生体試料固定器
【課題】侵襲性を抑えつつ生体試料を固定する。
【解決手段】顕微鏡のステージに設置され、生体試料をステージに対して固定するための生体試料固定器であって、ステージに設置される透明のガラス板10と、このガラス板10に重ねて設けられガラス板10との間に流路30を形成するカバー部材20とを備えている。カバー部材20には、流路30の一部と繋がり流路30内の空気を吸引するための吸引部31と、流路30の他部と繋がっていると共に生体試料の一部に臨ませる開口32とが設けられている。
【解決手段】顕微鏡のステージに設置され、生体試料をステージに対して固定するための生体試料固定器であって、ステージに設置される透明のガラス板10と、このガラス板10に重ねて設けられガラス板10との間に流路30を形成するカバー部材20とを備えている。カバー部材20には、流路30の一部と繋がり流路30内の空気を吸引するための吸引部31と、流路30の他部と繋がっていると共に生体試料の一部に臨ませる開口32とが設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡のステージに載せた生体試料の動きを拘束するための生体試料固定器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞等を観察する観察装置及び標識法の開発が進められており、リアルタイムイメージング及び各種細胞内イベントの可視化が可能となっている。特に培養プレート上の細胞を生きたまま観察できる生細胞リアルタイムイメージング技術により、これまでは観察することのできなかった細胞内の分子シグナル等の観察が可能となっている。
しかし、例えば小動物の臓器における細胞等の挙動は、周囲の細胞を含む三次元構造、及び、周囲の細胞から分泌されるタンパク質によるシグナル伝達等、周囲の細胞からの影響を受けることから、培養細胞を用いた細胞の挙動を観察するのみでは足らず、生きた状態にある小動物の臓器の細胞を可視化する必要がある。
【0003】
小動物の臓器又は組織の細胞を観察する場合、例えば心臓及び肺の動きに影響を受けにくい、脂肪、固形腫瘍及び皮膚等は、特に固定しなくても、共焦点レーザ顕微鏡を用いて観察することが可能である。しかし、麻酔下であっても生命維持に不可欠である、心臓、肺、腸及び横隔膜直下に存在しその動きの影響を受ける肝臓等に関しては、固定して観察を行うことが必要となる。
【0004】
生きた状態にある小動物(例えばマウス)の心臓、肝臓等の生体試料を観察するためにその生体試料を固定する技術として、例えば特許文献1に、生体観察用のスタビライザが開示されている。このスタビライザは、図13に示すように、観察領域94よりも大きな貫通孔98を有し臓器に接触させる環状の接触部91を備えている。この接触部91のうち、臓器の表面90との接触面に凹部92が設けられ、この凹部92には、凹部92と表面90との間に形成される空間を減圧する減圧手段93が接続されている。
【0005】
このスタビライザによれば、顕微鏡のステージ上に載せた小動物の臓器の表面90に対して環状の接触部91を上から押し付け、減圧手段92によって凹部92(空間)を減圧する。すると、この接触部91は臓器の表面90を吸着して固定することができ、これにより顕微鏡のステージに対して臓器を固定することが可能となる。
そして、環状である接触部91の径方向内側を観察領域94とし、この観察領域94の中央にある観察部位95を対物レンズ96の視野内に収め、顕微鏡観察が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−279389号公報(図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
小動物等の生体の臓器を顕微鏡で観察する場合、麻酔下であっても、その小動物の生命活動に不可欠である呼吸及び消化運動等により、臓器の運動が継続的に行われていることから、小動物及びその臓器に対する負担をできるだけ抑える必要がある。
しかし、従来のスタビライザの場合、観察部位95の周囲に、環状の接触部91を設置する必要があることから、小動物の皮膚の切開範囲97は、この接触部91よりも充分に大きな範囲が必要となり、切開範囲97が観察部位95に比べてはるかに広くなってしまい、小動物に対する侵襲性が問題となる。
つまり、観察部位95が例えば2mm程度の領域であっても、その周囲に存在している環状の接触部95の外径が3cmであるならば、この3cmよりも充分に大きな切開範囲97が必要となる。さらに、小動物の臓器における観察部位95を変更するためには、臓器に対して接触部91を移動させる必要があり、この場合、さらに大きな切開範囲97が必要となる。
【0008】
そこで、本発明は、侵襲性を抑えつつ生体試料を固定することが可能となる生体試料固定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、顕微鏡のステージに設置され、生体試料を当該ステージに対して固定するための生体試料固定器であって、前記ステージに設置される透明の板部と、前記板部に重ねて設けられ当該板部との間に流路を形成するカバー部とを備え、前記カバー部又は前記板部には、前記流路の一部と繋がり当該流路内の流体を吸引するための吸引部が設けられ、前記カバー部には、前記流路の他部と繋がっていると共に前記生体試料の一部に臨ませる開口が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、カバー部に形成されている開口に生体試料を臨ませ、流路内の流体を吸引すれば、開口において生体試料の一部を陰圧(負圧)により保持することができる。このため、開口に保持されている生体試料の一部を観察部位として、透明の板部を通じて顕微鏡観察することが可能となる。すなわち、開口に保持されている生体試料の一部は、顕微鏡による観察部位となることから、この生体試料の一部が、例えば小動物等の生体の皮膚から露出していれば足りる。したがって、小動物の皮膚の切開範囲は、生体試料の一部及びその周囲の僅かな部分が露出する範囲で済み、切開範囲を従来と比較して小さくすることができ、小動物等の生体に対する侵襲性を抑えることが可能となる。
【0011】
また、前記開口は、前記板部を間に挟んで、前記顕微鏡の対物レンズに対向する位置に設けられることにより、流路内の流体を吸引することで開口に保持される生体試料の一部を、顕微鏡の対物レンズの視野内に収めることができる。
【0012】
また、前記カバー部は、前記流路を構成するための凹溝部と、この凹溝部を囲み前記板部の面に当接する当接面を有する本体部とを有し、前記当接面は、前記流路内の流体を吸引すると前記板部の前記面に密着し、当該吸引を解除した状態では前記板部の前記面と分離可能である非接着面であるのが好ましい。
この場合、流路内の流体を吸引すれば、カバー部の当接面は板部の面に密着し、カバー部を板部に固定することができる。そして、流路内の流体の吸引を解除すれば、カバー部は板部から分離可能となり、カバー部と板部との内の一方を交換することができる。
【0013】
また、流路内の流体を吸引することによって、生体試料の一部はカバー部(開口)に密着することから、生体試料を傷めないように、前記カバー部は、前記板部よりも弾性係数の小さい部材からなるのが好ましい。これにより、カバー部は板部より柔軟性を有し、生体試料を傷めるのを防ぐことができる。
【0014】
また、前記板部は、前記流路内の流体の吸引により前記開口に保持されかつ当該開口から前記流路内に侵入させる前記生体試料の一部を接触可能とする接触面を有しているのが好ましい。
この場合、開口に保持されかつこの開口から流路内に侵入させた生体試料の一部が、板部のステージと反対側の面(接触面)に接触可能となる。そして、この接触面に接触している生体試料の一部を顕微鏡により観察することができる。
【0015】
また、前記流路は、前記吸引部と繋がっている主流路と、この主流路から分岐し前記開口とそれぞれが繋がっている複数の枝流路とを有しているのが好ましい。
この場合、開口に保持される生体試料の一部の周囲を複数方向から吸引し、その周囲の空間を減圧することができ、生体試料の一部を開口に保持させることができる。
【0016】
また、主流路から複数の枝流路が分岐している場合において、前記カバー部の前記枝流路間には、前記流路内の減圧によって当該枝流路が潰れるのを防ぐ補剛部が形成されているのが好ましい。
枝流路が形成されている領域ではカバー部の剛性が、主流路が形成されている領域の剛性に比べて低くなる場合があるが、補剛部によってカバー部の剛性が低下するのを抑えることができる。
【0017】
また、本発明は、顕微鏡のステージに設置され、生体試料を当該ステージに対して固定するための生体試料固定器であって、前記ステージに設置される透明の板部材に重ねて設けられ当該板部材との間に流路を形成するカバー部材を備え、前記カバー部材には、前記流路の一部と繋がり当該流路内の流体を吸引するための吸引部と、前記流路の他部と繋がっていると共に前記生体試料の一部に臨ませる開口とが形成されていることを特徴とする。
さらに本発明は、顕微鏡のステージに設置され、生体試料を当該ステージに対して固定するための生体試料固定器であって、前記ステージに設置される透明の板部材に重ねて設けられ当該板部材との間に流路を形成するカバー部材を備え、前記カバー部材には、前記流路の一部と繋がっていると共に前記生体試料の一部に臨ませる開口が形成され、前記カバー部材は、前記流路の他部と繋がり当該流路内の流体を吸引するための吸引部が形成されている前記板部材に重ねて設けられることを特徴とする。
【0018】
これら本発明によれば、カバー部材に形成されている開口に生体試料を臨ませ、流路内の流体を吸引すれば、開口において生体試料の一部を陰圧(負圧)により固定することができる。このため、開口に保持されている生体試料の一部を観察部位として、透明の板部材を通じて顕微鏡観察することが可能となる。すなわち、開口に保持されている生体試料の一部は、顕微鏡による観察部位となることから、この生体試料の一部が、例えば小動物等の生体の皮膚から露出していれば足りる。したがって、小動物の皮膚の切開範囲は、生体試料の一部及びその周囲の僅かな部分が露出する範囲で済み、切開範囲を従来と比較して小さくすることができ、小動物等の生体に対する侵襲性を抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の生体試料固定器によれば、小動物等の皮膚の切開範囲は、生体試料の一部及びその周囲の僅かな部分が露出する範囲で済み、切開範囲を従来と比較して小さくすることができ、小動物等の生体に対する侵襲性を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の生体試料固定器をステージに設置した顕微鏡の模式図である。
【図2】生体試料固定器の説明図である。
【図3】生体試料固定器の断面図であり、図2のB矢視の断面図である。
【図4】図2のA矢視の断面図である。
【図5】図2のC矢視の断面図である。
【図6】(A)は生体試料固定器を用いて、マウスの腸を固定して観察した結果を示し、(B)はマウスの腸を固定しないで観察した結果を示している。
【図7】生体試料固定器を用いて、マウスの肝臓を固定して観察した結果を示している。
【図8】生体試料固定器を用いて、マウスの肝臓における幹細胞の分布及び移動を観察した結果を示している。
【図9】生体試料固定器を用いて、マウスの肝臓を長時間観察した結果を示している。
【図10】生体試料固定器の他の実施形態を示す斜視図である。
【図11】生体試料固定器のさらに別の実施形態を示す断面図であり、(A)は生体試料を吸着する前の状態であり、(B)は生体試料を吸着した状態を示している。
【図12】さらに別の実施形態に係る生体試料固定器の断面図である。
【図13】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔生体試料固定器の全体構成〕
図1は、本発明の生体試料固定器1をステージ6に設置した顕微鏡5の模式図である。この生体試料固定器1は、生きた状態にある小動物等の生体の臓器又は組織(生体試料)を、ステージ6に対して固定し、その動きを拘束するための装置であり、しかも、その臓器等を、生体の体外へ取り出すことなく体内に収められた状態で、その生体の皮膚の一部を切開して露出させ、顕微鏡5によって観察するために用いられる機器である。なお、本実施形態では生体をマウスMとして説明する。
【0022】
顕微鏡5は、ステージ6と、対物レンズ7を有しステージ6の下側に設けられている対物ユニット8とを備えた倒立顕微鏡である。ステージ6の上に生体試料固定器1が載せられ、この生体試料固定器1の上にマウスMが載せられ、ステージ6に形成されている貫通孔6aを通じて、マウスMの臓器Pが観察される。なお、マウスMには麻酔が適用されるが、このマウスMの全身をステージ6に固定する必要はない。
対物ユニット8は、対物レンズ7の他に、レーザ光源8a、マイクロレンズディスク8b、ピンホールディスク8c、ダイクロイックミラー8d及びCCDカメラ8eを有しており、臓器Pの高速撮影を行う。なお、観察対象となるマウスMは、うつ伏せ姿勢であり、その腹部の皮膚が切開され、臓器Pを体内に残しながら体外へ露出させた状態とする。
【0023】
図2は、生体試料固定器1の斜視図である。図3は、生体試料固定器1の断面図(図2のB矢視の断面図)であり、臓器Pを保持した状態にある。図4は、図2のA矢視における断面図である。生体試料固定器1は、ステージ6上に設置される透明の板部(10)と、この板部(10)の上面11(ステージ6と反対側の面)に重ねて設けられているカバー部(20)とを備えている。なお、板部(10)とカバー部(20)とは、一体不可分の構造であってもよいが、本実施形態では別の部材からなり、板部は板部材(ガラス板10)からなり、カバー部はカバー部材20からなる。また、カバー部材20の内部を説明するために、その内部構造を、図2では細線で示している。
【0024】
本実施形態では、前記板部材は透明の薄いガラス板10であって、光に対して透明であり、一般的に光学顕微鏡観察において用いられるカバーガラスである。ガラス板10はステージ6に固定される。
カバー部材20は、ガラス板10と同様に薄い板部材であって、本実施形態では、シリコンゴム製(ポリジメチルシロキサン(PDMS)製)である。カバー部材20は、ガラス板10の上に載って積層状態にある。なお、カバー部材20及び板部材は他の材質であってもよい。
【0025】
〔カバー部材20及びガラス板10について〕
カバー部材20の一面(下面)側であってその中央部には、凹溝部22が形成されており、カバー部材20がガラス板10に重ねられると、この凹溝部22によってガラス板10との間に流路30が形成される。本実施形態では、顕微鏡5及び生体試料固定器1は大気中に設置されることから、この流路30には空気(大気)が流れる。
【0026】
図4において、ガラス板10の上にカバー部材20が重ねられた状態で、凹溝部22の溝底面(上面)22aと、左右両側の溝側面22b,22cと、ガラス板10の上面11とで囲まれた空間によって、流路30が形成される。
そして、カバー部材20に凹溝部22が形成されることにより、その溝底面22aを下面として有する薄肉部25と、それ以外の厚肉部26とが形成される。厚肉部26は凹溝部22が形成されていない部分である。
【0027】
また、図2と図3とにおいて、カバー部材20には、吸引部31と、開口32とが設けられている。吸引部31は、薄肉部25上に設けられており、流路30の一部30a(図3参照)と繋がっており、流路30内の空気を吸引するためのパイプ33が接続されている接続ポートである。
開口32は、流路30の他部30b(図3参照)と繋がっていると共にマウスMの臓器Pの一部Paに臨ませる貫通孔からなる。つまり、カバー部材20の薄肉部25をその厚さ方向に貫通して形成した貫通孔によって、開口32が構成されており、開口32は流路30内の空間とマウスMが存在する外部空間とを連通している。
【0028】
そして、パイプ33に減圧手段34が接続されており、減圧手段34がパイプ33を通じて流路30内の空気を吸引することで、流路30内が減圧される。これにより、開口32に臨ませたマウスMの臓器Pの一部Paが、開口32に吸着して保持され、臓器Pの動きが拘束される(図3参照)。減圧手段34は、図示しないが、ポンプ又はシリンジ等とすることができる。
【0029】
そして、開口32は、ガラス板10を間に挟んで、対物レンズ7に対向する位置に設けられており(図3参照)、吸引部31を通じて流路30内の空気が吸引されることで、流路30内が減圧され、臓器Pの一部Paが、開口32に保持されると共に開口32から流路30内に侵入する。そして、ガラス板10の上面11(ステージ6と反対側の面)の一部12は、開口32から流路30内に侵入した臓器Pの一部Paが接触可能となる接触面となる。
この接触面(12)に接触している臓器Pの一部Paを、対物レンズ7の視野内に収め、この接触している一部Paに焦点を合わせることにより、顕微鏡5により観察することができる。また、ガラス板10の接触面(12)に臓器Pの一部Paが接触することで、この一部Paを観察部位とした場合に、この観察部位とガラス板10との間に空気の層が介在しないため良好な観察状態が得られる。
【0030】
また、図4において、カバー部材20は、流路30を構成するための凹溝部22と、この凹溝部22を囲む本体部23とを有している。本体部23のうち凹溝部22を前後左右四方から囲む部分が前記厚肉部26となり、凹溝部22を上から覆う部分が前記薄肉部25となる。
そして、本体部23は、ガラス板10の上面11に当接する当接面24を有しており、この当接面24は、ガラス板10の上面11と分離可能である平滑な非接着面である。つまり、カバー部材20の下面21とガラス板10の上面11とは、面接触しているが、接着剤等が用いられて接着されておらず、分離可能である。
【0031】
凹溝部22は、カバー部材20の外縁を除く中央にのみ形成されており、当接面24は、凹溝部22の開口縁(下縁)を全周にわたって囲む範囲に設けられている。したがって、吸引部31を通じて流路30内の空気を吸引すれば、流路30内は減圧され、カバー部材20の当接面24はガラス板10の上面11に密着し、カバー部材20をガラス板10に固定することができる。そして、流路30内の空気の吸引を解除(停止)すれば、カバー部材20はガラス板10から分離可能となり、カバー部材20とガラス板10との内の一方を残して他方のみを交換することができる。
【0032】
〔流路30について〕
図2に示すように、流路30は、吸引部31と繋がっている主流路36と、この主流路36から分岐している複数の枝流路37とを有している。枝流路37それぞれは、開口32と繋がっている。
主流路36は、直線的に一条形成されており、その端部に設けられている分岐部38aから、3つの枝流路37a,37b,37cが分岐している。枝流路37aは、開口32と繋がっているが、他の枝流路37b,37cの端部には、第2と第3の分岐部38b,38cが設けられており、第2の分岐部38bから2つの枝流路37d,37eが分岐し、第3の分岐部38cから2つの枝流路37f,37gが分岐している。枝流路37d,37fは、開口32と繋がっているが、他の枝流路37e,37gは、合流部39で合流し、合流した枝流路37hが開口32と繋がっている。なお、第1〜第8の枝流路37a〜37hは、カバー部材20に形成されている凹溝によって構成されることから、この凹溝の溝底面を下面として有する部分は、薄肉部25となる(図5参照)。図5は、図2のC矢視の断面図である。
【0033】
このように複数の枝流路37が形成されていることによって、流路30内の減圧によって枝流路37が潰れるのを防ぐための補剛部として隔壁40が、カバー部材20に形成されている。つまり、例えば枝流路37a,37c間には、隔壁40が形成されている。この隔壁40の下面は、ガラス板10の上面11と面で接触する(図5参照)。
カバー部材20のうち、枝流路37が複数形成されている領域では、空間が多くなってカバー部材20の剛性が、主流路36が形成されている領域の剛性に比べて低くなる場合があるが、隔壁40によって、この剛性の低下を抑えることができる。つまり、隔壁40は補剛部(柱部材)として機能することができる。
【0034】
〔その他について〕
カバー部材20は、上記のとおりPDMS製であり、ガラス板10よりも弾性係数(ヤング率)の小さい部材からなるが、領域に応じてその特性(弾性係数)を変化させてもよい。つまり、凹溝部22が形成されている同じ薄肉部25であっても、その薄肉部25は、開口32から離れている第1領域41(図3参照)と、開口32を取り囲む領域である第2領域42(図3参照)とを有しており、第2領域42は、第1領域41よりも弾性係数が小さく構成されている。本実施形態では、第2領域42は、枝流路37が形成されている領域である。
なお、弾性係数の差は、第1領域41と第2領域42とで、PDMSの特性(材料の混合比)を変化させることにより生じさせてもよく、(薄肉部25ではあるが)さらにその厚さを相違させることにより生じさせてもよい。
このように、カバー部材20を弾性係数の小さい部材とすることで、カバー部材20は柔軟性を有することができる。また、カバー部材20はガラス板10よりも硬さが低い。
【0035】
このように、開口32を取り囲む領域である第2領域42の弾性係数を小さくすることで、吸引部31を通じて流路30内の空気を吸引した際に、この第2領域42に含まれる開口32は、臓器Pの一部Paに追従して変形可能となり、開口32と臓器Pとの間に隙間が生じるのを防ぎ密封性を高め、流路30内の陰圧による臓器Pの固定性能を高めることができる。そして、剛性の高い第1領域41では、流路30内が陰圧となって流路30が潰れるのを防ぐことができる。
【0036】
生体試料固定器1の各部の寸法について説明する。ガラス板10は、例えば、短辺25mm、長辺75mm、厚さ0.17mm程度である。カバー部材20は、外周輪郭形状がガラス板10よりも小さく設定されている。カバー部材20(本体部23)の厚さは、2mm以下であり、この厚さが厚肉部26の厚さとなる。そして、このカバー部材20に形成されている凹溝部22の溝深さは、例えば50〜200μmである。つまり、流路30の厚さが50〜200μmとなる。なお、流路30(主流路36)の幅は、0.1mm〜1mm程度である。カバー部材20の厚さから凹溝部22の溝深さを除いた厚さが、薄肉部25の厚さとなる。
そして、開口32の開口寸法、つまり本実施形態では円形である開口32の直径は2mm〜4mm程度であり、本実施形態では3mmである。
このように、カバー部材20及び凹溝部22(流路30)は非常に薄く、カバー部材20及びマイクロ流路構造である凹溝部22は、例えば鋳造により成型される。
開口32の開口寸法(直径)は、流路30(主流路36)の幅よりも大きいことから、開口32が形成される領域の周囲には、主流路36から流体通過断面が拡大される拡大空間が形成され、この拡大空間に隔壁40が設けられている。
【0037】
また、開口32が形成される部分も薄肉部25であり、薄肉部25の厚さ及び流路30の厚さを薄くすることによって、開口32から侵入させた臓器Pの一部Paは、ガラス板10の一部(接触面)12に接触可能となる。
つまり、薄肉部25の厚さ及び流路30の厚さが大きくなると、臓器Pの一部Paをガラス板10に接触させるためには、その厚さに応じて臓器Pの一部Paを大きく流路30内に引き込む必要があり、この場合、臓器Pの一部Paが例えば鬱血して観察部位として不適切な状態になるおそれがある。また、薄肉部25の厚さ及び流路30の厚さが大きすぎて、臓器Pの一部Paをガラス板10に接触させることができない場合、一部Paとガラス板10との間に空気の層が介在して、顕微鏡5による良好な観察状態が得られない。しかし、本実施形態のように、カバー部材20等を薄く構成することによって、このような不具合の発生を防ぐことが可能となる。
なお、開口32の開口寸法(本実施形態では直径3mm)の1/3以上(つまり1mm以上)の寸法の広さを有する範囲で、臓器Pの一部Paがガラス板10に接触できるような値に、カバー部材20の厚さ(及び流路30の厚さ)は設定されている。
【0038】
〔実施例〕
図6(A)は、上記実施形態(図3)の生体試料固定器1を用いて、マウスMの腸を固定して観察した結果を示している。マウスMの腹部に、切開範囲として5mm四方程度の切り口を作成し、高速撮影(33ms/frame)を行った。また、その比較として図6(B)は、生体試料固定器1を用いることなく、つまり、マウスMの腸を固定しないで観察した結果を示している。図6(A)(B)では、蛍光色素をPBS、生理食塩水等に分散させ、これをマウスMの尾静脈より投与している。図6(A)に示すように、生体試料固定器1を用いた場合、生体試料の一部(観察部位)の動きを拘束することができ、明確な観察が可能となる。これに対して、図6(B)に示すように、固定しない場合は、時間が変化すると焦点が合わず、また、観察部位がずれてしまう。
なお、本実施形態の生体試料固定器1によれば、マウスMの肝臓、心臓及び肺についても同様の観察が可能である。
【0039】
図7は、上記実施形態(図3)の生体試料固定器1を用いて、マウスMの肝臓を固定して観察した結果を示しており、図7の左側から順に、流路30内の空気を吸引した状態(ON状態)、流路30内の空気の吸引を停止した状態(OFF状態)、再びON状態とした場合の観察結果を示している。
一旦、吸引をオフ状態にすると、肝臓に対する顕微鏡5の焦点がずれるが、再びオン状態にすると、肝臓の別の場所を保持することができ、観察を再開することができる。つまり、吸引のON/OFFの切り替えにより観察部位を変更することが可能となる。
【0040】
図8は、上記実施形態(図3)の生体試料固定器1を用いて、マウスMの肝臓における幹細胞の分布及び移動を観察した結果を示している。まず、マウスMの大腿骨より採取した骨髄細胞から得られた間葉系幹細胞(MSC)を、培養プレートに播種し、量子ドット含有培地で培養することにより、細胞の蛍光標識を行った。次に、蛍光標識されたMSCを、マウスMの尾静脈より投与した。そして、マウス腹部に、切開範囲として5mm四方程度の切り口を作成し、生体試料固定器1で肝臓を固定し、高速撮影(33ms/frame)を行った。図8に示すように、MSCが肝臓に流入し、分布する様子、及び、ローリング、接着等の挙動も可視化することができる。
また、この応用として、内在性の細胞の挙動を可視化することを目的として、白血球に特異的に認識される蛍光修飾抗体をマウスの尾静脈から投与し、生きたマウスの腸における白血球の挙動の撮影を行うことが可能である。
【0041】
図9は、上記実施形態(図3)の生体試料固定器1を用いて、マウスMの肝臓を長時間観察した結果を示している。蛍光標識されたリポソームを、マウスの尾静脈より投与し、マウス腹部に、切開範囲として5mm四方程度の切り口を作成し、生体試料固定器1で肝臓を固定し、高速撮影(500ms/frame)を行った。蛍光標識リポソームが肝臓に流入し、分布する様子を、長時間にわたって撮影することができている。しかも、長時間にわたって観察部位が対物レンズの視野内でずれることがなく、撮影されている。
なお、図9では、70分観察した結果を示しているが、120分、観察部位が対物レンズの視野内でずれることがなく撮影することができたことも確認されている。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る生体試料固定器1によれば、カバー部材20に形成されている開口32に臓器Pを臨ませ、吸引部31を通じて流路30内の空気を吸引すれば、開口32において臓器Pの一部Paを陰圧(負圧)により保持することができる(図3参照)。このため、臓器Pをステージ6に対して固定することができ、開口32に保持されている臓器Pの一部Paを観察部位(観察対象部位)として、ガラス板10を通じて顕微鏡観察することが可能となる。
そして、開口32に保持されている臓器Pの一部Paは、顕微鏡5による観察部位となることから、この臓器Pの一部Paが、マウスMの皮膚Sから露出していれば足りる。したがって、マウスMの皮膚Sの切開範囲は、臓器Pの一部Pa及びその周囲の僅かな部分が露出する範囲で済み、切開範囲を従来(図13参照)と比較して小さくすることができ、マウスMに対する負担(侵襲性)を抑えることが可能となる。
【0043】
具体的に説明すると、本実施形態では、開口32は直径が3mmであり、ガラス板10の一部12に接触させる臓器Pの一部Paが1mm程度でよく、この場合、マウスMの皮膚Sの切り口寸法は、開口32の開口寸法(3mm)よりも僅かに大きい5mm程度で済み、マウスMへの負担は小さい。つまり、本実施形態に係る生体試料固定器1では、観察部位である臓器Pの一部Paが、この一部Paを陰圧によって固定する固定部位と同じであるため、この部位及びその周囲の小領域のみを皮膚Sから露出可能となる切開で済み、低侵襲的である。
以上より、麻酔、人工呼吸器、体温維持装置等によってマウスMを生かした状態とし、対物レンズ7の視野程度の小さな切り口をマウスMの皮膚Sに設ければよいので、マウスMへの影響を最小限にして臓器Pの観察が可能となる。また、マウスM及び臓器Pを自然な状態として観察することができる。
【0044】
開口32において行われる臓器Pの一部Paの動きの拘束についてさらに説明する。図3に示すように、生体試料固定器1の上にマウスMをうつ伏せの姿勢で載せることにより、開口32にその臓器Pの一部Paを載せることができ、この開口32に載せた臓器Pの一部Paは、マウスMの自重によって、開口32に接触すると共に、開口32に僅かに入り込むことができる。そして、吸引部31を通じて流路30内の空気が吸引されることによって、流路30内が減圧され、臓器Pの一部Paは、更に流路30内に引き込まれ、ガラス板10の一部12に接触する。この際、臓器Pの一部Paと開口32との間には、微小隙間δが形成され、この微小隙間δ、つまり、一部Paの周囲が減圧される。
この減圧状態では、空気の吸引方向は、開口32の中心線に平行な方向(本実施形態では鉛直方向)ではなく、この中心線に直交する方向の成分を有した方向(本実施形態では水平方向)であり、特に流路30内であって、開口32から離れた部分では、中心線に直交する方向となる。このように、開口32に保持した臓器Pに対する空気の吸引方向は、従来(図13)の吸引方向とは異なる。
【0045】
また、本実施形態では、枝流路37を複数形成することによって、開口32に保持される臓器Pの一部Paの周囲を、複数方向から減圧することができ、臓器Pの一部Paを安定して開口32に保持することが可能となる。
そして、本実施形態に係る生体試料固定器1によれば、高倍率(20倍、40倍)となっても、長時間にわたって観察部位が対物レンズ7の視野内でずれることなく観察可能となる。また、本実施形態によれば、臓器を体外へ出して行う観察とは異なることから、長時間の観察を行っても臓器の乾燥が問題とならない。しかも、生体試料固定器1をステージ6に載せ、その上に生体(生体試料)を載せればよいことから、観察の準備が簡単である。なお、従来のスタビライザ(図13)の場合、生体試料に対するスタビライザの位置調整が必要となり、観察の準備に手間を要する。
また、上記実施例で説明したように、流路30内の空気の吸引を、ON/OFF切り替えることによって、何度でも、観察部位を変更することが可能となる(図7参照)。
【0046】
図10は、生体試料固定器の他の実施形態を示す斜視図である。この生体試料固定器51と、図2に示している生体試料固定器1とは、枝流路37及び隔壁40の構成が異なるが、その他の構成は同じである。図10の実施形態の場合、開口32に対して三方向から空気が吸引される。
【0047】
図11は、生体試料固定器のさらに別の実施形態を示す断面図である。図11(A)に示すように、カバー部材20は、開口32の周囲に環状の突起部45を有している。突起部45も、本体部23と同じ素材(PDMS)からなり、弾性変形が可能である。突起部45が形成されている点以外は、図2に示す生体試料固定器1と同じである。
そして、吸引部31を通じて流路30内の空気を吸引すると、図11(B)に示すように、臓器Pの一部Paが突起部45に吸着すると共に、この突起部45が一部Paに沿って拡径方向に弾性変形する。これにより、開口32と臓器Pとは密着し、密封性を高めることができる。
【0048】
また、前記各実施形態では、ガラス板10とカバー部材20とにより生体試料固定器が構成される場合を説明したが、本発明の生体試料固定器は、ガラス板10に重ねて載せるためのカバー部材20のみを備えた構成であってもよい。
【0049】
また、本発明の生体試料固定器は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、吸引部31の形状は図示した以外の形状であってもよい。また、枝流路37を省略して、一条の流路の一端部側に吸引部31を設け、他端部側に開口32を形成した簡単な構成であってもよい。なお、枝流路37を設ける場合、その分岐の構成も図示した構成以外であってもよい。
また、吸引部31を通じて流路30内の吸引を行う対象は、上記実施形態では空気として説明したが、流路30内に液体を充填しこれを吸引してもよい。
【0050】
さらに、上記実施形態では、ガラス板10とカバー部材20とは分離可能として説明したが、ガラス板10とカバー部材20とは接着等によって固定されていてもよく、さらには、上記実施形態では、ガラス板10とカバー部材20とは異なる材質であり、別部材からなる場合を説明したが、ガラス板10に相当する板部と、カバー部材20に相当するカバー部とは、PDMS等により一体成型品であってもよい。
また、上記実施形態では、吸引部31と開口32との双方がカバー部材(カバー部)20に設けられている場合を説明したが、図12に示すように、吸引部31については、ガラス板(板部)10に設けられていてもよい。
【0051】
さらに、図示しないが、カバー部材20は二層構造であってもよい。この場合、図12と同様に、吸引部31については、ガラス板(板部)10に設けられていてもよく、図3のように開口32と同層である上側のカバー部材(上側のカバー部)に設けられていてもよく、又は、その下層である下側のカバー部材(下側のカバー部)に設けられていてもよい。この二層構造の場合、下側のカバー部材がガラス板10に重ねて設けられる。また、この場合、上側のカバー部材と下側のカバー部材とは、同じ材質であってもよく、異なっていてもよい。また、各層は接着されていてもよく、分離可能であってもよい。
また、上記実施形態では、生体試料固定器を倒立顕微鏡に設置した場合として説明したが、正立顕微鏡に設置してもよい。この場合、生体試料固定器を、図3の場合と上下反対にして設置する。
【符号の説明】
【0052】
1:生体試料固定器 5:顕微鏡 6:ステージ 7:対物レンズ 10:ガラス板(板部) 11:上面 12:一部(接触面) 20:カバー部材(カバー部) 22:凹溝部 23:本体部 24:当接面 30:流路 30a:一部 30b:他部 31:吸引部 32:開口 36:主流路 37:枝流路 40:隔壁(補剛部) 51:生体試料固定器 P:臓器(生体試料) Pa:一部(生体試料の一部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡のステージに載せた生体試料の動きを拘束するための生体試料固定器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞等を観察する観察装置及び標識法の開発が進められており、リアルタイムイメージング及び各種細胞内イベントの可視化が可能となっている。特に培養プレート上の細胞を生きたまま観察できる生細胞リアルタイムイメージング技術により、これまでは観察することのできなかった細胞内の分子シグナル等の観察が可能となっている。
しかし、例えば小動物の臓器における細胞等の挙動は、周囲の細胞を含む三次元構造、及び、周囲の細胞から分泌されるタンパク質によるシグナル伝達等、周囲の細胞からの影響を受けることから、培養細胞を用いた細胞の挙動を観察するのみでは足らず、生きた状態にある小動物の臓器の細胞を可視化する必要がある。
【0003】
小動物の臓器又は組織の細胞を観察する場合、例えば心臓及び肺の動きに影響を受けにくい、脂肪、固形腫瘍及び皮膚等は、特に固定しなくても、共焦点レーザ顕微鏡を用いて観察することが可能である。しかし、麻酔下であっても生命維持に不可欠である、心臓、肺、腸及び横隔膜直下に存在しその動きの影響を受ける肝臓等に関しては、固定して観察を行うことが必要となる。
【0004】
生きた状態にある小動物(例えばマウス)の心臓、肝臓等の生体試料を観察するためにその生体試料を固定する技術として、例えば特許文献1に、生体観察用のスタビライザが開示されている。このスタビライザは、図13に示すように、観察領域94よりも大きな貫通孔98を有し臓器に接触させる環状の接触部91を備えている。この接触部91のうち、臓器の表面90との接触面に凹部92が設けられ、この凹部92には、凹部92と表面90との間に形成される空間を減圧する減圧手段93が接続されている。
【0005】
このスタビライザによれば、顕微鏡のステージ上に載せた小動物の臓器の表面90に対して環状の接触部91を上から押し付け、減圧手段92によって凹部92(空間)を減圧する。すると、この接触部91は臓器の表面90を吸着して固定することができ、これにより顕微鏡のステージに対して臓器を固定することが可能となる。
そして、環状である接触部91の径方向内側を観察領域94とし、この観察領域94の中央にある観察部位95を対物レンズ96の視野内に収め、顕微鏡観察が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−279389号公報(図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
小動物等の生体の臓器を顕微鏡で観察する場合、麻酔下であっても、その小動物の生命活動に不可欠である呼吸及び消化運動等により、臓器の運動が継続的に行われていることから、小動物及びその臓器に対する負担をできるだけ抑える必要がある。
しかし、従来のスタビライザの場合、観察部位95の周囲に、環状の接触部91を設置する必要があることから、小動物の皮膚の切開範囲97は、この接触部91よりも充分に大きな範囲が必要となり、切開範囲97が観察部位95に比べてはるかに広くなってしまい、小動物に対する侵襲性が問題となる。
つまり、観察部位95が例えば2mm程度の領域であっても、その周囲に存在している環状の接触部95の外径が3cmであるならば、この3cmよりも充分に大きな切開範囲97が必要となる。さらに、小動物の臓器における観察部位95を変更するためには、臓器に対して接触部91を移動させる必要があり、この場合、さらに大きな切開範囲97が必要となる。
【0008】
そこで、本発明は、侵襲性を抑えつつ生体試料を固定することが可能となる生体試料固定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、顕微鏡のステージに設置され、生体試料を当該ステージに対して固定するための生体試料固定器であって、前記ステージに設置される透明の板部と、前記板部に重ねて設けられ当該板部との間に流路を形成するカバー部とを備え、前記カバー部又は前記板部には、前記流路の一部と繋がり当該流路内の流体を吸引するための吸引部が設けられ、前記カバー部には、前記流路の他部と繋がっていると共に前記生体試料の一部に臨ませる開口が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、カバー部に形成されている開口に生体試料を臨ませ、流路内の流体を吸引すれば、開口において生体試料の一部を陰圧(負圧)により保持することができる。このため、開口に保持されている生体試料の一部を観察部位として、透明の板部を通じて顕微鏡観察することが可能となる。すなわち、開口に保持されている生体試料の一部は、顕微鏡による観察部位となることから、この生体試料の一部が、例えば小動物等の生体の皮膚から露出していれば足りる。したがって、小動物の皮膚の切開範囲は、生体試料の一部及びその周囲の僅かな部分が露出する範囲で済み、切開範囲を従来と比較して小さくすることができ、小動物等の生体に対する侵襲性を抑えることが可能となる。
【0011】
また、前記開口は、前記板部を間に挟んで、前記顕微鏡の対物レンズに対向する位置に設けられることにより、流路内の流体を吸引することで開口に保持される生体試料の一部を、顕微鏡の対物レンズの視野内に収めることができる。
【0012】
また、前記カバー部は、前記流路を構成するための凹溝部と、この凹溝部を囲み前記板部の面に当接する当接面を有する本体部とを有し、前記当接面は、前記流路内の流体を吸引すると前記板部の前記面に密着し、当該吸引を解除した状態では前記板部の前記面と分離可能である非接着面であるのが好ましい。
この場合、流路内の流体を吸引すれば、カバー部の当接面は板部の面に密着し、カバー部を板部に固定することができる。そして、流路内の流体の吸引を解除すれば、カバー部は板部から分離可能となり、カバー部と板部との内の一方を交換することができる。
【0013】
また、流路内の流体を吸引することによって、生体試料の一部はカバー部(開口)に密着することから、生体試料を傷めないように、前記カバー部は、前記板部よりも弾性係数の小さい部材からなるのが好ましい。これにより、カバー部は板部より柔軟性を有し、生体試料を傷めるのを防ぐことができる。
【0014】
また、前記板部は、前記流路内の流体の吸引により前記開口に保持されかつ当該開口から前記流路内に侵入させる前記生体試料の一部を接触可能とする接触面を有しているのが好ましい。
この場合、開口に保持されかつこの開口から流路内に侵入させた生体試料の一部が、板部のステージと反対側の面(接触面)に接触可能となる。そして、この接触面に接触している生体試料の一部を顕微鏡により観察することができる。
【0015】
また、前記流路は、前記吸引部と繋がっている主流路と、この主流路から分岐し前記開口とそれぞれが繋がっている複数の枝流路とを有しているのが好ましい。
この場合、開口に保持される生体試料の一部の周囲を複数方向から吸引し、その周囲の空間を減圧することができ、生体試料の一部を開口に保持させることができる。
【0016】
また、主流路から複数の枝流路が分岐している場合において、前記カバー部の前記枝流路間には、前記流路内の減圧によって当該枝流路が潰れるのを防ぐ補剛部が形成されているのが好ましい。
枝流路が形成されている領域ではカバー部の剛性が、主流路が形成されている領域の剛性に比べて低くなる場合があるが、補剛部によってカバー部の剛性が低下するのを抑えることができる。
【0017】
また、本発明は、顕微鏡のステージに設置され、生体試料を当該ステージに対して固定するための生体試料固定器であって、前記ステージに設置される透明の板部材に重ねて設けられ当該板部材との間に流路を形成するカバー部材を備え、前記カバー部材には、前記流路の一部と繋がり当該流路内の流体を吸引するための吸引部と、前記流路の他部と繋がっていると共に前記生体試料の一部に臨ませる開口とが形成されていることを特徴とする。
さらに本発明は、顕微鏡のステージに設置され、生体試料を当該ステージに対して固定するための生体試料固定器であって、前記ステージに設置される透明の板部材に重ねて設けられ当該板部材との間に流路を形成するカバー部材を備え、前記カバー部材には、前記流路の一部と繋がっていると共に前記生体試料の一部に臨ませる開口が形成され、前記カバー部材は、前記流路の他部と繋がり当該流路内の流体を吸引するための吸引部が形成されている前記板部材に重ねて設けられることを特徴とする。
【0018】
これら本発明によれば、カバー部材に形成されている開口に生体試料を臨ませ、流路内の流体を吸引すれば、開口において生体試料の一部を陰圧(負圧)により固定することができる。このため、開口に保持されている生体試料の一部を観察部位として、透明の板部材を通じて顕微鏡観察することが可能となる。すなわち、開口に保持されている生体試料の一部は、顕微鏡による観察部位となることから、この生体試料の一部が、例えば小動物等の生体の皮膚から露出していれば足りる。したがって、小動物の皮膚の切開範囲は、生体試料の一部及びその周囲の僅かな部分が露出する範囲で済み、切開範囲を従来と比較して小さくすることができ、小動物等の生体に対する侵襲性を抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の生体試料固定器によれば、小動物等の皮膚の切開範囲は、生体試料の一部及びその周囲の僅かな部分が露出する範囲で済み、切開範囲を従来と比較して小さくすることができ、小動物等の生体に対する侵襲性を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の生体試料固定器をステージに設置した顕微鏡の模式図である。
【図2】生体試料固定器の説明図である。
【図3】生体試料固定器の断面図であり、図2のB矢視の断面図である。
【図4】図2のA矢視の断面図である。
【図5】図2のC矢視の断面図である。
【図6】(A)は生体試料固定器を用いて、マウスの腸を固定して観察した結果を示し、(B)はマウスの腸を固定しないで観察した結果を示している。
【図7】生体試料固定器を用いて、マウスの肝臓を固定して観察した結果を示している。
【図8】生体試料固定器を用いて、マウスの肝臓における幹細胞の分布及び移動を観察した結果を示している。
【図9】生体試料固定器を用いて、マウスの肝臓を長時間観察した結果を示している。
【図10】生体試料固定器の他の実施形態を示す斜視図である。
【図11】生体試料固定器のさらに別の実施形態を示す断面図であり、(A)は生体試料を吸着する前の状態であり、(B)は生体試料を吸着した状態を示している。
【図12】さらに別の実施形態に係る生体試料固定器の断面図である。
【図13】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔生体試料固定器の全体構成〕
図1は、本発明の生体試料固定器1をステージ6に設置した顕微鏡5の模式図である。この生体試料固定器1は、生きた状態にある小動物等の生体の臓器又は組織(生体試料)を、ステージ6に対して固定し、その動きを拘束するための装置であり、しかも、その臓器等を、生体の体外へ取り出すことなく体内に収められた状態で、その生体の皮膚の一部を切開して露出させ、顕微鏡5によって観察するために用いられる機器である。なお、本実施形態では生体をマウスMとして説明する。
【0022】
顕微鏡5は、ステージ6と、対物レンズ7を有しステージ6の下側に設けられている対物ユニット8とを備えた倒立顕微鏡である。ステージ6の上に生体試料固定器1が載せられ、この生体試料固定器1の上にマウスMが載せられ、ステージ6に形成されている貫通孔6aを通じて、マウスMの臓器Pが観察される。なお、マウスMには麻酔が適用されるが、このマウスMの全身をステージ6に固定する必要はない。
対物ユニット8は、対物レンズ7の他に、レーザ光源8a、マイクロレンズディスク8b、ピンホールディスク8c、ダイクロイックミラー8d及びCCDカメラ8eを有しており、臓器Pの高速撮影を行う。なお、観察対象となるマウスMは、うつ伏せ姿勢であり、その腹部の皮膚が切開され、臓器Pを体内に残しながら体外へ露出させた状態とする。
【0023】
図2は、生体試料固定器1の斜視図である。図3は、生体試料固定器1の断面図(図2のB矢視の断面図)であり、臓器Pを保持した状態にある。図4は、図2のA矢視における断面図である。生体試料固定器1は、ステージ6上に設置される透明の板部(10)と、この板部(10)の上面11(ステージ6と反対側の面)に重ねて設けられているカバー部(20)とを備えている。なお、板部(10)とカバー部(20)とは、一体不可分の構造であってもよいが、本実施形態では別の部材からなり、板部は板部材(ガラス板10)からなり、カバー部はカバー部材20からなる。また、カバー部材20の内部を説明するために、その内部構造を、図2では細線で示している。
【0024】
本実施形態では、前記板部材は透明の薄いガラス板10であって、光に対して透明であり、一般的に光学顕微鏡観察において用いられるカバーガラスである。ガラス板10はステージ6に固定される。
カバー部材20は、ガラス板10と同様に薄い板部材であって、本実施形態では、シリコンゴム製(ポリジメチルシロキサン(PDMS)製)である。カバー部材20は、ガラス板10の上に載って積層状態にある。なお、カバー部材20及び板部材は他の材質であってもよい。
【0025】
〔カバー部材20及びガラス板10について〕
カバー部材20の一面(下面)側であってその中央部には、凹溝部22が形成されており、カバー部材20がガラス板10に重ねられると、この凹溝部22によってガラス板10との間に流路30が形成される。本実施形態では、顕微鏡5及び生体試料固定器1は大気中に設置されることから、この流路30には空気(大気)が流れる。
【0026】
図4において、ガラス板10の上にカバー部材20が重ねられた状態で、凹溝部22の溝底面(上面)22aと、左右両側の溝側面22b,22cと、ガラス板10の上面11とで囲まれた空間によって、流路30が形成される。
そして、カバー部材20に凹溝部22が形成されることにより、その溝底面22aを下面として有する薄肉部25と、それ以外の厚肉部26とが形成される。厚肉部26は凹溝部22が形成されていない部分である。
【0027】
また、図2と図3とにおいて、カバー部材20には、吸引部31と、開口32とが設けられている。吸引部31は、薄肉部25上に設けられており、流路30の一部30a(図3参照)と繋がっており、流路30内の空気を吸引するためのパイプ33が接続されている接続ポートである。
開口32は、流路30の他部30b(図3参照)と繋がっていると共にマウスMの臓器Pの一部Paに臨ませる貫通孔からなる。つまり、カバー部材20の薄肉部25をその厚さ方向に貫通して形成した貫通孔によって、開口32が構成されており、開口32は流路30内の空間とマウスMが存在する外部空間とを連通している。
【0028】
そして、パイプ33に減圧手段34が接続されており、減圧手段34がパイプ33を通じて流路30内の空気を吸引することで、流路30内が減圧される。これにより、開口32に臨ませたマウスMの臓器Pの一部Paが、開口32に吸着して保持され、臓器Pの動きが拘束される(図3参照)。減圧手段34は、図示しないが、ポンプ又はシリンジ等とすることができる。
【0029】
そして、開口32は、ガラス板10を間に挟んで、対物レンズ7に対向する位置に設けられており(図3参照)、吸引部31を通じて流路30内の空気が吸引されることで、流路30内が減圧され、臓器Pの一部Paが、開口32に保持されると共に開口32から流路30内に侵入する。そして、ガラス板10の上面11(ステージ6と反対側の面)の一部12は、開口32から流路30内に侵入した臓器Pの一部Paが接触可能となる接触面となる。
この接触面(12)に接触している臓器Pの一部Paを、対物レンズ7の視野内に収め、この接触している一部Paに焦点を合わせることにより、顕微鏡5により観察することができる。また、ガラス板10の接触面(12)に臓器Pの一部Paが接触することで、この一部Paを観察部位とした場合に、この観察部位とガラス板10との間に空気の層が介在しないため良好な観察状態が得られる。
【0030】
また、図4において、カバー部材20は、流路30を構成するための凹溝部22と、この凹溝部22を囲む本体部23とを有している。本体部23のうち凹溝部22を前後左右四方から囲む部分が前記厚肉部26となり、凹溝部22を上から覆う部分が前記薄肉部25となる。
そして、本体部23は、ガラス板10の上面11に当接する当接面24を有しており、この当接面24は、ガラス板10の上面11と分離可能である平滑な非接着面である。つまり、カバー部材20の下面21とガラス板10の上面11とは、面接触しているが、接着剤等が用いられて接着されておらず、分離可能である。
【0031】
凹溝部22は、カバー部材20の外縁を除く中央にのみ形成されており、当接面24は、凹溝部22の開口縁(下縁)を全周にわたって囲む範囲に設けられている。したがって、吸引部31を通じて流路30内の空気を吸引すれば、流路30内は減圧され、カバー部材20の当接面24はガラス板10の上面11に密着し、カバー部材20をガラス板10に固定することができる。そして、流路30内の空気の吸引を解除(停止)すれば、カバー部材20はガラス板10から分離可能となり、カバー部材20とガラス板10との内の一方を残して他方のみを交換することができる。
【0032】
〔流路30について〕
図2に示すように、流路30は、吸引部31と繋がっている主流路36と、この主流路36から分岐している複数の枝流路37とを有している。枝流路37それぞれは、開口32と繋がっている。
主流路36は、直線的に一条形成されており、その端部に設けられている分岐部38aから、3つの枝流路37a,37b,37cが分岐している。枝流路37aは、開口32と繋がっているが、他の枝流路37b,37cの端部には、第2と第3の分岐部38b,38cが設けられており、第2の分岐部38bから2つの枝流路37d,37eが分岐し、第3の分岐部38cから2つの枝流路37f,37gが分岐している。枝流路37d,37fは、開口32と繋がっているが、他の枝流路37e,37gは、合流部39で合流し、合流した枝流路37hが開口32と繋がっている。なお、第1〜第8の枝流路37a〜37hは、カバー部材20に形成されている凹溝によって構成されることから、この凹溝の溝底面を下面として有する部分は、薄肉部25となる(図5参照)。図5は、図2のC矢視の断面図である。
【0033】
このように複数の枝流路37が形成されていることによって、流路30内の減圧によって枝流路37が潰れるのを防ぐための補剛部として隔壁40が、カバー部材20に形成されている。つまり、例えば枝流路37a,37c間には、隔壁40が形成されている。この隔壁40の下面は、ガラス板10の上面11と面で接触する(図5参照)。
カバー部材20のうち、枝流路37が複数形成されている領域では、空間が多くなってカバー部材20の剛性が、主流路36が形成されている領域の剛性に比べて低くなる場合があるが、隔壁40によって、この剛性の低下を抑えることができる。つまり、隔壁40は補剛部(柱部材)として機能することができる。
【0034】
〔その他について〕
カバー部材20は、上記のとおりPDMS製であり、ガラス板10よりも弾性係数(ヤング率)の小さい部材からなるが、領域に応じてその特性(弾性係数)を変化させてもよい。つまり、凹溝部22が形成されている同じ薄肉部25であっても、その薄肉部25は、開口32から離れている第1領域41(図3参照)と、開口32を取り囲む領域である第2領域42(図3参照)とを有しており、第2領域42は、第1領域41よりも弾性係数が小さく構成されている。本実施形態では、第2領域42は、枝流路37が形成されている領域である。
なお、弾性係数の差は、第1領域41と第2領域42とで、PDMSの特性(材料の混合比)を変化させることにより生じさせてもよく、(薄肉部25ではあるが)さらにその厚さを相違させることにより生じさせてもよい。
このように、カバー部材20を弾性係数の小さい部材とすることで、カバー部材20は柔軟性を有することができる。また、カバー部材20はガラス板10よりも硬さが低い。
【0035】
このように、開口32を取り囲む領域である第2領域42の弾性係数を小さくすることで、吸引部31を通じて流路30内の空気を吸引した際に、この第2領域42に含まれる開口32は、臓器Pの一部Paに追従して変形可能となり、開口32と臓器Pとの間に隙間が生じるのを防ぎ密封性を高め、流路30内の陰圧による臓器Pの固定性能を高めることができる。そして、剛性の高い第1領域41では、流路30内が陰圧となって流路30が潰れるのを防ぐことができる。
【0036】
生体試料固定器1の各部の寸法について説明する。ガラス板10は、例えば、短辺25mm、長辺75mm、厚さ0.17mm程度である。カバー部材20は、外周輪郭形状がガラス板10よりも小さく設定されている。カバー部材20(本体部23)の厚さは、2mm以下であり、この厚さが厚肉部26の厚さとなる。そして、このカバー部材20に形成されている凹溝部22の溝深さは、例えば50〜200μmである。つまり、流路30の厚さが50〜200μmとなる。なお、流路30(主流路36)の幅は、0.1mm〜1mm程度である。カバー部材20の厚さから凹溝部22の溝深さを除いた厚さが、薄肉部25の厚さとなる。
そして、開口32の開口寸法、つまり本実施形態では円形である開口32の直径は2mm〜4mm程度であり、本実施形態では3mmである。
このように、カバー部材20及び凹溝部22(流路30)は非常に薄く、カバー部材20及びマイクロ流路構造である凹溝部22は、例えば鋳造により成型される。
開口32の開口寸法(直径)は、流路30(主流路36)の幅よりも大きいことから、開口32が形成される領域の周囲には、主流路36から流体通過断面が拡大される拡大空間が形成され、この拡大空間に隔壁40が設けられている。
【0037】
また、開口32が形成される部分も薄肉部25であり、薄肉部25の厚さ及び流路30の厚さを薄くすることによって、開口32から侵入させた臓器Pの一部Paは、ガラス板10の一部(接触面)12に接触可能となる。
つまり、薄肉部25の厚さ及び流路30の厚さが大きくなると、臓器Pの一部Paをガラス板10に接触させるためには、その厚さに応じて臓器Pの一部Paを大きく流路30内に引き込む必要があり、この場合、臓器Pの一部Paが例えば鬱血して観察部位として不適切な状態になるおそれがある。また、薄肉部25の厚さ及び流路30の厚さが大きすぎて、臓器Pの一部Paをガラス板10に接触させることができない場合、一部Paとガラス板10との間に空気の層が介在して、顕微鏡5による良好な観察状態が得られない。しかし、本実施形態のように、カバー部材20等を薄く構成することによって、このような不具合の発生を防ぐことが可能となる。
なお、開口32の開口寸法(本実施形態では直径3mm)の1/3以上(つまり1mm以上)の寸法の広さを有する範囲で、臓器Pの一部Paがガラス板10に接触できるような値に、カバー部材20の厚さ(及び流路30の厚さ)は設定されている。
【0038】
〔実施例〕
図6(A)は、上記実施形態(図3)の生体試料固定器1を用いて、マウスMの腸を固定して観察した結果を示している。マウスMの腹部に、切開範囲として5mm四方程度の切り口を作成し、高速撮影(33ms/frame)を行った。また、その比較として図6(B)は、生体試料固定器1を用いることなく、つまり、マウスMの腸を固定しないで観察した結果を示している。図6(A)(B)では、蛍光色素をPBS、生理食塩水等に分散させ、これをマウスMの尾静脈より投与している。図6(A)に示すように、生体試料固定器1を用いた場合、生体試料の一部(観察部位)の動きを拘束することができ、明確な観察が可能となる。これに対して、図6(B)に示すように、固定しない場合は、時間が変化すると焦点が合わず、また、観察部位がずれてしまう。
なお、本実施形態の生体試料固定器1によれば、マウスMの肝臓、心臓及び肺についても同様の観察が可能である。
【0039】
図7は、上記実施形態(図3)の生体試料固定器1を用いて、マウスMの肝臓を固定して観察した結果を示しており、図7の左側から順に、流路30内の空気を吸引した状態(ON状態)、流路30内の空気の吸引を停止した状態(OFF状態)、再びON状態とした場合の観察結果を示している。
一旦、吸引をオフ状態にすると、肝臓に対する顕微鏡5の焦点がずれるが、再びオン状態にすると、肝臓の別の場所を保持することができ、観察を再開することができる。つまり、吸引のON/OFFの切り替えにより観察部位を変更することが可能となる。
【0040】
図8は、上記実施形態(図3)の生体試料固定器1を用いて、マウスMの肝臓における幹細胞の分布及び移動を観察した結果を示している。まず、マウスMの大腿骨より採取した骨髄細胞から得られた間葉系幹細胞(MSC)を、培養プレートに播種し、量子ドット含有培地で培養することにより、細胞の蛍光標識を行った。次に、蛍光標識されたMSCを、マウスMの尾静脈より投与した。そして、マウス腹部に、切開範囲として5mm四方程度の切り口を作成し、生体試料固定器1で肝臓を固定し、高速撮影(33ms/frame)を行った。図8に示すように、MSCが肝臓に流入し、分布する様子、及び、ローリング、接着等の挙動も可視化することができる。
また、この応用として、内在性の細胞の挙動を可視化することを目的として、白血球に特異的に認識される蛍光修飾抗体をマウスの尾静脈から投与し、生きたマウスの腸における白血球の挙動の撮影を行うことが可能である。
【0041】
図9は、上記実施形態(図3)の生体試料固定器1を用いて、マウスMの肝臓を長時間観察した結果を示している。蛍光標識されたリポソームを、マウスの尾静脈より投与し、マウス腹部に、切開範囲として5mm四方程度の切り口を作成し、生体試料固定器1で肝臓を固定し、高速撮影(500ms/frame)を行った。蛍光標識リポソームが肝臓に流入し、分布する様子を、長時間にわたって撮影することができている。しかも、長時間にわたって観察部位が対物レンズの視野内でずれることがなく、撮影されている。
なお、図9では、70分観察した結果を示しているが、120分、観察部位が対物レンズの視野内でずれることがなく撮影することができたことも確認されている。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る生体試料固定器1によれば、カバー部材20に形成されている開口32に臓器Pを臨ませ、吸引部31を通じて流路30内の空気を吸引すれば、開口32において臓器Pの一部Paを陰圧(負圧)により保持することができる(図3参照)。このため、臓器Pをステージ6に対して固定することができ、開口32に保持されている臓器Pの一部Paを観察部位(観察対象部位)として、ガラス板10を通じて顕微鏡観察することが可能となる。
そして、開口32に保持されている臓器Pの一部Paは、顕微鏡5による観察部位となることから、この臓器Pの一部Paが、マウスMの皮膚Sから露出していれば足りる。したがって、マウスMの皮膚Sの切開範囲は、臓器Pの一部Pa及びその周囲の僅かな部分が露出する範囲で済み、切開範囲を従来(図13参照)と比較して小さくすることができ、マウスMに対する負担(侵襲性)を抑えることが可能となる。
【0043】
具体的に説明すると、本実施形態では、開口32は直径が3mmであり、ガラス板10の一部12に接触させる臓器Pの一部Paが1mm程度でよく、この場合、マウスMの皮膚Sの切り口寸法は、開口32の開口寸法(3mm)よりも僅かに大きい5mm程度で済み、マウスMへの負担は小さい。つまり、本実施形態に係る生体試料固定器1では、観察部位である臓器Pの一部Paが、この一部Paを陰圧によって固定する固定部位と同じであるため、この部位及びその周囲の小領域のみを皮膚Sから露出可能となる切開で済み、低侵襲的である。
以上より、麻酔、人工呼吸器、体温維持装置等によってマウスMを生かした状態とし、対物レンズ7の視野程度の小さな切り口をマウスMの皮膚Sに設ければよいので、マウスMへの影響を最小限にして臓器Pの観察が可能となる。また、マウスM及び臓器Pを自然な状態として観察することができる。
【0044】
開口32において行われる臓器Pの一部Paの動きの拘束についてさらに説明する。図3に示すように、生体試料固定器1の上にマウスMをうつ伏せの姿勢で載せることにより、開口32にその臓器Pの一部Paを載せることができ、この開口32に載せた臓器Pの一部Paは、マウスMの自重によって、開口32に接触すると共に、開口32に僅かに入り込むことができる。そして、吸引部31を通じて流路30内の空気が吸引されることによって、流路30内が減圧され、臓器Pの一部Paは、更に流路30内に引き込まれ、ガラス板10の一部12に接触する。この際、臓器Pの一部Paと開口32との間には、微小隙間δが形成され、この微小隙間δ、つまり、一部Paの周囲が減圧される。
この減圧状態では、空気の吸引方向は、開口32の中心線に平行な方向(本実施形態では鉛直方向)ではなく、この中心線に直交する方向の成分を有した方向(本実施形態では水平方向)であり、特に流路30内であって、開口32から離れた部分では、中心線に直交する方向となる。このように、開口32に保持した臓器Pに対する空気の吸引方向は、従来(図13)の吸引方向とは異なる。
【0045】
また、本実施形態では、枝流路37を複数形成することによって、開口32に保持される臓器Pの一部Paの周囲を、複数方向から減圧することができ、臓器Pの一部Paを安定して開口32に保持することが可能となる。
そして、本実施形態に係る生体試料固定器1によれば、高倍率(20倍、40倍)となっても、長時間にわたって観察部位が対物レンズ7の視野内でずれることなく観察可能となる。また、本実施形態によれば、臓器を体外へ出して行う観察とは異なることから、長時間の観察を行っても臓器の乾燥が問題とならない。しかも、生体試料固定器1をステージ6に載せ、その上に生体(生体試料)を載せればよいことから、観察の準備が簡単である。なお、従来のスタビライザ(図13)の場合、生体試料に対するスタビライザの位置調整が必要となり、観察の準備に手間を要する。
また、上記実施例で説明したように、流路30内の空気の吸引を、ON/OFF切り替えることによって、何度でも、観察部位を変更することが可能となる(図7参照)。
【0046】
図10は、生体試料固定器の他の実施形態を示す斜視図である。この生体試料固定器51と、図2に示している生体試料固定器1とは、枝流路37及び隔壁40の構成が異なるが、その他の構成は同じである。図10の実施形態の場合、開口32に対して三方向から空気が吸引される。
【0047】
図11は、生体試料固定器のさらに別の実施形態を示す断面図である。図11(A)に示すように、カバー部材20は、開口32の周囲に環状の突起部45を有している。突起部45も、本体部23と同じ素材(PDMS)からなり、弾性変形が可能である。突起部45が形成されている点以外は、図2に示す生体試料固定器1と同じである。
そして、吸引部31を通じて流路30内の空気を吸引すると、図11(B)に示すように、臓器Pの一部Paが突起部45に吸着すると共に、この突起部45が一部Paに沿って拡径方向に弾性変形する。これにより、開口32と臓器Pとは密着し、密封性を高めることができる。
【0048】
また、前記各実施形態では、ガラス板10とカバー部材20とにより生体試料固定器が構成される場合を説明したが、本発明の生体試料固定器は、ガラス板10に重ねて載せるためのカバー部材20のみを備えた構成であってもよい。
【0049】
また、本発明の生体試料固定器は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、吸引部31の形状は図示した以外の形状であってもよい。また、枝流路37を省略して、一条の流路の一端部側に吸引部31を設け、他端部側に開口32を形成した簡単な構成であってもよい。なお、枝流路37を設ける場合、その分岐の構成も図示した構成以外であってもよい。
また、吸引部31を通じて流路30内の吸引を行う対象は、上記実施形態では空気として説明したが、流路30内に液体を充填しこれを吸引してもよい。
【0050】
さらに、上記実施形態では、ガラス板10とカバー部材20とは分離可能として説明したが、ガラス板10とカバー部材20とは接着等によって固定されていてもよく、さらには、上記実施形態では、ガラス板10とカバー部材20とは異なる材質であり、別部材からなる場合を説明したが、ガラス板10に相当する板部と、カバー部材20に相当するカバー部とは、PDMS等により一体成型品であってもよい。
また、上記実施形態では、吸引部31と開口32との双方がカバー部材(カバー部)20に設けられている場合を説明したが、図12に示すように、吸引部31については、ガラス板(板部)10に設けられていてもよい。
【0051】
さらに、図示しないが、カバー部材20は二層構造であってもよい。この場合、図12と同様に、吸引部31については、ガラス板(板部)10に設けられていてもよく、図3のように開口32と同層である上側のカバー部材(上側のカバー部)に設けられていてもよく、又は、その下層である下側のカバー部材(下側のカバー部)に設けられていてもよい。この二層構造の場合、下側のカバー部材がガラス板10に重ねて設けられる。また、この場合、上側のカバー部材と下側のカバー部材とは、同じ材質であってもよく、異なっていてもよい。また、各層は接着されていてもよく、分離可能であってもよい。
また、上記実施形態では、生体試料固定器を倒立顕微鏡に設置した場合として説明したが、正立顕微鏡に設置してもよい。この場合、生体試料固定器を、図3の場合と上下反対にして設置する。
【符号の説明】
【0052】
1:生体試料固定器 5:顕微鏡 6:ステージ 7:対物レンズ 10:ガラス板(板部) 11:上面 12:一部(接触面) 20:カバー部材(カバー部) 22:凹溝部 23:本体部 24:当接面 30:流路 30a:一部 30b:他部 31:吸引部 32:開口 36:主流路 37:枝流路 40:隔壁(補剛部) 51:生体試料固定器 P:臓器(生体試料) Pa:一部(生体試料の一部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡のステージに設置され、生体試料を当該ステージに対して固定するための生体試料固定器であって、
前記ステージに設置される透明の板部と、前記板部に重ねて設けられ当該板部との間に流路を形成するカバー部と、を備え、
前記カバー部又は前記板部には、前記流路の一部と繋がり当該流路内の流体を吸引するための吸引部が設けられ、前記カバー部には、前記流路の他部と繋がっていると共に前記生体試料の一部に臨ませる開口が設けられていることを特徴とする生体試料固定器。
【請求項2】
前記開口は、前記板部を間に挟んで、前記顕微鏡の対物レンズに対向する位置に設けられる請求項1に記載の生体試料固定器。
【請求項3】
前記カバー部は、前記流路を構成するための凹溝部と、この凹溝部を囲み前記板部の面に当接する当接面を有する本体部と、を有し、
前記当接面は、前記流路内の流体を吸引すると前記板部の前記面に密着し、当該吸引を解除した状態では前記板部の前記面と分離可能である非接着面である請求項1又は2に記載の生体試料固定器。
【請求項4】
前記カバー部は、前記板部よりも弾性係数の小さい部材からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体試料固定器。
【請求項5】
前記板部は、前記流路内の流体の吸引により前記開口に保持されかつ当該開口から前記流路内に侵入させる前記生体試料の一部を接触可能とする接触面を有している請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体試料固定器。
【請求項6】
前記流路は、前記吸引部と繋がっている主流路と、この主流路から分岐し前記開口とそれぞれが繋がっている複数の枝流路と、を有している請求項1〜5のいずれか一項に記載の生体試料固定器。
【請求項7】
前記カバー部の前記枝流路間には、前記流路内の減圧によって当該枝流路が潰れるのを防ぐ補剛部が形成されている請求項6に記載の生体試料固定器。
【請求項8】
顕微鏡のステージに設置され、生体試料を当該ステージに対して固定するための生体試料固定器であって、
前記ステージに設置される透明の板部材に重ねて設けられ当該板部材との間に流路を形成するカバー部材を備え、
前記カバー部材には、前記流路の一部と繋がり当該流路内の流体を吸引するための吸引部と、前記流路の他部と繋がっていると共に前記生体試料の一部に臨ませる開口と、が形成されていることを特徴とする生体試料固定器。
【請求項9】
顕微鏡のステージに設置され、生体試料を当該ステージに対して固定するための生体試料固定器であって、
前記ステージに設置される透明の板部材に重ねて設けられ当該板部材との間に流路を形成するカバー部材を備え、
前記カバー部材には、前記流路の一部と繋がっていると共に前記生体試料の一部に臨ませる開口が形成され、
前記カバー部材は、前記流路の他部と繋がり当該流路内の流体を吸引するための吸引部が形成されている前記板部材に重ねて設けられることを特徴とする生体試料固定器。
【請求項1】
顕微鏡のステージに設置され、生体試料を当該ステージに対して固定するための生体試料固定器であって、
前記ステージに設置される透明の板部と、前記板部に重ねて設けられ当該板部との間に流路を形成するカバー部と、を備え、
前記カバー部又は前記板部には、前記流路の一部と繋がり当該流路内の流体を吸引するための吸引部が設けられ、前記カバー部には、前記流路の他部と繋がっていると共に前記生体試料の一部に臨ませる開口が設けられていることを特徴とする生体試料固定器。
【請求項2】
前記開口は、前記板部を間に挟んで、前記顕微鏡の対物レンズに対向する位置に設けられる請求項1に記載の生体試料固定器。
【請求項3】
前記カバー部は、前記流路を構成するための凹溝部と、この凹溝部を囲み前記板部の面に当接する当接面を有する本体部と、を有し、
前記当接面は、前記流路内の流体を吸引すると前記板部の前記面に密着し、当該吸引を解除した状態では前記板部の前記面と分離可能である非接着面である請求項1又は2に記載の生体試料固定器。
【請求項4】
前記カバー部は、前記板部よりも弾性係数の小さい部材からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体試料固定器。
【請求項5】
前記板部は、前記流路内の流体の吸引により前記開口に保持されかつ当該開口から前記流路内に侵入させる前記生体試料の一部を接触可能とする接触面を有している請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体試料固定器。
【請求項6】
前記流路は、前記吸引部と繋がっている主流路と、この主流路から分岐し前記開口とそれぞれが繋がっている複数の枝流路と、を有している請求項1〜5のいずれか一項に記載の生体試料固定器。
【請求項7】
前記カバー部の前記枝流路間には、前記流路内の減圧によって当該枝流路が潰れるのを防ぐ補剛部が形成されている請求項6に記載の生体試料固定器。
【請求項8】
顕微鏡のステージに設置され、生体試料を当該ステージに対して固定するための生体試料固定器であって、
前記ステージに設置される透明の板部材に重ねて設けられ当該板部材との間に流路を形成するカバー部材を備え、
前記カバー部材には、前記流路の一部と繋がり当該流路内の流体を吸引するための吸引部と、前記流路の他部と繋がっていると共に前記生体試料の一部に臨ませる開口と、が形成されていることを特徴とする生体試料固定器。
【請求項9】
顕微鏡のステージに設置され、生体試料を当該ステージに対して固定するための生体試料固定器であって、
前記ステージに設置される透明の板部材に重ねて設けられ当該板部材との間に流路を形成するカバー部材を備え、
前記カバー部材には、前記流路の一部と繋がっていると共に前記生体試料の一部に臨ませる開口が形成され、
前記カバー部材は、前記流路の他部と繋がり当該流路内の流体を吸引するための吸引部が形成されている前記板部材に重ねて設けられることを特徴とする生体試料固定器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−113976(P2013−113976A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259007(P2011−259007)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名:第27回 日本DDS学会学術集会 主催者名:日本DDS学会 開催日:2011年6月10日 〔刊行物等〕 研究集会名:第20回日本バイオイメージング学会学術集会 主催者名:日本バイオイメージング学会 開催日:2011年9月1日 〔刊行物等〕 発行者名:日本バイオイメージング学会 刊行物名:バイオイメージング 第20回学会学術集会要旨集 発行年月日:2011年8月10日 〔刊行物等〕 掲載年月日:2011年9月1日 掲載アドレス:http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S138917231100274X 〔刊行物等〕 発行者名:ケミカル アンド バイオロジカル マイクロシステムズ ソサエティ 刊行物名:ザ フィフティーンス インターナショナル カンファレンス オン ミニチュアライズド システムズ フォア ケミストリ アンド ライフ サイエンシズ 発行年月日:2011年10月2日
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名:第27回 日本DDS学会学術集会 主催者名:日本DDS学会 開催日:2011年6月10日 〔刊行物等〕 研究集会名:第20回日本バイオイメージング学会学術集会 主催者名:日本バイオイメージング学会 開催日:2011年9月1日 〔刊行物等〕 発行者名:日本バイオイメージング学会 刊行物名:バイオイメージング 第20回学会学術集会要旨集 発行年月日:2011年8月10日 〔刊行物等〕 掲載年月日:2011年9月1日 掲載アドレス:http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S138917231100274X 〔刊行物等〕 発行者名:ケミカル アンド バイオロジカル マイクロシステムズ ソサエティ 刊行物名:ザ フィフティーンス インターナショナル カンファレンス オン ミニチュアライズド システムズ フォア ケミストリ アンド ライフ サイエンシズ 発行年月日:2011年10月2日
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】
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