説明

生体治癒力向上装置及び生体治癒力向上装置の作動法

【課題】 本生体の自然な治癒力を向上させる刺激を良好に与えることができる生体治癒力向上装置を得る。
【解決手段】 常圧を下回る減圧環境下に被験者を保持する減圧室と、減圧室内の被験者に酸素濃度を大気中の酸素濃度よりも増加させて供給する酸素供給手段と、酸素供給手段により被験者に供給される酸素を常圧時の酸素分圧以上の酸素濃度となるように供給制御する酸素供給制御手段とを備えたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧環境下における酸素濃度の増減を利用した生体治癒力向上装置に関し、更に、生体治癒力向上装置の作動法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者は温度差による刺激を利用した空気浴を行うために最適な調圧装置及び調圧法を提案した(特許文献1参照)。更に、この調圧装置で生じる閾値気圧以上の減圧状態と常圧又は前記減圧状態よりも高く常圧よりも低い広範常圧状態との間を連続的に繰り返す刺激によって、異常な身体組織、身体器官等を、健康な身体組織、身体器官に戻そうとするヒト治癒力効果の作用を確認してヒト治癒能力向上装置を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4477690号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、この自然治癒力効果は、調圧装置で生じる閾値気圧以上の減圧状態と常圧又は前記減圧状態よりも高く常圧よりも低い広範常圧状態との間を連続的に繰り返す刺激によって、異常な身体組織、身体器官等を、健康な身体組織、身体器官に戻そうとするより大きな自然な治癒力向上能であることを確信した。
【0005】
更に、この生体治癒力向上能の作用効果を検証するに際して、生体治癒力向上能の別のアプローチがあることを確認したため、本発明をなすに至った。
【0006】
即ち、本発明は、生体の自然な治癒力を向上させる刺激を良好に与えることができる生体治癒力向上装置を得ることを目的とする。また、この刺激を与える装置を良好に作動させる方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明に係る生体治癒力向上装置は、常圧を下回る減圧環境下に被験者を保持する減圧室と、
減圧室内の被験者に酸素濃度を大気中の酸素濃度よりも増加させて供給する酸素供給手段と、
酸素供給手段により被験者に供給される酸素を常圧時の酸素分圧以上の酸素濃度となるように供給制御する酸素供給制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載された発明に係る生体治癒力向上装置は、請求項1に記載の減圧室の減圧環境が高度1000〜3000mの減圧状態に相当することを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載された発明に係る生体治癒力向上装置は、請求項1又は2に記載の前記酸素供給制御手段が、酸素供給手段により被験者に供給される酸素を常圧時の常圧酸素濃度と、常圧時の酸素分圧の2倍以下の高酸素濃度とを繰り返す供給制御することを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載された発明に係る生体治癒力向上装置の作動法は、常圧を下回る減圧環境下に被験者を保持する減圧室と、減圧室内の被験者に酸素濃度を大気中の酸素濃度よりも増加させて供給する酸素供給手段と、酸素供給手段により被験者に供給される酸素を常圧時の酸素分圧以上の酸素濃度となるように供給制御する酸素供給制御手段とを備えた生体治癒力向上装置の作動法であって、
常圧を下回る減圧環境下に被験者を保持させた後、被験者に常圧時の酸素分圧以上の濃度とした空気を供給することを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に記載された発明に係る生体治癒力向上装置の作動法は、請求項4に記載の常圧を下回る減圧環境下に被験者を保持させた後、被験者に常圧時の酸素分圧の常圧酸素濃度と、常圧時の酸素分圧の2倍以下の高酸素濃度とを繰り返し変化する空気を供給することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、生体の自然な治癒力を向上させる刺激を良好に与えることができる生体治癒力向上装置及び生体治癒力向上装置の作動法を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】減圧工程と与圧工程とを連続的に繰り返し制御した場合の呼気中の酸素利用率の変化を示す線図である。
【図2】本発明の生体治癒力向上装置の一実施例の構成を示す正面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図2の側面図である。
【図5】図2の制御装置の駆動を示すフローチャートであり、a図は減圧工程を示すフローチャートであり、b図は酸素供給工程を示すフローチャートである。
【図6】生体治癒力向上効果の検証結果を示す線図である。
【図7】生体治癒力向上効果の別の検証結果を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の生体治癒力向上装置においては、常圧(即ち、標準大気圧(1気圧(1013hPa)))を下回る減圧環境下に被験者を保持する減圧室と、減圧室内の被験者に酸素濃度を大気中の酸素濃度よりも増加させて供給する酸素供給手段と、酸素供給手段により被験者に供給される酸素を常圧時の酸素分圧(即ち、0.21気圧、213hPa)以上の酸素濃度となるように供給制御する酸素供給制御手段とを備える。これにより、生体の自然な治癒力を向上させる刺激を良好に与えることができる。尚、気密室内の室温は被験者にとって居心地の良い気温とし、具体的には20℃〜25℃の範囲を外れることがないようにする。
【0015】
本発明で付言した「生体治癒力」とは、正常でない状態を生体が本来持っている回復機能によって健康な状態に戻そうとする力を指し、血液等の体液成分、血圧を始めとして、体組織の損傷の修復、病原微生物やウイルスといった異物(非自己)の排除等の異常な環境を、安定な状態に戻し、治癒することを指す。より詳しくは、身体の諸機能の障害や健康でない異常状態等の疾病を正常な状態に治癒しようとする働きを指す。従って、「生体治癒力の向上」とは、自然な治癒力自体を向上させることを指し、正常でない状態であることを素早く認識する反応の速さ、そして、正常な状態に戻そうとする応答の速さ等をより向上させることも含む。
【0016】
例えば、健常細胞ではない腫瘍細胞の縮小及び消滅、リューマチ等の免疫系の過敏症の改善、健常な骨組織ではない骨粗鬆症の改善、糖代謝の異常の改善等が含まれ、更には、異常血圧の改善、血栓の溶解、血栓の溶解による狭心症・脳血栓・脳内出血の予防、脳血流の改善による認知症の改善等も含まれるものと思われる。
【0017】
本発明において、減圧上環境下において酸素濃度を上昇させることによる生体治癒力向上効果の詳細な作用機構(作用機序)はこれからの検証及びデータの蓄積等によって解明されるものと思われるが、作用機構の仮説を考慮した。
【0018】
仮説.低酸素による防御機構
生体の「防御機構」は、低地から高地に向かう場合(即ち、酸素濃度の低いほうに向かう場合)は、その低地から高地への移動中において絶えず理論値(平地での酸素利用量と同じ酸素量)よりも多い酸素量を得るように作用すると考えられる。このことは、常圧状態から減圧状態への移動速度を変えても体温の上昇は認められることから「ATP」の産生が増加していると判断される。
【0019】
逆に、高地から低地に向かう場合(即ち、酸素濃度の低い方から通常に向かう場合)は、酸素濃度の高い方、即ち、細胞にとってもATPを作りやすい方向であるため「防御機構」はゆっくりと作用する。従って、理論値と移動速度がほぼ一致する条件がある。ATPの増産を狙うためにはこれより速い移動速度にする必要がある。言いかえれば、速ければ速いほどATPは産生しやすい結果となる。
【0020】
図1は減圧工程と与圧工程とを連続的に繰り返し制御した場合の呼気中の酸素利用率の変化を示す線図である。本仮説では、安静時の肺呼吸による、呼気中の酸素の利用率に着目した。エネルギー代謝から考慮すると「ATP」産生のためにはヘモグロビンの運ぶ酸素量は常に一定量が供給されなければならない。
【0021】
即ち、平地において呼気中の25.0%に当たる酸素を利用していると仮定すると、例えば1000mの高度では酸素濃度が10%低下するので、これを補うために呼気中の27.8%の酸素を利用すると考えられる。同様に2000mの高度では平地における25.0%に対して31.3%を利用すると考えられる。これはすべて被験者の「防御機構」の働きで決定すると考えられる。
【0022】
この場合、3000mの高度ぐらいまでは呼気中の酸素量に余裕があるので変換可能だが、それ以上に酸素が薄くなるとヘモグロビンに対する酸素の吸着量に個人差が生じ低酸素障害がおこる場合がある。ここでこの生体の「防御機構」の発動は圧力により生じるものと思われた。
【0023】
即ち、空気の圧力が低下することにより、空気中の酸素分圧自体が低減し、生体内で低酸素のよる「防御機構」が発動するものと思われた。そのため、このような低圧状態に生体を曝した上で、高濃度の酸素雰囲気とした場合に、高濃度の酸素がミトコンドリアに送られ、結果としてATPの増産が期待できる。増産されたATPにより体温の上昇がみられることになる。産生が高まったATPにより、自然な治癒力向上効果が得られたものと考えられる。
【0024】
本発明における減圧室の減圧環境としては、前記「防御機構」の発動が生じる減圧状態よりも低い気圧であり、減圧室内の被験者の健康が脅かされない減圧状態よりも高い気圧であればよい。「防御機構」の発動が生じる減圧状態は、厳密には被験者によって個人差があり、正確な気圧は計測はできないと思われるが、高度1000mであれば、ほぼ全ての被験者の「防御機構」が発動するものと思われる。
【0025】
また、被験者の健康が脅かされない減圧状態の閾値においても、個人差があり、健常者や、疾病を患った者に応じてその気圧の閾値は変化する。更に、経験によって閾値を下げることもできるし、逆に体調によって閾値が高まることがある。一般的に航空機内の与圧キャビンでは、高度12000mにおいては、高度2000m内外の気圧状態(約780hPa)に設定されており、疾病を患った者でも利用可能である。従って、一般的な健康な被験者の閾値は、少なくとも高度2000mを越えて、高度約3000m以下の700hPa以上とし、好ましくは高度2000m(約795hPa)とする。
【0026】
本発明における酸素供給手段としては、減圧室内の被験者に酸素濃度を大気中の酸素濃度よりも増加させて供給するものであればよく、具体的には、減圧室内に外気を取入る際に酸素ボンベから酸素を添加したり、外気を減圧室内に取入る際に、酸素分離膜によって、空気中にある酸素とそれ以外の物質を分離させて別の取入口から取入た外気に添加して酸素濃度を向上させたりする。減圧室内全体の空気を均一に酸素を添加しても良く、減圧室内の被験者の各々に対して空気を供給するマスク内の酸素分圧を揚げるように構成しても良い。後者の方が供給される酸素の量が少量で済む利点がある。
【0027】
また、酸素供給制御手段としては、具体的には、酸素供給手段により被験者に供給される酸素を常圧時の酸素分圧以上の酸素濃度となるように供給制御する。何れにしても、被験者が滞在する減圧室内の気圧を常圧を下回る減圧環境下に保持し、減圧室内の被験者に、酸素を常圧時の酸素分圧以上の濃度とした空気を供給するように構成されればよい。
【0028】
酸素を常圧時の酸素分圧以上の濃度とした空気としては、最も高い濃度としては、常圧時の酸素分圧の2倍を超えない濃度とする。あまりに高濃度の酸素は被験者の肺に損傷を起こす場合があるためである。逆に、被験者に供給する空気中の酸素分圧の最も低い濃度としては、常圧時の酸素分圧を下回らない濃度とする。常圧時の酸素分圧は0.21気圧に該当するが、本発明は1気圧を下回る減圧環境下に被験者を保持させるため、この酸素濃度を下回ると、吐き気・めまい等の種々の酸素欠乏の症状が生じる場合があるためである。
【0029】
本発明の生体治癒力向上装置では、気密部内に入った生体の自然な治癒力を向上させるための他の種々の手段を1つ以上備えても良い。例えば、減圧状態において低下する気密部内の湿度を付与するための加湿手段を更に備えたり、減圧状態において低下する気密部内の温度を付与するための加温手段を更に備えたり、気密部内のマイナスイオンを増やすためのマイナスイオン付与手段を更に備えたりしても良い。
【0030】
方法に係る本発明においては、常圧を下回る減圧環境下に被験者を保持させた後、被験者に常圧時の酸素分圧以上の濃度とした空気を供給することにより、生体治癒力向上装置を作動することができる。
【0031】
本発明における生体治癒力向上装置としては、気密可能な気密部と、この気密部の排気口に連通して気密部内の気圧を減圧する減圧ポンプと、気密部の気圧が予め定められた閾値気圧を下回る過減圧となることを防止する過減圧防止装置とを備えるものであればよい。尚、本発明における気密部は常圧(標準大気圧)以上に積極的に加圧する場合は想定しないが、常圧を若干超える程度の加圧は誤差範囲として当然あり得る。
【0032】
本発明の気密部としては、閾値気圧以上の減圧状態と、常圧又は前記減圧状態よりも高く常圧よりも低い広範常圧状態との間を圧力変化することに耐えられる気密部を備えるものであればよい。気密部を構成する素材としては、気密性を保ち、前記減圧状態と広範常圧状態との圧力変化に耐えられるものであればよく、金属、樹脂、木等の単独或いは複数を組み合わせて作成される。
【実施例】
【0033】
実施例1:生体治癒力向上装置の構成
図2は本発明の生体治癒力向上装置の一実施例の構成を示す正面図である。図3は図2の平面図である。図4は図2の側面図である。図に示す通り、本実施例の生体治癒力向上装置10は複数のパネル板30で構成された気密部11と、この気密部11の内側に一端を開放した排気管12に連通する減圧ポンプ13と、気密部11内の排気管12と対向する位置に一端を開放した給気管14の他端部にはフィルター15を気密部11の外方に取付けられている。
【0034】
気密部11の外観は、略同一の大きさの複数枚のパネル板30で構成された筐体である。本実施例では、14枚のパネル板によって構成されている。正面及び背面(図示せず)には、中央部に2つの窓33が備わった気密扉32が配された出入り口パネル31が用いられている。両側面には各々に2つの窓33が備わった3枚の側面パネル34が連結されて用いられている。天井面には3枚の天井パネル35が連結されて用いられている。床面には天井面と同様に3枚の床パネル36が連結されて用いられている。
【0035】
尚、図示はしていないが、各々のパネル板30は、矩形の4辺を取り巻くようにリム部が立設されており、リム部によってパネル板30同士又は接合部材を介して隣接するパネル板30が連結する構成となっている。接合されるパネル板30のリム部間又はパネル板のリム部と接合部材との間には弾性ゴム板を介在させて連結することにより、連結部間の気密性を保つ。
【0036】
正面の出入り口パネル31の一側部には給気管14が配されており、この給気管14の途中には、圧力調節弁16が取付けられ、圧力調節弁16の開度によって生ずる圧力損失を調節することによって、フィルター15を通過した外気が気密部11内の気圧に応じて連続的に自然吸入される。この圧力調節弁16の開度は後述する減圧制御装置22によって行われる。尚、圧力調節弁16は完全に閉塞することはできない構造であり、これにより酸欠防止手段として機能する。
【0037】
給気管14の途中には、酸素供給制御装置24を介して酸素供給手段としての酸素ボンベ23に連通した酸素供給管25が合流されている。給気管14は常に外気を気密部11内に給気しているが、この外気に更に供給される酸素ボンベ23内の酸素を制御装置24が制御する。
【0038】
正面の出入り口パネル31の他側部には排気管12が配されており、この排気管12の途中には排気用電磁弁17が取付けられ、その減圧ポンプ13側には分岐管18及び外気用電磁弁19を介して外気に連通する過減圧防止配管20が配されている。更に、気密部11には内部の気圧を計測する圧力センサ21が多数配されており、気密部11内の気圧が何らかの異常により、予め設定した閾値を下回った場合には、減圧ポンプ13が停止され、外気用電磁弁19が開放し、外気が吸入されることによって過減圧を防止することができる。
【0039】
減圧ポンプ13の上部には、減圧ポンプ13の駆動を制御する減圧制御手段としての減圧制御装置22が配されており、気密部11の圧力センサ21の数値もこの減圧制御装置22に入力され、前記電磁弁17,19の駆動及び圧力調節弁16の開度も制御する。
【0040】
図5は図2の制御装置の駆動を示すフローチャートであり、a図は減圧工程を示すフローチャートであり、b図は酸素供給工程を示すフローチャートである。a図に示す通り、減圧工程では、減圧制御装置22によって、減圧ポンプ13が駆動される。尚、この際には、外気用電磁弁19を閉塞し、排気用電磁弁17を開放した上で行われることは言うまでもない。
【0041】
減圧ポンプ13の駆動の際には、圧力調節弁16の開度を最小の開度にし、速やかな減圧が行われるようにし、減圧ポンプ13の駆動中は気密部11の圧力センサ21によって内部の気圧を定時的にチェックし、予め設定しておいた目標減圧値となっているのかを判断し、目標減圧値となった場合には減圧ポンプ13を停止する。尚、減圧ポンプ13を停止する際には排気用電磁弁17を閉塞して気密部11の内部の気圧を保持する。
【0042】
また、圧力調節弁16は閉塞されない構造となっているため、減圧ポンプ13の駆動が停止した場合には、徐々に圧力が上昇する。そのため、目標の減圧状態を長く保持する場合には、目標の圧力を基準にして一定の圧力が上昇したら、排気用電磁弁17を開放して再度減圧ポンプ13を駆動制御する。
【0043】
気密部11内の気圧が減圧状体となった後に、気密部11内の被験者に供給される酸素を常圧時の酸素分圧以上の酸素濃度となるように供給される。b図に示す通り、酸素供給工程では、酸素制御装置24内の酸素供給管25へ酸素ボンベ23の酸素を供給する酸素供給弁を開放しつつ、気密部11内に外気を供給する給気管14の酸素濃度計26と、圧力センサ21とにより、酸素分圧が計測される。予め設定しておいた目標酸素分圧値となっているのかを判断し、目標分圧値となった場合には酸素制御装置24内の酸素供給弁の開度を最小に搾ることにより、目標の酸素分圧を気密部11内の被験者に供給することができる。
【0044】
尚、本実施例の気密部11の室内には、必要に応じて、照明、エアコン、床暖房、CDプレイヤー、テレビ等の被験者の居室を快適にする装置を備えてもよい。尚、エアコンについては、気密部の室内のドレインは室内に排出するように気密性を確保する必要がある。
【0045】
実施例2:生体治癒力向上効果の検証
低酸素による防御機構に示す通り、低圧状態に曝された生体では、空気の圧力が低下することにより、空気中の酸素分圧自体が低減し、生体内で低酸素のよる「防御機構」が発動すると考えられ、低圧状態に生体を曝した上で、高濃度の酸素雰囲気とした場合に、高濃度の酸素がミトコンドリアに送られ、結果としてATPの増産が期待できる。このため、産生が高まったATPにより、自然な治癒力向上効果が得られると考える。
【0046】
ATPの産生が高まることにより、体温の上昇が見られることにより、本発明の生体治癒力向上装置の効果の検証として、掌(手のひら)の体温を計測した。以下の検証データは、被験者を高度2000m程度の低圧状態に曝した後に、低圧状態での酸素分圧を上昇させた場合の掌の温度を経時的に計測したものである。
【0047】
【表1】

【0048】
具体的には、生体治癒力向上効果の検証結果として、表1及び図6に示す通り、図2〜図4に示す生体治癒力向上装置の気密部内に被験者が入った上で、気密部内の空気を減圧した。9分後に高度2000m程度の低圧状態(795hPa、酸素分圧167hPa)となったことを確認してこれを維持した。また、外気に酸素を追加した空気を被験者にマスクで供給した。尚、気密部内の気温は20℃〜25℃以内であった。
【0049】
20分後にほぼ一定の酸素分圧が被験者に与えられることが確認され、この状態のまま45分までこれを維持した。その後、5分間でマスクを外すと同時に減圧状態を常圧状態とした。以上の過程を行っている際に、掌の温度を経時的に計測した。尚、掌の温度は皮膚赤外線体温計(商品名:サーモフォーカス プロ )で行った。
【0050】
【表2】

【0051】
別の生体治癒力向上効果の検証結果として、表2及び図7に示す通り、図2〜図4に示す生体治癒力向上装置の気密部内に被験者が入った上で、気密部内の空気を減圧した。9分後に高度2000m程度の低圧状態(795hPa、酸素分圧167hPa)となったことを確認してこれを維持した。また、外気に酸素を追加した空気を被験者にマスクで供給した。
【0052】
20分後に酸素分圧が395hPaとなった時点で追加の酸素を減少させ、30分後に常圧状態と同じ酸素分圧(213hPa)となったことを確認し、再度、追加の酸素を増大させ、40分後に酸素分圧が395hPaとなった時点で追加の酸素を減少させ、45分後より、気密部内の減圧状態を常圧状態とした。以上の過程を行っている際に、掌の温度を経時的に計測した。尚、掌の温度は皮膚赤外線体温計(商品名:サーモフォーカス プロ )で行った。
【0053】
表1、表2及び図6、図7に示す通り、低圧状態に曝された生体に酸素を追加することにより、掌温度が上昇することが確認された。更に、追加する酸素量を一定の時間内で増加及び減少させることにより、掌温度の上昇がより向上することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、生体の自然な治癒力を向上させる刺激をより良好に与えることができる生体治癒力向上装置及びその作動法が得られ、異常な身体組織、身体器官等を、健康な身体組織、身体器官に戻そうとする生体治癒力効果がより効果的となる。
【符号の説明】
【0055】
10…生体治癒力向上装置、
11…気密部、
12…排気管、
13…減圧ポンプ、
14…給気管、
15…フィルター、
16…圧力調節弁、
17…排気用電磁弁、
18…分岐管、
19…外気用電磁弁、
20…過減圧防止配管、
21…圧力センサ、
22…減圧制御装置、
23…酸素ボンベ、
24…酸素供給制御装置、
25…酸素供給管、
26…酸素濃度計、
30…パネル板、
31…出入り口パネル、
32…気密扉、
33…窓、
34…側面パネル、
35…天井パネル、
36…床パネル、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常圧を下回る減圧環境下に被験者を保持する減圧室と、
減圧室内の被験者に酸素濃度を大気中の酸素濃度よりも増加させて供給する酸素供給手段と、
酸素供給手段により被験者に供給される酸素を常圧時の酸素分圧以上の酸素濃度となるように供給制御する酸素供給制御手段とを備えたことを特徴とする生体治癒力向上装置。
【請求項2】
前記減圧室の減圧環境が高度1000〜3000mの減圧状態に相当することを特徴とする請求項1に記載の生体治癒力向上装置。
【請求項3】
前記酸素供給制御手段が、酸素供給手段により被験者に供給される酸素を常圧時の常圧酸素濃度と、常圧時の酸素分圧の2倍以下の高酸素濃度とを繰り返す供給制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の生体治癒力向上装置。
【請求項4】
常圧を下回る減圧環境下に被験者を保持する減圧室と、減圧室内の被験者に酸素濃度を大気中の酸素濃度よりも増加させて供給する酸素供給手段と、酸素供給手段により被験者に供給される酸素を常圧時の酸素分圧以上の酸素濃度となるように供給制御する酸素供給制御手段とを備えた生体治癒力向上装置の作動法であって、
常圧を下回る減圧環境下に被験者を保持させた後、被験者に常圧時の酸素分圧以上の濃度とした空気を供給することを特徴とする生体治癒力向上装置の作動法。
【請求項5】
常圧を下回る減圧環境下に被験者を保持させた後、被験者に常圧時の酸素分圧の常圧酸素濃度と、常圧時の酸素分圧の2倍以下の高酸素濃度とを繰り返し変化する空気を供給することを特徴とする請求項4に記載の生体治癒力向上装置の作動法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−176200(P2012−176200A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41675(P2011−41675)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(502071791)
【出願人】(509113380)
【Fターム(参考)】