生体模倣膜およびその使用
生体チャネル含有バルク液膜(BLM)、生体チャネル含有乳化型液膜(ELM)、および生体チャネル含有支持(固定化)液膜(SLM)、またはそれらの組み合わせの形をとる液膜系であって、この液膜系が、生体チャネルが組み込まれた二分子膜を形成する、脂質などの両親媒性化合物から形成されるベシクルに基づいており、前記ベシクルがさらに安定化油相を含有している、前記液膜系を開示する。この液膜系の使用には、たとえば塩水の脱塩を目的とする、正浸透による液体水性媒体からの水抽出が含まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水抽出に適した液膜系の使用に関するが、より詳細には、タンパク質チャネルなどの生体チャネルを有する液膜系に関するものであって、これは水性媒体から水および/または小さい溶質を抽出するために両親媒性ベシクル二分子膜に組み込まれている。さらに具体的には、液膜系は、たとえば正浸透を応用して、特に水性液体媒体から純水を抽出するためのアクアポリン液膜であって、これは、両親媒性分子のベシクル分散系の中でアクアポリンから構成される。それに加えて、本発明は、膜タンパク質環境の親水性を測定するための蛍光アッセイに関するが、このアッセイは環境感受性蛍光プローブを用いて蛍光標識された膜タンパク質に基づく。
【背景技術】
【0002】
液膜分離プロセスは、US 4360448(A)に記載のように、イオンなどの溶解物質を水溶液から除去するために使用されてきた。これは、水溶液から溶存種を除去するためのプロセスに関係しており、このプロセスは前記水溶液とエマルションとを接触させることを含んでなるが、前記エマルションは、前記水溶液とは混和しないのに前記溶存種に対しては透過性であるような特性を持つ外相、ならびに、前記溶存種を非透過型に変換することができる、イオン交換化合物などの反応物質を含有する内相からなる。溶存種は、外相を透過して内相に入り、そこでその溶存種は非透過型に変換されるので、前記エマルションの内相に保持される。前記溶存種のなくなった水溶液は、前記エマルションから分離し、エマルションは再利用のために循環させる。しかしながら、生物学的液体のように、水性の溶液もしくは媒体中に、多数の、または特定されない、イオンもしくは溶質が存在する場合、除去されるべき種のそれぞれについて個別の反応物質を考案する必要があることから、上記方法もしくは類似の方法により溶質を除去することは、ますます複雑となる。液膜抽出プロセスの使用に関するもう1つの例が、(WO 87/002380)Production of Low-Ethanol Beverages by Membrane Extraction(「膜抽出による低アルコール飲料の製造」)に記載されており、これは、水および他の多数の有機成分を保持しつつ、ワインおよび他の飲料から選択的にエタノールを除去するよう考案された膜抽出系に関する。このように、液膜分離法は、これまで、たとえば水性液体中の、溶質を選択的に除去するために開発されてきた。水性液体源から水を選択的に除去もしくは抽出する必要を考慮して、本発明者らは、アクアポリンタンパク質で知られる選択的水チャネルを用いた、水性液体からの純水の除去もしくは抽出に適した液膜プロセスを考案した。
【0003】
蛍光に基づく活性測定法は、可溶性タンパク質については十分確立されているが、膜タンパク質についてはあまり確立されていない。これについて考えられる理由は、膜タンパク質が自然の環境 - 生体膜 - から取り出されると壊れやすいことである。さらに、市販のタンパク種の入手可能性は、ごくわずかの膜タンパク質に限られていた。このことは、膜タンパク質を大量に(グラム単位で)発現および精製する難しさと関係している。膜タンパク質は典型的には、そのタンパク質の自然の環境を十分に模倣する生体模倣膜に再構成すると、その機能を維持する。膜タンパク質の要件、すなわち特有の親水性および疎水性領域または層、に合致する、生体模倣膜フォーミュレーションの作製における実用性を目的として、脂質膜成分をスクリーニングするアッセイについては、現在、満たされていない必要性がある。同時に、こうしたアッセイは、膜タンパク質のフォールディング状態に関する有用な情報を与えることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US 4360448
【特許文献2】WO 87/002380
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
概して、本発明は、生体チャネル含有バルク液膜(BLM)、生体チャネル含有乳化型液膜(ELM)、および生体チャネル含有支持(固定化)液膜(SLM)、またはそれらの組み合わせの形をとる液膜系に関するが、この液膜系は、生体チャネルが組み込まれた二分子膜を形成する、脂質などの両親媒性化合物から形成されるベシクルに基づいており、前記ベシクルは安定化油相をさらに含有する。好ましい実施形態において、液膜系は、アクアポリン含有液膜系、たとえばアクアポリン含有バルク液膜(BLM)、アクアポリン含有乳化型液膜(ELM)、およびアクアポリン含有支持(固定化)液膜(SLM)、および/またはそれらの組み合わせであって、前記液膜系は生体チャネル、たとえばアクアポリン水チャネルを、両親媒性分子の分散系の中に含んでいる。この液膜系を、正浸透による液体水性媒体からの水抽出を含めて、たとえば塩水の脱塩を目的とする、さまざまな応用に使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、第1の態様において、本発明は、生体チャネル含有バルク液膜(BLM)、生体チャネル含有乳化型液膜(ELM)、および生体チャネル含有支持(固定化)液膜(SLM)、またはそれらの組み合わせの形をとる液膜系を提供するが、この液膜系は、生体チャネルが組み込まれた二分子膜を形成する1つもしくは複数の両親媒性化合物から形成されるベシクルを含んでなり、そのベシクルはさらに安定化油相を含有する。
【0007】
もう一つの態様において、本発明は、水性液体から水を抽出する方法を与えるが、その方法は次のステップを含んでなる:
a) 前述の主張のいずれか1つの液膜系の一定量を、ベシクルより小さい浸透圧を有する第1の水性液体に入れて混合し、懸濁液とするステップ、
b) 前記懸濁液中のベシクルに、前記の第1の液体から純水を吸収させて、浸透圧勾配が存在する限り膨張させるステップ、
c) 膨らんだベシクルを第1の液体から分離するステップ、ならびに
d) ステップc)から得られた当該ベシクルを、その膨らんだベシクルの圧力を上回る浸透圧を有する第2の水性液体中に再懸濁して、ベシクル中に抽出された水が、浸透圧勾配が存在する限り前記第2の液体に流入してそれを希釈することを可能にし、ベシクルを非膨張状態とするステップ。
【0008】
他の態様において、本発明は、水性液体媒体から純水を抽出するための装置を提供するが、これは1つもしくは複数の、本明細書に記載の液膜を含んでなる。
【0009】
もう一つの態様において、本発明は、水性分散系の中で、本質的に両親媒性脂質、膜貫通型タンパク質チャネルおよび油からなる、無溶媒巨大タンパク質ベシクルを提供するが、この場合、脂質対タンパク質のモル比は、約1:50から約1:400までの範囲にある。
【0010】
他の態様において、本発明は、本明細書に記載の巨大タンパク質ベシクルを含んでなる組成物を提供する。
【0011】
もう1つの実施形態において、本発明は、水性分散系の中で、本質的に、両親媒性脂質、膜貫通型タンパク質チャネル、および油からなる巨大タンパク質ベシクルを調製する方法を提供するが、この脂質とタンパク質のモル比は、約1:50から約1:400までの範囲であって、その方法は次のステップを含んでなり、結果としてプロテオリポソームからのGPVの生成をもたらす:
a) 界面活性剤含有バッファー中で再水和され、孔径約100 nmから約500 nmまでのフィルターを通して押し出された乾燥脂質溶液から、リポソームを調製するステップ、
b) a) から得られたリポソームを、膜貫通型タンパク質溶液と混合するステップであって、このタンパク質が必要に応じて蛍光標識と結合していてもよい、前記ステップ、
c) 約10 kDaの分子量カットオフで、b) から得られた混合物を一晩透析するステップ、
d) c) で形成されたプロテオリポソームベシクルを、たとえば遠心によって分離するステップ、
e) ベシクル膜中の膜貫通型タンパク質の正しい挿入を実証するために、必要に応じて、形成されたGPVの、使用された蛍光標識と適合可能な吸収スペクトルを得るステップ、ならびに、
f) ステップd) で得られたプロテオリポソームを、ステップa) と同じ脂質を含有する油相溶液中の脂質と、たとえば約1:3 v/vから約1:12 v/vまでのモル比で、混合するステップ。
【0012】
いかなる特別な場合にも、本明細書に記載の方法の全般的な枠組みの範囲内で、当業者は、調製される巨大タンパク質ベシクルサンプルのサイズ、および使用される試薬の性質に応じて、適切な具体的条件を選択することができる。
【0013】
例として、ステップc)で使用される条件は、約1から約10 mL/分までの透析液流量、より好ましくは約1から約5 mL/分、そしてもっとも好ましくは約3 mL/分を用いる。
【0014】
例として、ステップd)の分離は、たとえば、約10,000-20,000 rpm(たとえば14,200 rpm)で約1-5分間(たとえば約90秒)の遠心分離を用いる。
【0015】
例として、ステップf)の混合は、約4℃にて一晩転倒(end-over-end)回転を用いる。
【0016】
もう1つの態様において、本発明は、水性分散系中で、本質的に、両親媒性脂質、膜貫通型タンパク質チャネル、および油からなる、巨大タンパク質ベシクルを調製する方法を提供するが、その脂質対タンパク質のモル比は、約1:50から約1:400までの範囲にあり、その方法は、前記両親媒性脂質、膜貫通型タンパク質チャネルおよび油からなる水性混合物から、転倒ミキシング後にベシクルを自己組織化させることを含むものである。
【0017】
他の態様において、本発明は、本明細書に記載の方法により調製された巨大タンパク質ベシクルを、正浸透による水の抽出のために使用することを提供する。
【0018】
他の態様において、本発明は、本明細書に記載の方法にしたがって調製された巨大タンパク質ベシクルを、血液透析で失われた患者の血漿から純水を再抽出するために使用することを提供する。
【0019】
他の態様において、本発明は、開いた、または閉じたサンドイッチ構造を有する支持液膜を提供するが、ここで、実質的に平坦な多孔質フィルター材が、プロテオリポソーム層の片側もしくは両側で支えとなっており、それによって層を固定化している。
【0020】
他の態様において、本発明は、アクアポリン含有プロテオリポソームもしくは巨大タンパク質ベシクルの層を、限外濾過膜、ナノ濾過膜および精密濾過膜から選択されるフィルター膜の間に挟むことにより作製される、複合フィルター膜もしくはディスクを提供する。
【0021】
他の態様において、本発明は、膜と結合した、または膜に組み込まれた、生体チャネルもしくはタンパク質チャネル、たとえばアクアポリン水チャネルを油相中に有する脂質ベシクルを含んでなる、マイクロエマルションの形をとる液膜系を提供するが、これは液体水性媒体からの水抽出に適している。
【0022】
他の態様において、本発明は、前記マイクロエマルションを調製する方法を提供する。前記液膜系はさらに、コンタクターモジュール、または基本的に平面の多孔質サンドイッチ構造の中に収められ、または固定化されていてもよい。
【0023】
他の態様において、本発明は、膜タンパク質環境の親水性を測定するためのアッセイを提供するものであって、当該アッセイは、環境感受性プローブを用いて蛍光標識された膜タンパク質に基づいており、その蛍光を、プローブの付いたタンパク質が脂質二分子膜もしくは対応する両親媒性膜などの生体模倣膜において再構成されたときに、測定することができる。
【0024】
もう1つの態様において、本発明は、膜を形成する脂質および膜タンパク質の特定の組み合わせが、膜タンパク質が正しく折りたたまれた生体模倣膜を形成しうるかどうかを判断するための方法を提供するが、その方法は下記を含んでなる:
(a) 蛍光標識でラベルされた膜タンパク質を、膜形成脂質混合物中に導入するが、この蛍光標識の蛍光特性は、タンパク質と脂質の組み合わせにより形成された生体模倣膜における膜タンパク質の環境に左右される;
(b) 蛍光標識でラベルされた膜タンパク質から蛍光シグナルを検出する;ならびに
(c) その蛍光シグナルから、脂質および膜タンパク質の組み合わせが、タンパク質が正しく折りたたまれた生体模倣膜を形成しうるかどうかを判断する。
【0025】
他の態様において、本発明は、膜タンパク質が生体模倣膜において正しく折りたためるかどうかを判断するための方法を提供するが、その方法は下記を含んでなる:
(a) 膜タンパク質が生体模倣膜内で正しく折りたためるかどうかを判断するための系に、蛍光標識でラベルされた膜タンパク質を導入するが、その蛍光標識の蛍光特性は、生体模倣膜における膜タンパク質の環境に左右される;
(b) 蛍光標識でラベルされた膜タンパク質から蛍光シグナルを検出する;ならびに
(c) 膜タンパク質が生体模倣膜内で正しく折りたたまれているかどうかを、その蛍光シグナルから判断する。
【0026】
他の態様において、本発明は、生体模倣膜を形成する膜タンパク質の活性および/または機能を測定するための生体模倣膜を提供するが、この膜タンパク質は、蛍光標識の蛍光特性が生体模倣膜における膜タンパク質の環境に左右されるような、蛍光特性を有する蛍光標識を含有しており、膜タンパク質の活性もしくは機能は、その蛍光標識から蛍光シグナルを検出することによって測定可能である。
【0027】
他の態様において、本発明は、本明細書に記載の生体模倣膜を含んでなるセンサーを提供する。
【0028】
本発明の実施形態は、限定ではなく例として、添付の図面および実施例に準拠して説明されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、3タイプの液膜:バルク液膜(BLM)、乳化型液膜(ELM)、支持液膜(SLM)の一般的な原理を示す。
【図2】図2は、液膜モジュール内の中空糸およびらせん状に巻かれた分離モジュールを示す。
【図3】図3は、2モジュール中空糸支持液膜の原理の概略図を示す。
【図4】図4は、本発明のベシクルを用いた、水溶液の濃縮のための装置および方法の原理の概略図を示す。
【図5】図5は、正浸透によって、純粋な飲用水を含有する栄養飲料をもたらす方法の、原理の概略図を示す。
【図6】図6は、均一な電解液の限外濾過後に、本発明のベシクルを正浸透に使用することに関する原理の概略図を示す。これは、任意の水溶液もしくは液体からの水抽出に関する完全な適用例である。
【図7】図7は、浸透圧発電のための浸透膜法において本発明のベシクルを使用することに関する原理の概略図である。
【図8】図8は、液膜フォーミュレーション(調合方式)とプロテオリポソームマイクロエマルション(液膜)濃度との関係を示す。
【図9】図9は、計算のための基本パラメーターを説明する図である。
【図10】図10は、正浸透バッチセルユニットの概要図である。
【図11】図11は、正浸透のためのフィルターカップの図である。
【図12】図12は、ドロー(draw)およびフィード(feed)溶液の間の、経時的なモル浸透圧濃度の差異を示すグラフである。
【図13】図13は、SoPIP2;1タンパク質が膜内に組み込まれたDOPCベシクルの液膜標品の顕微鏡画像と、比較のための200μmスケールバーである。
【図14】図14は、巨大タンパク質ベシクル内に再構成されたフルオロフォアbadan(商標名)標識アクアポリンSoPIP2;1の蛍光画像である。
【図15】図15は、SoPIP2;1 GPVフォーミュレーションの正浸透流量QAを示すグラフである。
【図16】図15に示すのと同じ構成を持つ図16は、アクアポリンなし/空のフォーミュレーションを示す。
【図17】図17は、4つのbadan(商標名)標識を付されたAqpZテトラマーの二次構造を示す。
【図18】図18は、badan-AoPIP2;1およびbadan-AqpZの蛍光分光スペクトルを示す。
【図19】図19は、標準化された蛍光スペクトルの強度を波長の関数として示す。
【図20】図20は、2つの異なる脂質ベシクル内で再構成された2つの異なるアクアポリンに関するGP比を示す。
【図21】図21は、本発明の液膜が模倣する正常な腎臓の塩勾配および対向流を示す概略図を示す。
【0030】
(発明の詳細な説明)
本明細書に記載のアクアポリン含有液膜系は、アクアポリン含有乳化型液膜(ELM)の形をとることができるが、前記液膜は、アクアポリン水チャネルを両親媒性分子の分散系中に含み、好ましくはプロテオリポソームの形をとるベシクルを含んでなるが、これは両親媒性ベシクル二分子膜、たとえば脂質二分子膜などに組み込まれた機能的なアクアポリンを有する。
【0031】
本発明のアクアポリン含有乳化型液膜、すなわちAqp-ELMは、Aqp-ELMベシクルより小さい浸透圧を有する第1の水性液体中に混合もしくは懸濁することによって、水抽出のために使用することができるが、このAqp-ELMベシクルは、前記第1の液体から、アクアポリン水チャネルを通って、膨潤するベシクル内へ、選択的に純水分子を輸送することができる。第一の液体から純水を抽出した後、たとえば、遠心分離もしくは濾過によってベシクルを分離し、抽出された純水を保持するベシクルの浸透圧を上回る浸透圧を有する、第2の水性液体中に再懸濁することができる。抽出された水はただちに、浸透圧勾配が存在する限り、縮小するベシクルから第2の液体に流入する。第2の水性液体は、好ましくは、結果として得られた(精製された)水から分離可能で、低毒性もしくは無毒性であって、液膜に対して化学的に不活性でなければならない。第2の水性液体(ドロー(draw)溶液)はたとえば、海水の脱塩に使用されてきたグルコースとフルクトースの混合物であるが、最近、熱的に除去できるアンモニウム塩の高濃縮ドロー溶液中で、特定の比率でアンモニアおよび二酸化炭素ガスを組み合わせることに基づく、ドロー溶液が得られた;J.O. Kessler, and C.D. Moody, Drinking water from sea water by forward osmosis, Desalination 18 (1976) 297-306; J.R. McCutcheon, R.L. McGinnis, and M. Elimelech, Desalination by a novel ammonia-carbon dioxide forward osmosis process: influence of draw and feed solution concentrations on process performance. J. Membr. Sci. 278 278 (2006) 114-123)、およびKirts, Richard EugeneによるMethod and apparatus for producing potable water from seawater using forward osmosis参照。あるいはまた、水は、薄められたドロー溶液から、60℃近くに加熱することによって容易に分離され、淡水、アンモニアおよび二酸化炭素を生成することができる。アンモニアおよび二酸化炭素はいずれも、その後、ドロー液の溶質として再利用することができる;Low (2009)参照。
【0032】
米国特許出願公開(2009)、US 2009308727 A1 20091217は、アンモニア-重炭酸正浸透脱塩プロセスを用いた、海水を脱塩するための方法および装置を記載する。海水は膜構成組立品の一方側にポンプで通し、ドロー溶液は膜構成組立品のもう一方側にポンプで通す。ドロー溶液は膜を通して海水から水分子をドロー溶液中に引き抜き、ドロー溶液セパレーターは、加熱されたドロー溶液を受け入れるが、その溶液は続いてアンモニア、CO2および水に分解される。飲用水がアンモニアおよびCO2ガスから分離される。その後、アンモニアガスおよびCO2ガスは、飲用水の流れの一部とともに再度混合されて、重炭酸アンモニウムドロー溶液が再生される。本発明のある実施形態は、US 2009308727 A1に記載の方法および装置における本発明の液膜系の使用に関する。本発明の別の実施形態において、アクアポリン含有液膜系は、血液透析の結果生じる透析液から水を再抽出するのに使用される。本発明の液膜系は、血液透析法の改善において少なくとも2つの有用な応用がある:
i) 本明細書に記載の超純水の製造は、患者の血漿の水分量を回復するために現在必要となっている水精製のための非常に複雑な系を、置き換えることができる。
【0033】
ii) 透析液を作製するときに使用される正浸透プロセスの後、患者の血漿に由来する大量の水が同時に除去されるが、本明細書に記載の任意の方法でアクアポリン液膜を用いて、これを抽出することができる。
【0034】
本明細書に記載のアクアポリン含有ベシクル(Aqp-ELM)は、周期的に膨潤および収縮を繰り返すことができる。典型的には、ベシクルは、ベシクル内より低い浸透圧を有する第1の水性液体であって、そこから水を抽出することが望ましい前記液体と接触させる前は、あらかじめ収縮した状態である。前記第1の水性液体から膨潤したベシクルを分離した後、吸収された水を、膨潤したベシクルの内部より高い浸透圧を有するドロー溶液中に、抽出することができる。グラミシジンAチャネルを含有するDOPCベシクルの容積は、水の輸送により約16%まで膨潤しうることが判明している(M. Goulian et al., Biophysical Journal, Vol. 74, January 1998, pp. 328-337)。ゲルが充填されたDOPCベシクルについては、その容積は、初めの容積の約80%まで収縮する可能性がある(A. Viallat et al. Biophysical Journal, Vol. 86, April 2004, pp. 2179-2187)。本発明のある態様において、アクアポリン含有ベシクルは、無溶媒調製巨大タンパク質ベシクル(GPV)の形を取る。GPVおよびその調製法は、本明細書ではじめて公開される。本発明のGPVは、溶媒の代わりに油安定化によって調製されるという特徴を有する。それに加えて、本発明のGPVは、エレクトロフォーメーション法を用いることなく調製することができる。その上、タンパク質含量は、実際のベシクル形成に先だって、mol/molの比率で、すなわち、そのシグナル強度がタンパク質含量と直接相関する蛍光分光法で、正確に測定することができる。
【0035】
直径約20 nmの小さな一枚膜ホスファチジルコリン(SUV)ベシクルは、浸透圧感受性である。こうしたベシクルは、加えられる塩濃度勾配の向きに応じて膨潤したり収縮したりすることによって、浸透圧に対応する。これは、結晶から液体への結晶転移温度より上および下での卵ホスファチジルコリンおよびジミリストイルホスファチジルコリンの小さな一枚膜ベシクルについてもいえる。浸透圧勾配の存在下で、H2Oの流入および流出は、アクアポリンの存在によって、イオンの動きと切り離される。浸透圧によって引き起こされるSUVの収縮および膨潤の間、このリン脂質二分子膜の完全性は、ベシクルが壊れない程度に維持されるので、膜がアクアポリンタンパク質を含有しない限り、外部媒体とベシクル腔との間の平衡は生じない。
【0036】
第1の水性液体すなわち供給源相の典型的な浸透圧は、約100 mOsmから約500 mOsmもしくは1000 mOsmまでの範囲にあり、第2の水性液体すなわち受容相の典型的な浸透圧は、適当な浸透圧差を得るために約100から1000 mOsm高い。海水の浸透圧は2000-2400 mOsmであるが、主として塩化ナトリウムによってもたらされる。これは血漿の正常な浸透圧である275-299 mOsm/kgの8倍である。我々の腎臓が生成することのできるもっとも濃縮された尿は、海水レベルよりはるかに低い1400 mOsmに位置づけられる。
【0037】
さらに、本発明は液膜系、たとえば乳化型液膜(ELM)の形をとる液膜系(ここで前記液膜は、膜に組み込まれた両親媒性分子を有する脂質ベシクルを生体チャネルとともに分散系中に含んでなる)、好ましくはベシクル分散系の形をとる液膜系、たとえばプロテオリポソームの形をとる液膜系に関するが、こうした液膜系は、両親媒性ベシクル二分子膜に組み込まれたアクアポリンなどの生体チャネルを有するものであって、前記両親媒性ベシクル二分子膜は、たとえば、脂質二分子膜、両親媒性ブロックコポリマー(とりわけ、式AB-BA、ABA、またはABCの前記コポリマー)、またはハイブリッド両親媒性膜(たとえば、PEG結合両親媒性物質(ポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミンコンジュゲート(PEG-PE)など)に基づくリポソーム中の前記ハイブリッド両親媒性膜)などである。アクアポリンの他に、前記生体チャネルとしては、窒化ホウ素ナノチューブ、カーボンナノチューブ、ならびに両親媒性ポア形成分子および膜透過チャネル分子があり、これらは、膜貫通タンパク質、とりわけβバレル孔、たとえばαヘモリシンおよびOmpG、FomA、VDAC;合成ペプチドを含む膜貫通ペプチド孔(アラメチシン、バリノマイシン、グラミシジンA)、イオンチャネル(総説:Boon, M. and Smith, BD; 2002 (“Synthetic membrane transporters”. Current Opinion in Chemical Biology 2002, 6:749-756))、ならびにイオン選択性イオノフォア、たとえばナトリウム選択性ETH 157、カリウム選択性SQI-Prおよびバリノマイシン、塩素イオノフォア トリオクチルクロロスタンナンなどからなる一群から選択される。
【0038】
本発明のプロテオリポソームは、濃縮された油相の中で脂質ベシクル(またはGPV粒子)を作製することによって安定化される。これを行う1つの方法は、ベシクル外の水を他の溶媒によって置き換えることである。GPV二分子膜を乱さない溶媒環境、またはGPV二分子膜を乱す傾向を低下させる溶媒環境を提供するために、非極性溶媒を含む油相を、高度の親水性を示す化合物と交換することができるが、高分子量の非極性溶媒を選択することもできる。低毒性の化合物も好ましい。天然油化合物は、物理的安定性を示し、毒性のない、比較的安定な脂質エマルションを形成することが知られている。こうした油には、スクアレン、スクアラン、αトコフェロール、ホパノイド、イソプレン(たとえば、エステル化されたドリコール)、ユビキノン(Q10)、ホホバ油、軽油、亜麻仁油、大豆油、リン脂質で安定化されたスクアレンもしくは大豆油(すなわち大豆油、リン脂質およびグリセリンのエマルション、イントラリピッド(商標名))などがある。さらに、高級アルカン、たとえばデカン、ウンデカン、ドデカンなどを油相に使用することができる。これらの油化合物が無視できる程度にしか脂質二分子膜に浸透しないことはよく知られている。スクアレンは、黒膜を「無溶媒」にすることができる炭化水素溶媒の一例でもある[White S., Biophys. J., vol. 23, 1978]。本発明において、無溶媒あるいは溶媒を含まないベシクル組成物を得るために、脂質ベシクルエマルションに通常使用される有機溶媒の含量を減少させることが好ましい。
【0039】
他の態様において、本発明はまた、たとえば、フルオロフォア 6-ブロモアセチル-2-ジメチルアミノナフタレン(badan(商標名))などのナフタレン誘導体蛍光分子を、タンパク質のCys残基に共有結合することができるプローブとして使用する、蛍光アッセイに関する。プローブは、それが曝される分子環境の親水性に対して感受性であり、450 nmから550 nmまでの最大蛍光発光範囲を与える。badanプローブが疎水性に暴露された場合、そのプローブはその最大蛍光発光収率を有し、これは450 nmにある。これに対して、badanプローブが親水性(たとえば、水)に暴露された場合、そのプローブは低い蛍光発光収率を有し、発光極大は550 nm付近にある。上記の条件に対して中間の親水性/疎水性条件は、badan蛍光特性の上記特徴の中間に、発光極大および蛍光収率を生じさせる。下記の表1は有用な蛍光プローブの一覧である。
【表1】
【0040】
このアッセイは、両親媒性生体模倣膜中の膜タンパク質の分配、ひいては膜タンパク質のフォールディング状態を測定および/または画像化するために有用な情報を提供する。このアッセイにより得られる情報のタイプは、当該膜タンパク質に特有の膜結合のタイプ、およびそのタンパク質上の蛍光プローブの位置によって決まる。本発明の典型的な実施形態は、アクアポリン分子上でのbadan(商標名)を用いた蛍光標識であって、生体模倣膜内へのタンパク質再構成の成功の程度は、分光法により測定されるか、または顕微鏡法により画像化される。
【0041】
このアッセイは、アクアポリンなどの個別の膜タンパク質の特有の要件に適合させるために、タンパク質の再構成プロセスを最適化する、および/または生体模倣膜フォーミュレーション(リン脂質および他のバルク膜成分、たとえば、コレステロールなど)を選択するのに特に有用である。
【0042】
さらに、本方法は、蛍光標識に基づく膜タンパク質センサーの作製、および膜タンパク質の親水性/疎水性暴露を測定するアッセイの創出に有用である。本発明はまた、膜タンパク質活性を測定するための、蛍光に基づく膜タンパク質センサーを作製する新規方法も提供する。
【0043】
(定義)
液液抽出という用語は、液膜を用いた分離プロセスに使用される。本発明において、これは液-水抽出であり、水は液膜内に抽出される。
【0044】
液膜を使用する場合、一般用語「水抽出」は、本明細書では一般用語「水分離」とともに使用される。
【0045】
「ベシクル」およびその同義語である「リポソーム」という用語は、本明細書では、リン脂質のような両親媒性化合物からなるほぼ球形の液体構造物を特定するために使用される。タンパク質がベシクルに組み込まれた場合、この用語は、両親媒性タンパク質、たとえばアクアポリンなどの膜貫通タンパク質を組み込んだ「プロテオリポソーム」という用語と同じ意味で使用される。リポソームは、さまざまな大きさで、一枚膜(ユニラメラ)または多層膜(マルチラメラ)構造として形成することができるが、この1枚の薄膜(ラメラ)は1つの両親媒性二分子膜である。したがって、すべて本発明の範囲に含まれる、いくつかのタイプのベシクルもしくはリポソームがある:MLV(多層膜ベシクル)、SUV (小さな一枚膜ベシクル)およびLUV(大きな一枚膜ベシクル)もしくはGUV(巨大一枚膜ベシクル)。リン脂質などの両親媒性分子はそれ自体、会合し、二分子膜もしくは単分子層として、通常の細胞より小さい、微小な球体となることができる。二分子膜構造はベシクルもしくはリポソームである。単分子層構造はミセルと呼ばれる。本発明の文脈では、「プロテオリポソーム」という用語は、タンパク質の封入のために使用される、典型的にはドラッグデリバリー目的の、主として球形の脂質構造からなるリポソームのことを言っているわけではない。本発明のベシクルは、膜貫通タンパク質の挿入および組み込みに適した、両親媒性膜を有するという特徴がある。好ましくは、膜貫通タンパク質は、ベシクル膜に組み込まれたとき、それらの天然の立体構造を保持するので、タンパク質はその機能性を維持する。特によく見られる形の本発明のベシクルは、「巨大タンパク質ベシクル」もしくは大きさが比較的均一なGPVであって、これらの直径は、約20〜25μmから約400〜500μmまで、最大1000μmまでであるが、典型的な平均直径は、約100から約250μmまでの範囲にある。
【0046】
本発明のGPVを形成するためのベシクルは、好ましくは、適当な脂質混合物からなる均一サイズの一枚膜ベシクルであって、トラックエッチ ポリカーボネートフィルターを通した押し出しによって適切に作製される(”Vesicles of variable sizes produced by a rapid extrusion procedure”, L.D. Mayer, M.J. Hope and P.R. Cullis, Biochimica et Biophysica Acta 858 (1986) 161-168, "Effect of Extrusion Pressure and Lipid Properties on the Size and Polydispersity of Lipid Vesicles", D.G. Hunter and B.J. Frisken, Biophysical Journal 74(6) 1986, 2996-3002, "Osmotic properties of large unilamellar vesicles prepared by extrusion." B L Mui, P R Cullis, E A Evans, and T D Madden, Biophysical Journal 64(2) 1993, 443-453)。押し出しフィルターの好ましい孔径は、約0.15±0.06μmのベシクルを生成する0.200ミクロンである。このことは、これより小さい、または大きい孔径のフィルターを使用することを除外しない。ベシクルもしくはリポソームを調製するために他の方法があり、それはたとえば、エーテル蒸発法(D. Deamer and A. D. Bangham, Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Biomembranes Volume 443, Issue 3, 7 September 1976, Pages 629-634)によるものであるが、いくつかの方法が直径約250オングストロームの小さい一枚膜ベシクルを調製するために記載されており(Szoka, F. & Papahadjopoulos, D. (1980) Annu. Rev. Biophys.Bioeng. 9, 467-508)、このベシクルは、超音波照射;界面活性剤、たとえば胆汁酸塩もしくはTriton X-100の、界面活性剤/リン脂質ミセルの水性分散系からの、ゲル濾過もしくは透析による制御された除去;エタノール中もしくは他の溶媒中のリン脂質溶液の水への注入、および蒸発による有機溶媒の除去;ならびに、超音波処理されていない水性リン脂質分散系の、高圧でのフレンチプレスによる押し出しによって作製される。しかしながら、エレクトロフォーメーション法を用いることなく巨大タンパク質ベシクルを調製できることは、本明細書ではじめて示されている。
【0047】
本明細書で使用される「脂質」という用語は、好ましくは両親媒性脂質、たとえば、リン脂質、ホスホグリセリド、スフィンゴ脂質およびカルジオリピン、ならびにそれらの混合物、たとえば1,2-ジパルミトイル-sn-ホスファチジルコリン(DPPC)などのリン脂質、またはリン脂質の混合物を含む。有用な脂質がWO 2006/122566の表1に記載されており、これは参考として本明細書に含めるものとする。
【0048】
本明細書で使用される「生体チャネル」という用語は、任意の膜貫通チャネルもしくはポアを意味するものであって、それはたとえば、水および/または小さな溶質を液体水性媒体から抽出するために両親媒性ベシクル二分子膜に組み込むことができる、タンパク質チャネルである。両親媒性ベシクル二分子膜に組み込まれた、ポアを形成する膜含有物、たとえば、アクアポリンなどの機能タンパク質チャネルも、この用語に含まれるが、前記の二分子膜は、たとえば、脂質二分子膜;両親媒性ブロックコポリマー(なかでも、式AB-BA、ABA、またはABCの)から自己会合により形成される二分子膜;またはPEG結合両親媒性物質(たとえばポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミンコンジュゲート(PEG-PE))に基づくリポソームに含まれるようなハイブリッド両親媒性膜などである。この用語はまた、たとえば水分子を一列に並べて、水の輸送を助けることが明らかとなっているナノチューブ、すなわち、特定の窒化ホウ素ナノチューブおよびカーボンナノチューブを含めることができる。さらに、膜貫通タンパク質、なかでもαヘモリシンおよびOmpG、FomA、VDACなどのβバレル孔、膜貫通ペプチド孔(アラメチシン、バリノマイシン、グラミシジンA)、カリウムもしくはナトリウムチャネルといったイオンチャネルなどからなる一群から選択される、膜貫通チャネル分子などの、他の両親媒性ポア形成分子もこの用語に含まれる。
【0049】
本明細書で使用される「アクアポリン」という用語は、機能的水チャネルを意味するものであって、たとえば、WO/2006/122566 “Membrane for filtering of water” and by Tamir GonenおよびThomas Walz, Quarterly Reviews of Biophysics (2006), 39:4:361-396, Cambridge University Pressに記載の膜貫通タンパク質である。本明細書で使用される好ましいアクアポリンタンパク質は、Aqp 4、Aqp 1、Aqp Z、SoPIP2;1、および単量体、二量体、四量体、さらに高次のオリゴマー、ならびにそれらの機能的バリアント、たとえば一次構造の変異型、コンジュゲート型およびトランケート型からなる一群から選択される。
【0050】
「水性液体」および「水性液体媒体」という用語は本明細書で使用され、水溶液;天然水源;生物起源の液体、たとえば果汁および野菜汁、血液、乳および尿;廃水源;水性懸濁液、分散系、エマルションなどを含む。
【0051】
本明細書で使用される「浸透圧」という用語は、水性液体から半透膜を通って、高濃度の溶質を含有する区画に入る、水の浸透流によって生じる圧力を意味するものである。潜在的浸透圧は、選択的透過膜により蒸留水から隔てられたときに、溶液中で発現しうる最大浸透圧である。潜在的浸透圧は、ファントホッフ(van’t Hoff)の式によって説明されるように、溶液の単位体積中の溶質「粒子」数によって決定される。
【0052】
「正浸透」(FO)という用語は、半透膜を横切る浸透圧の差が、膜を通って水を輸送するための駆動力となるプロセスを意味する。FOプロセスは、結果として、フィード流の濃縮、ならびに高濃縮流(ドロー溶液と称される)の希釈をもたらす(Cath et al., Journal of Membrane Science, 281 (2006) 70-87)。
【0053】
「第1の水性液体」という用語は、「フィード」液、言い換えると供給相に相当する。
【0054】
「第2の水性液体」という用語は、「ドロー」液、言い換えると受容相に相当し、ストリッピング溶液としても知られている。
【0055】
本明細書に記載の液膜とともに使用することができる「標準フォームファクター」という用語は、液膜抽出設備のための、最新の産業用デバイスおよび装置の規格を意味するものである。
【0056】
本明細書で使用される「液膜コンタクター」という用語は、二つの液相が、アクアポリンバルク液膜を介して、相間の物質移動のために相互に接触できるようにするデバイスもしくは組成物を意味するものである。本明細書で使用されるコンタクターには、たとえば、2モジュール中空糸モジュール、マルチバンドル中空糸コンタクター(たとえばLiqui-Cel(商標名)コンタクター)、中空糸パートラクター、および2チャンバーコンタクターシステムがある(http://sschi.chtf.stuba.sk/MembraneLab/Equipment.htm)。
【0057】
「正しく折り畳まれた」という用語は、本明細書において、膜貫通タンパク質などのような膜結合タンパク質の二次構造および三次構造に関する。正しく折り畳まれたタンパク質は、それがαヘリックスであるか、βバレルであるか、またはミックスされた膜タンパク質であるかに応じて、その天然の二次構造の状態に折りたたまれており、四量体アクアポリンのような多量体タンパク質のサブユニットは、要求される環境条件、たとえば、極性、水和、親水性、疎水性、もしくは両親媒性が満たされることを条件として、合わせてフォールディングして三次構造を形成する。正しいフォールディングは、こうしたタンパク質の機能および活性のために必要である。
【0058】
(具体的な実施形態)
本発明のアクアポリン液膜の使用は、特に、フィード食塩溶液、たとえば海水、の脱塩による淡水の製造に好都合であるが、このアクアポリン水チャネルの特異的な純水を輸送する性質および塩素を拒絶する性質は、ユニークな処理条件を提示する。本発明の興味深い実施形態は、淡水を製造するための、正浸透プロセスにおけるアクアポリン液膜(乳化型液膜、支持液膜、またはバルク液膜)の使用であるが、この場合、塩水はフィードであり、CO2/NH3含有水溶液は、約58℃に加熱することによって、溶解したガスを容易に除去できるという利点を有するドロー溶液である(McGinnis and Elimelech, Desalination, 207 (2007) 370-382; およびQuirin Schiermeier, “Purification with a pinch of salt”, Nature, 452, 20 March 2008)。
【0059】
アクアポリンプロテオリポソームの形をとる、本発明の液膜の例を下記の表に示す。
【表2】
【表3】
【0060】
図1から19において本発明を明らかにするが、これらの図を以下に詳細に説明する:
図1は、3タイプの液膜:バルク液膜(BLM)、乳化型液膜(ELM)、支持液膜(SLM)の一般的原理を示す。アクアポリン液膜の場合、キャリアは、リン脂質二分子膜などの両親媒性ベシクル二分子膜に埋め込まれたアクアポリン水チャネルからなる。3つの液膜タイプのすべてについて、供給相および受容相は水溶液であり、この受容相は供給相より高い浸透圧勾配を有する。
【0061】
図2は、液膜モジュール内の中空糸およびらせん巻き分離モジュールを示す。2つのモジュールについて、積層は供給相と受容相の間でコンタクターとして機能する。供給相および受容相はともに水溶液であって、受容相は供給相より高い浸透圧勾配を有する。
【0062】
図3は、キャリアとしてバルク液膜を有する2モジュール中空糸支持液膜の原理の概略図を示す。アクアポリンバルク液膜がキャリアである場合、アクアポリンバルク液膜が、供給相からアクアポリン水チャネルを通って受容相の中に水を抽出する。供給相および受容相はいずれも水溶液であり、受容相は供給相より高い浸透圧勾配を有する。
【0063】
図4は、本発明のベシクルを用いた、水溶液の濃縮のための装置および方法の原理の概略図を示す。アクアポリン乳化型液膜がキャリアである場合、アクアポリン乳化型液膜が、濃縮されるべき溶液からアクアポリン乳化型液膜内に水を抽出し、それによって濃縮された溶液となる。
【0064】
図5は、キャリア系としてアクアポリン乳化型液膜を用いて、正浸透によって飲用の純水を含有する栄養飲料を製造する方法の原理の概略図を示す。一例として、アクアポリン乳化型液膜は、尿溶液からアクアポリン乳化型液膜内に水を抽出する。アクアポリン乳化型液膜および濃縮された尿溶液は相分離され、続いてアクアポリン乳化型液膜は、高浸透圧勾配を有する受容水溶液と混合される。その後、水がアクアポリン乳化型液膜から受容溶液中に抽出され、アクアポリン乳化型液膜および受容溶液は相分離されて、尿溶液から別の溶液への水の移動という最終結果が与えられるが、これはこの例ではグルコースおよびタンパク質の溶液である。
【0065】
図6は、均一な電解液の限外濾過もしくは溶解した気体の脱気に続いて、正浸透で本発明のベシクルを使用する、原理の概略図を示す。これは、任意の水溶液もしくは液体からの水抽出の、完全な応用の一例である。一例として、アクアポリン乳化型液膜は、廃水溶液からアクアポリン乳化型液膜内に水を抽出する。アクアポリン乳化型液膜および濃縮された廃水溶液は相分離され、続いてアクアポリン乳化型液膜は高浸透圧勾配を有する受容水溶液と混合される。その後、水がアクアポリン乳化型液膜から受容溶液中に抽出され、アクアポリン乳化型液膜および受容溶液は相分離されて、廃水溶液から別の溶液への水の移動という最終結果が与えられるが、これはこの例では別の電解質溶液または溶解した気体の溶液である。
【0066】
図7は、浸透圧発電のための浸透膜法における本発明のベシクルの使用に関する、原理の概略図である。この例は、浸透圧発電のための浸透膜発電システムに組み込まれたキャリアとしてバルク液膜を用いた、2モジュール中空糸支持液膜の原理の概略図を示す。アクアポリンバルク液膜がキャリアである場合、アクアポリンバルク液膜は、供給相からアクアポリンバルク液膜のアクアポリン水チャネルを通って受容相の中に水を抽出する。浸透膜法の例において供給相は、半塩水/淡水であり、受容相は海水もしくは海水からの塩水でもよい。半塩水から海水中への水抽出は、圧力勾配によって駆動されるタービンを通じて集積された、浸透圧性電力の生産を可能にする。
【0067】
図9の正浸透ユニットセルの略図において、Κfeed (t)は、フィード溶液の実測導電率に用いられ、Κdraw (t)はドロー溶液の実測導電率に用いられ、ΔVQ(Κpermeate)はフィードからの実測流量に用いられる。幅広の矢印は液膜空間を通過する流れの方向を示す。
【0068】
下記の式は、正浸透バッチセルユニットを横断する流束の測定、および阻止率の計算に使用することができる。
【0069】
流量: Q(t) ≒ ΔV(t) ΔV(t)は計量ピペットの読みである
流束は、J(t) ≒ Q(t)/Aとして計算され、Aは液膜接触面積である
浸透圧の関数としての流束:J(t) ≒ Q(t)/A*Posmotic
個別に移動する溶質分子からなる溶液に関する浸透圧の計算:
Π = c R T [chapt 2.11 in ‘ Quantities, Units and Symbols in Physical Chemistry,’ INTERNATIONAL UNION OF PURE AND APPLIED CHEMISTRY, 1993]
c : 個々の移動溶質のモル濃度
G: 気体定数、0.08206 L ・ atm ・ mol-1 ・ K-1
T: 絶対温度
理想的性質から逸脱する溶液については、上記の等式は、次のようになる:
Π = ф c R T
式中、фは浸透係数である。25℃の0.15 Mショ糖溶液については、ф = 1.01である。[Sten-Knudsen, ‘Stoftransport, membranpotentialer og elektriske impulser over biologiske membraner’ Akademisk Forlag 1995]。фは、特定の溶液に関する浸透圧測定から決定することができる。
【0070】
例:
0.2 Mソルビトール(D-ソルビトール)の気温22℃での浸透圧(単位:バール):
Π = ф c R T ~ 1 ・ 0.2 mole ・ L-1 ・ 0.08206 L ・ atm ・ mol-1 ・ K-1・ 295 K ・ 1.01325 bar ・ atm-1
= 9,9 bar
ф はここでは≒1とみなす。
【0071】
塩阻止率、図9参照:
完全にイオン化された強電解質を含有するドローおよびフィード溶液を使用することによって、導電率Κは、ここでは簡単な濃度の基準として使用される。ドロー溶液の導電率の増加は、ドロー溶液に入って希釈する、浸透(permeate)体積Q(t)中の透過イオンの量を反映する:
Κpermeate(t) = ΔΚdraw(t)*(V0 + Q(t))/Q(t)
バルクR(「塩阻止率」)は:R = 1 - Κpermeate(t)/Κfeed(t)
として定義することができる
結果:
20バールD-ソルビトール ドロー溶液を用いる正浸透バッチユニットセル内で、実施例1にしたがって調製されるAQP液膜を使用する実験において、下記の塩阻止率が得られた(表4):
【表4】
【0072】
図10は、本発明の使用に関するアプリケーションを示すが、この水抽出は、表3に挙げるような、選択されたフィルター材でプロテオリポソーム層を挟むことによって作製される複合フィルター膜もしくはディスクを通って、フィード溶液からドロー溶液への、正浸透によって達成される。図10において、正浸透セットアップは、注入チャネル(6)を通って2つのフィルター膜(4)の間に注入された液膜溶液(8 - アクアポリンタンパク質を有するベシクル)が入っている中央部分の周りに取り付けることができる、2つの部分(上部および下部)からなる。膜の間の容積は、スペーサー/膜ホルダー(2)によって定められる。Oリング(7)およびねじと結びついたクランプ固定システム(1)は、ぴったりと合った状態を確保して、それによって密封された系を保証する。それは、フィード溶液コンパートメント(3)およびドロー溶液コンパートメント(9)も含んでいるが、これらのコンパートメントはいずれも、撹拌のための手段を装備することができる(図示せず)。コンパートメントはレベル測定チューブ(5)を介して接続することができる。
【0073】
筐体ユニットの組み立て:
1/ ドロー溶液コンパートメント(9)の内側にマグネチックスターラーバーを置く。
【0074】
2/ 膜ホルダー/スペーサー部分(2)の「バルコニー」の両側にそれぞれ2つのフィルター/膜(4)を設置する。各フィルターの外側で、それぞれの側に2つのOリングをセットし(7)、液膜コンパートメント(8)を密閉する。この膜サンドイッチをドロー溶液コンパートメントの上にセットしてフィードコンパートメントを上に設置する。ユニット全体をクランプで固定して、締め付ける。
【0075】
3/ レベル測定チューブを用いて、ドローコンパートメントを適当な液体で満たす。液膜サンプルを液膜コンパートメントに注入する。フィードコンパートメントを適当な液体で満たす。
【0076】
図10に示す筐体ユニットの使用例(アクアポリン含有液膜を横切る正浸透プロセスのために使用する)。
【0077】
組み立てられたユニットにおいて、2枚のAlfa Lavalナノ濾過膜、Alfa Laval-NF(コード517819)を、液膜コンパートメントの支えとして使用する。ドロー溶液には0.8 Mソルビトール(D-ソルビトール、85529 Sigma BioUltra)を使用する。サンプル容積は、実施例の項の実施例6に記載のように、液膜エマルション300μlである。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液、Sigma P-5368 (0.138 M NaCl、0.0027 M KCl、0.01 Mリン酸二水素カリウムおよびリン酸水素二カリウム、ならびにリン酸二水素ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウム)をフィードとして使用する。
【0078】
実験開始は、ドローを撹拌しながらフィード溶液を添加したときである。測定チューブ内の水柱の位置を観察することができる。測定チューブを通じて、複数の時点でプローブを挿入し、ドローもしくはフィード溶液の導電率を測定する(Microelectrodes Inc. MI-900 導電率電極、Thermo Scientific Orion 3-Star 導電率計)。時間経過に伴うドロー水柱の上昇を測定し、それから流速および流束を、質量/面積および質量/面積/単位時間として概算することができる。導電率は、水柱の上昇と並行して、フィードおよびドローの両方で測定する。
【0079】
本発明の支持液膜は、開放型もしくは閉鎖型サンドイッチ構造の形をとることもあるが、この実質的に平らな多孔質フィルター材は、プロテオリポソーム層の片側もしくは両側で支えとなり、したがってこの層を固定化する。フィルター材の例を下記の表5に示す。
【表5】
【0080】
本明細書の図面によって説明される、本発明の具体的な実施形態に加えて、本発明の液膜系は、生体チャネル調節作用、たとえば阻害および活性化作用のある化合物を検出するための、ならびに薬剤スクリーニングのための、バイオセンサーへの応用に有用である。一例として、固定化されたプロテオリポソーム標品中の機能的カルシウムチャネルの組み込み、ならびにチャネルを阻害もしくは阻止するための化合物ライブラリーのスクリーニングが考えられる。Judge SIおよびBever CTは、こうした、多発性硬化症の治療に役立つ薬剤を同定するための原理を明らかにした(参考文献の項を参照されたい)。
【0081】
(実験の項)
【実施例1】
【0082】
アクアポリン-BLM/ELM:プロテオリポソームの調製
プロテオリポソームの調製
精製SoPIP2;1はMaria Karlsson et al. (FEBS Letters 537 (2003) 68-72)に記載の方法に従って得られ、リン酸バッファー(PBS)10 mM、NaCl 150 mM、pH 7.5中、脂質対タンパク質モル比(LPR)200で、1% OG(界面活性剤、オクチルグルコシド)中に可溶化されたDOPC(1,2-ジオレオイルホスファチジルコリン)液体ベシクル(10 mg/ml)と混合することによって、ベシクルに再構成された。この混合物をFloat-A-LyzerO G2透析カセット(Spectrum Laboratories Inc, CA, USA)において、分子量カットオフ8-10,000 Daで、室温にて2日間、1日あたり2回バッファーを換えて、リン酸緩衝生理食塩水に対して透析した(サンプル容積:透析バッファー容積は最小で1:1000)。対照ベシクルは、タンパク質なしで同様に作製した。
【0083】
バルク液膜の調製
上記のように調製したSoPIP2;1プロテオリポソームに、スクアレン中に溶解したDOPCからなる脂質懸濁液を、プロテオリポソーム:脂質懸濁液の比率1:5で、混ぜることなくそっと添加した。これを、4℃にて一晩、転倒撹拌器に載せた。その結果得られたバルク液膜エマルションは、そのまま使用することもできるが、14,000 rpmで10分間遠心分離した後、得られた3相溶液(上相:脂質/スクアレン、中間相:タンパク質/脂質/スクアレン、下相:リン酸緩衝生理食塩水)の中間相を使用することによって、濃度を高めることもできる。使用するまで4℃で保存。この実施例の原理は図8で説明されている。
【実施例2】
【0084】
無溶媒アクアポリンBLMのための液体混合物の調製
材料および化学薬品
リン脂質(DOPC)、グリセリド(モノオレオイルグリセリド)、スクアレン、リノール酸(2つとも+5℃で保存)、ペンタン、標識されたリン脂質(たとえば、Texas Red(商標名) DHPE, Sigma Aldrich)。
【0085】
機材
減圧デシケーター、標準実験設備、水流吸引器
必要な実験作業時間
1時間+保存のための一晩
脂質/脂肪酸/スクアレン比が1 / 6 / 35である液体混合物/溶液のための調製ステップ
1) 窒素気流下でクロロホルムストックから10 mg脂質を乾燥させ、30分減圧下に置く
2) 200μLスクアレンを添加する
3) 20μLリノール酸を添加する(隔壁を通してHamiltonピペットを使用する)
4) なるべくなら窒素気流下で、渦巻き状にそっと撹拌して混合する
5) 300μLペンタンを添加し、渦巻き状に撹拌して混合する、または5)の代替案。脂質標識を使用するならば、標識された脂質のクロロホルム相(通常約50μL)を用いて、3成分の相と混合する。下記のように続行して、クロロホルムを除去する。
6a) 窒素気流下、その後減圧下でペンタンがなくなるまでペンタンを蒸発させる
6b) エタノールおよびドライアイスで、サンプルを5回凍結融解する
7) 水流吸引ポンプでエマルションを脱気する
8) N2ガスを上に載せ、キャップをして、パラフィルムをかけて、ラベルをつける
9) -80℃で一晩保存する。
【0086】
本明細書で調製された無溶媒脂質混合物は、アクアポリンのような両親媒性膜貫通タンパク質の組み込みに特に適している。実施例1のプロテオリポソーム標品を、実施例1に記載の手順に従って、無溶媒脂質混合物に添加することができる。
【0087】
実施例1および2のBLM標品を下記の応用において使用することができる。
【0088】
図8に示すようにBLMエマルション相を分離した後、これを、フィルターユニット、たとえばCentriprep(商標名)フィルターデバイスに沈着させることができるが、フィルターディスクを完全に覆うように相当な注意を払い、必要に応じて過剰量を用いてもよい。そのフィルターデバイスは、沈着したアクアポリンBLMを有するフィルターディスクの向こう側とこちら側で浸透圧差もしくは勾配が成立すれば、水性媒体からの純水抽出に直ちに使える状態である。図8は、実施例の項、たとえば実施例1に記載のように調製されたプロテオリポソームマイクロエマルション(液膜)と、液膜フォーミュレーションとの関係を示す。基本的に液膜は、一連の段階で形成される:クロロホルムを脂質から蒸発させ、脂質をバッファー(PBS)+1%OG(界面活性剤)中に再溶解し、その脂質溶液を、LIPEXバレル押出機などを用いて、200 nmポリカーボネートフィルターを通して最高20回程度押し出して、直径約200 nmの均一なベシクルが得られる。タンパク質SoPIP2;1を、望ましい脂質対タンパク質モル比(LPR)で、押し出されたベシクルを含有するバッファー(PBS)+1%OG中に混合し、PBSバッファーに対して≧48時間透析する。
【実施例3】
【0089】
安定化剤もしくは油相としてスクアレンを使用し、両親媒性脂質としてDOPCを使用するアクアポリンプロテオリポソームおよび対照の油/水エマルションの調製
材料および化学薬品
プロテオリポソームサンプルおよび大きな一枚膜ベシクル(LUV)サンプル(プロテオリポソームフォーミュレーションと同じ脂質を使用する)。
【0090】
スクアレン(最低98%純度、Sigma-Aldrich S3626)。
【0091】
リン脂質、たとえばクロロホルム中もしくは乾燥粉末状のPODC(Avanti Polar Lipids Inc.);対照エマルションについては、プロテオリポソームフォーミュレーションと同じ脂質種を使用する。蛍光脂質プローブ: 2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(7-ニトロ-2-1,3-ベンゾオキサジアゾ-ル-4-イル(NBD-PE)、(Avanti Polar Lipids Inc.)
特別な機材
Mini LabRoller(Labnet)。1.5 mLマイクロチューブ、滅菌。
【0092】
必要な実験作業時間
20分の作業負荷および追加のインキュベーション時間約60分+一晩;トータルのサンプル調製時間は約18時間となる。
【0093】
リポソーム(LUV)の調製
1. 20 mlのPBSを0.26 g OGと混合し、濃度を1.3%とする。
【0094】
2. 10 ml PBS/OG中に、 100 mgアゾレクチンを加え、濃度10 mg/mlとする。
【0095】
3. よく撹拌する。
【0096】
4. 脂質押出機を用いて11回押し出す。
【0097】
プロテオリポソームの調製
1. 押し出されたリポソームの量および受け取ったストック中のタンパク質濃度から判断して、プロテオリポソーム中で望ましいタンパク質濃度を達成するようにタンパク質を添加する。
【0098】
2. 少なくとも20時間透析する。
スクアレン油相バッチの調製
10 mg/mLリン脂質および蛍光標識脂質を含有する2 mLスクアレンの調製
1. 8 mlガラス製バイアル中に20 mgアゾレクチンを量りとる
2. 50μLのDPhPE/TR(クロロホルム中0.33 mg/ml)および50μL純粋クロロホルムを添加する。
3. 30分放置して再水和させ溶解する。
4. 2 mLスクアレンを加え、10分間激しくボルテックスする。
5. サンプルを窒素気流下におく(30-45分)。
6. サンプルをデシケーターに入れ1時間減圧する。
7. サンプルに蓋をして使用するまで4℃で保存する。
【0099】
油相(スクアレン)バッチの調製
10 mg/mLリン脂質および蛍光標識脂質を含有する2 mLスクアレンの調製:
1. 6 mLガラス製バイアル中に、クロロホルム中10 mg/mLリン脂質2 mLを加える。
2. 窒素気流下で(30-45分)溶媒を蒸発させて、脂質フィルムを得る、あるいはまた
3. リン脂質粉末を使用する場合には、20 mgリン脂質に50μLクロロホルムを加え、2 mLの液体リン脂質を得る。
4. 100μLの1 mg/mL NBD-PE(クロロホルム)を、2.で得られた脂質フィルムに加える(脂質フィルムが溶解していることを確認する)、または3.で得られた液体脂質に加える。
5. 2 mLスクアレン(Sigma-Aldrich)を加え、そっと混合する。
6. サンプルを窒素気流下におき(30-45分)、その後デシケーター内で減圧下に置く。
7. サンプルを通ってそっと窒素気流を流した後、蓋をしてパラフィルムをかけ、-80℃で保存する。
【0100】
油/水SoPIP2;1またはFomAプロテオリポソームエマルションの調製
-容積比:3:1 プロテオリポソーム:スクアレン(= 25 % vol/vol o/w)。
-バッチは使用前に周囲の温度で熱的平衡状態にしておく。
1. 1.5 mLマイクロチューブに添加する:
- 200μLスクアレン-脂質バッチ(油相バッチ)
- 600μL プロテオリポソームバッチ(実施例1に記載のように調製)
2. サンプルをMini LabRollerに入れ、冷蔵庫内で一晩サンプルを回転させる(最上段、温度は約8-10℃)
油/水 対照プロテオリポソームエマルションの調製
-プロテオリポソームの代わりにLUVバッチを使用して、上記と同じ
3. 使用後、リポソームおよびスクアレン-脂質バッチを窒素気流で通気する。リポソームバッチは冷蔵庫内で5-10℃にて保存し、スクアレン-脂質バッチは-80℃冷凍庫で保存しなければならない。
-スクアレン-液体油相バッチは10回のエマルション調製の間もつ。
-1セットのエマルションのための使用材料:1.2 mgアクアポリン(SoPIP2;1)またはFomA、40 mgリン脂質、400μLスクアレン。
【実施例4】
【0101】
安定化剤および油相としてスクアレンを使用し、両親媒性脂質としてアゾレクチンを使用する、AQP油/水プロテオリポソームエマルションの無溶媒調製。この実施例は、プロテオリポソーム(またはGPV)エマルション調製の別法を提供する。
材料および化学薬品
スクアレン(Pan Asian Marketing Co. Ltd)
リン脂質:ダイズ由来アゾレクチン(Fluka (#11145))
蛍光脂質プローブ:DPhPE/TR (Avanti Polar Lipids Inc.)
機材(標準実験設備以外)
Mini LabRoller(商標名)(Labnet)
丸底試験管
LIPEX(商標名)Extruder (Northern Lipids Inc.)
必要な実験作業時間
第1日:2.5時間の調製時間 + 一晩回転撹拌、トータルで約19.5時間。
【0102】
リポソームの調製
1. 20 ml PBSを0.26 g OGと混合し、濃度1.3%とする。
2. 10 ml PBS/OG中に100 mgアゾレクチンを添加し、10 mg/mlの濃度とする。
3. 十分撹拌してリポソームを生成させる。
4. リポソームを11回押し出して、単分散のリポソーム分散系を作製する。
5. ステップ4の別法:ステップ4を抜かして、押し出さずにリポソームをそのまま使用する。
【0103】
プロテオリポソームの調製
1. 押し出されたリポソームの量および受け取ったストック中のタンパク質濃度から判断して、プロテオリポソーム中で望ましいタンパク質濃度を達成するようにタンパク質を添加する。
2. 少なくとも20時間透析する。
【0104】
スクアレン油相バッチの調製
10 mg/mLリン脂質および蛍光標識脂質を含有する2 mLスクアレンの調製
1. 8 mlガラス製バイアル中に20 mgアゾレクチンを量りとる
2. 50μLのDPhPE/TR(クロロホルム中0.33 mg/ml)および50μL純粋クロロホルムを添加する。
3. 30分放置して再水和させ溶解する。
4. 2 mLスクアレンを加え、10分間激しくボルテックスする。
5. サンプルを窒素気流下におく(30-45分)。
6. サンプルをデシケーターに入れ1時間減圧する。
7. サンプルに蓋をして使用するまで4℃で保存する。
【0105】
油/水AQPプロテオリポソームエマルションの調製
-容積比:3:1 プロテオリポソーム:スクアレン
-バッチは使用前に周囲の温度で温度平衡状態にしておく。
1. 8 mLガラス製フラスコ(丸底)に添加する:
- 600μLスクアレン-脂質バッチ(油相バッチ)
- 1800μL プロテオリポソームバッチ
2. サンプルをMini LabRollerに入れ、暗黒下で一晩サンプルを回転させる
3. 翌日、品質管理のために顕微鏡下で可視化する。
【実施例5】
【0106】
上記のように調製されたBLMの応用
本発明のBLM標品を、濃度により駆動される液液物質移動のためにデザインされた、中空糸モジュール、たとえば、Manuel Aguilar & Jose Luis Cortina “Solvent Extraction and Liquid Membranes”, CRC Press, 2008の4.21項に記載され、図4.1(b)に示されたLiquid-Cel extra-flow 10x28コンタクターに適切に組み込むことができるが、前記文献の内容は本明細書に含められる。本発明の液膜エマルションを微細孔のある中空糸膜に組み込んで、フィード液として塩水を用い、さらに適当に濃縮されたドロー液を用いて、純水もしくは脱塩水を塩水フィードから抽出することができる。
【実施例6】
【0107】
一枚膜リポソームおよびSoPIP2;1プロテオリポソームの調製
タンパク質再構成のためのリポソームを調製したが、それは、窒素ガスで20 mg脂質からクロロホルムを蒸発させた後、ガラス製デシケーター内で2時間減圧乾燥し、次に、1% OG含有2 mL PBS、pH 7.4中で再水和して、脂質濃度10 mg/mlを有する液体とすることによって調製された。その液体を、LIPEXバレルエクストルーダー(Northern Lipids Inc., Burnaby, BC, Canada)を用いて200 nmポリカーボネートフィルターを通して21回押し出し、リポソームを生成させた。
【0108】
ホウレンソウ アクアポリンSoPIP2;1タンパク質は、スウェーデン、Lund University、生化学科(The department of Biochemistry)教授Per KjellbomおよびUrban Johanssonから入手し、Tornroth-Horsefield et al. 2006 (Susanna Tornroth-Horsefield et al. 2006. Structural mechanism of plant aquaporin gating, vol 439, Nature, pp.688-694)にしたがって発現させて精製した。
【0109】
大腸菌(E.coli)由来の細菌アクアポリン-Zは、シンガポール、Nanyang Technical University、生命科学部(School of Biological Sciences)、構造および計算生物学科(Division of Structural & Computational Biology)、准教授Jaume Torresより入手した。機能的なアクアポリン-Zは、大腸菌株BL21(DE3)の細菌培養物中に、タバコエッチ病ウイルス切断部位を有するHisタグ付きタンパク質として過剰生産された。この融合タンパク質は、264アミノ酸を有し、分子量は27234 Daである。大腸菌DH5α由来ゲノムDNAは、AqpZ遺伝子を増幅するための起源として使用された。AqpZ遺伝子は、AqpZのN末端にタバコエッチ病ウイルス切断部位(TEV);ENLYFQSNを付加した遺伝子特異的プライマーを用いて増幅された。増幅されたAqpZを酵素NdeIおよびBamHIで消化した後、同様に消化された6-Hisタグ付き発現pET28bベクターのDNAにライゲートした。陽性クローンをPCRスクリーニングにより確認した。次に構築物の信頼性をDNA配列決定法により確認した。
【0110】
タンパク質の発現のために大腸菌株BL21(DE3)を使用した。50μglmlカナマイシン含有Luria Broth培養液を37℃にて13-16時間インキュベートし、新鮮LB培地で100倍に希釈して、およそ1.2-1.5(600nmでのOD)の密度まで増殖させた。組換えタンパク質の発現を35℃にて3時間1 mM IPTGの添加により誘導した後、遠心分離した。
【0111】
集菌した細胞を、0.4 mg/ml リゾチーム、50ユニットBensonaseおよび3% n-オクチルβ-D-グルコピラノシドの存在下で、氷冷した結合バッファー(20 mM Tris pH 8.0、50 mM NaCl、2 mMβ-メルカプトエタノール、10% グリセロール)中に再懸濁した。サンプルをマイクロフルイダイザー中で12,000 Paにて5回の溶解サイクルに供した。不溶物は、40,000 x gで30分間遠心分離してペレットとした。上清をQ-セファロース ファストフローカラム(Amersham Pharmacia)に通し、流出液を集めた。流出画分はNaClを加えて300 mMとした後、あらかじめ平衡化したNi-NTAカラムにのせた。このカラムを、カラム容積の100倍量の洗浄バッファー(20 mM Tris pH 8.0、300 mM NaCl、25 mMイミダゾール、2 mM β-メルカプトエタノール、10% グリセロール)で洗浄し、非特異的に結合した物質を除去した。Ni-NTAアガロースに結合した物質を、ベッド容積の5倍量の溶出バッファー(30 mM n-オクチル β-D-グルコピラノシドを含有する20 mM Tris pH 8.0、300 mM NaCl、300 mMイミダゾール、2 mM β-メルカプトエタノール、10%グリセロール)で溶出した。陰イオン交換クロマトグラフィー;monoQカラム(GE healthcare)を用いてAqpZをさらに精製した。サンプル混合物をAmiconコンセントレーター、膜カットオフ10,000ダルトン、で希釈および濃縮して、塩およびイミダゾール濃度を約10 mMとした後、MonoQカラムにのせた。陰イオン交換クロマトグラフィーの際に使用するバッファーは、(A) 20 mM Tris pH 8.0、30 mM OG、10% グリセロール、ならびに(B) 20 mM Tris pH 8.0、1 M NaCl、30 mM OG、10% グリセロールとした。イオン交換カラムからAqpZを含有する溶出ピーク画分をプールした。精製AqpZは -80℃で冷凍保存した。
【0112】
ホウレンソウSoPIP2;1および大腸菌Aqp-Zアクアポリンの蛍光標識化
アクアポリン膜貫通タンパク質、ホウレンソウ アクアポリンSoPIP2;1または大腸菌AqpZを、badan(商標名)で標識した。badan(商標名)で誘導体化したタンパク質の合成および処理は、薄暗い明かりの下で実施した。反応を実施するために、SoPIP2;1に対して10倍モル過剰量のbadan(商標名)を、20 mM badan(商標名)原液(ジメチルホルムアミドに溶解)から10 mg/mlタンパク質溶液に。反応は転倒回転によって4℃にて20時間行われるようにした。反応混合物は、ポリアクリルアミドゲルEcono-Pac 10DG脱塩カラム(Bio-Rad)上で、SoPIP2;1についてはPBS, 1% OG, 1% glycerol, pH 7.4、Aqp-Zについては20 mM Tris, 30 mM OG, pH 8へと脱塩した。その結果得られた蛍光標識アクアポリンは使用まで4℃にて保存した。
【0113】
badan(商標名)標識SoPIP2;1もしくはAqpZは、タンパク質混合物をリポソームとともに、脂質対タンパク質比(LPR)200で、混合することによって再構成された。タンパク質濃度は、SoPIP2;1については46660 M-1 cm-1、AqpZについては36370 M-1 cm-1の280 nmでの吸光係数を用いて、紫外/可視吸収分光法で測定した。タンパク質およびリポソームの混合溶液は、ダイナミックマイクロダイアライザー透析装置(Spectrum Laboratories Europe, Breda, The Netherlands)内で、分子量カットオフ10,000ダルトンおよび透析液流量3 ml/分として24時間透析した。対照ベシクルをタンパク質なしで同様に作製した。得られたプロテオリポソームもしくはリポソームは使用するまで4℃で保存した。
【0114】
巨大タンパク質ベシクルの調製
巨大タンパク質ベシクル(GPV)は、一枚膜プロテオリポソームを溶媒もしくは油相および脂質の溶液と混合することによって形成されたが、前記油相は、たとえば脂質(10 mg/ml)含有溶液中のデカンもしくはスクアレンからなり、その溶液は使用されたプロテオリポソームの溶液に合致するものであって、たとえば、プロテオリポソームに使用された脂質がDOPCであるならば、その溶液中にDOPCを使用する。GPVを形成するために、溶媒もしくは油相および脂質の溶液をプロテオリポソームに、1:3 v/vの割合でそっと添加し、溶媒もしくは油相および脂質、またはプロテオリポソーム溶液を転倒回転により4℃にて一晩混合し、その結果として小さな一枚膜プロテオリポソームからGPVが形成された(図13および14参照)。形成されたGPVは、並行してTMタンパク質なしで形成された脂質ベシクル(対照ベシクル)と比較して安定であり、25から約400μmの範囲内の概算直径を有する。対照ベシクルは、調製が非常に困難で、構造がなく不安定であるという特徴を有することが観察された。
【0115】
同じプロトコールを、AqpZプロテオリポソームおよび巨大タンパク質ベシクルの調製に使用することができるが、その場合、脂質は、DOPCの代わりにたとえばDPhPCを使用することが好ましい。
【0116】
badan(商標名)-アクアポリンの蛍光分光法および顕微鏡法
蛍光分光法は、Varian Cary Eclipse蛍光分光計(Varian Inc., Palo Alto, CA, USA)を用いて、λex (励起波長) 380 nmで実施し、400から700 nmで発光を記録した。
【0117】
badan(商標名)標識アクアポリンSoPIP2;1およびAqpZの蛍光発光特性は、蛍光プローブbadanの局所環境の極性に感受性である。badan(商標名)の最大蛍光発光収率は、プローブの周囲の局所環境がより疎水的または親水的になると、それぞれ青色または赤色にシフトする。飽和量のSDSは最大発光収率の赤色シフトを引き起こす。発光スペクトルの変化は、badan(商標名)標識アクアポリンの、シフトした蛍光強度ピーク、およびシフトしていない蛍光強度ピークについて、一般偏光(GP)度を比較することで数値化することができる。GP値はGP=Ib −Ig/Ib +Ig によって計算され、式中Ib およびIgは、それぞれ発光スペクトルの青色および緑色エッジでの強度に相当する。
【0118】
蛍光分光法は、Varian Cary Eclipse蛍光分光計(Varian Inc., Palo Alto, CA, USA)を用いて、λex (励起波長) 400 nmで実施し、425から700 nmで発光を記録した。Ib およびIgは、蛍光共焦点顕微鏡イメージングのために使用されるバンドパスフィルターの範囲に対応する発光スペクトルから算出した。
【0119】
420-480および505-550 nmの蛍光発光範囲をカバーするGP画像はそれぞれ、共焦点顕微鏡(モデルLSM 510 META; Carl Zeiss MicroImaging)で、2チャンネル設定で同時に得られた。
【0120】
蛍光データは、イリノイ大学Urbana-Champaign校、The Laboratory for Fluorescence Dynamicsで開発されたGlobalsソフトウェアパッケージを用いて解析し、GP画像および付随するGPヒストグラム(ピクセル当たりのGP値の分布)が得られた(Beechem, J. M.; Gratton, E. In Time-Resolved Laser Spectroscopy in Biochemistry, Proc. of SPIE; Lakowicz, J., Ed. 1988; Vol. 909, p 70-81)。
【0121】
アクアポリンSoPIP2;1のGP比は、+0.4であるが、100 mM SDSに暴露した場合−0.4と測定された。
【0122】
他方、アクアポリンAqpZのGP比は、PBS中で+0.0だったのに対して100mM SDSに暴露すると−0.3と測定された(図20参照)。
【0123】
SDSによって蛍光プローブは、より親水性に暴露されるようになり(PBSから100 mM SDSへ)、これが、蛍光発光波長で観察されたシフトの理由であり、したがってGP比の変化の理由でもある。本発明者らは、これを、SoPIP2;1およびAqpZについてそれぞれ約+0.4または+0.0のGP比が、再構成で正しく折りたたまれたタンパク質と相関すると解釈する。これに対して、SoPIP2;1およびAqpZについてそれぞれ約−0.4または−0.3のGP比は、再構成で折りたたまれていない/不正確に折りたたまれたタンパク質と相関する。広範なヒストグラムの間にある、またはそれに伴うGP比は、不均一に再構成されたタンパク質(正しく折りたたまれた、および不正確に折りたたまれたタンパク質の混合)を意味する(図18、19および20)。
【実施例7】
【0124】
安定化されたGPVサンプルの調製
10 mg/mlリン脂質(プロテオリポソーム調製(実施例1)と同じ成分(1つもしくは複数))、および蛍光標識脂質を含有する2 ml油相の調製において、次のステップを用いる:
1. 4 mlガラス製バイアルに、2 mlリン脂質DOPC(1,2-ジオレオイルホスファチジルコリン)10 mg/mlリン脂質(クロロホルム)(Avant Polar Lipids Inc.)を加える
2. 窒素ガス気流下で脂質フィルムまで乾燥する(45分)
3. 100μlクロロホルムを加え、それに1 mg/ml 2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(7-ニトロ-2-1,3-ベンゾオキサジアゾール-4-イル) (NBD-PE)、(Avanti Polar Lipids Inc.)を溶解し(必要に応じて標識化する)、液体フィルムを溶解する
4. 2 mlスクアレン(S3626, Sigma-Aldrich)を加え、そっと混合する
5. サンプルを窒素気流下におき(45分)、その後デシケーターに入れて減圧下に30分おく
6. 液体窒素中でエタノール(96%グレード)を用いて5回凍結融解する
7. サンプルを室温にもどし、そっと窒素ガスを流す
8. 調製したサンプルをそのまま使用する、または保存する:蓋をしてパラフィルムで覆い-80℃にて保存する。
【0125】
プロテオリポソームおよびスクアレン標品を、プロテオリポソーム:スクアレン=3:1の容積比で使用する、油相を水性プロテオリポソーム相の中に入れる水中油型分散系の調製、ならびに安定化されたGPVサンプルの形成において、下記のステップを用いる:
1. プロテオリポソーム(実施例1にしたがって調製された)およびスクアレンのバッチ(a/下で調製)を、使用前に室温で熱的平衡状態にしておく
2. 4 ml丸底試験管に加える:
- 400μl 調製スクアレンサンプル
- 1800μl 調製プロテオリポソーム
3. 窒素ガスの弱い気流を当てる
4. アルミホイルおよび実験用フィルム(パラフィルム)でサンプルを覆う。サンプルバイアルをMini LabRoller(商標名)Rotator (LabNet International)などに入れ、ドラフト内または冷蔵室内で最低10℃で一晩回転させる。
【0126】
安定化GPVサンプルの収集
5. 4から得られたサンプルを他に使用する30分前に平衡化しておく。
サンプルは目で見て3相を示す:スクアレンの有機相である上の相、下の水相、および幅広の第3の中間相、最大で容積1200μl、安定化GPV粒子により濃縮。
6. 中間相を、たとえば、シリンジまたは分液漏斗を用いて取り除き、関連する水抽出もしくは透析ユニットにおいて、液膜として使用する。
【0127】
図14は、製造メーカーのプロトコールにしたがってフルオロフォア6-ブロモアセチル-2-ジメチルアミノナフタレン(badan(商標名)、Molecular Probes, Inc.製、(29851 Willow Creek Road, Eugene, OR 97402-9132, USA))で標識され、さらに巨大タンパク質ベシクル中に再構成された、アクアポリンSoPIP2;1の蛍光画像を示す。画像は、Roper Cascade冷却フレームトランスファ型CCDモノクロカメラを装備したZeiss Axioplan2 正立蛍光顕微鏡(Carl Zeiss, Jena, Germany)を用いて得られた。画像収集のために使用されるフィルター設定は、390 nm励起、および435-465 nm発光フィルター(ブルーフィルター)とした。このモノクロ画像は、ベシクルシェル(液膜)内に標識化されたSoPIP2;1タンパク質の存在を明確に示す。それに加えて、図13および14はいずれも、一枚膜プロテオリポソームから調製されたタンパク質ベシクル(GPV)が主として一枚膜であることを示す。さらに、画像は、油相安定化に起因するGPVの最密充填を明確に示す。これが、本発明の液膜エマルションもしくはベシクル標品に特有の、それを同等のリポソーム標品(Norbert Maurer et al. (Biophysical Journal, Volume 80, May 2001,pp 2310-2326)の図6、7および8の顕微鏡画像参照)から明確に区別する特徴であり、前記リポソーム標品は液体水相において相互接触のない分散したリポソームを示す。
【0128】
図17は、4つのbadan(商標名)標識を付けたAqpZ四量体の二次構造を示す。ここで結合位置はCys 9であり、これは、典型的には脂質二分子膜の疎水性領域を占める、タンパク質表面にある。
【0129】
図18は、badan(商標名)-SoPIP2;1およびbadan(商標名)-AqpZの蛍光分光法を示す。スペクトルは、アクアポリンが大腸菌全脂質抽出脂質に再構成されたとき、タンパク質がSDS量の増加にどのように反応するかを示している。親水性の増加は、赤色シフト、および蛍光発光収率の下落を引き起こすのに対して、疎水性の増加は、スペクトルの青色シフト、ならびに付随して蛍光発光収率の増加をもたらす。
【0130】
図19。スクアレンもしくはデカンの油安定化剤から作られるSoPIP2;1液膜(もしくはGPV)におけるbadan周辺の疎水性の感知、ならびにPBS中のプロテオリポソームとの比較。badan-SoPIP2;1は、デカン油安定化剤中で疎水性が高くなるが、これはデカンが膜内に浸透する能力を有するためであり、したがってタンパク質のプローブの周りの疎水性が高まる。
【実施例8】
【0131】
フィルター基材上に沈着および/または含浸させることによって調製されるアクアポリン支持液膜の作製
次の方法例は、液膜サンプルをフィルタリングユニット上に沈降させる遠心力を利用するが、この場合このフィルタリングユニットは、孔径0.45μmの微細孔のあるPTFE膜である。この例は、実施例4にしたがって調製されたプロテオリポソームのエマルションに適用される。
【0132】
次のステップが適用される:
1. PTFE 0.45ミクロンフィルターを有するMillipore Ultrafree-CL遠心濾過ユニットを使用し、液膜サンプル400μlをピペットで取ってフィルターカップに入れ、そのフィルターカップを濾液コレクションチューブに入れる。
2. このチューブを遠心分離器のスウィングバケットローター頂部に挿入する
3. サンプルを2-4000 rpmで10分から30分間遠心分離して、過剰な水分をコレクションチューブ内に浸透させる。液膜油-水エマルションのクッション性のある層は、PTFE細孔性フィルター内に沈殿したままである。
4. 小量の、約1 mlのPBSバッファーを加える。
5. サンプルを400 rpmで30分間遠心分離して、添加したバッファーがコレクションチューブ内に浸透しないことを確定する。
6. 添加したバッファー液量を取り除く
フィルターユニットの図を図11に示すが、この図において(1)はフィルターカップ、(2)はドロー溶液、(3)はコレクションチューブ、(4)は液膜(油相(スクアレン)中の水含有プロテオリポソーム)、(5)はフィード溶液である。たとえば任意の適当なドロー溶液について3 M、ならびに任意の適当なフィード溶液について200 mMといった濃度は、説明目的でのみ示される。
【0133】
フィルターユニットの正浸透への応用
1. Millipore精密濾過フィルター(Millipore Durapore 0.45ミクロン)を、フィルターカップ(直径10 mm、高さ30 mm)内のクッション性のある層の上部に挿入する。
2. クッション性のある層に浸透圧勾配を加える - 高塩濃度の液量、たとえば、3 M塩化カリウム溶液を添加する。
3. フィルターカップを、低浸透圧フィード溶液を満たした新しいコレクションチューブ内に入れる。
4. 経時的にフィルターカップ上部のドローの浸透圧を測定する。
【0134】
図12は、AQP含有LMを対照(AQPなし)と比較して、フィード中に残存する測定された浸透圧の程度を示すグラフである。グラフは、時間経過に伴うドローとフィード溶液間の浸透圧の相違を示す。丸印:AQP液膜、四角印:液膜中にAQPなし。このグラフは、AQP液膜の沈着はAQPなしのLM沈着より高いイオン阻止率を有することを明確に示す。浸透圧は、サンプルバイアル中でサンプル25μlをLab Water(コンダクタンス18.2 Mohm・cmのMilliporeフィルターユニット処理水)で希釈し、Gonotec Osmomat 030 凝固点降下浸透圧計で測定することにより得られる。
【0135】
フィルターユニットの逆浸透への応用
1. Millipore精密濾過フィルター(Millipore Durapore 0.45ミクロン)を、フィルターカップ(直径10 mm、高さ30 mm)内のクッション性のある層の上部に挿入する。濾過すべき一定量のフィード水を、たとえば高い塩濃度または他の浸透圧調節物質濃度で加える。
2. チューブ用の上部出口を有するキャップでフィルターカップを閉じる。
3. 新しいコレクションチューブ内に入れる。
4. 圧力をかける(0.2 barから数barまで)。
5. 透過液を集め、その伝導率もしくは浸透圧を測定する。
【実施例9】
【0136】
UF/NF封入膜の効果に関する正浸透設定、ならびに流束性能に関するPBSフィード/ソルビトールドローの組み合わせの選択
以下の封入およびフィード/ドローの組み合わせをテストすることを目的とした(バッチフローセル)。本発明者らは、PBSドローおよびソルビトールフィード溶液を用いて、UF/NFフィルターで挟んだ封入状態のバッチフローセルにおける、液膜、LM1、フォーミュレーションの正浸透の性能をテストした。本発明者らは、アクアポリン含有サンプル(SoPIP2;1 PLM)、ならびにアクアポリンなしのサンプル(対照LM)をいずれも使用した。結果は図15および16に示す。
【0137】
材料
封入材料:UF(ETNA 10kDa Alfa Laval)/NF(NF-99 Alfa Laval)
フィード/ドロー:PBS/ソルビトール(0.82M)
略号一覧:
PLM:タンパク質液膜、LLM:リポソーム液膜、LM:液膜、LM1:液膜フォーミュレーションおよび標品No.1、SoPIP2;1:ホウレンソウ葉アクアポリン、UF:限外濾過膜、FO:正浸透。
【0138】
ドローおよびフィード溶液
D-ソルビトール(Sigma-Aldrich)のドロー溶液は、18.2 MΩcmの抵抗率を有する純水(Millipore MilliQ system)を用いて調製した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Sigma-Aldrich)をフィードとして使用した。
【0139】
ドローの終濃度は、浸透圧20 barの溶液となる0.82 M D-ソルビトールとした(Morse: Π = iMRTを用いて計算した)。PBSフィード溶液(約150 mM NaCl)は7 barの浸透圧であった。
【0140】
フローセルおよびフィルター
図10に記載のバッチフローセルを使用し、封入フィルターは、標準的な事前調製法にしたがって調製し、組み立てた。
【0141】
フラットシート封入フィルター、名称およびタイプ:NF: NF-99(Alfa Laval)、UF: ETNA 10kDa(Alfa Laval)
液膜サンプル
Aqp-SoPIP2;1液膜(GPV-LM1)、および無タンパク質LM1を実施例3にしたがって調製した。
【0142】
流速および阻止特性
浸透輸送特性の判定は、本明細書の式にしたがって行った。
【0143】
結論
AQP LM正浸透は、D-ソルビトールドロー溶液およびPBSフィード溶液を用いてバッチセルで実証される。最大1.3 kg/m2 hの初期浸透流動速度が、3分後に、UFおよびNF膜について考えられる流動速度を優に上回って測定された。UF/NF(活性のある層(被膜側)はそれぞれフィードおよびドローに向いている)封入法は、実現可能であることが明らかになった。
【0144】
図15は、SoPIP2;1 GPVフォーミュレーションの正浸透流QA、面積標準化流速を示すグラフである。結果は、0.82 M D-ソルビトール溶液をドロー液として、PBSバッファーをフィードとして用いてバッチフローセルで得られた。GPVサンプルは、それぞれドローおよびフィード側に向けて活性フィルター層を有する、UF(フィード側)およびNF(ドロー側)のサンドイッチ構造に組み込まれた。
【0145】
図16:図15について記載された同じ構造を有する、無アクアポリン/空のフォーミュレーションを示す。ある程度の初流速が観察されるが、その後浸透流は観察されない。この構造において、フィード溶液に面するフィルター膜はUFフィルターである。LLM-LM1は浸透流を示さない。
【0146】
この研究は、PLM1-LM1正浸透の性能を、封入膜フィルターならびにドローもしくはフィード溶液を用いて検討した。1つの重要な目的は、本発明のバッチセル設定において正浸透ドローに及ぼす影響が最小限である液膜支持フィルターを識別することであった。液膜を完全な状態に維持する浸透圧的に不活性な封入は、本発明者らが、浸透流をアクアポリンの活性にのみ起因すると考えることを可能にする。
【実施例10】
【0147】
免疫アッセイに使用するため、ならびに感染症における創薬のための、バイオセンサーとしての本発明の液膜系の使用
Fusobadterium nucleatumの主要な外膜タンパク質であるFomAは、三量体タンパク質であって、他の腸内細菌の拡散ポリンと同様の透過性を示す。それぞれのFomA単量体は拡散ポリンに典型的なβバレルモチーフを示し、それは16個の逆平行のβストランドからなる。FomAポリンは、電位依存性チャネルタンパク質として機能する。機能的な液膜に組み込まれたFomAチャネルを有する液膜エマルションは、上記実施例3にしたがって調製することができる。
【0148】
FomAセンサーアッセイは、巨大一枚膜ベシクルアッセイとして構成され、以後、検知をモニターするためのパッチクランプ装置として使用される。こうしたパッチクランプ装置は、たとえば、Port-a-Patchパッチクランプ装置(Nanion Technologies GmbH , Munich, Germany)として開発された自動パッチクランプ装置とすることができる。FomAポリンは、グラム陰性細菌感染症における創薬に、または免疫アッセイに、役立つ可能性のある薬剤標的である。本発明者らの予備的実験によれば、FomAがシクロデキストリンによって阻害される可能性のあることが示された。このことは、FomAについてこれまで報告されていない。FomAのシクロデキストリン阻害に関する特有の特徴は、FomAに基づく確率論的検知アッセイを作製するために応用することができる。抗うつ薬のようなある種の薬物は、シクロデキストリンと結合する可能性があるが(Li-Qun Gu et al 2000)、シクロデキストリンは同じくタンパク質によって検知される可能性があり、そのタンパク質がこの場合FomAである。
【実施例11】
【0149】
AqpZを組み込んだ一枚膜ブロックコポリマーベシクル(プロテオポリマーソーム)
プロテオポリマーソームは、WO2009/076174の実施例2にしたがって、またそのほかの記載のように調製し、プロテオリポソームの代わりにバルク液膜標品として使用した。このバルク液膜は、本発明の正浸透の応用、たとえば本明細書の図10および図11に記載の応用に使用することができる。
【0150】
本発明の液膜は、よく知られているさまざまなコンタクターモジュール、たとえば、フラットシートモジュールおよび中空糸モジュールに使用することができるが、ここに示した使用および応用に限定されない。それに加えて、本発明の液膜は、直接、適当な孔径分布を有する支持層に組み入れることができる。たとえば、約200から400ないし500 nmの平均直径を有する、本明細書に示すプロテオベシクルは、この直径を有するフィルター膜の孔内に取り込まれうる。
【実施例12】
【0151】
血液透析のためのシステムにおける本発明の液膜系の使用
腎臓は、脊椎動物および一部の無脊椎動物も含めて多くの動物で重要な機能を有する臓器である。その機能は、血液から老廃物を取り除くことであり、そういうものとして血液の天然フィルターとなることである。尿を生成することで、腎臓は尿素およびアンモニアなどの排泄物を排出する;腎臓はまた、水、グルコースおよびアミノ酸の再吸収にも関与する。毎日180 Lの水が腎臓に入り、その水の容積のほとんどすべてが回収される(約0.5 Lが排出される)。尿の塩濃度は、血液より4倍高くなることがある。水の再利用および尿中の塩濃度上昇の理由は腎臓の構造およびアクアポリンの機能と関係している。腎臓は、精緻な正浸透システムとして機能する。腎臓において、細い上行脚、太い上行脚および遠位尿細管は、高度に水不浸透性であるのに対して、他の部分は水浸透性である。このことは、腎臓の全体にわたって塩濃度勾配を生じさせ、その濃度勾配が、正常な腎機能に必要な浸透プロセスのための駆動力となる。
【0152】
これに関連して、アクアポリンは、遠位尿細管および集合尿細管に豊富である。後者は、水の再吸収および血液より高い尿の塩濃度に関与する。腎不全では、腎臓は適切に機能することができず、数多くの医学的問題の原因となることが考えられる。血液透析は、イオン(たとえば、K+およびPO43-)および尿素などの老廃物、ならびに自由水を腎不全患者の血液から除去するための、医学的方法である。
【0153】
血液透析では、滅菌された無機イオンの透析溶液が正浸透プロセスに使用され、半透膜を通して前記老廃物が除去される。しかしながら、余分な水が同時に血液から取り除かれるので、これを補充しなければならない。したがって、血液透析には精製水が必要である。さらに、透析患者は、透析液濃縮物と混合して透析液を形成する、大量の水にさらされるが、この場合、微量の無機夾雑物もしくは細菌内毒素が患者の血液に浸透する可能性がある。非常に低濃度の金属イオン、たとえばガラス製品に由来するアルミニウムイオン、であっても、低レベルの内毒素であっても、すべてこの点で問題を引き起こしている。こうした理由で、血液透析に使用される水は、使用前に注意深く精製される。1つの精製ステップは、微細孔性逆浸透膜に水を強制通過させることを含む。このようにして、電解質などの小さな溶質が濾過により取り除かれる。残った電解質の最終的な除去は、水を、イオン交換樹脂を備えたタンクに通すことによって行うことができるが、このイオン交換樹脂は、残った陰イオンもしくは陽イオンをいずれも除去し、それぞれ水酸分子および水素分子と置き換えて、超純水が残される。
【0154】
この程度の水精製でも不十分である可能性がある。最近の傾向は、上記最終精製水を(透析液濃縮物と混合後)透析膜に通すことになっている。これは、元の水精製システムを通した後に水中に蓄積した可能性のある、特に細菌起源の不純物を除去することで、いっそうの防御をもたらす。
【0155】
血液透析法の改善において、本発明の液膜系の少なくとも2つの有用な応用がある:
1. 本明細書に記載の超純水の製造は、血液透析で使用されている水精製のための非常に複雑なシステムに置き換えることができる。
2. 患者の血漿に由来する大量の水が同時に除去される、上記の正浸透プロセスの後、本明細書に記載の任意の方法においてアクアポリン液膜を用いて、これを抽出することができる。この目的のために、塩濃度勾配および対向流を、正常な腎機能を模して、本発明の液膜を横切って生じさせ、次に正浸透プロセスに必要な駆動力を構成する(図21参照)。これは、患者自身の血漿水分の再利用を保証し、いかに精製されていようとも外部の水の中に存在する夾雑物からのリスクを排除する。
【0156】
上記の本発明は、明確さおよび理解のために少し詳しく説明したが、外形および細目のさまざまな変更を行うことができることは、当業者にとって、この明細書の読み取りから明白であろう。たとえば、上記の技術および装置はすべて、さまざまに組み合わせて使用することができる。本出願に引用されたあらゆる公表文献、特許、特許出願、および/または他の文書は、それぞれ個別の公表文献、特許、特許出願、および/または他の文書が、あらゆる目的のために、参考として含められると個別に指示されるならば、その同じ程度まで、あらゆる目的のために、参考としてその全体を含めるものとする。
【0157】
参考文献:
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WO/2009/076174 “highly permeable polymeric membranes”, publication date: 18.06.2009, inventors: KUMAR, Manish, CLARK, Mark, M., ZILLES, Julie, BRZELAKOWSKI, Mariusz, NEHRING, Rainer, MEIER, Wolfgang.
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Judge SI, Bever CT (July 2006). "Potassium channel blockers in multiple sclerosis: neuronal Kv channels and effects of symptomatic treatment". Pharmacol. Ther. 111 (1): 224-59.
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Szoka, F. & Papahadjopoulos, D. (1980) Annu. Rev. Biophys. Bioeng. 9, 467-508)
【技術分野】
【0001】
本発明は、水抽出に適した液膜系の使用に関するが、より詳細には、タンパク質チャネルなどの生体チャネルを有する液膜系に関するものであって、これは水性媒体から水および/または小さい溶質を抽出するために両親媒性ベシクル二分子膜に組み込まれている。さらに具体的には、液膜系は、たとえば正浸透を応用して、特に水性液体媒体から純水を抽出するためのアクアポリン液膜であって、これは、両親媒性分子のベシクル分散系の中でアクアポリンから構成される。それに加えて、本発明は、膜タンパク質環境の親水性を測定するための蛍光アッセイに関するが、このアッセイは環境感受性蛍光プローブを用いて蛍光標識された膜タンパク質に基づく。
【背景技術】
【0002】
液膜分離プロセスは、US 4360448(A)に記載のように、イオンなどの溶解物質を水溶液から除去するために使用されてきた。これは、水溶液から溶存種を除去するためのプロセスに関係しており、このプロセスは前記水溶液とエマルションとを接触させることを含んでなるが、前記エマルションは、前記水溶液とは混和しないのに前記溶存種に対しては透過性であるような特性を持つ外相、ならびに、前記溶存種を非透過型に変換することができる、イオン交換化合物などの反応物質を含有する内相からなる。溶存種は、外相を透過して内相に入り、そこでその溶存種は非透過型に変換されるので、前記エマルションの内相に保持される。前記溶存種のなくなった水溶液は、前記エマルションから分離し、エマルションは再利用のために循環させる。しかしながら、生物学的液体のように、水性の溶液もしくは媒体中に、多数の、または特定されない、イオンもしくは溶質が存在する場合、除去されるべき種のそれぞれについて個別の反応物質を考案する必要があることから、上記方法もしくは類似の方法により溶質を除去することは、ますます複雑となる。液膜抽出プロセスの使用に関するもう1つの例が、(WO 87/002380)Production of Low-Ethanol Beverages by Membrane Extraction(「膜抽出による低アルコール飲料の製造」)に記載されており、これは、水および他の多数の有機成分を保持しつつ、ワインおよび他の飲料から選択的にエタノールを除去するよう考案された膜抽出系に関する。このように、液膜分離法は、これまで、たとえば水性液体中の、溶質を選択的に除去するために開発されてきた。水性液体源から水を選択的に除去もしくは抽出する必要を考慮して、本発明者らは、アクアポリンタンパク質で知られる選択的水チャネルを用いた、水性液体からの純水の除去もしくは抽出に適した液膜プロセスを考案した。
【0003】
蛍光に基づく活性測定法は、可溶性タンパク質については十分確立されているが、膜タンパク質についてはあまり確立されていない。これについて考えられる理由は、膜タンパク質が自然の環境 - 生体膜 - から取り出されると壊れやすいことである。さらに、市販のタンパク種の入手可能性は、ごくわずかの膜タンパク質に限られていた。このことは、膜タンパク質を大量に(グラム単位で)発現および精製する難しさと関係している。膜タンパク質は典型的には、そのタンパク質の自然の環境を十分に模倣する生体模倣膜に再構成すると、その機能を維持する。膜タンパク質の要件、すなわち特有の親水性および疎水性領域または層、に合致する、生体模倣膜フォーミュレーションの作製における実用性を目的として、脂質膜成分をスクリーニングするアッセイについては、現在、満たされていない必要性がある。同時に、こうしたアッセイは、膜タンパク質のフォールディング状態に関する有用な情報を与えることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US 4360448
【特許文献2】WO 87/002380
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
概して、本発明は、生体チャネル含有バルク液膜(BLM)、生体チャネル含有乳化型液膜(ELM)、および生体チャネル含有支持(固定化)液膜(SLM)、またはそれらの組み合わせの形をとる液膜系に関するが、この液膜系は、生体チャネルが組み込まれた二分子膜を形成する、脂質などの両親媒性化合物から形成されるベシクルに基づいており、前記ベシクルは安定化油相をさらに含有する。好ましい実施形態において、液膜系は、アクアポリン含有液膜系、たとえばアクアポリン含有バルク液膜(BLM)、アクアポリン含有乳化型液膜(ELM)、およびアクアポリン含有支持(固定化)液膜(SLM)、および/またはそれらの組み合わせであって、前記液膜系は生体チャネル、たとえばアクアポリン水チャネルを、両親媒性分子の分散系の中に含んでいる。この液膜系を、正浸透による液体水性媒体からの水抽出を含めて、たとえば塩水の脱塩を目的とする、さまざまな応用に使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、第1の態様において、本発明は、生体チャネル含有バルク液膜(BLM)、生体チャネル含有乳化型液膜(ELM)、および生体チャネル含有支持(固定化)液膜(SLM)、またはそれらの組み合わせの形をとる液膜系を提供するが、この液膜系は、生体チャネルが組み込まれた二分子膜を形成する1つもしくは複数の両親媒性化合物から形成されるベシクルを含んでなり、そのベシクルはさらに安定化油相を含有する。
【0007】
もう一つの態様において、本発明は、水性液体から水を抽出する方法を与えるが、その方法は次のステップを含んでなる:
a) 前述の主張のいずれか1つの液膜系の一定量を、ベシクルより小さい浸透圧を有する第1の水性液体に入れて混合し、懸濁液とするステップ、
b) 前記懸濁液中のベシクルに、前記の第1の液体から純水を吸収させて、浸透圧勾配が存在する限り膨張させるステップ、
c) 膨らんだベシクルを第1の液体から分離するステップ、ならびに
d) ステップc)から得られた当該ベシクルを、その膨らんだベシクルの圧力を上回る浸透圧を有する第2の水性液体中に再懸濁して、ベシクル中に抽出された水が、浸透圧勾配が存在する限り前記第2の液体に流入してそれを希釈することを可能にし、ベシクルを非膨張状態とするステップ。
【0008】
他の態様において、本発明は、水性液体媒体から純水を抽出するための装置を提供するが、これは1つもしくは複数の、本明細書に記載の液膜を含んでなる。
【0009】
もう一つの態様において、本発明は、水性分散系の中で、本質的に両親媒性脂質、膜貫通型タンパク質チャネルおよび油からなる、無溶媒巨大タンパク質ベシクルを提供するが、この場合、脂質対タンパク質のモル比は、約1:50から約1:400までの範囲にある。
【0010】
他の態様において、本発明は、本明細書に記載の巨大タンパク質ベシクルを含んでなる組成物を提供する。
【0011】
もう1つの実施形態において、本発明は、水性分散系の中で、本質的に、両親媒性脂質、膜貫通型タンパク質チャネル、および油からなる巨大タンパク質ベシクルを調製する方法を提供するが、この脂質とタンパク質のモル比は、約1:50から約1:400までの範囲であって、その方法は次のステップを含んでなり、結果としてプロテオリポソームからのGPVの生成をもたらす:
a) 界面活性剤含有バッファー中で再水和され、孔径約100 nmから約500 nmまでのフィルターを通して押し出された乾燥脂質溶液から、リポソームを調製するステップ、
b) a) から得られたリポソームを、膜貫通型タンパク質溶液と混合するステップであって、このタンパク質が必要に応じて蛍光標識と結合していてもよい、前記ステップ、
c) 約10 kDaの分子量カットオフで、b) から得られた混合物を一晩透析するステップ、
d) c) で形成されたプロテオリポソームベシクルを、たとえば遠心によって分離するステップ、
e) ベシクル膜中の膜貫通型タンパク質の正しい挿入を実証するために、必要に応じて、形成されたGPVの、使用された蛍光標識と適合可能な吸収スペクトルを得るステップ、ならびに、
f) ステップd) で得られたプロテオリポソームを、ステップa) と同じ脂質を含有する油相溶液中の脂質と、たとえば約1:3 v/vから約1:12 v/vまでのモル比で、混合するステップ。
【0012】
いかなる特別な場合にも、本明細書に記載の方法の全般的な枠組みの範囲内で、当業者は、調製される巨大タンパク質ベシクルサンプルのサイズ、および使用される試薬の性質に応じて、適切な具体的条件を選択することができる。
【0013】
例として、ステップc)で使用される条件は、約1から約10 mL/分までの透析液流量、より好ましくは約1から約5 mL/分、そしてもっとも好ましくは約3 mL/分を用いる。
【0014】
例として、ステップd)の分離は、たとえば、約10,000-20,000 rpm(たとえば14,200 rpm)で約1-5分間(たとえば約90秒)の遠心分離を用いる。
【0015】
例として、ステップf)の混合は、約4℃にて一晩転倒(end-over-end)回転を用いる。
【0016】
もう1つの態様において、本発明は、水性分散系中で、本質的に、両親媒性脂質、膜貫通型タンパク質チャネル、および油からなる、巨大タンパク質ベシクルを調製する方法を提供するが、その脂質対タンパク質のモル比は、約1:50から約1:400までの範囲にあり、その方法は、前記両親媒性脂質、膜貫通型タンパク質チャネルおよび油からなる水性混合物から、転倒ミキシング後にベシクルを自己組織化させることを含むものである。
【0017】
他の態様において、本発明は、本明細書に記載の方法により調製された巨大タンパク質ベシクルを、正浸透による水の抽出のために使用することを提供する。
【0018】
他の態様において、本発明は、本明細書に記載の方法にしたがって調製された巨大タンパク質ベシクルを、血液透析で失われた患者の血漿から純水を再抽出するために使用することを提供する。
【0019】
他の態様において、本発明は、開いた、または閉じたサンドイッチ構造を有する支持液膜を提供するが、ここで、実質的に平坦な多孔質フィルター材が、プロテオリポソーム層の片側もしくは両側で支えとなっており、それによって層を固定化している。
【0020】
他の態様において、本発明は、アクアポリン含有プロテオリポソームもしくは巨大タンパク質ベシクルの層を、限外濾過膜、ナノ濾過膜および精密濾過膜から選択されるフィルター膜の間に挟むことにより作製される、複合フィルター膜もしくはディスクを提供する。
【0021】
他の態様において、本発明は、膜と結合した、または膜に組み込まれた、生体チャネルもしくはタンパク質チャネル、たとえばアクアポリン水チャネルを油相中に有する脂質ベシクルを含んでなる、マイクロエマルションの形をとる液膜系を提供するが、これは液体水性媒体からの水抽出に適している。
【0022】
他の態様において、本発明は、前記マイクロエマルションを調製する方法を提供する。前記液膜系はさらに、コンタクターモジュール、または基本的に平面の多孔質サンドイッチ構造の中に収められ、または固定化されていてもよい。
【0023】
他の態様において、本発明は、膜タンパク質環境の親水性を測定するためのアッセイを提供するものであって、当該アッセイは、環境感受性プローブを用いて蛍光標識された膜タンパク質に基づいており、その蛍光を、プローブの付いたタンパク質が脂質二分子膜もしくは対応する両親媒性膜などの生体模倣膜において再構成されたときに、測定することができる。
【0024】
もう1つの態様において、本発明は、膜を形成する脂質および膜タンパク質の特定の組み合わせが、膜タンパク質が正しく折りたたまれた生体模倣膜を形成しうるかどうかを判断するための方法を提供するが、その方法は下記を含んでなる:
(a) 蛍光標識でラベルされた膜タンパク質を、膜形成脂質混合物中に導入するが、この蛍光標識の蛍光特性は、タンパク質と脂質の組み合わせにより形成された生体模倣膜における膜タンパク質の環境に左右される;
(b) 蛍光標識でラベルされた膜タンパク質から蛍光シグナルを検出する;ならびに
(c) その蛍光シグナルから、脂質および膜タンパク質の組み合わせが、タンパク質が正しく折りたたまれた生体模倣膜を形成しうるかどうかを判断する。
【0025】
他の態様において、本発明は、膜タンパク質が生体模倣膜において正しく折りたためるかどうかを判断するための方法を提供するが、その方法は下記を含んでなる:
(a) 膜タンパク質が生体模倣膜内で正しく折りたためるかどうかを判断するための系に、蛍光標識でラベルされた膜タンパク質を導入するが、その蛍光標識の蛍光特性は、生体模倣膜における膜タンパク質の環境に左右される;
(b) 蛍光標識でラベルされた膜タンパク質から蛍光シグナルを検出する;ならびに
(c) 膜タンパク質が生体模倣膜内で正しく折りたたまれているかどうかを、その蛍光シグナルから判断する。
【0026】
他の態様において、本発明は、生体模倣膜を形成する膜タンパク質の活性および/または機能を測定するための生体模倣膜を提供するが、この膜タンパク質は、蛍光標識の蛍光特性が生体模倣膜における膜タンパク質の環境に左右されるような、蛍光特性を有する蛍光標識を含有しており、膜タンパク質の活性もしくは機能は、その蛍光標識から蛍光シグナルを検出することによって測定可能である。
【0027】
他の態様において、本発明は、本明細書に記載の生体模倣膜を含んでなるセンサーを提供する。
【0028】
本発明の実施形態は、限定ではなく例として、添付の図面および実施例に準拠して説明されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、3タイプの液膜:バルク液膜(BLM)、乳化型液膜(ELM)、支持液膜(SLM)の一般的な原理を示す。
【図2】図2は、液膜モジュール内の中空糸およびらせん状に巻かれた分離モジュールを示す。
【図3】図3は、2モジュール中空糸支持液膜の原理の概略図を示す。
【図4】図4は、本発明のベシクルを用いた、水溶液の濃縮のための装置および方法の原理の概略図を示す。
【図5】図5は、正浸透によって、純粋な飲用水を含有する栄養飲料をもたらす方法の、原理の概略図を示す。
【図6】図6は、均一な電解液の限外濾過後に、本発明のベシクルを正浸透に使用することに関する原理の概略図を示す。これは、任意の水溶液もしくは液体からの水抽出に関する完全な適用例である。
【図7】図7は、浸透圧発電のための浸透膜法において本発明のベシクルを使用することに関する原理の概略図である。
【図8】図8は、液膜フォーミュレーション(調合方式)とプロテオリポソームマイクロエマルション(液膜)濃度との関係を示す。
【図9】図9は、計算のための基本パラメーターを説明する図である。
【図10】図10は、正浸透バッチセルユニットの概要図である。
【図11】図11は、正浸透のためのフィルターカップの図である。
【図12】図12は、ドロー(draw)およびフィード(feed)溶液の間の、経時的なモル浸透圧濃度の差異を示すグラフである。
【図13】図13は、SoPIP2;1タンパク質が膜内に組み込まれたDOPCベシクルの液膜標品の顕微鏡画像と、比較のための200μmスケールバーである。
【図14】図14は、巨大タンパク質ベシクル内に再構成されたフルオロフォアbadan(商標名)標識アクアポリンSoPIP2;1の蛍光画像である。
【図15】図15は、SoPIP2;1 GPVフォーミュレーションの正浸透流量QAを示すグラフである。
【図16】図15に示すのと同じ構成を持つ図16は、アクアポリンなし/空のフォーミュレーションを示す。
【図17】図17は、4つのbadan(商標名)標識を付されたAqpZテトラマーの二次構造を示す。
【図18】図18は、badan-AoPIP2;1およびbadan-AqpZの蛍光分光スペクトルを示す。
【図19】図19は、標準化された蛍光スペクトルの強度を波長の関数として示す。
【図20】図20は、2つの異なる脂質ベシクル内で再構成された2つの異なるアクアポリンに関するGP比を示す。
【図21】図21は、本発明の液膜が模倣する正常な腎臓の塩勾配および対向流を示す概略図を示す。
【0030】
(発明の詳細な説明)
本明細書に記載のアクアポリン含有液膜系は、アクアポリン含有乳化型液膜(ELM)の形をとることができるが、前記液膜は、アクアポリン水チャネルを両親媒性分子の分散系中に含み、好ましくはプロテオリポソームの形をとるベシクルを含んでなるが、これは両親媒性ベシクル二分子膜、たとえば脂質二分子膜などに組み込まれた機能的なアクアポリンを有する。
【0031】
本発明のアクアポリン含有乳化型液膜、すなわちAqp-ELMは、Aqp-ELMベシクルより小さい浸透圧を有する第1の水性液体中に混合もしくは懸濁することによって、水抽出のために使用することができるが、このAqp-ELMベシクルは、前記第1の液体から、アクアポリン水チャネルを通って、膨潤するベシクル内へ、選択的に純水分子を輸送することができる。第一の液体から純水を抽出した後、たとえば、遠心分離もしくは濾過によってベシクルを分離し、抽出された純水を保持するベシクルの浸透圧を上回る浸透圧を有する、第2の水性液体中に再懸濁することができる。抽出された水はただちに、浸透圧勾配が存在する限り、縮小するベシクルから第2の液体に流入する。第2の水性液体は、好ましくは、結果として得られた(精製された)水から分離可能で、低毒性もしくは無毒性であって、液膜に対して化学的に不活性でなければならない。第2の水性液体(ドロー(draw)溶液)はたとえば、海水の脱塩に使用されてきたグルコースとフルクトースの混合物であるが、最近、熱的に除去できるアンモニウム塩の高濃縮ドロー溶液中で、特定の比率でアンモニアおよび二酸化炭素ガスを組み合わせることに基づく、ドロー溶液が得られた;J.O. Kessler, and C.D. Moody, Drinking water from sea water by forward osmosis, Desalination 18 (1976) 297-306; J.R. McCutcheon, R.L. McGinnis, and M. Elimelech, Desalination by a novel ammonia-carbon dioxide forward osmosis process: influence of draw and feed solution concentrations on process performance. J. Membr. Sci. 278 278 (2006) 114-123)、およびKirts, Richard EugeneによるMethod and apparatus for producing potable water from seawater using forward osmosis参照。あるいはまた、水は、薄められたドロー溶液から、60℃近くに加熱することによって容易に分離され、淡水、アンモニアおよび二酸化炭素を生成することができる。アンモニアおよび二酸化炭素はいずれも、その後、ドロー液の溶質として再利用することができる;Low (2009)参照。
【0032】
米国特許出願公開(2009)、US 2009308727 A1 20091217は、アンモニア-重炭酸正浸透脱塩プロセスを用いた、海水を脱塩するための方法および装置を記載する。海水は膜構成組立品の一方側にポンプで通し、ドロー溶液は膜構成組立品のもう一方側にポンプで通す。ドロー溶液は膜を通して海水から水分子をドロー溶液中に引き抜き、ドロー溶液セパレーターは、加熱されたドロー溶液を受け入れるが、その溶液は続いてアンモニア、CO2および水に分解される。飲用水がアンモニアおよびCO2ガスから分離される。その後、アンモニアガスおよびCO2ガスは、飲用水の流れの一部とともに再度混合されて、重炭酸アンモニウムドロー溶液が再生される。本発明のある実施形態は、US 2009308727 A1に記載の方法および装置における本発明の液膜系の使用に関する。本発明の別の実施形態において、アクアポリン含有液膜系は、血液透析の結果生じる透析液から水を再抽出するのに使用される。本発明の液膜系は、血液透析法の改善において少なくとも2つの有用な応用がある:
i) 本明細書に記載の超純水の製造は、患者の血漿の水分量を回復するために現在必要となっている水精製のための非常に複雑な系を、置き換えることができる。
【0033】
ii) 透析液を作製するときに使用される正浸透プロセスの後、患者の血漿に由来する大量の水が同時に除去されるが、本明細書に記載の任意の方法でアクアポリン液膜を用いて、これを抽出することができる。
【0034】
本明細書に記載のアクアポリン含有ベシクル(Aqp-ELM)は、周期的に膨潤および収縮を繰り返すことができる。典型的には、ベシクルは、ベシクル内より低い浸透圧を有する第1の水性液体であって、そこから水を抽出することが望ましい前記液体と接触させる前は、あらかじめ収縮した状態である。前記第1の水性液体から膨潤したベシクルを分離した後、吸収された水を、膨潤したベシクルの内部より高い浸透圧を有するドロー溶液中に、抽出することができる。グラミシジンAチャネルを含有するDOPCベシクルの容積は、水の輸送により約16%まで膨潤しうることが判明している(M. Goulian et al., Biophysical Journal, Vol. 74, January 1998, pp. 328-337)。ゲルが充填されたDOPCベシクルについては、その容積は、初めの容積の約80%まで収縮する可能性がある(A. Viallat et al. Biophysical Journal, Vol. 86, April 2004, pp. 2179-2187)。本発明のある態様において、アクアポリン含有ベシクルは、無溶媒調製巨大タンパク質ベシクル(GPV)の形を取る。GPVおよびその調製法は、本明細書ではじめて公開される。本発明のGPVは、溶媒の代わりに油安定化によって調製されるという特徴を有する。それに加えて、本発明のGPVは、エレクトロフォーメーション法を用いることなく調製することができる。その上、タンパク質含量は、実際のベシクル形成に先だって、mol/molの比率で、すなわち、そのシグナル強度がタンパク質含量と直接相関する蛍光分光法で、正確に測定することができる。
【0035】
直径約20 nmの小さな一枚膜ホスファチジルコリン(SUV)ベシクルは、浸透圧感受性である。こうしたベシクルは、加えられる塩濃度勾配の向きに応じて膨潤したり収縮したりすることによって、浸透圧に対応する。これは、結晶から液体への結晶転移温度より上および下での卵ホスファチジルコリンおよびジミリストイルホスファチジルコリンの小さな一枚膜ベシクルについてもいえる。浸透圧勾配の存在下で、H2Oの流入および流出は、アクアポリンの存在によって、イオンの動きと切り離される。浸透圧によって引き起こされるSUVの収縮および膨潤の間、このリン脂質二分子膜の完全性は、ベシクルが壊れない程度に維持されるので、膜がアクアポリンタンパク質を含有しない限り、外部媒体とベシクル腔との間の平衡は生じない。
【0036】
第1の水性液体すなわち供給源相の典型的な浸透圧は、約100 mOsmから約500 mOsmもしくは1000 mOsmまでの範囲にあり、第2の水性液体すなわち受容相の典型的な浸透圧は、適当な浸透圧差を得るために約100から1000 mOsm高い。海水の浸透圧は2000-2400 mOsmであるが、主として塩化ナトリウムによってもたらされる。これは血漿の正常な浸透圧である275-299 mOsm/kgの8倍である。我々の腎臓が生成することのできるもっとも濃縮された尿は、海水レベルよりはるかに低い1400 mOsmに位置づけられる。
【0037】
さらに、本発明は液膜系、たとえば乳化型液膜(ELM)の形をとる液膜系(ここで前記液膜は、膜に組み込まれた両親媒性分子を有する脂質ベシクルを生体チャネルとともに分散系中に含んでなる)、好ましくはベシクル分散系の形をとる液膜系、たとえばプロテオリポソームの形をとる液膜系に関するが、こうした液膜系は、両親媒性ベシクル二分子膜に組み込まれたアクアポリンなどの生体チャネルを有するものであって、前記両親媒性ベシクル二分子膜は、たとえば、脂質二分子膜、両親媒性ブロックコポリマー(とりわけ、式AB-BA、ABA、またはABCの前記コポリマー)、またはハイブリッド両親媒性膜(たとえば、PEG結合両親媒性物質(ポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミンコンジュゲート(PEG-PE)など)に基づくリポソーム中の前記ハイブリッド両親媒性膜)などである。アクアポリンの他に、前記生体チャネルとしては、窒化ホウ素ナノチューブ、カーボンナノチューブ、ならびに両親媒性ポア形成分子および膜透過チャネル分子があり、これらは、膜貫通タンパク質、とりわけβバレル孔、たとえばαヘモリシンおよびOmpG、FomA、VDAC;合成ペプチドを含む膜貫通ペプチド孔(アラメチシン、バリノマイシン、グラミシジンA)、イオンチャネル(総説:Boon, M. and Smith, BD; 2002 (“Synthetic membrane transporters”. Current Opinion in Chemical Biology 2002, 6:749-756))、ならびにイオン選択性イオノフォア、たとえばナトリウム選択性ETH 157、カリウム選択性SQI-Prおよびバリノマイシン、塩素イオノフォア トリオクチルクロロスタンナンなどからなる一群から選択される。
【0038】
本発明のプロテオリポソームは、濃縮された油相の中で脂質ベシクル(またはGPV粒子)を作製することによって安定化される。これを行う1つの方法は、ベシクル外の水を他の溶媒によって置き換えることである。GPV二分子膜を乱さない溶媒環境、またはGPV二分子膜を乱す傾向を低下させる溶媒環境を提供するために、非極性溶媒を含む油相を、高度の親水性を示す化合物と交換することができるが、高分子量の非極性溶媒を選択することもできる。低毒性の化合物も好ましい。天然油化合物は、物理的安定性を示し、毒性のない、比較的安定な脂質エマルションを形成することが知られている。こうした油には、スクアレン、スクアラン、αトコフェロール、ホパノイド、イソプレン(たとえば、エステル化されたドリコール)、ユビキノン(Q10)、ホホバ油、軽油、亜麻仁油、大豆油、リン脂質で安定化されたスクアレンもしくは大豆油(すなわち大豆油、リン脂質およびグリセリンのエマルション、イントラリピッド(商標名))などがある。さらに、高級アルカン、たとえばデカン、ウンデカン、ドデカンなどを油相に使用することができる。これらの油化合物が無視できる程度にしか脂質二分子膜に浸透しないことはよく知られている。スクアレンは、黒膜を「無溶媒」にすることができる炭化水素溶媒の一例でもある[White S., Biophys. J., vol. 23, 1978]。本発明において、無溶媒あるいは溶媒を含まないベシクル組成物を得るために、脂質ベシクルエマルションに通常使用される有機溶媒の含量を減少させることが好ましい。
【0039】
他の態様において、本発明はまた、たとえば、フルオロフォア 6-ブロモアセチル-2-ジメチルアミノナフタレン(badan(商標名))などのナフタレン誘導体蛍光分子を、タンパク質のCys残基に共有結合することができるプローブとして使用する、蛍光アッセイに関する。プローブは、それが曝される分子環境の親水性に対して感受性であり、450 nmから550 nmまでの最大蛍光発光範囲を与える。badanプローブが疎水性に暴露された場合、そのプローブはその最大蛍光発光収率を有し、これは450 nmにある。これに対して、badanプローブが親水性(たとえば、水)に暴露された場合、そのプローブは低い蛍光発光収率を有し、発光極大は550 nm付近にある。上記の条件に対して中間の親水性/疎水性条件は、badan蛍光特性の上記特徴の中間に、発光極大および蛍光収率を生じさせる。下記の表1は有用な蛍光プローブの一覧である。
【表1】
【0040】
このアッセイは、両親媒性生体模倣膜中の膜タンパク質の分配、ひいては膜タンパク質のフォールディング状態を測定および/または画像化するために有用な情報を提供する。このアッセイにより得られる情報のタイプは、当該膜タンパク質に特有の膜結合のタイプ、およびそのタンパク質上の蛍光プローブの位置によって決まる。本発明の典型的な実施形態は、アクアポリン分子上でのbadan(商標名)を用いた蛍光標識であって、生体模倣膜内へのタンパク質再構成の成功の程度は、分光法により測定されるか、または顕微鏡法により画像化される。
【0041】
このアッセイは、アクアポリンなどの個別の膜タンパク質の特有の要件に適合させるために、タンパク質の再構成プロセスを最適化する、および/または生体模倣膜フォーミュレーション(リン脂質および他のバルク膜成分、たとえば、コレステロールなど)を選択するのに特に有用である。
【0042】
さらに、本方法は、蛍光標識に基づく膜タンパク質センサーの作製、および膜タンパク質の親水性/疎水性暴露を測定するアッセイの創出に有用である。本発明はまた、膜タンパク質活性を測定するための、蛍光に基づく膜タンパク質センサーを作製する新規方法も提供する。
【0043】
(定義)
液液抽出という用語は、液膜を用いた分離プロセスに使用される。本発明において、これは液-水抽出であり、水は液膜内に抽出される。
【0044】
液膜を使用する場合、一般用語「水抽出」は、本明細書では一般用語「水分離」とともに使用される。
【0045】
「ベシクル」およびその同義語である「リポソーム」という用語は、本明細書では、リン脂質のような両親媒性化合物からなるほぼ球形の液体構造物を特定するために使用される。タンパク質がベシクルに組み込まれた場合、この用語は、両親媒性タンパク質、たとえばアクアポリンなどの膜貫通タンパク質を組み込んだ「プロテオリポソーム」という用語と同じ意味で使用される。リポソームは、さまざまな大きさで、一枚膜(ユニラメラ)または多層膜(マルチラメラ)構造として形成することができるが、この1枚の薄膜(ラメラ)は1つの両親媒性二分子膜である。したがって、すべて本発明の範囲に含まれる、いくつかのタイプのベシクルもしくはリポソームがある:MLV(多層膜ベシクル)、SUV (小さな一枚膜ベシクル)およびLUV(大きな一枚膜ベシクル)もしくはGUV(巨大一枚膜ベシクル)。リン脂質などの両親媒性分子はそれ自体、会合し、二分子膜もしくは単分子層として、通常の細胞より小さい、微小な球体となることができる。二分子膜構造はベシクルもしくはリポソームである。単分子層構造はミセルと呼ばれる。本発明の文脈では、「プロテオリポソーム」という用語は、タンパク質の封入のために使用される、典型的にはドラッグデリバリー目的の、主として球形の脂質構造からなるリポソームのことを言っているわけではない。本発明のベシクルは、膜貫通タンパク質の挿入および組み込みに適した、両親媒性膜を有するという特徴がある。好ましくは、膜貫通タンパク質は、ベシクル膜に組み込まれたとき、それらの天然の立体構造を保持するので、タンパク質はその機能性を維持する。特によく見られる形の本発明のベシクルは、「巨大タンパク質ベシクル」もしくは大きさが比較的均一なGPVであって、これらの直径は、約20〜25μmから約400〜500μmまで、最大1000μmまでであるが、典型的な平均直径は、約100から約250μmまでの範囲にある。
【0046】
本発明のGPVを形成するためのベシクルは、好ましくは、適当な脂質混合物からなる均一サイズの一枚膜ベシクルであって、トラックエッチ ポリカーボネートフィルターを通した押し出しによって適切に作製される(”Vesicles of variable sizes produced by a rapid extrusion procedure”, L.D. Mayer, M.J. Hope and P.R. Cullis, Biochimica et Biophysica Acta 858 (1986) 161-168, "Effect of Extrusion Pressure and Lipid Properties on the Size and Polydispersity of Lipid Vesicles", D.G. Hunter and B.J. Frisken, Biophysical Journal 74(6) 1986, 2996-3002, "Osmotic properties of large unilamellar vesicles prepared by extrusion." B L Mui, P R Cullis, E A Evans, and T D Madden, Biophysical Journal 64(2) 1993, 443-453)。押し出しフィルターの好ましい孔径は、約0.15±0.06μmのベシクルを生成する0.200ミクロンである。このことは、これより小さい、または大きい孔径のフィルターを使用することを除外しない。ベシクルもしくはリポソームを調製するために他の方法があり、それはたとえば、エーテル蒸発法(D. Deamer and A. D. Bangham, Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Biomembranes Volume 443, Issue 3, 7 September 1976, Pages 629-634)によるものであるが、いくつかの方法が直径約250オングストロームの小さい一枚膜ベシクルを調製するために記載されており(Szoka, F. & Papahadjopoulos, D. (1980) Annu. Rev. Biophys.Bioeng. 9, 467-508)、このベシクルは、超音波照射;界面活性剤、たとえば胆汁酸塩もしくはTriton X-100の、界面活性剤/リン脂質ミセルの水性分散系からの、ゲル濾過もしくは透析による制御された除去;エタノール中もしくは他の溶媒中のリン脂質溶液の水への注入、および蒸発による有機溶媒の除去;ならびに、超音波処理されていない水性リン脂質分散系の、高圧でのフレンチプレスによる押し出しによって作製される。しかしながら、エレクトロフォーメーション法を用いることなく巨大タンパク質ベシクルを調製できることは、本明細書ではじめて示されている。
【0047】
本明細書で使用される「脂質」という用語は、好ましくは両親媒性脂質、たとえば、リン脂質、ホスホグリセリド、スフィンゴ脂質およびカルジオリピン、ならびにそれらの混合物、たとえば1,2-ジパルミトイル-sn-ホスファチジルコリン(DPPC)などのリン脂質、またはリン脂質の混合物を含む。有用な脂質がWO 2006/122566の表1に記載されており、これは参考として本明細書に含めるものとする。
【0048】
本明細書で使用される「生体チャネル」という用語は、任意の膜貫通チャネルもしくはポアを意味するものであって、それはたとえば、水および/または小さな溶質を液体水性媒体から抽出するために両親媒性ベシクル二分子膜に組み込むことができる、タンパク質チャネルである。両親媒性ベシクル二分子膜に組み込まれた、ポアを形成する膜含有物、たとえば、アクアポリンなどの機能タンパク質チャネルも、この用語に含まれるが、前記の二分子膜は、たとえば、脂質二分子膜;両親媒性ブロックコポリマー(なかでも、式AB-BA、ABA、またはABCの)から自己会合により形成される二分子膜;またはPEG結合両親媒性物質(たとえばポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミンコンジュゲート(PEG-PE))に基づくリポソームに含まれるようなハイブリッド両親媒性膜などである。この用語はまた、たとえば水分子を一列に並べて、水の輸送を助けることが明らかとなっているナノチューブ、すなわち、特定の窒化ホウ素ナノチューブおよびカーボンナノチューブを含めることができる。さらに、膜貫通タンパク質、なかでもαヘモリシンおよびOmpG、FomA、VDACなどのβバレル孔、膜貫通ペプチド孔(アラメチシン、バリノマイシン、グラミシジンA)、カリウムもしくはナトリウムチャネルといったイオンチャネルなどからなる一群から選択される、膜貫通チャネル分子などの、他の両親媒性ポア形成分子もこの用語に含まれる。
【0049】
本明細書で使用される「アクアポリン」という用語は、機能的水チャネルを意味するものであって、たとえば、WO/2006/122566 “Membrane for filtering of water” and by Tamir GonenおよびThomas Walz, Quarterly Reviews of Biophysics (2006), 39:4:361-396, Cambridge University Pressに記載の膜貫通タンパク質である。本明細書で使用される好ましいアクアポリンタンパク質は、Aqp 4、Aqp 1、Aqp Z、SoPIP2;1、および単量体、二量体、四量体、さらに高次のオリゴマー、ならびにそれらの機能的バリアント、たとえば一次構造の変異型、コンジュゲート型およびトランケート型からなる一群から選択される。
【0050】
「水性液体」および「水性液体媒体」という用語は本明細書で使用され、水溶液;天然水源;生物起源の液体、たとえば果汁および野菜汁、血液、乳および尿;廃水源;水性懸濁液、分散系、エマルションなどを含む。
【0051】
本明細書で使用される「浸透圧」という用語は、水性液体から半透膜を通って、高濃度の溶質を含有する区画に入る、水の浸透流によって生じる圧力を意味するものである。潜在的浸透圧は、選択的透過膜により蒸留水から隔てられたときに、溶液中で発現しうる最大浸透圧である。潜在的浸透圧は、ファントホッフ(van’t Hoff)の式によって説明されるように、溶液の単位体積中の溶質「粒子」数によって決定される。
【0052】
「正浸透」(FO)という用語は、半透膜を横切る浸透圧の差が、膜を通って水を輸送するための駆動力となるプロセスを意味する。FOプロセスは、結果として、フィード流の濃縮、ならびに高濃縮流(ドロー溶液と称される)の希釈をもたらす(Cath et al., Journal of Membrane Science, 281 (2006) 70-87)。
【0053】
「第1の水性液体」という用語は、「フィード」液、言い換えると供給相に相当する。
【0054】
「第2の水性液体」という用語は、「ドロー」液、言い換えると受容相に相当し、ストリッピング溶液としても知られている。
【0055】
本明細書に記載の液膜とともに使用することができる「標準フォームファクター」という用語は、液膜抽出設備のための、最新の産業用デバイスおよび装置の規格を意味するものである。
【0056】
本明細書で使用される「液膜コンタクター」という用語は、二つの液相が、アクアポリンバルク液膜を介して、相間の物質移動のために相互に接触できるようにするデバイスもしくは組成物を意味するものである。本明細書で使用されるコンタクターには、たとえば、2モジュール中空糸モジュール、マルチバンドル中空糸コンタクター(たとえばLiqui-Cel(商標名)コンタクター)、中空糸パートラクター、および2チャンバーコンタクターシステムがある(http://sschi.chtf.stuba.sk/MembraneLab/Equipment.htm)。
【0057】
「正しく折り畳まれた」という用語は、本明細書において、膜貫通タンパク質などのような膜結合タンパク質の二次構造および三次構造に関する。正しく折り畳まれたタンパク質は、それがαヘリックスであるか、βバレルであるか、またはミックスされた膜タンパク質であるかに応じて、その天然の二次構造の状態に折りたたまれており、四量体アクアポリンのような多量体タンパク質のサブユニットは、要求される環境条件、たとえば、極性、水和、親水性、疎水性、もしくは両親媒性が満たされることを条件として、合わせてフォールディングして三次構造を形成する。正しいフォールディングは、こうしたタンパク質の機能および活性のために必要である。
【0058】
(具体的な実施形態)
本発明のアクアポリン液膜の使用は、特に、フィード食塩溶液、たとえば海水、の脱塩による淡水の製造に好都合であるが、このアクアポリン水チャネルの特異的な純水を輸送する性質および塩素を拒絶する性質は、ユニークな処理条件を提示する。本発明の興味深い実施形態は、淡水を製造するための、正浸透プロセスにおけるアクアポリン液膜(乳化型液膜、支持液膜、またはバルク液膜)の使用であるが、この場合、塩水はフィードであり、CO2/NH3含有水溶液は、約58℃に加熱することによって、溶解したガスを容易に除去できるという利点を有するドロー溶液である(McGinnis and Elimelech, Desalination, 207 (2007) 370-382; およびQuirin Schiermeier, “Purification with a pinch of salt”, Nature, 452, 20 March 2008)。
【0059】
アクアポリンプロテオリポソームの形をとる、本発明の液膜の例を下記の表に示す。
【表2】
【表3】
【0060】
図1から19において本発明を明らかにするが、これらの図を以下に詳細に説明する:
図1は、3タイプの液膜:バルク液膜(BLM)、乳化型液膜(ELM)、支持液膜(SLM)の一般的原理を示す。アクアポリン液膜の場合、キャリアは、リン脂質二分子膜などの両親媒性ベシクル二分子膜に埋め込まれたアクアポリン水チャネルからなる。3つの液膜タイプのすべてについて、供給相および受容相は水溶液であり、この受容相は供給相より高い浸透圧勾配を有する。
【0061】
図2は、液膜モジュール内の中空糸およびらせん巻き分離モジュールを示す。2つのモジュールについて、積層は供給相と受容相の間でコンタクターとして機能する。供給相および受容相はともに水溶液であって、受容相は供給相より高い浸透圧勾配を有する。
【0062】
図3は、キャリアとしてバルク液膜を有する2モジュール中空糸支持液膜の原理の概略図を示す。アクアポリンバルク液膜がキャリアである場合、アクアポリンバルク液膜が、供給相からアクアポリン水チャネルを通って受容相の中に水を抽出する。供給相および受容相はいずれも水溶液であり、受容相は供給相より高い浸透圧勾配を有する。
【0063】
図4は、本発明のベシクルを用いた、水溶液の濃縮のための装置および方法の原理の概略図を示す。アクアポリン乳化型液膜がキャリアである場合、アクアポリン乳化型液膜が、濃縮されるべき溶液からアクアポリン乳化型液膜内に水を抽出し、それによって濃縮された溶液となる。
【0064】
図5は、キャリア系としてアクアポリン乳化型液膜を用いて、正浸透によって飲用の純水を含有する栄養飲料を製造する方法の原理の概略図を示す。一例として、アクアポリン乳化型液膜は、尿溶液からアクアポリン乳化型液膜内に水を抽出する。アクアポリン乳化型液膜および濃縮された尿溶液は相分離され、続いてアクアポリン乳化型液膜は、高浸透圧勾配を有する受容水溶液と混合される。その後、水がアクアポリン乳化型液膜から受容溶液中に抽出され、アクアポリン乳化型液膜および受容溶液は相分離されて、尿溶液から別の溶液への水の移動という最終結果が与えられるが、これはこの例ではグルコースおよびタンパク質の溶液である。
【0065】
図6は、均一な電解液の限外濾過もしくは溶解した気体の脱気に続いて、正浸透で本発明のベシクルを使用する、原理の概略図を示す。これは、任意の水溶液もしくは液体からの水抽出の、完全な応用の一例である。一例として、アクアポリン乳化型液膜は、廃水溶液からアクアポリン乳化型液膜内に水を抽出する。アクアポリン乳化型液膜および濃縮された廃水溶液は相分離され、続いてアクアポリン乳化型液膜は高浸透圧勾配を有する受容水溶液と混合される。その後、水がアクアポリン乳化型液膜から受容溶液中に抽出され、アクアポリン乳化型液膜および受容溶液は相分離されて、廃水溶液から別の溶液への水の移動という最終結果が与えられるが、これはこの例では別の電解質溶液または溶解した気体の溶液である。
【0066】
図7は、浸透圧発電のための浸透膜法における本発明のベシクルの使用に関する、原理の概略図である。この例は、浸透圧発電のための浸透膜発電システムに組み込まれたキャリアとしてバルク液膜を用いた、2モジュール中空糸支持液膜の原理の概略図を示す。アクアポリンバルク液膜がキャリアである場合、アクアポリンバルク液膜は、供給相からアクアポリンバルク液膜のアクアポリン水チャネルを通って受容相の中に水を抽出する。浸透膜法の例において供給相は、半塩水/淡水であり、受容相は海水もしくは海水からの塩水でもよい。半塩水から海水中への水抽出は、圧力勾配によって駆動されるタービンを通じて集積された、浸透圧性電力の生産を可能にする。
【0067】
図9の正浸透ユニットセルの略図において、Κfeed (t)は、フィード溶液の実測導電率に用いられ、Κdraw (t)はドロー溶液の実測導電率に用いられ、ΔVQ(Κpermeate)はフィードからの実測流量に用いられる。幅広の矢印は液膜空間を通過する流れの方向を示す。
【0068】
下記の式は、正浸透バッチセルユニットを横断する流束の測定、および阻止率の計算に使用することができる。
【0069】
流量: Q(t) ≒ ΔV(t) ΔV(t)は計量ピペットの読みである
流束は、J(t) ≒ Q(t)/Aとして計算され、Aは液膜接触面積である
浸透圧の関数としての流束:J(t) ≒ Q(t)/A*Posmotic
個別に移動する溶質分子からなる溶液に関する浸透圧の計算:
Π = c R T [chapt 2.11 in ‘ Quantities, Units and Symbols in Physical Chemistry,’ INTERNATIONAL UNION OF PURE AND APPLIED CHEMISTRY, 1993]
c : 個々の移動溶質のモル濃度
G: 気体定数、0.08206 L ・ atm ・ mol-1 ・ K-1
T: 絶対温度
理想的性質から逸脱する溶液については、上記の等式は、次のようになる:
Π = ф c R T
式中、фは浸透係数である。25℃の0.15 Mショ糖溶液については、ф = 1.01である。[Sten-Knudsen, ‘Stoftransport, membranpotentialer og elektriske impulser over biologiske membraner’ Akademisk Forlag 1995]。фは、特定の溶液に関する浸透圧測定から決定することができる。
【0070】
例:
0.2 Mソルビトール(D-ソルビトール)の気温22℃での浸透圧(単位:バール):
Π = ф c R T ~ 1 ・ 0.2 mole ・ L-1 ・ 0.08206 L ・ atm ・ mol-1 ・ K-1・ 295 K ・ 1.01325 bar ・ atm-1
= 9,9 bar
ф はここでは≒1とみなす。
【0071】
塩阻止率、図9参照:
完全にイオン化された強電解質を含有するドローおよびフィード溶液を使用することによって、導電率Κは、ここでは簡単な濃度の基準として使用される。ドロー溶液の導電率の増加は、ドロー溶液に入って希釈する、浸透(permeate)体積Q(t)中の透過イオンの量を反映する:
Κpermeate(t) = ΔΚdraw(t)*(V0 + Q(t))/Q(t)
バルクR(「塩阻止率」)は:R = 1 - Κpermeate(t)/Κfeed(t)
として定義することができる
結果:
20バールD-ソルビトール ドロー溶液を用いる正浸透バッチユニットセル内で、実施例1にしたがって調製されるAQP液膜を使用する実験において、下記の塩阻止率が得られた(表4):
【表4】
【0072】
図10は、本発明の使用に関するアプリケーションを示すが、この水抽出は、表3に挙げるような、選択されたフィルター材でプロテオリポソーム層を挟むことによって作製される複合フィルター膜もしくはディスクを通って、フィード溶液からドロー溶液への、正浸透によって達成される。図10において、正浸透セットアップは、注入チャネル(6)を通って2つのフィルター膜(4)の間に注入された液膜溶液(8 - アクアポリンタンパク質を有するベシクル)が入っている中央部分の周りに取り付けることができる、2つの部分(上部および下部)からなる。膜の間の容積は、スペーサー/膜ホルダー(2)によって定められる。Oリング(7)およびねじと結びついたクランプ固定システム(1)は、ぴったりと合った状態を確保して、それによって密封された系を保証する。それは、フィード溶液コンパートメント(3)およびドロー溶液コンパートメント(9)も含んでいるが、これらのコンパートメントはいずれも、撹拌のための手段を装備することができる(図示せず)。コンパートメントはレベル測定チューブ(5)を介して接続することができる。
【0073】
筐体ユニットの組み立て:
1/ ドロー溶液コンパートメント(9)の内側にマグネチックスターラーバーを置く。
【0074】
2/ 膜ホルダー/スペーサー部分(2)の「バルコニー」の両側にそれぞれ2つのフィルター/膜(4)を設置する。各フィルターの外側で、それぞれの側に2つのOリングをセットし(7)、液膜コンパートメント(8)を密閉する。この膜サンドイッチをドロー溶液コンパートメントの上にセットしてフィードコンパートメントを上に設置する。ユニット全体をクランプで固定して、締め付ける。
【0075】
3/ レベル測定チューブを用いて、ドローコンパートメントを適当な液体で満たす。液膜サンプルを液膜コンパートメントに注入する。フィードコンパートメントを適当な液体で満たす。
【0076】
図10に示す筐体ユニットの使用例(アクアポリン含有液膜を横切る正浸透プロセスのために使用する)。
【0077】
組み立てられたユニットにおいて、2枚のAlfa Lavalナノ濾過膜、Alfa Laval-NF(コード517819)を、液膜コンパートメントの支えとして使用する。ドロー溶液には0.8 Mソルビトール(D-ソルビトール、85529 Sigma BioUltra)を使用する。サンプル容積は、実施例の項の実施例6に記載のように、液膜エマルション300μlである。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液、Sigma P-5368 (0.138 M NaCl、0.0027 M KCl、0.01 Mリン酸二水素カリウムおよびリン酸水素二カリウム、ならびにリン酸二水素ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウム)をフィードとして使用する。
【0078】
実験開始は、ドローを撹拌しながらフィード溶液を添加したときである。測定チューブ内の水柱の位置を観察することができる。測定チューブを通じて、複数の時点でプローブを挿入し、ドローもしくはフィード溶液の導電率を測定する(Microelectrodes Inc. MI-900 導電率電極、Thermo Scientific Orion 3-Star 導電率計)。時間経過に伴うドロー水柱の上昇を測定し、それから流速および流束を、質量/面積および質量/面積/単位時間として概算することができる。導電率は、水柱の上昇と並行して、フィードおよびドローの両方で測定する。
【0079】
本発明の支持液膜は、開放型もしくは閉鎖型サンドイッチ構造の形をとることもあるが、この実質的に平らな多孔質フィルター材は、プロテオリポソーム層の片側もしくは両側で支えとなり、したがってこの層を固定化する。フィルター材の例を下記の表5に示す。
【表5】
【0080】
本明細書の図面によって説明される、本発明の具体的な実施形態に加えて、本発明の液膜系は、生体チャネル調節作用、たとえば阻害および活性化作用のある化合物を検出するための、ならびに薬剤スクリーニングのための、バイオセンサーへの応用に有用である。一例として、固定化されたプロテオリポソーム標品中の機能的カルシウムチャネルの組み込み、ならびにチャネルを阻害もしくは阻止するための化合物ライブラリーのスクリーニングが考えられる。Judge SIおよびBever CTは、こうした、多発性硬化症の治療に役立つ薬剤を同定するための原理を明らかにした(参考文献の項を参照されたい)。
【0081】
(実験の項)
【実施例1】
【0082】
アクアポリン-BLM/ELM:プロテオリポソームの調製
プロテオリポソームの調製
精製SoPIP2;1はMaria Karlsson et al. (FEBS Letters 537 (2003) 68-72)に記載の方法に従って得られ、リン酸バッファー(PBS)10 mM、NaCl 150 mM、pH 7.5中、脂質対タンパク質モル比(LPR)200で、1% OG(界面活性剤、オクチルグルコシド)中に可溶化されたDOPC(1,2-ジオレオイルホスファチジルコリン)液体ベシクル(10 mg/ml)と混合することによって、ベシクルに再構成された。この混合物をFloat-A-LyzerO G2透析カセット(Spectrum Laboratories Inc, CA, USA)において、分子量カットオフ8-10,000 Daで、室温にて2日間、1日あたり2回バッファーを換えて、リン酸緩衝生理食塩水に対して透析した(サンプル容積:透析バッファー容積は最小で1:1000)。対照ベシクルは、タンパク質なしで同様に作製した。
【0083】
バルク液膜の調製
上記のように調製したSoPIP2;1プロテオリポソームに、スクアレン中に溶解したDOPCからなる脂質懸濁液を、プロテオリポソーム:脂質懸濁液の比率1:5で、混ぜることなくそっと添加した。これを、4℃にて一晩、転倒撹拌器に載せた。その結果得られたバルク液膜エマルションは、そのまま使用することもできるが、14,000 rpmで10分間遠心分離した後、得られた3相溶液(上相:脂質/スクアレン、中間相:タンパク質/脂質/スクアレン、下相:リン酸緩衝生理食塩水)の中間相を使用することによって、濃度を高めることもできる。使用するまで4℃で保存。この実施例の原理は図8で説明されている。
【実施例2】
【0084】
無溶媒アクアポリンBLMのための液体混合物の調製
材料および化学薬品
リン脂質(DOPC)、グリセリド(モノオレオイルグリセリド)、スクアレン、リノール酸(2つとも+5℃で保存)、ペンタン、標識されたリン脂質(たとえば、Texas Red(商標名) DHPE, Sigma Aldrich)。
【0085】
機材
減圧デシケーター、標準実験設備、水流吸引器
必要な実験作業時間
1時間+保存のための一晩
脂質/脂肪酸/スクアレン比が1 / 6 / 35である液体混合物/溶液のための調製ステップ
1) 窒素気流下でクロロホルムストックから10 mg脂質を乾燥させ、30分減圧下に置く
2) 200μLスクアレンを添加する
3) 20μLリノール酸を添加する(隔壁を通してHamiltonピペットを使用する)
4) なるべくなら窒素気流下で、渦巻き状にそっと撹拌して混合する
5) 300μLペンタンを添加し、渦巻き状に撹拌して混合する、または5)の代替案。脂質標識を使用するならば、標識された脂質のクロロホルム相(通常約50μL)を用いて、3成分の相と混合する。下記のように続行して、クロロホルムを除去する。
6a) 窒素気流下、その後減圧下でペンタンがなくなるまでペンタンを蒸発させる
6b) エタノールおよびドライアイスで、サンプルを5回凍結融解する
7) 水流吸引ポンプでエマルションを脱気する
8) N2ガスを上に載せ、キャップをして、パラフィルムをかけて、ラベルをつける
9) -80℃で一晩保存する。
【0086】
本明細書で調製された無溶媒脂質混合物は、アクアポリンのような両親媒性膜貫通タンパク質の組み込みに特に適している。実施例1のプロテオリポソーム標品を、実施例1に記載の手順に従って、無溶媒脂質混合物に添加することができる。
【0087】
実施例1および2のBLM標品を下記の応用において使用することができる。
【0088】
図8に示すようにBLMエマルション相を分離した後、これを、フィルターユニット、たとえばCentriprep(商標名)フィルターデバイスに沈着させることができるが、フィルターディスクを完全に覆うように相当な注意を払い、必要に応じて過剰量を用いてもよい。そのフィルターデバイスは、沈着したアクアポリンBLMを有するフィルターディスクの向こう側とこちら側で浸透圧差もしくは勾配が成立すれば、水性媒体からの純水抽出に直ちに使える状態である。図8は、実施例の項、たとえば実施例1に記載のように調製されたプロテオリポソームマイクロエマルション(液膜)と、液膜フォーミュレーションとの関係を示す。基本的に液膜は、一連の段階で形成される:クロロホルムを脂質から蒸発させ、脂質をバッファー(PBS)+1%OG(界面活性剤)中に再溶解し、その脂質溶液を、LIPEXバレル押出機などを用いて、200 nmポリカーボネートフィルターを通して最高20回程度押し出して、直径約200 nmの均一なベシクルが得られる。タンパク質SoPIP2;1を、望ましい脂質対タンパク質モル比(LPR)で、押し出されたベシクルを含有するバッファー(PBS)+1%OG中に混合し、PBSバッファーに対して≧48時間透析する。
【実施例3】
【0089】
安定化剤もしくは油相としてスクアレンを使用し、両親媒性脂質としてDOPCを使用するアクアポリンプロテオリポソームおよび対照の油/水エマルションの調製
材料および化学薬品
プロテオリポソームサンプルおよび大きな一枚膜ベシクル(LUV)サンプル(プロテオリポソームフォーミュレーションと同じ脂質を使用する)。
【0090】
スクアレン(最低98%純度、Sigma-Aldrich S3626)。
【0091】
リン脂質、たとえばクロロホルム中もしくは乾燥粉末状のPODC(Avanti Polar Lipids Inc.);対照エマルションについては、プロテオリポソームフォーミュレーションと同じ脂質種を使用する。蛍光脂質プローブ: 2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(7-ニトロ-2-1,3-ベンゾオキサジアゾ-ル-4-イル(NBD-PE)、(Avanti Polar Lipids Inc.)
特別な機材
Mini LabRoller(Labnet)。1.5 mLマイクロチューブ、滅菌。
【0092】
必要な実験作業時間
20分の作業負荷および追加のインキュベーション時間約60分+一晩;トータルのサンプル調製時間は約18時間となる。
【0093】
リポソーム(LUV)の調製
1. 20 mlのPBSを0.26 g OGと混合し、濃度を1.3%とする。
【0094】
2. 10 ml PBS/OG中に、 100 mgアゾレクチンを加え、濃度10 mg/mlとする。
【0095】
3. よく撹拌する。
【0096】
4. 脂質押出機を用いて11回押し出す。
【0097】
プロテオリポソームの調製
1. 押し出されたリポソームの量および受け取ったストック中のタンパク質濃度から判断して、プロテオリポソーム中で望ましいタンパク質濃度を達成するようにタンパク質を添加する。
【0098】
2. 少なくとも20時間透析する。
スクアレン油相バッチの調製
10 mg/mLリン脂質および蛍光標識脂質を含有する2 mLスクアレンの調製
1. 8 mlガラス製バイアル中に20 mgアゾレクチンを量りとる
2. 50μLのDPhPE/TR(クロロホルム中0.33 mg/ml)および50μL純粋クロロホルムを添加する。
3. 30分放置して再水和させ溶解する。
4. 2 mLスクアレンを加え、10分間激しくボルテックスする。
5. サンプルを窒素気流下におく(30-45分)。
6. サンプルをデシケーターに入れ1時間減圧する。
7. サンプルに蓋をして使用するまで4℃で保存する。
【0099】
油相(スクアレン)バッチの調製
10 mg/mLリン脂質および蛍光標識脂質を含有する2 mLスクアレンの調製:
1. 6 mLガラス製バイアル中に、クロロホルム中10 mg/mLリン脂質2 mLを加える。
2. 窒素気流下で(30-45分)溶媒を蒸発させて、脂質フィルムを得る、あるいはまた
3. リン脂質粉末を使用する場合には、20 mgリン脂質に50μLクロロホルムを加え、2 mLの液体リン脂質を得る。
4. 100μLの1 mg/mL NBD-PE(クロロホルム)を、2.で得られた脂質フィルムに加える(脂質フィルムが溶解していることを確認する)、または3.で得られた液体脂質に加える。
5. 2 mLスクアレン(Sigma-Aldrich)を加え、そっと混合する。
6. サンプルを窒素気流下におき(30-45分)、その後デシケーター内で減圧下に置く。
7. サンプルを通ってそっと窒素気流を流した後、蓋をしてパラフィルムをかけ、-80℃で保存する。
【0100】
油/水SoPIP2;1またはFomAプロテオリポソームエマルションの調製
-容積比:3:1 プロテオリポソーム:スクアレン(= 25 % vol/vol o/w)。
-バッチは使用前に周囲の温度で熱的平衡状態にしておく。
1. 1.5 mLマイクロチューブに添加する:
- 200μLスクアレン-脂質バッチ(油相バッチ)
- 600μL プロテオリポソームバッチ(実施例1に記載のように調製)
2. サンプルをMini LabRollerに入れ、冷蔵庫内で一晩サンプルを回転させる(最上段、温度は約8-10℃)
油/水 対照プロテオリポソームエマルションの調製
-プロテオリポソームの代わりにLUVバッチを使用して、上記と同じ
3. 使用後、リポソームおよびスクアレン-脂質バッチを窒素気流で通気する。リポソームバッチは冷蔵庫内で5-10℃にて保存し、スクアレン-脂質バッチは-80℃冷凍庫で保存しなければならない。
-スクアレン-液体油相バッチは10回のエマルション調製の間もつ。
-1セットのエマルションのための使用材料:1.2 mgアクアポリン(SoPIP2;1)またはFomA、40 mgリン脂質、400μLスクアレン。
【実施例4】
【0101】
安定化剤および油相としてスクアレンを使用し、両親媒性脂質としてアゾレクチンを使用する、AQP油/水プロテオリポソームエマルションの無溶媒調製。この実施例は、プロテオリポソーム(またはGPV)エマルション調製の別法を提供する。
材料および化学薬品
スクアレン(Pan Asian Marketing Co. Ltd)
リン脂質:ダイズ由来アゾレクチン(Fluka (#11145))
蛍光脂質プローブ:DPhPE/TR (Avanti Polar Lipids Inc.)
機材(標準実験設備以外)
Mini LabRoller(商標名)(Labnet)
丸底試験管
LIPEX(商標名)Extruder (Northern Lipids Inc.)
必要な実験作業時間
第1日:2.5時間の調製時間 + 一晩回転撹拌、トータルで約19.5時間。
【0102】
リポソームの調製
1. 20 ml PBSを0.26 g OGと混合し、濃度1.3%とする。
2. 10 ml PBS/OG中に100 mgアゾレクチンを添加し、10 mg/mlの濃度とする。
3. 十分撹拌してリポソームを生成させる。
4. リポソームを11回押し出して、単分散のリポソーム分散系を作製する。
5. ステップ4の別法:ステップ4を抜かして、押し出さずにリポソームをそのまま使用する。
【0103】
プロテオリポソームの調製
1. 押し出されたリポソームの量および受け取ったストック中のタンパク質濃度から判断して、プロテオリポソーム中で望ましいタンパク質濃度を達成するようにタンパク質を添加する。
2. 少なくとも20時間透析する。
【0104】
スクアレン油相バッチの調製
10 mg/mLリン脂質および蛍光標識脂質を含有する2 mLスクアレンの調製
1. 8 mlガラス製バイアル中に20 mgアゾレクチンを量りとる
2. 50μLのDPhPE/TR(クロロホルム中0.33 mg/ml)および50μL純粋クロロホルムを添加する。
3. 30分放置して再水和させ溶解する。
4. 2 mLスクアレンを加え、10分間激しくボルテックスする。
5. サンプルを窒素気流下におく(30-45分)。
6. サンプルをデシケーターに入れ1時間減圧する。
7. サンプルに蓋をして使用するまで4℃で保存する。
【0105】
油/水AQPプロテオリポソームエマルションの調製
-容積比:3:1 プロテオリポソーム:スクアレン
-バッチは使用前に周囲の温度で温度平衡状態にしておく。
1. 8 mLガラス製フラスコ(丸底)に添加する:
- 600μLスクアレン-脂質バッチ(油相バッチ)
- 1800μL プロテオリポソームバッチ
2. サンプルをMini LabRollerに入れ、暗黒下で一晩サンプルを回転させる
3. 翌日、品質管理のために顕微鏡下で可視化する。
【実施例5】
【0106】
上記のように調製されたBLMの応用
本発明のBLM標品を、濃度により駆動される液液物質移動のためにデザインされた、中空糸モジュール、たとえば、Manuel Aguilar & Jose Luis Cortina “Solvent Extraction and Liquid Membranes”, CRC Press, 2008の4.21項に記載され、図4.1(b)に示されたLiquid-Cel extra-flow 10x28コンタクターに適切に組み込むことができるが、前記文献の内容は本明細書に含められる。本発明の液膜エマルションを微細孔のある中空糸膜に組み込んで、フィード液として塩水を用い、さらに適当に濃縮されたドロー液を用いて、純水もしくは脱塩水を塩水フィードから抽出することができる。
【実施例6】
【0107】
一枚膜リポソームおよびSoPIP2;1プロテオリポソームの調製
タンパク質再構成のためのリポソームを調製したが、それは、窒素ガスで20 mg脂質からクロロホルムを蒸発させた後、ガラス製デシケーター内で2時間減圧乾燥し、次に、1% OG含有2 mL PBS、pH 7.4中で再水和して、脂質濃度10 mg/mlを有する液体とすることによって調製された。その液体を、LIPEXバレルエクストルーダー(Northern Lipids Inc., Burnaby, BC, Canada)を用いて200 nmポリカーボネートフィルターを通して21回押し出し、リポソームを生成させた。
【0108】
ホウレンソウ アクアポリンSoPIP2;1タンパク質は、スウェーデン、Lund University、生化学科(The department of Biochemistry)教授Per KjellbomおよびUrban Johanssonから入手し、Tornroth-Horsefield et al. 2006 (Susanna Tornroth-Horsefield et al. 2006. Structural mechanism of plant aquaporin gating, vol 439, Nature, pp.688-694)にしたがって発現させて精製した。
【0109】
大腸菌(E.coli)由来の細菌アクアポリン-Zは、シンガポール、Nanyang Technical University、生命科学部(School of Biological Sciences)、構造および計算生物学科(Division of Structural & Computational Biology)、准教授Jaume Torresより入手した。機能的なアクアポリン-Zは、大腸菌株BL21(DE3)の細菌培養物中に、タバコエッチ病ウイルス切断部位を有するHisタグ付きタンパク質として過剰生産された。この融合タンパク質は、264アミノ酸を有し、分子量は27234 Daである。大腸菌DH5α由来ゲノムDNAは、AqpZ遺伝子を増幅するための起源として使用された。AqpZ遺伝子は、AqpZのN末端にタバコエッチ病ウイルス切断部位(TEV);ENLYFQSNを付加した遺伝子特異的プライマーを用いて増幅された。増幅されたAqpZを酵素NdeIおよびBamHIで消化した後、同様に消化された6-Hisタグ付き発現pET28bベクターのDNAにライゲートした。陽性クローンをPCRスクリーニングにより確認した。次に構築物の信頼性をDNA配列決定法により確認した。
【0110】
タンパク質の発現のために大腸菌株BL21(DE3)を使用した。50μglmlカナマイシン含有Luria Broth培養液を37℃にて13-16時間インキュベートし、新鮮LB培地で100倍に希釈して、およそ1.2-1.5(600nmでのOD)の密度まで増殖させた。組換えタンパク質の発現を35℃にて3時間1 mM IPTGの添加により誘導した後、遠心分離した。
【0111】
集菌した細胞を、0.4 mg/ml リゾチーム、50ユニットBensonaseおよび3% n-オクチルβ-D-グルコピラノシドの存在下で、氷冷した結合バッファー(20 mM Tris pH 8.0、50 mM NaCl、2 mMβ-メルカプトエタノール、10% グリセロール)中に再懸濁した。サンプルをマイクロフルイダイザー中で12,000 Paにて5回の溶解サイクルに供した。不溶物は、40,000 x gで30分間遠心分離してペレットとした。上清をQ-セファロース ファストフローカラム(Amersham Pharmacia)に通し、流出液を集めた。流出画分はNaClを加えて300 mMとした後、あらかじめ平衡化したNi-NTAカラムにのせた。このカラムを、カラム容積の100倍量の洗浄バッファー(20 mM Tris pH 8.0、300 mM NaCl、25 mMイミダゾール、2 mM β-メルカプトエタノール、10% グリセロール)で洗浄し、非特異的に結合した物質を除去した。Ni-NTAアガロースに結合した物質を、ベッド容積の5倍量の溶出バッファー(30 mM n-オクチル β-D-グルコピラノシドを含有する20 mM Tris pH 8.0、300 mM NaCl、300 mMイミダゾール、2 mM β-メルカプトエタノール、10%グリセロール)で溶出した。陰イオン交換クロマトグラフィー;monoQカラム(GE healthcare)を用いてAqpZをさらに精製した。サンプル混合物をAmiconコンセントレーター、膜カットオフ10,000ダルトン、で希釈および濃縮して、塩およびイミダゾール濃度を約10 mMとした後、MonoQカラムにのせた。陰イオン交換クロマトグラフィーの際に使用するバッファーは、(A) 20 mM Tris pH 8.0、30 mM OG、10% グリセロール、ならびに(B) 20 mM Tris pH 8.0、1 M NaCl、30 mM OG、10% グリセロールとした。イオン交換カラムからAqpZを含有する溶出ピーク画分をプールした。精製AqpZは -80℃で冷凍保存した。
【0112】
ホウレンソウSoPIP2;1および大腸菌Aqp-Zアクアポリンの蛍光標識化
アクアポリン膜貫通タンパク質、ホウレンソウ アクアポリンSoPIP2;1または大腸菌AqpZを、badan(商標名)で標識した。badan(商標名)で誘導体化したタンパク質の合成および処理は、薄暗い明かりの下で実施した。反応を実施するために、SoPIP2;1に対して10倍モル過剰量のbadan(商標名)を、20 mM badan(商標名)原液(ジメチルホルムアミドに溶解)から10 mg/mlタンパク質溶液に。反応は転倒回転によって4℃にて20時間行われるようにした。反応混合物は、ポリアクリルアミドゲルEcono-Pac 10DG脱塩カラム(Bio-Rad)上で、SoPIP2;1についてはPBS, 1% OG, 1% glycerol, pH 7.4、Aqp-Zについては20 mM Tris, 30 mM OG, pH 8へと脱塩した。その結果得られた蛍光標識アクアポリンは使用まで4℃にて保存した。
【0113】
badan(商標名)標識SoPIP2;1もしくはAqpZは、タンパク質混合物をリポソームとともに、脂質対タンパク質比(LPR)200で、混合することによって再構成された。タンパク質濃度は、SoPIP2;1については46660 M-1 cm-1、AqpZについては36370 M-1 cm-1の280 nmでの吸光係数を用いて、紫外/可視吸収分光法で測定した。タンパク質およびリポソームの混合溶液は、ダイナミックマイクロダイアライザー透析装置(Spectrum Laboratories Europe, Breda, The Netherlands)内で、分子量カットオフ10,000ダルトンおよび透析液流量3 ml/分として24時間透析した。対照ベシクルをタンパク質なしで同様に作製した。得られたプロテオリポソームもしくはリポソームは使用するまで4℃で保存した。
【0114】
巨大タンパク質ベシクルの調製
巨大タンパク質ベシクル(GPV)は、一枚膜プロテオリポソームを溶媒もしくは油相および脂質の溶液と混合することによって形成されたが、前記油相は、たとえば脂質(10 mg/ml)含有溶液中のデカンもしくはスクアレンからなり、その溶液は使用されたプロテオリポソームの溶液に合致するものであって、たとえば、プロテオリポソームに使用された脂質がDOPCであるならば、その溶液中にDOPCを使用する。GPVを形成するために、溶媒もしくは油相および脂質の溶液をプロテオリポソームに、1:3 v/vの割合でそっと添加し、溶媒もしくは油相および脂質、またはプロテオリポソーム溶液を転倒回転により4℃にて一晩混合し、その結果として小さな一枚膜プロテオリポソームからGPVが形成された(図13および14参照)。形成されたGPVは、並行してTMタンパク質なしで形成された脂質ベシクル(対照ベシクル)と比較して安定であり、25から約400μmの範囲内の概算直径を有する。対照ベシクルは、調製が非常に困難で、構造がなく不安定であるという特徴を有することが観察された。
【0115】
同じプロトコールを、AqpZプロテオリポソームおよび巨大タンパク質ベシクルの調製に使用することができるが、その場合、脂質は、DOPCの代わりにたとえばDPhPCを使用することが好ましい。
【0116】
badan(商標名)-アクアポリンの蛍光分光法および顕微鏡法
蛍光分光法は、Varian Cary Eclipse蛍光分光計(Varian Inc., Palo Alto, CA, USA)を用いて、λex (励起波長) 380 nmで実施し、400から700 nmで発光を記録した。
【0117】
badan(商標名)標識アクアポリンSoPIP2;1およびAqpZの蛍光発光特性は、蛍光プローブbadanの局所環境の極性に感受性である。badan(商標名)の最大蛍光発光収率は、プローブの周囲の局所環境がより疎水的または親水的になると、それぞれ青色または赤色にシフトする。飽和量のSDSは最大発光収率の赤色シフトを引き起こす。発光スペクトルの変化は、badan(商標名)標識アクアポリンの、シフトした蛍光強度ピーク、およびシフトしていない蛍光強度ピークについて、一般偏光(GP)度を比較することで数値化することができる。GP値はGP=Ib −Ig/Ib +Ig によって計算され、式中Ib およびIgは、それぞれ発光スペクトルの青色および緑色エッジでの強度に相当する。
【0118】
蛍光分光法は、Varian Cary Eclipse蛍光分光計(Varian Inc., Palo Alto, CA, USA)を用いて、λex (励起波長) 400 nmで実施し、425から700 nmで発光を記録した。Ib およびIgは、蛍光共焦点顕微鏡イメージングのために使用されるバンドパスフィルターの範囲に対応する発光スペクトルから算出した。
【0119】
420-480および505-550 nmの蛍光発光範囲をカバーするGP画像はそれぞれ、共焦点顕微鏡(モデルLSM 510 META; Carl Zeiss MicroImaging)で、2チャンネル設定で同時に得られた。
【0120】
蛍光データは、イリノイ大学Urbana-Champaign校、The Laboratory for Fluorescence Dynamicsで開発されたGlobalsソフトウェアパッケージを用いて解析し、GP画像および付随するGPヒストグラム(ピクセル当たりのGP値の分布)が得られた(Beechem, J. M.; Gratton, E. In Time-Resolved Laser Spectroscopy in Biochemistry, Proc. of SPIE; Lakowicz, J., Ed. 1988; Vol. 909, p 70-81)。
【0121】
アクアポリンSoPIP2;1のGP比は、+0.4であるが、100 mM SDSに暴露した場合−0.4と測定された。
【0122】
他方、アクアポリンAqpZのGP比は、PBS中で+0.0だったのに対して100mM SDSに暴露すると−0.3と測定された(図20参照)。
【0123】
SDSによって蛍光プローブは、より親水性に暴露されるようになり(PBSから100 mM SDSへ)、これが、蛍光発光波長で観察されたシフトの理由であり、したがってGP比の変化の理由でもある。本発明者らは、これを、SoPIP2;1およびAqpZについてそれぞれ約+0.4または+0.0のGP比が、再構成で正しく折りたたまれたタンパク質と相関すると解釈する。これに対して、SoPIP2;1およびAqpZについてそれぞれ約−0.4または−0.3のGP比は、再構成で折りたたまれていない/不正確に折りたたまれたタンパク質と相関する。広範なヒストグラムの間にある、またはそれに伴うGP比は、不均一に再構成されたタンパク質(正しく折りたたまれた、および不正確に折りたたまれたタンパク質の混合)を意味する(図18、19および20)。
【実施例7】
【0124】
安定化されたGPVサンプルの調製
10 mg/mlリン脂質(プロテオリポソーム調製(実施例1)と同じ成分(1つもしくは複数))、および蛍光標識脂質を含有する2 ml油相の調製において、次のステップを用いる:
1. 4 mlガラス製バイアルに、2 mlリン脂質DOPC(1,2-ジオレオイルホスファチジルコリン)10 mg/mlリン脂質(クロロホルム)(Avant Polar Lipids Inc.)を加える
2. 窒素ガス気流下で脂質フィルムまで乾燥する(45分)
3. 100μlクロロホルムを加え、それに1 mg/ml 2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(7-ニトロ-2-1,3-ベンゾオキサジアゾール-4-イル) (NBD-PE)、(Avanti Polar Lipids Inc.)を溶解し(必要に応じて標識化する)、液体フィルムを溶解する
4. 2 mlスクアレン(S3626, Sigma-Aldrich)を加え、そっと混合する
5. サンプルを窒素気流下におき(45分)、その後デシケーターに入れて減圧下に30分おく
6. 液体窒素中でエタノール(96%グレード)を用いて5回凍結融解する
7. サンプルを室温にもどし、そっと窒素ガスを流す
8. 調製したサンプルをそのまま使用する、または保存する:蓋をしてパラフィルムで覆い-80℃にて保存する。
【0125】
プロテオリポソームおよびスクアレン標品を、プロテオリポソーム:スクアレン=3:1の容積比で使用する、油相を水性プロテオリポソーム相の中に入れる水中油型分散系の調製、ならびに安定化されたGPVサンプルの形成において、下記のステップを用いる:
1. プロテオリポソーム(実施例1にしたがって調製された)およびスクアレンのバッチ(a/下で調製)を、使用前に室温で熱的平衡状態にしておく
2. 4 ml丸底試験管に加える:
- 400μl 調製スクアレンサンプル
- 1800μl 調製プロテオリポソーム
3. 窒素ガスの弱い気流を当てる
4. アルミホイルおよび実験用フィルム(パラフィルム)でサンプルを覆う。サンプルバイアルをMini LabRoller(商標名)Rotator (LabNet International)などに入れ、ドラフト内または冷蔵室内で最低10℃で一晩回転させる。
【0126】
安定化GPVサンプルの収集
5. 4から得られたサンプルを他に使用する30分前に平衡化しておく。
サンプルは目で見て3相を示す:スクアレンの有機相である上の相、下の水相、および幅広の第3の中間相、最大で容積1200μl、安定化GPV粒子により濃縮。
6. 中間相を、たとえば、シリンジまたは分液漏斗を用いて取り除き、関連する水抽出もしくは透析ユニットにおいて、液膜として使用する。
【0127】
図14は、製造メーカーのプロトコールにしたがってフルオロフォア6-ブロモアセチル-2-ジメチルアミノナフタレン(badan(商標名)、Molecular Probes, Inc.製、(29851 Willow Creek Road, Eugene, OR 97402-9132, USA))で標識され、さらに巨大タンパク質ベシクル中に再構成された、アクアポリンSoPIP2;1の蛍光画像を示す。画像は、Roper Cascade冷却フレームトランスファ型CCDモノクロカメラを装備したZeiss Axioplan2 正立蛍光顕微鏡(Carl Zeiss, Jena, Germany)を用いて得られた。画像収集のために使用されるフィルター設定は、390 nm励起、および435-465 nm発光フィルター(ブルーフィルター)とした。このモノクロ画像は、ベシクルシェル(液膜)内に標識化されたSoPIP2;1タンパク質の存在を明確に示す。それに加えて、図13および14はいずれも、一枚膜プロテオリポソームから調製されたタンパク質ベシクル(GPV)が主として一枚膜であることを示す。さらに、画像は、油相安定化に起因するGPVの最密充填を明確に示す。これが、本発明の液膜エマルションもしくはベシクル標品に特有の、それを同等のリポソーム標品(Norbert Maurer et al. (Biophysical Journal, Volume 80, May 2001,pp 2310-2326)の図6、7および8の顕微鏡画像参照)から明確に区別する特徴であり、前記リポソーム標品は液体水相において相互接触のない分散したリポソームを示す。
【0128】
図17は、4つのbadan(商標名)標識を付けたAqpZ四量体の二次構造を示す。ここで結合位置はCys 9であり、これは、典型的には脂質二分子膜の疎水性領域を占める、タンパク質表面にある。
【0129】
図18は、badan(商標名)-SoPIP2;1およびbadan(商標名)-AqpZの蛍光分光法を示す。スペクトルは、アクアポリンが大腸菌全脂質抽出脂質に再構成されたとき、タンパク質がSDS量の増加にどのように反応するかを示している。親水性の増加は、赤色シフト、および蛍光発光収率の下落を引き起こすのに対して、疎水性の増加は、スペクトルの青色シフト、ならびに付随して蛍光発光収率の増加をもたらす。
【0130】
図19。スクアレンもしくはデカンの油安定化剤から作られるSoPIP2;1液膜(もしくはGPV)におけるbadan周辺の疎水性の感知、ならびにPBS中のプロテオリポソームとの比較。badan-SoPIP2;1は、デカン油安定化剤中で疎水性が高くなるが、これはデカンが膜内に浸透する能力を有するためであり、したがってタンパク質のプローブの周りの疎水性が高まる。
【実施例8】
【0131】
フィルター基材上に沈着および/または含浸させることによって調製されるアクアポリン支持液膜の作製
次の方法例は、液膜サンプルをフィルタリングユニット上に沈降させる遠心力を利用するが、この場合このフィルタリングユニットは、孔径0.45μmの微細孔のあるPTFE膜である。この例は、実施例4にしたがって調製されたプロテオリポソームのエマルションに適用される。
【0132】
次のステップが適用される:
1. PTFE 0.45ミクロンフィルターを有するMillipore Ultrafree-CL遠心濾過ユニットを使用し、液膜サンプル400μlをピペットで取ってフィルターカップに入れ、そのフィルターカップを濾液コレクションチューブに入れる。
2. このチューブを遠心分離器のスウィングバケットローター頂部に挿入する
3. サンプルを2-4000 rpmで10分から30分間遠心分離して、過剰な水分をコレクションチューブ内に浸透させる。液膜油-水エマルションのクッション性のある層は、PTFE細孔性フィルター内に沈殿したままである。
4. 小量の、約1 mlのPBSバッファーを加える。
5. サンプルを400 rpmで30分間遠心分離して、添加したバッファーがコレクションチューブ内に浸透しないことを確定する。
6. 添加したバッファー液量を取り除く
フィルターユニットの図を図11に示すが、この図において(1)はフィルターカップ、(2)はドロー溶液、(3)はコレクションチューブ、(4)は液膜(油相(スクアレン)中の水含有プロテオリポソーム)、(5)はフィード溶液である。たとえば任意の適当なドロー溶液について3 M、ならびに任意の適当なフィード溶液について200 mMといった濃度は、説明目的でのみ示される。
【0133】
フィルターユニットの正浸透への応用
1. Millipore精密濾過フィルター(Millipore Durapore 0.45ミクロン)を、フィルターカップ(直径10 mm、高さ30 mm)内のクッション性のある層の上部に挿入する。
2. クッション性のある層に浸透圧勾配を加える - 高塩濃度の液量、たとえば、3 M塩化カリウム溶液を添加する。
3. フィルターカップを、低浸透圧フィード溶液を満たした新しいコレクションチューブ内に入れる。
4. 経時的にフィルターカップ上部のドローの浸透圧を測定する。
【0134】
図12は、AQP含有LMを対照(AQPなし)と比較して、フィード中に残存する測定された浸透圧の程度を示すグラフである。グラフは、時間経過に伴うドローとフィード溶液間の浸透圧の相違を示す。丸印:AQP液膜、四角印:液膜中にAQPなし。このグラフは、AQP液膜の沈着はAQPなしのLM沈着より高いイオン阻止率を有することを明確に示す。浸透圧は、サンプルバイアル中でサンプル25μlをLab Water(コンダクタンス18.2 Mohm・cmのMilliporeフィルターユニット処理水)で希釈し、Gonotec Osmomat 030 凝固点降下浸透圧計で測定することにより得られる。
【0135】
フィルターユニットの逆浸透への応用
1. Millipore精密濾過フィルター(Millipore Durapore 0.45ミクロン)を、フィルターカップ(直径10 mm、高さ30 mm)内のクッション性のある層の上部に挿入する。濾過すべき一定量のフィード水を、たとえば高い塩濃度または他の浸透圧調節物質濃度で加える。
2. チューブ用の上部出口を有するキャップでフィルターカップを閉じる。
3. 新しいコレクションチューブ内に入れる。
4. 圧力をかける(0.2 barから数barまで)。
5. 透過液を集め、その伝導率もしくは浸透圧を測定する。
【実施例9】
【0136】
UF/NF封入膜の効果に関する正浸透設定、ならびに流束性能に関するPBSフィード/ソルビトールドローの組み合わせの選択
以下の封入およびフィード/ドローの組み合わせをテストすることを目的とした(バッチフローセル)。本発明者らは、PBSドローおよびソルビトールフィード溶液を用いて、UF/NFフィルターで挟んだ封入状態のバッチフローセルにおける、液膜、LM1、フォーミュレーションの正浸透の性能をテストした。本発明者らは、アクアポリン含有サンプル(SoPIP2;1 PLM)、ならびにアクアポリンなしのサンプル(対照LM)をいずれも使用した。結果は図15および16に示す。
【0137】
材料
封入材料:UF(ETNA 10kDa Alfa Laval)/NF(NF-99 Alfa Laval)
フィード/ドロー:PBS/ソルビトール(0.82M)
略号一覧:
PLM:タンパク質液膜、LLM:リポソーム液膜、LM:液膜、LM1:液膜フォーミュレーションおよび標品No.1、SoPIP2;1:ホウレンソウ葉アクアポリン、UF:限外濾過膜、FO:正浸透。
【0138】
ドローおよびフィード溶液
D-ソルビトール(Sigma-Aldrich)のドロー溶液は、18.2 MΩcmの抵抗率を有する純水(Millipore MilliQ system)を用いて調製した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Sigma-Aldrich)をフィードとして使用した。
【0139】
ドローの終濃度は、浸透圧20 barの溶液となる0.82 M D-ソルビトールとした(Morse: Π = iMRTを用いて計算した)。PBSフィード溶液(約150 mM NaCl)は7 barの浸透圧であった。
【0140】
フローセルおよびフィルター
図10に記載のバッチフローセルを使用し、封入フィルターは、標準的な事前調製法にしたがって調製し、組み立てた。
【0141】
フラットシート封入フィルター、名称およびタイプ:NF: NF-99(Alfa Laval)、UF: ETNA 10kDa(Alfa Laval)
液膜サンプル
Aqp-SoPIP2;1液膜(GPV-LM1)、および無タンパク質LM1を実施例3にしたがって調製した。
【0142】
流速および阻止特性
浸透輸送特性の判定は、本明細書の式にしたがって行った。
【0143】
結論
AQP LM正浸透は、D-ソルビトールドロー溶液およびPBSフィード溶液を用いてバッチセルで実証される。最大1.3 kg/m2 hの初期浸透流動速度が、3分後に、UFおよびNF膜について考えられる流動速度を優に上回って測定された。UF/NF(活性のある層(被膜側)はそれぞれフィードおよびドローに向いている)封入法は、実現可能であることが明らかになった。
【0144】
図15は、SoPIP2;1 GPVフォーミュレーションの正浸透流QA、面積標準化流速を示すグラフである。結果は、0.82 M D-ソルビトール溶液をドロー液として、PBSバッファーをフィードとして用いてバッチフローセルで得られた。GPVサンプルは、それぞれドローおよびフィード側に向けて活性フィルター層を有する、UF(フィード側)およびNF(ドロー側)のサンドイッチ構造に組み込まれた。
【0145】
図16:図15について記載された同じ構造を有する、無アクアポリン/空のフォーミュレーションを示す。ある程度の初流速が観察されるが、その後浸透流は観察されない。この構造において、フィード溶液に面するフィルター膜はUFフィルターである。LLM-LM1は浸透流を示さない。
【0146】
この研究は、PLM1-LM1正浸透の性能を、封入膜フィルターならびにドローもしくはフィード溶液を用いて検討した。1つの重要な目的は、本発明のバッチセル設定において正浸透ドローに及ぼす影響が最小限である液膜支持フィルターを識別することであった。液膜を完全な状態に維持する浸透圧的に不活性な封入は、本発明者らが、浸透流をアクアポリンの活性にのみ起因すると考えることを可能にする。
【実施例10】
【0147】
免疫アッセイに使用するため、ならびに感染症における創薬のための、バイオセンサーとしての本発明の液膜系の使用
Fusobadterium nucleatumの主要な外膜タンパク質であるFomAは、三量体タンパク質であって、他の腸内細菌の拡散ポリンと同様の透過性を示す。それぞれのFomA単量体は拡散ポリンに典型的なβバレルモチーフを示し、それは16個の逆平行のβストランドからなる。FomAポリンは、電位依存性チャネルタンパク質として機能する。機能的な液膜に組み込まれたFomAチャネルを有する液膜エマルションは、上記実施例3にしたがって調製することができる。
【0148】
FomAセンサーアッセイは、巨大一枚膜ベシクルアッセイとして構成され、以後、検知をモニターするためのパッチクランプ装置として使用される。こうしたパッチクランプ装置は、たとえば、Port-a-Patchパッチクランプ装置(Nanion Technologies GmbH , Munich, Germany)として開発された自動パッチクランプ装置とすることができる。FomAポリンは、グラム陰性細菌感染症における創薬に、または免疫アッセイに、役立つ可能性のある薬剤標的である。本発明者らの予備的実験によれば、FomAがシクロデキストリンによって阻害される可能性のあることが示された。このことは、FomAについてこれまで報告されていない。FomAのシクロデキストリン阻害に関する特有の特徴は、FomAに基づく確率論的検知アッセイを作製するために応用することができる。抗うつ薬のようなある種の薬物は、シクロデキストリンと結合する可能性があるが(Li-Qun Gu et al 2000)、シクロデキストリンは同じくタンパク質によって検知される可能性があり、そのタンパク質がこの場合FomAである。
【実施例11】
【0149】
AqpZを組み込んだ一枚膜ブロックコポリマーベシクル(プロテオポリマーソーム)
プロテオポリマーソームは、WO2009/076174の実施例2にしたがって、またそのほかの記載のように調製し、プロテオリポソームの代わりにバルク液膜標品として使用した。このバルク液膜は、本発明の正浸透の応用、たとえば本明細書の図10および図11に記載の応用に使用することができる。
【0150】
本発明の液膜は、よく知られているさまざまなコンタクターモジュール、たとえば、フラットシートモジュールおよび中空糸モジュールに使用することができるが、ここに示した使用および応用に限定されない。それに加えて、本発明の液膜は、直接、適当な孔径分布を有する支持層に組み入れることができる。たとえば、約200から400ないし500 nmの平均直径を有する、本明細書に示すプロテオベシクルは、この直径を有するフィルター膜の孔内に取り込まれうる。
【実施例12】
【0151】
血液透析のためのシステムにおける本発明の液膜系の使用
腎臓は、脊椎動物および一部の無脊椎動物も含めて多くの動物で重要な機能を有する臓器である。その機能は、血液から老廃物を取り除くことであり、そういうものとして血液の天然フィルターとなることである。尿を生成することで、腎臓は尿素およびアンモニアなどの排泄物を排出する;腎臓はまた、水、グルコースおよびアミノ酸の再吸収にも関与する。毎日180 Lの水が腎臓に入り、その水の容積のほとんどすべてが回収される(約0.5 Lが排出される)。尿の塩濃度は、血液より4倍高くなることがある。水の再利用および尿中の塩濃度上昇の理由は腎臓の構造およびアクアポリンの機能と関係している。腎臓は、精緻な正浸透システムとして機能する。腎臓において、細い上行脚、太い上行脚および遠位尿細管は、高度に水不浸透性であるのに対して、他の部分は水浸透性である。このことは、腎臓の全体にわたって塩濃度勾配を生じさせ、その濃度勾配が、正常な腎機能に必要な浸透プロセスのための駆動力となる。
【0152】
これに関連して、アクアポリンは、遠位尿細管および集合尿細管に豊富である。後者は、水の再吸収および血液より高い尿の塩濃度に関与する。腎不全では、腎臓は適切に機能することができず、数多くの医学的問題の原因となることが考えられる。血液透析は、イオン(たとえば、K+およびPO43-)および尿素などの老廃物、ならびに自由水を腎不全患者の血液から除去するための、医学的方法である。
【0153】
血液透析では、滅菌された無機イオンの透析溶液が正浸透プロセスに使用され、半透膜を通して前記老廃物が除去される。しかしながら、余分な水が同時に血液から取り除かれるので、これを補充しなければならない。したがって、血液透析には精製水が必要である。さらに、透析患者は、透析液濃縮物と混合して透析液を形成する、大量の水にさらされるが、この場合、微量の無機夾雑物もしくは細菌内毒素が患者の血液に浸透する可能性がある。非常に低濃度の金属イオン、たとえばガラス製品に由来するアルミニウムイオン、であっても、低レベルの内毒素であっても、すべてこの点で問題を引き起こしている。こうした理由で、血液透析に使用される水は、使用前に注意深く精製される。1つの精製ステップは、微細孔性逆浸透膜に水を強制通過させることを含む。このようにして、電解質などの小さな溶質が濾過により取り除かれる。残った電解質の最終的な除去は、水を、イオン交換樹脂を備えたタンクに通すことによって行うことができるが、このイオン交換樹脂は、残った陰イオンもしくは陽イオンをいずれも除去し、それぞれ水酸分子および水素分子と置き換えて、超純水が残される。
【0154】
この程度の水精製でも不十分である可能性がある。最近の傾向は、上記最終精製水を(透析液濃縮物と混合後)透析膜に通すことになっている。これは、元の水精製システムを通した後に水中に蓄積した可能性のある、特に細菌起源の不純物を除去することで、いっそうの防御をもたらす。
【0155】
血液透析法の改善において、本発明の液膜系の少なくとも2つの有用な応用がある:
1. 本明細書に記載の超純水の製造は、血液透析で使用されている水精製のための非常に複雑なシステムに置き換えることができる。
2. 患者の血漿に由来する大量の水が同時に除去される、上記の正浸透プロセスの後、本明細書に記載の任意の方法においてアクアポリン液膜を用いて、これを抽出することができる。この目的のために、塩濃度勾配および対向流を、正常な腎機能を模して、本発明の液膜を横切って生じさせ、次に正浸透プロセスに必要な駆動力を構成する(図21参照)。これは、患者自身の血漿水分の再利用を保証し、いかに精製されていようとも外部の水の中に存在する夾雑物からのリスクを排除する。
【0156】
上記の本発明は、明確さおよび理解のために少し詳しく説明したが、外形および細目のさまざまな変更を行うことができることは、当業者にとって、この明細書の読み取りから明白であろう。たとえば、上記の技術および装置はすべて、さまざまに組み合わせて使用することができる。本出願に引用されたあらゆる公表文献、特許、特許出願、および/または他の文書は、それぞれ個別の公表文献、特許、特許出願、および/または他の文書が、あらゆる目的のために、参考として含められると個別に指示されるならば、その同じ程度まで、あらゆる目的のために、参考としてその全体を含めるものとする。
【0157】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体チャネル含有バルク液膜(BLM)、生体チャネル含有乳化型液膜(ELM)、および生体チャネル含有支持(固定化)液膜(SLM)、またはそれらの組み合わせの形をとる液膜系であって、この液膜系が、生体チャネルが組み込まれた二分子膜を形成する、1つもしくは複数の両親媒性化合物から形成されるベシクルを含んでなり、ベシクルはさらに安定化油相を含有している、前記液膜系。
【請求項2】
前記生体チャネルがアクアポリン水チャネルである、請求項1に記載の液膜系。
【請求項3】
生体チャネルが、窒化ホウ素ナノチューブ、カーボンナノチューブ、αヘモリシンならびにOmpG、FomA、およびVDACのような膜貫通チャネル分子βバレル孔を含む両親媒性ポア形成分子;膜貫通ペプチド孔、アラメチシン、バリノマイシン、およびグラミシジンA(それらの誘導体を含む)、ならびに合成ペプチド;イオンチャネル、およびイオン選択性イオノフォアからなる一群から選択される、請求項1に記載の液膜系。
【請求項4】
両親媒性化合物が脂質である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の液膜系。
【請求項5】
油相が、ステロール、スクアレン、スクアラン、αトコフェロール、ホパノイド、イソプレン(エステル化されたドリコールを含める)、ユビキノン(Q10)、ホホバ油、軽油、亜麻仁油、大豆油、ピーナッツ油、リン脂質で安定化されたスクアレンもしくは大豆油、リン脂質およびグリセリンのエマルション、ならびに、アルカン、たとえばデカン、ウンデカン、ドデカン;およびそれらの混合物からなる一群から選択される成分を含有する、請求項1〜4のいずれか1つに記載の液膜系。
【請求項6】
生体チャネルが、ベシクル表面積に対して1%から約70%までの割合で含まれる、請求項1〜5のいずれか1つに記載の液膜系。
【請求項7】
ベシクルが、最大1000μmの概算最大直径を有する、請求項1〜6のいずれか1つに記載の液膜系。
【請求項8】
水性液体から水を抽出する方法であって、下記のステップ:
a) 請求項1〜7のいずれか1つに記載の液膜系の一定量を、ベシクルより小さい浸透圧を有する第1の水性液体に入れて混合し、懸濁液とするステップ、
b) 前記懸濁液中のベシクルに、前記の第1の液体から純水を吸収させて、浸透圧勾配が存在する限り膨張させるステップ、
c) 膨らんだベシクルを第1の液体から分離するステップ、ならびに
d) ステップc)から得られた当該ベシクルを、その膨らんだベシクルの圧力を上回る浸透圧を有する第2の水性液体中に再懸濁して、ベシクル中に抽出された水が、浸透圧勾配が存在する限り前記第2の液体に流入してそれを希釈することを可能にし、ベシクルを非膨張状態とするステップ、
を含んでなる、前記方法。
【請求項9】
前記第1の水性液体が、天然水源、たとえば海水、河川水、湖水、汽水、雨水;アクアポリン水チャネルに対して毒性のない廃水;ならびにワイン、果汁および野菜汁、乳、全血、血漿、尿、唾液、汗、およびホモジナイズされた組織を含む生物学的液体からなる一群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
膨潤したベシクルを第1の液体から分離するステップが、遠心分離もしくは濾過によって行われる、請求項7または8に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が海水の脱塩のために用いられ、この海水がフィードすなわち第1の水性液体となり、CO2/NH3含有水溶液がドロー溶液すなわち第2の水性液体となる、請求項8〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の1つもしくは複数の液膜を含んでなる、水性液体媒体から純水抽出するための装置。
【請求項13】
前記装置が、2モジュール中空糸支持液膜コンタクターモジュール、または液体セルエキストラフロー膜コンタクターである、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
水性分散系において、本質的に両親媒性脂質、膜貫通型タンパク質チャネル、および油からなる無溶媒巨大タンパク質ベシクルであって、この脂質対タンパク質モル比が約1:50から約1:400までの範囲である、前記無溶媒巨大タンパク質ベシクル。
【請求項15】
請求項14に記載の巨大タンパク質ベシクルを含んでなる組成物。
【請求項16】
水性分散系において、本質的に、両親媒性脂質、膜貫通型タンパク質チャネル、および油からなる巨大タンパク質ベシクルを調製する方法であって、この脂質対タンパク質モル比は、約1:50から約1:400までの範囲にあり、その方法は次のステップ、すなわち
a) 界面活性剤含有バッファー中で再水和され、孔径約100 nmから約500 nmまでのフィルターを通して押し出された乾燥脂質溶液から、リポソームを調製するステップ、
b) a) から得られたリポソームを、膜貫通型タンパク質溶液と混合するステップであって、このタンパク質が必要に応じて蛍光標識と結合していてもよい、前記ステップ、
c) 約10 kDaの分子量カットオフで、b) から得られた混合物を一晩透析するステップ、
d) c) で形成されたプロテオリポソームベシクルを、たとえば遠心によって分離するステップ、
e) ベシクル膜中の膜貫通型タンパク質の正しい挿入を実証するために、必要に応じて、形成されたGPVの、使用された蛍光標識と適合可能な吸収スペクトルを得るステップ、ならびに、
f) ステップd) で得られたプロテオリポソームを、ステップa) と同じ脂質を含有する油相溶液中の脂質と、たとえば約1:3 v/vから約1:12 v/vまでのモル比で、混合するステップ
を含んでなり、結果としてプロテオリポソームからのGPVの生成をもたらす、前記方法。
【請求項17】
水性分散系において、本質的に、両親媒性脂質、膜貫通型タンパク質チャネル、および油からなる巨大タンパク質ベシクルを調製する方法であって、この脂質対タンパク質モル比は、約1:50から約1:400までの範囲にあり、その方法が、転倒ミキシング後の、前記両親媒性脂質、膜貫通型タンパク質チャネル、および油の水性混合物からのベシクル自己組織化を含む、前記方法。
【請求項18】
前記脂質がアゾレクチンである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記脂質がDOPC、DPhPCもしくはDOPS、または大腸菌(E. coli)全脂質抽出物もしくはダイズ混合リン脂質のような天然脂質抽出物、あるいはそれらを組み合わせた混合物である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項20】
前記膜貫通型タンパク質が、SoPIP2;1およびAqpZなどのアクアポリン、;ならびにFomAなどの膜貫通型タンパク質から選択される、請求項16〜19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
前記膜貫通型タンパク質が蛍光標識と結合している、請求項16から20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
前記蛍光標識が、本明細書の表1に記載のようなナフタレン誘導体、もしくはそれらの蛍光機能性誘導体である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ナフタレン誘導体が、6-ブロモアセチル-2-ジメチルアミノナフタレンである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
正浸透による水抽出のための、請求項16〜23のいずれか1つの方法にしたがって調製された巨大タンパク質ベシクルの使用。
【請求項25】
血液透析により失われた患者の血漿から純水を再抽出するための、請求項16〜24のいずれか1つの方法にしたがって調製された巨大タンパク質ベシクルの使用。
【請求項26】
開いた、または閉じたサンドイッチ構造を有する支持液膜であって、実質的に平らな多孔質フィルター材が、プロテオリポソーム層の片側もしくは両側で支えとなり、それによってその層を固定化している、前記支持液膜。
【請求項27】
アクアポリン含有プロテオリポソームもしくは巨大タンパク質ベシクルの層を、限外濾過膜、ナノ濾過膜および精密濾過膜から選択されるフィルター材料の間に挟むことにより作製される、複合フィルター膜もしくはディスク。
【請求項1】
生体チャネル含有バルク液膜(BLM)、生体チャネル含有乳化型液膜(ELM)、および生体チャネル含有支持(固定化)液膜(SLM)、またはそれらの組み合わせの形をとる液膜系であって、この液膜系が、生体チャネルが組み込まれた二分子膜を形成する、1つもしくは複数の両親媒性化合物から形成されるベシクルを含んでなり、ベシクルはさらに安定化油相を含有している、前記液膜系。
【請求項2】
前記生体チャネルがアクアポリン水チャネルである、請求項1に記載の液膜系。
【請求項3】
生体チャネルが、窒化ホウ素ナノチューブ、カーボンナノチューブ、αヘモリシンならびにOmpG、FomA、およびVDACのような膜貫通チャネル分子βバレル孔を含む両親媒性ポア形成分子;膜貫通ペプチド孔、アラメチシン、バリノマイシン、およびグラミシジンA(それらの誘導体を含む)、ならびに合成ペプチド;イオンチャネル、およびイオン選択性イオノフォアからなる一群から選択される、請求項1に記載の液膜系。
【請求項4】
両親媒性化合物が脂質である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の液膜系。
【請求項5】
油相が、ステロール、スクアレン、スクアラン、αトコフェロール、ホパノイド、イソプレン(エステル化されたドリコールを含める)、ユビキノン(Q10)、ホホバ油、軽油、亜麻仁油、大豆油、ピーナッツ油、リン脂質で安定化されたスクアレンもしくは大豆油、リン脂質およびグリセリンのエマルション、ならびに、アルカン、たとえばデカン、ウンデカン、ドデカン;およびそれらの混合物からなる一群から選択される成分を含有する、請求項1〜4のいずれか1つに記載の液膜系。
【請求項6】
生体チャネルが、ベシクル表面積に対して1%から約70%までの割合で含まれる、請求項1〜5のいずれか1つに記載の液膜系。
【請求項7】
ベシクルが、最大1000μmの概算最大直径を有する、請求項1〜6のいずれか1つに記載の液膜系。
【請求項8】
水性液体から水を抽出する方法であって、下記のステップ:
a) 請求項1〜7のいずれか1つに記載の液膜系の一定量を、ベシクルより小さい浸透圧を有する第1の水性液体に入れて混合し、懸濁液とするステップ、
b) 前記懸濁液中のベシクルに、前記の第1の液体から純水を吸収させて、浸透圧勾配が存在する限り膨張させるステップ、
c) 膨らんだベシクルを第1の液体から分離するステップ、ならびに
d) ステップc)から得られた当該ベシクルを、その膨らんだベシクルの圧力を上回る浸透圧を有する第2の水性液体中に再懸濁して、ベシクル中に抽出された水が、浸透圧勾配が存在する限り前記第2の液体に流入してそれを希釈することを可能にし、ベシクルを非膨張状態とするステップ、
を含んでなる、前記方法。
【請求項9】
前記第1の水性液体が、天然水源、たとえば海水、河川水、湖水、汽水、雨水;アクアポリン水チャネルに対して毒性のない廃水;ならびにワイン、果汁および野菜汁、乳、全血、血漿、尿、唾液、汗、およびホモジナイズされた組織を含む生物学的液体からなる一群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
膨潤したベシクルを第1の液体から分離するステップが、遠心分離もしくは濾過によって行われる、請求項7または8に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が海水の脱塩のために用いられ、この海水がフィードすなわち第1の水性液体となり、CO2/NH3含有水溶液がドロー溶液すなわち第2の水性液体となる、請求項8〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の1つもしくは複数の液膜を含んでなる、水性液体媒体から純水抽出するための装置。
【請求項13】
前記装置が、2モジュール中空糸支持液膜コンタクターモジュール、または液体セルエキストラフロー膜コンタクターである、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
水性分散系において、本質的に両親媒性脂質、膜貫通型タンパク質チャネル、および油からなる無溶媒巨大タンパク質ベシクルであって、この脂質対タンパク質モル比が約1:50から約1:400までの範囲である、前記無溶媒巨大タンパク質ベシクル。
【請求項15】
請求項14に記載の巨大タンパク質ベシクルを含んでなる組成物。
【請求項16】
水性分散系において、本質的に、両親媒性脂質、膜貫通型タンパク質チャネル、および油からなる巨大タンパク質ベシクルを調製する方法であって、この脂質対タンパク質モル比は、約1:50から約1:400までの範囲にあり、その方法は次のステップ、すなわち
a) 界面活性剤含有バッファー中で再水和され、孔径約100 nmから約500 nmまでのフィルターを通して押し出された乾燥脂質溶液から、リポソームを調製するステップ、
b) a) から得られたリポソームを、膜貫通型タンパク質溶液と混合するステップであって、このタンパク質が必要に応じて蛍光標識と結合していてもよい、前記ステップ、
c) 約10 kDaの分子量カットオフで、b) から得られた混合物を一晩透析するステップ、
d) c) で形成されたプロテオリポソームベシクルを、たとえば遠心によって分離するステップ、
e) ベシクル膜中の膜貫通型タンパク質の正しい挿入を実証するために、必要に応じて、形成されたGPVの、使用された蛍光標識と適合可能な吸収スペクトルを得るステップ、ならびに、
f) ステップd) で得られたプロテオリポソームを、ステップa) と同じ脂質を含有する油相溶液中の脂質と、たとえば約1:3 v/vから約1:12 v/vまでのモル比で、混合するステップ
を含んでなり、結果としてプロテオリポソームからのGPVの生成をもたらす、前記方法。
【請求項17】
水性分散系において、本質的に、両親媒性脂質、膜貫通型タンパク質チャネル、および油からなる巨大タンパク質ベシクルを調製する方法であって、この脂質対タンパク質モル比は、約1:50から約1:400までの範囲にあり、その方法が、転倒ミキシング後の、前記両親媒性脂質、膜貫通型タンパク質チャネル、および油の水性混合物からのベシクル自己組織化を含む、前記方法。
【請求項18】
前記脂質がアゾレクチンである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記脂質がDOPC、DPhPCもしくはDOPS、または大腸菌(E. coli)全脂質抽出物もしくはダイズ混合リン脂質のような天然脂質抽出物、あるいはそれらを組み合わせた混合物である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項20】
前記膜貫通型タンパク質が、SoPIP2;1およびAqpZなどのアクアポリン、;ならびにFomAなどの膜貫通型タンパク質から選択される、請求項16〜19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
前記膜貫通型タンパク質が蛍光標識と結合している、請求項16から20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
前記蛍光標識が、本明細書の表1に記載のようなナフタレン誘導体、もしくはそれらの蛍光機能性誘導体である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ナフタレン誘導体が、6-ブロモアセチル-2-ジメチルアミノナフタレンである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
正浸透による水抽出のための、請求項16〜23のいずれか1つの方法にしたがって調製された巨大タンパク質ベシクルの使用。
【請求項25】
血液透析により失われた患者の血漿から純水を再抽出するための、請求項16〜24のいずれか1つの方法にしたがって調製された巨大タンパク質ベシクルの使用。
【請求項26】
開いた、または閉じたサンドイッチ構造を有する支持液膜であって、実質的に平らな多孔質フィルター材が、プロテオリポソーム層の片側もしくは両側で支えとなり、それによってその層を固定化している、前記支持液膜。
【請求項27】
アクアポリン含有プロテオリポソームもしくは巨大タンパク質ベシクルの層を、限外濾過膜、ナノ濾過膜および精密濾過膜から選択されるフィルター材料の間に挟むことにより作製される、複合フィルター膜もしくはディスク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2012−529984(P2012−529984A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515555(P2012−515555)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001191
【国際公開番号】WO2010/146365
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511307085)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001191
【国際公開番号】WO2010/146365
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511307085)
【Fターム(参考)】
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