説明

生体物質濃縮装置

【課題】生体物質の濃縮率を向上させることが可能な生体物質濃縮装置を提供する。
【解決手段】この生体物質濃縮装置100は、生体物質を含む生体試料Tを導入口11aから受け入れる流路11と、流路11内の生体試料Tを移動させる圧力源2と、流路11の途中に設けられ、生体試料Tに含まれる生体物質を捕捉するトラップフィルタ21と、トラップフィルタ21よりも吸引口11b側の位置で流路11から下方以外の方向に分岐して設けられた液体収容室22と、電源3と、圧力源2による生体試料Tの移動方向Aと逆向きの流れBを荷電した生体物質に生じさせるように電源3の陽極または陰極に接続され、流路11内の生体試料Tに接触する第1電極23と、電源3の他の極に接続され、液体収容室22内に露出する第2電極24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体物質濃縮装置に関し、特に、生体試料中のDNA、RNA、タンパク質などの生体物質を濃縮する生体物質濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体試料中のDNA、RNA、タンパク質などの生体物質を濃縮する生体物質濃縮装置が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
上記特許文献1および2には、流路幅の狭い部分を有するトラップ機構が設けられた流路と、流路内の生体試料に圧力を加えて流す圧力源と、流路の入口と出口とにそれぞれ設けられた電極と、流路間に電圧を印加する電源とを備えた生体物質濃縮装置が開示されている。これらの生体物質濃縮装置は、圧力源を用いて流路の入口から出口に向けて生体試料を流すとともに、生体試料中の荷電した生体物質に圧力源による流れとは逆方向の力が作用するように電界を発生させるように構成されている。この結果、生体試料の流れの中で荷電した生体物質が電界の力を受けて流路内のトラップ機構に捕捉される。これにより、上記特許文献1および2による生体物質濃縮装置では、流路を流れる生体試料中の荷電した生体物質を捕捉して回収する(濃縮する)ことが可能なように構成されている。
【0004】
上記特許文献1および2のような構成の装置において、生体物質の濃縮を効率よく行うためには、流路内のトラップ機構の数を増加させる必要があり、これに伴い、印加する電圧(電界の強さ)を大きくする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4234486号公報
【特許文献2】特開2008−116318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1および2に記載のような生体物質濃縮装置において、流路内のトラップ機構の数を増加させ、印加する電圧(電界の強さ)を大きくしても、生体試料に対する生体物質の濃縮率を向上させることが困難であった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、生体物質の濃縮率を向上させることが可能な生体物質濃縮装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
本願発明者は、種々の考察の結果、生体物質濃縮装置において、印加する電圧(電界の強さ)を大きくすると、流路内の生体試料に対して大きな電流が流れ、電気分解により電極から気泡が発生することを見出した。そして、この気泡が流路内のトラップ機構を遮り電圧(電界)の印加を妨げることにより、生体物質を捕捉できず濃縮率が向上しないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、この発明の第1の局面における生体物質濃縮装置は、生体物質を含む生体試料を一端側から受け入れる流路と、流路に受け入れられた生体試料を移動させる圧力源と、流路の途中に設けられ、生体試料に含まれる生体物質を捕捉する捕捉部と、捕捉部よりも他端側の位置で流路から下方以外の方向に分岐して設けられた液体収容部と、電源と、圧力源による生体試料の移動方向と逆向きの流れを荷電した生体物質に生じさせるように電源の陽極または陰極に接続され、流路内に受け入れられた生体試料に接触する第1電極と、電源の他の極に接続され、液体収容部内に露出する第2電極と、を備える。
【0010】
この発明の第1の局面による生体物質濃縮装置では、上記のように、捕捉部よりも他端側の位置で流路から下方以外の方向に分岐して設けられた液体収容部と、電源の他の極に接続され、液体収容部内に露出する第2電極とを設けることによって、第2電極から気泡が発生した場合には、発生した気泡は流路から下方以外の方向に分岐して設けられた液体収容部内を上方に移動する。これにより、第2電極から発生した気泡が流路へ流入することを防止することができる。このため、流路内が気泡で遮られることなく印加する電圧を大きく(電界を強く)することができるので、生体物質を効果的に捕捉することができる。この結果、印加する電圧を大きくした場合にも、生体物質の濃縮率を向上させることができる。
【0011】
上記第1の局面による生体物質濃縮装置において、好ましくは、流路は、捕捉部よりも一端側において上下方向に延びるように設けられており、第1電極は、流路内の流路の一端よりも捕捉部に近い捕捉部の上面側の位置で流路内部に露出している。このように構成すれば、第1電極から発生した気泡が捕捉部の上面側から流路の一端に向けて上方に移動するので、第1電極から発生した気泡が流路内の捕捉部の近傍を遮るのを防止することができる。
【0012】
上記第1の局面による生体物質濃縮装置において、好ましくは、液体収容部は、流路の捕捉部よりも他端側の位置から上方に分岐して設けられ、第2電極は、流路から液体収容部が分岐する位置よりも上方の位置に設けられている。このように構成すれば、第2電極から発生した気泡は流路よりも上方の液体収容部内で上方へ移動するので、第2電極から発生した気泡の流路への流入をより確実に防止することができる。
【0013】
上記第1の局面による生体物質濃縮装置において、好ましくは、第2電極は、液体収容部の上端よりも液体収容部の下端に近い位置に設けられている。このように構成すれば、第2電極から発生した気泡は液体収容部内を上方に移動するので、液体収容部の上端から気泡が溜まっていく。このとき、第2電極が液体収容部の上端よりも液体収容部の下端に近い位置に設けられているので、第2電極と第1電極との間が液体収容部内に溜まった気泡によって遮られることに起因して、電圧を印加することができなくなるのを抑制することができる。この結果、流路内が気泡で遮られることなく印加する電圧を大きく(電界を強く)することができるので、生体物質をより効果的に捕捉することができる。
【0014】
上記第1の局面による生体物質濃縮装置において、好ましくは、液体収容部に連通し、液体収容部内の気体を排気するための排気部をさらに備える。このように構成すれば、液体収容部内に溜まった気体を排気部から排気することができる。
【0015】
上記第1の局面による生体物質濃縮装置において、好ましくは、捕捉部は、複数の孔を有するフィルタである。このように構成すれば、簡単な構成で捕捉部のトラップ機構(孔)の数を増加させることができるので、容易に、生体物質の濃縮時の処理量を増加させる構成を得ることができる。
【0016】
上記第1の局面による生体物質濃縮装置において、好ましくは、流路内に露出し、一端が捕捉部に近接して設けられた試料回収チューブをさらに備える。このように構成すれば、捕捉部近傍に捕捉された生体物質を一端が捕捉部に近接する試料回収チューブによって回収することができるので、捕捉された生体物質を回収する際に捕捉部近傍の生体試料だけを生体物質と一緒に回収すれば済む。これにより、たとえば流路内の生体試料の全部を回収することによって捕捉された生体物質を回収する場合と比較して、生体物質と一緒に回収される生体試料の量を抑制することができるので、生体物質の濃縮率を向上させることができる。
【0017】
上記第1の局面による生体物質濃縮装置において、好ましくは、生体物質は、核酸である。このように構成すれば、核酸の濃縮率を向上させ、生体試料から効率よく濃縮を行うことが可能な核酸濃縮装置を得ることができる。
【0018】
この発明の第2の局面における生体物質濃縮装置は、上下に延びる上下流路部と上下流路部の下端に連結される水平方向に延びる水平流路部とを含み、生体物質を含む生体試料を上方の一端側から受け入れる流路と、流路に受け入れられた生体試料を移動させる圧力源と、上下流路部の途中に設けられ、生体試料に含まれる生体物質を捕捉する捕捉部と、電源と、圧力源による生体試料の移動方向と逆向きの流れを荷電した生体物質に生じさせるように電源の陽極または陰極に接続され、捕捉部よりも一端側で流路内に受け入れられた生体試料に接触する第1電極と、電源の他の極に接続され、水平流路部内に露出する第2電極と、水平流路部から下方以外の方向に分岐して設けられた気泡逃がし部と、を備える。
【0019】
この発明の第2の局面による生体物質濃縮装置では、上記のように、電源の他の極に接続され、水平流路部内に露出する第2電極と、水平流路部から下方以外の方向に分岐して設けられた気泡逃がし部とを設けることによって、第2電極から気泡が発生する場合にも、水平流路部内に露出する第2電極で発生した気泡は水平流路部から下方以外の方向に分岐して設けられた気泡逃がし部に移動する。これにより、捕捉部が設けられた上下流路部へ第2電極から発生した気泡が流入することを防止することができる。このため、流路内が気泡で遮られることなく印加する電圧を大きく(電界を強く)することができるので、生体物質を効果的に捕捉することができる。この結果、印加する電圧を大きくした場合にも、生体物質の濃縮率を向上させることができる。
【0020】
上記第2の局面による生体物質濃縮装置において、好ましくは、気泡逃がし部は、第2電極の上方に設けられている。このように構成すれば、第2電極から発生した気泡は第2電極の上方にある気泡逃がし部に移動するため、捕捉部が設けられた上下流路部へ第2電極から発生した気泡が流入することをより確実に防止することができる。
【0021】
この発明の第3の局面における生体物質濃縮装置は、上下に延びる上下流路部を含み、生体物質を含む生体試料を上方の一端側から受け入れる流路と、流路に受け入れられた生体試料を流路の一端側から他端側に向けて移動させる圧力源と、上下に延びる上下流路部の途中に設けられ、生体試料に含まれる生体物質を捕捉する捕捉部と、上下に延びる上下流路部内に露出し、一端が捕捉部に近接して設けられた試料回収チューブと、電源と流路の他端側から一端側に向かう流れを荷電した生体物質に生じさせるように電源の陽極または陰極に接続され、上下流路部内の捕捉部よりも一端側の位置で上下流路部内の生体試料に接触する第1電極と、電源の他の極に接続される第2電極と、を備える。
【0022】
この発明の第3の局面による生体物質濃縮装置では、上記のように、上下に延びる上下流路部内に露出し、一端が捕捉部に近接して設けられた試料回収チューブと、電源と流路の他端側から一端側に向かう流れを荷電した生体物質に生じさせるように電源の陽極または陰極に接続され、上下流路部内の捕捉部よりも一端側の位置で上下流路部内の生体試料に接触する第1電極とを設けることによって、圧力源によって生体試料の液面を捕捉部近傍の第1電極付近の位置まで下降させた状態でも第1電極を生体試料に接触させておくことができる。これにより、生体試料の液面を下降させた状態でも第1電極と第2電極との間に電圧(電界)を印加して生体物質を捕捉部に捕捉することができる。この結果、生体物質を捕捉部に捕捉したまま生体試料の液面を第1電極の位置まで下降させれば、捕捉部近傍の生体試料の液面付近に生体物質を高濃度に濃縮した状態を作り出すことができる。このとき、一端が捕捉部に近接する試料回収チューブによって液面付近の生体試料のみを回収することができるので、生体物質が高濃度に濃縮された生体試料のみを回収することができる。以上により、生体物質の濃縮時の処理量を増加させるように流路(上下流路部)の流路径を大きくして流路中の生体試料の量が増加した場合にも、生体試料中の生体物質の濃縮率を向上させることができる。
【0023】
上記第3の局面による生体物質濃縮装置において、好ましくは、試料回収チューブは、生体試料の液面が上下流路部内の所定の回収位置まで圧力源により下降された状態で、一端から生体試料を回収するように構成され、第1電極の少なくとも先端部は、所定の回収位置と捕捉部との間の位置で上下流路部内の生体試料に接触するように配置されている。このように構成すれば、第1電極の先端部が液面(所定の回収位置)と捕捉部との間の位置で生体試料に接触するので、この液面(所定の回収位置)と捕捉部との間において生体物質の濃度を高濃度にすることができる。このとき、生体試料の液面(所定の回収位置)と捕捉部に近接する試料回収チューブの一端との間の一定量の生体試料のみを回収することができるので、確実に、回収される一定量の生体試料中の生体物質の濃縮率を向上させることができる。
【0024】
上記第3の局面による生体物質濃縮装置において、好ましくは、流路内の所定の回収位置で生体試料の液面を検知する液面検知部をさらに備える。このように構成すれば、容易に、生体試料の液面が上下流路部内の所定の回収位置まで下降されたことを検知することができる。
【0025】
上記第3の局面による生体物質濃縮装置において、好ましくは、捕捉部は、複数の孔を有するフィルタである。このように構成すれば、簡単な構成で捕捉部のトラップ機構(孔)の数を増加させることができるので、容易に、生体物質の濃縮時の処理量を増加させる構成を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態による生体物質濃縮装置の全体構成を示した模式図である。
【図2】図1に示した第1実施形態による生体物質濃縮装置の濃縮部を示した平面図である。
【図3】図2に示した第1実施形態による生体物質濃縮装置の濃縮部の縦断面図である。
【図4】図1に示した本発明の第1実施形態による生体物質濃縮装置の濃縮処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】図4に示した濃縮処理動作においてバッファを注入した状態を示した模式図である。
【図6】図4に示した濃縮処理動作において生体試料を注入した状態を示した模式図である。
【図7】図4に示した濃縮処理動作において電圧の印加および生体試料の吸引を実施している状態を示した模式図である。
【図8】図4に示した濃縮処理動作において生体試料の液面が検知された状態を示した模式図である。
【図9】図4に示した濃縮処理動作において濃縮された生体試料が回収される状態を示した模式図である。
【図10】図4に示した濃縮処理動作において液体収容室のバッファが排出された状態を示した模式図である。
【図11】本発明の第2実施形態による生体物質濃縮装置の濃縮部の縦断面図である。
【図12】図11に示した第2実施形態による生体物質濃縮装置の濃縮部を示した平面図である。
【図13】図11に示した第2実施形態による生体物質濃縮装置の濃縮処理動作中の状態を説明するための模式図である。
【図14】本発明の比較例の生体物質濃縮装置の構造を説明するための模式図である。
【図15】本発明の比較例の生体物質濃縮装置による濃縮処理結果を示したグラフである。
【図16】本発明の第2実施形態による生体物質濃縮装置を用いた実施例における濃縮処理結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
(第1実施形態)
まず、図1〜図3および図5〜図7を参照して、本発明の第1実施形態による生体物質濃縮装置100の構成について説明する。
【0029】
生体物質濃縮装置100は、圧力により生体試料(血清など)の流れ(圧力流)を形成するとともに、荷電した生体物質(DNA、RNAまたはタンパク質など)の圧力流とは逆方向の流れを電界により形成することによって、生体試料中の荷電した生体物質を捕捉して、生体試料から分離、抽出および濃縮する装置である。この第1実施形態では、生体物質の一例として、DNAの分離、抽出および濃縮を行う例について説明する。
【0030】
生体物質濃縮装置100は、図1に示すように、濃縮部1と、圧力源2と、電源3と、バッファ(緩衝液)供給源4と、試料回収容器5と、廃液容器6と、ガス抜きライン開閉バルブ7とを備えている。
【0031】
図2および図3に示すように、濃縮部1は、流路11と、トラップフィルタ21と、液体収容室22と、第1電極23と、第2電極24と、回収チューブ25と、液面センサ26とを含んでいる。また、濃縮部1は、樹脂製の4つの本体部1a、1b、1cおよび1dから構成されている。
【0032】
図3に示すように、流路11は、流路11の一端である導入口11aから、流路11の他端である吸引口11bに至る生体試料T(図6参照)の流通経路である。流路11は、上下方向(Z方向)に延びる上下流路部12と、上下流路部12の下端から水平方向(X方向)に延びる水平流路部13とを有している。上下流路部12は、上下に重なるように配置された本体部1aおよび1bを貫通して本体部1cまで延びるように形成されている。また、水平流路部13は、最下部に配置された本体部1cに設けられている。
【0033】
上下流路部12は、上下に延びる円形状の内側面(本体部1a、1bおよび1cの内側面)を有し、上方の本体部1aから下方の本体部1cに向かうに従って徐々に内径が小さくなるように形成されている。また、上下流路部12は、一端の導入口11aにより、大気開放の状態に保たれている。上下流路部12の途中(本体部1b)には、トラップフィルタ21と、回収チューブ25と、第1電極23とが配置されている。トラップフィルタ21から上方の上側部12aは、導入口11aを介して生体物質(DNA)を含有する生体試料T(図6参照)を受け入れるように構成されている。この上側部12aは、生体物質濃縮装置100の処理能力に応じた量の生体試料Tを貯留可能な容積を有するように設けられている。また、トラップフィルタ21から下方の下側部12bは、下端部で水平流路部13と連通している。
【0034】
本体部1cに形成された水平流路部13は、上下流路部12の下側部12bから横方向(X方向)に延びる小径の流路接続部13aと、流路接続部13aから吸引口11bまで横方向に延びる送出部13bとを有している。図1に示すように、吸引口11bは、圧力源2に接続された廃液容器6と廃液ライン6aを介して連通している。生体物質濃縮装置100は、圧力源2から供給される負圧(吸引力)により、上下流路部12側の生体試料Tを水平流路部13を介して吸引口11bから吸引するように構成されている。また、送出部13bには、バッファ供給ライン4aを介してバッファ供給源4からバッファ(緩衝液)Uが供給されるように構成されている。
【0035】
また、図3に示すように、送出部13bには、水平方向(X方向)に延びる送出部13bから上方(矢印Z1方向)に分岐する分岐部13cが設けられている。この分岐部13cは、本体部1dに形成された液体収容室22の下端部に連通している。
【0036】
トラップフィルタ21は、上下方向に延びる上下流路部12の上側部12aの下端と、下側部12bの上端との間の位置(本体部1bと本体部1cとの間の位置)に配置されている。トラップフィルタ21は、ニッケルに腐食(酸化)防止の金メッキが施されることにより形成されている。トラップフィルタ21は、円板状のフィルタであり、直径約5mm、厚み約10μmの円板状形状を有する。トラップフィルタ21には、厚み方向(上下方向)に延びる多数の孔(貫通孔)が設けられている。トラップフィルタ21の孔は、孔径約10μm、ピッチ約14μmで設けられており、トラップフィルタ21の開口率は約10%〜約15%である。このため、トラップフィルタ21には、約2万〜約4万個の孔が形成されている。これらの孔がそれぞれ生体物質(DNA)を捕捉する捕捉部として機能する。したがって、1つのトラップフィルタ21により、約2万〜約4万個の捕捉部が流路11(上下流路部12)内に配置されることになる。この円板状のトラップフィルタ21が、上下方向に延びる流路11(上下流路部12)を塞ぐように、水平方向に延びるように設けられている。
【0037】
液体収容室22は、本体部1cの上面上に配置された本体部1d内に形成された空間である。第1実施形態では、液体収容室22は、水平流路部13の上方(矢印Z1方向)に配置され、本体部1d内を上方に延びるようにして所定の容積を有するように設けられている。また、液体収容室22の下端が、本体部1cの送出部13bから上方に分岐する分岐部13cを介して流路11と連通している。また、液体収容室22内には、第2電極24が露出している。液体収容室22の上端には、本体部1dを上方に貫通するガス抜き接続部22aが設けられている。図1に示すように、このガス抜き接続部22aは、ガス抜きライン7aおよびガス抜きライン開閉バルブ7を介して廃液容器6と連通している。液体収容室22内部の第2電極24から上方の空間は、第2電極24から発生した気泡Q2(図7参照)を上方に逃がすための気泡逃がし部として機能するように構成されている。
【0038】
図3に示すように、第1電極23は、白金電極からなり、電源3(図1参照)の陽極(+)に接続されている。第1電極23は、本体部1b(上下流路部12の側壁)に形成された接続孔23aに外部から挿入されるようにして、先端が上下流路部12(流路11)の上側部12a内部に露出するように設けられている。なお、本体部1bの接続孔23aは、栓体23bにより封止されている。また、第1電極23の先端部は、下方(矢印Z2方向)に向けて斜めに折れ曲がり、トラップフィルタ21の近傍の位置に、トラップフィルタ21とは僅かに間隔を開けて配置されている。したがって、第1電極23は、流路11(上下流路部12)の一端である導入口11aよりもトラップフィルタ21に近い位置で、流路11(上下流路部12)の内部に露出している。また、第1電極23の先端部は、トラップフィルタ21と後述する回収位置Pとの間の位置(上下方向の位置)に配置されるように構成されている。
【0039】
第2電極24は、白金電極からなり、電源3(図1参照)の陰極(−)に接続されている。第2電極24は、本体部1d(液体収容室22の側壁)に形成された接続孔24aに外部から挿入されるようにして、液体収容室22の内部に露出するように設けられている。なお、本体部1dの接続孔24aは、栓体24bにより封止されている。また、第2電極24は、流路11(水平流路部13)から液体収容室22が分岐する位置(分岐部13c)よりも上方の位置に設けられている。また、第2電極24は、上下流路部12から水平方向(X方向)に離間した位置に配置されている。また、第2電極24は、液体収容室22の上端(ガス抜き接続部22a)よりも液体収容室22の下端(分岐部13c)に近い位置に、水平方向に延びるように設けられている。
【0040】
ここで、第1電極23(陽極)と第2電極24(陰極)との間が液体(バッファUおよび生体試料T)で満たされた状態で電源3から電圧を印加することにより電極間に電界を発生させて、マイナスに荷電したDNA(生体物質)を陽極(第1電極23)側に引き寄せることが可能である。したがって、第1電極23(陽極)および第2電極24(陰極)は、導入口11aから吸引口11bに向かう生体試料Tの吸引方向(圧力源2による生体試料Tの移動方向)Aとは逆向きの、第2電極24(陰極)から第1電極23(陽極)に向かう流れBをマイナスに荷電したDNA(生体物質)に生じさせるように構成されている。
【0041】
図1に示すように、回収チューブ25は、一端がトラップフィルタ21に近接するとともに、他端が試料回収ライン5aを介して試料回収容器5に連通している。また、回収チューブ25は、第1電極23と向かい合うように設けられている。すなわち、図3に示すように、回収チューブ25は、本体部1b(上下流路部12の側壁)に形成された接続孔25aに外部から挿入されるようにして先端が流路11(上下流路部12)の上側部12a内に引き出されている。なお、本体部1bの接続孔25aは、栓体25bにより封止されている。回収チューブ25の一端(先端)は、下方(矢印Z2方向)に向けて斜めに曲がり、トラップフィルタ21の上面に接するように設けられている。回収チューブ25は、圧力源2(図1参照)から供給される負圧(吸引力)によって、流路11(上下流路部12)の上側部12a(トラップフィルタ21の上面側)の生体試料Tを一端(先端)から吸引するように構成されている。これにより、試料回収容器5に生体試料Tを回収することが可能である。
【0042】
図2に示すように、液面センサ26は、発光部26aおよび受光部26bを有する光学式センサであり、発光部26aと受光部26bとが上下流路部12を挟むように水平方向(Y方向)に対向して設けられている。液面センサ26は、発光部26aと受光部26bとの光軸が所定の回収位置P(図3参照)を通るような位置(上下方向の位置)に配置されている。これにより、液面センサ26は、吸引口11bから吸引される生体試料Tの液面R(図7参照)が矢印Z2方向に下降して所定の回収位置Pに到達したことを検知可能なように構成されている。このため、回収チューブ25は、トラップフィルタ21の上面と回収位置Pとの間の生体試料Tを回収するように構成されている。なお、発光部26aおよび受光部26bは本体部1b(上下流路部12の側壁)に埋め込まれるように設けられており、発光部26aからの光は上下流路部12の側壁を透過して受光部26bに到達する。
【0043】
図1に示すように、圧力源2は、圧力供給ライン2aを介して廃液容器6および試料回収容器5とそれぞれ連通し、廃液容器6と試料回収容器5とに負圧を選択的に供給することが可能なように構成されている。圧力源2は、流路11の吸引口11bに負圧(吸引力)を供給して、流路11内の生体試料T(またはバッファU)を廃液容器6まで移動させる機能を有する。なお、圧力源2は、供給する負圧の大きさ(吸引力の強さ)を任意に調節することが可能なように構成されている。また、圧力源2は、回収チューブ25に負圧(吸引力)を供給して、トラップフィルタ21近傍に捕捉されたDNAを含有する生体試料Tを試料回収容器5まで移動させる機能を有する。
【0044】
電源3は、陽極(+)と陰極(−)とが、それぞれ、第1電極23と第2電極24とに接続され、第1電極23と第2電極24との間に任意の電圧を印加することが可能なように構成されている。
【0045】
バッファ供給源4は、バッファ供給ライン4aを介して、流路11の他端側の送出部13bと連通している。バッファ供給源4は、トラップフィルタ21よりも下流(吸引方向の下流)側の各部にバッファ(緩衝液)U(図5参照)を供給する機能を有する。具体的には、バッファ供給源4は、上下流路部12の下側部12bと、水平流路部13(流路接続部13a、送出部13b、分岐部13c)と、液体収容室22とに、バッファUを充填することが可能なように構成されている。なお、トラップフィルタ21の孔は微細なため、圧力源2からの吸引力が働かない場合には、液体はほとんど通過しない。このため、トラップフィルタ21よりも下流側の各部にバッファUを供給しても、トラップフィルタ21の上面側(上下流路部12の上側部12a)にはバッファUがほとんど通過しない。
【0046】
ガス抜きライン開閉バルブ7は、液体収容室22の上端のガス抜き接続部22aと廃液容器6とを結ぶガス抜きライン7aに設けられ、ガス抜きライン7aの開放および閉鎖を行うことが可能なように構成されている。このため、ガス抜きライン開閉バルブ7は、液体収容室22を密閉状態、または、廃液容器6と連通する状態とに切り替えることが可能である。
【0047】
次に、図1および図4〜図10を参照して、第1実施形態による生体物質濃縮装置100の生体物質(DNA)の濃縮動作について説明する。
【0048】
まず、図4のステップS1において、ガス抜きライン7a(図1参照)を開放する。すなわち、図1に示すように、ガス抜きライン開閉バルブ7を開放することにより、液体収容室22と廃液容器6とが、ガス抜きライン7aを介して連通する状態となる。
【0049】
次に、ステップS2において、液体収容室22にバッファUを注入する。具体的には、図5に示すように、バッファ供給源4(図1参照)から水平流路部13にバッファUを供給することにより、上下流路部12の下側部12bと、水平流路部13(流路接続部13a、送出部13b、分岐部13c)と、液体収容室22とに、バッファUを充填する。この際、ステップS1においてガス抜きライン7a(図1参照)が開放されているため、液体収容室22内に気体が残存することなく、液体収容室22内がバッファUで満たされる。
【0050】
バッファUの注入が完了すると、ステップS3に進み、ガス抜きライン7aを閉鎖する。すなわち、ガス抜きライン開閉バルブ7(図1参照)を閉鎖することにより、液体収容室22を密閉状態とする。
【0051】
次に、ステップS4において、流路11(上下流路部12)の一端の導入口11aを介して、生体試料Tを流路11に導入する。このとき、図6に示すように、トラップフィルタ21よりも上流側(上下流路部12の上側部12a)は、生体物質(DNA)を含む生体試料Tで満たされ、トラップフィルタ21よりも下流側は、バッファUで満たされる。この状態で、第1電極23と第2電極24との間はバッファUおよび生体試料Tで満たされているため、第1電極23と第2電極24との間に電圧(電界)を印加することが可能である。
【0052】
次に、ステップS5において、電源3により、第1電極23と第2電極24との間に電圧を印加する。これにより、図7に示すように、電極間に発生する電界によって、生体試料T内のマイナスに荷電したDNA(生体物質)が第1電極23側に向かう流れBが形成される。また、第1電極23と第2電極24との間に電流が流れることによって水(バッファUおよび生体試料T)が電気分解され、第1電極23(陽極)から気泡(酸素)Q1が発生するとともに第2電極から気泡(水素)Q2が発生する。第1電極23上方の導入口11aは大気に開放されているため、第1電極23から発生する気泡Q1は生体試料Tの液面Rから大気中に放出される。一方、液体収容室22はガス抜きライン開閉バルブ7(図1参照)により密閉されているため、第2電極から発生する気泡Q2は液体収容室22の上端に溜まっていく。
【0053】
ステップS6において、圧力源2(図1参照)により、生体試料T(バッファU)の吸引を開始する。これにより、流路11内の液体(生体試料T、バッファU)が導入口11aから吸引口11bに向けて矢印A方向に流れ、廃液容器6(図1参照)に流入する。このとき、トラップフィルタ21の近傍では小径の孔によって生体試料Tが流れにくくなるため、導入口11aから吸引口11bに向かう液体(生体試料T、バッファU)の流れAと、第2電極24(陰極)から第1電極23(陽極)に向かうDNAの流れBとの相互作用によって、トラップフィルタ21の近傍にDNAが捕捉される。この結果、トラップフィルタ21付近でDNAが取り残されるようにして、生体試料T(液体)が吸引口11bに向けて吸引されていく。この結果、吸引に伴って上下流路部12(上側部12a)の生体試料Tの液面Rは下降して行く。そして、生体試料Tの液量が減少する(液面Rが下降する)一方、トラップフィルタ21の近傍にDNAが捕捉されるため、上下流路部12の上側部12aにおけるDNAの濃縮率(生体試料Tの液量に対するDNA量)が上昇する。なお、液体収容室22はガス抜きライン開閉バルブ7(図1参照)により密閉されているため、主として大気に開放された上下流路部12側の生体試料Tが吸引口11bに吸引されていく。
【0054】
吸引を継続すると、ステップS7において、図8に示すように、生体試料Tの液面Rが矢印Z2方向に下降して所定の回収位置Pに到達したことが、液面センサ26によって検知される。液面Rが検知されると、ステップS8において圧力源2による吸引を停止する。これにより、回収位置Pに液面Rが到達した状態で生体試料Tの流出(液面Rの下降)が停止される。また、このとき、流路11内の液体の流れが停止する一方、第1電極23と第2電極24との間に電圧が印加されているので、トラップフィルタ21に捕捉されたDNAは、第1電極23側に引き寄せられる。
【0055】
そして、ステップS9において、電源3による電圧の印加も停止される。次に、ステップS10において、圧力源2により回収チューブ25に負圧(吸引力)を供給して、DNAが濃縮された生体試料Tの回収(吸引)が行われる。このとき、回収チューブ25の一端(先端)が接するトラップフィルタ21の上面から回収位置Pまでの範囲に残った生体試料Tが回収される。このトラップフィルタ21の上面から回収位置Pまでの範囲に第1電極23の先端が配置されているため、DNAが高濃度に濃縮された状態で、所定量の生体試料Tのみが回収(吸引)される。吸引されたDNAを含む生体試料Tは、回収チューブ25を介して試料回収容器5に回収される。
【0056】
試料の回収が完了すると、ステップS11において、再び圧力源2によって吸引口11bから吸引を行うことにより、液体収容室22を含むトラップフィルタ21の下流側の流路に残ったバッファUが廃液容器6に廃棄される。以上により、生体物質濃縮装置100の生体物質(DNA)の濃縮動作が完了する。なお、ステップS11のバッファUの廃棄を行うことなく、次の生体試料Tを導入してDNAの濃縮を行ってもよい。液体収容室22に溜まった気泡Q2の量が多くない場合には、次回の濃縮動作においてステップS1〜S3も省略することができる。一方、液体収容室22内の気泡Q2が第2電極24よりも下方まで溜まると、第2電極24とバッファUとが接触しなくなるため、第2電極24と第1電極23との間に電圧を印加することができなくなる。この場合には、再度液体収容室22内をバッファUで満たす必要がある。
【0057】
第1実施形態では、上記のように、トラップフィルタ21よりも他端側(吸引口11b側)の位置で流路11から下方以外の方向に分岐して設けられた液体収容室22と、電源3の陰極(−)に接続され、液体収容室22内に露出する第2電極24とを設ける。このように構成することによって、第2電極24から気泡Q2が発生した場合に、発生した気泡Q2が流路11から下方以外の方向に分岐して設けられた液体収容室22内を上方に移動する。これにより、第2電極24から発生した気泡Q2が流路11へ流入することを防止することができる。このため、流路11内が気泡Q2で遮られることなく印加する電圧を大きく(電界を強く)することができるので、生体物質(DNA)を効果的に捕捉することができる(DNAの回収率を向上させることができる)。この結果、印加する電圧を大きくした場合にも、生体物質(DNA)の濃縮率を向上させることができる。
【0058】
また、第1実施形態では、上記のように、トラップフィルタ21よりも一端側(導入口11a側)において上下方向に延びるように流路11(上下流路部12)を設けるとともに、導入口11aよりもトラップフィルタ21に近いトラップフィルタ21の上面側の位置で第1電極23を流路11内部に露出させる。このように構成することによって、第1電極23から発生した気泡Q1がトラップフィルタ21の上面側から流路11(上下流路部12)の導入口11aに向けて上方に移動するので、第1電極23から発生した気泡Q1が流路11(上下流路部12)内のトラップフィルタ21の近傍を遮るのを防止することができる。
【0059】
また、第1実施形態では、上記のように、流路11のトラップフィルタ21よりも他端側(吸引口11b側)の位置から上方に液体収容室22を分岐して設けるとともに、流路11(水平流路部13)から液体収容室22が分岐する分岐部13cよりも上方の位置に第2電極24を設ける。このように構成することによって、第2電極24から発生した気泡Q2は流路11(水平流路部13)よりも上方の液体収容室22内で上方へ移動するので、第2電極24から発生した気泡Q2の流路11(水平流路部13)への流入をより確実に防止することができる。
【0060】
また、第1実施形態では、上記のように、液体収容室22の上端(ガス抜き接続部22a)よりも液体収容室22の下端(分岐部13c)に近い位置に第2電極を設ける。このように構成することによって、第2電極24から発生した気泡Q2は液体収容室22内を上方に移動するので、液体収容室22の上端から気泡Q2が溜まっていく。このとき、第2電極24が液体収容室22の上端よりも液体収容室22の下端に近い位置に設けられているので、第2電極24と第1電極23との間が液体収容室22内に溜まった気泡Q2によって遮られることに起因して、電圧を印加することができなくなるのを抑制することができる。この結果、流路11内が気泡Q2で遮られることなく印加する電圧を大きく(電界を強く)することができるので、DNA(生体物質)をより効果的に捕捉することができる(DNAの回収率を向上させることができる)。
【0061】
また、第1実施形態では、上記のように、液体収容室22に連通し、液体収容室22内の気体を排気するためのガス抜き接続部22aを設ける。このように構成することによって、液体収容室22内に溜まった気体をガス抜き接続部22aから排気することができる。
【0062】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の孔を有するフィルタからなるトラップフィルタ21を捕捉部として設ける。このように構成すれば、簡単な構成で捕捉部のトラップ機構(孔)の数を増加させることができるので、容易に、DNA(生体物質)の濃縮時の処理量を増加させる構成を得ることができる。
【0063】
また、第1実施形態では、上記のように、流路11内に露出し、一端(先端)がトラップフィルタ21に近接する回収チューブ25を設ける。このように構成することによって、トラップフィルタ21近傍に捕捉されたDNAを一端がトラップフィルタ21に近接する回収チューブ25によって回収することができるので、捕捉されたDNAを回収する際にトラップフィルタ21近傍の生体試料TだけをDNAと一緒に回収すれば済む。これにより、たとえばトラップフィルタ21よりも下流側の生体試料T(およびバッファU)の全部を回収することによって捕捉されたDNAを回収する場合と比較して、DNAと一緒に回収される生体試料の量を抑制することができるので、DNA(生体物質)の濃縮率を向上させることができる。
【0064】
また、第1実施形態では、上記のように、生体物質は、核酸(DNA)である。このように構成することによって、DNAの濃縮率を向上させ、生体試料Tから効率よく濃縮を行うことが可能なDNA濃縮装置を得ることができる。
【0065】
また、第1実施形態では、上記のように、上下に延びる上下流路部12内に露出し、一端がトラップフィルタ21に近接する回収チューブ25と、上下流路部12内のトラップフィルタ21近傍の位置で上下流路部12内の生体試料Tに接触する第1電極23とを設ける。このように構成することによって、圧力源2によって生体試料Tの液面Rをトラップフィルタ21近傍の第1電極23の位置まで下降させた状態でも第1電極23を生体試料Tに接触させておくことができるので、第1電極23と第2電極24との間に電圧(電界)を印加してDNAをトラップフィルタ21近傍に捕捉することができる。この結果、DNAをトラップフィルタ21に捕捉したまま生体試料Tの液面Rを第1電極23の位置まで下降させれば、トラップフィルタ21近傍の生体試料Tの液面R付近にDNAを高濃度に濃縮した状態を作り出すことができる。このとき、一端がトラップフィルタ21に近接する回収チューブ25によって液面R付近の生体試料Tのみを回収することができるので、DNAが高濃度に濃縮された生体試料Tのみを回収することができる。これにより、DNAの濃縮時の処理量を増加させるように流路11(上下流路部12)の流路径を大きくして流路11中の生体試料Tの量が増加した場合にも、生体試料T中のDNA(生体物質)の濃縮率を向上させることができる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、図1および図11〜図13を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、第2電極24を液体収容室22内に配置した上記第1実施形態とは異なり、第2電極124を流路111の水平流路部113内に配置するとともに、第2電極124の上方に吸引口111bを設けている。なお、濃縮部101以外の構成は上記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0067】
図11に示すように、第2実施形態による生体物質濃縮装置200の濃縮部101は、流路111と、トラップフィルタ21と、電源3(図1参照)と接続された第1電極23(陽極)および第2電極124(陰極)と、回収チューブ25と、液面センサ26とを含んでいる。濃縮部101は、樹脂製の4つの本体部101a、101b、101cおよび101dから構成されている。
【0068】
流路111は、上下方向に延びる上下流路部112と、上下流路部112の下端から水平方向(X方向)に延びる水平流路部113と、水平流路部113から上方に延びる吸引流路部114とを有している。上下流路部112は、上下に重なるように配置された本体部101aおよび101bを貫通して本体部101cまで延びるように形成されている。また、水平流路部113は、最下部に配置された本体部101cに設けられている。吸引流路部114は、本体部101bと水平方向(X方向)に並ぶように本体部101c上に配置された本体部101dに設けられている。
【0069】
上下流路部112の上端(本体部101aの上端)には、流路111の一端である導入口111aが設けられている。上下流路部112の途中(本体部101b)には、トラップフィルタ21と、回収チューブ25と、第1電極23とが配置されている。なお、本体部101bの構造は上記第1実施形態の本体部1bと同様である。したがって、本体部101bに設けられたトラップフィルタ21、回収チューブ25、第1電極23および液面センサ26の配置は上記第1実施形態と同様である。トラップフィルタ21から上方の上側部112aは、導入口111aを介して所定量の生体物質(DNA)を含有する生体試料T(図13参照)を受け入れるように構成されている。また、トラップフィルタ21から下方の下側部112bは、水平流路部113と連通している。
【0070】
本体部101cに形成された水平流路部113は、上下流路部112の下側部112bの下端部から横方向に延びる小径の流路接続部113aと、流路接続部113aから横方向(矢印X2方向)に延びる送出部113bと、送出部113bの端部(矢印X2方向端部)から上方に延びる吸引接続部113cとを有している。
【0071】
第2実施形態では、水平流路部113の送出部113bには、本体部101c(送出部113bの矢印X2方向側の側壁)に形成された接続孔124aに外部から挿入されるようにして、第2電極124が設けられている。また、接続孔124aは栓体124bによって封止されている。この第2電極124は、水平流路部113の送出部113bの略全長にわたって、流路接続部113aの近傍の位置から吸引接続部113cの下方の位置まで送出部113b内部に露出するように設けられている。なお、送出部113bには、バッファ供給ライン4a(図1参照)を介してバッファ供給源4からバッファ(緩衝液)Uが供給されるように構成されている。
【0072】
吸引流路部114は、上端に流路111の他端である吸引口111bが形成されているとともに、下端で水平流路部113の吸引接続部113cと連通している。このように、第2実施形態では、第2電極124の上方に吸引口111bが配置されている。図13に示すように、生体物質濃縮装置200は、圧力源2(図1参照)から供給される負圧(吸引力)により、上下流路部112側の生体試料Tを水平流路部113および吸引流路部114を介して吸引口111bから吸引するように構成されている。このため、第2実施形態では、第2電極124の上方に設けられた吸引流路部114および吸引口111bは、第2電極124から発生した気泡Q2を上方に逃がすための気泡逃がし部として機能するように構成されている。したがって、第2電極124から発生した気泡Q2は吸引口111bから吸引されて、生体試料T(またはバッファU)とともに廃液容器6(図1参照)に排出される。なお、第2電極124から発生した気泡Q2は流路111(送出部113b)内を上方に移動するため、小径の流路接続部113aによって気泡Q2が上下流路部112側に流入するのがさらに抑制される。
【0073】
第2実施形態のその他の構成は上記第1実施形態と同様である。また、第2実施形態による生体物質濃縮装置200の生体物質(DNA)の濃縮動作は、上記第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0074】
第2実施形態では、上記のように、電源3(図1参照)の陰極に接続され、上下に延びる上下流路部112から水平方向(X方向)に離間した位置に配置された第2電極124と、第2電極124から発生した気泡Q2を上方に逃がすための吸引流路部114および吸引口111bとを設ける。このように構成することによって、第2電極124から気泡Q2が発生する場合にも、上下流路部112から水平方向に離間した第2電極124で発生した気泡Q2は、上方の吸引流路部114および吸引口111bに移動して廃液容器6まで吸引される。これにより、トラップフィルタ21が設けられた上下流路部112へ第2電極124から発生した気泡Q2が流入することを防止することができる。このため、流路111内が気泡Q2で遮られることなく印加する電圧を大きく(電界を強く)することができるので、DNA(生体物質)を効果的に捕捉することができる(DNAの回収率を向上させることができる)。この結果、印加する電圧を大きくした場合にも、DNA(生体物質)の濃縮率を向上させることができる。
【0075】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0076】
(実施例)
次に、図1、図11、図13および図14〜図16を参照して、本発明の効果を検証した比較実験について説明する。図11〜図13に示した本発明の第2実施形態による生体物質濃縮装置200と、図14に示す比較例による生体物質濃縮装置400(濃縮部401)とを用いて、DNA(生体物質)の濃縮を行い、DNAの回収率を比較する比較実験を行った。
【0077】
図14に示す比較例による生体物質濃縮装置400の濃縮部401では、上下方向(Z方向)に延びる流路411の途中にトラップフィルタ421が設けられている。また、トラップフィルタ421の上面側に第1電極423(陽極)が配置されているとともに、トラップフィルタ421の直下の位置に第2電極424(陰極)が配置されている。また、流路411の上端には、生体試料Tを注入するための導入口411aが設けられている。そして、生体物質濃縮装置400は、流路411の下端の吸引口411bから生体試料T(およびバッファU)を下方(矢印Z2方向)に吸引して生体試料Tの流れを形成するとともに、第1電極423と第2電極424との間に電圧(電界)を印加して上方(矢印Z1方向)に向かうDNAの流れを形成するように構成されている。なお、トラップフィルタ421の構造は、上記第2実施形態(第1実施形態)のトラップフィルタ21と同様である。また、生体物質濃縮装置400は、吸引により生体試料Tの液面が液面センサ426に検知された時点で、トラップフィルタ421の上面側で濃縮された生体試料Tを回収するように構成されている。
【0078】
上記構成を有する比較例による生体物質濃縮装置400と、第2実施形態による生体物質濃縮装置200とを用いてDNA(生体物質)の濃縮を行った。所定量のDNAを含有させたTBバッファー(トリスホウ酸緩衝液)を実験用の生体試料Tとして使用した。また、バッファーUとして、同一のTBバッファーを用いた。濃縮後、回収した試料の吸光度を測定し、測定結果に基づいて回収された生体試料T中のDNA量を算出した。なお、DNA(生体物質)の濃縮は、電極間に印加する電圧を変化させて複数回行った。
【0079】
生体物質濃縮装置400を用いた濃縮結果(比較例)を図15に示す。また、第2実施形態による生体物質濃縮装置200を用いた濃縮結果(実施例)を図16に示す。図15および図16では、導入された生体試料Tに含まれるDNA量(重量)に対する回収されたDNA量(重量)の比である重量回収率(%)を縦軸にとり、濃縮時に電極間に印加した電圧の大きさ(V)を横軸にとったグラフである。なお、図16では、第2実施形態による生体物質濃縮装置200を用いた濃縮を各電圧値(0V、100V、200V、300V、400V、500V)について2回行い、それぞれ重量回収率をプロットするとともに、各2回の濃縮結果の平均値を直線近似した結果を示した。
【0080】
図15に示すように、生体物質濃縮装置400を用いた濃縮結果(比較例)では、印加する電圧が約100Vまでは電圧の上昇に伴ってDNAの重量回収率が向上する一方、印加する電圧を約100Vよりも大きくしてもDNAの重量回収率がほとんど向上しないことが分かる。この比較例による濃縮結果では、35%付近に重量回収率の限界があることが判明した。
【0081】
一方、図16に示すように、第2実施形態による生体物質濃縮装置200を用いた濃縮結果(実施例)では、実験を行った電圧値0Vから500Vの範囲全体にわたって、DNAの重量回収率が限界に達することなく電圧の上昇に伴って向上している。測定範囲内では、DNAの重量回収率は最大で約80%(電圧500V)に達することが分かる。これにより、第2実施形態による生体物質濃縮装置200では、DNAの回収率を比較例よりもさらに向上させることが可能であることが確認された。
【0082】
なお、上記の濃縮結果の相違は、電極に発生する気泡の影響によると考えられる。すなわち、比較例による生体物質濃縮装置400では、図14に示すように、上下方向に延びる流路411内においてトラップフィルタ421の直下に第2電極424(陰極)が配置されるため、第2電極424から発生する気泡Q2がトラップフィルタ421の下面側に溜まることになる。電極間に印加する電圧を大きくするほど電極間に大電流が流れて水の電気分解が促進されるため、電圧の上昇に伴って気泡Q2の発生量も増大する。このトラップフィルタ421の下面側に溜まる気泡Q2によってトラップフィルタ421近傍の生体試料Tに対する電圧(電界)の印加が妨げられることにより、トラップフィルタ421によるDNAの捕捉が阻害され、その結果、電圧値100V付近(回収率35%付近)でDNAの回収率が頭打ちになると考えられる。
【0083】
一方、第2実施形態による生体物質濃縮装置200では、図13に示すように、印加される電圧の上昇に伴い気泡Q2の発生量が増大した場合にも、第2電極124から発生した気泡Q2は吸引流路部114および吸引口111bを通過して廃液容器6(図1参照)に排出される。このため、印加する電圧を上昇させても気泡Q2の影響を受けることなくトラップフィルタ421によるDNAの捕捉が行われる。これにより、第2実施形態による生体物質濃縮装置200では、電圧の上昇に伴って重量回収率が限界に達することなく向上すると考えられる。
【0084】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0085】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、生体物質濃縮装置100(200)によりDNAを濃縮するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、生体物質濃縮装置がDNA以外のRNAなどの核酸や、核酸以外のタンパク質を濃縮するように構成してもよい。タンパク質の濃縮を行う場合には、バッファでpHを調節してタンパク質を荷電させ、荷電したタンパク質をトラップフィルタで捕捉すればよい。
【0086】
また、上記第1実施形態では、流路(水平流路部)から上方に分岐して液体収容室を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、液体収容室を上方以外の水平方向に分岐させてもよい。液体収容室は、流路から下方以外の方向に分岐して設けられればよい。
【0087】
また、上記第1および第2実施形態では、圧力源により生体試料を上下流路部の上方から下方に向かって移動させるとともに、電源により上下流路部の下方から上方に向かうDNA(生体物質)の流れを生じさせるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、圧力源により生体試料を上下流路部の下方から下上に向かって移動させるとともに、電源により上下流路部の上方から下方に向かうDNA(生体物質)の流れを生じさせるように構成してもよい。
【0088】
また、上記第1および第2実施形態では、上下流路部の途中にトラップフィルタを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば水平流路部の途中にトラップフィルタを設けてもよい。
【0089】
また、上記第1および第2実施形態では、本発明の捕捉部として、複数の孔を有するフィルタからなるトラップフィルタを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の孔を有するフィルタ以外の構成を有する捕捉部を設けてもよい。たとえば、多数の微細な管路からなる捕捉部を設けてもよい。
【0090】
また、上記第1および第2実施形態では、ニッケルに金メッキが施されることにより形成されたトラップフィルタを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、トラップフィルタを樹脂材料、ガラス系材料、セラミック材料などから形成してもよい。また、トラップフィルタの厚みや孔径などの各種寸法も、第1および第2実施形態とは異なる寸法としてよい。
【0091】
また、上記第1および第2実施形態では、バッファ供給源からバッファ(TBバッファ)を供給するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、純水などのバッファ以外の液体を流路に供給してもよい。また、TBバッファ以外のバッファを供給してもよい。流路内に供給される液体は、第1電極と第2電極との間に電圧を印加することが可能であれば、どのような液体でもよい。
【0092】
なお、上記第1実施形態において説明した生体物質濃縮装置による生体物質(DNA)の濃縮動作は、使用者が手動で生体物質濃縮装置の各部を操作することにより実施してもよいし、制御手段によって生体物質濃縮装置の各部が制御されることにより濃縮動作が実施されてもよい。
【0093】
また、上記実施例では、DNAを含有させたTBバッファー(トリスホウ酸緩衝液)を実験用の生体試料として使用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、生体試料として血清などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0094】
2 圧力源
3 電源
11、111 流路
12、112 上下流路部
13、113 水平流路部
21 トラップフィルタ(捕捉部、フィルタ)
22 液体収容室(液体収容部、気泡逃がし部)
22a ガス抜き接続部(排気部)
23 第1電極
24、124 第2電極
25 回収チューブ(試料回収チューブ)
26 液面センサ(液面検知部)
100、200 生体物質濃縮装置
111b 吸引口(気泡逃がし部)
114 吸引流路部(気泡逃がし部)
P 回収位置
T 生体試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体物質を含む生体試料を一端側から受け入れる流路と、
前記流路に受け入れられた生体試料を移動させる圧力源と、
前記流路の途中に設けられ、生体試料に含まれる生体物質を捕捉する捕捉部と、
前記捕捉部よりも他端側の位置で前記流路から下方以外の方向に分岐して設けられた液体収容部と、
電源と、
前記圧力源による生体試料の移動方向と逆向きの流れを荷電した生体物質に生じさせるように前記電源の陽極または陰極に接続され、前記流路内に受け入れられた生体試料に接触する第1電極と、
前記電源の他の極に接続され、前記液体収容部内に露出する第2電極と、を備える、生体物質濃縮装置。
【請求項2】
前記流路は、前記捕捉部よりも一端側において上下方向に延びるように設けられており、
前記第1電極は、前記流路内の前記流路の一端よりも前記捕捉部に近い前記捕捉部の上面側の位置で前記流路内部に露出している、請求項1に記載の生体物質濃縮装置。
【請求項3】
前記液体収容部は、前記流路の前記捕捉部よりも他端側の位置から上方に分岐して設けられ、
前記第2電極は、前記流路から前記液体収容部が分岐する位置よりも上方の位置に設けられている、請求項1または2に記載の生体物質濃縮装置。
【請求項4】
前記第2電極は、前記液体収容部の上端よりも前記液体収容部の下端に近い位置に設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体物質濃縮装置。
【請求項5】
前記液体収容部に連通し、前記液体収容部内の気体を排気するための排気部をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体物質濃縮装置。
【請求項6】
前記捕捉部は、複数の孔を有するフィルタである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体物質濃縮装置。
【請求項7】
前記流路内に露出し、一端が前記捕捉部に近接して設けられた試料回収チューブをさらに備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載の生体物質濃縮装置。
【請求項8】
前記生体物質は、核酸である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の生体物質濃縮装置。
【請求項9】
上下に延びる上下流路部と上下流路部の下端に連結される水平方向に延びる水平流路部とを含み、生体物質を含む生体試料を上方の一端側から受け入れる流路と、
前記流路に受け入れられた生体試料を移動させる圧力源と、
前記上下流路部の途中に設けられ、生体試料に含まれる生体物質を捕捉する捕捉部と、
電源と、
前記圧力源による生体試料の移動方向と逆向きの流れを荷電した生体物質に生じさせるように前記電源の陽極または陰極に接続され、前記捕捉部よりも一端側で前記流路内に受け入れられた生体試料に接触する第1電極と、
前記電源の他の極に接続され、前記水平流路部内に露出する第2電極と、
前記水平流路部から下方以外の方向に分岐して設けられた気泡逃がし部と、を備える、生体物質濃縮装置。
【請求項10】
前記気泡逃がし部は、前記第2電極の上方に設けられている、請求項9に記載の生体物質濃縮装置。
【請求項11】
上下に延びる上下流路部を含み、生体物質を含む生体試料を上方の一端側から受け入れる流路と、
前記流路に受け入れられた生体試料を前記流路の一端側から他端側に向けて移動させる圧力源と、
上下に延びる前記上下流路部の途中に設けられ、生体試料に含まれる生体物質を捕捉する捕捉部と、
上下に延びる前記上下流路部内に露出し、一端が前記捕捉部に近接して設けられた試料回収チューブと、
電源と
前記流路の他端側から一端側に向かう流れを荷電した生体物質に生じさせるように前記電源の陽極または陰極に接続され、前記上下流路部内の前記捕捉部よりも一端側の位置で前記上下流路部内の生体試料に接触する第1電極と、
前記電源の他の極に接続される第2電極と、を備える、生体物質濃縮装置。
【請求項12】
前記試料回収チューブは、生体試料の液面が前記上下流路部内の所定の回収位置まで前記圧力源により下降された状態で、一端から生体試料を回収するように構成され、
前記第1電極の少なくとも先端部は、前記所定の回収位置と前記捕捉部との間の位置で前記上下流路部内の生体試料に接触するように配置されている、請求項11に記載の生体物質濃縮装置。
【請求項13】
前記流路内の所定の回収位置で生体試料の液面を検知する液面検知部をさらに備える、請求項12に記載の生体物質濃縮装置。
【請求項14】
前記捕捉部は、複数の孔を有するフィルタである、請求項11〜13のいずれか1項に記載の生体物質濃縮装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−19710(P2012−19710A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158411(P2010−158411)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】