説明

生体材料およびその使用

テネイシンCの生物活性を調整する、慢性炎症反応の調整ための作用物質が提供される。テネイシンCおよび慢性炎症を調整する作用物質を同定する方法もまた提供される。そのような作用物質の使用もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性炎症におけるテネイシンCおよびその活性に関する。テネイシンCおよびその生物活性のモジュレーター、ならびに、慢性炎症を上方制御または下方制御する作用物質の同定におけるテネイシンCのさらなる使用もまた提供される。
【背景技術】
【0002】
炎症は、病原体、組織損傷、または刺激物などの有害な刺激に対する組織の複雑な生物学的反応である。炎症は、組織が、損傷を与える刺激を除去しようとする、また組織の治癒過程を開始しようとする保護的試みである。炎症に関連する異常は、様々なヒト疾患のもとになる、大きな関連のない障害のグループ(炎症性障害)を含む。炎症性の態様を有する疾患の例は、喘息、自己免疫疾患、糸球体腎炎、アレルギー(過敏症)、炎症性腸疾患、再灌流傷害、関節リウマチおよび移植片拒絶反応を含む(がこれらに限定的されない)。
【0003】
特に、慢性炎症は、上記の疾患の多くに関連する消耗性の重篤な状態であり、感染または傷害の部位の持続性の炎症によって、または自己免疫疾患などにおける変更された免疫反応との関連で特徴付けられる。
【0004】
関節リウマチ(RA)は、決してこれだけではないが、慢性の炎症状態の典型的な例である。RAは、炎症誘発性サイトカインおよびマトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)の持続的な合成によって仲介される、滑膜炎症および関節の軟骨および骨破壊によって特徴付けられる。TNFαおよびIL-6などの炎症性サイトカインの合成を抑制する生物学的化合物は、短期間でRAを治療することに成功している。しかしながら、治療を繰り返すことが必要であり、このことがこの化合物を費用のかかる治療手法にしており、長期間の寛解をもたらさない。さらに、サイトカイン機能の全身的抑制は、感染リスクの増加などの固有の問題を免れない。したがって、ケアの進歩にもかかわらず、長期間にわたって効果的な慢性炎症治療の経済的な方法の必要性は満たされていないままである(Smolen(2006)およびWilliams(2007))。
【0005】
疾患の慢性化を支えている機構は不明なままであり、炎症および破壊のメディエーターの長期間の発現を推進する因子は現在分かっていない。
【0006】
Toll様受容体(TLR)は、RAにおける炎症性メディエーター産生の推進において重要な役割を果たしており、TLR機能の妨害は、臨床的に大いに有益である可能性がある(Brentano(2005)およびO'Neill(2002)において概説されている)。この受容体ファミリーは、免疫系の不可欠な部分を形成する。TLRは、病原体関連分子パターン(PAMP)および損傷関連分子パターン(DAMP)の両方を認識することによって、感染および傷害に対する宿主防御を仲介する(Matzinger(2002))。DAMPは、組織傷害により生成される内因性の炎症誘発性分子であり、損傷細胞もしくは壊死細胞から放出される細胞内分子、細胞外マトリックス(ECM)分子のフラグメントまたは傷害により上方制御されるECM分子を含む(Bianchi(2007)およびGordon(2002)において概説されている)。
【0007】
活性化により、TLRは、炎症誘発性サイトカインおよびMMPの発現の刺激を含む自然免疫および適応免疫反応の両方を促進する(Medzhitov(2002))。TLRは、RA患者の滑膜組織において高いレベルで発現され(Radstake(2004)、Roelofs(2005)、Sacre(2007)、および(Sacre、原稿提出2008)、TLR4に標的欠失または機能喪失型突然変異を有するマウスは、実験的関節炎から保護される(Choe(2003)およびLee(2005)。さらに、TLR4の阻害剤は、マウスにおいて破壊性関節炎を減少させることができ(Abdollahi-Roodsaz(2007))、推定のTLR4阻害剤は、予備の第I相試験において中等度から重度のRA患者23人のうち15人において症状を改善した(Vanags(2006)。しかしながら、どのTLRリガンドが疾患病原性に関与しているかは不明である。
【0008】
テネイシンCは、組織の傷害および創傷修復に関連するECM糖タンパク質である。テネイシンCは、胚発生中の活性な組織リモデリング中に特異的に発現され、原腸形成および体節形成中に最初に観察される。発生の後期段階において、発現は、発生中の骨格、心血管系における、および上皮から間充織への転換部位の結合組織における、乳腺および肺の分岐形態形成の部位に制限される。これらのプロセスが終了すると、また、胚発生が完了する前に、発現は下方制御される(Jones(2000))。
【0009】
テネイシンCは、健康な成人の組織において通常発現されないが、成人において、急性炎症中は特異的かつ一過的に上方制御され、慢性炎症において持続的に発現される(Chiquet-Ehrismann(2003)において概説されている)。免疫組織化学的研究は、正常なヒト関節においてテネイシンCはほとんど発現されないが、炎症および線維症の領域ではRA滑膜において、侵入しているパンヌス中および血管周囲では特に滑膜表層下で、レベルが大幅に増加することを示す(Cutolo(1992)、MacCachren(1992)およびSalter(1993))。RA患者の滑膜において(Chevalier(1994)およびHasegawa(2007))およびRA軟骨において(Salter(1993)およびChevalier(1994))、テネイシンCレベルも顕著に増加する。
【0010】
テネイシンCは、150万Daの大きな6量体タンパク質である。各鎖は、アセンブリドメイン(TA)、EGF様リピート(EGF-L)、フィブロネクチンIII型様リピート(TNIII)およびフィブリノゲン様球状(FBG)を含む、様々なドメインを含む(Orend(2005)において概説されている)。テネイシンCおよびそのドメインの配列を、図13に示す。
【0011】
これまで、炎症におけるテネイシンCの役割は不明確であり、証拠は異なる免疫細胞に対して様々な作用を示していた。例えば、テネイシンCは、主なヒト末梢血および扁桃のリンパ球付着およびローリングを支持することが示されており、それにより、リンパ球遊走の刺激における役割を示唆している(Clark(1997))。加えて、テネイシンCヌルマウスは、マウスにおいてコンカナバリンAに誘導される肝臓傷害により、リンパ球浸潤の低下およびより低いレベルのIFN、TNFおよびIL-4 mRNAを示す(El-Karef(2007))。したがって、証拠は、テネイシンCが急性炎症細胞の活性の促進に関与していることを示唆する。しかしながら、テネイシンCはまた、インビトロで単球走化性を阻害することも報告されており(Loike(2001))、テネイシンCヌルマウスは、乳腺腫瘍間質における単球およびマクロファージの遊走の増加を示す(Talts(1999))。したがってこの証拠は、テネイシンCが、炎症細胞の阻害において役割を有することを示唆する。
【0012】
本発明者らは、テネイシンCが、関節炎において観察される関節の破壊性炎症に必要とされる、内因性のTLR4リガンドであることを示した。
【0013】
さらに、ここで、テネイシンCが炎症の誘導(急性炎症反応)とは関係していないが、その代わり、慢性炎症状態の特徴である炎症反応の延長に関与していることが示される。特に、テネイシンCは、TLR4の内因性アクチベーターであることがここで示され、関節の破壊性炎症にこの分子が必要とされることが証明された。
【0014】
関節における免疫反応の媒介におけるテネイシンCの役割は、インビボでのマウスにおけるテネイシンCのFBGドメインの関節内注射による関節の炎症の誘導によって証明された。さらに、ザイモサンによって誘導される急性関節炎症は、テネイシンC欠損マウスほど延長されなかった。野生型およびテネイシンCヌルマウスの両方が、ザイモサンによる急性炎症誘導に等しく応答し、テネイシンCが炎症の開始に関与していないようであることを証明した。しかしながら、テネイシンCヌルマウスにおいて示されたあまり持続しない滑膜炎は、関節の炎症の維持における役割を示した。関節の炎症を延長することにおけるテネイシンCの重要性は、テネイシンCの標的欠失が、mBSAによる免疫化によって誘導される関節炎の間、びらん性の関節炎症の持続からマウスを保護したという観察結果によって強調された。
【0015】
テネイシンCは、関節の細胞を活性化することができることがここで示されており、テネイシンCの主要活性ドメインは、分子のC末端のフィブリノゲン様球状(FBG)、227個のアミノ酸(26.9kDa)球状ドメインに位置付けられている(Siri(1991))。
【0016】
RA患者の滑膜の膜培養へのFBGの添加は、炎症誘発性サイトカインの自然発生的な放出を強化した。これははまた、TLR4およびMyD88依存性シグナル伝達経路の活性化を介して、初代ヒトマクロファージにおけるTNF-α、IL-6およびIL-8、ならびにRA滑膜線維芽細胞におけるIL-6の合成も刺激した。
【0017】
ここで、LPSの場合と同様に、FBGによるサイトカイン合成の誘導にはTLR4発現が必要であることが示されている。しかしながら、LPSとは異なり、CD14もMD-2も、TLR-4活性化に必要とされないようである。CD14は、他のリガンドによるTLR4の活性化にはなくてもよい。TLR4がMyD88依存的に脂質Aに応答することは必要とされず(Jiang(2005))、フィブロネクチンEDAは、CD14の非存在下であってもマスト細胞を活性化することができ(Gondokaryono(2007))、ヒト単球THP-1細胞のヒアルロン酸活性化は、TLR4、CD44およびMD-2の複合体を必要とするが、CD14は必要としない(Taylor(2007))。
【0018】
各TLR4リガンドによる別個の受容体複合体の形成は、様々な細胞内アダプター/シグナル伝達分子の補充を容易にし得る。このことは、FBGおよびLPSで本発明者らが観察する特異な細胞反応、例えば、RA滑膜線維芽細胞におけるFBGによるIL-8誘導の欠如の説明となり得る。同様に、TLR4およびCD44複合体のヒアルロン酸活性化は、LPSとは異なる、マウス肺胞マクロファージ細胞系における遺伝子発現パターンを誘導する(Taylor(2007))。FBGがヒトマクロファージにおけるIL-8合成を誘導することは、細胞型特異的なリガンド認識および/またはシグナル伝達が起こることを示唆する。
【0019】
厳密に制御されたテネイシンCの発現パターンは、慢性炎症を治療するための魅力的な標的である。テネイシンCは、健康な成人には大抵存在しないが、組織傷害が起こると発現が特異的に誘導される。急性炎症の間、テネイシンCは一過的に発現される:誘導は、炎症より前に起こることが多く、mRNAおよびタンパク質は両方とも、炎症が解消される時点までには組織に存在しなくなる(Chiquet-Ehrismann(2003)において概説されている)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第5,831,012号
【特許文献2】米国特許第4,816,567号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Hutvagner & Zamore、2002、Curr. Opin. Genetics and Development12:225〜232
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【非特許文献3】Hammondら、2001、Nat.Rev.Gen. 2:110〜119(2001)
【非特許文献4】Sharp、2001、Genes. Dev.15:485〜90
【非特許文献5】Tuschl、2001、Chem. Biochem. 2:239〜245
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【非特許文献7】Brantl、2002、Biochem. Biophys Act.1575:15〜25
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【非特許文献9】Kronenwettら、1998、Blood91:852〜62
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【非特許文献11】Lavigneら、1997、Biochem Biophys Res Commun237:566〜71
【非特許文献12】Aokiら、1997、Biochem Biophys Res Commun231:540〜5
【非特許文献13】Waltonら、1999、Biotechnol Bioeng65:1〜9
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【非特許文献60】Lysik & Wu-Pong、2003、J Pharm Sci2003 2(8):1559〜73
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【非特許文献62】Medina、2004、Curr Pharm Des.10(24):2981〜9
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【非特許文献64】Thompsonら、1994、Nuc. Acid Res.22:4673〜4680
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
テネイシンCの持続的な発現は、現在では、慢性炎症と関連していることが示されている。RAに加えて、テネイシンCレベルの増加は、多発性硬化症(Gutowski(1999))およびシェーグレン病(Amin(2001))を含む他の自己免疫疾患において、および難治性創傷ならびに糖尿病性および静脈性潰瘍(Loots(1998))において観察される。テネイシンCのデノボ合成は、口腔粘膜の疾患において炎症の強度と良好な相互関係を示し、テネイシンCの血漿レベルは、薬物療法または手術の前および後の炎症性腸疾患の活性についての信頼性のある指標である(Chiquet-Ehrismann(2003)において概説されている)。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の態様において、テネイシンCの生物活性を調整する、慢性炎症反応の調整のための作用物質が提供される。
【0024】
本発明の第1の態様の作用物質は、テネイシンCの転写、翻訳および/または結合特性を変更することによって、テネイシンCの生物活性を調整することができる。
【0025】
そのような作用物質は、
(a)例えば、サザンブロッティングまたは関連するハイブリダイゼーション技術によって、テネイシンCの発現レベルに対する試験作用物質の作用を決定することによるもの;
(b)例えば、抗テネイシンC抗体を使用したイムノアッセイによって、テネイシンCタンパク質のレベルに対する試験作用物質の作用を決定することによるもの;および
(c)例えば、実施例の方法によって、機能的マーカーまたはテネイシンC活性の結果に対する試験作用物質の作用を決定することによるもの
などの当技術分野においてよく知られている方法を使用して同定することができる。
【0026】
本発明の第1の態様の作用物質は、テネイシンCの生物活性を下方制御することができる。
【0027】
本発明の第1の態様の作用物質は、テネイシンCの生物活性を上方制御することができる。免疫および炎症性の分子および細胞の活性を上方制御することが望ましいのは、損なわれた免疫および炎症性の患者用の治療薬の製造およびワクチンの開発に関係している(Harandi(2009)参照)。
【0028】
本発明の第1の態様の作用物質は、テネイシンCの転写の阻害剤とすることができる。
【0029】
本発明の第1の態様の作用物質は、テネイシンCの翻訳の阻害剤とすることができる。
【0030】
本発明の第1の態様の作用物質は、テネイシンCの結合特性の阻害剤とすることができる。例えば、この作用物質は、その受容体に結合することができなくなるように、テネイシンCのコンフォメーションを変更することができる。
【0031】
本発明の第1の態様の作用物質は、テネイシンCの競合的結合阻害剤とすることができる。この作用物質はまた、直接(テネイシンC受容体アンタゴニストとして作用することによって)または間接的に(中間分子または補助(assisting)分子に結合することによって)テネイシンC受容体機能を妨害することによって、テネイシンCの生物活性を阻害することもできることが当業者に理解されよう。
【0032】
本発明の第1の態様の作用物質は、TLR-4受容体のアンタゴニストとすることができる。
【0033】
本発明の作用物質によるテネイシンCの生物活性の阻害は、全部の阻害または一部の阻害であってもよいことが当業者に理解されよう。例えば、作用物質は、テネイシンCの生物活性を、作用物質に曝露されていない炎症細胞におけるテネイシンCの生物活性と比較して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%、および最も好ましくは100%阻害してもよい。
【0034】
本発明の第1の態様の作用物質は、短鎖干渉RNA(SiRNA)分子、短鎖ヘアピンRNA分子(shRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、テネイシンCに対する結合親和性を有する化合物、抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)およびその抗原結合フラグメント、低分子阻害化合物、ポリペプチドおよびタンパク質からなる群から選択することができる。
【0035】
本発明の一実施形態において、作用物質はsiRNAである。RNA干渉は、2段階プロセスである。第1段階、これは開始段階と称され、投入されたdsRNAは、dsRNA(直接または導入遺伝子もしくはウイルスを介して導入される)をATP依存的にプロセシングする(切断する)dsRNA特異的リボヌクレアーゼのRNase IIIファミリーのメンバーであるDicerの作用によると考えられるが、消化されて21〜23ヌクレオチド(nt)の低分子干渉RNA(siRNA)となる。切断事象がうまくいくと、RNAを分解して、2ヌクレオチドの3'オーバーハングをそれぞれ有する19〜21bpの二本鎖(siRNA)にする(Hutvagner & Zamore、2002、Curr. Opin. Genetics and Development12:225〜232; Bernstein、2001、Nature409:363〜366)。
【0036】
エフェクター段階において、siRNA二本鎖は、ヌクレアーゼ複合体に結合して、RNA誘導サイレンシング複合体 (RISC)を形成する。siRNA二本鎖のATP依存的な巻き戻しは、RISCの活性化のために必要とされる。次いで活性なRISCは、塩基対形成相互作用によって同種の転写産物を標的化し、siRNAの3'末端からmRNAを12ヌクレオチドフラグメントに切断する(Hutvagner & Zamore、2002、上記;Hammondら、2001、Nat.Rev.Gen. 2:110〜119(2001); Sharp、2001、Genes. Dev.15:485〜90)。切断機構は未だ解明中であるが、研究は、各RISCが単一のsiRNAおよびRNaseを含有することを示している(Hutvagner & Zamore,2002、上記)。
【0037】
RNAiの注目すべき潜在力を考慮して、RNAi経路の中での増幅段階が示唆されている。増幅は、より多くのsiRNAを生じるであろう投入されたdsRNAのコピーによって、または形成されたsiRNAの複製によって起こる可能性がある。その代わりに、またはそれに加えて、増幅は、RISCの多重ターンオーバー事象によって影響を受ける可能性がある(Hammondら、2001、上記; Hutvagner & Zamore、2002、上記)。RNAiに関するさらなる情報は、以下の概説、Tuschl、2001、Chem. Biochem. 2:239〜245、Cullen、2002、Nat. Immunol. 3:597〜599およびBrantl、2002、Biochem. Biophys Act.1575:15〜25において見出すことができる。
【0038】
本発明で使用するために適当なRNAi分子の合成は、以下の通り実施することができる。まず、テネイシンCのmRNA配列を、AAジヌクレオチド配列について、AUG開始コドンの下流に向かってスキャンする。各AAの出現および3'に隣接した19ヌクレオチドを、潜在的なsiRNA標的部位として記録する。好ましくは、制御タンパク質結合部位には非翻訳領域(UTR)がより多いため、siRNA標的部位は、オープンリーディングフレームから選択する。UTR結合タンパク質および/または翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合を妨げる可能性がある(Tuschl, ChemBiochem. 2:239〜245)。しかしながら、非翻訳領域を対象としたsiRNAもまた、有効であり得ることが理解されよう。
【0039】
第2に、潜在的な標的部位を、BLAST(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)などの配列アラインメントソフトウェアを使用して、適切なゲノムデータベース(例えばヒト、マウス、ラットなど)と比較する。他のコード配列に顕著な相同性を示す推定標的部位は、フィルターで除外する。
【0040】
適格となる標的配列を、siRNA合成のための鋳型として選択する。低G/C含量を含むものは、55%より高いG/C含量を有するものと比較して遺伝子抑制の仲介においてより有効であることが証明されているため、好ましい配列は、低G/C含量を含むものである。評価のために、標的遺伝子の全長に沿って、いくつかの標的部位が選択されることが好ましい。選択されたsiRNAのより良い評価のために、陰性対照が併せて使用されることが好ましい。陰性対照siRNAは、好ましくは、siRNAと同じヌクレオチド組成を含むが、そのゲノムに対する顕著な相同性を欠く。したがって、任意の他の遺伝子に対する顕著な相同性を全く示さないという条件で、siRNAのスクランブルヌクレオチド配列が使用されることが好ましい。
【0041】
適当なSiRNA分子は、それらが相補的であり、したがってテネイシンCの全体のヌクレオチド配列またはその部分に結合するように、上述した通り合成することができる。テネイシンCのヌクレオチド配列は、図14において見出される。
【0042】
一実施形態において、作用物質は、短鎖ヘアピンRNA(ShRNA)であってもよい。
【0043】
低分子ヘアピンRNAまたは短鎖ヘアピンRNA(shRNA)は、RNA干渉によって遺伝子発現を抑制するために使用することができる、急なヘアピンカーブを作る一連のRNAである。shRNAは、細胞中に導入されたベクター(典型的にはアデノウイルスまたはレンチウイルス)を使用し、U6プロモーターを利用して、shRNAが常に発現されるのを確実にする。このベクターは、通常、娘細胞に伝えられ、遺伝子抑制が受け継がれるようにする。shRNAヘアピン構造は、細胞の機構によって切断されてsiRNAとなり、これが、次いで、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に結合する。この複合体は、それが結合しているsiRNAに一致するmRNAに結合して切断する(Mclntyre(2006)and Paddison(2002))。
【0044】
本発明の第1の態様の作用物質は、テネイシンCのドメインまたはその変異体とすることができる。FBGドメインは、慢性炎症の持続性との関連で、テネイシンCのその標的との相互作用に主に関与することが示されている。したがって、好ましいドメインは、FBGドメイン(図13に示した配列)またはその変異体である。
【0045】
代替の実施形態において、作用物質は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0046】
テネイシンCレベル/活性を効率的に減少させるために使用することができるアンチセンス分子の設計は、アンチセンス手法にとって重要な2つの態様を考慮することを必要とする。第1の態様は、オリゴヌクレオチドの、癌細胞の細胞質中への送達であり、一方、第2の態様は、細胞内の指定されたmRNAに、その翻訳を阻害するように、特異的に結合するオリゴヌクレオチドの設計である。
【0047】
従来技術は、オリゴヌクレオチドを広範な種類の細胞タイプ中に効率的に送達するために使用することができる、いくつかの送達戦略を教示している(例えば、Luft、1998、J Mol Med76:75〜6; Kronenwettら、1998、Blood91:852〜62; Rajurら、1997、Bioconjug Chem 8:935〜40; Lavigneら、1997、Biochem Biophys Res Commun237:566〜71; Aokiら、1997、Biochem Biophys Res Commun231:540〜5を参照されたい)。
【0048】
加えて、標的mRNAおよびオリゴヌクレオチドの両方において構造変化のエネルギー特性の原因となる熱力学的サイクルに基づいて、それらの標的mRNAに対して最も高い予測される結合親和性を有するそれらの配列を同定するためのアルゴリズムが、利用可能である(例えば、Waltonら、1999、Biotechnol Bioeng65:1〜9を参照されたい)。
【0049】
インビトロ系を使用して、特異的オリゴヌクレオチドの有効性を設計および予測するためのいくつかの手法もまた知られている(例えば、Matveevaら、1998、Nature biotechnology16:1374〜1375を参照されたい)。
【0050】
いくつかの臨床的手がかりが、アンチセンスオリゴヌクレオチドの安全性、実行可能性および活性を実証している。例えば、癌を治療するために適当なアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用に成功している(Holmlundら、1999、Curr Opin Mol Ther 1:372〜85; Gerwitz、1999、Curr Opin Mol Ther 1:297〜306)。より最近では、ヒトへパラナーゼ遺伝子発現のアンチセンスに仲介される抑制は、マウスモデルにおけるヒト癌細胞の胸膜播種を阻害することが報告された(Unoら、2001、Cancer Res61:7855〜60)。
【0051】
したがって、当業者は、テネイシンCの発現を調整するのに適当なアンチセンス手法を容易に設計および実行することができる。
【0052】
有利には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが15〜35塩基である。例えば、20merのオリゴヌクレオチドは、上皮成長因子受容体mRNAの発現を阻害することが示されており(Wittersら、Breast Cancer Res Treat53:41〜50(1999))、25merのオリゴヌクレオチドは、副腎皮質刺激ホルモンの発現を90%を超えて減少させることが示されている(Frankelら、J Neurosurg91:261〜7(1999))。しかしながら、この範囲外の、例えば10、11、12、13、または14塩基、または36、37、38、39または40塩基の長さを有するオリゴヌクレオチドを使用することが望ましい場合もあることが理解される。
【0053】
オリゴヌクレオチドは、細胞の内因性ヌクレアーゼによって分解または不活性化されやすいことが当業者にはさらに理解されよう。この問題に取り組むために、例えば、天然のホスホジエステル結合を別の結合で置き換えた、改変されたヌクレオチド間結合を有する、修飾されたオリゴヌクレオチドを使用することが可能である。例えば、Agrawalら(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA85、7079〜7083は、オリゴヌクレオチドホスホルアミダートおよびホスホロチオエートを使用して、HIV-1の組織培養における阻害の増加を示した。Sarinら(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA85、7448〜7451は、オリゴヌクレオチドメチルホスホネートを使用して、HIV-1の阻害の増加を実証した。Agrawalら(1989)Proc. Natl. Acad. Sci. USA86、7790〜7794は、ヌクレオチド配列特異的オリゴヌクレオチドホスホロチオエートを使用して、感染初期のおよび慢性的に感染させた細胞培養物の両方において、HIV-1複製の阻害を実証した。Leitherら(1990)Proc. Natl. Acad. Sci. USA87、3430〜3434は、オリゴヌクレオチドホスホロチオエートによるインフルエンザウイルス複製の組織培養における阻害を報告している。
【0054】
人工的な結合を有するオリゴヌクレオチドは、インビボでの分解に対して耐性であることが示されている。例えば、Shawら(1991)Nucleic Acids Res.19、747〜750によれば、それ以外には修飾されていないオリゴヌクレオチドは、ある特定のキャップ構造によって3'末端がブロックされている場合、インビボでヌクレアーゼに対してより耐性になること、および、キャップのないオリゴヌクレオチドホスホロチオエートは、インビボで分解されないことが報告されている。
【0055】
オリゴヌクレオシドホスホロチオエート合成のためのH-ホスホネート手法の詳細な説明は、その教示が参照により本明細書に組み込まれる、AgrawalおよびTang(1990)Tetrahedron Letters31、7541-7544に記載されている。オリゴヌクレオシドメチルホスホネート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミダート、リン酸エステル、架橋されたホスホルアミダートおよび架橋ホスホロチオエートの合成は、当技術分野において知られている。例えば、それらの教示が参照により本明細書に組み込まれる、AgrawalおよびGoodchild(1987)Tetrahedron Letters28、3539; Nielsenら(1988)Tetrahedron Letters29、2911; Jagerら(1988)Biochemistry27、7237; Uznanskiら(1987)Tetrahedron Letters28、3401; Bannwarth(1988)Helv. Chim. Acta.71、1517; CrosstickおよびVyle(1989)Tetrahedron Letters30、4693; Agrawalら(1990)Proc. Natl. Acad. Sci. USA87、1401〜1405を参照されたい。合成または製造のための他の方法もまた可能である。好ましい一実施形態において、オリゴヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)であるが、リボ核酸(RNA)配列もまた、合成および適用されてもよい。
【0056】
本発明において有用なオリゴヌクレオチドは、好ましくは、内因性の核酸分解酵素による分解を阻止するように設計される。オリゴヌクレオチドのインビボでの分解は、長さの減少したオリゴヌクレオチド分解生成物を生じる。そのような分解生成物は、非特異的ハイブリダイゼーションに関わる可能性が高く、それらの完全長に相当するものと比べて効率的である可能性が低い。したがって、体内での分解に耐性であり、標的とする細胞に到達することができるオリゴヌクレオチドを使用することが望ましい。本オリゴヌクレオチドは、ネイティブなホスホジエステル結合を1つまたは複数の内部の人工的なヌクレオチド間結合で置換すること、例えば、結合中のリン酸を硫黄と置き換えることによって、インビボでの分解に対してより耐性とすることができる。使用することができる結合の例は、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、スルホン、硫酸エステル、ケチル、ホスホロジチオエート、様々なホスホルアミダート、リン酸エステル、架橋されたホスホロチオエートおよび架橋されたホスホルアミダートを含む。他のヌクレオチド間結合が当技術分野においてよく知られていることから、そのような例は、限定的ではなく例示的なものである。ホスホジエステルヌクレオチド間結合が置換されたこれらの結合の1つまたは複数を有するオリゴヌクレオチドの合成は、混合型のヌクレオチド間結合を有するオリゴヌクレオチドを生成するための合成経路を含めて、当技術分野においてよく知られている。
【0057】
オリゴヌクレオチドを、5'または3'末端のヌクレオチドに「キャッピングすること(capping)」または同様の基を組み込むことによって、内因性酵素による伸長に対して耐性とすることができる。キャッピングのための試薬は、Amino-Link II(商標)としてApplied BioSystems Inc、フォスターシティ、CAから市販されている。キャッピングのための方法は、例えば、Shawら(1991)Nucleic Acids Res.19、747〜750およびAgrawalら(1991)Proc. Natl. Acad. Sci USA88(17)、7595〜7599によって記載されている。
【0058】
オリゴヌクレオチドをヌクレアーゼの破壊作用に対して耐性にするさらなる方法は、Tangら(1993)Nucl. Acids Res.21、2729〜2735によって記載されているように、それらのオリゴヌクレオチドが「自己安定化される」ことである。自己安定化オリゴヌクレオチドは、その3'末端にヘアピンループ構造を有し、ヘビ毒ホスホジエステラーゼ、DNAポリメラーゼIおよびウシ胎児血清による分解に対する耐性の増加を示す。オリゴヌクレオチドの自己安定化された領域は、相補的な核酸とのハイブリダイゼーションに干渉せず、マウスにおける薬物動態研究および安定性研究は、それらの直鎖に対応するものと比較して、インビボでの自己安定化オリゴヌクレオチドの持続性の増加を示している。
【0059】
作用物質が、テネイシンCに対する結合親和性を有する化合物である一実施形態において、この化合物は、実質的に可逆的にまたは実質的に不可逆的に、テネイシンCの活性部位に結合することができる。さらなる例において、この化合物は、テネイシンCのリガンドまたは受容体への結合に干渉するように、活性部位ではないテネイシンCの部分に結合することができる。なおさらなる例において、この化合物は、アロステリック効果によるタンパク質活性を減少させるように、テネイシンCの部分に結合することができる。このアロステリック効果は、テネイシンCの活性の天然の制御、例えば、「上流のアクチベーター」によるテネイシンCの活性化に関与するアロステリック効果であってもよい。
【0060】
試験化合物とテネイシンCとの相互作用を検出するための方法は、当技術分野においてよく知られている。例えば、イオンスプレー質量分析/HPLC法または他の物理的および分析的方法による限外濾過が使用されてもよい。加えて、蛍光エネルギー共鳴移動(Fluorescence Energy Resonance Transfer)(FRET)法が使用されてもよく、この方法では、2つの蛍光標識された実体の結合を、互いにごく接近しているときの蛍光標識の相互作用を測定することによって測定することができる。
【0061】
高分子、例えば、DNA、RNA、タンパク質およびリン脂質に対するポリペプチドの結合を検出する代替の方法は、例えば、Plantら、1995、Analyt Biochem226(2)、342〜348に記載されているような、表面プラズモン共鳴アッセイを含む。方法は、例えば、放射性標識または蛍光標識で、標識されたポリペプチドを利用してもよい。
【0062】
本ポリペプチドに結合することができる化合物を同定するさらなる方法は、ポリペプチドが化合物に曝露され、前記ポリペプチドに対する化合物の何らかの結合が検出および/または測定される方法である。化合物のポリペプチドへの結合についての結合定数を、決定することができる。化合物のポリペプチドへの結合を検出および/または測定する(定量化する)適当な方法は、当業者によく知られており、例えば、ハイスループットオペレーションが可能な方法、例えばチップを用いる方法を使用して、実施することができる。VLSIPS(商標)と呼ばれる新しい技術は、数十万以上の異なる分子プローブを含有する極小チップの製造を可能にした。これらの生物学的チップまたはアレイは、アレイ状に配置されたプローブを有し、各プローブは特定の位置に割り当てられている。各位置が、例えば、10ミクロンの尺度を有する生物学的チップが製造されてきた。このチップを使用して、標的分子がチップ上のプローブのいずれかと相互作用するかどうかを決定することができる。選択された試験条件下でアレイを標的分子に曝露させた後、スキャニング装置は、アレイ中の各位置を検査して、標的分子が、その位置でプローブと相互作用したかどうかを決定することができる。
【0063】
テネイシンCに対する結合親和性を有する化合物を同定する別の方法は、本発明のポリペプチドを使用して、テネイシンCに結合するタンパク質を「捕捉する」ために使用することができる酵母2ハイブリッドシステムである。酵母2ハイブリッドシステムは、Fields & Song、Nature340:245〜246(1989)において記載されている。
【0064】
本発明のさらなる実施形態において、作用物質は、テネイシンCに対してリガンド結合能を有する化合物である。
【0065】
例えば、作用物質は、テネイシンC受容体(FPRL1など)の可溶性フラグメントであってもよい。代替として、作用物質は、抗体を模倣する高親和性分子(いわゆる「アフィボディ(affibody)」)(例えば、米国特許第5,831,012号およびwww.affibody.seを参照されたい)であってもよい。これらのリガンドは、プロテインA(細菌の黄色ブドウ球菌の表面タンパク質)のIgG結合ドメインの1つの足場を基礎とする3へリックスバンドルで構成される、小さい単純なタンパク質である。この足場は、親和性リガンドとして優れた特徴を有し、任意の所与の標的タンパク質に対して高い親和性で結合するように設計することができる。
【0066】
本発明の第1の態様の作用物質は、抗体またはその抗原結合フラグメントであってもよい。抗原結合フラグメントは、Fvフラグメント(例えば、単鎖Fvおよびジスルフィド結合したFv)、Fab様フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fab'フラグメントおよびF(ab)2フラグメント)、単一可変ドメイン(例えば、VHおよびVLドメイン)およびドメイン抗体(単一型および二重型[すなわちdAb-リンカー-dAb]を含むdAb)からなる群から選択することができる。
【0067】
抗体は、好ましくは、特に、TLR4を活性化するFBGドメインに結合することができる。
【0068】
完全な抗体ではなく抗体フラグメントを使用することには、数倍の利点がある。より小さいサイズのフラグメントは、固体組織の良好な浸透などの薬理学的特性の向上をもたらすことができる。さらに、Fab、Fv、ScFvおよびdAb抗体フラグメントなどの抗原結合フラグメントは、大腸菌(E. coli)において発現させ、そこから分泌させることができ、したがって、大量の前記フラグメントの製造を容易にする。
【0069】
例えば、ポリエチレングリコールまたは別の適当なポリマーの共有結合により修飾された、抗体およびその抗原結合フラグメントの修飾型もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0070】
抗体および抗体フラグメントを作製する方法は、当技術分野においてよく知られている。例えば、抗体分子のインビボでの産生の誘導、免疫グロブリンライブラリーのスクリーニング(Orlandi.ら、1989. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.86:3833〜3837; Winterら、1991、Nature349:293〜299)または培養における細胞系によるモノクローナル抗体分子の作製を用いるいくつかの方法のいずれか1つによって、抗体を作製することができる。これらは、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEpstein-Barrウイルス(EBV)ハイブリドーマ技術を含むがこれらに限定されない(Kohlerら、1975、Nature256:4950497; Kozborら、1985、J. Immunol. Methods81:31〜42; Coteら、1983、Proc. Natl. Acad. Sci. USA80:2026〜2030; Coleら、1984、Mol. Cell. Biol.62:109〜120)。
【0071】
選択された抗原に適当なモノクローナル抗体は、既知の技術、例えば、「Monoclonal Antibodies: A manual of techniques」、H Zola(CRC Press、1988)において、および「Monoclonal Hybridoma Antibodies: Techniques and Applications」、J G R Hurrell(CRC Press、1982)において開示されているものによって調製することができる。
【0072】
抗体フラグメントは、当技術分野においてよく知られている方法(例えば、Harlow & Lane、1988、「Antibodies: A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、New Yorkを参照されたい)を使用して得ることができる。例えば、本発明による抗体フラグメントは、抗体のタンパク質加水分解によって、または大腸菌もしくは哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養または他のタンパク質発現系)におけるフラグメントをコードしているDNAの発現によって調製することができる。代替として、抗体フラグメントは、従来の方法による完全な抗体のペプシンまたはパパイン消化によって得ることができる。
【0073】
ヒトの療法または診断では、ヒト化抗体が使用されることが好ましいことは当業者に理解されよう。ヒト以外の(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、好ましくは最小限のヒト以外の抗体由来の部分を有する、遺伝子工学的に作製されたキメラ抗体または抗体フラグメントである。ヒト化抗体は、ヒト抗体(レシピエント抗体)の相補性決定領域が、所望の機能性を有する、マウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)の相補性決定領域由来の残基によって置き換されている抗体を含む。場合によっては、ヒト抗体のFvフレームワーク残基は、対応するヒト以外の残基によって置き換えられている。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体においても移入(imported)された相補性決定領域またはフレームワーク配列においても見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、この可変ドメインにおいて、相補性決定領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト抗体に相当し、フレームワーク領域のすべてまたは実質的にすべてが関連ヒトコンセンサス配列のものに相当する。ヒト化抗体はまた、最適には、典型的にはヒト抗体由来の、Fc領域などの抗体定常領域の少なくとも一部分を含む(例えば、Jonesら、1986、Nature321:522〜525; Riechmannら、1988、Nature332:323〜327; Presta、1992、Curr. Op. Struct. Biol. 2:593〜596を参照されたい)。
【0074】
ヒト以外の抗体をヒト化するための方法は、当技術分野においてよく知られている。一般に、ヒト化抗体は、ヒト以外の供給源から抗体中に導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらのヒト以外のアミノ酸残基は、しばしば移入残基と称され、典型的には移入された可変ドメインから取り込まれる。ヒト化は、ヒト相補性決定領域を対応するげっ歯類動物の相補性決定領域と置換することによって、記載されている通りに(例えば、Jonesら、1986、Nature321:522〜525; Riechmannら、1988. Nature332:323〜327; Verhoeyenら、1988、Science239:1534〜1536; 米国特許第4,816,567号を参照されたい)本質的に実施することができる。したがって、そのようなヒト化抗体は、実質的にインタクトではないヒト可変ドメインが、ヒト以外の種由来の対応する配列によって置換されたキメラ抗体である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかの相補性決定領域残基およびおそらくはいくつかのフレームワーク残基が、げっ歯類動物抗体の類似部位の残基によって置換されているヒト抗体であってもよい。
【0075】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリーを含む、当技術分野において知られている様々な技術を使用して特定することもできる(例えば、Hoogenboom & Winter、1991、J. Mol. Biol.227:381; Marksら、1991、J. Mol. Biol.222:581; Coleら、1985、Monoclonal antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, pp.77; Boernerら、1991. J. Immunol.147:86〜95を参照されたい)。
【0076】
適当な抗体が得られたら、これらを、例えば、ELISAによって、活性について試験することができる。
【0077】
本発明の第1の態様の作用物質は、Toll様受容体4(TLR4)、Toll様受容体4の共受容体(テネイシン4に結合する場合)、テネイシンCまたはこれらのいずれかのそのドメインに対する特異性を有する抗体またはその抗原結合フラグメントとすることができる。
【0078】
一次受容体に対する共受容体、TLR4などは、リガンド認識および結合を容易にするために、および受容体結合の結果生じる生物学的プロセスを開始/維持するために、シグナル伝達分子の一次受容体に対する結合を助ける。
【0079】
本発明の第1の態様の作用物質は、テネイシンCのFBGドメインに対する特異性を有する抗体またはその抗原結合フラグメントとすることができる。
【0080】
本発明の第2の態様において、テネイシンCの活性を調整する作用物質を同定する方法であって、
(i)1つまたは複数の候補作用物質を提供するステップと、
(ii)1つまたは複数の細胞を、テネイシンCおよび1つまたは複数の候補作用物質と接触させるステップと、
(iii)1つまたは複数の細胞を、テネイシンCと接触させ、候補作用物質とは接触させないステップと、
(iv)前記候補作用物質が、対照ステップ(iii)の細胞と比較して、ステップ(ii)における1つまたは複数の細胞に対するテネイシンCの作用を調整するかどうかを決定するステップと
を含む方法が提供される。
【0081】
候補作用物質がテネイシンCの作用を調整するかどうかを決定する方法は、実施例の方法を使用して行うことができる。
【0082】
本発明の第2の態様の方法によって、テネイシンCの活性を上方制御することができる。
【0083】
本発明の第2の態様の方法によって、テネイシンCの活性を下方制御することができる。
【0084】
本発明の第2の態様の方法は、Toll様受容体4(TLR4)を発現するステップ(ii)および(iii)(上記)の細胞を含んでもよい。
【0085】
本発明の第2の態様の方法は、炎症細胞、線維芽細胞、線維芽細胞様細胞(滑膜細胞としても知られているRA滑膜線維芽細胞を含む)、マウス胚線維芽細胞、ヒト胚性腎細胞からなる群から選択される1つまたは複数の細胞を有してもよい。
【0086】
炎症細胞は、マクロファージ、樹状細胞、単球、リンパ球、単球様細胞およびマクロファージ様細胞からなる群から選択することができる。
【0087】
本発明の第3の態様において、本発明の第2の態様の方法を実施することによって、慢性炎症反応を調整する作用物質を同定する方法が提供される。
【0088】
この方法において、慢性炎症は、不適切な炎症に関連する任意の状態に関連していてもよい。そのような状態は、関節リウマチ(RA)、自己免疫状態、炎症性腸疾患、難治性創傷、多発性硬化症、癌、アテローム性動脈硬化症、シェーグレン病、糖尿病、エリテマトーデス(全身性エリテマトーデスを含む)、喘息、線維性疾患(肝硬変を含む)、肺線維症、UV損傷および乾癬を含むがこれらに限定されない。
【0089】
排他的ではないが特に興味深いことに、慢性炎症は、関節リウマチ(RA)に関連している。
【0090】
本発明の第4の態様において、本発明の第2および第3の態様の方法によって同定される作用物質が提供される。そのような作用物質は、慢性炎症反応を調整することができる。
【0091】
第4の態様の作用物質は、慢性炎症反応を下方制御することができる。
【0092】
第4の態様の作用物質は、慢性炎症反応を上方制御することができる。
【0093】
第4の態様の作用物質は、短鎖干渉RNA(SiRNA)分子、短鎖ヘアピンRNA分子(shRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、テネイシンCに対する結合親和性を有する化合物、抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)およびその抗原結合フラグメント、低分子阻害化合物、ポリペプチドおよびタンパク質からなる群から選択することができる。
【0094】
本発明の第1または第4の態様において、慢性炎症は、不適切な炎症に関連する任意の状態に関連していてもよい。そのような状態は、関節リウマチ(RA)、自己免疫状態、炎症性腸疾患、難治性創傷、多発性硬化症、癌、アテローム性動脈硬化症、シェーグレン病、糖尿病、エリトマトーデス(全身性エリトマトーデスを含む)、喘息、線維性疾患(肝硬変を含む)、肺線維症、UV損傷および乾癬を含むがこれらに限定されない。
【0095】
本発明の第5の態様において、本発明の第1または第4の態様において定義される作用物質と、薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤とを含む組成物が提供される。
【0096】
そのような有効量の作用物質またはその製剤は、単回ボーラス用量(すなわち急性投与)として、または、より好ましくは、時間をかけて一連の用量(すなわち慢性投与)として送達することができることが当業者に理解されよう。
【0097】
本発明の作用物質は、使用されている化合物の有効性/毒性およびそれが使用されている適応に応じて、様々な濃度で製剤化することができる。好ましくは、製剤は、0.1μMから1mMの間、より好ましくは1μMから100μMの間、5μMから50μMの間、10μMから50μMの間、20μMから40μMの間および最も好ましくは約30μMの濃度で本発明の作用物質を含む。インビトロでの適用では、製剤は、より低濃度、例えば0.0025μMから1μMの間の本発明の化合物を含んでもよい。
【0098】
本発明の作用物質は、一般に、意図される投与経路および標準的な医薬の実務に関して選択された適当な医薬賦形剤、希釈剤または担体と混合して投与される(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy,19th edition、1995、Ed. Alfonso Gennaro, Mack Publishing Company, Pennsylvania、USAを参照されたい)ことが当業者に理解されよう。
【0099】
例えば、本発明の作用物質は、錠剤、カプセル剤、オビュール剤、エリキシル剤、液剤または懸濁剤の形態で、経口的に、頬側に、または舌下に投与することができ、即時放出、遅延放出または制御放出の用途では、着香剤または着色剤を含有していてもよい。本発明の作用物質はまた、陰茎海綿体内注射によって投与されてもよい。
【0100】
そのような錠剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウムおよびグリシンなどの賦形剤、デンプン(好ましくは、トウモロコシ、ジャガイモまたはタピオカデンプン)、デンプングルコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウムおよび特定の複合ケイ酸塩などの崩壊剤、ならびにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシ-プロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチンおよびアラビアゴムなどの造粒結合剤を含有していてもよい。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリルおよびタルクなどの滑剤が含まれてもよい。
【0101】
同様なタイプの固体組成物はまた、ゼラチンカプセルにおいて充填剤として用いることもできる。この点において好ましい賦形剤は、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールを含む。水性懸濁液および/またはエリキシル剤では、本発明の化合物を、様々な甘味剤または着香剤、着色物質または色素と、乳化剤および/または懸濁化剤と、ならびに水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリンなどの希釈剤、ならびにこれらの組合せと組み合わせてもよい。
【0102】
本発明の作用物質はまた、非経口的に、例えば、静脈内に、関節内に、動脈内に、腹腔内に、髄腔内に、脳室内に、胸骨内に、頭蓋内に、筋肉内または皮下に投与することもでき、または、注入技術によって投与されてもよい。本発明の作用物質は、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするために十分な塩またはグルコースを含んでいてもよい無菌の水溶液の形態で、最も有利に使用される。水溶液は、必要であれば、適当に緩衝化されている(好ましくは3〜9のpHまで)べきである。無菌条件下における適当な非経口製剤の調製は、当業者によく知られている標準的な製薬技術によって容易に達成される。
【0103】
非経口投与用に適当な製剤は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤および製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有していてもよい水性および非水性の無菌の注射溶液;ならびに懸濁化剤および増粘剤を含有していてもよい水性および非水性の無菌懸濁液を含む。製剤は、単位用量または反復用量容器、例えば、密封されたアンプルおよびバイアルにおいて提供されてもよく、使用の直前に無菌の液体担体、例えば、注射用水の添加しか必要としない、フリーズドライの(凍結乾燥された)状態で保管されてもよい。即時注射溶液および懸濁液は、以前に記述されている種類の無菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0104】
ヒト患者への経口および非経口投与では、1日投薬量レベルの本発明の作用物質は、通常、成人1人当たり1〜1000mg(すなわち、約0.015〜15mg/kg)になり、単回用量または分割用量で投与される。
【0105】
本発明の作用物質はまた、鼻腔内に、または吸入によって投与することができ、好都合には、加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーから、適当な噴射剤、例えばジクロロジオフルオロメタン、トリクロロフルオロ-メタン、ジクロロテトラフルオロ-エタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134A3または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA227EA3)などのヒドロフルオロアルカン、二酸化炭素または別の適当な気体を使用して、乾燥粉末吸入器またはエアゾールスプレー提示(presentation)の形態で送達される。加圧エアゾールの場合には、投薬単位は、計量した量を送達するためのバルブを設けることによって決定することができる。加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーは、例えば、エタノールと、滑剤、例えば、トリオレイン酸ソルビタンをさらに含有していてもよい溶媒としての噴射剤との混合物を使用して、活性化合物の溶液または懸濁液を含有してもよい。吸入器または通気器(insufflator)において使用するためのカプセル剤および薬包(例えば、ゼラチンでできた)は、本発明の化合物と、ラクトースまたはデンプンなどの適当な粉末基剤との粉末ミックスを含有するように製剤化されてもよい。
【0106】
エアゾールまたは乾燥粉末製剤は、好ましくは、各計量された用量または「パフ(puff)」が、患者への送達のために少なくとも1mgの本発明の化合物を含有するように構成される。エアゾールによる全1日用量は患者によって異なるはずであり、単回投与で、または、より一般的には、1日を通して分割用量で投与することができることが理解されよう。
【0107】
代替として、本発明の作用物質は、坐剤または膣坐剤の形態で投与することができ、またはこれらを、ローション剤、液剤、クリーム、軟膏または散布剤の形態で局所的に適用してもよい。本発明の化合物はまた、例えば、皮膚パッチ剤の使用によって、経皮投与されてもよい。これらはまた、目の経路によって投与されてもよい。
【0108】
眼の使用では、本発明の作用物質は、等張のpH調整された無菌生理食塩水において微粒子化された懸濁液として、または好ましくは、等張のpH調整された無菌生理食塩水において液剤として、塩化ベンジルアルコニウムなどの防腐剤と任意選択により組み合わせて、製剤化することができる。代替として、これらは、ワセリンなどの軟膏中に製剤化されてもよい。
【0109】
皮膚への局所的な適用では、本発明の作用物質は、例えば、以下の1つまたは複数との混合物中に懸濁または溶解させた活性化合物を含有する適当な軟膏として製剤化することができる:ミネラルオイル、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシオプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水。代替として、これらは、例えば、以下の1つまたは複数の混合物中に懸濁または溶解させた適当なローション剤またはクリームとして製剤化することができる:ミネラルオイル、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリル(cetearyl)アルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水。
【0110】
口内での局所投与用に適当な製剤は、フレーバーの付いた主成分、通常は、スクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカント中に活性成分を含むロゼンジ;ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアゴムなどの不活性の主成分中に活性成分を含むパステル剤;ならびに適当な液体担体中に活性成分を含む口内洗浄剤を含む。
【0111】
作用物質がポリペプチドである場合、ミクロスフェアなどの持続放出薬物送達系を使用することが好ましいことがある。これらは、特に、注射の頻度を減少させるように設計される。そのような系の例は、注入されたら、持続的な期間にわたってrhGHをゆっくりと放出する生物分解性ミクロスフェア中に組み換えヒト成長ホルモン(rhGH)をカプセル化するNutropin Depotである。
【0112】
代替として、本発明のポリペプチド剤は、薬物を必要とされる部位に直接放出する、外科的に移植されたデバイスによって投与することができる。
【0113】
エレクトロポレーション治療(EPT)システムもまた、タンパク質およびポリペプチドの投与のために用いることができる。パルス電界を細胞に送達するデバイスは、薬物に対する細胞膜の透過性を増加させ、細胞内薬物送達の顕著な改善をもたらす。
【0114】
タンパク質およびポリペプチドはまた、エレクトインコーポレーション(electroincorporation)(EI)によっても送達することができる。Elは、皮膚表面の直径が30ミクロンまでの小粒子が、エレクトロポレーションにおいて使用されるものと同一なまたは同様な電気パルスを受けるときに生じる。Elにおいて、これらの粒子は、押し流されて角質層を通過し、皮膚のより深い層へ入る。これらの粒子は、薬物または遺伝子を充填または被覆することができ、または、単に、薬物が侵入することができる皮膚の細孔を生じさせる「ブレット(bullet)」として作用することができる。
【0115】
タンパク質およびポリペプチド送達の代替の方法は、注入可能な熱感受性ReGelである。体温より低温で、ReGelは注射用液であるが、体温では、これは直ちに、既知の安全な生物分解性ポリマー中にゆっくりと侵食および溶解する、ゲルリザーバーを形成する。活性な薬物は、生体高分子が溶解するにつれて、時間をかけて送達される。
【0116】
タンパク質およびポリペプチド医薬はまた、経口的に送達することができる。1つのそのような系は、体内でのビタミンB12の経口摂取のための天然のプロセスを用いて、タンパク質およびポリペプチドを同時送達する。ビタミンB12摂取系に乗って運ばれることによって、タンパク質またはポリペプチドは、腸壁を通って移動することができる。複合体のビタミンB12部分における内因子(IF)に対する顕著な親和性と、複合体の薬物部分の顕著な生物活性の両方を保持する、ビタミンB12類似体と薬物との複合体が生成される。
【0117】
本発明のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド剤を投与するための方法もまた、当技術分野においてよく知られている(Dass、2002、J Pharm Pharmacol.54(1):3〜27; Dass、2001、Drug Deliv. 8(4):191〜213; Lebedevaら、2000、Eur J Pharm Biopharm.50(1):101〜19; Pierceら、2005、Mini Rev Med Chem. 5(1):41〜55; Lysik & Wu-Pong、2003、J Pharm Sci2003 2(8):1559〜73; Dass、2004、Biotechnol Appl Biochem.40(Pt 2):113〜22; Medina、2004、Curr Pharm Des.10(24):2981〜9を参照されたい。
【0118】
本発明の第5の態様の組成物は、少なくとも1つの他の作用物質をさらに含んでいてもよい。
【0119】
そのようなさらなる作用物質は、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、スタチン(シンバスタチンなどのHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を含む)、生物剤(生物製剤)、ステロイド、免疫抑制剤、サリチル酸塩および/または殺菌剤を含むがこれらに限定されない抗炎症剤であってもよい。非ステロイド性抗炎症剤は、抗代謝剤(メトトレキセートなど)および抗炎症性金製剤(金チオリンゴ酸ナトリウム、アウロチオリンゴ酸塩または金塩、オーラノフィンなどを含む)を含む。生物製剤は、抗TNF剤(アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、抗IL-1試薬、抗IL-6試薬、抗B細胞試薬(レトキシマブ(retoximab))、抗T細胞試薬(抗CD4抗体)、抗IL-15試薬、抗CLTA4試薬、抗RAGE試薬を含む)、抗体、可溶性受容体、受容体結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、機能を改変したまたは弱めた突然変異タンパク質、RNAi、ポリヌクレオチドアプタマー、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはオメガ3脂肪酸を含む。ステロイド(コルチコステロイドとしても知られている)は、コルチゾン、プレドニゾロンまたはデキサメタゾンを含む。免疫抑制剤は、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸を含む。サリチル酸塩は、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸コリンおよびサリチル酸マグネシウムを含む。殺菌剤は、キニーネおよびクロロキンを含む。例えば、作用物質は、NSAID、DMARD、または免疫抑制剤の1つまたは複数と組み合わせて投与されてもよい。
【0120】
本発明の第6の態様において、医薬として使用されるための、本発明の第1、第4および第5の態様において定義されている作用物質または組成物が提供される。
【0121】
本発明の第7の態様において、慢性炎症状態の治療において使用されるための、本発明の第1、第4および第5の態様において定義されている作用物質または組成物が提供される。
【0122】
本発明の第8の態様において、慢性炎症状態の治療のための医薬の製造における、本発明の第1、第4および第5の態様において定義されている作用物質または組成物の使用が提供される。
【0123】
本発明の第9の態様において、対象に有効量の本発明の第1、第4および第5の態様において定義されている作用物質または組成物を投与するステップを含む、慢性炎症状態を治療する方法が提供される。
【0124】
本発明の第6、第7、第8または第9の態様において定義されている作用物質、組成物、使用または方法は、不適切な炎症に関連する任意の状態に関連している慢性炎症状態の治療に関していてもよい。そのような状態は、関節リウマチ(RA)、自己免疫状態、炎症性腸疾患、難治性創傷、多発性硬化症、癌、アテローム性動脈硬化症、シェーグレン病、糖尿病、エリテマトーデス(全身性エリテマトーデスを含む)、喘息、線維性疾患(肝硬変を含む)、肺線維症、UV損傷および乾癬を含むがこれらに限定されない。
【0125】
本発明の第10の態様において、本発明の第2の態様の方法を実施するためのキットオブパーツであって、
(i)1つまたは複数の細胞、
(ii)1つまたは複数の細胞の対照試料、
(iii)テネイシンCの試料、
(iv)それらを使用するための説明書
を含むキットオブパーツが提供される。
【0126】
本発明の第10の態様のキットは、任意選択により、
(v)候補作用物質
を含んでいてもよい。
【0127】
本発明の第10の態様のキットは、任意選択により、
(vi)テネイシンC活性または慢性炎症のいずれかに対する候補作用物質の作用を決定する手段
をさらに含んでいてもよい。
【0128】
本発明の第11の態様において、
(i)本発明の第1、第4または第5の態様において定義されている作用物質または組成物、
(ii)投与手段、
(iii)それらを使用するための説明書
を含むキットオパーツが提供される。
【0129】
本発明の第11の態様のキットは、任意選択により、
(iv)少なくとも1つの他の作用物質
をさらに含んでいてもよい。
【0130】
定義
「炎症」は、組織傷害、感染または局所的な免疫反応によって開始される体液、血漿タンパク質、および白血球の局所的な蓄積という意味を含むものとする。
【0131】
「急性炎症」は、傷害、感染または局所的な免疫反応の直後の、炎症の最初の段階(開始)および短期間の一過性の炎症反応という意味を含むものとする。典型的には、急性炎症は、急速に消散し、数分から数日間未満、続くものである。
【0132】
「慢性炎症」は、持続性のおよび/または解消しない炎症という意味を含むものとする。慢性炎症は、健常組織の不適切な破壊に関連していることが多い。これは進行性である場合があり、数週間以上の期間にわたって続く。慢性炎症は、典型的には、それだけに限らないが、自己免疫状態を含む、持続性の感染または疾患に関連している。
【0133】
「慢性の関節の炎症」は、数週間から数カ月の期間にわたって進行性で軽減しない、罹患している関節の湾曲ならびにヒト疾患において観察される、軟骨および骨破壊のX線撮影による証拠をもたらす持続性の炎症という意味を含むものとする(Kelly, Harris, Ruddy and Sledge、Textbook of Rheumatology第4版)。
【0134】
実験マウスモデルにおいて、慢性の関節の炎症は、比較的短い期間であっても、沈静せず、不適切な組織破壊を引き起こす炎症によって特徴付けられる。これは、滑膜および関節腔における炎症細胞の長時間の存在、軟骨細胞死、ならびに軟骨および骨びらんによって組織学的に特徴付けられる(および特定することができる)。
【0135】
「作用物質」は、すべての化学物質、例えば、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体および低分子化合物を含むものとする。
【0136】
「フラグメント」は、少なくとも10ヌクレオチド、例えば、少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25ヌクレオチドを意味するものとする。
「変異体」は、ヌクレオチド配列が、対象とする完全長配列と少なくとも90%の配列同一性、例えば少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有することを意味するものとする。
【0137】
2つのポリヌクレオチド間の配列同一性パーセントは、適当なコンピュータプログラム、例えば、University of Wisconsin Genetic Computing GroupのGAPプログラムを使用して決定することができ、同一性パーセントは、配列が最適にアラインメントされたポリヌクレオチドとの関連で計算されることが理解されよう。
【0138】
アラインメントは、代替として、Clustal Wプログラムを使用して行われてもよい(Thompsonら、1994、Nuc. Acid Res.22:4673〜4680において記載されている通り)。
【0139】
使用されるパラメータは、以下の通りとすることができる:
ファーストペアワイズアラインメントパラメータ: Kタプル(ワード)サイズ;1、ウィンドウサイズ; 5、ギャップペナルティ; 3、トップダイアゴナル(top diagonal)数;5。スコアリング方法:xパーセント。
マルチプルアラインメントパラメータ:ギャップオープンペナルティ;10、ギャップ伸長ペナルティ;0.05。
スコアリングマトリックス:BLOSUM。
【0140】
代替として、BESTFITプログラムが、局所的な配列アラインメントを決定するために使用されてもよい。
【0141】
「抗体」は、実質的にインタクトな抗体分子、ならびにキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体(天然に存在するヒト抗体と比べて少なくとも1つのアミノ酸が突然変異している)、単鎖抗体、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖および/または軽鎖のホモ二量体およびヘテロ二量体、ならびにその抗原結合性フラグメントおよび誘導体を含むものとする。
【0142】
「抗原結合フラグメント」は、テネイシンCに結合することができる抗体の機能的フラグメントを意味するものとする。
【0143】
「対象」という用語は、ヒトを含むすべての動物を意味する。対象の例は、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、およびブタを含む。「患者」という用語は、治療を必要とする障害を有する対象を意味する。
【0144】
本明細書において使用される場合、「医薬製剤」は、本発明による治療的に有効な製剤を意味する。
【0145】
「治療的に有効な量」、または「有効量」、または「治療的に有効な」は、本明細書において使用される場合、所与の状態に対する治療効果および投与レジメンを提供する量を指す。これは、必要とされる添加剤および希釈剤、すなわち、担体または投与ビヒクルと共同して、所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性物質である。さらに、宿主の活動、機能および反応における臨床的に重要な欠陥を減少させ、最も好ましくは予防するために十分な量を意味することが意図される。代替として、治療的に有効な量は、宿主の臨床的に重要な状態の改善をもたらすのに十分なものである。当業者には理解されるように、化合物の量は、その特定の活性に応じて変わり得る。適当な投薬量は、計算された所定量の活性な組成物を含有して、必要とされる希釈剤と共同して所望の治療効果をもたらすことができる。本発明の組成物の製造のための方法および使用において、治療有効量の活性成分が提供される。治療的に有効な量は、当技術分野においてよく知られているように、年齢、体重、性別、状態、合併症、他の疾患などの患者の特徴に基づいて、通常の技術を有する医療または獣医学従事者によって決定することができる。
【0146】
本発明の態様を例示する実施例を、以下の図面を参照して以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1A】テネイシンC欠損マウスにおける急性炎症の消散の促進を示す図である。 (a)野生型(+/+)(白色の棒)およびテネイシンCヌル(-/-)(黒色の棒)マウスにおけるザイモサン注射後の経時的な足腫脹。データは、注射前の足の直径と比較した足の直径増加の平均+/-SEMとして示す(遺伝子型当たりn=24個体のマウス)、**=p<0.01。(b〜e)ザイモサン注射の4日後の、ヘマトキシリン・エオシン(b、d)およびサフラニン-O(c、e)で染色した野生型(b、c)およびテネイシンCヌル(d、e)マウスの足関節の代表的な切片。四角形は、関節滑膜および軟骨プロテオグリカン(cp)を強調している。倍率×10。
【図1B】テネイシンC欠損マウスにおける急性炎症の消散の促進を示す図である。 ザイモサンによる注射の4日後の、野生型マウス(白色の棒)およびテネイシンCヌルマウス(黒色の棒)の膝関節における関節の炎症(f)および軟骨細胞死(g)の定量。データは、平均(+/-SD)として表す(遺伝子型当たりn=24個体のマウス)。*=p<0.05。
【図2】抗原の注射によりテネイシンC欠損マウスにおいて滑膜炎が誘導される図である。 (a〜b、g)偽注射された野生型マウスの膝関節の代表的な切片、mBSAの関節内注射の24時間後の、(c〜f、h〜i)野生型の(c、d、h)またはテネイシンCヌル(e、f、i)マウスの膝関節の代表的な切片。野生型およびテネイシンCヌルマウスの両方の被膜、半月板および関節腔における炎症細胞の浸潤を、それぞれ、(キャップ)、(M)および(J)によって示す。(S)は、全体の骨表面に沿ったわずか細胞1〜3個分の厚さである偽注射されたマウスの健常な滑膜を示し、(ST)は、ともに顕著に肥厚した野生型およびテネイシンCヌルマウスの滑膜を示す。切片は、ヘマトキシリン・エオシン(a、c、e、g、h、i)およびサフラニン-O(b、d、f)で染色している。倍率×10(a〜f)または×40(g〜i)。(遺伝子型当たりn=5個体のマウス)。
【図3】滑膜炎が、テネイシンC欠損マウスにおいて迅速に軽快する図である。 mBSAの関節内注射の3日後の、野生型の(a、b、f)またはテネイシンCヌル(c、d、e)マウスの膝関節の代表的な切片。(a、c)線は、テネイシンCヌルマウスと比較した、野生型マウスにおける被膜炎症の増加を示し、(b、d)(cp)は、テネイシンCヌルマウスと比較した、野生型マウスにおける軟骨プロテオグリカン喪失の増加を示す。(e、f)野生型マウスにおいて、テネイシンCヌルマウスと比較して、顕著な滑膜過形成(線)、関節腔における細胞およびフィブリン沈着(矢印)およびパンヌス浸潤(矢印の先端)が観察される。切片は、ヘマトキシリン・エオシン(a、c、e、f)およびサフラニン-O(b、d)で染色しており、倍率×10(a〜d)または×20(e〜f)である。(遺伝子型当たりn=5個体のマウス)。
【図4A】テネイシンC欠損マウスが、抗原に誘導される関節炎の間、組織破壊から保護される図である。 (a〜b)mBSAの関節内注射の7日後の、ヘマトキシリン・エオシン(a)およびサフラニン-O(b)で染色した、野生型マウスの膝関節の代表的な切片。倍率×10。(遺伝子型当たりn=24個体のマウス)。矢印先端は、骨びらん部分を示す。矢印は、関節軟骨中へのパンヌス浸潤を示す。(c〜d)mBSAの関節内注射の7日後の、ヘマトキシリン・エオシン(c)およびサフラニン-O (d)で染色した、テネイシンCヌル型マウスの膝関節の代表的な切片。倍率×10。(遺伝子型当たりn=24個体のマウス)。Jは関節腔を、およびACはインタクトな関節軟骨を示す。
【図4B】テネイシンC欠損マウスが、抗原に誘導される関節炎の間、組織破壊から保護される図である。 (e)mBSAによる注射の24時間、3日および7日後の、野生型マウス(白色の棒)およびテネイシンCヌルマウス(黒色の棒)の、膝関節炎の組織学的スコア。データは、平均+/-SDを表す(遺伝子型当たりn=5(24時間、3日)または遺伝子型当たりn=24(7日))。(f)mBSAによる注射後の、野生型マウス(白色の棒)およびテネイシンCヌルマウス(黒色の棒)の膝関節における、軟骨細胞死、軟骨表面のびらんおよび骨びらんの定量。24時間、3日および7日での軟骨細胞死、および7日での軟骨表面のびらんおよび骨びらんを示す。データは、平均+/-SDを表す(遺伝子型当たりn=5(24時間、3日)または遺伝子型当たりn=24(7日))。
【図5A】テネイシンCが、初代ヒトマクロファージおよびRA滑膜線維芽細胞におけるTNF-α、IL-6およびIL-8合成を誘導する図である。 (a〜b)初代ヒトマクロファージ(a)およびRA滑膜線維芽細胞(b)を、LPS(1ng/mL(a)または10ng/mL(b))または組み換えテネイシンC(1.0μM〜1.0nM)で刺激しなかった(添加なし)または24時間刺激した。示したデータは、3つの代表的な実験のうち1つの3連の値の平均(+/-SD)である。
【図5B】テネイシンCが、初代ヒトマクロファージおよびRA滑膜線維芽細胞におけるTNF-α、IL-6およびIL-8合成を誘導する図である。 (a〜b)初代ヒトマクロファージ(a)およびRA滑膜線維芽細胞(b)を、LPS(1ng/mL(a)または10ng/mL(b))または組み換えテネイシンC(1.0μM〜1.0nM)で刺激しなかった(添加なし)または24時間刺激した。示したデータは、3つの代表的な実験のうち1つの3連の値の平均(+/-SD)である。(c)LPS(1ng/ml)または組み換えテネイシンC(1.0μM)で刺激しなかった(添加なし)または24時間刺激した初代ヒトマクロファージ。(-)は、細胞が媒体のみとともにプレインキュベートされたことを示す。(P)細胞を、刺激の前に30分間、25μg/mlポリミキシンBとともにプレインキュベートした。(H)細胞を、添加なしの、または細胞へ添加する前に15分間沸騰させたLPSもしくはテネイシンCを含有する媒体とともにインキュベートした。示したデータは、3つの代表的な実験のうちの1つの3連の値の平均(+/-SD)である。
【図6A】テネイシンCのFBGドメインが、インビボおよびインビトロでサイトカイン合成の刺激を仲介する図である。 (a)初代ヒトマクロファージを、LPS(1ng/ml)、組み換えテネイシンC(TNC)または1.0μMのテネイシンCドメイン(TA、EGF-L、TNIII1-5、TNIII1-3、TNIII3-5、TNIII5-7、TNIII6-8およびFBG)で刺激しなかった(添加なし)または24時間刺激した。示したデータは、3つの代表的な実験のうちの1つの3連の値の平均(+/-SD)である。(b)RA滑膜細胞を、LPS(10ng/ml)または組み換えFBG(1.0〜0.01μM)で刺激しなかった(添加なし)または24時間刺激した。示したデータは、5人の異なる患者の、刺激されていない細胞と比較したサイトカインレベルの平均変化%(+/-SEM)である。
【図6B】テネイシンCのFBGドメインが、インビボおよびインビトロでサイトカイン合成の刺激を仲介する図である。 (c〜h) PBS (c〜e)または1μgのFBG(f〜h)の関節内注射の3日後の、野生型マウスの膝関節の代表的な切片。切片は、ヘマトキシリン・エオシン(c、d、f、g)またはサフラニン-O(e、h)で染色している。倍率×10(c、f)または×25(d、e、g、h)(遺伝子型当たりn=5個体のマウス)。(i) PBS(黒色の棒)または1μgのFBG(白色の棒)の関節内注射の3日後の、野生型マウスの膝関節における関節炎、骨びらん、軟骨表面のびらんおよび軟骨細胞死の定量。データは、平均+/-SDを表す(遺伝子型当たりn=5)。
【図6C】テネイシンCのFBGドメインが、インビボおよびインビトロでサイトカイン合成の刺激を仲介する図である。 (i) PBS(黒色の棒)または1μgのFBG(白色の棒)の関節内注射の3日後の、野生型マウスの膝関節における関節炎、骨びらん、軟骨表面のびらんおよび軟骨細胞死の定量。データは、平均+/-SDを表す(遺伝子型当たりn=5)。
【図7】FBGに仲介されるサイトカイン合成が、MyD88に依存する図である。 (a)ヒトRA滑膜線維芽細胞は、感染させなかったか、GFP単独を発現しているアデノウイルス(AdGFP)に感染させたか、または優勢な陰性MyD88を発現しているアデノウイルス(AdMyD88dn)に感染させた。細胞は、刺激しなかったか、24時間、LPS(10ng/ml)で刺激したか、またはFBG(1μM)で刺激した。示したデータは、3つの独立した実験の平均(+/- SEM)である。(b)野生型(+/+)またはMyD88欠損(-/-)マウスから単離されたマウス胚線維芽細胞を、刺激しなかった(-)またはPAM3(100ng/ml)、LPS(100ng/ml)、TNFα(100ng/ml)、IL-1(5ng/ml)およびFBG(1μM)で24時間刺激した。示したデータは、3つの独立した実験の平均(+/-SEM)である。
【図8A】FBGに仲介されるサイトカイン合成が、TLR4依存性であるがCD14またはMD-2を必要としない図である。 (a)初代ヒトマクロファージを、刺激の前に30分間、培地単独と、またはTLR2 (10μg/ml)、TLR4 (25μg/ml)もしくはアイソタイプ対照抗体(25μg/ml)に対する機能妨害抗体を含有する培地とともにプレインキュベートした。細胞を、刺激しなかったか、またはLPS(1ng/ml)、FBG(1μM)またはPAM3(10ng/ml)で24時間刺激した。示したデータは、3つの独立した実験の平均(+/-SEM)である。(b)野生型、TLR2 (TLR2-/-)またはTLR4 (TLR4-/-)欠損マウスから単離されたマウス胚線維芽細胞を、刺激しなかったか、またはPAM3 (100ng/ml)、LPS (100ng/ml)、IL-1 (5ng/ml)およびFBG (1μM)で24時間刺激した。示したデータは、3つの独立した実験の平均(+/-SEM)である。
【図8B】FBGに仲介されるサイトカイン合成が、TLR4依存性であるがCD14またはMD-2を必要としない図である。 (c)野生型、TLR2(TLR2-/-)またはTLR4(TLR4-/-)欠損マウスから単離された骨髄由来マクロファージを、刺激しなかったか、または、PAM3(100ng/ml)、LPS(100ng/ml)またはFBG (1μM)で24時間刺激した。示したデータは、3つの独立した実験の平均(+/-SEM)である。(d)ヒトマクロファージを、LPS(1ng/ml)、FBG (1μM)またはPAM3 (10ng/ml)による24時間の刺激の前に30分間、阻害剤なしで、1μg/mlのmsbB LPSまたは10μg/ml抗CD14抗体とともにプレインキュベートした。示したデータは、3つの独立した実験の平均(+/-SEM)である。
【図9】ザイモサン注射後の経時的な足腫脹の図である。 注射されていないテネイシンCヌルマウス(a、e)(直径1.6mm)、ザイモサン注射後24時間(d、f)(直径2.5mm)および4日(b、h)(直径1.7mm)のテネイシンCヌルマウスの、およびザイモサン注射の4日後の野生型マウス(c、g)(直径2.1mm)の足の代表的な画像。
【図10】組み換えタンパク質の合成の図である。 (a)アセンブリドメイン(TA)、14.5個のEGF様リピート(EGF-L)、17個のフィブロネクチンIII型様リピート(TNIII)(8個は構成的に発現され(1〜8)、9個は選択的にスプライスされ得る)、およびフィブリノゲン様球状(FBG)を含む、様々なドメインを含むテネイシンC単量体のドメイン構造。(b)合成される組み換えタンパク質に含まれる領域、対応するアミノ酸残基および各タンパク質の分子量。
【図11】タンパク質純度の分析の図である。 還元条件下でSDS-PAGEにより分析した1μgの各組み換えタンパク質を示す銀染色したゲル。レーン: 1(TA)、2(EGF-L)、3(TNIII1〜5)、4(TNIII5〜7)、5(TNIII6〜8)、6(TNIII1〜3)、7(TNIII3〜5)および8(FBG)。
【図12】インビボでFBGに仲介される関節炎が、TLR4の発現を必要とする図である。 1μgのFBGの関節内注射の3日後の、TLR2(a)およびTLR4(b)ヌルマウスの膝関節の代表的な切片。切片は、ヘマトキシリン・エオシンで染色している。倍率×10(遺伝子型当たりn=5個体のマウス)。(c)1μgのFBGの関節内注射の3日後の、TLR2(白色の棒)およびTLR4(黒色の棒)ヌルマウスの膝関節における、関節炎、骨びらん、軟骨表面のびらんおよび軟骨細胞死の定量。データは、平均+/-SDを表す(遺伝子型当たりn=5)。
【図13】ヒトテネイシンCおよびそのドメインのアミノ酸配列の図である。
【図14】ヒトテネイシンCのヌクレオチド配列の図である。
【図15】特異的FBGペプチドに反応するTNF合成の図である。 添加なしでまたは100μMの各FBGペプチド(P1、P3〜P9)とともに24時間インキュベートしたRA膜培養によるTNF合成。
【図16】様々な濃度の特異的FBGペプチドに反応するTNFおよびIL8合成の図である。 添加なしでまたは25、100または250μMのFBGペプチドとともに24時間インキュベートしたRA膜培養によるTNFおよびIL8合成。
【図17】LPS、全FBGドメインまたは特異的FBGペプチドに反応するIL8合成の図である。 添加なしで、1ng/mlのLPS、1μMの全FBGドメイン(FBG)または、1もしくは20μMのFBGペプチド(P1、P3〜P9)で24時間のインキュベーション後のマクロファージによるIL8合成。
【図18】FBGペプチドとのプレインキュベーション後の、LPSおよびFBGに反応するIL8およびTNF合成の図である。 20μMのFBGペプチドでのプレインキュベーションありまたはなしの、添加なしで、1ng/mlのLPSまたは1μMの全FBGドメイン(FBG)で24時間のインキュベーション後の、マクロファージによるTNFおよびIL8合成。
【図19】テネイシンCを標的とするsiRNAに反応するIL8およびTNF合成の図である。 ルシフェラーゼ特異的siRNA(対照)で、またはテネイシンCを標的とするsiRNA:オリゴ1(si1)、オリゴ2(si2)、もしくはオリゴ1+2の組合せ(si1+2)でトランスフェクトされたRA線維芽細胞におけるテネイシンCのmRNAレベル。10ng/mlのLPSの24時間の存在または非存在下における、ルシフェラーゼsiRNA(対照)で、またはテネイシンCを標的とするオリゴ1+2(siRNA)の組合せでトランスフェクトされたRA線維芽細胞におけるIL6合成。
【0148】
[実施例1]
一般的方法
試薬
ザイモサン、メチル化BSAおよびフロイントの完全なアジュバント、抗FLAG M2抗体(マウスモノクローナル抗体)、ブラストサイジン、ならびにアイソタイプ対照抗体(マウスlgG2a、IgG1)は、Sigma-Aldrich(ドーセット、イギリス)から得た。Hypnormは、VetaPharma Ltd.(リーズ、イギリス)から得た。カブトガニ血球抽出成分アッセイは、Associates of Cape Cod(リヴァプール、イギリス)から得た。野生型ヒト胚性腎(HEK293-EBNA)細胞は、Invitrogen(フローニンゲン、オランダ)から得た。M-CSFおよびマウスIL-1βは、PeproTech(ヌイイ-シュル-セーヌ(Neuilly-Sur-Seine)、フランス)から得た。DMEM、RPMI1640、ウシ胎児血清(FBS)、ペニシリン/ストレプトマイシン、抗生物質-抗真菌溶液PSAおよびβ-メルカプトエタノールは、PAA Laboratories(ヨーヴィル、イギリス)から得た。ヒトTLR2およびTLR4/CD14/MD-2、ポリミキシンB、msbB LPSならびに機能遮断TLR2(クローン: TL2.1アイソタイプ:マウスlgG2a)およびTLR4抗体(クローン: HTA125アイソタイプ:マウスIgG2a)を安定に発現するHEK293細胞系は、Invivogen(カルネ、イギリス)から得た。フェノール-クロロホルム精製された大腸菌LPS(ラフ型およびスムーズ型)およびPam3Cys-Ser-Lys4(Pam3C)は、Alexis(バーミンガム、イギリス)から得た。マウスTNF-αおよびIL-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra-IL-1F3)は、R&D Systems(アビンドン、イギリス)から得た。機能遮断抗CD14抗体(アイソタイプ:マウスIgG1)は、Abcam(ケンブリッジ、イギリス)から得た。ヒトおよびマウスTNF-α、IL-6、およびIL-8 ELISAは、Pharmingen(オックスフォード、イギリス)から得た。
【0149】
完全長テネイシンCの精製
サイトカイン産生が、LPSおよびLPS関連分子などの細菌混入の結果ではないことを確認するために、本発明者らは、組み換え完全長ヒトテネイシン-Cを、(Lange(2007))に記載されている通り、pCEP-puベクター中のhis-タグ付きヒトテネイシンCをトランスフェクトされた哺乳動物細胞系HEK293の馴化培地から精製した。テネイシンCを、(Lange(2007)に記載されている通り、均質になるまで精製し、カブトガニ血球抽出成分アッセイを製造業者の使用説明書に従って使用して、LPS混入を含まないことを確認した。
【0150】
組み換えタンパク質の合成
テネイシンCの各ドメインに対応するタンパク質を合成し(TA、EGF-L、様々なTNIIIリピートおよびFBG)、精製した。実施例2を参照されたい。
【0151】
組み換えタンパク質におけるLPS混入の測定
各組み換えタンパク質中のLPSレベルを確認するために、カブトガニ血球抽出成分アッセイを、製造業者の使用説明書に従って使用した(感度、タンパク質1mg当たり約0.7±0.5pgのLPS)。この研究において使用されたすべての組み換えタンパク質は、10pg/ml未満のLPSレベルを有していた
【0152】
アデノウイルスベクターおよびそれらの増殖
野生型MyD88(AdMyD88wt)、優勢な陰性型のMyD88(AdMyD88dn)およびGFP対照(AdGFP)をコードしている組み換えの、複製欠損アデノウイルスベクターを、自家で構築した。これらのウイルスの合成の記述は、Andreakos(2004)にある。この研究において使用されたすべてのウイルスは、E1/E3欠失しており、Ad5血清型に属する。ウイルスを、293ヒト胚性腎細胞において増殖させ、2つの塩化セシウム勾配による超遠心分離によって精製し、ウイルス力価を、以前に記述されている通り(Sacre(2007))、プラークアッセイによって決定した。
【0153】
動物
腹の白いアグーチのバックグラウンドを有するマウスの近交系統である129/svの、Saga(1992)により記載されているもとのストック由来のホモ接合型テネイシンC欠損マウスは、Charles French-Constant教授(エジンバラ大学、イギリス)から提供された。年齢を一致させたコンジェニック近交野生型129/svマウスは、Charles River(マーゲート、イギリス)から入手した。すべてのテネイシンC欠損および野生型129/svマウスは、実験の時点で8〜10週齢の雄であった。
【0154】
C57BL/6バックグラウンド(黒色被毛を有するマウスの近交系統)のホモ接合型TLR2およびTLR4欠損マウスは、B&K Universal(ハル、イギリス)Hoshino(1999)およびTakeuchi(1999)から入手した。C57BL/6バックグラウンドのホモ接合型MyD88欠損マウスは、Sanger Institute(ケンブリッジ、イギリス)によって提供された。年齢を一致させたコンジェニック近交野生型C57B/L6マウスは、Charles River(マーゲート、イギリス)から入手した。マウス胚線維芽細胞の単離では、8〜10週齢の1匹の雌を、8〜10週齢の2匹の雄と交配させた。骨髄由来マクロファージの単離では、マウスは、実験の時点で10〜12週齢の雌であった。
【0155】
すべての動物には、標準的なげっ歯類動物飼料および水を自由に与え、おがくずをひいたケージ中で、空調管理された環境において、12時間の明/暗サイクルで飼育した(6匹未満のマウス/ケージ)。すべての動物手順は、施設の倫理委員会によって承認された。
【0156】
統計学的方法
平均、SD、SEM、および統計学的検定は、GraphPadバージョン3(GraphPad Software Inc.、サンディエゴ、CA)を使用して計算した。多群手段は、分散の一方向分析、適切な場合、その後のDunnett Multiple Comparisons検定によって分析した。2つの群のみを含む実験では、対応のないt検定を使用した。
【0157】
[実施例2]
組み換えタンパク質の合成
テネイシンCの各ドメインに対応するタンパク質を合成し(TA、EGF-L、様々なTNIIIリピートおよびFBG)、精製した。合成された組み換えタンパク質を、図9に示す。
【0158】
試薬
Pfu Turboポリメラーゼは、Stratagene(アムステルダム、オランダ)から得た。Easyミックス50PCRチューブは、Molecular Bioproducts(ルッターワース(Lutterworth)、イギリス)から得た。RNeasyキットおよびNi2+-NTA-アガロースカラムは、Qiagen(クローリー、イギリス)から得た。pCR Bluntベクター、pCEP4プラスミドベクター、ヒト胚性腎(HEK293-EBNA)細胞および4〜12%のBis-Trisグラジエントゲルは、Invitrogen(フローニンゲン、オランダ)から得た。pET32bベクターおよびBL21(DE3)Rosetta細胞は、Novagen(ケント、イギリス)から得た。HiTrap Qカラム、HiTrap Sカラム、Sephacryl S500 HRカラムおよびヘパリンセファロースカラムは、Amersham(バッキンガムシャー、イギリス)から得た。
【0159】
制限酵素は、New England BioLabs(ヒッチン、イギリス)から入手した。DMEM、ウシ胎児血清(FBS)およびペニシリン/ストレプトマイシンは、PAA laboratories(ヨーヴィル、イギリス)から得た。FuGENE6トランスフェクション試薬は、Roche Applied Science(バーゼル、スイス)から得た。
【0160】
抗FLAG M2抗体(マウスモノクローナル抗体)、抗FLAG M2-アガロース、FLAGペプチドは、Sigma-Aldrich(ドーセット、イギリス)から得た。抗テトラhis抗体(マウスモノクローナル抗体)は、Qiagen(クローリー、イギリス)から得た。アルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗(マウスIgG)IgGおよびアルカリホスファターゼのWestern Blue安定化基質は、Promega(サウサンプトン、イギリス)から得た。SDS-PAGEのためのPrecision Protein Standardsは、BioRad(ヘメルヘムステッド、イギリス)から得た。
【0161】
プライマー設計
ドメイン境界は、ヒトテネイシンC配列中の公開されているアラインメント(Siri(1991)アクセッション番号P24821(Swiss-Prot))を使用して決定した。各ドメインをクローニングするために、本発明者らは、フォワードおよびリバースプライマーの両方が、必要なコード配列の5'および3'末端の配列に対応する18〜21塩基を含有するPCRプライマーを設計した。フォワードプライマーは、コード配列の直前に、Nde1制限部位、その後にN末端hisタグを含有していた。Nde1部位の最後の3塩基は、ATCメチオニン開始コードを形成する。リバースプライマーは、コード配列の直後のTTA終止コドン、その後に、pET32b発現ベクター中への一方向性のクローニングを可能にするためのBamH1またはKpn1部位を含んでいた。
【0162】
【表1】

【0163】
上記のすべてのプライマーは、5'から3'方向に表記されている。Flag配列は太線、Hisタグ(CATCATCATCATCATCAT)には下線を引き、制限酵素切断部位(CATATG=Nde1部位、GGATCC=BamH1、GGTACC=Kpn1部位)は太線のイタリック体である。
【0164】
PCR
10pmol/μlの各プライマー、1μgの鋳型、5μlのDMSO、および1.25単位のPfu Turboポリメラーゼを使用して、25μlの最終体積でPCR増幅を行った。これを、Easyミックス50チューブ中の緩衝液およびdNTPに加えた。すべての反応に使用された鋳型は、RNeasyキットを用いて単離されたRNAを使用して、U87MGヒトグリオーマ細胞から調製されたcDNAであった。それぞれ95℃、55〜65℃(プライマーの融解温度(Tm)によって決定する)および72℃の変性、アニーリングおよび伸長温度で、反応を40回繰り返した。
【0165】
クローニング
PCR産物を、pCR Bluntベクター中にライゲーションし、PCRによって導入されたエラーがないことを確認するためにシーケンシングした。エラーまたはサイレント突然変異がないクローンが選択された。次いで、インサートを、プライマー(TN5-7およびTN6-8)中に遺伝子工学的に作製されたNde1およびBamH1制限部位を使用して、pET32b中にライゲーションした。ヒトテネイシンCは、TAドメイン(ポジション494)およびTNIII2(ポジション2509)中に内部BamH1部位を有する。したがって、TAおよびTN1-8は、FWプライマー中のNde1部位およびpCRBluntクローニング部位中のKpn1部位を使用してクローニングされた。ヒトテネイシンCは、内部のKpn1部位を含有していない。TN 1-5、TN1-3およびTN3-5は、プライマー中のNde1およびKpn1部位を使用してクローニングした。FBGは、内部のNde1部位(ポジション6439)を含有し、したがって、Nde1およびBamH1消化、その後のNde1消化という2ステップライゲーションを使用してクローニングされた。(ポジションは、図14に示されているテネイシンCの完全長ヌクレオチド配列内の部位を指す)
【0166】
細菌増殖、誘導および溶解
プラスミドで、BL21(DE3)Rosetta細胞を形質転換させ、50μg/mlのカルベニシリンを含有する3LのLuria-Bertani培地中で培養し、1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドで誘導した。3時間後、4,000rpmで20分間の遠心分離によって細胞を回収し、氷冷した洗浄緩衝液(50mMのTris-HCl、pH8.0、100mMのNaCl、および1mMのEDTA)で2回洗浄し、フレンチプレスで溶解させた。12,000rpmで20分間、4℃での遠心分離によって封入体を回収した。TAおよびFBGを除いて、タンパク質は完全に上清中に存在していた。組み換えTAおよびFBGタンパク質を、6Mの塩酸グアニジン、50mMのTris-HCl、pH8.0、および10mMのβ-メルカプトエタノールを用いて、室温で2時間、一定に撹拌しながら、封入体から抽出した。
【0167】
細菌タンパク質の精製
組み換えタンパク質を含有している溶液を、Ni2+-NTA-アガロースカラムに注入し、20mMのイミダゾールを含有するpH8.0の50mMのTris-HClで洗浄した。カラムをその後、pH8.0の50mMのTris-HClで洗浄し、60mMのイミダゾールを含有するpH8.0の50mMのTris-HClでタンパク質を溶出した。TAおよびFBGの各洗浄および溶出では、緩衝液は、6Mの塩酸グアニジンを含有していた。Niクロマトグラフィーの後、TAおよびFBGは、その後の精製を必要としなかった。TN1-3およびTN6-8を、HiTrap Qカラムを使用した陰イオン交換クロマトグラフィーによって、TN1-5、TN3-5およびTN5-7を、HiTrap Sカラムを使用した陽イオン交換クロマトグラフィーによって、ならびにTN1-8をHiTrap Sカラム、その後のSephacryl S500 HRカラムを使用したゲル濾過を使用して、さらに精製した。
【0168】
不溶性タンパク質のリフォールディング
TAおよびFBGを、6Mの塩酸グアニジンを含有するpH8.0の50mMのTris-HClで20μg/mlまで希釈すること、次いで、16時間、撹拌しながら4℃で、20mMのシスタミンで処理することによってリフォールディングした。次いで、溶液を、15倍量の150mMのNaCl、10mMのCaCl2、5mMのβ-メルカプトエタノール、および1mMの2-ヒドロキシエチルジスルフィドを含有するpH8.0の50mMのTris-HClに対して24時間4℃で2回、pH8.0の20mMのTris-HClに対して8時間4℃で2回、透析し、次いで、12,000rpmで30分間、4℃で遠心分離にかけた。還元および非還元条件下でのSDS PAGEを使用して、サイズ変化によってリフォールディングを評価した。TAドメインの重合およびヘパリンセファロースカラムへのFBG結合によって、タンパク質活性を確認した。
【0169】
哺乳動物細胞を使用したEGF-Lドメインの合成
大腸菌発現系を使用してEGF-Lリピート領域を発現および精製しようとする最初の試みは、成功しなかった。このことは、この領域中の合計で91個のシステインのために、タンパク質フォールディングを達成するのが困難であることに起因する可能性が最も高い。したがって、TN-CのEGF様ドメインを、HEK293細胞を使用して発現させた。
【0170】
2つのPCR反応を行った。第1のPCR産物は、制限酵素KpnI部位、Kozak配列、その後のTN-Cシグナル配列からなっていた。第2のPCR産物は、FLAGペプチド、EGF様ドメイン配列、その後のヒスチジンタグおよびBamH1制限酵素配列からなっていた。
【0171】
2つのPCR産物を、Ho(1989)によって記載されている通り、一緒にライゲーションした。上述した通りPCR反応を行った。全構築体を、PCR Bluntベクター中にクローニングし、シーケンシングした。次いで、これを、pCEP4ベクター中にサブクローニングした。DNAを、Fugeneを使用してHEK293細胞中にトランスフェクトし、細胞を、10%(v/v)ウシ胎児血清、ペニシリン(100単位/ml)およびストレプトマイシン(100単位/ml)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において、ハイグロマイシン耐性(200μg/ml)について選択した。安定にトランスフェクトされた細胞から、2リットルの馴化培地(細胞を培地中で培養した後に回収した)を回収し、プールした。プールした馴化培地(2リットル)を、3000rpmで遠心分離にかけて、細胞残屑を培地から分離した。
【0172】
次いで、培地を抗FLAGカラムに注入した。フロースルーについて、50ml画分ずつ材料を回収した。カラムを、カラムの10倍量の1M NaCl、50mMのTris-HCl、pH7.5で洗浄し、次いで、カラムの10倍量の60%イソプロパノールで洗浄して確実にLPSを除去した。次いでカラムを、50mMのpH7.5のTris-HCl緩衝液で洗浄し、最後に、50mMのTris-HCl緩衝液、pH7.5中の200μg/mlのFLAGペプチドを使用してタンパク質を溶出した。
【0173】
タンパク質純度の分析
各タンパク質を、1000倍量の150mMのNaClおよび50mMのTris、pH7.5に対して透析した。タンパク質純度を、還元条件下でSDSPAGEによって分析した。これを行うために、1μgの各精製された組み換えタンパク質を、4〜12%のBis-Trisグラジエントゲル上で泳動させ、その後、ゲルを銀染色して、単一のバンドを示した(図10)。ウェスタンブロッティング分析もまた行った。SDS-PAGEによって分離されたタンパク質を、ポリビニリデンジフルオリド膜に電気的に転写した。膜を、Tris緩衝生理食塩水中5%BSAでブロックし、次いで、FLAG M2(1:2000希釈)(EGF-L)またはテトラ-his抗体(1: :2000)(すべての他のタンパク質)を認識する一次抗体とともにインキュベートした。次いで、ブロットを、アルカリホスファターゼにコンジュゲートさせた二次抗体とともにインキュベートし、タンパク質バンドを、ゲルが予期されるMwで各抗体によって認識される単一の特異的バンドを示すWestern Blue安定化基質を使用して、可視化させた(図示せず)。
【0174】
[実施例3]
動物モデル
ザイモサン誘導性の関節炎
ザイモサン誘導性の関節炎(ZIA)を、ザイモサン注射(サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae))によって、テネイシンC欠損および野生型マウスにおいて、Keystone(1977)に記載されている通り、誘導した。1mlの滅菌PBS中に15mgのザイモサンを溶解させることによって、ザイモサンを調製した。溶液を2回沸騰させ、超音波処理した。マウスに、滅菌水中に1:10希釈した150μlのHypnormの腹腔内注射によって麻酔をかけ、次いで、ザイモサン(10μl)を右足蹠に注入した(d=0)。
【0175】
対照マウスには、10μlのPBS単独の注射を投与したか、または注射しなかった。関節炎の肉眼による評価のために、各後足の厚さを、マイクロキャリパー(Kroeplin、Schluchlem、ドイツ)で毎日測定し、直径を、マウス1匹につき各炎症を起こしている後足の平均として表した。
【0176】
実験の完了後(日=4)、マウスを安楽死させ、後足を10%(v/v)緩衝ホルマリン中で固定し、10%EDTAで脱灰し、パラフィン中に包埋した。
【0177】
抗原誘導性の関節炎
抗原誘導性の関節炎(AIA)を、テネイシンC欠損および野生型マウスにおいて、Brackertz(1977)によって以前に記載されている通りに誘導した。手短に述べると、0日目で、マウスに、滅菌水中で1:10希釈した150μlのHypnormの腹腔内注射によって麻酔をかけ、次いで、200μgのメチル化BSAで免疫化した。mBSAを、0.2mlのフロイントの完全なアジュバント中に乳化させ、尾の基部の皮内に注射した。
【0178】
7日目に、関節炎を、滅菌した33ゲージのマイクロカニューレを使用して、mBSA(10μlの滅菌PBS中100μg)の、右膝関節への関節内注射によって誘導した。対照マウスには、10μlのPBS単独の注射をしたか、または注射しなかった。
【0179】
14日目に、マウスを安楽死させ、膝関節を摘出し、10%(体積/体積)緩衝ホルマリン中で固定し、10%EDTAで脱灰し、パラフィン中に包埋した。
【0180】
FBG注射
野生型マウスに、滅菌水中に1:10希釈した150μlのHypnormの腹腔内注射によって麻酔をかけ、次いで、滅菌した33ゲージのマイクロカニューレを使用して、10μlの滅菌PBS中の100ng、1または3μgのFBGを右膝関節に注射した。。対照マウスには、10μlのPBS単独の注射を投与したか、または注射しなかった。
【0181】
3日目および7日目に、マウスを安楽死させ、膝関節を摘出し、10%(体積/体積)緩衝ホルマリン中で固定し、10%EDTAで脱灰し、パラフィン中に包埋した.
【0182】
膝関節の組織像
冠状組織切片(4μm)を、80μmの距離を隔てて関節全体で7個の深さで切り取り、ヘマトキシリン・エオシンまたはサフラニン-Oで染色して、関節の病理を評価した。組織病理学的変化を、以下のパラメータを使用して、Van Lent(2006)に記載の通りにスコアリングした。
【0183】
炎症(滑膜(浸潤物)および関節腔(滲出物)への炎症細胞の流入を、0(炎症なし)から3(重度の炎症)までの任意の尺度を使用して等級付けした。軟骨細胞死は、全体の領域に対して空胞を含有している軟骨領域のパーセントとして決定した。軟骨表面のびらんは、全体の軟骨領域に対する軟骨損失量として決定した。骨破壊は、全体の膝関節切片の10個の異なる領域において決定した。破壊は、0(損傷なし)から3(骨構造の完全な喪失)の尺度に基づいて等級付けした。組織学的分析は、実験群を分からないようにした調査者によって実施した。実験群における各動物についての平均スコアを、関節当たり少なくとも5つの切片の深さにおける組織病理学的スコアを平均することによって計算した。
【0184】
結果
テネイシンC欠損マウスにおいてザイモサン誘導性の関節炎は持続しない
足蹠へのザイモサン注射を使用して、マウスにおいて急性滑膜炎を誘導した。野生型マウスは、迅速な足腫脹を示し、24時間までに足の最大直径に到達した(2.56mm、開始時の足の直径62%の増加)。これは、さらに24時間維持された。2日後、足の直径は減少したが、足は、4日目まで腫脹したままであった(2.08mm、32%の増加)(図1a)。テネイシンC欠損マウスは、注射24時間後に、野生型マウスと同様な程度の足腫脹を示した(2.41mm、開始時の足の直径の57%の増加)。しかしながら、テネイシンCヌルマウスの腫脹は、野生型マウスより早く軽快し、足の直径は2日で顕著に減少し、4日目までに1.7mmまで減少した(わずか11%の増加)(図1a)。注射後4日目まで、野生型マウスの足は依然として肉眼で認識できる程度に赤く腫脹したままであったが、テネイシンCヌルマウスの足は、肉眼で認識できる程度には腫脹または赤くなっておらず、注射していない足のようであった(図9)。
【0185】
この差異は、4日で組織学的に反映された。野生型マウスの滑膜は、顕著に炎症が起こっており、細胞浸潤を示し、軟骨プロテオグリカン喪失が観察された(図1b、c)。対照的に、テネイシンC欠損マウスの滑膜は、滑膜炎、細胞浸潤物または軟骨プロテオグリカン喪失を示さず(図1d、e)、偽注射されたマウスおよび注射していないマウスの関節のようであった(図示せず)。関節炎の定量によって、野生型またはテネイシンCヌルマウスのいずれにおいてもわずかな滲出物(関節腔中の細胞塊)が存在していたが、テネイシンCヌルマウスにおいて浸潤物(滑膜層中の細胞塊)のレベルが顕著に減少したことが明らかとなった(図1f)。いずれの遺伝子型のマウスにおいても、軟骨または骨のびらんは生じなかった(図示せず)が、野生型マウスにおいて、テネイシンCヌルマウスにおいては観察されなかった低いレベルの軟骨細胞死が生じた(図1g)。したがって、テネイシンC発現は、急性炎症の維持を促進するようである。
【0186】
テネイシンCヌルマウスは、抗原誘導性の関節炎の間、持続性の炎症および構造的損傷から保護される
テネイシンCがまた、より破壊的な炎症性関節疾患に寄与するかどうかを決定するために、びらん性の関節炎を、mBSAによる免疫化の後の膝関節へのmBSAの関節内注射によって誘導した。このモデルは、細胞性および体液性の免疫反応の両方を伴い、ヒトRAと類似した病理学的変化を誘導する(Brackertz(1977))。mBSAの注射は、テネイシンCヌルマウスおよび野生型マウスの両方において同様な炎症反応を誘導した。偽注射された(図2a、b、g)または注射していない(図示せず)マウスと比較して、両方の遺伝子型のマウスにおいて、細胞浸潤および滑膜肥厚が24時間までに見られる(図2c〜f、h、i)。
【0187】
しかしながら、これは、テネイシンCヌルマウスにおいて野生型マウスほど持続しない。注射後3日目までに、野生型マウスは、半月板および被膜の炎症の増加、滑膜過形成、関節腔における細胞およびフィブリン沈着、パンヌス形成および限局的な軟骨プロテオグリカン喪失を示す(図3a、b、f)。対照的に、テネイシンCヌルマウスでは、3日目までに、炎症は被膜に限定され、滑膜炎は軽快しており、関節腔中に存在するフィブリン/細胞凝集物、パンヌス形成および軟骨プロテオグリカン喪失はない(図3c、d、e)。
【0188】
7日目までに、野生型マウスは、持続的な炎症細胞浸潤および関節腔滲出物、広汎性の滑膜炎およびパンヌス形成ならびに関節軟骨の破壊および骨びらんを示した(図4a、b)。偽注射した膝および注射を受けなかったマウスの膝は健康であり、炎症も関節破壊も示さなかった(図示せず)。テネイシンC欠損マウスもまた、関節腔滲出物、滑膜炎、パンヌス形成、関節軟骨の破壊または骨びらんのない、ごく軽度の炎症細胞浸潤を示す健康な関節を有していた(図4c、d)。偽注射されたマウスおよびまたは注射を受けなかったテネイシンC欠損マウスの関節もまた健康であった(図示せず)。
【0189】
これらの組織学的データは、材料および方法において記載の通り、関節疾患のスコアリングに反映されている。注射24時間後に野生型マウスおよびテネイシンCヌルマウスの両方において観察される細胞浸潤物および滲出物のレベルは、顕著には異なっていなかった。しかしながら、野生型マウスにおいて細胞塊が経時的に増加し続けたのに対して、テネイシンCヌルマウスにおいてこの反応は弱まり、関節中の細胞数は経時的に減少した(図4e)。野生型マウスの軟骨において生じる軟骨細胞死のレベルは時間とともに徐々に高くなったが、テネイシンCヌルマウスにおいて顕著な死は観察されなかった(図4f)。野生型マウスにおいて24時間または3日で、軟骨表面のびらんおよび骨びらんははっきりと認められなかったが(図示せず)、顕著な組織破壊が、7日目までに生じた。対照的に、テネイシンCヌルマウスは、24時間、3日(図示せず)または7日(図4f)で組織破壊を示さなかった。これらのデータは、関節炎の開始(滑膜および関節腔への細胞流入)はテネイシンCヌルマウスにおいて影響を受けないが、野生型マウスとは異なり、疾患は組織破壊および細胞死の状態まで進行しないことを示す。これらの結果は、テネイシンCの発現が、このモデルにおいて持続性の滑膜炎および関節破壊に必要とされることを示す。
【0190】
[実施例4]
細胞培養
患者検体
ヒト単球を、末梢血(London Blood Bank)から単離し、マクロファージを、100ng/mlのM-CSFで4日間の分化後の単球から、以前に記述されている通り得た(Foxwell(1998))。
【0191】
RA膜細胞(すべての滑膜細胞型の混合集団を表す)を、関節置換術を受けている患者から得られた滑膜から、以前に記述されている(Brennan(1989))通り単離した。RA滑膜線維芽細胞を、RA膜細胞の混合集団から以前に記述されている(Brennan(1989))通り単離した。研究は、地域のTrust倫理委員会(Riverside NHS Research Committee)により承認され、廃棄組織(関節置換術後の滑膜)を、署名されたインフォームドコンセントを患者から受け取り、患者の身元を保護するために組織を匿名化した後にのみ得た。
【0192】
単離後直ちに、RA膜細胞およびマクロファージを、刺激の前に24時間、96ウェル組織培養プレートにおいて、10%(v/v)FBSおよび100U/ml(単位/ml)ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI1640において1×105細胞/ウェルで培養した。滑膜線維芽細胞(継代数2または3でのみ使用される)を、刺激の前に24時間、96ウェル組織培養プレートにおいて、10%(v/v)FBSおよび100U/mlペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEMにおいて1×104細胞/ウェルで培養した。
【0193】
マウス胚線維芽細胞(MEF)および骨髄由来マクロファージ(BMDM)
MEFは、すべての9種のマウスTLRの高レベルのmRNAを発現し、特異的かつ高度にTLRリガンド活性化に反応する。TLR2、TLR4およびMyD88の特異的欠失を有するマウスのMEFは、それらの特異的リガンドに対するIL-6反応において甚大な欠陥を示す(Kurt-Jones(2004))。MEFを、年齢を一致させた、妊娠している雌野生型、TLR2、TLR4およびヌルマウスから回収したd13胚から単離した(Todaro(1963)に記載の通り)。線維芽細胞を、刺激の前に24時間、96ウェル組織培養プレートにおいて、10%(v/v)FBSおよび100U/mlペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEMにおいて2×104細胞/ウェルで培養した。
【0194】
BMDMは、Butler(1999)に記載の通り、年齢を一致させた雌野生型、TLR2およびTLR4ヌルマウスの大腿部を吸引すること、および細胞を7日間、DMEM、20%(v/v)FBS、10ml/L(v/v)抗生物質-抗真菌溶液PSA、50μMのβ-メルカプトエタノールおよび10ng/mlのM-CSF中で培養することによって得た。次いで、マクロファージを、DMEM、20%(v/v)FBS、10ml/L(v/v)抗生物質-抗真菌溶液PSA、50μMのβ-メルカプトエタノール中で、1×105細胞/ウェルで、刺激の前に24時間、96ウェル組織培養プレートにおいて培養した。
【0195】
HEK293細胞系
TLR2およびTLR4/CD14/MD-2を発現するHEK293細胞系を、刺激の前に24時間、96ウェル組織培養プレートにおいて、10%(v/v)FBSおよび10μg/mlのブラストサイジンを含有するDMEMにおいて1×104細胞/ウェルで培養した。
【0196】
細胞刺激およびサイトカイン合成の評価
細胞を、24時間37℃で、指示された用量のテネイシンCおよび組み換えテネイシンCフラグメント(1.0μM〜1.0nM)とともにインキュベートした。示されている場合、細胞をまた、LPS(ヒトマクロファージでは1ng/ml、ヒト線維芽細胞、RA膜細胞およびHEKでは10ng/ml、MEFSおよびBMDMでは100ng/mlならびにHEKSでは10ng/ml)、PAM3(ヒトマクロファージ、ヒト線維芽細胞、およびHEKでは10ng/ml、MEFおよびBMDMでは100ng/ml)、マウスIL-1(MEFSでは5ng/ml)およびマウスTNF-α(MEFSでは100ng/ml)で刺激した。別途明確な記載のない限り、インビトロ試験ではラフ型LPSを使用した。
【0197】
アデノウイルス遺伝子導入実験では、ヒトRA滑膜線維芽細胞を、100の非常に多数の感染で、アデノウイルスベクターとともにインキュベートし、2時間後洗浄し、完全培地中で24時間培養し、次いで24時間刺激した後、上清を回収した。
【0198】
明記されている場合、細胞を、10μg/ml抗CD14抗体、10μg/ml IL1受容体アンタゴニスト、10μg/ml抗TLR2抗体、25μg/ml抗TLR4抗体、10または25μg/mlアイソタイプ対照抗体、25μg/mlのポリミキシンB、または1μg/mlのmsbB LPSとともに、刺激の前に30分間、37℃で事前にインキュベートした。明記されている場合、組み換えテネイシンCおよびFBG、およびLPSを、細胞への添加前に15分間沸騰させた。
【0199】
いかなる場合においても、細胞の生存性は、MTT細胞生存性アッセイ(Sigma、プール、イギリス)により検査した場合、実験期間を通して顕著に影響を及ぼされなかった。
【0200】
上清を、その後、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、製造業者の使用説明書に従って、サイトカインTNF-α、IL-6、およびIL-8の存在について検査した。吸光度は、分光光度ELISAプレートリーダー(Labsystems Multiscan Biochromic、ヴァンター、フィンランド)において読み取り、Ascentソフトウェアプログラム(Thermo Labsystem、オールトリンガム、イギリス)を使用して分析した。
【0201】
結果
テネイシンCは、初代ヒトRA滑膜線維芽細胞およびマクロファージにおいてTNF-α、IL-6およびIL-8合成を誘導する
本発明者らは次に、テネイシンCが、先天性免疫反応を活性化し得るかどうかを調査した。テネイシンCを使用して、初代ヒトマクロファージおよびRA滑膜線維芽細胞を刺激し、炎症誘発性サイトカインTNF-α、IL-6およびIL-8の産生を調査した。細菌の細胞壁成分LPSを、陽性対照として使用した。テネイシンCは、LPSとは顕著に異なる細胞型特異的サイトカインプロファイルを誘導した。テネイシンCは、ヒトマクロファージにおいてTNF-α、IL-6およびIL-8の産生を依存的に刺激した(図5a)。しかしながら、テネイシンCは、滑膜線維芽細胞においてIL-6合成しか誘導しなかったが、LPSは、IL-6およびIL-8の両方を誘導した(図5b)。LPSもテネイシンCも、線維芽細胞においてTNF-α合成を誘導しなかった(データは図示せず)。滑膜線維芽細胞(図示せず)による、ヒトマクロファージおよびIL-6による、IL-6(図5c)、IL-8およびTNF-αのテネイシンC刺激は、熱感受性であり、LPS阻害剤、ポリミキシンBによる影響を受けなかった。まとめると、これらの結果は、テネイシンCによるサイトカイン誘導はLPS混入によるものではないという有力な証拠を示す。
【0202】
フィブリノゲン様球状(FBG)は、細胞のテネイシンC活性化を仲介する。
テネイシンCは、大きな6量体分子であり、その各ドメインは異なる細胞表面受容体に結合する(Orend(2005)において概説されている)。テネイシンCの作用機構を理解することは、サイトカイン産生を促進するために不可欠なドメインの特定を必要とするであろう。本発明者らは、この分子の異なるドメインを含む組み換えタンパク質を合成した(図10)。各ドメインは、大腸菌において作製され、精製され(図11)、そのままのタンパク質をカブトガニ血球抽出成分アッセイに供することによって、10pg/ml未満のLPSを含有することが分かった。テネイシンCの1つのドメインのみが活性であった。フィブリノゲン様球状(FBG)は、ヒトマクロファージにおいてTNF-α合成を刺激し(図6a)、ヒトマクロファージにおいてIL-6およびIL-8合成を(図示せず)およびRA滑膜線維芽細胞においてIL-6を(図示せず)、完全長テネイシンCと等しい程度まで刺激した。完全長テネイシンCと同様に、FBGは、RA滑膜線維芽細胞において、LPSは刺激したIL-8合成を誘導しなかった(データは示さず)。FBGに誘導されるサイトカイン合成はまた、熱感受性であり、ポリミキシンBによる影響を受けなかった(データは示さず)。
【0203】
テネイシンCのFBGドメインは、ヒトRA滑膜におけるサイトカイン産生およびマウスにおける関節炎を誘導する。
【0204】
本発明者らは、FBGが、RA患者由来の滑膜において、炎症性サイトカインの発現を促進し得るかどうかを調査した。RAのこの組織モデル(すべての滑膜細胞型の混合集団を含む)は、高レベルのIL-6、IL-8およびTNF-αを自然発生的に産生する(Brennan(1989))(図6b)。FBGは、すべてのこれらのサイトカインの合成をさらに強化した(図6b)。FBGが、インビボで炎症を誘導し得るかどうかを決定するために、野生型マウスに、FBGを関節内に注射した。本発明者らは、関節炎の一過性の用量依存的な刺激を観察した。炎症またはプロテオグリカン喪失は、注射されていないマウスにおいて、またはPBS(図6c〜e)または100ng FBG(データは示さず)を注射したマウスにおいて生じなかった。1μgのFBGを注射したマウスにおいて、炎症細胞浸潤(図6f)、軽度の滑膜炎、パンヌス形成(図6g)およびプロテオグリカン喪失(図6h)が観察された。同様な反応は、3μgのFBGを注射したマウスにおいて見られた(データは示さず)。組織学的定量により、高レベルの細胞浸潤物および滲出物および軟骨細胞死が、FBGを注射したマウスにおいて、わずかな量の軟骨表面のびらんおよび骨損傷とともに観察された(図6i)。
【0205】
FBGに仲介されるサイトカイン合成は、Myd88に依存する
フィブリノゲンを含む多くのDAMP(Smiley(2001))が、TLRの活性化によって先天性免疫反応を刺激することが示されている。したがって、本発明者らは、TLRはまた、テネイシンCに誘導されるサイトカイン産生を仲介し得るかどうかを調査した。骨髄分化因子88(MyD88)は、TLR3を除くすべてのTLRによるシグナル伝達に必要とされる(O'Neill(2008))。滑膜線維芽細胞の優勢な陰性MyD88を発現するアデノウイルスへの感染は、GFP対照ウイルスではそうならなかったが、IL-6のFBG誘導を消失させた(図7a)。これらのデータは、FBGに誘導される炎症が機能的MyD88に依存することを示唆する。FBGのこの作用は、IL-1受容体アンタゴニストの添加がサイトカインの誘導を阻害しなかったため、IL-1によって仲介されないようであった(データは示さず)。FBG作用がMyD88に依存することを確認するために、本発明者らは、FBGが、MyD88遺伝子に特異的欠失を有するマウスから単離された胚線維芽細胞においてサイトカイン合成を刺激しないことを示した。TLR2リガンドPAM3、TLR4リガンドLPSおよびIL-1はすべて、MyD88を介してシグナル伝達する。これらによる刺激はまた、欠損マウスのMEFにおいて消失した。しかしながら、MyD88を介してシグナル伝達しないTNF-αは、影響を受けなかった(図7b)。野生型MyD88の再トランスフェクションは、FBG、PAM3、LPSおよびIL-1に対するこれらの細胞の反応性を回復させた(データは示さず)。
【0206】
TLR4を介するFBGシグナル
TLRは、内因性リガンドに対する特異性を示し、タンパク質は、TLR2および4の一方または両方により認識される(O'Neill(2008)において概説されている)。TLR4に対する中性抗体は、ヒトマクロファージにおいて、FBGおよびLPSの両方に誘導されるIL-6、IL-8およびTNF-α合成を、およびRA滑膜線維芽細胞においてIL-6合成を阻害したが、TLR2リガンド、PAM3の機能に対しては影響を有さなかった。TLR2に対する抗体は、PAM3に仲介されるサイトカイン合成を阻害したが、LPSまたはFBGに誘導されるサイトカイン合成に対する影響を有さなかった。アイソタイプの一致する対照は、任意のリガンドにより誘導されるサイトカイン合成に対する影響を有さなかった(ヒトマクロファージによるTNF-α合成を図8aに示す)。FBG作用がTLR4依存性であることを確認するために、本発明者らは、FBGが、TLR4遺伝子に特異的欠失を有するマウスから単離された胚線維芽細胞またはマクロファージにおいて、サイトカイン合成を刺激しないことを示した。FBGに仲介されるサイトカイン合成は、TLR2遺伝子に特異的欠失を有するマウスから単離された胚線維芽細胞またはマクロファージにおいて影響を受けなかった。TLR2欠損マウスから単離された細胞は、PAM3に反応しなかったが、LPSおよびIL-1に反応した。TLR4欠損マウスから単離された細胞は、LPSに反応しなかったが、PAM3およびIL-1に反応した(図8b、c)。加えて、TLR4の発現は、インビボでFBGの関節炎誘発作用に必要とされ、FBGは、TLR2ヌルマウスにおいて関節炎を誘導することができたが、TLR4ヌルマウスにおいては誘導することができなかった(図12)。
【0207】
FBGおよびLPSの異なる共受容体要件
TLR4を介するLPSシグナル伝達は、可溶性タンパク質MD-2およびGPI結合細胞表面または可溶性CD14を含む受容体複合体によって仲介される(Fitzgerald(2004)において概説されている)。本発明者らは次に、CD14およびMD-2が、TLR4のFBG活性化に必要とされるかどうかを調査した。ここで陽性対照として、本発明者らは、MD-2およびCD14の両方を必要とするスムーズ型グリコシル化LPSの活性を調査した(Jiang(2005))。LPSに仲介されるヒトマクロファージによるIL-6、IL-8およびTNF-α合成、およびRA滑膜線維芽細胞によるIL-6合成を、抗CD14抗体およびMD-2に対するLPSの結合に競合する、msbB突然変異大腸菌由来のアンタゴニストLPSによって阻害した(Coats(2007))。反対に、TLR2の活性化、およびFBGに仲介されるサイトカイン合成のためにこれらの共受容体を必要としない両方のPAM3が、抗CD14抗体またはmsbB突然変異LPSによって影響を受けなかった(図8dは、ヒトマクロファージによるTNF-α合成を示す)。これらのデータは、CD14もMD-2も、FBGに仲介されるサイトカイン合成に必要とされないことを示唆する。したがって、LPSおよびFBGは両方とも、TLR4の活性化を介してシグナル伝達するが、これらは異なる共受容体要求を有する可能性がある。
【0208】
[実施例5]
ヒト組織におけるテネイシンCの作用および合成の阻害
この実施例は、(1)テネイシンCの炎症誘発作用の阻止および(2)ヒトRA滑膜におけるテネイシンC発現の阻害、の影響を試験する。
【0209】
方法
ペプチド合成
全FBGドメインを含む9個のオーバーラッピングペプチド(Table 2(表2))は、ドイツのBiogenesによって合成された。ペプチドを、室温で切断し(切断混合物:90%トリフルオロ酢酸、5%チオアニソール、3%エタンジチオール、2%アニソール)、逆相高速液体クロマトグラフィーによって精製し、MALDI TOF質量スペクトル分析によって特徴付けた。ペプチドの純度は、高速液体クロマトグラフィーで決定され、85%より高かった。
【0210】
設備は、おそらくペプチド鎖の伸長を阻止する二次構造の形成のために、ペプチド7を合成することができなかった(以前に報告されている(LaFleur(1997))。
【0211】
【表2】

【0212】
患者検体および細胞培養
RA膜細胞(すべての滑膜細胞型の混合集団を表す)を、関節置換術を受けた患者から得られた滑膜から単離した(Brennan(1989))。滑膜組織を、5%ウシ胎児血清(FCS)(GIBCO)、5mg/mlのIV型コラゲナーゼ(Sigma)および0.15mg/mlのI型DNAse(Sigma)を含有するRPMI1640(GIBCO)中で消化し、37℃で2時間インキュベートした。
【0213】
インキュベーション後、組織を、ナイロンメッシュを通して滅菌したビーカー中にピペットで移した。次いで、細胞を、完全培地(10%FCSを添加したRPMI1640)中で3回洗浄した。RA滑膜線維芽細胞を、10%FBS、1μMグルタミン、100U/mlペニシリン、およびストレプトマイシンを添加したDMEM(Bio-Whittaker)における選択によって、RA膜細胞の混合集団から単離した。ヒト単球を、末梢血(London Blood Bank)から単離し、マクロファージを、100ng/mlのM-CSFによる4日間の分化後の単球から得た。
【0214】
研究は、地域のTrust倫理委員会によって承認され、廃棄組織(関節置換術後の滑膜)を、署名されたインフォームドコンセントを患者から受け取り、患者の身元を保護するために組織を匿名化した後にのみ得た。
【0215】
細胞刺激およびサイトカイン合成の評価
単離後直ちに、RA膜細胞を、10%(v/v)FBSおよび100U/mlペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI1640中で96ウェル組織培養プレートにおいて1×105細胞/ウェルで培養した。細胞を、添加なし、緩衝液対照(PBS、1%BSA、0.01%NaN3)、または、25μm、100μMまたは250μMの各FBGスパニングペプチドとともに、24時間、37℃でインキュベートした。
【0216】
滑膜線維芽細胞(継代数2または3でのみ使用される)を、5×104細胞の濃度で3.5cmディッシュに播種した。siRNAを、無血清OptiMEM Iにおいて4時間、Lipofectamine2000(Invitrogen)を使用して、10nMの最終濃度で、トランスフェクトした。ヒトテネイシンCに対する2つの異なるsiRNAを使用した(s7069およびS229491)(Applied Biosystems)。
【0217】
s7069のsiRNA配列は、(センス5' CGCGAGAACUUCUACCAAAtt 3'、アンチセンス5' UUUGGUAGAAGUUCUCGCGtc 3')であり、S229491のsiRNA配列は(5' GGAAUAUGAAUAAAGAAGAtt 3'、アンチセンス5' UCUUCUUUAUUCAUAUUCCgg 3')である。ルシフェラーゼに対するsiRNA(Dharmacon)を、非標的対照としてトランスフェクトした。
【0218】
トランスフェクションの4時間後、培地を、10%FBS(v/v)を含有する予め平衡化させたダルベッコ改変イーグル培地と交換し、細胞を、さらに48時間および72時間インキュベートした。次いで、細胞を、10ng/mlのLPSで24時間37℃で刺激した。テネイシンCのmRNAおよびタンパク質レベルを、PCRおよびウェスタンブロッティングによってそれぞれ定量化した。全RNAを、QiaAmp RNA Bloodミニキット(Qiagen、ドイツ)を使用して、細胞から抽出した。cDNAは、SuperScript(登録商標)III逆転写酵素(Invitrogen)および18merのオリゴdTs(Eurofins MWG Operon)を使用して、同量の全RNAから合成した。
【0219】
遺伝子発現を、TaqManプライマーセットヒトテネイシンC(Hs01115663-m1)およびヒトリボソームタンパク質内部対照(RPLPO)(4310879E)(Applied Biosystems)を用いて定量的リアルタイムPCRに基づくdelta-delta ct法によって、Corbett Rotor-gene6000装置(Corbett Research Ltd)において、分析した。テネイシンCタンパク質を、抗体MAB1908(Millipore)を使用してSDS PAGEおよびウェスタンブロッティングによって、細胞上清および細胞溶解物において検出した。
【0220】
マクロファージを、5%(v/v)FBSおよび100U/mlペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI1640中で、96ウェル組織培養プレートにおいて、1×105細胞/ウェルで、刺激の前に24時間、培養した。細胞を、24時間、37℃で、添加なしで、1.0μMのFBG、1ng/mlのLPSまたは1または20μMのFBGペプチドとともにインキュベートした。明記されている場合、細胞を、20μMのFBGペプチドとともに15分間プレインキュベートした。
【0221】
細胞の生存性は、MTT細胞生存性アッセイ(Sigma、プール、イギリス)によって調査した場合、実験期間を通して顕著に影響を受けなかった。上清を、サイトカインTNF-α、IL-6、およびIL-8の存在について、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(R&D systems)によって、製造業者の使用説明書に従って調査した。吸光度は、分光光度ELISAプレートリーダー(Labsystems Multiscan Biochromic、ヴァンター、フィンランド)において読み取り、Ascentソフトウェアプログラム(Thermo Labsystems、オールトリンガム、イギリス)を使用して分析した。
【0222】
統計学的方法
平均、SDおよびSEMは、GraphPad(GraphPad Software Inc.、サンディエゴ、CA)を使用して計算した。
【0223】
結果
特異的FBGペプチドによるRA膜培養におけるサイトカイン合成の妨害
ペプチド阻害の手法を使用して、テネイシンCのFBGドメインにおけるαvβ3インテグリン結合部位を正確に示すこと、およびテネイシンCのこのドメインに反応して細胞接着を阻止することが成功している(Lafleur(1997)およびYokoyama(2000))。
【0224】
本発明者らは、FBGの全配列にわたる約30アミノ酸の一連の8個のオーバーラッピングペプチドを合成した(Table 2(表2))。ペプチドを、RA滑膜培養における自然発生的なサイトカイン合成を妨害するする能力について試験した。TNFおよびIL8合成は、ペプチド3および8により阻害されたが、他のペプチドには阻害されなかった(TNFを図15に示す)。ペプチド3および8は、サイトカイン合成を用量依存的に阻害し、最大濃度はそれぞれ95%および56%阻害に達した(図16)。ペプチド5は、TNF合成に対して影響を及ぼさなかったが、RA膜細胞におけるIL8合成を用量依存的に妨害し、最大阻害は81%であった(図16)。
【0225】
サイトカイン産生の誘導を担うFBG内の活性ドメインを位置付けるために、本発明者らは、初代ヒトマクロファージを各FBGペプチドで刺激した。ペプチド1、5および6はすべて、サイトカイン合成を用量依存的に誘導した(図17)。
【0226】
任意のペプチドが、ヒトマクロファージにおいてFBGに誘導されるサイトカイン合成を妨害し得るかどうかを決定するために、細胞を、完全なFBGまたはLPSのいずれかによる刺激の前に、各FBGペプチドでプレインキュベートした。ペプチド5は、FBGに仲介されるサイトカイン合成を特異的に妨害したが、ペプチド8は、LPSおよびFBGの両方に反応してサイトカイン合成を妨害した(図18)。
【0227】
したがって、ペプチド8は、任意の刺激により誘導されるサイトカイン産生を非特異的に妨害する。このドメインは、細胞接着を仲介するFBGのインテグリン結合ドメインであり、したがって、組織培養プレートへの細胞付着を阻止するために機能している可能性がある。ペプチド5は、FBGに誘導されるサイトカイン合成を特異的に妨害し、このドメインを標的とすることが、テネイシンCに誘導される炎症を阻止するために有用であり得ることを示唆する。
【0228】
テネイシンC遺伝子発現を抑制することにより、RA滑膜線維芽細胞におけるサイトカイン合成は阻害される
ヒトRA滑膜におけるテネイシンC発現を阻害することの影響についての調査により、滑膜線維芽細胞がRAにおけるテネイシンCの主な供給源であることが同定された(図1C)(Goh2010において)。
【0229】
これらの細胞におけるテネイシンC発現のsiRNAに仲介されるノックダウンは、94〜96%の最大効率を有することが示されている(図19)。テネイシンCのsiRNAをトランスフェクトされた細胞において、サイトカイン合成の基礎レベルおよびLPSに誘導されるサイトカイン産生の両方が、対照細胞と比較してそれぞれ38%および44%、阻害された(図19)。
【0230】
これらのデータにより、RA滑膜線維芽細胞におけるテネイシンCを抑制することは、炎症誘発性サイトカインの合成を減少させることが明らかであり、テネイシンC発現の除去が、滑膜における炎症を阻害するための実現性のある戦略であることが示唆される
【0231】
この研究により、テネイシンC活性(ペプチドにより)およびテネイシンC発現(siRNAにより)を妨害することによって、ヒトRA滑膜において炎症性サイトカイン合成が減少することが立証された。これらのデータは、テネイシンCの妨害が、RAおよび他の炎症性疾患を治療するために、潜在的に臨床上有益であることを示す。
[参考文献]






【特許請求の範囲】
【請求項1】
テネイシンCの生物活性を調整する、慢性炎症反応の調整のための作用物質。
【請求項2】
テネイシンCの転写、翻訳および/または結合特性を変更することによって、テネイシンCの生物活性を調整する、請求項1に記載の作用物質。
【請求項3】
テネイシンCの生物活性を下方制御する、請求項1または2に記載の作用物質。
【請求項4】
テネイシンCの生物活性を上方制御する、請求項1から2のいずれかに記載の作用物質。
【請求項5】
テネイシンCの転写の阻害剤である、請求項1から3のいずれかに記載の作用物質。
【請求項6】
テネイシンCの翻訳の阻害剤である、請求項1から3のいずれかに記載の作用物質。
【請求項7】
テネイシンCの結合特性の阻害剤である、請求項1から3のいずれかに記載の作用物質。
【請求項8】
テネイシンCの競合的結合阻害剤である、請求項1から3のいずれかに記載の作用物質。
【請求項9】
TLR-4受容体のアンタゴニストである、請求項1から3または7のいずれかに記載の作用物質。
【請求項10】
短鎖干渉RNA(SiRNA)分子、短鎖ヘアピンRNA分子(shRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、テネイシンCに対する結合親和性を有する化合物、抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)およびその抗原結合フラグメント、低分子阻害化合物、テネイシンCのドメインまたはその変異体、ポリペプチドおよびタンパク質からなる群から選択される、請求項1から9のいずれかに記載の作用物質。
【請求項11】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、Fvフラグメント、scFvフラグメント、Fab、単一可変ドメインおよびドメイン抗体からなる群から選択される、請求項10に記載の作用物質。
【請求項12】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントがヒト化されている、請求項10から11のいずれかに記載の作用物質。
【請求項13】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、Toll様受容体4 (TLR4)、テネイシンCまたはそのドメインに対する特異性を有する、請求項10から12のいずれかに記載の作用物質。
【請求項14】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、テネイシンCのFBGドメインに対する特異性を有する、請求項10から12のいずれかに記載の作用物質。
【請求項15】
テネイシンCの活性を調整する作用物質を同定する方法であって、
(i)1つまたは複数の候補作用物質を提供するステップと、
(ii)1つまたは複数の細胞を、テネイシンCおよび前記1つまたは複数の候補作用物質と接触させるステップと、
(iii)1つまたは複数の細胞を、テネイシンCと接触させ、候補作用物質とは接触させないステップと、
(iv)前記候補作用物質が、対照ステップ(iii)の細胞と比較して、ステップ(ii)における1つまたは複数の細胞に対するテネイシンCの作用を調整するかどうかを決定するステップと
を含む方法。
【請求項16】
テネイシンCの活性が上方制御される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
テネイシンCの活性が下方制御される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(ii)および(iii)の細胞が、Toll様受容体4 (TLR4)を発現する、請求項15から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記1つまたは複数の細胞が、炎症細胞、線維芽細胞、線維芽細胞様細胞(滑膜細胞としても知られているRA滑膜線維芽細胞を含む)、マウス胚線維芽細胞、ヒト胚性腎細胞からなる群から選択される、請求項15から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
炎症細胞が、マクロファージ、樹状細胞、単球、リンパ球、単球様細胞およびマクロファージ様細胞からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項15から20に記載の方法を実施することによって、慢性炎症反応を調整する作用物質を同定する方法。
【請求項22】
慢性炎症反応が、不適切な炎症により特徴付けられる状態に関連している、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
慢性炎症反応が、関節リウマチ(RA)、自己免疫状態、炎症性腸疾患、難治性創傷、多発性硬化症、癌、アテローム性動脈硬化症、シェーグレン疾患、糖尿病、エリトマトーデス(全身性エリトマトーデスを含む)、喘息、線維性疾患(肝硬変を含む)、肺線維症、UV損傷および乾癬に関連している、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
慢性炎症が、関節リウマチ(RA)に関連している、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項15から24のいずれかに記載の方法によって同定される作用物質。
【請求項26】
同定される作用物質が、慢性炎症反応を調整する、請求項25に記載の作用物質。
【請求項27】
慢性炎症反応を下方制御する、請求項26に記載の作用物質。
【請求項28】
慢性炎症反応を上方制御する、請求項26に記載の作用物質。
【請求項29】
短鎖干渉RNA (SiRNA)分子、短鎖ヘアピンRNA分子(shRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、テネイシンCに対する結合親和性を有する化合物、抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)およびその抗原結合フラグメント、低分子阻害化合物、テネイシンCのドメインまたはその変異体、ポリペプチドおよびタンパク質からなる群から選択される、請求項25から28のいずれかに記載の作用物質。
【請求項30】
慢性炎症反応が、不適切な炎症により特徴付けられる状態に関連している、請求項1から14および25から29のいずれかに記載の作用物質。
【請求項31】
慢性炎症反応が、関節リウマチ(RA)、自己免疫状態、炎症性腸疾患、難治性創傷、多発性硬化症、癌、アテローム性動脈硬化症、シェーグレン疾患、糖尿病、エリトマトーデス(全身性エリトマトーデスを含む)、喘息、線維性疾患(肝硬変を含む)、肺線維症、UV損傷および乾癬に関連している、請求項1から14および25から30に記載の作用物質。
【請求項32】
請求項1から14および25から31のいずれかに記載の作用物質と、薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤とを含む組成物。
【請求項33】
少なくとも1つの他の作用物質をさらに含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
少なくとも1つの他の作用物質が、抗炎症剤、スタチン、生物学的作用物質(生物製剤)、免疫抑制剤、サリチル酸塩および/または殺菌剤である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
抗炎症剤が、非ステロイド性の抗炎症薬(NSAID)、コルチコステロイド、疾患修飾性の抗リウマチ薬(DMARD)または免疫抑制薬からなる群から選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
医薬として使用するための、請求項1から14および25から35に記載の作用物質または組成物。
【請求項37】
慢性炎症状態の治療において使用するための、請求項1から14および25から35に記載の作用物質または組成物。
【請求項38】
慢性炎症状態の治療のための医薬の製造における、請求項1から14および25から35に記載の作用物質または組成物の使用。
【請求項39】
慢性炎症反応が、不適切な炎症により特徴付けられる状態に関連している、請求項36から38に記載の作用物質、組成物または使用。
【請求項40】
慢性炎症反応が、関節リウマチ(RA)、自己免疫状態、炎症性腸疾患、難治性創傷、多発性硬化症、癌、アテローム性動脈硬化症、シェーグレン疾患、糖尿病、エリトマトーデス(全身性エリトマトーデスを含む)、喘息、線維性疾患(肝硬変を含む)、肺線維症、UV損傷および乾癬に関連している、請求項36から39に記載の作用物質、組成物または使用。
【請求項41】
対象に有効量の請求項1から14および25から35に記載の作用物質または組成物を投与するステップを含む、慢性炎症状態を治療する方法。
【請求項42】
請求項15から24に記載の方法を実施するためのキットオブパーツであって、
(i)1つまたは複数の細胞、
(ii)1つまたは複数の細胞の対照試料、
(iii)テネイシンCの試料、
(iv)それらを使用するための説明書
を含むキットオブパーツ。
【請求項43】
任意選択により、
(v)候補作用物質
を含む、請求項42に記載のキットオブパーツ。
【請求項44】
任意選択により、
(vi)テネイシンCの活性または慢性炎症のいずれかに対する候補作用物質の作用を決定する手段
を含む、請求項43に記載のキットオブパーツ。
【請求項45】
(i)請求項1から14および24から33に記載の作用物質または組成物、
(ii)投与手段、
(iii)それらを使用するための説明書
を含むキットオブパーツ。
【請求項46】
任意選択により、
(iv)少なくとも1つの他の作用物質
を含む、請求項45に記載のキットオブパーツ。
【請求項47】
実質的に、実施例および図面を参照して本明細書に記載されている通りの作用物質。
【請求項48】
実質的に、実施例および図面を参照して本明細書に記載されている通りの方法。
【請求項49】
実質的に、実施例および図面を参照して本明細書に記載されている通りの組成物。
【請求項50】
実質的に、実施例および図面を参照して本明細書に記載されている通りのキットオブパーツ。

【図2】
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【図3】
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【図9】
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【図11】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図14−3】
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【図1A】
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【図1B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2012−520278(P2012−520278A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553518(P2011−553518)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000460
【国際公開番号】WO2010/103289
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(500165809)インペリアル・イノベイションズ・リミテッド (32)
【Fターム(参考)】