説明

生体試料分析装置に用いられる誤作動防止機構

【課題】開閉体61の閉塞動作における人為的なミスを防止するだけでなく、測定処理において開閉体61に起因する緊急停止を防止する。
【解決手段】生体試料を分析するための測定機器MIを有し、前記生体試料を収容する検体容器Tを出し入れするための開口部C1が設けられた生体試料分析装置に用いられる誤作動防止機構であって、開口部C1を開放する開放位置Pと、開口部C1を閉塞する閉塞位置Rとの間を移動する開閉体61と、開閉体61が閉塞位置近傍Qにあることを検出する位置検出機構62と、位置検出機構62が閉塞位置近傍Qにあることを検出した場合に、開閉体61を閉塞位置近傍Qから閉塞位置Rまで移動させ、開閉体61を閉塞位置Rに磁力により保持する閉塞保持機構63と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の生体試料を分析する生体試料分析装置に関し、特に、当該生体試料分析装置の誤作動防止機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の生体試料分析装置としては、例えば特許文献1に示す血液分析装置がある。この血液分析装置は、血液検体を分析するための測定機器が内部に設けられた筐体と、筐体に設けられ、血液検体を収容する検体容器を出し入れするための開口部と、筐体に対してスライド移動又は回転移動することにより、開口部の開閉を行う開閉体とを備えている。
【0003】
そして、開口部を閉塞した状態で、開閉体をロックする機構(ロック機構)として、従来、開閉体又は筐体の一方に設けられ、外部に突出する可動子及び当該可動子を突出方向に付勢するスプリングと、開閉体又は筐体の他方に設けられ、前記可動子が嵌る凹部とを備えるものが考えられている。具体的にロック機構は、ボールプランジャと、当該ボールプランジャのボールが嵌る凹部とを備えている。そして、開閉体が開口部を閉塞する閉塞位置に到達すると、可動子(ボールプランジャのボール)が、凹部に嵌ることによって、開閉体が閉塞位置に固定される。
【0004】
しかしながら、可動子が凹部周辺(凹部が設けられた側面)に押圧して接触していることから、開閉体を閉塞位置に移動させるときに、可動子が凹部に嵌らなくても(つまり開閉体を閉塞位置まで閉めなくても)、開閉体が筐体に対して静止し、閉め損ないや半開きなどの人為的なミスが発生してしまうという問題がある。
【0005】
また、可動子と凹部周辺との間に摩擦が生じ、可動子及び凹部周辺が摩耗してしまう結果、可動子及び凹部にがたつきが生じるという問題がある。そして、一旦閉めた開閉体が測定途中で開いてしまい、装置が緊急停止してしまうという問題がある。また、このとき検体容器から血液検体を吸引又は吐出するノズル等から血液検体が装置外部に漏れ出てしまう等のバイオハザードの問題もある。さらに、緊急停止後、再び装置を起動させる場合には、測定手順を最初からやり直す必要があり、最初から測定を行うためには、緊急停止前の測定手順において測定セル内で行われた処理により生じた処理液の廃液、及び測定セルの洗浄などを行う必要が生じ、作業が極めて煩雑になるという問題がある。なお、この作業中においても、血液検体や処理液等に触れてしまうなどのバイオハザードの問題がある。
【特許文献1】特開2007−248405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、開閉体の閉塞動作における人為的なミスを防止するだけでなく、測定処理中の開閉体に起因する緊急停止及びバイオハザードを防止することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る生体試料分析装置に用いられる誤作動防止機構は、生体試料を分析するための測定機器が設けられる筐体と、前記筐体に設けられ、前記生体試料を収容する検体容器を出し入れするための開口部と、前記開口部を開放する開放位置、及び前記開口部を閉塞する閉塞位置の間を移動する開閉体と、を有する生体試料分析装置に用いられる誤作動防止機構であって、前記開閉体が前記閉塞位置近傍にあることを検出する位置検出機構と、前記開閉体が前記開放位置から前記閉塞位置に至る途中で、前記位置検出機構が前記閉塞位置近傍にあることを検出した場合に、前記開閉体を前記閉塞位置近傍から前記閉塞位置まで移動させ、前記開閉体を前記閉塞位置に磁力により保持する閉塞保持機構と、を具備することを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、操作者が開閉体を開放位置から閉塞位置に移動させる途中において、閉塞位置近傍において、閉塞保持機構が自動的に作動して開閉体を閉塞位置に移動させるので、開閉体の閉塞動作における閉め損ない等の人為的なミスを防止することができる。また、閉塞保持機構は、開閉体を閉塞位置に磁力により保持するので、摩擦による摩耗が無く、測定処理中に開閉体が閉塞位置から開放位置側に移動することがないので、測定処理中における開閉体に起因する緊急停止及びバイオハザードを防止することができる。
【0009】
閉塞保持機構の構成を簡単且つ小型化するとともに、開閉体の閉塞状態を確実にするためには、前記閉塞保持機構が、自己保持型ソレノイドと、当該自己保持型ソレノイドの可動鉄心の直進運動が回転運動に変換されて回転運動を行い、前記開閉体を移動させる回転可動子と、を備え、前記自己保持型ソレノイドの可動鉄心が永久磁石に吸着された状態において、前記回転可動子が、前記閉塞位置にある前記開閉体に当接するものであることが望ましい。さらに可動鉄心の直進運動を回転運動に変換することにより、自己保持型ソレノイドのストロークを大きくすること無く、回転可動子のストロークを大きくすることができるようになる。また、自己保持型ソレノイドを用いているので、吸着後電源をオフしても可動鉄心の吸着状態が保持されるので、省電力を実現することができ、励磁コイルの温度上昇を防ぐことができる。
【0010】
装置構成を簡単にするとともに、検体容器の出し入れを容易に行うことができるようにするためには、前記開閉体が、前記検体容器を保持する検体容器ホルダを備えるとともに、前記開閉体が、筐体の外方に回転運動して開放位置から閉塞位置に移動するものであることが望ましい。
【0011】
測定機器の具体的な実施の態様としては、前記測定機器が、前記検体容器に収容された生体試料を吸引するノズルと、前記ノズルを駆動して、前記生体試料を測定セルに移送するためのノズル駆動部と、を備えることが考えられる。そして、この構成において、ノズル駆動部の構成を簡単且つ安価にするためには、ステッピングモータを用いて構成されていることが望ましい。このようにステッピングモータを用いたものでは、装置が緊急停止した場合に、サーボモータを用いた場合のようにノズルを停止位置から再開させることができず、初期状態から動作させることを余儀なくされてしまう。そうすると、たとえ処理液が発生していない場合であっても、測定手順を最初からやり直す必要がある。このようなことから、開閉体に起因する緊急停止を防止できる本発明の効果が一層顕著になる。
【0012】
装置構成を簡単にし、且つ閉塞保持機構の動作と測定機器の動作とを簡単に連動できるようにし、さらに、開閉体が閉塞位置にあることを確実に判断して、生体試料検査装置の誤作動を防止するためには、前記位置検出機構が、前記閉塞保持機構の制御及び前記測定機器の制御に用いられるものであり、前記制御部が、前記ノズル駆動部を駆動する前に、前記位置検出機構からの検出信号に基づいて、前記開閉体が前記閉塞位置にあるか否かを判断して、前記開閉体が前記閉塞位置にある場合に、前記ノズル駆動部を制御することが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明によれば、開閉体の閉塞動作における人為的なミスを防止するだけでなく、測定処理において開閉体に起因する緊急停止及びバイオハザードを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の生体試料分析装置の一実施形態である血液分析装置1について図面を参照して説明する。なお、図1は本実施形態の血液分析装置1の概略構成図である。図2〜図4は誤作動防止機構を主として示す模式図である。
【0015】
<装置構成>
【0016】
本実施形態に係る血液分析装置1は、電気抵抗法により、WBC(白血球数)、RBC(赤血球数)、PLT(血小板数)、MCV(赤血球容積)、Hct(ヘマトクリット値)を測定し、またシアンメトヘモグロビン法における吸光光度法によりHgb(ヘモグロビン濃度)等を測定(CBC測定)するものである。
【0017】
<基本構成>
【0018】
血液分析装置1の基本構成は、図1に示すように、検体容器Tに収容された血液検体を測定するための測定機器MIと、当該測定機器MIが内部に設けられる筐体Cと、当該筐体Cに設けられ、検体容器Tを出し入れするための開口部C1と、開口部C1を開放する開放位置P、及び開口部C1を閉塞する閉塞位置Rの間を移動する開閉体61と、を備えている。本実施形態の筐体Cは、概略直方体形状をなし、その一側面(前面)に開口部が設けられている。なお、開閉体61については後述する。
【0019】
測定機器MIは、図1に示すように、検体容器Tから血液検体を吸引等するノズル2と、ノズル2により吸引された血液検体や希釈液等を収容して血液検体を測定するための測定セル3と、当該測定セル3内の血液検体を測定する血液測定部4と、血液測定部4からの測定データを受け付けて血液検体のWBC等の分析などを行う演算部5と、を備えている。
【0020】
検体容器Tは、本実施形態においては樹脂製の円筒形状をなし、上部に開口を有している。この開口は、例えば混和を行う血液検体を収容する場合には樹脂製等のフタによって閉塞される。
【0021】
ノズル2は、略鉛直状態に保持された検体容器T内の血液検体を吸引又は吐出するものであり、後述するノズル駆動部20により駆動されるものである。
【0022】
ノズル駆動部20は、ノズル2が取り付けられており、後述する制御部64からの制御信号を受信し、その制御信号に応じて水平方向又は鉛直方向にノズル2を駆動するものである。その構成は、ノズル2を水平方向に設けられた第1のタイミングベルト201と、第1のタイミングベルトを駆動する第1のモータ202と、第1のタイミングベルト202に固定され、水平方向に往復運動するハウジング203と、ハウジング203に鉛直方向に設けられ、ノズル1を鉛直方向に駆動する第2のタイミングベルト204と、第2のタイミングベルト204を駆動するための第2のモータ205と、前記第2のタイミングベルト204に設けられ、ノズル2を保持するノズル保持部206と、を備えている。また、第1のモータ202及び第2のモータ205は、ステッピングモータである。
【0023】
測定セル3は、WBC(白血球数)及びHgb(ヘモグロビン濃度)を測定するためのWBC/Hgb測定セル31(以下、単にWBCセル31という。)と、RBC(赤血球数)及びPLT(血小板数)を測定するためのRBC/PLT測定セル32(以下、単にRBCセル32という。)と、を備えている。
【0024】
WBCセル31においては、ノズル2により血液検体が注入され、希釈液容器(図示しない)からの希釈液により一次希釈された後、溶血液容器(図示しない)からの溶血液が注入され、WBC及びHgbが測定される。RBCセル32においては、ノズル2により一次希釈された血液検体が注入され、さらに希釈液容器(図示しない)からの希釈液により二次希釈され後に、RBC及びPLTが測定される。
【0025】
血液測定部4は、測定セルにおいて測定すべき測定対象の測定方式に応じて設けられており、WBC測定部41と、Hgb測定部42と、RBC/PLT測定部43とを備えている。WBC測定部41は、WBCセル31に設けた例えば白金電極などの測定電極41a、41bによりWBCを測定する。Hgb測定部42は、WBCセル31の外部に設けたハロゲンランプなどの光源42aとWBCセル31を透過した光を検出する光検出器42bによりHgbを測定する。RBC/PLT測定部43は、RBCセル32に設けた例えば白金電極などの測定電極43a、43bによりRBC/PLTを測定する。
【0026】
演算部5は、血液測定部4からの測定データを受け付けて、所定の演算を行い、測定セル3内の血液検体のWBC、RBC、PLT、MCV、Hctを算出するものである。演算部5の具体的な構成は、例えばCPU、内部メモリ、入出力インタフェース、AD変換器等からなる汎用又は専用のコンピュータである。なお、演算部5は、コンピュータによることなくバッファや増幅器、比較器等を用いたディスクリートアナログ回路を用いて構成しても構わない。
【0027】
<誤作動防止機構6の構成>
しかして本実施形態の血液分析装置1は、図1に示すように、開閉体61に基づく血液分析装置1の誤作動を防止するための誤作動防止機構6を有している。
【0028】
具体的にこのものは、図2〜図4に示すように、開閉体61が閉塞位置近傍Qにあることを検出する位置検出機構62と、開閉体61を閉塞位置近傍Qから閉塞位置Rまで移動させて、そのまま開閉体61を閉塞位置Rに磁力により保持する閉塞保持機構63と、位置検出機構62からの検出信号に基づいて前記閉塞保持機構63を制御する制御部64と、を備えている。
【0029】
以下各部について詳述する。
【0030】
開閉体61は、略水平方向に延伸して設けられた回転支持軸66に固定されている。この回転支持軸66は、筐体Cの底壁に立設された軸保持体65に回転可能に設けられている。そして、開閉体61は、開口部C1を開放して、検体容器Tの出し入れを行うための開放位置P(図2参照)と、開口部C1を閉塞して、検体容器T中の血液検体を分析するための閉塞位置R(図3参照)との間を移動する。このように構成された開閉体61は、略水平方向に延設された回転支持軸66周りに回転することから、筐体Cの開口部C1に対して外方に回転することにより、開放位置Pに移動する。なお、軸保持体65に回転支持軸66を固定して、当該回転支持軸66に回転移動体を回転可能に取り付けるようにしても良い。
【0031】
具体的に開閉体61は、回転支持軸66により回転可能に支持される本体部611と、当該本体部611に着脱可能に設けられ、閉塞位置Rにおいて筐体Cの開口部C1を覆うカバー体612と、前記本体部611の下端部に設けられ、後述する回転可動子632に押される被押圧面を有する被押圧片613とを備えている。なお、カバー体612は、開口部C1の開口形状に対応させて形成され、本実施形態では、概略矩形形状をなすものである。なお、本体部611に対してカバー体612を着脱可能に構成しているので、カバー体612が血液検体などにより汚れた場合であっても、本体部611から取り外して、その洗浄を簡単に行うことができる。
【0032】
また、本実施形態の開閉体61は、検体容器Tを保持する機能を備えるものであり、検体容器ホルダ614を備えている。検体容器ホルダ614は、本体部611の上部に着脱可能に取り付けられるものであり、収容される検体容器T毎に異なり、その検体容器Tのサイズ又は種類などに対応して形成されている。また、検体容器ホルダ614に検体容器Tを収容したときに、検体容器Tの底部分が本体部611に接触して検体容器Tの収容を阻害しないように、本体部611には、挿入凹部611Aが形成されている。
【0033】
開閉体61が、閉塞位置Rにある状態において、検体容器ホルダ614に保持された検体容器Tは、ノズル2が挿入される位置にあり、略垂直状態である。この状態の検体容器T内にノズル2が挿入される。
【0034】
<位置検出機構62>
位置検出機構62は、開閉体61が閉塞位置近傍Qにあることを検出するものであり、構成の簡単のため、フォトインタラプタ621を用いて構成されている。
【0035】
ここで、閉塞位置近傍Qとは、図4に示すように、開放位置P及び閉塞位置Rの間における所定の中間位置であり、本実施形態では、開口部C1(具体的には上縁部)と開閉体61との間に操作者の指が入らない程度の隙間ができる位置であり、例えば閉塞位置Rから開放位置P方向に約5度回転した位置である。なお、閉塞位置近傍Qは、後述する回転可動子632が、被押圧片613に接触して閉塞位置Rまで押すことができる範囲内で適宜設定することができる。
【0036】
具体的に位置検出機構62は、特に図5に示すように、筐体C側に固定された例えば透過型のフォトインタラプタ621と、開閉体61の回転移動に連動して回転移動する遮光体622と、からなる。遮光体622は、回転支持軸66に連結され、回転支持軸66の回転に連動して回転支持軸66周りを回転する。なお、遮光体622は、開閉体61の側面に連結するようにしても良い。また、フォトインタラプタ621及び遮光体622を逆に、つまりフォトインタラプタ621を開閉体61側に設け、遮光体622を筐体C側に設けても良い。
【0037】
そして、開閉体61が開放位置Pから閉塞位置Rに移動する過程において、フォトインタラプタ621は、開放位置Pから閉塞位置近傍Qまでと、閉塞位置近傍Qから閉塞位置Rまでとで異なる検出信号を出力するように構成している。
【0038】
具体的には、図5に示すように、開閉体61が開放位置Pにある場合には、遮光体622はフォトインタラプタ621のLEDとフォトダイオードとのギャップ内に無い。つまり、フォトインタラプタ621からは、「明」を示す検出信号が、後述する制御部64に出力される。そして、開閉体61が開放位置Pから閉塞位置R側に回転して、閉塞位置近傍Qに至ると、遮光体622はギャップ内に入り、LEDからの光が遮られる。このとき、「暗」を示す検出信号が制御部64に出力される。さらに、開閉体61が、閉塞位置近傍Qから閉塞位置Rに回転する間は、遮光体622は、ギャップ内においてLEDからの光を遮ったままである。このときも「暗」を示す検出信号が制御部64に出力される。
【0039】
<閉塞保持機構63>
閉塞保持機構63は、開閉体61が開放位置Pから閉塞位置Rに移動する途中で、位置検出機構62が閉塞位置近傍Qにあることを検出した場合に、開閉体61を閉塞位置近傍Qから閉塞位置Rまで移動させ、開閉体61を閉塞位置Rに保持するものである。
【0040】
本実施形態の閉塞保持機構63は、図2〜図4に示すように、開閉体61の下方、具体的には開閉体61と筐体Cの下壁との間に設けられており、自己保持型ソレノイド631と、この自己保持型ソレノイド631の可動鉄心631aの直進運動が伝達されて回転運動を行い、開閉体61を移動させる回転可動子632と、を備えている。
【0041】
自己保持型ソレノイド631は、筐体Cの下壁に固定されている。具体的には、ソレノイド631の可動鉄心631aの進退方向が、前記開閉体61の回転方向に沿った方向となるように固定されている。
【0042】
回転可動子632は、前記回転支持軸66と略平行に設けられた支持軸633に回転可能に取り付けられている。
【0043】
具体的には、支持軸633に対して一方側端部が可動鉄心631aにリンクを介して連結されており、他方側が被押圧片613に当接するものである。より詳細には、他方側には被押圧片613から離間する方向に湾曲した湾曲部632aが形成され、当該湾曲部632aの先端側端部が被押圧片613と当接する。本実施形態の湾曲部632aは、側面視において概略部分円形状をなすように湾曲した形状をなす。このように、他方側が湾曲していることにより、開閉体61が閉塞位置Rから開放位置Pに移動するに際して、カバー体612などの構成部材が回転可動子632に接触して、開閉体61の開放動作を妨げることを防止している。この構成により、支持軸633及びリンク間の距離と、支持軸633及び回転可動子632の他端側先端(湾曲部632aの先端側端部)との距離との比によって、自己保持型ソレノイド631のストロークを拡大することができる。
【0044】
また、湾曲部632aの背面(湾曲部632aの凸側面)には、回転可動子632を被押圧片613から離間する方向に付勢するためのスプリングコイル634の一端が固定されている。このスプリングコイル634により可動鉄心631aが復帰側に付勢される。なお、スプリングコイル634の他端は、例えば筐体Cに固定されている。これにより、可動鉄心631aを復帰させるときに可動鉄心631aの引き離しを補助するとともに、復帰後において、可動鉄心631aが永久磁石に吸着されることを防ぐ。なお、開閉体61が閉塞位置Rにある状態において、回転可動子632が被押圧片613に当接している状態のスプリングコイル634の弾性復帰力は、永久磁石の吸着力によりも小さい。
【0045】
制御部64は、位置検出機構62からの検出信号を受信し、当該検出信号に基づいて閉塞保持機構63を制御するとともに、ノズル駆動部20を制御するものである。つまり、位置検出機構62は、閉塞保持機構63の制御及びノズル駆動部20の制御の両方に用いられる。
【0046】
制御部64の具体的な構成は、例えばCPU、内部メモリ、入出力インタフェース、AD変換器等からなる汎用又は専用のコンピュータであり、前記内部メモリの所定領域に格納してあるプログラムに基づいてCPUやその周辺機器等が作動することにより、閉塞保持機構63及びノズル駆動部20等の測定機器MIを制御する。なお、制御部64は、コンピュータによることなくバッファや増幅器、比較器等を用いたディスクリートアナログ回路を用いて構成しても構わない。
【0047】
具体的には、制御部64は、位置検出機構62からの検出信号を受信して、開閉体61が、開放位置Pから閉塞位置Rに移動する過程において閉塞位置近傍Qに到達したことを判断して、閉塞保持機構63を制御する。その後、位置検出機構62からの検出信号を受信して、開閉体61が閉塞位置Rにあることを判断した後、ノズル駆動部20等の測定機器MIを制御して、血液検体の処理及び測定等を行う。
【0048】
次に、誤作動防止機構6の動作について詳述する。
【0049】
開閉体61を開放位置Pから閉塞位置Rに移動させる過程において、開放位置Pから閉塞位置近傍Qまでは、位置検出機構62のフォトインタラプタ621の検出信号は、「明」である。そして、開閉体61が閉塞位置近傍Qに到達すると(図4参照)、フォトインタラプタ621の検出信号は「暗」になり、当該検出信号を取得した制御部64は、図示しない電源により、自己保持型ソレノイド631の励磁コイルに動作電流を流す。これにより、可動鉄心631aは、内蔵された永久磁石の磁力及び励磁コイルによる電磁力により内部に吸引される。
【0050】
ここで、可動鉄心631aが吸引されると、当該可動鉄心631aの吸引動作により、回転可動子632が回転して、開閉体61の被押圧片613に当接して移動する。これにより、開閉体61は閉塞位置Rに至るまで押される(図3参照)。そして、可動鉄心631aが永久磁石に吸着されたとき、回転可動子632は、閉塞位置Rにある開閉体61の被押圧片613に当接した状態となる。その後、制御部64により、電源をオフにして動作電流をゼロにすると、可動鉄心631aの吸着状態は保持され、開閉体61は閉塞位置Rに保持される。
【0051】
このように、可動鉄心631aが永久磁石に吸着された状態で、回転可動子632が被押圧片613に当接しているので、血液分析装置1の測定処理中に開閉体61が不意に開き、装置1が緊急停止してしまうことを防止することができる。
【0052】
その後、制御部64は、ノズル駆動部20を制御する前に、位置検出機構62からの検出信号に基づいて、開閉体61が閉塞位置Rにあるか否かを判断して、開閉体61が閉塞位置Rにある場合にノズル駆動部20を制御する。具体的に制御部64は、ノズル駆動部20を制御してノズル2により検体容器T中の血液検体を吸引するとともに、装置各部(例えば電磁弁等)を制御して、血液検体の処理及び分析等をする。
【0053】
また、開口部C1を開放する場合、つまり開閉体61を閉塞位置Rから開放位置Pに移動させる場合には、復帰電流を流すことにより、永久磁石の磁力を打ち消すように、吸引動作と逆極性の復帰電流を励磁コイルに加えて吸着保持力を小さくし、回転可動子632に連結されたスプリングコイル634の弾性復帰力によって可動鉄心631aを永久磁石から引き離す。また、開閉体61には、開放位置Pから閉塞位置Rに付勢するばね(図示しない)が設けられており、このばねの弾性復帰力により、開閉体61は開放位置Pに移動する(図2参照)。
【0054】
<サイズ検出機構7>
さらに本実施形態の血液分析装置1は、図2等に示すように、検体容器ホルダ614に保持された検体容器Tのサイズを検出するサイズ検出機構7を備えている。サイズ検出機構7は、検体容器ホルダ614に設けられ、検体容器Tのサイズ又は種類に合わせて設定された突起部71と、検体容器Tが略垂直に設置された状態において、前記突起部71を検出する検出スイッチ72と、から構成される。
【0055】
大小2種類の検体容器Tを判別する場合の具体的について図6を参照して説明する。検出スイッチ72は2つ設けられており、一方は「大」検体容器ホルダ614に設けられた突起部71に対応して設けられている。他方は、「小」検体容器ホルダ614に設けられた突起部71に対応して設けられている。具体的には、「大」検体容器ホルダ614には、当該検体容器ホルダ614の一側方側(図6中右側)に設けた凸部6141に回転方向に沿って開放位置Pから閉塞位置Rに向かって突起部71が設けられている。また、図示しないが、「小」検体容器ホルダ614には、当該検体容器ホルダ614の他側方側(図6中においては左側)に設けた凸部に回転方向に沿って突起部71が設けられている。そして、開閉体61が、閉塞位置Rの状態において、検体容器ホルダ614の突起部71が検出スイッチ72に接触して、検出スイッチ72からの検出信号により制御部64が検体容器Tのサイズを認識する。これにより、制御部64は、検体容器Tのサイズ又は種類に合わせて、ノズル駆動部20などの装置各部を制御する。
【0056】
このようなサイズ検出機構7によって、検体容器ホルダ614を選択して、当該選択した検体容器ホルダ614に検体容器Tを保持させるだけで、自動的に検体容器Tのサイズ又は種類を検出することができるので、操作者の入力により検体容器Tを特定する場合に生じる入力ミスを防止することができる。
【0057】
<本実施形態の効果>
【0058】
このように構成した本実施形態に係る血液分析装置1によれば、開放位置Pから閉塞位置Rに開閉体61を操作者が移動させる途中において、閉塞位置近傍Qにおいて、閉塞保持機構63が自動的に作動して開閉体61を閉塞位置Rに移動させるので、開閉体61の閉塞動作における人為的なミスを防止することができる。また、自己保持型ソレノイド631を用いて開閉体61を閉塞位置Rに磁力により保持するので、摩擦による摩耗が無く、測定段階で開閉体61が閉塞位置Rから開放位置P側に移動することがなく、測定処理中における開閉体61に起因する緊急停止及びバイオハザードを防止することができる。さらに、開閉体61に起因する緊急停止を防止することができるので、緊急停止した場合の測定セル3中の廃液の処理や、ノズル2の停止位置の確認作業等の負担を軽減することができる。
【0059】
また、ノズル駆動部が、ステッピングモータ202、205を用いたものであり、装置1が緊急停止した場合に、サーボモータを用いた場合のようにノズル2を停止位置から再開させることができず、初期状態から動作させることを余儀なくされてしまう。このような装置1において、誤作動防止機構6の効果を一層顕著となる。
【0060】
<その他の変形実施形態>
【0061】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。以下の説明において前記実施形態に対応する部材には同一の符号を付すこととする。
【0062】
例えば、前記実施形態では、配置場所の関係から、開閉体の下方に設けているのが、側方又は上方に設けるようにしても良い。
【0063】
また、閉塞保持機構の回転可動子が、被押圧片の被押圧面に当接して、開閉体を移動させるものであったが、被押圧面を本体部又はカバー体に設け、その被押圧面に当接して回転体を移動させるものであっても良い。
【0064】
さらに、閉塞保持機構は、回転可動子によりソレノイドのストロークを拡大して被押圧片を移動させるものであったが、ストロークが小さくても良い場合には、回転可動子を設けることなく、ソレノイドの可動鉄心を被押圧片に当接させて移動させるようにしても良い。
【0065】
その上、前記実施形態の閉塞保持機構は、1つの構成により開閉体の自動閉塞機能及び閉塞位置での保持機構を発揮するものであったが、自動閉塞機能を発揮する構成及び保持機構を発揮する構成をそれぞれ設けても良い。この場合、自動閉塞機能は、前記実施形態と同様の構成とすることができるが、自己保持型ソレノイド以外のDCソレノイド、プッシュソレノイドなどを用いることもできる。また、保持機構は、例えば、開閉体又は筐体の一方に設けられ、通電により磁力を発生させる電磁石と、開閉体又は筐体の他方に設けられ、前記電磁石に発生した磁力が作用する永久磁石とからなる。このとき、開閉体が閉塞位置にある場合に、前記電磁石を通電し、その磁力を永久磁石に作用させて開閉体を閉塞位置に保持する。
【0066】
その上、前記実施形態の回転支持軸に、回転ダンパを設けて開閉移動体が急激に開閉動作(特に開放動作)を行わないようにすることもできる。
【0067】
加えて、位置検出機構に関して言うと、閉塞保持機構の制御及びノズル駆動部の制御の両方に用いるものであったが、閉塞保持機構の制御のみに用いるものであっても良い。この場合、別途ノズル駆動部の制御のために、開閉体が閉塞位置にあることを検出するセンサを設ける必要がある。
【0068】
開閉体の開閉動作は、筐体の開口部に対して回転移動するものの他に、スライド移動するものであっても良い。
【0069】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態に係る血液分析装置の模式的構成図。
【図2】同実施形態の誤作動防止機構の構成を示す図(開放位置P)。
【図3】同実施形態の誤作動防止機構の構成を示す図(閉塞位置R)。
【図4】同実施形態の誤作動防止機構の構成を示す図(閉塞位置近傍Q)。
【図5】同実施形態の位置検出機構を示す図。
【図6】同実施形態のサイズ検出機構を示す図。
【符号の説明】
【0071】
1 ・・・血液分析装置(生体試料分析装置)
2 ・・・ノズル
20 ・・・ノズル駆動部
3 ・・・測定セル
MI ・・・測定機器
T ・・・検体容器
C ・・・筐体
C1 ・・・開口部
6 ・・・誤作動防止機構
P ・・・開放位置
Q ・・・閉塞位置近傍
R ・・・閉塞位置
61 ・・・開閉体
614 ・・・検体容器ホルダ
62 ・・・位置検出機構
63 ・・・閉塞保持機構
631 ・・・自己保持型ソレノイド
631a・・・可動鉄心
632 ・・・回転可動子
64 ・・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を分析するための測定機器が設けられる筐体と、
前記筐体に設けられ、前記生体試料を収容する検体容器を出し入れするための開口部と、
前記開口部を開放する開放位置、及び前記開口部を閉塞する閉塞位置の間を移動する開閉体と、を有する生体試料分析装置に用いられる誤作動防止機構であって、
前記開閉体が前記閉塞位置近傍にあることを検出する位置検出機構と、
前記開閉体が前記開放位置から前記閉塞位置に至る途中で、前記位置検出機構が前記閉塞位置近傍にあることを検出した場合に、前記開閉体を前記閉塞位置近傍から前記閉塞位置まで移動させ、前記開閉体を前記閉塞位置に磁力により保持する閉塞保持機構と、を具備する、生体試料分析装置に用いられる誤作動防止機構。
【請求項2】
前記閉塞保持機構が、
自己保持型ソレノイドと、
当該自己保持型ソレノイドの可動鉄心の直進運動が回転運動に変換されて回転運動を行い、前記開閉体を移動させる回転可動子と、を備え、
前記自己保持型ソレノイドの可動鉄心が永久磁石に吸着された状態において、前記回転可動子が、前記閉塞位置にある前記開閉体に当接するものである、請求項1記載の生体試料分析装置に用いられる誤作動防止機構。
【請求項3】
前記開閉体が、前記検体容器を保持する検体容器ホルダを備え、前記筐体の外方に回転して前記開放位置から前記閉塞位置に移動するものである、請求項1又は2記載の生体試料分析装置に用いられる誤作動防止機構。
【請求項4】
前記測定機器が、
前記検体容器に収容された生体試料を吸引するノズルと、
前記ノズルを駆動して、前記生体試料を測定セルに移送するためのノズル駆動部と、を備え、
前記ノズル駆動部が、ステッピングモータを用いて構成されている、請求項1、2又は3記載の生体試料分析装置に用いられる誤作動防止機構。
【請求項5】
前記位置検出機構が、前記閉塞保持機構の制御及び前記測定機器の制御に用いられるものであり、
前記ノズル駆動部を制御する制御部が、前記ノズル駆動部を駆動する前に、前記位置検出機構からの検出信号に基づいて、前記開閉体が前記閉塞位置にあるか否かを判断して、前記開閉体が前記閉塞位置にある場合に、前記ノズル駆動部を制御する、請求項4記載の生体試料分析装置に用いられる誤作動防止機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−287938(P2009−287938A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137802(P2008−137802)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】