説明

生体認証装置、生体認証方法、および生体認証プログラム

【課題】 認証に要する時間を短縮化することができる生体認証装置、生体認証方法、および生体認証プログラムを提供する。
【解決手段】 生体認証装置は、被認証ユーザの生体データを非接触で取得する生体センサと、被認証ユーザに対し誘導メッセージを提示する提示部と、誘導メッセージの提示後の被認証ユーザの反応を取得する反応取得部と、反応取得部が取得した反応に基づいて、複数ユーザから1人以上の対象ユーザを選択する選択部と、生体センサが取得した生体データと選択部によって選択された対象ユーザの登録データとの照合によって認証処理する認証部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体認証装置、生体認証方法、および生体認証プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触の生体認証においては、認証精度を高めるために、被認証ユーザに誘導メッセージを提示することによって被認証ユーザの生体を適切な位置へ誘導する場合がある。例えば、被認証ユーザは、誘導メッセージに従って生体を移動させる。特許文献1は、撮像手段による撮像の位置をガイドするガイド手段を備える技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−141589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被認証ユーザの生体データとあらかじめ登録された複数(N人)の登録データとの照合によって認証を行う1:N認証方式では、被認証ユーザの生体データと複数のユーザの登録データとの照合が行われる。多数のユーザのデータが登録されている場合には、認証に時間がかかるおそれがある。したがって、特許文献1の技術で被認証ユーザをガイドしても、認証に時間がかかるおそれがある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、認証に要する時間を短縮化することができる生体認証装置、生体認証方法、および生体認証プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、明細書開示の生体認証装置は、被認証ユーザの生体データを非接触で取得する生体センサと、前記被認証ユーザに対し誘導メッセージを提示する提示部と、前記誘導メッセージの提示後の前記被認証ユーザの反応を取得する反応取得部と、前記反応取得部が取得した反応に基づいて、複数ユーザから1人以上の対象ユーザを選択する選択部と、前記生体センサが取得した生体データと前記選択部によって選択された対象ユーザの登録データとの照合によって認証処理する認証部と、を備えるものである。
【0007】
上記課題を解決するために、明細書開示の生体認証方法は、被認証ユーザの生体データを非接触で取得する生体取得ステップと、前記被認証ユーザに対し誘導メッセージを提示した後の前記被認証ユーザの反応を取得する反応取得ステップと、前記反応取得ステップにおいて取得した反応に基づいて、複数ユーザから1人以上の対象ユーザを選択する選択ステップと、前記生体取得ステップで取得した生体データと前記選択ステップで選択された対象ユーザの登録データとの照合によって認証処理する認証ステップと、を含むものである。
【0008】
上記課題を解決するために、明細書開示の生体認証プログラムは、コンピュータに、被認証ユーザの生体データを非接触で取得する生体取得ステップと、前記被認証ユーザに対し誘導メッセージを提示した後の前記被認証ユーザの反応を取得する反応取得ステップと、前記反応取得ステップにおいて取得した反応に基づいて、複数ユーザから1人以上の対象ユーザを選択する選択ステップと、前記生体取得ステップで取得した生体データと前記選択ステップで選択された対象ユーザの登録データとの照合によって認証処理する認証ステップと、を実行させるものである。
【発明の効果】
【0009】
明細書開示の生体認証装置、生体認証方法、および生体認証プログラムによれば、認証に要する時間を短縮化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は実施例1に係る生体データの生体認証装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図であり、(b)は生体センサの模式図であり、(c)は生体の適正位置を説明するための模式図である。
【図2】生体データ登録処理の際に実現される各機能のブロック図である。
【図3】生体データ登録処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。
【図4】静脈データベースの内容の一例を説明するための図である。
【図5】標準反応テーブルの内容を説明するための図である。
【図6】反応テーブル登録処理の際に実現される各機能のブロック図である。
【図7】反応テーブル登録処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。
【図8】ユーザ反応テーブルの一例を説明するための図である。
【図9】一時テーブルの一例を説明するための図である。
【図10】生体認証処理実行の際に実現される各機能のブロック図である。
【図11】生体認証処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。
【図12】優先ユーザリストの一例を説明するための図である。
【図13】生体センサの距離センサについて説明するための模式図である。
【図14】ハードウェアの他の構成について説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1(a)は、実施例1に係る生体データの生体認証装置100のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。図1(b)は、後述する生体センサ150の模式図である。図1(c)は、生体の適正位置を説明するための模式図である。図1(a)を参照して、生体認証装置100は、CPU110、RAM120、記憶装置130、表示装置140、生体センサ150などを備える。これらの各機器は、バスなどによって接続されている。
【0013】
CPU(Central Processing Unit)110は、中央演算処理装置である。CPU110は、1以上のコアを含む。RAM(Random Access Memory)120は、CPU110が実行するプログラム、CPU110が処理するデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。
【0014】
記憶装置130は、不揮発性記憶装置である。記憶装置130として、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、ハードディスクドライブに駆動されるハードディスクなどを用いることができる。本実施例に係る生体認証プログラムは、記憶装置130に記憶されている。表示装置140は、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスパネル等であり、誘導メッセージなどを表示する。
【0015】
生体センサ150は、非接触でユーザの生体情報を検出するセンサである。生体として、静脈、虹彩、顔などを利用することができる。本実施例においては、一例として、生体センサ150として、手のひら静脈を検出するセンサを用いる。図1(b)を参照して、生体センサ150は、照明151および撮影装置152などを備える。照明151は、手のひらに対して光を照射する。撮影装置152は、手のひらの画像を取得する。認証精度を高めるためには、撮影装置152に対して手のひらが適切な位置に配置されていることが好ましい。図1(c)を参照して、例えば、手のひらに対し撮影装置152の撮影方向に生体センサ150を投影した場合に、手のひらと生体センサ150とが重複する位置を適正な位置とすることができる。
【0016】
記憶装置130に記憶されている生体認証プログラムは、実行可能となるようにRAM120に展開される。CPU110は、RAM120に展開された生体認証プログラムを実行する。それにより、生体認証装置100による各処理が実行される。生体認証プログラムが実行されることによって、生体データ登録処理、反応テーブル登録処理、生体認証処理などが実行される。生体データ登録処理は、未登録の新規ユーザの生体データを照合用の登録データとして登録する処理である。反応テーブル登録処理は、誘導メッセージに対する各ユーザの反応を誘導メッセージ対応させて登録する処理である。生体認証処理は、生体センサ150によって取得された生体データと各ユーザの登録データとを照合することによって、被認証ユーザを特定する処理である。
【0017】
(生体データ登録処理)
図2は、生体データ登録処理の際に実現される各機能のブロック図である。図2を参照して、生体認証装置100は、生体データ登録処理時においては、位置計測部11、位置判定部12、静脈登録部13、誘導量算出部14、およびメッセージ決定部15として機能する。また、記憶装置130は、静脈データベース31および標準反応テーブル32として機能する。図3は、生体データ登録処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。以下、図2および図3を参照しつつ、生体データ登録処理の一例について説明する。
【0018】
まず、生体センサ150は、撮影によって新規ユーザの手のひらの画像を取得し、位置計測部11に送る(ステップS1)。位置計測部11は、生体センサ150が取得した画像から、手のひらの位置を計測する(ステップS2)。例えば、手のひらの中心位置を手のひらの位置と定義することができる。手のひらの中心位置は、画像上での輝度の差に基づいて検出された手のひらの輪郭から求めることができる。1回目の計測における手のひらの位置を、「手のひら位置1」とする。
【0019】
次に、位置判定部12は、手のひら位置1が適正な位置に配置されているか否かを判定する(ステップS3)。例えば、手のひら位置1とあらかじめ定めた適正位置との距離がしきい値以下であれば、手のひら位置1が適正な位置に配置されていると判定することができる。または、あらかじめ定められた所定領域内に手のひら位置1が位置していれば、手のひら位置1が適正な位置に配置されていると判定することができる。
【0020】
ステップS3において「Yes」と判定された場合、静脈登録部13は、ステップS1で取得された画像から生体データを抽出し、静脈データベース31に登録する(ステップS4)。本実施例においては、生体データとして静脈データが抽出される。その後、フローチャートの実行が終了する。静脈データベース31は、新規ユーザのユーザIDと関連付けて静脈情報を保持する。図4は、静脈データベース31の内容の一例を説明するための図である。
【0021】
ステップS3において「No」と判定された場合、誘導量算出部14は、手のひらの誘導量を算出する(ステップS4)。手のひらの誘導量は、ステップS3の適正位置と手のひら位置1との距離関係から求めることができる。誘導量算出部14は、一例として、手のひらの中心が適正位置と一致するように手のひらを移動させる誘導量を求める。例えば、適正位置と手のひら位置1との差から、手のひらがなす平面の2軸方向の最も離れている方向の距離を誘導量として求めてもよい。
【0022】
次に、メッセージ決定部15は、標準反応テーブル32から、誘導量算出部14が算出した誘導量に対応する誘導メッセージを決定し、表示装置140に当該誘導メッセージを表示するよう指示する(ステップS5)。図5は、標準反応テーブル32の内容を説明するための図である。図5を参照して、標準反応テーブル32は、標準移動量と誘導メッセージとを関連付けて保持している。一例として、メッセージ決定部15は、誘導量算出部14が算出した誘導量に最も近い標準移動量に対応する誘導メッセージを表示装置140に表示させる。たとえば、右に3.5cm誘導したい場合には、3.5cmに最も近い3cmの「少し右」が誘導メッセージとして選択される。表示装置140に誘導メッセージが表示されると、新規ユーザは誘導メッセージの内容に従って手のひらを移動させることが推測される。
【0023】
メッセージ決定部15は、ステップS5の実行後の所定時間経過後に、生体センサ150に撮影を指示する。それにより、ステップS1、ステップS2、およびステップS3が再度実行される。
【0024】
本実施例に係る生体データ登録処理によれば、手のひら位置を適正位置に移動させてから取得した生体データを、登録データとして静脈データベース31に登録することができる。
【0025】
(反応テーブル登録処理)
生体データ登録処理により静脈データが静脈データベース31に登録された後、生体認証装置100は、反応テーブル登録処理を行う。図6は、反応テーブル登録処理の際に実現される各機能のブロック図である。図6を参照して、生体認証装置100は、反応テーブル登録処理実行時においては、位置計測部11、メッセージ決定部15、移動量算出部16、移動量記録部17、反応テーブル登録部18、および更新部19として機能する。また、記憶装置130は、標準反応テーブル32およびユーザ反応テーブル33として機能する。図7は、反応テーブル登録処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。以下、図6および図7を参照しつつ、反応テーブル登録処理の一例について説明する。
【0026】
まず、生体センサ150は、撮影によって手のひらの画像を取得し、位置計測部11に送る(ステップS11)。位置計測部11は、生体センサ150が取得した画像から、手のひら位置1を計測する(ステップS12)。次に、メッセージ決定部15は、ユーザ反応テーブル33から誘導メッセージを決定し、決定された誘導メッセージが表示されるように、表示装置140に指示する(ステップS13)。図8は、ユーザ反応テーブル33の一例を説明するための図である。図8を参照して、ユーザ反応テーブル33は、ユーザを誘導するためのメッセージと、当該メッセージに対応する各ユーザの反応(移動量)とを含んでいる。
【0027】
表示装置140にメッセージが表示されると、新規ユーザは誘導メッセージの内容に従って手のひらを移動させると推測される。メッセージ決定部15は、ステップS13の実行後の所定時間経過後に、生体センサ150に撮影を指示する。それにより、ステップS11およびステップS12が再度実行される。今回のステップS12の実行時には、位置計測部11は、手のひら位置2を計測する。次に、移動量算出部16は、手のひら位置1と手のひら位置2とを比較することによって、手のひらの移動量を算出する(ステップS14)。
【0028】
次に、移動量記録部17は、ステップS14で算出された移動量を一時テーブルに一時的に記録する(ステップS15)。図9は、一時テーブルの一例を説明するための図である。図9を参照して、一時テーブルは、移動量算出部16が算出した移動量と、ステップS13で決定したメッセージとを関連付けて格納している。次に、ステップS13が再度実行される。今回のステップS13においては、メッセージ決定部15は、ユーザ反応テーブル33の他の誘導メッセージが表示されるように、表示装置140に指示する。以降、ユーザ反応テーブル33の各誘導メッセージに対応する移動量が記録されるまで、ステップS11〜ステップS15が繰り返し実行される。
【0029】
ユーザ反応テーブル33の各メッセージに対応する移動量が一時テーブルに記録された後、反応テーブル登録部18は、ユーザ反応テーブル33に、各メッセージと関連付けて、新規ユーザの反応(移動量)を記録する(ステップS16)。次に、更新部19は、ユーザ反応テーブル33における新規ユーザの内容が反映されるように、標準反応テーブル32を更新する(ステップS17)。例えば、更新部19は、新規ユーザを含めた登録ユーザ数が「n」のとき、今までの値を(n−1)/nにし、新規ユーザの値の1/nを加える方法で標準反応テーブル32を更新する。なお、標準反応テーブル32は、既存ユーザの値の平均値である。したがって、ステップS17の処理は、新規ユーザの動作をこれまでの標準反応テーブル32に反映する処理である。ステップS17の実行後、フローチャートの実行が終了する。
【0030】
なお、上記の例では、ユーザ反応テーブル33の各メッセージに対して、新規ユーザの移動量を1回ずつ記録したが、それに限られない。例えば、ユーザ反応テーブル33の各メッセージに対して、新規ユーザの移動量が複数回記録されるまで、ステップS11〜ステップS15が実行されてもよい。この場合、ステップS16において、反応テーブル登録部18は、各メッセージ対する複数回の移動量の平均値を、ユーザ反応テーブル33に記録してもよい。
【0031】
本実施例に係る反応テーブル登録処理によれば、各誘導メッセージに対する新規ユーザの反応をユーザ反応テーブル33に登録することができる。ユーザ反応テーブル33に登録された反応を用いることによって、次の生体認証処理の際に認証に要する時間を短縮化することができる。
【0032】
また、誘導メッセージに対する新規ユーザの移動量を標準反応テーブル32に記録された標準移動量に反映することができる。この場合、各誘導メッセージに対する複数ユーザの標準的な反応が反映するように、標準反応テーブル32を更新することができる。それにより、標準移動量を、各誘導メッセージに対する各ユーザの実際の移動量に近づけることができる。その結果、誘導メッセージによる誘導精度が向上し、認証に要する時間を短縮化することができる。
【0033】
(生体認証処理)
被認証ユーザが生体認証装置100を備える端末などにログインしようとする際に、生体認証装置100は、生体認証処理を実行する。図10は、生体認証処理実行の際に実現される各機能のブロック図である。生体認証装置100は、生体認証処理実行時においては、位置計測部11、位置判定部12、誘導量算出部14、メッセージ決定部15、移動量算出部16、更新部19、選択部20、認証部21、および出力部22として機能する。また、記憶装置130は、静脈データベース31、標準反応テーブル32、およびユーザ反応テーブル33として機能する。
【0034】
図11は、生体認証処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。以下、図10および図11を参照しつつ、生体認証処理について説明する。まず、生体センサ150は、被認証ユーザの手のひらの画像を撮影によって取得し、位置計測部11に送る(ステップS21)。位置計測部11は、生体センサ150が取得した画像から、手のひら位置1を計測する(ステップS22)。
【0035】
次に、位置判定部12は、手のひら位置1が適正な位置に配置されているか否かを判定する(ステップS23)。あらかじめ定められた適正位置と手のひら位置1との距離がしきい値以下であれば、手のひら1位置1が適正な位置に配置されていると判定することができる。ステップS23において「No」と判定された場合、誘導量算出部14は、手のひらの誘導量を算出する(ステップS24)。手のひらの誘導量は、適正位置と手のひら位置1との距離関係から求めることができる。誘導量算出部14は、一例として、手のひらの中心が適正位置と一致するように手のひらを移動させる誘導量を求める。例えば、適正位置と手のひら位置1との差から、手のひらがなす平面の2軸方向の最も離れている方向の距離を誘導量として求める。
【0036】
次に、メッセージ決定部15は、標準反応テーブル32から、誘導量算出部14が算出した誘導量に対応する誘導メッセージを決定し、表示装置140に当該誘導メッセージを表示するよう指示する(ステップS25)。一例として、メッセージ決定部15は、誘導量算出部14が算出した誘導量に最も近い標準移動量に対応する誘導メッセージを表示装置140に表示させる。表示装置140に誘導メッセージが表示されると、被認証ユーザは誘導メッセージの内容に従って手のひらを移動させることが推測される。
【0037】
メッセージ決定部15は、ステップS25の実行後の所定時間経過後に、生体センサ150に撮影を指示する。それにより、ステップS21およびステップS22が再度実行される。今回のステップS22の実行時には、位置計測部11は、手のひら位置2を計測する。次に、移動量算出部16は、手のひら位置1と手のひら位置2とを比較することによって、手のひらの移動量を算出する(ステップS26)。次に、ステップS26で算出された移動量を用いて、ステップS23が再度実行される。なお、2回目以降のステップS22の実行後には、ステップS26およびステップS27が実行される。また、2回目以降のステップS26の実行時には、先回取得された手のひら位置と今回取得された手のひら位置との比較により、移動量が算出される。
【0038】
移動量算出部16は、ステップS25で決定した誘導メッセージとともに、算出結果を図9の一時テーブルに一時的に保存する。次に、選択部20は、移動量算出部16が算出した移動量に基づいて1人以上のユーザを選択することによって、対象ユーザの絞込みを行う(ステップS27)。例えば、選択部20は、移動量算出部16が算出した移動量と、ユーザ反応テーブル33に記録されている当該誘導メッセージに対応する移動量との類似度がしきい値以上となるユーザを対象ユーザとして選択する。この場合の類似度として、移動量算出部16が算出した移動量とユーザ反応テーブル33に記録されている当該誘導メッセージに対応する移動量との差、両移動量の比などを用いることができる。
【0039】
例えば、「ちょっと右」のメッセージに対する移動量が1.2cmであったとする。この場合、図8のユーザ反応テーブル33の例では、当該ユーザはユーザAまたはユーザBである可能性が高く、ユーザCである可能性が低い。そこで、選択部20は、優先ユーザリストからユーザCを除外する。すなわち、選択部20は、ユーザC以外のユーザを選択する。図12は、優先ユーザリストの一例を説明するための図である。優先ユーザリストは、初期状態では全てのユーザを含んでいるが、ユーザの絞込みのたびに優先ユーザリストのユーザ数が低下する。なお、優先ユーザリストのユーザ数に下限を設けてもよい。また、優先する度合いに応じて優先ユーザリストを複数に分け、算出された移動量とユーザ反応テーブル33の移動量との差に応じて、リスト間を移動させる方式を採用してもよい。その後、ステップS23が実行される。
【0040】
ステップS23において「Yes」と判定された場合、認証部21は、認証処理を行う(ステップS28)。認証処理において、認証部21は、生体センサ150が取得した画像から抽出した静脈データと、静脈データベース31に記録された登録データのうち優先ユーザリストに含まれる登録データとを照合する。ステップS28において、生体センサ150が取得した画像から抽出した静脈データと一致または類似する登録データが見つかった場合には、認証部21は、認証成功と判定する。ステップS28において、生体センサ150が取得した画像から抽出した静脈データと一致または類似する登録データが見つからなかった場合には、認証部21は、認証失敗と判定する。
【0041】
出力部22は、認証処理の結果を出力する(ステップS29)。例えば、出力部22は、認証処理の結果が表示されるように、表示装置140に指示する。次に、更新部19は、認証成功の場合には、ステップS17と同様の手順で標準反応テーブル32を更新する(ステップS30)。たとえば「ちょっと右」を提示した際に1.2cm移動したユーザがAであった場合、ユーザAの「ちょっと右」に対応する値を1.2cmへ近づける。また、標準反応テーブル32においても,「ちょっと右」に対応する値を1.2cmに近づける。これを一時テーブルに格納されている全てのメッセージと移動量との組に対して行う。なお、ユーザの移動量を検出していない場合には、標準反応テーブル32の値は、変更されない。その後、フローチャートの実行が終了する。
【0042】
本実施例に係る生体認証処理によれば、誘導メッセージに対する各ユーザの反応に基づいて対象ユーザを選択することによって、認証失敗の可能性が高いユーザを除外することができる。それにより、照合対象となるユーザ数を低減することができる。その結果、認証に要する時間を短縮化することができる。
【0043】
また、各ユーザの反応が、標準反応テーブル32に反映されるため、標準的な反応をする被認証ユーザに対して、適正位置へ生体を素早く誘導できるようになる。それにより、認証に要する時間を短縮化することができる。一方で、標準的な反応と異なる反応をする被認証ユーザに対しては、誘導中に対象ユーザ数を低減することができる。以上のことから、標準反応テーブル32を設けることによって、どのユーザに対しても、認証に要する時間を短縮化することができる。
【0044】
本実施例においては、誘導量算出部14およびメッセージ決定部15が、被認証ユーザに対し誘導メッセージを提示する提示部として機能する。また、移動量算出部16が、誘導メッセージ提示後の被認証ユーザの反応を取得する反応取得部として機能する。また、ユーザ反応テーブル33が、複数の誘導メッセージを生体の配置状態と関連付けて記憶する誘導メッセージ記憶部として機能する。また、更新部19が、反応取得部が取得した被認証ユーザの反応を、誘導メッセージ記憶部が記憶する生体の配置状態と誘導メッセージとの関係に反映させる反映部として機能する。
【0045】
なお、本実施例においては、表示装置140に誘導メッセージを文字として提示しているが、それに限られない。例えば、矢印などの記号を誘導メッセージとして提示してもよく、その他の視覚に訴える画像などを誘導メッセージとして提示してもよい。さらに、音声などの聴覚に訴える手段を誘導メッセージとして提示してもよい。ユーザに情報が伝わる何らかの手段であれば、誘導メッセージとして提示することができる。なお、誘導メッセージとして画像の濃淡などを用いる際には、誘導メッセージを段階的に変化させるのではなく連続的に変化させてもよい。この場合には、誘導メッセージと各ユーザの反応との対応関係を数式で表すこともできる。したがって、誘導メッセージに対するユーザの反応が各ユーザの数式の解と大きく異なる場合に、当該ユーザを優先リストから除外してもよい。また、標準反応テーブルを数式で表し、ユーザの反応を当該数式に反映させてもよい。
【0046】
また、本実施例においては、被認証ユーザの反応として手のひらの移動量を用いたが、それに限られない。例えば、図1(b)および図1(c)を参照して、生体センサ150に対する生体の移動量を単位時間で除することによって得られる移動速度を被認証ユーザの反応として用いてもよい。また、被認証ユーザの反応として、生体センサ150と生体との距離を用いてもよい。図13を参照して、生体センサ150に距離センサ153を設けることによって、生体センサ150と生体との距離を取得することができる。誘導メッセージに対して被認証ユーザが生体と生体センサ150との距離を調整する際の移動量、移動速度などを被認証ユーザの反応として用いてもよい。また、生体センサ150に対する生体の姿勢(生体の傾斜角度)などを被認証ユーザの反応として用いてもよい。
【0047】
また、静脈データベース31、標準反応テーブル32、ユーザ反応テーブル33などは、サーバなどの外部装置に記憶しておいてもよい。例えば、図14を参照して、静脈データベース31、標準反応テーブル32、およびユーザ反応テーブル33をサーバ200に記憶させておき、通信部160を介して、各テーブルに対してデータを書き込みあるいは各テーブルからデータを読み込んでもよい。
【0048】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
11 位置計測部
12 位置判定部
13 静脈登録部
14 誘導量算出部
15 メッセージ決定部
16 移動量算出部
17 移動量記録部
18 反応テーブル登録部
19 更新部
20 選択部
21 認証部
22 出力部
31 静脈データベース
32 標準反応テーブル
33 ユーザ反応テーブル
130 記憶装置
140 表示装置
150 生体センサ
151 照明
152 撮影装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被認証ユーザの生体データを非接触で取得する生体センサと、
前記被認証ユーザに対し誘導メッセージを提示する提示部と、
前記誘導メッセージの提示後の前記被認証ユーザの反応を取得する反応取得部と、
前記反応取得部が取得した反応に基づいて、複数ユーザから1人以上の対象ユーザを選択する選択部と、
前記生体センサが取得した生体データと前記選択部によって選択された対象ユーザの登録データとの照合によって認証処理する認証部と、を備えることを特徴とする生体認証装置。
【請求項2】
誘導メッセージに対する複数ユーザの反応をあらかじめ記憶した反応記憶部を備え、
前記選択部は、前記反応取得部が取得した反応と、前記反応記憶部が記憶する反応との関係に基づいて、前記複数ユーザから1人以上の対象ユーザを選択することを特徴とする請求項1記載の生体認証装置。
【請求項3】
前記選択部は、前記提示部によって提示された誘導メッセージに対する前記被認証ユーザの反応と、前記誘導メッセージに対応して前記反応記憶部に記憶された反応との類似度がしきい値以上となるユーザを対象ユーザとして選択することを特徴とする請求項2記載の生体認証装置。
【請求項4】
前記被認証ユーザの反応は、前記生体センサに対して前記被認証ユーザの生体が移動する際の移動量であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体認証装置。
【請求項5】
前記被認証ユーザの反応は、前記生体センサに対して前記被認証ユーザの生体が移動する際の移動速度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体認証装置。
【請求項6】
複数の誘導メッセージを生体の配置状態と関連付けて記憶する誘導メッセージ記憶部を備え、
前記提示部は、前記生体センサが取得する前記生体の配置状態に応じて、前記誘導メッセージ記憶部に記憶された誘導メッセージのうちいずれかを選択して提示することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の生体認証装置。
【請求項7】
前記反応取得部が取得した前記被認証ユーザの反応を、前記誘導メッセージ記憶部が記憶する生体の配置状態と誘導メッセージとの関係に反映させる反映部を備えることを特徴とする請求項6記載の生体認証装置。
【請求項8】
前記反映部は、前記反応取得部が取得した前記被認証ユーザの反応を、前記反応記憶部が記憶する誘導メッセージとユーザの反応との関係に反映させることを特徴とする請求項6または7記載の生体認証装置。
【請求項9】
被認証ユーザの生体データを非接触で取得する生体取得ステップと、
前記被認証ユーザに対し誘導メッセージを提示した後の前記被認証ユーザの反応を取得する反応取得ステップと、
前記反応取得ステップにおいて取得した反応に基づいて、複数ユーザから1人以上の対象ユーザを選択する選択ステップと、
前記生体取得ステップで取得した生体データと前記選択ステップで選択された対象ユーザの登録データとの照合によって認証処理する認証ステップと、を含むことを特徴とする生体認証方法。
【請求項10】
コンピュータに、
被認証ユーザの生体データを非接触で取得する生体取得ステップと、
前記被認証ユーザに対し誘導メッセージを提示した後の前記被認証ユーザの反応を取得する反応取得ステップと、
前記反応取得ステップにおいて取得した反応に基づいて、複数ユーザから1人以上の対象ユーザを選択する選択ステップと、
前記生体取得ステップで取得した生体データと前記選択ステップで選択された対象ユーザの登録データとの照合によって認証処理する認証ステップと、を実行させることを特徴とする生体認証プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−194770(P2012−194770A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58152(P2011−58152)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】