説明

生体適合性ポリマー組成物

本発明は、親水性セグメント及び疎水性セグメント(疎水性セグメントは少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を有し、セグメントの少なくとも5%は2つ以上のエチレン性不飽和官能基を有する)及び水を含む、生体適合性プレポリマーを提供する。本発明はさらに、親水性プレポリマー及び疎水性プレポリマー(少なくとも1つの疎水性プレポリマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を有し、プレポリマーの少なくとも5%は2つ以上のエチレン性不飽和官能基を有する)及び水、を含む生体適合性プレポリマー組成物を提供する。本発明はさらに、本発明のプレポリマー又はプレポリマー組成物の、代用骨又は足場としての組織工学及び創傷の治療などの生物医学的用途における使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性のプレポリマー及びプレポリマー組成物に関する。プレポリマー及びプレポリマー組成物は、細胞及び増殖因子などの生物学的要素の存在下で架橋ポリマーネットワークを形成して硬化でき、細胞送達及び組織工学、薬物送達、創傷治癒における生体接着及び足場、神経の治療のための代用骨又は足場、歯科及び歯周用途のセメント並びに抗接着又は保護用のバリアなどの生物医学的適用に使用できる。
【背景技術】
【0002】
組織工学用製品及び組織工学による治療の開発における主な障害は、細胞送達のプラットフォームとして機能でき、細胞増殖のための三次元的足場を形成し、組織再生過程において機械的支持を提供する、適切な基材の不足である。このようなポリマー系は、体内の損傷した組織を修復するための、細胞の関節鏡視下送達において有用であり得る。これらの細胞送達系は、組織工学分野の最大の可能性を探求でき、体がその損傷した組織及び器官を修復することを支援できる。足場作製用の適切なポリマーの設計及び開発における多くの最新の進歩にもかかわらず、既存のポリマー系は、細胞送達に関して要求される基準に達していない。
【0003】
このようなポリマー系が細胞送達にとって有用であるならば、いくつかの基準を達成しなければならない。硬化の前後において非細胞毒性でなければならず、体内で炎症反応を誘発してはならない。重合を開始し、ポリマーネットワークを形成するための方法は、細胞及び使用した他の要素に対して寛容であるべきである。形成されたポリマーネットワークは、細胞−ポリマーの相互作用を容易にし、細胞に栄養を輸送するために十分な多孔性を有し、余分な細胞基質の成長に十分な空間もまた提供可能であるべきである。再生される組織型に応じて様々な機械的特性を有するように適合させられるポリマー系は、様々な型の生物組織の再生に利点を有するであろう。例えば、高弾性率素材に調整された系は、整形外科用途に有用であると思われる。さらに、ポリマー/細胞の混合物の粘度は、注射器又は関節鏡視下法を使用して送達可能であるべきである。これは、骨折した骨、損傷した膝関節軟骨、又は他の生体組織及び器官などの、損傷した生体組織の修復のための治療に使用する、低侵襲外科技術の使用において実質的な利点を提供する。
【0004】
アルギネート、フィブリン、アガロース、コラーゲン、メチルセルロース、ヒアルロン酸、及びペプチドベースのヒドロゲルなどの天然ポリマーを、細胞送達系として研究し、いくつかは良い結果を得た。主にこのようなポリマーの多量の水を保持する能力及びそれらの優れた生体適合性により、細胞はそれらの系において生存できる。したがって、天然ポリマーに基づいた製剤が、主に細胞をカプセル化した製品として開発されている。これらのポリマーからのゲルの形成は、いくつかのポリマーの熱可逆性の調査又はいくつかの例において、ゲルに転換させるためのイオン強度の使用により、達成される。天然ポリマー及びいくつかの合成ポリマーのこれらの特性を、細胞のカプセル化系として調査した。
【0005】
架橋可能な官能基を導入するための化学修飾もまた研究されている。このようなポリマー系の主な欠点は、架橋ヒドロゲルは機械的強度が非常に低いことである。これらの系は、細胞のカプセル化系としては有用であるが、一方、組織工学用の製品及び治療法におけるそれらの有用性は、特にゲルに高い機械的強度が要求される場合には限られている。
【0006】
同様に、合成ポリマーが、細胞のカプセル化/送達用のヒドロゲルの調製のために調査されている。末端がアクリレートで官能化されたポリ(エチレン)グリコールなどの親水性ポリマーが、細胞のカプセル化のために研究されている。架橋によって形成されたゲルは、一般的に機械的には非常に弱く、天然ポリマーに基づくゲルと、それほど変わらない。合成ポリマーは、適切な機械的強度を有する系の開発のための最良の選択肢を提供できるが、現在報告されている合成ポリマー系は、適切な機械的特性を提供しておらず、また細胞の生存能力に作用せずに細胞を取り込む能力も有してはいない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
軟骨及び骨などの荷重に耐える組織の修復及び再生は、組織の再生が完了するための長期間にわたって十分な機械的強度を有する、細胞送達ポリマー系を必要とする。理想的には、機械的強度は、修復又は再生される組織型の機械的強度に匹敵するべきである。機械的に劣ったゲルは、このような組織が受ける、圧縮力、ねじり力又は張力により、問題のある部位が修復されるよりかなり前に崩壊する可能性が高い。天然ポリマー及び合成ポリマーに基づくゲルは、一般にこのような状況において十分な機械的支持を提供しない。したがって、修復/再生される組織型に応じた、十分な機械的強度を有するように適合できる、細胞送達ポリマー系の必要性がある。ゲルが、ポリマーの架橋前後に細胞に好ましい環境を維持することもまた必要である。理想的には、ポリマーは、ひとたび損傷が修復されれば分解し、分解産物が完全に体内に放出されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、細胞及び増殖因子などの生物学的要素に適応でき、問題のある部位へのプレポリマーの送達を可能にする十分に長い期間にわたって細胞が生存能力を維持できる環境を提供する生体適合性プレポリマーに関する。プレポリマーは、注射又は関節鏡視下型の方法を使用した送達に適しており、細胞又は組成物中に存在する他の要素を害することなく、放射線又は他の方法により架橋できる。本発明はさらに、生体適合性を維持し、細胞に適切な機械的強度を提供し、遊走、増殖及び生物学的組織構造を再構築する、硬化ポリマーの最終製品にも関する。
【0009】
本発明によれば、親水性セグメントと疎水性セグメント及び水を含み、疎水性セグメントは少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を有し、セグメントの少なくとも5%は2つ以上のエチレン性不飽和官能基を有する、生体適合性プレポリマーが提供される。
【0010】
さらに、親水性プレポリマーと疎水性プレポリマー及び水を含み、疎水性プレポリマーの少なくとも1つは、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を有し、プレポリマーの少なくとも5%は2つ以上のエチレン性不飽和官能基を有する、生体適合性プレポリマー組成物が提供される。
【0011】
さらに本発明によれば、親水性プレポリマーと疎水性プレポリマー及び水の反応生成物であり、少なくとも1つの疎水性プレポリマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を有し、プレポリマーの少なくとも5%は2つ以上のエチレン性不飽和官能基を有する、生体適合性ポリマー組成物が提供される。
【0012】
「エチレン性不飽和官能基」という用語は、アクリレート、メタクリレート、遊離ラジカル重合が可能なアリル基などの、2つの炭素原子により結合した二重又は三重結合を含む官能基を指す。
【0013】
疎水性プレポリマーのいくつかは、新規であり、本発明の別の態様を形成する。それ故、本発明は、α−ヒドロキシ酸のペンダント型に由来し、コア分子に化学的に結合している繰り返し単位を含む、複数の置換基を含む疎水性(コ)ポリオールを更に提供する。
【0014】
好ましい実施形態において、疎水性(コ)ポリオールは、コア分子とヒドロキシ酸との重合によって調製される。
【0015】
プレポリマーは、水と混合した場合に、可溶性、混和性であるか、或いは乳剤又はペーストを形成する。プレポリマーは生体適合性であるので、細胞、増殖因子及び他の生物学的要素又は非生物学的要素、並びに栄養を細胞に提供し、生存能力を維持し増殖し、組織を成長させ、細胞外基質と結びつくための、適切な細胞培養培地と組み合わせることができる。細胞は、プレポリマー中でそれらの生存能力を維持し、プレポリマーを架橋ポリマーネットワークに転換させるために用いた硬化過程に伴う化学的及び物理的変化により害を受けない。少なくとも1種の開始剤をプレポリマー又はプレポリマー組成物に添加し、重合を開始させ、プレポリマーを架橋ネットワークに転換できる。
【0016】
本発明は、上で定義したプレポリマー又はプレポリマー組成物と、少なくとも1種の開始剤との反応生成物を含む硬化生体適合性ポリマーを、さらに提供する。
【0017】
本発明は、上で定義したプレポリマー又はプレポリマー組成物と、少なくとも1種の開始剤との反応生成物を含む生体適合性の足場を、さらにその上提供する。
【0018】
創傷の治療並びに骨、軟骨及び神経の修復などの組織工学用途のための生体適合性の足場としての、上で定義したプレポリマー又はプレポリマー組成物と、少なくとも1種の開始剤との使用をさらに提供する。
【0019】
上で定義した硬化生体適合性ポリマーからエクスビボで調製した足場を移植するステップ、又は
上で定義したプレポリマー又はプレポリマー組成物と、少なくとも1種の開始剤とを、インビボでの硬化及び足場の調製のために、未硬化の形態で注射するステップ
のいずれかを含む、治療を必要とする対象において創傷及び損傷した骨、軟骨又は神経を治療する方法をさらに提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、親水性セグメントと疎水性セグメント及びエチレン性不飽和官能基を有する生体適合性プレポリマー並びに少なくとも1つの親水性プレポリマーと、少なくとも1つの疎水性プレポリマーとを含む生体適合性プレポリマー組成物に関する。プレポリマー及びプレポリマー組成物は、水と混合した場合に、水混和性、可溶性であるか、又は乳剤を形成する。
【0021】
本発明は、プレポリマー又はプレポリマー組成物を少なくとも1種の開始剤と反応させ、架橋ネットワークを形成させるステップによって調製される組織工学用途の足場として使用できる、硬化生体適合性ポリマーにさらに関する。
【0022】
「生体適合性」という用語は、組織適合性を含み、生きている動物又はヒトの細胞及び/又は体液と接触させた場合の適合性を指す。
【0023】
疎水性/親水性プレポリマー
「プレポリマー」という用語は、硬化段階の、これから硬化するポリマーを指す。
【0024】
「疎水性プレポリマー」という用語は、プレポリマーを水に不溶性又は非混和性にする、及びそれ自体では水と乳剤を形成できない、セグメント/官能基を有するプレポリマーを指す。
【0025】
「親水性プレポリマー」という用語は、プレポリマーを、水と混合した場合に水溶性、水混和性にできる、或いは乳剤又はペーストを形成可能にする、セグメント/官能基を有するプレポリマーを指す。
【0026】
疎水性プレポリマーは、疎水性ポリオールに由来するセグメントを含むことが好ましく、スターポリマー又は樹枝状ポリマーのように規則的に分岐していても、或いは高分岐ポリマーのように不規則に分岐していてもよい。疎水性プレポリマーは、少なくとも2つのエチレン性不飽和官能基と、ヒドロキシル、チオール、アミン又はカルボキシルなどの少なくとも1つの他の官能基を、親水性プレポリマーのイソシアネート基との反応のために有することが好ましい。
【0027】
親水性プレポリマーは、親水性線状ポリオールとジイソシアネートとから、疎水性プレポリマーとの反応のために、プレポリマーが少なくとも1つのイソシアネート官能基を有するように調製されることが好ましい。プレポリマー中の親水性セグメントと疎水性セグメントとの相対的比率は、プレポリマーが、水と混合した場合に可溶性、混和性である、或いは乳剤又はペーストを形成するように選択される。
【0028】
所望であれば、親水性プレポリマー及び疎水性プレポリマーは、親水性及び疎水性の種類を逆転させて処方することもできる。例えば、スター/樹枝状/高分岐のプレポリマーは親水性ポリオールを使用して調製でき、ウレタンベースの線状プレポリマーは疎水性ポリオールを使用して調製できる。
【0029】
「ポリオール」という用語は、イソシアネート基と反応し、ウレタン基を形成できる、少なくとも2つ以上の官能ヒドロキシル基を有する分子を指す。ポリオールの例としては、限定するものではないが、ジオール、トリオール及びマクロジオールなどのマクロマーが挙げられる。好ましくは、ポリオールは300から10000、より好ましくは300から5000、さらにより好ましくは300から2000の分子量を有する。本明細書中で述べる分子量の値は、「数平均分子量」であることは理解されるであろう。2つ以上のヒドロキシル基、チオール基、アミン基及びカルボキシル基又はそれらの任意の組合せを有するオリゴマーが、本発明によるプレポリマーの調製に使用できる。
【0030】
適切な疎水性ポリオールは、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリシロキサン、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリラクトン、ポリイミド及びポリホスファゼンに基づく、トリ又はそれ以上のヒドロキシ又はアミンにより官能化されたオリゴマーを含む。
【0031】
適切な親水性ポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール及びブタンジチオール、ヘキサンジチオール又はペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)に基づくポリチオール或いはそれらのコポリマーを含む。
【0032】
本発明のプレポリマーの好ましい構造は、以下の一般式(I)及び(II)により表される。
【化1】


式中、
【化2】


は、α−ヒドロキシ酸、ジヒドロキシ化合物、ジカルボン酸、ジオール又はそれらの混合物に由来する繰り返し単位を表し、
Mはコア分子であり、
mは、コア分子中のヒドロキシ基の数であり、
nは、1から50の整数であり、
pは、コア分子に結合した繰り返し単位を含むアームの数であり、
X及びYは、独立してアクリレート又はヒドロキシなどの官能基である。
【化3】


式中、
A及びBは、独立してNCO、ヒドロキシル、アミンC1〜10アルキル又はアリールなどの官能基であり、
及びRは、独立してC1〜18アルキレン基又はアリーレン基から選択され、
pは、0から10であり、
qは、1から50である。
【0033】
α−ヒドロキシ酸の例としては、グリコール酸、乳酸、DL−乳酸、L−乳酸、D−乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、マンデル酸及びカプロン酸が挙げられる。ヒドロキシ化合物は、1,2−エタンジオール、1−3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールを含み得る。
【0034】
「コア分子」という用語は、イソシアネート基と反応し、ウレタン基又は尿素基を形成できる、少なくとも2つ、好ましくは3つ以上の官能基を有する分子を指す。コア分子は400以下の分子量を有することが好ましい。コア分子の例としては、限定するものではないが、ジオール、トリオール及び糖分子などのポリオールが挙げられる。
【0035】
コア分子の例は以下の通りである:
1.ペンタエリスリトール
2.グリセロール
3.ジペンタエリスリトール
4.トリペンタエリスリトール
5.1,2,4−ブタントリオール
6.トリメチロールプロパン
7.1,2,3−トリヒドロキシヘキサン
8.Myo−イノシトール
9.アスコルビン酸
10.グルコース並びにD−ガラクトース及びD−マンノースなどの異性体、D−フルクトース
11.マルトース
12.スクロース
13.マンニトール
14.N−アセチル−D−グルコサミン
15.ブタントリチオール
16.メルカプトプロピオネートなどのペンタエリスリトールテトラキス
17.ジエタノールアミン
18.ジイソプロパノールアミン
19.Tris(ヒドロキシメチル)アミノメタン
【0036】
「C1〜18アルキレン基」及び「アリーレン」という用語は、それぞれ「C1〜18アルキル」及び「アリール」という用語の二価のラジカル同等物である。アルキレン又はアリールと隣接する基との2つの結合は、二価のラジカルの同じ炭素原子からであっても異なる炭素原子からであってもよい。
【0037】
「C1〜10アルキル」又は「C1〜18アルキル」という用語は、1から10個又は1から18個の炭素原子を有する、線状、分岐型又は環状の炭化水素基を指す。このようなアルキル基の例示は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルである。
【0038】
「アリール」という用語は、環がペンダント式に相互に結合できる、又は縮合できる1つ、2つ又は3つの環を含む炭素環式芳香族系を指す。「アリール」は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダン及びビフェニルなどの芳香族ラジカルを含む。
【0039】
本発明の好ましいプレポリマーは、(I)及び(II)の反応生成物、ブレンドなどの(I)及び(II)の組合せ、又は親水性セグメント及び疎水性セグメントの両方が、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー又は交互なコポリマーとして存在し、少なくとも2つのヒドロキシル基が反応し、エチレン性不飽和基を形成する場合のポリオール(I)である。
【0040】
例えば、2つのプレポリマーの反応生成物であるプレポリマーの調製に、疎水特性を有する繰り返し単位、アクリレート末端官能基及びプレポリマー分子当たり少なくとも1つのヒドロキシ基を有するプレポリマー(I)を選択する。該プレポリマーをその後、親水性セグメント及びイソシアネート末端基を有する(II)と反応させる。得られた反応生成物は、親水性セグメントと疎水性セグメントとの両方を有する。
【0041】
同様に、2つのプレポリマー(I)及び(II)は、アクリレート官能基を有することで官能化でき、乳剤を形成するために組み合わせた場合に、2つの間に化学反応が起こらないように、相互に反応できる官能基はない。
【0042】
さらに、ポリール(I)は、疎水性セグメントと親水性セグメントとの両方を有するように選択できる。このようなポリオールの例は、乳酸、グリコール酸、カプロン酸又はそれらの混合物のいずれかを有するエチレングリコールに基づくスターポリオールのコポリマーを含む。コア内部にポリエチレングリコールブロック及び外部構造にポリ乳酸を有するスターポリオールは、市販されている(ポリマーソース(Polymer Source)(商標))。これらのポリオールは、文献により報告された、エチレンオキシドのアニオン性リビング重合、その後縮合又はラクチドのカチオン性重合を使用する手順に従って調製できる
【0043】
市販のポリオールを、本発明によるプレポリマーの調製に使用できる。例えば、ポリカプロラクトントリオール(PCLT)を、イソシアナートエチルメタクリレート(IEM)と反応させ、PCLTの平均2個のヒドロキシル末端基をメタクリレート末端基に転換させることができる。残ったヒドロキシル基は、(II)との反応に利用可能である。プレポリマー(II)は、ポリ(エチレングリコール)などの親水性ポリオールとエチルリシンジイソシアネートなどのジイソシアネートとを反応させ、イソシアナート末端官能基を有するプレポリマーを有することによって調製できる。2モル等量の(II)と1モル等量の(I)との反応により、生体適合性プレポリマーが作製され、水を高率で含むことができ、細胞と栄養溶液とを混合した場合に生細胞の安定な懸濁液を形成できる。この型のプレポリマーの代表例は以下の通りである。
【化4】

【0044】
本発明は、ペンタエリスリトール、グリセロール又はグルコースなどのコア分子と、乳酸、グリコール酸、マンデル酸などのヒドロキシ酸又はヒドロキシ芳香族酸、例えばサリチル酸又はテレフタル酸との重合、好ましくは縮合重合により調製される、新規な疎水性(コ)ポリオールを更に提供する。
【0045】
縮合重合は、場合により、2−エチルヘキサン酸スズなどの触媒の存在下で実施できる。この過程により、分子量120から30000K、低酸価、多分散性が低く定量的収率の、無色のポリオールが提供される。第1及び第2のヒドロキシ基などの末端基を有するポリオール並びにチオールが得られる。重合は、相対的に反応時間が短くて済む。ヒドロキシ酸の対応する環状モノマーの開環重合などの他の方法もまた、疎水性ポリオールの調製に使用できる。
【0046】
親水性プレポリマーもまた、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン及びポリヒドロキシエチルメタクリレート又はそれらのブロックコポリマー、グラフトコポリマー又はランダムコポリマーなどの公知の親水性プレポリマーを使用して調製できる。例えば、ポリビニルアルコールのヒドロキシ基は、イソシアナートエチルメタクリレートを用いて官能化し、アクリレートにより官能化されたポリビニルアルコールを、疎水性プレポリマーと組み合わせて硬化した場合に、架橋ポリマーネットワークが形成されるように、エチレン性不飽和基を提供できる。
【0047】
プレポリマー(II)を調製するために使用する好ましいジイソシアネートは、1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4ブタンジイソシアネート、エチルリシンジイソシアネート(ELDI)、メチルリシンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートを含む。ブタンジイソチオシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、キシレンジイソチオシアネート及びジシクロヘキシルメタンジイソチオシアネートなどのイソチオシアネートもまた使用できる。
【0048】
従来の鎖伸長剤(式(II)のR)の使用は、プレポリマー(II)の調製において任意選択である。好ましい鎖伸長剤は、エチレングリコール及びプロピレングリコールなどのC2〜10アルキレングリコール;ブタンジオール及びプロパンジオールなどのC2〜10アルカンジオール;エタノールアミン、エチレンジアミン、プロパンジアミン及びブタンジアミンなどのアミン並びにオーストラリア特許出願第2005905792号に記載の鎖伸長剤などの、骨格に1つ又は複数の加水分解性(分解性)官能基を有する鎖伸長剤を含む。
【0049】
プレポリマー(I)の好ましい分子量は、300から10000、より好ましくは300から5000、最も好ましくは300から2000の範囲である。プレポリマー(II)の好ましい分子量は500から50000の範囲であり、より好ましくは500から5000、最も好ましくは500から2000の範囲である。
【0050】
2つのプレポリマー(I)及び(II)の分子量及び相対的比率は、架橋ポリマーネットワークの機械的特性に影響を及ぼすことは理解されるであろう。組み込める水の量は、組成物中の親水性プレポリマーの比率によって大きく左右される。
【0051】
分散剤又はポロゲン
本発明の組成物は、細胞、例えば骨芽細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、メラニン細胞及び内皮細胞並びに増殖因子などの生物学的要素;生物薬剤、天然ポリマー(例えばアルギネート、フィブリン、アガロース、コラーゲン、メチルセルロース及びペプチドベースのヒドロゲル)及び薬剤などの生物活性分子;ナノ粒子ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム及びヒドロキシアパタイトなどの細胞の成長を支持する他の要素;フィブリン、コラーゲン及びトランスグルタミナーゼ系などの接着剤;シロキサン界面活性剤などの界面活性剤;シリカ粒子、シリカ粉末;細胞播種に使用できる中空糸;或いは水及びゼラチンビーズなどのポロゲンを含む、分散剤もまた含み得る。
【0052】
プレポリマー及びプレポリマー組成物は、細胞、栄養培地又は増殖因子並びにヒドロキシアパタイト及びリン酸三カルシウムなどの、細胞に好ましい他の添加剤と組み合わせると特に有用である。これらの組成物は、問題のある部位に注射又は送達された後で、体内で硬化(架橋)でき、或いは体外で硬化させ、組織層、器官の全体又は部分を形成するために培養できる。細胞は、周知の方法を使用してカプセル化でき、プレポリマーに組み込むことができる。ゼラチンなどのビーズにおいて培養された細胞及び脱灰された骨を、プレポリマーに組み込むことができる。
【0053】
本発明はまた、様々な量の水を保持できるプレポリマーの調製を可能にする。少なくとも60重量%、好ましくは70重量%、より好ましくは85重量%などの比較的多量の水を有する組成物を、細胞の送達のために調製できる。これらの組成物において、水はチャネルを形成し、これらのチャネルは、細胞に栄養を流すことができ、さらに任意の老廃物の除去を容易にする。
【0054】
様々な量の水を保持するプレポリマー組成物を形成することによって、様々な体組織の機械的特性に一致する機械的特性を有するポリマーが調製できる。例えば、軟骨の機械的特性に一致するポリマーを形成できる。このような組成物は、損傷した関節の軟骨の修復を助けるための軟骨細胞の送達に特に適している。同様に、より固いポリマーを、適切な疎水性要素及び親水性要素の量を選択することによって、さらに取り込む水の量を調節することによって調製でき、このようなポリマーは、骨折の固定又は骨の他の不備を回復させるための、骨芽細胞の送達に特に適している。同様に、ヒトの皮膚に一致する特性を有するポリマーは、創傷を修復するための、線維芽細胞、メラニン細胞及び内皮細胞などの細胞の送達に適している。
【0055】
開始剤
「開始剤」という用語は、エネルギー源により活性化された場合に、硬化ステップにおいてプレポリマーの遊離ラジカル重合をもたらすと思われる、少なくとも1種の分子を指す。重合を開始するエネルギー源は、熱的、光分解的であってよく、又は要素の酸化還元系に基づき、その結果として遊離ラジカル重合が起こり、プレポリマー組成物が硬化する。
【0056】
遊離ラジカル硬化の誘発を目的とするプレポリマー組成物中に存在する開始剤の選択は、選択した開始方法に依存する。開始は、熱的、光分解的又は要素の酸化還元系に基づいてよく、外部のエネルギー源によることが好ましい。例えば、カンファーキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシドに基づく開始剤が適しており、過硫酸アンモニウム及びメタ重亜硫酸ナトリウムなどの酸化還元開始剤、γ線又はレーザーもまた適している。インビボの適用には、光開始剤又は酸化還元に基づく系が好ましい。より好ましくは、電磁放射線のUV又は可視領域のいずれかである波長を使用してポリマー組成物を硬化させる系である。2種のうち、可視光による開始は、生物医学的応用においてより望ましい。本発明の一実施形態において、最大波長450±30nmを有する可視光源を使用する。光開始剤の例としては、限定するものではないが、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(Irgacure651)、ヒドロキシアルキルフェノン(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure184)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(Irgacure907)、2−ヒドロキシ−1−[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン(Darocur2959)、Darocur4265、Darocur TPO、Darocur1173、Irgacure500、784、907、2959、819、2020、1000、369、651、1300、819/819W、Irgacure2005及びIrgacure2010W並びにIrgacure2020、ポリシラン、EsacureKP150(ヒドロキシアルキルフェニルケトン)、カンファーキノン、Rosebengal、エチル−4−N,N−ジメチルアミノ−ベンゾエート(4EDMAB)/トリエタノールアミン、αアルコキシデオキシ−ベンゾイン、α,α−ジアルコキシアセトフェノン(DEAP)、(1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)、ジベンゾイルジスルフィド、S−フェニルチオベンゾエート、アシルホスフィンオキシド、ジベンゾイルメタン、O−アシルα−オキシイミノケトン、フェニルアゾ−4−ジフェニルスルホン、ベンゾフェノン、フルオレノン、キサントン、チオキサントン、ベンジル、ケタール(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンDMP)、α−ケトクマリン、アントラキノン、エチルエオシン及びテレフタロフェノンが挙げられる。
【0057】
添加剤
ポリマー化学の分野において公知の1種又は複数の添加剤が、本発明のプレポリマー、ポレポリマー組成物又はポリマー中に、20重量%までの量含まれていてもよいことは理解されるであろう。
【0058】
適切な添加剤は、保存中のプレポリマー又はプレポリマー組成物の未成熟重合の防止に役立つラジカル抑制剤;開始率を上昇させること及び/又は所望の温度において重合を開始させることにより架橋過程の活性化に役立つ、増感剤又は促進剤;重合が起こる波長をシフトさせる第3級アミンなどの他の有機添加剤;触媒又は界面活性剤を含む。
【0059】
3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(又は2,6−ジ−tert−ブチル−パラ−クレゾール)、パラ−ベンゾキノン、クロルアニル、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン及び2,4,6−トリメチルフェノールは、ラジカル抑制剤の例である。
【0060】
増感剤の例としては、bis−(N,N’−テトラエチル)エチレンジアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、イソプロピルチオキサントン(quantacure ITX)、エチル−p−ジアミノベンゾエート、トリエタノールアミン、第3級アミン(N,N−ジエチルアミノメタクリレート)及びミヒラーケトン(Michler’s ketone)が挙げられる。
【0061】
触媒は、限定するものではないが、2−エチルヘキサン酸スズ、オレイン酸スズ、塩化第一スズ、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)、ジブチルスズジオキシド、ジ−2−エチルヘキサン酸ジブチルスズなどのスズ触媒;トリエチレンジアミン、テトラメチルブタンジアミン(TMBDA)、ジメチルエタノールアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザ[2,2,2]ジシクロ−オクタン(DABCO)、ヒドロキシグアニン、テトラメチルグアニジン、N−エチルモルホリン、リボフラビンなどの第3級アミン触媒;チタンエタノールアミン、Tyzorチタネート(Tyzor131)、Tyzorオルガノチタネート、チタニウムブトキシドなどのチタン触媒;Tyzor−LA(水性乳酸チタンキレート)、Tyzor131(水性チタンキレート)、Tyzor217(水性乳酸ジルコニウム)、Tyzor218(水性グリコール酸ジルコニウム)などの水中で安定なチタン水性キレート;並びにリン酸カルシウム、オボアルブミン、酢酸ナトリウム及びトリブチルホスフィンなどの他の触媒から選択できる。
【0062】
硬化
硬化/架橋反応は、穏和な温度条件の下で実施できる。通常、反応は、20℃から40℃の温度範囲において実施することが好ましい。
【0063】
開始剤の濃度の変化により、ポリマーが軟質材料又は硬質材料に硬化し得るタイムフレームを調節でき、さらに硬化機構にも影響を及ぼす。
【0064】
組成物中の各要素を変化させることを、最終硬化ポリマーの化学的特性及び物理的特性を決定づけるために使用できる。例えば、アクリレート基の比率を下げることにより、最終製品をより軟質に適合させる利点を有し、一方、増加させれば逆になる。このことは、プレポリマーの調製において、アクリレート基を組み込んだ化合物を過剰に加えることによって達成できる。それ故、材料の所望の機械的特性を、目の前の用途に適合させることができる。
【0065】
生物医学的使用
本発明のプレポリマー又はプレポリマー組成物と、少なくとも1種の開始剤との反応生成物は、創傷治癒、骨、軟骨又は神経の修復、歯科及び歯周用途のセメント、薬物送達並びに抗接着又は保護用のバリア、椎間板髄核(spinal disc nucleus)の交換などの脊髄用途などの組織工学用途のための生分解性の足場として使用できる。組織工学用途において、プレポリマー又はプレポリマー組成物は、目的とする生物学的使用に適切な生物要素もまた含み得る。
【0066】
足場は、調製し、エクスビボにおいて硬化させ、その後移植しても、又はその構成要素をインビボで硬化させるために未硬化の形態で注射し、足場を調製してもいずれであってもよいことは理解されるであろう。
【0067】
実施例において、添付の図面が参照されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例4に記載のように、未硬化ポリマーと混合し、接触させたまま室温で1時間放置した、Cultispher−Sビーズ上の軟骨細胞を示す写真である。生存細胞が、白い領域として見られる。
【図2】実施例5に記載のように、1時間後の硬化ポリマープラグ内部の、Cultispher−Sビーズ上の軟骨細胞を示す写真である。生存細胞が、白い領域として見られる。
【図3】実施例5に記載のように、Cultispher−Sビーズ中及びその周辺において成長し、ポリマーの硬化プラグ内に組み込まれた軟骨細胞を示す写真であり、軟骨細胞が増殖している。細胞培養(H&E)8週目。
【図4】実施例5に記載のように、細胞培養8週後の、コラーゲンII型材料を豊富に産生する、濃い灰色に染色されて示されている軟骨細胞を示す写真である。
【図5】実施例5に記載のように、細胞培養8週後の、ケラタン硫酸材料を豊富に産生する、濃い灰色に染色されて示されている軟骨細胞を示す写真である。
【図6】実施例5に記載のように、細胞培養8週後の、コラーゲンVI型材料を豊富に産生する、濃い灰色に染色されて示されている軟骨細胞を示す写真である。
【図7】実施例6に記載のように、未硬化ポリマーと混合し、接触させたまま室温で1時間放置した、Cultispher−Sビーズ上の軟骨細胞を示す写真である。
【図8】実施例6に記載のように、硬化したポリマーの足場内のビーズ上で軟骨細胞を培養し、1時間後に検査した写真である。生存細胞が、白い領域として見られる。
【図9】実施例6に記載のように、Cultispher−Sビーズ中及びその周辺において成長し、ポリマーの硬化プラグ内に組み込まれた軟骨細胞を示す写真であり、軟骨細胞が増殖している。細胞培養(H&E)8週目。
【図10】実施例6に記載のように、細胞培養8週後の、コラーゲンII型材料を豊富に産生する、濃い灰色に染色されて示されている軟骨細胞を示す写真である。
【図11】実施例6に記載のように、細胞培養8週後の、ケラタン硫酸材料を豊富に産生する、濃い灰色に染色されて示されている軟骨細胞を示す写真である。
【図12】実施例6に記載のように、細胞培養8週後の、コラーゲンVI型材料を豊富に産生する、濃い灰色に染色されて示されている軟骨細胞を示す写真である。
【図13】実施例7に記載のように、未硬化ポリマーと混合したCultispher−Sビーズ上の、ESP水和法を実施し、接触させたまま1時間室温で放置した、軟骨細胞を示す写真である。生存細胞が、白い領域として見られる。
【実施例】
【0069】
本発明を、これから以下の限定されない実施例を参照して説明するつもりである。
【0070】
(実施例1)
材料
ポリエチレングリコール(PEG)、Mn約1500、ポリカプロラクトントリオールMn900、2−エチルヘキサン酸スズ及び3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)を、Aldrichから購入し、そのまま使用した。2−イソシアネートエチルメタクリレート(IEM)を昭和電工(Showa Denko)から購入し、減圧下で蒸留することによって精製した。エチルリシンジイソシアネート(ELDI)を、協和発酵工業(Kyowa Hakko Kogyo)から購入し、減圧下で蒸留することによって精製した。
【0071】
方法
ポリ(カプロラクトン)トリオールからアクリレートにより官能化された疎水性ポリオールの調製
ポリカプロラクトントリオール(Aldrich)(59.17g、63.3mmol)を丸底フラスコに入れ、80℃において真空下(0.1mmHg)で1時間乾燥させた。ラジカル抑制剤のBHT(全重量の0.1重量%、78.8mg)及び2−イソシアネートエチルメタクリレート(19.65g、126.6mmol)を、ポリオールに加え、80℃において撹拌した。その後、2−エチルヘキサン酸スズ触媒(ポリオールの0.1重量%、59.2mg)を混合物に加え、撹拌して一晩反応を続けさせた。反応の完了を、2272cm−1におけるイソシアネートのピークの消失に関してIR分光法によって観測した。ポリオールを、GPCによって特徴付けた。ヒドロキシル価及び酸価を、文献により報告された方法(2)に従って確定した。ヒドロキシル価は47.86であり、酸価は1.23であった。数平均分子量は、1767であり、多分散性は(ポリスチレンの基準値に対して)1.32であった。
【0072】
親水性プレポリマーの調製
ポリエチレングリコール(102.87g、61.2mmol)を丸底フラスコに入れ、80℃において真空下(0.1mmHg)で1時間乾燥させた。その後、ELDI(27.69g、122.5mmol)をポリオールに加え、反応物を、80℃において一晩撹拌した。ASTM D 5155−01(3)に従って確定した場合、イソシアネート含有量は3.70%であった。
【0073】
疎水性ポリオール及び親水性ポリオールを組み合わせたプレポリマー、(PCL−PEG)−アクリレート(III)の合成
アクリレートにより官能化した3アームのポリカプロラクトン(28.60g、26.3mmol)を丸底フラスコに入れ、80℃において真空下(0.1mmHg)で1時間乾燥させた。テフロン(登録商標)(Teflon)の撹拌翼を備えたオーバーヘッド機械的撹拌機を用いて80℃において撹拌し、反応を促進した。ラジカル抑制剤のBHT(全重量の0.1重量%、33.65mg)及び親水性プレポリマー(33.65g、13.2mmol)を、順番に加えた。反応物を、80℃において一晩撹拌させた。反応の完了を、2272cm−1におけるイソシアネートのピークの消失に関してIR分光法によって観測した。最終ポリマーをGPCによって特徴付けし、数分子量は5807であった。
【化5】

【0074】
(実施例2)
材料
ポリエチレングリコール(PEG)(Mn1500)、2−エチルヘキサン酸スズ、p−トルエンスルホン酸一水和物85%及び3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)は、Aldrichから購入し、そのまま使用した。L−乳酸、88%溶液は、DuPontから購入し、そのまま使用した。ペンタエリスリトール98%(Aldrich)をすりつぶし、その後、使用前に80℃において一晩乾燥させた。ε−カプロラクトン99%(Aldrich)を減圧下で蒸留することによって精製し、4Åの分子ふるいにかけ保存した。2−イソシアネートエチルメタクリレート(IEM)は、昭和電工(Showa Denko)から購入し、減圧下で蒸留することによって精製した。エチルリシンジイソシアネート(ELDI)を、協和発酵工業(Kyowa Hakko Kogyo)から購入し、減圧下で蒸留することによって精製した。
【0075】
L−乳酸−coカプロラクトンポリオールの合成
P(L−LaCl)(IV):ペンタエリスリトール(16.32g、120mmol)を、マグネチックスターラーバー及び還流冷却器を取り付けた500mLのフラスコに入れた。水(163mL)を加え、フラスコを50℃において、ペンタエリスリトールが完全に消失するまで還流した。L−乳酸(20.18g、197mmol)及びε−カプロラクトン(89.4g、784mmol)を計量し、直接フラスコに加えた。P−トルエンスルホン酸(0.84g)及び200mLのトルエンを、その後混合物に加えた。ディーン・スターク装置(Dean−Stark apparatus)、還流冷却器及び乾燥管をフラスコに取り付けた。さらに150mLのトルエンをディーン・スタークに入れ、混合物を160℃において還流した。反応が継続するにつれて底に回収された水を除去した。63mLの水が除去され、反応混合物を同量に維持するために、フラスコに63mLのトルエンを加えた。反応物を、およそ72時間還流した。ポリオールを、GPC及びNMRによって特徴付けた。ヒドロキシル価及び酸価を、文献に従って確定した。ヒドロキシル価は177であると確定し、酸価は0.96であった。生成物のGPC分析により、数平均分子量が1677、多分散性が1.56であった(ポリスチレンの基準値に対して)
【化6】

【0076】
L−乳酸−coカプロラクトンポリオールのアクリレートによる官能化
P(L−LaCl)ポリオール(70.04g、55.6mmol)を丸底フラスコに入れ、80℃において真空下(0.1mmHg)で1時間乾燥させた。ラジカル抑制剤のBHT(全重量の0.1重量%、96mg)及び2−イソシアネートエチルメタクリレート(25.87g、166.8mmol)をポリオールに加えた。その後、2−エチルヘキサン酸スズ触媒(ポリオールの0.1重量%、70mg)を、混合物に加え、反応物を80℃において一晩撹拌した。反応の完了を、2272cm−1におけるイソシアネートのピークの消失に関してIR分光法によって観測した。ヒドロキシル価及び酸価を、文献に報告された方法に従って確定した。ポリオールのヒドロキシル価は43.55であり、酸価は0.90であった。
【0077】
親水性プレポリマーの合成
ポリエチレングリコール(102.87g、61.2mmol、MW(1500))を丸底フラスコに入れ、80℃において真空下(0.1mmHg)で1時間乾燥させた。ELDI(27.69g、122.5mmol)をポリオールに加え、反応混合物を80℃において一晩撹拌した。プレポリマーのイソシアネート含有量は、ASTM D5155−01に従って確定した場合3.04%であった。
【0078】
疎水性組成物及び親水性組成物を組み合わせたプレポリマー、[P(L−LaClPeg)−アクリレート](IV)の合成
アクリレートにより官能化した4アームのP(L−LaCl)(15.50g、12.4mmol)を丸底フラスコに入れ、80℃において真空下(0.1mmHg)で1時間乾燥させた。テフロン(登録商標)(Teflon)の撹拌翼を備えたオーバーヘッド機械的撹拌機を用いて80℃において撹拌し、反応を促進した。ラジカル抑制剤のBHT(全重量の0.1重量%、31mg)及び親水性プレポリマー(15.55g、6.2mmol)を、順番に加えた。反応物を、80℃において一晩撹拌した。反応の完了を、2272cm−1におけるイソシアネートのピークの消失に関してIR分光法によって観測した。最終プレポリマーを、GPCによって特徴付けし、数平均分子量は5996であった。
【化7】

【0079】
(実施例3)
材料
ポリエチレングリコール(PEG)Mn約1500、2−エチルヘキサン酸スズ、p−トルエンスルホン酸一水和物85%及び3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)を、Aldrichから購入し、そのまま使用した。L−乳酸、88%溶液は、DuPontから購入し、そのまま使用した。ペンタエリスリトール98%(Aldrich)をすりつぶし、使用前に80℃において一晩乾燥させた。ε−カプロラクトン99%(Aldrich)を減圧下で蒸留することによって精製し、4Åの分子ふるいにかけ保存した。2−イソシアネートエチルメタクリレート(IEM)は、昭和電工(Showa Denko)から購入し、減圧下で蒸留することによって精製した。エチルリシンジイソシアネート(ELDI)を、協和発酵工業(Kyowa Hakko Kogyo)から購入し、減圧下で蒸留することによって精製した。
【0080】
4アームのP(Cl) (V)(MW900)の調製
ペンタエリスリトール(15.1g、111mmol)、ε−カプロラクトン(84.82g、744mmol)及び2−エチルヘキサン酸スズ(ポリオールの0.1重量%、75mg)を、マグネチックスターラーバーを取り付けた、乾いた500mLのフラスコに入れ、この系を不活性ガス下で維持した。反応フラスコを、140℃で24時間加熱した。得られたポリオールを、GPC及びNMRによって特徴付けした。ヒドロキシル価及び酸価を、文献に報告された方法に従って確定した。ヒドロキシル価は204.4であり、酸価は2.06であった。数平均分子量は1257であり、多分散性は1.25であった(ポリスチレンの基準値に対して)。
【化8】

【0081】
アクリレートにより官能化された4−アームのポリ(カプロラクトン)の調製
ポリカプロラクトンテトラオール(41.20g、37.6mmol)を丸底フラスコに入れ、80℃において真空下(0.1mmHg)で1時間乾燥させた。ラジカル抑制剤のBHT(全重量の0.1重量%、59mg)及び2−イソシアネートエチルメタクリレート(17.48g、115.7mmol)を、ポリオールに加えた。その後、2−エチルヘキサン酸スズ触媒(ポリオールの0.1重量%、10mg)を混合物に加え、反応物を80℃において一晩撹拌した。反応の完了を、2272cm−1におけるイソシアネートのピークの消失に関してIR分光法によって観測した。得られたポリマーを、GPCにより特徴付けた。ヒドロキシル価及び酸価を、文献に報告された方法に従って確定した。ヒドロキシル価は60.94であり、酸価は1.58であった。数平均分子量は1775であった。
【0082】
親水性プレポリマーの調製
ポリエチレングリコール(102.87g、61.2mmol)を丸底フラスコに入れ、80℃において真空下(0.1mmHg)で1時間乾燥させた。その後、ELDI(27.69g、122.5mmol)を、ポリオールに加え、反応混合物を80℃において一晩撹拌した。イソシアネート含有量は、ASTM D 5155−01に従って確定した場合3.43%であった。
【0083】
疎水性ポリオール及び親水性ポリオールを組み合わせたプレポリマー、(PCL−PEG)−アクリレートの合成
官能化された、4アームのポリカプロラクトン(8.27、9mmol)を丸底フラスコに入れ、80℃において真空下(0.1mmHg)で1時間乾燥させた。テフロン(登録商標)(Teflon)の撹拌翼を備えたオーバーヘッド機械的撹拌機を用いて80℃において撹拌し、反応を促進した。ラジカル抑制剤のBHT(全重量の0.1重量%、11mg)及び親水性プレポリマー(11.03g、4.5mmol)を、その順番に加えた。反応物を80℃において一晩撹拌した。反応の完了を、2272cm−1におけるイソシアネートのピークの消失に関してIR分光法によって観測した。最終ポリマーを、GPCによって特徴付けし、数平均分子量は7508であった。
【化9】

【0084】
(実施例4)
この実施例は、ヒト軟骨細胞を、本発明の生分解性、生体適合性組成物に組み込み、細胞の生存能力を危険にさらすことなく、未硬化状態のポリマーと接触させ放置できることを例示する。
【0085】
ポリマーの水和
実施例1に従って調製したプレポリマー(III)、0.67gを、25mLのSchott bottle(2番)に入れ、ホイルで包み、小型Atherton Autoclave(S/No.850451117004)で、121℃、15分オートクレーブにかけることによって滅菌し、その後暗所において、室温で一晩、20mlの滅菌PBS(リン酸緩衝生理食塩水)と水和させた。
【0086】
1、2、5、6及び7日目に20mlの滅菌PBSを交換した。その後、ポリマーを暗所に室温で放置し、30日目(86.9%が水和)に試料を取り出し使用した。70日目(88.8%が水和)、試料を使用直前に20mlの滅菌PBSで洗浄した。
【0087】
軟骨細胞の調製
凍結保存試料から単離された軟骨細胞を、播種密度0.75×10で、Complete Chondrocytes Media(FBS10%、F12:DMEMが1:1の培地)中の、Cultispher−Sビーズ(Sigma M9043−10G)上に播種した。ビーズは、製造業者の指示に従って調製した。簡潔には、Cultispher−Sビーズを、PBSにおいて20mg/mlで水和させ、121℃、15分間オートクレーブにかけ、冷却し、4℃において保存する。これらの細胞を、Cultispher−Sビーズの内部及び表面において成長させ、ビーズを50mlの温かい培地(DMEM/FBS又は自己血清10%、100μg/mlのペニシリン及びストレプトマイシン含有)で、37℃において予備洗浄し、その後125mlのスピナーボトル内に入れた。20mg/mlに再懸濁したビーズ溶液の1.8mlを、0.75×10の軟骨細胞に使用した。その後、ボトルを37℃のインキュベーター(5%CO)において、30分ごとに25rpmで2分間、断続的に3時間、その後、次の3時間は30分ごとに45rpmで2分間断続的に、その後45rpmで連続的に撹拌した。軟膏細胞を、この播種手法の7から21日後の間に使用した。ビーズ上の軟膏細胞のアリコートを、スピナーボトルから10mlのチューブに取り出す。溶液をニチリョー(Nchiryo)の注射器に入れ、放出の準備のためにビーズ上の軟骨細胞が注射器の底に沈むように、垂直位置で5分間放置する。上記のように調製した水和ポリマーを、滅菌4ウェル細胞培養皿(In−vitro Technologies 176740)に、0.4mg計量した。ビーズ上に良好に定着した細胞の0.10mlをニチリョーの注射器から加え、滅菌スパチュラを用いて穏やかにポリマーに組み込んだ。
【0088】
未硬化混合物の検査
試料を、室温で、15分及び1時間で(図1に示したように)検査した。試料を、1時間で取り出し、10mlのチューブに入れた。その後、これを8mlの温かいPBSで3回洗浄し、洗浄は、周囲のポリマー混合物からビーズ上の細胞を分離するように、極めて激しく行った。その後、この混合物を、Molecular Probes Live−Dead Assay Kit L3224で、製造業者の指示に従って染色した。簡潔には、37℃のPBSの5mlを、10μlの溶液B(エチジウムホモ二量体、死細胞核を赤く染色するが、生細胞の核は染色しない)に加え、ボルテックスにより混合し、2.5μlの溶液A(カルセイン、生細胞の細胞質を、細胞内のエステラーゼ活性との相互作用により緑に染色する)を加え、再度ボルテックスにかけた。1mlの染色溶液を、洗浄した細胞/ビーズに加え、20分間37℃でインキュベートし、その後観察した。さらに対照試料も同時に調製した。
【0089】
対照の死細胞を、生細胞のアリコートを取り出し、過剰の80%エタノールを、室温で10分間、細胞に加えることによって作製した。その後、細胞をPBSで3回洗浄し、上記のように染色した。生細胞を、ポリマープラグ混合物のための細胞として、同じスピナーボトルから取り出し、洗浄し、上記のように染色した。結果を、Optiscan F900e共焦点KrArレーザーを使用して、Olympus BX61顕微鏡で観察した。
【0090】
(実施例5)
この実施例は、ヒト軟骨細胞を、本発明の生分解性、生体適合性組成物に組み込み、細胞の生存能力を危険にさらすことなく、硬化させ、固体多孔質の足場を形成できることを例示する。これらのプラグの細胞培養に加えて、軟骨細胞が新規な組織基質を8週間にわたって形成することを示す。
【0091】
軟骨細胞の調製
ヒト関節軟骨細胞(0.75×10細胞、単離後0日、Edward Kellerから購入、EK23−7−02、KN8823)を解凍し、実施例4のようにCultispher−Sビーズ上で培養した。細胞を、さらに18日後に再度回収し、計測し、得られた10×10細胞を20mg/mlのCultispher−Sビーズの0.36mlに播種し、最終播種量(ビーズ上の細胞)0.14mlを得た。その後、これらの細胞を0.6mlのポリマー(調製の詳細は以下で)と混合し、最終構築体を得た。これにより、合成ポリマー混合物の最終形態の最終細胞密度は、14.1×10細胞/mlであった。
【0092】
ポリマーを、実施例1のように調製し、実施例4における手法を使用して水和させた。この水和ポリマーの0.833gを、0.933μlの1:5w/wのCQ:DMAEMA(カンファーキノン及びN,N,−ジメチルアミノエチルメタクリレート)と、滅菌スパチュラにより混合させた。このポリマー混合物の0.6gを、滅菌組織培養ウェルに計量した。0.14mlのビーズ上の細胞混合物を、ニチリョーの注射器を介して加え、水和ポリマーに穏やかに組み込み、細胞/ビーズ/ポリマーを一緒にした最終容量は、0.75mlであった。
【0093】
3つのプラグを、各140μl(17.5×5×1.5mm)の滅菌したシリコンの鋳型において形成し、それぞれElipar(商標)Free Light2(3M ESPE)を使用して、青色光を用いて硬化させた(5×20秒)。
【0094】
硬化混合物の検査
細胞の生存能力を生/死、生存能力/細胞毒性キットの使用によって、実施例4に記載のように、1つのプラグの中心の領域から非常に薄い(1mm)切片を採取することによって評価した。
【0095】
硬化後、構築体を全体のまま、又は半分に切断するかいずれかにした。残ったプラグを、6ウェル懸濁液プレート(静的)又は動的運動(スピナー)のいずれかで培養した。培養物を、最終濃度28.9μg/mlのアスコルビン酸の存在下で長期成長させた。4℃で保存された10mMのストックを、1/100希釈で使用した。(和光(Wako)L−アスコルビン酸リン酸マグネシウム塩、Novachem cat No. 013−12061)。培地は、8週の間、週に2回交換した。
【0096】
その後、一片のプラグを半分に切断し、10%の中性緩衝ホルマリンで固定し、組織学的基準に関して処理し、ヘマトキシリン及びエオシンを用いて染色するか、又は液体窒素で冷却したイソペンタン中でスナップ凍結するか、いずれかに供した。その後、これらの凍結プラグを、コラーゲンII型、ケラタン硫酸及びコラーゲンVI型に対して抗体を用いて染色した。結果を図2から6に示す。
【0097】
(実施例6)
この実施例は、ポリマーを、実施例4において使用した様々な方法により水和できることを示す。
【0098】
実施例1の手法に従って調製したポリマーは、毎日洗浄する方法を使用して水和させ、1時間の未硬化試験及び硬化して8週間の細胞培養の両方において、軟骨細胞に生体適合性を示した。
【0099】
ポリマーの水和
実施例1のポリマーの0.5gアリコートを、ボトルに計量し、実施例4のようにオートクレーブにかけた。20mlの滅菌PBS溶液を加え、その後除去し、12日間毎日交換した。PBSを除去し、0.4gのこの水和ポリマーを、滅菌4ウェル細胞培養皿(Invitro Technologies 176740)に計量し、実施例4において調製した、ビーズ上に良好に定着した0.10mlの細胞を、ニチリョーの注射器から加え、実施例4のように滅菌スパチュラを用いて穏やかにポリマーに組み込んだ。
【0100】
この材料を3つの方法で検査した。
1.ビーズ上の軟骨細胞を未硬化のポリマーと室温で1時間接触させる(図7参照)。
2.硬化させたポリマーの足場内部の、ビーズ上の軟膏細胞培養物を、1時間後に検査した(図8参照)。
3.硬化させたポリマーの足場内部の、ビーズ上の軟膏細胞培養物を、細胞培養物内で8週間成長させた(図9から12を参照)。
【0101】
(実施例7)
実施例1に記載の手法に従って調製したポリマーを、飽和増強処理法(ESP)を使用して、水和させ、1時間の未硬化試験で、軟骨細胞に対する生体適合性を示す。
【0102】
ポリマーの水和
側面がまっすぐなバイアル(容量およそ20ml)中のポリマーの1.5gアリコートに15.0gのPBSを加えた。これを、高速混合の前に3分間スパチュラを用いて手で混合した。ミキサー(Ika−Werke Ultra Turrax T8)を、スピード4で室温において5分間使用し、泡状に分散させた。その後、ボトルを、Beckman Coulter Allegra X−12R遠心分離機で5分間@2000rpmで遠心分離し、その後過剰のPBSを除去し、水和率を算出したところ、83.4%であった。
【0103】
この混合物に加えるために、実施例4のように軟膏細胞を調製し、試料を分析するための検査手法もまた、実施例4に関するものであった。簡潔には、0.4gの飽和増強処理材料を、実施例4のような0.1gの軟骨細胞と組み合わせ、結果を図13に示す。
【0104】
(参考文献)
1.Volgaris D、Tsitsilianis C、Grayer V、Esselink FJ、Hadzioannou G.Polymer 1999;405879−89。
2.細胞療法のための戦略:生細胞のカプセル化及び送達用ポリマー(Strategy for Cell Therapy:Polymers for Live Cell Encapsulation and Delivery)」、Satya Prakash及びHahn Soe−Lin、Trends Biomater.Artif.Organs Vol 18(1)、pp 24−35(2004)。
3.「ポリマーのヒドロキシ末端化をアセチル化する触媒としてのN−メチルイミダゾール(N−Methylimidazole as a Catalyst for Acetylation of Hydroxyl Terminated Polymers)」Louis A.Dee、他 Analytical Chemistry、1980、52、572−573。
4.ASTM D 2849−69。(31から39項)「ウレタンフォームポリオール原材料の標準検査方法(Standard Methods of Testing URETHANE FOAM POLYOL RAW MATERIALS)方法A−無水酢酸耐圧瓶の項(Acetic Anhydride Pressure Bottle section)」。
【0105】
以下の特許請求の範囲及び本発明の前述の説明において、文脈において別の表現用語又は言外の意味を必要とする場合を除いて、「含む(comprise)」或いは「含む(comprises)」又は「含んでいる(comprising)」などの変形の言葉は、包括的な意味で使用している、すなわち、述べられた特徴の存在を明記しているが、本発明の様々な実施形態における更なる特徴の存在又は追加を排除するものではない。
【0106】
本発明の分野の技術者には、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、多くの改良が可能であることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性セグメントと疎水性セグメント及び水を含み、疎水性セグメントは少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を有し、セグメントの少なくとも5%は2つ以上のエチレン性不飽和官能基を有する、生体適合性プレポリマー。
【請求項2】
セグメントの少なくとも25%が2つ以上のエチレン性不飽和基を有する、請求項1に記載の生体適合性プレポリマー。
【請求項3】
セグメントの少なくとも40%が2つ以上のエチレン性不飽和基を有する、請求項1に記載の生体適合性プレポリマー。
【請求項4】
疎水性セグメント又は親水性セグメントが、ヒドロキシル、チオール、アミン又はカルボキシルからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載の生体適合性プレポリマー。
【請求項5】
疎水性セグメント又は親水性セグメントがイソシアネート基を含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載の生体適合性プレポリマー。
【請求項6】
水と混合した場合に可溶性、混和性である、或いは乳剤又はペーストを形成する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の生体適合性プレポリマー。
【請求項7】
親水性プレポリマーと疎水性プレポリマー及び水を含み、疎水性プレポリマーの少なくとも1つは少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を有し、プレポリマーの少なくとも5%は2つ以上のエチレン性不飽和官能基を有する、生体適合性プレポリマー組成物。
【請求項8】
プレポリマーの少なくとも25%が2つ以上のエチレン性不飽和官能基を有する、請求項7に記載の生体適合性プレポリマー組成物。
【請求項9】
プレポリマーの少なくとも40%が2つ以上のエチレン性不飽和官能基を有する、請求項7に記載の生体適合性プレポリマー組成物。
【請求項10】
親水性プレポリマー又は疎水性プレポリマーが、ヒドロキシル、チオール、アミン又はカルボキシルからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含む、請求項7から9までのいずれか一項に記載の生体適合性プレポリマー組成物。
【請求項11】
親水性プレポリマー又は疎水性プレポリマーが少なくとも1つのイソシアネート基を含む、請求項7から9までのいずれか一項に記載の生体適合性プレポリマー組成物。
【請求項12】
水と混合した場合に可溶性、混和性である、或いは乳剤又はペーストを形成する、請求項7から11までのいずれか一項に記載の生体適合性プレポリマー組成物。
【請求項13】
親水性プレポリマーと疎水性プレポリマー及び水の反応生成物であり、少なくとも1つの疎水性プレポリマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を有し、プレポリマーの少なくとも5%は2つ以上のエチレン性不飽和官能基を有する、生体適合性ポリマー組成物。
【請求項14】
プレポリマーの少なくとも25%が2つ以上のエチレン性不飽和官能基を有する、請求項13に記載の生体適合性ポリマー組成物。
【請求項15】
プレポリマーの少なくとも40%が2つ以上のエチレン性不飽和官能基を有する、請求項13に記載の生体適合性ポリマー組成物。
【請求項16】
親水性プレポリマー又は疎水性プレポリマーが、ヒドロキシル、チオール、アミン又はカルボキシルからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含む、請求項13から15までのいずれか一項に記載の生体適合性ポリマー組成物。
【請求項17】
親水性プレポリマー又は疎水性プレポリマーが少なくとも1つのイソシアネート基を含む、請求項13から15までのいずれか一項に記載の生体適合性ポリマー組成物。
【請求項18】
水と混合した場合に可溶性、混和性である、或いは乳剤又はペーストを形成する、請求項13から17までのいずれか一項に記載の生体適合性ポリマー組成物。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか一項に記載のプレポリマー又はプレポリマー組成物又はポリマー組成物と、少なくとも1種の開始剤との反応生成物を含む、硬化生体適合性ポリマー。
【請求項20】
請求項1から18までのいずれか一項に記載のプレポリマー又はプレポリマー組成物又はポリマー組成物と、少なくとも1種の開始剤との反応生成物を含む、生体適合性の足場。
【請求項21】
請求項1から18までのいずれか一項に記載のプレポリマー又はプレポリマー組成物又はポリマー組成物と、少なくとも1種の開始剤との、組織工学用途の生体適合性の足場としての使用。
【請求項22】
治療を必要とする対象において創傷及び損傷した骨、軟骨又は神経を治療する方法であって、請求項1から18までのいずれか一項に記載の硬化生体適合性ポリマーからエクスビボで調製した足場を移植するステップ、又は請求項1から18までのいずれか一項に記載のプレポリマー又はプレポリマー組成物又はポリマー組成物と、少なくとも1種の開始剤とを、インビボでの硬化及び足場の調製のために、未硬化の形態で注射するステップのいずれかを含む方法。
【請求項23】
α−ヒドロキシ酸のペンダント型に由来し、コア分子に化学的に結合している繰り返し単位を含む、複数の置換基を含む疎水性(コ)ポリオール。
【請求項24】
コア分子とヒドロキシ酸との重合により調製される、疎水性(コ)ポリオール。
【請求項25】
コア分子が、少なくとも2つのヒドロキシ基を含む、請求項24に記載の疎水性(コ)ポリオール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−544437(P2009−544437A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522055(P2009−522055)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際出願番号】PCT/AU2007/001085
【国際公開番号】WO2008/014561
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(507333317)ポリィノボ バイオマテリアルズ ピーティワイ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】