説明

生体接着剤の硬化速度の高速化

【課題】可撓性、生体適合性およびその性質において高度に一貫性である、完全に合成された生物学的接着剤または封止剤を提供すること。
【解決手段】本発明は、少なくとも1つのイソシアネート末端成分を、少なくとも1つのアミンを溶液の約0.01重量%〜約0.5重量%の濃度で含む希釈溶液と接触させる工程;および
該少なくとも1つのイソシアネート末端成分と該少なくとも1つのアミンをインサイチュで反応させる工程であって、それによって生体適合性組成物を形成する工程、
を含む方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2007年11月15日に出願され、その全体の開示が本明細書中に参考として援用される米国仮特許出願第60/988,209号の利益およびそれへの優先権を主張している。
【0002】
(背景)
(技術分野)
本開示は、組織接着剤および/または組織封止剤としての使用のための組成物を含む、インサイチュ(in situ)における適用に適切な組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の背景)
最近、縫合糸を接着結合で置換または増強することにおける関心が増加している。この関心の増加の理由は、(1)修復が達成され得る潜在的な速度;(2)完全な閉鎖を行い、それ故、流体の漏出を防ぐ結合物質の能力;および(3)組織の過剰な変形なくして結合を形成する可能性を含む。
【0004】
この領域における研究は、しかし、外科用接着剤が外科医によって受容され得るためには、それらは多くの性質を有しなければならないことが明らかにしている。それらは、高い初期粘着性および生存組織に迅速に結合する能力を示さなければならず;この結合の強度は、結合破損の前に組織破損を引き起こすに十分でなければならず;この接着剤は、架橋、代表的には透過可能な可撓性架橋を形成すべきであり;そしてこの接着剤架橋および/またはその代謝産物は、局所的な組織毒性または発癌性影響を引き起こすべきではない。
【0005】
組織接着剤または組織封止剤として有用ないくつかの材料が現在利用可能である。現在利用可能である1つのタイプの接着剤は、シアノアクリレート接着剤である。しかし、シアノアクリレート接着剤は、それらの有用性を制限し得る高い曲げ率を有し得る。現在利用可能である別のタイプの組織封止剤は、ウシおよび/またはヒト供給源由来の成分を利用する。例えば、フィブリン封止剤が利用可能である。しかし、任意の天然材料と同様に、この材料における変動性が観察され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
可撓性、生体適合性およびその性質において高度に一貫性である、完全に合成された生物学的接着剤または封止剤を提供することが所望され得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、接着剤または組織封止剤として用いられ得る低減された粘度を有する組成物を提供し、そしてこのような組成物の硬化速度を高速化するための方法を含む。実施形態では、本開示の方法は、少なくとも1つのイソシアネート末端成分を、少なくとも1つのアミンを溶液の約0.01重量%〜約0.5重量%の濃度で含む希釈溶液と、接触させる工程;および、この少なくとも1つのイソシアネート末端成分とこの少なくとも1つのアミンをインサイチュで反応させる工程であって、それによって生体適合性組成物を形成する工程を含む。実施形態では、上記少なくとも1つのイソシアネート末端成分は、式:
【0008】
【化3】

であり得、ここで、Xはポリエーテル、ポリエステルまたはポリエーテル−エステル基であり、そしてRは脂肪族または芳香族基である。
【0009】
実施形態では、上記アミンの上記少なくとも1つのイソシアネート末端成分に対する比は、約1:10〜約10:1w/wであり得る。
【0010】
実施形態では、上記少なくとも1つのイソシアネート末端成分および上記少なくとも1つのアミンは、接触後約1秒〜約5分以内に生体適合性組成物を形成する。
【0011】
これら組成物で作製された接着剤および封止剤がまた、提供される。このように形成された上記組成物は、約0.8kg〜約2kgの重ね剪断を示し得る。
【0012】
その他の実施形態では、本開示の方法は、少なくとも1つのイソシアネート末端成分を、少なくとも1つのアミン(例えば、ビス(3−アミノプロピル)アミン、スペルミン、ポリエーテルアミン、トリリジン、エチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、ブタン−1,4−ジアミン、ペンタン−1,5−ジアミン、ヘキサン−1,6−ジアミン、フェニレンジアミン、および約50g/mol〜約500g/molの分子量を有するそれらの組み合わせ)を、溶液の約0.01重量%〜約0.5重量%の濃度で含む、希釈溶液と接触させる工程;および上記少なくとも1つのイソシアネート末端ポリウレタンと上記少なくとも1つのアミンをインサイチュで反応させる工程であって、それによって生体適合性組成物を形成する工程を含む。
【0013】
また、本発明は、例えば以下の項目を提供する:
(項目1)少なくとも1つのイソシアネート末端成分を、少なくとも1つのアミンを溶液の約0.01重量%〜約0.5重量%の濃度で含む希釈溶液と接触させる工程;および
該少なくとも1つのイソシアネート末端成分と該少なくとも1つのアミンをインサイチュで反応させる工程であって、それによって生体適合性組成物を形成する工程、
を含む、方法。
(項目2)前記少なくとも1つのイソシアネート末端成分が、式:
【0014】
【化1】

であり、ここで、Xがポリエーテル、ポリエステルまたはポリエーテル−エステル基であり;そしてRが脂肪族または芳香族基であり、そして該少なくとも1つのイソシアネート末端成分が、約1000g/mol〜約20000g/molの分子量を有する、項目1に記載の方法。
(項目3)Xが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリエーテルである、項目2に記載の方法。
(項目4)Xが、トレメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、グリコリド、ラクチド、1,5−ジオキセパン−2−オン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、およびそれらの組み合わせから選択されるポリエステルである、項目2に記載の方法。
(項目5)Xが、ポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール−ポリラクチド、ポリエチレングリコール−ポリグリコリド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリエーテル−エステル基である、項目2に記載の方法。
(項目6)前記アミンが、ビス(3−アミノプロピル)アミン、スペルミン、ポリエーテルアミン、トリリジン、エチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、ブタン−1,4−ジアミン、ペンタン−1,5−ジアミン、ヘキサン−1,6−ジアミン、フェニレンジアミン、および約50g/mol〜約500g/molの分子量を有するそれらの組み合わせから選択される、項目1に記載の方法。
(項目7)前記溶液が、水、エタノール、トリエチレングリコール、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ポリエチレングリコール、メトキシ−ポリエチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、エチルアミルケトン、エチルラクテート、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含む、項目1に記載の方法。
(項目8)前記アミンの前記少なくとも1つのイソシアネート末端成分に対する比が、約1:10〜約10:1w/wである、項目1に記載の方法。
(項目9)前記組成物が、約0.8kg〜約2kgの重ね剪断を示す、項目1に記載の方法。
(項目10)前記少なくとも1つのイソシアネート末端成分および前記少なくとも1つのアミンが、接触後約1秒〜約5分以内に生体適合性組成物を形成する、項目1に記載の方法。
(項目11)項目1に記載の生体適合性組成物を含む、接着剤。
(項目12)少なくとも1つのイソシアネート末端成分を、ビス(3−アミノプロピル)アミン、スペルミン、ポリエーテルアミン、トリリジン、エチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチレンジアミン、ブタン−1,4−ジアミン、ペンタン−1,5−ジアミン、ヘキサン−1,6−ジアミン、フェニレンジアミン、および約50g/mol〜約500g/molの分子量を有するそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアミンを、溶液の約0.01重量%〜約0.5重量%の濃度で含む希釈溶液と接触させる工程;および
該少なくとも1つのイソシアネート末端ポリウレタンと該少なくとも1つのアミンとをインサイチュで反応させる工程であって、それによって生体適合性組成物を形成する工程
を含む、方法。
(項目13)前記少なくとも1つのイソシアネート末端成分が、式:
【0015】
【化2】

であり、ここで、Xがポリエーテル、ポリエステルまたはポリエーテル−エステル基であり;そしてRが脂肪族または芳香族基であり、そして該少なくとも1つのイソシアネート末端成分が、約1500g/mol〜約10000g/molの分子量を有する、項目12に記載の方法。
(項目14)Xが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリエーテルである、項目13に記載の方法。
(項目15)Xが、トレメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、グリコリド、ラクチド、1,5−ジオキセパン−2−オン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、およびそれらの組み合わせから選択されるポリエステルである、項目13に記載の方法。
(項目16)Xが、ポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール−ポリラクチド、ポリエチレングリコール−ポリグリコリド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリエーテル−エステル基である、項目13に記載の方法。
(項目17)前記溶液が、水、エタノール、トリエチレングリコール、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ポリエチレングリコール、メトキシ−ポリエチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、エチルアミルケトン、エチルラクテート、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含む、項目12に記載の方法。
(項目18)前記アミンの前記少なくとも1つのイソシアネート末端成分に対する比が、約1:10〜約10:1w/wである、項目12に記載の方法。
(項目19)前記組成物が、約0.8kg〜約2kgの重ね剪断を示す、項目12に記載の方法。
(項目20)前記少なくとも1つのイソシアネート末端成分および前記少なくとも1つのアミンが、接触後約1秒〜約5分以内に生体適合性組成物を形成する、項目12に記載の方法。
【0016】
(要旨)
本開示は、接着剤または組織封止剤として用いられる得る低減された粘度を有する組成物を提供し、そしてこのような組成物の硬化速度を高速化するための方法を含む。一つの実施形態では、本開示の方法は、少なくとも1つのイソシアネート末端成分を、少なくとも1つのアミンを溶液の約0.01重量%〜約0.5重量%の濃度で含む希釈溶液と、接触させる工程;および、この少なくとも1つのイソシアネート末端成分とこの少なくとも1つのアミンをインサイチュで反応させる工程であって、それによって生体適合性組成物を形成する工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(詳細な説明)
本開示は、生体適合性で、非免疫原性で、かつ生分解性である組成物に関する。本明細書で用いられるとき、本開示の「組成物」は、組成物それ自体、または任意の添加物および/またはさらなる化合物を含む組成物を含む。この組成物は、生存組織および/またはヒトを含む動物の肉に塗布され得る。
【0018】
科学界では、用語「肉」と「組織」の使用法の間には、特定の区別があり得るが、これら用語は、本明細書中では、当業者が、患者の処置のための医療分野内で利用される本発明の組成物を理解し得る一般的材料を称するとして交換可能に用いられる。本明細書で用いられるとき、「組織」は、皮膚、骨、ニューロン、軸索、軟骨、血管、角膜、筋肉、筋膜、脳、前立腺、胸部、子宮内膜、肺、膵臓、小腸、血液、肝臓、精巣、卵巣、頸部、結腸、胃、食道、脾臓、リンパ節、骨髄、腎臓、末梢血、胎児および/または腹水組織を含み得るが、それらに限定されない。
【0019】
実施形態では、上記組成物は、組織接着剤および/または組織封止剤として利用され得る。上記組成物は、組織エッジを接着するため、組織中の空気/流体の漏れを封止するため、医療用デバイス、例えば、移植片を組織に接着するため、そして組織中の空隙または欠陥を封止すること、または充填することのような組織増強のために用いられ得る。
【0020】
本開示の組成物は、第1の成分および第2の成分を含む。この第2の成分は、少なくとも1つのアミン基を含み、そしてインサイチュでの適用に際し、上記組成物の硬化速度を増加するように選択される。
【0021】
実施形態では、本開示の組成物を形成することで利用される第1の成分は、イソシアネート官能ポリマーを含み得る。任意のモノマー、オリゴマー、またはイソシアネート基で官能性付与され得るポリマーが、第1の成分として利用され得る。実施形態では、第1の成分は、イソシアネート官能化ポリエーテル、ポリエステル、またはポリエーテル−エステル基に基づき得る。
【0022】
この第1の成分を形成する際に利用され得る適切なポリエーテルは、当該分野の範囲内にあり、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、それらのコポリマー、およびそれらの組み合わせを含む。実施形態では、適切なポリエーテルは、ポリエチレングリコールであり得る。
【0023】
上記第1の成分を形成する際に利用され得る適切なポリエステルは、当該分野の範囲内にあり、例えば、トレメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、グリコリド、ラクチド、1,5−ジオキセパン−2−オン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、およびそれらの組み合わせを含む。
【0024】
さらに、上記で注記されたように、上記第1の成分は、ポリ(エーテル−エステル)ブロックを含み得る。当該分野の範囲内の任意の適切なポリ(エーテル−エステル)ブロックが利用され得る。これらのマクロマーは、2つのジヒドロキシ化合物を連結する脂肪族二塩基酸を含み得る(ときどき、本明細書中では「ポリ(エーテル−エステル)マクロマー」と称される)。ポリ(エーテル−エステル)マクロマーの10までの繰り返しが存在し得る。
【0025】
ポリ(エーテル−エステル)マクロマーを形成する際に利用され得る適切な脂肪族二塩基酸は、例えば、約2〜約10の炭素原子を有する脂肪族二塩基酸を含む。適切な二塩基酸は、制限されないで、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、ピメリン酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、マロン酸、シュウ酸、およびそれらの組み合わせを含む。
【0026】
ポリ(エーテル−エステル)マクロマーを形成する際に利用され得る適切なジヒドロキシ化合物は、例えば、ポリアルキレンオキシドを含むポリオール、ポリビニルアルコールなどを含む。いくつかの実施形態では、これらジヒドロキシ化合物は、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリプロピレンオキシド(「PPO」)のようなポリアルキレンオキシド、ポリエチレンオキシド(PEO)とポリプロピレンオキシド(「PPO」)とのブロックコポリマーまたはランダムコポリマー、およびそれらの組み合わせであり得る。
【0027】
1つの実施形態では、ポリエチレングリコール(「PEG」)がジヒドロキシ化合物として利用され得る。約200g/mol〜約10000g/molの、実施形態では約400g/mol〜約900g/molの分子量のPEGを利用することが所望され得る。適切なPEGは、記号表示PEG200、PEG400、PEG600およびPEG900の下で種々の供給源から市販され入手可能なものを含む。
【0028】
上記ポリ(エーテル−エステル)マクロマーを形成するために任意の方法が用いられ得る。いくつかの実施形態では、このポリ(エーテル−エステル)マクロマーは、塩化アジポイルを、PEG(例えば、PEG600)およびピリジンと、適切な溶媒(例えば、テトラヒドロフラン(THF))中で合わせることによって形成され得る。この溶液は、約−70℃〜約25℃までの適切な温度で、約4時間〜約18時間の期間の間保持され得、その後、この反応混合物は、沈殿したピリジン塩酸塩副産物および得られたポリ(エーテル−エステル)マクロマー、ここではPEG/アジペート化合物を除去するために濾過され得る。得られたポリ(エーテル−エステル)マクロマーは、エーテルまたは石油エーテルの添加により上記溶液から得られ得、そして濾過を含み得る適切な手段によって集められる。本発明の化合物を生成するために適切なその他の方法は、当該分野の範囲内である。
【0029】
利用され得る適切なポリ(エーテル−エステル)ブロックのその他の例は、ポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール−ポリラクチド、ポリエチレングリコール−ポリグリコリド、および本明細書中に記載される個々のポリエーテルおよびポエステルの種々の組み合わせを含むが、それらに限定されない。適切なポリ(エーテル−エステル)ブロックのさらなる例は、米国特許第5,578,662号および米国特許出願番号第2003/0135238号に開示されるものを含み、これらの各々の全体の開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0030】
実施形態では、得られたポリ(エーテル−エステル)マクロマーは、以下の式:
【0031】
【化4】

であり得、ここで、Aは脂肪族二塩基酸から誘導される基であり;Rは各出現毎に同じか、または異なる得、そしてジヒドロキシ化合物から誘導される基を含み得;そしてnは約1〜約10であり得る。いくつかの実施形態では、上記A基はアジピン酸から誘導され得、そしてRは、約200g/mol〜約1000g/mol、実施形態では約400g/mol〜約800g/mol、実施形態では約600g/molの分子量を有するポリエチレングリコールから誘導され得る。
【0032】
これら化合物の分子量および粘度は、用いられる特定の二塩基酸、用いられる特定のジヒドロキシ化合物、存在する繰り返し単位の数のような多くの因子に依存し得る。一般に、これら化合物の粘度は、25℃そして20.25秒−1の剪断速度で約300〜約10,000cPであり得る。
【0033】
実施形態では、上記ポリエーテル、ポリエステルまたはポリエーテル−エステル基は、官能基でエンドキャップされ得る。反応性末端基を提供するために、これらポリエーテル、ポリエステルまたはポリ(エーテル−エステル)をエンドキャップするための方法は、当該分野の範囲内にある。本開示は、イソシアネート基でのエンドキャップを詳細に論議しているが、本開示の第1の成分はまた、その他のアミン反応性末端基、例えば、イソチオシアネート、ジイミダゾール、イミドエステル、ヒドロキシスクシンイミドエステル、アルデヒド、それらの組み合わせなどでエンドキャップされ得る。
【0034】
実施形態では、上記第1の成分は、イソシアネートでエンドキャップされ得、ジイソシアネート−官能化合物を生成する。ポリエーテル、ポリエステルまたはポリ(エーテル−エステル)ブロックをエンドキャップするための適切なイソシアネートは、芳香族、脂肪族および脂環式イソシアネートを含む。例としては、芳香族ジイソシアネート、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、またはテトラメチルキシリレンジイソシアネート;脂肪族ジイソシアネート、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジメチルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートまたは2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;および脂環式ジイソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、水素化キシレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トリメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,6−トリメチル 1,3−フェニレンジイソシアネート、またはBayer Material ScienceからDESMODURS(登録商標)の下で販売されるものを含む市販され入手可能な材料が挙げられるが、それらに限定されない。
【0035】
上記ポリエーテル、ポリエステル、またはポリ(エーテル−エステル)マクロマーをジイソシアネートでエンドキャップするための方法は、当該分野の範囲内にある。例えば、上記ポリエーテル、ポリエステル、またはポリ(エーテル−エステル)マクロマーは、適切なジイソシアネートと、約1:2〜約1:6、実施形態では約1:3〜約1:5、その他の実施形態では約1:4のモル比で合わされ得、そして約55℃〜約75℃、実施形態では約60℃〜約70℃、その他の実施形態では約65℃の適切な温度まで加熱される。当該分野の範囲内の手段を利用してこれら成分を撹拌することが所望され得、この手段としては、撹拌、混合、ブレンド、音波処理、それらの組み合わせなどが挙げられる。
【0036】
いくつかの実施形態では、エンドキャップ反応は、不活性雰囲気下、例えば、窒素ガス下で起こり得る。アルコキシド、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2.]オクタン(DABCO)、それらの組み合わせなどを含む触媒が、いくつかの実施形態で利用され得、上記エンドキャップ反応の速度を増加させる。
【0037】
実施形態では、上記反応を実施する際に過剰のジイソシアネートを利用することが所望され得る。過剰のジイソシアネートの使用は重合反応を抑制し得、それによって得られたイソシアネート官能化された第1の成分の生じた分子量を調整することを可能にする。いくつかの実施形態では、この得られたジイソシアネート−官能性化合物は、次いで、石油エーテルでの熱抽出により得られ得る。
【0038】
それ故、実施形態では、本開示の組成物の第1の成分として利用され得る適切なマクロマーは、限定されないで、以下の式のものを含み得:
【0039】
【化5】

ここで、Xは上記に記載のようなポリエーテル、ポリエステルまたはポリエーテル−エステルであり;そしてRは上記に記載のような芳香族、脂肪族、または脂環式基である。
【0040】
本開示の組成物中の第1の成分としての使用のために適切である上記に記載されたマクロマーは、約1000g/mol〜約20000g/mol、実施形態では約1500g/mol〜約10000g/molの分子量を有し得る。この第1の成分の粘度は、約10cP〜約500,000cP、実施形態では約100cP〜約200,000cP、代表的には約200cP〜約100,000cPであり得る。
【0041】
1つ以上の異なるポリエーテル、ポリエステルまたはポリ(エーテル−エステル)マクロマーが単一の反応でエンドキャップされ得ることが理解されるべきである。得られた産物は、上記に示される式IIのジイソシアネート−官能性化合物の混合物である。
【0042】
ジイソシアネート−官能性化合物のNCO含量は、約3%〜約6%、実施形態では約3.5%〜約5%で変動し得る。
【0043】
本開示の組成物の第2の成分は、少なくとも1つのアミン基を含む。この第2の成分として利用され得る少なくとも1つのアミン基を含む適切な化合物は、例えば、ビス(3−アミノプロピル)アミン、スペルミン、(JEFFAMINE(登録商標)ポリエーテルアミンを含む)、およびトリリジンのような一級アミン、ならびに、エチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、ブタン−1,4−ジアミン、ペンタン−1,5−ジアミン、ヘキサン−1,6−ジアミン、フェニレンジアミンのような低分子量ジアミン、およびそれらの組み合わせを含む。実施形態では、上記アミン基を有する化合物は、約5000g/molより小さい分子量、実施形態では約50g/mol〜約500g/mol、その他の実施形態では約100g/mol〜約300g/molの分子量を有し得る。
【0044】
実施形態では、上記第2の成分は、希釈溶液中に存在し得る。この希釈溶液を形成するために利用され得る適切な溶媒は、上記第2の成分のアミン基の上記第1の成分のイソシアネート−官能基との反応を妨害しない当該分野の範囲内の任意の生体適合性溶媒を含む。利用され得る適切な溶媒は、例えば、水、エタノール、トリエチレングリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリム(例えば、ジグリム、トリグリム、テトラグリムなど)、ポリエチレングリコール、メトキシ−ポリエチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、メチルエチルケトンのようなケトン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセトン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、エチルアミルケトン、エチルラクテートなどのような極性溶媒を含む。その他の実施形態では、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート、イソプロパノール、ブタノール、アセトンなどのような溶媒が利用され得る。実施形態では、任意の前述の溶媒の組み合わせが希釈溶液を形成するために利用され得る。
【0045】
溶媒は、上記第2の成分と、この第2の成分がこの希釈溶液の約0.01重量%〜約0.5重量%、実施形態ではこの希釈溶液の約0.05重量%〜約0.1重量%の濃度であるように混合され得る。
【0046】
用いられる溶媒の量は、採用される特定の第2の成分および上記組成物の意図される最終用途を含む多くの因子に依存する。
【0047】
本開示に従って、本開示の組成物の硬化の速度は、上記希釈溶液中の第2の成分の濃度を制御することによって調整され得る。一般に、より低い濃度で同じ第2の成分について観察される速度より早い硬化時間が、上記希釈溶液中の第2の成分のより高い濃度で観察され得る。本開示の組成物は、上記2つの成分が接触され、そして組織に塗布された後約1秒〜約5分で、実施形態では接触後約30秒〜約2.5分で硬化し得る。
【0048】
上記第1の成分が、イソシアネート官能基を含み、そして上記第2の成分を含む希釈溶液がヒドロキシル基を含む場合、上記第1の成分と希釈溶液中の第2の成分は、有利には、所望されない前もったゲル化を避けるために使用直前に混合される。
【0049】
実施形態では、上記第2の成分は、上記第1の成分と、約1:10〜約10:1w/wの比で、実施形態では約5:1〜約1:1w/wの比で混合され得る。
【0050】
種々の必要に応じた成分がまた、本開示の組成物に添加され得、制限されないで、抗生物質、抗微生物剤、着色剤、保存剤、造影剤、例えば、ヨウ素または硫酸バリウム、またはフッ素、または薬物を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、必要に応じて1つ以上の生物活性剤を含み得る。本明細書で用いられるとき、用語「生物活性剤」は、その最も広い意味で用いられ、そして臨床使用を有する任意の物質または物質の混合物を含む。結果として、生物活性薬剤は、それ自体、薬理学的活性を有してもよく、または有さなくてもよい(例えば、色素)。あるいは、生物活性剤は、治療および予防効果を提供する任意の薬剤であっても、組織成長、細胞成長、および/または細胞分化に影響を与えるかまたはそれらに関与する化合物であっても、免疫応答のような生物学的作用を惹起し得るか、または1つ以上の生物学的プロセスにおける任意のその他の役割を果たし得る化合物であってもよい。
【0051】
本開示に従って利用され得る生物活性剤のクラスの例は、抗微生物剤、鎮痛剤、解熱剤、麻酔薬、抗癲癇薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症剤、心臓血管薬物、診断剤、交感神経作用剤、コリン様作用剤、抗ムスカリン剤、鎮痙薬、ホルモン、成長因子、筋肉弛緩剤、アドレナリン作動性ニューロンブロッカー、抗腫瘍薬、免疫原性剤、免疫抑制剤、胃腸管薬物、利尿薬、ステロイド、脂質、リポポリ多糖、多糖、および酵素を含む。生物活性剤の組み合わせが用いられ得ることがまた意図される。
【0052】
本発明の組成物で生物活性剤として含められ得る適切な抗微生物薬剤は、トリクロサン(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとしても公知)、クロルヘキシジンおよびその塩(酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジンおよび硫酸クロルヘキシジンを含む)、銀およびその塩(酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、銀タンパク質および銀スルファジアジンを含む)、ポリミキシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド(例えば、トブラマイシンおよびゲンタマイシン)、リファンピシン、バシトラシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、ミコナゾール、キノロン(例えば、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン、エノキサシンおよびシプロフロキサシン)、ペニシリン(例えば、オキサシリンおよびピプラシル)、ノンオキシノール9、フシジン酸、セファロスポリン、およびそれらの組み合わせを含む。さらに、ウシまたはrh−ラクトフェリンおよびラクトフェリシンBのような抗微生物タンパク質およびペプチドが、本発明の組成物中に生物活性剤として含められ得る。
【0053】
本発明の組成物中の生物活性剤として含められ得るその他の生物活性剤としては:局所麻酔薬;非ステロイド避妊剤;副交感神経作用剤;精神治療薬;精神安定薬;うっ血除去薬;沈静催眠薬;ステロイド;スルホンアミド;交感神経作用剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗偏頭痛剤;抗パーキンソン剤、例えば(例えば、L−ドパ);抗痙攣剤;抗コリン作用剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張剤;心血管系の薬剤(例えば、冠動脈拡張薬およびニトログリセリン);アルカロイド;鎮痛薬;麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイン、メペリジン、モルヒネなど);サリシレート、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなどのような非麻薬;オピオイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン);抗癌剤;抗痙攣剤;抗嘔吐剤;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性薬物;エストロゲン;抗菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固剤;抗痙攣薬;抗鬱薬;抗ヒスタミン薬;および免疫学的因子が挙げられる。
【0054】
本発明の組成物中に含められ得る適切な生物活性剤のその他の例としては、ウイルスおよび細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにこれらのアナログ、ムテイン、および活性フラグメント(例えば、免疫グロブリン、抗体)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(β−IFN、α−IFN、およびγ−IFN)、エリスロポイエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インシュリン、抗腫瘍剤および腫瘍抑制剤、血液タンパク質、ゴナドトロピン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍抗原、細菌抗原およびウイルス抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;成長因子(例えば、神経成長因子、インシュリン様成長因子);タンパク質インヒビター、タンパク質アンタゴニスト、およびタンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNAおよびRNA);オリゴヌクレオチド;およびリボザイムが挙げられる。
【0055】
コラーゲンのようなタンパク質およびグリコサミノグリカンのような天然に存在する多糖の誘導体を含む天然に存在するポリマーが、必要に応じて、生物活性剤として本開示の組成物中に取り込まれ得る。
【0056】
単一の生物活性剤が本発明の組成物を形成するために利用され得るか、代替の実施形態では、生物活性剤の任意の組み合わせが本発明の組成物を形成するために利用され得る。
【0057】
上記に記載される官能性付与された第1の成分および第2の成分の存在に起因して、本発明の組成物は、組織への投与に際し、架橋し、優れた組織接着剤または封止剤として供されるゲルマトリックスを形成する。通常、架橋反応は、約20℃〜約40℃、実施形態では約25℃〜約37℃の温度で行われ得る。本開示の組成物の架橋を達成するための正確な反応条件は、上記成分の官能基、エンドキャップの程度、官能性付与の程度、触媒の存在、存在するならば特定の溶媒などを含む種々の因子に依存する。
【0058】
本開示の組成物が、薬物またはタンパク質の送達のために意図される場合、上記官能性付与された第1の成分および第2の成分の量は、生体吸収性の組成物中の薬物またはポリマーの初期保持およびそれに続く放出を促進するように調節され得る。このような調節を行うための方法および手段は、当業者に容易に明らかである。
【0059】
本開示の接着剤および/または封止剤を形成するために利用される第1の成分および第2の成分を含む希釈溶液は、当該分野の範囲内の任意の方法を利用して合わされ得、この方法としては、混合、ブレンド、浸漬、ブラッシングなど、または組織表面上への組成物の任意のその他の直接操作、または上記表面上への組成物の噴霧が挙げられる。開放手術では、手、鉗子などによる塗布が企図される。内視鏡手術では、上記組成物は、トロカールのカニューレを通じて送達され得、そしてその部位で当該技術分野で公知の任意のデバイスによって広げられ得る。
【0060】
例えば、いくつかの実施形態では、上記イソシアネート官能性の第1の成分および希釈溶液中の第2の成分は、スパチュラのような簡単なデバイスでの混合を用いて合わされ得る。その他の実施形態では、上記第1の成分および希釈液中の上記第2の成分は、これら2つの成分を第1のシリンジ中に単に配置すること、そしてこの第1のシリンジの内容物を、第2のシリンジ中に吐き出すこと、次いで、この第2のシリンジの内容物を上記第1のシリンジ中に吐き出すこと、そしてこれら2つのシリンジ間で、これら成分が混合されるまで繰り返すことにより合わせられ得る。
【0061】
それ故、いくつかの実施形態では、上記第1の成分および希釈溶液中の第2の成分は、投与前に合わせられ得る。これは、本開示の組成物が、間隙充填剤として、または動物身体における欠陥を充填するために利用されるべきである場合、架橋の状態および程度をより正確に制御するために有利であり得る。例えば、動物組織中の間隙を充填するための使用の前に上記組成物を部分的に架橋することが所望され得る。このような場合、本開示の組成物は、間隙または欠陥に塗布され得、そして硬化され、それによって間隙または欠陥を充填する。
【0062】
その他の実施形態では、上記第1の成分は、希釈溶液中の上記第2の成分と、投与の際に合わせられ得る。1つの例は、上記第1の成分を上記第2の成分から分離して維持すること、およびこれら個々の成分を、同じ位置に連続的な様式で噴霧すること、それによってこれら2つの成分を混合し、インサイチュで結合を形成させることを含む。別の例は、上記第1の成分を上記第2の成分から分離して維持すること、およびこれら2つの成分を噴霧器またはノズルのような同じデバイスを通じて同時に噴霧すること、それによってこれら2つの成分が組織上に噴霧されながら混合され、そのときそれらがインサイチュで結合を形成するようにすることを含む。
【0063】
投与のときに上記2つの成分を合わせるための方法は、当該分野の範囲内にあり、そして、例えば、これら2つの成分を、代表的には、ディスペンサーの前に上記第1の成分および第2の成分の混合を提供する従来の接着剤ディスペンサーから分注することを含む。このようなディスペンサーは、例えば、米国特許第4,978,336号、同第4,361,055号、同第4,979,942号、同第4,359,049号、同第4,874,368号、同第5,368,563号および同第6,527,749号に開示され、これら各々の全体の開示は本明細書中に参考として援用される。
【0064】
本開示の組成物は、多くの異なるヒトおよび動物の医療適用(創傷閉鎖(手術切開およびその他の創傷)が挙げられるが、それに限定されない)のために用いられ得る。接着剤は、縫合糸、ステープル、クランプ、テープ、包帯などの置換物、または補充物としてのいずれかで組織を一緒に結合するために用いられ得る。本発明の組成物の使用は、現在の実施の間に通常必要な縫合糸の数をなくし得るか、または実質的に低減し得、そしてステープルおよび特定のタイプの縫合糸の除去のための引き続く必要性を排除する。本明細書中に記載される組成物は、それ故、縫合糸、クランプまたはその他の従来の組織閉鎖機構がさらなる組織損傷を引き起こし得る繊細な組織との使用のために特に適切であり得る。例えば、本開示の組成物は、機械的ストレスを引き起こし得る従来ツールの代わりに、肺組織のような繊細な組織を一緒に封止または接着するために用いられ得る。本発明の組成物はまた、組織中の空気および/または流体の漏れを封止するため、ならびに手術後の接着を防ぐため、および組織中の間隙および/または欠陥を充填するために用いられ得る。
【0065】
2つの組織エッジの連結を達成するために、これら2つのエッジは接近され得、そして本開示の組成物がこれら2つの接近されたエッジに塗布され得る。この組成物は、ほぼ1分未満で急速に架橋する。本開示の組成物は、それ故、創傷に塗布され得、そして硬化され、それによってこの創傷を閉鎖する。
【0066】
本明細書中に記載される組成物はまた、封止剤として用いられ得る。封止剤として用いられるとき、本開示の組成物は手術中で用いられ得、外科的手順の間およびその後の両方で出血または流体の漏れを防ぐか、または阻害する。それはまた、肺手術に付随する空気の漏れを防ぐために塗布され得る。本明細書中の組成物は、所望の領域に、少なくともこの組織中の任意の欠陥を封止するのに十分な量で直接塗布され得、そして流体または空気移動を封止する。上記組成物はまた、縫合ラインまたはステープルラインで血液またはその他の流体の漏れを防ぐか、または制御するために用いられ得る。
【0067】
本発明の組成物はまた、再構築手術の間に皮膚移植片を付着し、そして組織弁を位置決めするために用いられ得る。あるいは、本発明の組成物は、歯周手術において組織弁を閉鎖するために用いられ得る。
【0068】
別の実施形態では、本開示は、医療用デバイスを組織に接着するために本開示の組成物を用いるための方法に関する。適切な医療用デバイスは移植片を含む。その他の医療用デバイスは、ペースメーカー、ステント、シャントなどを含むがそれらに限定されない。一般に、デバイスを動物組織の表面に接着するために、本開示の組成物は、このデバイスに、または組織表面に、あるいはその両方に塗布され得る。これデバイスおよび組織表面は、次いで、それらの間で本発明の組成物と接触される。一旦、この組成物が架橋し、そして硬化すると、このデバイスと組織表面は、互いに効率的に接着される。
【0069】
本発明の組成物はまた、手術後接着を防ぐために用いられ得る。このような用途において、本開示の組成物は塗布され、そして硬化されて、治癒プロセスの間の手術部位で接着の形成を防ぐために内部組織の表面上で層を形成する。
【0070】
得られた生体吸収性組成物は、多くの有利な性質を有する。本開示の生体吸収性組成物は安全であり、組織への増大された接着を有し、生分解性であり、増大された止血能力を有し、低コストであり、そして調製および使用が容易である。上記生体吸収性組成物を形成するために利用される化合物の選択を変えることにより、上記生体吸収性組成物の強度および弾性は、ゲル化時間のように制御され得る。
【0071】
本開示の組成物で形成される接着剤および/または封止剤は、優れた強度および類似の物理的性質を有する。例えば、ブタ組織に塗布され、そして重ね剪断、すなわち、組織の2つの片を分離するために必要な引っ張り力について試験されるとき、本開示の組成物は、組織への塗布後約2分以内に、約0.8kg〜約2kg、実施形態では約1kg〜約1.5kg、その他の実施形態では約1.4kgの平均重ね剪断を示す。本開示の組成物で形成された接着剤および/または封止剤は、上記第1の成分を上記第2の成分と接触した後、迅速に(実施形態では約1秒〜約5分、その他の実施形態では約30秒〜約2分に)形成する。
【0072】
本明細書中の組成物は、伸展性のゲルマトリックスを迅速に形成し、これは、組織エッジまたは移植された医療用デバイスの所望の位置における安定な位置決めを保証し、そして全体の必要な手術/塗布時間を低下する。得られた組成物は、ゲルマトリックス形成に際し、膨潤がほとんどないか、またはなく、そしてそれ故、整列された組織エッジの位置一体性および/または医療用デバイスの位置を保持する。上記組成物は、強力な粘着性のある結合を形成する。それは優れた機械的性能および強度を示し、その一方、生存組織を接着するために必要な柔軟性を保持する。この強度および柔軟性は、外科組織エッジをシフトすることなく、組織のある程度の移動を可能にする。
【0073】
以下の実施例は、本開示の実施形態を示すために呈示される。これら実施例は、例示のみであることが意図され、そして本開示の範囲を制限することは意図されない。また、部および%は、他に示されない限り重量による。
【実施例】
【0074】
(実施例1)
イソシアネート−官能基の第1の成分は以下のように調製された:PEG600(Sigma Aldrich,St.Louis,MOから市販され入手可能)を約65℃まで約3時間、窒素をこのPEG600中に泡立てながら加熱した。約275gのPEG600を、次いで約730グラムのテトラヒドロフラン(THF)中に溶解した。約53gのピリジンを約200グラムのTHF中に溶解した。このピリジン溶液を、次いで、上記PEG600−THF溶液と合わせた。約56グラムの塩化アジポイルを約653mlのTHF中に溶解した。この塩化アジポイル溶液を、PEG600およびピリジンを含むその他のTHF溶液に、1分間あたり約100滴の速度で完全に滴下した。この溶液を約2時間撹拌下で維持した。この材料を次いで濾過し、ピリジン−塩酸塩を除去し、そして濾液をROTAVAPOR(登録商標)エバポレーターを用いて濃縮した。この溶液を次いで約2.5リットルのエチルエーテル中で沈殿させた。
【0075】
この沈殿物、PEG600−アジペート(ポリオール)を真空下で乾燥した。約195グラムのPEG−アジペートを、次いでSigma Aldrichからの約100グラムの約80%のトルエン2,4−ジイソシアネート(TDI)と合わせた。この混合物を、静的窒素の下、約4時間の間、1分間あたり約150回転(rpm)で混合しながら、約65℃まで加熱した。得られた産物を、石油エーテルを添加し、そして約300rpmで約20分間混合し、ついでデカントすることにより(このステップを少なくとも3回繰り返した)、過剰(未反応)TDIから清浄にした。得られた材料、TDI官能性付与PEG600アジペートを、真空下に置き、そして一晩乾燥した。
【0076】
最後に、Sigma−Aldrichから得たトリメチロルプロパン(TMP)を、このTMP中に乾燥窒素をバブリングしながら、約2時間の間約110℃まで加熱することにより乾燥した。約100グラムの上記TDI官能性付与PEG600アジペートを、次いで約1グラムのこのTMPと合わせた。この混合物を約65℃まで加熱し、そして静的窒素下で約72時間の間約50rpmで混合した。この第1の成分を、シリンジ中に移し、そして乾燥ボックス中に貯蔵した。
【0077】
約25mgのビス(3−アミノプロピル)アミンを、溶媒としての約50gの水に添加し、ビス(3−アミノプロピル)アミンを約0.05重量%の濃度で有する希釈溶液を形成した。この希釈溶液の約0.1mlを約0.1mlの上記第1の成分と接触させ、本開示の組成物を形成した。
【0078】
得られた組成物を、重ね剪断試験に供した。簡単に述べれば、この重ね剪断試験を、以下のように実施した。接着剤の剪断力を、約1.5×4.5cmの面積に切断したブタの腸基質を用いて試験した。約0.1mlの第1の成分および0.1mlの上記に記載の希釈溶液をブタ組織に塗布し、本開示の組成物を形成した。本開示の組成物を、約1.5×1cmの領域上に塗布した。別の片の基質を、本開示の組成物を塗布した領域上に置いた。約20グラムの重量を、約30秒の間、両方の基質の頂部上に置き、本開示の組成物の適正な結合を確実にし、そしてその厚みを制御した。本開示の組成物を、約2分間硬化させた。張力計を用いて、両方の基質間に生成された接着結合により及ぼされる剪断力を測定した。
【0079】
本開示の組成物は、約1.4kgの重ね剪断を有した。これらの結果は、従来の材料が、より長い、いくつかの場合には約5分またはより長いの硬化時間の後、約1.2kgの重ね剪断を有するに過ぎないことを考慮すれば優れていた。
【0080】
本明細書中に記載される実施形態の種々の改変物および変更物は、前述の詳細な説明から当業者に明らかである。このような改変物および変更物は、添付の請求項の範囲内に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのイソシアネート末端成分を、少なくとも1つのアミンを溶液の約0.01重量%〜約0.5重量%の濃度で含む希釈溶液と接触させる工程;および
該少なくとも1つのイソシアネート末端成分と該少なくとも1つのアミンをインサイチュで反応させる工程であって、それによって生体適合性組成物を形成する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのイソシアネート末端成分が、式:
【化1】

であり、ここで、Xがポリエーテル、ポリエステルまたはポリエーテル−エステル基であり;そしてRが脂肪族または芳香族基であり、そして該少なくとも1つのイソシアネート末端成分が、約1000g/mol〜約20000g/molの分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Xが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリエーテルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
Xが、トレメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、グリコリド、ラクチド、1,5−ジオキセパン−2−オン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、およびそれらの組み合わせから選択されるポリエステルである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
Xが、ポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール−ポリラクチド、ポリエチレングリコール−ポリグリコリド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリエーテル−エステル基である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記アミンが、ビス(3−アミノプロピル)アミン、スペルミン、ポリエーテルアミン、トリリジン、エチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、ブタン−1,4−ジアミン、ペンタン−1,5−ジアミン、ヘキサン−1,6−ジアミン、フェニレンジアミン、および約50g/mol〜約500g/molの分子量を有するそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記溶液が、水、エタノール、トリエチレングリコール、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ポリエチレングリコール、メトキシ−ポリエチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、エチルアミルケトン、エチルラクテート、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アミンの前記少なくとも1つのイソシアネート末端成分に対する比が、約1:10〜約10:1w/wである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、約0.8kg〜約2kgの重ね剪断を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのイソシアネート末端成分および前記少なくとも1つのアミンが、接触後約1秒〜約5分以内に生体適合性組成物を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の生体適合性組成物を含む、接着剤。
【請求項12】
少なくとも1つのイソシアネート末端成分を、ビス(3−アミノプロピル)アミン、スペルミン、ポリエーテルアミン、トリリジン、エチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチレンジアミン、ブタン−1,4−ジアミン、ペンタン−1,5−ジアミン、ヘキサン−1,6−ジアミン、フェニレンジアミン、および約50g/mol〜約500g/molの分子量を有するそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアミンを、溶液の約0.01重量%〜約0.5重量%の濃度で含む希釈溶液と接触させる工程;および
該少なくとも1つのイソシアネート末端ポリウレタンと該少なくとも1つのアミンとをインサイチュで反応させる工程であって、それによって生体適合性組成物を形成する工程
を含む、方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのイソシアネート末端成分が、式:
【化2】

であり、ここで、Xがポリエーテル、ポリエステルまたはポリエーテル−エステル基であり;そしてRが脂肪族または芳香族基であり、そして該少なくとも1つのイソシアネート末端成分が、約1500g/mol〜約10000g/molの分子量を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
Xが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリエーテルである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
Xが、トレメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、グリコリド、ラクチド、1,5−ジオキセパン−2−オン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、およびそれらの組み合わせから選択されるポリエステルである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
Xが、ポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール−ポリラクチド、ポリエチレングリコール−ポリグリコリド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリエーテル−エステル基である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記溶液が、水、エタノール、トリエチレングリコール、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ポリエチレングリコール、メトキシ−ポリエチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、エチルアミルケトン、エチルラクテート、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記アミンの前記少なくとも1つのイソシアネート末端成分に対する比が、約1:10〜約10:1w/wである、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、約0.8kg〜約2kgの重ね剪断を示す、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つのイソシアネート末端成分および前記少なくとも1つのアミンが、接触後約1秒〜約5分以内に生体適合性組成物を形成する、請求項12に記載の方法。

【公開番号】特開2009−119277(P2009−119277A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292809(P2008−292809)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】