説明

生体試料中の馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を測定する方法

【課題】生体試料中の馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を測定する方法を提供すること。
【解決手段】(1)生体から採取された生体試料に、馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解し、かつメチル馬尿酸をメチル安息香酸(トルイル酸)とグリシンに加水分解する酵素を作用させ、(2)(1)の工程で得た反応液を酸化し、(3)(2)の工程で得た反応液、D−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼを混合し、(4)(3)の工程で発生した過酸化水素水の濃度を特定する。また、(5)(2)〜(4)の工程とは別に、(1)の工程で得た反応液、D−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼを混合し、(6)(5)の工程で発生した過酸化水素水の濃度を特定し、(7)(4)の工程で得た過酸化水素水の濃度と、(6)の工程で得た過酸化水素水の濃度から生体試料中の馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を液状試薬にて測定する方法ならびにキットに関する。
【背景技術】
【0002】
馬尿酸はトルエンの尿中代謝物として、メチル馬尿酸はキシレンの尿中代謝物として、特殊健康診断での測定項目のひとつになっている。
【0003】
しかしながら、これらの測定は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるものであり(例えば、特許文献1および2参照)、測定が煩雑である。また、測定を簡便に行うには、液状試薬にすることが挙げられるが、馬尿酸およびメチル馬尿酸はメチル基の有無しか化学構造の差異がないため、これらを区別して測定することは困難とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−230761号公報
【特許文献2】特開平06−043150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、より簡便に馬尿酸とメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を測定するための方法ならびにキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、馬尿酸の加水分解物である安息香酸およびメチル馬尿酸の加水分解物であるメチル安息香酸がD−アミノ酸オキシダーゼによるアミノ酸の分解反応を阻害するが、メチル安息香酸の酸化物であるフタル酸は阻害しないことに着目し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、生体試料中の馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を測定する方法を提供し、該方法は、
(1)生体から採取された生体試料に、馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解し、かつメチル馬尿酸をメチル安息香酸(トルイル酸)とグリシンに加水分解する酵素を作用させる工程、
(2)(1)の工程で得た反応液を酸化する工程、
(3)(2)の工程で得た反応液、D−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼを混合し、過酸化水素水を発生させる工程、
(4)(3)の工程で発生した過酸化水素水の濃度を特定する工程、
(5)(2)〜(4)の工程とは別に、(1)の工程で得た反応液、D−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼを混合し、過酸化水素水を発生させる工程、
(6)(5)の工程で発生した過酸化水素水の濃度を特定する工程、および
(7)(4)の工程で得た過酸化水素水の濃度と、(6)の工程で得た過酸化水素水の濃度から生体試料中の馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を算出する工程
を含む。
【0008】
1つの実施態様では、前記工程(1)と前記工程(2)の反応順を逆転させてもよい。具体的には、生体試料中の馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を測定する方法を提供し、該方法は、
(1’)生体から採取された生体試料を酸化する工程、
(2’)(1’)の工程で得た反応液に、馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解し、かつN−カルボキシベンゾイルグリシンをフタル酸とグリシンに加水分解する酵素を作用させる工程、
(3)(2’)の工程で得た反応液、D−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼを混合し、過酸化水素水を発生させる工程、
(4)(3)の工程で発生した過酸化水素水の濃度を特定する工程、
(5’)(2)〜(4)の工程とは別に、生体から採取された生体試料に、馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解し、かつメチル馬尿酸をメチル安息香酸(トルイル酸)とグリシンに加水分解する酵素を作用させて得た反応液、D−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼを混合し、過酸化水素水を発生させる工程、
(6)(5)の工程で発生した過酸化水素水の濃度を特定する工程、および
(7)(4)の工程で得た過酸化水素水の濃度と、(6)の工程で得た過酸化水素水の濃度から生体試料中の馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を算出する工程
を含む。
【0009】
本発明は、また、馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解する酵素、アミノ酸、D−アミノ酸オキシダーゼ、過酸化水素水の濃度を特定するための試薬を含む、生体試料中の馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を測定するキットを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より簡便に馬尿酸とメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の工程(1)〜(7)における反応系を示す図である。
【図2】本発明の工程(1’)〜(7)における反応系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を液状試薬にて測定する方法ならびにキットに関する。
【0013】
本発明における「馬尿酸」とは、何も修飾されていない馬尿酸そのものをいい、別名でN−ベンゾイルグリシンをいう。馬尿酸は、トルエンの代謝物質である。
【0014】
本発明における「メチル馬尿酸」とは、馬尿酸のベンゼン環構造のo−位、m−位、p−位のいずれか1つにメチル基が修飾されたものをいい、別名でN−トルオイルグリシンをいう。メチル馬尿酸は、キシレンの代謝物質である。なお、「メチル馬尿酸」は、馬尿酸の不斉炭素にメチル基を有するもの(N−ベンゾイルアラニン)の別名としても用いられることがあるが、本発明における「メチル馬尿酸」としては、N−ベンゾイルアラニンは除外される。
【0015】
本発明の第1の態様による方法は、以下の工程を含む。
(1)生体から採取された生体試料に、馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解し、かつメチル馬尿酸をメチル安息香酸(トルイル酸)とグリシンに加水分解する酵素を作用させる工程
(2)(1)の工程で得た反応液を酸化する工程
(3)(2)の工程で得た反応液、D−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼを混合し、過酸化水素水を発生させる工程
(4)(3)の工程で発生した過酸化水素水の濃度を特定する工程
(5)(2)〜(4)の工程とは別に、(1)の工程で得た反応液、D−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼを混合し、過酸化水素水を発生させる工程
(6)(5)の工程で発生した過酸化水素水の濃度を特定する工程
(7)(4)の工程で得た過酸化水素水の濃度と、(6)の工程で得た過酸化水素水の濃度から生体試料中の馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を算出する工程
【0016】
まず、本発明は(1)生体から採取された生体試料に、馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解し、かつメチル馬尿酸をメチル安息香酸(トルイル酸)とグリシンに加水分解する酵素を作用させる工程を実施する。
【0017】
生体としては、本発明が有機溶媒を取り扱うヒトの特殊健康診断に主に用いられる観点から、主にヒトであるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、イヌ、ネコ、ブタおよびウシ等の動物も含まれる。
【0018】
生体試料としては、本発明が有機溶媒を取り扱うヒトの特殊健康診断に主に用いられる観点から、主に尿であるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、血液、唾液、骨髄液および細胞間質液等も含まれる。
【0019】
「馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解し、かつメチル馬尿酸をメチル安息香酸(トルイル酸)とグリシンに加水分解する酵素」としては、例えば、アミノアシラーゼ、および馬尿酸加水分解酵素等が挙げられる。特に安価に入手できる観点から、馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解する酵素としては、アミノアシラーゼが好ましい。生体試料に当該酵素を作用させることにより、生体試料中の馬尿酸は安息香酸とグリシンに、生体試料中のメチル馬尿酸はメチル安息香酸(トルイル酸)とグリシンに、それぞれ加水分解される。
【0020】
アミノアシラーゼ(EC番号:EC3.5.1.14)は、別名として、アシラーゼ、N−アシル−L−アミノ酸アミドヒドロラーゼ、N−アシルアミノ酸アミドヒドロラーゼ、L−アミノ酸アシラーゼ、アミノ酸デアシラーゼ、またはベンズアミダーゼとも呼ばれている。
【0021】
なお、本発明における「安息香酸」とは、馬尿酸の分解物であり、何も修飾されていない安息香酸そのものをいう。
【0022】
また、本発明における「メチル安息香酸」とは、メチル馬尿酸の分解物であり、安息香酸のベンゼン環構造のo−位、m−位、p−位のいずれか1つにメチル基が修飾されたものをいう。
【0023】
次いで、(2)(1)の工程で得た反応液を酸化する工程を実施する。つまり、メチル安息香酸を酸化させ、フタル酸にする。一方、安息香酸は酸化されない。
【0024】
酸化に用いる酸化剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム、二クロム酸カリウム塩化クロミル、過硫酸カリウムが挙げられる。特に安価に入手でき、温和な条件で反応を進行できる観点から、酸化剤としては、過硫酸カリウムが好ましい。
【0025】
次いで、(3)(2)の工程で得た反応液、D−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼを混合し、過酸化水素水を発生させる工程を実施する。
【0026】
ここで、D−アミノ酸オキシダーゼとは、補因子としてフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を含むペルオキシソーム酵素の一つであり、D−アミノ酸を相当するイミノ酸に変換し、同時にアンモニアと過酸化水素を合成する酵素をいう。
【0027】
また、D−アミノ酸としては、例えば、アラニン、ロイシン、イソロイシン、リジン、バリン、グルタミン酸、プロリンおよびチロシン等のα−アミノ酸だけでなく、β−アミノ酸およびγ−アミノ酸等も挙げられ、特に限定されるものではない。また、D−アミノ酸自体が高価であるため、本発明におけるD−アミノ酸としては、D−アミノ酸のみの純粋な物質のみならず、当該D−アミノ酸も含むラセミ体も含まれる。これらのことをふまえ、安価に入手できる観点から、D−アミノ酸としては、アラニン(ラセミ体)が好ましい。
【0028】
例えば、D−アミノ酸としてアラニン(ラセミ体)を用いた場合、本工程によりピルビン酸、アンモニア、そして過酸化水素水が発生する反応が実施される。
【0029】
工程(3)の反応時、(2)の工程で得た反応液に安息香酸が含まれる場合、当該反応は当該安息香酸によって阻害される。ただし、(2)の工程で得た反応液には、メチル安息香酸は存在せず(フタル酸に変化している)、当該メチル安息香酸が当該反応を阻害することはない。
【0030】
表1は、安息香酸、メチル安息香酸、フタル酸それぞれにおいて、D−アミノ酸オキシダーゼの酵素活性を50%阻害させるために必要な量を示している。それぞれのメチル安息香酸のD−アミノ酸オキシダーゼの酵素活性を50%阻害させるために必要な量は、その酸化物であるフタル酸になることにより、多くなることがわかる。
【0031】
【表1】

【0032】
そして、(4)(3)の工程で発生した過酸化水素水の濃度を特定する工程を実施する。過酸化水素水の濃度を特定する方法としては公知の液状試薬を用いた方法を採用することができる。例えば、4−アミノアンチピリン(4−AA)および/またはN−エチル−N−(3−スルホプロピル)−m−アニシジン(ADPS)を基質とするペルオキシダーゼを用いた酵素発色法および過酸化水素による鉄イオンの酸化に伴う色素の呈色反応を利用する方法等が挙げられる。
【0033】
本発明は、(5)(2)〜(4)の工程とは別に、(1)の工程で得た反応液、D−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼを混合し、過酸化水素水を発生させる工程を実施する。つまり、安息香酸だけでなくメチル安息香酸もD−アミノ酸オキシダーゼによるD−アミノ酸の反応も阻害することになる。
【0034】
次いで、(6)(5)の工程で発生した過酸化水素水の濃度を特定する工程を実施する。本工程は、(4)の工程と相違するものではない。いうまでもないが、(4)に用いる試薬と同じ試薬を採用することが好ましい。
【0035】
最後に、(7)(4)の工程で得た過酸化水素水の濃度と、(6)の工程で得た過酸化水素水の濃度から生体試料中の馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を算出する工程を実施する。(4)の工程で得た過酸化水素水の濃度は、馬尿酸の濃度に関連し、一方、(6)の工程で得た過酸化水素水の濃度は、馬尿酸およびメチル馬尿酸の総濃度に関連する。したがって、馬尿酸およびメチル馬尿酸の総濃度から馬尿酸の濃度を差し引くことにより、メチル馬尿酸の濃度も算定することできる。
【0036】
図1は、上述した本発明の工程(1)〜(7)における反応系を示す図である。
【0037】
本発明の第2の態様による方法は、前記工程(1)と前記工程(2)の反応順を逆転させた発想に基づく。具体的には、以下の工程を含む、生体試料中の馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を測定する方法を提供する。
(1’)生体から採取された生体試料を酸化する工程
(2’)(1’)の工程で得た反応液に、馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解し、かつN−カルボキシベンゾイルグリシンをフタル酸とグリシンに加水分解する酵素を作用させる工程
(3)(2’)の工程で得た反応液、D−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼを混合し、過酸化水素水を発生させる工程
(4)(3)の工程で発生した過酸化水素水の濃度を特定する工程
(5’)(2)〜(4)の工程とは別に、生体から採取された生体試料に、馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解し、かつメチル馬尿酸をメチル安息香酸(トルイル酸)とグリシンに加水分解する酵素を作用させて得た反応液、D−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼを混合し、過酸化水素水を発生させる工程
(6)(5’)の工程で発生した過酸化水素水の濃度を特定する工程
(7)(4)の工程で得た過酸化水素水の濃度と、(6)の工程で得た過酸化水素水の濃度から生体試料中の馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を算出する工程
【0038】
まず、(1’)生体から採取された生体試料を酸化する工程を実施する。つまり、メチル馬尿酸を酸化させ、N−カルボキシベンゾイルグリシンにする。一方、馬尿酸は酸化されない。
【0039】
次いで、(2’)(1’)の工程で得た反応液に、馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解し、かつN−カルボキシベンゾイルグリシンをフタル酸とグリシンに加水分解する酵素を作用させる工程を実施する。なお、「馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解し、かつN−カルボキシベンゾイルグリシンをフタル酸とグリシンに加水分解する酵素」とは、上述の「馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解し、かつメチル馬尿酸をメチル安息香酸(トルイル酸)とグリシンに加水分解する酵素」と同じ酵素をいう。
【0040】
次いで、(3)(2’)の工程で得た反応液、D−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼを混合し、過酸化水素水を発生させる工程を実施する。用いるD−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼは上述の通りである。
【0041】
そして、(4)(3)の工程で発生した過酸化水素水の濃度を特定する工程を実施する。過酸化水素水の濃度の特定については上述の通りである。
【0042】
本発明は、(5’)(2)〜(4)の工程とは別に、生体から採取された生体試料に、馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解し、かつメチル馬尿酸をメチル安息香酸(トルイル酸)とグリシンに加水分解する酵素を作用させて得た反応液、D−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼを混合し、過酸化水素水を発生させる工程を実施する。ここで注意しなければならないのは、(1’)の工程を実施するのではなく、生体から採取された生体試料に、馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解し、かつメチル馬尿酸をメチル安息香酸(トルイル酸)とグリシンに加水分解する酵素を作用させる工程、つまり、第1の態様における(1)の工程と同じ工程を実施することに注意する。また、用いるD−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼは上述の通りである。
【0043】
次いで、(6)(5)の工程で発生した過酸化水素水の濃度を特定する工程を実施し、最後に、(7)(4)の工程で得た過酸化水素水の濃度と、(6)の工程で得た過酸化水素水の濃度から生体試料中の馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を算出する工程を実施する。これらの工程は上述の通りである。
【0044】
図2は、上述した本発明の工程(1’)〜(7)における反応系を示す図である。
【0045】
また、本発明は、これらの方法を実施するためのキットを含む。キットは、馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解する酵素、アミノ酸、D−アミノ酸オキシダーゼ、過酸化水素水の濃度を特定するための試薬を含む。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0047】
(A)ヒトから採取した0.2mLの血液に、アミノアシラーゼ(5000kU/L)水溶液を0.8mL添加し、5分間反応させる。次いで、得られた反応液に、過硫酸カリウム[酸化剤](20mM)水溶液を0.2mL添加し、5分間反応させる。さらに、得られた反応液に、アラニン(ラセミ体)(15mM)およびD−アミノ酸オキシダーゼ(20kU/L)の水溶液を0.4mL添加し、5分間反応させる。これにより発生した過酸化水素水の濃度について、4−アミノアンチピリン(4−AA)およびN−エチル−N−(3−スルホプロピル)−m−アニシジン(ADPS)を基質とするペルオキシダーゼを用いた酵素発色法を用いて特定する。
【0048】
(B)上記(A)とは別にヒトから採取した0.2mLの血液に、アミノアシラーゼ(5000kU/L)の水溶液を0.8mL添加し、5分間反応させた反応液に、アラニン(ラセミ体)(15mM)およびD−アミノ酸オキシダーゼ(20kU/L)の水溶液を添加し、5分間反応させる。これにより発生した過酸化水素水の濃度について、4−アミノアンチピリン(4−AA)およびN−エチル−N−(3−スルホプロピル)−m−アニシジン(ADPS)を基質とするペルオキシダーゼを用いた酵素発色法を用いて特定する。
【0049】
上記(A)および(B)より求まる過酸化水素水の濃度から、馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を算出する。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、特殊健康診断の分野において利用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中の馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を測定する方法であって、
(1)生体から採取された生体試料に、馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解し、かつメチル馬尿酸をメチル安息香酸(トルイル酸)とグリシンに加水分解する酵素を作用させる工程、
(2)(1)の工程で得た反応液を酸化する工程、
(3)(2)の工程で得た反応液、D−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼを混合し、過酸化水素水を発生させる工程、
(4)(3)の工程で発生した過酸化水素水の濃度を特定する工程、
(5)(2)〜(4)の工程とは別に、(1)の工程で得た反応液、D−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼを混合し、過酸化水素水を発生させる工程、
(6)(5)の工程で発生した過酸化水素水の濃度を特定する工程、および
(7)(4)の工程で得た過酸化水素水の濃度と、(6)の工程で得た過酸化水素水の濃度から生体試料中の馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を算出する工程
を含む、方法。
【請求項2】
生体試料中の馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を測定する方法であって、
(1’)生体から採取された生体試料を酸化する工程、
(2’)(1’)の工程で得た反応液に、馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解し、かつN−カルボキシベンゾイルグリシンをフタル酸とグリシンに加水分解する酵素を作用させる工程、
(3)(2’)の工程で得た反応液、D−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼを混合し、過酸化水素水を発生させる工程、
(4)(3)の工程で発生した過酸化水素水の濃度を特定する工程、
(5’)(2)〜(4)の工程とは別に、生体から採取された生体試料に、馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解し、かつメチル馬尿酸をメチル安息香酸(トルイル酸)とグリシンに加水分解する酵素を作用させて得た反応液、D−アミノ酸およびD−アミノ酸オキシダーゼを混合し、過酸化水素水を発生させる工程、
(6)(5)の工程で発生した過酸化水素水の濃度を特定する工程、および
(7)(4)の工程で得た過酸化水素水の濃度と、(6)の工程で得た過酸化水素水の濃度から生体試料中の馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を算出する工程
を含む、方法。
【請求項3】
馬尿酸を安息香酸とグリシンに加水分解する酵素、アミノ酸、D−アミノ酸オキシダーゼ、過酸化水素水の濃度を特定するための試薬を含む、生体試料中の馬尿酸およびメチル馬尿酸のそれぞれの濃度を測定するキット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−66390(P2013−66390A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205344(P2011−205344)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】