説明

生体適合性ポリマーおよびコポリマーならびにそれらの使用

本発明は、式(I)の1つ以上の側鎖活性アクリルアミノ酸を含む高生体適合性または親生物性の非架橋または架橋ポリマーに関する。本発明はさらに、式(I)の1つ以上のモノマー、および1つ以上の他の重合性モノマーを含む様々な高生体適合性の架橋コポリマーに関係する。コンタクトレンズ、眼内レンズ、インプラント、創傷治療スラブ、食品および化粧品用の添加物、導電性プラスチック、紡糸可能な繊維などの製造のためのかかるポリマーおよびコポリマーの使用が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、側鎖活性アミノ酸を含む新規な生体適合性ポリマーおよびコポリマーに、ならびに医療デバイス、インプラント、食品および化粧品用の添加物、布用の繊維のためのそして特に光学レンズの製造のためのこれらのポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ポリマーは、生物医学用途に、ならびに衣類をはじめとする、ヒト皮膚または組織と接触する他の物品に広く使用されている。生物医学用途にしばしば使用されるポリマーには、ポリアクリレート、ポリウレタン、シリコーンおよび様々な親水性物質が含まれる。眼内およびコンタクトレンズをはじめとする、光学レンズの分野で、典型的に使用されるポリマーはポリメチルメタクリレート、ポリフェニルエチルメタクリレート、セルロースアセテート・ブチレート、シリコーン−メチルメタクリレートコポリマー、親水性化合物とのメチルメタクリレートコポリマー、ならびにヒドロキシエチルメタクリレートおよびジヒドロキシプロピルメタクリレートをベースにするものなどのハイドロゲルである。これらの材料に共通するのは、それらが公知の生物学的表面とは非常に異なる、それ故様々な程度の組織−または生体−非適合性を示す表面を提供することである。アミノ酸を含むコポリマーは特許文献1にバワ(Bawa)によって記載された。しかしながら、バワによって記載されたポリマーに含有されるアミノ酸は陰イオン性であり、そして遊離のα−アミノカルボン酸基を欠くので、それらはポリマーの生体適合性を有意に改良しない。本発明は具体的には、側鎖活性アクリルアミノ酸のポリマーおよびコポリマーに関する。側鎖活性アクリルアミノ酸は、現行技術の無溶媒系においてアクリル・ビルディングブロックと混和性ではない。意外なことに、本発明のビルディングブロックのα−アミノ基に加えられた保護基は側鎖活性アクリルアミノ酸を現行技術のアクリル・ビルディングブロックと混和性にすることが分かった。本発明のポリマーまたはコポリマーへの遊離のα−アミノカルボン酸基(α−アミノ基の脱保護後に)を含有するアミノ酸またはアミノ酸誘導体の包含は、生物材料のものに酷似する組織適合性または生体適合性を示すポリマー表面をもたらす。ポリマーに組み入れられたアミノ酸またはアミノ酸誘導体はペプチド結合によって連結されていないので、本ポリマーは組織プロテアーゼによる生物学的分解に耐性がある。さらに、本発明のポリマー中のアミノ酸またはアミノ酸誘導体の存在はそれらの親水性を上げる。この特性は、高められた水の摂取、酸素透過性および表面湿潤を生み出すことになる。
【特許文献1】米国特許第4,668,506号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、式I
【化1】

(式中、
Xは−NH(CH−、−O−C−CH−、−OCH−、−O−CH(CH)−、−S−CH−、−O−プロリンであり、RはHまたはCHである)
の1つ以上の重合性モノマーを含む高生体適合性ポリマーであって、熱的または感光性フリーラジカル開始剤および、任意に、複数の重合性エチレン性不飽和基を有する架橋剤をさらに含むポリマーに関する。このタイプのポリマーは、豊胸インプラント、手術用の充填物、皮膚火傷の治療用のスラブ、任意の種類の軟膏、食品および化粧品添加物などの製造に特に有用である。
【0004】
本発明はさらに、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有するとして特徴付けられる1つ以上の重合性主要(principal)モノマーと、1つ以上の式Iのモノマーとを含む高生体適合性コポリマーに関係する。本コポリマーはさらに、フリーラジカル開始剤および、任意に、複数の重合性エチレン性不飽和基を有する架橋剤を含む。本コポリマーはまた光増感剤、紫外線−吸収化合物および青色光−吸収化合物を含んでもよい。
【0005】
このタイプのコポリマーは、医療デバイス、インプラント、食品および化粧品用の添加物、導電性プラスチックおよび布用の繊維の製造に特に有用である。本発明のハイドロゲルコポリマーは、親水性性質を有し、そして架橋ポリマーにおいてハイドロゲルを形成することができる少なくとも1つの主要モノマー成分と1つ以上の式Iのモノマーとの共重合によって製造されてもよい。
【0006】
本発明のコポリマーのある特定の実施形態では、重合性主要モノマーはハイドロゲルを形成することができる2つのモノマーの組み合わせである。主要モノマーの好適な組み合わせには、ヒドロキシエチルメタクリレートおよびメチルメタクリレート、ビニルピロリドンおよびヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルピロリドンおよびメチルメタクリレート、グリセリルメタクリレートおよびメチルメタクリレート、グリセリル−メタクリレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよびヒドロキシアルキルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよび2〜6個の炭素原子を有するアルキル基のアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよびビニルヒドロキシアセテート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよびビニルヒドロキシプロピオネート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよびビニルヒドロキシブチレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよびN−ビニルラクタム、すなわちN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムおよびN−ビニルピペリドン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドならびに0〜2個の炭素原子を有するアルキル基のN,N−ジアルキルアミノエチルメタクリレートおよびアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよび2〜4個の炭素原子を有するアルキル基のヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよび1−ビニルオキシ−2−ヒドロキシエチレン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよび1−ビニルオキシ−5−ヒドロキシ−3−オキサペンタン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよび1−ビニルオキシ−8−ヒドロキシ−3,6−ジオキサオクタン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよび1−ビニルオキシ−14−ヒドロキシ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよびN−ビニルモルホリン;ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよび0〜2個の炭素原子を有するアルキル基のN,N−ジアルキルアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよび1〜2個の炭素原子を有するアルキル基のアルキルビニルケトン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよびN−ビニルスクシンイミドまたはN−ビニルグルタルイミド、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよびN−ビニルイミダゾール、ならびにヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよびN−ビニル−3−モルホリノンが含まれる。1つ以上の式Iに従った共主要(co-principal)モノマーに加えて、コポリマーはさらに、フリーラジカル開始剤および、任意に、複数の重合性エチレン性不飽和基を有する架橋剤を含む。コポリマーはさらに光増感剤、紫外線−吸収化合物および青色光−吸収化合物を含んでもよい。コポリマーはハイドロゲル・コンタクトレンズの製造に好適である。それらはまた、シングルピースおよび複合眼内レンズを製造するために使用することもできる。オプティック部分およびハプティック部分からなる複合接眼レンズのケースでは、ハプティック部分の製造に使用されるコポリマーがその水和形態でオプティック部分が製造されるコポリマーより低い含水率を有するという条件で、オプティック部分およびハプティック部分は類似のコポリマーから製造されてもよい。用語「類似のコポリマー」は、異なる含水率のコポリマーを製造するためにモノマーの相対量が変わり得るという条件で、コポリマーが上にリストされたものなどの同一のモノマーからかまたは同等の組み合わせのモノマーから製造されることを意味する。
【0007】
ある特定の実施形態では、本発明のコポリマーは式III
【化2】

(式中、
XはHまたはCHであり、mは0〜10であり、Yは不存在、O、S、またはNR(ここで、RはH、CH、C2n+1(n=1〜10)、イソ−OC、C、もしくはCHである)であり、Arは、未置換かまたはH、CH、C、n−C、イソ−C、OCH、C11、Cl、Br、CもしくはCHで置換されていることができる、ベンゼンなどの、任意の芳香環である)
に従った1つ以上の主要モノマーを含む。1つ以上の式Iに従った共主要モノマーに加えて、本コポリマーはさらに、フリーラジカル開始剤および、任意に、複数の重合性エチレン性不飽和基を有する架橋剤を含む。本コポリマーはまた光増感剤、紫外線−吸収化合物および青色光−吸収化合物を含んでもよい。式IIIに従った好適なモノマーには、2−エチルフェノキシアクリレート、2−エチルフェノキシメタクリレート、2−エチルチオフェニルアクリレート、2−エチルチオフェニルメタクリレート、2−エチルアミノフェニルアクリレート、2−エチルアミノフェニルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルアクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、3−プロピルフェノキシアクリレート、3−プロピルフェノキシメタクリレート、4−ブチルフェノキシアクリレート、4−ブチルフェノキシメタクリレート、4−フェニルブチルアクリレート、4−フェニルブチルメタクリレート、4−メチルフェニルアクリレート、4−メチルフェニルメタクリレート、4−メチルベンジルアクリレート、4−メチルベンジルメタクリレート、2−(2−メチルフェニル)エチルアクリレート、2−(2−メチルフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−メチルフェニル)エチルアクリレート、2−(3−メチルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メチルフェニル)エチルアクリレート、2−(4−メチルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルアクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルアクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルアクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルアクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルアクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルアクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルアクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ベンジルフェニル)エチルアクリレート、および2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレートが含まれる。2−フェニルエチルアクリレートおよび2−フェニルエチルメタクリレートが式IIIに従ったモノマーの好ましい組み合わせを表す。1つ以上の式IIIのモノマーおよび1つ以上の式Iのモノマーを含むコポリマーは、高生体適合性の折り畳み式眼内レンズの製造に好適である。
【0008】
別の特定の実施形態では、本発明のコポリマーは2つの主要な重合性モノマーを含み、第1のものはそのホモポリマーが少なくとも1.50の屈折率を有するモノマーであり、第2のものはそのホモポリマーが30℃未満、好ましくは22℃未満のガラス転移温度を有するモノマーである。1つ以上の式Iに従った共主要モノマーに加えて、本コポリマーはさらに、フリーラジカル開始剤および、任意に、複数の重合性エチレン性不飽和基を有する架橋剤を含む。本コポリマーはさらに光増感剤、紫外線−吸収化合物および青色光−吸収化合物を含んでもよい。好適な第1所要モノマーには、スチレン、ビニルカルバゾール、ビニルナフタレン、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、ナフチルアクリレート、ペンタブロモフェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、および2,3−ジブロモプロピルアクリレートが含まれる。好適な第2主要モノマーは、n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2,3−ジブロモプロピルアクリレート、n−1、および1−ジヒドロパーフルオロブチルアクリレートを含む。本コポリマーは、任意に、親水性の主要モノマーをさらに含んでもよい。最高の親水性モノマーには、N−ビニルピロリドン;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、または2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレート;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、またはN−ブチルアクリルアミドなどのN−アルキルアクリルアミド;アクリル酸;およびメタクリル酸が含まれる。後者のコポリマーは、高生体適合性ソフトコンタクトレンズまたは高屈折率を有する柔軟な折り畳み式眼内レンズもしくはそのオプティック部分の製造に好適である。
【0009】
さらなる特定の実施形態では、本発明のコポリマーは主要な重合性モノマーとして式IIIのモノマーおよび親水性モノマーを含む。好適な親水性モノマーは、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−N−エチルアクリレートピロリドン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、2−N−ビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド:200モノメチルエーテル・モノメタクリレート、ポリエチレンオキシド:200モノメタクリレート、およびポリエチレンオキシド:1000ジメタクリレートからなる群から選択される。1つ以上の式Iに従った共主要モノマーに加えて、本コポリマーはさらに、フリーラジカル開始剤および、任意に、複数の重合性エチレン性不飽和基を有する架橋剤を含む。本コポリマーはさらに光増感剤、紫外線−吸収化合物および青色光−吸収化合物を含んでもよい。後者のコポリマーは、高生体適合性ソフトコンタクトレンズまたは高屈折率を有する柔軟な折り畳み式眼内レンズもしくはそのオプティック部分の製造に好適である。
【0010】
異なる実施形態では、本発明のポリマーおよびコポリマーは、薬物の局所、全身および経皮投与のための薬物送達デバイスを製造するために使用される。これらの薬物送達デバイスは、本発明のポリマーまたはコポリマーおよび治療有効量の薬物を含む。薬物の治療有効量は、意図される期間所望の治療効果を生み出す量である。本発明のコポリマーはまた、治療有効量の薬物を含有するコンタクトレンズまたは眼内レンズを製造するために使用することもできる。かかる薬物入りレンズは、薬物を眼組織にまたは血液循環に送達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、側鎖活性アクリルアミノ酸からなる1つ以上のモノマーを含むポリマーおよびコポリマーに関する。本発明のポリマーおよびコポリマーに使用される側鎖活性アクリルアミノ酸はリジン、チロシン、セリン、スレオニン、システイン、またはヒドロキシプロリンのアクリルまたはメタクリル誘導体である。本発明で対象とする側鎖活性アクリルアミノ酸の構造は式I:
【化3】

(式中、
Xは−NH(CH−、−O−C−CH−、−OCH−、−O−CH(CH)−、−S−CH−、−O−プロリンであり、そしてRはHまたはCHである)
で表される。
【0012】
側鎖活性アクリルアミノ酸の合成は以前にズバイダ(Zbaida)ら著、Reactive Polymers 6(1987)、241−253ページに記載された。それらは、リジン、チロシン、セリン、スレオニン、システインまたはヒドロキシプロリンのアミノ酸銅錯体を塩化アクリルまたはメタクリルと反応させ、引き続き非保護モノマーをもたらすために硫化水素の流れまたは酸性溶液において硫化ナトリウムで処理することによって製造することができる。あるいはまた、α−アミノ保護アミノ酸(例えば、Fmocアミノ酸)が塩化アクリルまたはメタクリルと直接反応させられる。保護基は次に、ホモポリマーまたはコポリマーの形成の後で、その後の工程で除去される。2タイプの合成法は実施例セクションで詳細に記載される。
【0013】
式Iの側鎖活性アクリルアミノ酸のポリマーは、通常の重合法を用いて製造することができる。側鎖活性アクリルアミノ酸は、通常のフリーラジカル開始剤と一緒に適切な極性溶媒(例えば、水または水とジメチルホルムアミドとの混合物)に溶解される。混合物は次に好適な容器または型へ注ぎ込むことができ、そこで重合が誘導される。開始剤は熱開始剤または光開始剤であることができる。典型的な熱フリーラジカル開始剤には、ベンゾフェノンペルオキシドなどの過酸化物、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートなどのペルオキシカーボネート、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾニトリルなどが含まれる。好ましい開始剤はビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートである。あるいはまた、モノマーは、アクリルモノマーの重合を開始させることができる波長の放射線を通す容器または型中で光重合させることができる。通常の光開始剤化合物、例えば、ベンゾフェノン型光開始剤をまた、重合を促進するために導入することができる。光増感剤は、より長波長の使用を可能にするために同様に導入することができるが、ヒト身体またはヒト組織内にまたはそれらと接触して長い滞留を意図されるポリマーを製造する場合、ポリマーから組織中へ浸出するかもしれない物質の存在を回避するためにポリマー中の原料の数を最小限に保つことが一般に好ましい。1つ以上の式Iのタイプのモノマーおよび1つ以上の他の反応性モノマーを含む本発明のコポリマーは、α−アミノ−保護側鎖活性アミノ酸を使用していかなる溶媒も存在せずに製造される。好ましい保護基はFmocである。この保護基は、重合の後でジメチルホルムアミドおよびピペリジン(8:1)中での脱保護によって除去することができる。
【0014】
本発明のポリマーおよびコポリマーの製造のための重合混合物は典型的にはまた、共重合性架橋剤を含む。好適な架橋剤は、2つ以上の不飽和基、すなわち、様々な不飽和基を有する任意の末端エチレン性不飽和化合物であってもよい。より具体的には、好適な架橋剤には、次のものが含まれるが、それらに限定されない:エチレングリコールジアクリレートまたはジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレートまたはジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレートまたはジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレートまたはジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートまたはジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートまたはトリメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレートまたはジメタクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレートまたはジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリ−およびテトラ−アクリレートまたはメタクリレート、テトラメチレンジアクリレートまたはジメタクリレート、メチレンビスアクリルアミドまたはメタクリルアミド、ジメチレンビスアクリルアミドまたはメタクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレンビスアクリルアミドまたはメタクリルアミド、ヘキサメチレンビスアクリルアミドまたはメタクリルアミド、デカメチレンビスアクリルアミドまたはメタクリルアミド、ジビニルベンゼン、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレートなど。追加の有用な架橋剤には、米国特許第4,153,641号明細書に記載される1,3−ビス(4−メタクロイルオキシアルキル)テトラジシロキサンおよび類似のポリ(オルガノ−シロキサン)モノマーが含まれる。別のグループの有用な架橋剤は、共鳴のないジ(アルキレン第三級アミン)環式化合物、例えば、米国特許第4,436,887号明細書に開示されているような、N,N’−ジビニルエチレンウレアである。さらに別の基は、エチレングリコールジビニルエーテルなどの二価または多価アルコールのジ−またはポリビニルエーテルである。架橋剤は、約0.1重量%〜約20重量%の様々な量で使用することができるが、好ましくは存在する総モノマーの約0.5重量%の量で存在する。
【0015】
式IのFmoc保護側鎖活性アクリルアミノ酸は、1つ以上の他の反応性モノマーと共重合させることができる。親水性の反応性モノマーには、例えば、α,β−不飽和カルボン酸の、ヒドロキシアルキルエステルならびにN−置換および未置換の両方のアミド、N−ビニルラクタムならびに2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が含まれる。本発明で有用なα,β−不飽和酸は、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸などである。ヒドロキシアルキルエステルを形成する多官能性アルコールには、グリコール、グリセロール、プロピレングリコール、トリメチレングリコールおよび他の多価アルカノール、2〜12個の炭素原子のジアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールなどが含まれる。ポリアルキレングリコールはトリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコールなどで例示される。好ましい親水性モノマーは、ヒドロキシアルキルエステル、具体的にはヒドロキシエチルメタクリレートである。好適な疎水性モノマーには、シクロアルキルエステル、第三ブチルスチレン、多環式アクリレートまたはメタクリレートなど、ならびにそれらの混合物が含まれる。より具体的には、多環式アクリレート誘導体は、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタジエニルアクリレート,ジシクロペンタジエニルメタクリレート、アダマンチルアクリレート、アダマンチルメタクリレート、イソピノカンフィールアクリレート、イソピノカンフィールメタクリレートなど、およびそれらの混合物であってもよい。シクロアルキルエステルモノマーは下の式II(特許506からの式I)のものである。これらのシクロアルキルエステルを例示するものは、メンチルメタクリレート、メンチルアクリレート、第三ブチルシクロヘキシルメタクリレート、イソヘキシルシクロペンチルアクリレート、メチルイソペンチルシクロオクチルアクリレートなどである。
【0016】
特許506からの式I
【化4】

式中、Dは、3〜6個の炭素原子の分岐またはノルマル・アルキルであり、EはHまたはCHであり、ZはHまたはCHであり、nは3〜8の整数である。
【0017】
少なくとも1つのケイ素またはフッ素原子をそれらの組成物の一部として含有するモノマーをはじめとする、他の周知の疎水性モノマーが本発明のコポリマーの処方に使用されてもよい。疎水性モノマーには、モノ−またはジ置換イタコネート、スチレンおよびその誘導体、アクリロニトリル、ビニルアセテートまたはビニルペンタアセチルグルコネートなどのビニルエステル、ビニルブチルエーテルなどのビニルエーテル、アリルアセテート、プロピオネートまたはブチレートなどのアリルエステル、オクタフルオロペンチルメタクリレートなどのフッ素含有モノマー、およびケイ素含有モノマー、例えば、1,1,1−トリス(トリメトキシシロキシ)−3−メタクリルオキシプロピルシランまたはヘプタメチルトリシロキサニルエチルアクリレートだけでなく、アルキル、シクロアルキルおよびアリールアクリレートおよびメタクリレートが含まれる。典型的には、式Iの側鎖活性アクリルアミノ酸および他の反応性モノマーは、1:99〜1:1、より好ましくは約1:9〜1:4の重量比で本発明のコポリマー中に存在するであろう。
【0018】
本発明のハイドロゲルコポリマーは、1つ以上の式Iのモノマーと、その少なくとも1つが親水性性質を有し、そして架橋ポリマーにおいてハイドロゲルを形成することができるであろう1つ以上の他のモノマー成分との共重合によって製造されてもよい。「ハイドロゲル」は、水和時に、約5%〜95%水の平衡含有率を有する架橋ポリマーであると理解される。本発明のハイドロゲルコポリマーは、コンタクトレンズおよび折り畳み式眼内レンズ(IOL)をはじめとする、生体適合性の柔軟な光学レンズの製造のために使用することができる。折り畳み式IOLのオプティック部分またはソフトコンタクトレンズは、好ましくは少なくとも約25%の含水率を有するであろう。
【0019】
生体適合性ハイドロゲル光学レンズの製造に好適である本発明のハイドロゲルコポリマーを製造するために1つ以上の式Iのモノマーの存在下に共重合されてもよいモノマー成分の好適な組み合わせは、ヒドロキシエチルメタクリレートおよびメチルメタクリレート、ビニルピロリドンおよびヒドロキシエチルメタクリレートまたはメチルメタクリレート;グリセリルメタクリレートおよびメチルメタクリレート;ヒドロキシエチルメタクリレート/ジアセトンアシルアミドおよび2〜6個の炭素原子を有するアルキル基のヒドロキシアルキルメタクリレート、アクリレート;ビニルヒドロキシアセテート、ビニルヒドロキシプロピオネート、ビニルヒドロキシブチレート;N−ビニルラクタム、すなわちN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムおよびN−ビニルピペリドン;0〜2個の炭素原子を有するアルキル基のN,N−ジアルキルアミノエチルメタクリレートおよびアクリレート;2〜4個の炭素原子を有するアルキル基のヒドロキシアルキルビニルエーテル;1−ビニルオキシ−2−ヒドロキシエチレン、1−ビニルオキシ−5−ヒドロキシ−3−オキサペンタン、1−ビニルオキシ−8−ヒドロキシ−3,6−ジオキサオクタン、1−ビニルオキシ−14−ヒドロキシ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン;N−ビニルモルホリン;0〜2個の炭素原子を有するアルキル基のN,N−ジアルキルアクリルアミド;1〜2個の炭素原子を有するアルキル基のアルキルビニルケトン;N−ビニルスクシンイミドおよびN−ビニルグルタルイミド;N−ビニルイミダゾール;およびN−ビニル−3−モルホリノンを含む。
【0020】
1つ以上の式Iのモノマーおよび1つ以上の他の好適な反応性モノマーのコポリマーは、通常の重合法によって一般に製造される。好適な架橋剤および通常のフリーラジカル開始剤と一緒に所望の割合の液体モノマーの混合物が調製される。混合物は次に好適な形状の型へ導入されてレンズ、または場合によっては光学レンズおよび角膜レンズなどの対象とする物品を製造することができる。光増感剤だけでなく典型的な熱フリーラジカル開始剤および光開始剤化合物は前に記載された。重合は次に、それぞれ、加熱または照射によって開始することができる。
【0021】
本発明のコポリマーから製造される折り畳み式IOLに関して、これらのレンズは、比較的小さい切開を通り抜け得る小さい断面へ丸めるまたは折り畳むことができる任意のデザインのものであることができる。例えば、IOLは、ワンピースまたはマルチピース・デザインとして知られるものであることができる。典型的には、IOLはオプティックおよび少なくとも1つのハプティックを含む。オプティックはレンズとして役立つ当該部分であり、ハプティックはオプティックに取り付けられ、そしてオプティックを眼の中でその適切な場所に保持するアームのようである。オプティックおよびハプティックは、同じまたは異なる材料のものであることができる。マルチピースレンズは、オプティックおよびハプティックが別々に製造され、そして次にハプティックおよびオプティックが接合されるのでそのように呼ばれる。ワンピースレンズでは、オプティックおよびハプティックはワンピースの材料から形成される。材料に依存して、ハプティックは次に、IOLを製造するための材料からカットされるか、または旋盤にかけられる。特に、ハイドロゲルIOLのケースでは、マルチピースレンズが好ましいかもしれない。低い含水率(5%程度の低さ)を有するハプティック部分を使用することができる。この低水ハイドロゲルは、自立IOLを可能にするであろう、すなわち、ハプティックが通常のループハプティックと類似のまたはそれより良好な力/変位特性の狭径ループ型ハプティックの構築を可能にするのに十分に堅い、本発明の任意のコポリマーであることができる。
【0022】
ハプティック部分のために好ましいハイドロゲルは、1つ以上の式Iのモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレートおよびメチルメタクリレートのコポリマーである。ヒドロキシエチルメタクリレートの百分率は好ましくは約50%未満、より好ましくは約25〜50%ヒドロキシエチルメタクリレートである。ハプティック部分のために使用されるコポリマーは一般に、水和形態でオプティック部分のために使用されるコポリマーより低い含水率を有する。他のコポリマーでは、ヒドロキシエチルメタクリレートおよびメチルメタクリレートの組み合わせは、ビニルピロリドンおよびヒドロキシエチルメタクリレートまたはメチルメタクリレート;グリセリルメタクリレートおよびメチルメタクリレート;ヒドロキシエチルメタクリレート/ジアセトンアシルアミドおよび2〜6個の炭素原子を有するアルキル基のヒドロキシアルキルメタクリレートおよびアクリレートなどの様々な他のモノマー;ビニルヒドロキシアセテート、ビニルヒドロキシプロピオネート、ビニルヒドロキシブチレート;N−ビニルラクタム、すなわちN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムおよびN−ビニルピペリドン;0〜2個の炭素原子を有するアルキル基のN,N−ジアルキルアミノエチルメタクリレートおよびアクリレート;2〜4個の炭素原子を有するアルキル基のヒドロキシアルキルビニルエーテル;1−ビニルオキシ−2−ヒドロキシエチレン、1−ビニルオキシ−5−ヒドロキシ−3−オキサペンタン、1−ビニルオキシ−8−ヒドロキシ−3,6−ジオキサオクタン、1−ビニルオキシ−14−ヒドロキシ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン;N−ビニルモルホリン;0〜2個の炭素原子を有するアルキル基のN,N−ジアルキルアクリルアミド;1〜2個の炭素原子を有するアルキル基のアルキルビニルケトン;N−ビニルスクシンイミドおよびN−ビニルグルタルイミド;N−ビニルイミダゾール;およびN−ビニル−3−モルホリノンで置換されてもよい。本発明のこれらの好ましいハイドロゲルコポリマーはIOLのハプティックにだけでなく、コポリマーが好適である対象とする他の物品の製造のためにも使用されてもよい。
【0023】
本発明の別の実施形態では、本発明のコポリマーは、1つ以上の式Iの化合物と1つ以上の式III
【化5】

(式中、XはHまたはCHであり、mは0〜10であり、Yは不存在、O、S、またはNR(ここで、RはH、CH、C2n+1(n=1〜10)、イソ−OC、C、もしくはCHである)であり、Arは、未置換かまたはH、CH、C、n−C、イソ−C、OCH、C11、Cl、Br、CもしくはCHで置換されていることができる、ベンゼンなどの、任意の芳香環である)
のモノマーとの共重合によって製造される。
【0024】
式IIIの好適なモノマーには、相当するメタクリレートおよびアクリレートをはじめとする、2−エチルフェノキシメタクリレート、2−エチルフェノキシアクリレート、2−エチルチオフェニルメタクリレート、2−エチルチオフェニルアクリレート、2−エチルアミノフェニルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、3−プロピルフェノキシメタクリレート、4−ブチルフェノキシメタクリレート、4−フェニルブチルメタクリレート、4−メチルフェニルメタクリレート、4−メチルベンジルメタクリレート、2−(2−メチルフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−メチルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メチルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート)、2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレートなどが含まれるが、それらに限定されない。
【0025】
1つ以上の式Iの化合物および1つ以上の式IIIの化合物のコポリマーは、高屈折率の光学レンズ、特に折り畳み式IOLの製造に好適である。本コポリマーは、前に記載されたような一般的に通常の重合法によって製造される。コポリマーに使用される好適な共重合性架橋剤もまた前に議論された。
【0026】
アクリルエステルのポリマーのうちで、アクリレートエステルモノマーから製造されたものがメタクリレートエステルのポリマーより低いガラス転移温度を有する、かつ、より柔軟である傾向があることは当業者によって理解されるであろう。従って、本発明の折り畳み式IOLに使用されるコポリマーは一般に、メタクリレートエステル残基のモルパーセントより大きいモルパーセントのアクリレートエステル残基を含むであろう。式IIIのモノマーを含むコポリマーについては、アリールアクリレートモノマーがポリマーの約60モルパーセント〜約95モルパーセントを構成するが、アリールメタクリレートモノマーはポリマーの約5モルパーセント〜約40モルパーセントを構成することが好ましい。1つ以上の式Iのモノマーおよび式IIIのモノマーを含む本発明のコポリマーのうちで、好ましいコポリマーは約10〜20モルパーセントの式Iのモノマー、50〜55モルパーセントの2−フェニルエチルアクリレートおよび約30〜35モルパーセントの2−フェニルエチルメタクリレートを含む。
【0027】
高屈折率を有する柔軟な折り畳み式IOLおよびソフトコンタクトレンズの製造に関する特定の実施形態では、1つ以上の式Iのモノマーが好適な架橋剤の存在下に、そのモノマーのそれぞれが最終ポリマーに特有の所望の特性を追加する、2つもしくは3つの下に定義される他のモノマーと共重合される。少なくとも約10%または約20重量%の量で、より好ましくは重量で多量に(少なくとも約50%)コポリマー中に好ましくは存在する第1のかかる他のモノマーは、そのホモポリマーが少なくとも約1.50、好ましくは少なくとも約1.52または約1.54の屈折率を有する、第1モノマー成分から誘導される。第1モノマー成分のホモポリマーは好ましくはかなりの程度の剛性を有する。特に有用な第1モノマー成分には、スチレン、ビニルカルバゾール、ビニルナフタレン、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、ナフチルアクリレート、ペンタブロモフェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2,3−ジブロモプロピルアクリレートおよびそれらの混合物が含まれる。第2の他のモノマーは、総モノマーの重量の少なくとも約2%、より好ましくは少なくとも約4%の量で好ましくは存在する。本明細書に記載される、かかる成分についてのクライテリアを満たす任意の好適な第2モノマー成分が用いられてもよい。第2モノマー成分のホモポリマーは約30℃未満、好ましくは約22℃未満のガラス転移温度を有する。特に有用な第2モノマー成分には、n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2,3−ジブロモプロピルアクリレート、n−1、1−ジヒドロパーフルオロブチルアクリレートおよびそれらの混合物が含まれる。本コポリマーは追加の親水性モノマー成分をさらに含んでもよい。用語「親水性モノマー成分」は、ハイドロゲル形成ホモポリマー、すなわち、かなりの量、例えば、ホモポリマーの重量を基準として少なくとも約20%の水と会合するようになる、そしてかかる会合の結果として物理的に膨潤するホモポリマーを生み出す化合物を意味する。有用な親水性モノマー成分の具体的な例には、N−ビニルピロリドン;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレートなどのようなヒドロキシアルキルアクリレートおよびヒドロキシアルキルメタクリレート;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミドなどのようなN−アルキルアクリルアミド;アクリル酸;メタクリル酸など;ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0028】
高屈折率を有する柔軟な折り畳み式IOLおよびソフトコンタクトレンズの製造に特に有用である別の特定の実施形態では、少なくとも1つの式Iのモノマー、少なくとも1つの式IIIのモノマー、好適な架橋剤および親水性モノマーを含むコポリマーであって、その親水性モノマーの量が式IIIのアリールアクリル疎水性成分のそれ以下であるコポリマーが製造される。好適な親水性モノマーには、2−ヒドロキシエチルアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート;2−N−エチルアクリレートピロリドン;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート;2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート;2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート;2−N−ビニルピロリドン;ポリエチレンオキシド:200モノメチルエーテル・モノメタクリレート;ポリエチレンオキシド:200モノメタクリレート;ポリエチレンオキシド:1000ジメタクリレートが含まれる。本発明での使用のための好ましい親水性モノマーには、2−ヒドロキシエチルアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート;およびポリエチレンオキシド:1000ジメタクリレートが含まれる。
【0029】
紫外線吸収物質もまた本発明のコポリマーに含めることができる。これは、紫外線吸収物質の包含が眼の天然レンズのそれに近い吸光度を生み出すことを意図される、本発明のコポリマーから製造されたIOLのケースで特に重要である。紫外吸収物質は、紫外線、すなわち、約400nmより短い波長を有する光を吸収するが、いかなる実質的な量の可視光も吸収しない任意の化合物であることができる。紫外線−吸収化合物はモノマー混合物中へ組み入れられ、そしてモノマー混合物が重合するときにポリマーマトリックスに取り込まれる。好適な紫外線−吸収化合物には、2−ヒドロキシベンゾフェノンなどの置換ベンゾフェノンおよび2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールが含まれる。モノマーと共重合できる、それによってポリマーマトリックスに共有結合する紫外線−吸収化合物を使用することが好ましい。このようにして、本発明のコポリマーから製造された物品から、例えばレンズからの紫外線−吸収化合物の眼の内への起こり得る浸出が最小限にされる。好適な共重合できる紫外線−吸収化合物は、米国特許第4,304,895号明細書に開示されている置換2−ヒドロキシベンゾフェノンおよび米国特許第4,528,311号明細書に開示されている2−ヒドロキシ−5−アクリルオキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾールである。最も好ましい紫外線吸収化合物は2−(3’−メタリル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールである。UV吸収剤は典型的には、存在する総モノマーの0.1〜5重量%の量で存在する。
【0030】
高エネルギー青色光が網膜を損傷し得ることもまた公知である。実は、ヒトIOLは、かかる損傷を軽減する黄色顔料を生み出す。それ故、それらがIOLを製造するために使用されるとき、青色光−吸収化合物が本発明のコポリマー中に含められてもよい。好適な共重合できる青色光−ブロッキング発色団は、例えば、米国特許第4,528,311号明細書および同第5,470,932号明細書に記載されている。青色光吸収剤は典型的には、存在する総モノマーの0.01〜0.5重量%の量で存在する。
【0031】
本発明のコポリマーを使用して製造されたIOLは、任意の好適な形状およびサイズを有することができる。好ましくは、IOLのオプティック部分はタンブル研磨エッジを含有しないが、ハプティックとの接合点を含む全周囲の周りに角張ったエッジを含有する。ヴァーガス(Vargas)ら著、J Cataract Refract Surg 28(2002)、1241−50ページ。
【0032】
本発明のコポリマーは薬物送達デバイスへ造形することができ、それによって薬物はコポリマーのマトリクス中に存在する。かかるデバイスには、インプラント、パッチ、レンズなどが含まれる。本発明のコポリマーから製造されたコンタクトレンズおよびIOLは、局所または全身活性薬物用の眼科薬物送達デバイスとして使用することができる。多くの異なる方法が、組み入れられた薬物または薬剤を組織との接触時に放出することが可能なかかる薬物送達デバイスを製造するために用いられてもよい。薬物は、均一な分布の薬物を含有する均一なコポリマーを製造するためにモノマー混合物に含められてもよい。あるいはまた、薬物が中間層に専ら存在するが外層に存在しないサンドイッチ型送達デバイスを製造することも可能であるかもしれない。さらに別のデバイスは、そのうちの1つのみが薬物を含有する2つの層からなってもよい。薬物はまた、本発明のコポリマー中へ浸み込ませられてもよい、すなわち、重合の後で導入されてもよい。本発明のコポリマーを使用して薬物送達デバイスを製造するためのこの好ましい方法の説明に役立つ実例は、実施例セクションに提示される。
【0033】
一般に、薬物の治療有効量は、意図される期間所望の治療効果を生み出す量である。適切な継続期間の所望治療効果を生み出すために本発明のコポリマーから製造された薬物送達デバイスへ導入される必要がある薬物の量は、薬物の物理化学特性、薬物の治療効能および達成されるべき治療効果などの幾つかの公知因子に依存する。それはさらに、薬物の作用の意図される場所、例えば、レンズのケースでは全身送達が達成されるべきかどうか、または治療標的が角膜、粘膜、網膜、涙腺などであるかどうかに依存するであろう。典型的には、薬物は、存在する総モノマーの約0.1重量%〜約15重量%の量で本発明のコポリマーの薬物含有層に存在してもよい。薬物放出の速度は、架橋の程度、ポリマー組成、使用されるバリアシステムのタイプおよび薬物ローディングの様式と共に変わるであろう。当業者は、最小の実験のみで所望の結果を達成するためにこれらの因子を変える方法が分かるであろう。薬物送達デバイスが実験動物について試験される前に、薬物放出の特性をインビトロで試験することができる。例えば、ピロカルピン含有レンズからの放出を試験するために、薬物ありおよび不含のレンズを既知量の放出媒体(蒸留水または緩衝生理食塩水)中に入れ、マグネチックスターラーで撹拌することができる。様々な時間で、レンズを新しい媒体に移し、以前の媒体の吸光度を紫外分光法によって測定することができる。薬物入りレンズを含有する媒体の吸光度は、薬物不含レンズを含有する媒体の吸光度によって差し引かれる。吸光度を濃度に関係付ける検量線の使用は、薬物の濃度の測定を可能にする。検量線は、放出媒体中の薬物の既知濃度の吸光度を測定することによって作成される。薬物の濃度(マイクログラム/ml)および放出媒体の容量(ml)は既知であるので、放出された薬物の量(マイクログラム)を計算することができる。媒体への暴露の時間で割られたこの値は、時間に対してプロットされるマイクログラム/時間単位の放出速度を与える。
【0034】
インプラント、経皮パッチ、コンタクトレンズなどのような本発明のコポリマーでできた送達デバイスを用いて送達されてもよい薬物の例には、抗生物質、抗ウィルス薬、ステロイド系および非ステロイド系抗炎症薬、ステロイド、ペプチド、ポリペプチド、強心剤、降圧剤、抗アレルギー性物質、α−およびβ−アドレナリン遮断薬、痛み管理薬、ならびに抗癌剤が挙げられるが、それらに限定されない。薬物をロードしたコンタクトレンズを用いて送達される眼科薬は、抗生物質、抗ウィルス薬、および抗真菌剤を含むが、それらに限定されない抗感染薬;抗アレルギー薬および肥満細胞安定剤;ステロイド系および非ステロイド系抗炎症薬;抗感染薬と抗炎症薬との組み合わせ;うっ血除去薬;アドレナリン作動薬、β−アドレナリン遮断薬、α−アドレナリン作動薬、副交感神経作動薬、コリンエステラーゼ阻害薬、炭酸脱水酵素阻害薬、およびプロスタグランジンを含むが、それらに限定されない抗緑内障薬;抗緑内障薬の組み合わせ;酸化防止剤;栄養剤;非ステロイド系抗炎症薬を含むが、それらに限定されない襄胞黄斑浮腫の治療用の薬物;血管形成阻害薬および栄養剤を含むが、それらに限定されない、ARMDの治療用の薬物;ヘルペス性感染症およびCMV眼感染症の治療用の薬物;代謝拮抗剤および線維素溶解剤を含むが、それらに限定されない増殖性硝子体網膜症治療用の薬物;成長因子を含むが、それらに限定されない、創傷調節剤;代謝拮抗剤;エリプロディルを含むが、それらに限定されない、神経保護薬;ならびにARMD、CNV、網膜症、網膜炎、ブドウ膜炎、黄斑浮腫、および緑内障を含むが、それらに限定されない目の後部セグメントの病気または状態の治療用の血管抑制作用ステロイドを含む。かかる血管抑制作用ステロイドは、参照によりそっくりそのまま本明細書に援用される、米国特許第5,679,666号明細書および同第5,770,592号明細書にさらに十分に開示されている。かかる血管抑制作用ステロイドの好ましいものには、4,9(11)−プレグナジエン−17−α,21−ジオール−3,20−ジオンおよび4,9(11)−プレグナジエン−17−α,21−ジオール−3,20−ジオン−21−アセテートが含まれる。具体的な化合物は、ピロカルピン、イドクスウリジン、カルバコール、ベタニコール、チモロール、テトラサイクリン、エピネフリン、フェニレフリン、エセリン、ホスホリン、デメカリウム、シクロペントレート、ホマトロピン、スコポラミン、ニトログリセリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ペニシリン、エリスロマイシン、スルファセタミド、ポリミキシンB、トブラマイシン、イソフルオロフェート(isofluorophate)、フルオロメタロン(fluoromethalone)、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、フルオロキノロン、メドリゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、βメタゾン、トリアムシノロン、インターフェロン、クロモリン、全トランス−レチノイン酸(ビタミンA)、および無毒の薬学的に許容されるそれらの塩などを包含するが、それらに限定されない。アプラクロニジン(Apraclonidine)、酢酸アネコルテイブ(Anecortave acetate)、ロドキサミド(Lodoxamide)、オロパタジン(Olopatadine)塩酸塩およびシクロスポリン(Cyclosporine)Aなどの薬物もまた具体的には含まれる。眼科潤滑剤のカテゴリーは、自然流涙を誘導することができるか、または人工流涙を生み出すことができるそれらの試剤を意味し、そして例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースポリマー、ポリビニルピロリジノンなどのポリラクタムおよび他の涙誘導物質または代用品を含む。眼科手術または他の眼科手順中に有用であるかもしれない、局所または部位麻酔薬には、リドカイン、コカイン、ベンキシネート、ジブカイン、プロパラカイン、テトラカイン、エチドカイン、プロカイン、ヘキシルカイン、ブピバカイン、メピバカイン、プリロカイン、クロロプロカインなどが含まれる。
【0035】
用語「薬学的に許容される塩」は、親化合物の薬剤学的性質(例えば、毒性、効能など)に有意にまたは悪く影響を及ぼさない親化合物のそれらの塩を意味する。本発明の薬学的に許容される塩には、例えば、塩化物、ヨウ化物、臭化物、塩酸塩、酢酸塩、硝酸塩、ステアリン酸塩、リン酸塩、硫酸塩などが含まれる。
【0036】
典型的には、IOLは、手術移植されるとき、前もって除去されたまたは同時に除去される白内障水晶体と置き換わるようデザインされる。IOLの移植を含む白内障手術は炎症反応をもたらすかもしれない。これらの反応を最小限にするために、本発明のコポリマーから製造されたIOLは、例えば、インドメタシン、ジクロフェナク、デキサメタゾン、またはトリアムシノロンなどの適量の抗炎症薬を含んでもよい。追加の薬物が、後発性の二次線維症および/または新血管形成を防ぐために含められてもよい。
【0037】
側鎖活性アクリルアミノ酸のポリマーは、豊胸手術用の充填材として使用することができる。本ポリマーはまた、任意の種類の軟膏、食品および化粧品添加物、パッチ用の添加物、手術用の充填物などの製造に用いられてもよい。
【0038】
本明細書に記載されるような側鎖活性アクリルアミノ酸および他のタイプのモノマーを含むコポリマーは、コンタクトレンズまたはIOLなどの光学レンズを製造するためにだけでなく、皮膚、組織または体液と接触する製品と特徴付けられる多くの他の製品を製造するためにも使用されてもよい。製品には、すべてのインプラント、血液透析器などの血液処理デバイス、酸素付加器、膜血漿交換モジュール、義歯、クラウン、歯科充填材、カテーテル、チューブ、創傷および火傷ドレッシグなどが含まれる。それらにはまた、バリアデバイス(例えば、コンドーム、手袋、フェイスシールドなど)、おむつ、タンポン、血液バッグおよびチューブ、試験管、注射器、創傷治療スラブ、細胞培養のためのコーティングおよびビーズ、導電性プラスチックおよび衣類の物品(繊維)も含まれる。
【0039】
特に、本発明のコポリマーは、心臓ペースメーカー、頻拍性不整脈コントローラ、心臓弁、人工血管、豊胸インプラント、美容整形および再生手術でのディスクフィラー、整形外科用インプラント、合成骨グラフト、関節潤滑剤、歯科用インプラント、クラウンおよびブリッジ、歯科用フィラーおよびセメント、陰茎および睾丸インプラント、尿失禁用の注入可能医薬品、水頭症短絡、薬物送達インプラント、血液酸素付加器(膜酸素付加器)、血管内酸素付加器、ヘモコンセントレータ、狭窄症用のカテーテル、IVおよびCVCカテーテル、大動脈内バルーンポンプおよび心室補助デバイスなどの心臓補助デバイス、義歯および義歯接着剤、歯科用印象材料、人工腎臓、腎臓用のバルーンカテーテル、泌尿器および消化器アプリケーション、サンプル収集および処理、TDDパッチなどの経皮薬物送達デバイス、創傷治癒クロージャおよび包帯、縫合糸ならびにステープルの製造に好適である。
【0040】
本発明は、例示的であるが限定的でないことを意図される次の実施例によってさらに例示される。
【実施例】
【0041】
実施例1:銅錯体によるアクリルリジンモノマーの合成
14.62g(0.1モル)L−リジン(フルカ(Fluka)62840)を150ml脱イオン水に溶解させ、約80℃に加熱した。16.6g(0.075モル)炭酸銅(フルカ61167)を約30分の間に少しずつ加えた。反応混合物をその後閉鎖システムで加熱し、約30分の間ずっと撹拌した。熱い濃青色懸濁液を、シリカゲルを通して濾過した。フィルターを少量の水で洗浄した。次の日に、リジン−銅錯体含有濾液を氷浴中で冷却し、100mlテトラヒドロフランを加えた。塩化アクリル(8.9ml;0.11モル;フルカ01780)を、約1時間の間に滴々加えた。pHを最初は、10%水酸化ナトリウムの平行滴加によって8〜10に維持した。塩化アクリル溶液の約半分を加えた後、生成物が沈澱し始めた。塩化アクリルのほとんどを加えたとき、塩基添加を遅くしてpHを約6に低下させ、反応混合物の温度を室温に達するようにした。青色懸濁液を追加の2時間の間ずっと撹拌し、次に濾過した。フィルターに保持された固体物質を水およびアセトンで洗浄し、次に乾燥させた。6.5gのアクリルリジン銅錯体の収量が観察された。
【0042】
29.5gのアクリルリジン銅錯体を300ml脱イオン水に懸濁させ、氷浴で冷却した。HSを、硫化銅沈澱が完了するまで懸濁液にバブリングさせた。3g活性炭を懸濁液に加えた。懸濁液を100℃に短く加熱した。室温に冷却した後、500mlアセトンを懸濁液に加え、それを次にシリカゲル上で濾過した。無色透明な濾液をロータリーエバポレーターに入れた。溶媒の蒸発後に、固体生成物を200mlの50%水性アセトンから再結晶した。17.76g(69.76%)の白色粉末の収量が観察された。化合物の構造はNMRおよびLC−MS分光法によって同定した。
【0043】
実施例2:アクリルセリン、アクリルスレオニン、アクリルチロシン、アクリルオキシプロリンおよびアクリルシステインの合成
これらの化合物の合成は、実施例1に記載されたように行った。アクリルシステインについては、出発原料はシスチンであった。
【0044】
実施例3:Fmoc−アクリル−リジンの合成
10gのアクリル−リジンを、水中の炭酸ナトリウムの10%(重量/容量)溶液の106mlに溶解させ、100mlジオキサンで希釈した。50mlジオキサンに溶解させた14gのFmoc−クロリドを、15〜25℃で30分間にわたって反応混合物に加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌し、次に10%水性HClの添加でpH2に調整した。酢酸エチルでの抽出後に、有機相を蒸発乾固した。21.4gの生じた透明の黄色がかったオイルを200gシリカゲル上に置き、酢酸エチルで洗浄した。生成物を、3:1(容量/容量)酢酸エチル/メタノールでシリカゲルから抽出した。溶媒の蒸発後に、白色粉末(50%収率に等しい10.4g)を得た。本化合物の構造はNMRによって検証した。
【0045】
実施例4:Fmoc−アクリルセリン、Fmoc−アクリルスレオニン、Fmoc−アクリルチロシン、Fmoc−アクリルオキシプロリンおよびFmoc−システインの合成
これらの化合物の合成は、実施例3に記載されたように行った。
【0046】
実施例5:α−アミノ−保護および非保護アミノ酸のメタクリル誘導体の合成
メタクリル誘導体の合成は、実施例1〜4に記載された条件下に塩化メタクリルを使用して行った。
【0047】
実施例6:本発明のコポリマーおよび先行技術ポリマーの生体適合性
本発明の非生分解性ポリマーおよびコポリマーは、意外なほど高い生体適合性(または親生物性)を有する。これは、表1にリストされた、異なるポリマーのスラブでのヒト胚組織からの初代線維芽細胞の増殖の比較分析から明らかであった。
【0048】
【表1】

【0049】
ポリカーボネート・ペトリ皿(直径2cm)への挿入のための円形ポリマースラブを次の通り製造した。2mmスペーサーで分離された5cm長方形ガラス板のペアに、表1にリストされる比の超高純度(>99.9%)モノマーまたはモノマー混合物を満たした。すべての組成物が0.5重量%エチレングリコールジメタクリレートおよび0.5重量%アゾビスイソブチロニトリルを含有した。重合のために、満たされたおよびシールされたガラスチャンバーを40℃で5時間加熱し、90℃で6時間ポスト硬化させた。重合したスラブをガラス板から取り出し、Fmoc脱保護を達成するために100mlジメチルホルムアミド/ピペリジン(80重量%/20重量%)中室温で6時間インキュベートし、3時間50mlジメチルホルムアミドで3回リンスし、最後に100mlリン酸緩衝生理食塩水(50mMリン酸ナトリウム、0.8%NaCl、pH7.2)で3回インキュベートした。円形スラブ(直径1.9cm)を長方形スラブからカットし、2cmペトリ皿に入れた。皿を120℃で20分間オートクレーブ処理した。滅菌皿に、2.2g/l炭酸水素ナトリウムで緩衝され、そして5%ウシ胎仔血清、10%熱不活性化した馬血清、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンで補われた2mlのダルベッコ(Dulbecco)の変性イーグル(Eagle)培地を加えた。ヒト胚組織(スイス国バーゼル大学(University of Basel,Switzerland)の病院から入手した)からの初代線維芽細胞を5%細胞密集度に接種した後、皿を37℃でおよび5%CO下に培養した。培地を24時間毎に変えた。ペトリ皿のコラーゲン・コーティングを、豚コラーゲンの10重量%水溶液の2mlをペトリ皿に加え、そして皿を室温で30分間培養することによって行った。パーセント細胞密集度は、実験期間の終わりに撮った、異なる培養物の写真の分析から測定した。
【0050】
実施例7:豊胸手術のためのバイオポリマー
79.5重量%脱ガス水中の10重量%リジニル−アクリレート、10重量%セリニル−アクリレートおよび0.5重量%アゾビスイソブチロニトリル開始剤の混合物を調製した。重合は60℃で7日間起こった。その後5部のイソプロパノールを1部の重合混合物に加え、沈澱したポリマーを単離した。ポリマーを生理食塩水に溶解させた(1.5重量/重量)。生じたゲルは、豊胸手術のために使用される詰袋用に使用することができる。同じタイプの純アミノ酸ベースのバイオポリマーは、食品、化粧品および薬物軟膏用の増粘剤、食品添加物、パッチ用添加物ならびに美容整形手術用の充填物の製造に使用することができる。
【0051】
実施例8:リジンアミジルメタクリレート含有コポリマーを使用する人工椎間板および代用血管の製造
80重量%メチルメタクリレート、19重量%Fmoc−L−リジンアミジルメタクリレート、0.5重量%エチレングリコールジアクリレートおよび0.5重量%アゾビスイソブチロニトリルの混合物を、人工椎間板または人工血管(チューブ)のためのポリプロピレン・型へ注ぎ込んだ。重合を達成するために、型を24時間の期間にわたって20℃から100℃に徐々に加熱した。脱保護のために、ポリマーを実施例6に記載されたように処理した。混合ポリマー中の含水率は、リン酸緩衝生理食塩水中に浸漬した後の増量から測定されるように80重量%であった。ポリマー混合物の組成は、ニンヒドリン法を用いてアミノ酸残基を着色させることによって定量的に測定した。その結果は、18重量%±2重量%L−リジンアミジル−メタクリレートがメチルメタクリレートと共重合したことを示した。
【0052】
実施例9:セリニルメタクリレート含有コポリマーを使用する人工椎間板および代用血管の製造
Fmoc−L−リジンアミジル−メタクリレートをFmoc−L−セリニル−メタクリレートと取り替えた以外は、実施例8の手順に従った。
【0053】
実施例10:三度皮膚火傷用の創傷治癒スラブ
5重量%アクリルアミド、3重量%2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2重量%L−セリニルアクリレートおよび0.5重量%エチレンジアミン−ビスアクリルアミドの混合物を水に溶解させ、5×10×0.3cmスラブを得るためにポリプロピレン・型中0.01重量%ペルオキソ二硫酸ナトリウムで重合させた。必要に応じて、生じたスラブは、実施例23に記載されるように薬物(創傷治療促進薬、抗感染薬、痛み管理薬、抗炎症薬またはそれらの組み合わせ)をロードすることができる。
【0054】
実施例11:手術糸および布用の紡糸可能な繊維
94重量%アクリロニトリル(ACN)、5重量%Fmoc−L−リジニル−メタクリレートおよび1重量%2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィン−オキシドの混合物を、重合の開始剤として青色光を用いて共重合させた。脱保護を実施例6に記載されたように達成した。ジメチルホルムアミド含有反応混合物を10部の水で希釈した後、沈澱ポリマーを乾燥させ、そして繊維を紡糸するために直ちに使用することができる。かかる繊維は、乾燥ポリマーの20重量%に相当する量まで水を帯び、用いられる製織方法に依存する水分交換特性の羊毛−または絹−様布をもたらすであろう。
【0055】
実施例12〜17は眼内レンズ(IOL)の製造に関する。
【0056】
実施例12
2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびL−リジンアミジルアクリレートのコポリマーから製造されたオプティックと、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、L−リジンアミジルアクリレートおよびメチルメタクリレートのコポリマーから製造されたハプティックとからなる複合IOLを次の手順で製造した。
【0057】
45重量%2−ヒドロキシエチルメタクリレート、45重量%メチルメタクリレート、9重量%Fmoc−L−リジンアミジルアクリレート、0.5重量%エチレングリコールジメタクリレートおよび0.5重量%アゾビスイソブチロニトリルを混合し、シールされた15×15mm射出成形ポリプロピレン円筒形型へ注ぎ込んだ。型を48時間の期間にわたって20℃から100℃に徐々に加熱した。生じたコポリマーを型から取り出し、6mm穴を各ポリマーシリンダーへ13mmの深さにドリルで開けた。シリンダーを型に入れ戻し、90重量%2−ヒドロキシエチルメタクリレート、9重量%Fmoc−L−リジンマイジルアクリレート、0.5重量%エチレングリコールジメタクリレートおよび0.5重量%アゾビスイソブチロニトリルの混合物を穴へ満たし、型を36時間の期間にわたって80℃に徐々に加熱した。
【0058】
シリンダーを型から取り出し、トップ、ボトムおよびエッジを旋盤にかけて1mm厚さボトムを形成した。IOLを実施例6に記載されたように脱保護のために処理し、柔軟でフレキシブルなオプティックと堅いが依然として親水性のハプティックとのレンズを製造した。
【0059】
実施例13
Fmoc−L−セリニルメタクリレートをFmoc−L−リジンアミジルアクリレートの代わりに使用した以外は、実施例12に記載されたIOLの製造手順に従った。
【0060】
実施例14
Fmoc−L−スレオニニルアクリレートをFmoc−L−リジンアミジルアクリレートの代わりに使用した以外は、実施例12に記載されたIOLの製造手順に従った。
【0061】
実施例15
コポリマーを、60重量%2−フェニルエチルアクリレート、25重量%2−フェニルエチルメタクリレート、10重量%Fmoc−チロシニルメタクリレート、3.5重量%1,4−ブタンジオールジアクリレート、1.5重量%2−(3’−メタリル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールおよび1.7重量%熱開始剤ジ−(第三ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートを混合することによって製造した。混合物を、IOLの形状のシールされたポリプロピレン・型へ注ぎ込み、12時間の期間にわたって100℃に徐々に加熱した。IOLを、実施例6に記載されたように脱保護のために処理した。
【0062】
実施例16
Fmoc−チロシニルメタクリレートをFmoc−チロシルアクリレートと取り替えた以外は、実施例15の手順に従った。
【0063】
実施例17
Fmoc−チロシニルメタクリレートをFmoc−システイニルメタクリレートと取り替えた以外は、実施例15の手順に従った。
【0064】
実施例18および19はコンタクトレンズの製造に関する。
【0065】
実施例18:ハードコンタクトレンズ
80重量%メチルメタクリレート、19重量%Fmoc−L−リジンアミジルアクリレート、0.5重量%エチレングリコールジアクリレートおよび0.5重量%アゾビスイソブチロニトリルの混合物を、以前の実施例に記載されたように徐々の加熱下にコンタクトレンズ製造のために型中で重合させた。脱保護および再びリン酸緩衝生理食塩水平衡後に、ハードコンタクトレンズは75〜80%水を含有した。
【0066】
実施例19:ソフトコンタクトレンズ
85重量%2−ヒドロキシエチルメタクリレート、14重量%Fmoc−セリニルアクリレート(SA)、0.5重量%エチレングリコールジアクリレートおよび0.5重量%アゾビスイソブチロニトリルを、以前の実施例に記載されたように徐々の加熱下にコンタクトレンズ製造のために型中で重合させた。脱保護および再びリン酸緩衝生理食塩水平衡は実施例18での通りであった。
【0067】
実施例20および21は、局所、経皮、および経角膜および全身薬物送達システム(接眼薬物送達システムまたはODDS)の製造に、ならびに薬剤物質でのこれらのデバイスのローディング方法に関する。ODDSを用いる送達のために一般に有用な薬物には、抗緑内障薬、例えば、β−遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、プロスタグランジン、非ステロイド系およびステロイド系抗炎症薬、麻酔薬、痛み管理薬、抗癌剤、流涙誘発剤および抗感染薬が含まれる。
【0068】
実施例20:疎水性薬物用のODDS
コポリマーを、60重量%2−フェニルエチルアクリレート、30重量%2−フェニルエチルメタクリレート、5重量%Fmoc−L−リジンアミジルアクリレート、3.5重量%1,4−ブタンジオールジアクリレートおよび1.5重量%熱開始剤ジ−(第三ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートを混合することによって製造した。混合物を、実施例15に記載されたようにODDS製造(光学的または非光学的な)のためにポリプロピレン・型中で重合させた。
【0069】
実施例21:親水性薬物用のODDS
80重量%2−ヒドロキシエチルメタクリレート、19重量%Fmoc−L−リジンアミジルアクリレート、0.5重量%エチレングリコールジアクリレートおよび0.5重量%アゾビスイソブチロニトリルを、実施例12に記載されたようにODDS(光学的または非光学的な)製造のために型中で重合させた。
【0070】
実施例22:例えば、年齢関連黄斑変性症(AMD)またはポスト白内障手術炎症の治療のための、疎水性薬物でのODDSのローディング
実施例20に記載されたODDS(光学的または非光学的な)を、5mg/mlトリアムシノロン(Triamcinolone)を含有するジメチルホルムアミド中に室温で8時間浸漬した。その後、レンズを24時間生理食塩水中で平衡させた。各レンズは0.5mgの該薬物を含有した。酢酸アネコルテイブまたは他の疎水性ステロイドを、トリアムシノロンの代わりに、同じ薬物ローディング手順を用いてレンズに組み入れることができる。
【0071】
実施例23:例えば、眼の炎症一般のおよび白内障手術の後で起こる炎症の治療のための、親水性薬物でのODDSのローディング
実施例21に記載されたODDS(光学的または非光学的な)を、20mg/mlデキサメタゾンを含有するジメチルホルムアミド中に室温で8時間浸漬した。その後、レンズを24時間20mg/mlデキサメタゾンを含有する生理食塩水中で平衡させた。各レンズは2mgの該薬物を含有した。
【0072】
実施例12〜17に記載されたIOLはまた、ODDSとしての機能を果たすことができ、実施例22および23に記載された手順に従って薬物をロードすることができる。例えば、実施例12〜17に説明されたように製造されたIOLは、白内障手術の後で典型的に起こる炎症を減らすかまたは防ぐためのステロイド系または非ステロイド系抗炎症薬をロードすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(式中、
Xは−NH(CH−、−O−C−CH−、−OCH−、−O−CH(CH)−、−S−CH−、−O−プロリンであり、RはHまたはCHである)
の1つ以上の重合性モノマーを含む高生体適合性ポリマーであって、フリーラジカル開始剤および、任意に、複数の重合性エチレン性不飽和基を有する架橋剤をさらに含むポリマー。
【請求項2】
光増感剤、紫外線−吸収化合物および青色光−吸収化合物からなる群から選択された1つ以上の成分をさらに含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含有する、1つ以上の重合性主要モノマーと、式
【化2】

(式中、Xは−NH(CH−、−O−C−CH−、−OCH−、−O−CH(CH)−、−S−CH−、−O−プロリンであり、そしてRはHまたはCHである)の1つ以上の共主要モノマーとを含む高生体適合性コポリマーであって、フリーラジカル開始剤および、任意に、複数の重合性エチレン性不飽和基を有する架橋剤をさらに含むコポリマー。
【請求項4】
光増感剤、紫外線−吸収化合物および青色光−吸収化合物からなる群から選択された1つ以上の成分をさらに含む、請求項3に記載のポリマー。
【請求項5】
前記主要モノマーがα,β−不飽和カルボン酸の、ヒドロキシアルキルエステルもしくはN−置換または未置換のいずれかのアミド、N−ビニルラクタムまたは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である親水性モノマーである、請求項3に記載のコポリマー。
【請求項6】
前記主要モノマーがアルキル、シクロアルキルもしくはアリールアクリレートもしくはメタクリレート、モノ−またはジ置換イタコネート、スチレンもしくはスチレン誘導体、アクリロニトリル、ビニルエステル、ビニルエーテル、アリルエステル、またはフッ素もしくはケイ素含有アクリレートもしくはメタクリレートである疎水性モノマーである、請求項3に記載のコポリマー。
【請求項7】
前記主要モノマーがヒドロキシエチルメタクリレートおよびメチルメタクリレート、ビニルピロリドンおよびヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルピロリドンおよびメチルメタクリレート、グリセリルメタクリレートおよびメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよびヒドロキシアルキルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよび2〜6個の炭素原子を有するアルキル基のアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよびビニルヒドロキシアセテート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよびビニルヒドロキシプロピオネート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよびビニルヒドロキシブチレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよびN−ビニルラクタム、すなわちN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムおよびN−ビニルピペリドン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドならびに0〜2個の炭素原子を有するアルキル基のN,N−ジアルキルアミノエチルメタクリレートおよびアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよび2〜4個の炭素原子を有するアルキル基のヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよび1−ビニルオキシ−2−ヒドロキシエチレン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよび1−ビニルオキシ−5−ヒドロキシ−3−オキサペンタン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよび1−ビニルオキシ−8−ヒドロキシ−3,6−ジオキサオクタン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよび1−ビニルオキシ−14−ヒドロキシ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよびN−ビニルモルホリン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよび0〜2個の炭素原子を有するアルキル基のN,N−ジアルキルアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよび1〜2個の炭素原子を有するアルキル基のアルキルビニルケトン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよびN−ビニルスクシンイミドまたはN−ビニルグルタルイミド、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよびN−ビニルイミダゾール、ならびにヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドおよびN−ビニル−3−モルホリノンからなる群から選択された、ハイドロゲルを形成することができる2つのモノマーの組み合わせである、請求項3に記載のコポリマー。
【請求項8】
前記主要モノマーが式
【化3】

(式中、
XはHまたはCHであり、mは0〜10であり、Yは不存在、O、S、またはNR(ここで、RはH、CH、C2n+1(n=1〜10)、イソ−OC、C、もしくはCHである)であり、Arは、未置換かまたはH、CH、C、n−C、イソ−C、OCH、C11、Cl、Br、CもしくはCHで置換されていることができる、ベンゼンなどの、任意の芳香環である)
の化合物である、請求項3に記載のコポリマー。
【請求項9】
光増感剤、紫外線−吸収化合物および青色光−吸収化合物からなる群から選択された1つ以上の化合物をさらに含む、請求項8に記載のポリマー。
【請求項10】
前記主要モノマーが2−エチルフェノキシアクリレート、2−エチルフェノキシメタクリレート、2−エチルチオフェニルアクリレート、2−エチルチオフェニルメタクリレート、2−エチルアミノフェニルアクリレート、2−エチルアミノフェニルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルアクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、3−プロピルフェノキシアクリレート、3−プロピルフェノキシメタクリレート、4−ブチルフェノキシアクリレート、4−ブチルフェノキシメタクリレート、4−フェニルブチルアクリレート、4−フェニルブチルメタクリレート、4−メチルフェニルアクリレート、4−メチルフェニルメタクリレート、4−メチルベンジルアクリレート、4−メチルベンジルメタクリレート、2−2−メチルフェニルエチルアクリレート、2−2−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−(3−メチルフェニル)エチルアクリレート、2−(3−メチルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メチルフェニル)エチルアクリレート、2−(4−メチルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルアクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルアクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルアクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルアクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルアクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルアクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルアクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−フェニルフェニル)エチルアクリレート、2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ベンジルフェニル)エチルアクリレート、および2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレートからなる群から選択される、請求項8に記載のコポリマー。
【請求項11】
前記主要モノマーが2−フェニルエチル−アクリレートおよび2−フェニルエチル−メタクリレートである、請求項8に記載のコポリマー。
【請求項12】
第1主要モノマーが、そのホモポリマーが少なくとも1.50の屈折率を有するモノマーであり、そして第2主要モノマーが、そのホモポリマーが30℃未満のガラス転移温度を有するモノマーである、請求項3に記載のコポリマー。
【請求項13】
光増感剤、紫外線−吸収化合物および青色光−吸収化合物からなる群から選択された1つ以上の成分をさらに含む、請求項12に記載のポリマー。
【請求項14】
前記第1主要モノマーがスチレン、ビニルカルバゾール、ビニルナフタレン、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、ナフチルアクリレート、ペンタブロモフェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、および2,3−ジブロモプロピルアクリレートからなる群から選択され、そして第2主要モノマーがn−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2,3−ジブロモプロピルアクリレート、n−1、および1−ジヒドロパーフルオロブチルアクリレートからなる群から選択される、請求項12に記載のコポリマー。
【請求項15】
親水性モノマーである第3主要モノマーをさらに含む、請求項12に記載のコポリマー。
【請求項16】
前記第3主要モノマーがN−ビニルピロリドン;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、または2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレート;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、またはN−ブチルアクリルアミドなどのN−アルキルアクリルアミド;アクリル酸;およびメタクリル酸からなる群から選択される、請求項15に記載のコポリマー。
【請求項17】
第1主要モノマーが式
【化4】

(式中、
XはHまたはCHであり、mは0〜10であり、Yは不存在、O、S、またはNR(ここで、RはH、CH、C2n+1(n=1〜10)、イソ−OC、C、もしくはCHである)であり、Arは、未置換かまたはH、CH、C、n−C、イソ−C、OCH、C11、Cl、Br、CもしくはCHで置換されていることができる、ベンゼンなどの、任意の芳香環である)
の化合物であり、そして第2主要モノマーが親水性モノマーである、請求項3に記載のコポリマー。
【請求項18】
光増感剤、紫外線−吸収化合物および青色光−吸収化合物からなる群から選択された1つ以上の成分をさらに含む、請求項17に記載のポリマー。
【請求項19】
前記第2主要モノマーが2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−N−エチルアクリレートピロリドン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、2−N−ビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド:200モノメチルエーテル・モノメタクリレート、ポリエチレンオキシド:200モノメタクリレート、およびポリエチレンオキシド:1000ジメタクリレートからなる群から選択される、請求項17に記載のコポリマー。
【請求項20】
治療有効量での請求項1もしくは2のポリマーまたは請求項3〜19のいずれか一項に記載のコポリマーおよび薬物を含む薬物の局所、全身、経皮または経角膜投与のための薬物送達デバイス。
【請求項21】
請求項7に記載の生体適合性ハイドロゲルコポリマーから製造されたソフトコンタクトレンズ。
【請求項22】
オプティック部分およびハプティック部分からなる複合生体適合性ハイドロゲル眼内レンズであって、オプティックおよびハプティック部分の両方が請求項7に記載のコポリマーを含み、そしてハプティック部分のコポリマーがその水和形態でオプティック部分のコポリマーより低い含水率を有するレンズ。
【請求項23】
請求項8〜11のいずれか一項に記載のコポリマーを含む折り畳み式の生体適合性眼内レンズ。
【請求項24】
請求項12〜16のいずれか一項に記載のコポリマーを含む柔軟な生体適合性コンタクトレンズ。
【請求項25】
請求項12〜16のいずれか一項に記載のコポリマーを含む柔軟で折り畳み式の生体適合性眼内レンズ。
【請求項26】
オプティック部分およびハプティック部分からなる複合の柔軟で折り畳み式の生体適合性眼内レンズであって、オプティック部分が請求項12〜16のいずれか一項に記載のコポリマーを含むレンズ。
【請求項27】
請求項17〜19のいずれか一項に記載のコポリマーを含む柔軟で折り畳み式の生体適合性眼内レンズ。
【請求項28】
オプティック部分およびハプティック部分からなる複合の柔軟で折り畳み式の生体適合性眼内レンズであって、オプティック部分が請求項17〜19のいずれか一項に記載のコポリマーを含むレンズ。
【請求項29】
請求項17〜19のいずれか一項に記載のコポリマーを含む柔軟な生体適合性コンタクトレンズ。
【請求項30】
治療有効量の薬物をさらに含む、請求項21〜29のいずれか一項に記載の眼内レンズまたはコンタクトレンズ。
【請求項31】
請求項1または2に記載のポリマーを含んでなるインプラント、手術用の充填物、任意の種類の軟膏、食品および化粧品添加物。
【請求項32】
請求項1もしくは2のポリマーまたは請求項3〜19のいずれか一項に記載のコポリマーを含んでなるインプラント、血液処理デバイス、義歯、クラウン、歯科充填材、人工骨、カテーテル、チューブ、創傷および火傷ドレッシグ、コンドーム、手袋、フェイスシールド、おむつ、タンポン、血液バッグ、試験管、注射器、導電性プラスチックおよび衣類用の物品(繊維)などの医療デバイスおよびバリアデバイス。

【公表番号】特表2008−545832(P2008−545832A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512950(P2008−512950)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001722
【国際公開番号】WO2006/126095
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(507389761)ヒェーミシェス・インスティトゥート・シェーファー・アクチェンゲゼルシャフト (4)
【氏名又は名称原語表記】CHEMISCHES INSTITUT SCHAEFER AG
【Fターム(参考)】