説明

生体由来ガス成分分析方法、分析装置及び疾病判定支援装置

【課題】清浄空気供給手段(空気純化手段)の不純物除去の性能の影響を少なくすると共に、生体由来ガス成分の分析を少ない手順で実行することが可能な生体由来ガス成分分析方法及び分析装置を提供する。
【解決手段】大気中に含まれるガス成分の内、少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分を含むガス成分を除去して大気を純化する大気純化ステップと、純化された大気と被検者の生体由来ガス成分との混合ガスを得るステップと、前記混合ガスから、前記大気純化ステップと同じ方法を用いて、前記少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分を含むガス成分を抽出する抽出ステップと、前記抽出ステップで抽出した、少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分を分析するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体由来ガス成分分析装置に係り、特に、医療分野における臨床検査,健康検査及び飲酒運転並びに麻薬の取締等の際の被検者の呼気及び血液、尿、皮膚などから発生するガスの分析に好適な生体由来ガス成分分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、生体由来ガス(呼気)の採取装置としては以下のものが知られている。(特許文献1参照)
図9は、従来の生体由来ガス(呼気)のガス採取装置の構成を示す図であって、口及び鼻孔を覆う呼気採取マスク11と、この呼気採取マスク11に清浄な空気を供給する清浄空気供給手段12と、この清浄空気供給手段12と呼気採取マスク11とを連通する清浄空気用流路13と、呼気採取マスク11内の空気を呼気分析装置N側に導く呼気用流路14とを備えている。
【0003】
そして、清浄空気用流路13と呼気用流路14とは、リブレスバルブ15を介して呼気採取マスク11に連結されている。このリブレスバルブ15は、それぞれの流路14,15毎に逆止弁を設けるのと同様に機能する。
【0004】
さらに、清浄空気用流路13の途中には、清浄空気貯留バッファ16が設けられており、また、呼気用流路14の下流側には呼気貯留バッファ17が設けられ、これを介して呼気分析装置Nと連結されている。また、符号18は、呼気貯留バッファ17内の余剰な呼気を外気中に排気する排気流路である。
【0005】
各部を詳説すると、呼気採取マスク11は、被検者Sの口及び鼻孔を覆うのに好適な形状,例えば椀状に形成され、可撓性を有する素材から形成することにより被検者Sの顔との密閉性の向上を図っている。これにより、呼気の採取を行う際の呼気と外気の混入を防止することができ、より純粋な呼気のみを呼気分析装置Nに供給することが可能である。
【0006】
この呼気採取マスク11内には、予め清浄空気が清浄空気供給手段12によって供給される。この清浄空気供給手段12は、清浄空気が高圧で封入されたボンベと、高圧の清浄空気を大気圧近くまで減圧する圧力調整手段と、減圧された清浄空気を一定量で呼気採取マスク11側に供給する流量調整手段とから構成される。
【0007】
上記ボンベ内の清浄空気は、不純物が除かれた空気であり、酸素,窒素等の構成比が所定の値となるように精製されている。これらの構成比は、後に呼気分析の際に参考とされる。
【0008】
清浄空気供給手段12から供給される清浄空気は、清浄空気用流路13を介して呼気採取マスク11まで供給される。この清浄空気用流路13は、内径が約15〜20[mm]の弾性チューブであり、その途中には、清浄空気貯留バッファ16が設けられている。
【0009】
清浄空気貯留バッファ16は、被検者Sの複数の呼吸分の容積を有した容器であり、その容量はおよそ5リットルに設定されている。通常人間の一回の呼吸の吸入量は、およそ400〜500[cc]であり、この清浄空気貯留バッファ16では約10回分の呼吸に相当する量に設定されている。
【0010】
この清浄空気貯留バッファ16は、呼気採取が行われる前に予め清浄空気供給手段12から清浄空気が供給され内部に満たされた状態となっている。このため、被検者Sが呼気採取マスク11を装備した状態で、この清浄空気貯留バッファ16内に貯留された清浄空気を充分に吸い込むことが可能となっている。
【0011】
また、図8の清浄空気供給手段の1例として、以下の空気純化装置が知られている。(特許文献2参照)
「コンプレッサー;前記コンプレッサーに連結する複数のゼオライト充填槽入口二方切換バルブと、前記複数のゼオライト充填槽入口二方切換バルブのそれぞれに連結する複数のゼオライト充填槽と、前記複数のゼオライト充填槽のそれぞれに連結する複数のゼオライト充填槽出口チェックバルブとからなる酸素濃縮システム;前記コンプレッサーに連結する空気フィルターと、前記空気フィルターに連結する複数の高純度空気バルブからなる高純度空気システムとからなることを特徴とする酸素−高純度空気供給システム。」(請求項1)
【特許文献1】特開平9−126958号公報
【特許文献2】特開2001−245987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1に記載の図8では、従来の呼気採取装置では、被検者の呼吸のための空気は予め不純物が除かれている清浄空気供給手段により供給されるが、測定対象とする生体由来ガス成分は、ppb(0.0000001%)程度の濃度であるので、清浄空気をつくるのに非常に手間がかかるという問題があった。
【0013】
また、特許文献1に記載の呼気採取装置における清浄空気供給手段として、上記特許文献2に記載の如き、高純度空気供給システムを採用したとしても、全ての不純物を除去することはできず、清浄空気供給手段で除去できない成分に分析手段の感度が一致する場合には、生体由来ガスの分析結果に影響を与えるという問題があった。
【0014】
本発明の課題(目的)は、清浄空気供給手段(空気純化手段)の不純物除去の性能の影響を少なくすると共に、生体由来ガス成分の分析を少ない手順で実行することが可能な生体由来ガス成分分析方法及び分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の生体由来ガス成分分析方法は、大気中に含まれるガス成分の内、少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分を含むガス成分を除去して大気を純化する大気純化ステップと、純化された大気と被検者の生体由来ガス成分との混合ガスを得るステップと、前記混合ガスから、前記大気純化ステップと同じ方法を用いて、前記少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分を含むガス成分を抽出する抽出ステップと、前記抽出ステップで抽出した、少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分を分析するステップとを含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の生体由来ガス成分分析装置は、大気中に含まれるガス成分の内、少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分を含むガス成分をトラップする第一トラップ手段と、前記第一トラップ手段を通過して純化された大気と被検者の生体由来ガス成分とを混合する生体由来ガス混合手段と、前記生体由来ガス混合手段で得られた生体由来混合ガスに、前記第一トラップ手段と同じ機能を用いて、前記少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分を含むガス成分をトラップする第二トラップ手段と、前記第二トラップ手段でトラップした、少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分を分析するガス分析手段とを含むことを特徴とする。
【0017】
また、前記第一及び第二トラップ手段は、当該トラップ手段に流入するガスを冷却して液化又は固化させて、少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分をトラップすることを特徴とする。
また、前記第一及び第二トラップ手段は、当該トラップ手段に流入するガスに対して、少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分を吸着させる物質を配置したことを特徴とする。
【0018】
また、前記生体由来ガス混合手段は、前記第一トラップ手段を通過した大気で被検者が呼吸をすることによって生体由来ガス成分が混合されることを特徴とする。
また、前記生体由来ガス混合手段は、被検者の生成物又は被検者の一部を前記第一トラップ手段を通過した大気中に曝すことによって生体由来ガス成分が混合されることを特徴とする。
また、前記第一トラップ手段は、第二トラップ手段を複数個接続した機能を有する構成であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の生体由来ガス成分分析装置によって生体由来ガス成分を分析して、生体由来ガスの成分及び濃度から被検者の疾病の有無の判定を支援することができる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1〜8の構成によって、清浄空気供給手段(空気純化手段)の不純物除去の性能の影響を少なくすると共に、生体由来ガス成分の分析を少ない手順で実行することが可能な生体由来ガス成分分析方法及び分析装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の生体由来ガス成分分析方法及び分析装置の原理を説明するための概念図である。
図1において、1は入力ガスから不純物をトラップして除去し、入力ガスを純化する第一トラップ手段であり、2も、前記第一トラップ手段1と同じ原理で入力ガスから不純物をトラップして、不純物を抽出する第二トラップ手段である。
【0022】
また、前記第一トラップ手段1と第二トラップ手段2の間には、一方向弁3及び4が接続され、当該一方向弁の間には、図示しない被検者の呼吸用マスク(吸気及び排気)への呼気管6が接続されている。
また、前記第二トラップ手段2の排気は装置外に排気され、当該第二トラップ手段2でトラップされた不純物をガスクロマトグラフ(GC)等のガス分析装置5で分析する。
図1の第一トラップ手段1,第二トラップ手段2及び一方向弁3,4で構成する部分を本発明では純化・濃縮装置と称する。
【0023】
次に、図1の純化・濃縮装置による大気の純化工程と、被検者の呼気に含まれる生体由来ガス成分の濃縮後のガス成分分析工程を図2を用いて説明する。
【0024】
図2では、大気に、不純物(A)(B)及び(C)が含まれ、第一トラップ手段1及び第二トラップ手段2では、不純物(A)(B)はトラップ可能であるが、不純物(C)はトラップ不可能のものとの前提で示している。
【0025】
なお、図2では、トラップされる不純物を(A)及び(B)、トラップできない不純物を(C)として説明しているが、トラップされる不純物は(A)及び(B)の2種類、トラップできない不純物は(C)の1種類に限定されるものではなく、トラップ手段の原理によって決まるそれぞれ複数の不純物を意味している。
【0026】
また、トラップ可能及び不可能な不純物は、トラップの動作原理によって異なると共に、トラップ可能な不純物であっても、必ずしも100%の不純物がトラップできなくとも良く、僅かの不純物がトラップされずに排気されるものでも良い。
第一トラップ手段1及び第二トラップ手段2は、被検者の生体由来ガスの内、少なくともガス分析装置で分析する対象ガスをトラップできる原理で動作するものを使用する。
【0027】
図2(a)は、被検者が呼吸することにより、前記第一トラップ手段1で純化された大気が、一方向弁3を介して、図示しない被検者の呼吸用マスクに供給される状態を示している。
この状態では、大気に含まれる不純物(A),(B)及び(C)の内、(A)及び(B)は第一トラップ手段1でトラップされ、純化された大気は一方向弁3を介して、被検者の呼吸のために供給されて吸気される。
【0028】
次に、図2(b)は、大気に含まれる不純物(A),(B)が第一トラップ手段1でトラップされて不純物(C)のみが含まれる純化された大気を被検者が吸気した後、呼気を排出した状態を示している。
【0029】
被検者の呼気中には、生体由来のガス成分(A)及び(B)(点線の丸印で囲って示す)が含まれているので、吸気中に含まれている不純物(C)と共に、一方向弁4を介して第二トラップ手段2に供給されて、生体由来ガス成分(A)及び(B)がトラップされて、残りの成分(C)を含むガスが装置外に排気される。
【0030】
第二トラップ手段2でトラップされた生体由来ガス成分は、ガス分析装置5に与えられて生体由来ガス成分の分析が実行される。
【0031】
上述の如く、図2(a)で、大気中に含まれる不純物(A)及び(B)がトラップされて純化された大気を被検者の呼吸用マスクに供給するので、被検者の呼気中に含まれる生体由来ガス成分(A)及び(B)をガス分析装置によって、大気中に含まれる不純物の影響を受けずに分析が可能になる。
【0032】
次に、第一トラップ手段1による大気純化の度合いを説明する。
図3は、図1において、第一トラップ手段1を設けず、かつ被検者への呼気管6を遮断して、直接大気を第二トラップ手段2に送り、該第二トラップ手段によってトラップされた成分をガス分析装置5で分析した結果(クロマトグラム)を示す図である。
図3において、横軸は時間(sec)、縦軸は強さ(Intensity)(a.u)である。
図3をみると、大気中には、種々の不純物の成分がかなり存在していて、生体由来のガス成分を測定(分析)する際に、ノイズとして影響することが分かる。
図3の成分には、図2に示す不純物(A),及び(B)が含まれている。
【0033】
図4は、被検者への呼気管6を遮断して、大気を第一トラップ手段1で純化して、その純化された大気を第二トラップ手段2へ送り、該第二トラップ手段2によってトラップされた成分をガス分析装置5で分析したクロマトグラムを示す図である。
図4でも、図3と同様に、横軸は時間(sec)、縦軸は強さ(Intensity)(a.u)である。
図4をみると、第一トラップ手段1で純化された大気中には、不純物の成分の強さが図3に比較してはるかに低く、生体由来ガスを測定(分析)する際にノイズとして影響が出ない程度にしか含まれていないことが分かる。
図4の成分には、図2に示す不純物(A),及び(B)の内、第一トラップ手段1で完全にはトラップ仕切れなかった成分が含まれている。
【0034】
次に、図1に示す、本発明に係る生体由来ガス成分分析装置によって、被検者の呼気を分析した例を示す。
図5は、第一トラップ手段1で純化された大気で被検者が呼吸した呼気のクロマトグラムを示す図である。
図5でも、図4,図3と同様に、横軸は時間(sec)、縦軸は強さ(Intensity)(a.u)である。
図5をみると、被検者の呼気には、生体由来ガス成分である(A),及び(B)が含まれていることが分かる。
【0035】
なお、図5の例は、被検者が飲酒の習慣のある人物であるので、この分析結果を利用することによって、飲酒の有無の検査に利用することが可能である。
【0036】
本発明では、第二トラップ手段2でトラップされた成分(A)及び(B)をガス分析装置5(例えば、ガス・クロマトグラフ(Gas-Chromatograph)で分析することによって、大気中に存在する不純物の影響なしに、生体由来ガス成分の分析を実行することが可能になる。
【0037】
生体由来のガス成分に、前記大気中に含まれる不純物(A)及び(B)以外の成分(D)が存在する場合、第二トラップ手段2で前記不純物と同じ成分(A及び(B)はトラップできるが、成分(D)については、第二トラップ手段2の原理及び性能によって、トラップできる場合とトラップできずに排気される場合とがある。
【0038】
成分(D)が第二トラップ手段2でトラップできる場合には、第二トラップ手段2でトラップされた(A),(B),(D)をガス分析装置5(例えば、ガス・クロマトグラフ(Gas-Chromatograph)で分析することによって、大気中に存在する不純物の影響なしに、生体由来ガス成分の分析を実行することが可能になる。
【0039】
また、成分(D)が第二トラップ手段2でトラップできない場合には、第二トラップ手段2でトラップされた(A),(B)をガス分析装置5(例えば、ガス・クロマトグラフ(Gas-Chromatograph))で分析できるが、成分(D)についての分析はできない。
【0040】
前記第二トラップ手段でトラップされた濃縮試料の分析は、以下の装置及び分析条件で実施した。
・分析装置:GC−2014(島津製作所)
・カラム:G−100、Df5nm40m(科学物質評価研究機構)
・検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
・分析条件
キャリアガス:He 25ml/min
試料量:1ml
カラム温度:60℃、3min→+20℃/min→200℃、5min
【0041】
次に、図6を用いて、本発明の別の実施態様について説明する。
図6の構成は、実質的には、図1と同様であるが、第一トラップ手段と第二トラップ手段の構成が若干相違している。
第一トラップ手段1と第二トラップ手段2は、不純物をトラップする原理は同じであるが、第一トラップ手段1が第二トラップ手段2の構成を複数段直列(図6では10段)に接続して構成されている点で相違している。
第一トラップ手段1を、第二トラップ手段2の構成を複数段直列に接続して構成することによって、大気中に含まれる不純物(A)及び(B)をトラップする機能(性能)をより高めて、被検者に供給される純化された大気の純化度をより高めることができるので、大気中の不純物の影響をより少なくすることが可能になる。
【0042】
以下、図6の詳細な説明をする。
図6において、2−2は、第二トラップ手段2の詳細な構成例を示している。
図6の2−2では、第二トラップ手段として、ステンレスウールを詰めたステンレスパイプ(内径:4.1mm、長さ10cm)をドライアイス+フッ素系液体冷媒で冷却している。
また、1−2では、第一トラップ手段として、ステンレスウールを詰めたステンレスパイプ(内径:4.1mm、長さ100cm)をドライアイス+フッ素系液体冷媒で冷却している。
【0043】
図6の例では、第一トラップ手段のステンレスウールの詰まった部分の長さが第二トラップ手段の10倍であるので、その表面積も大きくなって、大気に含まれる不純物のトラップ効率が高くなって、大気の純化度をより高くすることが可能になる。
【0044】
図6の如きトラップ手段を用いた場合には、トラップ後に、第二トラップ手段2(濃縮部)を閉鎖して、約80℃で30分加温して濃縮試料を得て、ガス・クロマトグラフ等のガス分析装置5で分析することによって、大気中に存在する不純物の影響なしに、生体由来ガス成分の分析を実行する。
【0045】
なお、図6の実施態様では、前記第一トラップ手段1は前記第二トラップ手段2を複数個直列に接続して構成されているが、直列に限らず複数個並列に接続するなど、不純物をトラップする原理は変えずに、第一トラップ手段1のトラップ性能を第二トラップ手段2の性能より高くするように構成すればよい。
【0046】
以上の説明においては、被検者の呼気に含まれる生体由来ガス成分の分析方法及び分析装置について詳述したが、生体由来ガスは被検者の血液、尿、皮膚等からも発生するため、次に、それらから発生する生体由来ガスの成分分析方法及び分析装置について詳細に説明する。
【0047】
図7には、本発明にかかる、血液、尿等の被検者の生成物から発生する生体由来ガスの成分分析装置の概念図が示されている。
同図において、前述した構成要件と同じ構成は同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0048】
取入口が大気に開口している第一ポンプ手段7の排出口は、第一トラップ手段1、第一電磁弁8を介して、血液、尿等の被検者の生成物が置かれているチャンバー9と連通している。
チャンバー9は、第二電磁弁10,第二ポンプ手段11,第二トラップ手段2を介して外部に連通している。
第一ポンプ手段7は、大気を第一トラップ手段1及び第一トラップ手段1で純化された大気をチャンバー9に圧送する機能を有し、第一電磁弁8は、第一トラップ手段1とチャンバー9とを連通する通路を開閉する機能を有する。
第二ポンプ手段11は、チャンバー9の大気を第二トラップ手段2に圧送する機能を有し、第二電磁弁10は、チャンバー9と第二ポンプ手段11とを連通する通路を開閉する機能を有する。
チャンバー9は、柔軟な材料から構成されており、内部に血液、尿等の被検者の生成物を置き、第一トラップ手段1によって純化された大気に曝すことができるようになっている。
【0049】
このような構成において、血液、尿等の被検者の生成物に含まれている生体由来ガス成分を検出、分析するために、チャンバー9内に被検者の生成物を置き、図示しない制御装置からの指示により、第一電磁弁8を開き、第一ポンプ手段7を所定時間作動させて一定量の純化した大気をチャンバー9に送る。
その後、第一電磁弁8及び第二電磁弁10を閉じた状態で、被検者の生成物を純化した大気に所定時間曝す。
【0050】
次に、第二電磁弁10を開き、第二ポンプ手段11を作動させて、チャンバー9内の大気を第二トラップ手段2に送って、生体由来ガス成分をトラップする。
前述したように、チャンバー9は柔軟な材料により構成されているため、チャンバー9内の大気が排出されるにつれてチャンバー9が収縮し、チャンバー9内の大気がスムーズに第二トラップ手段2に送られる。
第二トラップ手段2でトラップされた生体由来ガス成分は、前述の説明と同様に、ガス分析装置5に与えられて、生体由来ガス成分の分析が実行される。
【0051】
前記チャンバー9をリジッドな材料で構成した場合は、チャンバー9の純化された大気の流入口と第二トラップ手段2への流出口とをできるだけ離して設ける。
第一電磁弁8及び第二電磁弁10を閉じて、被検者の生成物を純化した大気に所定時間曝した後、第一電磁弁8及び第二電磁弁10を開き、第二ポンプ手段11を作動させて、チャンバー9内の大気を第二トラップ手段2に送って、生体由来ガス成分をトラップする。
前述したように、チャンバー9の大気の流入口と流出口とは離れているため、チャンバー9内の大気が、第一トラップ手段1からの純化大気により押し出されるようにスムーズに第二トラップ手段2に送られる。
【0052】
被検者の手などの皮膚から発生する生体由来ガス成分を検出、分析する場合は、図7において、チャンバー9を柔軟な材料で構成して、手などを挿入できる穴を設け、挿入後に密封できる構成とする。
生体由来ガス成分の検出、分析は、前述の血液、尿等と同様な方法で行う。
【0053】
次に、本発明の生体由来ガスの分析結果の解析例について説明する。
図8は、本発明の生体由来ガス成分の分析結果の1例を示す図である。図8(a)は被検者Aの分析結果であり、図8(b)は、被検者Bの分析結果である。
両者を対比すると、
・成分(1)は、被検者A及びBに共通する成分である。
・成分(2)は、被検者A及びBに共通する成分である。
・成分(3)は、被検者Bにおいて濃度の高い成分である。
・成分(4)は、被検者Bにおいて濃度の低い成分である。
・成分(5)は、被検者Bにのみ検出された成分である。
【0054】
被検者の生活慣習や健康状態によって、生体由来ガスに含まれる成分、濃度が異なっているので、上記の如き分析結果を蓄積して、他の検査結果と合わせた判断を実行することによって、被検者の健康管理、疾病の診断に有益な情報を得ることができる。
【0055】
生体由来ガス成分とその成分に関係する疾病の例としては以下のものがある。
・例1:アセトン
糖尿病患者においては、呼気中のアセトン濃度が上昇する場合がある。(糖尿病によって、インスリンの分泌が減少すると体内でアセトンが生成され易くなる為)
・例2:直鎖炭化水素
呼気中の直鎖炭化水素(複数種類)の濃度パターンが肺がん患者において特有のパタ ーンを示すとの報告がある。
・例3:一酸化窒素
呼気中の一酸化窒素と気管支喘息等の気道炎症性疾患には相関があると言われてい る。(疾患があると増える)
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の生体由来ガス成分分析方法及び分析装置の原理を説明するための概念図である。
【図2】図1の純化・濃縮装置による大気の純化工程と、被検者の呼気に含まれる生体由来ガス成分の濃縮後のガス成分分析工程を説明する図である。
【図3】大気を純化せずに濃縮してクロマトグラフで分析した結果(クロマトグラム)を示す図である。
【図4】純化・濃縮した大気のクロマトグラムを示す図である。
【図5】純化された大気で被検者が呼吸をした呼気のクロマトグラムを示す図である。
【図6】本発明の別の実施態様を示す図である。
【図7】本発明にかかる血液、尿等の被検者の生成物から発生する生体由来ガス成分分析装置の概念図である。
【図8】本発明の生体由来ガスの分析結果の1例を示す図である。
【図9】従来の生体由来ガス(呼気)採取装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1:第一トラップ手段
2:第二トラップ手段
3:一方向弁
4:一方向弁
5:ガス分析装置(GC)
6:呼気管
7:第一ポンプ手段
8:第一電磁弁
9:チャンバー
10:第二電磁弁
11:第二ポンプ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中に含まれるガス成分の内、少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分を含むガス成分を除去して大気を純化する大気純化ステップと、
純化された大気と被検者の生体由来ガス成分との混合ガスを得るステップと、
前記混合ガスから、前記大気純化ステップと同じ方法を用いて、前記少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分を含むガス成分を抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出した、少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分を分析するステップと、
を含むことを特徴とする生体由来ガス成分分析方法。
【請求項2】
大気中に含まれるガス成分の内、少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分を含むガス成分をトラップする第一トラップ手段と、
前記第一トラップ手段を通過して純化された大気と被検者の生体由来ガス成分とを混合する生体由来ガス混合手段と、
前記生体由来ガス混合手段で得られた生体由来混合ガスに、前記第一トラップ手段と同じ機能を用いて、前記少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分を含むガス成分をトラップする第二トラップ手段と、
前記第二トラップ手段でトラップした、少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分を分析するガス分析手段と、
を含むことを特徴とする生体由来ガス成分分析装置。
【請求項3】
前記第一及び第二トラップ手段は、当該トラップ手段に流入するガスを冷却して液化又は固化させて、少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分をトラップすることを特徴とする請求項2に記載の生体由来ガス成分分析装置。
【請求項4】
前記第一及び第二トラップ手段は、当該トラップ手段に流入するガスに対して、少なくとも測定対象となる生体由来ガス成分を吸着させる物質を配置したことを特徴とする請求項2に記載の生体由来ガス成分分析装置。
【請求項5】
前記生体由来ガス混合手段は、前記第一トラップ手段を通過した大気で被検者が呼吸をすることによって生体由来ガス成分が混合されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の生体由来ガス成分分析装置。
【請求項6】
前記生体由来ガス混合手段は、被検者の生成物又は被検者の一部を前記第一トラップ手段を通過した大気中に曝すことによって生体由来ガス成分が混合されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の生体由来ガス成分分析装置。
【請求項7】
前記第一トラップ手段は、第二トラップ手段を複数個接続した機能を有する構成であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の生体由来ガス成分分析装置。
【請求項8】
前記請求項2〜7のいずれか1項に記載の生体由来ガス成分分析装置によって生体由来ガス成分を分析して、生体由来ガスの成分及び濃度から被検者の疾病の有無の可能性の判定を支援する疾病判定支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−8374(P2010−8374A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171226(P2008−171226)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】