説明

生体適合性抗微生物組成物

脂肪族ポリエステルと、抗微生物活性に有効な抗微生物成分と、一部の実施形態では賦活剤と、を含む抗微生物組成物。例:ポリ(乳酸)ポリマー(55g)と、プロピレングリコールモノラウレート抗微生物成分(9g)と、安息香酸賦活剤(1g)とのブレンド。本発明の樹脂組成物は、グラム陰性菌、グラム陽性菌、カビ及び白カビに効果的である。好ましい組成物は、GRAS(一般に安全と認められる)である物質を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗微生物組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性ポリマーの使用により、埋立てられる廃棄物の量及び処分場の数が減少すると述べられている。生分解性物質は、堆肥化を導く条件に曝されたとき、分解されるのに適切な特性を有する。生分解性であると考えられる物質の例としては、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、ラクチドとグリコリドとのコポリマー、ポリ(コハク酸エチレン)及びこれらの組み合わせなどの脂肪族ポリエステルが挙げられる。
【0003】
脂肪族ポリエステルの分解は、加水分解、エステル交換、及び鎖の切断などを含む複数のメカニズムを通して生じる可能性がある。国際公開第94/07941号(グルーバー(Gruber)ら)に記載されているように、処理中このようなポリマーの不安定性は、高温で生じることができる。
【0004】
マイクロファイバーなどの脂肪族ポリエステルの処理については、米国特許第6,645,618号に記載されている。米国特許第6,111,160号(グルーバーら)には、メルトブロウン及びスパンボンドプロセスを介して不織布物品を形成するための、溶融安定性ポリラクチドの使用を開示している。
【0005】
抗微生物剤(例えば、抗生物質、消毒剤(抗ウイルス剤、抗真菌剤及び抗細菌剤など))は、現在の医学療法で重要な役割を果たしている。これは、皮膚科学並びに皮膚及び創傷の消毒の分野で特に重要である。例えば、米国特許出願公開第2005/0089539号(ショルツ(Scholz)ら)を参照のこと。
【0006】
抗微生物ポリマー組成物は、米国特許第5,639,466号(フォード(Ford)ら)及び同第6,756,428号(デネスク(Denesuk))により例証されるように、既知である。抗微生物活性を有する親水性ポリプロピレン繊維への抗微生物剤の添加は、米国特許出願公開第2004/0241216号(クルン(Klun)ら)に記載されている。これらの繊維性材料としては、不織布、織布、ニットウェブ及びニットバットが挙げられる。
【0007】
脂肪酸モノエステルなどの抗微生物剤と賦活剤との相乗効果は、国際公開第00/71183号(アンドリュース(Andrews)ら)に記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、抗微生物(好ましくは生体適合性)組成物を製造するための組成物、物品及び方法を目的とする。本発明の組成物は、溶融加工可能であってよく、種々の食品安全、医学及び浄水用途における有用性を有する。1つの態様では、組成物は、熱可塑性脂肪族ポリエステルと;抗微生物成分が脂肪族ポリエステルの1重量%を超えて存在する、ポリエステル内に組み込まれた抗微生物成分と;賦活剤とを含む。脂肪族ポリエステルは、有効な抗微生物組成物を得るために、抗微生物成分に対して十分な比率で存在する。抗微生物成分は、カチオン性抗微生物アミン化合物(好ましくは、脂肪族ポリエステルの5重量%を超える量で存在する)、多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、脂肪族アルコールのヒドロキシ酸エステル、これらのアルコキシル化誘導体(多価アルコール1モルあたり5モル未満のアルコキシド基を有する)及びこれらの組み合わせから選択される。賦活剤は、組成物中の抗微生物成分の抗微生物活性を強化する。
【0009】
別の態様では、本開示の組成物は生体適合性である。本組成物は、生分解性であり、米国食品医薬局(FDA)によりGRAS(一般に安全と認められる)直接食品添加物又は食品加工助剤のリストに記載されている成分を含む。
【0010】
一部の実施形態では、本発明の組成物は賦活剤を必要としない。好ましい組成物では、抗微生物成分は、5重量%超、より好ましくは13重量%超の脂肪族ポリエステルであり、オクトキシグリセリンは抗微生物成分の選択肢から除外される。抗微生物成分は、カチオン性抗微生物アミン化合物、多価アルコールの飽和又は不飽和脂肪族エーテル、アルコールのヒドロキシ酸エステル、これらのアルコキシル化誘導体、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0011】
代表的な脂肪族ポリエステルは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ブレンド及びこれらのコポリマーである。
【0012】
抗微生物成分を、C〜C14プロピレンモノエステル及びグリセロールモノエステルから選択してもよい。例は、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノカプリレート、グリセロールモノラウレート及びこれらの組み合わせである。
【0013】
本発明の物品は、上記組成物から製造される、成型高分子物品、高分子シート、高分子繊維、織布ウェブ、不織布ウェブ、多孔質膜、高分子発泡体、熱又は接着積層体、層状組成物及びこれらの組み合わせを含む。本開示の有用な物品の例は、本発明の組成物を含むフィルム、発泡体及び/又は織布若しくは不織布から製造される創傷接触材料、並びに、本発明の組成物から製造される手術用ドレープ又は手術用ガウンである。
【0014】
本開示の方法は、上記脂肪族ポリエステル及び抗微生物成分、並びにそれを含む実施形態用賦活剤を提供する工程と、これらの材料を生体適合性抗微生物組成物を得るのに十分なほど混合する工程とを含む。
【0015】
1つの態様では、ポリマー組成物は、ポリマーを押出成形できるように、溶融加工可能である。
【0016】
別の態様では、ポリマーは溶媒可溶性又は分散性であり、組成物は溶媒流延、溶媒紡糸してフィルム又は繊維を形成してもよく、発泡していてもよい。
【0017】
脂肪族ポリエステルと抗微生物成分(ポリエステルを可塑化することができる)との溶融加工可能な組成物は、生体適合性であり、抗微生物活性を示す。可塑化脂肪族ポリエステルは、一般に、低溶融加工温度を有し、より可撓性のある生産材料を得ることができる。乳酸などの材料及び提示された脂肪酸モノエステルは、GRASとして認められている。
【0018】
望ましくは、抗微生物成分は表面に移動してもよく、周囲のポリマーマトリクス又は媒体に放出され、そこで微生物の生育を制御する。本発明の組成物では、抗微生物成分は、脂肪族ポリエステルが分解及び/又は膨潤するとき放出され、それにある程度の自己殺菌特性を付与する。脂肪族ポリエステルの分解を制御して、抗微生物成分の放出特性を調節してもよい。抗微生物成分は、ポリマー中を移動することがある。別個に添加されるか又は脂肪族ポリエステルの分解中に発生し得る賦活剤は、抗微生物成分の殺生物活性を向上させる。組成物の脂肪族ポリエステルの分解は、本発明の組成物を含む物品の表面を新しくすることがあり、表面の汚染及びバイオフィルムの形成を低減し得る。
【0019】
抗微生物成分は生分解性であってよい。抗微生物成分は、加水分解、エステル交換又は細菌及び/若しくは細菌の酵素の作用により分解することがある。組成物全体が、環境的に許容可能な成分に分解してもよい。一部の実施形態では、抗微生物成分は分解に対して耐性を有してもよく、又は、本発明の組成物から製造される物品の耐用年数の間は感知できる程に分解しなくてもよい。生分解性及び非分解性成分の混合物を用いてもよい。
【0020】
本発明の樹脂組成物の好ましい実施形態は、制御放出特性及び生体適合性の両方を有する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の定義された用語に関して、別の定義が特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所において示されない限り、これらの定義が適用される。
【0022】
「抗微生物」又は「抗微生物活性」という用語は、細菌、真菌、藻類及びウイルスを含む病原性及び非病原性微生物を死滅させるのに十分な抗微生物活性を有することを意味する。好ましい抗微生物物質は、G.ニコレッティ(Nicoletti)、V.ボグホシアン(Boghossian)、F.グレビッチ(Gurevitch)、R.ボーランド(Borland)及びP.モーゲンロート(Mogenroth)「クロルヘキシジンのインビトロ抗微生物活性、並びに、イソチアゾリノン(カトン(Kathon)CG)及び臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)の混合物のインビトロ抗微生物活性(The Antimicrobial Activity in Vitro of Chlorhexidine, a Mixture of Isothiazolinones(Kathon CG)and Cetyl Trimethyl Ammonium Bromide(CTAB))」(「ジャーナル・オブ・ホスピタル・インフェクション(Journal of Hospital Infection)」第23巻、87〜111頁、1993年)に記載されているように、適切な中和剤を用いた死滅率アッセイにおいて、0.25重量%の濃度で、35℃にて、ミュラー−ヒントンブロス(Mueller Hinton broth)内で試験したとき、1−3×10cfu/mLの初期接種から60分間で黄色ブドウ球菌(S. aureus)(AATC 25923)が少なくとも1対数減少、好ましくは2対数減少、最も好ましくは4対数減少を示す。
【0023】
「生分解性」という用語は、細菌、真菌及び藻類などの天然微生物の作用並びに/又は加水分解、エステル交換、紫外線若しくは可視光線(光分解性)及び酵素機構への曝露などの天然環境因子又はこれらの組み合わせにより分解可能であることを意味する。
【0024】
「生体適合性」という用語は、生体組織内で、毒性、有害性又は免疫応答を発生させないことにより、生物学的に適合性のあることを意味する。生体適合性物質はまた、生化学的及び/又は加水分解プロセスにより分解し、生体組織に吸収され得る。用いる試験方法としては、組成物を、皮膚、創傷、並びに、食道又は尿道のような開口部に含まれる粘膜組織などの組織と接触させる用途のためのASTM F719、及び、組成物を組織内に注入する用途のためのASTM F763が挙げられる。
【0025】
「十分な量」又は「有効量」という用語は、組成物にあるとき、全体として、生物が許容可能な水準に帰するように、1種以上の微生物を低減する、生育を防ぐ、又はコロニー形成単位を排除する抗微生物(例えば、抗ウイルス、抗細菌又は抗真菌を含む)活性を提供する抗微生物成分及び/又は賦活剤の量を意味する。典型的には、これは組織に臨床症状を引き起こさない、又は、病気を引き起こすのに十分な量で、ある硬質表面から別の表面に微生物を蔓延させないほど十分に低い濃度であり、望ましくは検出できない水準である。成分の濃度又は量は、別々の場合を考えると、許容可能な濃度に死滅させることがないか、広範な望ましくない微生物を死滅させることがないか、又は素早く死滅させることがない、しかし、このような成分を一緒に用いるときに(同条件下で、同じ成分を単独で用いたときと比べて)抗微生物活性を強化する。測定可能な抗微生物活性は、米国繊維化学者・色彩技術者協会(American Association of Textile and Color Chemists)(AATCC)試験方法100−2004(「AATCC技術マニュアル(AATCC Technical manual)」80巻、2005年、149〜151頁)及び日本工業規格(JIS)Z 2801:2000(日本規格協会、2001年、1〜11頁)に更に記載されている。
【0026】
「賦活剤」という用語は、賦活剤を含まない組成物を単独で使用するときには、賦活剤を含む組成物と同程度の抗微生物活性を提供しないというような、抗微生物活性の有効性を強化する成分を意味する。抗微生物成分の非存在下における賦活剤は、感知できるほどのいかなる抗微生物活性も提供することがない。強化効果は、死滅水準、死滅速度、及び/又は死滅する微生物の範囲に関連する場合があり、全ての微生物について見られなくてもよい。実際、死滅水準の強化は、大腸菌のようなグラム陰性菌において、最も頻繁に見られる。賦活剤は、組成物の残りと組み合わせるとき、組み合わせた抗微生物活性が、賦活剤成分を含まない組成物の活性と抗微生物成分を含まない組成物の活性との合計よりも高いような、共力剤となることがある。
【0027】
「抗微生物成分」という用語は、一般に、少なくとも1種の細菌、真菌及び/又はウイルスを死滅させることができるか又は抗微生物活性を有する、約1.7E−21g(1000ダルトン)未満、多くの場合8.3E−22g(500ダルトン)未満の分子量を有する小分子である消毒剤を意味する。好ましい抗微生物成分は親油性であり、好ましくは1.0グラム/100グラム(1.0g/100g)脱イオン水以下の、水への溶解度を有する。長期間使用する用途では、好ましい抗微生物成分又は抗微生物脂質は、0.5g/100g脱イオン水以下、より好ましくは0.25g/100g脱イオン水以下、更により好ましくは0.10g/100g脱イオン水以下の、水への溶解度を有する。溶解度は、ヘンリーク・ボラム(Henrik Vorum)ら「pH7.4におけるリン酸緩衝液への長鎖脂肪酸の溶解度(Solubility of Long-Chain Fatty Acids in Phosphate Buffer at pH 7.4)」(「バイオケミカ・エト・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et. Biophysica Acta.)」第1126巻、135〜142頁、1992年)の「従来の溶解度評価(Conventional Solubility Estimations)」に記載されているように、放射性標識化合物を使用して記載される。好ましい抗微生物成分は、脱イオン水への溶解度が、脱イオン水100グラムあたり少なくとも100マイクログラム(μg)、より好ましくは、少なくとも500μg/100g脱イオン水、更により好ましくは、少なくとも1000μg/100g脱イオン水である。
【0028】
「脂肪」という用語は、特に指示がない限り、6〜22個(奇数又は偶数)の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル又はアルキレン部分を意味する。
【0029】
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包括される全ての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4及び5を含む)。
【0030】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば「化合物(a compound)」を含有する組成物への言及は、2種以上の化合物の混合物を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、用語「又は」は、その内容に別段の明確な指示がなされていない場合は、一般に「及び/又は」を含む意味で用いられる。
【0031】
特に指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用されている量又は成分、及び性質の測定値などを表す全ての数は、全ての例において、用語「約」により修飾されていることを理解されたい。したがって、特に指示がない限り、先行の本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値的パラメータは、本発明の教示を利用して当業者が得ようとする所望の性質に応じて変化する場合がある近似値である。最低でも、特許請求の範囲への同等物の原則の適用を限定する試みとしてではなく、少なくとも各数値的パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して、通常の四捨五入の適用によって解釈されなければならない。
【0032】
本発明で有用な脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)のホモ及びコポリマー、並びに、1種以上のポリオールと1種以上のポリカルボン酸との反応生成物から誘導されるこれらの脂肪族ポリエステルのホモ及びコポリマーが挙げられ、典型的には、1種以上のアルカンジオールと1種以上のアルカンジカルボン酸(又はアシル誘導体)との反応生成物から形成される。ポリエステルは、更に、分岐鎖、星型及びグラフトホモ及びコポリマーを形成するために、多官能性ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール及びこれらの組み合わせから誘導してもよい。脂肪族ポリエステルと1種以上の追加の半結晶質又は非晶質ポリマーとの混和性及び不混和性ブレンドを使用してもよい。
【0033】
脂肪族ポリエステルの有用な1つのクラスは、ヒドロキシ酸の縮合若しくは開環重合によって誘導されるポリ(ヒドロキシアルカノエート)又はその誘導体である。好適なポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、下式により表すことができる:
H(O−R−C(O)−)OH
式中、Rは、所望によりカテナリー(炭素鎖内で炭素原子に結合している)酸素原子に置換されている、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖であってよいアルキレン部分であり;nはエステルがポリマーであるような数であり、好ましくは、脂肪族ポリエステルの分子量が少なくとも1.7E−20g(10,000ダルトン)、好ましくは少なくとも4.9E−20g(30,000ダルトン)、最も好ましくは少なくとも8.3E−20g(50,000ダルトン)であるような数である。高分子量ポリマーは、一般に、溶融加工されたポリマー及び溶媒流延ポリマーの両方で、より良好な機械的特性を有するフィルムを生じるが、過剰な粘度は望ましくない。多くの実施形態において抗微生物成分が、高分子量ポリマーの溶融加工及び溶媒流延を可能にするポリエステル成分を可塑化することは、本発明の重要な利点である。したがって、脂肪族ポリエステルの分子量は、典型的には、1.7E−18g(1,000,000ダルトン)未満、好ましくは8.3E−19g(500,000ダルトン)未満、最も好ましくは4.9E−19g(300,000ダルトン)未満である。Rは、1個以上のカテナリー(すなわち、鎖内の)エーテル酸素原子を更に含んでもよい。一般に、ヒドロキシ酸のR基は、ペンダントヒドロキシル基が一級又は二級ヒドロキシル基であるようなものである。
【0034】
有用なポリ(ヒドロキシアルカノエート)としては、例えば、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(乳酸)(ポリラクチドとして知られる)、ポリ(3−ヒドロキシプロパノエート)、ポリ(4−ヒドロペンタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシペンタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシオクタノエート)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、及びポリグリコール酸(つまり、ポリグリコリド)のホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。上記ヒドロキシ酸の2種以上のコポリマー、例えば、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(ラクテート−コ−ヒドロキシプロパノエート)、ポリ(グリコリド−コ−p−ジオキサノン)及びポリ(乳酸−コ−グリコール酸)を用いてもよい。また、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)の2種以上のブレンド、並びに1種以上の半結晶質又は非晶質ポリマー及び/又はコポリマーとのブレンドも使用することができる。
【0035】
脂肪族ポリエステルは、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)のブロックコポリマーであってよい。本発明の組成物で有用な脂肪族ポリエステルとしては、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、星型分岐ランダムコポリマー、星型分岐ブロックコポリマー、樹状コポリマー、超分岐コポリマー、グラフトコポリマー及びこれらの組み合わせを挙げてもよい。
【0036】
脂肪族ポリエステルの別の有用なクラスとしては、1種以上のアルカンジオールと1種以上のアルカンジカルボン酸(又はアシル誘導体)との反応生成物から誘導される脂肪族ポリエステルが挙げられる。このようなポリエステルは、下記の一般式を有する:
【0037】
【化1】

【0038】
式中、R’及びR’’はそれぞれ1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖であってよいアルキレン部分であり;mは、エステルがポリマーであるような数であり、好ましくは脂肪族ポリエステルの分子量が少なくとも1.7E−20g(10,000ダルトン)、好ましくは少なくとも4.9E−20g(30,000ダルトン)、最も好ましくは少なくとも8.3E−20g(50,000ダルトン)であるが、1.7E−18g(1,000,000ダルトン)未満、好ましくは8.3E−19g(500,000ダルトン)未満、最も好ましくは4.9E−19g(300,000ダルトン)未満であるような数である。各nは、独立して0又は1である。R’及びR’’は、1個以上のカテナリー(すなわち、鎖内の)エーテル酸素原子を更に含んでよい。
【0039】
脂肪族ポリエステルの例としては、(a)以下の二塩基酸(又はその誘導体):コハク酸、アジピン酸、1,12ジカルボキシドデカン、フマル酸、グルタル酸(glutartic acid)、ジグリコール酸、及びマレイン酸のうち1種以上と;(b)以下のジオール:エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、5〜12個の炭素原子を有する1,2アルカンジオール、ジエチレングリコール、4.9E−22g(300ダルトン)〜1.7E−20g(10,000ダルトン)、好ましくは6.6E−22g(400ダルトン)〜1.3E−20g(8,000ダルトン)の分子量を有するポリエチレングリコール、4.9E−22g(300ダルトン)〜6.6E−21g(4000ダルトン)の分子量を有するプロピレングリコール、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシドから誘導されるブロック又はランダムコポリマー、ジプロピレングリコール及びポリプロピレングリコールのうち1種以上と;(c)所望により、少量、つまり0.5〜7.0モル%の、グリセロール、ネオペンチルグリコール及びペンタエリスリトールのような2個を超える官能基を有するポリオール、から誘導されるホモ及びコポリマーが挙げられる。
【0040】
このようなポリマーとしては、ポリブチレンスクシネートホモポリマー、ポリブチレンアジペートホモポリマー、ポリブリレンアジペート−スクシネートコポリマー、ポリエチレンスクシネート−アジペートコポリマー、ポリエチレングリコールスクシネート及びポリエチレンアジペートホモポリマーを挙げてもよい。
【0041】
市販の脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(L−ラクチド−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ブチレンスクシネート)及びポリ(ブチレンアジペート)が挙げられる。
【0042】
有用な脂肪族ポリエステルとしては、半結晶質ポリ乳酸から誘導されるものが挙げられる。ポリ(乳酸)すなわちポリラクチドは、その主要分解産物として乳酸を有しており、これは、一般に自然界に見られ、非毒性であり、食品、製薬、及び医療業界で広く使用されている。ポリマーは、乳酸二量体であるラクチドの開環重合によって調製され得る。乳酸は、光学的に活性であり、二量体には4種類の異なった形態:L,L−ラクチド、D,D−ラクチド、D,L−ラクチド(メソラクチド)及びL,L−ラクチドとD,D−ラクチドとのラセミ混合物が存在する。純粋化合物又はブレンドとしてこれらのラクチドを重合することによって、異なる立体化学及び異なる物理的性質(結晶化度を含む)を有するポリ(ラクチド)ポリマーを得ることができる。L,L又はD,D−ラクチドからは半結晶質ポリ(ラクチド)が生じるが、D,L−ラクチドから誘導されるポリ(ラクチド)は非晶質である。
【0043】
ポリラクチドは、好ましくは、ポリマーの固有結晶化度を最大にする、高い鏡像異性体比を有する。ポリ(乳酸)の結晶化度の程度は、ポリマー主鎖の規則性及び他のポリマー鎖と結晶化する能力に基づく。比較的少量の1種の鏡像異性体(D−など)が反対の鏡像異性体(L−など)と共重合する場合、ポリマー鎖は、不規則な形状となり、結晶性が低下する。これらの理由から、結晶化度が好ましいとき、結晶化度を最大にするために、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が1種の異性体であるポリ(乳酸)を有することが望ましい。
【0044】
D−ポリラクチドとL−ポリラクチドとの、およそ等モルのブレンドもまた有用である。このブレンドは、D−ポリ(ラクチド)及びL−(ポリラクチド)のいずれか単独(〜190℃)より高い融点(〜210℃)を有する固有の結晶構造を形成し、改善された熱安定性を有する(H.ツジ(Tsuji)ら、「ポリマー(Polymer)」40巻(1999年)6699〜6708頁を参照のこと)。
【0045】
また、ポリ(乳酸)と他の脂肪族ポリエステルとの、ブロックコポリマー及びランダムコポリマーを含むコポリマーを使用してもよい。有用なコモノマーとしては、グリコリド、β−プロピオラクトン、テトラメチルグリコリド、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、2−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸、α−ヒドロキシイソ吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシエチル酪酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、α−ヒドロキシ−β−メチル吉草酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシミリスチン酸、及びα−ヒドロキシステアリン酸が挙げられる。
【0046】
また、ポリ(乳酸)と、1種以上の他の脂肪族ポリエステル、又は1種以上の他のポリマーとのブレンドを使用してもよい。有用なブレンドの例としては、ポリ(乳酸)及びポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレングリコール/ポリスクシネート、ポリエチレンオキシド、ポリカプロラクトン並びにポリグリコリドが挙げられる。
【0047】
ポリ(ラクチド)は、米国特許第6,111,060号(グルーバー(Gruber)ら)、同第5,997,568号(リュー(Liu))、同第4,744,365号(カプラン(Kaplan)ら)、同第5,475,063号(カプランら)、同第6143863号(グルーバーら)、同第6,093,792号(グロス(Gross)ら)、同第6,075,118号(ワン(Wang)ら)、及び同第5,952,433号(ワンら)、国際公開第98/24951号(ツァイ(Tsai)ら)、同第00/12606号(ツァイら)、同第84/04311号(リン(Lin))、米国特許第6,117,928号(ヒルツネン(Hiltunen)ら)、同第5,883,199号(マッカーシー(McCarthy)ら)、国際公開第99/50345号(コルスタッド(Kolstad)ら)、同第99/06456号(ワンら)、同第94/07949号(グルーバーら)、同第96/22330号(ランドール(Randall)ら)及び同第98/50611号(ライアン(Ryan)ら)に記載されているように調製することができる。J.W.リーンスラグ(Leenslag)ら「ジャーナル・オブ・アプライド・ポリマー・サイエンス(J. Appl. Polymer Science)」29巻(1984年)2829〜2842頁、及びH.R.クリヘルドルフ(Kricheldorf)「ケモスフィア(Chemosphere)」第43巻(2001年)49〜43頁も参照してよい。
【0048】
ポリマーの分子量は、ポリマーが溶融体又は溶媒からの流延体のように加工され得るように選択すべきである。ポリラクチドの場合、例えば、分子量は約1.7E−20g(10,000ダルトン)〜1.7E−18g(1,000,000ダルトン)であってよく、好ましくは約4.9E−20g(30,000ダルトン)〜4.9E−19g(300,000ダルトン)である。「溶融加工可能」とは、脂肪族ポリエステルが流体であるか、又は、物品(例えば、フィルム)を加工するのに用いられる温度で汲み上げることができる若しくは押出成形することができ、その温度で物理的特性が目的とする用途には使用できない程乏しくなるまでは分解しない若しくはゲル化しないことを意味する。したがって、本発明の物質の多くから、押出成形、流延、及び熱加圧などによりフィルムを作製することができる。それらから、スパンボンド、ブロウンマイクロファイバー、及び溶融紡糸などのような溶融加工を用いて不織布を作製することができる。特定の実施形態はまた、射出成形することもできる。一般に、ポリマーの重量平均分子量(M)は、数平均分子量(M)に対する粘度の対数−対数プロットにより決定するとき、絡み合い分子量を上回る。絡み合い分子量を上回ると、プロットの勾配は約3.4となり、他方、より低分子量であるポリマーの勾配は1である。
【0049】
本開示の抗微生物組成物の脂肪族ポリエステルは、典型的には、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、最も好ましくは少なくとも65重量%の、本発明の組成物を含む。
【0050】
抗微生物成分は、少なくとも一部の抗微生物活性を提供する組成物の成分であり、つまり、少なくとも1種の微生物に対して少なくともいくらかの抗微生物活性を有する。それは、好ましくは、本発明の組成物から浸出し、細菌を死滅させるのに十分多い量で存在する。それはまた、生分解性であってもよく、及び/又は、植物若しくは植物生成物のような再生可能な資源から作製されてもよく若しくは誘導されてもよい。生分解性抗微生物成分は、加水分解的に又は酵素的に分解することができるエステル又はアミド結合のような、少なくとも1個の官能性結合を含んでよい。
【0051】
特定の実施形態では、抗微生物成分は非イオン性であり、最大6.2、最大5.8又は最大5.5の親水性/親油性バランス(HLB)を有する。HLBの他の好ましい範囲は、少なくとも3、少なくとも3.2又は少なくとも3.4である。HLBは、アットウッド(Attwood)「界面活性剤系(Surfactant Systems)」(チャップマン及びホール(Chapman and Hall)出版、ロンドン、1983年)に示されている官能基寄与計算(functional group contribution calculation)を用いて決定することができる。
【0052】
特定の抗微生物成分は非荷電であり、少なくとも7個の炭素原子を含有するアルキル又はアルケニル炭化水素鎖を有する。溶融加工の場合、好ましい抗微生物成分は揮発性が低く、加工条件下で分解しない。好ましい抗微生物成分は、2重量%未満、より好ましくは0.10重量%未満の水を含有する(カール・フィッシャー分析により測定)。含水量は、脂肪族ポリエステルの加水分解を防ぎ、押出成形フィルムに透明性を付与するために、低く維持される。水分レベルは、例えば50℃〜60℃を超える高温で乾燥した溶媒流延フィルムに対してと同様に制御すべきである。
【0053】
本発明の組成物中の抗微生物成分含量は(すぐ使用できる状態で)、典型的には、少なくとも1重量%、2重量%、5重量%、10重量%であり、時には15重量%を超える。低強度が望ましい、特定の実施形態では、抗微生物成分は、組成物の20重量%超、25重量%超、又は更には30重量%超で含まれる。
【0054】
抗菌成分としては、1種以上の、多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、若しくはこれらの(エステル及び/若しくはエーテルのいずれか又は両方の)アルコキシル化誘導体、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。より具体的には、抗微生物成分は、多価アルコールの(C7〜C12)飽和脂肪酸エステル(好ましくは、多価アルコールの(C8〜C12)飽和脂肪酸エステル)、多価アルコールの(C8〜C22)不飽和脂肪酸エステル(好ましくは、多価アルコールの(C12〜C22)不飽和脂肪酸エステル)、多価アルコールの(C7〜C12)飽和脂肪族エーテル(好ましくは、多価アルコールの(C8〜C12)飽和脂肪族エーテル)、多価アルコールの(C8〜C22)不飽和脂肪族エーテル(好ましくは、多価アルコールの(C12〜C22)不飽和脂肪族エーテル)、そのアルコキシル化誘導体及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。それらがモノエステル、ジエステル、モノエーテル、又はジエーテルであってよい、スクロースのエステル及びエーテルでない限り、好ましくは、エステル及びエーテルは、モノエステル及びモノエーテルである。モノエステル、ジエステル、モノエーテル及びジエーテルの様々な組み合わせを、本発明の組成物において使用することができる。
【0055】
好ましくは、多価アルコールの(C7〜C12)飽和及び(C8〜C22)不飽和モノエステル及びモノエーテルは、少なくとも純度80%(20%以下のジエステル及び/若しくはトリエステル、又は、ジエーテル及び/若しくはトリエーテルを有する)、より好ましくは純度85%、更により好ましくは純度90%、最も好ましくは純度95%である。不純エステル又はエーテルは、仮にあるとしても、十分な抗微生物活性を有しない。
【0056】
有用な多価アルコールの脂肪酸エステルは、下式を有することができる:
(R−C(O)−O)−R
式中、Rは、(C7〜C12)飽和脂肪酸(好ましくは(C8〜C12)飽和脂肪酸)、又は(C8〜C22)不飽和(好ましくは、C12〜C22)不飽和、ただしポリ不飽和を含む)脂肪酸の残基であり、Rは、多価アルコールの残基(典型的には及び好ましくは、グリセリン、プロピレングリコール及びスクロースであるが、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトールなどを含む広範な他のものを使用することもできる)であり、n=1又は2である。R基は、少なくとも1個の遊離ヒドロキシル基(好ましくは、グリセリン、プロピレングリコール、又はスクロースの残基)を含む。好ましい多価アルコールの脂肪酸エステルは、C7、C8、C9、C10、C11及びC12飽和脂肪酸から誘導されるエステルである。多価アルコールがグリセリン又はプロピレングリコールである実施形態においては、n=1であるが、多価アルコールがスクロースであるときは、n=1又は2である。一般に、C10〜C12脂肪酸から誘導されるモノグリセリドは、食品等級物質及びGRAS物質である。
【0057】
モノエステルの多くは、食品等級であることが報告されており、一般に安全な(GRAS)物質として認められており、食品防腐剤及び局所用医薬品として有効であることが報告されているため、脂肪酸エステルは、食品及び食品に触れる表面を処理して、多数のヒト病原体及び食品の損傷を低減するために特に有用である。例えば、カバラ(Kabara)「ジャーナル・オブ・フード・プロテクション(J. of Food Protection)」第44巻633〜647頁(1981年)及びカバラ「ジャーナル・オブ・フード・セイフティ(J. of Food Safety)」第4巻13〜25頁(1982年)には、ラウリシジン(LAURICIDIN)(一般にモノラウリンと呼ばれるラウリン酸のグリセロールモノエステル)、食品等級のフェノール及びキレート剤が、食品防腐剤系の設計において有用であり得ることが報告されている。ラウロイルエチルアルギネートもまた、食品使用についてFDAに承認されている。
【0058】
ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸及びヘプタン酸のグリセロールモノエステル、並びに/又は、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸及びヘプタン酸のプロピレングリコールモノエステルのような脂肪酸モノエステルは、グラム陽性菌、真菌、酵母及び脂質コーティングウイルスに対して活性を有するが、単独では一般にグラム陰性菌に対して活性を有しない。脂肪酸エステルを以下に記載する賦活剤と組み合わせると、組成物はグラム陰性菌に対して活性を有する。
【0059】
特定の抗微生物成分(例えば、脂肪酸モノエステル)は、脂肪族ポリエステルを可塑化することができる。代表的な脂肪酸モノエステルとしては、ラウリン(モノラウリン)酸、カプリル(モノカプリル)酸、及びカプリン(モノカプリン)酸のグリセロールモノエステル、並びに、ラウリン酸、カプリル酸、及びカプリン酸のプロピレングリコールモノエステル、並びに、スクロースのラウリン酸、カプリル酸、及びカプリン酸モノエステルが挙げられるが、これらに限定されない。他の脂肪酸モノエステルとしては、オレイン(18:1)、リノール(18:2)、リノレン(18:3)、及びアラコン(20:4)不飽和(多価不飽和を含む)脂肪酸のグリセリン及びプロピレングリコールモノエステルが挙げられる。一般に知られているように、18:1とは、例えば、18個の炭素原子と1個の炭素−炭素二重結合を有する化合物を意味する。好ましい不飽和鎖は、シス異性体に少なくとも1個の不飽和基を有する。特定の好ましい実施形態では、本組成物で使用するのに好適な脂肪酸モノエステルとしては、GML又は取引表記ラウリシジン(LAURICIDIN)(通常、モノラウリン又はグリセロールモノラウレートと称されるラウリン酸のグリセロールモノエステル)として既知のもの、グリセロールモノカプレート、グリセロールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノカプレート、プロピレングリコールモノカプリレート、及びこれらの組み合わせのような、ラウリン酸、カプリル酸、及びカプリン酸の既知のモノエステルが挙げられる。
【0060】
代表的なスクロースの脂肪酸ジエステルとしては、スクロースのラウリン酸、カプリル酸、及びカプリン酸ジエステル、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
多価アルコールの脂肪酸エーテルは、好ましくは下式を有する:
(R−O)−R
式中、Rは、(C7〜C12)飽和脂肪族基(好ましくは(C8〜C12)飽和脂肪族基)、又は(C8〜C22)不飽和(好ましくは、C12〜C22)不飽和、ただしポリ不飽和を含む)脂肪族基であり、Rは、多価アルコールの残基である。好ましい多価アルコールとしては、グリセリン、スクロース又はプロピレングリコールが挙げられる。グリセリン及びプロピレングリコールの場合、n=1であり、スクロースの場合、n=1又は2である。好ましい脂肪酸エーテルは、(C7〜C12)アルキル基(より好ましくは(C8〜C12)アルキル基)のモノエーテルである。
【0062】
代表的な脂肪族モノエーテルとしては、ラウリルグリセリルエーテル、カプリルグリセリルエーテル、カプリリルグリセリルエーテル、ラウリルプロピレングリコールエーテル、カプリルプロピレングリコールエーテル、及びカプリリルプロピレングリコールエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。他の脂肪族モノエーテルとしては、オレイル(18:1)、リノレイル(18:2)、リノレニル(18:3)、及びアラキドニル(arachonyl)(20:4)不飽和及びポリ不飽和脂肪族アルコールのグリセリン及びプロピレングリコールモノエーテルが挙げられる。特定の好ましい実施形態では、本組成物で使用するのに好適な脂肪族モノエーテルとしては、ラウリルグリセリルエーテル、カプリルグリセリルエーテル、カプリリルグリセリルエーテル、ラウリルプロピレングリコールエーテル、カプリルプロピレングリコールエーテル、カプリリルプロピレングリコールエーテル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。不飽和鎖は、好ましくは、シス異性体形において少なくとも1個の不飽和結合を有する。
【0063】
総アルコキシレートが比較的低く維持される限り、前述の脂肪酸エステル及び脂肪族エーテルのアルコキシル化誘導体(例えば、残りのアルコール基がエトキシ化及び/又はプロポキシル化されたもの)もまた、抗微生物活性を有する。好ましいアルコキシル化水準は、米国特許第5,208,257号に開示されている。エステル及びエーテルがエトキシ化されている場合、エチレンオキシドの総モル数は、好ましくは5未満、より好ましくは2未満である。
【0064】
多価アルコールの脂肪酸エステル又は脂肪族エーテルは、従来技術により、アルコキシル化、好ましくはエトキシ化及び/又はプロポキシル化することができる。アルコキシル化化合物は、好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びこれらの混合物、並びに類似のオキシラン化合物からなる群から選択される。
【0065】
本発明の組成物は、典型的には、すぐ使用できる状態の組成物の総重量を基準として、少なくとも1重量パーセント(重量%)、少なくとも2重量%、5重量%超、少なくとも6重量%、少なくとも7重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%又は少なくとも20重量%の総量の、脂肪酸エステル、脂肪族エーテル、アルコキシル化脂肪酸エステル又はアルコキシル化脂肪族エーテルを含む。「すぐ使用できる状態」という用語は、使用するための意図された形態の組成物を意味し、典型的には、5重量%未満の溶媒又は本発明の組成物を作製するために用いてもよい他の揮発性化合物を含む。好ましい実施形態においては、すぐ使用できる状態の組成物(つまり、溶媒を除く)の総重量を基準として、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下又は35重量%以下の総量で存在する。あるいは、これらの比率は、100重量部としての脂肪族ポリエステルに対して考えることができ、つまり150部以下の脂肪酸エステル、100部以下の脂肪酸エステル、67部以下の脂肪酸エステル、及び54部以下の脂肪酸エステルである。特定の組成物は、更に加工するための「マスターバッチ(masterbatch)」として使用することを目的とする場合、より高濃度であってよい。本明細書で使用するとき、「マスターバッチ」という用語は、溶融加工又は溶媒流延される組成物に添加される濃縮物を指す。
【0066】
1種以上の脂肪酸モノエステル、脂肪族モノエーテル、アルコールのヒドロキシル酸エステル又はそのアルコキシル化誘導体を含む本発明の組成物は、少量のジ脂肪酸エステル若しくはトリ脂肪酸エステル(つまり、脂肪酸ジエステル若しくはトリエステル)、ジ脂肪族エーテル若しくはトリ脂肪族エーテル(つまり、脂肪族ジエーテル若しくはトリエーテル)、又はこれらのアルコキシル化誘導体を含んでもよい。好ましくは、このような成分は、抗微生物成分の総重量の10重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、又は5重量%以下で含まれる。したがって、脂肪酸モノエステル、脂肪族モノエーテル、アルコールのヒドロキシル酸エステル又はそのアルコキシル化誘導体のモノエステル純度は、85%、好ましくは90%、より好ましくは95%を超えるべきである。例えば、グリセリンのモノエステル、モノエーテル又はアルコキシル化誘導体の場合、好ましくは、組成物中に存在する抗微生物(モノエステル又はモノエーテル)成分の総重量を基準として、10重量%以下、7重量%以下、6重量%以下又は5重量%以下の、ジエステル、ジエーテル、トリエステル、トリエーテル又はこれらのアルコキシル化誘導体が存在する。好ましくは、トリエステル又はジエステル含量は、抗微生物成分の抗微生物効果を保つために低く維持される。
【0067】
抗微生物成分の追加のクラスは、好ましくは下式のヒドロキシル官能性カルボン酸の脂肪族アルコールエステルである:
−O−(−C(O)−R−O)
式中、Rは、(C7〜C14)飽和アルキルアルコール(好ましくは、(C7〜C12)飽和アルキルアルコール、より好ましくは(C8〜C12)飽和アルキルアルコール)又は(C8〜C22)不飽和アルコール(ポリ不飽和アルコールを含む)の残基であり、Rは、ヒドロキシカルボン酸の残基であり、ヒドロキシカルボン酸は、以下の式を有する:
(CROH)(CHCOOH
式中、R及びRは、それぞれ独立してH又は(C1〜C8)飽和直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキル基、(C6〜C12)アリール基、又は(C6〜C12)アラルキル若しくはアルカリル基であり、アルキル基は飽和直鎖、分岐鎖若しくは環状であり、R及びRは、所望により、1個以上のカルボン酸基によって置換されていてよく、p=1又は2であり、q=0〜3であり、n=1、2又は3である。R基は、1個以上の遊離ヒドロキシル基を含んでよいが、好ましくはヒドロキシル基を含まない。好ましいヒドロキシカルボン酸の脂肪族アルコールエステルは、分岐鎖又は直鎖C8、C9、C10、C11又はC12アルキルアルコールから誘導されるエステルである。ヒドロキシ酸は典型的には、1個のヒドロキシル基及び1個のカルボン酸基を有する。
【0068】
1つの態様では、抗微生物成分としては、(C2〜C8)ヒドロキシカルボン酸の(C7〜C14)飽和脂肪族アルコールモノエステル(好ましくは、(C2〜C8)ヒドロキシカルボン酸の(C7〜C12)飽和脂肪族アルコールモノエステル、より好ましくは、(C2〜C8)ヒドロキシカルボン酸の(C8〜C12)飽和脂肪族アルコールモノエステル)、(C2〜C8)ヒドロキシカルボン酸の(C8〜C22)モノ又はポリ不飽和脂肪族アルコールモノエステル、前述のいずれかのアルコキシル化誘導体、又はこれらの組み合わせが挙げられる。ヒドロキシカルボン酸部分は、脂肪族及び/又は芳香族基を含んでよい。例えば、サリチル酸の脂肪族アルコールエステルが可能である。本明細書で使用するとき、「脂肪族アルコール」は、偶数又は奇数の炭素原子を有するアルキル又はアルキレン多官能性アルコールである。
【0069】
代表的なヒドロキシカルボン酸の脂肪族アルコールモノエステルとしては、オクチルラクテート、2−エチルヘキシルラクテート(プラック(Purac)(イリノイ州リンカンシャー(Lincolnshire))製のプラソルブ(Purasolv)EHL、ラウリルラクテート(ケミック・ラボラトリーズ(Chemic Laboratorie)(マサチューセッツ州カントン(Canton))製のクリスタフィル(Chrystaphyl)98)、ラウリルラクチルラクテート(lacate)、2−エチルヘキシルラクチルラクテート、のような乳酸の(C6〜C12)脂肪族アルコールエステル;グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、マンデル酸、グルコン酸、酒石酸及びサリチル酸の(C8〜C12)脂肪族アルコールエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
総アルコキシレートが比較的低く維持される限り、ヒドロキシル官能性カルボン酸基の脂肪族アルコールエステルのアルコキシル化誘導体(例えば、残りのアルコール基がエトキシ化及び/又はプロポキシル化されたもの)もまた、抗微生物活性を有する。好ましいアルコキシル化水準は、ヒドロキシカルボン酸1モルあたり5モル未満、より好ましくは2モル未満である。
【0071】
エステル結合を含む上記抗微生物成分は、加水分解に感受性であり、具体的には極端なpH(4未満又は10超)で水に曝露することにより、又は、エステルを対応する酸及びアルコールに酵素的に加水分解することができる特定の細菌により分解され得、これは特定の用途で望ましい場合がある。例えば、物品は、少なくとも1個のエステル基を含む抗微生物成分を組み込むことにより、急速に分解するように作製してもよい。物品の長期間保持が望ましい場合、加水分解感受性基を含まない、抗微生物成分を用いてもよい。例えば、脂肪族モノエーテルは、通常の加工条件下で加水分解感受性ではなく、微生物の攻撃に対して耐性を有する。
【0072】
抗微生物成分の別のクラスとしては、カチオン性アミン抗微生物化合物が挙げられ、これは抗微生物プロトン化三級アミン及び小分子四級アンモニウム化合物を含む。代表的な小分子四級アンモニウム化合物としては、塩化ベンザルコニウム及びそのアルキル置換誘導体、ジ−長鎖アルキル(C8〜C18)四級アンモニウム化合物、ハロゲン化セチルピリジニウム及びその誘導体、塩化ベンゼトニウム及びそのアルキル置換誘導体、オクタニジン、並びにこれらの適合性のある組み合わせが挙げられる。
【0073】
抗微生物成分として有用なカチオン性消毒剤及び殺菌剤としては、典型的には、結合した少なくとも1個のC6〜C18直鎖若しくは分岐鎖アルキル又はアラルキル鎖を有する、1個以上の四級アンモニウム基を含む、小分子四級アンモニウム化合物が挙げられる。好適な化合物としては、S.ブロック(Block, S.)「殺菌、滅菌及び防腐(Disinfection, Sterilization and Preservation)」第4版(リー&フェビジャー社(Lea & Febiger)、1991年)第13章に開示されているものが挙げられ、下式を有することができる:
10NR1112+
式中、R及びR10は、N、O又はSにより置換されていてよいC1〜C18直鎖若しくは分岐鎖アルキル、アルカリル又はアラルキル鎖であるが、ただし少なくとも1個のR又はR10がN、O又はSにより置換されていてよいC8〜C18直鎖若しくは分岐鎖アルキル、アルカリル又はアラルキル部分であり、R11及びR12は、C1〜C6アルキル、フェニル、ベンジル若しくはC8〜C12アルカリル基であるか、又は、R11及びR12は四級アンモニウム基のNを含むピリジン環のような環を形成してもよく、Xはアニオン、好ましくはCl又はBrのようなハロゲン化物であるが、おそらくメトサルフェート、エトサルフェート、ホスフェート又は類似のアニオンである。このクラスの化合物は、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、モノアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム及びオクテニジンのようなアルキル置換ベンゼトニウムハロゲン化物である。
【0074】
四級アンモニウム抗微生物成分の例は、C8〜C18のアルキル鎖長、好ましくはC12〜C16のアルキル鎖長、より好ましくは鎖長の混合を有するベンザルコニウムハロゲン化物、例えば、40%のC12アルキル鎖、50%のC14アルキル鎖及び10%のC16鎖を含む塩化ベンザルコニウム(ロンザグループ(Lonza Group Ltd.)(スイス、バーゼル(Basel))からバークオート(Barquat)MB−50として入手可能);フェニル環のアルキル基によって置換されたベンザルコニウムハロゲン化物(バークオート4250として入手可能);C8〜C18アルキル基を有するジメチルジアルキルアンモニウムハロゲン化物又はこのような化合物の混合物(ロンザ製バーダック(Bardac)2050、205M及び2250として入手可能);並びに、塩化セチルピリジニウム(メレールラボ(Merrell Labs)からセパコールクロリドとして入手可能なセパコールクロリド)のようなセチルピリジニウムハロゲン化物;ベンゼトニウムハロゲン化物及びアルキル置換ベンゼトニウムハロゲン化物(ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)からハイアミン(Hyamine)1622及びハイアミン10Xとして入手可能)である。
【0075】
カチオン性抗微生物剤の有用なクラスは、プロトン化三級アミンに基づく。好ましいカチオン性抗微生物プロトン化三級アミンは、少なくとも1個のC6〜C18アルキル基を有する。このクラスのものは、PCT国際公開第01/94292号、同第03/013454号、及び同第03/034842号に記載されているようなアミノ酸の生分解性誘導体、並びにソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム又はソルビン酸との組み合わせ(国際公開第02/087328号を参照のこと)である。これらのカチオン性抗微生物成分は、環境中又は生体組織上で分解することができる。国際公開第03/013454号は、下式を有するこのような抗微生物成分について教示している:
【0076】
【化2】

【0077】
式中、XはBr、Cl又はHSOであってよく、R15は酸、例えば、飽和脂肪族ヒドロキシ酸由来の直鎖C8〜C14アルキル鎖であってよく、R14はC1〜C18直鎖若しくは分岐鎖アルキル又は芳香族部分であり、R13は−NH3、
【0078】
【化3】

【0079】
であってよく、n1は0〜4であってよい。
【0080】
このクラスの物質の有用なメンバーの1つは、ラウロイルエチルアルギネート(アミノ酸アルギニンのエチルエステル及びラウリン酸アミド(A&Bイングレーディエンツ(A&B Ingredients)(ニュージャージー州フェアフィールド(Fairfield))からミレナット(Mirenat)Nとして入手可能)である。これらの組成物の製造方法は、国際公開第01/94292号に開示されている。
【0081】
カチオン性抗微生物成分は、典型的には、少なくとも1.0重量%、好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは5.0重量%超、更により好ましくは少なくとも6.0重量%、更により好ましくは少なくとも10重量%、最も好ましくは少なくとも20.0重量%、場合によっては25重量%超の濃度で、本発明の組成物に添加される。好ましくは、濃度は50重量%未満、より好ましくは40重量%未満、最も好ましくは35重量%未満である。ソルビン酸及び/又はその塩のような特定の賦活剤と併用するとき、より低い濃度も可能であることがある。
【0082】
本発明の抗微生物成分は、効果的に微生物を死滅させるために、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。不安定な組成物が生じるか又は互いに不適合である抗微生物成分の組み合わせは避けるべきである。例えば、四級アンモニウム化合物は、アルキルカルボン酸又はサルフェート部分及び/若しくはスルホン酸を含有する界面活性剤と不適合である可能性があり、特定の塩は四級アンモニウム化合物の沈殿を引き起こす可能性がある。
【0083】
本明細書で使用するとき、「消毒剤」という用語は、疾病を引き起こす微生物の生育及び繁殖を阻害する物質、特に皮膚、創傷、及び粘膜組織などのような哺乳類の組織に接触する可能性のあるこれらの物質を指す。多くの場合、「消毒剤」は、哺乳類の病原体を制御するために使用するとき、抗微生物剤と同義である。本明細書で記載する消毒剤及び抗微生物成分は、単独で、組み合わせて、又は他の抗微生物成分とともに用いてよい。既に記載したものと一緒に用いるための更なる抗微生物成分としては、米国特許公開第20060051384号に記載のように、ペルオキシド、C6〜C14アルキルカルボン酸及びアルキルエステルカルボン酸、抗微生物天然油、高分子ビグアニド(ポリヘキサメチレンビグアニドなど)及びビスビグアニド(クロロヘキシジン及びクロロヘキシジングルコネートを含むその塩)並びにこれらの適合性のある組み合わせが挙げられる。表面上で本発明の組成物と併用してもよい他の適合性のある防腐剤は、ヨード、ヨードフォア、抗微生物金属並びに銀塩及び酸化銀、銅及び亜鉛塩のような金属塩である。更に、特定の抗生物質を本発明の組成物にブレンドしてもよく、又は、これらを含む物品の表面にコーティングしてもよく、例えば、ネオスポリン、ポリミキシン、バシトラシン、ムピロシン、リファンピン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、βラクタム抗生物質(ペニシリン、メチシリン及びアモキシシリンなど)、フルオロキノロン、クリンダマイシン、セファロスポリン、マクロライド並びにアミノグリコシドが挙げられる。
【0084】
本発明の組成物は、賦活剤(好ましくは共力剤)を含み、特に、大腸菌及びシュードモナス(Psuedomonas)属といったグラム陰性菌に対する抗微生物活性を強化することができる。選択された賦活剤は、好ましくは、細菌の細胞外皮に影響を与える。理論に束縛されるものではないが、賦活剤は、抗微生物成分をより容易に細胞の細胞質に入れることにより、及び/又は、細胞外皮の破壊を促進することにより、機能すると現在考えられている。賦活剤成分としては、α−ヒドロキシ酸、β−ヒドロキシ酸、他のカルボン酸、(C2〜C6)飽和若しくは不飽和アルキルカルボン酸、(C6〜C16)アリールカルボン酸、(C6〜C16)アラルキルカルボン酸、(C6〜C12)アルカリルカルボン酸、フェノール化合物(特定の酸化防止剤及びパラベンなど)、(C5〜C10)モノヒドロキシアルコール、キレート剤、グリコールエーテル(つまり、エーテルグリコール)又は分解して上記賦活剤の1種を放出するオリゴマーを挙げてもよい。このようなオリゴマーの例は、グリコール酸、乳酸又は少なくとも6個の反復単位を有する両者のオリゴマーである。所望により、様々な組み合わせの賦活剤を用いることができる。
【0085】
α−ヒドロキシ酸、β−ヒドロキシ酸及び他のカルボン酸である賦活剤は、好ましくは、プロトン化された遊離酸の形態で存在する。酸性賦活剤の全てが遊離酸の形態で存在する必要はないが、以下に列挙する好ましい濃度は遊離酸の形態で存在する量を指す。製剤を酸性化する、又は、あるpHで緩衝化して抗微生物活性を維持するために、追加の、非α−ヒドロキシ酸、β−ヒドロキシ酸、又は他のカルボン酸である賦活剤を添加してもよい。脂肪族ポリエステル成分が加水分解されるのを避けるために、好ましくは、約2.5超、好ましくは約3超、最も好ましくは約3.5超のpKaを有する酸が用いられる。更に、カルボン酸基を含むキレート剤賦活剤は、好ましくは、遊離酸の形態で、少なくとも1個、より好ましくは少なくとも2個のカルボン酸基を有して存在する。以下に記載する濃度は、これを前提とする。プロトン化された酸の形態である賦活剤は、抗微生物効果を上昇させるだけでなく、脂肪族ポリエステル成分に組み込まれたとき、適合性を改善させると考えられる。
【0086】
1種以上の賦活剤を、所望の結果を生むために好適な濃度で、本発明の組成物に使用してもよい。賦活剤は、典型的には、すぐに使用できる状態の組成物の総重量を基準として、0.1重量%超、好ましくは0.25重量%超、より好ましくは0.5重量%超、更により好ましくは1.0重量%超、最も好ましくは1.5重量%超の総量で存在する。好ましい実施形態においては、それらは、すぐに使用できる状態の組成物の総重量を基準として、10重量%以下の総量で存在する。このような濃度は、典型的には、α−ヒドロキシ酸、β−ヒドロキシ酸、他のカルボン酸、キレート剤、フェノール、エーテルグリコール、及び(C5〜C10)モノヒドロキシアルコールに適用される。
【0087】
賦活剤成分の、抗微生物成分の総濃度との比は、重量基準で、好ましくは10:1〜1:300、より好ましくは5:1〜1:10の範囲内である。
【0088】
α−ヒドロキシ酸は、典型的には、下式の化合物である:
16(CR17OH)n2COOH
式中、R16及びR17は、それぞれ独立して、H又は(C1〜C8)アルキル基(直鎖、分岐鎖又は環状)、(C6〜C12)アリール又は(C6〜C12)アラルキル若しくはアルカリル基(アルキル基は直鎖、分岐鎖又は環状)であり、R16及びR17は、所望により、1個以上のカルボン酸基によって置換されていてよく、n2=1〜3、好ましくはn2=1〜2である。
【0089】
代表的なα−ヒドロキシ酸としては、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、2−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシブタン酸、マンデル酸、グルコン酸、グリコール酸、酒石酸、α−ヒドロキシエタン酸、アスコルビン酸、α−ヒドロキシオクタン酸、及びヒドロキシカプリル酸、並びにこれらの誘導体(例えば、ヒドロキシル、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、アルキル基、ハロゲン並びにこれらの組み合わせによって置換された化合物)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいα−ヒドロキシ酸としては、乳酸、リンゴ酸及びマンデル酸が挙げられる。これらの酸は、D、L、又はDL形であってよく、遊離酸、ラクトン、又はこれらの部分的塩として存在してもよい。このような形態は全て、「酸」という用語に包含される。好ましくは、酸は遊離酸の形態で存在する。特定の好ましい実施形態においては、本発明の組成物で有用なα−ヒドロキシ酸は、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される。他の好適なα−ヒドロキシ酸は、米国特許第5,665,776号(ユー(Yu))に記載されている。
【0090】
1個以上のα−ヒドロキシ酸を、所望の結果が得られるような量で、本発明の組成物に組み込むことができ、及び/又は、本発明の組成物を含む物品の表面に塗布してもよい。それらは、すぐ使用できる状態の組成物を基準として、少なくとも0.25重量%、少なくとも0.5重量%及び少なくとも1重量%の総量で存在してもよい。それらは、すぐ使用できる状態の組成物を基準として、10重量%以下、5重量%以下又は3重量%以下の総量で存在してもよい。
【0091】
α−ヒドロキシ酸賦活剤の、総抗微生物成分との重量比は、最大50:1、最大30:1、最大20:1、最大10:1、最大5:1又は最大1:1である。α−ヒドロキシ酸賦活剤と、総抗微生物成分との比は、少なくとも1:120、少なくとも1:80、又は少なくとも1:60であってよい。好ましくは、α−ヒドロキシ酸賦活剤と、総抗微生物成分との比は、1:60〜2:1の範囲内である。
【0092】
β−ヒドロキシ酸賦活剤は、典型的には、下式により表される化合物である:
18(CR19OH)n3(CHR20COOH 又は
【0093】
【化4】

【0094】
式中、R18、R19及びR20は、それぞれ独立して、H又は(C1〜C8)アルキル基(飽和直鎖、分岐鎖又は環状基)、(C6〜C12)アリール、又は(C6〜C12)アラルキル若しくはアルカリル基(式中、アルキル基は直鎖、分岐鎖又は環状)であり、R18及びR19は、所望により、1個以上のカルボン酸基によって置換されていてよく;m=0又は1であり;n3=1〜3(好ましくはn3=1〜2)であり;R21はH、(C1〜C4)アルキル又はハロゲンである。
【0095】
代表的なβ−ヒドロキシ酸としては、サリチル酸、β−ヒドロキシブタン酸、トロパ酸、及びトレトカン酸が挙げられるが、これらに限定されない。特定の好ましい実施形態では、本発明の組成物で有用なβ−ヒドロキシ酸は、サリチル酸、β−ヒドロキシブタン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される。他の好適なβ−ヒドロキシ酸は、米国特許第5,665,776号に記載されている。
【0096】
1個以上のβ−ヒドロキシ酸を、所望の結果を生むために好適な濃度で、本発明の組成物に使用してもよい。それらは、すぐ使用できる状態の組成物の総重量を基準として、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.25重量%又は少なくとも0.5重量%の総量で存在してもよい。それらはまた、すぐ使用できる状態の組成物の総重量を基準として、10重量%以下、5重量%以下、及び3重量%以下の総量で存在してもよい。より高濃度になれば、組織に対して刺激性になる可能性がある。あるいは、β−ヒドロキシ酸を、本発明の組成物を含む物品の表面に塗布してもよい。表面上に存在するとき、濃度は、物品の0.05重量%、好ましくは0.1重量%、より好ましくは0.25重量%、最も好ましくは0.5重量%であってよい。
【0097】
β−ヒドロキシ酸賦活剤の、総抗微生物成分との重量比は、好ましくは最大50:1、最大30:1、最大20:1、最大10:1、最大5:1又は最大1:1である。β−ヒドロキシ酸賦活剤の、総抗微生物成分との比は、好ましくは少なくとも1:120、少なくとも1:80又は少なくとも1:60である。好ましくは、β−ヒドロキシ酸賦活剤の、抗微生物成分との比は、1:60〜2:1、より好ましくは1:15〜1:1の範囲内である。
【0098】
低濃度の水を含む、又は本質的に水を含まない系では、エステル交換が、脂肪酸モノエステル及びこれらの活性成分のアルコキシル化誘導体の減少の原則経路である可能性があり、賦活剤を含有するカルボン酸の減少はエステル交換のために生じる可能性がある。したがって、特定のα−ヒドロキシ酸(AHA)及びβ−ヒドロキシ酸(BHA)はAHA又はBHAのヒドロキシル基の反応によりエステル抗微生物剤又は他のエステルをエステル交換する可能性が低いと考えられるため、これらが特に好ましい。例えば、フェノールのヒドロキシル基は非常に酸性のアルコールであり、したがって反応する可能性が非常に低いため、サリチル酸は、特定の製材中で特に好ましい可能性がある。無水物又は低水分含量製剤における他の特に好ましい化合物としては、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸及びグリコール酸が挙げられる。ヒドロキシル酸ではないが、ヒドロキシル基を含まない安息香酸及び置換安息香酸も、エステル基を形成しにくいため、好ましい。これは、溶融及び溶媒流延加工可能な系又は組成物の両方に適用される。
【0099】
α−及びβ−カルボン酸以外のカルボン酸は、好適な賦活剤である。それらは、典型的には12個以下の炭素原子を有するアルキル、アリール、アラルキル、又はアルカリルカルボン酸が挙げられる。これらの好ましいクラスは、以下の式により表すことができる:
22(CR23n2COOH
式中、R22及びR23は、それぞれ独立して、H又は(C1〜C4)アルキル基(直鎖、分岐鎖又は環状基であってよい)、(C6〜C12)アリール基、アリール基及びアルキル基の両方を含有する(C6〜C12)基(直鎖、分岐鎖又は環状基であってよい)であり、R22及びR23は、所望により、1個以上のカルボン酸基によって置換されていてよく;n2=0〜3であり、好ましくはn2=0〜2である。カルボン酸は、(C2〜C6)アルキルカルボン酸、(C6〜C16)アラルキルカルボン酸又は(C6〜C16)アルカリルカルボン酸であってよい。代表的な酸としては、酢酸、プロピオン酸、ソルビン酸、安息香酸、ベンジル酸、及びノニル安息香酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
1種以上のこのようなカルボン酸は、所望の結果を得るのに十分な量で、本発明の組成物中に使用してもよい。特定の実施形態では、それらは、すぐ使用できる状態の組成物の総重量を基準として、5重量%以下、好ましくは3重量%以下の総量で存在する。
【0101】
あるいは、カルボン酸賦活剤は、本発明の組成物から作製される物品の表面上に存在してもよい。表面上に存在するとき、用いられる量は、物品の0.05重量%、好ましくは0.1重量%、より好ましくは0.25重量%、最も好ましくは0.5重量%であってよい。
【0102】
カルボン酸(α−又はβ−ヒドロキシ酸以外の)の総濃度の、抗微生物成分の総濃度との重量比は、好ましくは10:1〜1:100、好ましくは2:1〜1:10の範囲内である。
【0103】
キレート剤(chelating agent)(つまり、キレート化剤(chelator))は、典型的には、溶液中で複数の配位部位に金属イオンが配位することが可能である有機化合物である。典型的にこれらのキレート剤は、ポリアニオン性化合物であり、多価金属イオンと最善に配位する。代表的なキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩(例えば、EDTA(Na)、EDTA(Na)、EDTA(Ca)、EDTA(K))、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム、アジピン酸、コハク酸、ポリリン酸、酸性ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミン五酢酸、1−ヒドロキシエチレン、1,1−ジホスホン酸、及びジエチレントリアミンペンタ−(メチレンホスホン酸)が挙げられるが、これらに限定されない。特定のカルボン酸、特にα−ヒドロキシ酸及びβ−ヒドロキシ酸、例えばリンゴ酸及び酒石酸もまた、キレート化剤として、機能することができる。
【0104】
また、シデロフォアのような第一鉄及び/又は第二鉄イオン、並びに鉄結合タンパク質に高度に特異的に結合する化合物も、キレート化剤として含まれる。鉄結合タンパク質としては、例えば、ラクトフェリン及びトランスフェリンが挙げられる。シデロフォアとしては、例えば、エンテロケリン(enterochlin)、エンテロバクチン、ビブリオバクチン、アンギバクチン、ピオケリン、ピオヴェルジン及びアエロバクチンが挙げられる。
【0105】
特定の実施形態では、本発明の組成物に有用なキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸及びその塩、コハク酸並びにこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。好ましくは、EDTAの遊離酸又はモノ若しくはジ塩形態のいずれかが用いられる。
【0106】
1種以上のキレート剤を、所望の結果を生むために好適な濃度で、本発明の組成物に使用してもよい。それらは、上記カルボン酸と同様の量で用いることができる。
【0107】
キレート剤(α−又はβ−ヒドロキシ酸以外の)の総濃度の、抗微生物成分の総濃度との比は、好ましくは、重量基準で、10:1〜1:100、より好ましくは1:1〜1:10の範囲内である。
【0108】
フェノール化合物賦活剤は、典型的には、以下の一般構造を有する化合物である:
【0109】
【化5】

【0110】
式中、m2は0〜3(特に1〜3)であり、n4は1〜3(特に1〜2)であり、各R24は独立して、所望により鎖内若しくは鎖上のO(例えばカルボニル基など)又は鎖上のOHによって置換されていてよい、12個以下の炭素原子(特に8個以下の炭素原子)を有するアルキル又はアルケニルであり、各R25は独立して、H又は所望により鎖内若しくは鎖上のO(例えばカルボニル基など)又は鎖上のOHによって置換されていてよい、8個以下の炭素原子(特に6個以下の炭素原子)を有するアルキル若しくはアルケニルであるが、R25がHである場合、n4は好ましくは1又は2である。
【0111】
フェノール賦活剤の例としては、ブチル化ヒドロキシアニソール、例えば、3(2)−tert−ブチル−4−メトキシフェノール(BHA)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフェノール、2,6−ジ−tert−4−ヘキシルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−オクチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−デシルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−4−ブチルフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルフェノール、3,5−ジ−tert−ブチルフェノール、4,6−ジ−tert−ブチル−レゾルシノール、メチルパラベン(4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル)、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、2−フェノキシエタノール、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。フェノール化合物の1つのグループは、R25がHであり、R24が8個以下の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、n4が0、1、2又は3である上記一般構造を有するフェノール種であり、特に少なくとも1個のR24がブチル、具体的にはtert−ブチルであり、特にこれらの非毒性メンバーが好ましい。あるフェノール共力剤は、BHA、BHT、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン及びブチルパラベン並びにこれらの組み合わせである。
【0112】
1種以上のフェノール化合物を、所望の結果を生むために好適な濃度で、本発明の組成物に使用してもよい。フェノール化合物の濃度は、広範囲で変動することができるが、典型的には、組成物の総重量を基準として0.5重量%超であり、これは上記エステルが上記範囲内で存在するとき効果的であり得る。一部の実施形態では、それらは、組成物の総重量を基準として、少なくとも0.75重量%又は少なくとも1.0重量%の総量で存在する。他の実施形態では、それらは、すぐ使用できる状態の組成物を基準として、8重量%以下、4重量%以下又は2重量%以下の総量で存在する。
【0113】
市販のPLA(ポリ(乳酸))には、酸化防止剤が、例えば、約0.25〜0.50重量%で存在してもよい。酸化防止剤を脂肪族ポリエステルに添加するとき、酸化防止剤は、材料内で均一に混合され(またおそらく溶解し)ており、抗微生物活性を強化するために表面上に最小限の量で存在すると考えられる。典型的には、抗微生物成分に賦活剤として用いるとき(例えば、1%超)よりも、酸化防止剤用途で使用されるとき(例えば、0.1%以下)の方が、フェノール化合物の濃度は著しく低い。フェノール化合物は、組成物の表面上に存在してもよい。表面上に存在するとき、濃度は、塗布される物品の少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも0.25重量%、最も好ましくは少なくとも0.5重量%であってよい。
【0114】
フェノール化合物の総濃度の、抗微生物成分の総濃度との重量比は、重量基準で、1:1〜1:100、好ましくは1:1〜1:10の範囲内であってよい。
【0115】
フェノール化合物の上記濃度は、その後希釈するための濃縮処方を目的とする場合でない限り、標準的に見られる。抗微生物効果を提供するためのフェノール化合物及び抗微生物成分の最低濃度は、具体的な用途によって変化する。
【0116】
追加の賦活剤は、C5〜C10モノヒドロキシアルコール(例えば、オクタノール及びデカノール)を含む5〜10個の炭素原子を有するモノヒドロキシアルコールである。特定の実施形態では、本発明の組成物で有用なアルコールは、n−ペンタノール、2ペンタノール、n−ヘキサノール、2メチルペンチルアルコール、n−オクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、デカノール及びこれらの混合物の群から選択される。
【0117】
C5〜C10アルコールは、組成物を基準として、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%又は少なくとも5重量%の総量で存在することができる。C5〜C10アルコールは、組成物の総重量を基準として、20重量%以下、15重量%以下、又は10重量%以下の総量で存在することができる。C5〜C10アルコールは、ポリマー及び抗微生物成分の組成物を含む物品の表面上に塗布することができる。表面上に存在するとき、量は、組成物が塗布される物品の少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも0.25重量%、最も好ましくは少なくとも0.5重量%であってよい。
【0118】
更なる賦活剤は、エーテルグリコールである。代表的なエーテルグリコールとしては、下式のものが挙げられる:
R’’’O−(CHCHR’’’’)n5(CHCHR’’’’O)H
式中、R’’’はH、(C1〜C8)アルキル、又は(C6〜C12)アラルキル若しくはアルカリルであり、各R’’’’は独立してH、メチル又はエチルであり、n5=0〜5、好ましくは1〜3である。例としては、2−フェノキシエタノール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、商品名ドワノール(DOWANOL)DB(ジ(エチレングリコール)ブチルエーテル)、ドワノールDPM(ジ(プロピレングリコール)モノメチルエーテル)及びドワノールTPnB(トリ(プロピレングリコール)モノブチルエーテル)として入手可能な製品ライン、並びにダウ・ケミカル社(Dow Chemical Company)(ミシガン州ミッドランド(Midland))から入手可能な多くの他のものが挙げられる。
【0119】
1個以上のエーテルグリコールは、すぐ使用できる状態の組成物を基準として、少なくとも0.5重量%の総量で存在することができる。一部の実施形態では、それらは、すぐに使用できる状態の組成物の総重量を基準として、20重量%以下の総量で存在する。エーテルグリコールは、本発明の組成物を含む物品の表面上に存在してもよい。表面上に存在するとき、量は、グリコールが本発明の組成物の一部として塗布される物品の、少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも0.25重量%、最も好ましくは少なくとも0.5重量%であってよい。
【0120】
賦活剤を放出するオリゴマーは、多くの方法により調製することができる。例えば、オリゴマーは、標準的なエステル交換技術により、α−ヒドロキシ酸、β−ヒドロキシ酸又はこれらの混合物から調製してもよい。典型的には、これらのオリゴマーは、少なくとも2個のヒドロキシ酸単位、好ましくは少なくとも10個のヒドロキシ酸単位、最も好ましくは少なくとも50個のヒドロキシ酸単位を有する。例えば、乳酸とグリコール酸とのコポリマーは、実施例の部分に示すように調製してもよい。
【0121】
あるいは、(C2〜C6)ジカルボン酸及びジオールのオリゴマーは、標準的なエステル交換技術により調製してもよい。これらのオリゴマーは、好ましくは少なくとも2個のジカルボン酸単位、好ましくは少なくとも10個のジカルボン酸単位、最も好ましくは少なくとも50個のジカルボン酸単位を有する。
【0122】
用いられる賦活剤放出オリゴマーポリエステルは、典型的には、1.7E−20g(10,000ダルトン)未満、好ましくは1.3E−20g(8,000ダルトン)未満の重量平均分子量を有する。
【0123】
これらのオリゴマーポリエステルは加水分解され得る。加水分解は、酸性又は塩基性環境、例えばpH5未満又は8超で加速することができる。オリゴマーは、組成物中又は用いられる環境中に存在する、例えば哺乳類の組織又は環境中の微生物に由来する、酵素により酵素的に分解され得る。
【0124】
本発明の組成物は、組成物の適合性を助長するために、表面を湿らすのを補助するために、並びに/又は微生物と接触して死滅させるのに役立つために、1種以上の界面活性剤を含むことができる。本明細書で使用するとき、「界面活性剤」という用語は、水の表面張力及び/又は水と不混和性液体との間の界面張力を減少させることが可能な両親媒性物質(共有結合している極性及び無極性領域の両方を有する分子)を意味する。この用語は、石鹸、洗剤、乳化剤、及び界面活性剤などを含むことを意味する。界面活性剤は、カチオン性、アニオン性、非イオン性、又は両性であってよい。生分解性が重要である用途では、生分解性界面活性剤を組み込むことが望ましい場合があり、これは典型的に、加水分解的に又は酵素的に切断され得るエステル及び/又はアミド基を含む。種々の従来の界面活性剤を使用してもよいが、特定のエトキシ化界面活性剤は、一部の抗微生物脂質成分の抗微生物効果を低下させる又はなくす場合がある。
【0125】
この効果の理由は知られていないが、全てのエトキシ化界面活性剤がこの負の効果を示す訳ではない。例えば、ポロキサマー(ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド)界面活性剤は、抗微生物脂質成分と適合性があることが示されているが、ICIにより商品名ツイーン(TWEEN)として販売されているもののようなエトキシ化ソルビタン脂肪酸エステルは適合性ではない。これらは大まかな一般化であり、活性は配合に依存する可能性があることに留意すべきである。当業者は、配合を作製して、本明細書の実施例に記載するように、抗微生物活性を試験することにより、界面活性剤の適合性を決定することができる。様々な界面活性剤の組み合わせを使用することができる。
【0126】
特定の抗微生物成分は両親媒性物質であり、界面活性であり得る。例えば、本明細書で記載する特定の抗微生物アルキルモノグリセリドは界面活性である。本発明の特定の実施形態の場合、抗微生物脂質成分は界面活性剤成分とは異なると考えられる。
【0127】
少なくとも4又は少なくとも8のHLB(つまり、親水性と親油性のバランス)を有する界面活性剤が好ましい。より好ましい界面活性剤は、少なくとも12のHLBを有する。最も好ましい界面活性剤は、少なくとも15のHLBを有する。
【0128】
界面活性剤の様々なクラスの例を、以下に記載する。特定の好ましい実施形態では、本発明の組成物で有用な界面活性剤は、スルホネート、サルフェート、ホスホネート、ホスフェート、ポロキサマー(ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー)、アルキルラクテート、アルキルカルボキシレート、アラルキルカルボキシレート、アルキルエトキシ化カルボキシレート、アラルキルエトキシ化カルボキシレート、カチオン性界面活性剤及びこれらの混合物からなる群から選択される。特定のより好ましい実施形態では、本発明の組成物で有用な界面活性剤は、スルホネート、サルフェート、ホスフェート及びこれらの混合物からなる群から選択される。1つの態様では、界面活性剤は、(C8〜C22)アルキルサルフェート塩(例えば、ナトリウム塩)、ジ(C8〜C13アルキル)スルホスクシネート塩、C8〜C22アルキルサルコシネート(sarconsinate)及びこれらの組み合わせから選択される。
【0129】
1種以上の界面活性剤を、所望の結果を生むために好適な濃度で、本発明の組成物中及び/又は上に使用してもよい。一部の実施形態では、組成物中で使用するとき、それらは、すぐに使用できる状態の組成物の総重量を基準として、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.5重量%、又は少なくとも1.0重量%の総量で存在する。他の実施形態では、それらは、すぐに使用できる状態の組成物の総重量を基準として、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下又は5重量%以下の総量で存在する。界面活性剤の総濃度の、抗微生物成分の総濃度との比は、重量基準で5:1〜1:100、3:1〜1:10、又は2:1〜1:3の範囲内であってよい。界面活性剤は、本発明の組成物を含む物品の表面上に存在してもよい。表面上に存在するとき、量は、界面活性剤が塗布される物品の0.05重量%、好ましくは0.1重量%、より好ましくは0.25重量%、最も好ましくは0.5重量%であってよい。
【0130】
代表的なカチオン性界面活性剤としては、所望によりポリオキシアルキレン化された一級、二級又は三級脂肪族アミンの塩;テトラアルキルアンモニウム、アルキルアミドアルキルトリアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウム、トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウム、又はアルキルピリジニウムハロゲン化物(塩化物又は臭化物)のような四級アンモニウム塩、並びに、メトサルフェート及びエトサルフェートなどだがこれらに限定されないアルキルサルフェートなどだがこれらに限定されない他のアニオン性対イオン;イミダゾリン誘導体;カチオン性のアミンオキシド(例えば、酸性pHで)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
カチオン性界面活性剤は、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウム及びアルキルピリジニウムハロゲン化物、並びに、メトサルフェート及びエトサルフェートなどだがこれらに限定されないC1〜C4アルキルサルフェートなどだがこれらに限定されない他のアニオン性対イオン、並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0132】
以下の式の、アルキル及びアルキルアミドアルキルジアルキルアミンオキシドを含む、アミンオキシド界面活性剤を用いることができる:
(R26−N→O
式中、R26は、(C1〜C30)アルキル基(好ましくは(C1〜C14)アルキル基)又は(C6〜C18)アラルキル(aralklyl)若しくはアルカリル基であって、これらの基のいずれかは、所望により、アミド、エステル及びヒドロキシなどのようなN−、O−又はS−を含有する基によって、鎖内又は鎖上が置換されていてよい。各R26は、同一であっても異なってもよいが、ただし少なくとも1個のR26が少なくとも8個の炭素を含む。所望により、R26基は、結合して、窒素を有する複素環を形成し、アルキルモルホリン及びアルキルピペラジンなどのアミンオキシドのような界面活性剤を形成する。このような界面活性剤の1つでは、2個のR26基はメチルであり、1個のR26基は(C12〜C16)アルキル又はアルキルアミドプロピル基である。アミンオキシド界面活性剤の例としては、ラウリルジメチルアミンオキシド、ラウリルアミドプロピルジメチルアミンオキシド及びセチルアミンオキシドである、商品名アモニックス(AMMONYX)LO、LMDO、及びCOとして市販されているものが挙げられ、これらは全てステパン社(Stepan Company)(イリノイ州ノースフィールド(Northfield))製である。
【0133】
代表的なアニオン性界面活性剤としては、サルコシネート、グルタメート、アルキルサルフェート、ナトリウム又はカリウムアルキレス(alkyleth)サルフェート、アンモニウムアルキレスサルフェート、アンモニウムラウレス−n−サルフェート、ラウレス−n−サルフェート、イセチオネート、グリセリルエーテルスルホネート、スルホスクシネート、アルキルグリセリルエーテルスルホネート、アルキルホスフェート、アラルキルホスフェート、アルキルホスホネート及びアラルキルホスホネートが挙げられるが、これらに限定されない。これらのアニオン性界面活性剤は、金属又は有機アンモニウム対イオンを有し得る。特定の有用なアニオン性界面活性剤は、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、アルキルスルホネート、アルキルエーテルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルベンゼンエーテルサルフェート、アルキルスルホアセテート、二級アルカンスルホネート、及び二級アルキルサルフェートなどのようなスルホネート及びサルフェートからなる群から選択される。これらの多くは、下式により表すことができる:
26−(OCHCHn6(OCH(CH)CHp2−(Ph)−(OCHCHm3−(O)−SO
及び
26−CH[SO−M]−R27
式中、a及びb=0又は1であり、n6、n2及びm3=0〜100(好ましくは0〜20)であり;R26は上記定義の通りであるが、ただしR26又はR27の少なくとも1個は少なくともC8であり;R27は、所望により、N、O若しくはS原子又はヒドロキシル、カルボキシル、アミド若しくはアミン基によって置換されていてよい、(C1〜C12)アルキル基(飽和直鎖、分岐鎖又は環状基)であり;Ph=フェニルであり;Mは、H、Na、K、Li、アンモニウム又は、トリエタノールアミン若しくは四級アンモニウム基などのプロトン化三級アミンのようなカチオン性対イオンである。
【0134】
上記式中、エチレンオキシド基(つまり、「n6」及び「m3」基)及びプロピレンオキシド基(つまり、「p2」基)は、逆の順番並びに無作為、順次又はブロック配列で生じる場合がある。R26は、R28−C(O)N(CH)CHCH−並びに−OC(O)−CH−のようなエステル基(式中、R28は(C8〜C22)アルキル基(分岐鎖、直鎖又は環状基)である)のようなアルキルアミド基であってよい。例としては、ステパン社(イリノイ州ノースフィールド(Northfield))から入手可能なポリステップ(POLYSTEP)B12(n=3〜4であり、M=ナトリウムである)及びB22(n=12であり、M=アンモニウムである)、並びに、メチルタウリン酸ナトリウム(日光ケミカルズ(Nikko Chemicals Co.)(日本、東京)から商品名ニッコール(NIKKOL)CMT30として入手可能)などのラウリルエーテルサルフェートのようなアルキルエーテルスルホネート;クラリアント社(Clariant Corp.)(ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte))から入手可能なナトリウム(C14〜C17)二級アルカンスルホネート(α−オレフィンスルホネート)であるホスタプル(Hostapur)SASのような二級アルカンスルホネート;ステパン社から商品名アルファステップ(ALPHASTEP)PC−48として入手可能なメチル−2−スルホ(C12〜C16)エステルナトリウム及び2−スルホ(C12〜C16)脂肪酸二ナトリウムのようなメチル−2−スルホアルキルエステル;両方ともステパン社から、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム(商品名ランサノール(LANTHANOL)LAL)及びラウレススルホコハク酸二ナトリウム(ステパンマイルド(STEPANMILD)SL3)として入手可能なアルキルスルホアセテート及びアルキルスルホスクシネート;ステパン社からステパノール(STEPANOL)AMとして市販されているラウリル硫酸アンモニウムのようなアルキルサルフェート;サイテック・インダストリーズ(Cytec Industries)からエアゾール(Aerosol)OTとして入手可能なジオクチルスルホコハク酸ナトリウムのようなジアルキルスルホスクシネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
好適なアニオン性界面活性剤としてはまた、アルキルホスフェート、アルキルエーテルホスフェート、アラルキルホスフェート及びアラルキルエーテルホスフェートのようなホスフェートが挙げられる。多くは、下式により表すことができる:
[R26−(Ph)−O(CHCHO)n6(CHCH(CH)O)p2q2−P(O)[O
式中、Ph、R26、a、n6、p2及びMは上記定義の通りであり;rは0〜2であり;q2=1〜3であるが、ただし、q2=1であるときr=2であり、q2=2であるときr=1であり、q2=3であるときr=0である。上記のように、エチレンオキシド基(つまり、「n6」基)及びプロピレンオキシド基(つまり、「p2」基)は、逆の順番並びに無作為、順次又はブロック配列で生じる場合がある。例としては、クラリアント社から商品名ホスタファット(HOSTAPHAT)340KLとして市販されている、一般にトリラウレス−4−ホスフェートと呼ばれるモノ−、ジ−及びトリ−(アルキルテトラグリコールエーテル)−o−リン酸エステルの混合物、並びに、クローダ社(Croda Inc.)(ニュージャージー州パーシパニー(Parsippany))から商品名クローダホス(CRODAPHOS)SGとして入手可能なPPG−5セテス10ホスフェート、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0136】
両性界面活性剤としては、三級アミン基を有する界面活性剤が挙げられ、これはプロトン化並びに四級アミン含有双極性界面活性剤であってよい。例としては、
アンモニウムカルボキシレートアンフォテリクス(Ammonium Carboxylate Amphoterics)が挙げられる。このクラスの界面活性剤は、以下の式により表すことができる:
29−(C(O)−NH)−R30−N(R31−R32−COO
式中、a=0又は1であり;R29は、(C1〜C21)アルキル基(飽和又は不飽和直鎖、分岐鎖又は環状基)、(C6〜C22)アリール基又は(C6〜C22)アラルキル若しくはアルカリル基(飽和直鎖、分岐鎖又は環状基)であって、R29は、所望により、1個以上のN、O若しくはS原子又は1個以上のヒドロキシル、カルボキシル、アミド若しくはアミン基によって置換されていてよく;R31は、H又は(C1〜C8)アルキル基(飽和若しくは不飽和直鎖、分岐鎖又は環状基)であって、R31は、所望により、1個以上のN、O若しくはS原子又は1個以上のヒドロキシル、カルボキシル、アミン基、(C6〜C9)アリール基又は(C6〜C9)アラルキル若しくはアルカリル基によって置換されていてよく、;R30及びR32は、それぞれ独立して、同一であっても異なってもよい(C1〜C10)アルキレン基であって、所望により、1個以上のN、O若しくはS原子又は1個以上のヒドロキシル若しくはアミン基によって置換されていてよい。
【0137】
上記式中、R29は(C1〜C18)アルキル基であってよく、R31は、メチル、ベンジル基又はメチル基によって置換されている可能性のある(C1〜C2)アルキル基であってよい。R31は、Hであり、より高いpH値で、界面活性剤は、Na、K、Li又は四級アミン基のようなカチオン性対イオンを有する三級アミンとして存在することができる。
【0138】
このような両性界面活性剤の例としては、ココベタイン及びコカミドプロピルベタインのような特定のベタイン(マッキンタイアーグループ(McIntyre Group Ltd.)(イリノイ州ユニバーシティパーク(University Park)から商品名マッカム(MACKAM)CB−35及びマッカムLとして市販されている);ラウロアンホ酢酸ナトリウムのようなモノアセテート;ラウロアンホ酢酸二ナトリウムのようなジアセテート;ラウルアミノプロピオン酸のようなアミノ−及びアルキルアミノ−プロピオネート(マッキンタイアーグループから、それぞれ、商品名マッカム1L、マッカム2L及びマッカム151Lとして市販されている)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
アンモニウムスルホネートアンフォテリクス。このクラスの両性界面活性剤は、「スルタイン」又は「スルホベタイン」と呼ばれ、以下の式により表すことができる:
29−(C(O)−NH)−R30−N(R31−R32−SO
式中、R29〜R32及び「a」は上記定義の通りである。例としては、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン(マッキンタイアーグループからマッカム50−SBとして市販されている)が挙げられる。スルホアンフォテリクス(sulfoamphoterics)は、スルホネート基が非常に低いpH値でもイオン化されたままであるため、カルボキシレートアンフォテリクスに対して好ましい場合がある。
【0140】
N−アシルアミドカルボキシレート界面活性剤は、以下の式により表すことができる:
33−C(O)−NR34CH−COOM
式中、R33は、(C7〜C21)アルキル基(飽和若しくは不飽和直鎖、分岐鎖又は環状基)、(C6〜C22)アリール基又は(C6〜C22)アラルキル若しくはアルカリル基(飽和直鎖、分岐鎖又は環状基)であり、R33は、所望により、1個以上のN、O若しくはS原子、又は1個以上のヒドロキシル、カルボキシル、アミド若しくはアミン基によって置換されていてよく;R34は、H又は(C1〜C3)アルキル基(飽和直鎖又は分岐鎖基)である。Mは上記定義の通りである。例としては、ラウロイルサルコシン、ミリストイルサルコシン、オレイルサルコシン、ラウロイルグリシン、及びN−メチル−N−(1−オキソドデシル)グリシンなどが挙げられる。N−アシルサルコシネートは、クローダ社(ニュージャージー州エジソン(Edison))から入手可能である。界面活性剤のこのクラスは、特にアルカリpHで容易に分解するため、生分解性用途に特に適している。
【0141】
非イオン性界面活性剤としては、アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、スクロースエステル、脂肪酸及び多価アルコールのエステル、脂肪酸アルカノールアミド、エトキシ化脂肪酸、エトキシ化脂肪酸、エトキシ化脂肪族アルコール(例えば、シグマ・ケミカル社(Sigma Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis))から、商品名トリトン(TRITON)X−100として入手可能なオクチルフェノキシポリエトキシエタノール及び商品名ノニデット(NONIDET)P−40として入手可能なノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール)、エトキシ化及び/又はプロポキシル化脂肪族アルコール(ICI(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington))製ブリッジ(BRIJ))、エトキシ化グリセリド、プルロニック(PLURONIC)及びテトロニック(TETRONIC)界面活性剤(BASF)のようなエトキシ化/プロポキシル化ブロックコポリマー、エトキシ化環状エーテル付加物、エトキシ化アミド及びイミダゾリン付加物、エトキシ化アミン付加物、エトキシ化メルカプタン付加物、アルキルフェノールとのエトキシ化縮合物、エトキシ化窒素系疎水性物質、エトキシ化ポリオキシプロピレン、高分子シリコーン、フッ素化界面活性剤(3M社(ミネソタ州セントポール(St. Paul))製のフルオラッド(FLUORAD)−FS 300界面活性剤、及びデュポン・ド・ヌムール社(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington))製ゾニール(ZONYL))並びに、BASF製プルロニック(PLURONIC)のようなポロキサマー、ソルビタン脂肪酸エステル及びこれらの混合物からなる群から選択される本発明の組成物で有用な、商品名メゾン(MAZON)界面活性剤として入手可能な、重合性(反応性)界面活性剤(例えば、SAM 211(アルキレンポリアルコキシサルフェート)界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
また、組成物は更に有機及び無機充填剤を含んでもよい。移植可能な用途の場合、生分解性、吸収性又は生体内分解性無機充填剤が特に魅力的である場合がある。これらの物質は、ポリマー組成物の分解速度の制御を補助することができる。例えば、多くのカルシウム塩及びリン酸塩が好適であり得る。代表的な生体適合性、吸収性充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸カルシウムナトリウム、リン酸カルシウムカリウム、リン酸四カルシウム、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、リン酸カルシウムアパタイト、リン酸八カルシウム、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウム半水和物、フッ化カルシウム、クエン酸カルシウム、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムが挙げられる。特に好適な充填剤は、三塩基性リン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)である。
【0143】
本発明の組成物を含む物品は、ポリマー樹脂からポリマーシートのような製品を作製するために、当該技術分野において既知であるプロセスにより作製してもよい。多くの用途では、このような物品は、2時間浸漬して乾燥させた後、物理的一体性(例えば、引っ張り強度)が実質的に低下することなく、23℃で水中に定置することができる。典型的には、これらの物品は、水を少ししか含まない、又は全く水を含まない。押出成形、射出成形又は溶媒流延後、物品中の水分含量は、典型的には、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは1重量%未満、最も好ましくは0.2重量%未満である。高分子シートは、本発明の樹脂組成物から押出成形プロセスにより形成することができ、食品包装のような用途で有用な抗微生物高分子シートが得られる。本発明の組成物から作製され得る他の物品としては、手術用ドレープ、手技用ドレープ、プラスチック特殊ドレープ、切開用ドレープ、バリアドレープ、バリアガウン、及びSMSガウンなどといった医療用ドレープ及びガウン、創傷包帯、創傷吸収体、創傷接触層、手術中に血液及び体液を吸収するのに使用する手術用スポンジ、手術用移植材料、血管カテーテル、尿カテーテル、気管内チューブ、シャント、創傷ドレイン、及び他の医療用装置を挙げることができる。本発明の組成物から作製される物品は、溶媒、熱又は超音波で一緒に溶接され、並びに他の適合性物品に溶接される。本発明の組成物は、他の物質と併用して、鞘/芯物質、積層体、2種以上の物質の化合物構造、又は種々の医療用装置上へのコーティングに有用な構造を形成することができる。本発明の組成物は、手術用スポンジの製作で有用であり得る。
【0144】
本発明の組成物は、その特性を独自に組み合わせることにより、手術用ドレープ及びガウンで使用するのに特に好適である。例えば、ポリ乳酸/抗微生物成分組成物は、本明細書で記載するような優れた抗微生物活性を有する。本発明の組成物を含む不織布ウェブ及びシートは、良好な引っ張り強度を有し;熱融着して、特殊なドレープの製作を可能にする強力な接着を形成することができ;使い捨て製品で重要であり得る、再生可能資源から作製することができ;不織布の場合湿潤性及び流体吸収性を可能にする高表面エネルギーを有することができる(米国特許第5,268,733号に記載の半角技術及びタンテック接触角メーター(Tantec Contact Angle Meter)、モデルCAM−マイクロ(Model CAM−micro)(イリノイ州シャンバーグ(Schamberg))を用いて、平坦フィルム上で測定したとき、蒸留水との接触角が多くの場合50°未満、好ましくは30°未満、最も好ましくは20°未満である。フィルム以外の物質の接触角を測定するために、正確に同じ組成のフィルムを実施例に記載のように組成物を溶媒流延することにより作製すべきである。)。このようなウェブは、物理的強度が著しく低下することなく、ガンマ線又は電子ビームにより安定化することができる(厚さ0.03mm(1ミル)のフィルムの引っ張り強度が、コバルトガンマ線源からの2.5Mradのガンマ線に曝露し、23℃〜25℃で7日間エージングした後、20%超、好ましくは10%以下低下しない)と考えられる)。更なる溶融添加物(例えば、フルオロケミカル溶融添加物)を組成物に添加して、表面エネルギーを低下させ(接触角を上昇させ)、撥水性を付与することができる。撥水性が所望される場合、上記のような半角技術を用いて平坦フィルム上で測定した接触角は、好ましくは70°超、好ましくは80°超、最も好ましくは90°超である。
【0145】
本発明の組成物の抗微生物成分の放出は、細菌の生育又は付着を防ぐのを補助することにより、創傷及び手術用包帯のような物品を改良することができる。脂肪族ポリエステルからの抗微生物成分の放出速度は、可塑剤、界面活性剤、乳化剤、賦活剤、保湿剤並びに他の成分を組み込むことにより、影響を受ける場合がある。好適な保湿剤としては、グリセロールのような多価アルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールブタン、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、パントテノール、多価アルコールのエチレングリコール付加物、多価アルコールのプロピレンオキシド付加物、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、ポリグリセリン、エリスリトール、ソルビタン、糖(例えば、スクロース、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、サッカロース、トレハロース)、及び糖アルコールなどを挙げてもよい。潜在的に有用な多価アルコールとしては、グリセリン及びプロピレングリコールを含むグリコール(つまり、2個のヒドロキシル基を含有するもの)が挙げられる。
【0146】
本発明の組成物から、全体的に又は部分的に、作製することができる他の医療用装置としては、縫合糸、縫合締結具、手術用メッシュ、三角布、整形外科用ピン(骨充填物増強材料を含む)、接着バリア、ステント、誘導組織修復/再生装置、関節軟骨修復装置、神経ガイド、腱修復装置、心房中隔欠損修復装置、心膜パッチ、増量剤及び充填剤、静脈弁、骨髄骨格、半月板再生装置、靱帯及び腱移植、眼球細胞移植片、脊椎固定ケージ、皮膚代替物、硬膜代替物、骨移植片代替物、骨ドエル(dowel)及び止血鉗子が挙げられる。
【0147】
本発明の組成物を創傷包帯裏材フィルムで用いる場合、フィルムは、アクリル及びブロックコポリマー接着剤、ヒドロゲル接着剤、ヒドロコロイド接着剤及び発泡接着剤のような感圧性接着剤(PSA)が挙げられるが、これらに限定されない、種々の接着剤で部分的に(例えば、領域又はパターン)コーティングする、又は完全にコーティングしてもよい。PSAは、水分の蒸発を可能にするために比較的高い湿気透過速度を有することができる。好適な感圧性接着剤としては、アクリレートに基づくもの、ポリウレタン、クラトン(KRATON)及び他のブロックコポリマー、シリコーン、ゴム系接着剤、並びにこれらの接着剤の組み合わせが挙げられる。好ましいPSAは、米国再発行特許第24,906号に記載のアクリレートコポリマーのような、皮膚に塗布される通常の接着剤、特に97:3のイソオクチルアクリレート:アクリルアミドコポリマーである。また、米国特許第4,737,410号(実施例31)に記載のような、70:15:15のイソオクチルアクリレート−エチレンオキシド:アクリレート:アクリル酸ターポリマーも好ましい。他の有用な接着剤は、米国特許第3,389,827号、同第4,112,213号、同第4,310,509号及び同第4,323,557号に記載されている。米国特許第4,310,509号及び同第4,323,557号に記載されているように、薬剤又は抗微生物剤が接着剤に包含されることも想起される。
【0148】
本発明の抗微生物組成物を製造する1つのプロセスでは、溶融形態の脂肪族ポリエステルを、抗微生物成分に対して十分な量で混合し、測定可能な抗微生物活性を有するポリマー組成物を得る。賦活剤及び/又は界面活性剤を、溶融ポリマー組成物に添加して及び/又はポリマー組成物を含む物品の表面上にコーティングして、抗微生物成分を強化してもよい。
【0149】
ポリマー組成物を溶融加工するための様々な装置及び技術が、当該技術分野において既知である。このような装置及び技術は、例えば、米国特許第3,565,985号(シュレンク(Schrenk)ら)、同第5,427,842号(ブランド(Bland)ら)、同第5,589,122号及び同第5,599,602号(レオナルド(Leonard))及び同第5,660,922号(ヘニッジ(Henidge)ら)に開示されている。溶融加工装置の例としては、本発明の組成物を溶融加工するための押出成形機(単軸及び二軸)、バンバリーミキサー、及びブラベンダー押出成形機が挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
組成物の成分を、押出成形機内で混合し、押出成形機を通して運搬し、好ましくは溶融物中でポリマー分解又は副反応の生じない、測定可能な抗微生物活性を有するポリマー組成物を得ることができる。加工温度は、生分解性脂肪族ポリエステルと抗微生物成分を混合し、フィルムとして組成物を押出成形するのを可能にするのに十分である。可能性のある分解反応としては、エステル交換、加水分解、鎖の切断及びラジカル鎖分解が挙げられ、加工条件はこのような反応を最低限に抑えるべきである。本発明のフィルムは、例えば、透明(曇りのない)であり、表面上に油性残留物のない(ポリマーマトリクスからの抗微生物成分の相分離を示す可能性がある)といった、食品包装のような用途に望ましい特性を有する。
【0151】
本発明の組成物はフィルムに溶媒流延を行うことができる。本発明の組成物の成分は、溶解し又は少なくとも部分的に溶媒和し、好適な溶媒に完全に混ぜ合わせられ、この溶媒は続いて表面上で流延して蒸発させられ、本発明の抗微生物樹脂組成物を含む固体を残す。
【0152】
本発明は、例示的なものであり、本発明の範囲を制限することを意図しない以下の実施例により、更に明らかになるであろう。
【実施例】
【0153】
(実施例1及び2)
ペレット化ポリ乳酸(ポリマー4032 D及び4060 Dとしてネイチャーワークス社(NatureWorks LLC)(ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis))から入手したPLAポリマー)を、ブラベンダーミキサーに添加し、混合トルクが安定化するまで180℃でブレンドすることにより、バッチブラベンダー混合装置を用いて試料を調製した。次いで、他の成分をミキサーに添加し、組成物全てが均質になったと思われるまでブレンドした。混合物をブラベンダー装置から取り出し、圧盤が177℃である水圧プレスを用いて加圧しシート状にした。この加圧から得られたシートの試料の微生物活性を、日本工業規格試験番号Z 2801:2000を用いて、グラム陽性菌(黄色ブドウ球菌ATCC #6538)及びグラム陰性菌(緑膿菌ATCC #9027)について試験した。成分を添加しない対照ポリ乳酸シート上でも、同じ試験を行った。この試験から得られたデータを以下の表1に示す。
【0154】
【表1】

【0155】
PMLは、カプムール(Capmul)PG12として、アビテック社(Abitec Corp.)(オハイオ州コロンブス(Columbus))から入手した、プロピレングリコールモノラウレート抗微生物成分を意味する。
【0156】
BAは、安息香酸賦活剤を意味する。
【0157】
DOSSは、ジオクチルスルホスクシネートナトリウム塩界面活性剤を意味する。
【0158】
PLA 4032Dは、ネイチャーワークス社(ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis))製の半結晶質ポリ乳酸である。
【0159】
PLA 4060Dは、ネイチャーワークス社(ミネソタ州ミネアポリス)製の非晶質ポリ乳酸である。
【0160】
上記データは、細菌生育の阻止において、シート形態の本発明の組成物が有効であることを示す。
【0161】
(実施例3〜19)
実施例1及び2で用いた脂肪族ポリエステルを、これらの実施例で用いた。以下の表2の重量%で、ポリエステル樹脂をガラスバイアルに計り取った。各試料の総試料重量(溶媒を含まない)は、固形分4gであった。したがって、例えば、90%のPLAでは3.6gのPLAを、80%のPLAでは3.2gのPLAを添加した。次に、抗微生物成分及び可塑剤(存在する場合)を、表2に示す百分率で、直接バイアルに添加した。約22.5mL〜23.0mLの溶媒をバイアルに添加した。ポリマー4032D PLAを、ジクロロメタンに溶解した。ポリマー4060D PLAを、酢酸エチルに溶解した。PLAが完全に溶解するまで、ローラー上にバイアルを定置することにより、内容物を混合した(典型的には、一晩)。得られた組成物を、研究室用コーティング装置を用いて、湿潤厚さ300マイクロメートルにコーティングすることにより、シリコーン剥離ライナー上に湿潤フィルムとして流延した。湿潤フィルムを室温で乾燥させた。
【0162】
これらの試料の湿気透過速度(MVTR)を測定した。浸水法を用いてASTM E−96/E 96M−05と類似の方法により、MVTRを測定した。穿孔を有しない、厚さ0.025mmの材料の、直径35mmの試料を切り取った。試料を、それぞれ直径2.54cmの穴を有する、2個のホイル接着剤リングの、接着剤でコーティングされた表面の間に定置した。各リングの穴を注意深く揃えた。指圧を用いて、平坦で、しわがなく、露出した試料がくぼみを有しない、ホイル/試料/ホイル組立体を形成した。
【0163】
0.14kg(4オンス)のガラスジャーの半分まで、蒸留水を入れた。ジャーに、中央に直径3.8cmの穴を有するねじ式キャップと、中央に直径2.84cmの穴を有する直径4.45cmのゴム座金とを取り付けた。ゴム座金をジャーの縁に定置し、ホイル/試料組立体をゴム座金上に定置した。次いで、ジャー上でゆるくふたを閉めた。
【0164】
組立体を、40±1℃、相対湿度20±2%で4時間チャンバ内に定置し、平衡させた。試料がキャップと同じ高さになるように(膨らむことなく)キャップをチャンバ内で堅く締め、ゴム座金を適切に設置した。
【0165】
4時間後に、ホイル/試料組立体をチャンバから取り出し、すぐに0.01g単位で計量した(初期重量W)。次いで、組立体を少なくとも24〜48時間チャンバに戻し、その後取り出し、すぐに0.01g単位で計量した(最終重量W)。24時間の、透過した水蒸気(g)/試料面積(平方メートル)であるMVTRを、以下の式(式中、「T」は曝露時間(時間)を指す)に従って算出した:
MVTR=(W−W)(4.74×10)/T
各試料について3つの測定値を得た。試料が同じ厚さを有していた場合(正確に2.5μm)、平均値を求めた。
【0166】
創傷及び手術用包帯のような材料では、比較的高いMVTRが望ましい。結果を下記の表2に示す。
【0167】
【表2】

【0168】
表2中:
PAは、CPホール社(CP Hall Company)(イリノイ州ベッドフォードパーク(Bedford Park))からパラプレックスG50(Paraplex G50)として入手したポリエステルアジペートを意味する。
【0169】
PGLは、アビテック社(Abitec Corp.)(オハイオ州コロンバス(Columbus))からカプムールPG12として入手したポリプロピレングリコールラウレートを意味する。
【0170】
PGMは、アビテック社からカプムールPG8として入手したポリプロピレングリコールモノカプリレートを意味する。
【0171】
BACは、シグマ・アルドリッチ社(Sigma Adrich Company)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis))から入手した塩化ベンザルコニウムを意味する。
【0172】
表2のデータは、本発明の組成物の流延フィルムがMVTRに有益な効果を有することを示す。
【0173】
オリゴマー乳酸賦活剤及びマスターバッチの調製:
オリゴマー賦活剤を実施例20〜31で用い、以下の手順を用いて調製した。18.9Lのガラス反応器(周囲気圧)に、7.6Lの85%乳酸水溶液(シティ・ケミカルズ(City Chemicals))及び7.6Lの70%グリコール酸水溶液(シグマ・アルドリッチ社)を充填した。反応器の温度を100℃まで徐々に上昇させ、その後、溶液から水を沸騰させて蒸発させ、酸モノマーのみを残した。反応器の温度を、乳酸及びグリコール酸の縮合重合が始まる163℃まで上昇させた。反応を24時間進行させ、あるバッチでは、分子量1,000〜8,000M、別のバッチでは、700〜1,000Mの、2種の酸のランダムコポリマー又はオリゴマーを得た。
【0174】
実施例20〜30で用いた予め合成したペレットを、以下の手順を用いて、ヴェルナー・フライドラー(Werner Pfleiderer)ZSK−25二軸押出成形機で調製した。押出成形機は10個の領域を有し、それぞれが熱伝達流体を循環させるためのチャネルを備えるバレル部を有し、第1(供給)部以外は全て電熱要素を有していた。混練区画を領域2の後半、領域3の前半、領域5の全て、領域6の前半、領域8の全て、及び領域9の前半で用いたことを除き、スクリューの配置はらせん状運搬スクリュー区画であった。領域5及び9の押出成形機排気栓はふさがっていた。ポリ乳酸PLA 6251D(ネイチャーワークス社(Natureworks LLC)(ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis)))のペレットを、3.6kg/時間の速度で押出成形機の第1領域に添加した。抗微生物脂肪酸モノエステルを、0.5kg/時間の速度で、ダイナテック(Dynatec)S−05モデルグリッド溶融装置を用いて、押出成形機の第4領域に投入した。グリッド溶融装置は、ギアポンプを用いて、移送管を通して押出成形機に入る液体モノエステルを計量した。ポンプ及び管は、プロピレングリコールモノラウレートを用いるときは室温で、グリセロールモノラウレートを用いるときは70℃で操作した。上記オリゴマー賦活剤を、加熱したタンク内で120℃に加熱し、それを0.5kg/時間の速度で押出成形機の領域7に送る定量ポンプに重力送りした。定量ポンプを押出成形機の排出に使用し、直径6.35mmの開口部を有するストランドダイに供給した。押出成形したストランドを、長さ2.4mの水トラフ内で冷却し(水道水を継続的に供給しながら)、次いで、水槽の出口で、コンエア(Conair)ペレット製造機を用いて長さ約6.35mmのペレットにペレット化した。押出成形機のスクリュー速度を100 RPMに維持し、以下のバレル温度プロファイルを用いた:領域1−160℃、領域2−200℃、領域3−177℃、領域4〜9−160℃。定量ポンプ(溶融ポンプ)を電気的に加熱し、それは177℃に設定された温度設定点に手動で調節可能であり、ポンプ速度を手動で調節し、溶融ポンプの入口へ約0.69MPa(70N/cm(100ポンド/インチ))〜1.38Mpa(140N/cm(200ポンド/インチ))の圧力を維持した。
【0175】
以下に列挙する組成を有する3種のマスターバッチを調製した。ペレットを頻繁に攪拌しながら、強制空気樹脂乾燥機内で乾燥させ、ペレットの集塊を防いだ。
【0176】
マスターバッチ#1:80%のPLA 6251D、10%のグリセロールモノラウレート(GML)及び10%のオリゴマー賦活剤(OLGA)。
【0177】
マスターバッチ#2:80%のPLA 6251D、10%のプロピレングリコールモノラウレート(PML)及び10%のオリゴマー賦活剤(OLGA)。
【0178】
マスターバッチ#3:90%のPLA 6251D及び10%のグリセロールモノラウレート(GML)。
【0179】
(実施例20〜23)
吹込マイクロファイバー不織布ウェブを、従来のメルトブロウン装置を用いて、上記マスターバッチから製造した。31mm(スクリュー直径)の円錐形二軸押出成形機(C.W.ブラベンダー・インスツルメンツ(C.W. Brabender Instruments)(ニュージャージー州サウスハッケンサック(South Hackensack))を用いて、ポリマー溶融物の計量及び加圧に用いられる容積式ギアポンプに供給した。幅25cmの、幅1cmあたり8個のオリフィスを有する穿孔オリフィスメルトブロウンダイを使用した。各オリフィスは、直径0.38mmであった。押出成形機の温度は185℃であり、ダイの温度は180℃であり、空気加熱器の温度は200℃であり、吸気圧は103kPaであった。ダイを通る総ポリマー流量は、約3.6kg/時間であった。賦活剤又は抗微生物添加剤を含有しない対照試料(C3)を調製した。賦活剤又は抗微生物添加剤を10%未満しか有しない試料については、追加の未使用PLA樹脂をマスターバッチに添加した。不織布ウェブの特徴を以下の表3に示す。
【0180】
【表3】

【0181】
(実施例24〜26)
プロピレングリコールモノラウレート(PML)を抗微生物成分として使用したことを除き、実施例20〜23と同様に吹込マイクロファイバー不織布ウェブを製造した。不織布ウェブの特徴を以下の表4に示す。
【0182】
【表4】

【0183】
有効繊維直径(μm)は、デイビース,C.N.(Davies, C.N.)「浮遊粉じん及び粒子の分離(The Separation of Airborne Dust and Particles)」(機械技術者協会(Institution of Mechanical Engineers)、ロンドン(London)、議事録1B(Proceedings 1B.)、1952年)に記載されているように算出した。
【0184】
実施例20〜23及びC3の引っ張り強度及び剛性特性について試験した。ピーク力(Peak force)引っ張り強度を、標点距離5.1cm、クロスヘッド速度25.4cm/分で、インストロン(INS(登録商標)TRON)モデル5544ユニバーサル引っ張り試験機を用いて測定した。被検査物の寸法は、長さ10.2cmであった。不織布ウェブの縦方向(MD)及び横方向(CD)を試験した。ピーク力における被検査物の伸長(%)を記録した。10回反復試験を行い、各試料ウェブの平均を求めた。結果を以下の表5に示す。
【0185】
ウェブの剛性特性を、ガーレー剛軟度試験機モデル4151E(ガーレー・プレシジョン・インスツルメンツ(Gurley Precision Instruments)(ニューヨーク州トロイ(Troy))を用いて測定した。長さ3.8cm×幅2.5cmの試料を、長さ方向がウェブの縦方向であるように、ウェブから切り取った。各被検査物を、MD及びCDの両方に偏位させ、両方向の振子偏位(pendulum deflection)の平均を算出することにより試験した。試験機を用いて、振子偏位測定値及び機械の設定をガーレー剛性指数(mg)に変換した。10回反復試験を行い、各試料ウェブの平均を求めた。結果を以下の表5に示す。
【0186】
【表5】

【0187】
不織布試料の抗微生物試験
AATCC 100−2004(繊維材料上の抗微生物仕上げの評価)を応用した以下の試験プロトコルを用いて、不織布ウェブの抗微生物特性を評価した。
【0188】
1日目
1.10mLのトリプチケースソイブロス(TSB)(VWR #90000−378)中で、新鮮な画線プレート(2週間未満前にフローズンストックから調製した)由来の、黄色ブドウ球菌(Staphlyococcus aureus)(ATCC #6538)及び緑膿菌(ATCC #9027)(大腸菌の代わりに用いた)の一晩培養を、37℃、250 RPMにて、開始する。
【0189】
2.2個の100mL培地瓶内で、200μLのTSBを含む100mLの蒸留脱イオン水、及び、1個の500mL培地瓶内で、500mLのD/E(ダイ/エングレー(Dey Engley))ニュートラライジングブロス(Neutralizing Broth)(VWR #90004−038)を調製し、オートクレーブする。また、1000mLのリン酸緩衝溶液(PBS)(:0.24gのKHPO、1.44gのNaHPO、8gのNaCl、1LのDDHO)を調製し、pHを7.0に調節し、121℃で20分間オートクレーブする。
【0190】
2日目
3.試験材料から約4×4cmの正方形を切り取る。対照材料については、少なくとも10層の、同じ大きさの滅菌ガーゼを切り取る。両方の生物、各材料について、反復試験を行うべきであり、したがって各試験材料につき合計4個の正方形試料を切り取る。しかしながら、滅菌ガーゼの対照は、0時間(t=0)のコロニー形成単位(CFU)を決定するために2個をすぐに回収することができるように、6個の正方形を有するべきである。材料から切り取った全ての正方形を、滅菌ペトリ皿に定置し、適宜ラベルを付ける。
【0191】
4.20μL(マイクロリットル)の黄色ブドウ球菌一晩培養培地を、滅菌した0.2%TSB培地瓶のうち1個に移動させ、瓶にラベルを付け、2番目の滅菌瓶(1日目に調製した)で緑膿菌について反復する。
【0192】
5.希釈した接種材料を激しく振盪し、均一な細胞の懸濁液を得る。各試料につき2個に、1mLの黄色ブドウ球菌の細胞懸濁液を植菌する。各材料の残り2個の試料を用いて、緑膿菌についても反復する。検証する生物に従って、ペトリ皿にラベルを付ける。滅菌ガーゼの0時間対照として、各生物につき1個植菌し、別にしておく。
【0193】
6.0時間のものを除き、全ての植菌された材料を収容するペトリ皿を、湿度の制御されたインキュベータ(相対湿度70〜80%以上)内に定置する。18〜24時間、37℃でインキュベートする。
【0194】
7.各(t=0)試料に対し、20mLの滅菌ディフコD/Eニュートラライジングブロス(Difco D/E Neutralizing Broth)(NB)を収容する1個の50mLのBDファルコン遠心チューブを調製する。適宜ラベルを付ける。
【0195】
8.火炎滅菌したピンセットを用いて、t=0試料を対応するチューブに移動させ、材料をニュートラライジングブロス中に押し下げる。
【0196】
9.NB及び材料を収容するチューブを、60秒間超音波浴内に定置し、次いで60秒間攪拌し(ストマッカーの代替として)、細胞を材料からNBへ放出させる。
【0197】
10.200μLの上清NBブロスを各ファルコンチューブから、96穴プレートの最初のウェルへ、ピペットで移す。180μLの滅菌PBS(リン酸緩衝溶液)をウェル2〜6にピペットで移す。
【0198】
11.20μLをウェル1からウェル2へ、次いでウェル2からウェル3へ、ウェル3からウェル4へ、ウェル4からウェル5へ、ウェル5からウェル6へピペットで移すことにより、10倍段階希釈を行う。
【0199】
12.油性マジックを用いて、2個のTSB寒天プレートを3分の1に分け、1番目のプレートの0、1及び2区画、並びに、2番目のプレートの3、4及び5にラベルを付ける。各試料を1組にする。
【0200】
13.自動ピペッターを用いて、最も低濃度の希釈液(10−5)から液体を取り除き、対応する希釈液(5)のラベルの付いたプレートの区画上に10μLずつ10個のアリコートを作製する。希釈液10−4〜10についても反復し、4〜0の区画にプレーティングする。右側を上にして、37℃で一晩インキュベートする。液滴希釈法(drop-dilution method)を参照する。
【0201】
3日目
14.インキュベータから試験試料を収容するペトリ皿を取り出し、これらの材料に対して工程7〜13を反復する。
【0202】
15.インキュベータから、一連の希釈液を含むt=0寒天プレートを取り出す。5〜60のコロニー形成単位(CFU)を含む希釈液を数え、平均する。これは、平均CFU/10μLとなる。100を乗じ、CFU/1mLを得、次いでこの数字に20mLを乗じてCFU/試料を決定する。CFUが検出される場合、この試験の感度限界は、200CFU/試料と割り当てられる。回収時のCFU/試料で除した0時間のCFU/試料の商の常用対数を取ることにより、対数減少を算出する。
【0203】
4日目
16.試験材料及び対照の一連の希釈液を含有する寒天プレートに対して、工程15を反復する。
【0204】
【表6】

【0205】
表6〜11の値0は、試験の検出限界、約200 CFU/試料を下回る結果を示す。
【0206】
【表7】

【0207】
【表8】

【0208】
【表9】

【0209】
【表10】

【0210】
【表11】

【0211】
(実施例27〜29)
以下の手順を用いて、抗微生物押出成形フィルムを製造した。上記マスターバッチペレットを配合するのに用いた、共回転二軸押出成形機を用いて、ポリマーと添加剤とを溶融、ブレンド及び供給した。スクリュー区画を、領域2、4及び6で混練ブロックとともに組み立てた。押出成形機は、9個の温度制御可能なバレル領域を有し、領域1には乾燥ペレット用入口、領域3及び5には液体注入口を備える。重量喪失重力測定供給装置(weight loss gravimetric feeder)(K−トロン(K-tron)(ニュージャージー州ピットマン(Pitman)))を用いて、領域1で乾燥ペレットを供給した。4032D半結晶質ポリ乳酸(PLA)(ネイチャーワークス社(Natureworks LLC))ペレットを、まず樹脂乾燥機内で60℃にて一晩乾燥させ、水を取り除いた。グリッド溶融装置(ダイナテック(Dynatec)(テネシー州ヘンダーソンビル(Hendersonville))を用いて、プロピレングリコールモノラウレート(PML)(カプムールPG−12、アビテック(Abitec)、ウィスコンシン州ジェーンズビル(Janesville))を溶融させ、押出成形機の領域3に供給した。定量ポンプ(ゼニスポンプ(Zenith pump)(ノースカロライナ州サンフォード(Sanford))を用いて、押出成形機の領域5にオリゴマー賦活剤(OLGA)を供給した。賦活剤を、ポンプの真上の加熱ポットから重力送りした。押出成形機からの溶融物を定量ポンプに、次いで幅15.24cmのコート−ハンガーダイに供給した。押出品を、直径15.24cmの温度制御されたロール上に水平に押し出した。得られたウェブを、270°の巻角でロールの周囲に引っ張った。次いで、ウェブを、180°の巻角で、直径15.2cmの温度制御された第2ロールの周囲に巻き付けた。次いで、ウェブをニップで引き、芯の周囲に巻き付けた。2.5ミクロン単位で、フィルム厚を測定した(μm)。ダイ調節ボルトを用いて、フィルム厚を±15ミクロンに維持した。フィルムの組成を以下の表12に示す。
【0212】
【表12】

【0213】
(実施例30)
ポリカプロラクトン(PCL、タイプFB 100、ソルベイ・ケミカルズ(Solvay Chemicals)(テキサス州ヒューストン(Houston))をベースポリマーとして用いたことを除き、実施例27〜29のように押出成形したフィルムを調製した。フィルムの組成を以下の表13に示す。
【0214】
【表13】

【0215】
フィルム試料の抗微生物試験
JIS Z2801(日本工業規格−抗微生物活性試験)を応用した以下の試験プロトコルを用いて、押出成形又は加圧したフィルムの抗微生物特性を評価した。
【0216】
1日目
1.新鮮な画線寒天プレート(2週間未満前に調製)から、10mLのトリプチケースソイブロス(VWR #90000−378)を収容する滅菌培養チューブにステムループで植菌し、緑膿菌(ATCC #9027)及び黄色ブドウ球菌(ATCC #6538)の一晩培養を、37℃、250 RPMにて、開始する。使用前に18〜24時間培養させる。
【0217】
2.500mLのD/Eニュートラライジングブロス(VWR cat#90004−038)を調製し、121℃で15分間オートクレーブする(JISZ2801プロトコルで定義された、SCDLPブロスの代替として用いる)。
【0218】
3.蒸留脱イオン水に溶解した100mLの0.2%TSBを2個調製し、121℃で15分間オートクレーブする。
【0219】
2日目
4.各試験材料及びポリエチレンテレフタレート対照から、4個の4×4cmの断片を切り取る(厚さ0.08mm(3ミル)〜0.10mm(4ミル))。ポリエステルフィルム対照から更に2個の4×4cmの断片を切り取り、「0時間」値を測定するために用いる。各材料の4個の断片のうち2個に黄色ブドウ球菌、残り2個に緑膿菌を植菌する。
【0220】
5.材料、反復番号及び生物のラベルを付けた滅菌ペトリ皿に材料を定置する。2個の対照を追加すべきである。一方を黄色ブドウ球菌、他方を緑膿菌に指定し、両方に「t=0」のラベルを付ける。滅菌のために、イソプロパノール又は70%エタノールで湿らせた紙タオルを用いて各材料の両面を拭き、乾燥させる。
【0221】
6.試験材料の各4×4cmの断片に対して、2×2cmの被覆フィルム(ポリエステル、厚さ0.08mm(3ミル)〜0.10mm(4ミル))を切り取り、別にしておく。滅菌のために、イソプロパノール又は70%エタノールでカバーガラスを拭き、乾燥させる。これらのカバーガラスの目的は、カバーガラスと材料表面との間に接種材料を挟むことにより、材料と接種材料との間の接触する表面積を増加させることである。
【0222】
7.約10細胞/mLの最終懸濁液用に、1日目に調製した100mLの0.2%TSBに、一晩培養物から20μLをピペットで移すことにより、両方の生物の接種材料を調製する。生物に従ってラベルを付ける。
【0223】
8.400μLの細胞懸濁液を、ペトリ皿内の材料上にピペットで移す。接種材料の上に被覆フィルムを置く。生物に関して正確にラベルを付ける。
【0224】
9.2個のt=0ペトリ皿を別にし、他のペトリ皿を、37℃、相対湿度70〜80%に環境が制御されたインキュベータ内に、18〜24時間定置する。
【0225】
10.火炎滅菌ピンセットを用いて、t=0の黄色ブドウ球菌ペトリ皿から接種した材料を取り出す。それを、10mLのD/Eニュートラライジングブロスを収容している、ラベルを付けた50mLファルコンチューブに入れ、超音波浴内に1分間定置する。試料を超音波浴から取り出し、次いで1分間攪拌する(ストマッカーの代わりに用いる)。t=0、緑膿菌材料についても反復する。
【0226】
11.200μLのブロスを、ファルコンチューブから、96穴プレートの最初のウェルにピペットで移す。180μLの滅菌PBSをウェル2〜6にピペットで移す。
【0227】
12.20μLをウェル1からウェル2へ、次いでウェル2からウェル3へ、ウェル3からウェル4へ、ウェル4からウェル5へ、ウェル5からウェル6へピペットで移すことにより、10倍段階希釈を行う。
【0228】
13.油性マジックを用いて、2個のTSB寒天プレートを3分の1ずつに分け、1番目のプレートの0、1及び2区画、並びに、2番目のプレートの3、4及び5にラベルを付ける。
【0229】
14.自動ピペッターを用いて、最も低濃度の希釈液(10−5)から液体を取り出し、対応する希釈液(5)のラベルの付いたプレートの区画上で10μLずつ10個のアリコートを作製する。希釈液10−4〜10についても反復し、4〜0の部分にプレーティングする。右側を上にして、37℃で一晩インキュベートする。
【0230】
3日目
15.t=0の希釈プレートの各区画のコロニー形成単位(CFU)を数え、記録し、平均を求める。CFU/mL及びCFU/mLの標準偏差を決定し、次いで一連の希釈液それぞれから最も信頼できる数を集め、各材料上の各試料のCFU/mLの平均を求める。この数字に10を乗じ、CFU/試料を決定する。数が0である場合、この試験の感度限界である100/CFU試料が割り当てられる。回収時のCFU/試料に対する0時間のCFU/試料の商の常用対数を取ることにより、対数減少を算出する。
【0231】
16.インキュベータから接種した材料を取り出し、t=0の回収で用いたのと同じ工程(10〜14)に従って、各試料から接種材料を回収する。
【0232】
4日目
17.工程15を反復する。
【0233】
押出成形したフィルムの抗微生物特性を、以下の表14、15及び16に示す。
【0234】
【表14】

【0235】
表14〜15中の値0は、試験の検出限界:約100 CFU/試料を下回る結果を示す。
【0236】
これらの結果は、PMLの添加(実施例28)により、対照(C4)に対してグラム陽性菌数を減少させることを示す。OLGAの添加は、抗微生物効果をほとんど示さなかった(実施例29)。しかしながら、PMLとOLGAを両方添加すると、全く検出できないほどに細菌数を減少させる、優れた抗微生物活性を有する組成物が得られた。
【0237】
【表15】

【0238】
これらの結果は、PMLの添加(実施例28)では、対照(C4)に対してグラム陽性菌数は減少しないことを示す。OLGAの添加は抗微生物効果をほとんど示さなかった(実施例29)。しかしながら、PMLとOLGAを両方添加すると、全く検出できないほどに細菌を減少させる、優れた抗微生物活性を有する組成物が得られた(実施例27及び30)。
【0239】
【表16】

【0240】
表16は、最終CFU/試料数による0時間CFU/試料数の商の常用対数を取ることにより算出した。0の数の対数減少は、0時間のCFU/試料を検出限界(100 CFU/試料)で除することにより算出した。
【0241】
(実施例31)
接着テープディスペンサーを、70℃の温度に維持された、1個取り単一ホットゲート金型(single cavity, single hot gate, mold)を用いて射出成形した。80%の3051D PLA(ネイチャーワークス社(Natureworks LLC))、10%のPML及び10%のOLGAの樹脂組成物を使用した。最終成型品の重量は24gであった。160MPa(16kN/cm)の最大射出圧で、45gの最大射出量、67cm/秒の最大射出速度を供給する、25mmの28:1L/D射出成形スクリューを備えるエンゲルES 100 TL成形機(Engel ES 100 TL molding machine)を使用した。射出した樹脂の溶融温度は、約204℃であった。
【0242】
データは、PML(プロピレングリコールモノラウレート)及びOLGA(上記乳酸とグリコール酸とのオリゴマー賦活剤反応生成物)は、ポリ乳酸又はポリカプロラクトンと併用するとき、これらのポリマーから作製される物品の湿潤能を上昇させる(水接触角を減少させる)傾向があることを示した。このような湿潤能の上昇は、手術用ドレープのような用途で有利である可能性がある。
【0243】
特定の代表的な実施形態及び詳細を、本発明を説明する目的で論じてきたが、以下の特許請求の範囲に示される、本発明の真の範囲から逸脱することなく、本発明で種々の修正を行うことが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)熱可塑性脂肪族ポリエステルと、
b)カチオン性抗微生物アミン化合物;多価アルコールの(C〜C22)飽和脂肪酸エステル、多価アルコールの(C〜C22)不飽和脂肪酸エステル、多価アルコールの(C〜C22)飽和脂肪族エーテル、多価アルコールの(C〜C22)不飽和脂肪族エーテル、(C〜C22)アルコールの(C〜C)ヒドロキシ酸エステル、これらのアルコキシル化誘導体及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、組成物中に組み込まれる抗微生物成分であって、前記アルコキシル化誘導体が、多価アルコール1モルあたり5モル未満のアルコキシド基を有するが;ただし、スクロース以外の多価アルコールの場合には、前記エステルがモノエステルを含み、前記エーテルがモノエーテルを含み、スクロースの場合には、前記エステルがモノエステル、ジエステル又はこれらの組み合わせを含み、前記エーテルがモノエーテル、ジエーテル又はこれらの混合物を含み、前記抗微生物成分が前記脂肪族ポリエステルの1重量%を超える量で存在する、抗微生物成分と、
c)0.5重量%を超える量であるフェノール化合物を除いて、前記脂肪族ポリエステルの0.1重量%を超える量の、α−ヒドロキシ酸、β−ヒドロキシ酸、キレート剤、(C〜C)飽和又は不飽和アルキルカルボン酸、(C〜C16)アリールカルボン酸、(C〜C16)アラルキルカルボン酸、(C〜C12)アルカリルカルボン酸、フェノール化合物、(C〜C10)アルキルアルコール、エーテルグリコール、分解して前述の賦活剤のうちの1種を放出するオリゴマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される賦活剤と、を含む組成物であって、ただし、
前記抗微生物成分が、多価アルコールの(C〜C22)飽和脂肪酸エステル、多価アルコールの(C〜C22)不飽和脂肪酸エステル、又はこれらのアルコキシル化誘導体から選択される場合、抗微生物成分の純度が85重量%モノエステルを超える、組成物。
【請求項2】
a)熱可塑性脂肪族ポリエステルと、
b)カチオン性抗微生物アミン化合物;多価アルコールの(C〜C22)飽和脂肪族エーテル、多価アルコールの(C〜C22)不飽和脂肪族エーテル、(C〜C22)アルコールの(C〜C)ヒドロキシ酸エステル、これらのアルコキシル化誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、組成物中に組み込まれる抗微生物成分と、の混合物を含む組成物であって、前記アルコキシル化誘導体が、多価アルコール1モルあたり5モル未満のアルコキシド基を有するが;ただし、スクロース以外の多価アルコールの場合には、前記エステルがモノエステルを含み、前記エーテルがモノエーテルを含み、スクロースの場合には、前記エステルがモノエステル、ジエステル又はこれらの組み合わせを含み、前記エーテルがモノエーテル、ジエーテル又はこれらの混合物を含み、前記抗微生物成分が前記脂肪族ポリエステルの1重量%を超える量で存在し、前記抗微生物成分のみがカチオン性抗微生物アミン化合物である場合には、前記抗微生物成分が前記脂肪族ポリエステルの5重量%を超える量で存在する、組成物。
【請求項3】
a)脂肪族ポリエステルと、
b)少なくとも1個のC〜C18アルキル基を有するプロトン化三級アミン;オクトキシグリセリンを除く多価アルコールの(C〜C22)飽和脂肪族エーテル、多価アルコールの(C〜C22)不飽和脂肪族エーテル、(C〜C22)アルコールの(C〜C)ヒドロキシ酸エステル、これらのアルコキシル化誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、組成物中に組み込まれる抗微生物成分と、のブレンドを含む組成物であって、前記アルコキシル化誘導体が、多価アルコール1モルあたり5モル未満のアルコキシド基を有するが;ただし、スクロース以外の多価アルコールの場合には、前記エステルがモノエステルを含み、前記エーテルがモノエーテルを含み、スクロースの場合には、前記エステルがモノエステル、ジエステル又はこれらの組み合わせを含み、前記エーテルがモノエーテル、ジエーテル又はこれらの混合物を含み、前記抗微生物成分が前記脂肪族ポリエステルの1重量%を超える量で存在する、組成物。
【請求項4】
前記抗微生物成分と異なる界面活性剤を更に含む、請求項1、2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤が、サルフェート、スルホネート、ホスホネート、ホスフェート、ポロキサマー、アルキルラクテート、カルボキシレート、カチオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤が、(C〜C22)アルキルサルフェート塩、ジ(C〜C18)スルホスクシネート塩、C〜C22アルキルサルコシネート及びこれらの組み合わせから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
a)脂肪族熱可塑性ポリエステルポリマーと、
b)カチオン性抗微生物アミン化合物;多価アルコールの(C〜C22)飽和脂肪酸エステル、多価アルコールの(C〜C22)不飽和脂肪酸エステル、多価アルコールの(C〜C22)飽和脂肪族エーテル、多価アルコールの(C〜C22)不飽和脂肪族エーテル、(C〜C22)アルコールの(C〜C)ヒドロキシ酸エステル、これらのアルコキシル化誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、組成物中に組み込まれる抗微生物成分であって、前記アルコキシル化誘導体が、多価アルコール1モルあたり5モル未満のアルコキシド基を有するが;ただし、スクロース以外の多価アルコールの場合には、前記エステルがモノエステルを含み、前記エーテルがモノエーテルを含み、スクロースの場合には、前記エステルがモノエステル、ジエステル又はこれらの組み合わせを含み、前記エーテルがモノエーテル、ジエーテル又はこれらの混合物を含み、前記抗微生物成分が前記脂肪族ポリエステルの1重量%を超える量で存在する抗微生物成分と、
c)α−ヒドロキシ酸、β−ヒドロキシ酸、キレート剤、(C〜C)飽和又は不飽和アルキルカルボン酸、(C〜C16)アリールカルボン酸、(C〜C16)アラルキルカルボン酸、(C〜C12)アルカリルカルボン酸、フェノール化合物、(C〜C10)アルキルアルコール、エーテルグリコール、分解して前述の賦活剤のうちの1種を放出するオリゴマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される賦活剤と、
d)前記抗微生物成分とは異なる界面活性剤と、を含む組成物。
【請求項8】
前記脂肪族ポリエステルが、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ブレンド及びこれらのコポリマーからなる群から選択される、請求項1、2、3又は7に記載の組成物。
【請求項9】
前記脂肪族ポリエステルが半結晶質である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記抗微生物成分b)及び前記賦活剤c)と異なる可塑剤を更に含む、請求項1、2、3又は7に記載の組成物。
【請求項11】
前記抗微生物成分が、前記脂肪族ポリエステルの5重量%を超える量で存在する、請求項1、2、3又は7に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗微生物成分が、前記脂肪族ポリエステルの13重量%を超える量で存在する、請求項1、2、3又は7に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗微生物成分が、前記脂肪族ポリエステルの20重量%を超える量で存在する、請求項1、2、3又は7に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗微生物成分b)が、(C〜C12)プロピレンモノエステル、グリセロールモノエステル、四級アンモニウム化合物及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1、2、3又は7に記載の組成物。
【請求項15】
前記抗微生物成分b)が、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノカプリレート、グリセロールモノラウレート、ラウロイルエチルアルギネート及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1、2、3又は7に記載の組成物。
【請求項16】
前記賦活剤が、安息香酸、サリチル酸、マンデル酸、乳酸、グリコール酸、グリコール酸オリゴマー、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、ソルビン酸、エチレンジアミン四酢酸、及びこれらの部分的に又は完全に中和された塩、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は7に記載の組成物。
【請求項17】
前記脂肪族ポリエステルの0.5重量%超から20重量%までの範囲の量で存在するフェノール賦活剤を除き、前記賦活剤が前記脂肪族ポリエステルの0.1重量%超から20重量%までの範囲の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
物品が成型高分子物品、高分子シート、高分子繊維、織布ウェブ、不織布ウェブ、高分子発泡体及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1、2、3又は7に記載の組成物を含む物品。
【請求項19】
請求項1、2、3又は7に記載の組成物を含む不織布ウェブを含む手術用ドレープ。
【請求項20】
請求項1、2、3又は7に記載の組成物を含む不織布ウェブを含む手術用ガウン。
【請求項21】
請求項1、2、3又は7に記載の組成物を含むカテーテル。
【請求項22】
a)熱可塑性脂肪族ポリエステルを提供する工程と、
b)カチオン性抗微生物アミン化合物;多価アルコールの(C〜C22)飽和脂肪酸エステル、多価アルコールの(C〜C22)不飽和脂肪酸エステル、多価アルコールの(C〜C22)飽和脂肪族エーテル、多価アルコールの(C〜C22)不飽和脂肪族エーテル、(C〜C22)アルコールの(C〜C)ヒドロキシ酸エステル、これらのアルコキシル化誘導体、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、組成物中に組み込まれる抗微生物成分であって、前記アルコキシル化誘導体が、多価アルコール1モルあたり5モル未満のアルコキシド基を有するが;ただし、スクロース以外の多価アルコールの場合には、前記エステルがモノエステルを含み、前記エーテルがモノエーテルを含み、スクロースの場合には、前記エステルがモノエステル、ジエステル又はこれらの組み合わせを含み、前記エーテルがモノエーテル、ジエーテル又はこれらの混合物を含み、前記抗微生物成分が前記脂肪族ポリエステルの1重量%を超える量で存在する、抗微生物成分を提供する工程と、
c)溶融形態のa)の前記脂肪族ポリエステルと、b)の前記抗微生物成分とを混合する工程と、を含む、抗微生物組成物の製造方法。
【請求項23】
工程c)で賦活剤もまた前記成分と混合され、前記賦活剤が、α−ヒドロキシ酸、β−ヒドロキシ酸、キレート剤、(C〜C)飽和又は不飽和アルキルカルボン酸、(C〜C16)アリールカルボン酸、(C〜C16)アラルキルカルボン酸、(C〜C12)アルカリルカルボン酸、フェノール化合物、(C〜C10)アルキルアルコール、エーテルグリコール、分解して前述の賦活剤のうちの1種を放出するオリゴマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
a)脂肪族ポリエステルを提供する工程と、
b)カチオン性抗微生物アミン化合物;多価アルコールの(C〜C22)飽和脂肪酸エステル、多価アルコールの(C〜C22)不飽和脂肪酸エステル、多価アルコールの(C〜C22)飽和脂肪族エーテル、多価アルコールの(C〜C22)不飽和脂肪族エーテル、(C〜C22)アルコールの(C〜C)ヒドロキシ酸エステル、これらのアルコキシル化誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、組成物中に組み込まれる抗微生物成分であって、前記アルコキシル化誘導体が、多価アルコール1モルあたり5モル未満のアルコキシド基を有するが;ただし、スクロース以外の多価アルコールの場合には、前記エステルがモノエステルを含み、前記エーテルがモノエーテルを含み、スクロースの場合には、前記エステルがモノエステル、ジエステル又はこれらの組み合わせを含み、前記エーテルがモノエーテル、ジエーテル又はこれらの混合物を含み、前記抗微生物成分が前記脂肪族ポリエステルの5重量%を超える量で存在する、抗微生物成分を提供する工程と、
c)a)及びb)の成分の少なくとも一部を溶解することができる溶媒と、
d)a)の前記脂肪族ポリエステル及びb)の前記抗微生物成分と、c)の前記溶媒とを混合する工程と、
e)工程d)の前記溶媒組成物を流延する工程と、
f)前記溶媒を蒸発させる工程と、を含む、抗微生物組成物の製造方法。

【公表番号】特表2010−512408(P2010−512408A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541450(P2009−541450)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/084625
【国際公開番号】WO2008/133724
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】