説明

生体物質分析装置および生体物質分析方法

【課題】生体物質を含む検体試料を展開するための展開層と、検体試料中の検査対象物と反応して発色する物質を生じる試薬を有する反応層とを備えた分析チップを使用して検体試料の濃度測定する際に、検体試料の展開層中の展開状態に応じて、測定した検体試料中の検査対象物の濃度を補正できるようにする。
【解決手段】分析チップ10の反応層14に、検査対象物20の濃度を測定するための第1の光を照射して分析チップから検出される第1の出力光から検査対象物の第1の濃度を演算し、分析チップの反応層に、近赤外域の第2の光を照射して、分析チップから検出される第2の出力光から検査対象物の展開層中の展開状態を演算し、算出した展開状態を使用して第1の濃度を補正して検体試料中の検査対象物の第2の濃度を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体物質分析装置および生体物質分析方法に関し、特に、点着された検体試料を展開するための展開層と、検体試料中の検査対象物と反応して発色する物質を生じる試薬を有する反応層とを備えた分析チップを使用する生体物質分析装置および生体物質分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような分析チップを使用して、生体物質の検体試料の分析を行う場合には、検体試料を分析チップの展開層上に点着すると、検体試料は、展開層中を展開し、反応層に達すると、検体試料中の検査対象物反応層中の試薬と反応し発色する物質を生じる。光源からこの発色する物質に吸収される波長の光を含む検出光を反応層に照射し、反応層からの拡散反射光を測定することにより、検体試料中の検査対象物の濃度を測定することができる。
【0003】
しかしながら、分析チップによっては、また分析チップへの点着の具合によっては、展開層中の展開状態が一様ではなく、その結果、測定した検体試料中の検査対象物の濃度に誤差が生じてしまう。
【0004】
可視光の反射を使用して、生理学的検査サンプルが検査ストリップに存在しているか否かを測定する技術(特許文献1参照)や、波長1.945μmの光を用いて、分析スライドに分析するのに充分な検体液が存在するか否かを測定する技術(特許文献2参照)は開示されているが、測定した検体試料の濃度を補正する技術ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−505274号公報
【特許文献2】米国特許第4,420,566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、生体物質を含む検体試料を展開するための展開層と、検体試料中の検査対象物と反応して発色する物質を生じる試薬を有する反応層とを備えた分析チップを使用して検体試料の濃度測定する際に、検体試料の展開層中の展開状態に応じて、測定した検体試料中の検査対象物の濃度を補正できる生体物質分析装置および生体物質分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
検査対象の生体物質を含む検体試料を展開するための展開層と、前記生体物質と反応して発色する物質を生じる試薬を有する反応層とを備えた分析チップを保持する分析チップ保持手段と、
前記反応層に、前記発色する物質に吸収される第1の波長成分を含む第1の光を照射する第1の光源と、
前記反応層に前記第1の光を照射した際の、前記分析チップからの第1の出力光を検出する第1の検出手段と、
前記反応層に、前記生体物質に吸収され、大気に吸収されない第2の波長成分を含む第2の光であって、前記第1の光の波長域とは異なる波長域を有する前記第2の光を照射する第2の光源と、
前記反応層に前記第2の光を照射した際の、前記分析チップからの第2の出力光を検出する第2の検出手段と、
第1の検出手段によって検出された前記第1の出力光から前記検体試料中の検査対象物の第1の濃度を演算し、前記第2の検出手段によって検出された前記第2の出力光から前記検体試料の前記展開層中の展開状態を算出し、前記算出した展開状態を使用して前記第1の濃度を補正して前記検体試料中の生体物質の第2の濃度を演算する演算手段と、
を備える生体物質分析装置が提供される。
【0008】
好ましくは、前記第1の光源と前記第2の光源は、同一の光源支持体に配置されている。
【0009】
また、好ましくは、前記第2の出力光は、前記第2の光の、前記分析チップによる反射光であり、前記検体試料の前記展開層中の展開状態は、前記第2の光の前記分析チップによる反射光の光量の時間に対する変化状態である。
【0010】
また、好ましくは、前記第2の光の前記分析チップによる反射光の光量の時間に対する変化状態が最初に変化する時間を前記検体試料の前記展開層への点着開始時間とし、前記点着開始時間から、前記反応層に前記第1の光を照射して前記分析チップからの前記第1の出力光を検出する時間までの前記検体試料の前記展開層への展開状態の反応量を、前記第2の光の前記分析チップによる反射光の光量の時間に対する変化状態から算出し、前記第1の濃度を補正して前記検体試料中の生体物質の第2の濃度を演算する。
【0011】
また、好ましくは、前記第2の光の波長域は、0.7〜2.5μmの波長域内にある。
【0012】
また、好ましくは、前記第1の検出手段と前記第2の検出手段は同一の検出手段である。
【0013】
また、好ましくは、前記第1の出力光からの前記検体試料中の生体物質の第1の濃度の演算は、予め求めておいた前記第1の出力光と前記検体試料中の検査対象物の第1の濃度との関係を示す検量線を用いて行う。
【0014】
また、本発明によれば、
検査対象の生体物質を含む検体試料を展開するための展開層と、前記生体物質と反応して発色する物質を生じる試薬を有する反応層とを備えた分析チップの前記反応層に、前記発色する物質に吸収される第1の波長成分を含む第1の光を照射し、前記分析チップからの前記第1の光に対する第1の出力光を検出する工程と、
前記反応層に、前記生体物質に吸収され、大気に吸収されない第2の波長成分を含む第2の光であって、前記第1の光の波長域とは異なる波長域を有する前記第2の光を照射し、前記分析チップからの前記第2の光に対する第2の出力光を検出する工程と、
第1の検出手段によって検出された前記第1の出力光から前記検体試料中の生体物質の第1の濃度を演算し、前記第2の検出手段によって検出された前記第2の出力光から前記検体試料の前記展開層中の展開状態を算出し、前記算出した展開状態を使用して前記第1の濃度を補正して前記検体試料中の生体物質の第2の濃度を演算する工程と、
を備える生体物質分析方法が提供される。
【0015】
好ましくは、前記第1の光と前記第2の光は、同一の光源支持体に配置されている第1の光源および第2の光源からそれぞれ前記反応層に照射される。
【0016】
また、好ましくは、前記第2の出力光の検出は、前記第2の光の、前記分析チップによる反射光の検出であり、前記検体試料の前記展開層中の展開状態は、前記第2の光の前記分析チップによる反射光の光量の時間に対する変化状態である。
【0017】
また、好ましくは、前記第2の光の前記反応層による拡散反射光の光量の時間に対する変化状態が最初に変化する時間を前記検体試料の前記展開層への点着開始時間とし、前記点着開始時間から、前記反応層に前記第1の光を照射して前記分析チップからの前記第1の出力光を検出する時間までの前記検体試料の前記展開層への展開状態の反応量を、前記第2の光の前記分析チップによる反射光の光量の時間に対する変化状態から算出し、前記第1の濃度を補正して前記検体試料中の生体物質の第2の濃度を演算する。
【0018】
また、好ましくは、前記第2の光の波長域は、0.7〜2.5μmの波長域内にある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、生体物質を含む検体試料を展開するための展開層と、検体試料中の検査対象物と反応して発色する物質を生じる試薬を有する反応層とを備えた分析チップを使用して検体試料の濃度測定する際に、検体試料の展開層中の展開状態に応じて、測定した検体試料中の検査対象物の濃度を補正できる生体物質分析装置および生体物質分析方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】水の吸収を示す図である。
【図2】大気の吸収を示す図である。
【図3】本発明の好ましい実施の形態の生体物質分析装置を説明するための概略構成図である。
【図4】本発明の好ましい実施の形態の生体物質分析装置に好適に使用される光源を説明するための概略構成図である。
【図5】本発明の好ましい実施の形態の生体物質分析装置および生体物質分析方法に使用される分析チップからの近赤外光の拡散反射光と時間の関係を示す図である。
【図6】本発明の好ましい実施の形態の生体物質分析装置および生体物質分析方法に使用される分析チップからの近赤外光の拡散反射光と時間の関係を示す図である。
【図7】本発明の好ましい実施の形態の生体物質分析方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
まず、図1、図2を参照して、水の吸収と大気の吸収を説明する。図1は、水の吸収を示す図であり、図2は、大気の吸収を示す図である。近赤外域(0.7〜2.5μm)の波長域で、大気を透過し、水に強く吸収される波長が存在することがわかる。大気の窓をねらった1.4μm以下、1.6〜1.9μm、2.0〜2.5μmがおおよそ、その波長に相当する。生体物質は水を含んでいるので、この波長の光を含む光を使用すれば、大気中で生体物質を検出することができる。
【0023】
次に、図3、図4を参照して、本発明の好ましい実施の形態の生体物質分析装置を説明する。本発明の好ましい実施の形態の生体物質分析装置100は、生体物質を分析するための分析チップ10を保持する分析チップ保持部30と、光源40と、フォトダイオード50と、コンピュータ60とを備えている。
【0024】
分析チップ10は、PET等からなる透明支持体12上に設けられた反応層14と、反応層上14に設けられた反射層16と、反射層16上に設けられた展開層18とを備えている。展開層18では、生体物質を含む検体試料20が点着されると、毛細管現象によって展開していく。反射層16は、生体物質を含む検体試料20の光学的な影響を遮断するために用いられているが、検体試料20の種類や光源40からの光の波長によっては省略することもできる。反応層14は、検体試料20中の検査対象物と反応して発色する物質を生じる試薬を備えている。
【0025】
光源40は、図4に示すように、2種類の光源42、43を備えている。光源42、43は、同一の光源支持体41に配置されている。光源42、43からの光は、いずれも、透明支持体12側から反応層14に照射される。
【0026】
光源42は、反応層14で、試薬が検体試料20中の検査対象物と反応して生じる発色する物質に吸収される波長の光を含む光(検出光)を反応層14に照射する。光源42は、レーザー、LEDなどの光源でよく、特に制限はない。ただし、波長帯域が狭く、試薬が検体試料20と反応して生じる発色する物質に吸収される波長の光に整合していることが好ましい。例えば、可視光域のブロードな光源をバンドパスフィルタ(BPF)で特定波長付近を切り出した光であってもよい。
【0027】
光源43は、上述の近赤外域(0.7〜2.5μm)の波長域の波長の光を含む光を反応層14に照射する。光源43は、レーザー、LEDなど赤外光を含む光源であれば、制限がない。ただし、波長帯域が狭く、赤外光、特に近赤外域(0.7〜2.5um)に整合していることが好ましい。例えば、ハロゲンランプのようなスペクトルのブロードな光源をバンドパスフィルタ(BPF)で特定波長付近を切り出した光であってもよい。
【0028】
光源42から分析チップ10に反応層14側から照射された光は、分析チップ10によって(主に反応層14によって)吸収、透過、反射される。分析チップ10による反射光のうち、拡散反射光をフォトダイオード50によって検出する。また、光源43から分析チップ10に反応層14側から照射された光は、分析チップ10によって(主に反応層14によって)吸収、透過、反射される。分析チップによる反射光(拡散反射光、正反射光)をフォトダイオード50によって検出する。本実施の形態では、フォトダイオード50はシリコン製のフォトダイオードを使用しており、同じフォトダイオード50で可視光、近赤外光の両方を検出することができるので、光源42から分析チップ10に反応層14側から照射された光に対する拡散反射光および光源43から分析チップ10に反応層14側から照射された光に対する反射光(拡散反射光、正反射光)の両方を同じフォトダイオード50で検出しているが、光源42から分析チップ10に照射された光に対する拡散反射光を検出する検出器、および光源43から分析チップ10に照射された光に対する反射光(拡散反射光、正反射光)を検出する検出器を別個に設けてもよい。
【0029】
コンピュータ60は、光源40と、フォトダイオード50との制御と、後に説明する演算とを行う。
【0030】
本実施の形態のような分析チップ10を使用するドライ式の生化学検査においては、検体試料20は点着後展開層(メンブレン)18内を毛細管現象によって広がって、反射層16を通って反応層14に達し、そこで、反応層14中の試薬と反応して発色する物質を生じる。そして、光源42からの光に対する分析チップ10から(主に反応層14から)の拡散反射光の強度をフォトダイオード50で検出すると、検体試料20中の検査対象物の濃度が測定できる。フォトダイオード50で検出した拡散反射光の強度と、検体試料20中の検査対象物の濃度との関係を示す検量線を予め求めてコンピュータ60に記憶しておき、その検量線を使用して、フォトダイオード50で検出した拡散反射光の強度から検体試料20中の検査対象物の濃度をコンピュータ60で求める。
【0031】
本実施の形態のような分析チップ10を使用するドライ式の生化学検査においては、検体試料20を展開層18に点着後、展開層(メンブレン)18内を毛細管現象によって広がっていく。分析チップ(スライド)10を垂直方向から見たとき、検体試料20は二次元的に展開していくが、この展開のスピード、経過時間によって、検体試料20と反応層14との反応状態は大きく変化する。例えば、展開が非常にゆっくりである場合、点着された中央付近が反応が最も進み、展開した最後の端の部分では、反応が最も遅くなり、反応の空間的な分布が生じる。これは展開が速い場合でも完全には無視することができない。このような展開速度は、分析チップ(スライド)10自体の展開層18の親疎水性の空間分布の違いや検体試料20の組成(例えば、ヘマトクリット値の違い、健常血と脂肪血との違い等)や処理の違い(例えば、抗凝固剤にヘパリン処理するか、EDTA処理するか等)によっても異なり、一定ではない。
【0032】
そこで、光源43からの近赤外域(0.7〜2.5μm)の波長域の波長の光を含む光に対する分析チップ10からの出力光(本実施の形態では拡散反射光、正反射光)をフォトダイオード50で検出し、検体試料20の展開層18中の展開状態を演算し、算出した展開状態を使用して、上述のように、検量線を使用してフォトダイオード50で検出した拡散反射光の強度からコンピュータ60で求めた検体試料20中の検査対象物の濃度を補正して、検体試料20のより高精度な濃度をコンピュータ60で演算する。なお、検体試料20の展開層18中の展開状態を演算するには、光源43からの近赤外域の波長の光を含む光に対する分析チュップ10からの出力光のうち、拡散反射光だけでなく、正反射光を利用してもよい。
【0033】
図5は、本発明の好ましい実施の形態の生体物質分析装置および生体物質分析方法に使用される分析チップからの近赤外光の拡散反射光と時間の関係を示す図である。横軸は時間で、縦軸はフォトダイオード50で検出した、光源43からの近赤外域(0.7〜2.5μm)の波長域の波長の光を含む光に対する分析チップ10からの拡散反射光の光量である。生体物質を含む検体試料20が点着されると、拡散反射光の光量が、まず最初に、急に減少する(点A参照)ので、検体試料20の点着の有無を検出することができる。その後、検体試料20は、展開層18内を毛細管現象によって展開していく。検体試料20の展開層18内での展開が終了すると、拡散反射光の光量が飽和し一定となる(点B参照)ので、検体試料20の展開終了が検出できる。
【0034】
しかしながら、上述のように展開速度は一定ではないので、反応層14の発色色素量が検査対象物の濃度と共に増大する場合に、展開速度が遅いと、予め求めた検量線を使用して、フォトダイオード50で検出した拡散反射光の強度から検体試料20中の検査対象物の濃度を求めると、濃度が実際の濃度よりも低い値を示してしまう。
【0035】
点着を開始してからある一定時刻経過したときの、光源42からの検出光に対する分析チップ10からの出力光の値により、検体試料の濃度を算出するエンドポイント法での補正方法を示す。
【0036】
図6のように赤外線反射光量の変動が観察されているとき、「データ測定」の時刻に光源42からの検出光に対する分析チップ10からの出力光を測定し、その出力光の値S1を得たとする。図6(c)の面積Eは、検体試料液が充分速く展開したときの反応量に相当し、図6(b)の面積Dは、検体試料液の展開が遅かったときの反応量に相当する。
【0037】
検体試料液が充分速く展開したときの出力光を用いて予め検量線F(S)を作成した場合の検体試料の濃度の求め方を示す。濃度を求める実際の測定でも検体試料液が充分速く展開し、下図の破線のような赤外線反射光量が測定され、光源42からの検出光に対する分析チップ10からの出力光がS1の値を示したとき、検体試料の濃度Cは検量線を用いてC=F(S1)で求められる。次に、濃度を求める実際の測定で検体試料液の展開が遅く、下図の実線のような赤外線反射光量が測定され、光源42からの検出光に対する分析チップ10からの出力光がS1の値を示したとき、検体試料液の展開が遅く、全体として反応量が減少した影響を補正するために、S1×E/Dの補正値を得てから、検量線を用いてC=F(S1×E/D)で求められる。一般的に表現すると、検量線を決定したときの検体試料液の展開状態の反応量を示す面積を分子に、実際の測定での検体試料液の展開状態の反応量を示す面積を分母にして、光源42からの検出光に対する分析チップ10からの出力光の値を補正することで、予め検量線を求めたときの反応量に補正することが可能になる。
【0038】
光源42からの検出光に対する分析チップ10からの出力光を面積Eと面積Dから補正する演算方法は、反応時間に対して信号量が比例するとして両者を除した値E/Dを出力値S1に掛ける最も単純な補正計算であってもよいが、一般的に用いられる関数を用いて計算を行っても良い。
【0039】
任意の関数P, Q, Rを用いて、補正計算は
S1 × P(E) / Q(D)
あるいは、S1 × R(E/D)
と表せる。
【0040】
図7は、本発明の好ましい実施の形態の生体物質分析方法を説明するためのフローチャートである。まず、光源40の光源42からの検出光および光源43からの近赤外光の分析チップ10への照射を開始する(ステップ101)。次に、フォトダイオード50による光源43からの近赤外光の分析チップ10による反射光の検出出力の取込を開始する(ステップ102)。次に、検体試料20を点着する(ステップ103)。次に、フォトダイオード50による光源42からの検出光の分析チップ10による拡散反射光の検出出力の取込を開始する(ステップ104)。次に、フォトダイオード50による光源42からの検出光の分析チップ10による拡散反射光の検出出力の取込を終了する(ステップ105)。次に、フォトダイオード50による光源43からの近赤外光の分析チップ10による反射光の検出出力の取込を終了する(ステップ106)。次に、光源40の光源42からの検出光および光源43からの近赤外光の分析チップ10への照射を終了する(ステップ107)。次に、検出光の散乱反射光の検出データを用いて、予めメモリに記憶されている検量線を利用して検体試料20中の検査対象物の濃度を求める(ステップ108)。次に、近赤外光の反射光の検出データを用いて、図5に示すような、展開状態を演算する(ステップ109)。次に、図6を参照して説明したような、濃度補正演算を行う(ステップ110)。
【0041】
なお、近赤外域(0.7〜2.5μm)の波長域の波長の光を含む光を発する光源43を、検体試料20中の検査対象物が反応層14中の試薬と反応して発色する物質を検出する光を発する光源43と同じ場所(光源支持体41)に並べることによって、装置がコンパクトになり、また、検出直前に点着の有無を確認することができ、分注器による点着ミスをエラーとして検出できる。点着有りを検出し、測定のトリガー(測定時間のゼロ点)にすることができる。また、近赤外域の波長域の波長の光を含む光を、分析チップ(スライド)10に広範囲に照射しておくと、検体試料20の展開状態によって、赤外吸収量が徐々に変化するので、展開速度を高精度に検出することができる。この展開速度を使って、より高精度に被検出物量を定量することができる。好ましくは、図4に示すように、複数の光源42、43を使用して、光源42と光源43とをアレイ状に配列する。
【0042】
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0043】
10 分析チップ
12 透明支持体
14 反応層
16 反射層
18 展開層
20 検体試料
30 分析チップ保持部
40 光源
41 光源支持体
42 光源
43 光源
50 フォトダイオード
60 コンピュータ
100 生体物質分析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の生体物質を含む検体試料を展開するための展開層と、前記生体物質と反応して発色する物質を生じる試薬を有する反応層とを備えた分析チップを保持する分析チップ保持手段と、
前記反応層に、前記発色する物質に吸収される第1の波長成分を含む第1の光を照射する第1の光源と、
前記反応層に前記第1の光を照射した際の、前記分析チップからの第1の出力光を検出する第1の検出手段と、
前記反応層に、前記生体物質に吸収され、大気に吸収されない第2の波長成分を含む第2の光であって、前記第1の光の波長域とは異なる波長域を有する前記第2の光を照射する第2の光源と、
前記反応層に前記第2の光を照射した際の、前記分析チップからの第2の出力光を検出する第2の検出手段と、
第1の検出手段によって検出された前記第1の出力光から前記検体試料中の生体物質の第1の濃度を演算し、前記第2の検出手段によって検出された前記第2の出力光から前記検体試料の前記展開層中の展開状態を算出し、前記算出した展開状態を使用して前記第1の濃度を補正して前記検体試料中の生体物質の第2の濃度を演算する演算手段と、
を備える生体物質分析装置。
【請求項2】
前記第1の光源と前記第2の光源は、同一の光源支持体に配置されている請求項1記載の生体物質分析装置。
【請求項3】
前記第2の出力光は、前記第2の光の、前記分析チップによる反射光であり、前記検体試料の前記展開層中の展開状態は、前記第2の光の前記分析チップによる反射光の光量の時間に対する変化状態である、請求項1または2記載の生体物質分析装置。
【請求項4】
前記第2の光の前記分析チップによる反射光の光量の時間に対する変化状態が最初に変化する時間を前記検体試料の前記展開層への点着開始時間とし、前記点着開始時間から、前記反応層に前記第1の光を照射して前記分析チップからの前記第1の出力光を検出する時間までの前記検体試料の前記展開層への展開状態の反応量を、前記第2の光の分析チップによる反射光の光量の時間に対する変化状態から算出し、前記第1の濃度を補正して前記検体試料中の生体物質の第2の濃度を演算する請求項3記載の生体物質分析装置。
【請求項5】
前記第2の光の波長域は、0.7〜2.5μmの波長域内にある請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体物質分析装置。
【請求項6】
前記第1の検出手段と前記第2の検出手段は同一の検出手段である請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体物質分析装置。
【請求項7】
前記第1の出力光からの前記検体試料中の生体物質の第1の濃度の演算は、予め求めておいた前記第1の出力光と前記検体試料中の検査対象物の第1の濃度との関係を示す検量線を用いて行う請求項1〜6のいずれか1項に記載の生体物質分析装置。
【請求項8】
検査対象の生体物質を含む検体試料を展開するための展開層と、前記生体物質と反応して発色する物質を生じる試薬を有する反応層とを備えた分析チップの前記反応層に、前記発色する物質に吸収される第1の波長成分を含む第1の光を照射し、前記分析チップからの前記第1の光に対する第1の出力光を検出する工程と、
前記反応層に、前記生体物質に吸収され、大気に吸収されない第2の波長成分を含む第2の光であって、前記第1の光の波長域とは異なる波長域を有する前記第2の光を照射し、前記分析チップからの前記第2の光に対する第2の出力光を検出する工程と、
第1の検出手段によって検出された前記第1の出力光から前記検体試料中の生体物質の第1の濃度を演算し、前記第2の検出手段によって検出された前記第2の出力光から前記検体試料の前記展開層中の展開状態を算出し、前記算出した展開状態を使用して前記第1の濃度を補正して前記検体試料中の生体物質の第2の濃度を演算する工程と、
を備える生体物質分析方法。
【請求項9】
前記第1の光と前記第2の光は、同一の光源支持体に配置されている第1の光源および第2の光源からそれぞれ前記反応層に照射される請求項8記載の生体物質分析方法。
【請求項10】
前記第2の出力光の検出は、前記第2の光の、前記分析チップによる反射光の検出であり、前記検体試料の前記展開層中の展開状態は、前記第2の光の前記分析チップによる反射光の光量の時間に対する変化状態である、請求項8または9記載の生体物質分析方法。
【請求項11】
前記第2の光の前記反応層による拡散反射光の光量の時間に対する変化状態が最初に変化する時間を前記検体試料の前記展開層への点着開始時間とし、前記点着開始時間から、前記反応層に前記第1の光を照射して前記分析チップからの前記第1の出力光を検出する時間までの前記検体試料の前記展開層への展開状態の反応量を、前記第2の光の前記分析チップによる反射光の光量の時間に対する変化状態から算出して、前記第1の濃度を補正して前記検体試料中の生体物質の第2の濃度を演算する請求項10記載の生体物質分析方法。
【請求項12】
前記第2の光の波長域は、0.7〜2.5μmの波長域内にある請求項8〜11のいずれか1項に記載の生体物質分析方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−215467(P2012−215467A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80967(P2011−80967)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】