体内と同程度の濃度をもつグルコース溶液であるため生体への危険性は小さいが、本来滅菌を必要としないものであるため、生体内へ較正液が流れ込む場合は、感染症を引き起こしたりする可能性がある。これを防ぐために較正液タンク8を体液採取装置3aより下部に配置しておくことが好ましい。現実的には体液採取対象である人体等を乗せたベッド等より下に較正液タンク8を置いておくことが好ましい。通常、ベッドの高さは45cm程度なので較正液タンク8の液面高さを床から45cm以下にすればこのような配置は確保できる。
【0044】
すなわち、生体成分測定装置1、特に較正液タンク8より上部で体液採取装置3aを生体に取り付けて体液を採取したり、生体成分測定装置1の較正を行ったりすることが好ましい。較正液は生体中に逆流すると生体に悪影響がある虞があるので、生体内の体液と体液採取装置3a中の液体とが相互移動できる可能性のある状態においては、較正液タンク8は、体液採取装置3aを生体に取り付ける際、較正液タンク8は体液採取装置3aより下部に配置し、サンプル流路11a、第一流路切替バルブ9b及び較正液流路11h等に誤作動があったり、人為的な誤動作があっても、較正液タンク8内の較正液が重力により生体内に流入し難いようにすることが好ましい。ただし、必ず体液採取装置3aを較正液タンク8の液面より上部に設置しなければならない訳ではなく、体液採取装置3aが生体に接続される部位における、血液等の体液の圧力ヘッドと位置ヘッドとの和が較正液タンク8の液面の位置ヘッドより大きければ、較正液が生体内へ流れ込む虞はない。したがって、例えば、体液採取装置3aの接続される部位が抹消静脈である場合は、抹消静脈の圧力は約18mmHgであるので、較正液タンク8の液面高さが体液採取装置3aが生体に接続される部位よりも約240mm高い位置とすることも可能である。動脈に体液採取装置3aを接続した場合には、抹消静脈の圧力よりも動脈の圧力の方が高いので、さらに高い位置に較正液タンク8を設置することが可能となる。
【0045】
なお、排液タンクには、排液流路からタンク内の液面へ排液が自然に滴下するようにしておき、液面下に排液流路が入り込んでいない状態にしておき、排液が排液流路からサンプル流路を経てサイフォン現象等で逆流しない構造にすることが好ましい。また、各流路に備えられるポンプは逆流防止機能のあるタイプのポンプが好ましい。例えば、チューブポンプや蠕動ポンプなどの逆流防止機能のあるポンプが好ましい。このようにして各流路内の流体の異常な流動による生体内への各流路内の液体の逆流を防ぎ、較正タンク等の生体成分測定装置に備えたタンク内への予期せぬ流体の浸入を押さえることができる。
【0046】
図2に示す本発明の生体成分測定装置の例は、図1に示す例で説明した生体成分測定装置にフラッシング液流路11mを追加して、サンプル流路11a及び体液希釈液流路11bにそれぞれ流路切替バルブ9c及び流路切替バルブ9eを介してフラッシング液流路11mを接続している。さらに、較正液流路11h,体液希釈液流路11b,及びフラッシング液流路11mにそれぞれ逆流防止用の逆止弁14a,14b,14cを備えている。図1に示す態様の生体成分測定装置においては、装置の較正中も体液採取装置3aを生体に取り付けたままにしておくと、体液採取装置3a及びサンプル流路11a内には体液を含むサンプルが残ったままになっている。このような状態で、サンプルが滞留していると、サンプル中の体液、例えば血液等が凝固する虞がある。特に希釈液を使用していなかったり、希釈液の希釈量が少ない場合はサンプル中の成分の凝固は起こり易い。この図2に示す発明の態様では、このようなサンプル中の体液の凝固や変質を防ぎ、較正が終了したらすぐに測定が再開できるように、較正操作開始時又は開始直前に、体液採取装置3a及びサンプル流路11a内を洗浄することを目的にフラッシング液の導入設備を設けている。フラッシング液の導入設備は、フラッシング液タンク13、フラッシング液送液用のポンプ10d、フラッシング液流路11k,11m、及び流路切替バルブ9c、9e並びに好ましくは逆止弁14cを含んでいる。なお、原理的には、フラッシング液送液用のポンプ10dをチューブポンプや蠕動ポンプのような逆流防止機能付きのポンプとすれば、流路切替バルブ9c、9e及び逆止弁14cは設置しなくても、サンプル流路側や体液希釈液流路側からフラッシング液流路側への逆流は起こらないので、これらを省くこともできる。しかし、フラッシング液流路やフラッシング液送液用のポンプ10dに不具合がある場合には、3方弁の機能のある流路切替バルブ9c、9e及び逆止弁14cは有効に逆流防止機能を発揮する。
【0047】
フラッシングをはじめる際には、ポンプ10dを作動し、流路切替バルブ9c及び/又は流路切替バルブ9eを切り替えることにより、フラッシング液タンク13中のフラッシング液が、フラッシング液流路11kを通ってポンプ10dによりフラッシング液流路11mに導かれ、逆止弁14cを通り流路切替バルブ9c及び/又は流路切替バルブ9eからサンプル流路11a及び/又は体液希釈液流路11bに導入される。導入されたフラッシング液の一部はサンプル流路を通ってセンサに到達し、さらに排液流路を通って排液タンクに排出される。また、一部のフラッシング液は体液採取装置を通って生体内へ流入する。このようにして、フラッシング液でサンプル流路、センサ内、体液採取装置などの流路等を洗浄して、サンプルとともに血栓やゲル状化した体液などを生体成分測定装置から排出する(この操作をクロッティング除去と称する。)。そして、サンプル流路11a、センサ内、及び体液採取装置3a内がフラッシング液で満たされ、生体成分がサンプル流路11a、センサ内、及び体液採取装置3a内で凝固する虞がなくなれば、第一流路切替バルブ9b,第二流路切替バルブ9aを切り替えて較正液流路11hからサンプル流路11d及びその下流に較正液を導入して生体成分測定装置1の較正を行う。なお、流路切替バルブ9c及び流路切替バルブ9eは、通常の生体成分の測定中はサンプル流路11a及び体液希釈液流路11bとフラッシング液流路11mとを遮断していることが好ましい。
【0048】
また、センサは、フラッシングによるほかに、較正液の流通により洗浄されることができる。フラッシングによる洗浄の終了後に、第一流路切替バルブ9bと第二流路切替バルブ9aを切り替えて、較正液タンク8に流通可能な状態にすると、サンプル流路11aはフラッシング液で満たされた状態で保持されることになる。この状態で、フラシング液送出用のポンプ10dが停止しても、一般的に言われている生食ロックと同じ状態になっているので、クロッティングが防止される。フラッシング液送出用のポンプ10dを駆動停止することなく、徐放例えばごく少量の流量で送出すると、さらにクロッティング発生の可能性を低下させることができる。
【0049】
較正操作中は、フラッシング液の流量はクロッティング除去時よりも少なくすることが好ましい(この状態のフラッシング液の導入操作をクロッティング防止という。)。例えば、通常の人工膵臓装置用の生体成分測定装置では、クロッティング除去では、5〜500ml/時、好ましくは100〜300ml/時のフラッシング液を1〜60秒程度、好ましくは3〜20秒程度導入するが、クロッティング防止時は0.5〜60ml/時、好ましくは1〜20ml/時で導入しておくことが望ましい。マイクロマシン化した生体成分測定装置を採用する場合には、流路内のクロッティング除去やクロッティング防止ができれば、さらに少量のフラッシング液の導入でもよい。なお、流路切替バルブ9cから第一流路切替バルブ9bまでの間のサンプル流路11aにサンプルが残っていても体液成分等の凝固の心配がない場合は、フラッシング液をサンプル流路11a及び体液採取装置3aに導入すると同時に較正をはじめてもよい。通常、フラッシング液は生理食塩水のように生体内に浸入しても生体に害のないものを用いればよい。また、できるだけ生体内にフラッシング液を浸入させたくない場合は、サンプル流路11a及び体液採取装置3aがフラッシング液で満たされた後はフラッシング液の導入を停止してもよい。なお、フラッシング液としては、生体内に浸入しても悪影響がなく、体液やサンプルを変質させたり凝固させたり、センサの測定を妨害したりしない液体であればどのようなものでも良いく、例えば生理食塩水あるいは、リンゲル液が好適に使用できる。少量であれば蒸留水でも問題ない。また、それらにヘパリン、フサン、ウロキナーゼなどの抗凝固剤を混合した液も使用に適している。抗凝固剤は、救急集中治療時などの不安定な状態の人体に対しては抗血栓性メカニズムに影響をあたえ、逆に血液、体液が凝固しやすくなる場合があるので、抗凝固剤を使用しないことが好ましい。
【0050】
逆止弁14a,14b,14cの作用について説明する。これらの逆止弁は生体成分測定装置の故障、不具合、誤作動、人為的な誤動作等により体液採取装置3aで採取したサンプルが、予期しない部分に浸入することを防ぐものである。逆止弁14a、14bは、バルブ9a、9bに較正液流路11hを装着していない状態でも、サンプルが較正液タンク8に逆流することを防止している。逆止弁14bはサンプルが体液希釈液タンク4aに逆流することを防止している。逆止弁14cはサンプルがフラッシング液タンク13に逆流することを防止している。これらの逆流防止の効果は、それぞれのタンク内の液体を汚染から防ぐだけでなく、生体からの不用な体液漏出を防いでいる。特に、生体として人体を対象とした場合は、これらの逆止弁を設ける目的は、人体の安全を損ねる可能性を確実に防ぐことにある。流路を組み立てたり、流路切替バルブを操作したりする際に誤操作をしたり流路や機器に不具合が合ったりすると、人体の方が較正液タンクをはじめとする生体成分測定装置より高い位置あると、意図しない人体からの脱血などの体液喪失の虞があり、これを防ぐために逆止弁は有効である。また、第一流路切替バルブ9b、第一流路切替バルブ9aはバルブの構造によっては、バルブの切替時に全ての流路が開放状態となる場合がある。このような場合にも、逆止弁14a,14bなどが設置されていれば、逆流が防止される。なお、この実施形態においては設置されていないが、サンプル流路11a,11d,11e,11o及び排液流路11fなどのサンプルが流通する流路にも逆止弁を設置することができる。このような逆止弁を設けることにより、生体からの不用な体液漏出を防止することができるとともに、サンプルが、生体、較正液タンク8、体液希釈液タンク4a、フラッシング液タンク13、又はセンサ5に逆流することを防止できる。
【0051】
図3に例示する本発明の生体成分測定装置は、サンプル流路11e中に希釈液を導入してセンサの測定範囲の拡大や測定安定性の向上を通じて、測定感度及び精度を向上させることができる。また、流速を大きくすることで、センサに到達する時間を短くすることが可能になるため、時間遅れを少なくすることができる。これは、測定結果を利用して薬液を注入するようなフィードバック制御を行う人工膵臓のような装置においては、制御の安定性を確保することにつながるため安全に大きく寄与する。本発明の生体成分測定装置は、図1に示した生体成分測定装置に、希釈液タンク4b、希釈液タンク4bから希釈液をポンプ10cに導く第一希釈液流路11i、希釈液タンク4b中の希釈液をサンプル流路11e中に圧送するポンプ10c、及びポンプ10cからサンプル流路11eに希釈液を移送するための第一希釈液流路11jを付加している。なお、希釈液はサンプル送液用ポンプ10bの下流のサンプル流路11eに導入することが好ましい。この生体成分測定装置においては、センサ感度及び精度を最もよい状態にするような所望のサンプル濃度になるように、希釈液をサンプル流路11eに供給することができる。希釈液は、サンプルのpHを安定させたり、サンプル温度を一定にしたり、センサ中でのサンプルからのガス発生を防いだり、サンプルの変質を防いだりすることができる。希釈液としては、センサの測定を妨害せず、サンプルの変質をさせない液体であればどのようなものでも良いが、例えば生理食塩水、リン酸緩衝液、上述の体液希釈液などを用いればよい。リン酸緩衝液は希釈されたサンプルの電荷移送能力を高める作用があり、センサの精度を向上できる場合があり好適な希釈液とすることができる。希釈液は界面活性剤を含むことがある。界面活性剤を含有する希釈液は、サンプルの流動性を向上させるほかに、サンプルと希釈液との混合を促進する作用も発揮する。サンプルの流動性の向上により体液採取装置で体液を採取してから生体成分センサで測定するまでの時間短縮つまり時定数の低減が実現される。
【0052】
例えば、本発明の生体成分測定装置による血糖値測定においては、希釈液は、サンプル流路11eにより移送されるサンプルを希釈することができ、更に、センサ5に供給されるサンプルのpHを一定に維持することのできる液、例えばリン酸緩衝液のような緩衝液が好ましい。希釈液として緩衝液を使用すると、緩衝液により試料液のpHが一定に維持されるので、pHに対する感度の鋭敏なグルコースセンサで安定した血糖値測定を行うことができる。また、温度を一定にした比較的多量の希釈液を使用すれば、希釈液で希釈されたサンプルは、安定した温度で迅速にセンサに導入でき、精度よく血糖値測定ができる。
【0053】
図4に例示した生体成分測定装置は、図2に示した生体成分測定装置と図3に示した生体成分測定装置とを組合せ、さらに希釈液を導入したサンプル流路11eにおいて、サンプルと希釈液との混合を完全なものとするために、第一希釈液流路、又は第一希釈液流路とサンプル流路との合流部に混合促進用の気体、たとえば空気を導入できるように気体流路を接続した態様である。そして、サンプル流路11eの混合部には、混合器15を、その下流には気液分離器16を配置して、混合器15及び気体導入による撹拌効果を発揮させている。撹拌、混合が終わったサンプルからは気液分離器16により気体を分離し排ガス流路11pを介して排ガスタンク6へと除去し、均一混合されたサンプルのみがセンサに送られる。なお、余剰のサンプルがある場合は、余剰のサンプルは気液分離器16から排ガス流路11pを通って排ガスタンク6へと排出される。このようにサンプルが希釈液と完全に均一混合されてからセンサ5に導入されれば、センサ5による測定の安定性がまし、測定感度や測定精度はさらに向上する。なお、センサ5により測定され終わったサンプルは、排液流路11fからポンプ10bと10cの流量を足し合わせた流量よりも低い流量に設定されたポンプ10fにより吸引されて排液タンク6に排出される。なお、第一希釈液流路にも体液希釈液流路等と同様に逆止弁14dを設けておくことが好ましい。
【0054】
図5は、図4に示した態様の生体成分測定装置に流路配置基板を配置した態様例である。図5の態様例においては、流路配置基板19にはサンプル流路、体液希釈液流路、第一希釈液流路、第二希釈液流路、排液流路、及び気体流路などの各種の流路、並びにこれらの流路上に存在するポンプ用チューブ10、流路合流器17、混合器15及び気液分離器16が配置されている。この態様の本発明の流路配置基板19には、少なくともサンプル流路の一部が配置されている。この流路配置基板19には、上述のようにサンプル流路11d,11e,11o(図4を参考にすること)、体液希釈液流路11c、第一希釈液流路11i,11j、第二希釈液流路11q、排液流路11f、及び気体流路11nなどの生体成分測定装置に使用する各種の流路、並びにこれらの流路上に存在するポンプ用チューブ10、流路合流器17、混合器15及び気液分離器16を配置することが好ましい(流路等の符号は図4又は図5も参照する。)。
【0055】
図5に示した態様例の生体成分測定装置についてさらに説明する。体液採取装置3aから採取された体液は、体液希釈液タンク4aから供給された体液希釈液により希釈されて、サンプル流路11a,11d,11eを通ってセンサ5に導かれる。その間に、サンプル流路11eには希釈液及び気体流路からの気体が導入され、混合器15によりサンプルと希釈液とが完全に混合される。そして、気液分離器16により気体と過剰の希釈されたサンプルは排出され、適正な量のサンプルがセンサ5に導かれる。測定が終わったサンプルは、センサ5から排液流路11fから排液タンク6に導かれる。測定に代えて較正を行う際には、上述のようにまずフラッシングタンク13のフラッシング液でサンプル流路及びセンサをフラッシングした後、第一流路切替バルブ9b、第二流路切替バルブ9aを較正液を導くように切り替えて生体成分測定装置を較正する。この際、ゼロ点の較正をするには第二希釈液流路11qから希釈液のみをセンサ5に導入してセンサ指示値を計測してやればよい。別のゼロ較正の方法としては、体液成分の採取前に希釈液をセンサに供給し、希釈液がセンサ流路を満たす十分な量供給されていれば、それでゼロ較正が可能となる。一般に、体液成分の測定中のゼロ点の変動はわずかなので、体液測定前に一回ゼロ較正しておけば多くの場合、測定終了までゼロ較正を必要としない。この場合、第二希釈液流路11q及びこの流路切替のための流路切替バルブを省略することができる。また、フラッシング液を活用して、ゼロ較正を行うこともできる。通常フラッシング液には体液測定成分は含まないので、生体成分測定装置の運転中にフラッシングポンプを起動してサンプル流路のクロッティング除去操作をすれば、センサには、フラッシング液が流入する。このフラッシング液が生理食塩水やリンゲル液などの糖濃度のないものであれば生体成分採取装置3aと生体とが接続状態でもゼロ較正ができる。なお、センサのフラッシングはフラッシング液の代わりに較正液で行うこともできる。
【0056】
これらの流路配置基板19上の流路は、その端部において生体成分測定装置上の対応する流路又はタンクやバルブ等の機器と脱着可能となっており、流路配置基板19を生体成分測定装置上に装着する際にはこれらの流路を接続し、流路配置基板19を脱着する場合にはこれらの流路も取り外す。このようにして、流路配置基板19及び流路配置基板19上に配置した流路は、被測定体2が変わったり、測定時期が異なったりする場合には簡単に衛生的に取り替えることができる。特に、流路配置基板19の取り外しの際の体液の漏洩を防ぐためには、流路配置基板19の取り外し前にフラッシング液、体液希釈液、較正液又は希釈液等をサンプル流路などの流路配置基板19上のサンプルを保持している機器中に導入してやり、これらの液で洗浄してから流路配置基板19を取り外すことが好ましい。このような流路配置基板19は、所謂ディスポーザブルタイプの流路配置基板と呼ばれている。このようなディスポーザブルタイプの流路配置基板に用いられる基板材料や流路等の機器材料は、通常長期間使用はしないので安価で入手し易いものが好ましい。これらの基板材料や流路等の機器材料としては、例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ナイロンなどの比較的安価な樹脂や天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、SBRなどの一般的なゴム等が挙げられる。センサ5やフラッシング液導入用のポンプ10dなども流路配置基板19上に配置することもできるが、使い捨てにすることのコストアップと、流路配置基板取付け時の簡便性、衛生上の配慮等から好ましい配置を選択すればよい。
【0057】
図5に示す態様においては、第一希釈液流路11iは、希釈液を加温するための加熱手段の一例であるヒータ18を備えている。ヒータは、第一希釈液流路11i内を流通する希釈液を加温することができればよい。このヒータ18には希釈液の温度を制御して、最終的にはセンサ5に導入されるサンプルの温度を制御する目的がある。通常、センサ5は測定の安定性を考慮して生体と同じ程度の温度に制御されている。人体からの体液測定の場合は36〜38度に制御している場合が多い。ところが、採取した体液を含むサンプルは、希釈液の温度や流路中の外気温などの影響で低下することが多い。特に、外気温が低い場合は影響が大きい。センサに導入されるサンプルの温度が低いとセンサの感度や精度が変化したり、温度制御されているセンサ内で温度が急に上昇したサンプルから気泡が発生して測定が乱れることがある。このような不具合を解消するため、サンプル流路を保温する方法がある。しかし、体液、特に血液は生体内の温度より高温になるとゲル化したり変質したりし易く、例えば人間の血液の場合は40度以上にするとゲル化の虞がある。このため、サンプル流路の保温によるサンプルの温度制御をする場合には、サンプル温度が40度以上にならないようにするための厳密な温度制御が要求される。一方、希釈液は体液を含まず比較的安定であるので50度以上の高温になっても問題はない。また、希釈液による希釈比を大きくしておけば希釈液の温度でセンサ入口のサンプルの温度を制御し易い。この態様の生体成分測定装置は、このような観点からヒータ18を設置してある。なお、この態様では、ヒータ18は、希釈液タンク4bとポンプとの間の第一希釈液流路11iを保温するように設置されているが、希釈液タンク4bと流路合流器17との間の第一希釈液流路上であればよく、ポンプ下流側にも設置することができる。なお、補助的にサンプル流路や第一希釈液流路も保温しておくことは、サンプルの温度制御には有効な手段である。但し、サンプル流路の保温にあたっては、サンプルの一部であっても過熱されないような注意が必要である。
【0058】
この発明の生体成分測定装置の較正は、従来の生体成分測定装置における較正とは違って、センサだけでなく、流路やポンプを含む装置全体として較正することができる。較正は、通常、ゼロ較正、例えば測定項目が血糖値であれば糖濃度ゼロとスパン較正、測定項目が血糖値であれば例えば糖濃度200mg/dLとで測定を行い、この2点から検量線を作って較正する。一般に、スパン較正値の変動は大きいが、ゼロ較正の変動は少ないのでこれを省略して較正を行ってもよいが、ゼロを較正することでより正確な較正ができる。図5を参考に説明すると、第二稀釈液タンク4bの第二稀釈液流路11iから分岐した第二稀釈液流路11jから直接センサ5に希釈液を導入する流路を設け、ゼロ較正の際は、センサ5に希釈液のみを供給して較正する。希釈液は測定対象成分、例えば糖分などは存在しないのでゼロ較正液として好適である。図5に示す態様では、較正の前段階であるフラッシング工程に入ったらセンサ5のゼロ較正をはじめることができる。その際、センサ5の手前にある流路切替弁は、サンプル流路側から第一希釈液流路側に切り替えられて所用の時間、例えば1分程度希釈液を導入してゼロ較正をすればよい。フラッシングが始まると同時にゼロ較正を行えば、較正にかかる全体の時間が短縮できる。2点較正だけでなく、多点較正により正確な較正をすることもできる。多点較正は、ゼロ較正と1点のみのスパン較正ではなく、多点のスパン較正を行い検量線を作成するものである。当然、多点較正のほうが2点較正よりも制度の高い較正がでる。多点較正をするには、濃度を変えた較正液タンク8を複数個設けてこれらを切り替えて較正液流路に導入したり体液希釈液又は希釈液と較正液との流量比を変更したりしてセンサ5に導入される際の較正液濃度を調整して多点較正することもできる。複数の較正液タンク8を設けて流路を切り替えて多点較正する場合は、流路切替弁9a、9bを三方弁でなく4方弁、6方弁などとして流路を切り替えて複数の較正を行ってもよい。
【0059】
この発明の生体成分測定装置における好適なポンプ、ポンプ用チューブ及びマルチポンプに付いて説明する。この発明の生体成分測定装置におけるポンプはそれぞれの流体を必要量だけ定量的に移送できるものであれば、どのようなタイプのポンプでもよい。なお、この発明においては、気体の移送手段についてもポンプと称する。この発明のポンプとしては、簡便で流路としてのチューブがそのまま利用できる所謂チューブポンプとかしごきポンプと称されるポンプが好適である(便宜上チューブポンプと称する。)。このチューブポンプは、例えば図7に示すように、流路を形成する弾性のあるポンプ用チューブ10をしごくローラ20aと、このローラ20aを支持する軸20cと、この軸20cを結合支持してローラ20aを回転させる回転軸20bと、押さえ板20dとを備え、回転するローラ20aが前記ポンプ用チューブ10に対してしごき作用をする。このチューブポンプによると、回転軸20bの回転によりこのローラ20aも回転軸20bを中心にして回転し、ローラ20aの回転運動によりポンプ用チューブ10をしごくことができるようになっている。ローラ20aが押さえ板20dと協働してポンプ用チューブ10を挟みつけ、ポンプ用チューブ10をつぶして、ローラ20aの回転に伴ってポンプ用チューブ10内の流体をポンプ用チューブ10の下流側へ押出していく。ポンプ用チューブ10はサンプル流路11dなどの流路の一部であると同時に、ポンプ10bの一部であるとも言える。図5に示す生体成分測定装置の流路配置基板19上には、この流路配置基板19に配置された各種の流路とともにこの流路に接続されているチューブポンプ20の一部であるポンプ用チューブ10も配置されている。そして、このポンプ用チューブ10は、流路配置基板19が生体成分測定装置に装着されて使用される際には、生体成分測定装置に備えられているローラ20aと押さえ板20dとにより挟まれて、これらと共にチューブポンプ20を構成する。
【0060】
この発明の一実施形態である図5に示す生体成分測定装置においては、流体を移送する必要のある全ての流路に作用して全ての流路内の流体を強制的に移送することができるように、移送すべき流路のポンプ用チューブ10を流路配置基板19上に平行に整列して並べて配置しておく。そしてチューブポンプ20のローラ20aを長尺にして上記の全てのポンプ用チューブ10を同じローラ20aで同時にしごけるようにする。そうすると、流路内を移送される流体の単位時間あたりの流量は、ポンプ用チューブ10の断面積及び回転軸20bの回転速度により決定される。回転軸20bが一本であれば、ポンプ用チューブ10の断面積のみでそれぞれの流路の流体の流速は決定される。つまり、このローラ20aでしごかれることにより流体を移送するときの流量は、流路中のポンプ用チューブ10の内径を調整することにより、適宜に決定することができる。このようなポンプをマルチポンプと称する。マルチポンプは構造が簡単で各流路間の流量比も常に一定にすることができる。
【0061】
この発明においては、ポンプは図7に示すチューブポンプ20と同様の作用を有する構造として、蠕動ポンプを挙げることができる。また、好適なポンプとして、このようなしごき作用を有する構造の外に、図8に示す押圧作用を有するポンプを挙げることができる。この図8に示す押圧作用を有する押圧ポンプ21は、ポンプ用チューブ10を押さえ板21d,21eで挟んでおき、下側の押さえ板21dに設けられた開口部21fに、この開口部21fの上端開口部から出没可能な押圧子21aと、この押圧子21aの一端に回転可能に接触する偏芯回転カム21bとを備える。このポンプは、前記偏芯回転カム21が回転軸21cにより偏芯回転すると、前記押圧子21aが前記開口部21fを出没するように並進運動をする。一方、下側の押さえ板21dは、流路配置基板19と兼用することもでき、流路配置基板19に配設される流路例えばサンプル流路11dは、その流路でもあるポンプ用チューブ10内に第1ポペットバルブ21g及び第2ポペットバルブ21hを備える。押さえ板21eは弾性のあるポンプ用チューブ10を押さえている。このポンプ21によると、前記押圧子21aがポンプ用チューブ10を押圧することにより前記第1ポペットバルブ21gと第2ポペットバルブ21hとで挟まれるポンプ用チューブ10内の内容積を小さくする際は、第1ポペットバルブ21gは閉鎖状態となる一方、第2ポペットバルブ21hが開放状態となり、ポンプ用チューブ10内に存在する流体が第2ポペットバルブ21hから流出する。ポンプ用チューブ10内の内容積が最小になってから押圧子21aが後退すると、ポンプ用チューブ10の弾性力によりポンプ用チューブ10の内容積が元に戻って最大容積となる。その際、第1ポペットバルブ21gが開放状態となり、一方第2ポペットバルブ21hが閉鎖状態となり、これによってこのポンプ用チューブ10内に流体が第1ポペットバルブ21gを通じて流入する。したがって押圧子21aの並進運動、換言すると前進及び後進を繰り返すことにより、ポンプ用チューブ10内への流体の流入及び排出がくりかえされて流路内を流体が強制的に移送されることにある。この図8に示されるポンプは、ポンプ用チューブ10でもある流路と協働してポンプ用チューブ10内への流体の流入及び排出が繰り返している。
【0062】
フラッシング液用のポンプは上述のマルチポンプのひとつとしてもよいが、その流量がサンプル等のポンプの流量より大容量の場合が多いので、個別に備えてもよい。フラッシング液用のポンプとしてはチューブポンプ、蠕動ポンプ、上述の図8に示したポンプ、ダイアフラムタイプのポンプ、図11、図12に示すような図8に示すポンプの弾性チューブが太めに膨らんだ、所謂ピロータイプの往復動ポンプなどが好適に用いられる。なお、これらのポンプは逆流防止機能を持っているポンプであることが好ましい。
【0063】
流路配置基板19は、前記各種の流路等を装着することができる限りその材質に特に制限がなく、この実施形態においては、硬質の合成樹脂製であり、場合によっては軟質で柔軟な軟質合成樹脂樹脂製であってもよい。基板3は、PVC製のシート材、硬質PVC、PETなどの硬質なフィルム製、PVCチューブと接着が容易な軟質PVC製などの材料を用いればよい。流路配置基板19の製造方法としては、素材板からの機械加工でもよいが、価格、加工くずなどの廃材の低減、大量生産性を考慮すると成形加工が望ましい。成形加工としては、圧縮成形、射出成形など一般に中量・大量生産に適する成形加工が望ましい。基板へのチューブの装着は、ベースとなる基板の所定の位置にチューブを接着して配置することにより行われ、DSI(ダイスライドインジェクションの略称)でチューブを接着配置することなく中空で高精度の成形方法を用い、チューブ配管も一体成形してしまう方法で行われることもできる。また、溶解性の材質からなる中子を用いて配管を成形した後に配管中の中子を溶解し、中空の成形を行う溶融中子法による成形も利用できる。基板3は、寸法精度に余裕をもたせられるように弾性のある軟質材料であることが好ましい。流路配置基板19は、生体成分測定装置1の装架面にピンやフックなどで装着すればよい。特に、伸縮性のある樹脂等で作製された流路配置基板19は生体成分測定装置1へのワンタッチで着脱が可能で好適である。
【0064】
図5に示されるような流路配置基板19を備えた生体成分測定装置1においては、流路配置基板19上の各流路と流路配置基板19外の各流路との接続は、着脱自在の簡単なコネクタによることが好ましい。例えば、両方の流路を柔軟な材質でチューブ状に形成し、一方の流路端部の内径を接続すべき他方の流路の端部外径とほぼ等しくしておき、後者のチューブを前者のチューブに差し込んでやればよい。あるいは、両方の流路を柔軟な材質で同じ外径のチューブ状に形成し、チューブの外径に等しい内径を持つ短いチューブを接続用のコネクタとして、接続すべき両チューブの端部をこのコネクタに差し込んでやればよい。軟質塩化ビニル製のチューブなどで使用されるルアータイプコネクタは好適に利用できる。この発明における流路用のチューブは取り替え可能なことを前提としているので、経済性を考慮して製造することが多い。この場合、軟質塩化ビニル製のチューブは好適な材料である。軟質塩化ビニル製やポリカーボネート製のルアータイプコネクタは軟質塩化ビニル製のチューブと容易に接続でき、製造コスト、内部流体の漏れ難さ、はずれ難さ等の面からも適している。その他にも、簡単なコネクタとして、チューブの先端部外表面が階段状に細くなった所謂タケノコと称される形状のチューブを内側にはめ込むタイプなどでもよい。
【0065】
混合器15は、サンプル流路11eから供給されるサンプルと、第一希釈液流路11jから供給される希釈液例えば緩衝液とを混合することができる限り各種の構造を採用することができる。例えば、ある程度の長さのチューブのみでもよい。この生体成分測定装置においては、混合器15からセンサ5迄のサンプル流路11oが短い場合が多いので、センサ5に至るまでにサンプルと希釈液とを十分に混合する構造を採用することが好ましい。好適な混合器15の一例として図9にその断面図を示す構造の混合器を挙げることができる。この混合器15は、直方体形状の混合器本体15aの内部流通空間15bを形成する内壁の一部に、流体の流通方向に沿って凹凸が連続する凹凸部15cを有する。内部流通空間15bは、その下部でサンプル流路11e、第一希釈液流路11j及び気体流路11nに接続されており、上部ではサンプル流路11oに接続されている。図9におけるA−A切断線に対応する混合器15の断面を図10に示す。図10においては、凹凸部15cは、その中央部がひし形状に形成されてなる。さらに詳述すると、凹凸部15cは、流体の流通方向に沿って最初はV字状に凹凸が形成されてなるV字状凹凸部、換言すると最初はV字状に形成された複数の凸部と、これら凸部の間に形成されるV字状の凹部とを備えるV字状凹凸部と、内部の中央部から逆V字状に形成されてなる逆V字状凹凸部、換言すると逆V字状に形成された複数の凸部とこれら凸部の間に形成される凹部とを備える逆V字状凹凸部とを備えて成る。
【0066】
凹凸部15cを備えた混合器15にあっては、例えば、混合器本体15a内部に導入されたサンプルと希釈液とは、凹凸部15cにおける最初の凸部に衝突してサンプルと希釈液との流れが乱れ、乱れたサンプルと希釈液とが最初の凸部を乗り越えてつぎの凹部に至り、次の凹部では次の凸部によりサンプルと希釈液とが衝突し、液流が乱れる。また、凹凸部15cはV字状及び逆V字状に形成されているので、サンプルと希釈液とは、直進方向の成分と、凹凸部15cの斜め方向の成分とに分割され、このように流れが分割されることによりサンプルと希釈液とが乱れた流れとなる。このようにサンプルと希釈液とが、凸部に衝突して乱れこと、及び直進方向の成分と、凹凸部15cの斜め方向の成分とに分割されることを繰り返すことにより、サンプルと希釈液とが混合されることができる。
【0067】
なお、上記説明においては、混合器15は、サンプルと希釈液とのみで混合している場合であるが、これに限定されず、混合効率を向上させるために、サンプルと希釈液に対して不活性な気体、例えば、空気や窒素を混合器内部空間15bに導入して、サンプルと希釈液とを混合するようにしてもよい。このような実施形態の生体成分測定装置のフロー図を図4に例示している。この実施形態では、気体流路11nを設けている。気体流路11nは、サンプル流路11d等と同様に弾力性のあるチューブで、気体流路11ポンプ用チューブ部においてローラによりしごかれて流路内の気体、例えば空気を混合器15側に供給できるようになっている。混合器15で又は混合器15の上流側で、希釈液と空気とが混合され、さらにこれにサンプルが混合される。この場合には、混合器15の下流に、気液分離器16を設けて、希釈液及びサンプルの混合液である液体と空気等の気体とを分離し、気体及び余剰の液体は排ガス流路11pから排出される。このように空気を混合器15に送気することにより、サンプルと希釈液との混合効率を向上でき、また混合器15及びサンプル流路11o内のサンプルの滞留時間を短くできるので、採取した体液成分を迅速に測定できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液採取装置で採取した体液を含むサンプルをサンプル流路及びポンプによりセンサに送液し、前記センサによりサンプル中の生体成分を測定する生体成分測定装置であって、サンプル流路のポンプ上流側に設けられた第一流路切替バルブと、この第一流路切替バルブに接続され、この第一流路切替バルブの切替操作により、較正液をサンプル流路を通じてセンサに供給可能にする較正液流路とを含んで成る生体成分測定装置。
【請求項2】
体液採取装置に体液希釈液を導入する体液希釈液流路を含んで成る請求項1に記載の生体成分測定装置。
【請求項3】
前記体液希釈液流路の途中に設けられた第二流路切替バルブと、この第二流路切替バルブに接続され、この第二流路切替バルブの切替操作により、体液希釈液流路内の体液希釈液を前記較正液と混合可能にする第二体液希釈液流路とを含んでなる前記請求項1又は2に記載の生体成分測定装置。
【請求項4】
サンプル流路の体液採取装置と第一流路切替バルブとの間に、及び/又は前記第二流路切替バルブと体液採取装置との間に、流路切替バルブを介して接続され、フラッシング液を流通させるフラッシング液流路を含んで成る請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体成分測定装置。
【請求項5】
前記フラッシング液は、所定濃度の生体成分を含有してなる前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体成分測定装置。
【請求項6】
サンプル流路に設けた第一流路切替バルブの下流に接続した、サンプル流路内のサンプルを希釈するための第一希釈液流路を含んで成る請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体成分測定装置。
【請求項7】
第一希釈液流路、又は第一希釈液流路とサンプル流路との合流部に接続した気体流路を含んで成る請求項6に記載の生体成分測定装置。
【請求項8】
生体成分測定装置本体とこの生体成分測定装置本体に着脱可能な流路搭載基板とで形成され、体液採取装置で採取した体液を含むサンプルをサンプル流路及びポンプによりセンサに送液し、前記センサによりサンプル中の生体成分を測定する生体成分測定装置であって
前記流路搭載基板は、
生体成分測定装置本体に着脱可能に形成された基板と、
体液採取装置に接続可能であり、体液採取装置で採取した体液を含むサンプル中の生体成分を測定するセンサに接続可能であり、前記サンプルをポンプによりセンサに送液可能に前記基板に搭載されたサンプル流路と、
較正液タンクに接続可能であり、サンプル流路の前記ポンプ上流側に第一流路切替バルブを設けて接続され、かつ、前記較正液タンク内の較正液をサンプル流路内に送液可能に前記基板に搭載された較正液流路と、
を有して成ることを特徴とする生体成分測定装置。
【請求項9】
前記基板は、
体液希釈液タンクに接続可能であり、かつ、体液採取装置に体液希釈液タンク内の体液希釈液を導入する体液希釈液流路を搭載してなる前記請求項8に記載の生体成分測定装置。
【請求項10】
前記体液希釈液流路の途中に設けられた第二流路切替バルブと、この第二流路切替バルブに接続され、この第二流路切替バルブの切替操作により、体液希釈液流路内の体液希釈液を前記較正液と混合可能にする第二体液希釈液流路とを含んでなる前記請求項8又は9に記載の生体成分測定装置。
【請求項11】
前記基板は、
フラッシング液タンクに接続可能であり、かつ、サンプル流路の体液採取装置と第一流路切替バルブとの間に、及び/又は第二流路切替バルブと体液採取装置との間に接続され、フラッシング液を流通させるフラッシング液流路を搭載してなる前記請求項8〜10のいずれか1項に記載の生体成分測定装置。
【請求項12】
前記フラッシング液は、所定濃度の生体成分を含有してなる前記請求項8〜11のいずれか1項に記載の生体成分測定装置。
【請求項13】
前記基板は、
希釈液タンクに接続可能であり、かつ、サンプル流路に設けた第一流路切替バルブの下流に接続した第一希釈液流路を搭載してなる前記請求項8〜12のいずれか1項に記載の生体成分測定装置。
【請求項14】
前記基板は、第一希釈液流路、又は第一希釈液流路とサンプル流路との合流部に接続した気体流路を搭載してなる前記請求項8〜13のいずれか1項に記載の生体成分測定装置。
【請求項15】
較正液タンクが体液採取装置よりも低い位置に設置されてなることを特徴とする前記請求項8〜15のいずれか1項に記載の生体成分測定装置。
【請求項16】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の生体成分測定装置の較正方法であって、第一流路切替バルブを切り替えて較正液流路からサンプル流路を経てセンサに較正液を導入することを特徴とする生体成分測定装置の較正方法。
【請求項17】
請求項4〜7、11〜15のいずれか1項に記載の生体成分測定装置の較正方法であって、生体成分を採取する前に希釈液を第一希釈液流路からサンプル流路に導入して生体成分測定装置のゼロ点較正をする操作と、生体成分の測定中に前記フラッシング液をサンプル流路に導入する操作と、前記フラッシング液をセンサ内に導入させることなく第一流路切替バルブを切り替えて較正液流路内の較正液をサンプル流路を通じてセンサに導入する操作とを含む生体成分測定装置の較正方法。
【請求項18】
請求項4〜7、11〜15のいずれか1項に記載の生体成分測定装置の較正方法であって、生体成分の測定中にサンプル流量よりも多いフラッシング液をフラッシング液流路からサンプル流路に導入する操作と、フラッシング液がサンプル流路及びセンサ内に導入された後にサンプル流路に設けた第一流路切替バルブを切り替えて較正液をセンサに導入する操作と、較正液をセンサに導入する前記操作中にフラッシング液をサンプル流路に導入する前記操作において導入したフラッシング液よりも少ないフラッシング液を第一流路切替バルブよりも上流のサンプル流路及び体液採取装置に導入してこの部分への体液の流入を防止する操作とを含む生体成分測定装置の較正方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−150130(P2012−150130A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−110262(P2012−110262)
【出願日】平成24年5月14日(2012.5.14)
【分割の表示】特願2008−514385(P2008−514385)の分割
【原出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】