説明

生体磁気測定装置

【課題】被検体の首や腰を前に曲げなくても、頚部や腰部で発生する微弱な磁気を測定可能とする。
【解決手段】デュア(1)と、デュア(1)から突出し上面が湾曲部になっている第1センサ筒(2a)〜第4センサ筒(2d)と、第1センサ筒(2a)〜第4センサ筒(2d)の各湾曲部の内面に設置してなる複数の超伝導磁気センサ(11)とを具備する。第1センサ筒(2a)〜第4センサ筒(2d)の湾曲部は、それぞれ中央が両端より0.5cm、1cm、2.5cm、4cm飛び出すように滑らかに湾曲している。
【効果】被検体(H)に適合する湾曲部を持つセンサ筒を選べば、被検体の首や背を無理に前に曲げなくても、湾曲部を被検体(H)の頚部や腰部に密着させることが出来るので、脊髄で発生する微弱な磁気を好適に測定することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体磁気計測装置に関し、さらに詳しくは、被検体の首や背を前に曲げなくても脊髄で発生する微弱な磁気を好適に測定することが出来る生体磁気計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の超伝導磁気センサをy方向に並べたセンサ列を、複数列、隣接するセンサ列の超伝導磁気センサに対してy方向位置をずらせてx方向に並べたセンサアレイを、センサ筒の先端部の内面に設置してなる超伝導磁気測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−337862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の超伝導磁気測定装置では、センサ筒の先端部が平面壁であったため、被検体の首をやや前に曲げて頚部を真っ直ぐに伸ばした状態にしてセンサ筒の先端部を被検体の頚部に密着させ、頚部で発生する微弱な磁気を測定していた。また、同様に、被検体の腰をやや前に曲げて腰部を真っ直ぐに伸ばした状態にしてセンサ筒の先端部を被検体の腰部に密着させ、腰部で発生する微弱な磁気を測定していた。
しかし、例えば高齢者は加齢により脊椎の可動性(動かすことができる範囲)が減少し、首や腰を前に曲げることができず、被検体の頚部や腰部が自然に湾曲した状態のままであるため、センサ筒の先端部の中央が被検体の頚部や腰部から離れることになり、うまく測定できなくなる問題点があった。また、首や腰を前に無理に曲げると、筋肉の活動による磁場がノイズ源になり、測定が阻害される問題点があった。
そこで、本発明の目的は、被検体の首や腰を無理に前に曲げなくても、頚部や腰部で発生する微弱な磁気を好適に測定することが出来る生体磁気計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、湾曲の程度が異なる複数の湾曲部と、前記湾曲部の内面に設置してなる複数の超伝導磁気センサとを具備したことを特徴とする生体磁気計測装置を提供する。
上記第1の観点による生体磁気計測装置では、湾曲部に超伝導磁気センサを設置しているため、被検体の首を前に曲げないで頚部が自然に湾曲した状態であっても、湾曲部を被検体の頚部に必要な程度密着させることが出来る。また、被検体の腰を前に曲げないで腰部が自然に湾曲した状態であっても、湾曲部を被検体の腰部に必要な程度密着させることが出来る。すなわち、被検体の首や腰を前に曲げないで、自然な姿勢でも、脊髄および脊髄神経で発生する微弱な磁気を好適に測定することが出来る。ところが、年齢差や個人差により首や腰の自然な湾曲の程度が異なるため、湾曲部の湾曲の程度が、ある被検体に適合しても、他の被検体に適合しないことがある。これに対して、上記第1の観点による生体磁気計測装置では、湾曲の程度が異なる複数の湾曲部を備えているため、被検体に適合する湾曲部を選択することが出来る。そして、各湾曲部の超伝導磁気センサを冷却するための極低温液体を貯留するデュワが1つで済むので、極低温液体の貯留量を節約することが出来る。
【0005】
第2の観点では、本発明は、極低温液体を貯留するデュアと、湾曲の程度がそれぞれ異なる湾曲部を有し前記デュアから突出した複数のセンサ筒と、前記各センサ筒の前記各湾曲部の内面に設置してなる複数の超伝導磁気センサとを具備したことを特徴とする生体磁気計測装置を提供する。
上記第2の観点による生体磁気計測装置では、被検体に適合する湾曲部を持つセンサ筒を選ぶことが出来る。また、センサ筒が複数なので、超伝導磁気センサと外部との配線作業が楽になる。そして、デュワが1つで済むので、極低温液体の貯留量を節約することが出来る。
【0006】
第3の観点では、本発明は、極低温液体を貯留するデュアと、前記デュアから突出したセンサ筒と、前記センサ筒に設けられ湾曲の程度がそれぞれ異なる複数の湾曲部と、前記各湾曲部の内面に設置してなる複数の超伝導磁気センサとを具備したことを特徴とする生体磁気計測装置を提供する。
上記第3の観点による生体磁気計測装置では、被検体に適合する湾曲部を選ぶことが出来る。また、一つのセンサ筒に複数の湾曲部なので、全体を小型化できる。そして、デュワが1つで済むので、極低温液体の貯留量を節約することが出来る。
【0007】
第4の観点では、本発明は、前記第2または第3の観点による生体磁気計測装置において、前記センサ筒の上面が、該センサ筒の突出方向に直交する方向に凸状に湾曲し、該センサ筒の突出方向には湾曲していないことを特徴とする生体磁気計測装置を提供する。
上記第4の観点による生体磁気計測装置では、センサ筒の上面を枕あるいは腰枕のように使用することで被検体は計測中寝ていればよいので、被検体の負担を軽減することが出来る。
【0008】
第5の観点では、本発明は、前記第2から第4のいずれかの観点による生体磁気計測装置において、前記湾曲部は、中央が両端より0.5cm以上4cm以下飛び出すように滑らかに湾曲していることを特徴とする生体磁気計測装置を提供する。
本願発明者が試験したところ、人の首に対しては、中央が両端より0.5cm以上4cm以下飛び出すように滑らかに湾曲していれば適合することが判った。従って、上記第5の観点による生体磁気計測装置では、人の首を前に曲げないで頚部が自然に湾曲した状態で湾曲部を被検体の頚部に密着させることが出来る。
【0009】
第6の観点では、本発明は、極低温液体を貯留するデュアと、前記デュアに設けられ湾曲の程度がそれぞれ異なる複数の湾曲部と、前記各湾曲部の内面に設置してなる複数の超伝導磁気センサとを具備したことを特徴とする生体磁気計測装置を提供する。
上記第6の観点による生体磁気計測装置では、デュアに設けた湾曲部のうちで被検体に適合するものを選ぶことが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の生体磁気計測装置によれば、被検体の脊髄および脊髄神経で発生する微弱な磁気を好適に測定することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図に示す実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
図1は、実施例1に係る生体磁気計測装置100の正面図である。また、図2は、同上面図である。
この生体磁気計測装置100は、極低温液体(例えば液体窒素)を貯留するデュア1と、デュア1から突出し上面が湾曲部になっている第1センサ筒2a〜第4センサ筒2dと、第1センサ筒2a〜第4センサ筒2dの各湾曲部の内面に設置してなる複数の超伝導磁気センサ11とを具備している。
【0013】
第1センサ筒2a〜第4センサ筒2dは、デュワ1からの突出方向の長さは40cm、高さは20cm、幅は15cmであり、幅方向に上面が湾曲し、突出方向には湾曲していない。
【0014】
第1センサ筒2aの湾曲部は、中央が両端より0.5cm飛び出すように滑らかに湾曲している。
第2センサ筒2bの湾曲部は、中央が両端より1cm飛び出すように滑らかに湾曲している。
第3センサ筒2cの湾曲部は、中央が両端より2.5cm飛び出すように滑らかに湾曲している。
第4センサ筒2dの湾曲部は、中央が両端より4cm飛び出すように滑らかに湾曲している。
【0015】
図1,図2に示すように、被検体Hに適合する湾曲部を持つ例えば第2センサ筒2bを選び、センサ筒2bの上面を枕のように使用して被検体Hは計測中寝ていればよい。
【0016】
図3は、第1センサ筒2aの内部を示す断面図である。
第1センサ筒2aは、内槽10aおよび外槽10bからなる。内槽10aの内面に、複数の超伝導磁気センサ11が配設されている。
【0017】
実施例1の生体磁気計測装置100によれば、被検体Hの首や腰を前に曲げないで頚部や腰部が自然に湾曲した状態であっても、湾曲部を被検体Hの頚部や腰部に密着させることが出来る。従って、超伝導磁気センサ11と脊髄の距離をほぼ一定にすることが出来る。そして、湾曲の程度が異なる複数の湾曲部を備えているから、被検体Hに適合する湾曲部を選ぶことが出来る。そして、デュワ1が1つで済むので、極低温液体の貯留量を節約することが出来る。
【実施例2】
【0018】
図4に示すように、円筒型の超伝導磁気センサ11の代わりに、平面型の超伝導磁気センサ11を用いてもよい。
【実施例3】
【0019】
図5は、実施例3に係る生体磁気計測装置200の正面図である。また、図6は、同上面図である。また、図6は、側面図である。
この生体磁気計測装置200は、デュア1と、デュア1から突出し上面が湾曲の程度がそれぞれ異なる第1湾曲部3a〜第3湾曲部3cになっているセンサ筒3と、センサ筒3の第1湾曲部3a〜第3湾曲部3cの内面に設置してなる複数の超伝導磁気センサ11とを具備している。
【0020】
センサ筒3は、デュワ1からの突出方向の長さは100cm、高さは20cm、幅は15cmであり、幅方向に上面が湾曲し、突出方向には湾曲していない。
【0021】
第1湾曲部3aは、中央が両端より1cm飛び出すように滑らかに湾曲している。
第2湾曲部3bは、中央が両端より2cm飛び出すように滑らかに湾曲している。
第3湾曲部3cは、中央が両端より3cm飛び出すように滑らかに湾曲している。
【0022】
図6に示すように、被検体Hに適合する湾曲部を選び、その湾曲部を枕のように使用して被検体Hは計測中寝ていればよい。
【0023】
実施例3の生体磁気計測装置200によれば、被検体Hの首や腰を前に曲げないで頚部や腰部が自然に湾曲した状態であっても、湾曲部を被検体Hの頚部や腰部に密着させることが出来る。従って、超伝導磁気センサ11と脊髄の距離をほぼ一定にすることが出来る。そして、湾曲の程度が異なる複数の湾曲部を備えているから、被検体Hに適合する湾曲部を選ぶことが出来る。そして、デュワ1が1つで済むので、極低温液体の貯留量を節約することが出来る。
【実施例4】
【0024】
図8は、実施例4に係る生体磁気計測装置300の断面図である。
この生体磁気計測装置300は、デュア1と、デュア1に設けられ湾曲の程度がそれぞれ異なる第1湾曲部4aおよび第2湾曲部4bと、第1湾曲部4aおよび第2湾曲部4bの内面に設置してなる複数の超伝導磁気センサ11とを具備している。
【0025】
第1湾曲部4aは、大人の頭部を収容しうる湾曲の程度になっている。
第2湾曲部4bは、幼児の頭部を収容しうる湾曲の程度になっている。
【0026】
なお、LDはデュワ1の蓋であり、PAはパッキングであり、STは冷媒供給排気用二重管である。また、20は超伝導磁気センサ11と信号をやり取りするインタフェース装置であり、30は信号を解析する情報処理装置であり、40は解析結果を表示する表示装置である。
【0027】
実施例4の生体磁気計測装置300によれば、湾曲の程度が異なる複数の湾曲部4a,4bを備えているから、被検体Hに適合する湾曲部を選ぶことが出来る。そして、デュワ1が1つで済むので、極低温液体の貯留量を節約することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0028】
人の脊髄および脊髄神経で発生する微弱な磁気を測定する装置として利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1に係る生体磁気計測装置の正面図である。
【図2】実施例1に係る生体磁気計測装置の上面図である。
【図3】実施例1に係る生体磁気計測装置のセンサ筒の断面図である。
【図4】実施例2に係る生体磁気計測装置のセンサ筒の断面図である。
【図5】実施例3に係る生体磁気計測装置の正面図である。
【図6】実施例3に係る生体磁気計測装置の上面図である。
【図7】実施例3に係る生体磁気計測装置の側面図である。
【図8】実施例4に係る生体磁気計測装置の断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 デュワ
2a,2b,2c,2d,3 センサ筒
3a,3b,3c,4a,4b 湾曲部
11 超伝導磁気センサ
100,200,300 生体磁気計測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲の程度が異なる複数の湾曲部と、前記湾曲部の内面に設置してなる複数の超伝導磁気センサとを具備したことを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項2】
極低温液体を貯留するデュアと、湾曲の程度がそれぞれ異なる湾曲部を有し前記デュアから突出した複数のセンサ筒と、前記各センサ筒の前記各湾曲部の内面に設置してなる複数の超伝導磁気センサとを具備したことを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項3】
極低温液体を貯留するデュアと、前記デュアから突出したセンサ筒と、前記センサ筒に設けられ湾曲の程度がそれぞれ異なる複数の湾曲部と、前記各湾曲部の内面に設置してなる複数の超伝導磁気センサとを具備したことを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の生体磁気計測装置において、前記センサ筒の上面が、該センサ筒の突出方向に直交する方向に凸状に湾曲し、該センサ筒の突出方向には湾曲していないことを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の生体磁気計測装置において、前記湾曲部は、中央が両端より0.5cm以上4cm以下飛び出すように滑らかに湾曲していることを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項6】
極低温液体を貯留するデュアと、前記デュアに設けられ湾曲の程度がそれぞれ異なる複数の湾曲部と、前記各湾曲部の内面に設置してなる複数の超伝導磁気センサとを具備したことを特徴とする生体磁気計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−206809(P2008−206809A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47491(P2007−47491)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、経済産業省、地域新生コンソーシアム研究開発事業委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【Fターム(参考)】