説明

生体適合性相転化可能なタンパク性組成物ならびにその製造および使用方法

生体適合性相転化可能なタンパク性組成物ならびにそれらの製造および使用法が提供される。目的の相転化可能な組成物は、タンパク性基体および架橋剤を組合せることにより調製される。タンパク性基体は、1種または複数のタンパク質および接着改質剤を含み、ならびに可塑剤、炭水化物、または他の改質物質の1種または複数を含んでもよい。ある態様において、架橋剤は熱処理されたジアルデヒド、例えば熱処理されたグルタルアルデヒドである。同じく目的の組成物を調製するために使用されるキットも提供される。目的の組成物、キットおよびシステムは、多種多様な用途における使用を認めている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2002年9月13日に出願され、その開示は本明細書に参照として組入れられている、米国特許出願第10/243,482号の一部係属出願であり;および、2002年8月6日に出願され、その開示は本明細書に参照として組入れられている、米国特許仮出願第60/401,282号の出願日に対し、米国特許法第119条e項に準じた優先権も請求している。
【0002】
序論
発明の技術分野
この分野は、生体適合性組成物であり、生体適合性シーラント組成物を含む。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
最近、多くのシーラント組成物が、手術部位における液体漏出を管理するために、更には他の用途のために、利用可能になってきている。しかし現在利用可能なシーラント組成物は、それらを使用することができる場、更にはそれらの生体適合性およびそれらの物理特性に関する重大な制約に悩まされることがある。炎症、創傷部位の急性線維性形成、毒性、血だらけの場(bloody field)での使用不能、そのシーラントの貧弱な物理特性、および手術部位への接着不良のような副作用は、患者に重大な影響を及ぼし、結果的に修復の長期効率において重要な役割を果たし得る。更に有用なシーラントは、外科用途においてそれらをより有効にすることができる特性を有する。特異的位置へ局在化される能力、的確な長期または短期の重合時間、および適切なインビボ吸収特性などの特性は、シーリング手技をうまく完遂するために不可欠である。
【0004】
従って、シーラントとして使用することに加え、他の用途で使用するための新規生体適合性組成物の開発が継続して必要とされている。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
生体適合性相転化可能なタンパク性組成物ならびにその製造および使用法が提供される。目的の相転化可能な組成物は、タンパク性基体および架橋剤を組合せることにより調製される。タンパク性基体は、1種または複数のタンパク質、および少なくとも多くの態様において、接着改質剤を含み、ならびに1種または複数の可塑剤、炭水化物、または他の修飾剤を含んでもよい。ある態様において、架橋剤は、熱処理されたジアルデヒド、例えば、熱処理されたグルタルアルデヒドである。同じく目的の組成物の調製において使用されるキットも提供される。目的の組成物、キットおよびシステムは、多種多様な用途における使用が認められる。
【0006】
具体的態様の詳細な説明
生体適合性相転化可能なタンパク性組成物ならびにその製造および使用法が提供される。目的の相転化可能な組成物は、タンパク性基体および架橋剤を組合せることにより調製される。タンパク性基体は、1種または複数のタンパク質、および少なくとも多くの態様において、接着改質剤を含み、ならびに1種または複数の可塑剤、炭水化物、または他の修飾剤を含んでもよい。ある態様において、架橋剤は、熱処理されたジアルデヒド、例えば熱処理されたグルタルアルデヒドである。同じく、目的の組成物を調製する際に使用されるキットも提供される。目的の組成物、キットおよびシステムは、多種多様な用途における使用が認められる。
【0007】
本発明を更に説明する前に、本発明は、以下に説明される本発明の特定の態様に限定されるものではなく、その特定の態様の変更を行うことができ、およびこれもまた添付された「特許請求の範囲」内に収まることは理解されるべきである。同じく使用された用語は、特定の態様を説明する目的のためであり、限定を意図するものではないことが理解されるべきである。代わりに本発明の範囲は、添付された「特許請求の範囲」により確立される。
【0008】
本明細書および添付された「特許請求の範囲」において、単数形(a、anおよびthe)は、本文において特に明確に示さない限りは、複数の意味も有する。特に定義しない限りは、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。
【0009】
値が範囲で提供される場合は、特に本文において明確に示さない限りは、その範囲の上限と下限の間で、下限の単位の1/10までの介在する値の各々、および言及された範囲の他の言及された値もしくは介在する値が、本発明において包含されると理解される。これらの比較的小さい範囲の上限および下限が、より小さい範囲に独立して含まれることができ、これも本発明に包含され、言及された範囲内の特に除外された限界に支配される。言及した範囲が、これらの限界の片方または両方を含む場合、これらの含まれた限界のいずれかまたは両方を除外した範囲も、本発明に含まれる。
【0010】
特に定義しない限りは、本明細書において使用された全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に説明されたものに類似したまたは同等であるあらゆる方法、装置および材料を本発明の実践または試験において使用することができるが、好ましい方法、装置および材料を以下に説明する。
【0011】
本明細書において言及した全ての刊行物は、その刊行物において説明されている、本発明の目的の部品の説明および開示を目的として、本明細書に参照として組入れられており、これらの部品は、本明細書で説明される発明に関連して使用される。
【0012】
更に本明細書の説明において、目的の相転化可能な組成物が、最初により詳細に説明され、次にその組成物の使用を認める代表的用途を説明し、更に目的の相転化可能な組成物の製造または使用における用途を認めるキットおよびシステムを考察する。
【0013】
生体適合性相転化可能なタンパク性組成物
先にまとめたように、本発明は、時間をかけて、第一の液体状態から第二の固体状態へと相転化を受ける、生体適合性相転化可能なタンパク性組成物を提供する。目的の相転化可能な組成物は、湿潤環境(例えば血液)および乾燥環境の両方における組織結合の能力により特徴付けられ、ここで組成物の組織への接着は並はずれて強力である。目的の組成物の更なる特徴は、これらは血行動態が安定しており、および例え炎症反応があるとしても、実質的炎症反応を誘起しないことである。
【0014】
目的の相転化可能なタンパク性組成物は、タンパク性基体を、架橋剤と組合せまたは混合することにより調製される。これらの前駆体成分または組成物を、ここで個別により詳細に考察する。
【0015】
タンパク性基体
目的の相転化可能な組成物が調製されるタンパク性基体は、一般に少なくともタンパク性成分および、少なくとも多くの態様において、接着改質剤で作成される液体組成物、例えば水性組成物であり、ここでこの基体は、可塑剤;炭水化物;などを含むが、これらに限定されるものではなく、1種または複数の追加成分を含むことができる。
【0016】
タンパク性成分
基体のタンパク性成分は、1種または複数の区別できるタンパク質で作成されている。この成分のタンパク質は、合成または天然のいずれかのタンパク質であることができ、ここでこれらのタンパク質は、通常のプロトコール、例えば天然の給源からの精製、組換え的作成、合成的作成などを用い、獲得/調製することができ、ここである態様において、タンパク質は、例えばウシまたはヒトの天然の給源から得られる。関心のある具体的タンパク質は、アルブミン、コラーゲン、エラスチン、フィブリンなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0017】
基体組成物中のタンパク質の量は変動することができ、ここで濃度の具体的選択は、望ましい用途およびその結果望ましい生成物のパラメータ、例えば靭性、硬度、弾性、吸収特性および血小板凝集作用などにより左右される。ある態様において、基体組成物中の総タンパク質の総濃度は、約1〜75質量%、例えば1〜50質量%であり、5〜40質量%を含む。
【0018】
ある態様において、この態様の基体組成物の主要なタンパク質は、アルブミンであり、ここでアルブミンは、天然のアルブミン、例えば、ヒトアルブミン、ウシアルブミンなど、またはそれらの変種である。当該技術分野において公知であるように、このアルブミンは、粉末形で購入し、その後水性懸濁液に溶解しても良く、あるいは、水性の形で購入してもよい。精製されたアルブミンは、周知の方法に従い、ウシ、ヒツジ、ウマ、ヒト、またはトリを含む、多くの異なる給源のいずれかひとつに由来することができるか(参照:Cohnら、J. Amer. Chem. Soc.、69:1753)、または凍結乾燥形または水溶液形で、Aldrich Chemical社(セントルイス、MO)のような供給業者から精製された形で購入してもよい。アルブミンは、硫酸ヘパリン、増殖因子、抗生物質などの薬物のための担体として作用するように、誘導体化されてもよく、または粘度、もしくは疎水性を中等度にするという目的で修飾されてもよい。無水コハク酸、および塩化ラウリルなどであるが、これらに限定されるものではないアシル化剤を用いる誘導体化は、有用な分子の付加のための結合部位の作成に有用である。タンパク性成分がアルブミンを含む態様において、アルブミンは、約10〜約50質量%、例えば約30〜約40質量%の範囲の濃度で存在してもよい。
【0019】
ある態様において、タンパク質成分は、コラーゲン、例えば天然のコラーゲン(ヒト、ウシ)またはそれらの合成の変種も含む。本発明では、コラーゲンは、アルブミンと混合する場合には、乾燥形または水性の形であることができる。コラーゲンは、その有用性を増大するように誘導体化することができる。酸無水物または酸塩化物のようなアシル化剤は、増殖因子、および抗生物質などの分子の結合に有用な部位を作成することがわかっている。コラーゲンが存在する場合、これは約1〜約20質量%であることが多く、約1〜約10質量%、例えば約1〜約4質量%を含み、約2〜4質量%を含む。
【0020】
前述のような目的のタンパク性成分は、例えば薬物のような、1種または複数の活性物質を、含んでも含まなくともよく、望ましいならばその中に存在してもよい。存在する場合、その(それらの)物質は、望ましいようにポリマーに結合することができる。
【0021】
接着改質剤
この基体の少なくとも多くの態様において、1種または複数の接着改質剤または増粘剤も存在する。接着改質剤(本明細書においては増粘剤とも称される。)は、シーラントの生物学的表面への接着を改善する。多くの態様において、接着改質剤は、アミンなどの、帯電した官能基を有するポリマー化合物である。多くの接着改質剤を使用することができるが、特に適用されるものは、ポリエチレンイミン(PEI)である。PEIは、第1級、第2級および第3級アミンを含む、長鎖の分枝したアルキルポリマーである。これらの高度にイオン性の基の存在は、下側の表面との、イオン相互作用を介した重要な接着を生じる。加えて基体中のPEIの存在は、架橋剤との架橋の形成に適したアミン末端の存在を大幅に増強する。追加の関心のある接着改質剤は、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ブチルヒドロキシトルエンなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0022】
本発明のある態様において、接着改質剤を使用し、生物学的基体への接着を改質すると同時に、凝血原を作成する。ある態様において、接着改質剤は、約0.1〜約10質量%、例えば約0.5〜約4質量%の濃度で存在する。
【0023】
任意の成分
目的の組成物の前述の基体成分は、ある態様において、基体および架橋剤から作製された相転化可能な組成物の特性を修飾する、1種または複数の任意の成分を含んでもよい。ここで関心のある代表的な任意の成分を、より詳細に考察する。
【0024】
可塑剤
本発明に従い、可塑剤は、基体中に存在することができる。可塑剤は、多くの機能を提供し、これは表面の湿潤、あるいは材料の弾性率の増加、または更に材料の混合および用途における補助を含む。多くの可塑剤が存在し、これは例えばオレイン酸、パルミチン酸などの脂肪酸、フタル酸ジオクチル、リン脂質、およびホスファチジル酸を含む。典型的には可塑剤は、水に不溶性の有機物質であり、水とは容易に混和しないので、これは時には溶液に関連した表面張力を低下するために適当な可塑剤をアルコールと予め混合することにより、それらの水との混和性を修飾するために利点となる。この目的のために、いずれかのアルコ−ルを使用することができる。本発明のひとつの代表的態様において、オレイン酸は、エタノールと混合され、50質量%溶液を形成し、次にこの溶液を用い、タンパク性基体を、その配合時に可塑化する。可塑剤の種類および濃度は用途に応じて変動するが、ある態様において、可塑剤の最終濃度は、約0.01〜10質量%であり、約2〜約4質量%を含む。他の関心のある可塑剤は、ポリエチレングリコール、グリセリン、ブチルヒドロキシトルエンなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0025】
炭水化物凝血原
ある態様において、基体は、炭水化物凝血原を含む。キトサンおよびキトサン誘導体は、強力な血液凝固剤であり、従って血管損傷を封止することが可能であるシーラント材料の配合において有益である。事実上全てのキチン物質は、若干の凝血原活性を有することが明らかにされており、本発明のアセチル化されたキチンの使用は、血液制御が意図されたシーラントの配合のための添加剤として好ましい。分子のアセチル化は、多種多様な方法で実現することができるが、ひとつの一般的方法は、コハク酸などの酸無水物による、キトサン/酢酸混合物の処置である。この反応は、室温で容易に実行される。本発明に従い、この方法で作成されたタンパク性基体と組合されおよびインサイチューで架橋されたゲルは、生体複合構造部材の作製にとって有益である。本発明の内容に従い、炭水化物成分、例えばキトサンは、約0〜約20質量%、例えば約2〜約5質量%の範囲の濃度で存在することができる。
【0026】
充填剤
関心のある充填剤は、補強型および非補強型充填剤の両方を含む。補強型充填剤は、細断した繊維性の絹、ポリエステル、PTFE、ナイロン、炭素繊維、ポリプロピレン、ポリウレタン、ガラスなどを含むことができる。繊維は、例えば、その他の成分について先に説明したように、望ましいならば、例えば湿潤性、混合性などを増大するように、改質することができる。補強型充填剤は、約0〜40%、例えば約10〜約30%で存在することができる。非補強型充填剤は同じく、例えば、クレイ、雲母、ヒドロキシアパタイト、硫酸カルシウム、骨粉などを含むことができる。望ましいならばこれらの充填剤も、先に説明したように改質されてもよい。非補強型充填剤は、約0〜40%、例えば約10〜約30%で存在することができる。
【0027】
生物学的活性物質
生物学的活性物質は、例えば骨増殖因子、組織賦活剤、軟骨増殖活性化因子、小分子活性物質などが含まれ得る。
【0028】
発泡剤
ある態様において、基体は、架橋剤組成物と組合せた場合に、発泡剤組成物、例えば、その周りに散乱したガス状の気泡を含む組成物を生じるような発泡剤を含むことができる。いずれか都合の良い発泡剤が存在してよく、ここで発泡剤は、泡の発生を提供し、結果的にその組成物の望ましい発泡特性を提供するような基体を生じる物質であることができる。例えば、約2〜約5質量%の範囲の量の炭酸水素ナトリウムのような塩が、基体中に存在することができる。この基体を、例えばpH約5を有する酸性架橋剤組成物と組合せる場合に、発泡組成物が生成される。
【0029】
追加の改質剤
追加の改質剤も存在することができる。例えば、1種または複数のポリマー(例えば、ポリブレンド)、例えばテフロン、PET、ナイロン、ヒドロゲル、ポリプロピレンなどのブレンドが存在してもよい。これらのポリブレンドは、例えば先に説明したように、望ましい特性を提供するように改質されてもよい。これらの追加の改質剤は、約0〜50%の範囲の量で、約10〜約30%を含むように存在してもよい。
【0030】
架橋剤およびそれらの調製
先に説明したように、この相転化可能な組成物は、前述のタンパク性基体を、架橋剤と組合せることにより作製され、ここで架橋剤は、例えばタンパク性基体の様々なポリペプチド鎖上に存在する官能基の間に共有結合を形成することにより、タンパク性基体を安定化する。架橋は典型的には、組成物の分子を、化学分解を受けにくくし、従って、その組成物の吸収特性に加えその組成物の存在により誘導される生物学的反応を修飾する。多くの架橋剤が同定されている。関心のある架橋剤の代表例は、以下を含むが、これらに限定されるものではない:光-酸化分子;カルボジイミド;カルボニル含有化合物、例えばカルボン酸を含む、モノ-およびジ-カルボニル、例えばアジピン酸、グルタル酸などのジカルボン酸、ならびにモノ-およびジ-アルデヒド、例えばグルタルアルデヒドを含む、アルデヒドなどである。
【0031】
多くの態様において、使用される架橋剤は、アルデヒド架橋剤である。いずれかのアルデヒド架橋剤を、基体を架橋するために使用することができるが、グルタルアルデヒドが多くの態様において使用される。
【0032】
多くの態様において、アルデヒド架橋剤は、安定化されたアルデヒド架橋剤、例えば安定化されたグルタルアルデヒド架橋剤を生成するように前処理される。安定化されたアルデヒド、特にグルタルアルデヒド架橋剤を作成するために、グルタルアルデヒドの量は、最初に特定のpHで水と混合され、水性グルタルアルデヒド組成物を作成し、ここでこの組成物中のグルタルアルデヒドの濃度は、典型的には、約1〜約20質量%であり、約7〜約12質量%を含み、ならびにpHは、約5〜約10の範囲であり、約6〜約8を含み、例えば約7である。安定化された架橋剤を生成することにおいて、先の最初の水性グルタルアルデヒド組成物は、次にある温度に、望ましい安定化された架橋剤が生成されるのに十分な期間加熱される。この工程において、この組成物は、温度約35〜約60℃、例えば約45〜約55℃に、約1〜約20日間、例えば約1〜約14日間で、約72〜約120時間を含む期間維持される。この工程は、いずれか都合の良いプロトコール、例えば最初の水性組成物を窒素大気下で加熱することにより、実現され得る。この生成物架橋剤は、安定化された形で存在する。例えば、この方法で熱処理されたグルタルアルデヒドは、下記式により説明されたピリジン複合体として存在する:

【0033】
加熱後、得られる組成物は、室温に冷却され、その後タンパク性基体のための架橋剤として使用される。熱処理された架橋剤の特徴は、例えばジアルデヒドのような熱処理された架橋剤は、電気原子価的(electrovalently)に安定形であるので、使用時に架橋された生成物を安定化するために、追加の還元剤を必要としないことである。
【0034】
目的の熱処理した架橋剤の使用の利点は、熱処理されたジアルデヒドを使用し作成された架橋剤は、共有結合構造であり、転化されにくいという特徴を含む。従って熱処理されたグルタルアルデヒドを用いて架橋されたタンパク質は、より安定しており、および熱処理されないジアルデヒドを使用する場合に、架橋剤の転化の結果として注目される強力な炎症反応を示さない。
【0035】
緩衝剤
対象の相転化可能な組成物を作成するためのタンパク性基体と架橋剤の混合時に、相転化可能な組成物の緩衝は、例えば組成物の付着表面への結合強度を最適化するため、内部架橋が生じるのに必要な条件を最適化するためなどの多くの理由により、重要である。例えばグルタルアルデヒド架橋剤を使用するタンパク質のための最適な架橋は、pH範囲約6〜約8で生じる。この範囲を維持することが可能である緩衝液は、それらが架橋剤のカルボニル末端を妨害しないまたはアミノ酸のアミン末端を修飾しない限りは、本発明において有用である。例えばリン酸緩衝液は、pH7.0の範囲のpKa値を有し、およびそれらはカルボキシまたはアミン官能基を含まないめに、架橋プロセスを妨害しない。強度が最大1Mまでのリン酸緩衝液は、本発明における緩衝液としての使用に適しており、ここである態様において、リン酸緩衝液は、強度が約0.2Mである。これらの溶液のリン酸緩衝が、増強された接着が必要であるような用途におけるタンパク質基体の安定性にとっては理想的であるが、酸性緩衝液も使用することができる。0.1〜1MおよびpH範囲約4.5〜約6.5を有するクエン酸緩衝液は、本発明にとって有用であることがわかっている。
【0036】
この緩衝液は、最初の架橋剤成分または最初のタンパク性基体成分のいずれかの中に、もしくは望ましいならば両方の成分中に存在してもよい。
【0037】
相転化可能な組成物を作製するための基体および架橋剤の組合せ
先にまとめたように、目的の相転化可能な組成物は、適量のおよび相転化可能な組成物が作製されるのに十分な条件下での、タンパク性基体と架橋剤の組合せにより調製される。この基体および架橋剤は典型的には、約1/5〜約5/1の範囲の容量比で組合せられ;その結果得られる相転化可能な組成物は、総タンパク質濃度は典型的には、約10〜約60%、例えば約20〜約50%の範囲で、約30〜約40%を含み、ならびに総架橋剤組成物は典型的には、約0.1〜約20%、例えば約0.5〜約15%の範囲で、約1〜約10%を含むように作製される。
【0038】
基体および架橋剤の組合せは、典型的には混合条件下で生じ、その結果これらふたつの成分は互いに完全に組合せられるかまたは混合される。組合せまたは混合は、都合の良いプロトコールのいずれかを用い、例えばふたつの成分を手作業により組合わせることによるか、ふたつの成分を組合せる装置を使用することなどにより、実行することができる。組合せまたは混合は典型的には、温度範囲約20〜約40℃、例えば室温で実行される。
【0039】
先に説明したようなタンパク性基体および架橋剤の組合せは、結果として、相転化可能な組成物の作製する。相転化可能な組成物は、第一の液体状態が第二の非-液体、例えばゲルまたは固体状態へ移行する組成物を意味する。第二の非-液体状態において、組成物は、完全でないとしても、実質的に液体流動は不可能である。相転化可能な組成物は典型的には、基体および架橋剤成分の組合せ後、温度範囲約15℃〜約40℃、例えば約20℃〜約30℃で維持される場合に、約10秒〜約10分、例えば約20秒〜約5分の範囲で、約30秒〜約120秒を含む期間、液体状態であり続ける。
【0040】
方法
目的の生体適合性相転化可能な組成物は、典型的には、多量の相転化可能な組成物が、それを必要とする対象、患者または宿主の特定の部位または位置に送達される方法において使用される。対象、患者または宿主は、典型的には「哺乳類」または「哺乳類の」であり、ここでこれらの用語は、哺乳類綱の生物で、食肉目(例えば、イヌおよびネコ)、齧歯目(例えば、マウス、モルモット、およびラット)、ウサギ目(例えば、ウサギ)、および霊長目(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を含むが、これらに限定されるものではない生物を説明するように広範に使用される。多くの態様において、動物または宿主、すなわち対象(本明細書においては患者とも称される)は、ヒトであろう。
【0041】
いずれか所定の用途において対象に送達される量は、用途の性質および組成物の使用に応じて必然的に変動するが、ある代表的態様においては、約1〜約50ml、例えば約1〜約25mlの範囲であり、約1〜約5ml、例えば約3mlを含むであろう。
【0042】
目的の組成物が使用される特有な用途に必然的に左右される理由は、目的の組成物は、多くの態様において、宿主の特定の領域、部位または位置に局所的に送達されるからであり、ここで部位または位置は当然変動することができる。代表的部位または位置は、血管、臓器などを含むが、これらに限定されるものではない。具体的な用途に応じて、この組成物は、手作業によるか、または送達装置、例えば以下により詳細に説明されるステント留置術の用途において組成物を送達するために使用される送達装置により、関心のある部位に送達することができる。
【0043】
有用性
目的の生体適合性相転化可能な組成物は、多種多様な用途における使用がわかっている。目的の相転化可能な組成物の代表的用途は、

において開示されたものを含み;これらの開示は本明細書に参照として組入れられている。
【0044】
代表的血管ステント留置適用
関心のあるある特定の用途において、目的の本発明は、生体複合構造部材、例えばステントを、インサイチューにおいて血管部位で作製する方法および装置を提供する。これらの態様において、第一工程は、液体組成物送達装置の遠位端を、生体複合構造部材が作製される血管部位に位置づけるまたは配置することである。構造部材が目的の方法で作製される血管部位は、典型的には動脈の限定された位置または領域である。動脈は、血流が心臓から離れる血管が発達した(vascularized)動物の血管を意味する。多くの態様において、動脈血管は、心臓血管系の血管である。関心のある特定の態様において、心臓血管系の血管は、心筋に供給するために心臓へ血液が還流する冠動脈である。
【0045】
ある態様において、液体組成物送達装置は、その遠位端に第一および第二の閉塞部材を膨張可能なマンドレルを側方に位置して備える装置である。従ってこれらの態様の装置は、それらの遠位端に、膨張可能なマンドレルから分離された、第一および第二の閉塞部材を備える。
【0046】
第一および第二の閉塞部材は、閉塞部材の任意の都合の良い型であってよい。ある態様において、閉塞部材は、配置可能なバルーンであり、ここで様々なバルーン閉塞部材が、関連技術分野において公知であり、および目的の装置において使用することができる。更に別の態様において、閉塞部材は、配置時に、配置位置で、血管内の液体流れの阻止を生じるカラーの形状を作製する閉塞部材のような、非-バルーン型閉塞部材であってよい。前述の閉塞部材は、必要要件が、部材が配置領域で血管を閉塞するために利用されること、すなわちこの部材は完全でなくとも、実質的に閉塞された領域へのおよび領域からの血液の流れを停止することのみである場合に使用され得る閉塞部材の型の単なる典型的なものである。
【0047】
第一および第二の閉塞部材間には、膨張可能なマンドレルが配置される。従って以下に説明するように、その周りに相転化可能な液体が配置されおよび固化(set)することができる膨張可能な構造が、第一および第二の閉塞部材の間に存在する。多くの態様において、膨張可能なマンドレルは、1個または複数の液体の導入口および排出口を備え、ここでこれらの口は、液体運搬構造、例えば装置の遠位端から装置の異なる位置、例えば装置の近位端との液体連絡内の液溜めなどの装置の近位端まで続く管腔に侵入または排除するための、液体の入口経路または出口経路として役立つ孔または類似構造である。
【0048】
ある(全てではないが)態様の特徴は、膨張可能なマンドレルは、第一および第二の閉塞部材の配置または相転化可能な液体組成物の関心のある血管部位への送達開始のいずれかの機能として、膨張または配置することである。従ってある態様において、この装置は、第一および第二の閉塞部材の配置が膨張可能なマンドレルの配置を生じるようなものである。更に別の態様において、膨張可能なマンドレルの配置は、例えばその装置の送達管腔への液体の導入時に、血管部位へ、相転化可能な液体組成物の導入の機能として生じる。
【0049】
先に説明したように、血管部位での、この装置の遠位端の配置または位置付けの後、第一および第二の閉塞部材ならびに膨張可能なマンドレルは、その血管部位においてインサイチューで形成される構造部材のための成形空間を作成するように配置される。作成された成形空間は、第一および第二の閉塞部材のいずれかの末端に境界を接している。その血管部位が位置した血管の管腔は、成形空間の外壁として役目を果たし、および膨張可能なマンドレルは、成形空間の内壁として役目を果たす。従って成形空間は、マンドレルで内面、血管部位の血管管腔で外面、ならびに第一および第二の閉塞部材により上面および底面が境界決定された空間の管状容積を定義する。
【0050】
目的の方法において、その後相転化可能な液体組成物は、先に定義されたように、成形空間へ導入される。最も広範な意味において、相転化可能な液体組成物は、例えばステントのような生理学的に許容できる生体複合構造部材へと時間をかけて第一液体組成物から第二の固形組成物への相転化が可能であるいずれかの液体であることができるが、多くの態様において、使用される相転化可能な材料は、先に説明されたような、本発明の相転化可能な材料である。相転化可能な液体組成物が、例えば、先に説明された代表的組成物などの、基体および架橋剤から調製されるものであるようなこれらの態様において、目的の方法において使用される装置は、血管部位(例えば、液体がマンドレル内の口から流出する点)に、または血管部位の上流の位置、例えば液体送達装置の近位端の位置で、基体および架橋剤を混合または組合せるための要素を有することができる。
【0051】
相転化可能な材料の導入後、この時点で成形空間内に存在する相転化可能な液体組成物は、該第二の固体状態への相転化を受ける。次に、膨張可能なマンドレルおよび閉塞部材が収縮または崩壊され、およびその装置の遠位端は、血管部位から取り除かれ、生じる生体複合構造部材がその血管部位に残存される。従って目的の方法の実践は、血管部位での生体複合構造部材のインサイチュー作成を生じる。
【0052】
具体的代表的態様
図1Aから1Eは、生体複合ステントが、動脈の管腔表面上に狭窄病巣を有する血管部位でインサイチュー作製される、目的の方法に従う代表的方法の実践の図を提供する。
【0053】
図1Aは、血管壁12およびその管腔表面上に存在する狭窄病巣14を示している、冠動脈10の横断面図を提供する。
【0054】
図1Bは、病巣14により占拠された血管部位での装置20の配置を示し、ここで病巣は、例えば標準のバルーン式血管形成を用い、血管の管腔表面に対し圧縮されている。装置20は、膨張可能なマンドレル26が側方に位置する、すなわちこれにより分離された近位閉塞バルーン22および遠位閉塞バルーン24を備えるカテーテル装置である。遠位閉塞バルーン24に隣接するマーカーバンド28がある。ガイドワイヤ21も示されている。ガイドワイヤ21およびマーカーバンド28は、血管部位でのこの装置の遠位端の配置を補助する。バルーン管腔23も、液体送達管腔25として示されている。複数の液体侵入口および出口27が、膨張可能なマンドレル26の表面に存在し、これを使用し、閉塞部材および膨張可能なマンドレルの配置時に作成される成形空間へ液体が導入されおよび/またはそこから液体が除去される。
【0055】
図1Cにおいて、近位および遠位バルーンならびに膨張可能なマンドレルは、血管部位にステント成形空間30を作成するように配置されており、ここでステント成形物30は、いずれかの端が、遠位および近位閉塞バルーンのいずれかにより外面上がそれらの上に圧縮された病巣を有する管腔により、および内面上が膨張可能なマンドレルにより境界付けられた管状容積である。
【0056】
図1Dは、例えば口27を介した、相転化可能な材料40の成形空間30への導入を示す。
【0057】
導入された相転化可能な液体組成物はその後、固化または硬化され、それに続き装置20が血管部位から取り除かれ、図1Eに示された生体複合ステント50の裏側に残存される。
【0058】
本発明の送達装置の代わりの態様は、図2に示されている。図2において、送達装置60は、血管70内の位置に配置された形状で示されている。バルーン62およびマンドレル64が配置され、および相転化可能な組成物のふたつの構成要素、すなわち基体および架橋剤(後述)を、装置60の個別の液体送達管腔から出口68へと運搬する複数の送達管66がマンドレル64内に存在する。各送達管66の遠位端は、この装置から出る直前にふたつの構成要素を組合せることを補助する混合要素67である。
【0059】
更に別の代わりの態様において、膨張可能なマンドレルは、二部分の相転化可能な組成物の個々の構成成分、すなわち基体および架橋剤組成物が個別の出口を通り送達される、複数の送達管を有する。基体材料を病巣部位に送達後、架橋剤組成物は、これらふたつの構成成分を混合することを目的として膨張可能なマンドレルの同時振動(すなわち、膨張および収縮)を伴う部位へ送達される。
【0060】
更に別の代わりの態様において、基体材料は、膨張可能なマンドレルの外側の上に固形マトリックスとして配置され、その後マンドレルの膨張により管状の血管壁に膨張される。一旦適所にリンカー組成物が、膨張可能なマンドレルを通して送達され、ならびに先に配置された基体材料と接触および混合され始める。
【0061】
これらの特定の代表的態様の目的の方法および装置は、前述のように、血管部位のインサイチューでの生体複合構造部材の作製が望ましい任意の用途における使用を見つける。目的の方法が使用を見つける用途のひとつの代表的型は、狭窄性血管部位、例えば冠動脈での、生体複合ステントの作製であり、ここでこの病巣は、粥腫切除術または血管形成術により、治療、例えば圧縮され、動脈を通る血流を増大する。
【0062】
一般に、目的の本発明が使用される血管が発達した動物は、「哺乳類」または「哺乳類の」であり、ここでこれらの用語は、食肉目(例えば、イヌおよびネコ)、齧歯目(例えば、マウス、モルモット、およびラット)、ウサギ目(例えば、ウサギ)、および霊長目(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を含む哺乳類綱内である生物を説明するために広範に使用される。多くの態様において、動物または宿主、すなわち対象(本明細書においては患者とも称される)は、ヒトであろう。
【0063】
同じくこの態様の目的の方法の実践において使用するためのシステムも提供され、ここでこれらのシステムは、前述のように、少なくとも液体送達装置および相転化可能な液体組成物を備えている。目的のシステムは、典型的には、ガイドワイヤまたは同様の構造のような、例えば、経皮的接近プロトコールにおいて、この装置の位置付けに使用されるガイド要素も備える。目的のシステム内に存在してもよい他の構成成分は、バルーン膨張手段などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0064】
キット
目的の方法を実践する際に使用するためのキットも提供され、ここでこのキットは、典型的には前述のような、相転化可能な液体組成物の区別できる基体および架橋剤の構成成分を含む。基体および架橋剤構成成分は、キット内の個別の容器内に存在してもよく、例えばここで基体は、第一の容器内に存在し、および架橋剤は第二の容器内に存在し、ここでこれらの容器は組合せた形状で存在してもしなくともよい。
【0065】
目的のキットは同じく、基体および架橋剤を一緒に混合し相転化可能な組成物を作製するための混合装置を備えてもよい。これらのキットは、前述のように、カテーテル装置などの、送達装置(これは混合要素を備えても備えなくともよい)を備えることもできる。
【0066】
このキットは更に、例えば、目的の方法の実践において用途を認めることができる、ガイドワイヤ、センサーワイヤなどの、他の構成成分を備えてもよい。
【0067】
前述の構成成分に加え、目的のキットは典型的には更に、目的の方法の実践のためにこのキットのこれらの構成成分を使用するための取扱説明書を備える。目的の方法を実践するための取扱説明書は一般に、適当な記録媒体に記録されている。例えばこれらの取扱説明書は、紙またはプラスチックなどの基体上に印刷されてもよい。従ってこの取扱説明書は、添付文書として、キットまたはそれらの構成成分の容器(すなわち、包装または個別包装に関連して)のラベリングなどにおいて、キット内に存在することができる。別の態様において、取扱説明書は、例えばCD-ROM、フロッピーディスクなどの、適当なコンピュータで読取り可能な保存媒体上に存在する電子保存したデータファイルとして存在する。更に別の態様において、実際の取扱説明書は、キット内には存在しないが、取扱説明書を遠隔地の情報源から、例えばインターネットにより入手するための手段が提供される。この態様の例は、そこで取扱説明書を閲覧することができるおよび/またはそこから取扱説明書をダウンロードすることができるようなウェブアドレスを含むキットである。取扱説明書と同様に、取扱説明書を得るためのこの手段は、適当な基体に記録される。
【0068】
下記実施例が、限定のためではなく例証のために提供される。
【0069】
実施例
I.熱処理したグルタルアルデヒドの機能性
熱処理したグルタルアルデヒドを評価し、架橋効率を決定した。グルタルアルデヒド溶液(5質量%)を用い、35%アルブミンを含有する溶液を架橋した。このアルブミンは、およそ90秒間重合し、これはグルタルアルデヒドの架橋溶液の効率を損なわなかった。
【0070】
II.代表的使用
A.肺
ウサギを、肺シーラントとしての材料を評価するための実験モデルとして、使用した。
【0071】
アルブミン、コラーゲン、オレイン酸、PEIおよびキトサンからなり、ならびに熱処理されたグルタルアルデヒドにより架橋された本発明のシーラント組成物を、本発明の方法に従い調製した。各成分の濃度は、先の例において示された値と一致していた。
【0072】
麻酔をかけたウサギの肺を露出し、しぼませた。その後、肺の上葉部分を切断し、およびしぼませた肺の切断部位を封止しおよび再膨張させた。この肺を、水に浸漬させることにより漏出について評価した。肺の空気漏出に関する評価は何も存在しないことを示し、このことはこのシーラントの有効性を示している。
【0073】
B.血管
ウサギを再度、血管シーラントの材料を評価するための実験モデルとして使用した。
【0074】
この実験において、麻酔をかけ凝血防止したウサギの頸動脈を、左右対称に露出した。左側の動脈を、14Fカテーテルで穿刺した。カテーテルの除去後、その孔をこのシーラントを用いて閉鎖した。あるいは右側の動脈を離断し、および6-0 PROLENE縫合糸を用い吻合を形成した。臍テープを、手術部位に近接する血管の周りに部分的に巻き付け、一時的に血流を減少した。
【0075】
これまで示された範囲に一致するように配合されたシーラントを、チップ付き注射器(tipped syringe)を用い、穿刺部位に塗布した。3分後、圧力を解放し、頸動脈の完全な収縮期/拡張期血圧に修復部を曝した。創傷部位からの漏出の存在は認められなかった。
【0076】
示された範囲と一致するように配合されたシーラントを、実験モデルの右側の部分的に漏出する吻合部位に塗布した。3分後、漏出が停止したことが、認められた。
【0077】
C. 脳脊髄液
更なる実験において、ヒト死体モデルを、硬膜に対するシーラントの接着について評価した。
【0078】
開頭術後、露出した硬膜を切除した。硬膜の切除は、組織の収縮を生じさせた。収縮した組織を一緒に引き出し、再度一時的に残留する縫合糸(stay sutures)を用い、その結果切除した端を互いに並べた。本発明について記した配合物と一致するシーラントを調製した。このシーラントを、切開創傷の上に塗布し、および縫合糸の残留を解いた。切開創傷の反対側の端は互いに整列したままとしたところ、このシーラントは、硬膜の収縮力に抵抗する適当な靭性を示した。死体頭部を、縫合糸に追加の応力がかかるように下げ、およびこの位置を、シーラントが互いの端を保持することに失敗したかどうかについて観察した。失敗は認められなかった。
【0079】
III. 組織適合性試験
アルブミン、コラーゲン、オレイン酸、PEIおよびキトサンからなり、および熱処理したグルタルアルデヒドにより架橋結合された本発明のシーラント組成物を、本発明の方法に従い調製した。各成分の濃度は、先の例において示された値と一致した。
【0080】
この組成物を、生きているウサギの筋肉組織に移植した。その後筋肉組織を、国際標準化機構(ISO)10993:「医療用具の生物学的評価」、パート6:「移植後の局所作用の試験」の必要要件を基に刺激または毒性の証拠について評価した。
【0081】
移植片試料および陰性コントロール試料を、酸化エチレンで滅菌し、その後5日間脱気した。ウサギに移植し、その後3週間目に安楽死させた。筋肉組織を採取し、移植部位を鏡検した。各ウサギの代表的移植片部位の顕微鏡評価が、更なる任意の組織反応装置に対して行われた。
【0082】
本試験の条件下で、顕微鏡反応は、陰性コントロール移植片材料と比べ、有意ではなかった。顕微鏡的には、被検物質は、陰性コントロール物質と比べ、非-刺激的であるとして分類した。
【0083】
先の結果及び考察から、本発明は、多種多様な用途において使用することができる、生体適合性組成物の重要で新しい型を提供し、ここで目的の組成物の利点は、低い毒性、高い接着性などを含むが、これらに限定されるものではないことは明らかである。従って、本発明は、当該技術分野への重大な貢献を示している。
【0084】
本明細書に引用された全ての刊行物および特許出願は、各々個別の刊行物および特許出願が具体的かつ個別に本明細書に参照として組入れられていることが示されるのと同様に、本明細書に参照として組入れられている。刊行物の引用は、本出願日に先立ち明らかになったものについてであり、本発明が先行する発明に基づくような刊行物に先行して権利を付与されないことの承認として構築されるものではない。
【0085】
前記発明は、理解を明確化することを目的とした例証および実施例により少し詳細に説明されているが、当業者には、本発明の内容を鑑み、添付された「特許請求の範囲」の精神または範囲から逸脱することなく、それにある種の変更および修飾を行うことができることは容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1Aから1Eは、本発明の代表的態様の生体複合ステントのインサイチュー作製を図示している。
【図2】図2は、本発明の送達装置の代わりの態様の代表を提供している。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)タンパク性材料を含む基体、および(b)架橋剤を組合せることにより作製される、相転化可能な組成物。
【請求項2】
タンパク性材料が、アルブミン、エラスチン、フィブリン、ならびに可溶性型および不溶性型のコラーゲン、ならびにそれらの組合せの1種または複数を含む、請求項1記載の相転化可能な組成物。
【請求項3】
基体が、さらに接着改質剤を含む、請求項1記載の相転化可能な組成物。
【請求項4】
接着改質剤が、ポリエチレンイミン、ゼラチンおよびカルボキシメチルセルロースから選択される、請求項3記載の相転化可能な組成物。
【請求項5】
基体が、さらに可塑剤を含む、請求項1記載の相転化可能な組成物。
【請求項6】
可塑剤が、ポリエチレングリコール、グリセリン、脂肪酸、ブチルヒドロキシトルエン、およびそれらの組合せから選択される、請求項4記載の相転化可能な組成物。
【請求項7】
基体が、さらに炭水化物を含む、請求項1記載の相転化可能な組成物。
【請求項8】
基体が、さらに充填剤を含む、請求項1記載の相転化可能な組成物。
【請求項9】
基体が、さらにポリブレンドを含む、請求項1記載の相転化可能な組成物。
【請求項10】
基体が、さらに生物学的活性物質を含む、請求項1記載の相転化可能な組成物。
【請求項11】
基体が、さらに発泡剤を含む、請求項1記載の相転化可能な組成物。
【請求項12】
架橋剤が、アルデヒドを含む、請求項1記載の相転化可能な組成物。
【請求項13】
架橋剤が、グルタルアルデヒドを含む、請求項12記載の相転化可能な組成物。
【請求項14】
グルタルアルデヒドが、熱安定化されている、請求項13記載の相転化可能な組成物。
【請求項15】
(a)(i)タンパク性材料、および
(ii)接着改質剤を含む、基体;ならびに
(b)架橋剤を組合せることにより作製される、相転化可能な組成物。
【請求項16】
タンパク性材料が、アルブミン、エラスチン、フィブリンならびに可溶性型および不溶性型のコラーゲン、ならびにそれらの組合せの1種または複数を含む、請求項15記載の相転化可能な組成物。
【請求項17】
基体が、さらに可塑剤を含む、請求項15記載の相転化可能な組成物。
【請求項18】
可塑剤が、ポリエチレングリコール、グリセリン、脂肪酸、ブチルヒドロキシトルエン、およびそれらの組合せから選択される、請求項17記載の相転化可能な組成物。
【請求項19】
接着改質剤が、ポリエチレンイミン、ゼラチンおよびカルボキシメチルセルロースから選択される、請求項15記載の相転化可能な組成物。
【請求項20】
基体が、さらに炭水化物を含む、請求項15記載の相転化可能な組成物。
【請求項21】
基体が、さらに充填剤を含む、請求項15記載の相転化可能な組成物。
【請求項22】
基体が、さらにポリブレンドを含む、請求項15記載の相転化可能な組成物。
【請求項23】
基体は、さらに生物学的活性物質を含む、請求項15記載の相転化可能な組成物。
【請求項24】
基体が、さらに発泡剤を含む、請求項15記載の相転化可能な組成物。
【請求項25】
架橋剤が、アルデヒドを含む、請求項15記載の相転化可能な組成物。
【請求項26】
架橋剤が、グルタルアルデヒドを含む、請求項25記載の相転化可能な組成物。
【請求項27】
グルタルアルデヒドが、熱安定化されている、請求項26記載の相転化可能な組成物。
【請求項28】
以下を組合せることにより作製される、相転化可能な組成物:
(a)(i)タンパク性材料、
(ii)接着改質剤、および
(iii)可塑剤
を含む、基体;ならびに
(b)架橋剤。
【請求項29】
タンパク性材料が、アルブミン、エラスチン、フィブリン、ならびに可溶性型および不溶性型のコラーゲン、ならびにそれらの組合せの1種または複数を含む、請求項28記載の相転化可能な組成物。
【請求項30】
可塑剤が、ポリエチレングリコール、グリセリン、脂肪酸、ブチルヒドロキシトルエン、およびそれらの組合せから選択される、請求項28記載の相転化可能な組成物。
【請求項31】
接着改質剤が、ポリエチレンイミン、ゼラチンおよびカルボキシメチルセルロースから選択される、請求項28記載の相転化可能な組成物。
【請求項32】
基体が、さらに炭水化物を含む、請求項28記載の相転化可能な組成物。
【請求項33】
基体が、さらに充填剤を含む、請求項28記載の相転化可能な組成物。
【請求項34】
基体が、さらにポリブレンドを含む、請求項28記載の相転化可能な組成物。
【請求項35】
基体が、さらに生物学的活性物質を含む、請求項28記載の相転化可能な組成物。
【請求項36】
基体が、さらに発泡剤を含む、請求項28記載の相転化可能な組成物。
【請求項37】
架橋剤が、アルデヒドを含む、請求項28記載の相転化可能な組成物。
【請求項38】
架橋剤が、グルタルアルデヒドを含む、請求項37記載の相転化可能な組成物。
【請求項39】
グルタルアルデヒドが、熱安定化されている、請求項38記載の相転化可能な組成物。
【請求項40】
下記の工程を含む、相転化可能な組成物の製造法:
(a)タンパク性材料を含む基体;および
(b)架橋剤
を組合せる工程。
【請求項41】
タンパク性材料が、アルブミン、エラスチン、フィブリンならびに可溶性型および不溶性型のコラーゲン、ならびにそれらの組合せを1つまたは複数含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
基体が、さらに接着改質剤を含む、請求項40記載の方法。
【請求項43】
接着改質剤が、ポリエチレンイミン、ゼラチンおよびカルボキシメチルセルロースから選択される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
基体が、さらに可塑剤を含む、請求項40記載の方法。
【請求項45】
可塑剤が、ポリエチレングリコール、グリセリン、脂肪酸、ブチルヒドロキシトルエン、およびそれらの組合せから選択される、請求項44記載の方法。
【請求項46】
基体が、さらに炭水化物を含む、請求項40記載の方法。
【請求項47】
基体が、さらに充填剤を含む、請求項40記載の方法。
【請求項48】
基体が、さらにポリブレンドを含む、請求項40記載の方法。
【請求項49】
基体が、さらに生物学的活性物質を含む、請求項40記載の方法。
【請求項50】
基体が、さらに発泡剤を含む、請求項40記載の方法。
【請求項51】
架橋剤が、アルデヒドを含む、請求項40記載の方法。
【請求項52】
架橋剤が、グルタルアルデヒドを含む、請求項51記載の方法。
【請求項53】
グルタルアルデヒドが、熱安定化されている、請求項52記載の方法。
【請求項54】
請求項40記載の方法により作製された、固相組成物。
【請求項55】
以下の工程を含む、生体適合性組成物を対象の部位へ配置する方法:
(a)請求項1記載の相転化可能な組成物を調製する工程;および、
(b)相転化可能な組成物を対象の部位に導入する工程。
【請求項56】
相転化可能な組成物が、対象の外側の部位で調製される、請求項55記載の方法。
【請求項57】
相転化可能な組成物が、部位でインサイチュー調製される、請求項55記載の方法。
【請求項58】
以下の工程を含む、生体複合構造部材を管状部位で作製する方法:
(a)管状部位に、膨張可能なマンドレルの側方に位置する第一および第二の閉塞部材を含む液体組成物送達装置の遠位端を配置する工程;
(b)第一および第二の閉塞部材および膨張可能なマンドレルを配置して、管状部位に成形空間を作成し、ならびに成形空間に、請求項1記載の相転化可能な液体組成物を導入する工程;
(c)液体組成物を、固体状態に相転化可能なさせる工程;ならびに
(d)液体組成物送達装置を取り除き、管状部位に生体複合構造部材を作製する工程。
【請求項59】
生体複合構造部材が、ステントである、請求項58記載の方法。
【請求項60】
第一および第二の閉塞部材が、バルーンである、請求項58記載の方法。
【請求項61】
第一および第二の閉塞部材が、各々、カラー構造を作成するように配置されている、請求項58記載の方法。
【請求項62】
膨張可能なマンドレルが、第一および第二の閉塞部材の機能として膨張する、請求項58記載の方法。
【請求項63】
膨張可能なマンドレルが、液体組成物の導入の機能として膨張する、請求項58記載の方法。
【請求項64】
相転化可能な組成物の基体および架橋剤が組合されて、液体組成物送達装置の遠位端で、相転化可能な液体組成物を作製する、請求項58記載の方法。
【請求項65】
相転化可能な組成物の基体および架橋剤が組合されて、液体組成物送達装置の遠位端の上流の位置で、相転化可能な液体組成物を作製する、請求項58記載の方法。
【請求項66】
管状部位が、血管部位である、請求項58記載の方法。
【請求項67】
以下を含む、血管部位で生体複合構造部材を作製する装置:
(a)膨張可能なマンドレル;および
(b)液体組成物送達口
の側方に位置する第一および第二の閉塞部材を含む遠位端を有する液体組成物送達要素であって、膨張可能なマンドレルが、
(i)第一および第二の閉塞部材の配置;または
(ii)液体組成物の導入のいずれかの機能として膨張する、液体組成物送達要素。
【請求項68】
第一および第二の閉塞部材が、バルーンである、請求項67記載の装置。
【請求項69】
第一および第二の閉塞部材が、各々カラー構造を作製するように配置される、請求項67記載の装置。
【請求項70】
膨張可能なマンドレルが、第一および第二の閉塞部材の機能として膨張する、請求項67記載の装置。
【請求項71】
膨張可能なマンドレルが、液体組成物の導入の機能として膨張する、請求項67記載の装置。
【請求項72】
装置が、カテーテル装置である、請求項67記載の装置。
【請求項73】
装置が、さらに液体排出口を備える、請求項67記載の装置。
【請求項74】
以下を含む、相転化可能な組成物を作製するキット:
(a)タンパク性材料を含む基体;および
(b)架橋剤。
【請求項75】
キットが、さらに相転化可能な液体送達装置を含む、請求項74記載のキット。
【請求項76】
相転化可能な液体送達装置が、請求項67記載の装置である、請求項75記載のキット。

【図2】
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【公表番号】特表2006−509530(P2006−509530A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−526446(P2004−526446)
【出願日】平成15年8月5日(2003.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/024457
【国際公開番号】WO2004/012678
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
フロッピー
【出願人】(505047717)マトリックス メディカル エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】