説明

生体試料保存用試験管

【課題】 微量の蛋白質やペプチドの吸着が起こりにくく、プロテオーム解析にも使用できる生体試料保存用試験管、特に尿検査試験管を提供する。
【解決手段】 単量体としてホスホリルコリン基を有する単量体(a)と疎水性単量体(b)とを含み、かつその共重合比a/bが35/65〜75/25である共重合体を原材料である試験管にコーティングしてなることを特徴とする生体試料保存用試験管。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料保存用試験管に関し、さらに詳しくは、微量の蛋白質やペプチドの吸着が起こりにくく、プロテオーム解析にも使用できる生体試料保存用試験管、特に尿検査試験管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
尿には、病態に関連する様々な物質、例えば、蛋白質、糖、電解質、血液などが含まれており、それらの有無や濃度を測定することにより、病気の有無、状態を知ることができる。そのため、現在、尿中のグルコース、クレアチニン、NAG、尿中アルブミン、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、クロル等の項目を測定することが実用化されている。その様な場合、人体から排泄された尿を尿検査試験管に移して、これらの項目を測定している。また、尿成分として赤血球や白血球、尿酸、細胞、細菌などの固形成分の量や種類を調べるには、尿検査試験管として尿沈渣管が用いられている(特許文献1)。
【0003】
一方、ここ数年、プロテオーム解析の研究が急速に進展し、種々の疾患特異的マーカーが新たに報告されてきている。尿を対象としたプロテオーム解析も広く取り組まれており、腎・泌尿器科疾患を対象により良いバイオマーカーの探索が検討されている。このような疾患プロテオミク研究では、疾患に関連した尿をいかに収集・保存するかが重要な問題であり、日常検査で採取した検体をそのまま保存できれば、簡便かつ迅速に研究に着手できる。従って、日常検査で扱う尿検査試験管がそのままサンプル収集に使えると、煩雑さが伴わずに有用である。
【0004】
しかしながら、本発明者の検討によると、日常検査に使用されている尿検査試験管をプロテオーム解析の研究に用いると、通常の尿検査では問題とならなかった、サンプル保存において微量のタンパク質やペプチド吸着が起こり、結果を間違って解釈するという問題があるということを発見した。
【特許文献1】特開平7−280800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情のもとで、微量の蛋白質やペプチドの吸着が起こりにくく、プロテオーム解析にも使用できる生体試料保存用試験管、特に尿検査試験管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、驚くべきことに、特定の共重合比の共重合体を市販の尿検査試験管にコーティングすると、尿検査試験管自体に尿を入れても蛋白が吸着しにくく、尿検査項目も正確に測定できかつプロテオーム解析も正確にできることを見出し、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下のとおりである。
(1)単量体としてホスホリルコリン基を有する単量体(a)と疎水性単量体(b)とを含み、かつその共重合比a/bが35/65〜75/25である共重合体を原材料である試験管にコーティングしてなることを特徴とする生体試料保存用試験管。
(2)尿検査試験管である、上記(1)に記載の生体試料保存用試験管。
(3)プロテオーム解析用試験管を兼用している、上記(1)または(2)に記載の生体試料保存用試験管。
(4)プロテオーム解析が、分子量が1000〜6000の低分子量域の尿プロテオーム解析である、上記(3)に記載の生体試料保存用試験管。
(5)生体試料保存用試験管が尿沈渣管である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の生体試料保存用試験管。
(6)尿検査試験管が透明である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の生体試料保存用試験管。
(7)ホスホリルコリン基を有する単量体が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンであり、疎水性単量体がメタクリル酸−n−ブチルエステルである、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の生体試料保存用試験管。
(8)使い捨ての生体試料保存用試験管である、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の生体試料保存用試験管。
(9)共重合体の共重合比a/bが40/60〜60/40である、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の生体試料保存用試験管。
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載した生体試料保存用試験管に尿を入れ、その尿中の尿検査項目を測定し、一方、残りの尿をプロテオーム解析することを特徴とするプロテオーム解析法。
(11)原材料である試験管に、単量体としてホスホリルコリン基を有する単量体(a)と疎水性単量体(b)とを含みかつその共重合比a/bが35/65〜75/25である共重合体の溶液を接触させ、得られる尿検査試験管を乾燥することを特徴とするプロテオーム解析兼用尿検査試験管の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の生体試料保存用試験管は、単量体としてホスホリルコリン基を有する単量体(a)と疎水性単量体(b)とを含み、かつその共重合比a/bが35/65〜75/25である共重合体を原材料である試験管にコーティングしてなることを特徴とする。
【0009】
本発明に用いる共重合体中のホスホリルコリン基を有する単量体とは、下記式
【0010】
【化1】

【0011】
で表されるホスホリルコリン基を有する単量体であれば、特に限定されないが、通常、ビニル基とホスホリルコリン基とを有する単量体が好ましく例示できる。具体的には、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−アクロイルオキシエチルホスホリルコリン、3−メタクリロイルオキシプロピルホスホリルコリン、3−アクロイルオキシプロピルホスホリルコリン、4−メタクリロイルオキシブチルホスホリルコリン、4−アクロイルオキシブチルホスホリルコリン、アリルホスホリルコリン、ブテニルホスホリルコリン等を例示できる。これらの単量体のうち、下記式
【0012】
【化2】

【0013】
で表される2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが入手の点から好ましい。
【0014】
本発明に用いる共重合体中の疎水性単量体としては、ホスホリルコリン基を有する単量体と共重合可能な疎水性単量体が好ましい。そのような疎水性単量体としては、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン系単量体、ビニルエーテル単量体、アルケン単量体、モノカルボン酸ビニル単量体、イタコン酸ジアルキルエステル単量体を例示できる。
【0015】
メタクリル酸エステル単量体としては、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸トリデシル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の単量体を例示できる。
【0016】
アクリル酸エステル単量体としては、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸トリデシル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の単量体を例示できる。
【0017】
スチレン系単量体としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン等の単量体を例示できる。
【0018】
ビニルエーテル単量体としては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等の単量体を例示できる。アルケン単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレンの単量体を例示できる。モノカルボン酸ビニル単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブタン酸ビニルの単量体を例示できる。イタコン酸ジアルキルエステル単量体としては、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジプロピルイタコネート、ジ−n−ブチルイタコネート等の単量体を挙げることができる。
【0019】
疎水性単量体としては、下記式
【化3】

【0020】
で表されるメタクリル酸−n−ブチルエステル(CAS番号97-88-1)が、入手の点から最も好ましい。
【0021】
本発明に用いる共重合体においては、ホスホリルコリン基を有する単量体が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンであり、疎水性単量体がメタクリル酸−n−ブチルエステルであることが最も好ましい。
【0022】
本発明に用いる共重合体の共重合比a/bは、35/65〜75/25であり、40/60〜60/40がさらに好ましい。
【0023】
本発明においては、共重合体においてどちらか一方の単量体に比が偏ると蛋白吸着防止機能が弱くなる。
【0024】
共重合体は、その共重合体を適当な溶媒に溶解させた状態でコーティング液にして用いることが好ましい。このとき、溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール及びこれらの混合溶媒を用いることができるが、安全性の点から水が好ましい。
【0025】
本発明において、コーティングするための原材料の試験管は、尿検査試験管が好適であり、さらに尿沈渣管であることが最も好適である。
【0026】
原材料の試験管は、尿を入れることにより変質しない材料から構成されていることが好ましい。原材料の試験管の材質としては、具体的には、ガラス、プラスチックが好ましい。この場合、プラスチックとしては、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルスチレンを例示できる。原材料の試験管は、さらに沈渣の状況、尿量やにごりを判別できるようにするため、透明な物質から製造されていることが好ましい。さらに、原材料の試験管は、使い捨ての試験管を用いて、本発明の生体試料保存用試験管を使い捨ての生体試料保存用試験管としてもよい。
【0027】
用いる原材料の試験管としては、例えば、特開平7−280800号公報に記載の尿沈渣用遠心試験管、すなわち、円筒形状の試験管上部と、この試験管上部の下端に連続して内周面が先細りのテーパー状に形成された試験管中部と、この試験管中部の下端に連続して内周面が小径の円筒形状に形成され、下端が底壁で閉口した試験管下部とを備えることを特徴とする尿沈渣用遠心試験管(尿沈渣管)を用いることができる。
【0028】
本発明において、原材料の試験管から、本発明の生体試料保存用試験管を製造するには、1)共重合体の溶液に試験管を浸し、次いで乾燥させる方法、2)前記1)の方法において、試験管の浸漬及び乾燥を複数回、繰り返す方法、3)試験管の内部の表面に、共重合体の溶液を塗付して乾燥させる方法、4)前記3)の方法において、試験管への塗付及び乾燥を複数回、繰り返す方法、等を例示できる。これらの場合、共重合体の溶液に試験管を浸したり、共重合体の溶液を試験管に塗付したりした後、得られる試験管を水で洗浄した後、乾燥操作に付してもよい。
【0029】
本発明の生体試料保存用試験管を製造する際、共重合体の溶液は、共重合体の濃度が好ましくは0.001〜5重量%、さらに好ましくは0.005〜3重量%である。溶液への試験管の浸漬時間は、例えば、0.5〜10分が好ましい。乾燥温度は、例えば、20〜80℃が好ましい。この場合、乾燥は、自然乾燥でも減圧乾燥でもよい。
【0030】
本発明の生体試料保存用試験管は、原材料の試験管が透明であれば、コーティング剤が吸着されていても透明な生体試料保存用試験管となる。
【0031】
本発明の生体試料保存用試験管は、尿プロテオーム解析に有用であり、実際に尿のプロテオームで解析されるペプチドや蛋白質の分子量は特に限定されないが、分子量が1000〜6000の低分子量域の尿プロテオーム解析に好適である。例えば、本発明の生体試料保存用試験管に患者や健常者の尿を入れ、尿検査として一般的な項目を測定した後、残りの尿をMALDI−TOF−MS、SELDI−TOF−MS等の質量分析計に付し、病態患者由来の尿と健常者由来の尿の種々の蛋白質の有無や量を比較することにより新たなマーカーを発見しうる。なお、本明細書においては、蛋白質にはペプチドも含まれるものとする。本発明の生体試料保存用試験管は蛋白質の吸着が起こりにくいので目的の蛋白質が微量に存在する物質でも構わない。また、それとは別に、尿中の微量蛋白質を測定するときに、生体試料保存用試験管への吸着がほとんどないので尿を長時間保存してもその蛋白質を正確に測定できる。
【実施例】
【0032】
原材料の尿沈渣管としては、特開平7−280800号公報に記載の尿沈渣用遠心分離管(国宗工業所製、材質はポリアクリロニトリルスチレン)を用いた。
実施例1及び実施例2 本発明の尿沈渣管の作製
2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸−n−ブチルエステルとの共重合体(共重合比50:50)の0.05重量%水溶液を作成し、これに原材料の尿沈渣管を1分、浸漬させ、一夜50℃インキュベータにて放置乾燥し、さらに一晩で真空乾燥機(デシケーター)に入れ十分乾燥することにより、実施例1の尿沈渣管(1回コート)を得た。同様にして水溶性ポリマーを浸漬乾燥の操作を2回し、実施例2の尿沈渣管(2回コート)を作製した。
比較例1〜3 比較の尿沈渣管の作製
比較の尿沈渣管としては、非コートの原材料の尿沈渣管を比較例1の尿沈渣管とした。
【0033】
また実施例1において、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸−n−ブチルエステルとの共重合体の共重合比50:50を、共重合比30:70および80:20とした以外は同様に製造した尿沈渣管を、それぞれ比較例2および3の尿沈渣管とした。
実施例3 尿沈渣管への蛋白質の吸着の電気泳動による確認試験
上記の方法で作製した実施例1〜2、比較例1〜3の尿沈渣管に、それぞれ、尿試験紙法で尿タンパクが陰性の尿と500mg/dL以上であった尿を1.5mL分注した。これを、4℃に一昼夜保持し、尿を丁寧に取り除いた。次いで、吸着した蛋白質を回収するため、PBS(10mM りん酸バッファ、150mM NaCl、pH7.4)で尿沈渣管をリンスし、その沈渣管に50μLのサンプルバッファー(0.5%(v/v)グリセロール、1%(w/v) SDS、62.5mM Tris−HCl、0.2% BPB、pH6.8)を添加した。続いて、尿沈渣管のvortex攪拌を30秒間行い、SDS−PAGE電気泳動用のサンプルとした。SDS−PAGEは以下の手順で行った。10-20%グラジエントポリアクリルアミドゲル(ATTO社)にサンプルを20μLアプライし、定電流20mA 75分の泳動を行った。
【0034】
結果を図1に示す。尿タンパク陰性のサンプル1、3、5、7では、非コートあるいは、表面コートした尿沈渣管(実施例1、2および比較例2)および非コートの尿沈渣管(比較例1)のいずれの場合にもCBB染色でバンドは確認されなかった。一方、500mg/dL以上のサンプル2、4、6、8では、比較例1の尿沈渣管(非コート)および比較例2の尿沈渣管(共重合比30:70)から、分子量66kDa付近のアルブミンに相当するバンドが検出された。比較例3の尿沈渣管(共重合比80:20)も同様な結果を示した(図省略)。一方、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸−n−ブチルエステルとの共重合体(共重合比50:50)を、1回コートした実施例1の尿沈渣管および2回コートした実施例2の尿沈渣管では、CBB染色像からバンドがなく、タンパクの吸着が抑えられていることが明らかとなった。
実施例4 尿沈渣管への蛋白質の吸着のSELDI―TOF―MSによる確認試験
実施例2の2回コート尿沈渣管と比較例1の非コート尿沈渣管に、尿試験紙法で尿タンパクが陰性および100mg/dL以上であった尿を1.5mL分注した。これを、以下の条件で一昼夜保持した。
【0035】
(a)尿サンプルを尿沈渣管に分注後、室温に2時間保持した後、4℃保冷庫で静置
(b)尿サンプルを尿沈渣管に分注後、直ちに4℃保冷庫で静置
その後、尿サンプルを丁寧に取り除き、次いで、PBS(10mM りん酸、150mM NaCl、pH7.4)で尿沈渣管をリンスし、50μLの0.1%(v/v)TFA水溶液を添加した。続いて、尿沈渣管のvortex攪拌を30秒間行い、SELDI−TOF−MS解析用のサンプルとした。このサンプルをNP20 Array (Bio Rad社)に添加した後、マトリックスとしてsinapic acid (Bio Rad社)を塗布しSELDI−TOF−MS (Bio Rad社)でスペクトラムについて実施例2の表面コート尿沈渣管と比較例1の非コート尿沈渣管とで比較した。
【0036】
図2に、尿沈渣管に吸着した成分のSELDI−TOF−MSスペクトラムを示す。尿タンパク陰性のサンプルにおいて、比較例1の非コート尿沈渣管に上記(a)と(b)の保持条件で2800m/z付近および4700m/z付近にピークが確認され、尿紙試験法で蛋白陰性のサンプルにもかかわらず、タンパク/ペプチドの吸着していることが明らかとなった。同じ尿タンパク陰性のサンプルで共重合体を2回コートした実施例2の尿沈渣管ではいずれのピークも消失し、尿沈渣管へのタンパク/ペプチド吸着が回避されていることが判明した。同様に、尿タンパクが100mg/dL以上のサンプルにおいて、比較例1の非コート尿沈渣管では2800m/z付近、3400m/z付近、4700m/z付近、5000m/z付近にピークが検出された。一方、同じ尿タンパクが100mg/dL以上のサンプルで共重合体を2回コートした実施例2の尿沈渣管では、それらのピークは消失するか減衰し、タンパク/ペプチドの吸着が抑制されていることが示唆された。
実施例5 尿生化学の項目の測定
尿試験紙法でタンパクが陰性または100mg/dL以上であった尿を、それぞれ共重合体を2回コーティングした実施例2の尿沈渣管と比較例1の非コート尿沈渣管に移し、グルコース、総タンパク、クレアチニン、NAG、尿中アルブミン、カルシウム、マグネシウム、Na、K、Clについて既存の臨床検査試薬で測定した。ここでコントロールとして、尿沈渣管に移す前の検体(以下、原尿と記す)についても、尿生化学項目の測定を行った(表1、表2)。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

表1に尿試験紙法でタンパクが陰性だった検体における尿生化学項目の測定結果を示す。表2は尿試験紙法でタンパクが100mg/dL程度だった検体における尿生化学項目の測定結果を示す。いずれの場合も、共重合体を2回コーティングした実施例2の尿沈渣管と比較例1の非コート尿沈渣管に移した検体の測定値は、原尿とほぼ同等の測定値を示した。このことにより、原料の共重合体をコーティングした尿沈渣管は従来使用していた未処理尿沈渣管と同様に日常検査に利用できることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、尿沈渣管に吸着した成分のポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示したものである。N、A、C、C2は、それぞれ、比較例1(非コート)、比較例2(共重合比30:70)、実施例1(1回コート)、実施例2(2回コート)の尿沈渣管の結果を示す。また、1、3、5、7は尿タンパク陰性、また、2、4、6、8は、尿タンパクが500mg/dlのサンプルを用いた結果を示す。
【図2】図2は、尿沈渣管に吸着した成分のSELDI−TOF−MSスペクトラムを示したものである。試料は、尿試験紙法で尿タンパク陰性または100mg/dlのサンプルを、非コート尿沈渣管(比較例1)と共重合体を2回コートした尿沈渣管(実施例2)に入れ室温または4℃の条件で保存し、沈渣管に吸着された物質である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体としてホスホリルコリン基を有する単量体(a)と疎水性単量体(b)とを含み、かつその共重合比a/bが35/65〜75/25である共重合体を原材料である試験管にコーティングしてなることを特徴とする生体試料保存用試験管。
【請求項2】
尿検査試験管である、請求項1に記載の生体試料保存用試験管。
【請求項3】
プロテオーム解析用試験管を兼用している、請求項1または2に記載の生体試料保存用試験管。
【請求項4】
プロテオーム解析が、分子量が1000〜6000の低分子量域の尿プロテオーム解析である、請求項3に記載の生体試料保存用試験管。
【請求項5】
生体試料保存用試験管が尿沈渣管である、請求項1〜4のいずれかに記載の生体試料保存用試験管。
【請求項6】
尿検査試験管が透明である、請求項1〜5のいずれかに記載の生体試料保存用試験管。
【請求項7】
ホスホリルコリン基を有する単量体が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンであり、疎水性単量体がメタクリル酸−n−ブチルエステルである、請求項1〜6のいずれかに記載の生体試料保存用試験管。
【請求項8】
使い捨ての生体試料保存用試験管である、請求項1〜7のいずれかに記載の生体試料保存用試験管。
【請求項9】
共重合体の共重合比a/bが40/60〜60/40である、請求項1〜8のいずれかに記載の生体試料保存用試験管。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載した生体試料保存用試験管に尿を入れ、その尿中の尿検査項目を測定し、一方、残りの尿をプロテオーム解析することを特徴とするプロテオーム解析法。
【請求項11】
原材料である試験管に、単量体としてホスホリルコリン基を有する単量体(a)と疎水性単量体(b)とを含みかつその共重合比a/bが35/65〜75/25である共重合体の溶液を接触させ、得られる尿検査試験管を乾燥することを特徴とするプロテオーム解析兼用尿検査試験管の製造方法。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−31121(P2009−31121A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195401(P2007−195401)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【出願人】(595054408)株式会社第一器業 (1)
【Fターム(参考)】