説明

生体物質および腐食性試薬の封じ込めのための使い捨て容器

フルオロポリマーバッグおよび上包を含むパッケージが提供され、パッケージはフルオロポリマーバッグの滅菌条件を得て維持するように最終滅菌され、次にそれは生体物質および腐食性試薬のための滅菌された使い捨て容器として利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体物質および腐食性試薬の封じ込めに有用な使い捨て容器に関する。
【背景技術】
【0002】
生きている細胞、および非生物である細胞生成物をはじめとする生体物質は、細胞培養/発現過程において生きている細胞から発現される。組み換えDNA技術などによる治療用タンパク質などの生体物質の製造には、遺伝的に改変された細胞系の形成、栄養培地の調製を含むタンパク質を発現させるための細胞系の発酵または培養、タンパク質分離溶液の調製を含むタンパク質の精製、およびタンパク質の配合および保存をはじめとする複数段階が関与する。タンパク質は、1つまたは複数の製造段階において、タンパク質を含有するあらゆる溶液中で汚染物質の存在により、望ましくない変化そして変性すら被る。商業運転では、工程中で段階を実施するのに使用される容器は主として、腐蝕抵抗性であるため製造段階中に存在する異なる媒質を汚染しないと考えられるステンレス鋼である。しかしステンレス鋼を使用する場合、定置洗浄操作(製造バッチ間の)および腐蝕改善のために、製造ラインを周期的に停止しなくてはならない。ステンレス鋼容器は、容器内面の「ルージング」または点食などの腐蝕の影響を示し、それは容器が容器内に含有される媒質の汚染に寄与したことを示唆する。掃除工程には費用がかかり、容器の浄化、その内面の電解研磨、得られた表面の滅菌、および磨き直した容器を操作に戻せることの検証などの段階を伴う。製造の損失、そしておそらく操業停止をもたらした治療用タンパク質の損失にもまた費用がかかる。典型的に生体物質に関連する、通常、注射用水(WFI)と称される超純水、酸、緩衝液、および塩基などの腐食性試薬の封じ込めについても、特に生体物質の製造においてこのような試薬が生体物質の汚染源にならないようにするという同じ問題が存在する。
【0003】
米国特許公報(特許文献1)は、生物薬剤物質保存のための可撓性のコンテナを開示し、コンテナは、(コンテナ内容物の冷却または凍結のための)恒温ユニットの内部形状、またはコンテナを受け入れるように適合された保護構造物の形状に従うように形成される。コンテナは無菌であり、複数の層を含むラミネートフィルムから作られる。生成物接触層、すなわちコンテナの内側層は生体適合性であると開示され、次のような多種多様なポリマー材料から形成されてもよい。低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリフルオロエチレン、フッ化ポリビニリデン、ポリウレタン、またはフルオロエチレンプロピレン。気体および水蒸気層および機械的強度層が存在し、熱溶着に対して断熱効果がある外層もまた存在する。層は暖かい条件および冷たい条件と適合性であってもよく、滅菌のための電離放射線に抵抗性であってもよい。
【0004】
可撓性のコンテナが生物薬剤を汚染する問題は、上述の特許では対処されていない。コンテナが生物薬剤保存に使用されるという事実は、生物薬剤とコンテナの接触層の間に長期間の接触をもたらし、接触層から、またはラミネートで使用されるその他の層から、生物薬剤が有機構造要素を抽出できるようにし、それは接触層を透過して生物薬剤内容物に入る。汚染は生物薬剤の有効性を低下させたりなくしたりするおそれがあり、および/または生物薬剤が投与される対象に有害な結果を生じる。
【0005】
米国特許公報(特許文献2)は、最終的に人体に戻すことで細胞免疫療法を提供するために、人体から採取された細胞を培養する(生育させる)のに使用する、様々なフルオロポリマーのフィルムからできた使い捨てバッグのレーザー製造を開示する。レーザー継ぎ合わせ操作は、無菌に保たれ殺菌灯が組み込まれて、カビの生育を防止し全ての細菌を殺すボックス内で実施される。フィルムの清浄さを達成するための追加的手段として、フィルムを水ですすぐ。無菌空気をあてて水ですすいだフィルムを乾燥させるエアナイフもまた開示される。周期的操業停止および掃除の必要性と出費を避けるために、どのようにして生体物質および腐食性試薬封じ込めで使用される容器に非汚染性表面を提供するか、そしてこのような表面を使用者に滅菌形態で提供するかという問題が残る。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,684,646号明細書
【特許文献2】米国特許第4,847,462号明細書
【特許文献3】米国特許第3,624,250号明細書
【特許文献4】米国特許第4,123,602号明細書
【特許文献5】米国特許第4,513,129号明細書
【特許文献6】米国特許第4,677,175号明細書
【特許文献7】米国特許第5,941,635号明細書
【特許文献8】米国特許第5,988,422号明細書
【特許文献9】米国特許第6,071,005号明細書
【特許文献10】米国特許第6,287,284号明細書
【特許文献11】米国特許第6,432,698号明細書
【特許文献12】米国特許第6,494,613号明細書
【特許文献13】米国特許第6,453,683号明細書
【非特許文献1】S.S.ブロック(Block)著、「消毒、滅菌、および保存(Disinfection,Sterilization and Preservation)」、第5版、2001年、リピンコット・ウィリアムズ&ウィルキンス(Lippincott Williams & Wilkins)、21頁
【非特許文献2】S.S.ブロック(Block)著、「消毒、滅菌、および保存(Disinfection,Sterilization and Preservation)」、第5版、2001年、リピンコット・ウィリアムズ&ウィルキンス(Lippincott Williams & Wilkins)、25頁
【非特許文献3】Y.ローゼンバーグ(Rosenberg)ら著、「いくつかのフルオロポリマーの低用量γ照射;ポリマー構造の影響(Low Dose γ Irradiation of Some Fluoropolymers; Effect of Polymer Structure)」、J.Applied Science、45、ジョン・ウィリー&サンズ(John Wiley & Sons)、783〜795頁
【非特許文献4】S.エブネサジャド(Ebnesajjad)著、「フルオロプラスチック(Fluoroplastics)」、第2巻、「溶融加工性フルオロポリマー(Melt Processible Fluoropolymers)」、プラスチックス・デザイン・ライブラリー(Plastics Design Library)刊、2003年、493〜496頁
【非特許文献5】S.エブネサジャド(Ebnesajjad)著、「フルオロプラスチック(Fluoroplastics)」、第2巻、「溶融加工性フルオロポリマー(Melt Processible Fluoropolymers)」、プラスチックス・デザイン・ライブラリー(Plastics Design Library)刊、2003年、461〜493頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、非汚染性表面を有して、さらに使い捨てである容器を提供することでこの問題を解決し、汚染の影響および掃除からの生体物質損失の出費が回避され、操業停止は単なる容器の取り替えに限定される。さらに容器は、使用者に滅菌条件で提供され、それによって容器は、製造工程中の所望の段階への容器設置などの使用者による封じ込め用途にすぐに使える状態になっている。したがって容器は、上で開示される全ての治療用タンパク質製造段階におけるような、生体物質および生体物質に添加される腐食性試薬などのための多種多様な封じ込め用途で使用できる。
【0008】
これらの必要性を満たすために、本発明は、密封上包を含み、フィルムからできた可撓性バッグを含有する最終滅菌パッケージを提供し、少なくともバッグ内面は溶融加工性フルオロポリマーであり、ただし、フルオロポリマーがペルフルオロポリマーの場合、前記パッケージは放射線への曝露によって最終滅菌される。滅菌されたバッグは、前段落で述べられるように使用できる容器である。最終滅菌とは、可撓性バッグが上包内への密封後に滅菌されることを意味する。好ましい滅菌方法は、可撓性バッグの上包を通したγ照射への曝露を伴う。これはバッグおよび上包内部を滅菌し、上包は、タンパク質製造業者などの使用者によってパッケージが開封されるまで滅菌条件を維持する。フィルムがペルフルオロポリマー単層である場合、放射線滅菌は電子ビーム(eビーム)照射によって行われることが好ましい。
【0009】
バッグは、(非特許文献1)の用語「滅菌」の定義に従って、あらゆる形態の生命、特に微生物が破壊または排除される場合に、滅菌されたと見なされる。米国食品医薬品局(FDA)もまた、医療器具開発協会(AAMI)、1995年((非特許文献2))を引用して、細菌胞子を含むあらゆる微生物の生存形態を除去または破壊して、許容可能な無菌性保証レベルを達成することを意図する処理として、いくらかより詳細に滅菌を定義する。FDAはまた「無菌性保証レベル」および「無菌性」も定義し、これらの定義は参照によって本明細書に援用する((非特許文献2))。本発明で意図される滅菌は、これらの一般的なそしてより具体的な定義の双方をを満たす。
【0010】
この無菌性要件を満たすために、最終滅菌パッケージ内に存在する滅菌バッグは、最終的にその中に包含される生体物質および/または腐食性試薬について非汚染性でなくてはらない。少なくともバッグ内面を構成するフルオロポリマーフィルムは、有機物である。フルオロポリマーからの有機物抽出抵抗性は、単層フィルムのフルオロポリマーから完全にできているバッグを注射用水(WFI)で満たして実証されている。WFIは、米国薬局方(USP)で1231製薬用水(Water for Pharmaceutical Purposes)の下に定義されている。実質上WFIは超精製水であり、その純度は微生物汚染および微生物内毒素形成を防止するようにデザインされている。WFIはまた、高度に腐食性の物資であることもよく知られており、あらゆるポリマーコンテナからの有機物(有機化合物)抽出性の過酷な試験を提供する。抽出抵抗性は、250mLのWFIを含有する試験されるコポリマーコンテナを40℃に63日間保持し、それに続いて(抽出により)フルオロポリマーだけがもたらすことができる有機物についてWFIを分析して判定される。上述のバッグについては、上の条件下で、バッグ内に存在するWFI中に有機物は見いだされなかった。分析の検出限界は50ppbであった。抽出試験の一部としての分析について、そしてその他の試験液体およびその他のポリマーへのこの試験の応用についてさらに詳しくは、以下で開示される。
【0011】
市販の有用な使い捨てコンテナには、抽出抵抗性以上のものが所望される。好ましい滅菌方法はγ照射であり、照射用量約25〜40kGyが一般に滅菌を提供するのに適切と見なされる。γ照射は、フルオロポリマーを分解し架橋もすることが知られている。(非特許文献3)は、バッグのフルオロポリマー内面として好ましいフルオロポリマーであるエチレン/テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)の照射が、架橋と鎖切断事象との間の競合を引き起こすことを開示する(783頁の概要)。鎖切断はコポリマーの分解である。
【0012】
上述のフルオロポリマーフィルムバッグの有機物抽出に対する抵抗性が、抽出試験実施に先だちγ照射(25〜40kGy)への曝露によって滅菌されたバッグに存在する。意外にも放射線への曝露に伴う鎖切断は、フィルムコンテナがコンテナ内容物を有機物で汚染する結果を招かない。
【0013】
滅菌の好ましい方法は、上包を通して可撓性バッグを滅菌有効量のγ照射に曝露することを伴う。これはコンテナの内外面の双方、および上包内面を滅菌する。上包は、生体物質保存のために使用者によってパッケージが開封されるまで、滅菌条件を維持する。ETFEでは、コンテナの完全性は実質的にγ照射への曝露によって影響されない。コンテナの維持された完全性の一つの現れは、コンテナを作るγ照射(25〜40kGy)されたETFEフィルムの引張り強さおよび破断点伸びが、このような照射に先だつ同一コポリマーフィルムの少なくとも80%であることであり、より好ましくはこれらの特性の少なくとも1つは照射によってさらに少ない影響を受け、すなわち照射に先だつコポリマーフィルムの引張り強さまたは伸びの少なくとも90%である。これらの属性は、フルオロポリマーフィルムそれ自体に、またはフィルムを構成するその他のポリマー層へのラミネートとして、当てはまる。
【0014】
γ照射は、この滅菌法の有効性のために、そして業界での容認のために、本発明のコンテナを滅菌する好ましい方法であるが、eビーム照射などのその他の滅菌放射線形態を使用して、典型的に約25から約40kGyである、滅菌を達成するのに必要な有効量の放射線を提供できる。この放射線はフルオロポリマーフィルムに対する貫通性がより低いが、フルオロポリマー分解性が低いという利点を有し、それは少なくともフルオロポリマーがペルフルオロポリマーである場合、重要となる。代案としては、本発明のパッケージは、滅菌結果を提供するのに有効量の蒸気への曝露によって滅菌できる。
【0015】
本発明の別の態様は、溶融加工性フルオロポリマーを含む可撓性フィルムを提供するステップと、少なくともバッグ内面が前記フルオロポリマーからできているように、前記フィルムを容器として使用するためのバッグに製作するステップと、前記バッグを上包内に密封するステップと、前記上包を通して前記バッグを有効量の放射線に曝露して前記バッグを滅菌するステップとを含み、前記上包が前記バッグが開封されるまでその滅菌を維持する、生体物質および腐食性試薬封じ込めに適用できる使い捨て容器を提供する好ましい方法である。フルオロポリマーを含む可撓性フィルムは、完全に前記フルオロポリマーから作られていることができ、または後述されるように、前記フルオロポリマーおよび異なるポリマーのその他の層のラミネートであることができる。上包と上包内に含有されるバッグとの組み合わせは、上述のパッケージを形成する。
【0016】
好ましくはパッケージが比較的平らに置けるよう、上包もまた可撓性である。上包内部が真空下にあることもまた好ましく、それはパッケージの平らな構造を容易にする。前記上包内に存在するあらゆる気体が、例えば窒素またはアルゴンなどの最終滅菌中に不活性の気体であることもまた好ましい。真空度に応じて、このような気体の量は比較的少ない。不活性気体は上包内部をパージし、ひいては上包内に含有されるバッグ内外部から空気をパージする。パージするステップは、上包の密封に先だって実施される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の可撓性バッグは、治療用または非治療用タンパク質、毒素、および多糖類などの異なる細胞生成物を発現する培養中に細胞培養を包含し、引き続く回収、配合、および保存などの処理中に発現細胞生成物を包含し、この細胞生成物の生成で使用される腐食性試薬を包含するのに特に有用である。
【0018】
異なる細胞生成物の発現において行われる細胞培養は、異なる細胞生成物の作成なしにオリジナルの細胞の生育のみを伴う細胞培養とは異なる。後者の細胞培養は、例えば米国特許公報(特許文献2)の使い捨てバッグの免疫療法用途に代表される。対照的に発現過程で行われる細胞培養は、生きており生育する細胞培養から無生物細胞生成物を生じる。この異なる細胞生成物は、宿主細胞培養よりも有機汚染の害を被りやすい。宿主細胞培養は生きている生物であり、したがっていくつかの調節をしてこのような汚染に対抗できる。発現した細胞生成物は無生物であるためこの調節ができない。したがって有機物(汚染)対有機物(細胞生成物)反応は、細胞生成物に悪影響を及ぼす可能性がはるかに大きい。さらに細胞生成物は、それから細胞生成物が発現される細胞培養の小さな画分である。したがって細胞培養と比べて小さいかもしれない有機汚染の量は、細胞生成物量と比べると大きくなる。単なる細胞培養との別の違いは、発現過程が、通常、容積が増大する一連の反応器内で実施され、各容器内で最適密度に達するまで細胞培養が行われることである。このようにして細胞培養/発現細胞生成物媒質は、単なる細胞培養、すなわち異なる生成物の発現を伴わない場合のような1つのコンテナ表面のみへの曝露でなく、1つのバイオリアクターから次に進むに従って複数のバイオリアクター表面に曝されるので、各反応器表面による汚染を被る。その中で発現過程が実施されるコンテナ(バイオリアクター)の少なくとも内面を形成するフルオロポリマーからの有機物抽出に対する意外な抵抗性は、細胞生成物がその中で生成する生物由来資源から、それを回収段階に供給するために、この生成物を形成された状態のまま保存することを可能にする。これは下でさらに詳しく述べるように、バイオリアクターとしての使用に先だってコンテナをγ照射などの崩壊電離放射線への曝露により滅菌する場合に、特に意外なことである。
【0019】
可撓性バッグ内に保存できる生体物質の例としては、治療用タンパク質、非治療用タンパク質、タンパク質以外のワクチン、抗体、活性化剤、核酸、遺伝暗号塩基、多糖類、および毒素などの生体細胞物質が挙げられる。発現過程で使用するための栄養培地および活性化剤(誘導剤)もまた、本発明の可撓性のバッグ内に保存してもよい。同様にWFI、酸、塩基、緩衝液など、発現過程、引き続く発現細胞生成物の単離、またはその配合において使用してもよい腐食性試薬もまた、本発明の可撓性のバッグ内で調製および保存でき、これらのいかなる試薬の細胞生成物への添加も、それを有機汚染物質で汚染しない。典型的に生体物質は、それ自体が、または賦形剤配合物中に含有されて、室温(15〜20℃)で液体である。配合時に生体物質は、緩衝液を含んでpHを一定に保ち、塩を含んで溶解性を増大させ、および/または安定剤、抗菌剤、保存料、界面活性剤、抗酸化剤、および/または等張性剤などのその他の賦形剤を含んで有効性を維持してもよい。抗原に対する免疫応答を増強するアジュバントもまた、配合工程の一部として添加してもよい。賦形剤およびアジュバントはまた、生体物質への添加時にそれらを汚染しないように、別個の本発明の可撓性のバッグ内で調製および保存してもよい。コンテナへの生体物質の添加後に充填コンテナは、典型的に温度約−5〜−80℃で保存される。
【0020】
本発明で使用されるフルオロポリマーは溶融加工性であり、それはそれらが(その融解温度を超えて加熱される)溶融状態で十分に流動性を有し、好ましくは押出しである溶融加工によって、それらが可撓性フィルムを形成するように加工できることを意味する。典型的にフルオロポリマーそれ自体が溶融加工性であり、ポリフッ化ビニルの場合、フルオロポリマーは押出し、すなわち溶剤補助押出しのために溶剤と混合される。得られたフィルムは有用であるように十分な強度を有する。フルオロポリマーの溶融流動性については、ASTM D−1238に従って測定される溶融流速に関して述べることができ、本発明のフルオロポリマーは、特定のフルオロポリマーの標準である温度で測定すると、好ましくは少なくとも1g/10分の溶融流速を有する。例えばASTM D 2116aおよびASTM D 3159−91aを参照されたい。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は一般に溶融加工可能でなく、すなわちそれは融解温度を超える温度で流れないのでこのポリマーは溶融加工性でない。低分子量PTFEが入手でき、PTFEマイクロ粉末と称され、分子量はこのポリマーが溶融時に流動性を有するように十分低いが、低分子量のために得られた成形品には強度がない。強度の不在は、物品の脆性によって示唆される。マイクロ粉末からフィルムが形成できる場合、曲げると破断する。対照的に本発明で使用される溶融加工性フルオロポリマーは、破断なしに繰り返し屈曲できるフィルムに形成できる。この可撓性は、ASTM D−2176Fで述べられる標準MIT耐折強さ試験機を使用して、冷水中でクエンチされる8ミル(0.2mm)厚の圧縮成形フィルム上で測定される、少なくとも500サイクル、好ましくは少なくとも1000サイクル、およびより好ましくは少なくとも2000サイクルのMIT屈曲寿命によってさらに特徴づけることができる。コンテナの可撓性によって、それは平板形状に折りたためるようになる。可撓性はまた、例えばASTM F1342の手順に従って、それからコンテナが作られるフィルムを穿刺する試みによっても確認でき、その結果、穿刺試験で使用される針は穿刺に先だって、フィルムを試験中の平面配置から、試験されるフィルム厚の少なくとも約5倍程度、好ましくはフィルム厚の少なくとも10倍撓ませる。
【0021】
本発明で使用されるフルオロポリマーはまた、それから作られたフィルムが光学的に透明になるようなものである。フィルムを本発明で使用するバッグに加工したとき、フィルム壁を通してバッグ内部が観察でき、観察者が可視汚染物質が存在しないことを確認できるように、光学的透明度が所望される。PTFEフィルムは光学的に透明でない。フルオロポリマーはまた、バッグの液体内容物、すなわちタンパク質製造工程で使用されるような生体物質および/または腐食性試薬に対して非付着性でもあり、すなわち液体またはその中に含有される成分のどちらもフルオロポリマーフィルムからできたバッグに付着しない。
【0022】
本発明で使用するための好ましい溶融加工性フルオロポリマーは、−CF−CF−、−CF−CF(CF)−、−CF−CH−、−CH−CHF−、および−CH−CH−からなる群から選択される1つまたは複数の反復単位を含み、これらの反復単位およびそれらの組み合わせは、前記フルオロポリマーが少なくとも35重量%のフッ素、好ましくは少なくとも50重量%のフッ素を含有するという条件で選択される。したがってポリマーを形成する炭素原子鎖中に炭化水素単位が存在してもよいが、ポリマー鎖中に十分なフッ素置換炭素原子が存在して、フルオロポリマーが化学的不活性を示すようにフッ素存在の所望の最小量を提供する。フルオロポリマーは、好ましくはまた、少なくとも150℃、好ましくは少なくとも200℃、およびより好ましくは少なくとも240℃の融解温度も有する。ペルフルオロポリマー、すなわちポリマー鎖の末端基中にその他の原子が存在する可能性を除いて、炭素原子に結合する一価の原子が全てフッ素である例としては、3〜8個の炭素原子を有する1つまたは複数のペルフルオロオレフィン、好ましくはヘキサフルオロプロピレン(HFP)と、テトラフルオロエチレン(TFE)とのコポリマーが挙げられる。TFE/HFPコポリマーは、アルキル基が1〜5個の炭素原子を含有するペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)などの追加的共重合ペルフルオロモノマーを含有できる。このような好ましいアルキル基は、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)およびペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)である。典型的にコポリマーのHFP含量は、約7〜17重量%、より典型的には9〜17重量%(計算:HFPI×3.2)であり、存在する場合、追加的コモノマーは、コポリマー総重量を基準にして約0.2〜3重量%を構成する。追加的共重合モノマーがある、またはないTFE/HFPコポリマーは、一般にFEPとして知られている。炭化水素/フルオロカーボンポリマー(以下「ヒドロフルオロポリマー」)の例としては、典型的にPVDFと称されるフッ化ビニリデンポリマー(ホモポリマーおよびコポリマー)、典型的に40〜60モル%の各モノマーを計100モル%含有し、好ましくはペルフルオロアルキルエチレン、好ましくはペルフルオロブチルエチレンなどの追加的共重合モノマーを含有するエチレン(E)とTFEのコポリマーが挙げられる。これらのコポリマーは一般にETFEと称される。ETFEは主として、ポリマー鎖を作り上げるエチレンおよびテトラフルオロエチレン反復単位から構成されるが、異なるフッ素化モノマーからの追加的単位もまた存在して、コポリマーに所望される、溶融、外観、および/または高温脆性を回避するような物理特性を提供することも典型的である。追加的モノマーの例としては、ペルフルオロブチルエチレン、ペルフルオロ(エチルまたはプロピルビニルエーテル)、ヘキサフルオロイソブチレン、およびCH=CFR(式中、RはCH=CFC10H、ヘキサフルオロプロピレン、およびフッ化ビニリデンなどのC〜C10フルオロアルキルである)などのペルフルオロアルキルエチレンが挙げられる。典型的に追加的モノマーは、テトラフルオロエチレンおよびエチレンの総モルを基準にして0.1〜10モル%存在する。このようなコポリマーについては、米国特許公報(特許文献3)、米国特許公報(特許文献4)、米国特許公報(特許文献5)、および米国特許公報(特許文献6)でさらに詳しく述べられる。追加的ヒドロフルオロポリマーとしては、EFEPおよび一般にTHVと称されるTFE/HFPとビニリデンフッ化物のコポリマーが挙げられる。フルオロポリマーがヒドロフルオロポリマーである場合、最終滅菌は上包内のバッグの放射線曝露以外によって実施でき、上包を含むパッケージおよびその中に含有されるバッグは、蒸気への曝露によって最終滅菌できる。これらのペルフルオロポリマーおよびヒドロフルオロポリマーのフィルムは全て市販される。典型的にそれからバッグが作られるフィルムは、約2〜20ミル(0.05〜0.5mm)好ましくは2から10ミル(0.25mm)の厚さを有する。
【0023】
本発明の一実施態様では、フルオロポリマーがフィルムの全厚を形成することにより、フィルムから形成されるバッグ内面もまたフルオロポリマーである。単(単一)層フィルムは、フルオロポリマーのフィルムまたは層を別のフィルムまたは層にラミネートし、または別なやり方で結合してラミネートを形成する必要性を回避する利点を有する。これはフィルムをバッグに製作する際、継ぎ目形成時にさらなる利点を有する。継ぎ目はフルオロポリマーのそれ自体への熱接着を伴い、バッグ内部の継ぎ目中に存在するフィルムの縁は完全にフルオロポリマーである。熱接着は、バッグ内面を形成する層としてフルオロポリマーフィルムを含有する、ラミネートの全厚を貫いて加熱しなくてよく、そこではラミネートはより低融点のポリマー層を含有してもよい。
【0024】
別の実施態様では、フルオロポリマーフィルムは可撓性フィルムラミネートの一部であり、フルオロポリマーがラミネートからできたバッグの最内層または接触層を形成し、中間層および外層は米国特許公報(特許文献1)でラミネートの非接触層について述べられるようなものである。ラミネート中のフルオロポリマーフィルム層の厚さは上述したのと同じであることができるが、好ましくは約10ミル(0.25mm)以下である。
【0025】
バッグは、治療用タンパク質またはその他の細胞生成物の製造における1つ以上の段階などの特定用途のために所望される、あらゆる構造およびサイズを有することができる。例えばバッグは、それらの縁に沿って共にヒートシールされてエンベロープを形成する2枚のフィルムシートから形成できる。代案としては、バッグはフィルムシート群から形成でき、別個の底と側面があるバッグが形成され、側面の丸いバッグまたは角で一体となる別個の面があるバッグのどちらかが形成される。いかなる構造でも、バッグはその中でタンパク質製造の段階またはその他の処理が実施できるコンテナまたは容器を形成する。バッグは可撓性フィルムからできているので、バッグそれ自体も可撓性である。バッグは、作られ、加工されまたは保存される媒質のための入り口ポートを除いて、最上部で(使用中)開けることができ、または閉じることができる。入り口ポートは、単に、バッグを形成するフィルムにヒートシールされた一定長さの管材料であることができる。入り口ポートがバッグ内の他の場所に配置でき、バッグからの媒質放出、バッグへの気体供給、またはバッグがバイオリアクターとして使用される場合の複数気体供給などの処理活動のためにバッグフィルムにヒートシールした管材料を装着したものなどの追加的開口部を提供でき、そこではバッグ内の発酵ブロス/栄養培地または細胞培養/栄養培地に酸素と窒素の双方が導入され、追加的ポートが提供されて二酸化炭素がバッグから排気できるようになる。バッグ構造の例は、米国特許公報(特許文献7)、米国特許公報(特許文献8)、米国特許公報(特許文献9)、米国特許公報(特許文献10)、米国特許公報(特許文献11)、米国特許公報(特許文献12)、米国特許公報(特許文献13)、および米国特許公報(特許文献1)で示されるものである。
【0026】
バッグの内容積は、タンパク質の研究的製造またはその商業的製造のどちらかに対処できる容積であることができる。典型的にバッグの容積は少なくとも500mL、より典型的には少なくとも1Lであるが、少なくとも10L、少なくとも50L、少なくとも100L、少なくとも1000L、なおも少なくとも10,000Lのサイズ(容積)も可能である。フルオロポリマーフィルムは事実上無制限の長さに作ることができるので、この長さを所望の長さに切断してこれらの長さを共に加工し、所望の構造およびサイズのバッグを形成することだけが必要である。小さなバッグサイズは支持材なしで使用できるのに対し、より大きなバッグサイズには硬質支持材が使用できる。硬質支持材は、その上にバッグが載る単なる土台、またはバッグの底と側面の双方が支持されるようにその中にバッグが配置されるコンテナであることができる。硬質支持材がいつ必要かは、バッグサイズとそのフィルム厚に左右される。硬質支持材は、治療用タンパク質の製造で使用される既存の容器であることができ、バッグは容器のための使い捨てライナーを形成する。使い捨てライナーは硬質支持材とは別個に形成されるので、本発明の方法を実施するために硬質支持材上または内部に配置でき、工程完了時に支持材から除去できる。これは容器内面に形成されてそれに接着する恒久的ライナーとは、対照的である。
【0027】
バッグは、バッグのサイズおよび構造に応じて、1つまたは複数のフルオロポリマーフィルムのシートを共にヒートシールして形成できる。ヒートシールは、重複部分を加熱してフィルムの重複部分長さを共に溶着することを伴う。溶着は、加熱バーまたは熱風、衝撃波、誘導または超音波加熱などを使用して、通常は圧力下で重複表面を加熱して達成される。重複フィルム表面はフルオロポリマー融解温度を超えて加熱され、重複するフィルム表面の融着が得られる。重複FEPフィルム(融解温度約260℃)ヒートシールの例は、次のようである。一対のホットバーを290℃に加熱して、30psiの圧力下で5ミル(0.125mm)の総フィルム厚を有する重複FEPフィルムに押しつけ、融合シールを0.5秒間で提供する。ETFEでは、各4ミル(0.1mm)厚のフィルムを重複させ、60psi(42MPa)の圧力下で約10秒間、衝撃波シーラーのホットバーを230℃に加熱して、融合シールを得る。融点がより低いフルオロポリマーでは、より低い温度を使用できる。典型的にヒートシールは15秒以下で完了できる。ヒートシールに関する追加的情報は、(非特許文献4)で提供される。バッグへの入り口ポートは、(非特許文献5)で開示されるように、ヒートシール技術によって、または様々なフルオロポリマーに適用される溶着および封着技術によってフィルムに溶着できる。
【0028】
バッグ製作後、それは上包内にバッグが納まる大きさに作られた密封できる上包内に挿入される。好ましくはバッグの可撓性は、それが実質的に平らに折りたためるようにし、それによって上包はバッグ容積よりも小さな内容積を有することができる。代案としては、バッグはそれ自体の上に折りたたまれてもよく、それによってなおもより小型サイズの上包が使用できるようになる。上包それ自体が好ましくは可撓性であり、したがって厚さ約1〜10ミル(0.025〜0.25mm)などのポリマーフィルムから形成される。上包はタンパク質の製造に使用されないので、それはタンパク質の製造に関してフルオロポリマーバッグの非汚染特性を有する必要はない。ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィン、またはポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのような安価なポリマーフィルムを上包として使用できる。上包を構成するポリマーフィルムは、使用する特定のポリマーに適した条件を使用して、ヒートシールにより所望のサイズおよび形状のバッグに形成できる。ひとたびフルオロポリマーバッグが上包内に挿入されると、同一ヒートシールを使用して上包を密封できる。
【0029】
フルオロポリマーバッグの滅菌を達成するのに効果的な用量で、パッケージを好ましくは電離放射線、好ましくはγ照射に曝露して、フルオロポリマーバッグを含有する密封された上包に由来するパッケージに滅菌が実施できる。典型的にこのような用量は、約25〜40kGyの範囲である。AAMITIR 17−1997は、特定のフルオロポリマーをはじめとする、照射によって滅菌されるポリマー材料の必要条件の指針を開示する。一例として上述のように3面で共にヒートシールされ上面は開いたままの、各5ミル(0.125mm)厚の2枚のFEPフィルムからできた5Lの容量を有するバッグが形成される。代案としては各4ミル(0.1mm)厚の2枚のETFEフィルムから、上述のようにヒートシールしてバッグが作られる。1.2ミル(0.03mm)厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの同様のサイズのバッグもまた形成され、FEPまたはETFEバッグがPETバッグ内に入れられる。プログラム2で操作されるオーディオンバック(AudionVac)−VMS103真空シール機を使用して、PETバッグをヒートシールし、フィルムを共に金敷台に押しつけるホットバーの保圧時間2.5秒間で、PETバッグの重複フィルムを密封する。機械は最初にPETバッグを膨張させ、続いてバッグ内部を1バールの真空にして、次にヒートシールを実施する。折りたたまれたFEPまたはETFEバッグが中に入った得られた真空包装PETバッグは、平らなパッケージを形成する。得られたパッケージをC60線源からのγ照射に曝露して、PET上包内のFEPまたはETFEバッグを滅菌するのに十分な用量である26kGy用量を提供する。代案としては、放射線曝露は、その中にフルオロポリマーバッグを含有するパッケージを滅菌するのと同用量の電子ビームによることができる。PET上包の封を切って、治療用タンパク質の製造で使用するためのコンテナとしてバッグを利用できるようにするまで、PET上包はFEPまたはETFEバッグの滅菌条件を維持する。上述のように、バッグを構成するフルオロポリマーがヒドロフルオロポリマーである場合、蒸気最終滅菌を使用できる。
【0030】
ガセットコンテナは、FEPまたはETFEの可撓性フィルムをそれらの縁で共にヒートシールして作成される。このコンテナを液体媒質で充填すると、一方向から見ると角胴形、垂直方向から見ると直立した楕円形状を有する。したがってコンテナを充填すると(膨張)、枕の形を有する。このコンテナはまた、ガセット側壁が上を向くように水平方向に向けることもできる。コンテナの方向は、ポート(開口部)がどこに配置されるかを定める。次に述べる実施態様では、ガセット側壁が垂直であるように、コンテナが垂直に方向付けられる。ガセットは別個のフィルム片から形成でき、または側壁と一体的に形成できる。例えば管形状のヒートシールフィルムをつまんで内向きに延びるプリーツを形成でき、それはそれらの最上部と底でヒートシールされて、コンテナを折りたたんだときにプリーツ形状を保持する。管形状の底と最上部はヒートシールされて、コンテナが形成される。コンテナが膨張すると、プリーツはそれらの中央部で展開してコンテナの側面にガセットが形成される。異なる実施態様では、コンテナの楕円形状側壁は、この楕円形状に切断されたFEPまたはETFEフィルムから作られる。側壁は衝撃波加熱によってコンテナの長方形の前後壁にヒートシールされ、それはヒートバーと金敷台の間にクランプ固定された重複フィルム部分に制御された加熱を適用するステップと、クランプ固定されたフィルム部分を共にヒートシールするステップと、なおもクランプ圧力下にあるシールに制御された冷却を適用するステップを伴う。ヒートバーおよび金敷台は、所望のヒートシール形状に必要な構造に成形される。治療用タンパク質の製造におけるバッグの特定用途の必要に応じて、1つまたは複数のポートが、コンテナ最上部に長方形縁に沿って間隔を開けて提供される。例えば1つのポートが提供され、混合羽根の差込口のために第2のポートが提供される。コンテナの液体内容物排液のために、単一ポートもまたコンテナの長方形縁底に提供される。ポートの存在を除いて、コンテナは閉鎖コンテナである。各ポートは、管材料を開閉するためのバルブを有する管材料から形成される。管材料はコンテナのフィルム壁の衝撃波加熱によってコンテナのフィルム壁にヒートシールされ、すなわち管材料はコンテナの対向面を形成するフィルムの間に介挿され、管材料周辺に密封される。代案としては、ポートは、先細端を有する土台と一体であることができ、土台が対向するフィルムにヒートシールされる。このコンテナの内容積は200Lである。液体媒質の添加によって膨張されると、コンテナは長方形タンク内で支持でき、コンテナの底縁は、それを通して3つの底のポートの管材料が延びることができる開口部を有するタンクの底に載っており、楕円形側壁はタンクの対応する側壁によって支持され、長方形側壁はタンクの対応する側壁に接触して支持が提供される。このコンテナの製作後、FEPまたはETFEフィルムの可撓性により、コンテナは平らな形状に折りたためるようになり、それを上包内にヒートシールして、次に得られた密封パッケージを先の段落で述べたようにγ照射に曝露して滅菌できる。γ照射はまた、バッグ中にヒートシールされたポートも滅菌する。
【実施例】
【0031】
40kGyのγ照射を受けたポリマーフィルムコンテナからの有機物抽出試験の詳細は、次のようである。
【0032】
可撓性フィルムのコンテナに250mLのWFIまたはその他の試験液体を充填し、得られた充填コンテナを40℃で63日間加熱する。この間、腐食性WFIまたはその他の試験溶液は、コンテナを構成するフィルムから有機物(有機化合物)を抽出する機会を有する。この抽出が起きるかどうか、またはその発生程度は、WFIまたは場合によってはその他の試験液体のサンプルをガスクロマトグラフィーによって分離し、続いて検出手段によって分離生成物を分析して判定される。この工程で抽出され、HP 6890 GC(カラム:SPB−1sulfur、内径30m×0.32mm、4.0μm厚フィルム、50〜180℃の範囲で稼働)中で分離された揮発性有機化合物(VOC)を水素炎イオン化検出器(FID)を使用して判定する。試験液体のサンプルを温度270℃のカラム内に注入する。WFIまたはその他の試験液体中に存在する有機物を同定するために、炎光検出パターンを電子的にパターンライブラリーと比較する。個々のVOC分離はカラム中の滞留時間に基づき、VOCの同定はそれらのイオン化サインによって実施される。
【0033】
保管され加熱されたコンテナから抽出されるかもしれないより高分子量の有機物は、半揮発性有機化合物(半VOC)と見なすことができ、これもまたGCカラム内での分離対象であり、それに続いて存在するあらゆる半VOCが検出される。WFIまたはその他の試験液体のサンプル分離のために使用されるカラムは、0.25μm HP−5MSフィルムを使用した内径30m×250μmのGC(HP 6890)カラムであり、カラムを通過する分離サンプルはHP 5973 MSD分析器を使用して質量分光計(MS)分析によって分析される。サンプルを220℃のカラム内に注入する。半VOC分析では、WFIまたはその他の試験液体のサンプルを1000ppbの2−フルオロビフェニル(内検出標準)でスパイクし、塩化メチレンで数回抽出する。VOCおよび半VOCは、試験されたポリマーフィルムのコンテナから抽出されるかもしれない有機物の沸点連続体を形成する。VOCおよび半VOCの検出限界は50ppbである。表1および2におけるWFIおよびその他の試験液体からの抽出物検出についてゼロ(0)の報告は、抽出物が存在したとすれば、それらが50ppb未満存在したことを意味する。
【0034】
可撓性フィルムコンテナ内のWFIまたはその他の試験液体のための加熱保存条件は、このようなコンテナ内での保存後に試験液体のサンプル中に存在するあらゆる有機物のGC分離、およびGC溶出物の分析と共に、ここで単に抽出試験(長期)と称することができる。
【0035】
上述のように、WFIを含有するフルオロポリマー可撓性フィルムのコンテナについて、抽出試験で有機物は検出されなかった。
【0036】
フルオロポリマーフィルムのバッグおよび異なるポリマーフィルムのバッグをWFIおよびその他の抽出剤で抽出した試験結果を表1および2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
表1および2に示すこれらの抽出剤(チャレンジ溶液)は、治療用タンパク質などの細胞生成物の製造におけるような、生体物質を製造する工程上の理由で生体物質に含まれるかもしれない液体を模倣する。これらの表に示すように、FEPフィルムまたはETFEフィルムのどちらかからできたバッグは、提示した炭化水素ポリマーからできたバッグよりもバッグ内側層としてはるかに優れており、すなわち炭化水素接触層は様々な抽出試験液に対してはるかにより汚染性であった。EVAおよび/またはPEバッグ内の抽出液中に検出された有機物には、エタノール、イソプロパノール、およびジメチルベンゼンジカルボン酸エステルが含まれた。FEPおよびETFEポリマーに対するγ照射の効果は、ポリマー鎖切断により分解を引き起こすことであり、表3および4の物理試験結果で示されるように、この効果はETFEよりもFEPで激しいので、FEPおよびETFEフィルムが抽出物を生じないのは意外なことである。。
【0040】
炭化水素ポリマーバッグに関する抽出結果の変動性、すなわち同一バッグについて異なるチャレンジ液体が異なる抽出結果を与えることは、使用において遭遇するかもしれないなおも異なる試薬による抽出結果が予測不可能であるから、使用者にとって懸念の理由である。対照的にフルオロポリマーの一貫して低い抽出値は、これが異なる試薬にも適用されるという確信を与える。
【0041】
上述のバッグサンプルが、パーキン・エルマー(Perkin−Elmer)ADT−400の清潔なステンレス鋼管内で、脱離条件に曝露される別の試験を行った。管を50℃で30分間加熱して、バッグサンプルから揮発物を発生させた。次に得られた気体に、カラム温度40℃〜280℃でn−デカンで較正されたGC分離(HP 6890 GC)、および質量分光計分析(HP 5973 MS検出器)を施した。これはガス放出試験である。検出限界は1ppm(1μg/gm)である。FEPフィルムまたはETFEフィルムのどちらでもガス放出は検出されなかった。PEフィルムでは、イソプロピルアルコール、分枝アルカン炭化水素、オクタン、アルケン炭化水素、デカン、ドデカン、アルキルベンゼン、2,6−ジ−tert−ブチルベンゾキノン、1,4−ベンゼンジカルボン酸、ジメチルエステル、および2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−フェノールを含む67ppmの有機物が検出された。EVAフィルムでは、酢酸、ヘプタン、オクタン、分枝アルカン炭化水素、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、アルキルベンゼンポリシロキサン、アルキルフェノール、および2,6−ジ−tert−ブチルベンゾキノンを含む140ppmの有機物が検出された。
【0042】
テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーまたはエチレン/テトラフルオロエチレンコポリマーのどちらかのフィルムからできたコンテナは、抽出およびガス放出条件への曝露下で、はるかに優れた安定性を示す。
【0043】
いくつかのフルオロポリマーの物理特性に対するγ照射の効果を試験した。40kGyのγ照射への曝露前後にASTM D638に従って、4〜5ミル(102〜127μm)厚の押出しフィルムで引張り強さおよび伸びを試験し、結果は表3に報告するとおりである。
【0044】
【表3】

【0045】
これらの結果は、照射がPVDF(フッ化ポリビニリデン)およびFEP(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー)を大きく弱体化させ、FEPでは引張り強さを大きく低下させ、PVDFでは伸びを大きく低下させることを示す。PVDFの伸びの低下は、コンテナを作るフィルムの可撓性の低下として現れ、屈曲時にひび割れし易くなる。
【0046】
フルオロエチレン(ポリテトラフルオロエチレン)に対する40kGyのγ照射の効果は、PVDFおよびFEPよりもなお激しい。引張り強さおよび伸びのどちらもが、PVDFおよびFEPより低いレベルに劣化する。
【0047】
その結果を表3に示す試験対象を形成するフィルムをまた、ASTM D1004−94aに従って引裂き抵抗についても試験し、そこでは試験標本はASTM試験手順の図1に示すようにその中に型打ちされたノッチを有する。この試験では、試験標本を対のジョーの間で掴み、51mm/分の速度で引き離して試験標本中のノッチにストレスを集中させる。ジョーが引き離されるにつれて、ノッチ領域における試験標本の伸長に対する所用負荷のグラフが形成される。負荷がピークに達して次にピークから25%低下するか、または標本が破断するかのいずれかまで、得られた曲線をプロットする。コンピュータープログラムMathCADによって判定される曲線下の面積が、フィルム破断の所用エネルギーに相当する。この試験は、尖った物との接触、またはコンテナの液体内容物中の内圧の発生によって遭遇するような、フィルムからできたコンテナにかかるかもしれない局所的ストレスをシミュレートする。引裂き抵抗試験における低い伸びを伴う高い負荷には、フィルムが局所的ストレスを被った際に、伸長せずむしろ穿刺されがちであるという欠点がある。高い伸びに伴う中程度の負荷は、穿刺に対するより大きな抵抗性を提供する。表4は表3のフィルムの破断点エネルギーを示す。
【0048】
【表4】

【0049】
これらの結果は室温(15〜20℃)引裂き抵抗試験で得られた、照射条件あたり5枚の試験フィルムの平均である。破断点エネルギーの値は、試験フィルム厚で正規化したので、分母に「cm」がある。
【0050】
本発明では、40kGyのγ照射曝露後のフィルムの破断点エネルギーが、照射曝露前のフィルムの少なくとも90%であることが好ましく、より好ましくは、照射曝露後に少なくとも曝露前と同程度である。表4はγ照射への曝露時にETFEフィルムの破断点エネルギーに損失がなく、PVDFまたはFEPのどちらよりも破断点エネルギーが実質的に大きいことを示す。
【0051】
これらの物理試験結果は、エチレン/テトラフルオロエチレンコポリマーバッグが、揮発性化合物抽出、またはバッグの用途に大きな意義を有する物理特性のどちらにも感知できる不利益がなくγ照射滅菌可能であることから、エチレン/テトラフルオロエチレンコポリマーフィルムのバッグが、PVDFまたはFEPのどちらかからできたバッグよりも好ましいことを示す。したがって本発明に従った可撓性のコンテナを作るのに使用されるFEPおよびPVDFフィルムは、好ましくはγ照射以外の方法によって、例えばeビーム照射への曝露によって、または蒸気への曝露によって滅菌されるべきである。γ照射を使用して、FEPなどのペルフルオロポリマーまたは照射劣化するPVDFなどのヒドロフルオロポリマーを滅菌するのならば、これらのフルオロポリマーは、好ましくは滅菌されるバッグ内にラミネートの内面(フィルム)としてあり、その中でラミネート外層は照射によって本質的に劣化しない。外層ポリマーの例は、最終滅菌パッケージの上包としての使用のために上で開示されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封上包を含み、フィルムからできた可撓性バッグを含有する最終滅菌パッケージであって、少なくともバッグ内面が溶融加工性フルオロポリマーであり、ただし、前記フィルムが完全に溶融加工性フルオロポリマーからできており、前記溶融加工性フルオロポリマーがペルフルオロポリマーである場合、パッケージが放射線曝露によって最終滅菌されることを特徴とする最終滅菌パッケージ。
【請求項2】
前記上包が可撓性であることを特徴とする請求項1に記載の最終滅菌パッケージ。
【請求項3】
前記上包の内部が真空下にあることを特徴とする請求項1に記載の最終滅菌パッケージ。
【請求項4】
前記上包が不活性ガスもまた含有することを特徴とする請求項1に記載の最終滅菌パッケージ。
【請求項5】
前記フルオロポリマーがヒドロフルオロポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の最終滅菌パッケージ。
【請求項6】
前記ヒドロフルオロポリマーがエチレン/テトラフルオロエチレンコポリマーであることを特徴とする請求項5に記載の最終滅菌パッケージ。
【請求項7】
前記パッケージの最終滅菌が前記パッケージを放射線に曝露することによって実施されることを特徴とする請求項1に記載の最終滅菌パッケージ。
【請求項8】
溶融加工性フルオロポリマーを含む可撓性フィルムを提供するステップと、前記フィルムを少なくともバッグ内面が前記フルオロポリマーであるように、容器として使用されるバッグに製作するステップと、前記バッグを上包内に密封するステップと、前記バッグを前記上包を通して有効量の放射線に曝露して前記バッグを滅菌するステップとを含み、前記上包が前記バッグが開封されるまで最終滅菌を維持することを特徴とする、生体物質および腐食性試薬の封じ込めに応用できる使い捨て容器を提供する方法。
【請求項9】
前記フルオロポリマーが、−CF−CF−、−CF−CF(CF)−、−CF−CH−、−CH−CHF−、および−CH−CH−からなる群から選択される1つまたは複数の反復単位を含み、ただし、前記フルオロポリマーが少なくとも35重量%のフッ素を含有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フルオロポリマーがテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーまたはエチレン/テトラフルオロエチレンコポリマーであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記放射線がγまたは電子ビーム照射であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記放射線がγ照射であり、前記バッグを構成する前記フィルムが、前記照射に先だつ前記フィルムの少なくとも80%の引張り強さおよび伸びを示すことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
密封上包を含み、フィルムからできた可撓性バッグを含有し、少なくともバッグ内面が溶融加工性フルオロポリマーからできており、前記密封上包内部が真空下にあることを特徴とする最終滅菌パッケージ。
【請求項14】
密封上包を含み、フィルムからできた可撓性バッグを含有し、少なくともバッグ内面が溶融加工性フルオロポリマーからできており、前記上包内部が不活性ガスでパージされていることを特徴とする最終滅菌パッケージ。

【公表番号】特表2008−539044(P2008−539044A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509187(P2008−509187)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/016333
【国際公開番号】WO2006/119053
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】