説明

生体膜素子およびその製造方法

【課題】本発明は幾何学的表面微細構造が形成された基底基板を利用した脂質二分子膜のうちの特定脂質領域の成長及び分布を調節する方法、前記方法によって調節できる脂質二分子膜を有する生体膜素子の製造方法、及びこれによって製造された生体膜素子に関する。
【解決手段】基底基板上に形成された幾何学的微細構造によって、脂質二分子膜に弾性自由エネルギーが誘導され、これによって、脂質二分子膜のうちの局所的部位での特定脂質領域の成長誘導、成長抑制または分布の調節が可能となる。
本発明によって形成された特定脂質領域の一つである脂質ラフトは、病気誘発及び生体信号伝達に重要な役割を果たす生体細胞膜の特定脂質領域として、本発明の生体膜素子は生体内と類似する環境での膜蛋白質の研究を可能にして、膜蛋白質の研究自体はもちろん、これにより生体信号伝達の研究に非常に有効に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は幾何学的表面微細構造が形成された基底基板を利用した脂質二分子膜のうちの特定脂質領域(膜ミクロドメイン)の成長及び分布を調節する方法、前記方法によって調節できる脂質二分子膜を有する生体膜素子の製造方法、及びこれによって製造された生体膜素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲノム研究によって、人間の塩基配列が明らかになった後、生命科学分野の多くの研究が蛋白質に集中している。これは、ゲノム研究によって、殆どの遺伝子配列が明らかになったにもかかわらず、遺伝子に関して糾明された前記塩基配列からは、実際細胞内で機能を遂行する蛋白質の構造とその機能を把握することがかなり難しいためである。このような困難は、蛋白質の機能発現において、遺伝子の塩基配列によって決定される蛋白質の1次構造よりは、特殊な条件下での折畳み(フォールディング)という過程により得られる蛋白質の3次構造がより重要な役割を果たすためである。蛋白質の機能と関連する蛋白質3次構造の重要性は、特に、外部環境または遺伝的要因によって蛋白質の3次構造がうまく形成できない場合に現れる疾患の発生によって証明される。
【0003】
前記のように、蛋白質構造の変形が疾患発生と関連する蛋白質を疾患誘発蛋白質という。従って、疾患誘発蛋白質は疾患発生機構の理解及びこれに対する治療剤開発において、重要な対象となっている。
【0004】
従来の研究対象となった疾患誘発蛋白質は、主に細胞内部に存在する水溶性蛋白質であり、この中でも特に、蛋白質の分解、合成またはリン酸化に関与して、蛋白質の活性を調節するプロテアーゼ、フォスファターゼ、及びキナーゼなどを中心として研究が行われた。しかし、実際疾患誘発蛋白質の殆どは、膜蛋白質と呼ばれる細胞膜に存在する特殊な蛋白質であり、これに対する研究は水溶性蛋白質と比べて、非常に低調である。これは、分子レベルでの蛋白質の機能を糾明するためには純粋な形態に精製された蛋白質の分離を前提としなければならないが、膜蛋白質の場合はそのようにできないためである。水溶性蛋白質の場合は、遺伝工学的方法を利用した大量生産が比較的容易であり、生産された蛋白質を精製する技術が確立されており、一般の実験溶液を用いた実験が可能である。一方、膜蛋白質の場合は、まだ大量生産方法が確立されておらず、研究を行うためには生体内細胞膜のような条件を要するため、研究を進めるには多くの問題がある。例えば、蛋白質構造糾明分野において、水溶性蛋白質の場合、約2万種以上の立体構造が糾明されているが、膜蛋白質はわずか20種類の構造しか明らかにされておらず、膜蛋白質研究の難しさを示している。
【0005】
このような膜蛋白質の精製、生産及び研究の困難は、膜蛋白質の構造及び細胞内の位置とも深い関係がある。膜蛋白質の構造は、大別して、細胞膜、つまり、脂質二分子膜の外部に露出された部位の親水性部分と脂質膜内部に存在する疎水性部分の二つの部分で構成される。従って、膜蛋白質は親水性の部分と疎水性の部分が複合的に存在する生体内細胞膜を模倣した環境に置かれることにより初めて、正確な3次構造が形成され、その機能研究が可能になる。このため、水溶性蛋白質とは異なって、膜蛋白質の研究のためには、疎水性空間と親水性空間が複合的に存在する細胞の脂質二分子膜を模倣した環境を要する。
【0006】
しかし、生体外部で親水性構造と疎水性構造を同時に有する膜蛋白質の構造及び機能の研究に適した環境を提供することはかなり難しいことであり、従来から、界面活性剤を利用して細胞膜成分を抽出し、このような環境を提供しようとする努力があったが(非特許文献1)、満足できる結果は得られなかった。
【0007】
一方、最近、膜蛋白質の構造及び機能研究に重要な影響を与え得る、生体細胞膜中の脂質及び膜蛋白質の分布並びに漂動(drift)に関する新たな事実が発見された。従来は、脂質二分子膜構造を有する細胞膜から横方向に分布する膜蛋白質が認められたが、最近になって、膜蛋白質を含む細胞膜の中のすべての要素が均一に分布するという流動モザイク理論が定説として広く知られるようになってきた。
【0008】
しかし、一方で、膜蛋白質が細胞膜中で均一分布するのではなく、特定脂質領域、例えば、脂質ラフト(raft)等と重要な相互作用をするという理論が提起され、多くの研究により、事実として認められた(非特許文献2〜5)。
【0009】
従って、膜蛋白質が細胞の全機能にわたって非常に重要な役割を果たしていることを考慮すると、脂質ラフトを含む特定脂質領域が中心的な役割を果たす機能は、細胞間信号伝達、細胞の空間的漂動を助ける方向性分極、細胞間融合、イオンの伝達と透過など、 多岐に亘ると考えられる。最近は、脂質ラフト領域が老人性痴呆の原因となるアミロイドベータの蓄積、狂牛病の原因のプリオン蛋白質の形成、ストレス認知など人間の病気とも密接に関係していることが明らかになって、その重要性が更に増している(非特許文献6)。
【0010】
従って、膜蛋白質の構造及び機能を一層体系的に研究するためには、生体外でも膜蛋白質が生体内と類似の作用をして、自らの機能を十分に発揮できる特定脂質領域を含む細胞の脂質二分子膜と類似した生体外細胞膜システムが必要である。また、前記細胞膜システムに含まれている特定脂質領域は生体内のようにその成長及び空間的分布、つまり、分布を調節可能にするべきである。しかし、現在、脂質ラフト領域を含む二重異質膜のうちの特定脂質領域の成長及び分布が精密に調節できる細胞の脂質二分子膜と類似する生体外細胞膜システムは存在しない。
【0011】
従来、通常の脂質ラフト領域を分析するためには、脂質ラフト領域が含まれている脂質膜全体をTritonX−100のような洗剤を用いて抽出して、ラフト領域のみを分離し、その他の脂質膜の部分は全部分解させる破壊的な方法が使用された。しかし、このような抽出過程は必ず脂質膜全体を用いて抽出するため、脂質ラフトに対する空間的な選択性が全くなく、また、抽出過程で抽出程度を精度良く制御することが非常に難しい。特に、脂質ラフト領域と共にラフト領域以外の脂質膜部分を保持しながら、ラフト領域の大きさと位置を精度良く制御できる方法は全く無いのが実情である(非特許文献7〜8)。
【特許文献1】逆相(reverse−phase)気化小胞(REV)、米国特許第4、235、871号明細書
【特許文献2】安定な多層ラメラ小胞(SPLV)、Lenk et al.、Stable Plurilamellar Vesicles、Their Preparation and Use.、米国特許第4、522、803号明細書
【特許文献3】大きい多層ラメラ小胞、Cullis et al.、Extrusion Technique for Producing Unilamellar Vesicle.、国際公開WO87/00238号パンフレット
【非特許文献1】C.Dietrich, et al., Lipid raft reconstituted in model membranes.,Biophys.J.80,1417−1428(2001)
【非特許文献2】Simons K. and Toomre D.,Lipid rafts and signal transduction.,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.1,31−41(2000)
【非特許文献3】Brown D.A.and London E.,Structure and function of sphingolipid−and cholesterol−rich membrane rafts.,J.Biol.Chem.275,17221−17224(2000)
【非特許文献4】London E.,Insights into Lipid Domain/Raft Structure and Formation from Experimentsin Model Membranes.,Curr.Opin.Struct.Bio.,12,480−486(2202)
【非特許文献5】Simons K.,Winchil L.C.,Vaz.Annual Review of Biophysics and Biomolecular Structure,Vol.33,Pages 269−295(2004)
【非特許文献6】Joanna M.Cordy,Ishrut Hussain,et al.,Exclusively targeting β−secretase to lipid rafts by GPI−anchor addition up−regulates β−site processing of the amyloid precursor protein.,PNAS 100,11735−11740(2003)
【非特許文献7】Thomas J.Mclntosh et al.,Sorting of lipid and transmembrane peptides between detergent−soluble bilayers and detergent−resistant rafts.,Biophys.J.85,1656−1666(2003)
【非特許文献8】Adriana Vidal and Thomas T.Mclntosh,Transbilayer peptide sorting between raft and nonraft bilayers:Comparisons of detergent extraction and confocal microscopy.,Biophys.J.89,1102−1108(2005)
【非特許文献9】R.G.W.Anderson and K.Jacobson,A Role for Lipid Shells in Targeting Proteins to Cavelolae,Rafts,and other Lipid Domains.,Science,296,1821−1825(2002)
【非特許文献10】Arun Radhakrichnan and Harden McConnell,Condensed compleses in Vesicles containing cholesterol and phospholipids.,PANS 102,12662−12666(2005)
【非特許文献11】Byron D.Gates and George M.Whitesides,Replication of vertical features smaller than 2nm by soft lithography.,J.Am.Chem.Soc.,125,14986−14987(2003)
【非特許文献12】J.Marra and J.Israelachvili,Direct Measurements of Forces between Phosphatidylcholine and Phosphatidylethanolamine Bilayers in Aqueous Electrolyte Solutions.,Biochemistry,24,4608−4618(1985)
【非特許文献13】L.K.Tamm and H.M.McConnell,Supported phospholipid bilayers.,Biophys.J.,47,105−113(1985)
【非特許文献14】W.M.Choi and O.O.Park,Soft−imprint technique for multilevel microstructures using poly(dimethyl siloxane)mold combined with a screen mask.,Appl.Phys.Lett.,85,3310−3312(2004)
【非特許文献15】D.Braun and P.Fromherz,Fluorescence Interferometry of Neuronal Cell Adhesion on Microstructured Silicon.,Phys.Rev.Lett.,81,5241−5244(1998)
【非特許文献16】Y.Zhao,C.C.Lim,D.B.Sawyer,R.Liao,X.Zhang,Micro chip for subcellular mechanics study in living cells.,Sensors and Actuators B,114,1108−1115(2006)
【非特許文献17】Y.Fua and N.K.A.Bryan,Fabrication and characterization of slanted nanopillars array.,J.Vac.Sci.Technol.B,23,984−989(2005)
【非特許文献18】H.K.Taylor et al.,Characterizing and Predicting Spatial Non−uniformity in the Deep Reactive Ion Etching of Silicon.,J.Electrochem.Soc.153,C575(2006)
【非特許文献19】M.S.Chenetal,Structure of thin SiO2 films grown on Mo(112).,Phys.Rev.B69,155404(2004)
【非特許文献20】Jennifer S.Hovis et al.,Patterning barriers tolateral diffusion in supported lipids bilayer membranes by blotting and stamping.,Langmuir 16,894−987(2000)
【非特許文献21】小さい単層ラメラ小胞(SUV)、Papahadjopoulos and Miller,Biochem.Biophys.Acta.,135,624−638(1967)
【非特許文献22】Cooper M.A.,Advances in Membrane Receptor Screening and Analysis.,J.Mol.Recognit.17,286(2004)
【非特許文献23】Sackmann E.,Supported Membranes:Scientific and Practical Applications.,Science,271,5245(1996)
【非特許文献24】Charitat T.et al.,Eur.Phys.J.B.8,583(1999)
【非特許文献25】Yoon T−Y.et al.,Topographic control of lipid−raft reconstitution in model membrane.,Nature Materials,5:281−285(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、基底基板に形成された表面微細構造により、脂質二分子膜に損傷を与えずに、脂質二分子膜での特定脂質領域の局所的な成長と分布をマイクロメートルレベルで精密に制御できる方法、前記方法によって、調節できる脂質二分子膜を有する生体膜素子の製造方法及びこれによって製造された生体内の脂質二分子膜と類似した生体外細胞膜システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するために、本発明は(i)基底基板上に幾何学的表面微細構造を形成する段階;及び(ii)前記基底基板の幾何学的表面微細構造上に、特定脂質領域を有する脂質二分子膜を形成する段階を含み、前記特定脂質領域は、前記幾何学的表面微細構造によって、成長及び分布の調節ができることを特徴とする生体膜素子製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は基底基板上に形成された脂質二分子膜のうちの特定脂質領域の成長及び分布を調節する方法であって、幾何学的表面微細構造が形成された基底基板を用いることを特徴とする特定脂質領域の成長及び分布を調節する方法を提供する。
【0015】
また更に、本発明は幾何学的表面微細構造が形成された基底基板、前記基板上に位置する脂質二分子膜及び特定脂質領域を含み、前記幾何学的表面微細構造によって、前記脂質二分子膜に弾性自由エネルギーの変化が誘発されて、前記脂質領域の成長及び分布が調節できることを特徴とする生体膜素子を提供する。
【0016】
本発明はまた、前記基底基板の幾何学的表面微細構造が幾何学的壁、平坦領域及び屈曲領域から選択される一つ以上の構造を含むことを特徴とする方法、または前記方法によって形成された生体膜素子を提供する。
【0017】
本発明はまた、前記基底基板の幾何学的表面微細構造が屈曲領域及び平坦領域を含むことを特徴とする方法、または前記方法によって形成された生体膜素子を提供する。
【0018】
本発明はまた、前記基底基板の幾何学的表面微細構造が屈曲領域、平坦領域、及び前記屈曲領域と平坦領域との境界に形成された幾何学的壁を含むことを特徴とする方法、または前記方法によって形成された生体膜素子を提供する。
【0019】
本発明はまた、前記屈曲領域が脂質領域の成長抑制部位に作用し、前記平坦領域が成長誘導部位に作用し、前記幾何学的壁が分布防止部位に作用することを特徴とする方法または前記方法よって形成された生体膜素子を提供する。
【0020】
本発明はまた、前記脂質領域の成長及び分布の調節が脂質二分子膜のうちの特定部位への脂質領域の漂動、特定部位での脂質領域の成長、局所的分布、または空間的閉じ込めを含むことを特徴とする方法または前記方法によって形成された生体膜素子を提供する。
【0021】
本発明はまた、前記幾何学的表面微細構造が前記脂質二分子膜に弾性自由エネルギーの変化を生じることを特徴とする方法、または前記方法によって形成された生体膜素子を提供する。
【0022】
本発明はまた、前記弾性自由エネルギーの変化量が表面粗度の実効値または空間周波数の変化量を用いて、算出されることを特徴とする方法、または前記方法によって形成された生体膜素子を提供する。
【0023】
本発明はまた、前記段階(i)の前記幾何学的表面微細構造はエッチング、スタンピング、光照射法及び蒸着方法のうちのいずれか一つ以上の方法を用いて形成されることを特徴とする方法、または生体膜素子を提供する。
【0024】
本発明はまた、前記段階(ii)の前記脂質二分子膜が、単一または多重生体膜小胞を親水性表面で破裂させた後に融合する方法、単一または多重生体膜小胞を親水性表面で固定する方法、細胞から抽出した脂質二分子膜を親水性表面に固定する方法、または空気−水界面に形成された単一脂質膜からラングミュア−ブロジェット(Langmuir−Blodgett)法若しくはラングミュア−シェファー(Langmuir−Schaeffer)法により形成する方法のうち、一つ以上の方法を使って形成されることを特徴とする方法、または生体膜素子を提供する。
【0025】
本発明はまた、前記基底基板は、雲母、黒鉛、二酸化ケイ素、金属ケイ素を含む物質で形成されたウエハー、ポリジメチルシロキサン(PDMS)若しくは有機ケイ素重合体を含む高分子物質、ガラス、またはプラスチックであることを特徴とする方法、または生体膜素子を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の生体膜素子は、実際の細胞膜でのように脂質ラフトの分布及び成長の調節ができ、脂質二分子膜の特定位置にこれを成長させることで、病気誘発などと関連する生体信号伝達の研究を含む膜蛋白質の研究に有効に用いることができると共に、膜蛋白質が含まれている脂質二分子膜応用分野に多様に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0028】
本発明者らは生体膜模倣システムにおいて、幾何学的微細表面構造が形成された基板を用いて、前記基板上に形成された脂質二分子膜のうちの特定脂質領域(例えば、脂質ラフトのようないわゆる膜ミクロドメイン)の成長及び分布の調節ができることを発見して、本発明を完成した。具体的には、幾何学的表面微細構造上に形成された脂質二分子膜は、その固有の2次元的性質によって、幾何学的表面微細構造の表面をそのままに沿って形成されるように見える。しかし、対向する面が完全に密着するのではなく、例えば、図1に示したように、基底基板が幾何学的壁を含む場合、脂質二分子膜の屈曲境界に弾性変形(白線で表示された部分)が発生して、脂質二分子膜は屈曲境界で緩やかに弾性変形する。従って、基底基板の幾何学的表面微細構造を変えると、それに基づいて脂質二分子膜に精巧な弾性変形を誘導できて、特定脂質膜領域、例えば、脂質ラフトがこのような幾何学的表面微細構造により分布や移動において他の反応を示すことを発見して、成長及び分布の調節ができる特定脂質膜領域、例えば、脂質ラフトを含む脂質二分子膜を有する生体膜模倣装置システムに関する本発明を完成した。
【0029】
このような観点から、本発明は(i)基底基板に幾何学的表面微細構造を形成させる段階;及び(ii)前記基底基板の幾何学的表面微細構造上に、特定脂質領域を有する脂質二分子膜を形成する段階を含み、前記特定脂質領域は前記幾何学的表面微細構造によって、成長及び分布の調節ができることを特徴とする生体膜素子製造方法または前記方法によって形成された生体膜素子を提供する。
【0030】
本明細書で使用する用語、「特定脂質領域」は脂質二分子膜の中で形成されたコレステロールとスフィンゴリピド(sphingolipid)とが豊富な領域を言うものであって、長くまっすぐ伸びて、動きが少ない炭化水素鎖を有する、スフィンゴミエリン(sphingomyelin)のような脂質が、コレステロールのようなステロール要素を媒介として固まって形成される領域である。本発明の特定脂質領域は、例えば、カベオレ(Caveolae)、脂質ラフト(lipid−raft)領域など、非特許文献9に記載された各種領域を含むが、これに限定するものではない。特定脂質領域は脂質二分子膜に存在する他の部位に比べて、非常によく整列された炭化水素鎖を含み、このような高い整列度は膜蛋白質との相互作用に非常に適した環境を提供するようになる。その結果、多くの膜蛋白質は脂質二分子膜で横方向への分布を通して漂動しながら、このような脂質領域に入ってくると、その領域内に閉じ込められて、結果的に特定脂質領域は他の脂質二分子膜の部分に比べて、膜蛋白質の分布が非常に高くなる。本発明の一つの形態において、前記特定脂質領域は脂質ラフトである。
【0031】
前記方法は段階(ii)で行われる熱処理段階を付加的に含む。前記脂質二分子膜の形成に用いられる脂質の転移温度が異なっているため、脂質二分子膜の効果的な形成のために、脂質二分子膜の形成に用いられる具体的脂質の種類によって、基底基板を熱処理することができる。前記熱処理は、技術分野の公知の方法で行うことができ、例えば非特許文献10等に記載された方法を用いてもよい。
【0032】
本発明の生体膜素子及びその製造方法は、単一または脂質二分子膜を支持できる支持体(つまり基底基板)の使用を含む。基底基板は単一または脂質二分子膜が付着できる範囲内ならば、特定物質で形成されたものに限らず、単一または脂質二分子膜の支持体として用いられる技術分野の多様な基底基板を本発明に用いることができる。前記基底基板上に幾何学的表面微細構造を直接形成することもできるが、そうでない場合、固形の支持体として構成される下層と、幾何学的表面微細構造を形成できる上層とから構成される2層基本構造を含むことができる(図2の(a)参照)。また、下層の基底基板が疎水性の場合、親水性の膜を付着させるために親水性処理された上層を有する2層構造の基底基板を用いることができる。一方、基底基板上に単一脂質膜を付着させて用いる場合は、疎水性の基底基板を親水性にする処理手順を通らず、そのまま使用することができる。前記のように2層の構造を有する基底基板の場合、上層及び下層の製造には同一、または異なる物質の多様な組み合わせを用いることができ、このような単層または2層構造の基底基板の製造に用いられる物質は、例えば、雲母、黒鉛、二酸化ケイ素、または金属ケイ素などを含むが、これらに限定されない。このような物質で形成された基底基板は、例えば、雲母、ガラス、水晶などで形成されたウエハー、またはPDMSや有機ケイ素重合体を含む高分子物質、ガラスまたはプラスチックを含むが、これらに限定されない。これら基底基板に関する追加事項に関しては、非特許文献11(PDMS)、非特許文献12(雲母)、非特許文献13(ガラス、水晶、金属ケイ素)を参照できる。特に、本発明の生体膜素子またはその製造方法において蛍光染料と一緒に使用する場合は、基底基板の上層及び下層に用いられる各々の物質の特性を考慮して、屈折率差を最小にする組み合わせを選択するのが望ましく、屈折率差のない同一物質の使用が最も望ましい。本発明の例示的な具体例では、このような条件を満足する形態として、固形支持体である水晶ウエハー上に親水性SiOを蒸着させて用いた。
【0033】
本明細書に記載された用語「幾何学的表面微細構造」は、基底基板の上層表面に形成された任意の表面構造の変化をいう。脂質ラフトの成長及び分布を調節するために、ナノサイズ乃至マイクロサイズの微小構造、例えば、多様な幾何学的表面微細構造から選ばれた、任意の表面形状を本発明の調節手段として選択的に用いることができる。このような本発明に用いることができる幾何学的表面微細構造は、幾何学的壁、屈曲領域及び平坦領域(図4参照)を含むが、これらに限定されることはない。幾何学的壁の場合、物質の成長を防ぐ壁の役割を果たし、屈曲領域の場合は一定の大きさ以上の領域での成長を抑制し、平坦領域の場合は屈曲領域に比べて領域の成長できる環境を作って指定された領域にラフト領域を形成できるようにする。例えば、非特許文献14〜17に記載されたような幾何学的微細構造を本発明に採用することができる。
【0034】
本発明の一実施形態で、本発明の基底基板に形成される幾何学的表面微細構造は、幾何学的壁、平坦領域及び屈曲領域から選択される一つ以上の構造を含んでもよい。他の例で、本発明の基底基板に形成される幾何学的表面微細構造は屈曲領域及び平坦領域を含んでもよい。また、他の例で、本発明の基底基板に形成される幾何学的表面微細構造は屈曲領域、平坦領域、及び前記屈曲領域と平坦領域との境界に形成された幾何学的壁を含んでもよい。
【0035】
基底基板上の幾何学的表面微細構造は、前記基底基板の上層に使用される物質の特性を考慮して、本技術分野で広く知られた多様な方法で形成されることができ、特に、基板に脂質二分子膜の付着ができる表面特性を与えられるように形成されなければならない。例えば、幾何学的表面微細構造を形成する方法は、エッチング、スタンピング、光照射法及び蒸着法などを含むが、これらに限定されず、前記方法に関する詳しい事項及び追加可能な方法は非特許文献18〜20を参照できる。
【0036】
本発明の一実施形態で、前記幾何学的表面微細構造は、スタンピング、光照射法及び蒸着方法のうち一つ以上を用いて形成できる。本発明の一例示的具現例では図2の(a)に示したように水晶ウエハー1(結晶方向:(100))及び上層に親水性のSiO 2を公知の方法通りに蒸着して基底基板を形成した。その後、図2の(b)に示したように、一般的な写真エッチング工程によってフォトレジストのパターン3を得た後、酸化ケイ素(SiO)層をフッ化水素(HF)でエッチングした後、フォトレジストを除去して、図2の(c)に示したように全体的にフッ化水素でエッチングして、図1に示したような幾何学的表面微細構造を得ることができる。このような方法によって形成された実際幾何学的表面微細構造を有する基底基板の走査電子顕微鏡写真を図2の(d)に示した。
【0037】
前記のように形成された幾何学的表面微細構造は、その表面に付着された脂質二分子膜に弾性変形を誘導しながら、これによって、脂質二分子膜に弾性自由エネルギーの変化が生じ、これは脂質の成長及び分布に対するエネルギー障壁として作用して、脂質二分子膜のうちの特定脂質領域、例えば、脂質ラフト領域の成長及び分布の調節ができることを、本発明により、理論的にかつ実際にこのような調節が可能な生体膜素子を形成したことを証明した(実施例参照)。本理論で限定しようとするものではないが、これは幾何学的表面微細構造、例えば、屈曲境界による弾性変形により生じる脂質ラフト領域の分子当りの自由エネルギー増加が、脂質ラフト領域の成長により生じる分子当りの化学的ポテンシャル減少の絶対値より数kT以上に大きいためである(注:kはボルツマン定数を意味し、1.3806505×10−23J/Kの値を有する。Tは実際の温度を示し、単位は絶対温度K(Kelvin)である。従って、kTは実際の温度に応じたエネルギーを示し、普通、常温(20℃)程度でTは293K程度であるため、エネルギーは4.045×10−21J程度となる)。このような弾性変形による脂質ラフト領域の自由エネルギーの著しい増加は、ラフト領域のみで見出される炭化水素鎖の高い整列度による大きな弾性係数に起因すると考えられる。このような基底基板上に形成された表面微細構造によって、脂質二分子膜に生じた弾性自由エネルギーの変化量は、この技術分野で広く知られた方法、例えば、表面粗度の実効値または空間周波数の変化量を用いて算出できるが、これに限定されるものではない。
【0038】
このような観点から、本発明の一実施形態で幾何学的表面微細構造の一つの屈曲領域は、脂質ラフトの成長抑制部位として作用し、他の種類の平坦領域は成長誘導部位として作用し、また他の種類の幾何学的壁は分布防止部位として作用する。このような幾何学的表面微細構造による特定脂質領域、例えば、脂質ラフトの成長及び分布の調節は、脂質二分子膜のうちの脂質ラフトの漂動(drift)、特定部位への誘導、局所的分布、または空間的閉じ込めを含むが、これらに限定されない。図3は、図2と同じ方法で形成した幾何学的表面微細構造を有する基底基板上に、時間を経過させることにより形成された脂質ラフト領域の蛍光顕微鏡写真を示したものであって、周辺の流体状態の脂質膜とは異なって、ラフト領域は幾何学的微細構造によって形成された屈曲境界を全く通り過ぎることができないことを示している。
【0039】
従って、本発明の一実施形態によると、このような自由エネルギー障壁は生体膜で脂質ラフトの分布や流れに対する調節を可能にするだけでなく、指定された場所での成長誘導及び/または抑制も可能にする(図3及び4参照)。従って、本発明の他の実施形態によると、本発明の方法を使用して、四つの噛み合う屈曲境界とその境界に囲まれた四角形井戸構造を利用して、生体膜の特定脂質領域の脂質ラフトを2次元空間的に井戸の中で成長させた後、井戸外部に分布をされることを防止して、局所化された場所での脂質ラフトの形成を誘導できる。この場合、四角形井戸の内側は平坦領域であり、井戸の外側は屈曲領域である。井戸の内外にはマイクロメートルレベルの段差を持つ屈曲境界が形成されている(図6及び7参照)。
【0040】
従って、他の観点から、本発明は基底基板上に形成された脂質膜のうちの脂質ラフトの成長及び分布を調節する方法において、幾何学的表面微細構造が形成された基底基板を用いることを特徴とする、脂質膜のうちの特定脂質領域、例えば、脂質ラフトの成長及び分布を調節する方法も提供する。
【0041】
本発明により形成された脂質ラフト領域は、実際の細胞内と同様に、生体内信号伝達に重要な機能をする蛋白質と選択的に相互作用することが明らかになって、その優れた効果が立証された(実施例及び図7参照)。これは、本発明により製造された生体膜素子が、脂質ラフト上で、細胞膜を経由した信号伝達に関与しながら、細胞内機能調節に重要な役割を果たす多様な蛋白質との選別的結合を可能にするということによって、本発明の生体膜素子の製造方法及びそれによって製造された生体膜素子が疾患の発生機構などの研究に有用に使用される可能性があることを示している。当業者ならば、脂質ラフトが細胞で行われる特定機能により、これに含まれる脂質の種類が異なったり、または、そのためにこれと相互作用する蛋白質の種類が多様であることを理解しており、本発明の生体膜素子が特定脂質ラフト及び特定蛋白質だけに適用可能ではないことも、当業者なら明確に理解することができることである。本発明の一例示的具体例では、コレラ毒素Bサブユニット(cholera toxin subunit B)蛋白質を使って脂質ラフト領域での特定蛋白質との選別的結合を実証した(実施例3参照)。
【0042】
本明細書に使用された用語「脂質二分子膜」は、疎水性尾部と親水性頭部で構成された、例えば、リン脂質のような脂質分子が規則的に整列して、形成された膜の二分子層を意味し、天然由来の生体細胞膜及びその他生物学的膜で発見される膜及び人工的に合成された膜全てを含む。前記脂質二分子膜の各単一膜を構成する脂質分子の疎水性尾部は膜の中心に向かっており、親水性の頭部は水性面に向かい、このような脂質分子はリン酸の頭部とアシル基の尾部を有するリン脂質に代表される。
【0043】
本発明の生体膜素子の製造方法、またはこれによって製造された生体膜素子に用いることができる脂質膜は、天然または合成の単一または脂質二分子膜を含み、脂質膜の製造に使用される天然または合成由来の多様な脂質を用いることができる。脂質膜の製造時に、必要に応じて、流体状の細胞膜の成分及び特定脂質領域、例えば、脂質ラフトと同じ領域の形成を可能とする成分を適当な比率で混合して使用することができる。当業者ならば、生体で細胞の種類及び機能により細胞膜に含まれている脂質成分が多様で、脂質ラフトを含む多様な特定脂質領域が存在することを理解しており、生体外細胞膜システムの使用時に、その目的に合わせて、これに含まれている脂質膜の構成成分の種類と比率も変わることは当業者に明確に理解できることである。従って、当業者ならば、脂質膜の使用目的に合わせて、適切な脂質成分及びその比率の選択が可能であろう。
【0044】
本発明に用いることができる脂質は、例えば、ホスファチジルコリン(PC:Phosphatidylcholine、常用名:レシチン(Lecithin)、ホスファチジルエタノールアミン(PE:Phosphatidylethanolamine)、ホスファチジルセリン(PS:Phosphatidylserine)、ホスファチジルグリセロール(PG: Phosphatidylglycerol)、ホスファチジン酸(PA:Phosphatidic acid)、ホスファチジルイノシトール(PI:Phosphatidylinositol)、スフィンゴミエリン(SPM:Sphingomyelin)、カルジオリピン(Cardiolipin)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA:Dimyristoylphosphatidic acid)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC:Dimyristoylphosphatidylcholine)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA:Dipalmitoylphosphatidic acid)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS:Dioleoylphosphatidylserine)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS: Dimyristoylphosphatidylserine)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS: Dipalmitoylphosphatidylserine)、ジオレオイルホスファチジン酸(DOPA: Dioleoylphosphatidic acid)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE: Dioleoylphosphatidylethanolamine )、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC: Dipalmitoylphosphatidylcholine)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC: Distearoylphosphatidylcholine)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC: Dioleoylphosphatidylcholine)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG: Dipalmitoylphosphatidylglycerol)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG: Dimyristoylphosphatidylglycerol)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG: Dioleoylphosphatidylglycerol)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC: Dipalmitoylphosphatidylcholine)を含むが、これらに限定されない。また、生体組織の細胞から総脂質を当業界の公知された方法で抽出して、それ自体、または目的に応じて多様な合成または天然の脂質成分を多様な比率で組み合わせて用いることができ、これは当業者の技術水準内である。本発明の一つの例示的具現例では、脂質ラフトの成分としてスフィンゴミエリン(SPM)とコレステロール、流体状態の細胞膜に該当する成分としてはジオレオイルホスファチジルコリン(dioleoylphosphatidyl choline)を1:1:1のモル比で混合して使った。
【0045】
本発明による生体膜模倣システムに用いることができる、このような多様な成分を含むことができる脂質膜は、単一または多重の脂質二分子膜で構成された小胞、あるいは空気と水の境界表面に形成された単一脂質膜または脂質二分子膜の形態で形成されて、本発明の基底基板に適用される。これらを製造する方法は、当業界に公示されており、例えば、次を参照することができる:
非特許文献21:小さい単層ラメラ小胞(SUV)
特許文献1:逆相(reverse−phase)気化小胞(REV)
特許文献2:安定する多層ラメラ小胞(SPLV)
特許文献3:大きい多層ラメラ小胞。
【0046】
本発明による生体膜模倣システムに用いることができるという特徴を有する単一または脂質二分子膜は、技術分野で公知の多様な方法を用いて、本発明の基底基板上に形成することができる(例えば、非特許文献22〜24)。このような方法は、例えば、単一または多重脂質二分子膜で構成された小胞(vesicle:ベシクル)を親水性表面を有する基板面で破裂させた後に融合する方法、単一または多重の脂質二分子膜小胞を親水性連結体またはビオチニルが付着された収容体を使って固定する方法、生体組織から得た細胞の脂質を抽出して、これを親水性連結体またはビオチニルを付着した収容体を使って固定する方法、空気と水の境界表面に形成された単一脂質膜を順次に基板上に形成するラングミュア−ブロジェット(Langmuir−Blodgett)またはラングミュア−シェファー(Langmuir−schaeffer)法を含むが、これらに限定されない。
【0047】
以下、本発明の理解のために実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより簡単に理解するために提供するもので、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
実施例1.本発明による生体膜素子の製造
実施例1−1.幾何学的表面微細構造を有する基底基板の製造。
【0049】
本発明の幾何学的微細構造を有する基板を非特許文献25に記述された通り製作した。
【0050】
要約すると、図2の(a)に示したように、水晶ウエハー1(結晶方向:(100))の上層に親水性のSiO 2を1.5μm厚さで蒸着した。このような構造は水晶ウエハーとSiOとの間の非常に小さい屈折率差のために(最大屈折率差:0.08)不要な干渉効果を最小限にする。このような干渉効果は、蛍光染料を利用したすべての実験で非常に大きいノイズとして作用するため、できれば最小限に抑えるのが望ましく、基板もこれを考慮して選ばなければならない。図2の(b)に示したように、一般の写真エッチング工程によってフォトレジストのパターン3を得た後、酸化ケイ素(SiO)層をフッ化水素(HF)でエッチングした後、フォトレジストを除去してから、図2の(c)に示したように全体的にフッ化水素でエッチングして、平坦領域の幾何学的微細構造を得ることができる。このように形成された幾何学的微細構造を有する基板の走査電子顕微鏡(SEM;XL30FEG、Philips社)写真を図2の(d)に示した。
【0051】
実施例1−2.基底基板上に脂質二分子膜の形成
前記実施例1−1により得た基板上に脂質二分子膜を形成するために、直径100nm以下であり単一層脂質二分子膜で構成されたSUVを実施例1−1により得た基板上で破裂させた後に融合させて、従来の記述の通り脂質二分子膜を形成した(Yoon T−Y. et al.,ibid)。
【0052】
要約すると、前記SUVの製造において、脂質ラフトの成分としてはスフィンゴミエリン(SPM)とコレステロールを用い、流体状の脂質二分子膜の成分としてはジオレオイル(18:1)−ホスファチジルコリン(dioleoyl(18:1)−phosphatidylcholine(DOPC))を使った。
【0053】
SUVは具体的に次のような方法により得た。クロロホルムを溶媒としてDOPC/SPM/コレステロールを1:1:1のモル比で混合した。この混合物に蛍光染料がついている脂質のテキサスレッド−ジヘキサデカノイル−ホスホエタノールアミン(Texas Red−dihexadecanoyl−phosphoethanolamine(Texas Red−DHPE))を1モル%の比率でドーピングした。DOPC、SPM、コレステロールはAvanti Polar Lipids(Birmingham,AL)社から購入し、Texas Red−DHPEはMolecular Probes(Eugene,OR)社から購入した。購入した物品は新たな精製作業を行わずに用いた。混合物中のコレステロール成分の分離を防止するために乾燥、真空下乾燥(desiccation)、水溶性環境での転換(hydration)作業が同時に行われるrapid solvent exchange法が採択された。このように得られた受容混合物を、Mini−Extruder(Avanti Polar Lipids社)を利用して、50nm−気孔炭素フィルターに61回通過させることによってSUV水溶液を得た。
【0054】
最後に実施例1−1の基板上に前記製造したSUV水溶液を位置させると、SUVのうち、基板近所に寄りついたものが破裂した後に融合するようになって、所望の脂質二分子膜が形成される。
【0055】
基板はSUV水溶液と接触する直前に、piranha溶液(3:1(v/v)HSO:H)中で125℃の温度で15分以上洗浄し、SUV水溶液と接触する時間は90秒に制限した。これはSUVが破裂する時間が長くなると形成された脂質二分子膜の組織が次第に緻密になって、ラフト領域の形成を妨げることが観察されたためである。一旦形成された脂質二分子膜は、空気中に露出しないように水中に維持された。
【0056】
実施例2.脂質ラフトの成長及び分布の調節
実施例2−1 弾性自由エネルギー障壁の生成確認
実施例1により得られた脂質二分子膜が形成された基底基板上での脂質ラフト領域の形成を観察した。
【0057】
前記実施例1のSUVから生成されたナノメートル水準の小さいラフト領域(複数個)が再配列した後、互いに合わされて、蛍光顕微鏡で観察可能な脂質ラフトが形成される。
【0058】
図3は、実施例1により、図2の幾何学的表面微細構造を有する基底基板上に形成された脂質二分子膜の上で、時間の経過に伴って形成されたラフト領域の蛍光顕微鏡写真を示した図であり、図3中の小さい写真はその横断面を示す。周辺の流体状態の脂質膜は赤い色で示され、形成された脂質ラフトは黒い色で示す。図3に示したように、流体状の脂質膜と異なってラフト領域は幾何学的表面微細構造のうちの一つである幾何学的壁によって、引き起こされた屈曲境界(図1の白線で表示された部分)を全く通り過ぎることができず、基板上の一側面(左側)に偏っていることを示す。これは屈曲境界による弾性変形によって、高い水準の炭化水素鎖整列度によって非常に大きい弾性係数を有するラフト領域の自由エネルギーが著しく増加し、弾性自由エネルギー障壁として作用することによって、自由な分布を抑制して、特定部位での脂質ラフトの成長ができることを示す。
【0059】
実施例2−2 幾何学的表面微細構造によって形成された自由エネルギー障壁を利用した脂質ラフトの成長及び分布の調節
次に基底基板上の表面微細構造によって脂質二分子膜に生成された弾性自由エネルギー障壁を利用して、脂質ラフトを予め指定された所にのみ誘導できることを従来記述の方法で行って(Yoon T−Y. et al.ibid)証明した。
【0060】
要約すると、まず、基底基板にナノメートルレベルの屈曲領域(図4参照)と平坦領域(図4参照)をマイクロメートルレベルの段差が生じるように、実施例1及び図2の方法(図2の(b)過程まで実施)と同じ方法(図5の(a)乃至図5の(c)参照)を用いて、製作した後にその上に脂質二分子膜を形成した。
【0061】
図5の(d)はこのような過程により作られた基板の屈曲領域と平坦領域との幾何学的表面微細構造を原子力顕微鏡で観察した結果である。これに基づいて、図5の(e)に各表面に対する周波数成分分析結果を示した。Helfrich自由エネルギー理論によると、弾性変形が起こった生体膜の自由エネルギーの変化量は
【数1】

【0062】
で与えられる。従って、生体膜で特定脂質領域の成長かどうかを決める境界周波数成分の大きさを理論的に計算した後、屈曲領域と平坦領域での周波数成分を境界周波数成分と比較した結果、滑らかな平坦領域でのみ特定脂質領域が成長できることを確認した。このような結果は、前記実験的証拠に加えて、幾何学的表面微細構造による脂質二分子膜のうちの特定脂質領域の成長及び調節を理論的に後押しする結果である。
【0063】
結論的に、前記基板上に形成された脂質膜は、基板上の屈曲領域で脂質ラフトの成長が抑制されるが、平坦領域では成長できる。成長した領域は基板との摩擦力により、簡単に漂動できず、マイクロメーターレベルの障壁がより大きいエネルギー障壁として作用して分布できなく、形成されたシートに残こるようになる。
【0064】
実施例2−3 指定された場所での脂質ラフトの形成誘導
実施例2−2のように、分布調節による脂質ラフトの成長調節以外に、指定された領域での脂質ラフトの成長の誘導を従来記述の通り実験を行って(Yoon T−Y. et al.,ibid)証明した。
【0065】
要約すると、四つの噛み合った屈曲境界とそれに囲まれた四角形井戸構造を利用して、生体膜の特定脂質領域のラフトを2次元空間的に井戸の中で成長させた後、井戸外部に分布を防止して、局所化された場所にだけラフトが形成できることを証明した。四角形井戸の内側は平坦領域、井戸の外側は屈曲領域を形成し、井戸の内外はマイクロメートルレベルの段差を持つ屈曲境界を形成した。
【0066】
ここに実施例1の方法で脂質膜を形成した後、これを蛍光顕微鏡で観察した写真を図6に示した。この場合、ただ、実施例1に使用されたDOPC/SPM/Cholesterol(1:1:1)のシステムに追加的にGanglioside(GM1、Avanti Polar Lipids社から購入)を1モル%の比率でドーピングした。GM1は他の細胞膜領域に比べて選択的にラフト領域によく入って、信号を伝達する物質と結合する収容体の役割を果たすことになる。図6の写真は、脂質膜で脂質ラフト領域が平坦領域(四角形内)で成長し、一旦成長したラフト領域は屈曲境界を越えて、全く通り過ぎることができず、屈曲領域(四角形の外)では殆ど成長できないことを示している。
【0067】
実施例3.脂質ラフトと膜蛋白質の相互作用
図7は実施例2−3により形成された脂質二分子膜の四角形井戸の中のラフト領域が生体信号伝達過程において重要に作用する膜蛋白質に選択的に結合できるようにして、膜蛋白質の研究のための生体膜素子として効果的に用いることができることを示した。膜蛋白質としては、例えば、コレラ毒素Bサブユニット蛋白質を使用し、前記脂質二分子膜に結合させた場合、図7のように、平坦領域(四角形内)のラフト領域にだけコレラ毒素Bサブユニット蛋白質が結合することを証明した。コレラ毒素蛋白質はAとBサブユニットとで構成されるが、Bサブユニット蛋白質が生体膜と結合して通路を作ると、Aサブユニット蛋白質が流入されて、細胞膜の蛋白質に影響を与えて、病気誘発及び信号伝達の機能を遂行する。従って、コレラ毒素Bサブユニット蛋白質の細胞膜への選択的な結合は、本発明の装置が実際膜蛋白質の研究に有効に利用できることを証明しつつ、例えば、病気誘発の原因になる信号伝達を望みの部分にだけ可能にすることを意味する。
【0068】
以上をまとめると、本発明では幾何学的表面微細構造を基板に形成して、細胞膜の脂質ラフトと同じ特定脂質領域の平衡状態と動力学的性質を全て制御できることを証明した。前記幾何学的表面微細構造の表面の模様を切り換えることにより、自由エネルギー障壁の大きさも調節でき、このような制御によって既存には出来なかった高次元操作、例えば、特定の地域でラフト領域成長の制御、分布障壁の設置、特定の位置で局所化されたラフト領域の分布誘導が可能となる。また、このような技術は、実際の細胞膜でも特定脂質領域の制御のために応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】基底基板上に形成された幾何学的表面微細構造の一つである幾何学的壁が脂質二分子膜に弾性変形を誘導して、弾性自由エネルギーの変化による分布障壁を形成すること示す概念図である。
【図2】基底基板に幾何学的表面微細構造の形成方法の一例を示したもので、(a)は本発明に用いることができる基底基板の基本構造を示し、(b)は、多様な幾何学的表面微細構造の例として、基底基板上に形成された平坦領域、屈曲領域と前記屈曲領域及び平坦領域の境界に形成された幾何学的壁をエッチング方式によって、同時に形成する過程を示し、(c)は、(b)の基底基板に追加のエッチング処理をして、基底基板上に二つの平坦領域及び前記二つの平坦領域の境界に形成された幾何学的壁を形成する過程を示し、(d)は、(c)の過程に基づいて形成された基底基板を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した写真である。
【図3】図2の(b)によって生成された基底基板上に形成された脂質二分子膜で脂質ラフト領域を成長させた後、これを蛍光顕微鏡で観察した写真である。
【図4】幾何学的表面微細構造を利用して脂質ラフトの成長を指定された位置だけで誘導した後、これによって形成された弾性自由エネルギーの変化による自由エネルギー障壁を利用して分布を抑制することによって形成された脂質ラフトの局所的分布を示す概念図である。図中、「Corrugated topography」は屈曲領域、「Smooth topography」は平坦領域、「Macroscopic Lo domain」は特定脂質領域に、それぞれ相当するものである(以下の図でも同様)。
【図5】幾何学的表面微細構造によって形成された自由エネルギー障壁を利用した脂質ラフトの成長及び分布の調節について説明した図であり、(a)は、本発明の実施例で使用された基底基板の基本構造を示し、(b)は基底基板上に形成された平坦領域、屈曲領域と屈曲領域及び平坦領域の境界に形成された幾何学的壁をエッチング方式によって、同時に形成する過程を示し、(c)は、(b)の過程後フォトレジストが除去された後の幾何学的表面微細構造を有する基底基板を示し、(d)は、(c)の脂質ラフトの成長抑制領域で作用する屈曲領域(左側:Corrugated topography)及び脂質ラフトの成長誘導部位に作用する平坦領域(右側:Smooth topography)を原子力顕微鏡で観察した結果を示したものであり、(e)は、(c)の幾何学的表面微細構造表面の周波数分析により脂質ラフトの選択的成長が理論的に妥当であることを示す結果である。
【図6】図5の(b)及び(c)の過程により形成された基底基板上の平坦領域での脂質ラフトの選択的な成長を示す蛍光顕微鏡写真である。白色で表示されたスケールバーは200μmである。
【図7】図6で形成された脂質ラフトへのコレラ毒素Bサブユニット蛋白質の選択的結合を示す蛍光顕微鏡写真である。白色で表示されたスケールバーは200μmである
【符号の説明】
【0070】
1 水晶ウエハー
2 親水性の二酸化ケイ素
3 フォトレジストのパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)基底基板に幾何学的表面微細構造を形成させる段階;及び
(ii)前記基底基板の幾何学的表面微細構造上に、特定脂質領域を有する脂質二分子膜を形成する段階を含み、前記特定脂質領域は前記幾何学的表面微細構造によって、成長及び分布の調節ができることを特徴とする生体膜素子の製造方法。
【請求項2】
前記特定脂質領域は、脂質ラフトであり、前記段階(ii)後に、熱処理する段階を付加的に含むことを特徴とする請求項1に記載の生体膜素子の製造方法。
【請求項3】
前記基底基板の幾何学的表面微細構造は、幾何学的壁、平坦領域及び屈曲領域から選択される一つ以上の構造を含むことを特徴とする請求項1に記載の生体膜素子の製造方法。
【請求項4】
前記基底基板の幾何学的表面微細構造は、屈曲領域、平坦領域、及び前記屈曲領域と平坦領域との境界に形成された幾何学的壁を含むことを特徴とする請求項1に記載の生体膜素子の製造方法。
【請求項5】
前記屈曲領域は特定脂質領域の成長抑制部位に作用し、前記平坦領域は成長誘導部位に作用し、前記幾何学的壁は分布防止部位に作用することを特徴とする請求項3または4に記載の生体膜素子の製造方法。
【請求項6】
前記特定脂質領域の成長及び分布の調節は、脂質二分子膜のうち、特定脂質領域の漂動、特定部位への誘導、局所的分布、または空間的閉じ込めを含むことを特徴とする請求項1に記載の生体膜素子の製造方法。
【請求項7】
前記幾何学的表面微細構造は、前記脂質二分子膜に弾性自由エネルギーの変化を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の生体膜素子の製造方法。
【請求項8】
前記弾性自由エネルギーの変化量は、表面粗度の実効値または空間周波数の変化量を用いて、算出されることを特徴とする請求項7に記載の生体膜素子の製造方法。
【請求項9】
前記段階(i)における前記幾何学的表面微細構造は、エッチング、スタンピング、光照射法及び蒸着法のうち、一つ以上の方法を用いて形成されることを特徴とする請求項1に記載の生体膜素子の製造方法。
【請求項10】
前記段階(ii)における前記脂質二分子膜は、単一または多重生体膜小胞を親水性表面で破裂させた後融合させる方法、単一または多重生体膜小胞を親水性表面に固定する方法、細胞から抽出した脂質二分子膜を親水性表面に固定する方法、または空気−水界面に形成された単一脂質膜を用いるラングミュア−ブロジェット法若しくはラングミュア−シェファー法からなる群より選択された、一つ以上の方法であることを特徴とする請求項1に記載の生体膜素子の製造方法。
【請求項11】
前記基底基板は、雲母、黒鉛、二酸化ケイ素、金属ケイ素を含む物質で形成されたウエハー、ポリジメチルシロキサン若しくは有機ケイ素重合体を含む高分子物質、ガラス、またはプラスチックであることを特徴とする請求項1に記載の生体膜素子の製造方法。
【請求項12】
幾何学的表面微細構造が形成された基底基板を用いることを特徴とする、特定脂質領域の成長及び分布を調節する方法。
【請求項13】
前記特定脂質領域は脂質ラフトであり、前記幾何学的表面微細構造は幾何学的壁、平坦領域及び屈曲領域から選択される一つ以上の構造を含むことを特徴とする請求項12に記載の特定脂質領域の成長及び分布を調節する方法。
【請求項14】
前記幾何学的表面微細構造は、屈曲領域、平坦領域、及び前記屈曲領域と平坦領域との境界に形成された幾何学的壁の構造を含むことを特徴とする請求項12に記載の特定脂質領域の成長及び分布を調節する方法。
【請求項15】
前記屈曲領域は特定脂質領域の成長抑制部位に作用し、前記平坦領域は成長誘導部位に作用し、前記幾何学的壁は分布防止部位に作用することを特徴とする請求項13または14に記載の特定脂質領域の成長及び分布を調節する方法。
【請求項16】
前記特定脂質領域の成長及び分布の調節は、脂質二分子膜のうちの脂質領域の漂動、特定部位への誘導、局所的分布、または空間的閉じ込めを含むことを特徴とする請求項12に記載の特定脂質領域の成長及び分布を調節する方法。
【請求項17】
前記幾何学的表面微細構造は、前記脂質二分子膜に弾性自由エネルギーの変化を起こすことを特徴とする請求項12に記載の特定脂質領域の成長及び分布を調節する方法。
【請求項18】
前記弾性自由エネルギーの変化量は、表面粗度の実効値または空間周波数の変化量を用いて、算出されることを特徴とする請求項17に記載の特定脂質領域の成長及び分布を調節する方法。
【請求項19】
前記幾何学的表面微細構造は、エッチング、スタンピング、光照射法及び蒸着法のうち、一つ以上の方法を用いて形成されることを特徴とする請求項12に記載の特定脂質領域の成長及び分布を調節する方法。
【請求項20】
前記脂質二分子膜は、単一または多重生体膜小胞を親水性表面で破裂させた後に融合する方法、単一または多重生体膜小胞を親水性表面に固定する方法、細胞から抽出した脂質二分子膜を親水性表面に固定する方法、または空気−水界面に形成された単一脂質膜からラングミュア−ブロジェット法若しくはラングミュア−シェファー法からなる群より選択された、一つ以上の方法を用いて形成されることを特徴とする請求項12に記載の特定脂質領域の成長及び分布を調節する方法。
【請求項21】
前記基底基板は、雲母、黒鉛、二酸化ケイ素、金属ケイ素を含む物質で形成されたウエハー、ポリジメチルシロキサン若しくは有機ケイ素重合体を含む高分子物質、ガラス、またはプラスチックであることを特徴とする請求項12に記載の特定脂質領域の成長及び分布を調節する方法。
【請求項22】
幾何学的表面微細構造が形成された基底基板、前記基板上に位置する脂質二分子膜及び特定脂質領域を含み、前記幾何学的表面微細構造によって、前記脂質二分子膜に弾性自由エネルギーの変化が誘発されて、前記脂質領域の成長及び分布が調節できることを特徴とする生体膜素子。
【請求項23】
前記特定脂質領域は、脂質ラフトであり、前記幾何学的表面微細構造は幾何学的壁、平坦領域及び屈曲領域から選択される一つ以上の構造を含むことを特徴とする請求項22に記載の生体膜素子。
【請求項24】
前記基底基板の幾何学的表面微細構造は、屈曲領域、平坦領域、及び前記屈曲領域と平坦領域との境界に形成された幾何学的壁を含むことを特徴とする請求項22に記載の生体膜素子。
【請求項25】
前記屈曲領域は特定脂質領域の成長抑制部位に作用し、前記平坦領域は成長誘導部位に作用し、前記幾何学的壁は分布防止部位に作用することを特徴とする請求項23または24に記載の生体膜素子。
【請求項26】
前記成長及び分布の調節は、脂質二分子膜のうちの脂質ラフトの漂動、特定部位への誘導、局所的分布、または空間的閉じ込めを含むことを特徴とする請求項22に記載の生体膜素子。
【請求項27】
前記弾性自由エネルギーの変化量は、表面粗度の実効値または空間周波数の変化量を用いて、算出されることを特徴とする請求項22に記載の生体膜素子。
【請求項28】
前記幾何学的表面微細構造は、エッチング、スタンピング、光照射法及び蒸着法のうち、一つ以上の方法を使って得られることを特徴とする請求項22に記載の生体膜素子。
【請求項29】
前記脂質二分子膜の形成は、単一または多重生体膜小胞を親水性表面で破裂させた後に融合する方法、単一または多重生体膜小胞を親水性表面に固定する方法、細胞から抽出した脂質二分子膜を親水性表面に固定する方法、空気−水界面に形成された単一脂質膜からラングミュア−ブロジェット法若しくはラングミュア−シェファー法からなる群から選択された、一つ以上の方法を用いて形成されることを特徴とする請求項22に記載の生体膜素子。
【請求項30】
前記基底基板が、雲母、黒鉛、二酸化ケイ素、金属ケイ素を含む物質で製造されたウエハー、ポリジメチルシロキサン若しくは有機ケイ素重合体を含む高分子物質、ガラス、またはプラスチックであることを特徴とする請求項22に記載の生体膜素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−39758(P2008−39758A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261324(P2006−261324)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【出願人】(503434302)財団法人ソウル大学校産学協力財団 (32)
【氏名又は名称原語表記】Seoul National University Industry Foundation
【住所又は居所原語表記】San 4−2, Bongchun−dong, Kwanak−gu, Seoul, Korea
【Fターム(参考)】