説明

生体物質捕捉器及び生体物質検出装置

【課題】生体物質検出装置を小型に構成できるようにする。
【解決手段】生体物質検出装置10は、本体部2内を貫通する流路2Nに対象物質TBを捕捉・抽出する捕捉部3を設けた捕捉チップ1を用い、当該流路2N内に試料液QSを通液して捕捉部3により対象物質TBを捕捉し、光源11から出射された測定光L1を捕捉部3に照射し、これに応じて捕捉部3から得られる検出光L2の光強度を検出部14により検出することにより、捕捉チップ1の捕捉部3に捕捉した対象物質TBをそのまま用いて検出作業を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体物質捕捉器及び生体物質検出装置に関し、例えば特定の生体物質を検出する生体物質検出装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオテクノロジー分野における研究・開発が盛んに行われており、これに伴って生体サンプルに含まれる特定の生体物質、例えばDNA(Deoxyribonucleic Acid)、RNA(Ribonucleic Acid)或いは蛋白質等を検出する生体物質検出装置が提案されている。
【0003】
かかる生体物質検出装置の一つとして、所定の検体に反応するプローブが固相化されてなる微粒子を捕捉する捕捉部材を設け、当該捕捉部材が当該微粒子を捕捉した状態を撮像して、画像解析により所望の検体を測定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−354164公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる構成の生体物質検出装置では、捕捉部材が当該微粒子を捕捉した状態を撮像して画像解析するため、どうしても装置構成が複雑となり、これに伴い装置全体が大型化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、検出装置を小型に構成できる生体物質捕捉器及び小型に構成できる生体物質検出装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明の生体物質捕捉器においては、所定材料でなる本体部と、本体部の一側面でなり略平面状に形成された第1側面と、本体部内を第1側面と略平行に貫通する流路と、流路中に設けられ、所定の溶媒中に含まれる所定の生体物質を捕捉する捕捉部とを設けるようにした。
【0008】
これにより本発明の生体物質捕捉器は、捕捉部により所望の生体物質を捕捉でき、且つ当該生体物質を捕捉した捕捉部から得られる検出光を、本体部の第1側面を介して所定の生体物質検出装置により検出させることができる。
【0009】
また本発明の生体物質検出装置においては、所定材料でなる本体部と、本体部の一側面でなり略平面状に形成された第1側面と、本体部内を第1側面と略平行に貫通する流路と、流路中に設けられ、所定の溶媒中に含まれる所定の生体物質を捕捉する捕捉部とを有する生体物質捕捉器と、生体物質を捕捉した捕捉部から第1側面を介して得られる検出光の強度を検出し、その検出結果に応じた検出信号を生成する検出部とを設けるようにした。
【0010】
これにより本発明の生体物質検出装置は、生体物質捕捉器の捕捉部により所望の生体物質を捕捉させることができ、且つ当該生体物質を捕捉した捕捉部に捕捉したから得られる検出光を、第1側面を介して出射させることができ、検出部によりその光強度を検出することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、捕捉部により所望の生体物質を捕捉でき、且つ当該捕捉部に捕捉した生体物質から得られる検出光を、本体部の第1側面を介して所定の生体物質検出装置により検出させることができ、かくして検出装置を小型に構成できる生体物質捕捉器を実現できる。
【0012】
また本発明によれば、生体物質捕捉器の捕捉部により所望の生体物質を捕捉させることができ、且つ当該捕捉部に捕捉した生体物質から得られる検出光を、第1側面を介して出射させることができ、検出部によりその光強度を検出することができる。かくして本発明は、小型に構成できる生体物質検出装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態による捕捉チップの構成を示す略線的斜視図である。
【図2】第1の実施の形態による生体物質検出装置の全体構成を示す略線図である。
【図3】特定のmRNAの検出結果を示す略線図である。
【図4】第2の実施の形態による捕捉チップの構成を示す略線図である。
【図5】第2の実施の形態による生体物質検出装置の全体構成を示す略線図である。
【図6】第3の実施の形態による捕捉チップの構成を示す略線図である。
【図7】第3の実施の形態による生体物質検出装置の全体構成を示す略線図である。
【図8】他の実施の形態による捕捉チップの構成を示す略線図である。
【図9】他の実施の形態による捕捉チップ及び生体物質検出装置の全体構成を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(捕捉チップの側面を平面状に構成した例)
2.第2の実施の形態(捕捉チップの1側面にレンズを形成した例)
3.第3の実施の形態(捕捉チップの2側面にレンズを形成した例)
4.他の実施の形態
【0015】
<1.第1の実施の形態>
[1−1.捕捉チップの構成]
第1の実施の形態において、捕捉チップ1は、図1に示すように、全体として略直方体状に形成された本体部2を中心に構成されている。
【0016】
本体部2の側面2A及び2Bは、当該本体部2における長手方向の両端面となっており、それぞれ略平面状に形成されている。また本体部2の側面2C及び2Dは、それぞれほぼ平面状に形成されると共に、互いにほぼ平行となっている。
【0017】
以下、説明の都合上、側面2A及び2Bを結ぶ方向(すなわち長手方向)をx方向、側面2C及び側面2Dを結ぶ方向(図1における上下方向)をy方向、x方向及びy方向のいずれにも直交する方向をz方向とそれぞれ定義する。
【0018】
捕捉チップ1は、比較的小型に形成されており、例えば本体部2におけるy方向及びz方向の長さが500[μm]、x方向の長さが60[mm]となっている。
【0019】
また本体部2には、x方向に沿って、当該本体部2内を内部を貫通するように孔状の流路2Nが形成されている。流路2Nは、側面2Aから2Bに渡るように、側面2C及び2Dとほぼ平行に形成されており、またその断面が、y方向を短径としz方向を長径とする楕円状に構成されている。
【0020】
この流路2Nは、側面2Aの孔部2AH及び側面2Bの孔部2BHにそれぞれ所定の流入管及び排出管が接続された上で、捕捉対象となる特定の生体物質(以下これを対象物質TBと呼ぶ)を含む試料液QS等が流されるようになされている。
【0021】
また本体部2は、透明な樹脂材料でなり、流路2Nと共に一体成形されるようになされている。これにより本体部2は、側面2C及び2Dを通る光を効率よく流路2N内に到達させることができる。
【0022】
さらに捕捉チップ1は、流路2Nにおけるy方向のほぼ中央部分に、特定のDNA、RNA或いは蛋白質等を捕捉する(すなわち抽出する)担体でなる捕捉部3が設けられている。
【0023】
捕捉部3は、例えばポリスチレン等でなり微小な球状に形成されたプラスチックビーズ3Bが所定量充填され、流路2N内に固定されている。このプラスチックビーズ3Bは、対象物質TBを捕捉する所定の物質が表面に結合されている。
【0024】
このため捕捉部3は、流路2Nに対象物質TBを含む試料液QS等が通液された場合、プラスチックビーズ3Bの表面に結合された物質の作用により、当該試料液QSに含まれる対象物質TBを捕捉することができる。また捕捉チップ1は、捕捉部3に対象物質TBを捕捉した状態を維持できる。
【0025】
このように捕捉チップ1は、流路2Nに試料液QS等が流されると、対象物質TBに応じた物質を有する捕捉部3により、当該試料液QS中に含まれる対象物質TBを捕捉するようになされている。
【0026】
[1−2.生体物質検出装置の構成]
図2に示すように、第1の実施の形態における生体物質検出装置10は、捕捉チップ1(図1)を用いて対象物質TBを捕捉した上で、当該対象物質TBを検出するようになされている。
【0027】
すなわち捕捉チップ1は、図示しない固定部材等により所定の取付位置に固定されると共に、供給管17及び排出管18がそれぞれ孔部2AH及び2BHに接続される。
【0028】
この状態で試料液QSが供給管17から供給され排出管18から排出される、いわゆる通液が行われると、捕捉チップ1は、捕捉部3により対象物質TBを捕捉し、その状態を保持する。
【0029】
また捕捉チップ1の捕捉部3は、対象物質TBと作用して標識となる物質(いわゆるプローブ)を含むプローブ液QPが通液されると、捕捉した対象物質TBにプローブが作用し、当該プローブを間接的に捕捉する。すなわち捕捉部3には、捕捉した対象物質TBの量に応じた量のプローブが間接的に捕捉される。
【0030】
一方、光源11は、所定波長でなる測定光L1を出射し、ビームスプリッタ12へ入射させる。ビームスプリッタ12は、反射面12Sにおいて測定光L1を所定の透過率で透過させ、対物レンズ13へ入射させる。
【0031】
対物レンズ13は、測定光L1を捕捉部3に集光し、当該捕捉部3内に焦点を形成する。これに応じて捕捉部3の対象物質TB又は当該対象物質TBに作用したプローブは、測定光L1を反射し、或いは当該測定光L1に応じて検出光L2を発生等させる(詳しくは後述する)。
【0032】
この検出光L2は、測定光L1の光強度や捕捉部3に捕捉されている対象物質TB(又はプローブ)の量に応じた光強度となる。検出光L2は、発散光として対物レンズ13へ入射し、当該対物レンズ13により平行光に変換され、ビームスプリッタ12へ入射する。
【0033】
ビームスプリッタ12は、検出光L2を反射面12Sにおいて所定の反射率で反射させ、検出部14へ照射する。
【0034】
検出部14は、例えばフォトディテクタ等でなり、検出光L2を受光すると共にその光強度に応じた検出信号Sを生成し、これを図示しない信号処理部へ送出する。このとき生成された検出信号Sは、測定光L1の光強度が一定であれば、捕捉部3に捕捉されている対象物質TB(又は当該対象物質TBに作用したプローブ)の量に応じた信号レベルとなる。
【0035】
これに応じて信号処理部は、当該検出信号Sを検出値に変換するなどした上で、当該検出値を所定の表示部に数値、グラフや波形等として表示し、或いは所定の外部機器(図示せず)へ送信する。
【0036】
このように生体物質検出装置10は、捕捉チップ1の流路2Nに試料液QSを通液した後、捕捉部3に測定光L1を照射し、これに応じて発生する検出光L2の光強度に応じた検出信号Sを生成することにより、対象物質TBの量を検出するようになされている。
【0037】
[1−3.生体物質検出装置による対象物質の検出例]
以下では、特定のmRNA(messenger RNA)を対象物質TBとし、培養細胞より抽出した全てのRNAから生体物質検出装置10を用いて対象物質TBを検出した場合について説明する。
【0038】
まず捕捉チップ1について説明する。捕捉部3を構成するプラスチックビーズ3Bとしては、その表面に、ビオチン−ストレプトアビジン結合によりポリ(dT)配列を結合したものを用いることができる。
【0039】
具体的には、まず粒径6[μm]のプラスチックビーズ3Bと、ポリデオキシヌクレオチドとして5’末端をビオチン修飾した50塩基のポリ(dT)配列の一本鎖DNA(ssDNA)を用意した。次に、プラスチックビーズ3Bとポリ(dT)配列を持つ一本鎖DNAとを純水中で懸濁し、当該プラスチックビーズ3Bの表面にポリ(dT)配列を結合させた。これにより対象物質TBを捕捉し得るプラスチックビーズ3Bが生成された。
【0040】
次に、流路2Nに未だ捕捉部3が設けられていない、いわば「空の」本体部2に対し、供給管17からプラスチックビーズ3Bを充填することにより、捕捉部3(すなわちハイブリッド形成のための担体充填部、いわゆるベッド)が形成された。
【0041】
因みに、捕捉部3のx方向における長さは約40[mm]であった。また、流路2Nに純水を通液することにより、捕捉部3内の結合していないポリ(dT)配列は洗い流した。
【0042】
続いて、コンディショニング液として、2[ml]の0.2%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)含有0.3M塩化ナトリウム水溶液を用意し、これを流路2Nに流した。この水溶液はハイブリッド形成条件となっており、捕捉部3を調整するコンディショニング液や非特異的に吸着したDNAやRNA等を洗浄するための洗浄液としても用いた。
【0043】
このようにして、対象物質TBである特定のmRNAを捕捉し得る捕捉チップ1を作成した。
【0044】
次に、この捕捉チップ1を用いて、培養細胞より抽出した全RNAからmRNAを検出することを試みた。具体的には、培養したHeLa細胞から全RNA抽出キット(RNeasy protect mini kit、Qiagen)を用いて抽出した5[μg]の全RNAを、350[μl]の0.2%SDS含有0.3M塩化ナトリウム水溶液に溶解し、試料液QSとして調製した。
【0045】
また対象物質TBとしてのmRNAは、β−アクチン(ACTB)及びグリセロアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAPD)の各々のmRNAとした。
【0046】
ACTBとGAPDのmRNAの検出用のプローブとしては、各mRNAのポリ(A)テールの近傍の配列から21塩基の長さの配列を選択し、その配列に相補的で5’末端をCy3標識したssDNA(塩基数21)を用意した。各々のssDNAを濃度5μMになる様に0.2[%]SDS含有0.3M塩化ナトリウム水溶液に溶解することにより、ACTBとGAPDのmRNA用のプローブ液QPとした。
【0047】
このように調製した試料液QSを捕捉チップ1の流路2Nに通液し、その後700[μl]の0.2%SDS含有0.3M塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。次に、ACTB又はGAPDのプローブ液QPを捕捉チップ1の流路2Nに通液し、2[ml]の0.2%SDS含有0.3M塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。
【0048】
このとき、捕捉チップ1への試料液QSの通液・洗浄後及びプローブ液QPの通液・洗浄後における、生体物質検出装置10による検出信号Sの値、すなわち捕捉部3の蛍光による光強度(蛍光強度)をそれぞれ測定した。
【0049】
この結果、図3に示すように、ACTB又はGAPDのいずれのmRNAプローブを用いた場合でも、蛍光強度は増加した。
【0050】
これは、プラスチックビーズ3Bのポリ(dT)配列と全RNA中のmRNAのポリ(A)テールがハイブリッドを形成することにより、mRNAがプラスチックビーズ3B上に捕獲されたことを示している。さらに、ACTB又はGAPDにおけるmRNA検出用の特異プローブが、捕捉された様々なmRNAの中に存在するACTBまたはGAPDのmRNAと、2段目のハイブリッドを形成したことも示された。
【0051】
このことは、一連の処理により各々のmRNAを検出できたことを表している。すなわち、生体物質検出装置10において、表面にポリ(dT)配列を結合させたプラスチックビーズ3Bを捕捉チップ1の捕捉部3とすることにより、対象物質TBとしたmRNAをいわゆるサンドイッチ・ハイブリッド形成法によって検出することができた。
【0052】
ここで、ハイブリッド形成反応は、水素結合による物理化学的な結合反応である。そのため、ハイブリッド形成における他の条件が一致しているならば、ハイブリッド形成量は、結合する2本の核酸鎖の濃度により決まる。すなわち、ハイブリッドは定量的に形成される。
【0053】
従って、プローブ濃度等のハイブリッド形成条件を一定に保つことができれば、全RNA中における対象物質TBとしたmRNAの濃度に応じてハイブリッドの形成量も決まる。このため、測定されたハイブリッド形成量から、元のmRNAの濃度(試料溶液量が既知の場合は元のmRNA量)を逆算して求めることができる。すなわち、検出光L2の光強度に応じた検出信号Sを基に、このような計算を行うことにより、対象物質TB(すなわち特定のmRNA)を定量することが可能となる。
【0054】
[1−4.動作及び効果]
以上の構成において、捕捉チップ1は、本体部2内をx方向に貫通する流路2N内に、表面に対象物質TBを捕捉・抽出する所定の物質が結合されたプラスチックビーズ3Bが充填されることにより、捕捉部3が形成される。
【0055】
生体物質検出装置10は、捕捉チップ1の流路2Nに試料液QSを通液することにより、捕捉部3のプラスチックビーズ3Bによって対象物質TBを捕捉し、その状態を保持する。さらに生体物質検出装置10は、流路2Nにプローブ液QPを通液する。
【0056】
一方生体物質検出装置10は、光源11から出射された測定光L1を捕捉部3に照射し、これに応じて捕捉部3から得られる検出光L2の光強度を検出部14により検出する。
【0057】
従って生体物質検出装置10は、捕捉チップ1の捕捉部3に捕捉した対象物質TBの量を、当該捕捉部3に捕捉した状態で検出することができるため、分離・抽出といった他の操作を行う必要が無く、短時間で且つ容易に検出作業を行うことができる。
【0058】
このため生体物質検出装置10は、対象物質TBの抽出処理と検出処理とを別々に行うような検出手法と比較して、装置構成を簡略化することができ、全体構成を小型化することができる。
【0059】
例えば、従来の一般的な検出手法として、対象物質TBと相互作用するプローブを反応プレート、反応容器又は反応ウェル等に固定したDNAチップ等に試料液QSを流し、当該プローブと反応した生体物質を評価するものがあった。
【0060】
しかしながらかかる手法は、一般に、網羅解析或いは多数物質の同時解析に適したものといえる。すなわち、特定の生体物質のみを検出する場合であっても、その準備及び操作は網羅解析等と同様に大がかりなものとなってしまい、手間を要するほか、検出装置あたりのコストも高くなってしまう。
【0061】
また、特定のDNA、RNA或いは蛋白質等の生体物質を抽出した後に、これを検出する手法としてHPLC(High performance liquid chromatography、高速液体クロマトグラフィー)がある。
【0062】
しかしながらHPLCでは、対象物質TBを分離した後、液送を用い、別の箇所に設けた検出部により当該生体物質を検出する。このため、一般に操作性が悪く長時間を要してしまう。
【0063】
さらにHPLCでは、対象物質TBを含む液体を担体に順次流し、このとき分子の大きさや吸着担体との親和性の違いによる当該担体との吸脱着時間の差を利用して遅延時間を作り出し、時間分離することにより対象物質TBを検出する。
【0064】
このためHPLCでは、分離した対象物質TBが1回の操作で失われてしまい、検出操作ミス等があってもやり直すことができなかった。
【0065】
これに対し本発明の生体物質検出装置10は、捕捉チップ1の流路2N内に対象物質TBを捕捉し得る捕捉部3を形成し、当該流路2N内に試料液QS及びプローブ液QPを通液するだけで、検出光L2を検出し得る状態となる。このため、生体物質検出装置10は、装置構成を極めて簡素化できると共に、操作手順も簡略化することができる。
【0066】
また生体物質検出装置10は、検出部14をフォトディテクタ等により構成し、当該検出部14により検出光L2の光強度を検出すれば良い。このため生体物質検出装置10は、撮像素子を用いて画像を検出し、当該画像に対し画像解析処理を施すような場合と比較して、検出部14の構成を簡素化でき、また信号処理等における演算処理量も大幅に低減できるので、装置全体を簡略化・小型化することができる。
【0067】
さらに生体物質検出装置10では、対象物質TBが捕捉部3に捕捉され、そのまま保持されるため、検出光L2を検出する操作において作業ミス等があったとしても、保持されている対象物質TBを再度利用して、検出操作のみをやり直すことができる。
【0068】
一方、捕捉チップ1は、側面2C及び2Dが略平面状に形成されている。このため生体物質検出装置10は、当該側面2C及び2Dが曲面状に(すなわち本体部2が略円筒状に)形成された場合と比較して、側面2Dの境界面に対する測定光L1及び検出光L2の入射角度を深くすることができ、その反射率を低減させることができる。このため生体物質検出装置10は、検出光L2の光強度を高い感度で検出することができる。
【0069】
さらに捕捉チップ1は、本体部2が一体成形されているため、複数材料の貼り合わせ等を行う場合よりも小型に構成することができる。
【0070】
また捕捉チップ1の捕捉部3は、対象物質TBの種類等に応じてプラスチックビーズ3Bの表面に結合する物質を定めることにより、当該対象物質TBを適切に捕捉・抽出することができる。
【0071】
以上の構成によれば、生体物質検出装置10は、本体部2内を貫通する流路2Nに対象物質TBを捕捉・抽出する捕捉部3を設けた捕捉チップ1を用い、当該流路2N内に試料液QSを通液して捕捉部3により対象物質TBを捕捉する。また生体物質検出装置10は、光源11から出射された測定光L1を捕捉部3に照射し、これに応じて捕捉部3から得られる検出光L2の光強度を検出部14により検出する。これにより生体物質検出装置10は、捕捉チップ1の捕捉部3に捕捉した対象物質TBをそのまま用いて検出作業を行うことができる。
【0072】
<2.第2の実施の形態>
[2−1.捕捉チップの構成]
第2の実施の形態では、第1の実施の形態における捕捉チップ1(図1)に代えて、図4(A)及び(B)に示す捕捉チップ21が用いられるようになされている。
【0073】
捕捉チップ21は、捕捉チップ1の本体部2と対応する本体部22を中心に構成されている。本体部22は、本体部2の側面2A、2B、2C及び2D並びに孔部2AH及び2BHとそれぞれ同様の側面22A、22B、22C及び22D並びに孔部22AH及び22BHが設けられている。
【0074】
また本体部22は、本体部2における流路2Nと同様、当該本体部22内をx方向に貫通する流路22Nが形成されている。この流路22Nは、捕捉チップ1の場合と同様に、x方向のほぼ中央部分にプラスチックビーズ3Bが所定量充填されることにより、捕捉部3が形成されるようになされている。
【0075】
このため捕捉チップ21は、捕捉チップ1と同様、流路22Nに試料液QS等が通液されると、対象物質TBに応じた物質を有する捕捉部3により、当該試料液QS中に含まれる対象物質TBを捕捉することができる。
【0076】
さらに本体部22は、側面22Dのほぼ中央部分、すなわち捕捉部3と対応する部分にレンズ部22DLが形成されている。このレンズ部22DLは、生体物質検出装置10(図2)における対物レンズ13と同様の光学的機能を有している。
【0077】
[2−2.生体物質検出装置の構成]
図2と対応する図5に示すように、生体物質検出装置30は、生体物質検出装置10と比較して捕捉チップ1に代えて捕捉チップ21が設けられ、また対物レンズ13が省略されている点が相違するものの、他は同様に構成されている。
【0078】
すなわち捕捉チップ21は、所定の取付位置に固定され供給管17及び排出管18が接続された状態で流路22Nに試料液QS等が通液されると、捕捉部3により対象物質TBを捕捉し、その状態を保持する。また捕捉チップ21は、対象物質TBに応じたプローブ液QPが流路22Nに通液される。
【0079】
一方、光源11から出射された測定光L1は、その一部がビームスプリッタ12の反射面12Sを透過し、レンズ部22DLに入射される。レンズ部22DLは、対物レンズ13と同様、測定光L1を捕捉部3に集光する。これに応じて捕捉部3では、検出光L2が発生する。
【0080】
検出光L2は、レンズ部22DLの集光作用により発散光から平行光に変換され、ビームスプリッタ12の反射面12Sにおいてその一部が反射され、検出部14に照射される。検出部14は、検出光L2の光強度に応じた検出信号Sを生成する。
【0081】
このように生体物質検出装置30は、捕捉チップ21の流路22Nに試料液QSを通液した後、捕捉部3に測定光L1を照射し、これに応じて発生する検出光L2の光強度に応じた検出信号Sを生成することにより、対象物質TBを検出するようになされている。
【0082】
[2−3.動作及び効果]
以上の構成において、第2の実施の形態における捕捉チップ21は、捕捉チップ1と同様、流路22N内にプラスチックビーズ3Bが充填されることにより、捕捉部3が形成される。
【0083】
生体物質検出装置30は、捕捉チップ21の流路22Nに試料液QSを通液することにより、捕捉部3のプラスチックビーズ3Bによって対象物質TBを捕捉し、さらに当該対象物質TBに応じたプローブ液QPが通液された上で、その状態を保持する。
【0084】
また生体物質検出装置30は、光源11から出射された測定光L1をレンズ部22DLにより集光して捕捉部3に照射し、これに応じて捕捉部3から得られる検出光L2の光強度を検出部14により検出する。
【0085】
従って生体物質検出装置30は、第1の実施の形態と同様、捕捉チップ21の捕捉部3に対象物質TBを捕捉した状態で当該対象物質TBの量を検出することができるため、他の操作を行う必要が無く、短時間で且つ容易に検出作業を行うことができる。
【0086】
これにより生体物質検出装置30は、第1の実施の形態と同様、装置構成を簡略化することができる。
【0087】
特に生体物質検出装置30は、捕捉チップ21の本体部22における側面22Dにレンズ部22DLが形成されているため、対物レンズ13(図2)を用いることなく測定光L1等を集光することができる。
【0088】
このため生体物質検出装置30は、生体物質検出装置10と比較して、対物レンズ13を設ける必要がないため、全体構成をさらに小型化することができる。
【0089】
また生体物質検出装置30は、例えば捕捉部3により捕捉する対象物質TBがそれぞれ相違する複数の捕捉チップ21を用い、且つ測定光L1の焦点位置や集光の度合い等をそれぞれ相違させたい場合に、捕捉チップ21ごとにレンズ部22DLの設計を相違させることもできる。
【0090】
これにより生体物質検出装置30では、例えば対物レンズ13を有する生体物質検出装置10において、捕捉チップ1を交換する度に対物レンズ13の位置調整を行い測定光L1の焦点を調整するといった煩わしい作業が不要となる。
【0091】
すなわち生体物質検出装置30は、捕捉チップ21を交換し平行光でなる測定光L1を照射するだけで、焦点調整のような作業を要すること無く、当該測定光L1を対象物質TBに応じた所望の状態で照射することができる。
【0092】
その他、生体物質検出装置30は、第1の実施の形態における生体物質検出装置10と同様の作用効果を奏し得る。
【0093】
以上の構成によれば、第2の実施の形態による生体物質検出装置30は、流路22Nに対象物質TBを捕捉・抽出する捕捉部3を形成した捕捉チップ21を用い、当該流路22N内に試料液QSを通液して捕捉部3により対象物質TBを捕捉する。また生体物質検出装置30は、光源11から出射された測定光L1をレンズ部22DLにより集光して捕捉部3に照射し、これに応じて捕捉部3から得られる検出光L2の光強度を検出部14により検出する。これにより生体物質検出装置30は、捕捉チップ21の捕捉部3に捕捉した対象物質TBをそのまま用いて検出作業を行うことができる。
【0094】
<3.第3の実施の形態>
[3−1.捕捉チップの構成]
第3の実施の形態では、第2の実施の形態における捕捉チップ21(図4)に代えて、図6(A)及び(B)に示す捕捉チップ41が用いられるようになされている。
【0095】
捕捉チップ41は、捕捉チップ21の本体部22と対応する本体部42を中心に構成されている。本体部42は、本体部22の側面22A、22B、22C及び22D並びに孔部22AH及び22BHとそれぞれ同様の側面42A、42B、42C及び42D並びに孔部42AH及び42BHが設けられている。
【0096】
また本体部42は、流路2N及び22Nと同様、当該本体部42内をx方向に貫通する流路42Nが形成されている。この流路42Nは、捕捉チップ1及び21の場合と同様に、x方向のほぼ中央部分にプラスチックビーズ3Bが所定量充填されることにより、捕捉部3が形成されるようになされている。
【0097】
このため捕捉チップ41は、捕捉チップ1及び21と同様、流路42Nに試料液QS等が通液されると、対象物質TBに応じた物質を有する捕捉部3により、当該試料液QS中に含まれる対象物質TBを捕捉することができる。
【0098】
さらに本体部42は、側面42C及び42Dのほぼ中央部分、すなわち捕捉部3と対応する部分にそれぞれレンズ部42CL及び42DLが形成されている。このレンズ部42CL及び42DLは、第2の実施の形態における本体部22のレンズ部22DLと同様の光学的機能を有している。
【0099】
[3−2.生体物質検出装置の構成]
図2及び図5と対応する図7に示すように、生体物質検出装置50は、生体物質検出装置30における捕捉チップ21に代えて捕捉チップ41が用いられている。また生体物質検出装置50は、生体物質検出装置30と比較して、ビームスプリッタ12が省略され、検出部14が捕捉チップ41を挟んで光源11の反対側に設けられている点において相違するものの、他は同様に構成されている。
【0100】
すなわち捕捉チップ41は、所定の取付位置に固定され供給管17及び排出管18が接続された状態で流路42Nに試料液QS等が通液されると、捕捉部3により対象物質TBを捕捉し、その状態を保持する。また捕捉チップ41は、対象物質TBに応じたプローブ液QPが流路42Nに通液される。
【0101】
一方、光源11から出射された測定光L1は、レンズ部22DLに入射される。レンズ部22DLは、測定光L1を捕捉部3に集光する。これに応じて捕捉部3は、検出光L2を発生させる。
【0102】
このとき生体物質検出装置50は、生体物質検出装置10及び30の場合と異なり、測定光L1のうち捕捉部3を透過した部分が検出光L2となる。
【0103】
検出光L2は、レンズ部22CLにより発散光から平行光に変換され、検出部14に照射される。検出部14は、検出光L2の光強度に応じた検出信号Sを生成する。
【0104】
このように生体物質検出装置50は、捕捉チップ41の流路42Nに試料液QSを通液した後、捕捉部3に測定光L1を照射し、これに応じて発生する検出光L2の光強度に応じた検出信号Sを生成することにより、対象物質TBを検出するようになされている。
【0105】
[3−3.動作及び効果]
以上の構成において、第3の実施の形態における捕捉チップ21は、捕捉チップ1及び21と同様、流路42N内にプラスチックビーズ3Bが充填されることにより、捕捉部3が形成される。
【0106】
生体物質検出装置50は、捕捉チップ41の流路42Nに試料液QSを通液することにより、捕捉部3のプラスチックビーズ3Bによって対象物質TBを捕捉し、さらに当該対象物質TBに応じたプローブ液QPが通液された上で、その状態を保持する。
【0107】
また生体物質検出装置50は、光源11から出射された測定光L1をレンズ部22DLにより集光して捕捉部3に照射し、これに応じて捕捉部3から得られる検出光L2の光強度を検出部14により検出する。
【0108】
従って生体物質検出装置50は、第1及び第2の実施の形態と同様、捕捉チップ41の捕捉部3に対象物質TBを捕捉した状態で当該対象物質TBの量を検出することができるため、他の操作を行う必要が無く、短時間で且つ容易に検出作業を行うことができる。
【0109】
このため生体物質検出装置50は、やはり第1及び第2の実施の形態と同様、装置構成を簡略化することができ、全体構成を小型化することができる。
【0110】
特に生体物質検出装置50は、捕捉チップ41の本体部42における側面42C及び42Dにレンズ部42CL及び42DLが形成されているため、対物レンズ13(図2)を用いることなく測定光L1及び検出光L2等を集光することができる。
【0111】
その他、生体物質検出装置50は、第1の実施の形態における生体物質検出装置10及び第2の実施の形態における生体物質検出装置30と同様の作用効果を奏し得る。
【0112】
以上の構成によれば、第3の実施の形態による生体物質検出装置50は、流路42Nに対象物質TBを捕捉・抽出する捕捉部3を形成した捕捉チップ41を用い、当該流路42N内に試料液QSを通液して捕捉部3により対象物質TBを捕捉・抽出する。また生体物質検出装置50は、光源11から出射された測定光L1をレンズ部42DLにより集光して捕捉部3に照射し、これに応じて捕捉部3から得られる検出光L2をレンズ部42CLにより集光してその光強度を検出部14により検出する。これにより生体物質検出装置50は、捕捉チップ41の捕捉部3に捕捉した対象物質TBをそのまま用いて検出作業を行うことができる。
【0113】
<4.他の実施の形態>
なお上述した第1の実施の形態においては、対象物質TBを捕捉・抽出する所定の物質が表面に結合されたプラスチックビーズ3Bを流路2Nに充填することにより担体としての捕捉部3を構成した場合について述べた。
【0114】
本発明はこれに限らず、例えば微小なガラスビーズ、プラスチックファイバー・メンブレンやガラスファイバー・メンブレン、プラスチック多孔質体やガラス多孔質体を用いて捕捉部3を構成しても良い。また、微小プラスチックビーズを固化又は一体化したもの、或いは微小ガラスビーズを固化・一体化したものや、上述した部材の表面を化学修飾したものを用いて捕捉部3を構成しても良い。
【0115】
さらに本発明では、いわゆる担体ではなく、例えば流路2Nの内壁に微細構造でなる捕捉部3を形成するようにしても良い。本発明における捕捉部3としては、要は流路2Nに試料液QSが通液されたときに対象物質TBを捕捉・抽出し得る構造や材料であれば良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0116】
また上述した第1の実施の形態においては、流路2N内に捕捉部3のみを設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば図8(A)に示すように、捕捉部3の下流側に当該捕捉部3を固定するプレフィルタ4を設けても良い。或いは、図8(B)に示すように当該捕捉部3の下流側及び上流側に当該捕捉部3を固定するプレフィルタ4及び5をそれぞれ設けるようにしても良い。
【0117】
このプレフィルタ4及び5は、流路2内において捕捉部3を固定・安定化することに加えて、不純物や大きなごみ等をトラップさせることもできる。これによりプレフィルタ4及び5は、設置場所や材質によってこれらを捕捉部3内や当該捕捉部3の下流に流さないようにすることができる。
【0118】
プレフィルタ4及び5の材質としては、多孔質ポリプロピレン、多孔質ポリエチレン、SUS(Stainless Used Steel)等を原料とした焼結金属、発泡金属、多孔質ガラスなどを用途に応じて適宜選ぶことができる。
【0119】
またプレフィルタ4及び5については、細孔径も適宜選ぶことができる。例えばプラスチックビーズ3B(すなわち担体)として粒径6[μm]のポリスチレンビーズを用いる場合、その欠落を防ぐ為に、プレフィルタ4及び5の細孔径は、6[μm]未満であることが望ましい。この場合、例えば細孔径2[μm]のSUS製の焼結金属をプレフィルタ4として捕捉部3の下流に設置するとともに、プレフィルタ5として当該捕捉部3の上流にも設置することにより、担体の安定化と不純物のトラップとを行うことができる。
【0120】
さらに上述した第1の実施の形態においては、Cy3標識したssDNAを含むプローブ液QPを用い、測定光L1を捕捉部3に照射することにより、当該Cy3標識の蛍光反応により発生する検出光L2の光強度を基に、対象物質TBを検出する場合について述べた。
【0121】
本発明はこれに限らず、所定のプローブ液QPを用いることにより、例えば捕捉部3において発光作用により発生する検出光L2の光強度や、捕捉部3において測定光L1が反射されることにより発生する検出光L2の光強度を基に対象物質TBを検出しても良い。特に発光作用を利用する場合には、生体物質検出装置10から光源11及びビームスプリッタ12を省略することができる。第2の実施の形態についても同様である。
【0122】
さらに上述した第1の実施の形態においては、流路2Nの断面形状を略楕円状とする場合について述べた。本発明はこれに限らず、流路2Nの断面形状を例えば円形状や矩形状等の様々な形状とするようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0123】
さらに上述した第1の実施の形態においては、捕捉チップ1における本体部2のx方向の長さを60[mm]とし、y方向及びz方向の長さをいずれも500[μm]とする場合について述べた。本発明はこれに限らず、それぞれを任意の長さとしても良い。この場合、生体物質検出装置10を小型化する観点から、x方向の長さが1〜100[mm]程度であることが好ましい。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0124】
さらに上述した第1の実施の形態においては、捕捉チップ1における本体部2のy方向及びz方向の長さを同等とし、x方向に関する断面形状を略正方形状とする場合について述べた。本発明はこれに限らず、当該断面を略長方形状や略台形状、略平行四辺形状、さらには略六角形状としても良い。
【0125】
さらに上述した第1の実施の形態では、捕捉チップ1における本体部2を略直方体状とし、x方向に関する断面形状を略正方形状とする場合について述べた。本発明はこれに限らず、当該断面を略長方形状、略台形状又は略平行四辺形状等の種々の形状とするように本体部2を形成しても良い。特に本体部2は、z方向の側面については、必ずしも平面状である必要はなく、任意の形状としても良く、さらには生体物質検出装置10に固定するための任意の凹凸部等を設けても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0126】
また第1の実施の形態においては、本体部2の側面2Cについても平面状である必要はなく、任意の形状であっても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0127】
さらに上述した第1の実施の形態においては、生体物質検出装置10の対物レンズ13により測定光L1を捕捉部3内に集光し焦点を形成する場合について述べた。
【0128】
本発明はこれに限らず、例えば対物レンズ13により測定光L1を捕捉部3の表面付近に集光し、或いは当該測定光L1の焦点を結ぶことなく、当該捕捉部3内である程度広い範囲に照射する等、様々に集光するようにしても良い。要は、測定光L1が対物レンズ13を介して捕捉部3に照射されることに応じて、検出光L2が発生されれば良い。また検出光L2については、対物レンズ13により必ずしも平行光に変換される必要はなく、ある程度集光されることにより、検出部14において光強度を検出し得れば良い。第2及び第3の実施の形態におけるレンズ部22DL、42CL及び42DLについても同様である。
【0129】
さらに上述した実施の形態においては、捕捉チップ1の本体部2を樹脂材料により構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、本体部2を例えばガラス材料等の光をある程度透過する種々の材料により構成しても良い。また本体部2は、一体成形に限らず、複数の部品の組み合わせにより構成されても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0130】
さらに上述した実施の形態においては、検出部14において検出光L2の光強度を基に検出信号Sを生成するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば放射性検出を行うようにしても良い。この場合、本体部2を構成する材料は可視光を透過する必要は良く、放射線を透過すれば良い。
【0131】
さらに上述した第1の実施の形態においては、捕捉チップ1の本体部2内に1本の流路2Nを形成する場合について述べた。
【0132】
本発明はこれに限らず、本体部2内に複数の流路を形成するようにしても良い。例えば図9に示すように、捕捉チップ81は、本体部82内に流路2Nと同様の流路82NP、82NQ、82NR及び82NSが形成され、それぞれに捕捉部3P、3Q、3R及び3Sが設けられることにより、4個分の捕捉チップ1と同様の機能を有する。
【0133】
さらに第1の実施の形態においては、光源11が平行光でなる測定光L1を出射する場合について述べた。本発明はこれに限らず、発散光や収束光など他の種類の光を光源11から出射するようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0134】
この場合、生体物質検出装置90は、生体物質検出装置10における光源11、ビームスプリッタ12、対物レンズ13及び検出部14でなる光学部91を一体としてz方向又はその反対方向へ移動させれば良い。また捕捉チップ81は、本体部82のy方向一側面又は両側面に、捕捉チップ21及び41と同様のレンズ部を設けても良い。この場合、生体物質検出装置30及び50と同様に、生体物質検出装置90の光学部91から対物レンズ13を省略することができる。
【0135】
さらに上述した実施の形態においては、本体部としての本体部2と、第1側面としての側面2Dと、流路としての流路2Nと、捕捉部としての捕捉部3とによって生体物質捕捉器としての捕捉チップ1を構成する場合について述べた。
【0136】
本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる本体部と、第1側面と、流路と、捕捉部とによって生体物質捕捉器を構成するようにしても良い。
【0137】
さらに上述した実施の形態においては、本体部としての本体部2と、第1側面としての側面2Dと、流路としての流路2Nと、捕捉部としての捕捉部3とを有する生体物質捕捉器としての捕捉チップ1と、検出部としての検出部14とによって生体物質検出装置としての生体物質検出装置10を構成する場合について述べた。
【0138】
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる本体部と、第1側面と、流路と、捕捉部とを有する生体物質捕捉器と、検出部とによって生体物質検出装置を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明は、特定の生体物質を検出する検出装置でも利用できる。
【符号の説明】
【0140】
1、21、41……捕捉チップ、2、22、42……本体部、2C、2D、22C、22D、42C、42D……側面、22DL、42CL、42DL……レンズ部、2N、22N、42N……流路、3……捕捉部、3B……プラスチックビーズ、10、30、50……生体物質検出装置、11……光源、12……ビームスプリッタ、13……対物レンズ、14……検出部、L1……測定光、L2……検出光。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定材料でなる本体部と、
上記本体部の一側面でなり略平面状に形成された第1側面と、
上記本体部内を上記第1側面と略平行に貫通する流路と、
上記流路中に設けられ、所定の溶媒中に含まれる所定の生体物質を捕捉する捕捉部と
を有する生体物質捕捉器。
【請求項2】
上記第1側面は、
上記捕捉部の上記生体物質から得られる検出光を集光し、当該第1側面に対し略垂直な方向へ進行させる第1レンズ部が形成されている
請求項1に記載の生体物質捕捉器。
【請求項3】
上記本体部は、
上記捕捉部を挟んで上記第1側面の反対側に、上記第1側面と略平行な略平面状の第2側面が形成されている
請求項1に記載の生体物質捕捉器。
【請求項4】
上記第2側面は、
当該第2側面に入射される所定の測定光を上記捕捉部に集光する第2レンズ部が形成され、
上記第1側面は、
上記測定光の照射に応じて上記捕捉部の生体物質から得られる検出光を集光し、当該第1側面に対し略垂直な方向へ進行させる第1レンズ部が形成されている
請求項3に記載の生体物質捕捉器。
【請求項5】
上記本体部は、
透明な材料でなる
請求項1に記載の生体物質捕捉器。
【請求項6】
上記本体部は、
上記所定材料が一体成形されることにより上記流路が形成されている
請求項1に記載の生体物質捕捉器。
【請求項7】
上記流路は
長さが1[mm]以上100[mm]以下である
請求項1に記載の生体物質捕捉器。
【請求項8】
所定材料でなる本体部と、
上記本体部の一側面でなり略平面状に形成された第1側面と、
上記本体部内を上記第1側面と略平行に貫通する流路と、
上記流路中に設けられ、所定の溶媒中に含まれる所定の生体物質を捕捉する捕捉部と
を有する生体物質捕捉器と、
上記生体物質を捕捉した上記捕捉部から上記第1側面を介して得られる検出光の強度を検出し、その検出結果に応じた検出信号を生成する検出部と
を有する生体物質検出装置。
【請求項9】
測定光を出射する光源部
をさらに有し、
上記生体物質捕捉器の上記第1側面は、
上記測定光を上記捕捉部に集光すると共に、上記捕捉部の生体物質から得られる検出光を集光し、当該第1側面に対し略垂直な方向へ進行させる第1レンズ部が形成されている
請求項8に記載の生体物質検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−185705(P2010−185705A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28669(P2009−28669)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】