説明

生体認証等搭載ICカード

【課題】日常生活に浸透しているICカードのセキュリティ向上において、有効な手段であるカードに搭載する生体認証による本人確認を、従来のカードとの互換性を守って実現する。
【解決手段】非接触アンテナ、光発電素子8等による給電と、供給電力を素早く蓄える電気二重層キャパシタ6等及び化学反応を伴い蓄電は遅いが大容量の二次電池7等をお互いに補完するシステムをICカード1上に搭載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードの使用時の本人確認に関する信頼性の向上を実現する装置を搭載するICカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
外部読取機と情報交換することにより処理や記録機能を行うために設計された集積回路(IC)チップを搭載するICカードは、カード内に書き込まれている本人確認のための情報を作為的に取り出すことに対するタンバー性があり、チップの分解、解析に対し壊れるため、磁気カードよりは大幅にそのセキュリティが向上した。
【0003】
しかし、ICチップから情報を取り出す装置が出現している。このため、銀行カード等では、より強いセキュリティを求めて、手の生体認証を付与する等の生体認証システムの導入が始まっている。
【0004】
これらの生体認証の装置は、カードの読取機装置側に設けられ、且つ生体認証の参照する登録データは、銀行等のカードサービスをおこなう側で保管され、照会時に読取機装置に提供される。したがって、生体認証付ICカードを用いる生体認証は、すでに普及している従来型の読取機では、おこなうことが出来ない。この生体認証なしの従来のカード読取機では、従来のICカードとしてのセキュリティ水準でしか本人確認のセキュリティは保障されない。もし、生体認証付ICカードをなくしたり、盗まれた場合は、生体認証のないカード読取機でカードを使用されると、生体認証付の効果は無くなってしまう。
【0005】
生体認証なしの従来のカード読取機は、世界中に普及しており、これらが生体認証機能を持つカード読取機に変更になるか、生体認証機能付ICカードを変更し、従来のカード読み取り機では使用できなくしなくてはならない。グローバルに世界中で使用可能として用いられている生体認証機能付ICカードは、世界中の生体認証機能を持つカード読取機への変更を求められ、その達成は国内以上に困難である。
【0006】
また、カードによる色々な手続きの自動化は進んでおり、個人は多くの種類のカードを同時に持ち歩くことになる。しかし、1枚に多くのサービス機能をまとめて搭載すると、万が一、パスワードが盗まれたり、カード自身を紛失すると、そのダメージが大きくなる。したがって、数多いカードを持つことで、リスクの分散を図っているのが現状である。したがって、従来のICカードより、大幅にセキュリティを高めるカードが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-346539(指紋認証付きICカード:振動による自家発電で作動させる)
【特許文献2】特開2000-76412(指紋認証付電子カード及びその方法:カード内に指紋認証システムを搭載し、不正な使用や使用期限によりそれらの機能を破壊する)
【特許文献3】特開平9-180036(本人確認機能付きICカードシステム:複数の感圧スイッチを押す順番による本人認証)
【特許文献4】特開2006-134086(指紋センサ付きICカード:指紋センサと集積回路を鍔状の平坦部に組み込む)
【特許文献5】特開平11-312225(指紋読取認証機能付きICカード:指紋認証精度向上策として指の角度と面積を検知する装置を内蔵するカード)
【特許文献6】特開平4-24889(個人認証機能付きICカード:指の特徴情報を入力する圧力センサによる認証システムを搭載するICカード)
【特許文献7】特開平2-118790(指紋照合機能付ICカード:指紋入力パッドと読取認証機能を有するICカード):
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ICカード1の本人確認機能として生体認証を導入する課題において、カード読み取り装置側の生体認証機能の有無に依らず、生体認証機能を搭載して認証を完結させる方式のICカードに認証作動用電力を供給するシステムを搭載する必要がある。しかし、カード状にそのシステムを実現させるためには、低電圧、微小電流にも対応し、給電能力が高い装置が必須であり、且つ薄板型の形状に組み込む必要がある。

【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)生体認証機能を作動させることを支援する為に、化学反応を伴わない蓄電器6をICカード1に搭載する。
【0010】
(2)カードに搭載する蓄電器6、即ちコンデンサの静電容量を数ミリファラッド以上とし、従来からの電子回路に用いられるタイプのコンデンサより大容量で薄板型とする。
【0011】
(3)カードに搭載する各種の給電・発電装置と組み合わせて、低電圧、微小電流、短時間等の厳しい給電状況を支援する。
【0012】
(4)更に、生体認証機能に用いられる処理演算回路部4やセンサ部3の作動電圧も抑制し、給電・発電装置との適合を測ることにより、カード状にコンパクトに搭載可能とする。

【発明の効果】
【0013】
生体認証機能を搭載するICカードに、必要最小限な電力を安定して供給することにより、生体認証機能を安定して提供することができる。また、単独、または各種の給電・発電装置と協調してお互いの欠点を補うことにより、よりコンパクトで薄板状を実現させることができる。更に、従来のICカード形状、特に厚さを合わせることで、既存のカード読み取り機を使用でき且つ従来に無い高い本人認証のセキュリティを実現できる。また、非接触型のICカード1では、読み取り装置側は従来のままで、やや厚さが従来より大きくてもその分安定した本人認証機能をICカード1に付与することができる。ICカード1の厚さの上限を設けることで、利用者のカード入れ等の収納物にそのまま収納することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】

【図1】光発電素子、二次電池、キャパシタの協調給電の生体認証付ICカード
【図2】脱着可能な一次電池、光発電素子、キャパシタの協調給電の生体認証付ICカード
【図3】非接触給電の一つであるアンテナループ、二次電池、キャパシタの協調給電の生体認証付ICカード
【図4】生体認証ジュールの各部位をつなぐ通信系の動的認証による暗号化方式の例
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に代表的な事例として、光発電素子8、二次電池7、キャパシタ6の協調給電の生体認証付ICカード1の事例を示す。ここでは、蓄電・給電を行うものとして、二次電池7とキャパシタ6(電気二重層型等)を並列して使用しているが、二次電池7は化学反応を伴うものであり、その反応は緩やかであるが、大容量の電力を扱うことができる。それに対して、キャパシタ・蓄電器6は、化学反応を伴わないため、短時間に多量の電流を流すことが可能である。しかし、電力エネルギーの絶対量や作動時の電圧の急速な低下等の欠点がある。両者を組み合わせることでお互いの欠点を補完することが可能である。また、二次電池7への蓄電もキャパシタ6にためる電気エネルギーを少しづつ供給することで、効率よく蓄電できる。更に、微小電流、瞬間的な電力発生等はまずキャパシタ6がそれらのエネルギーを蓄え、大容量である二次電池7に供給することが可能となる。
【0016】
場合によっては、接触型ICカード1がカード読み取り機にセットされている時に、カード読み取り機からの給電を素早くキャパシタに取り込み、二次電池7に改めて蓄電することも可能である。また、ICカード内の蓄電が不足して、生体認証動作ができない場合は、光にICカード1を当てることにより、給電を行いキャパシタ6にリアルタイムに蓄電し、生体認証の処置を実行できるようにできる。
この場合、キャパシタ6の蓄電容量が生体認証を行う最低量以上であれば、その電力の回復は最小限の時間でバックアップすることが可能となる。
【0017】
図2には、薄型の一次電池13をICカード1に搭載している事例である。ここでは、ボタン薄型の一次電池を用いているが、図のように脱着可能とすることで、生体認証各部への給電は安定させることが可能である。なお、生体認証各部の消費電力を低電圧作動を実現させると、カードとしての有効時間内で無交換とすることが可能である。また、作動電圧が低いことは、蓄電・給電装置部の大きさや厚さを抑制することが可能となり、今までのICカードと同じように使用できる可能性が大きくなる。
【0018】
また、図3には、受電コイル等の非接触給電装置14をICカード1に搭載させる事例を示す。送電コイルのある給電装置の近傍にICカードを置くか、載せるだけで充電が可能となる。専用の給電装置を用意して利用する以外に、フェリカ型のような近接通信時に給電が可能であり、更に、空中電波の微小エネルギーをキャパシタ・蓄電器6と組み合わせて可能とすることができる。
【0019】
以上のように、蓄電・給電システムとしていくつかの特徴のある装置を組み合わせることで、効率よく、ICカード1上という限られたスペースの中で、必要な蓄電・給電を可能とすることができる。
【実施例】
【0020】
図1に、生体認証等搭載ICカード1として、指紋認証を用いる事例を示す。指紋認証としては、圧力センサ、光学的画像センサ、電荷容量センサ等がある。いずれも、小型化、薄肉化が進み、電荷容量の変化を測定する方法では、従来のICカードの互換性のある厚さ0.76mmc相当のカードにも搭載可能となってきた。また、ここで示す光発電素子8も塗布積層型のもの開発が進み、ICカード表面の文字や図形の印刷と融合させることが可能となっている。基本的には広い面積が発電能力と比例する。キャパシタ6は、表面積が大きい方が多くの電荷を蓄えることが可能である。電気二重層キャパシタのよう電極の活性炭電極の表面に有機分子を吸着させ、誘電体としたもので飛躍的に表面積を増大させることが可能となっている。この構造を積層型として、薄型で従来のICカード並のカード厚さに適合させることができる。
形状特徴等の生体パターンを読み取るセンサー部と生体パターン照合登録データ部5及びそれらの照合・認証等の処理演算回路部4を低電圧化できると、たとえば、2〜3ボルトから0.9ボルトまで低減できると、蓄電・給電できる装置のコンパクト化、薄肉化が一段と進むだけでなく、無給電状態での作動が可能となる場合が多くなる。これは、ほぼメンテナンスフリーに近い状態であり、本人認証が可能な生体認証付ICカードを違和感が無く安心して使用することができる。
また、ICカード上の情報を読み出す技術が進んでおり、特に、センサー部および生体パターン照合登録データ部5とそれらの照合・認証等の処理演算回路部4との間の通信導体10や処理演算回路部4と集積回路(IC)チップ2との間の通信導体10を流れる通信を暗号化しておくべきである。暗号アルゴリズムとしては、図4に示すような乱数生成による認証データが毎回変わる動的認証等を適用する。

【産業上の利用可能性】
【0021】
ICカード1の利用は、銀行カード、クレジットカード、乗り物用定期、プリペイカードと生活の中に深く浸透している。IC化によるセキュリティの向上が認められ、広くその利用が認知されているが、すでにICカードでも盗用される事例が出始めている。銀行カード等を中心に本人確認の生体認証機能付ICカードが出現しているが、生体認証機能が備えられているカード読み取り機でしかそのセキュリティは有効ではなく、一般のカード読み取り機では、そのメリットは無い。カード利用上のセキュリティに対する要求は強くなっており、すでに普及している一般のカード読み取り機でも生体認証機能が利用できる本発明はその利用が注目されるものと考える。カード自身に生体認証機能が搭載されているため、世界中で用いられるクレジットカードでも、大きな効果が期待できる。また、最近普及が始まっているフェリカ端末等の非接触型カードでも、大きな金額を扱われるようになり、本発明に対してそのセキュリティの高さは評価されるものである。

【符号の説明】
【0022】
1 ICカード
2 集積回路(IC)チップ
3 指紋認証センサ部
4 照合・認証等の処理演算回路部
5 生体パターン照合登録データ部
6 蓄電器・キャパシタ
7 二次電池
8 光発電素子(塗布膜型)
9 給電導体
10 ICチップと生体認証部との通信導体
11 ICチップとの信号接続部
12 生体認証確認インジケータ
13 一次電池(ボタン薄型)
14 非接触給電装置(ループアンテナ型)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部読取機と情報交換することにより処理や記録機能を行うために設計された集積回路(IC)チップを搭載し、その形状が、厚さ寸法を除き、名刺サイズに近似形状を持つICカードに、生体認証のための指紋、血管、形状特徴等の生体パターンを読み取るセンサー部と生体パターン照合登録データ部及びそれらの照合・認証等の処理演算回路部を一体化して搭載する生体認証付ICカードにおいて、積層型(電気伝導体と誘電体を交互に積層)、電解型(電気伝導体の表面を酸化皮膜による誘電体とし電解液と組合せ)、電気二重層型(活性炭電極の表面に有機分子を吸着させ、誘電体としたもの)等で数ミリファラッド以上の蓄電器で電荷を急速に貯めることができる原理に基づく構造を持つキャパシタをICカードに内蔵・装着し生体認証の作動支援のために電力を供給できるような構造を有するICカード
【請求項2】
請求項1において、ICカードの基本機能を稼動する主ICチップ部とカード稼動に関する生体認証に係るセンサー部、生体認証等の処理演算回路部及びキャパシタ等の給電部を別体としてカード内に埋め込む構造とし、それらを埋め込む溝凹部とそれらをつなぐ通信・通電回路が予め埋め込まれたカード本体構造を有するICカード

【請求項3】
請求項1、請求項2において、ICカードの基本機能の稼動の許可、不許可を生体認証の処理演算回路部から主ICチップ部へ伝達する方法及び照合登録データとの照合・認証結果を処理演算回路部に伝達する際に、暗号アルゴリズムによるカード内通信の暗号化をおこなうICカード

【請求項4】
請求項1、請求項2、請求項3において、ICカードの厚さの最大値がICカード基本厚さ0.76mmの3倍以内に収まっているICカード

【請求項5】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4において、ICカードがカード挿入口からその面積の90%以上を挿入され読み取りをおこなう方式のICカードに適用され、当該の挿入部分のICカードの厚さの最大値が部分的にICカード基本厚さ0.76mmの30%以内に収まっているICカード
【請求項6】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5において、接触によりICチップより情報を通信するICカードで、通信中にカード読み取り装置から接触部を通じてICカードに給電し、キャパシタに電荷を蓄積できる装置を内臓するICカード
【請求項7】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6において、光発電素子がカード表面に配置され、電力が光発電素子がICカードに搭載される機能作動部へ給電することができるICカード
【請求項8】
請求項7において、光発電素子を印刷方式による積層で配置する方式とし、カード表面の文字や図形等の印刷と組み合わせて自由な形状で光発電素子を構成するICカード
【請求項9】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8において、アンテナによる誘電原理により非接触で電力を取り込む装置を内臓するICカード
【請求項10】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9において、同時に蓄電が可能な二次電池として固体電解層を持つ薄膜二次電池、リチウムイオン二次電池等の薄型板構造を持つ板状二次電池をカード内に内蔵するICカード
【請求項11】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9において、一次電池としてボタン電池等の薄型で離脱可能な電池をカード内に装着するICカード
【請求項12】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9、請求項10、請求項11において、本人確認の生体認証の結果を示す光学的信号をカード上に提示する機能を持つICカード
【請求項13】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9、請求項10、請求項11において、ICカードの基本機能を受け持つ集積回路(IC)チップを除き、生体パターンを読み取るセンサー部と生体パターン照合登録データ部及びそれらの照合・認証等の処理演算回路部の作動電圧の最大値を0.9ボルト以下とするICカード


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−221264(P2012−221264A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86872(P2011−86872)
【出願日】平成23年4月10日(2011.4.10)
【出願人】(300004278)
【Fターム(参考)】