説明

生体組織処理装置

【課題】医療廃棄物の発生量を低減し、収納コストや搬送コストを削減する。
【解決手段】剛体材料からなる開閉可能な密閉容器2と、該密閉容器2内に収容され、生体組織Aを吸引するノズルに接続する配管5が接続された可撓性材料からなる内部容器3と、該内部容器3内を減圧する減圧手段4と、該減圧手段4により内部が減圧された内部容器3を拡張状態に維持する拡張維持手段8とを備える生体組織処理装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脂肪組織等の生体組織から生体組織由来細胞を分離するために、負圧にした容器内に生体組織を吸引し、該容器内において生体組織を消化処理する生体組織処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1に記載された生体組織処理装置は、患者の体内から生体組織を吸引するために内部を負圧に吸引する容器を剛性の高い材質により構成しているが、生体組織に接触する容器は、患者間のコンタミネーションを回避するために使い捨てされなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−524396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、生体組織を処理して生体組織由来細胞を採取する生体組織処理装置においては、処理される生体組織量も多く、容器自体が比較的大型のものとなるため、これを使い捨て製品とすると、大量の医療廃棄物が発生してしまうという不都合がある。また、剛性の高い材質からなる容器は、収容時や搬送時にも多くのスペースを必要とするため、コスト高であるという不都合もある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、医療廃棄物の発生量を低減し、収納コストや搬送コストを削減することができる生体組織処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、剛体材料からなる開閉可能な密閉容器と、該密閉容器内に収容され、生体組織を吸引するノズルに接続する配管が接続された可撓性材料からなる内部容器と、該内部容器内を減圧する減圧手段と、該減圧手段により内部が減圧された前記内部容器を拡張状態に維持する拡張維持手段とを備える生体組織処理装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、密閉容器内に収容された内部容器を密閉容器内において拡張させ、減圧手段によって内部容器内を減圧すると、可撓性材料からなる内部容器は、収縮しようとするが、拡張維持手段によって密閉容器内において拡張状態に維持される。これにより、内部容器に接続された配管を介してノズルに負圧が供給され、ノズルの先端を患者の体内に挿入することにより、ノズルの先端から生体組織、例えば、脂肪組織を吸引し、吸引された生体組織を内部容器内に収容することができる。
【0008】
すなわち、ノズルにより吸引された生体組織は、内部容器内に配されるため、密閉容器には接触しないで済む。その結果、剛体材料からなる密閉容器は使い捨てにすることなく、内部容器を使い捨てにすることにより、コンタミネーションの発生を防止することができる。また、可撓性材料からなる内部容器は、収縮させられることにより容積を減らすことができ、医療廃棄物を削減することができるとともに、収納時や搬送時に必要なスペースを低減して、収納コストや搬送コストを大幅に削減することができる。
【0009】
上記発明においては、前記拡張維持手段が、前記密閉容器と前記内部容器との間の空間を前記内部容器内の圧力以下の圧力に維持してもよい。
このようにすることで、密閉容器内の内部容器は、その内外の圧力バランスによって容易に拡張状態に維持される。内部容器内の圧力を大気圧より減圧することにより、患者の体内から生体組織を容易に吸引することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記拡張維持手段が、前記密閉容器と前記内部容器との間の空間を前記減圧手段に接続する接続配管を備えていてもよい。
このようにすることで、内部容器内の圧力と密閉容器と内部容器との間の圧力とが等しくなり、内部容器を拡張状態に維持することができるとともに、内部容器内の減圧状態によって患者の体内から生体組織を容易に吸引することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記拡張維持手段が、前記密閉容器の内面に沿う位置まで拡張させられた前記内部容器を前記密閉容器の内面に固定する固定手段を備えていてもよい。
このようにすることで、内部容器内を減圧すると内部容器が収縮しようとするが、密閉容器の内面に沿う位置まで拡張させられた内部容器と密閉容器との間にの狭い空間は、内部容器が収縮するとそれによって減圧される。そして、固定手段によって密閉容器の内面に内部容器を固定しておくことにより、密閉容器に対して内部容器が偏って収縮することが防止されつつ、内部の減圧状態によって生体組織を容易に吸引することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記密閉容器に、該密閉容器の内容積を変化させる容積可変機構が設けられていてもよい。
このようにすることで、容積可変機構により、密閉容器の内容積を変化させ、内部に収容される生体組織の量を変更することができる。例えば、少量の生体組織を収容する場合には、容積可変機構によって密閉容器の内容積を縮小させることにより、減圧する時間を短縮することができる。また、大量の生体組織を収容する場合には、容積可変機構によって密閉容器の内容積を拡大させる。内部容器は、密閉容器の内部空間の形状に合わせて形状を変化させることにより、内容積を容易に変更することができ、所望量の生体組織を収容することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、医療廃棄物の発生量を低減し、収納コストや搬送コストを削減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る生体組織処理装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の生体組織処理装置の変形例を示す全体構成図である。
【図3】図1の生体組織処理装置の他の変形例を示す全体構成図である。
【図4】図3の生体組織処理装置の密閉容器の内容積を縮小させた状態を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る生体組織処理装置1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る生体組織処理装置1は、図1に示されるように、剛体材料からなる密閉容器2と、該密閉容器2内に収容される可撓性材料からなる内部容器3と、該内部容器3内および密閉容器2内を減圧する真空ポンプ4とを備えている。
【0016】
密閉容器2は、容器本体2aと、該容器本体2aの開口部2bを開閉可能な蓋2cと、該蓋2cと容器本体2aとの間を気密状態に密封するシール部材2dとを備えている。密閉容器2は、容器本体2aの開口部2bを蓋2cによって閉塞することにより、内部に、内容積不変の密閉空間を形成するようになっている。
【0017】
内部容器3は、ポリエチレン、ポリプロピレンあるいはポリ塩化ビニル等の薄いシートからなる袋状の容器であって、図1に示される例では、蛇腹状に構成されて、伸縮させられることにより内容積を変化させることができる。
内部容器3には、密閉容器2を貫通する配管5を介して、患者の体内から脂肪組織のような生体組織を吸引するためのノズル(図示略)が接続されている。
【0018】
また、内部容器3には、消化酵素液を供給する配管6が、密閉容器2を貫通して接続されている。
また、密閉容器2には、2本の配管7,8が貫通して配置され、それぞれ一端を真空ポンプ4に接続されている。一方の配管7の他端は、内部容器3内に開口し、他方の配管(接続配管:拡張維持手段)8の他端は、内部容器3と密閉容器2との間の空間9に開口している。
【0019】
密閉容器2を貫通する各配管5〜8の貫通部は、それぞれ図示しないシール部材によって、気密状態に密閉されている。
これにより、真空ポンプ4を作動させると、一方の配管7を介して内部容器3内が減圧させられるとともに、他方の配管8を介して内部容器3と密閉容器2との間の空間9も同じ圧力に減圧されるようになっている。
【0020】
このように構成された本実施形態に係る生体組織処理装置1の作用について説明する。
本実施形態に係る生体組織処理装置1を用いて生体組織を処理するには、まず、密閉容器2の蓋2cを開けて内部容器3を収容し、内部容器3を所望の内容積となるまで拡張させておく。
【0021】
そして、容器本体2aに対して蓋2cを閉めることにより、密閉容器2内の空間9を密封する。この状態で、真空ポンプ4を作動させる。
真空ポンプ4に接続された一方の配管7は内部容器3内に開口しているので、真空ポンプ4によって内部容器3内が吸引され、減圧されていく。一方、真空ポンプ4に接続された他方の配管8は、内部容器3と密閉容器2との間の空間9に開口しているので、当該空間9を内部容器3内の空間と同じ圧力まで減圧していく。
【0022】
内部容器3内の空間が十分に減圧された状態となると、ノズルを患者の体内に挿入して、先端開口を開放することにより、先端開口から生体組織Aを吸引し、配管6を介して密閉容器2内の内部容器3に収容していくことができる。
この場合において、内部容器3内の空間と、内部容器3と密閉容器2との間の空間9とは、同一の圧力に減圧されているので、可撓性材料からなる内部容器3は、内部の空間が減圧されても収縮せずに拡張状態に維持される。
【0023】
そして、十分な量の生体組織が内部容器3内に収容された時点で、真空ポンプ4を停止し、配管6を介して消化酵素液を内部容器3内に供給することにより、生体組織の消化処理を行うことができる。
【0024】
このようにして生体組織の消化処理が行われ、生体組織由来細胞が採取された後には、密閉容器2内から内部容器3が取り出され、廃棄されることになるが、本実施形態によれば、剛体材料からなり比較的大型の密閉容器2には生体組織が触れていないので、これを使い捨てにする必要がない。したがって、内部容器3を使い捨てにすれば済み、内部容器3は可撓性材料からなるので、廃棄する際には、十分に収縮させて、廃棄物の体積を減らすことができる。
【0025】
また、本実施形態に係る生体組織処理装置1によれば、可撓性材料からなる内部容器3を使い捨て部品とするので、収納や搬送に際しても十分に小さく収縮させて行うことにより、収納コストや搬送コストを低減することができるという利点がある。
【0026】
なお、本実施形態においては、内部容器3内を減圧しても、密閉容器2内において内部容器3を拡張状態に維持するために、内部容器3内の圧力と、内部容器3と密閉容器2との間の空間9の圧力とを同じ圧力に設定したが、これに代えて、内部容器3と密閉容器2との間の空間9の圧力を、内部容器3内の圧力より低くなるように設定してもよい。
【0027】
また、図2に示されるように、密閉容器2内において内部容器3を拡張させ、該内部容器3が密閉容器2の内面に沿うようにフック10等によって固定してもよい。このようにすることで、内部容器3と密閉容器2との間の空間9が十分に狭くなり、内部容器3内のみを減圧して内部容器3が収縮すると、内部容器3と密閉容器2との間の空間9が減圧される結果、内部容器3が必要以上に収縮しないように拡張状態に維持することができる。この場合には、真空ポンプ4に接続する配管7は、内部容器3内に開口する配管7のみで足り、構成を簡易にすることができる。
【0028】
また、本実施形態においては、内部容器3として、蛇腹状に伸縮する構造のものを採用したが、これに限定されるものではなく、密閉容器2の内部形状と同等または若干大きな形状を有する袋状、あるいは、伸縮可能なバルーン状の内部容器3を採用してもよい。
【0029】
また、本実施形態においては、密閉容器2として内容積不変のものを例示したが、これに代えて、図3に示されるように、内容積を変更可能なものを採用してもよい。例えば、図3に示されるように、シール部材11による気密状態を維持しながら、上下動可能な底面2eを移動させることにより、内容積を変更するシリンダ等の駆動手段12を設けることとしてもよい。
【0030】
密閉容器2内の内部容器3は、密閉容器2の内容積に合わせて変形するので、密閉容器2の内容積に適した形状をとることができる。このようにすることで、採取する生体組織の量に合わせて密閉容器2の内容積を変化させることができる。
例えば、図4に示されるように、少量の生体組織を採取する際には、密閉容器2の内容積を小さくすることにより、内部容器3内の空間を減圧するのにかかる時間を短縮することができるという利点がある。
【符号の説明】
【0031】
1 生体組織処理装置
2 密閉容器
2e 底面(容積可変機構)
3 内部容器
4 真空ポンプ(減圧手段)
5 配管
8 配管(接続配管、拡張維持手段)
9 空間
10 フック(固定手段、拡張維持手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛体材料からなる開閉可能な密閉容器と、
該密閉容器内に収容され、生体組織を吸引するノズルに接続する配管が接続された可撓性材料からなる内部容器と、
該内部容器内を減圧する減圧手段と、
該減圧手段により内部が減圧された前記内部容器を拡張状態に維持する拡張維持手段とを備える生体組織処理装置。
【請求項2】
前記拡張維持手段が、前記密閉容器と前記内部容器との間の空間を前記内部容器内の圧力以下の圧力に維持する請求項1に記載の生体組織処理装置。
【請求項3】
前記拡張維持手段が、前記密閉容器と前記内部容器との間の空間を前記減圧手段に接続する接続配管を備える請求項2に記載の生体組織処理装置。
【請求項4】
前記拡張維持手段が、前記密閉容器の内面に沿う位置まで拡張させられた前記内部容器を前記密閉容器の内面に固定する固定手段を備える請求項1に記載の生体組織処理装置。
【請求項5】
前記密閉容器に、該密閉容器の内容積を変化させる容積可変機構が設けられている請求項1から請求項4のいずれかに記載の生体組織処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−55244(P2012−55244A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202179(P2010−202179)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】