説明

生体認証システム及び生体認証方法

【課題】データが消滅された場合のリカバリー性に優れたものとする。
【解決手段】生体情報を読み取る読取手段8、生体情報を記憶する第1の記憶手段9、及び、読取手段8で読み取った生体情報と第1の記憶手段に記憶した生体情報とを比較して個人認証を行う個人認証手段12を備えた生体認証装置1と、第1の記憶手段9に記憶した生体情報と同一の生体情報を記憶する第2の記憶手段16と、第1の記憶手段9に生体情報が記憶されているか否かを検出する記憶検出手段12と、記憶検出手段12によって生体情報が検出されない場合、第2の記憶手段16に記憶した生体情報を、第1の記憶手段9に複写する複写処理を実行する複写手段12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体認証システム及び生体認証方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体認証システムに採用される生体認証装置として、生体情報を登録・削除する場合、取り込まれたデータが、メモリに登録されているデータと一致しなければ、生体情報を登録・削除するためのスイッチを無効とするものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の生体認証装置を備えた生体認証システムでは、物理的に損傷したり、供給電圧が不安定となったり、あるいは、不正にアクセスされたりして、記憶したデータが破壊された場合、新たに生体情報を登録し直す必要が生じる。特に、物理的な損傷では、新たに機器を交換しなければならない。
【0005】
そこで、本発明は、データが消滅された場合のリカバリー性に優れた生体認証システム及び生体認証方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
生体認証システムを、
生体情報を読み取る読取手段、生体情報を記憶する第1の記憶手段、及び、前記読取手段で読み取った生体情報と前記第1の記憶手段に記憶した生体情報とを比較して個人認証を行う個人認証手段を備えた生体認証装置と、
前記第1の記憶手段に記憶した生体情報と同一の生体情報を記憶する第2の記憶手段と、
前記第1の記憶手段に生体情報が記憶されているか否かを検出する記憶検出手段と、
前記記憶検出手段によって生体情報が検出されない場合、前記第2の記憶手段に記憶した生体情報を、前記第1の記憶手段に複写する複写処理を実行する複写手段と、
を備えた構成としたものである。
【0007】
この構成により、第1の記憶手段が交換されたり、記憶させてあるデータが破壊されたりする等の不測の事態が発生すれば、検出手段によりそのことを検出し、第1の記憶手段に第2の記憶手段に記憶させた生体情報を自動的に複写することができる。したがって、新たに生体情報を登録し直す必要がなく、不測の事態に柔軟に対応することが可能となる。
【0008】
また、本発明は、前記課題を解決するための手段として、
生体認証システムを、
生体情報を読み取る読取手段、生体情報を記憶する第1の記憶手段、及び、前記読取手段で読み取った生体情報と前記第1の記憶手段に記憶した生体情報とを比較して個人認証を行う個人認証手段を備えた生体認証装置と、
前記第1の記憶手段に記憶した生体情報と同一の生体情報を記憶する第2の記憶手段を備えたコントロールユニットと、
を有し、
前記生体認証装置又は前記コントロールユニットのいずれか一方が交換されたことを検出する交換検出手段と、
前記交換検出手段で、いずれか一方が交換されたことが検出されることにより、残る他方の記憶手段に記憶した生体情報を、交換された方の記憶手段に複写する複写処理を実行する複写手段と、
をさらに備えた構成としたものである。
【0009】
この構成により、生体認証装置又はコントロールユニットのいずれか一方が交換されれば、そのことを交換検出手段により検出し、自動的に、交換されずに残された記憶手段に記憶した生体情報を、交換された方の記憶手段に複写することができる。したがって、生体情報を登録し直す手間を省くことが可能となる。
【0010】
前記各記憶手段は、同一の識別データをそれぞれ記憶し、
前記各記憶手段に記憶した識別データが対応するものであるか否かを判定する判定手段をさらに備え、
前記複写手段は、前記判定手段により各記憶手段に記憶した識別データが対応するものでないと判定された場合、前記複写処理を実行不可とするのが好ましい。
【0011】
この構成により、不正に記憶手段が交換されれば、識別データが不一致となって生体情報の自動複写を実行不可とすることができ、盗難防止性に優れた構成とすることが可能となる。
【0012】
また、本発明は、前記課題を解決するための手段として、
生体認証方法を、
生体情報を第1の記憶手段に記憶させる第1の記憶ステップと、
前記第1の記憶手段に記憶させた生体情報と同一の生体情報を第2の記憶手段に記憶させる第2の記憶ステップと、
生体情報を読み取る読取ステップと、
前記読取ステップで読み取った生体情報と前記第1の記憶手段に記憶した生体情報とを比較して個人認証を行う個人認証ステップと、
前記第1の記憶手段に生体情報が記憶されているか否かを検出する検出ステップと、
前記検出ステップによって生体情報が検出されない場合、前記第2の記憶手段に記憶した生体情報を、前記第1の記憶手段に複写する複写ステップと、
を含む各ステップにより実行するものである。
【0013】
また、本発明は、前記課題を解決するための手段として、
生体認証方法を、
生体情報を第1の記憶手段に記憶させる第1の記憶ステップと、
前記第1の記憶手段に記憶させた生体情報と同一の生体情報を第2の記憶手段に記憶させる第2の記憶ステップと、
生体情報を読み取る読取ステップと、
前記読取ステップで読み取った生体情報と前記第1の記憶手段に記憶した生体情報とを比較して個人認証を行う個人認証ステップと、
前記第1の記憶手段又は第2の記憶手段のいずれか一方が交換されたか否かを検出する交換検出ステップと、
前記交換検出ステップで、いずれか一方の記憶手段が交換されたことが検出されることにより、残る他方の記憶手段に記憶した生体情報を、交換された記憶手段に複写する複写ステップと、
を含む各ステップにより実行するものである。
【0014】
前記各記憶手段は、同一の識別データをそれぞれ記憶し、
前記複写ステップの前に、前記各記憶手段に記憶した識別データが対応するものであるか否かを判定する判定ステップを実行し、
前記判定ステップで、各記憶手段に記憶した識別データが対応するものでないと判定された場合、前記複写ステップを実行不可とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、記憶手段に記憶した生体情報が消失したとしても、他の記憶手段に記憶した生体情報を自動的に複写することができるので、煩わしい生体情報登録の手間を省きつつ、リカバリー性に優れた構成とすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る生体認証システムを示す。この生体認証システムは、車両に採用され、生体認証装置1と、スマートエントリーコントロールユニット2(以下、コントロールユニットをC/Uと省略して記載する。)とを備える。また、スマートエントリーC/U2は、ドア開閉スイッチ3(ドア開閉SW)、ドアロックC/U4、電動ステアリングロック5(電動STL)、エンジンC/U6、スタートスイッチ7(スタートSW)等に接続されている。
【0018】
生体認証装置1は、図2に示すように、撮像部8(読取手段)、第1記憶部9(第1の記憶手段)、第1電源部10、第1通信部11、及び、第1制御部12(個人認証手段)を備える。
【0019】
撮像部8は、赤外線照射部13とカメラ部14とを備える。赤外線照射部13は、赤外線を照射するための複数のLEDを有し、これらLEDからは近赤外線が照射され、カメラ部14にて指の静脈パターンを読み取り可能な状態とする。カメラ部14は、CCD(Charge Coupled Device)カメラ、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)カメラ等で構成され、近赤外線が照射された指から静脈パターンを読み取る。
【0020】
第1記憶部9は、車両の使用が許可されたユーザの生体認証情報(ここでは、指の静脈パターン)と、ID(identification)データとが互いに関連付けて記憶される。また、第1記憶部9には、後述する認証処理を実行するための制御プログラムのほか、生体認証装置1に特有の識別データが記憶されている。識別データには、例えば、生体認証装置1とスマートエントリーC/U2とが初めて接続された最初の起動時に、乱数表等を利用してランダムに設定した機器番号を使用することができる。この識別データは、同時に、後述するスマートエントリーC/U2の第2記憶部16にも対応するもの(ここでは、同一データ)が記憶され、両機器が対応するものであるか否かの確認に利用される。第1電源部10は、撮像部8、第1記憶部9、第1通信部11、及び、第1制御部12に電力を供給する。
【0021】
第1通信部11は、スマートエントリーC/U2との間でデータの送受信を行うためのもので、有線及び無線のいずれでも採用可能である。ここでは、コネクタにより有線接続されている。第1通信部11は、第1制御部12で個人認証処理を行った結果をスマートエントリーC/U2に送信する。
【0022】
第1制御部12は、前記撮像部8のカメラ部14で撮影された生体認証情報を、前記第1記憶部9に記憶させた生体認証情報と照合することにより、後述するようにして生体認証処理を実行する。前記静脈パターンは、画像処理により数値化し、記憶部に登録済みの生体情報(同じく数値化されたもの)と比較して登録済みの人物のものであるか否かを判断する。
【0023】
なお、静脈パターンの数値化は、次のようにして行う。すなわち、指に照射する近赤外線は、酸素を運び終えた、血液中の静脈を流れる還元ヘモグロビンに吸収されやすい。このため、静脈では暗く、静脈以外では明るく撮影される。そこで、各部位での明暗を2進法により「0」又は「1」の数値データに変換する。
【0024】
スマートエントリーC/U2(コントロールユニット)は、入出力部15、第2記憶部16(第2の記憶手段)、第2電源部17、第2通信部18、及び、第2制御部19を備える。
【0025】
入出力部15は、ドア開閉SW3、ドアロックC/U4、電動STL5、エンジンC/U6、スタートSW7、リモコン20(スマートエントリー装置)、登録ボタン21、消去ボタン22等からの出力信号を受け付け、逆に、前記各C/Uに制御信号を送信して所定の動作を行わせる。
【0026】
ドア開閉SW3はドアの開閉によりオン・オフ信号を出力する。ドアロックC/U4は、車両のドアに設けたドアロック装置のアクチュエータを駆動制御し、ドアの施錠・開錠を行う。電動STL5は、ステアリングシャフトをロック・アンロックすることにより車両の盗難を防止する。ここでは、スマートエントリーC/U2からの制御信号に基づいて内部のモータが駆動制御され、ステアリングシャフトをロック・アンロックする。エンジンC/U6は、エンジンの始動、停止、及び動作を制御する。スタートSW7は、エンジンを始動するためのスイッチであり、車内のハンドル近傍に設置される。
【0027】
リモコン20は、車両のドアの施錠、開錠に利用される。すなわち、ユーザが車両に乗り込んで、ドアハンドルに接触したことが、ドアハンドルに設けた図示しないタッチセンサにより検出され、タッチセンサからオン信号が出力されると、スマートエントリーC/U2によりリクエスト信号が送信される。リモコン20は、このリクエスト信号を受信し、予め登録された識別信号を送信する。スマートエントリーC/U2は、この識別信号に基づいてドアロックC/U4にアンロック指示信号を出力し、ドアが開錠される。
【0028】
登録ボタン21は、生体情報の登録時に利用される。登録ボタン21を操作すれば、スマートエントリーC/U2から生体認証装置1へと登録モード信号が送信される。そして、撮像部8のカメラ部14で指の静脈パターンを読み取らせれば、その静脈パターンを生体情報として第1記憶部9に記憶させることができる。また、消去ボタン22は、生体情報の削除時に利用される。
【0029】
第2記憶部16には、車両の使用が許可されたユーザのIDデータとその生体情報のほか、前述の識別データが記憶される。
【0030】
第2電源部17は、入出力部15、第2記憶部16、第2通信部18、及び、第2制御部19に電力を供給する。
【0031】
第2通信部18は、前記生体認証装置1の第1通信部11との間でデータの送受信を行う。ここでは、コネクタが使用されている。第2通信部18からは、電源オン信号やテストモード開始信号等が第1通信部11に送信され、第1通信部11からはIDデータや生体情報のほか、照合結果等が受信される。
【0032】
第2制御部19は、生体認証装置1で生体認証の結果、記憶された生体情報であると判断された場合、その生体情報に関連付けた識別情報であるIDデータを、前記第2記憶部16に記憶させ、ドア開閉SW3、スタートSW等からの入力信号に基づいて、ドアロックC/U4、電動STL5、エンジンC/U6を駆動制御する。
【0033】
次に、前記生体認証システムの動作について説明する。
【0034】
(登録モード)
初期状態では、各記憶部にはデータが記憶されていないので、図3のフローチャートに従って登録モードを実行する。
【0035】
すなわち、登録ボタン21が操作されれば(ステップS1)、生体情報の登録処理を開始し、後述する通常モードで、マスター認証が実施済みか否かを判断する(ステップS2)。マスター認証とは、撮像部8によって読み取られた生体情報と、第1記憶部9にマスターとして記憶した生体情報とを比較し、一致した場合にマスターとして設定された人物の認証が行われたこととするものである。このマスター認証が行われたか否かの判断は、通常モード時、第2記憶部16に記憶される認証されたIDデータを確認することにより行う。つまり、生体情報の登録は誰でも可能なわけではなく、マスターとして設定された人物のみが実施可能となっている。なお、マスターとなる生体情報は、例えば、ディーラーでの専用端末でのみ登録可能とする。これにより、登録ボタン21が操作されても、マスター認証が行われていなければ(ステップS2:NO)、生体認証を登録できないように警告(ワーニング)処理を実行する(ステップS3)。警告処理では、音声やブザーあるいはランプの点灯等により行えばよい。また、無線等の機器を備えたものであれば、車両から離れた他の場所に連絡するように構成することも可能である。マスター認証が行われていれば(ステップS2:YES)、スマートエントリーC/U2から生体認証装置1に登録モード信号を送信する(ステップS4)。
【0036】
生体認証装置1では、スマートエントリーC/U2から送信された登録モード信号に基づいて、登録処理を開始する(ステップS11)。すなわち、撮像部8でユーザの指から生体情報(静脈パターン)が読み取られると(ステップS12)、読み取った生体情報を2値・暗号化する(ステップS13)。また、IDデータを作成し、生体情報とIDデータとを互いに関連付ける(ステップS14)。そして、生体情報及びIDデータを第1記憶部9に記憶させる(ステップS15)。続いて、登録が終了したことを示す登録終了信号のほか、登録した生体情報及びそれに関連付けたIDデータをスマートエントリーC/U2に送信する(ステップS16)。そして、次の生体情報の入力があれば(ステップS17)、前記ステップS13に戻って同様の処理を繰り返す。
【0037】
スマートエントリーC/U2では、生体認証装置1からの送信データを受信し(ステップS5)、これを第2記憶部16に記憶させる(ステップS6)。ここで、30秒間待機し(ステップS7)、その間、待ち受け状態を維持する(ステップS8)。30秒経過すれば、生体認証装置1に登録終了信号を送信する(ステップS9)。
【0038】
生体認証装置1では、スマートエントリーC/U2から登録終了信号を受信するか否かにより登録処理を終了するか否かを判断し(ステップS18)、登録終了信号を受信していなければ、待ち受け状態を維持し(ステップS19)、登録終了信号を受信すれば、一連の生体情報登録処理(登録モード)を終了する。
【0039】
(ゼネラルモード)
スマートエントリーC/U2では、起動後、常に、図4のフローチャートに示すように、データを初期化し(ステップS21)、10msec毎に、以下の処理を実行する(ステップS22)。
【0040】
すなわち、入出力部15で、ドアロックC/U4、電動STL5、エンジンC/U6、スタートSW7等からの出力信号を受け付ける(ステップS23)。そして、受け付けた信号に基づいて、モード判定・遷移部によって該当するモードを実行し(ステップS24)、入出力部15から該当する機器(ドアロックC/U4、電動STL5、エンジンC/U6等)に制御信号を出力する(ステップS25)。例えば、ドア開閉SW3からドアが開放状態から閉鎖状態となったことを示す信号が入力されれば、通常モード(エンジンの始動を行うためのモード)を実行し、エンジンC/U6に制御信号を出力する。
【0041】
(通常モード)
ユーザが車両に乗車してエンジンを始動する場合の処理(通常モード)について、図5及び図6のフローチャートに従って説明する。
【0042】
スマートエントリーC/U2では、ドア開閉SW3からドアが開放状態から閉鎖状態になったことを示す信号が入力されれば(ステップS41)、生体認証装置1に対し、電源をオン状態とするための電源オン信号を出力し(ステップS42)、認証モード起動信号を出力する(ステップS43)。
【0043】
生体認証装置1では、スマートエントリーC/U2からの電源オン信号に基づいてデータを初期化し(ステップS61)、スマートエントリーC/Uから認証モード起動信号が入力されていれば、認証モード処理を開始する(ステップS62)。
【0044】
認証モードでは、まず、撮像部8のカメラ部14で指を撮像可能であるか否かの指検出を行う(ステップS64)。指が検出されれば(ステップS65:YES)、カメラ部14による撮像を行い(ステップS66)、指が検出されなければ(ステップS67:NO)、30秒間、指検出を続行し(ステップS64)、それでも検出されない場合に、認証モードを終了する。
【0045】
カメラ部14によって撮像された静脈パターンは、第1制御部12にて画像処理を行う(ステップS68)。画像処理は、前述の通り、撮像された静脈パターンの明暗に基づいて、各部位(セグメント毎に)を「0」又は「1」の数値データに変換する。そして、得られた結果に基づいて、第1記憶部9に記憶させた生体認証情報と照合する(ステップS69)。照合により得られた結果(照合結果)と、該当する生体認証情報に関連付けたIDデータとをスマートエントリーC/U2に送信する(ステップS70)。
【0046】
スマートエントリーC/U2では、生体認証装置1から送信された照合結果が適切か否か、すなわち、撮像した指の静脈パターンが第1記憶部9に記憶されたものであるか否かの判断を行う(ステップS44)。照合結果が適切でない場合(第1記憶部9に記憶されたものでない場合)、IDデータの確認後、第2記憶部16にその認証されたIDデータを記憶し(ステップS45)、そのIDデータに対応して、ミラー、シート、ステアリング等の各機器に対して制御信号を出力する(ステップS46)。また、スタートSW7がオンされることにより(ステップS47)、電動STL5にSTL解除信号を送信する(ステップS48)。
【0047】
電動STL5では、STL解除信号に基づいてステアリングのロック状態を解除し、アンロック状態とする(ステップS81)。そして、スマートエントリーC/U2及びエンジンC/U6にアンロック信号を送信する(ステップS82)。
【0048】
スマートエントリーC/U2では、電動STL5からのアンロック信号を確認し(ステップS49)、エンジンC/U6にIDデータを送信する(ステップS50)。
【0049】
エンジンC/U6では、電動STL5からのアンロック信号を確認し(ステップS91)、このアンロック信号と、スマートエントリーC/U2からのIDデータとに基づいて、ステアリングがアンロック状態にあるか否か、IDデータが適切なものであるか否かを判断する(ステップS92)。いずれかの条件を満足しなければ、通常モードを終了し、両方の条件を満足すれば、エンジンを始動する(ステップS93)。そして、スマートエントリーC/U2にエンジン始動信号を送信する(ステップS94)。
【0050】
スマートエントリーC/U2では、エンジンC/U6から送信されたエンジン始動信号を確認し(ステップS51)、前記一連の通常モードでの処理を終了する。
【0051】
(複写モード)
ところで、生体認証装置1が交換された場合等、第1記憶部9が初期状態である場合、あるいは、記憶させたデータがクリアされた場合、図7及び図8のフローチャートに示すようにして複写モードを実行する。
【0052】
すなわち、転送ボタンが操作されると(ステップS101)、スマートエントリーC/U2から生体認証装置1に複写モード信号を送信する(ステップS102)。
【0053】
生体認証装置1では、複写モード信号を受信することにより複写モードを開始し(ステップS121)、第1記憶部9に識別データ(ここでは、機器番号)が記憶されているか否かを判断する(ステップS122)。識別データが記憶されていなければ(ステップS122:NO)、スマートエントリーC/U2に複写リクエスト信号を送信する(ステップS123)。一方、識別データが記憶されていれば(ステップS122:YES)、その識別データをスマートエントリーC/U2へと送信する(ステップS125)。
【0054】
スマートエントリーC/U2では、生体認証装置1から複写リクエスト信号を受信することにより、要求された識別データが第2記憶部16に記憶されているか否かを判断する(ステップS103)。また、識別データがあれば、生体情報が記憶されているか否かを判断する(ステップS104)。識別データが記憶されていないか、あるいは、識別データが記憶されていても生体情報が記憶されていない場合には、警告処理を実行し(ステップS105)、ブザー等で報知する。いずれのデータも記憶されていれば、識別データ、生体情報及びIDデータを生体認証装置1へと送信する(ステップS106)。
【0055】
生体認証装置1では、スマートエントリーC/U2から送信された識別データ、生体情報及びIDデータを第1記憶部9に記憶させる(ステップS124)。これにより、スマートエントリーC/U2と同じ識別データが生体認証装置1側にも記憶され、両機器の識別データが一致する。
【0056】
また、スマートエントリーC/U2では、生体認証装置1から識別データを受信することにより、第2記憶部16に登録されている識別データがあるか否かを判断する(ステップS107)。第2記憶部16に登録されている識別データがなければ、生体認証装置1から受信した識別データを第2記憶部16に記憶して新たに識別データを設定する(ステップS108)。これにより、生体認証装置1と同じ識別データがスマートエントリーC/U2側にも記憶され、両機器の識別データが一致する。第2記憶部16に登録されている識別データがあれば、この識別データと受信した識別データとが対応するものであるか否かを判断する(ステップS109)。ここでは、識別データが一致しているか否かを判断する。対応していなければ、ブザー等を鳴らして警告する(ステップS110)。対応していれば、生体認証装置1に複写リクエスト信号を送信する(ステップS111)。
【0057】
生体認証装置1では、前記複写リクエスト信号に基づいて、第1記憶部9に記憶されている全ての生体情報及びIDデータをスマートエントリーC/U2へと送信する(ステップS126)。
【0058】
スマートエントリーC/U2では、生体認証装置1から送信された生体情報及びIDデータのそれぞれが、第2記憶部16に記憶されたものと一致するか否かを判断する(ステップS112)。一致すれば、複写モードを終了し、一致しなければ、受信した生体情報及びIDデータと、第2記憶部16に記憶されている生体情報及びIDデータとの差分を確認する(ステップS113)。両者に不一致があれば、本来記憶されているはずのデータが何らかの理由により消失していると考えられるので、第2記憶部16に記憶し直す(ステップS114)。
【0059】
また、生体認証装置1でも、スマートエントリーC/U2での差分確認の結果に基づいて、差分を記憶し直す(ステップS127)。
【0060】
例えば、スマートエントリーC/Uの第2記憶部16に(A1,B1)、(A2,B2)、(A3,B3)のデータ(Aを生体情報、BをIDデータとする。)が記憶されており、生体認証装置1の第1記憶部9に(A2,B2)、(A3,B3)、(A4,B4)が記憶されている場合、第2記憶部16では(A4,B4)が差分となり、第1記憶部9では(A1,B1)が差分となるので、これらをそれぞれ記憶し直すことにより、両記憶部16、9での記憶内容を合致させる。
【0061】
このように、前記複写モードでは、生体認証装置1の第1記憶部9に識別データが登録されていない場合、第1記憶部9を含む生体認証装置1が交換された、あるいは、第1記憶部9のデータが破壊された、あるいは、第1記憶部9に生体情報が記憶されていないと判断し、第2記憶部16に記憶された生体情報及びIDデータを第1記憶部9に複写する。この構成により、生体情報を記憶し直す必要がなく、煩わしい生体認証登録の手間を省くことができる。なお、本実施形態においては、識別データの有無によって生体認証装置1の状態を判断するようにしているが、別の方法で判断するようにしてもよい。例えば、第1記憶部9に生体情報が記憶されているか否かを確認し、第1記憶部9に生体情報が登録されていなければ、第2記憶部16に記憶されている生体情報及びIDデータを第1記憶部9に複写するようにしてもよい。
【0062】
また、前記複写モードでは、スマートエントリーC/U2の第2記憶部16に識別データが登録されていない場合、第2記憶部16を含むスマートエントリーC/U2が交換された、あるいは、第2記憶部16のデータが破壊された、あるいは、第2記憶部16に生体情報が記憶されていないと判断し、第1記憶部9に記憶されている生体情報及びIDデータを第2記憶部16に複写する。この構成により、スマートエントリーC/U2を交換した場合等でも、生体情報を登録し直す必要がなく、煩わしい生体情報登録の手間を省くことができる。
【0063】
さらに、前記複写モードでは、生体情報及びIDデータの複写を開始する前に、生体認証装置1の第1記憶部9と、スマートエントリーC/U2の第2記憶部16とにそれぞれ記憶させた識別データが合致するか否かを判断するようにしている。したがって、例えば、複写モードを利用して盗難者の登録情報を登録した機器を車両に設けた機器と交換し、他方側の機器に生体情報を複写して不正認証を得ようとする盗難行為に対しても、交換した機器の識別データと他方側の機器の識別データとが合致していなければ、生体情報の複写を実行不可とすることで、不正に交換された機器に登録されている生体情報が他方側の機器に複写されることを防止でき、盗難等に至ることを未然に防止することが可能となる。また、本実施形態には記載していないが、前記通常モード時の個人認証処理を行う前に、生体認証装置1及びスマートエントリーC/U2の各記憶部9、16に記憶してある識別データを比較し、各識別データが対応したものでなければ、生体認証装置1の第1記憶部9に記憶してある生体情報及びIDデータを全て削除するように構成してもよい。このように構成すれば、不正認証を目的として生体認証装置1を盗難者の生体情報を登録した別の生体認証装置1にすり替えても、各機器の識別データが一致しないため、盗難者の生体情報は削除される。この結果、盗難者の不正認証を防止することができる。また、各記憶部8、16にそれぞれ記憶されている生体情報及びIDデータの全てが合致しているか否かを確認し、合致していなければ、自動的に追加するようにしているので、常に適切な記憶状態を維持することができ、認証不良等の不具合の発生を未然に防止することが可能となる。
【0064】
なお、前記実施形態では、生体認証装置1の第1記憶部9と、スマートエントリーC/U2の第2記憶部16とに同一の識別データを記憶するようにしたが、例えば、次のようにすることも可能である。すなわち、最初に識別データを記憶させる際、その識別データを、生体認証装置1にはスマートエントリーC/U2を特定可能なもの、スマートエントリーC/U2には生体認証装置1を特定可能なものとしてもよい。
【0065】
また、本発明の生体認証システム及び生体認証方法は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、前記実施形態では、2つの制御部12、19を用いて各処理を実行しているが、1つの制御部によって各処理を実行するようにしてもよい。また、本実施形態においては、転送ボタンが操作されることにより複写モードを開始しているが、例えば、前記通常モードが実施される毎に、複写モードを実行するようにしてもよい。この場合、転送ボタンの操作は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施形態に係る生体認証システムを車両に採用した例を示すブロック図である。
【図2】図1のスマートエントリーコントロールユニットと生体認証装置の詳細を示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係る生体認証システムに於ける登録モードの処理内容を示すフローチャートである。
【図4】図1のスマートエントリーC/Uに於けるゼネラルモードの処理内容を示すフローチャートである。
【図5】本実施形態に係る生体認証システムに於ける通常モードの処理内容を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態に係る生体認証システムに於ける通常モードの処理内容を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態に係る生体認証システムに於ける複写モードの処理内容を示すフローチャートである。
【図8】本実施形態に係る生体認証システムに於ける複写モードの処理内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1…生体認証装置
2…スマートエントリーC/U(コントロールユニット)
3…ドア開閉SW
4…ドアロックC/U
5…電動STL
6…エンジンC/U
7…スタートSW
8…撮像部(読取手段)
9…第1記憶部(第1の記憶手段9
10…第1電源部
11…第1通信部
12…第1制御部(個人認証手段、記憶検出手段、複写手段、交換検出手段)
13…赤外線照射部
14…カメラ部
15…入出力部
16…第2記憶部(第2の記憶手段)
17…第2電源部
18…第2通信部
19…第2制御部(交換検出手段)
20…リモコン
21…登録ボタン
22…消去ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報を読み取る読取手段、生体情報を記憶する第1の記憶手段、及び、前記読取手段で読み取った生体情報と前記第1の記憶手段に記憶した生体情報とを比較して個人認証を行う個人認証手段を備えた生体認証装置と、
前記第1の記憶手段に記憶した生体情報と同一の生体情報を記憶する第2の記憶手段と、
前記第1の記憶手段に生体情報が記憶されているか否かを検出する記憶検出手段と、
前記記憶検出手段によって生体情報が検出されない場合、前記第2の記憶手段に記憶した生体情報を、前記第1の記憶手段に複写する複写処理を実行する複写手段と、
を備えたことを特徴とする生体認証システム。
【請求項2】
生体情報を読み取る読取手段、生体情報を記憶する第1の記憶手段、及び、前記読取手段で読み取った生体情報と前記第1の記憶手段に記憶した生体情報とを比較して個人認証を行う個人認証手段を備えた生体認証装置と、
前記第1の記憶手段に記憶した生体情報と同一の生体情報を記憶する第2の記憶手段を備えたコントロールユニットと、
を有し、
前記生体認証装置又は前記コントロールユニットのいずれか一方が交換されたことを検出する交換検出手段と、
前記交換検出手段で、いずれか一方が交換されたことが検出されることにより、残る他方の記憶手段に記憶した生体情報を、交換された方の記憶手段に複写する複写処理を実行する複写手段と、
をさらに備えたことを特徴とする生体認証システム。
【請求項3】
前記各記憶手段は、識別データをそれぞれ記憶し、
前記各記憶手段に記憶した識別データが対応するものであるか否かを判定する判定手段をさらに備え、
前記複写手段は、前記判定手段により各記憶手段に記憶した識別データが対応するものでないと判定された場合、前記複写処理を実行不可とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の生体認証システム。
【請求項4】
生体情報を第1の記憶手段に記憶させる第1の記憶ステップと、
前記第1の記憶手段に記憶させた生体情報と同一の生体情報を第2の記憶手段に記憶させる第2の記憶ステップと、
生体情報を読み取る読取ステップと、
前記読取ステップで読み取った生体情報と前記第1の記憶手段に記憶した生体情報とを比較して個人認証を行う個人認証ステップと、
前記第1の記憶手段に生体情報が記憶されているか否かを検出する検出ステップと、
前記検出ステップによって生体情報が検出されない場合、前記第2の記憶手段に記憶した生体情報を、前記第1の記憶手段に複写する複写ステップと、
を含むことを特徴とする生体認証方法。
【請求項5】
生体情報を第1の記憶手段に記憶させる第1の記憶ステップと、
前記第1の記憶手段に記憶させた生体情報と同一の生体情報を第2の記憶手段に記憶させる第2の記憶ステップと、
生体情報を読み取る読取ステップと、
前記読取ステップで読み取った生体情報と前記第1の記憶手段に記憶した生体情報とを比較して個人認証を行う個人認証ステップと、
前記第1の記憶手段又は第2の記憶手段のいずれか一方が交換されたか否かを検出する交換検出ステップと、
前記交換検出ステップで、いずれか一方の記憶手段が交換されたことが検出されることにより、残る他方の記憶手段に記憶した生体情報を、交換された記憶手段に複写する複写ステップと、
を含むことを特徴とする生体認証方法。
【請求項6】
前記各記憶手段は、同一の識別データをそれぞれ記憶し、
前記複写ステップの前に、前記各記憶手段に記憶した識別データが対応するものであるか否かを判定する判定ステップを実行し、
前記判定ステップで、各記憶手段に記憶した識別データが対応するものでないと判定された場合、前記複写ステップを実行不可とすることを特徴とする請求項4又は5に記載の生体認証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−134421(P2009−134421A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308838(P2007−308838)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】