説明

生体細胞の機能の評価方法

【課題】
血液中のK、Na、CRP、LDHの濃度が、正常な範囲を外れる場合、あるいは、正常な範囲の変化でも、未病段階から病的段階までの生体細胞の機能を評価する生体細胞の機能の評価方法を提供する。
【解決手段】
生体細胞の血液中のK、Na,CRP,LDHのいずれか1つ以上の要素の第1の濃度を検知し、前記第1の濃度の検知の後に、前記血液中の前記K、Na,CRP,LDHのいずれか1つ以上の同じ前記要素における第2の濃度を検知し、前記第1の濃度から前記第2の濃度への増減を計算し、前記増減から前記血液の病的段階以前の未病段階から前記病的段階までの状態を評価することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体細胞の血液の未病段階から病的段階の段階を把握する生体細胞の機能の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血清中のK、Na濃度の評価は、正常な範囲を大きく外れる場合に、低K血症、高K血症、低Na血症、高Na血症と呼んで、その原因と改善のための治療が指示されていた。CRPやLDHの数値も同様に評価され、治療が指示されていた。
また、例えば、特許文献1にて、「血行動態パラメータのためのインピーダンスに基づく測定方法」が提案され、血清中のナトリウム濃度が、数学的に概算され、結果として得られ、この結果がデジタル形式で、好ましくは電話または電子メールによって中央ステーションに送られ、ここで、該結果がさらに処理および評価され、その後、全ての必要な測定および治療の変化が遠隔地から患者に伝えられることが開示されている。
【特許文献1】特表2006−501892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、血清中のK、Na、CRP、LDHなどの濃度が、正常な範囲内の変動であっても、実際の細胞レベルでは、何らかの外的、内的要因によって生化学反応を元に変化が生じる場合があり、この変化は、正常な範囲を大きく外れる前兆であり、東洋医学での『未病』の状態である。
従って、血清中のK、Na、CRP、LDHなどの濃度の変化が、正常な範囲内の変動であっても、『未病』の状態を把握するために非常に重要な指標となる。
そこで、本発明は、血液中のK、Na、CRP、LDHの濃度が、正常な範囲を外れる場合、あるいは、正常な範囲の変化でも、未病段階から病的段階までの生体細胞の機能を評価する生体細胞の機能の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の生体細胞の機能の評価方法は、生体細胞の血液中のK、Na,CRP,LDHのいずれか1つ以上の要素の第1の濃度を検知し、
前記第1の濃度の検知の後に、前記血液中の前記K、Na,CRP,LDHのいずれか1つ以上の同じ前記要素における第2の濃度を検知し、
前記第1の濃度から前記第2の濃度への増減を計算し、
前記増減から前記血液の病的段階以前の未病段階から前記病的段階までの状態を評価することを特徴とする。
【0005】
さらに、本発明の生体細胞の機能の評価方法は、前記生体細胞の機能の評価方法において、前記Kの前記第1の濃度より前記第2の濃度が減少し、前記Naの前記第1の濃度より前記第2の濃度が減少した場合には、前記血液の前記状態は悪化したと評価することを特徴とする。
さらに、本発明の生体細胞の機能の評価方法は、前記生体細胞の機能の評価方法において、前記Kの前記第1の濃度より前記第2の濃度が増大し、前記Naの前記第1の濃度より前記第2の濃度が増大した場合には、前記血液の前記状態は改善したと評価することを特徴とする。
さらに、本発明の生体細胞の機能の評価方法は、前記生体細胞の機能の評価方法において、前記Kの前記第1の濃度より前記第2の濃度が増大し、前記Naの前記第1の濃度より前記第2の濃度が減少した場合には、前記血液の前記状態は悪化したと評価することを特徴とする。
さらに、本発明の生体細胞の機能の評価方法は、前記生体細胞の機能の評価方法において、前記Kの前記第1の濃度より前記第2の濃度が減少し、前記Naの前記第1の濃度より前記第2の濃度が増大した場合には、前記血液の前記状態は改善したと評価することを特徴とする。
【0006】
生物が生命活動を行う際、生体細胞レベルでは生体細胞の機能を維持するために細胞内外のミネラルバランスを調整している。特に、KとNaの濃度調整は厳密に行われ、その基本にATPをエネルギーとして能動輸送を行うNa−Kポンプによる調整が重要となっている。感染症などにより炎症反応が起こると、ブドウ糖を原料として解糖系からクエン酸回路、さらに電子伝達系でのATP産生が正常に進まなくなり、ATP不足となってNa−Kの細胞膜ポンプ
の働きが低下する。Na−Kの細胞膜ポンプの働きが低下すると、細胞内外のKおよびNaの濃度に変化が起こる。
【0007】
そこで、臨床経過の中で2回血液検査を行い、今回分と前回分のKとNaの増減により、Na−Kの細胞膜ポンプの機能の変化が確認できる。
さらに、細胞のATP産生を行うエネルギー代謝の障害の後に、炎症に伴って増加するサイトカインなどによって末梢血管の内皮細胞が刺激され、血管透過性が亢進し、一旦、循環血液量が減少する。この時点から末梢循環不全状態となる。
この変化をキャッチした腎臓ではレニン−アンギオテンシン−アルドステロン系が作動し、尿中のNaと水分の再吸収を行う一方で、Kの排泄を行う。その結果、血液中のKとNa濃度は減少する。この経過を2回の血液検査で評価すると、Kの第1の濃度より第2の濃度が減少し、Naの第1の濃度より第2の濃度が減少した右肩下がり型の場合には、血液の状態は悪化したと評価する。
【0008】
治療によって血液の状態が改善されると、レニン−アンギオテンシン−アルドステロン系の働きが低下し、尿中のNaと水分の再吸収が低下し、さらにKの排泄も減少する。この結果、KおよびNaの濃度は増加し2回分の血液検査の濃度は、Kの第1の濃度より第2の濃度が増大し、Naの第1の濃度より第2の濃度が増大した右肩上がり型の場合には、血液の状態は改善したと評価する。
【0009】
生命維持に必要なエネルギーを産生する解糖系、クエン酸回路、電子伝達系に問題が発生すると速やかにATP量が変化し、ATPを利用するNa−Kの細胞膜ポンプ機能に影響を及ぼす。
この変化はKの濃度、Naの濃度の変化となり、前後2回の濃度変化は、Kの第1の濃度より第2の濃度が増大し、Naの第1の濃度より第2の濃度が減少した末広がり型の場合には、血液の状態は悪化したと評価する。
さらに、Kの第1の濃度より第2の濃度が減少し、Naの第1の濃度より第2の濃度が増大した末萎み型の場合には、血液の状態は改善したと評価する。
【0010】
その際、解糖系の反応変化はピルビン酸から乳酸へ変換する酵素LDHの活性変化と関連する。LDHの活性変化は、Na−Kの細胞膜ポンプの変化によるKおよびNaの濃度変化と、ずれて変化する場合があり、KおよびNaの濃度変化とLDHの活性値変化とを組み合わせて評価することは、血液の状態が悪化し、あるいは、改善する時間経過とのずれを検知し評価できる。
すなわち、LDHの活性は、Na−Kの細胞膜ポンプに影響が出る前に変化する場合があり、KおよびNaの濃度とLDHの活性変化の組み合わせにより、血液の状態の変化をより精密に検知し評価できる。
生体に大きな負担となる感染症などの変化は、エネルギー代謝系に影響を及ぼすだけでなく、循環動態に影響する。感染症などの炎症に伴って生成するサイトカインなどは、血管内皮細胞を刺激して血管透過性亢進させる。その変化は、レニン−アンギオテンシン―アルドステロン系を介してKおよびNaの濃度に影響し、前後2回の濃度変化は、Kの第1の濃度より第2の濃度が減少し、Naの前記第1の濃度より第2の濃度が減少した場合には、血液の状態は悪化したと評価する。
さらに、Kの第1の濃度より第2の濃度が増大し、Naの第1の濃度より第2の濃度が増大した場合には、血液の状態は改善したと評価する。
【0011】
感染症などの炎症の指標となるCRPは、感染症においては抗生剤の効果を確認するために役立つ。抗生剤が奏功するとCRPが低下し、その結果、炎症性サイトカインが低下し、末梢循環不全が改善、さらに細胞の代謝機能が回復しNa−Kの細胞膜ポンプが改善される。直接の炎症の指標としてCRP変化は重要で、炎症の改善度合いとKおよびNaの濃度、さらにLDHの活性変化が関連する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、血液中のK、Na、CRP、LDHの濃度が、正常な範囲を外れる場合、あるいは、正常な範囲の変化でも、未病段階から病的段階までの生体細胞の機能を評価する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
本発明の第1のタイプの実施例の生体細胞の機能の評価方法は、前記Kの前記第1の濃度より前記第2の濃度が減少し、前記Naの前記第1の濃度より前記第2の濃度が減少した場合には、前記血液の前記状態は悪化したと評価する。
さらに、本発明の第2のタイプの実施例の生体細胞の機能の評価方法は、前記Kの前記第1の濃度より前記第2の濃度が増大し、前記Naの前記第1の濃度より前記第2の濃度が増大した場合には、前記血液の前記状態は改善したと評価する。
さらに、本発明の第3のタイプの実施例の生体細胞の機能の評価方法は、前記Kの前記第1の濃度より前記第2の濃度が増大し、前記Naの前記第1の濃度より前記第2の濃度が減少した場合には、前記血液の前記状態は悪化したと評価する。
さらに、本発明の第4のタイプの実施例の生体細胞の機能の評価方法は、前記Kの前記第1の濃度より前記第2の濃度が減少し、前記Naの前記第1の濃度より前記第2の濃度が増大した場合には、前記血液の前記状態は改善したと評価する。
本発明の実施例では、図1に示されるようにK、Na、CRP、LDHの値を組み合わせで16パターンに分類し、さらに6段階の重症度の評価をする。
ここで、○○は、著しく改善された評価、○は、改善された評価、△は、少々改善された評価、×は、少々悪化した評価、××は、悪化した評価、×××は、著しく悪化した評価を示す。
なお、図1の本実施例の16パターンおよび6段階には限定されない。
【実施例1】
【0014】
症例1 本発明の実施例による肺炎治療の評価
85歳 女性
(1)2008年2月25日に発熱があったため、血液検査を行った。2月18日から2月25日にかけての血液検査から本実施例により評価を行うと、カリウムKは−0.15減少し、ナトリウムNaも−1.8減少し、右肩下り型になっている(第1のタイプの実施例)。
これは、血管内皮細胞に障害がおこり浮腫の後に、レニン−アンギオテンシン―アルドステロン系が作動したために、血液中の水分量が増え、その結果、K、Naの濃度が低下したと考えられる。さらに、CRPは+5.97増加して感染症が強くなっている。LDHは−37減少して、エネルギー代謝の解糖系は作動し、クエン酸回路への反応は進んでいると考えられる。本実施例による全体の評価は××となっていて、適切な抗生剤投与に注意して治療を行う。本実施例による全体の評価では××となっていて、悪化度が高いので、抗生剤とグロブリンを併用して短期間の効果を期待した。
(2) 2月27日の血液検査の結果から本実施例による評価を行うと、Kは−0.23減少し、一方Naは+6.5増加して末萎み型になっている。(第4のタイプの実施例)。
この変化では、Na−K細胞膜ポンプ機能が回復している。その結果、Kは細胞外から細胞内へ能動輸送が行われ、Naは細胞内から細胞外へ能動輸送が行われ、細胞外のK濃度は低下し、細胞外のNa濃度は増加している。さらに、CRPは−2.93減少し炎症反応は改善している。LDHは同程度で、エネルギー代謝の解糖系は作動し、クエン酸回路への反応が進んでいる。本実施例による全体の評価は○○となっていて、2日間の間に細胞機能が回復し、全身状態が改善している。抗生剤などの薬剤の効果があったと評価できる。
(3) 3月3日の血液検査の結果から、本実施例による評価を行うと、Kは+0.45増加し、Naも+1.1増加して右肩上り型となっている。(第2のタイプの実施例)
この変化では、末梢循環改善が行われ、血管内水分量の調節が適度に行われ、KおよびNaの濃度が上昇している。さらに、CRPは−3.03減少し炎症反応は改善している。LDHは同程度で、エネルギー代謝の解糖系は作動し、クエン酸回路への反応が進んでいる。本実施例による全体の評価は○で、炎症反応は改善傾向で、全身的にも改善している。抗生剤は2月25日から2月29日までの投与で、それ以後、抗生剤を中止しても安定している。
(4) 3月7日の血液検査の結果から、本実施例による評価を行うと、Kは−0.82減少し、Naも−1.4減少して右肩下り型になっている。(第1のタイプの実施例)
この変化では、末梢循環不全状態になり始めている。CRPは+0.05増加し、LDHは−33減少している。K、Naの変化より何らかの炎症物質が血管内皮細胞を刺激して、血管透過性を亢進させ、その後、血液中水分量低下に対してレニン−アンギオテンシン―アルドステロン系が作動し、腎臓の尿細管においてNaと水分の再吸収を行い、一方でKの排泄を行う結果、KおよびNaの濃度の低下が起きてくる予兆がある。本実施例による全体の評価は××となっていて、いずれ炎症反応が悪化することを予想させる。
ここで、レニン−アンギオテンシン―アルドステロン系は、腎臓からのレニンは血圧を調節する。腎臓の傍糸球体細胞が腎血流量の変化を感知し、減少すればレニンの分泌を促進し、増加すれば抑制する。レニンによって活性化されたアンギオテンシンIは作用が強力なアンギオテンシンIIに変化する。アンギオテンシンIIはそれ自体が血圧上昇作用を持つほか、アルドステロンの分泌を促進し、腎における再吸収を増加させるため、血液量の減少を抑制する。これをレニン-アンギオテンシン-アルドステロン(RAA)系という。
(5) 3月10日の血液検査の結果から本実施例による評価を行うと、Kは+0.32増加し、Naは−3.5減少して末広がり型になっている。(第3のタイプの実施例)
この変化では、細胞ポンプ機能が低下している。CRPは+2.02増加して炎症が広がり、LDHも+61増加してエネルギー代謝の低下も起こっている。本実施例による全体の評価は×××となっていて、状態は悪化の方向にある。適切な抗生剤の投与に加えて、免疫グロブリンの投与も必要と考えられる。
(6) 3月10日から抗生剤と免疫グロブリンを投与し、3月12日の血液検査の結果から本実施例による評価を行うと、Kは+0.13増加し、Naも+0.9増加して右肩上り型になっている(第2のタイプの実施例)。
この変化では末梢循環が改善している。CRPは−1.29減少して炎症は改善傾向にあり、LDHも−31減少してエネルギー代謝が改善している。本実施例による全体の評価は○となっていて、状態は短期間に改善している。抗生剤と免疫グロブリンの投与が早い回復をもたらしたと考えられる。
(7) 免疫グロブリンは2日間、抗生剤は5日間投与して終了し、同時に感染の原因と考えられる点滴ラインを抜去した。3月14日の血液検査の結果から本実施例による評価を行うと、Kは+0.63増加し、Naは−2.2減少して末広がり型になっている(第3のタイプの実施例)。
この変化では、細胞ポンプ機能が低下している。CRPは+0.22増加して炎症が再燃傾向にあり、LDHも+15増加してエネルギー代謝も低下している。本実施例による全体の評価は×××となっていて、状態は悪化の方向にある。さらに、抗生剤を投与する状況であるが、感染源である点滴ラインを抜去したので、このまま様子を見た。
(8) 3月24日の血液検査の結果から本実施例による評価を行うと、Kは+0.13増加し、Naも+4.2増加して右肩上り型になっている。(第2のタイプの実施例)
この変化では末梢循環が改善している。CRPは−0.83減少して炎症は改善傾向にあり、LDHも−11減少してエネルギー代謝が改善している。本実施例による全体の評価は○となっていて、抗生剤投与をせずに改善していることが分かる。この頃から点滴から経口による食事摂取を開始している。
(9) 4月9日の血液検査の結果から本実施例による評価を行うと、Kは−0.35減少し、Naは+2.6増加して末萎み型になっている。(第4のタイプの実施例)
この変化では細胞ポンプ機能が改善している。CRPは−0.3減少して炎症は改善傾向にあるが、LDHは+66増加してエネルギー代謝は低下している。全体の評価は△となっていて、細胞ポンプ機能が低下しないように注意が必要である。食事回数も2回から3回へと増えていて、栄養的なバランスは良くなっていくと考えられる。
【実施例2】
【0015】
症例2 肺炎治療についての本実施例による評価
症例83歳 男性
(1)2008年2月22日から発熱し抗生剤を27日まで使用して血液検査を行っている。その2日後の2月29日の血液検査の結果から本実施例による評価を行うと、Kは+0.56増加し、Naは−3.1減少して末広がり型(27日から29日にかけて)になっている。(第3のタイプの実施例)
この変化では細胞ポンプ機能が低下している。さらにCRPは−0.37減少し炎症反応は改善傾向にあるが、LDHは+139増加してエネルギー代謝が低下している。本実施例による全体の評価は×になっていて、状態はまだ完全には改善していず、何らかの治療が必要である。
(2) 2月29日から再び抗生剤治療が開始され、3月5日の血液検査の結果から本実施例による評価を行うと、Kは−0.75減少し、Naは+6.2増加して末萎み型になっている。(第4のタイプの実施例)
この変化では細胞ポンプ機能は改善している。さらに、CRPは−0.77減少し炎症反応改善している。LDHも−186減少しエネルギー代謝は改善している。本実施例による全体の評価は○○になっていて、抗生剤投与の効果が評価される。
(3)3月12日の血液検査の結果から本実施例による評価を行うと、Kは−0.29減少し、Naも−0.1減少して右肩下り型になっている。(第1のタイプの実施例)
この変化では末梢循環不全状態になっている。CRPは+0.23増加して炎症反応が広がっている。LDHは−16減少してエネルギー代謝は改善している。本実施例による全体の評価は××となっていて、状態は再び悪化の方向にある。抗生剤を選択して治療を開始する必要があるが、CRPが低めなので薬剤投与はせずに経過を観察している。
(4) 3月19日の血液検査の結果から本実施例による評価を行うと、Kは−0.56減少し、Naは+0.4増加して末萎み型になっている。(第4のタイプの実施例)
この変化では細胞ポンプ機能は改善している。CRPは+1.2増加して炎症反応はまだ続いている。LDHは+45増加してエネルギー代謝は悪化している。本実施例による全体の評価は××となっていて、状態はまだ悪い。抗生剤投与は行われていない。
(5) 3月26日の血液検査の結果から本実施例による評価を行うと、Kは+0.27増加し、Naも+1.0増加して右肩上り型になっている。(第2のタイプの実施例)
この変化では末梢循環が改善している。CRPは−0.91減少して炎症反応は改善方向にあるが、LDHは−70減少してエネルギー代謝が回復している。本実施例による全体の評価は○となっていて、自己治癒力による改善が認められている。
(6) 4月2日の血液検査の結果から本実施例による評価を行うと、Kは+0.18増加し、Naも+0.2増加して右肩上りになっている。(第2のタイプの実施例)
この変化では末梢循環は改善しているようにみえるが、徐々に悪化の方向にある可能性がある。CRPは+3.38増加して炎症反応が広がっている。LDHは+102増加してエネルギー代謝が低下している。本実施例による全体の評価は××となっていて、当日から抗生剤とエネルギー代謝改善のためにATP(アデノシン三リン酸)とアルファリポ酸の点滴を開始している。
(7) 1週間抗生剤投与を行い、4月9日の血液検査の結果から本実施例による評価を行うと、Kは+0.03増加し、Naは−2.1減少して末広がり型になっている。(第3のタイプの実施例)
この変化では細胞ポンプ機能が低下している。一方、CRPは−3.46減少して炎症反応は改善方向にある。LDHも−75減少してエネルギー代謝は改善している。本実施例による全体の評価は△となっていて、抗生剤などの投与が効果的であると評価できる。
(8) 4月8日に抗生剤は中止されたが、4月14日の血液検査の結果から本実施例による評価を行うと、Kは+0.27増加し、Naは−3.7減少して末広がり型になっている。(第3のタイプの実施例)
この変化では細胞ポンプ機能が低下している。さらにCRPは+0.86増加して炎症反応が広がっている。LDHも+27増加してエネルギー代謝が低下している。本実施例による全体の評価は×××となっていて、炎症反応が再燃する傾向にある。速やかに適切な治療を必要とする段階である。
(9) 4月15日から4月18日まで抗生剤を投与して4月16日の血液検査の結果から本実施例による評価を行うと、Kは−0.5減少し、Naは+0.2増加して末萎み型になっている。(第4のタイプの実施例)
この変化では細胞ポンプ機能が改善している。一方、CRPは+6.02増加して炎症反応が広がっている。LDHも+39増加してエネルギー代謝が低下している。本実施例による全体の評価は××となっていて、炎症反応は続いているが徐々に改善する傾向がある。
【実施例3】
【0016】
症例3 肺炎治療についての本実施例による評価
84歳 女性
(1) 定期的な血液検査を2008年1月31日に行った。12月26日から1月31日にかけての血液検査から本実施例による評価を行うと、K+0.38増加し、Naは−2.0減少し、末広がり型になっている。(第3のタイプの実施例)
この変化では細胞ポンプ機能が低下している。さらに、CRPは−0.18減少し、LDHも−8減少して、エネルギー代謝で解糖系は作動し、クエン酸回路への反応は進んでいると考えられる。本実施例による全体の評価は△となっていて、細胞機能は低下傾向であるが、明らかな感染症症状がないので経過観察としている。
(2) 1月31日から2月28日の血液検査の結果から本実施例による評価を行うと、Kは+0.16増加し、Naも+0.4増加して右肩上り型になっている。(第2のタイプの実施例)
この変化では、末梢循環改善が行われ、血管内水分量の調節が適度に行われ、KおよびNaの濃度が増加している。さらに、CRPは+0.21増加し、LDHも+126増加している。CRPの+0.21増加は小幅であるが、LDH増加は大きく、エネルギー代謝系の低下が疑われる。本実施例による全体の評価は××となっていて、細胞機能低下が疑われる。細胞機能改善を行う取り組みが必要である。
(3) 2月28日から3月13日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは−0.62減少し、Naも−0.1減少して右肩下り型となっている。(第1のタイプの実施例)
この変化では、末梢循環不全状態になり始めている。さらに、CRPは−0.03増加し、LDHは−127減少している。本実施例による全体の評価は△となっている。
(4) 3月13日から3月17日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは−0.05減少し、Naは+2.3増加して末萎み型になっている。(第4のタイプの実施例)
この変化では、ポンプ機能が回復状態になり始めている。CRPは+0.4増加し、LDHは−2減少している。何らかの炎症状態が起こり、悪化している。本実施例による全体の評価は×となっていて、炎症を改善させる治療が必要である。
(5) 3月17日から3月20日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは−0.09減少し、Naも−4.5減少して右肩下り型になっている。(第1のタイプの実施例)
この変化では、末梢循環不全状態になっている。CRPは−0.46減少しているが、LDHは+16増加してエネルギー代謝の低下も起こっている。本実施例による全体の評価は×となっていて、状態は悪化の方向にある。末梢循環状態を改善させる治療が必要である。
(6) 3月20日から3月24日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは+0.82増加し、Naも+0.8増加して右肩上り型になっている(第2のタイプの実施例)。
この変化では末梢循環が改善している。しかし、CRPは+2.88増加し、LDHも+59増加して炎症が起こり、エネルギー代謝が悪化している。本実施例による全体の評価は××となっていて、状態は悪化している。感染症対策として抗生剤投与が早い回復をもたらすと考えられる。
(7) 3月24日から3月27日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは+0.02増加し、Naは−0.8減少して末広がり型になっている(第3のタイプの実施例)。
この変化では、細胞ポンプ機能が低下している。CRPは−2.11減少し、LDHも−82減少して感染症による炎症症状が回復している。本実施例による全体の評価は△となっていて、状態は改善の方向にある。
(8) 3月27日から4月7日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは−0.36減少し、Naも−0.8減少して右肩下り型になっている。(第1のタイプの実施例)
この変化では末梢循環不全状態になっている。一方、CRPは−0.57減少して炎症は改善し、LDHも−2減少してエネルギー代謝が改善している。本実施例による全体の評価は△となっている。
(9) 4月7日から4月18日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは−0.08減少し、Naは+4.2増加して末萎み型になっている。(第4のタイプの実施例)
この変化では細胞ポンプ機能が改善している。CRPは−0.25減少して炎症は改善傾向にあるが、LDHは+1増加してエネルギー代謝は低下している。本実施例による全体の評価は△となっている。細胞ポンプ機能が低下しないように注意が必要である。
【実施例4】
【0017】
症例4 肺炎治療についての本実施例による評価
症例71歳 男性
(1)2008年2月5日から2月18日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは+0.11増加し、Naも+1.9増加して右肩上り型になっている。(第2のタイプの実施例)
この変化では末梢循環が改善している。一方、CRPは+0.09し増加、LDHも+87増加してエネルギー代謝が低下している。本実施例による全体の評価は××になっていて、状態は不安定で、細胞機能をさらに改善する何らかの治療が必要である。
(2) 2月18日から2月27日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは+0.1増加し、Naも+2.3増加して右肩上り型になっている。(第2のタイプの実施例)
この変化では細胞ポンプ機能が改善している。さらに、CRPは−0.18減少し炎症反応改善し、LDHも−99減少しエネルギー代謝は改善している。本実施例による全体の評価は○になっていて、症状は安定している。
(3) 2月27日から3月11日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは+0.14増加し、Naも+8.8増加して右肩上り型になっている。(第2のタイプの実施例)
この変化では末梢循環が改善している。さらにCRPは−0.02減少し、LDHも−55減少してエネルギー代謝は改善している。本実施例による全体の評価は○となっていて、症状は安定方向にある。
(4) 3月11日から3月25日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは−0.95減少し、Naは+4.7増加して末萎み型になっている。(第4のタイプの実施例)
この変化では細胞ポンプ機能は改善している。一方、CRPは+1.12増加して炎症反応が生じている。LDHも+40増加してエネルギー代謝が悪化している。本実施例による全体の評価は××となっていて、症状が悪化している。
(5) 3月25日から4月1日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは−0.44減少し、Naも−15減少して右肩下り型になっている。(第1のタイプの実施例)
この変化では末梢循環不全になっている。さらに、CRPは+3.81増加して炎症反応が生じている。LDHは−32減少してエネルギー代謝は改善している。本実施例による全体の評価は××となっていて、症状はさらに悪化している。抗生剤などの薬剤を用いた積極的な治療が必要である。
(6) 4月1日から4月4日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは+0.04増加し、Naは−1.4減少して末広がり型になっている。(第3のタイプの実施例)
この変化では細胞ポンプ機能が低下している。一方、CRPは−3.74減少して炎症反応が改善している。LDHは+9増加してエネルギー代謝が低下している。本実施例による全体の評価は×となっていて、軽度、症状改善している。細胞ポンプ機能改善を継続させる必要がある。
(7) 4月4日から4月8日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは+0.58増加し、Naも+1.3増加して右肩上り型になっている。(第2のタイプの実施例)
この変化では末梢循環が改善している。さらに、CRPは−0.64減少して炎症反応が改善している。LDHも−49減少してエネルギー代謝は改善している。本実施例による全体の評価は○となっている。抗生剤などの投与が効果的であったと評価できる。
(8) 4月8日から4月16日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは−0.09減少し、Naも−5.1減少して右肩下り型になっている。(第1のタイプの実施例)
この変化では末梢循環不全になっている。さらにCRPは+7.67増加して炎症反応が広がっている。LDHは−43減少してエネルギー代謝は改善している。本実施例による全体の評価は××となっていて、炎症反応が再燃する傾向にある。速やかに適切な抗生剤などの治療を必要とする。
(9) 4月16日から4月18日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは−0.07減少し、Naは+3.2増加して末萎み型になっている。(第4のタイプの実施例)
この変化では細胞ポンプ機能が改善している。さらに、CRPは−3.07減少して炎症反応が改善している。LDHは+57増加してエネルギー代謝が低下している。本実施例による全体の評価は△となっていて、炎症反応は続いているが徐々に改善する傾向がある。
【実施例5】
【0018】
症例5 肺炎治療についての本実施例による評価
症例83歳 女性
(1)2008年2月23日から2月25日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは−0.29減少し、Naは+0.5増加して末萎み型になっている。(第4のタイプの実施例)
この変化では細胞ポンプ機能が改善している。さらに、CRPは−0.06減少し、LDHも−14減少してエネルギー代謝が改善している。本実施例による全体の評価は○○になっていて、感染症による炎症反応は改善している。この状態を維持する治療が必要である。
(2) 2月25日から2月28日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは−0.41減少し、Naも+1増加して末萎み型になっている。(第4のタイプの実施例)
この変化では細胞ポンプ機能が改善している。一方、CRPは−0.11減少しているが、LDHが+13増加してエネルギー代謝が低下傾向にある。本実施例による全体の評価は△になっていて、細胞機能低下が起こり始めているので注意が必要である。
(3) 2月28日から3月8日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは−0.51減少し、Naも+3増加して末萎み型になっている。(第4のタイプの実施例)
この変化では細胞ポンプ機能が改善している。さらに、CRPは+2.63増加しているが、LDHは減−40少してエネルギー代謝は改善傾向にある。本実施例による全体の評価は×となっていて、症状は悪化しているので抗生剤などを利用した積極的な治療が必要である。
(4) 3月8日から3月10日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは−0.01減少し、Naは+2.7増加して末萎み型になっている。(第4のタイプの実施例)
この変化では細胞ポンプ機能は改善している。一方、CRPは+3.49増加して炎症反応が生じている。LDHは−51減少してエネルギー代謝は改善傾向にある。本実施例による全体の評価は×となっている。炎症反応は継続しているが、細胞機能が回復傾向にあるので、適切な抗生剤を選択すれば、症状は改善する。
(5) 3月10日から3月12日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは+0.01増加し、Naも+0.8増加して右肩上り型になっている。(第2のタイプの実施例)
この変化では末梢循環が改善している。さらに、CRPは−3.37減少して炎症反応が改善しているが、LDHは+39増加してエネルギー代謝は低下している。本実施例による全体の評価は△となっていて、症状は改善傾向にある。今後も抗生剤などの薬剤を用いた積極的な治療が必要である。
(6) 3月12日から3月14日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは+0.26増加し、Naは−1.2減少して末萎み型になっている(第4のタイプの実施例)。
この変化では細胞ポンプ機能が低下している。一方、CRPは−1.9減少して炎症反応が改善している。LDHは−9減少してエネルギー代謝が低下している。本実施例による全体の評価は△となっていて、炎症症状改善しているが、細胞ポンプ機能改善を継続させる必要がある。
(7) 3月14日から3月24日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは+0.23増加し、Naは−1.8減少して末広がり型になっている(第3のタイプの実施例)。
この変化では細胞ポンプ機能が低下している。一方、CRPは−0.73減少して炎症反応が改善しているが、LDHは+51増加してエネルギー代謝が低下している。本実施例による全体の評価は×となっている。細胞ポンプ機能を改善させる治療を行う必要がある。
(8) 3月24日から4月9日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは−1.13減少し、Naは+2増加して末萎み型になっている(第4のタイプの実施例)。
この変化では細胞ポンプ機能が改善している。さらにCRPは−0.01減少しているが、LDHは+5増加してエネルギー代謝は低下している。本実施例による全体の評価は△となっていて、症状は改善傾向にあるが、細胞機能改善を継続させる必要がある。
(9)4月9日から4月15日の血液検査から本実施例による評価を行うと、Kは+1.05増加し、Naも+2.5増加して右肩上り型になっている。(第2のタイプの実施例)
この変化では末梢循環が改善している。さらに、CRPはほとんど変化なく、LDHは−15低下してエネルギー代謝は改善している。本実施例による全体の評価は○となっていて、症状は改善する傾向である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例の生体細胞の機能の評価方法の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体細胞の血液中のK、Na,CRP,LDHのいずれか1つ以上の要素の第1の濃度を検知し、
前記第1の濃度の検知の後に、前記血液中の前記K、Na,CRP,LDHのいずれか1つ以上の同じ前記要素における第2の濃度を検知し、
前記第1の濃度から前記第2の濃度への増減を計算し、
前記増減から前記血液の病的段階以前の未病段階から前記病的段階までの状態を評価することを特徴とする生体細胞の機能の評価方法。
【請求項2】
前記Kの前記第1の濃度より前記第2の濃度が減少し、前記Naの前記第1の濃度より前記第2の濃度が減少した場合には、前記血液の前記状態は悪化したと評価することを特徴とする請求項1記載の生体細胞の機能の評価方法。
【請求項3】
前記Kの前記第1の濃度より前記第2の濃度が増大し、前記Naの前記第1の濃度より前記第2の濃度が増大した場合には、前記血液の前記状態は改善したと評価することを特徴とする請求項1記載の生体細胞の機能の評価方法。
【請求項4】
前記Kの前記第1の濃度より前記第2の濃度が増大し、前記Naの前記第1の濃度より前記第2の濃度が減少した場合には、前記血液の前記状態は悪化したと評価することを特徴とする請求項1記載の生体細胞の機能の評価方法。
【請求項5】
前記Kの前記第1の濃度より前記第2の濃度が減少し、前記Naの前記第1の濃度より前記第2の濃度が増大した場合には、前記血液の前記状態は改善したと評価することを特徴とする請求項1記載の生体細胞の機能の評価方法。




【図1】
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