説明

生体適合性材料

【課題】基材表面に、離脱しがたく、生体適合性に優れた被膜を形成する生体適合性材料用樹脂組成物の提供。
【解決手段】式(I):


(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3、R4及びR5は炭素数1〜4のアルキル基等であり、Xは酸素原子又は−NH−基を示す)で表されるケイ素原子含有モノマーおよびN−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン等の窒素原子含有モノマーを重合させてなる(メタ)アクリル系ポリマーを含有する生体適合性材料用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性材料に関する。さらに詳しくは、基材表面に被膜を形成することにより、基材表面に生体適合性を付与することができる生体適合性材料用樹脂組成物および当該生体適合性材料用樹脂組成物からなる被膜を基材表面に有する生体適合性材料に関する。なお、本明細書にいう「生体適合性」とは、タンパク質が吸着されがたい性質のことを意味する。
【背景技術】
【0002】
臨床で使用されているポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロンなどのポリアミド、ポリ塩化ビニルなどの医療用材料は、血液適合性が十分であるとはいえず、血液との接触に伴うタンパク質の表面吸着が原因で血栓が発生するおそれがある。
【0003】
そこで、タンパク質や血球などの生体成分との相互作用がないなどの優れた生体適合性を有する生体適合性ポリマーを含有する医療用被膜形成樹脂組成物として、両性モノマーの単独重合体または当該両性モノマーと生体適合性を有する重合性モノマーとを含有するモノマー組成物を重合させてなる生体適合性ポリマーを含有する医療用被膜形成樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記医療用被膜形成樹脂組成物は、確かにタンパク質や血球などの生体成分との相互作用がないなどの優れた生体適合性を有するものであるが、さらに基材から離脱しがたく、生体適合性に優れた被膜を形成する生体適合性材料用樹脂組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−130194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、基材から離脱しがたく、生体適合性に優れた被膜を基材表面上で形成する生体適合性材料用樹脂組成物、および当該生体適合性材料用樹脂組成物からなる被膜が表面上に形成された生体適合性材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1) 式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3、R4およびR5はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であって、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つの基は炭素数1〜4のアルコキシ基、Xは酸素原子または−NH−基を示す)
で表わされるケイ素原子含有モノマーおよび式(II):
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R1は前記と同じ。R6は炭素数1〜6のアルキレン基、R7およびR8はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、R9は炭素数1〜4のアルキレン基、Yは酸素原子または−NH−基を示す)
で表わされる窒素原子含有モノマーを含有するモノマー成分を重合させてなる(メタ)アクリル系ポリマーを含有することを特徴とする生体適合性材料用樹脂組成物、
(2) 式(I)で表わされるケイ素原子含有モノマーと式(II)で表わされる窒素原子含有モノマーとの重量比(ケイ素原子含有モノマー/窒素原子含有モノマー)が、5/95〜95/5である前記(1)に記載の生体適合性材料用樹脂組成物、および
(3) 前記(1)または(2)に記載の生体適合性材料用樹脂組成物からなる被膜が表面上に形成されてなる生体適合性材料
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基材から離脱しがたく、生体適合性に優れた被膜を基材表面上で形成する生体適合性材料用樹脂組成物、および当該生体適合性材料用樹脂組成物からなる被膜が表面上に形成された生体適合性材料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の生体適合性材料用樹脂組成物は、前記したように、式(I):
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3、R4およびR5はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であって、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つの基は炭素数1〜4のアルコキシ基、Xは酸素原子または−NH−基を示す)
で表わされるケイ素原子含有モノマーおよび式(II):
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、R1は前記と同じ。R6は炭素数1〜6のアルキレン基、R7およびR8はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、R9は炭素数1〜4のアルキレン基、Yは酸素原子または−NH−基を示す)
で表わされる窒素原子含有モノマーを含有するモノマー成分を重合させてなる(メタ)アクリル系ポリマーを含有することを特徴とする。
【0018】
式(I)で表わされるケイ素原子含有モノマーにおいて、R1は、水素原子またはメチル基である。
【0019】
2は、炭素数1〜6のアルキレン基であるが、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基である。R2の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、tert−ブチレン基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0020】
3、R4およびR5は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であって、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つの基は、炭素数1〜4のアルコキシ基である。R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つの基が炭素数1〜4のアルコキシ基であるのは、本発明の生体適合性材料用樹脂組成物を強固に基材に固定するためである。したがって、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つの基が炭素数1〜4のアルコキシ基であるが、R3、R4およびR5のうちの少なくとも2つの基が炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましく、R3、R4およびR5のいずれもが炭素数1〜4のアルコキシ基であることがより好ましい。炭素数1〜4のアルキル基のなかでは、メチル基およびエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。炭素数1〜4のアルコキシ基のなかでは、メトキシ基およびエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
Xは、酸素原子または−NH−基である。
【0021】
式(I)で表わされるケイ素原子含有モノマーとしては、例えば、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジプロポキシシランなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのケイ素原子含有モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリ」は、「アクリ」および/または「メタクリ」を意味する。
【0023】
式(II)で表わされる窒素原子含有モノマーにおいて、R1は、前記と同様に、水素原子またはメチル基である。
【0024】
6は、炭素数1〜6のアルキレン基であるが、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基、より好ましくは炭素数が1または2のアルキレン基、さらに好ましくは炭素数が2のアルキレン基である。R2の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、tert−ブチレン基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの炭素数1〜6のアルキレン基のなかでは、メチレン基およびエチレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0025】
7およびR8は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数1〜4のアルキル基のなかでは、メチル基およびエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0026】
9は、炭素数1〜4のアルキレン基である。炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、tert−ブチレン基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数1〜4のアルキレン基のなかでは、メチレン基およびエチレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
Yは、酸素原子または−NH−基である。
【0027】
式(II)で表わされる窒素原子含有モノマーは、水和物を含む概念のものである。したがって、式(II)で表わされる窒素原子含有モノマーの概念には、当該式(II)で表わされる窒素原子含有モノマーのみならず、その一水和物などの水和物が含まれる。
【0028】
式(II)で表わされる窒素原子含有モノマーとしては、例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルアミノエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの窒素原子含有モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
なお、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインは、例えば、特開平9−95474号公報、特開平9−95586号公報、特開平11−222470号公報などに記載されている方法により、高純度で容易に調製することができる。
【0030】
式(I)で表わされるケイ素原子含有モノマーと式(II)で表わされる窒素原子含有モノマーとの重量比(ケイ素原子含有モノマー/窒素原子含有モノマー)は、基材との密着性を高める観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上であり、被膜の親水性を高める観点から、好ましくは95/5以下、より好ましくは85/15以下、さらに好ましくは75/25以下、特に好ましくは60/40以下である。
【0031】
本発明に用いられる単量体組成物は、式(I)で表わされるケイ素原子含有モノマーおよび式(II)で表わされる窒素原子含有モノマーを含有するものであるが、必要により、さらに、式(I)で表わされるケイ素原子含有モノマーおよび式(II)で表わされる窒素原子含有モノマーと共重合可能なモノマーを含有していてもよい。前記共重合可能なモノマーの代表例としては、炭素−炭素不飽和二重結合を有するモノマーなどが挙げられる。
【0032】
炭素−炭素不飽和二重結合を有するモノマーとしては、例えば、スチレン系モノマー、カルボン酸エステル系モノマー、アミド系モノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの共重合可能なモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
モノマー成分にスチレン系モノマーを含有させた場合、本発明の生体適合性材料用樹脂組成物の耐熱性を向上させることができるという利点がある。スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのスチレン系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
モノマー成分にカルボン酸エステル系モノマーを含有させた場合、本発明の生体適合性材料用樹脂組成物の親油性を向上させることができるという利点がある。カルボン酸エステル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸エチルカルビトール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステルなどをはじめ、イタコン酸メチル、イタコン酸エチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボン酸エステル系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
モノマー成分にアミド系モノマーを含有させた場合、本発明の生体適合性材料用樹脂組成物の耐加水分解性を向上させることができるという利点がある。アミド系モノマーとしては、例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド系モノマーをはじめ、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアミド系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
式(I)で表わされるケイ素原子含有モノマーおよび式(II)で表わされる窒素原子含有モノマーと共重合可能なモノマーの量は、式(I)で表わされるケイ素原子含有モノマーと式(II)で表わされる窒素原子含有モノマーとの合計量100重量部あたり、親水性を向上させる観点から、好ましくは100重量部以下、すなわち0〜100重量部、より好ましくは50重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下であり、当該共重合可能なモノマーの種類などによってその量が異なるが、当該共重合可能なモノマーを用いることによって付与される性質を十分に発現させる観点から、好ましくは0.3重量部以上、より好ましくは1重量部以上、さらに好ましくは3重量部以上である。
【0037】
式(I)で表わされるケイ素原子含有モノマー、式(II)で表わされる窒素原子含有モノマー、および必要によりこれらのモノマーと共重合可能なモノマーを含有するモノマー成分を重合させることにより、(メタ)アクリル系ポリマーが得られる。
【0038】
モノマー成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾイソブチロニトリル、アゾイソ酪酸メチル、アゾビスジメチルバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ベンゾフェノン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ベンゾケトン誘導体、フェニルチオエーテル誘導体、アジド誘導体、ジアゾ誘導体、ジスルフィド誘導体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
重合開始剤の量は、特に限定されないが、通常、モノマー成分100重量部あたり0.01〜10重量部程度であることが好ましい。
【0040】
また、本発明においては、モノマー成分を重合させる際には、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤は、通常、モノマー成分と混合することによって用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリセロールなどのメルカプタン基含有化合物、次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの無機塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
連鎖移動剤の量は、特に限定されないが、通常、モノマー成分100重量部あたり0.01〜10重量部程度であればよい。
【0042】
モノマー成分を重合させる方法としては、例えば、溶液重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。モノマー成分を溶液重合法によって重合させる場合には、例えば、モノマー成分を溶媒に溶解させ、得られた溶液を攪拌しながら重合開始剤を添加し、重合させることができる。
【0043】
溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物、n−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
溶媒の量は、通常、モノマー成分を溶媒に溶解させることによって得られる溶液におけるモノマー成分の濃度が10〜80重量%程度となるように調整することが好ましい。
【0045】
モノマー成分を重合させる際の重合温度、重合時間などの重合条件は、そのモノマー成分の組成、重合開始剤の種類およびその量などに応じて適宜調整することが好ましい。
【0046】
モノマー成分を重合させるときの雰囲気は、不活性ガスであることが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0047】
重合反応の終了や反応系内における未反応モノマーの有無は、例えば、ガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析方法で確認することができる。
【0048】
以上のようにしてモノマー成分を重合させることにより、(メタ)アクリル系ポリマーを得ることができる。
【0049】
(メタ)アクリル系ポリマーの粘度平均分子量は、生体適合性を高める観点から、好ましくは1000以上、より好ましくは5000以上であり、溶媒に対する溶解性を高める観点から、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの粘度平均分子量は、例えば、ウベローデ型粘度計などによって測定することができる。
【0050】
本発明の生体適合性材料用樹脂組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマーを含有するものであり、本発明の目的が阻害されない範囲内で、他のポリマーや溶媒、各種添加剤などが含まれていてもよい。
【0051】
溶媒としては、前記モノマー成分を重合させる際に用いられる溶媒と同様であればよい。当該溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物、n−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
溶媒の量は、特に限定されないが、通常、(メタ)アクリル系ポリマーを溶媒に溶解させることによって得られる溶液における(メタ)アクリル系ポリマーの濃度が10〜80重量%程度となるように調整することが好ましい。
【0053】
本発明の生体適合性材料は、基材の表面上に生体適合性材料用樹脂組成物からなる被膜を形成させることによって得られる。
【0054】
基材の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロンに代表されるポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、尿素樹脂、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリスルホン、ポリカーボネート、ABS樹脂、AS樹脂、シリコーン樹脂、ガラス、セラミック、金属などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。基材のなかでは、本発明の生体適合性材料用樹脂組成物に含まれている(メタ)アクリル系ポリマーを強固に基材に固定する観点から、その表面上に水酸基が存在する基材が好ましい。
【0055】
表面上に水酸基が存在していない基材を用いる場合には、本発明の生体適合性材料を基材に強固に固定させる観点から、その表面上に水酸基が存在するように表面を親水化させることが好ましい。なお、例えば、ガラスなどからなる基材のように、その表面に水酸基が十分に存在している場合には、その表面上に水酸基が存在するように表面を親水化させなくてもよいことは言うまでもない。
【0056】
基材の形状は、特に限定されず、例えば、フィルム、シート、プレート、ロッド、所定形状に成形された成形体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0057】
本発明の生体適合性材料用樹脂組成物からなる被膜を基材の表面上に形成させる方法としては、例えば、フローコート法、スプレーコート法、浸漬法、刷毛塗法、ロールコート法、蒸着法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0058】
本発明の生体適合性材料用樹脂組成物からなる被膜を基材の表面上に形成させるときの雰囲気は、通常、大気であればよく、また塗布する際の温度は、通常、常温であってもよく、加温であってもよい。本発明の生体適合性材料用樹脂組成物からなる被膜を基材の表面上に形成させる際の本発明の生体適合性材料用樹脂組成物の量は、基材の用途などによって異なるので一概には決定することができないため、その用途などに応じて適宜調整することが好ましい。
【0059】
本発明の生体適合性材料用樹脂組成物からなる被膜を基材の表面上に形成させた後は、生産効率を高める観点から、基材を加熱することが好ましい。基材を加熱する際の加熱温度は、その基材の耐熱温度などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、50〜150℃の範囲内で、その基材に適した温度を選択することが好ましい。
【0060】
なお、本発明の生体適合性材料は、モノマー成分を基材表面上に塗布し、光を照射したり、加熱したりすることにより、モノマー成分を重合させ、生体適合性材料用樹脂組成物からなる被膜を基材表面上に形成させることによって製造することもできる。
【0061】
材料表面上に形成される生体適合性材料用樹脂組成物からなる被膜の厚さ(乾燥後の厚さ)は、当該生体適合性材料の種類や用途などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、10nm〜10μm程度であることが好ましい。
【0062】
以上のようにして、本発明の生体適合性材料用樹脂組成物からなる被膜を基材の表面上に形成させることにより、本発明の生体適合性材料が得られる。
【0063】
本発明の生体適合性材料は、その表面上に本発明の生体適合性材料用樹脂組成物からなる被膜が固定化されるので、基材表面から離脱しがたく、生体適合性に優れた被膜を有する。
【実施例】
【0064】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0065】
実施例1
窒素ガス導入管、コンデンサーおよび撹拌機を備えた1L容のコルベンに、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン一水和物〔大阪有機化学工業(株)、商品名:GLBT〕40g、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、商品名:KBM−503〕60gおよびエチルアルコール400gを添加した。コルベン内を減圧することによって脱気した後、窒素ガスをコルベン内に導入して常圧に戻した。
【0066】
次に、アゾビスイソブチロニトリル10gをコルベン内に添加し、コルベンの内容物の温度を80℃に保持しながら10時間熟成させた後、水浴にて30℃に冷却することにより、(メタ)アクリル系ポリマー溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系ポリマー溶液の粘度をウベローデ型粘度計〔(株)相互理化学硝子製作所製、品番:U−0327−26〕にて25℃で測定することにより、粘度平均分子量を求めたところ、その粘度平均分子量は39000であった。この(メタ)アクリル系ポリマー溶液を生体適合性材料用樹脂組成物として用いた。
【0067】
実施例2
窒素ガス導入管、コンデンサーおよび撹拌機を備えた1L容のコルベンに、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン一水和物〔大阪有機化学工業(株)、商品名:GLBT〕53g、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、商品名:KBM−503〕47gおよびエチルアルコール400gを添加した。コルベン内を減圧することによって脱気した後、窒素ガスをコルベン内に導入して常圧に戻した。
【0068】
次に、アゾビスイソブチロニトリル10gをコルベン内に添加し、コルベンの内容物の温度を80℃に保持しながら10時間熟成させた後、水浴にて30℃に冷却することにより、(メタ)アクリル系ポリマー溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系ポリマー溶液の粘度をウベローデ型粘度計〔(株)相互理化学硝子製作所製、品番:U−0327−26〕にて25℃で測定することにより、粘度平均分子量を求めたところ、その粘度平均分子量は21000であった。この(メタ)アクリル系ポリマー溶液を生体適合性材料用樹脂組成物として用いた。
【0069】
実施例3
窒素ガス導入管、コンデンサーおよび撹拌機を備えた1L容のコルベンに、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン一水和物〔大阪有機化学工業(株)、商品名:GLBT〕64g、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、商品名:KBM−503〕36gおよびエチルアルコール400gを添加した。コルベン内を減圧することによって脱気した後、窒素ガスをコルベン内に導入して常圧に戻した。
【0070】
次に、アゾビスイソブチロニトリル10gをコルベン内に添加し、コルベンの内容物の温度を80℃に保持しながら10時間熟成させた後、水浴にて30℃に冷却することにより、(メタ)アクリル系ポリマー溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系ポリマー溶液の粘度をウベローデ型粘度計〔(株)相互理化学硝子製作所製、品番:U−0327−26〕にて25℃で測定することにより、粘度平均分子量を求めたところ、その粘度平均分子量は13000であった。この(メタ)アクリル系ポリマー溶液を生体適合性材料用樹脂組成物として用いた。
【0071】
実施例4
窒素ガス導入管、コンデンサーおよび撹拌機を備えた1L容のコルベンに、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン一水和物〔大阪有機化学工業(株)、商品名:GLBT〕77g、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、商品名:KBM−503〕23gおよびエチルアルコール400gを添加した。コルベン内を減圧することによって脱気した後、窒素ガスをコルベン内に導入して常圧に戻した。
【0072】
次に、アゾビスイソブチロニトリル10gをコルベン内に添加し、コルベンの内容物の温度を80℃に保持しながら10時間熟成させた後、水浴にて30℃に冷却することにより、(メタ)アクリル系ポリマー溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系ポリマー溶液の粘度をウベローデ型粘度計〔(株)相互理化学硝子製作所製、品番:U−0327−26〕にて25℃で測定することにより、粘度平均分子量を求めたところ、その粘度平均分子量は10000であった。この(メタ)アクリル系ポリマー溶液を生体適合性材料用樹脂組成物として用いた。
【0073】
実施例5
窒素ガス導入管、コンデンサーおよび撹拌機を備えた1L容のコルベンに、N−メタクリロイルアミノエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン一水和物〔大阪有機化学工業(株)製〕40g、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、商品名:KBM−503〕60gおよびエチルアルコール400gを添加した。コルベン内を減圧することによって脱気した後、窒素ガスをコルベン内に導入して常圧に戻した。
【0074】
次に、アゾビスイソブチロニトリル10gをコルベン内に添加し、コルベンの内容物の温度を80℃に保持しながら10時間熟成させた後、水浴にて30℃に冷却することにより、(メタ)アクリル系ポリマー溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系ポリマー溶液の粘度をウベローデ型粘度計〔(株)相互理化学硝子製作所製、品番:U−0327−26〕にて25℃で測定することにより、粘度平均分子量を求めたところ、その粘度平均分子量は37000であった。この(メタ)アクリル系ポリマー溶液を生体適合性材料用樹脂組成物として用いた。
【0075】
実施例6
窒素ガス導入管、コンデンサーおよび撹拌機を備えた1L容のコルベンに、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン一水和物〔大阪有機化学工業(株)製、商品名:GLBT〕40g、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、商品名:KBM−502〕60gおよびエチルアルコール400gを添加した。コルベン内を減圧することによって脱気した後、窒素ガスをコルベン内に導入して常圧に戻した。
【0076】
次に、アゾビスイソブチロニトリル10gをコルベン内に添加し、コルベンの内容物の温度を80℃に保持しながら10時間熟成させた後、水浴にて30℃に冷却することにより、(メタ)アクリル系ポリマー溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系ポリマー溶液の粘度をウベローデ型粘度計〔(株)相互理化学硝子製作所製、品番:U−0327−26〕にて25℃で測定することにより、粘度平均分子量を求めたところ、その粘度平均分子量は36000であった。この(メタ)アクリル系ポリマー溶液を生体適合性材料用樹脂組成物として用いた。
【0077】
比較例1
窒素ガス導入管、コンデンサーおよび撹拌機を備えた1L容のコルベンに、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、商品名:KBM−503〕100gおよびエチルアルコール400gを添加した。コルベン内を減圧することによって脱気した後、窒素ガスをコルベン内に導入して常圧に戻した。
【0078】
次に、アゾビスイソブチロニトリル10gをコルベン内に添加し、コルベンの内容物の温度を80℃に保持しながら10時間熟成させた後、水浴にて30℃に冷却することにより、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の粘度をウベローデ型粘度計〔(株)相互理化学硝子製作所製、品番:U−0327−26〕にて25℃で測定することにより、粘度平均分子量を求めたところ、その粘度平均分子量は14000であった。このポリマー溶液を生体適合性材料用樹脂組成物として用いた。
【0079】
比較例2
窒素ガス導入管、コンデンサーおよび撹拌機を備えた1L容のコルベンに、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン一水和物〔大阪有機化学工業(株)製、商品名:GLBT〕100gおよびエチルアルコール400gを添加した。コルベン内を減圧することによって脱気した後、窒素ガスをコルベン内に導入して常圧に戻した。
【0080】
次に、アゾビスイソブチロニトリル10gをコルベン内に添加し、コルベンの内容物の温度を80℃に保持しながら10時間熟成させた後、水浴にて30℃に冷却することにより、(メタ)アクリル系ポリマー溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系ポリマー溶液の粘度をウベローデ型粘度計〔(株)相互理化学硝子製作所製、品番:U−0327−26〕にて25℃で測定することにより、粘度平均分子量を求めたところ、その粘度平均分子量は
10000であった。この(メタ)アクリル系ポリマー溶液を生体適合性材料用樹脂組成物として用いた。
【0081】
実験例
ガラス基板(縦:38mm、横:26mm、厚さ:1mm)を水、メタノールおよびアセトンを順に用いて洗浄した後、その両面に1時間ずつ紫外線の照射とオゾン洗浄を行なった。
【0082】
各実施例または各比較例で得られた生体適合性材料用樹脂組成物をエチルアルコールで希釈し、その濃度が1容量%となるように調整した溶液を用意し、各溶液中に前記基板を浸漬し、室温中にてそのままの状態で10分間放置し、基板表面に生体適合性材料用樹脂組成物からなる被膜を形成させることにより、生体適合性材料を作製した。
【0083】
得られた生体適合性材料を前記溶液から取り出し、エチルアルコールで洗浄した後、さらにエチルアルコール中に30秒間浸漬しながら超音波を照射することによって洗浄した。この生体適合材料をエチルアルコールから取り出し、精製水中に10分間浸漬させた後、窒素ガスで乾燥させることにより、試験片を作製した。
【0084】
次に、前記で得られた試験片を用い、生体適合性材料の物性として、生体適合性、被膜の厚さおよび被膜の密着性を以下の方法に基づいて評価した。その結果を表1に示す。
【0085】
〔生体適合性〕
タンパク質としてBSA(牛血清アルブミン、pI:4.8、66kD)またはLYS(リゾチーム、pI:11.0−11.4、14.3kD)を用い、pHが7である10mMリン酸緩衝液に溶かし、タンパク質濃度が4.5mg/mLであるタンパク質溶液を調製した。
【0086】
前記で得られた試験片を室温中でタンパク質溶液中に1.5時間浸漬することにより、試験片にタンパク質を付着させ、精製水で数回すすぎ、乾燥させた後、マイクロプレートリーダー〔サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific Inc.)製、品番:Multiskan JX〕を用い、波長:560nmにおける試験片の吸光度を測定し、タンパク質で処理されていないガラス基板の吸光度を100としたときの相対的な吸光度を求め、その値を生体適合性の指標とした。なお、前記吸光度の値が小さいほど、タンパク質の吸着量が少ないことから、生体適合性がより優れている。
【0087】
〔被膜の厚さ〕
触針式段差計〔ケーエルエー・テンコール(株)製、品番:P−10〕を用いて試験片の表面上に形成されている被膜の厚さを測定した。
【0088】
〔被膜の密着性〕
ワイピングクロス〔日本製紙クレシア(株)製、商品名:キムワイプS−200〕を生体適合性材料に荷重100gで3000回擦った後、試験片の表面上に形成されている被膜の状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
○:被膜の剥がれが発見されない。
×:被膜の剥がれが認められる。
【0089】
【表1】

【0090】
表1に示された結果から、各実施例で得られた生体適合性材料用樹脂組成物が用いられた生体適合性材料は、ケイ素原子含有モノマーと窒素原子含有モノマーとが併用されているので、各比較例で得られた生体適合性材料用樹脂組成物が用いられた生体適合性材料と対比して、BSAの吸光度およびLYSの吸光度がいずれも顕著に小さく、タンパク質の吸着量が少ないので生体適合性に優れており、さらに被膜と基材との密着性にも優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の生体適合性材料用樹脂組成物は、ガラス、金属、樹脂などの種々の材質からなる基材表面に塗布することにより、その基材表面に生体適合性を付与することができることから、タンパク質、細胞などの付着が抑制された生体適合性材料に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3、R4およびR5はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であって、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つの基は炭素数1〜4のアルコキシ基、Xは酸素原子または−NH−基を示す)
で表わされるケイ素原子含有モノマーおよび式(II):
【化2】

(式中、R1は前記と同じ。R6は炭素数1〜6のアルキレン基、R7およびR8はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、R9は炭素数1〜4のアルキレン基、Yは酸素原子または−NH−基を示す)
で表わされる窒素原子含有モノマーを含有するモノマー成分を重合させてなる(メタ)アクリル系ポリマーを含有することを特徴とする生体適合性材料用樹脂組成物。
【請求項2】
式(I)で表わされるケイ素原子含有モノマーと式(II)で表わされる窒素原子含有モノマーとの重量比(ケイ素原子含有モノマー/窒素原子含有モノマー)が、5/95〜95/5である請求項1に記載の生体適合性材料用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の生体適合性材料用樹脂組成物からなる被膜が表面上に形成されてなる生体適合性材料。

【公開番号】特開2012−34747(P2012−34747A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175561(P2010−175561)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000205638)大阪有機化学工業株式会社 (101)
【出願人】(305060567)国立大学法人富山大学 (194)
【Fターム(参考)】