説明

生体組織接着剤塗布用具

【課題】断続的な使用時における先端の固化を良好に防止できる生体組織接着剤塗布用具を提供する。
【解決手段】生体組織接着剤塗布用具100を、ノズル本体1と、ガス注入口2と、薬液注入口3a、3bと、薬液吐出口4a、4bと、薬液注入口3a、3b及び薬液吐出口4a、4bを各々連通する薬液流通管5a、5bと、ガス噴出口6と、薬液流通管5bに設けられ、ノズル本体1内部のガスを薬液吐出口4b方向に導入する2つの連通口8a、8bと、薬液流通管5a、5bに設けられ、薬液注入口3a、3bから当該薬液流通管5a、5b内部への薬液の流入を許容し、当該薬液流通管5a、5b内部からの薬液吐出口4a、4b方向への薬液の流出を規制する逆止弁7a、7bと、を有して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織接着用の複数の薬液を同時に生体の患部に噴霧して塗布するための、生体組織接着剤塗布用具に関し、特に肝臓や肺の切除断端や消化管の縫合部の止血閉鎖などに好適な、生体組織接着剤塗布用具に関する。
【背景技術】
【0002】
生体組織接着剤塗布用具として、2本のシリンジ本体にそれぞれ薬液として充填されたフィブリノゲン溶液及びトロンビン溶液をノズルから同時に吐出し、無菌ガスを利用して、この吐出させた2つの薬液を混合させながら噴霧するスプレー塗布法が普及している。この手法により、フィブリノゲン溶液がトロンビン溶液と反応して繊維状のフィブリンに変化し、例えば損傷後の消化管などの縫合部の止血閉鎖が行われる。この際に、薬液の吐出を一時的に停止し、再び吐出し噴霧するといった断続的な使用が行われる。この中断時に、噴霧されたフィブリノゲン溶液及びトロンビン溶液の霧状の微粒子がノズルの先端に付着し、その際に、2液が互いに接触することがある。その結果、薬液の吐出口や薬液流通管内の先端部において固化し、ノズルの先端が詰まってしまうという問題が発生していた。
【0003】
この詰まりを解消するため、特許文献1に記載の発明では、無菌ガス注入口に、この無菌ガスの流路を薬液の流路に切り換える切換装置を設けている。そして、薬液の吐出を停止した際に、切換装置を無菌ガスの供給元と連通するが、薬液の供給元とは連通しないよう切り換えて無菌ガスを射出することにより、薬液の流路の先端側に残留した薬液を排出する発明が開示されている。また、各薬液の流入口には、薬液が流路内部に流入するのは許容するが、流路内の薬液や無菌ガスが逆流するのを防止するための逆止弁が設けられている。そのため、上記のガス圧による残留薬液の排出の際に、無菌ガスが薬液の供給元方向に流入することも防止している。しかしながら、特許文献1に記載の発明では、切換装置や薬液吐出時の切り換えを行う必要があった。一方、特許文献2に記載の発明では、薬液の流通管に、薬液流れの上流側から下流側に向かって斜め後ろ向きに、内壁から外壁に向かって、管壁面を貫通する連通口を設けた発明が開示されている。この連通口は、薬液の吐出時には閉じているが、薬液の断続的な噴霧時に、薬液の吐出を停止した瞬間に、ガス圧により連通口が開口し、この連通口から無菌ガスが流通管内部に流入する。そして、流通管の先端側に残留した薬液が外部に排出されることにより、先端の詰まりを防止する。そのため、断続的な使用時に、特許文献1のような切換装置やその切り換え動作が必要ではなく、先端側の薬液を吐出して固化を防止できる生体組織接着剤塗布用具を、より簡易に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−238887号公報
【特許文献2】特開2007−252880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年では固化防止のさらなる改善が求められている。したがって、複数の薬液を混合して接着する生体組織接着剤塗布用具において、断続的な使用を行った際に、薬液流通管内の残留薬液を外部に排出して、先端の固化の防止を、より効果的に行うことができる製品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の生体組織接着剤塗布用具は、内部に空間を有するノズル本体と、ノズル本体内部の空間内にガスを充填するためのガス注入口と、ノズル本体に設けられた複数の薬液注入口と、ノズル本体の先端に設けられた複数の薬液吐出口と、ノズル本体の内部に収納され、複数の薬液注入口及び複数の薬液吐出口を各々連通する複数の薬液流通管と、薬液吐出口近傍に設けられ、ガス注入口からノズル本体の内部に充填されたガスを噴射し、薬液吐出口から吐出される薬液を霧状に噴霧混合するガス噴出口と、薬液流通管の少なくとも1つに設けられ、ノズル本体内部と薬液流通管内部とを連通し、ノズル本体内部のガスを薬液吐出口方向に導入する少なくとも1つの連通口と、連通口を設けた薬液流通管に少なくとも設けられ、薬液注入口から当該薬液流通管内部への薬液の流入を許容し、当該薬液流通管内部からの薬液注入口方向への薬液の流出を規制する逆止弁を有する。
【0007】
したがって、本発明の生体組織接着剤塗布用具では、連通口から薬液流通管内部へガスが薬液吐出口方向に流入する。これにより、連通口を設けた薬液流通管内の先端側の薬液が外部に排出され、断続的な使用時における先端の固化を良好に防止することができる。また、逆止弁を設けたことにより、ガスが逆止弁よりも上流側に逆流するのを防止することができる。そのため、薬液流通管の先端側の固化を良好に防止することができる。また、このような固化防止に優れた製品を、連通口と逆止弁を設けただけで、容易に製造することができる。さらに、薬液流通管内に流入したガスがシリンジ本体側に戻らないような構造で連通口を形成するなど、連通口の形状の微調整の必要がなく、より簡易で廉価な製品を得ることができる。また、薬液の調製時に薬液内に気泡等が混入することがあり、この場合、気泡には薬液吐出時の押圧力だけでなく、薬液の戻り方向に作用するガス圧が負荷されるため、気泡が圧縮される。そして、薬液吐出の停止時に押圧力を解除すると、圧縮されていた気泡の体積が復元し、薬液流通管内において、薬液の先端が不測に前進し、固化することがある。しかし、本願では、逆止弁によりガス圧が気泡に負荷されることを防止して、気泡の圧縮を低減することができる。その結果、薬液流通管内からの薬液の排出後の、気泡の復元による薬液流通管での薬液の先端の不測の前進を防止することができ、薬液の固化防止の効果のさらなる向上が図れる製品を提供することができる。
【0008】
また、本発明の生体組織接着剤塗布用具において、連通口を管壁面の長手方向に複数個有していてもよい。
【0009】
また、本発明の生体組織接着剤塗布用具において、連通口は、薬液流通管ごとに、連通口の開口面積の和が、それぞれ異なっていてもよい。なお、この連通口の開口面積には、連通口が設けられていない場合も含む。したがって、複数の薬液流通管のうち、連通口が開口したものと、連通口が開口していないものが両方存在する場合を含むものである。
【0010】
また、本発明の生体組織接着剤塗布用具において、粘性の異なる前記薬液が充填され、複数の薬液注入口の各々に接続する複数のシリンジ本体を、さらに有するものであってもよい。
【0011】
また、本発明の生体組織接着剤塗布用具において、粘性のより高い薬液が充填されたシリンジ本体を、連通口の開口面積の和がより広い前記薬液流通管に接続するものであってもよい。
【0012】
また、本発明の生体組織接着剤塗布用具において、粘性の異なる薬液が充填されたシリンジ本体を接続する薬液流通管を識別するための識別手段を、さらに有するものであってもよい。
【0013】
また、本発明の生体組織接着剤塗布用具において、複数のシリンジ本体は、内部に充填される薬液を、各薬液流通管内部に注入するための押圧手段と、複数の当該押圧手段を連結して同時に押圧するための押圧手段連結手段と、をさらに有するものであってもよい。
【0014】
また、本発明の生体組織接着剤塗布用具において、複数のシリンジ本体を連結するシリンジ本体連結手段と、ノズル本体及びシリンジ本体連結手段を、互いに固定する固定手段と、をさらに有するものであってもよい。
【0015】
また、本発明の生体組織接着剤塗布用具において、連通口は、薬液流通管の管壁面における形状が、薬液流通管の軸方向と交差する方向に延在するスリット状であってもよい。
【0016】
また、本発明の生体組織接着剤塗布用具において、スリット状の連通口は、側面形状が薬液流通管の薬液注入口側から薬液吐出口方向に傾斜し、かつ、管壁面の外側の開口幅よりも、内側の開口幅が狭くなるよう、管壁面を切り欠いて形成されたものであってもよい。
【0017】
また、本発明の生体組織接着剤塗布用具において、連通口には、管壁面の内側または外側に、ノズル本体内部のガスを薬液吐出口方向に導くよう、薬液注入口側から薬液吐出口方向に傾斜するガス流路を有する連通管が形成されたものであってもよい。
【0018】
また、本発明の生体組織接着剤塗布用具において、薬液流通管は、軟質性のプラスチックチューブで形成されたものであってもよい。
【0019】
また、本発明の生体組織接着剤塗布用具において、内部に空間を有する複数のノズル本体が、複数の薬液流通管に対して個別に設けられたものであってもよい。
【0020】
なお、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。また、本発明でいう上流側とは、薬液流通管に薬液を注入する薬液注入口側を意味し、下流側とは、薬液流通管の薬液を外部に吐出する薬液吐出口側を意味する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の生体組織接着剤塗布用具によれば、薬液流通管の少なくとも1つに、ガスが流入する連通口と、薬液流通管内部の薬液の戻りを防止する逆止弁を設けている。そのため、複数の薬液を混合して患部に噴霧する場合において、断続的な使用をする際に、連通口から流入するガスのガス圧により、この連通口を設けた薬液流通管内の先端側の残留薬液が外部に排出される。したがって、断続的な使用時において、先端の固化を良好に防止することが可能な生体組織接着剤塗布用具を提供することができる。また、このような固化防止に優れた製品を、連通口と逆止弁を設けただけで容易に製造することができ、薬液流通管内に流入したガスがシリンジ本体側に戻らないような構造で連通口を形成するなどの微調整の必要がなく、より簡易で廉価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる生体組織接着剤塗布用具の一例を示し、ノズル本体に2つの異なる薬液がそれぞれ充填されたシリンジ本体が接続された状態の概略図であって、(a)は当該生体組織接着剤塗布用具をバンド(固定手段)側から見た平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は(b)のA−A線断面図である。
【図2】第一実施形態にかかる生体組織接着剤塗布用具の斜視図である。
【図3】第一実施形態にかかる生体組織接着剤塗布用具において、スリット状の連通口を設けた薬液流通管の一部拡大斜視図である。
【図4】第一実施形態にかかる生体組織接着剤塗布用具において、逆止弁部分の一部拡大図である。
【図5】第一実施形態にかかる生体組織接着剤塗布用具の使用状態を説明するためのノズル本体側の一部拡大図であって、(a)は薬液を吐出している状態を示す図であり、(b)は薬液の吐出を停止し、連通口を設けた薬液流通管内部から薬液を排出した状態を示す図である。
【図6】第二実施形態にかかる生体組織接着剤塗布用具において、連通口に略角筒形の連通管を接続した一部拡大図であって、(a)は連通口の内側に連通管を接続した薬液流通管の断面図であり、(b)はその平面図であり、(c)は連通口の外側に連通管を接続した薬液流通管の断面図であり、(d)はその平面図である。
【図7】第三実施形態にかかる生体組織接着剤塗布用具において、連通口を略円形に形成し、この略円形の連通口に略円筒形の連通管を接続した一部拡大図であって、(a)は連通口の内側に連通管を接続した薬液流通管の断面図であり、(b)はその平面図であり、(c)は連通口の外側に連通管を接続した薬液流通管の断面図であり、(d)はその平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0024】
なお、本実施の形態では図示するように前後左右上下の方向を規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものであり、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0025】
<第一実施形態>
図1(a)は、本発明の第一の実施形態にかかる生体組織接着剤塗布用具の一例を示す平面模式図であり、図1(b)は、生体組織接着剤塗布用具の側面図であり、図1(c)は、図1(b)のA−A線断面図である。
【0026】
はじめに、本実施形態の生体組織接着剤塗布用具の概要について、図1(a)〜図1(c)を用いて説明する。本明細書では、図1(b)において、図中の上方向を生体接着剤塗布用具の上と呼び、図中の下方向を下と呼ぶ。さらに、図1(b)において、図中の手前方向を左と呼び、図中の奥方向を右と呼ぶ(即ち、図1(a)において、図中の下方向を左と呼び、図中の上方向を右と呼ぶ)。また、図1において、図中の左方向を前方または先端側と呼び、図中の右方向を後方または後端側と呼ぶこともある。
【0027】
図1(a)〜図1(c)に示すように、本実施形態の生体組織接着剤塗布用具100は、粘性の異なる薬液、例えば、フィブリノゲン溶液及びトロンビン溶液を患部に塗布して接着するために用いるもので、内部に空間1cを有するノズル本体1と、ノズル本体1内部の空間1c内にガスを充填するためのガス注入口2と、ノズル本体1に設けられた複数の薬液注入口3a、3bと、ノズル本体1の先端に設けられた複数の薬液吐出口4a、4bと、ノズル本体1の内部に収納され、2つの薬液注入口3a、3b及び2つの薬液吐出口4a、4bを各々連通する2本の薬液流通管5a、5bと、薬液吐出口4a、4b近傍に設けられ、ガス注入口2からノズル本体1の内部に充填されたガスを噴射し、薬液吐出口4a、4bから吐出される薬液を霧状に噴霧混合するガス噴出口6と、薬液流通管5a、5bのうち薬液流通管5bに設けられ、ノズル本体1内部と薬液流通管5b内部とを連通し、ノズル本体1内部のガスを薬液吐出口4b方向に導入する2つのスリット状の連通口8a、8bと、薬液流通管5a、5bに設けられ、薬液注入口3a、3bから当該薬液流通管5a、5b内部への薬液の流入を許容し、当該薬液流通管5a、5b内からの薬液吐出口4a、4b方向への薬液の流出を規制する逆止弁7a、7bと、を有することを特徴とする。このため、例えば、生体組織接着剤塗布用具の断続使用時に、薬液の吐出を停止した場合であっても、連通口8a、8bから流入したガスのガス圧によって、粘性の高い薬液でも容易に外部に排出することができる。したがって、薬液の固化を良好に防止して、生体組織接着剤塗布用具の断続使用を円滑に行うことができる。また、薬液流通管5aにも逆止弁7aを設けているため、ガスによる薬液の排出の際に、ガスがシリンジ本体10a、10bへ流入するのを防ぐことも可能となる。
【0028】
なお、本実施形態では、連通口8a、8bを設けた薬液流通管5bには、比較的粘性の高いフィブリノゲン溶液を充填したシリンジ本体10bを接続する。連通口8a、8bを設けていない薬液流通管5aには、比較的粘性の低いトロンビン溶液を充填したシリンジ本体10aを接続する。
【0029】
また、本実施形態の薬液流通管5a、5bは、軟質性のプラスチックチューブで形成しているため、スリット状の連通口8a、8b用の切れ込みを容易に入れることができる。このプラスチック材料としては、特に制限はないが、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などを用いるのが望ましい。なお、このように本実施例では、薬液流通管5a、5bを軟質性のプラスチックチューブで形成しているが、本願がこれに限定されることはなく、金属その他の材料で形成してもよい。
【0030】
また、本実施形態の生体組織接着剤塗布用具100は、上述の各薬液注入口3a、3bの各々に接続し、内部に粘性の異なる薬液が充填される2本のシリンジ本体10a、10bと、この2本のシリンジ本体10a、10bの内部に充填された薬液を各薬液流通管5a、5b内部に注入する押圧手段としての機能及び薬液を識別するための識別手段9a、9bとしての機能を有するピストン12a、12bと、このピストン12a、12bを連結して同時に押圧するためのピストン連結手段13と、シリンジ本体10a、10bを連結するシリンジ本体連結手段20と、ノズル本体1の2つの薬液注入口3a、3b近傍に設けられ、シリンジ本体10a、10bに設けた識別手段9a、9bに対応する識別手段11a、11bと、シリンジ本体連結手段20及びノズル本体1を固定する固定手段としてのバンド14と、ガス注入口2に接続し、ガスを供給するガス供給管15と、このガス供給管15の、ガス注入口2の上流側に配置したガス濾過用のフィルタ16と、をさらに有している。また、後述するが、バンド14にも、識別手段14a、14bを設けている。
【0031】
次に、本実施形態のノズル本体1について詳細に説明する。図1に示すように、ノズル本体1は、後端側に気密的に蓋体1aが接続され、この蓋体1aの壁面には、ノズル本体1の先端方向に支柱1bが突出形成されている。この支柱1bは、図1(c)に示すように、ノズル本体1の先端まで突出形成されている。この支柱1bにより、ノズル本体1と薬液吐出口4a、4bを支持して、薬液とガスとの噴霧混合圧への耐性を高めている。また、支柱1bの外周面及びノズル本体1の内周面と、薬液吐出口4a、4bの外周面との間に、それぞれ間隙を形成し、この間隙を、ガス噴出口6としている。なお、このガス噴出口6は、薬液の良好な混合と噴射を行えるように、2つの薬液吐出口4a、4bの間であって、これらよりも後端側に形成されている。また、ノズル本体1にガスを注入し充填するためのガス注入口2は、図1(c)に示すように、ノズル本体1の下底壁1dに開口されている。
【0032】
また、図1(b)に示すように、ノズル本体1のガス注入口2には、ガスを供給するガスタンクなどの供給手段(図示せず)と連通するガス供給管15が突出形成されている。さらに、このガス供給管15には、ガス注入口2の上流側に、ガス濾過用のフィルタ16が接続配置され、このフィルタ16を介して、ガスの供給元と連通している。この構成により、フィルタ16によってガス内のゴミなどの不純物が除去され、ノズル本体1の空間1cに清浄化されたガスを供給することができる。そのため、より清潔な薬液を患部に噴霧することができる。さらには、薬液の吐出を停止した際に、連通口8a、8bから薬液流通管5b内部にガスが流入して先端の薬液を排出する場合の、ゴミ等の混入による薬液流通管5b内部の目詰まりなどを防止して、薬液の円滑な流通と吐出とが可能となる。
【0033】
また、ノズル本体1の蓋体1aには、図4及び図5の拡大図に示すように、薬液流通管5a、5bとシリンジ本体10a、10bとを連通させるための連通孔1e1、1e2が開口されている。蓋体1aには、さらに、この連通孔1e1、1e2に連続して、ノズル本体1の空間1c方向に薬液流通管5a、5bを液密的に挿入し固定するため円筒状の管装着部1d1、1d2が突出形成されている。また、連通孔1e1、1e2に連続した後端側に、逆止弁7a、7bを内部に装着するための円筒状の弁装着部1f1、1f2が突出形成されている。この弁装着部1f1、1f2には、内部に装着した逆止弁7a、7bを支持するための支持手段19a、19bに突出形成された二重の円筒部19c、19dが接続されている。また、この支持手段19a、19bの外周には、支持手段カバー21a、21bが取り付けられているが、これらは、それぞれ赤色と青色に色分けされ、後述するように、シリンジ本体10a、10bを接続する際の識別機能を有している。また、このよう支持手段カバー21a、21bを取り付けることにより、二重の円筒部19c、19dの外方への拡張を防止して、支持手段19a、19bの脱落防止、気密性、及び、液密性の向上を図ることも可能である。
【0034】
なお、ノズル本体1は、薬液の性質や使用目的等に応じて、例えば、遮光等のために半透明や不透明な材料で形成してもよいし、内部の容易な確認等のために透明な材料で形成してもよい。また、このノズル本体1、及び、薬液吐出口4a、4b、薬液流通管5a、5b、ガス供給管15、逆止弁7a、7b等、本実施形態の生体組織接着剤塗布用具は、医療用プラスチック材料で形成するのが望ましい。しかし、本願がこれに限定されることはなく、医療用の他の材料で形成してもよい。また、薬液にも影響を及ぼさない材料で形成するのが望ましい。
【0035】
次に、逆止弁7a、7bについて説明する。前述したように、図1(c)の全体図及び図4の拡大図に示すように、逆止弁7a、7bは、円筒状の弁装着部1f1、1f2内に装着されている。この逆止弁7a、7bとして、図4の逆止弁7b付近の拡大図に示すように、内面への圧力の付与によって開口し、外面への圧力の付与によって閉鎖する、いわゆるダックビル弁を用いている。したがって、薬液吐出時には、弁膜が開いて薬液注入口3bから薬液流通管5b内部への薬液の流入を許容する。しかし、薬液の吐出停止時等には、当該薬液流通管5b内部からの薬液注入口3b方向へガス圧等の圧力がかかって、弁膜が閉止し、薬液流通管5b内部からの薬液やガスのシリンジ本体10b側への流出を規制する。なお、図示はしていないが、逆止弁7aについても、逆止弁7bと同様の構成と効果を有している。
【0036】
シリンジ本体10a、10bには、充填される薬液の識別手段9a、9bが設けられている。本実施形態では、透明な材料で形成したシリンジ本体10aに挿入して内部の薬液を押し出すピストン12aを赤色とし、シリンジ本体10bに挿入するピストン12bを青色として、識別手段9a、9bの機能を持たせている。そして、この赤色、青色のピストン12a、12bで識別されたシリンジ本体10a、10bを接続するノズル本体1にも、図1(a)に示すように、赤丸の識別手段11aと青丸の識別手段11bが印刷された識別シール11が貼着されている。また、図1(a)に示すように、ノズル本体1と2本のシリンジ本体10a、10bとを互いに固定する固定手段としてのバンド14にも識別手段を設けている。すなわち、バンド14に「赤」の文字とシリンジ本体10aの取り付け方向を示す矢印を浮き彫りして識別手段14aとしている。また、バンド14に「青」の文字とシリンジ本体10bの取り付け方向を示す矢印を浮き彫りして識別手段14bとしている。これにより、シリンジ本体10a、10bのノズル本体1への接続位置の誤りを、より防止することができる。さらには、上述したように、支持手段カバー21aを赤色、支持手段カバー21bを青色として、これらにも識別機能を持たせている。このような構成により、ノズル本体1への2種類のシリンジ本体10a、10bの接続を、より正確に行うことができる。
【0037】
次に、バンド14によるノズル本体1とシリンジ本体10a、10bとの固定方法について説明する。図1(a)の全体図及び図2の斜視図に示すように、バンド14の先端は、ノズル本体1の後端に形成された挿入部1g内に挿入固定されている。また、バンド14の後端は、貫通穴14cが開口されている。一方、シリンジ本体10a、10bを連結するシリンジ本体連結手段20の先端には、上記貫通穴14cに差し込むための突起部20aが上方に向かって突出形成されている。そして、シリンジ本体10a、10bをノズル本体1側の支持手段19a、19bに各々挿入した後に、バンド14を押し下げて、貫通穴14cに、シリンジ本体連結手段20の突起部20aを差し込む。なお、バンドの押し下げとこの差し込みを行い易くするため、バンド14の後端には、指で押圧するための押圧部14dが斜め上方に向かって形成されている。このバンド14により、ノズル本体1からのシリンジ本体10a、10bの脱落を防止するとともに、シリンジ本体10a、10bの前後方向及び上下方向への移動を防止する。
【0038】
その結果、ピストン12a、12bの安定した押圧が可能となり、薬液の円滑な吐出が可能となって、生体組織接着剤塗布用具100の安定した使用が可能となる。さらに、バンド14には、前述したように、シリンジ本体10aの接続側を指す矢印と「赤」文字が浮き彫りされた識別手段14aが設けられ、シリンジ本体10bの接続側を示す矢印と「青」の文字が浮き彫りされた識別手段14bが設けられている。そのため、シリンジ本体10a、10bの接続の誤りを、より防止することが可能となる。なお、本実施形態では、「赤」と「青」という文字を用いているが、本願がこれに限定されることはなく、Redの頭文字「R」とBlueの頭文字「B」を用いてもよい。また、色分けも赤と青に限らず、シリンジ本体10a、10bの色や薬液の種類等に応じて、適宜の色を用いてもよい。
【0039】
本実施形態の薬液流通管5bに設けられた連通口8a、8bについて詳細に説明する。これらの連通口8a、8bは、図3に示すように、薬液流通管5bの管壁面を、外側の幅が広く、内側の幅が狭いスリット形状である。また、薬液流通管5bの軸方向に対して交差方向であって、上流側から下流側に傾斜するように切れ込みを入れて形成されており、かつ、長手方向に平行に配置されている。そして、薬液の吐出時には、図5(a)に示すように、ガス圧よりも薬液の吐出圧の方が高いため、連通口8a、8bからガスが薬液流通管5b内に流入することがないため、薬液吐出口4bからの薬液の吐出を妨げることがなく、薬液の円滑な吐出が可能となる。また、シリンジ本体10a、10bに挿入したピストン12a、12bを、ピストン連結手段13で連結して同時に押圧することができる。そのため、薬液流通管5a、5bを流通する粘性の互いに異なる薬液を、バランスのよい吐出割合で各薬液吐出口4a、4bから吐出して患部に塗布することができ、接着性も向上する。
【0040】
さらに、薬液の吐出停止時には、図5(b)に示すように、ノズル本体1の空間1cに充填されたガスのガス圧により、連通口8a、8bが開口する。そして、この連通口8a、8bからガスが薬液流通管5b内に流入して、連通口8a、8bよりも先端側の薬液を外部に排出する。そのため、薬液流通管5bの薬液が外気や他方の薬液と触れにくくなり、次の薬液の吐出までに時間が経過しても、先端側の詰まりを防止することができる。
【0041】
上述のように構成された生体組織接着剤塗布用具100を用いて、生体の患部に噴霧して塗布するには、まずノズル本体1に、シリンジ本体10a、10bを接続する。この際には、連通口8a、8bが形成された薬液流通管5bに、粘性の高い薬液(例えば、フィブリノゲン溶液)が充填されたシリンジ本体10bを接続する。また、連通口8a、8bが無い薬液流通管5aに、比較的粘性の低い薬液(例えば、トロンビン溶液)が充填されたシリンジ本体10aを接続する。上述したように、シリンジ本体10a、10bに挿入されたピストン12a、12bに識別手段9a、9bが、ノズル本体1に識別手段11a、11bが、バンド14に識別手段14a、14bがそれぞれ設けられている。そのため、シリンジ本体10a、10bの接続位置を誤ることなく正確に接続することができる。シリンジ本体10a、10bを接続したら、バンド14の押圧部14dを押し下げて、シリンジ本体連結手段20の突起部20aを貫通穴14cに差し込むことで、シリンジ本体10a、10bとノズル本体1とを固定する。
【0042】
この固定により、薬液の噴霧中のシリンジ本体10a、10bの軸方向及び上下方向へのぐらつきを防止して、薬液噴霧を円滑に行うことができる。次に、操作ボタン(図示せず)などを操作して、ガス供給部からノズル本体1の空間1c内にガスを充填しガス噴出口6からガスを噴出する。同時に、ピストン12a、12bを連結するピストン連結手段13を押圧して、2種類の薬液を薬液流通管5a、5bに注入し、薬液吐出口4a、4bから吐出させる。この薬液吐出口4a、4bから吐出した薬液が、図5(a)に示すように、ガス噴出口6から噴出したガスによって霧状に混合されて、患部に噴霧される。この薬液の噴霧の際に、ピストン連結手段13により、ピストン12a、12bを同時に押圧することができる。したがって、2つの薬液の円滑な吐出ができるとともに、バランスのよい好適な混合割合で患部に塗布することができ、接着効果を向上させることができる。
【0043】
次いで、薬液の吐出を一旦停止した場合、ガス圧により、薬液流通管5bの連通口8a、8bからガスが流入して、この連通口8a、8bよりも先端側の薬液が、薬液吐出口4bから外部に排出される。そのため、薬液流通管5bの薬液が外気と接触しにくくなる。さらに、薬液流通管5aの薬液との混合も抑制され、薬液吐出口4a、4bでの薬液の固化を良好に防止できる。したがって、次回の薬液の噴霧を円滑に行うことができる。
【0044】
また、この薬液流通管5bからの薬液の排出の際に、逆止弁7bを設けたことにより、ガス圧が薬液供給元へ負荷されるのを防止することができる。そのため、例えば、薬液の調製時に薬液に気泡が混入する場合があるが、特許文献2に記載の発明では、この気泡にガス圧とシリンジ本体のピストンによる押圧力の両方が負荷され、気泡が圧縮される。そして、薬液吐出の停止のため、ピストンの押圧力を解除すると、圧縮されていた気泡の体積が復元する。その結果、薬液流通管内において、薬液の先端が不測に前進して、固化するおそれがあった。これに対し、本実施形態では、連通口8a、8bよりも上流側において、薬液流通管5bの後端に逆止弁7bを設けたことで、ガス圧が気泡に負荷されるのを防止することができる。したがって、気泡の圧縮が低減され、気泡の体積の復元も抑制されることとなり、薬液の先端側への不測の前進も抑制することができる。その結果、連通口8a、8bによる薬液流通管5からの薬液の排出の効果を妨げることがなく、シリンジ本体1先端の固化防止の効果を、より向上させることができる。また、このように薬液の固化の防止に優れた製品を、連通口と逆止弁を設けただけで容易に製造することができ、薬液流通管内に流入したガスがシリンジ本体側に戻らないような構造で連通口を形成するなどの微調整の必要がない。しかも、少ない部品点数で製作でき、部品間の微調整も行う必要がなく、簡易な構成で容易かつ廉価な製品を提供することが可能となる。
【0045】
<第二実施形態>
第二の実施形態にかかる生体組織接着剤塗布用具において、スリット状の連通口に略角筒状の連通管を接続した薬液流通管の一部拡大図を図6に示す。図6(a)は連通口108a、108bの内側に、ノズル本体1内部のガスを薬液吐出口4b方向に導くよう、薬液注入口3b側から薬液吐出口4b方向に傾斜するガス流路を有する連通管108c、108dをそれぞれ接続した薬液流通管105bの断面図である。図6(b)はその平面図である。なお本実施形態については種々の変形を許容する。例えば、図6(c)では連通口118a、118bの外側に、上流側から下流側に傾斜する連通管118c、118dをそれぞれ接続した薬液流通管115bの断面図である。図6(d)はその平面図である。
【0046】
このように、連通管108c、108d、118c、118dを設けて、ガス流路を薬液吐出口4b方向に向けることにより、薬液吐出の停止時に、ガスを薬液吐出口4b方向へ確実に導いて、粘性の高い薬液の排出を円滑に行うことができる。また、図6に示すように、連通管108c、108d、118c、118dの基部を厚肉とすることで、ガス流入時に、ガス圧によって閉塞することのない連通口108a、108b、118a、118bを得ることができる。また、軟質性のプラスチックや金属等を用いて、型枠成型や引抜成型等の従来手法によって、容易に薬液流通管105b、115bを形成できる。ただし、連通管108c、108d、118c、118d及び連通口108a、108b、118a、118bは、薬液の吐出時には、薬液の流通を妨げず、かつ、薬液がノズル本体1内に流出しないような構成とすることが望ましい。
【0047】
<第三実施形態>
第三の実施形態にかかる生体組織接着剤塗布用具において、略円形状の連通口に略円筒状の連通管を接続した薬液流通管の一部拡大図を図7に示す。図7(a)は連通口208a、208bの内側に、ノズル本体1内部のガスを薬液吐出口4b方向に導くよう、薬液注入口3b側から薬液吐出口4b方向に傾斜するガス流路を有する連通管208c、208dをそれぞれ接続した薬液流通管205bの断面図である。図7(b)はその平面図である。なお本実施形態については種々の変形を許容する。例えば、図7(c)では連通口218a、218bの外側に、上流側から下流側に傾斜する連通管218c、218dをそれぞれ接続した薬液流通管215bの断面図である。図7(d)はその平面図である。
【0048】
このように、連通管208c、208d、218c、218dを設けて、ガス流路を薬液吐出口4b方向に向けることにより、薬液吐出の停止時に、ガスを薬液吐出口4b方向へ確実に導いて、粘性の高い薬液の排出を円滑に行うことができる。また、図7に示すように、連通管208c、208d、218c、218dの基部を厚肉とすることで、ガス流入時に、ガス圧によって閉塞することにない連通口208a、208b、218a、218bを得ることができる。また、軟質性のプラスチックや金属等を用いて、型枠成型や引抜成型等の従来手法によって、容易に薬液流通管205b、215bを形成できる。ただし、本実施形態でも、連通管208c、208d、218c、218d及び連通口208a、208b、218a、218bは、薬液の吐出時には、薬液の流通を妨げず、かつ、薬液がノズル本体1内に流出しないような構成とすることが望ましい。
【0049】
また、上記各実施形態では、2本の薬液流通管を用いた例を示しているが、本願がこれに限定されることはなく、3本以上の薬液連通管を用いて、3液以上の薬液を吐出するような構成としてもよい。また、例えば、薬液の粘性に応じて、各薬液流通管に設ける連通口の数を変えて、粘性の高い薬液が充填されたシリンジ本体を、連通口の開口面積の和が、より広い薬液流通管から順に接続すれば、粘性に応じた薬液の排出を良好に行うことができる。
【0050】
なお、上記各実施形態では、薬液の吐出時は、連通口からガスが流入しないような構成で連通口を形成しているが、薬液吐出時にもガスが連通口から流入するようにしてもよい。特に、粘性の異なる薬液を同時に吐出する場合、このような連通口を設けた薬液流通管に、特に粘性の高い薬液を流通させることにより、薬液流通管に流入したガスのガス圧によって、この粘性の高い薬液の吐出をアシストすることができる。その結果、粘性の高い薬液と粘性の低い薬液をそれぞれ充填したシリンジ本体の吐出に必要な押圧力が均等化し、各薬液をバランスのよい吐出割合で吐出することができる。そのため、使用する薬液のバリエーションを広げることができる。
【0051】
なお、上記各実施形態では、1つのノズル本体1内に、複数の薬液流通管5a、5bを収納しているが、本願がこれに限定されることはない。例えば、他の異なる実施形態として、内部に空間を有するノズル本体は、複数の薬液流通管に対して個別に設けられてもよい。すなわち、生体組織接着剤塗布用具が複数個のノズル本体を有するものであってもよい。このような実施形態の場合、図示はしないが、各ノズル本体は、ノズル本体内部の空間内にガスを充填するためのガス注入口と、ノズル本体に設けられた薬液注入口と、ノズル本体の先端に設けられた薬液吐出口と、ノズル本体の内部に収納され、薬液注入口及び薬液吐出口を各々連通する薬液流通管と、薬液吐出口近傍に設けられ、ガス注入口からノズル本体の内部に充填されたガスを噴射し、薬液吐出口から吐出される薬液を霧状に噴霧混合するガス噴出口と、少なくとも1つの薬液流通管に設けられた連通口と、当該連通口を設けた薬液流通管に少なくとも設けられ、薬液注入口から当該薬液流通管内部への薬液の流入を許容し、当該薬液流通管内からの薬液吐出口方向への薬液の流出を規制する逆止弁と、を有する構成とする。このような生体組織接着剤塗布用具であっても、断続使用時に、薬液の吐出を停止した場合に、連通口から流入したガスのガス圧によって、粘性の高い薬液でも容易に外部に排出することができる。したがって、薬液の固化を良好に防止して、生体組織接着剤塗布用具の断続使用を円滑に行うことができる。この場合も、連通口を設けた薬液流通管に逆止弁を設けていることにより、ガスによる薬液の排出の際に、薬用流通管内のガスが各ノズル本体に連結したシリンジ本体へ流入するのを防ぐことが可能となる。
【0052】
また、上記他の実施の形態では、複数のノズル本体内に、薬液流通管が1本ずつ収納されているが、本願がこれに限定されることはない。ノズル本体を複数用いた場合であるとともに、その1つまたは複数のノズル本体に、複数本の薬液流通管を設けてもよい。この場合、連通口を設けた薬液流通管と連通口を設けていない薬液流通管とを1つのノズル本体内に設けてもよいし、各ノズル本体のすべての薬液流通管に連通口を設けてもよい。いずれの場合にも、連通口を設けた薬液流通管は勿論、連通口を設けていない薬液流通管にも逆止弁を設けることにより、薬液の噴射を停止した際の戻り圧等により、薬液流通管から薬液やガスがシリンジ本体へ逆流するのを防ぐことが可能となる。以上、連通口および逆止弁を共に備える薬液流通管を有するものであれば、他の薬液流通管に連通口や逆止弁を設けるか否かは任意である。
【0053】
なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含むものである。
【符号の説明】
【0054】
1 ノズル本体
2 ガス注入口
3a、3b 薬液注入口
4a、4b 薬液吐出口
5a、5b、105b、115b、205b、215b 薬液流通管
6 ガス噴出口
7a、7b 逆止弁
8a、8b 連通口
108a、108b、118a、118b 連通口
108c、108d、118c、118d 連通管
208a、208b、218a、218b 連通口
208c、208d、218c、218d 連通管
9a、9b 識別手段(ピストン側)
10a、10b シリンジ本体
11a、11b 識別手段(ノズル本体側)
12a、12b ピストン(押圧手段)
13 ピストン連結手段(連結手段)
14 バンド(固定手段)
14a、14b 識別手段(バンド側)
19a、19b 支持手段
20 シリンジ本体連結手段
21a、21b 支持手段カバー(識別手段)
100 生体組織接着剤塗布用具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を有するノズル本体と、
前記ノズル本体内部の前記空間内にガスを充填するためのガス注入口と、
前記ノズル本体に設けられた複数の薬液注入口と、
前記ノズル本体の先端に設けられた複数の薬液吐出口と、
前記ノズル本体の内部に収納され、複数の前記薬液注入口及び複数の前記薬液吐出口を各々連通する複数の薬液流通管と、
前記薬液吐出口近傍に設けられ、前記ガス注入口から前記ノズル本体の内部に充填されたガスを噴射し、前記薬液吐出口から吐出される薬液を霧状に噴霧混合するガス噴出口と、
前記薬液流通管の少なくとも1つに設けられ、前記ノズル本体内部と前記薬液流通管内部とを連通し、前記ノズル本体内部の前記ガスを前記薬液吐出口方向に導入する少なくとも1つの連通口と、
前記連通口を設けた前記薬液流通管に少なくとも設けられ、前記薬液注入口から当該薬液流通管内部への前記薬液の流入を許容し、当該薬液流通管内部からの前記薬液注入口方向への前記薬液の流出を規制する逆止弁と、を有する生体組織接着剤塗布用具。
【請求項2】
前記薬液流通管は、前記連通口を管壁面の長手方向に複数個有する請求項1に記載の生体組織接着剤塗布用具。
【請求項3】
前記連通口は、前記薬液流通管ごとに、前記連通口の開口面積の和が、それぞれ異なる請求項1または2に記載の生体組織接着剤塗布用具。
【請求項4】
粘性の異なる前記薬液が充填され、複数の前記薬液注入口の各々に接続する複数のシリンジ本体を、さらに有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体組織接着剤塗布用具。
【請求項5】
粘性のより高い前記薬液が充填された前記シリンジ本体を、前記連通口の前記開口面積の和がより広い前記薬液流通管に接続する請求項4に記載の生体組織接着剤塗布用具。
【請求項6】
粘性の異なる前記薬液が充填されたシリンジ本体を接続する前記薬液流通管を識別するための識別手段を、さらに有する請求項4または5に記載の生体組織接着剤塗布用具。
【請求項7】
複数の前記シリンジ本体は、内部に充填される前記薬液を、各薬液流通管内部に注入するための押圧手段と、
複数の当該押圧手段を連結して同時に押圧するための押圧手段連結手段と、をさらに有する請求項4〜6のいずれか一項に記載の生体組織接着剤塗布用具。
【請求項8】
複数の前記シリンジ本体を連結するシリンジ本体連結手段と、
前記ノズル本体及び前記シリンジ本体連結手段を、互いに固定する固定手段と、をさらに有する請求項7に記載の生体組織接着剤塗布用具。
【請求項9】
前記連通口は、前記薬液流通管の管壁面における形状が、前記薬液流通管の軸方向と交差する方向に延在するスリット状である請求項1〜8のいずれか一項に記載の生体組織接着剤塗布用具。
【請求項10】
前記スリット状の連通口は、側面形状が前記薬液流通管の前記薬液注入口側から前記薬液吐出口方向に傾斜し、かつ、前記管壁面の外側の開口幅よりも、内側の開口幅が狭くなるよう、前記管壁面を切り欠いて形成された請求項9に記載の生体組織接着剤塗布用具。
【請求項11】
前記連通口には、管壁面の内側または外側に、前記ノズル本体内部の前記ガスを前記薬液吐出口方向に導くよう、前記薬液注入口側から前記薬液吐出口方向に傾斜するガス流路を有する連通管が形成された請求項1〜10のいずれか一項に記載の生体組織接着剤塗布用具。
【請求項12】
前記薬液流通管は、軟質性のプラスチックチューブで形成された請求項1〜11のいずれか一項に記載の生体組織接着剤塗布用具。
【請求項13】
内部に前記空間を有する複数の前記ノズル本体が、複数の前記薬液流通管に対して個別に設けられた請求項1〜12のいずれか一項に記載の生体組織接着剤塗布用具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−100851(P2012−100851A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251515(P2010−251515)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【出願人】(000173555)一般財団法人化学及血清療法研究所 (86)
【Fターム(参考)】