説明

生体監視システム及び方法

【課題】所望の筋肉が確実に鍛えられているか検出することが可能で、検出結果を無線送信することにより被検者に負荷を与えることなく確実にトレーニング効果を達成できる生体監視システムを提供できる。
【解決手段】被検者に直接装着可能な少なくとも2つの筋電電極220,240,260と、前記筋電電極よりの検出筋電信号を無線送信する無線送信手段160とを備える生体情報検出ユニット100と、生体情報検出ユニット100よりの信号を受信して受信した生体情報を処理する生体監視装置300より構成される生体監視システムにおいて、生体情報検出ユニット100を被検者の体表面に直接装着してトレーニングを行い、トレーニング中の筋電信号を無線で生体監視装置300に送信し、該筋電信号を受信した生体監視装置は、受信した筋電信号が予め想定された検出レベルか否かを判断し、判断結果を報知して予め想定された筋肉の活動状況を確認可能とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の筋肉を鍛えているか否か客観的に認識することができる生体監視システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
若者のみではなく、競技志向の強いアスリート一般にとっても理想的に筋肉を発達させた肉体を得たいという願望が強くあります。この発達させたい筋肉は、対象となる競技により異なり、発達させる筋肉により行うべきトレーニング方法もそれぞれ異なる。
これらに鑑みて近年、各種のトレーニング方法と、鍛えることができる筋肉の関係が、筋電図などにより研究されつつある。
【0003】
特許文献1は、筋電図情報の検出をトレーニング方法に適用するために、複数の筋電計の電極と角速度センサーを被検者に装着し、検出データを増幅器を通じて有線又は無線の形で、受信部に伝え、受信部において、得られたデータに対してwavelet周波数解析を行って、筋電計電極からのデータを、リアルタイムにかつ、筋肉の活動の「質」の評価を可能にし、角速度データからは、理想的な左右対称の波形からの比較により、歩行時の動きの「滑らかさ」の評価を可能にしていた。そして、二つの有効なデータを同時に提供することにより、リハビリテーションの進捗の確認をし、有効なリハビリテーション手法の開発に利用していた。
【0004】
また、特許文献2は、トレーニング中における有用なデータを被験者が容易に得ることのできるデータ送受信システムを提供するためのもので、ユーザU(被験者)の腹筋A、背筋B、大腿直筋C、大腿二頭筋D、大殿筋Eのそれぞれの検出位置に第1〜第5無線センサ装置1A〜1Eを貼着し、ユーザUの腕に装着される腕時計端末2に検出した筋電データを送信し、フォーム判定等を行なっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−202612号公報
【特許文献2】特開2004−65803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近時は、広範囲の筋肉を鍛えているのみでは、各対象者や選手毎に強化する必要のある筋肉等が異なり、最良の効果を得るためには各人に合わせて、あるいは対象となる運動種目によって鍛えるべき筋肉にも差があり、それぞれの運動種目で最適なトレーニング方法を行うことで、最も高い効果が得られることがわかってきている。
さらに、最良の結果を求めるような場合には最適なトレーニング方法も各人で異なることも多々ある。効率的なトレーニングを行おうとする場合には、トレーニング方法を間違えたり、ちょっとした運動方向のズレや、グリップを変えても、所望の筋肉が鍛えられないばかりか所望の筋肉と異なる筋肉を鍛えてしまい、逆効果となることもあった。
これらに対して、従来は経験に頼らざるを得ず、効果的なトレーニングが続けられているか否かは、熟練者がトレーニングを常時監視していなければならなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記従来技術の課題を解決することを目的としてなされたもので、所望の筋肉が鍛えられているか、鍛え方が間違って否かを容易かつ客観的に検知することが可能な生体監視システム及び方法を提供することを目的とする。係る目的を達成する一手段として以下の構成を備える。
【0008】
即ち、被検者の筋電信号を検出可能な生体電極を身体に直接装着可能な生体情報検出ユニットと、前記生体情報検出ユニットよりの信号を受信して受信した生体情報を処理する生体情報処理装置とから構成される生体監視システムであって、前記生体情報検出ユニットは、被検者に直接装着可能な少なくとも2つの生体電極と、前記生体電極よりの検出信号値を無線送信する無線送信手段とを備え、前記生体情報処理装置は、前記無線送信手段により送信された検出信号値を受信する受信手段と、該受信手段で受信した検出信号値が予め想定された検出信号レベルか否かを判断し、判断結果を報知する報知手段とを備え、前記生体電極を少なくとも予め想定された筋肉の活動状況を確認可能な部位に装着し、筋肉の活動状況を認識可能とすることを特徴とする。
【0009】
そして例えば、前記生体情報検出ユニットの生体電極は、目的とする筋肉の筋電信号を検出する位置と、該目的とする筋肉と異なる筋肉の筋電信号を検出する位置とに装着することを特徴とする。
【0010】
また例えば、前記無線送信手段は、前記筋電電極に係止されることを特徴とする。あるいは、前記生体情報検出ユニットには生体の姿勢状態を検出可能な加速度センサを含むことを特徴とする。
【0011】
更に例えば、前記生体電極は、生体表面に貼着する貼着パットと、生体信号を検出する電極薄膜とを含むことを特徴とする。あるいは、前記無線送信手段は情報をほぼ一定間隔で送信することを特徴とする。また例えば、前記無線送信手段は、自ユニットに特有の特定情報を付加して送信することを特徴とする。
または、被検者に直接装着可能な少なくとも2つの筋電電極と、前記筋電電極よりの検出筋電信号を無線送信する無線送信手段とを備える生体情報検出ユニットと、前記生体情報検出ユニットよりの信号を受信して受信した生体情報を処理する生体情報処理装置より構成される生体監視システムにおける生体監視方法であって、前記生体情報検出ユニットを被検者の体表面に直接装着してトレーニングを行い、トレーニング中の筋電信号を無線で生体情報処理装置に送信し、該筋電信号を受信した生体情報処理装置は、受信した筋電信号が予め想定された検出レベルか否かを判断し、判断結果を報知して予め想定された筋肉の活動状況を確認可能とする生体監視方法であることを特徴とする。
【0012】
そして例えば、前記生体情報検出ユニットの筋電電極は、目的とする筋肉の筋電信号を検出する位置と、該目的とする筋肉と異なる筋肉の筋電信号を検出する位置とに装着することを特徴とする。
【0013】
また例えば、前記生体情報検出ユニットの筋電電極は、目的とする筋肉の筋電信号を検出する位置と、該目的とする筋肉に隣接する他の筋肉の筋電信号を検出する位置とに装着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コンパクトかつ軽量で、被検者の負荷となることなく、所望の筋肉が鍛えられているか、不要な筋肉が鍛えられていないかを、容易かつ客観的に監視し、認識することができる生体監視システム及び方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる第1の実施の形態例の生体監視システムの全体構成を説明するための図である。
【図2】本実施の形態例の生体情報検出ユニット装置の外観図である。
【0016】
【図3】本実施の形態例の筋電電極の詳細構成を示す図である。
【図4】本実施の形態例の動作制御を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0017】
100、500 生体情報検出ユニットケース
110、310 制御部
130、190、340 表示部
140 温度センサ
150 3次元加速度センサ
160、360 通信制御部
170 音響出力部
180 電源部
185 電源スイッチ
220、240、260、600 筋電電極
210 接続コネクタ
230、250、510、520、610 コネクタ
300 生体監視装置
320 被検者情報管理部
330 トレーニングデータ登録部
350 入力部
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明に係る一発明の実施の形態例を詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する構成要素の相対配置、数値等に何ら限定されるものではなく、特に特定的な記載がない限り本発明の範囲を以下の記載に限定する趣旨ではない。
【0019】
本発明に係る一実施の形態例は、装着者に過度な負荷を与えることなく、所望の筋肉に対する筋力トレーニングを効率よく、かつ誤りなくおこなうことができる所望の筋肉を鍛えることができる生体監視システムを提供するもので、所望の筋肉の活動状態を検出するのみでなく、鍛えるべきでない他の筋肉の活動状態も同時に検出して、誤って希望しない筋肉のみ鍛えられるような事態を未然に防止することを可能としている。
【0020】
以下、図1乃至図3を参照して本実施の形態例の生体監視システムの詳細構成を説明する。図1は本発明に係る第1の実施の形態例の生体監視システムの全体構成を説明するための図、図2は本実施の形態例の生体情報検出ユニット装置の外観図、図3は本実施の形態例の筋電電極の詳細構成を示す図である。
【0021】
まず図1乃至図3を参照して本実施の形態例の概略構成を説明する。なお、図1においては生体情報検出ユニット(合成樹脂ケース)100は一つのみ記載されているが、生体情報処理装置300は複数の生体情報検出ユニットからの検出情報を受信してそれぞれ処理することが可能である。
【0022】
図1において、100は本実施の形態例の生体情報検出ユニットであり、例えば小形軽量化を図るため合成樹脂(プラスチック)でモールドされている。合成樹脂としてはポリスチレン系合成樹脂、或いは、ポリメチルメタクリレート系合成樹脂を使用することができる。
【0023】
大きさとしては、例えば、最大でも40×40×10mm程度以下の軽量小型の大きさとする。
【0024】
生体情報検出ユニット100において、110は生体情報検出ユニットの全体制御を司る制御部であり、例えばマイクロプロセッサとメモリ、入出力インタフェース部などを備えている。他の全ての各生体情報検出ユニットにはそれぞれ固有の識別番号、例えば14桁の識別番号が付与されている。この識別番号は制御部110が管理している。
【0025】
130は装置の状態を表示可能な表示部であり、例えば複数色で発光する発光ダイオード等で構成され、装置の状態により発光色を変え、正常動作時には連続点灯または「青」で表示し、電源不良や検出結果不良で装着状態に問題がある場合等には点滅点灯または「赤」で表示し、非動作時には消灯することなどが考えられる。
【0026】
140は被検者の体表面温度(体温)を検出する温度センサであり、例えば温度により抵抗値が変化するサーミスタ素子を用いている。体温の検出方法は電子体温計などで公知であるため詳細説明を省略する。
【0027】
150は3次元加速度センサであり、本装置装着者の3次元の動きを検出してX方向、Y方向、Z方向のそれぞれの3方向の検出電圧値を出力する。3次元加速度センサ150としては、例えばKionix社製のKXM52シリーズを適用できる。KXM52シリーズの加速度センサであればほぼ5mm×5mm×1.8mmの小形DFNパッケージであり、生体情報検出ユニットも小型の構成とできる。
【0028】
160は通信制御部であり、制御部110の制御下で各種検出値(例えば各筋電電極の検出値、3次元加速度センサの検出値、温度センサの検出値)を生体監視装置300の通信制御部360に一定の間隔でデータ伝送する。データ伝送は、例えば2.4GHzの周波数で行われる。
【0029】
生体情報検出ユニット100が検出値を送信する間隔は任意で良く、数mS間隔であっても、数十mS間隔でも、数百mS間隔であってもよい。なお、送信データは少なくとも10メートル以上離れた距離まで到達する仕様とすることが望ましく、より好ましくはトレーニングを行うフロア内に到達する仕様とすることが望ましい。これにより、フロア内のどの位置に生体監視装置300が設置されていても、確実に検出データを送ることができる。
【0030】
170は音響出力部であり、筋電信号が検出されないなど検出信号が予め設定された閾値を超えた場合や電源部の容量低下など、正常動作が保証できない状態になったときに例えば警報音を出力する。検知した状態により音響出力パターンを変化させることにより、より詳細に生体情報検出ユニットの状態を報知できる。
【0031】
なお、この音響出力部170は必ず備えなければならないものではなく、通常のものでは省略し、多機能型のものに限定して備えるようにすることがより望ましい。
【0032】
180は電源部であり、本実施の形態例ではボタン電池を採用している。しかし、電池に限定されるものではなく、必要な電力供給が可能であれば1次電池であるか2次電池であるかも問わない。185は電源スイッチであり、本実施の形態例に動作電源を供給するか否かを指示する。
【0033】
220,240,260は生体表面に貼着可能な皮膚表面電極である筋電電極であり、例えば2つの電極パターンが所定距離離れて配設された貼着パットで構成されることが望ましい。210は生体情報検出ユニット100と筋電電極220とを接続すると共に、生体情報検出ユニット100を筋電電極(パッド)に装着可能な接続コネクタであり、例えば図2に示す装置外形500の一方端部近傍に配設された510,520に示すクリップの一方側で形成している。
なお、図1には3つの筋電電極が備える例が記載されているが、本実施の形態例では筋電電極を3つ備える例に限定されるものではなく、1つであっても良く、また3つ以上必要な筋肉の筋電信号を検出できるようにさらに多くの筋電電極が備えられてていてもよい。
後述するように、このような場合であっても、それぞれの電極検出データを地家列で記憶などすることなく、生体監視装置300への送信時にそれぞれの電極よりの検出データをその都度検出して送信することにより、不必要に構成が複雑化することも防げる。
【0034】
230,250は筋電電極240,260よりの信号ケーブル(不図示)と電気的に接続する接続コネクタであり、例えば図2に560,570で示す様に、合成樹脂製のケースで構成されている生体情報検出ニット500の側面に形成されている。接続コネクタ230(560)、250(570)は、筋電電極240,260の電極パターンと電気的に接続された信号線の端部端子を係止可能に構成される。
【0035】
300は生体情報検出ユニットからの筋電信号などを受け取って被検者の状態監視を行っている生体監視装置である。生体監視装置300において、310は全体制御を司る制御部、320は作業者毎の検出する筋肉データ、動作状態を受け取り被検者毎に受け取った検出情報を管理する被検者情報管理部である。
【0036】
330は生体情報検出ユニットを装着する被検者毎に予め設定される被検者情報、トレーニングメニュー、鍛えるべき筋肉情報などを登録するトレーニングデータ登録部である。トレーニングメニューは、被検者の運動能力、体型、筋肉状況から鍛えたい筋肉を特定し、鍛えたい筋肉に最適なトレーニング方法を決める。
実行するトレーニングと筋電図により実効を確認する手法で、近年この方面の研究も進んできている。
【0037】
例えば、半田徹氏らによる筋電図学的研究により、トレーニング方法に基づく筋活動の活動状況が解明されつつあり、鍛えようとする筋肉に対応したトレーニング方法が明らかとなってきている。
【0038】
一方、同じトレーニング方法を実施しても、僅かな誤動作で所望の筋肉の活動が抑えられたり、全く異なる筋肉が活動してかえって逆効果となってしまうおそれも明らかとなってきている{体力科学(2005)54、159〜168「筋力トレーニングのプル系5種目における上腕二頭筋、広背筋および僧帽筋の筋電図学的研究」、あるいは、スポーツ科学研究、5,58〜70「筋力トレーニングのベンチプレス系3種目における大胸筋、前鋸筋および三角筋の筋電図学的研究、及び体育学研究、54、43〜54、2009「腹部トレーニング7種目における腹直筋上部、腹直筋下部、外腹斜筋および大腿直筋の心電図学的研究」}。
【0039】
そこで本実施の形態例では、トレーニング方法をそれぞれの被検者毎に定めて、鍛えようとする筋肉よりの筋電信号を検出するべき箇所に筋電電極を装着すると共に、トレーニングの仕方によっては活動状態となってしまう筋肉よりの筋電信号を検出するべき箇所に筋電電極を装着することにより、所望の筋肉が正しく鍛えられているか、誤って異なる筋肉が鍛えられた状態ではないかを検出することを可能としている。
【0040】
340は表示部であり、生体情報管理部で管理している被検者毎の状態を読み出してきて表示すると共に、生体情報検出ユニット100よりの検出筋電図情報や姿勢状態を表示する。更に緊急時のメッセージ表示なども行う。350は各種指示や情報を入力するキーボードあるいはカードリーダなどからなるデータ入力部である。
【0041】
360は生体情報検出ユニット100とのデータ通信を行う通信制御部であり、生体情報検出ユニット100より一定間隔で送られてくる検出生体情報や被検者の状態を示す情報などを受信する。
【0042】
通信制御部160、360間のデータ通信制御の詳細を以下に説明する。本実施の形態例では、上述したように生体情報検出ユニットからほぼ一定間隔でパケットデータを送信し、これを生体監視装置300で受信している。
【0043】
パケットには、予め各生体情報検出ユニット毎に割り当てられている識別番号(送信元情報)格納領域、パケットを送信する毎に歩進される送信番号情報(位置情報)格納領域、生体情報検出ユニットで測定した送信するべきデータ等が割り当てられているデータ格納領域、誤り訂正符号であるCRCデータを格納するCRC格納領域等からなり、データ格納領域に筋電電極検出データ、加速度センサの各方向データ、温度センサ検出データなどが格納される。
【0044】
生体監視装置300では、順次受信した生体情報検出ユニット毎の受信データ変化をリアルタイムで監視すると共に、表示部340に選択表示している。
次に、図2及び図3を参照して本実施の形態例の筋電電極の形状及び被検者への装着方法などを説明する。
【0045】
図2において、500は図1に示す生体情報検出ユニット100の本体部分の生体情報検出ユニットケース形状を示している。510、520は生体情報検出ユニットケース500と筋電電極を電気的に接続するための電極端子を構成するスナップボタンである。560,570はコネクタ230,250の外形形状、190は表示部130の外部露出形状を示している。
【0046】
図3において、600は生体情報検出ユニット100に着脱自在に接続可能な筋電電極を含む筋電電極パッド、610は生体情報検出ユニットケースと筋電電極を電気的に接続するための電極端子を構成するスナップボタンである。
【0047】
筋電電極パッド600は、生体皮膚表面に貼着するため、繰り返し使用すると特性が劣化するため、筋電電極のみ取り替え使用可能にする必要があるため、使い捨てタイプの電極パッドを使用する。筋電電極については、公知の一般的な心電電極をそのまま転用することが可能であり、広く汎用品として市場の供給されている心電図信号を検出する心電図電極を用いることにより、専用の電極などを用意することなく、廉価で必要な特性を有する筋電電極を使用できる。例えば、日本光電工業製またはフクダ電子製の「ディスポ電極」を使用できる。
【0048】
本実施の形態例においては、被検者の所望筋肉部位に直接装着することを前提としているため、小形軽量化することが特に求められる。このため、温度センサ140、3次元加速度センサ150、筋電電極600(220,240,260)での検出データをメモリ等に一時記憶などすることなく、通信制御部160がデータ送信をするタイミングになった時点での温度センサ140での温度検出データと筋電電極220,240,260での検出電位、3次元加速度センサ150のX,Y,Zの各センサ検出とをそれぞれ読み取って送信パケットの予め設定された領域に格納して送信する。
【0049】
これにより、生体情報検出ユニットが備える制御部110などの構成をより簡略化でき、消費電力の省電力化を達成すると共に、小形軽量化を達成している。このため多くの生体情報の収集を実現しながら、被検者に直接装着しても、被検者に余分な負荷を与えることがない、優れた生体情報検出ユニットを提供できる。
【0050】
以上の説明においては、スナップボタンで筋電電極と生体情報検出ユニットとを結合している。筋電電極部は、図3に示すように剥離紙650と、剥離紙650に貼着されている裏面に筋電電極と貼着用ゲルが配設されている電極パッド600とで構成されており、筋電電極はスナップボタン610を介して表面側と電気的に接続されて接続端子を構成している。
【0051】
次に図4を参照して本実施の形態例の生体監視システムによる生体監視制御を説明する。図4は本実施の形態例の生体監視制御を説明するためのフローチャート図である。
【0052】
本実施の形態例では、予め、トレーニングを行おうとする被検者、あるいはコーチなどとも相談しながら、トレーニング効果が上がるトレーニング方法を決定し、被検者毎に決定したトレーニング方法をトレーニングデータ登録部330に登録する。このトレーニング方法は、一人一つの方法に限定するものではなく、一人が複数のトレーニング方法を実行する場合であっても良く、複数のトレーニング方法を選択して実行するためのカリキュラムを作成し、作成されたカリキュラムに従ったトレーニングを順次行うようにしても良い。なお、トレーニング方法と共に、トレーニングに従って鍛えるべき筋肉と鍛えられるべきでない筋肉とを合わせて登録する。
【0053】
さらに、トレーニング方法を予め登録しておく場合に限定されるものではなく、トレーニングを始める前にコーチなどと相談してトレーニングメニューを作成してもよい。
【0054】
まずステップS1において、例えば生体監視装置300の入力部350から被検者のトレーニング方法を検索または決定し、行おうとするトレーニングに合わせた筋電図を検出できる部位に生体電極たる筋電電極を装着(貼着)する。
特定されたメニューに従って、例えば、「フラットベンチプレス(FBP)」、「デクラインベンチプレス(DBP)」、「インクラインベンチプレス(IBP)」を行う場合には、被検者は例えば、大胸筋鎖骨部、大胸筋胸肋部、前鋸筋下部及び三角筋前部に筋電電極を装着する。具体的には、筋電図導出部位をアルコールと皮膚処理剤で十分に拭き、各筋腹の中央に所定の間隔(例えば2cm)をとり、貼着パットで固定する。
【0055】
各ベンチプレストレーニングにより筋電図パターンが異なるため、筋電図を確認することにより正しい姿勢で確実にトレーニングを行っているか否か遠隔監視できることになる。
【0056】
監視準備が整ったため、安定的位置の電極パッドに生体情報検出ユニットを装着して電源スイッチ185を投入してユニットを稼働させる。以降ユニットからは所定間隔で検出生体情報の送信が始まる。
【0057】
このため、生体監視装置300は、ステップS3に示すように通信制御部360が生体情報検出ユニットより送られてくるパケットを受信するのを監視している。
【0058】
そして、パケットを受信するとステップS3よりステップS5に進み、受信したパケットの送信元装置を特定する識別番号毎に割り当てられた受信バッファに時系列に格納する。
【0059】
続いてステップS7に進み、受信した検出データが予め定めた閾値の範囲外か否かを調べて受信データか否かを判定する。ここでは、例えば1回の受信データのみを判断して結論を出すのではなく、一定時間の間、例えば1秒間以上閾値の範囲外のデータが続いたか否かで判定する。しかし以上の例に限定されるものではなく、異常状態が連続しない場合には異常の間のみ警報を出力などするようにすれば異常状態からの復帰までの時間をみて誤判定か否か容易に判断できる。
【0060】
そして続くステップS9で判定の結果、データ異常であったか否か調べ、データ異常と判定されなかった場合にはステップS3に戻り次のパケット受信に備える。
【0061】
一方、ステップS9でデータ異常と判定されていた場合にはステップS10に進み、本来高レベルの活動が検出されるべき筋肉よりの筋電図情報に異常がないか否かを調べる。異常がない場合にはステップS12に進み、所望筋肉の活動を表示してステップS14に進む。一方、ステップS10で本来高レベルの活動が検出されるべき筋肉よりの筋電図情報の検出結果が低レベルである場合にもステップS14に進む。
【0062】
ステップS14では、本来高レベルの活動が検出されるべきでない筋肉よりの筋電図情報が高レベルであるか否かを調べる。本来高レベルの活動が検出されるべきでない筋肉よりの筋電図情報が高レベルである場合にはステップS16に進み、目的外筋肉の活動・トレーニング方法の再確認を表示部340に表示するなどして報知する。そしてステップS22に進む。
【0063】
一方、ステップS14で本来高レベルの活動が検出されるべきでない筋肉よりの筋電図情報が高レベルでなかった場合にはステップS18に進み、一定時間データ受信がないか、あるいは一定期間検出信号の変化がないかを調べる。これらの異常がない場合にはステップS22に進む。一方、異常があった場合にはステップS20に進み、異常内容の詳細を表示してステップS22に進む。
【0064】
例えば、一定期間加速度センサの値が変化しない場合にはトレーニングを中断している可能性があり、特定筋電図の検出がないときには生体電極の装着異常となっている可能性がある。
【0065】
ステップS22では、いままでの判断結果や筋電図情報を調べて目的のトレーニング効果が得られているか、否かを総合判定する。そして続くステップS24で判定結果を表示して、仮に十分なトレーニング効果が期待できないと判断された場合には、例えばジムのトレーナーやコーチなどがトレーニングしているところに出向き、変な癖などがつく前に正しいトレーニングのやり方を教授することができる。
【0066】
以上の様に、本実施の形態襟では被検者の異なる2つの部位に検出装置を装着するため、装着部位毎の異常を対比して状況判断することができ、一つのみを装着する場合では全く予想もできなかった種々の状況に迅速かつ確実に対応可能となる判断ができる。
【0067】
以上説明したように本実施の形態例によれば、筋電電極と被検者の姿勢や移動状態を検出できる加速度センサ、温度センサ等を備える生体情報検出ユニットを被検者に装着することを可能とするのみならず、無線通信によりリアルタイムで測定データを監視装置に送ることができる。
【0068】
さらに、筋電電極を、トレーニングメニューで鍛えるべきと判断された筋肉よりの筋電信号検出部位に装着すると共に、例えばこの鍛えるべき筋肉でない、誤って鍛えてしまう可能性が高い他の筋肉(鍛えるべきではない筋肉)よりの筋電信号検出部位にも筋電電極を装着し、トレーニングを行うことにより、両筋電電極よりの筋電信号を監視することで、所望のトレーニング効果が期待できる状態か(予め鍛えるべきであった筋肉が正しく鍛えられているか)、所望のトレーニング効果が期待できない状態か(鍛えるべき筋肉からの筋電信号が検出されないかまたは検出信号レベルが低レベルで鍛えるべきでない筋肉からの筋電信号が検出された状態か)を高精度かつリアルタイムで監視することができ、確実に被検者の状態を検出することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の筋電信号を検出可能な生体電極を身体に直接装着可能な生体情報検出ユニットと、前記生体情報検出ユニットよりの信号を受信して受信した生体情報を処理する生体情報処理装置とから構成される生体監視システムであって、
前記生体情報検出ユニットは、
被検者に直接装着可能な少なくとも2つの生体電極と、前記生体電極よりの検出信号値を無線送信する無線送信手段とを備え、
前記生体情報処理装置は、
前記無線送信手段により送信された検出信号値を受信する受信手段と、該受信手段で受信した検出信号値が予め想定された検出信号レベルか否かを判断し、判断結果を報知する報知手段とを備え、
前記生体電極を少なくとも予め想定された筋肉の活動状況を確認可能な部位に装着し、筋肉の活動状況を認識可能とすることを特徴とする生体監視システム。
【請求項2】
前記生体情報検出ユニットの生体電極は、目的とする筋肉の筋電信号を検出する位置と、該目的とする筋肉と異なる筋肉の筋電信号を検出する位置とに装着することを特徴とする請求項1記載の生体監視システム。
【請求項3】
前記無線送信手段は、前記筋電電極に係止されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の生体監視システム。
【請求項4】
前記生体情報検出ユニットには生体の姿勢状態を検出可能な加速度センサを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の生体監視システム。
【請求項5】
前記生体電極は、生体表面に貼着する貼着パットと、生体信号を検出する電極薄膜とを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の生体監視システム。
【請求項6】
前記無線送信手段は情報をほぼ一定間隔で送信することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の生体情報検出ユニット。
【請求項7】
前記無線送信手段は、自ユニットに特有の特定情報を付加して送信することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の生体監視システム。
【請求項8】
被検者に直接装着可能な少なくとも2つの筋電電極と、前記筋電電極よりの検出筋電信号を無線送信する無線送信手段とを備える生体情報検出ユニットと、前記生体情報検出ユニットよりの信号を受信して受信した生体情報を処理する生体情報処理装置より構成される生体監視システムにおける生体監視方法であって、
前記生体情報検出ユニットを被検者の体表面に直接装着してトレーニングを行い、トレーニング中の筋電信号を無線で生体情報処理装置に送信し、該筋電信号を受信した生体情報処理装置は、受信した筋電信号が予め想定された検出レベルか否かを判断し、判断結果を報知して予め想定された筋肉の活動状況を確認可能とすることを特徴とする生体監視方法。
【請求項9】
前記生体情報検出ユニットの筋電電極は、目的とする筋肉の筋電信号を検出する位置と、該目的とする筋肉と異なる筋肉の筋電信号を検出する位置とに装着することを特徴とする請求項8記載の生体監視方法。
【請求項10】
前記生体情報検出ユニットの筋電電極は、目的とする筋肉の筋電信号を検出する位置と、該目的とする筋肉に隣接する他の筋肉の筋電信号を検出する位置とに装着することを特徴とする請求項9記載の生体監視方法。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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