説明

生体触媒の固定化

【課題】被包性細胞含有ポリアクリルアミドビーズの製造方法を提供する。
【解決手段】被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズを、(i)アクリルモノマー混合物の水溶液を提供すること;(ii)過硫酸塩水溶液中の細胞懸濁液を提供すること;(iii)任意に界面活性剤を含有し得る水非混和性液体中の、第三級アミン水溶液のエマルジョンを提供すること;(iv)工程(i)で提供される前記溶液と工程(ii)で提供される前記懸濁液を混合すること;(v)工程(iv)で得られる前記混合物を工程(iii)で提供される攪拌エマルジョンに加えること;(vi)アクリルモノマー混合物を重合すると同時に細胞を被包し被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズを形成すること;を含む方法により製造した。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
[発明の詳細な説明]
本発明は、被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズ、その製造方法、および生体触媒としてのその使用に関するものである。
【0002】
被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズは、細胞内に含まれる酵素に依存する様々な生体内変化のための生体触媒として使用することができる。例えば、二トリルヒドラターゼを含むロドコッカス属の菌株の被包性細菌細胞を含むポリアクリルアミドビーズは二トリル類からアミド類へのトランスフォーメーションに使用することができる。
【0003】
酵素を含むポリアクリルアミドビーズについてはニルソン等により執筆されている(非特許文献1を参照)。過硫酸アンモニウム(0.25g, 1.1 mmol)のトリエタノールアミン−HClバッファー(0.05 M, pH 7.0, 0.5 mL)溶液およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(0.5 mL, 0.385 mg, 3.3 mmol)が、トリプリシン(60 mg)、アクリルアミド(8.55 g, 120 mmol)およびN,N’−メチレン−ビスアクリルアミド(0.45 g, 2.9 mmol)のトリエタノールアミン−HClバッファー(0.05 M, pH 7.0)溶液(60mL)に加えられた。該溶液がソルビタンセスキオリエート(sorbitan sesquioleate)(1 mL)を含有する攪拌有機相(トルエン/クロロホルム 290:110, 400 mL)に注入された。4℃において30分間、重合が実施された。ニルソン等は、ポリアクリルアミドビーズ中の細胞の包込みについては記載していなかった(非特許文献1を参照)。
【0004】
モスバック(Mosbach)等は、被包性細胞を含む種々のビーズポリマーの調製について記載しており(特許文献1を参照)、動物油、植物油、リン酸トリブチル、液体シリコーン、パラフィン油、またはフタル酸ジブチルエステルが水不溶性相として使用されている。酵母細胞または酵素を含むポリアクリルアミドビーズは、アクリルアミド(17.6 g, 248 mmol)およびN,N’−メチレンビスアクリルアミド(1.2 g, 8mmol)をトリス緩衝液(100 mL, 0.05 M, pH 7)に溶解し、この溶液8mLを酵母細胞または酵素(例えば、ペルオキシダーゼ、10 mg/mL, 2 Ml)および過硫酸アンモニウム(0.4 g/mL, 20 mL (8 mg, 0.03 mmol))と混合し、該混合物を大豆油(40 mL)中で分散することにより調製した。好適なビーズサイズに達したとき、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(100 mL, 77.0 mg, 0.66 mmol)が加えられた。
【0005】
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] US4,647,536A
[非特許文献]
[非特許文献1] Biochim. Biophys. Acta 1972, 268, 253-256
本発明は、細胞を含むポリアクリルアミドビーズ、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的は、請求項12のポリアクリルアミドおよび請求項1の方法により達成された。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】3−シアノピリジンのニコチンアミドへの連続反応時における反応混合物中のニコチンアミド濃度の時間依存性を示す図。
【図2】3−シアノピリジンのニコチンアミドへの連続反応中における反応混合物中の3−シアノピリジン濃度の時間依存性を示す図。
【図3】3−シアノピリジンのニコチンアミドへの連続反応中における3−シアノピリジンのニコチンアミドへの転化の時間依存性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズを製造するための本発明の方法は、
(i) アクリルモノマー混合物の水溶液を提供する工程、
(ii) 過硫酸水溶液中の細胞懸濁液を提供する工程、
(iii) 任意に界面活性剤を含有し得る水非混和性液体中の、第三級アミン水溶液のエマルジョンを提供する工程、
(iv) 工程(i)で提供される溶液と工程(ii)で提供される懸濁液とを混合する工程、
(v) 工程(iv)で得られた混合物を工程(iii)で提供される攪拌エマルジョンに加える工程、
(vi) アクリルモノマーの混合物を重合すると同時に細胞を包込むことにより被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズを形成する工程、
を含む方法である。
【0009】
本発明の方法は、アクリルモノマー、細胞および過硫酸塩の添加前に水非混和性液体に第三級アミンが既に添加されている限りにおいては有利である。
【0010】
本発明の方法により製造されるポリアクリルアミドビーズは球状またはほぼ球状形をしている。
【0011】
ポリアクリルアミドビーズは、0.01乃至5mmのサイズを有し得、機械的強度は少なくとも10mNである。好ましくは、ポリアクリルアミドビーズは、0.05乃至3mmのサイズを有し、機械的強度は少なくとも200mNである。より好ましくは、ポリアクリルアミドビーズは0.1乃至1.5mmのサイズを有し、機械的強度は少なくとも300mNである。
【0012】
該機械的強度は、二つの平面の間に置かれたビーズに、該ビーズが破壊するまで圧力を加えることにより測定される。
【0013】
該細胞は、細菌性細胞、真菌類細胞、酵母細胞、植物細胞、または動物細胞であり得る。好ましくは、該細胞は細菌性細胞であり、より好ましくはノカルジア状の放線菌類の細菌細胞、または腸内細菌科の細菌細胞である。更に好ましくは、該細胞はロドコッカス属またはエシェリキア属の細菌性細胞であり、特に好ましくは、ロドコッカス属の細菌性細胞である。
【0014】
細菌の具体例としては、バチルス属、Acetobacterium属、アクチノミセス属、アルトロバクター属、コリネバクテリウム属、Gordona属、ノカルジア属、ロドコッカス属、またはAmycolatopsis属の細菌等のグラム陽性細菌、および、Acetobacter属、Agrobacterium属、アルカリゲネス属、Comamonas属、Gluconobacter属、シュードモナス属、Rhizobium属、シトロバクター属、エンテロバクター属、エシェリキア属、またはクレブシエラ属の細菌等のグラム陰性細菌が挙げられる。
【0015】
ノカルジア状の放線菌類の細菌の具体例としては、Gordona属、ノカルジア属、ロドコッカス属、およびAmycolatopsis属の細菌が挙げられる。腸内細菌科の細菌の具体例としては、シトロバクター属、エンテロバクター属、エシェリキア属、およびクレブシエラ属の細菌が挙げられる。
【0016】
これら細胞は、当該分野で公知の方法により培養することができる。
【0017】
該細菌性細胞は、染色体に関与する酵素をコードする遺伝子を含み得、あるいは関与する酵素をコードする遺伝子を含むプラスミドで形質転換し得る。
【0018】
細菌性細胞が染色体に関与する酵素をコードする遺伝子を含み、且つこの酵素が異化酵素である場合には、該細菌性細胞は好適な酵素誘発因子の存在下において培養され得る。例えば、ロドコッカス属菌株の細胞は、ニトリルヒドラターゼの発現を誘発するためにニトリルヒドラターゼ誘発因子の存在下において培養され得る。ロドコッカス属菌株のニトリルヒドラターゼに好適な誘発因子の例としては、メタクリルアミド、クロトンアミド、およびプロピオンアミドが挙げられる。
【0019】
細菌性細胞が関与する酵素をコードする遺伝子を含むプラスミドで形質転換し、且つこの遺伝子が誘導性プロモータの制御下にある場合には、関与する酵素をコードする遺伝子の転写は、培養の間の好適な時点で誘発され得る。誘導性プロモータの例としては、trp、lac、tac、アラビノース、およびラムノースプロモータが挙げられる。誘発は、用いられるプロモータに依存する。例えば、ラムノースプロモータはL−ラムノースの添加により誘発され得る。
【0020】
培養後、関与する酵素を含む細胞は、発酵倍溶液から分離され得る。好ましくは、細胞は、5℃以下で適切なバッファー中で保存する。
【0021】
アクリルモノマーの混合物は少なくとも一つの単官能アクリルモノマーおよび少なくとも一つの二官能アクリルモノマーからなり得る。
【0022】
単官能アクリルモノマーは、式(I):
【化1】

【0023】
(式中、
はHまたはメチルであり、
はNH、NHR、N(R、NH−(CH−N(RおよびO−(CH−N(Rからなる群から選択され、
各々はC1−4アルキルであり、
nは1乃至4の整数である。)
で表されるモノマーであり得る。
【0024】
単官能アクリルモノマーの具体例としては、アクリルアミド(R=H、R=NH);メタクリルアミド(R=メチル、R=NH);N−アルキルアクリルアミド(R=H、R=NHR、R=C1−4アルキル)、例えば、N−エチルアクリルアミド(R=エチル)、N−イソプロピルアクリルアミド(R=イソプロピル)、又はN−tert−ブチルアクリルアミド(R=tert−ブチル)等;N−アルキルメタクリルアミド(R=メチル、R=NHR、R=C1−4アルキル)、例えば、N−エチルメタクリルアミド(R=エチル)、又はN−イソプロピルメタクリルアミド(R=イソプロピル)等;N,N−ジアルキルアクリルアミド(R=H、R=N(R、R=C1−4アルキル)、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド(R=メチル)、及びN,N−ジエチルアクリルアミド(R=エチル)等;N−[(ジアルキルアミノ)アルキル]アクリルアミド(R=H、R=NH−(CH−NH(R、R=C1−4アルキル)、例えば、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド(n=3、R=メチル)、又はN−[3−(ジエチルアミノ)プロピル]アクリルアミド(n=3、R=エチル)等;N−[(ジアルキルアミノ)アルキル]メタクリルアミド(R=メチル、R=NH−(CH−NH(R、R=C1−4アルキル)、例えば、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド(R=メチル)、又はN−[3−(ジエチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド(R=エチル)等;(ジアルキルアミノ)アルキルアクリレート(R=H、R=O−(CH−NH(R、R=C1−4アルキル)、例えば、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート(n=2、R=メチル)、2−(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート(n=3、R=メチル)、又は2−(ジエチルアミノ)エチルアクリレート(n=2、R=エチル);(ジアルキルアミノ)アルキルメタクリレート(R=メチル、R=O−(CH−NH(R、R=C1−4アルキル)、例えば、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(n=2、R=メチル)等が挙げられる。
【0025】
N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、N−[(ジアルキルアミノ)アルキル]アクリルアミド、N−[(ジアルキルアミノ)アルキル]メタクリルアミド、(ジアルキルアミノ)アルキルアクリレートおよび(ジアルキルアミノ)アルキルアクリレートは、当該分野で公知の方法により調製することができ、例えば、アクリロイルクロリド、メチルアクリレート、メタクリロイルクロリド又はメチルメタクリレートを各々アルキルアミン、ジアルキルアミンまたは(ジアルキルアミノ)アルキルアミンまたは(ジアルキルアミノ)アルコールと反応させることにより調製することができる。
【0026】
二官能アクリルモノマーは、式(II):
【化2】

【0027】
(式中、
はHまたはメチルであり、
−X−は−(CH−、または−(CH−OH)−であり、
nは1乃至4の整数である。)
で表されるモノマーであり得る。
【0028】
二官能アクリルモノマーの具体例としては、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(R=H、−X−=−(CH−、n=1)、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド(R=メチル、−X−=−(CH−、n=1)、N,N’−エチレンビスアクリルアミド(R=H、−X−=−(CH−、n=2)、N,N’−エチレンビスメタクリルアミド(R=メチル、−X−=−(CH−、n=2)、N,N’−プロピレンビスアクリルアミド(R=H、−X−=−(CH−、n=3)、およびN,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド(R=H、−X−=−(CH−OH)−、n=2)等が挙げられる。
【0029】
二官能アクリルモノマーは当該分野で公知の方法により調製することができ、例えば、−X−が−(CH−である二官能アクリルモノマーは、アクリロイルクロリド、メチルアクリレート、メタクリロイルクロリド、またはメチルメタクリレートを各々ジアミンと反応させることにより調製することができる。
【0030】
好ましくは、二官能アクリルモノマーは、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、およびN,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドからなる群から選択され、単官能モノマーは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N−[(ジアルキルアミノ)アルキル]メタクリルアミド、(ジアルキルアミノ)アルキルアクリレートおよび(ジアルキルアミノ)アルキルメタクリレートからなる群から選択される。
【0031】
より好ましくは、二官能アクリルモノマーは、N,N’−メチレンビスアクリルアミドであり、単官能モノマーは、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドおよび2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートからなる群から選択される。
【0032】
過硫酸塩は、いかなる水溶性過硫酸塩であってもよい。水溶性過硫酸塩の具体例としては、過硫酸アンモニウムおよびアルカリ金属の過硫酸塩が挙げられる。アルカリ金属の具体例としては、リチウム、ナトリウムおよびカリウムが挙げられる。好ましくは、過硫酸塩は、過硫酸アンモニウム、または過硫酸カリウムであり、より好ましくは、過硫酸アンモニウムである。
【0033】
第三級アミンは、いかなる水溶性第三級アミンであってもよい。好ましくは、第三級アミンは、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンまたは3−(ジメチルアミノ)プロピオニトリルであり、より好ましくは、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンである。
【0034】
水非混和性液体は、重合温度において液体であればいかなる水非混和性の液体であってもよい。水非混和性液体の具体例としては、鉱物油、植物油、合成油が挙げられる。鉱物油の具体例としては、トルエン、キシレン、脱芳香化された炭化水素混合物(例えば、Exxol D 100)、およびイソパラフィン混合物(例えば、Isoper M)が挙げられる。植物油の具体例としては、ヒマワリ油、オリーブ油、ピーナッツ油、アーモンド油、サフラワ油、ダイズ油、およびコーン油が挙げられる。合成油の具体例としては、シリコーン油が挙げられる。
【0035】
好ましくは、水非混和性液体は鉱物油である。より好ましくは、飽和炭化水素又はその混合物である。特に好ましくは、脱芳香化された炭化水素混合物又はイソパラフィン混合物である。
【0036】
水非混和性液体は任意に界面活性剤を含有し得る。界面活性剤は好適なものであればいずれでもよく、好適な界面活性剤の具体例としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、およびグリセロール脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;少なくとも一つのアルキルが8個以上の炭素原子を有するテトラアルキルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。脂肪酸の具体例としては、オレイン酸またはステアリン酸が挙げられ、アルキルの具体例としては、エチル、プロピル、およびブチルが挙げられ、8個以上の炭素原子を有するアルキルの具体例としては、オクチル、ノニルおよびデシルが挙げられる。
【0037】
界面活性剤/油比は、0.10:1(w/w)以下であればよいが、界面活性剤は使用しないことが好ましい。
【0038】
アクリルモノマー混合物の水溶液は、アクリルモノマーを水又はバッファー中に溶解することにより提供することができる。過硫酸塩水溶液中の細胞懸濁液は、過硫酸塩の水溶液又はバッファー溶液と水又はバッファー中の細胞懸濁液と混合することにより提供することができる。アクリルモノマーがバッファー中に溶解し、細胞がバッファー中に懸濁され、関与する酵素により有利とされる5乃至10の範囲内にpHが調整されることが好ましい。例えば、6乃至8の範囲のpHは、ロドコッカス属菌株からのニトリルヒドラターゼにより有利とされる。
【0039】
水非混和性液体中の第三級アミン水溶液のエマルジョンは、水非混和性液体に第三級アミンの水溶液又はバッファー溶液を乳化することにより提供することができる。
【0040】
アクリルモノマー混合物の水溶液、過硫酸塩水溶液中の細胞懸濁液、および任意に界面活性剤を含有し得る水非混和性液体中の第三級アミン水溶液のエマルジョンは、例えば窒素をかける等により脱酸素されることが好ましい。
【0041】
アクリルモノマー混合物の水溶液および過硫酸塩水溶液中の細胞懸濁液を混合し、直ちに水非混和性液体中の第三級アミン水溶液の攪拌エマルジョンに滴下する。好適なスターラーの例としては、3又は4ピッチ葉片タービンスターラー(three or four pitch bladed turbine stirrer)、スクリュースターラー又はビスコ−ジェット(visco-jet(登録商標))スターラーが挙げられ、ビスコ−ジェットが好適に使用される。好ましくは、重合は5〜35℃で実施され、より好ましくは15〜25℃で実施され、特に好ましくは18〜22℃で実施される。
【0042】
以下の比率が重合工程で好ましく用いられる。
アクリルモノマー混合物/水の好ましい比率は、0.05:1〜0.5:1(w/w)である。より好ましくは、0.1:1〜0.3:1(w/w)であり、特に好ましくは、0.2:1〜0.28:1(w/w)である。
【0043】
二官能アクリルモノマー/単官能アクリルモノマーの好ましい比率は、0.001:1〜0.8:1(mol/mol)である。より好ましくは、0.01:1〜0.08:1(mol/mol)であり、特に好ましくは、0.03:1〜0.06:1(mol/mol)である。
【0044】
乾燥細胞/アクリルモノマー混合物の好ましい比率は、0.001:1〜1:1(w/w)である。より好ましくは、0.2:1〜0.9:1(w/w)であり、更に好ましくは、0.4〜0.8:1(w/w)であり、特に好ましくは、0.5:1〜0.7:1(w/w)である。
【0045】
過硫酸塩/アクリルモノマー混合物の好ましい比率は、0.0001:1〜0.1:1(mol/mol)である。より好ましくは、0.001:1〜0.05:1(mol/mol)であり、特に好ましくは、0.002:1〜0.03:1(mol/mol)である。
【0046】
第三級アミン/過硫酸塩の好ましい比率は、0.2:1〜50:1(mol/mol)である。より好ましくは、0.8:1〜10:1(mol/mol)であり、特に好ましくは、1:1〜5:1(mol/mol)である。
【0047】
油/水の好ましい比率は、1.2:1〜10:1(w/w)である。より好ましくは、1.3:1〜7:1(w/w)であり、更に好ましくは、1.4:1〜5:1(w/w)であり、特に好ましくは、1.5:1〜4:1(w/w)である。
【0048】
重合後に得られるポリアクリルアミドビーズは、例えば、デカンテーション、または濾過により分離されることが好ましい。分離されたビーズは、水非混和性液体の痕跡を除去するために水又は水溶液を用いて洗浄され得、適切なバッファー中に保存され得る。
【0049】
本発明の他の態様は、本発明の方法により得られる被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズである。好ましくは、該被包性細胞は、ニトリルヒドラターゼを含有するロドコッカス属菌株の細胞である。
【0050】
本発明の更なる態様は、基質から産物へのトランスフォーメーションのための、上述した被包性細胞を含有するポリアクリルアミドビーズの生体触媒としての使用である。好ましくは、該基質はニトリルであり、産物は対応するアミドである。より好ましくは、該基質は3−シアノピリジンであり、産物はニコチンアミドである。
【0051】
ニトリルの具体例としては、シアンアミド、シアノ酢酸、マロノジニトリル、シアノ酢酸メチルエステル、アクリロニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、クロトノニトリル、メタクリロニトリル、2−シアノピリジン、3−シアノピリジン、4−シアノピリジン、ベンゾニトリル、2−クロロベンゾニトリル、4−クロロベンゾニトリル、ピラジンカルボニトリル、ピラジン−2,3−ジカルボニトリル、2−フロニトリル、チオフェン−2−カルボニトリル、ピバロニトリルおよびシクロプロパンカルボニトリルが挙げられる。
【0052】
トランスフォーメーションは、バッチ反応または連続反応において実施することができる。好ましくは、該反応は、10〜35℃の温度において好適なバッファー中で実施される。
【0053】
[実施例]
例1
ロドコッカス属菌株の培養
1.1 培養物前駆体(preculture)の調製
酵母抽出物:1.25%(w/w)、MgSO・7HO:0.05%(w/w)、CoCl・6HO:0.03%(w/w)、クエン酸ナトリウム:0.5%(w/w)、メタクリルアミド:0.75%(w/w)、およびKHPO:0.2%(w/w)を含有する無菌培地(200mL、pH7.0)に、ロドコッカス属菌株の寒天プレート培養物を摂取した。培養物前駆体を三角フラスコ(500mL)中で48時間、28℃で120rpmにおいて培養した。
【0054】
1.2 培養物の調製
酵母抽出物:1.25%(w/w)、MgSO・7HO:0.05%(w/w)、CoCl・6HO:0.03%(w/w)、クエン酸ナトリウム:0.5%(w/w)、メタクリルアミド:0.75%(w/w)、およびKHPO:0.2%(w/w)を含有する無菌培地(12L、pH7.0)に、例1.1の記載に従い得られたロドコッカス属菌株の培養物前駆体(200mL)を接種した。該培養物を発酵槽(12L)中で28℃、pH7.0、溶解酸素濃度>40%(1体積 空気/(体積 発酵培養液x分)における溶解酸素濃度に関して、28℃)、300−400rpmにおいて48時間培養した。細胞を遠心分離により摘出し、ホスフェートバッファー(50mM、pH7.0)で洗浄し、乾燥細胞濃度15〜20%(w/w)に濃縮し、−40℃にて保存した。
【0055】
例2
ロドコッカス属菌株のニトリルヒドラターゼ活性アッセイ
ロドコッカス属菌株の被包性細胞を含有するポリアクリルアミドビーズ(湿潤質量0.2g)を、25℃において3−シアノピリジン(1.59g)のホスフェートバッファー溶液(0.05M、pH7.0、30mL)に加えた。5分後および15分後のサンプル(1000μl)を採取した。これらサンプルを直ちにHSO(48%(w/w))20μlと混合し、メタノール/水=40:60(v/v)混合物で100倍(体積)に希釈し、濾過し(孔サイズ0.2μm)、HPLC(カラム:C8逆相、流速:1mL/分、移動相:メタノール/水=40:60(v/v)、波長:210nm、25℃)により分析した。湿潤生体触媒を55℃、20ミリバールにおいて4時間乾燥することにより、乾燥ポリアクリルアミドビーズを得た。
【0056】
例3
ポリアクリルアミドビーズ中のロドコッカス属菌株の細胞の被包
アクリルアミド(42.25g、594mmol)、N,N´−メチレンビスアクリルアミド(3.75g、24mmol)および2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(1.5g、9mmol)をホスフェートバッファー(37.5g、50mM、pH7.0)中に溶解し、溶液のpHを7.0に調整した。過硫酸アンモニウム(0.465g、2mmol)の蒸留水(5g)溶液を、前記例1で得られたロドコッカス属菌株の細胞の懸濁液(20%(w/w)乾燥細胞、165g)に加えた。N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン(0.232g、2mmol)の蒸留水(5g)溶液を、350rpmにおいて反応器(1L)中の鉱油(Exxsol D100、350g)中に分散した。モノマー溶液、細胞懸濁液および油を別々に15分間窒素にかけた。モノマー溶液(流速:2.5g/分)および細胞懸濁液(流速:5g/分)を別々に2.5mLミキシングフラスコにポンピングした。得られた混合物を直ちに20℃において攪拌油(350rpm、ビスコ−ジェット(登録商標)スターラー)中に滴下した。全部を添加した後、反応混合物を20℃において更に3.5時間攪拌した。得られたロドコッカス属菌株の被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズを濾過により分離し、蒸留水で洗浄し、水中で膨潤させた。ポリアクリルアミドビーズを体積で2倍量の貯蔵バッファー(硫酸ナトリウム3.55g/L、デヒドロ酢酸0.25%(w/w)、ナトリウム塩、ニコチンアミド0.05%(w/w)、pH7.0)中に4℃において貯蔵した。湿潤ビーズは、サイズ200μm〜1200μmの規則的な球状をしており、機械強度は>300mNであった。乾燥ポリアクリルアミドビーズ/湿潤ポリアクリルアミドビーズの比は、0.11:1(w/w)であった。比活性は、9.5μmolニコチンアミド/(分×mg 乾燥ポリアクリルアミドビーズ)であった。
【0057】
例4
3−シアノピリジンからニコチンアミドへの転化、バッチ反応
上記例3で得られたロドコッカス属菌株の被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズ(100g湿潤質量)を、25℃において、ゆるやかに攪拌された3−シアノピリジン(40g、3.8mol)のホスフェートバッファー(0.05M、pH7.0、400mL)溶液に加えた。15分後、99%の3−シアノピリジンがニコチンアミドに転化し、30分後、99%の3−シアノピリジンがニコチンアミドに転化していた。
【0058】
例5
3−シアノピリジンからニコチンアミドへの転化、連続反応
上記例3で得られたロドコッカス属菌株の被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズ(100g湿潤質量)を、25℃において、3−シアノピリジン(40g、3.8mol)のホスフェートバッファー(0.05M、pH7.0、400mL)溶液に加えた。3−シアノピリジンのホスフェートバッファー(0.05M、pH7.0)溶液(19%(w/w))を、ゆるやかに攪拌された反応混合物に連続的に加え、反応混合物(ポリアクリルアミドビーズなし)を連続的に除去した。連続転化を、25℃において5週間、保持時間3.1時間において行った。5週間後、ビーズの磨砕は観察されなかった。3−シアノピリジンおよびニコチンアミド濃度を決定し(図1および2を参照)、転化率を計算した(図3を参照)。
【0059】
例6
ポリアクリルアミドビーズにおけるロドコッカス属菌株の細胞の被包
アクリルアミド(422.5g、5940mmol)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(37.5g、240mmol)および2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(15g、90mmol)をホスフェートバッファー(375g、50mM、pH7.0)に溶解し、溶液のpHを7.0に調整した。過硫酸アンモニウム(4.65g、20mmol)の蒸留水(25g)溶液を、上記例1に従い得られたロドコッカス属菌株の細胞の懸濁液(16%(w/w)乾燥細胞、1650g)に加えた。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(2.32g、20mmol)の蒸留水(25g)溶液を反応器(10L)中で鉱物油(Exxsol D100)に分散させた。モノマー溶液、細胞懸濁液および油を別々に窒素に15分間かけた。モノマー溶液(流速:13.5g/分)および細胞懸濁液(流速27g/分)を別々に一般的なパイプにポンピングした。得られた混合物を20℃において攪拌油(215rpm、ビスコ−ジェット(登録商標)スターラー)中にポンピングした。全部を添加した後、反応混合物を20℃において更に3.5時間攪拌した。得られた、ロドコッカス属菌株の被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズを分離し、洗浄し、上記例3に従い貯蔵した。湿潤ビーズはサイズ200μm〜1200μmの規則的な球形をしており、機械強度は>400mNであった。乾燥ポリアクリルアミドビーズ/湿潤ポリアクリルアミドビーズの比は、0.09:1(w/w)であった。比活性は7.3μモル ニコチンアミド/(分×mg 乾燥ポリアクリルアミドビーズ)であった。
【0060】
例7
ロドコッカス属菌株の被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズの貯蔵安定性
例5に従い得られたロドコッカス属菌株の被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズを、貯蔵水溶液(硫酸ナトリウム3.55g/L、デヒドロ酢酸0.25%(w/w)、ナトリウム塩、ニコチンアミド0.05%(w/w)、pH7.0)中に4℃において50週間貯蔵した。サンプルを5週間毎に取り出した。ポリアクリルアミドビーズを分離し、蒸留水で洗浄し、新鮮な貯蔵液(硫酸ナトリウム3.55g/L、デヒドロ酢酸0.25%(w/w)、ナトリウム塩、ニコチンアミド0.05%(w/w)、pH7.0)中で25℃において1時間分散させた。ニトリルヒドラターゼ活性を例2に従い決定した。乾燥ポリアクリルアミドビーズ/湿潤ポリアクリルアミドビーズの比を決定した。乾燥ポリアクリルアミドビーズは湿潤ポリアクリルアミドビーズを55℃、20ミリバールで4時間乾燥した後に得た。
【表1】

【0061】
例8
ポリアクリルアミドビーズ中のロドコッカス属菌株細胞の被包
被包は、過硫酸アンモニウム(1.86g、8mmol)の蒸留水(7.0g)溶液およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(0.928g、8mmol)の蒸留水(5g)溶液を使用したことを除き、例3に記載の被包と類似の態様で実施した。得られた、ロドコッカス属菌株の被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズを分離し、洗浄し、例3に従い貯蔵した。膨潤ビーズは、サイズ250μm〜1300μmの規則的な球形をしており、機械強度は>400mNであった。乾燥ポリアクリルアミドビーズ/湿潤ポリアクリルアミドビーズの膨潤比は、0.12:1(w/w)であった。比活性は、7.8μmol ニコチンアミド/(分×mg ポリアクリルアミドビーズ)であった。
【0062】
例9
ポリアクリルアミドビーズ中のロドコッカス属菌株細胞の被包
被包は、ロドコッカス属菌株の細胞懸濁液(16%(w/w)、乾燥細胞)を使用し、重合を10℃で9時間行ったことを除き、例3に記載の被包と類似の態様で実施した。得られた、ロドコッカス属菌株の被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズを分離し、洗浄し、例3に従い貯蔵した。膨潤ビーズは、直径250μm〜1300μmの規則的な球形をしており、機械強度は>400mNであった。乾燥ポリアクリルアミドビーズ/湿潤ポリアクリルアミドビーズの比は、0.09:1.00(w/w)であった。比活性は、7.3μmol ニコチンアミド/(分×mg 乾燥ポリアクリルアミドビーズ)であった。
【0063】
例10
ポリアクリルアミドビーズ中のロドコッカス属菌株細胞の被包
N,N−ジメチルアクリルアミド(42.25g、426mmol)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(3.75g、24mmol)および2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(1.5g、9mmol)をホスフェートバッファー(37.5g、50mM、pH7.0)に溶解し、該溶液のpHを7.0に調整した。過硫酸アンモニウム(1.86g、8mmol)の蒸留水(7g)溶液を、例1に従い調製したロドコッカス属菌株の細胞懸濁液(18%(w/w)乾燥細胞、1.65g)に加えた。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(0.928g、8mmol)の蒸留水(7g)溶液を反応器(1L)中で鉱物油(Exxsol D100、350g)に分散させた。モノマー溶液、細胞懸濁液および油を別々に窒素に15分間かけた。モノマー溶液(流速:2.5g/分)および細胞懸濁液(流速:5g/分)を別々にミキシングフラスコ2.5mLにポンピングした。得られた混合物を直ちに攪拌油(350rpm、ビスコ−ジェット(登録商標)スターラー)中に20℃において滴下した。全部を添加した後、反応混合物を20℃において更に3.5時間攪拌した。得られた、ロドコッカス属菌株の被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズを濾過により分離し、洗浄し、例3に従い貯蔵した。膨潤ビーズは、サイズ200μm〜700μmの規則的な球形をしており、機械強度は>400mNであった。乾燥ポリアクリルアミドビーズ/湿潤ポリアクリルアミドビーズの比は、0.21:1(w/w)であった。比活性は、5.4μmol ニコチンアミド/(分×mg 乾燥ポリアクリルアミドビーズ)であった。
【0064】
例11
ポリアクリルアミドビーズ中のロドコッカス属菌株細胞の被包
被包は、N,N−ジメチルアクリルアミド(42.25g、426mmol)に替えてアクリルアミド(42.25g、594mmol)を、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(1.5g、9mmol)に替えてN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド(1.5g、9mmol)を使用したことを除き、例10に記載の被包と類似の態様で実施した。得られた、ロドコッカス属菌株の被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズを分離し、洗浄し、例3に従い貯蔵した。膨潤ビーズは、サイズ150μm〜1200μmの規則的な球形をしており、機械強度は>400mNであった。乾燥ポリアクリルアミドビーズ/湿潤ポリアクリルアミドビーズの比は、0.13:1(w/w)であった。比活性は、5.9μmol ニコチンアミド/(分×mg 乾燥ポリアクリルアミドビーズ)であった。
【0065】
例12
ラムノースプロモータの転写調節下にアミダーゼをコードする遺伝子を有するプラスミドを含む大腸菌種菌株の培養
12.1 培養物前駆体の前駆物質(pre-preculture)の調製
トリプトン:1.6%(w/w)、酵母抽出物:1.0%(w/w)、NaCl:0.5%(w/w)、アンピシリン:0.01%(w/w)を含有する無菌培地(5mL、pH7.0)に、ラムノースプロモータの転写調節下にアミダーゼをコードする遺伝子を有するプラスミドを含む大腸菌種菌株の寒天プレート培養物を摂取した。培養物前駆体の前駆物質を37℃において震盪器上で12時間培養した。
【0066】
12.2 培養物前駆体の調製
例12.1に記載の無菌培地(100mL)に、例12.1に従い得られた大腸菌種菌株の培養物前駆体の前駆物質5mLを接種した。培養物前駆体を震盪器上で37℃において培養した。OD6000.25において、L−ラムノース0.2%(w/w)を培養物に加えた。OD6005において、細胞を遠心分離により摘出し、バッファー(エチレンジアミンテトラ酢酸1.80g/L、二ナトリウム塩/酢酸ナトリウムバッファー2.65g/L、pH7.0)で2回洗浄し、乾燥細胞濃度15〜20%(w/w)において同じバッファー中で再分散させた。該細胞懸濁液を−40℃で貯蔵した。
【0067】
例13
アミダーゼアッセイ
アミダーゼを含有するエシェリキア属菌株の被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズ(0.4g湿潤質量)を、37℃において2−ヒドロキシ−2−メチル−3,3,3−トリフルオロプロピオンアミド(1.0g)のホスフェートバッファー(0.1M、pH8.0、0.9mL)攪拌溶液に加えた。0分、30分後、および60分後にサンプル(200μl)を取った。形成されるアンモニアのモル量を測定した。形成されるアンモニアのモル量は、形成される2−ヒドロキシ−2−メチル−3,3,3−トリフルオロプロピオン酸のモル量に等しい。
【0068】
例14
ポリアクリルアミドビーズ中のラムノースプロモータの転写調節下にアミダーゼをコードする遺伝子を有するプラスミドを含む大腸菌種菌株の被包
被包は、例12に従い得られた大腸菌種菌株の細胞懸濁液(19%(w/w)、過硫酸アンモニウム(1.86g、8mmol)の蒸留水(7.0g)溶液およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(0.928g、8mmol)の蒸留水(5g)溶液を使用し、重合を400rpm(ビスコ−ジェット(登録商標)スターラー)において行ったことを除き、例3に記載の被包と類似の態様で実施した。得られた大腸菌種菌株の被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズを分離し、例3に従い洗浄し、4℃においてホスフェートバッファー(0.1M、pH7.0)中で貯蔵した。湿潤ビーズは、サイズ200μm〜2000μmの不規則な球形をしており、機械強度は>200mNであった。乾燥ポリアクリルアミドビーズ/湿潤ポリアクリルアミドビーズ比は0.21:1(w/w)であった。比活性は、0.029μm 2−ヒドロキシ−2−メチル−3,3,3−トリフルオロプロピオンアミド/(分×mg 乾燥ポリアクリルアミドビーズ)であった。
【0069】
例15
2−ヒドロキシ−2−メチル−3,3,3−トリフルオロプロピオンアミドから2−ヒドロキシ−2−メチル−3,3,3−トリフルオロプロピオン酸への転化、バッチ反応
例14に従い得られたアミダーゼをコードする遺伝子を有するプラスミドを含有する大腸菌種菌株の細胞を含むポリアクリルアミドビーズ(0.4g湿潤質量)を、2−ヒドロキシ−2−メチル−3,3,3−トリフルオロプロピオンアミド(1.0g、6.366mmol)のホスフェートバッファー(0.1M、pH8.0、10mL)溶液に37℃において1時間加えた。2−ヒドロキシ−2−メチル−3,3,3−トリフルオロプロピオン酸(2%)が形成された。
【0070】
例16
ポリアクリルアミドビーズ中のラムノースプロモータの転写調節下にアミダーゼをコードする遺伝子を有するプラスミドを含有する大腸菌種菌株の被包
アクリルアミド(21.13g、297mmol)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(1.88g、12mmol)および2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(0.75g、4.8mmol)をホスフェートバッファー(18.75g、50mM、pH7.0)中に溶解し、溶液のpHを7.0に調整した。過硫酸アンモニウム(0.93g、4mmol)の蒸留水(2.5g)溶液を、例12に従い得られた大腸菌種菌株の細胞懸濁液(19%(w/w)感想細胞、82.5g)中に加えた。N、N,N’,N’−テトラメチル−エチレンジアミン(0.928g、8mmol)の蒸留水(5g)を450rpmにおいて反応器(1L)中で鉱物油(Isopar M、350g)中に分散させた。モノマー溶液、細胞懸濁液、および油相を別々に窒素に15分間かけた。モノマー溶液(流速:2.5g/分)および細胞懸濁液(流速:5g/分)を別々にミキシングフラスコ2.5mLにポンピングした。得られた混合物は直ちに攪拌油(450rpm、ビスコ−ジェット(登録商標)スターラー)中に20℃において滴下した。全部添加した後、反応混合物を20℃において更に3.75時間攪拌した。得られた大腸菌種菌株の被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズを分離し、例3に従い洗浄し、4℃においてホスフェートバッファー(0.1M、pH7.0)中で貯蔵した。膨潤ビーズは、サイズ1000μm〜2000μmの不規則な球形をしており、機械強度は>200mNであった。乾燥ポリアクリルアミドビーズ/湿潤ポリアクリルアミドビーズ比は、0.25:1.00(w/w)であった。比活性は、0.016μmol ニコチンアミド/(分×mg 乾燥ポリアクリルアミドビーズ)であった。
【0071】
例17
ニトリルヒドラターゼ含有ロドコッカス属の被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズの、ニトリルからアミドへの転化のための生体触媒としての使用
例7に従い得られたロドコッカス属の被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズ(25g 湿潤質量)を、ニトリルのホスフェートバッファー(0.05M、pH7、100mL)攪拌溶液、またはホスフェートバッファー(0.05M、pH7、100mL)およびメタノール攪拌混合物中に25℃において徐々に加えた。5分後、15分後、60分後にサンプル(3mL)を取り、直ちにHSO(48%(w/w)、0.03mL)と混合した。反応混合物をHPLC又はGCにより分析した。比活性を決定した。結果を表2に示す。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程:
(i) アクリルモノマー混合物の水溶液を提供すること;
(ii) 過硫酸塩水溶液中の細胞懸濁液を提供すること;
(iii) 任意に界面活性剤を含有し得る水非混和性液体中の、第三級アミン水溶液のエマルジョンを提供すること;
(iv) 工程(i)で提供される前記溶液と工程(ii)で提供される前記懸濁液を混合すること;
(v) 工程(iv)で得られる前記混合物を工程(iii)で提供される攪拌エマルジョンに加えること;
(vi) アクリルモノマー混合物を重合すると同時に細胞を被包し被包性細胞を含むポリアクリルアミドビーズを形成すること;
を含む被包性細胞含有ポリアクリルアミドビーズの製造方法。
【請求項2】
ポリアクリルアミドビーズのサイズが0.05〜3mmであり、機械強度が200mN以上である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリアクリルアミドビーズのサイズが0.1〜1.5mmであり、機械強度が300mN以上である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
乾燥細胞/アクリルモノマー混合物比が0.001:1〜1:1(w/w)である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
乾燥細胞/アクリルモノマー混合物比が0.2:1〜0.9:1(w/w)である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
細胞が細菌性細胞である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
細胞がノカルジア状放線菌類属または腸内細菌科の細菌性細胞である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第三級アミンがN,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン又は3−(ジメチルアミノ)プロピオニトリルである請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
水非混和性液体が鉱物油である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
界面活性剤が使用されていない請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(vi)で形成されるポリアクリルアミドビーズが分離される請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法により得られる被包性細胞を含有するポリアクリルアミドビーズ。
【請求項13】
被包性細胞がニトリルヒドラターゼを含有するロドコッカス属菌株の細胞である請求項12に記載のポリアクリルアミドビーズ。
【請求項15】
基質から産物へのトランスフォーメーションのための生体触媒としての請求項12又は13に記載のポリアクリルアミドビーズの使用。
【請求項16】
基質がニトリルであり、産物が対応するアミドである請求項15に記載の使用。
【請求項17】
ニトリルが3−シアノピリジンであり、産物がニコチンアミドである請求項16に記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−196213(P2012−196213A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−108572(P2012−108572)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【分割の表示】特願2006−537159(P2006−537159)の分割
【原出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(398075600)ロンザ アーゲー (58)
【Fターム(参考)】