説明

生体用電極

【課題】生体用電極に使用される導電性粘着剤(生体電極用ゲル)に苦味物質を添加して、小児や痴呆症の患者等が意識的または無意識に生体用電極を誤って口に入れた際に吐き出すことによって、誤飲または誤嚥を防止できる生体用電極を提供する。
【解決手段】苦味物質を含有した導電性粘着剤と電子伝導性で外部への電気接続部を有する電極素子材料とからなる生体用電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の体表面に装着され生体の電気現象を導出するための導電性粘着剤組成物を用いた生体用電極に関し、更に詳しくは、導電性粘着剤組成物に苦味物質を含有した生体用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の体表面に装着され生体の電気現象を導出するための導電性粘着剤組成物を用いた生体用電極としては、以下のものが知られている。(特許文献1参照)
【0003】
図4の従来の生体電極では、スナップ84により被覆された開口部83を有する非導電性被覆82があり、また、鋲又はアイレット85を含む電極端子が突出する。スナップ84は、アイレット85を被覆する様に固定され、電気計器との電気的連結を与える。アイレット85は、導電性接着層86と電気的に接続し、また、スナップ84及び非導電性被覆82は、本発明の導電性接着剤からなる接着層86を完全に被覆している。剥離ライナー88は、使用前の接着層86を保護するためのものである。
【0004】
生体用電極が生体電位を測定する場合、微弱な電気信号を効率良く取り出して心電計等に誘導するため、生体の一部に直接的に接触させることが必要となる。
しかし、生体の皮膚に生体用電極エレメントを接触させただけでは、生体用電極エレメントと生体との電気的な結合がされず、生体用電極エレメントと皮膚との不安定な接触により複雑な電位やインピーダンスが生じ、生体の電気信号を精度良く抽出し測定することができない。
そこで、従来の生体用電極には、導電性粘着剤(ゲル)を生体用電極エレメントと共に用いて生体と電極との電気的結合を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−181597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の生体用電極は、生体用電極の導電用端子を測定装置に接続して使用するため、医者や看護師等の監視下で使用するのが普通で、小児や痴呆症等の対象者が単独で手にすることは生体用電極には設計思想にはなかった。そのため、従来の生体用電極には誤飲に対する対策はなされてはいなかった。
しかし、小型であるため小児や痴呆症の患者等が意識的または無意識で口に入れる誤飲が生じる可能性は僅かではあるが否定できない。
【0007】
小児が生体用電極を誤飲した場合には、窒息等の事故になる。
また、病院等で生体用電極を装着して生体情報を収集中の痴呆症の患者が生体用電極を誤飲した場合には、生体情報の収集ができなくなると共に、誤飲した患者の不慮の事故が生じることもある。
【0008】
本発明の課題(目的)は、生体用電極に使用される導電性粘着剤(生体電極用ゲル)に苦味物質を添加して、小児や痴呆症の患者等が意識的または無意識に生体用電極を誤って口に入れた際に反射的に吐き出すことによって、誤飲または誤嚥を防止できる生体用電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の生体用電極は、苦味物質を含有した導電性粘着剤と電子伝導性で外部への電気接続部を有する電極素子材料とからなることを特徴とする。
また、前記苦味物質は、安息香酸デナトニウムからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の生体用電極によれば、苦味物質を含有した導電性粘着剤と電子伝導性で外部への電気接続部を有する電極素子材料とからなる構成であるので、小児や痴呆症の患者等が意識的または無意識に生体用電極を誤って口に入れた際に反射的に吐き出すことによって、誤飲または誤嚥を防止できる。
また、導電性粘着剤中に苦味物質を含有させているので、生体用電極として利用する際の導電性を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の生体用電極であって、環状のフォームテープ部材1の中心内側の穴2に導電性粘着剤組成物3を介在させた状態を背面から傾斜させた状態で見た斜視図である。
【図2】図1を傾斜させない状態で側面から見た中心断面図である。
【図3】本発明の図1、図2の生体用電極を表面1aの方向から見た平面図である。
【図4】従来の生体用電極であって、その断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の特徴は、導電性粘着剤(生体電極用ゲル)に苦味物質を添加して、小児や痴呆症の患者等が意識的または無意識に生体用電極を誤って口に入れた際に吐き出すことによって、誤飲または誤嚥を防止できる生体用電極を実現することにある。
【0013】
図1は本発明の生体用電極を背面から見て傾斜させた状態の斜視図である。
図1において環状のフォームテープ部材1の両面が接着可能な表面1a,裏面1bに形成されている。
このフォームテープ部材1の中心には穴2が設けられ、この穴2には、苦味物質を含有する導電性粘着剤組成物3が介在され生体用電極を構成している。
図2は図1を傾斜させない状態で側面から見た中心断面図である。
図2において周囲の表面1a,裏面1bにより接着可能な環状のフォームテープ部材1が形成され、このフォームテープ部材1と同一径のシート状の非導電性支持部材4がフォームテープ部材1の裏面1bに貼り付けてある。非導電性支持部材4の中心付近に設けられた穿孔5からはT型の鍔61を有する導電用ターミナル6が鍔61を内側にしてシート状の非導電性支持部材4の外部にターミナル端子62を突出させた状態で非導電性支持部材4と一体に固定されている。
【0014】
図1に記載の本発明の生体用電極は前記環状のフォームテープ部材1の一方の裏面に前記導電用ターミナル6のターミナル端子62を外部に突出させた状態で一体に接着してあるため、これら非導電性支持部材4と環状のフォームテープ部材1によって穴2が形成されるため、この穴2に苦味物質を含有する導電性粘着剤組成物3を介在させることにより生体用電極が形成される。
尚、生体との電気的接続はターミナル端子62に図示しないリード線が接続され、このリード線を介して図示しない外部の心電計等との電気的な接続がなされる。
【0015】
図3は図1、図2の生体用電極を表面1aの方向から見た平面図で、図示の如く中心部分にはターミナル端子6のスタッドおよびアイレットが中心から突出して設けられている。
この従来の生体用電極においてT型の鍔61は前記苦味物質を含有する導電性粘着剤組成物3が透明であるために電極の表面1aの方向より視認できる。また導電用ターミナル6の表面はAg/AgClでコーティングされ電気的導通が可能となっている。
【0016】
導電性粘着剤組成物3に苦味物質を含有させる手段としては、導電性粘着剤組成物の製造に際して直接苦味物質を混入させることによって実現できる。
【0017】
また、生体用電極の形状としては、図1〜3に記載の如き、環状のフォームテープ部材1の両面が接着可能な表面1a,裏面1bに形成し、このフォームテープ部材1の中心には穴2が設けられ、この穴2に導電性粘着剤組成物3が介在されたもの以外の形状であっても良いことは明らかである。
【0018】
本発明に使用される苦味物質は、ゲラニオール、八アセチル化ショ糖、フェニルエチルアルコール、ブルシン、リナロール、ジエチルフタレート、リナノールアセテート、ベンジルアセテート、安息香酸デナトニウム、ジメトキストリキーネ及びカプサイシンから選ばれる少なくとも1種である。
この中でも、安息香酸デナトニウムが特に好ましい。
【実施例】
【0019】
次に、本発明の苦味物質を含有した導電性粘着剤と電子伝導性で外部への電気接続部を有する電極素子材料とからなる生体用電極の1例は以下の手順で製造する。
(1)塩化カリウム1.7gを水20gに溶解した溶液にダイアセトンアクリルアミド(協和発酵工業社製)33.2g、メトキシノナエチレングリコールアクリレート(新中村化学工業社製 商品名AM90GにおいてR1=水素、R2=メチル、n=9の化合物))33.2gおよびプロピレングリコール11gを加え、攪拌して均一な溶液とした。
(2)この溶液にさらにベンジルジメチルケタール(2,2−ジメトキシ−2−メチルアセトフェノン)の20%エタノール溶液0.75gを加え均一に溶解して前駆体溶液を作成した。
(3)前記前駆溶液に対して安息香酸デナトニウムを400ppmの濃度になるように添加した。
(4)この前駆体溶液を水平に保持したシリコン処理したポリエステルフィルム上に置いた不織布に含浸せしめおよそ1mmの厚さに流延し、窒素雰囲気下でブラックライトの紫外線を照射して重合硬化せしめ導電性粘着剤組成物を得た。
このものは皮膚に対して適度な粘着力を有していた。
(5)生体用電極は、図2の導電性粘着剤組成物3がない状態の穴2に前記前駆体溶液を注入し、窒素雰囲気中に保ちながら紫外線を照射し、硬化せしめて得た。
【0020】
上記手順で製造した生体用電極を、試しに小児の口に入れたところ、小児は反射的に吐き出したので、誤飲または誤嚥を防止できる機能を確認できた。
【符号の説明】
【0021】
1 フォームテープ部材
1a 表面
1b 裏面
2 穴
3 苦味物質含有導電性粘着剤組成物
4 非導電性支持部材
5 穿孔
6 導電用ターミナル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苦味物質を含有した導電性粘着剤と電子伝導性で外部への電気接続部を有する電極素子材料とからなる生体用電極。
【請求項2】
前記苦味物質は、安息香酸デナトニウムからなることを特徴とする請求項1に記載の生体用電極。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−10725(P2011−10725A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155536(P2009−155536)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】