説明

生体適合性膜と金属アノードとを含む燃料電池

本発明は、燃料としての金属アノードと生体適合性膜とを含む燃料電池に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2002年10月3日に提出された仮出願第60/415,701号に対して優先権を主張し、この記載内容は、参照することにより本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
Meier et al.,による一連の論文において、機能性タンパク質を含むポリマー系膜に関する種々の構造体が提案されている。このような膜は過去においては、推測された主題であったが、これは、その機能を維持した状態で組み込まれた酵素を含むポリマー系膜を含む最初に成功した生体タンパク質であると考えられている。Corinne Nardin,Wolfgang Meier et al.,39 Angew Chem.Int.Ed.,4599−602(2000);Langmuir,16 1035−41(2000);およびLangmuir,16 7708−12(2000)を参照されたい。これらの論文には、内部にタンパク質(「ポリン」−非選択的受動的細孔形成性分子)が組み込まれている、官能化されたポリ(2−メチルオキサゾリン)−ブロック−ポリ(ジメチルシロキサン)−ブロック−ポリ(2−メチルオキサゾリン)トリブロックコポリマーが記載されている。
【0003】
Meier et al.の研究は独特で、範囲が限定されている。ポリマーの使用があまり広く議論されておらず、さらに、開示されているポリマー膜がさらに別の酵素と併用できることも示唆されていない。確実に、これらの論文はいずれも、酸化または還元に関与することができる組み込まれた生物学的種、または「活性な分子、原子、プロトン、または電子の膜を横切る輸送を媒介するポリペプチド」を含む合成膜の形成の可能性については示唆していない。実際、開示の狭さ、および他では成功していないことから、他の生物学的材料をポリマー膜中に首尾良く組み込むことができるという楽観論の理由はほとんどない。
【0004】
タンパク質の関連する膜の研究のための膜の形成は、以前より知られている。Functional Assembly of Membrane Proteins in Planar Lipid Bilayers,14 Quart.Rev.Biophys.,1−79(1981)を参照されたい。実際、膜貫通タンパク質およびレドックスタンパク質が、それらの構造および機構を研究する目的で、生物学系膜中、例えば生きている細胞または生物中に見られる分子から製造した膜中に組み込まれていた。膜を通過してのプロトンの輸送および/またはレドックス反応への関与が可能な、大腸菌由来のNADHデヒドロゲナーゼなどの組み込まれた酵素複合体を含む脂質二重層の使用も開示されている。2002年1月3日公開のLiberatore et al.の米国特許出願公開No.US2002/0001739A1を参照されたい。実際、Liberatore et al.は、電池の一部としてのこのような膜の使用を記載している。
【0005】
酵素複合体を含む生体膜は存在しないし、ポリマー膜と特定の酵素との1種類の組み合わせも発見されていないため、広い部類の、安定かつ機能的である、合成生体適合性ポリマー膜の開発が非常に望まれている。G.Tayhas et al.,“A Methanol/Dioxogen Biofuel Cell That Uses NAD+ Dependent Dehydrogenases as Catalysts:Application of an Electro−Enzymatic Method to Regenerate Nicotinamide Adenine Dinucleotide at Low Overpotentials”,43 J.Electroanalytical Chem.155−161(1998)も参照されたい。
【0006】
特に亜鉛またはアルミニウムから製造されるものなどの金属アノード、およびそれらの燃料電池への使用も公知となっている。しかし、これらの燃料電池はいくつかの欠点を有する。第1に、これらのエネルギー生成反応が開始すると、通常は、燃料電池から電流が流されない場合でさえもこの反応を完了するまで進行させる必要がある。したがって、利用可能な電力の一部のみしか使用されない場合でさえも、このセルが完全に消費され得る。第2に、これらの燃料電池は、アノードとカソードとの間に、金属イオンを移動させることができるセパレーターまたはバリアを使用することが多く、これによってカソードがめっきされ、効率が低下することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、金属アノードと、金属および金属イオンの通過に対して不透過性であるが、プロトンまたは正電荷の輸送に関与することが可能である生体適合性膜とを含む燃料電池を提供することによってこれらの問題の多くを解決する。本明細書において金属および金属イオンについて議論する場合、これらの用語が、アノード電極として有用であるとして前述した金属を意味し、電解質中に使用できるアルカリ金属またはイオンを意味するものではないことを理解されたい。本発明の一態様による生体適合性膜は、第1の側と第2の側とを有する合成ポリマー材料の少なくとも1つの層を含む。この生体適合性膜は、これと関連する少なくとも1種類のポリペプチドを含む。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特に好ましい一態様においては、本発明は、このポリペプチドが、化学反応への関与、少なくとも1つの層の第1の側から同じ層の第2の側への分子、原子、プロトン、または電子の輸送への関与、あるいはそのような反応または輸送を促進する分子構造の形成への関与が可能となる、生体適合性膜に関する。本発明のさらに特により好ましい態様においては、このポリペプチドが、プロトンの膜通過輸送に関与することができる。生体適合性膜を通過するプロトンの輸送を議論する場合、その厳密な機構も、移動する厳密な化学種も分からないと考えられる。移動する化学種は、プロトン自体、正に帯電した水素、ヒドロニウムイオンH3+、または実際は他の帯電した化学種であるかもしれない。しかし便宜上、本明細書では一括してこれらを「プロトン」として議論する。したがって生体適合性膜は、アノード区画からカソード区画にプロトンを通過させる必要があるが、金属イオンは通過させてはいけない。
【0009】
本明細書に記載される性質を有する生体適合性膜を形成可能である限りは、ブロックコポリマー、コポリマー、またはポリマー、またはそれらの混合物であるどの合成ポリマー材料も、本発明により使用することができる。本発明の好ましい一態様においては、合成ポリマー材料が少なくとも1種類のブロックコポリマーを含む。ブロックコポリマーの混合物も考慮される。場合によっては、合成ポリマー材料は、少なくとも1種類の添加剤を含む。本発明による第2の好ましい実施形態においては、合成ポリマー材料が、少なくとも1種類のポリマー、コポリマー、またはブロックコポリマー、またはこれらのあらゆる組み合わせの混合物を含む。任意選択の添加剤も考慮される。本発明の別の好ましい実施形態においては、合成ポリマー材料は、生体適合性膜を形成できる任意のポリマー材料であってよく、これに加えて少なくとも1種類の安定化ポリマーを含む。添加剤も考慮される。
【0010】
本発明の別の態様においては、合成ポリマー材料は、ブロックコポリマー、ブロックコポリマーの混合物、あるいは、1種類以上のブロックコポリマーの第1の層と、第1の層の機能または寿命を安定化または向上させることができるポリマーから形成される第2の層とから形成される構造である。好ましくは、ポリペプチドが合成ポリマー材料中に埋め込まれて、生体適合性膜が形成される。
【0011】
本明細書で使用される場合、「生体適合性膜」は、膜として使用することができ、かつ多くの場合生物由来であるポリペプチドまたはその他の分子と関連する、シート、プラグ、またはその他の構造を形成する合成ポリマー材料の1つ以上の層である。「生体適合性」とは、互いに関連している場合にポリペプチドの全ての機能を無力化したり、さもなければ妨害したりすることがない合成ポリマー材料で、膜自体ができていることを意味する。本明細書で使用される場合、「膜」は、少なくとも主要構造成分として合成ポリマー材料を含み、空間、流体(液体または気体)、固体などを選択的に分離するために使用することができる材料のシート、層、またはプラグなどの構造である。本明細書で使用される場合、膜は、一部の種を一方の側から他方に通過または拡散させることができる透過性材料を含むことができる。燃料電池中に使用される膜は、例えば、一部の成分のカソード区画内部からアノード区画中への通過を防止する、および/またはアノード区画内部の一部の成分のカソード区画中への通過を防止する。しかし他の成分は自由に通過することができる。同時に、本発明による膜の一実施形態に例示されるように、プロトンのアノード区画からカソード区画への通過が可能となり、実際に促進される。しかし、本発明の生体適合性膜は、金属、特に金属イオンを通過させず、金属イオンのプロトンに対する最大漏出比は100当たり1である。
【0012】
本発明による「関連した」は、状況に依存して多数の事柄を意味することができる。ポリペプチドは生体適合性膜と、その1つ以上の表面と結合することによって、および/または膜の表面の1つ以上の表面の内部(くぼみまたは細孔など)にくい込むまたは結合することによって、関連させることができる。「関連した」ポリペプチドは、膜の内部、または膜内部に含まれる小胞または管腔内部に配置されることができる。ポリペプチドは、連続する層の間に配置さすることもできる。ポリペプチドは膜中に埋め込むこともできる。実際、特に好ましい実施形態においては、ポリペプチドが膜の少なくとも1つの表面を通過して少なくとも部分的に露出し、および/またはレドックス反応に関与できるか、又は膜の一方の側から他方に分子、原子、プロトン、または電子の輸送を媒介するのに関与できるように、ポリペプチドは膜中に埋め込まれるまたは一体とされる。
【0013】
膜の一方の側から他方への分子、原子、プロトン、または電子の移動の場合における用語「関与する」は、例えば、ポリペプチドが、これに限られるものでないが、通常はpHまたは濃度の勾配に逆らって、分子、原子、プロトンまたは電子が膜を通過するように物理的または化学的に「ポンプ輸送する」能動輸送、または任意の他の能動輸送機構を含んでいる。しかし、関与が、このように限定される必要はない。膜中にポリペプチドが単に存在するだけで、プロトンを、例えば比較的高いプロトン濃度から、膜の反対側の比較的低いプロトン濃度に移動させるのに十分な膜の構造または性質に変化させることができる。これは、非選択的受動的細孔形成剤の使用または単純な拡散から生じ得るような受動的非選択的過程に限定されない。実際、場合によっては、膜中のポリペプチドを不活性化することによって、ポリペプチドを全く使用せずに作られた同様の膜よりも劣った結果が得られる。これらの過程(受動拡散を除く)を一括して「ポリペプチド媒介輸送」と呼び、この場合、ポリペプチドの存在は、単なる静的なチャネルの形成以外の方法で膜を通過して化学種を輸送する役割を果たす。言い換えると、「ポリペプチド媒介輸送」とは、ポリペプチドの存在によって、単なる濃度以外の何かの応答で、膜の一方の側から他方に効率的に輸送されることを意味する。レドックス反応の場合における「関与する」とは、ポリペプチドによって、化学種の酸化および/または還元が引き起こされるまたは促進される、あるいは、プロトン、電子、あるいは酸化または還元された化学種がその反応へまたはその反応から移動することを意味する。
【0014】
「ポリペプチド」は、多くの場合触媒として化学反応に関与することができる、あるいは膜の一方の側から他方への分子、原子、プロトンまたは電子の輸送に関与することができる、あるいは、このような反応または輸送を促進するまたは可能にする分子構造の形成に関与することができる、4個以上のアミノ酸で構成される少なくとも1つの分子を含む。ポリペプチドは、一本鎖、複数の鎖であってよく、1つのサブユニットまたは複数のサブユニット中に存在することができる。これは、アミノ酸のみ、またはアミノ酸と他の分子との組み合わせで構成されることができる。このようなものとしては、例えば、ペグ化ペプチド、ペプチド核酸、ペプチド類似体、ニュークレオプロテイン(neucleoprotein)複合体を挙げることができる。グリコシレーション(glycosolation)などの修飾を含むアミノ酸鎖も考慮される。本発明によるポリペプチドは一般に、生体分子、または生体分子の誘導体や接合体である。したがってポリペプチドは、単離可能な分子、および、組み換え技術によって生成可能な、あるいは全体または一部を化学合成する必要がある分子を含むことができる。したがって、この用語は、天然タンパク質および酵素、それらの突然変異体、それらの誘導体および接合体、ならびに全体が合成されたアミノ酸配列、ならびにそれらの誘導体および接合体を含んでいる。好ましい一実施形態においては、本発明によるポリペプチドは、膜の一方の側からそのもう1つの側への分子、原子、プロトン、および/または電子の輸送に関与することができるか、酸化または還元に関与することができるか、または、DH-複合体I(「複合体I」とも呼ばれる)のような電荷によりプロトンを送り出すポリペプチドであるかである。
【0015】
本発明は、正電荷は流れることができるが、金属、および特に金属陽イオンの流れに対しては一般に不透過性となる、広範囲の合成ポリマー材料およびポリペプチドを使用して生体適合性膜を作ることが可能であるという認識によって得られる。このため、1つ以上の利点を有する金属アノードを使用して燃料電池を製造することができる。燃料電池の膜は、カソードのめっきを遅らせる。さらに、膜は、電荷の不均衡に応じて正電荷を移動させるのみであり、そのため前記膜を使用して製造される燃料電池は、これらによって電力が供給される装置が停止している場合には燃料を消費しない。アルミニウムおよび亜鉛の両方は、標準電位が例えばメタノールよりも高いため(1.0ボルトに対し、それぞれ公称で2.31ボルトおよび1.29ボルト)、動作電圧を得るのに、個々のセルのより少ない積層を必要とする。また、アルミニウムおよび亜鉛の両方は、メタノールよりもエネルギー密度が高く、18.6および7.5ワット時/ミリリットルであり、メタノールはこれに対し3.97ワット時/mlである。したがって、単位体積当たりでわずかに重くなるが、これらの金属は、寸法が質量よりも重要となる小型電子デバイス用の燃料に好ましい。
【0016】
生体適合性膜は、ポリペプチドを有さない同じ膜を使用する場合よりも、少なくともある程度大きい電流の流れを促進する。好ましくは、本発明の生体適合性膜によって、少なくとも約10ピコアンペア/cm2(生体適合性膜がセンサー中に使用される場合など)が得られ、より好ましくは少なくとも約10ミリアンペア/cm2が得られ、さらにより好ましくは約100ミリアンペア/cm2以上が得られる。
【0017】
これらの生体適合性膜は、他を排するものではないが、一般に空気中で膜として自立型でもあり、したがって少なくとも部分的に脱溶媒することができる。燃料電池中に使用される場合、これらの生体適合性膜は、有用な動作寿命が好ましくは少なくとも8時間であり、より好ましくは少なくとも3日であり、さらにより好ましくは1か月以上であり、さらにより好ましくは6か月以上である。
【0018】
生体適合性であり、レドックス反応との関与および/または分子、原子、プロトンまたは電子の膜の一方の側から他方への輸送への関与が可能なポリペプチドを含有する合成ポリマー膜は、広範囲の電池または燃料電池の形成に使用することができるため、特に好都合である。このようなものとしては、環境に優しく、軽量で、小型であり、容易に運ぶことができる電池が挙げられる。電気出力が非常に高い燃料電池を製造することも可能である。通常は負荷または抵抗を有する回路がアノードとカソードとの間に形成される場合に、好ましくは、本発明により製造された燃料電池によって、少なくとも10ミリワット/cm2、好ましくは少なくとも約50ミリワット/cm2、最も好ましくは少なくとも約100ミリワット/cm2を得ることができる。これは、電気的接触状態であるとも称される。
【0019】
本発明の燃料電池は、アノードを有するアノード区画と、カソードを有するカソード区画とを含む。この燃料電池は、正電荷の移動は促進するが金属および金属イオンの移動は促進しない少なくとも1つの生体適合性膜も含む。この生体適合性膜は、アノード区画内、カソード区画内、またはアノード区画とカソード区画との間に配置することができる。前述のような生体適合性膜は、合成ポリマー材料と、それと関連する少なくとも1種類のポリペプチドとの少なくとも1つの層を含むことができる。好ましくは、このポリペプチドは、分子、原子、プロトン、または電子の膜の一方の側から他方への輸送に関与することができる。このような燃料電池は、電子伝達体と、第2のポリペプチドとを含むこともでき、これらの両方がアノード区画内に配置される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明による生体適合性膜は、本明細書に記載される1種類以上のポリペプチドと関連された場合に本発明の目的に適合する任意の合成ポリマー材料から形成することができる。
【0021】
合成ポリマー材料は、ポリマー、コポリマー、およびブロックコポリマー、およびそれらの混合物を含むことができる。これらは互いに、結合させたり、架橋させたり、官能化したり、またはその他の方法で関連させたりすることができる。「官能化」とは、ポリマー、コポリマー、および/またはブロックコポリマーが、特定の機能を果たすように選択される末端基で変性されていることを意味し、重合(例えばブロックの架橋)、特定の表面化学への固定(例えばある種の硫黄結合の使用)、電子伝達体または電子移動媒介物質の共有結合を介して促進された電子輸送、および当分野で公知の同様の方法のいずれかである。典型的には、これらの末端基は、ポリマーまたはブロック自体の構成要素とは見なされず、合成終了時または合成後加えられることが多い。合成ポリマー材料は、一般に完成膜(使用するための状態にある膜)上に、完成膜の少なくとも約50重量%、より典型的には完成膜の少なくとも約60重量%、多くの場合その約70重量%から約99重量%までの間の量で存在する。合成ポリマー材料の全量の一部が安定化ポリマーであってよく、これは完成した生体適合性膜中の全合成ポリマー材料の重量を基準にして一般に約3分の1までである。
【0022】
本発明の生体適合性膜は、ポリマーまたはコポリマーなどの他の合成ポリマー材料を使用または使用せずに、添加剤を使用または使用せずに、A−B、A−B−A、またはA−B−Cのブロックコポリマーなどの1種類以上のブロックコポリマーから製造されることが好ましい。
【0023】
好適なブロックコポリマーの1つは、Corinne Nardin、Wolfgang Meier、およびその他による一連の論文に記載されている。Angew Chem Int.Ed.39:4599−4602,2000;Langmuir 16:1035−1041,2000;Langmuir 16:7708−7712,2000。記載されている官能化されたポリ(2−メチルオキサゾリン)−ブロック−ポリ(ジメチルシロキサン)−ブロック−ポリ(2−メチルオキサゾリン)トリブロックコポリマーは以下の通りである。
【化1】

【0024】
上記化学式において、xの平均値は68であり、yの平均値は15である。これはA−B−Aブロックコポリマーであり、式に示されている「C」はA−B−Cブロックコポリマーの名称「C」と必ずしも同じではない。
【0025】
上記ポリマーによって、機能性タンパク質を組み込むことが可能な比較的大型の膜を得ることができる。ポリマー分子末端のメタクリレート部分によって、タンパク質を組み込んだ後にフリーラジカルの媒介する架橋によって機械的安定性をますことが可能となる。このような生体適合性膜、特に非イオン性である生体適合性膜は、アノードとカソードとの間のより高い電圧差に対しより安定となる。
【0026】
前述の官能化されたポリ(2−メチルオキサゾリン)−ブロック−ポリ(ジメチルシロキサン)−ブロック−ポリ(2−メチルオキサゾリン)トリブロックコポリマーは、使用可能な合成ポリマー材料の一例である。他の代表的なブロックコポリマーとしては、両親媒性ブロックコポリマー[小胞のトリブロックコポリマーシェルを生体膜の類似体と見なすことができるが、これらは従来の脂質二重層よりも2〜3倍厚い。にもかかわらず、膜と一体となったタンパク質のマトリックスとして機能することができる。驚くべきことに、膜が非常に厚いにもかかわらず、さらに反応性トリブロックコポリマーの重合後でさえも、タンパク質が機能を維持する。];5−(N,N−ジメチルアミノ)イソプレン、スチレンおよびメタクリル酸からのトリブロックコポリ両性電解質[Bieringer et al.,Eur.Phys.J.E.5:5−12,2001。これらのポリマーには、Ai146323、Ai312346、Ai422335、Ai562321、Ai571132が挙げられる];スチレン−エチレン/ブチレン−スチレントリブロックコポリマー[(KRATON)G 1650(29%スチレン、溶液粘度(25重量%ポリマー)8000、100%トリブロックスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(S−EB−S)ブロックコポリマー)、(KRATON)G 1652(29%スチレン、溶液粘度(25重量%ポリマー)1350、100%トリブロックS−EB−Sブロックコポリマー)、(KRATON)G 1657(溶液粘度(25重量%ポリマー)4200、35%ジブロックS−EB−Sブロックコポリマー)、これら全てはシェル・ケミカル・カンパニー(Shell Chemical Company)より入手可能である。好ましいブロックコポリマーは、スチレン−エチレン/プロピレン(S−EP)型であり、商品名(KRATON)G1726(28%スチレン、溶液粘度(25重量%ポリマー)200、70%ジブロックS−EB−Sブロックコポリマー)、(KRATON)G−1701X(37%スチレン、溶液粘度>50,000、100%ジブロックS−EPブロックコポリマー)および(KRATON)G−1702X(28%スチレン、溶液粘度>50,000、100%ジブロックS−EPブロックコポリマー)で市販されており、これらも米国テキサス州ヒューストンのシェル・ケミカル・カンパニーより入手可能である];シロキサントリブロックコポリマー[ニトリル含有シロキサンブロックコポリマーはシロキサン磁性流体用安定剤として開発された。シロキサン磁性流体は、網膜剥離手術の内部タンポナーデとして最近になって提案されている。PDMS−b−PCPMS−b−PDMS(PDMS=ポリジメチルシロキサン、PCPMS=ポリ(3−シアノプロピルメチル−シクロシロキサン)は、リチウムシラノレートでエンドキャップされたPCPMSマクロ開始剤によって開始されるヘキサメチルシクロトリシロキサンの動力学的に制御された重合によって首尾よく調製した。このマクロ開始剤は、3−シアノプロピルメチルシクロシロキサン(DxCN)とジリチウムジフェニルシランジオレート(DLDPS)との平衡化混合物によって調製した。DxCNは、3−シアノプロピルメチルジクロロシランの加水分解後、得られた加水分解物の環化および平衡化によって合成した。DLDPSは、ジフェニルシランジオールをジフェニルメチルリチウムで脱プロトン化することによって調製した。DxCNとDLDPSとの混合物は100℃において5〜10時間以内に平衡化させ得ることが分かった。DxCNのDLDPSに対する比率を制御することによって、異なる分子量のマクロ開始剤を得ることができた。マクロ開始剤平衡化物中の主要な環は、四量体(8.6±0.7重量%)、五量体(6.3±0.8重量%)、および六量体(2.1±0.5重量%)である。2.5k−2.5k−2.5k、4k−4k−4k、および8k−8k−8kのトリブロックコポリマーを調製し、特性決定を行った。これらのトリブロックコポリマーは、分離した透明なミクロ相であり、高粘稠性の液体である。これらのトリブロックコポリマーは、オクタメチルシクロテトラシロキサンまたはヘキサン中のナノメートルのγ−Fe23およびコバルトの粒子を安定化できることが分かっている。したがって、PDMS−b−PCPMS−b−PDMSは、シリコーン磁性流体の有望な立体安定剤の一種となっている。];DEO−CPPO−CPEOトリブロックコポリマー;PEO−PDMS−PEOトリブロックコポリマー[ポリエチレンオキシド(PEO)は水相中に可溶性であり、一方ポリ−ジメチルシロキサン(PDMS)は油相中に可溶性である];PLA−PEG−PLAトリブロックコポリマー;ポリ(スチレン−b−ブタジエン−b−スチレン)トリブロックコポリマー[一般に使用される熱可塑性エラストマーとしては、ドイツ、ルードヴィクスハーフェン(Ludwigshafen)のBASFのスタイロルクス(Styrolux)が挙げられる];ポリ(エチレンオキシド)/ポリ(プロピレンオキシド)トリブロックコポリマーフィルム[ドイツ、ルードヴィクスハーフェンのBASFのプルロニック(Pluronic)F127、プルロニックP105、またはプルロニックL44];ポリ(エチレングリコール)−ポリ(プロピレングリコール)トリブロックコポリマー;PDMS−PCPMS−PDMS(ポリジメチルシロキサン−ポリシアノプロピルメチルシロキサン)トリブロックコポリマー[系統的に変動させた分子量を有する一連のエポキシおよびビニルでエンドキャップされたポリシロキサントリブロックコポリマーを、LiOHを開始剤として使用するアニオン重合により合成した。中央のコポリマーブロック上のニトリル基は粒子表面上に吸着すると考えられ、一方PDMS末端ブロックは反応媒体中に突出する。];アゾ官能性スチレン−ブタジエン−HEMAトリブロックコポリマー、重合性末端基を有する両親媒性トリブロックコポリマー;シンジオタクチックポリメタクリル酸メチル(sPMMA)−ポリブタジエン(PBD)−sPMMAトリブロックコポリマー、第三級アミンメタクリレートトリブロック[20℃において水中でミセル(コア中にBブロック)および逆ミセル(コア中にAブロック)の両方を形成できるABジブロックコポリマー。];生分解性PLGA−b−PEO−b−PLGAトリブロックコポリマー;ポリアクチド−b−ポリイソプレン−b−ポリアクチドトリブロックコポリマー;PEO−PPO−PEOトリブロックコポリマー[BASFのプルロニックと同様];ポリ(イソプレン−ブロック−スチレン−ブロック−ジメチルシロキサン)トリブロックコポリマー;ポリ(エチレンオキシド)−ブロック−ポリスチレン−ブロック−ポリ(エチレンオキシド)トリブロックコポリマー;ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(THF)−ポリ(エチレンオキシド)トリブロックコポリマー;エチレンオキシドトリブロック;ポリE−カプロラクトン[バーミンガム・ポリマーズ(Birmingham Polymers)];ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)[バーミンガム・ポリマーズ];ポリ(DL−ラクチド)[バーミンガム・ポリマーズ];ポリ(L−ラクチド)[バーミンガム・ポリマーズ];ポリ(グリコリド)[バーミンガム・ポリマーズ];ポリ(DL−ラクチド−コ−カプロラクトン)[バーミンガム・ポリマーズ];スチレン−イソプレン−スチレントリブロックコポリマー[日本合成ゴム(Japan Synthetic Rubber Co.)、MW=140kg/mol、PS/PIのブロック比=15/85];PEO/PPOトリブロックコポリマー;PMMA−b−PIB−b−PMMA[線状トリブロックTPE];PLGA−ブロック−PEO−ブロック−PLGAトリブロックコポリマー[スルホン化スチレン/エチレン−ブチレン/スチレン(S−SEBS)TBCポリマープロトン伝導性膜。フロリダ州オデッサのダイス・アナリッティック(Dais Analytic,Odessa FL)からプロトライト(Protolyte)A700として市販];ポリ(l−ラクチド)−ブロック−ポリ(エチレンオキシド)−ブロック−ポリ(l−ラクチド)トリブロックコポリマー;ポリ−エステル−エステル−エステルトリブロックコポリマー;PLA/PEO/PLAトリブロックコポリマー[トリブロックコポリマーの合成は、ポリ(エチレングリコール)の存在下で、オクタン酸第一スズの代わりに共開始剤として非毒性Zn金属または水素化カルシウムを使用するDL−ラクチドまたはe−カプロラクトンの開環重合によって行われる。コポリマーの組成はポリエステル/ポリエーテル比を調整することによって変動する。];PCC/PEO/PCCトリブロックコポリマー[上記ポリマーを2種類以上の混合物として使用することができる。例えば、第1のポリマーの重量パーセントで測定されるポリマー2種の混合物において、このような混合物は20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、または45〜50%を含むことができる。];ポリ(アクリル酸t−ブチル−b−メタクリル酸メチル−b−アクリル酸t−ブチル)[カナダ、ケベック州、ドーバルのポリマー・ソース・インコーポレイテッド(Polymer Source,Inc.,Dorval,Quebec,Canada)];ポリ(アクリル酸t−ブチル−b−スチレン−b−アクリル酸t−ブチル)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(メタクリル酸t−ブチル−b−アクリル酸t−ブチル−b−メタクリル酸t−ブチル)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(メタクリル酸t−ブチル−b−メタクリル酸メチル−b−メタクリル酸t−ブチル)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(メタクリル酸t−ブチル−b−スチレン−b−t−メタクリル酸ブチル)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(メタクリル酸メチル−b−ブタジエン(1,4付加)−b−メタクリル酸メチル)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(メタクリル酸メチル−b−アクリル酸n−ブチル−b−メタクリル酸メチル)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(メタクリル酸メチル−b−アクリル酸t−ブチル−b−メタクリル酸メチル)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(メタクリル酸メチル−b−メタクリル酸t−ブチル−b−メタクリル酸メチル)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(メタクリル酸メチル−b−ジメチルシロキサン−b−メタクリル酸メチル)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(メタクリル酸メチル−b−スチレン−b−メタクリル酸メチル)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(メタクリル酸メチル−b−2−ビニルピリジン−b−メタクリル酸メチル)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(ブタジエン(1,2付加)−b−スチレン−b−ブタジエン(1,2付加))[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(ブタジエン(1,4付加)−b−スチレン−b−ブタジエン(1,4付加))[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(エチレンオキシド−b−プロピレンオキシド−b−エチレンオキシド)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(エチレンオキシド−b−スチレン−b−エチレンオキシド)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(ラクチド−b−エチレンオキシド−b−ラクチド)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(ラクトン−b−エチレンオキシド−b−ラクトン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];a,w−ジアクリロニル末端ポリ(ラクチド−b−エチレンオキシド−
b−ラクチド)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−アクリル酸−b−スチレン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−ブタジエン(1,4付加)−b−スチレン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−ブチレン−b−スチレン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−n−アクリル酸ブチル−b−スチレン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−アクリル酸t−ブチル−b−スチレン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−アクリル酸エチル−b−スチレン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−エチレン−b−スチレン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−イソプレン−b−スチレン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−エチレンオキシド−b−スチレン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(2−ビニルピリジン−b−アクリル酸t−ブチル−b−2−ビニルピリジン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(2−ビニルピリジン−b−ブタジエン(1,2付加)−b−2−ビニルピリジン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(2−ビニルピリジン−b−スチレン−b−2−ビニルピリジン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(4−ビニルピリジン−b−アクリル酸t−ブチル−b−4−ビニルピリジン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(4−ビニルピリジン−b−メタクリル酸メチル−b−4−ビニルピリジン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(4−ビニルピリジン−b−スチレン−b−4−ビニルピリジン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(ブタジエン−b−スチレン−b−メタクリル酸メチル)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−アクリル酸−b−メタクリル酸メチル)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−ブタジエン−b−メタクリル酸メチル)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−ブタジエン−b−2−ビニルピリジン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−ブタジエン−b−4−ビニルピリジン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−メタクリル酸t−ブチル−b−2−ビニルピリジン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−メタクリル酸t−ブチル−b−4−ビニルピリジン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−イソプレン−b−メタクリル酸グリシジル)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−a−メチルスチレン−b−アクリル酸t−ブチル)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−a−メチルスチレン−b−メタクリル酸メチル)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−2−ビニルピリジン−b−エチレンオキシド)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド];ポリ(スチレン−b−2−ビニルピリジン−b−4−ビニルピリジン)[ポリマー・ソース・インコーポレイテッド]が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
上記ブロックコポリマーは、単独で使用することができるし、あるいは同じまたは異なる種類の2種類以上の混合物として使用することができる。例えば、第1のポリマーの重量%で測定した2種類のブロックコポリマーの混合物において、このような混合物は、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%または45〜50%を含むことができる。3種類のポリマーが使用される場合、第1のポリマーがポリマー成分全体の10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%または45〜50%を構成することができ、第2のポリマーは残りの10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%または45〜50%を構成することができる。
【0028】
言い換えると、混合物中の各ブロックコポリマーの量は、使用されるブロックコポリマーの性質および数、ならびに得られるべき所望の性質によって大きく変動し得る。しかし一般に、本発明による混合物の各ブロックコポリマーは、膜または溶液中の全ポリマー重量を基準にして少なくとも約10%の量で存在する。これらの同じ一般的範囲が、1種類以上のポリマー、コポリマー、および/またはブロックコポリマーとの混合物から製造される膜に適用される。1種類のポリマー、コポリマーまたはブロックコポリマーを、膜の1.0重量%までの少量の別のポリマー、コポリマーまたはブロックコポリマーで「ドープ」して膜の特定の性質を調整する場合もあり得る。
【0029】
本発明の実施形態としては、A−B、A−B−AまたはA−B−Cブロックコポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。トリブロックコポリマーのA(またはC)の平均分子量は例えば1,000〜15,000ダルトンであり、Bの平均分子量は1,000〜20,000ダルトンである。より好ましくは、ブロックAおよび/またはCは約2,000〜10,000ダルトンの平均分子量を有し、ブロックBは約2,000〜10,000ダルトンの平均分子量を有する。
【0030】
ジブロックコポリマーが使用される場合、Aの平均分子量は約1,000〜20,000ダルトンの間であり、より好ましくは約2,000〜15,000ダルトンの間である。Bの平均分子量は約1,000〜20,000ダルトンの間であり、より好ましくは約2,000〜15,000ダルトンの間である。
【0031】
好ましくは、ブロックコポリマーは、(i)予想される使用温度および保存温度において固体となり、(ii)ミセルではなく生体膜様構造の形成を促進するように選択された、疎水性/親水性のバランスを有する。より好ましくは、疎水性成分(またはブロック)は、親水性成分(またはブロック)よりも多くなるべきである。したがって、ジブロックまたはトリブロックコポリマーの少なくとも1つのブロックが疎水性であることが好ましい。濡れ性の膜も可能であるが、好ましくは疎水性および親水性の合成ポリマー材料の含量によって、膜の濡れ性は低くされる。
【0032】
前述したように、本発明の好ましい一実施形態においては、合成ポリマー材料の混合物を使用して製造される生体適合性膜が提供される。このような混合物は、それぞれのブロックの分子量を除けば同一である2種類以上のブロックコポリマーの混合物であってよい。例えば、生体適合性膜を、どちらもポリ(2−メトロキサゾリン)−ポリジメチルシロキサン−ポリ(2−メトロキサゾリン)であり、その一方が2kD−5kD−2kDの平均分子量を有し他方が3kD−7kD−3kDの平均分子量を有し、第2に対する第1のブロックコポリマーの比率が使用した全合成ポリマー材料の約67%対33%w/wである、2種類のブロックコポリマーの混合物を使用して製造することができる。当然ながらこれは、主要ブロックコポリマーの第1のブロックが約2千ダルトンの分子量を有し、第2のブロックが5千ダルトンの分子量を有し、第3のブロックが2千ダルトンの分子量を有することを意味する。少量のブロックコポリマーは、それぞれ約3千、7千、および3千ダルトンのブロックを有する。
【0033】
当然ながら、2種類以上の完全に異なるブロックコポリマーを使用することができるし、異なるブロックコポリマー、およびそれぞれのブロックの大きさのみが異なる同種のブロックコポリマーの混合物も考慮される。しかし混合物は、ブロックコポリマーに限定されるものではない。
【0034】
ポリマーおよびコポリマーを、単独、組み合わせ、、および本発明によるブロックコポリマーとの組み合わせで使用して、本明細書に記載される性質を有する生体適合性膜を製造することができる。有用なポリマーおよびコポリマーは、室温(25℃)において固体であることが好ましい。これらは、使用されるどの他の合成ポリマー材料、使用されるどの添加剤、および使用されるポリペプチドにも適合させることが可能な、溶媒または溶媒系中に溶解することができる。生体適合性膜の製造に有用なポリマーおよびコポリマーとしては、限定するものではないが、ポリスチレン、ポリアルキルおよびポリジアルキルシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン、ポリアクリレート、例えばポリメタクリル酸メチル、ポリアルケン、例えばポリブタジエン、ポリアルキレン、およびポリアルキレングリコール、スルホン化ポリスチレン、ポリジエン、ポリオキシラン、ポリ(ビニルピリジン)、ポリオレフィン、ポリオレフィン/アルキレンビニルアルコールコポリマー、エチレンプロピレンコポリマー、エチレン−ブテン−プロピレンコポリマー、エチルビニルアルコールコポリマー、過フッ素化スルホン酸、ビニルハロゲンポリマーおよびコポリマー、例えば、塩化ビニルとアクリロニトリルとのコポリマー、メタクリル酸/エチレンコポリマー、ならびに分子量が約5,000から約500,000までの間である他の可溶性であるが一般に疎水性であるすべてのポリマーおよびコポリマーが挙げられる。特に好ましいポリマーとしては、ポリ(アクリル酸n−ブチル);ポリ(アクリル酸t−ブチル);ポリ(アクリル酸エチル);ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル);ポリ(アクリル酸ヒドロキシプロピル);ポリ(アクリル酸メチル);ポリ(メタクリル酸n−ブチル);ポリ(メタクリル酸s−ブチル);ポリ(メタクリル酸t−ブチル);ポリ(メタクリル酸エチル);ポリ(メタクリル酸グリシジル);ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル);ポリ(メタクリル酸メチル);ポリ(メタクリル酸n−ノニル);ポリ(メタクリル酸オクタデシル);ポリブタジエン(1,4−付加);ポリブタジエン(1,2−付加);ポリイソプレン(1,4−付加);ポリイソプレン(1,2−付加および1,4付加);ポリエチレン;ポリ(ジメチルシロキサン);ポリ(エチルメチルシロキサン);ポリ(フェニルメチルシロキサン);ポリプロピレン;ポリ(プロピレンオキシド);ポリ(4−アセトキシスチレン);ポリ(4−ブロモスチレン);ポリ(4−t−ブチルスチレン);ポリ(4−クロロスチレン);ポリ(4−ヒドロキシルスチレン);ポリ(a−メチルスチレン);ポリ(4−メチルスチレン);ポリ(4−メトキシスチレン);ポリスチレン;イソタクチックポリスチレン;シンジオタクチックポリスチレン;ポリ(2−ビニルピリジン);ポリ(4−ビニルピリジン);ポリ(2,6−ジメチル−p−フェニレンオキシド);ポリ(3−(ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロピル)−スチレン);ポリイソブチレン;ポリ(9−ビニルアントラセン);ポリ(4−ビニル安息香酸);ポリ(4−ビニル安息香酸ナトリウム塩);ポリ(ビニルベンジルクロリド);ポリ(3(4)−ビニルベンジルテトラヒドロフルフリルエーテル);ポリ(N−ビニルカルバゾール);ポリ(2−ビニルナフタレン)、およびポリ(9−ビニルフェナントレン)が挙げられる。ポリマーおよびコポリマーは一般に合成ポリマー材料であるので、これらは、ブロックコポリマーおよび混合物に関して前述した量と同じ量で使用することができる。
【0035】
本発明のある実施形態においては、生体適合性膜は、合成ポリマー材料を含み、好ましくは少なくとも1種類のブロックコポリマーと、生体適合性膜の寿命または機能性を安定化または向上させることができる合成ポリマー材料とを含む。複数の水素結合を形成することができる(「水素結合に富む」)ある種のポリマー、特に親水性ポリマーおよびコポリマーが膜を安定化させることができることを発見した。安定化ポリマーと関連する場合、用語「ポリマー」は、モノマー、ポリマー、およびコポリマーを含む。この場合、「親水性」とは、安定化ポリマーが水または水混和性溶媒中に溶解または可溶化することを意味する。何か特定の動作理論で束縛しようと望むものではないが、このようなポリマーを使用することによって、同一条件に曝露した場合に安定化ポリマーを使用せずに製造した同一の生体適合性膜と比較した場合に、生体適合性膜の動作寿命の延長、および/または機械的破壊に対する抵抗性の増加が得られると考えられている。このようなポリマーは、ポリペプチドの活性形態での維持、またはそれらの機能が促進される環境の維持を補助することもできる。合成ポリマー材料が安定化ポリマーを含む、安定化された生体適合性膜が燃料電池中に使用されると、例えば、動作寿命を少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約50%、最も好ましくは少なくとも約100%延長させることができる。
【0036】
本発明の生体適合性膜中のポリペプチドを安定化させることができる特に好ましいポリマーとしては、デキストラン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリルアミド、およびポリアルキレンアミンが挙げられる。これらの安定化されたポリマー(この場合もコポリマーを含む)は、合成ポリマー材料として使用されるポリマーおよびコポリマーよりも一般に低い平均分子量を有する。これらの分子量は一般に約1,000ダルトンから約15,000ダルトンまでの範囲である。生体適合性膜を安定化させることができる特に好ましいポリマーとしては、約2,000〜約10,000の間の平均分子量を有するポリエチレングリコール、約2,000〜約10,000の間の平均分子量を有するポリエチレンオキシド、約5,000〜15,000ダルトンの間の平均分子量を有するポリアクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。その他の安定化ポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリ(アクリル酸n−ブチル);ポリ(アクリル酸t−ブチル);ポリ(アクリル酸エチル);ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル);ポリ(アクリル酸ヒドロキシプロピル);ポリ(アクリル酸メチル);ポリ(メタクリル酸n−ブチル);ポリ(メタクリル酸s−ブチル);ポリ(メタクリル酸t−ブチル);ポリ(メタクリル酸エチル);ポリ(メタクリル酸グリシジル);ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル);ポリ(メタクリル酸メチル);ポリ(メタクリル酸n−ノニル);およびポリ(メタクリル酸オクタデシル)が挙げられる。
【0037】
ある程度測定可能な性質の改善が実現され、生体適合性膜の機能性を過度に妨害しないのであれば、生体適合性膜中に使用される安定化ポリマーの量は重要ではない。機能性および寿命のある程度のトレードも予期される。しかし、一般に、使用される安定化ポリマーの量は、完成した生体適合性膜中に見られる合成ポリマー材料の全量(重量基準)の関数として、一般には3分の1以下であり、典型的には30重量%以下である。好ましくは、使用される量は、完成した膜中の合成ポリマー材料の5〜約30重量%の間であり、より好ましくは約5〜約15重量%の間である。
【0038】
1種類以上のポリマー、コポリマー、および/またはブロックコポリマー、および/または安定化されたポリマー以外に、本発明の合成ポリマー材料は、少なくとも1種類の添加剤を含むことができる。添加剤としては、架橋剤、ならびに脂質、脂肪酸、ステロール、ならびにその他の天然生体膜成分およびそれらの合成類似体を挙げることができる。これらは一般に、溶液の状態の合成ポリマー材料に加えられる。これらの添加剤が、仮に存在する場合は、一般に合成ポリマー材料の重量を基準にして約0.50%〜約30%の間の量、好ましくは約1.0%〜約15%の間の量で見られる。
【0039】
本発明の生体適合性膜が架橋性部分を含む場合、重合に有用な手順としては、ラジカル形成剤または増殖剤を使用する化学重合、およびラジカル増殖剤をさらに使用するまたは使用しない光化学的ラジカル生成を介した重合を含む。膜材料、生体適合性膜セグメントの大きさ、支持体の構造などの条件に依存して、パラメータを調整することができる。ポリペプチドの損傷が最小限となるよう注意すべきである。特に有用な方法の1つは、中性pHで過酸化物を使用した後に酸性化することを含む。
【0040】
本発明による生体適合性膜が形成されるように合成ポリマー材料と関連することができ、酸化/還元および膜透過輸送機能(分子、原子、プロトン、電子)の一方または両方に関与することができる有用なポリペプチドの例としては、例えば、NADHデヒドロゲナーゼ(「複合体I」)(例えば、大腸菌由来、Tran et al.,“Requirement for the proton pumping NADH dehydrogenase I of Escherichia coli in respiration of NADH to fumarate and its bioenergetic implications”,Eur.J.Biochem.244:155,1997)、NADPHトランスヒドロゲナーゼ、プロトンATPアーゼ、およびチトクロムオキシダーゼ、ならびにそれらの種々の形態が挙げられる。さらなるポリペプチドとしては、グルコースオキシダーゼ(NADHを使用、数種類の供給源から入手可能であり、例えば、この酵素の多数の種類がシグマ・ケミカル(Sigma Chemical)から市販されている)、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(NADPH、インディアナ州インディアナポリスのベーリンガー・マンハイム(Boehringer Mannheim,Indianapolis,IN)、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(NADPH、ベーリンガー・マンハイム)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(NADH、ベーリンガー・マンハイム)、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(NADH、シグマ(Sigma)、ベーリンガー・マンハイム)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(NADH、ベーリンガー・マンハイム;NADPH、シグマ)、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体(NADH、シグマ)、およびプロトン転移性ピロホスフェートが挙げられる。さらに挙げられるものは、スクシネート:キノンオキシドレダクターゼ(「複合体II」とも呼ばれる、“A structural model for the membrane−integral domain of succinate:quinone oxidoreductases”,Hagerhall,C.and Hederstedt,L.,FEBS Letters 389;25−31(1996)及び “Purification,crystallisation and preliminary crystallographic studies of succinate:ubiquinone oxidoreductase from Escherichia coli”,Tornroth,S.et al.,Biochim.Biophys.Acta 1553;171−176(2002))、ヘテロジスルフィドレダクターゼ、F(420)H(2)デヒドロゲナーゼ、(Baumer et al.,“The F420H2 dehydrogenase from Methanosarcina mazei is a Redox−driven proton pump closely related to NADH dehydrogenases”,275 J.Biol.Chem.17968(2000))、またはギ酸ヒドロゲンリアーゼ(Andrews et al.,“A 12−cistron Escherichia coli operon(hyf)encoding a putative proton−translocating formate hydrogenlyase system”,143 Microbiology 3633(1997))、ニコチンアミドヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼ(“Nicotinamide nucleotide transhydrogenase:a model for utilization of substrate binding energy for proton translocation”Hatefi,Y.and Yamaguchi,M.,Faseb J.,10;444−452(1996))、プロリンデヒドロゲナーゼ(“Proline Dehydrogenase from Escherichia coli K12”Graham,S.et al.,J.Biol.Chem.259;2656−2661(1984))、およびチトクロムであり、これは、例えば、限定するものではないが、チトクロムCオキシダーゼ(ウンデシル−β−D−マルトシドまたはシクロヘキシル−ヘキシル−β−D−マルトシドのいずれかを使用して結晶化される)、チトクロムbc1(“Ubiquinone at Center N is responsible for triphasic reduction of cytochrome bc1 complex”Snyder,C.H.and Trumpower,B.L.,J.Biol.Chem.274;31209−16(1999))、チトクロムbo3(“Oxygen reaction and proton uptake in helix VIII mutants of cytochrome bo3”Svensson,M.et al.,Biochemistry 34;5252−58(1995)、“Thermodynamics of electron transfer in Escherichia coli cytochrome bo3”Schultz,B.E.and Chan,S.I.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95;11643−48(1998))、およびチトクロムd(“Reconstitution of the Membrane−bound, ubiquinone−dependent pyruvate oxidase respiratory chain of Escherichia coli with the cytochrome d terminal oxidase”Koland,J.G.et al.,Biochemistry 23;445−453(1984),Joost and Thorens,“The extended GLUT−family of sugar/polyol transport facilitators:nomenclature,sequence characteristics,and potential function of its novel members(review)”18 Mol.Membr.Biol.247−56(2001))を含み、ならびに、選択的チャネルタンパク質、例えば以下に開示されるもの、Goldin,A.L.,“Evolution of voltage−gated Na(+)channels”J.Exp.Biol.205;575−84(2002),Choe,S.,“Potassium channel structures.”Nat.Rev.Neurosci.3;115−21(2002),Dimroth,P.,“Bacterial sodium ion−coupled energetics.”Antonie Van Leeuwenhoek 65;381−95(1994),及びPark,J.H.and Saier,M.H.Jr.,“Phylogenetic, structural and functional characteristics of the Na−K−Cl cotransporter family.”J.Membr.Biol.149;161−8(1996)である。以上の全てを本明細書中に参考として組み込む。NADHデヒドロゲナーゼ酵素などの単離方法は、例えば、Braun et al.,Biochemistry 37:1861−1867,1998;and Bergsma et al.,“Purification and characterization of NADH dehydrogenase from Bacillus subtills”,Eur.J.Biochem.128:151−157、1982に詳細に記載されている。Spehr et al.,Biochemistry 38:16261−16267,1999に記載されているように、オペロンから発現される複合体IのNADHデヒドロゲナーゼ(または、NADH:ユビキノンオキシドレダクターゼ)は、オペロン中のT7プロモーターを取り換えることによって大腸菌において過剰発現させて、本発明で使用するのに有用な量を得ることができる。複合体Iは、Spehr et al.,により記載されている方法によって、ドデシルマルトシドを使用する可溶化を使用して、大腸菌の過剰発現から単離することができる。
【0041】
複合体Iは、NADHデヒドロゲナーゼ活性がなくなる、または大きく低下するように取り扱うことができる。Boettcher et al.,“A Novel,Enzymatically Active Conformation of the Escherichia coli NADH:Ubiquinone Oxidoreductase(Complex I)”,J.Biol.Chem.277:17970−7、(2002)に記載されているように、高塩または高pH溶液中で、複合体Iの配座が変化して、プロトン移動がNADHデヒドロゲナーゼ活性から脱共役してDH-型を形成する。本出願人らは、これらの条件およびこれらの条件の組み合わせを使用して、アノード/カソードバリア中でNADHデヒドロゲナーゼ活性を使用せずに本発明の燃料電池を作動させることが可能なことを示した。このような条件としては、陽極液またはアノード塩の濃度200mM〜2M、およびpH8.0以上が挙げられる。トランスポーター活性は、アノード側とカソード側との間の電荷の不均衡によって、対となる[H+]勾配に逆らって機能すると考えられている。DH-型のプロトントランスポーター活性は、燃料電池中に電流発生が維持され、この型によってゲート制御される生体適合性膜によって、電荷の不均衡を軽減する唯一の方法が得られることから、確認されている(注目すべきは、複合体Iを使用すると、プロトンの逆輸送は、カソード側上の条件を使用してあらゆる逆向きに配向した複合体IへのNADHデヒドロゲナーゼの結合を維持することによってさらに制御されており、それによってNADH基体がないことによる逆輸送が阻止されることである)。
【0042】
本発明で使用されるどの酵素源もより温度安定性の酵素が得られる好熱性生物であってよいことが分かるであろう。例えば、複合体Iは、90℃において最適に作用する形態でAquifex aeollcusから単離することができ、このことはScheide et al.,FEES Letters 512:80−84、2002に記載されている(他の場合に複合体Iに対して使用される種類の界面活性剤抽出を使用する予備的単離が記載されている)。
【0043】
さらに、遺伝子改変されたポリペプチド、例えば修飾された酵素を使用できることも考慮される。酵素の遺伝子操作のために一般に使用される技術の1つは、組み換えツール(例えば、エキソヌクレアーゼ)を使用してN末端、C末端、または内部の配列を除去することである。これらの除去産物が生成され、通常の実験法を使用して系統的に試験される。多くの場合、この遺伝子産物の大部分は、対象となる工業的機能に対してほとんど影響しないことが分かる。より集中して除去および置換を行うことで、安全性、作動温度、触媒速度、および/または溶媒相溶性を向上させることができ、それによって本発明で使用可能な酵素が得られる。当然ながら、望ましいのであれば、本明細書に記載される種々のポリペプチドの混合物を使用することもできる。
【0044】
使用されるポリペプチド量は、使用されるポリペプチドの種類、生体適合性膜性質および機能、それが使用される環境などに応じて変動する。ポリペプチドの量は、一般に表面積1平方センチメートル当たりのポリペプチド濃度が高いほど、単位面積当たりのプロトン移動速度が速くなる(電流に関して)燃料電池などのある用途において重要となり得る。しかし一般に、ある程度のポリペプチドが存在して機能する限り、そして使用されるポリペプチドの量が膜形成を妨害したり、膜を不安定にしない限り、あらゆる量のポリペプチドが可能である。一般に、ポリペプチドの量は、生体適合性膜の最終重量を基準にして、少なくとも約0.01重量%、より好ましくは約5重量%、さらにより好ましくは10重量%、さらにより好ましくは少なくとも約20重量%、最も好ましくは30重量%以上である。溶媒に対するポリペプチドの量は、0.001%w/vの少ない量から、50.0%w/vまでの量まで可能である。好ましくは濃度は約0.5w/v%〜約5.0%w/vである。より好ましくは濃度は約1.0w/v%〜約3.0%w/vである。
【0045】
共溶媒、界面活性剤などの好適な可溶化剤および/または安定剤も、ポリペプチド溶液と関連する場合に、特に必要となることがある。可溶化界面活性剤は、0.01%〜1.0%の濃度で一般に使用され、より好ましくは最大約0.5%が考慮される。このような界面活性剤としては、イオン性界面活性剤:ドデシル硫酸ナトリウム、N−ドデシルサルコシンナトリウム、N−ドデシルβ−D−グルコピラノシド、オクチル−β−D−グルコピラノシド、ドデシル−マルトシド、デシル、ウンデシル、テトラデシル−マルトシド(一般に、イオン性界面活性剤の一般形態として約8個以上の炭素のアルキル鎖が糖に結合している)、オクチル−β−D−グルコシド、およびポリオキシテイラン(9)ドデシル−エーテル、C129、ならびに非イオン性界面活性剤、例えばトリトンX−100、またはノニデット(Nonidet)P−40が挙げられる。界面活性を示すある種のポリマー、典型的にはジブロックコポリマー、例えば、BASFのプルロニックシリーズ、またはディスパープラスト(Disperplast:BYK−Chemie)も有用である。
【0046】
合成ポリマー材料溶液の製造に使用される溶媒は、好ましくは、使用される水(ポリペプチド溶液は多くの場合水を含む)および少なくとも1種類の合成ポリマー材料(ポリマー、コポリマー、および/またはブロックコポリマー)の両方と混和性となるように選択される。しかし、前述したように、水混和性ではない溶媒または混合物を使用して膜を形成することが可能である。溶液を調製するために溶媒を使用することが好ましいが、本明細書で使用される場合、用語「溶液」は一般に懸濁液も含んでいる。
【0047】
ブロックコポリマーが使用される場合、溶媒がこれらの合成ポリマー材料を可溶化するべきである。合成ポリマー材料は溶媒中への溶解性が比較的低い(5%w/v未満)場合があるが、溶解性が5%w/vよりも高いのが好ましく、一般には、合成ポリマー材料の溶媒に対する溶解性が少なくとも5〜10%w/vであり、好ましくは10%w/vを超える。
【0048】
適切な溶媒としては、1〜12個の炭素の低分子量脂肪族アルコールおよびジオール、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、イソプロパノール、1−プロパノール、アリールアルコール、例えばフェノール類、ベンジルアルコール類、低分子量アルデヒドおよびケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、環状化合物、例えばベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、およびテトラヒドロフラン、ハロゲン化溶媒、例えばジクロロメタンおよびクロロホルム、ならびに一般的な溶媒材料、例えば1,4−ジオキサン、ノルマルアルカン(C2〜C12)、および水が挙げられるが、これらに限定されるものではない。混合物が適切な混和性、蒸発速度、および個々の溶媒に関して記載のその他の基準を有するのであれば溶媒混合物も可能である(適切に精製および取り扱いできるのであれば、過酸化物などのタンパク質破壊性汚染物質を生成する傾向がある溶媒成分を使用することができる)。典型的には、溶媒は、ポリペプチド/合成ポリマー材料の溶液の30%v/v以上を構成し、好ましくは20%v/v以上であり、有用となるのは10%v/v以上である。
【0049】
膜が、界面活性剤、脂質(例えばカルジオリピン)、ステロール(例えばコレステロール)、または緩衝剤、および/または塩などの「他の材料」を含む場合、これらも膜の形成前に加えられ、これらは、完成した生体適合性膜の重量を基準にして約0.01〜約30%、好ましくは約0.01〜約15%の量で存在する。他の材料は、添加剤とは対照的に、合成ポリマー溶液ではなくポリペプチド溶液と混合されることが最も多い。
【0050】
金属アノードのイオン形態に対する膜の不透過性を、少なくとも12時間動作させたセルの陰極液の質量分析により評価した。存在する金属イオン量、または検出されない場合は検出限界を、セルが動作している時間にわたって膜を通過した電流と比較して、膜を通過した金属イオンのプロトンに対する比率を求めた。記載された膜のあるものでは、この比率は約1/100となり、少なくとも一例においては、アルミニウムまたは亜鉛のイオンはカソード中に検出されず、これはプロトンに対して1/1000を超える金属イオンが不透過となることを意味する。
【0051】
本発明による生体適合性膜は、得られる生体適合性膜が本明細書に記載されるように有用である限りは、合成ポリマー材料、さらには脂質二重層から膜を製造するのに使用される多数の従来技術のいずれを使用しても製造することができる。ブロックコポリマー系膜を使用するのが好ましい、生体適合性膜を形成する1つの方法は以下の通りである。
【0052】
1.溶媒または混合溶媒系で合成ポリマー材料の溶液または懸濁液を形成する。この溶液または懸濁液は、2種類以上のブロックコポリマーの混合物であってよいが、1種類以上のポリマーおよび/またはコポリマーを含むことができる。この溶液または懸濁液は好ましくは1〜90%w/vの合成ポリマー材料を含有し、より好ましくは2〜70%w/v、さらにより好ましくは3〜20%w/vを含有する。7%w/vが特に好ましい。
【0053】
2.1種類以上のポリペプチド(典型的には可溶化界面活性剤を含む)を、溶液または懸濁液中に別々に加えるか、または既存のポリマー溶液または懸濁液に添加することにより加える。合成ポリマー材料を可溶化するために使用される溶媒が、ポリペプチドを可溶化することができる溶媒と同じか、または類似の性質および溶解性を有する場合、通常はポリペプチドをポリマー溶液または懸濁液に直接加えるとより便利である。他の場合では、合成ポリマー材料およびポリペプチドを含有する2種類以上の溶液または懸濁液を、場合によっては追加の共溶媒または可溶化剤と共に、混合する必要がある。ほとんどの場合、ポリペプチドに使用される溶媒は水性である。
【0054】
これらの溶液および/または懸濁液の混合は、多くの場合比較的簡単であり、手で行ったり、自動混合器具を使用して行ったりすることができる。使用される溶媒およびポリマーに依存するが、膜形成において加熱または冷却も有用となり得る。一般に、急速に蒸発する溶媒は、冷却するとより良好に膜が形成される傾向にあり、一方非常にゆっくりと蒸発する溶媒は、わずかに加熱すると大抵は好都合となる。使用される溶媒の沸点を調べることで、使用されるポリマーに適切となる最も好都合な性質を有する溶媒を選択することができる。しかし当然ながら、ポリペプチドを溶媒ポリマー混合物中に混合する必要性も考慮する必要があり、これが重要となる場合がある。例えば、複合体Iを10mg/ml有する、界面活性剤(0.15%w/vのドデシルマルトシド)で可溶化された複合体I5マイクロリットルを、アセトンおよびヘキサンの50/50混合物中の3.2%w/vのポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマー混合物(完全に疎水性のトリブロック塩、登録商標名:STYROLUX 3G55、ロット番号7453064P、BASFから市販)95マイクロリットル中に混合し、膜を形成できるように付着させることができる。この場合、最終混合物は、合成ポリマー材料の重量に対して約5%v/vの水、および0.75%w/wの複合体Iを含んだ。一般に、溶液は、溶媒がその時間の間に蒸発しないのであれば、室温において少なくとも約30分の間、使用するのに十分安定である。これらは、一般に冷凍条件下で、終夜またはより長期間保管することもできる。
【0055】
3.ポリペプチドと合成ポリマー材料との両方を含む、ある体積の最終溶液または懸濁液から膜を形成し、少なくとも部分的に乾燥させることによって、溶媒の少なくとも一部が除去される。本発明により製造された膜の一部を完全に乾燥させたり、この膜を実質的に乾燥させたりすることができる。実質的な乾燥とは、最大約15%までの残留溶媒が存在し、数時間室温で放置してもしばしば残存することを意味する。
【0056】
特に好ましい実施形態においては、完成膜の実質的に全ての重量が、ポリペプチドまたは合成ポリマー材料のいずれかとなる。この場合、添加剤および安定化ポリマーを含む合成ポリマー材料の量は、完成膜の約70重量%〜約99重量%の範囲である。しかし、さらに大きなポリペプチド含有率を有することが望ましい場合があるし、一部の溶媒が維持される必要がある場合もあり、したがって合成ポリマー材料の量が減少する場合もある。しかし一般に、完成した生体適合性膜の少なくとも約50重量%が合成ポリマー材料となる。合成ポリマー材料が、安定化ポリマー以外にブロックコポリマーおよびポリマーまたはコポリマーを含む混合物である場合、ブロックコポリマーは生体適合性膜の少なくとも約35重量%の量で存在することができる。生体適合性膜の約30重量%までが、本明細書に定義されるように「添加剤」および「その他の材料」(集合的に)であってよい。より好ましくは、添加剤およびその他の材料の量は生体適合性膜の約15重量%までである。合成ポリマー材料の約30重量%までが安定化ポリマーであってよい。一般に、安定化ポリマーは、使用される合成ポリマー材料の重量の約5%から約20%までの量で存在する。
【0057】
本発明によるとどんな溶媒が特に有用であり、ポリマーおよびポリペプチドおよび溶媒のどの組み合わせを使用すべきかの特定は、多数の要因に依存し、その一部については混和性、蒸発などに関して既に議論している。ポリマーおよびタンパク質成分は、溶媒または溶媒混合物中に完全に溶解し得るべきである。蒸発速度は、膜を一回で製造するのに十分長くなる必要がある。しかし、時間の長さは、製造が実際的でなくなるほど長くなるべきではない。非極性溶媒が有用となることもあるが、ポリマーのイオン性成分またはヒドロキシル成分は完全に非極性の溶媒中では可溶性が低くなる場合があるため、一般に、より非極性の溶媒は場合により有用とならないことがある。したがって、ポリスチレンなどの高度に剛性で疎水性の成分を溶解することができるが、同時にアクリル酸などの高いイオン性の成分は溶解することができない。しかし、完全に疎水性のポリマーを使用する場合は、非極性の溶媒が好ましい。ポリマーは少なくとも部分的に非水溶解性となるべきなので、溶媒は、一般にある程度非水性となるべきである。さらに、膜タンパク質の再構成のためには水混和性であることが最も望ましいが、厳密な限定要因ではない。したがって、好ましくは、全ての溶媒が非水性である。しかし、ポリペプチドおよび安定化ポリマー用の溶媒は、主として水または少なくとも水混和性である。
【0058】
少なくとも1種類の合成ポリマー材料と安定化ポリマーとの両方を含む生体適合性膜の好ましい形成方法は、ブロックコポリマーと、通常は別々に、安定化ポリマーおよびポリペプチドとの適切な溶液を調製するステップを含む。別の箇所に記載されているように、ポリペプチドは、1種類以上の洗剤または界面活性剤を含むことができ、典型的には水溶液中に存在する。適切な溶液を調製し混合すると直ちに、本明細書に開示される技術、または例えば有孔誘電体基板に溶液をコーティングした後で溶媒を少なくとも部分的に蒸発させることなどの当分野で公知の技術のいずれかによって膜を製造することができる。このような蒸発は真空中で促進することができる。
【0059】
水素結合に富む安定化ポリマーを含む生体適合性膜を形成する方法の1つは以下の通りである。
【0060】
1.供給源から入手したままの状態の溶媒中のプロトライトA700ブロックコポリマーの溶液または懸濁液を、同体積のエタノール(5%水w/v)で希釈する。この溶液は約5%w/vのブロックコポリマーを含有している。
【0061】
2.別に、943mgのポリエチレングリコール(PEG)8000を混合し、約2.3%w/vの濃度を有する溶液を得て、安定剤の水溶液または懸濁液を調製する。溶液中の安定剤の濃度はほぼ飽和限界である。
【0062】
3.次に、10mg/mlの大腸菌由来複合体Iと共に0.15%w/vのドデシルマルトシドを含む溶液4マイクロリットルを、6マイクロリットルのPEG溶液に加え、これらを混合して溶液または懸濁液を得る。
【0063】
4.次に10マイクロリットルのこの溶液を、ブロックコポリマーを含む溶液10マイクロリットルと混合する。
【0064】
5.得られた溶液の少量(例えば4マイクロリットル)を、厚さ1ミル(25.4μm)のカプトン(KAPTON)(ポリイミドのブランドの1つ、直径100マイクロメートルおよび深さ1ミルの開口部を有する)の有孔基体の開口部(支持体に開けられた孔)のサブセットの開口部上に滴下する。
【0065】
6.この溶液をフード中で風乾することによって溶媒を除去する。
7.全ての開口部を覆うのに必要なだけステップ5および6を繰り返す。
【0066】
ブロックコポリマーの存在下で非水性溶媒と混合する前に、安定化ポリマーを含有する溶液にポリペプチドを導入する上記方法は、生体適合性膜中に使用されるポリペプチドの機能を安定化すると考えられている。しかし、ポリマーおよびブロックコポリマーを混合して、得られた溶液を一般に水性のポリペプチド溶液と混合することもできた。場合によっては、各開口部に膜が形成されていることの確認や、又は少なくとも統計的に適切な数の開口部の確認を、顕微鏡で行う。開口部が膜を含まない場合は、追加の溶液とマイクロピペット規模のピペット操作装置とを使用して孔を修復する。典型的には、このような孔の修復には非常に少ない体積の溶液しか必要としない。膜は、真空装置中またはデシケーター中で完全または実質的に完全に乾燥させることができる。こうして形成された膜は、所望の場合は、真空中または乾燥下で乾燥保管することができる。
【0067】
生体適合性膜がメタクリレート類などの架橋性部分を含み、燃料電池中に使用される場合、以下の手順を使用することができる。
支持体中に生体適合性膜を形成し、カソード/アノードバリアを形成する。
アノード/カソードバリア支持体上の生体適合性膜、電極、および緩衝剤のみを有するセルを組み立てる。
約150キロオームなどの高い負荷に2つの電極を接続する。
例えば過酸化物濃度が1体積%となるように過酸化水素をカソード側に加えて架橋過程を開始させる。
ある時間、例えば1時間(±10%)、荷重下で燃料電池を維持する。
カソード側のpHをpH5未満に調整して架橋を停止させる。
【0068】
膜材料、生体適合性膜の寸法、生体適合性膜の厚さ、支持体の構造などの条件に依存して、パラメータを調整することができる。
【0069】
ポリペプチド/合成ポリマー材料溶液を調製した後、これから膜を形成することができる。本発明による生体適合性膜は、自立型の膜にすることができる。このような膜は、溶液を皿の中、またはシート上に注ぐことで膜を所望の厚さにすることができる。溶液を乾燥させて溶媒を蒸発させた後、乾燥した膜を皿から取り外すか、又はバッキング層から剥離する。好適な粘着防止剤を使用して、この過程を促進することができる。生体適合性膜は、ガラス、表面改質して疎水性を増加させた炭素、またはポリマー(例えばポリ酢酸ビニル、PDMS、Kapton(登録商標名)、過フッ素化ポリマー、PVDF、PEEK、ポリエステル、またはUHMWPE、ポリプロピレン、またはポリスルホン)の上にコーティングするなどによって、固体材料に対して形成することができる。PDMSなどのポリマーは、生体適合性膜を形成することができる開口部を形成するために使用することが可能な優れた支持体となる。
【0070】
次に、必要に応じて膜を切断または成形することができるし、またはそのまま使用することもできる。さらに膜を使用しやすくするために、所望の場合は、物理的に、またはある種の固定装置または接着剤を介してホルダーに取り付けることができる。これは、枠が支持体となりおよび膜がカンバスとなる場合に、絵を描く前の枠上にカンバスを引き伸ばすものとして概念的に説明することができる。あるいは、膜をこのような構造に成形することができる。適切な例えは、シャボン玉をふくらますときに使用される子供向けのシャボン玉用ワンド(棒)をもって、セッケンおよび水の溶液中にこれを浸漬することである。セッケンおよび水のフィルムは、ワンドの開口部全体にわたって形成される。周囲に使用される構造材料によって、フィルムの取り扱いおよび操作が可能となり、剛性および強度が付与される。所望の形状のフィルムを得るのにも役立つ。物理的構造と本発明の膜形成溶液とを使用して、同種の工程を使用することができる。
【0071】
本発明による好ましい一実施形態においては、好ましくは誘電体基板などの種々の有孔基体の開口部内部またはその全体にわたって生体適合性膜を配置および/または形成することができる。「有孔基体」とは、その内部またはその上に生体適合性膜を配置することができる少なくとも1つの孔、開口部(本明細書で使用される場合には孔と同義である)、または細孔を有することを意味する。例えば、図2aは、燃料電池に有用な膜構造の一実施形態を示している。種々の穿孔49を画定している有孔基体42は、有孔アノード44および有孔カソード45を形成するために金属化された表面を有する。有孔基体42は、例えば、穿孔された孔を有さない多孔質基体であってもよいことに注意されたい。このような場合、穿孔49は細孔であると理解される。本発明による生体適合性膜61は、有孔基体42の開口部または穿孔49の内部に形成される。生体適合性膜61は、穿孔内部に配置してアノード44と面一にすることもできるし、またはカソード45またはその付近にに取り付けたりすることもできる。2つの膜61を設けて、1つは例えば、図示されるようにアノードにわたって配置し、および1つは基体42の穿孔49内部に配置してアノード45と面一にする(図示せず)ことができる。膜61は、使用される合成ポリマー材料、使用されるポリペプチド、またはその両方に関して同種であっても異種であってもよい。実際に複数のこのような膜61、および実際に生体適合性膜61の層を、別の種類の膜、拡散バリアなどと併用することができる。以上は図2aに関して説明してきたが、このことは、他の構造、および特にどの種類の燃料電池構造に対しても同様に適用可能である。生体適合性膜61は、図示されるように1つ以上のポリペプチド62および63を含むことができる。
【0072】
これらの図面は縮尺が一定ではなく、膜が、電極よりも厚い場合や薄い場合があり、有孔基体42よりも厚い場合や薄い場合があることに注意されたい。
【0073】
基体上に電極(44、45)を形成するために使用することができる方法は、最初に導体をコーティングまたは積層し、続いてめっき、スパッタリング、または他のコーティング手順を使用して、チタンまたは金や白金などの貴金属導体をコーティングすることを含む。しかしアノード44の場合は、亜鉛、アルミニウム、またはマグネシウムなどのイオン性金属の厚いめっきが少なくとも形成される。カソードを形成する別の方法では、クロムまたはチタンなどの取り付け層を支持体上に直接スパッタし、続いて、めっき、スパッタリング、またはその他のコーティング手順によって貴金属導体を取り付ける。望ましくは外部金属層は、ドデカンチオールなどで処理して疎水性を増加させることができる。
【0074】
カプトンおよびテフロン(登録商標)などの高い自然表面電荷密度を有する支持体または基体が一部の実施形態においては好ましい。前述したように、これらは、表面電極を使用せずにアノード/カソードバリアを形成するために使用することができる。基体42は、多くの場合好ましくは誘電性である。バリア材料は、また、生体適合性膜のアノード側からカソード側への電荷と、金属または金属イオンとの両方の透過に対して実質的に不透過性であるべきである。
【0075】
基体42の穿孔または細孔49および金属化された表面(アノード44およびカソード45(そのように配置された電極を使用する実施形態の場合))は、例えば、当分野で公知のフォトリソグラフィーのマスキングおよびエッチング技術を使用して形成することができる。穿孔は、例えば打ち抜き、穿孔、レーザー穿孔、延伸などによって形成することもできる。あるいは、金属化された表面(電極)は、例えば、(1)マスクを介した薄膜の付着によって、(2)薄膜によって金属被覆のブランケットコートを適用した後、金属被覆中に、光により画定されるパターンの選択的エッチングを行うことによって、または(3)金属含浸レジストを使用するエッチングなしに直接に光で画定される金属化パターン(デュポン・フォーデル(DuPont Fodel)法、Drozdyk et al.,“Photopatternable Conductor Tapes for PDP Applications”,Society for Information Display 1999 Digest,1044−1047;Nebe et al.,の米国特許第5,049,480号)によって形成することができる。一実施形態においては、有孔基体または多孔質基体がフィルムである。例えば、誘電体は、金属化によって「穿孔」の外部が非透過性となる多孔質フィルムであってよい。金属層の表面は、例えば電気めっきによって他の金属で変性することができる。カソードとの接続に使用する場合、このような電気めっきには、例えばチタン、金、銀、白金、パラジウム、それらの混合物などが使用される。
【0076】
アノードには、亜鉛、アルミニウム、およびマンガンなどのイオン性金属が使用される。E−Cシリーズの水素より上のアルカリ金属を除いた全ての金属が使用できる可能性がある。特に好ましい実施形態においては、アノードに使用される金属は発熱性であり自己イオン化性である。すなわち、これらは、アノード区画の環境中に自発的に電子を放出する傾向にある。このような金属としては、亜鉛、アルミニウム、およびマンガンが挙げられる。他の金属を使用することもできるが、ただし、そのような場合、アノード区画中で少なくとも最初に反応を誘導する必要がある場合が多い。これは、例えば、アノードまたはアノード区画にエネルギーを加えることによって、またはカソードから電極が引き抜かれるカソード区画中に非常に強力な酸化剤を使用することで、電荷の不均衡を発生させ、金属アノードを酸化させることによって行うことができる。
【0077】
金属化された表面以外に、カソードは、他の適切な導電性材料によって形成することができ、この材料を表面改質することができる。例えば、カソードは黒鉛繊維などの炭素(黒鉛)で形成することができ、これは、例えば、電子ビーム蒸発、化学蒸着、または熱分解によって誘電体基板に適用することができる。金属化されるべき表面は、溶媒で清浄にして、酸素プラズマエッチングすることができる。
【0078】
親水性電極を形成するための有用な手段は、例えば、Surampudiの米国特許第5,773,162号、Surampudiの米国特許第5,599,638号、Narayananの米国特許第5,945,231号、Kindlerの米国特許第5,992,008号、SurampudiのWO96/12317、SurampudiのWO97/21256、およびNarayananのWO99/16137に記載されている。
【0079】
本発明に使用される生体適合性膜は、場合により固体支持体に対して固定される。このような固定を実現するための方法の1つでは、脂質関連分子の硫黄を介する結合を使用して、金属表面または別の固体支持体の表面を生体適合性膜に接着、束縛、または結合する。例えば、多孔質支持体は、犠牲または除去可能なフィラー層でコーティングし、このコーティングされた表面を例えば研磨によって平滑にすることができる。典型的には、プロトン伝導性ポリマー膜を平滑化の後にコーティングすることができ、後述のような加工に対して安定である限りは、このような多孔質支持体は前述のあらゆるプロトン伝導性ポリマー膜を含むことができる。有用な多孔質支持体の1つはガラスフリットである。次に、平滑化された表面に(必要であればあらかじめ清浄にして)、クロム第1層および金オーバーコートなどの金属をコーティングする。次に、例えば溶解によって犠牲材料を除去し、細孔上の金属被覆を共に除去するが、細孔周囲の金属化表面は残す。犠牲層は、フォトレジスト、パラフィン、セルロース樹脂(例えばエチルセルロース)などを含むことができる。
【0080】
束縛剤または接着剤は、図7Aおよび7Bに示されるような生体適合性膜を束縛するように適合させたアルキルチオール、アルキルジスルフィド、チオリピドなどを含む。このような束縛剤は、例えばLang et al.,Langmuir 10:197−210,1994に記載されている。この種の別の束縛剤剤は、Lang et al.,の米国特許第5,756,355号およびHui et al.,の米国特許第5,919,576号に記載されている。
【0081】
図2bは燃料電池の好ましい一実施形態を示している。この図において、膜61および有孔基体42(細孔、穿孔、または開口部を含む基体)の配置は、図2aと関連して前述した通りである。しかし、カソード45およびアノード44は、有孔基体42から離れて配置されている。これらは板電極であってよいが、これらの表面上はめっきされておらず、さらに基体42または膜61とも接触していない。この場合、膜61および基体42がバリアとなる。
【0082】
この実施形態においては、図2aに示される実施形態と同様に、カソード45は希望に応じて金属またはその他の材料で製造することができる。アノード44は、金属、および好ましくは亜鉛、アルミニウム、またはマンガンなどの発熱性または自己イオン化性の材料でできている。アノードおよびカソードは板電極であってもよいし、所望のあらゆる他の形状であってもよい。
【0083】
例えばNiki et al.,の米国特許第4,541,908号(チトクロムCの電極へのアニーリング)およびPersson et al.,J.Electroanalytical Chem.292:115、1990に詳細に記載される方法によって、本発明の生体適合性膜を、細孔、穿孔、または開口部49にわたって形成し、それらの中にポリペプチドを組み込むことができる。このような方法は、前述のようなポリペプチドおよび合成ポリマー材料の適切な溶液を調製し、有孔基体49、好ましくは誘電体基板をその溶液中に浸漬して酵素含有生体適合性膜を形成するステップを含むことができる。酵素の生体適合性膜への組み込みを促進するために、音波処理または界面活性剤希釈が必要となる場合がある。例えば、Singer,Biochemical Pharmacology 31:527−534,1982;Madden,“Current concepts in membrane protein reconstitution”,Chem.Phys.Lipids 40:207−222,1986;Montal et al.,“Functional reassembly of membrane proteins in planar lipid bilayers”,Quart.Rev.Biophys.14:1−79、1981;Helenius et al.,“Asymmetric and symmetric membrane reconstitution by detergent elimination”,Eur.J.Biochem.116:27−31、1981;Volumes on biomembranes,in Methods in Enzymology series.Academic Press(例えば、Fleischer and Packer(編著))を参照されたい。
【0084】
あるいは、小さな開口部を有するテフロン(登録商標)などの疎水性材料で(好ましくは、必ずしもではないが)できている薄い区画に、少量の両親媒性物質が導入されている。コーティングされた開口部を、希薄電解質溶液中に浸漬した後、液滴は薄くなり、自発的に自己配向して開口部に広がる。実質的な面積の生体適合性膜が、この一般的技術を使用して形成されている。生体適合性膜自体を形成するための2つの一般的な方法は、ラングミュア−ブロジェット(Langmuir−Blodgett)法、および注入法である。
【0085】
ラングミュア−ブロジェット法は、中央にテフロン(登録商標)ポリマー区画などの区画を有するラングミュア−ブロジェットトラフの使用を含む。このトラフに水溶液が満たされる。ポリマー区画の開口部は、水面の上に配置される。ポリペプチドおよび合成ポリマー材料を含有する溶液を表面に広げ、ポリマー区画をゆっくりと水溶液中に下げると、生体適合性膜が開口部の上に形成される。注入法は、ポリマー区画が固定されることを除けば類似している。この方法においては、水相が開口部のすぐ下まで満たされ、溶液が表面上に加えられ、続いて、追加の電解質溶液を底部から注入することによって液面を区画の上に上昇させる。
【0086】
生体適合性膜を形成するための別の方法は、自己集合方法を利用する。これは、上述の2つの方法の変形であり、実際、合成脂質膜を製造するために首尾良く使用された最初の方法であった。この方法は、前述の膜形成溶液の調製を含む。その溶液の1滴を有孔基体42、多くの場合疎水性基体中に加える。次に基体42を希薄電解質水溶液中に浸漬すると、液滴が自発的に薄くなり配向する。残りの材料は層周囲に移動して、これがプラトー−ギブス(Plateau−Gibbs)境界と呼ばれるレザバーを形成する。
【0087】
開口部を有する有孔基体または多孔質材料である基体42の厚さは、例えば約15マイクロメートル(μm)から約5ミリメートルまでの間であり、好ましくは約15〜約1,000マイクロメートルであり、より好ましくは約15マイクロメートル〜約30マイクロメートルである。穿孔または細孔の幅は、例えば約1マイクロメートル〜約1,500マイクロメートルであり、より好ましくは約20〜約200マイクロメートルであり、さらにより好ましくは約60〜約140マイクロメートルである。約100マイクロメートルが特に好ましい。好ましくは、穿孔または細孔は、チャンバー間の輸送に関与する誘電体基板の任意の面積の約30%を超える面積を構成し、例えばその面積の約50〜約75%を構成する。
【0088】
ある好ましい実施形態においては、基体は、ガラスまたはポリマー(例えばポリ酢酸ビニル、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、Kapton(登録商標名)(ポリイミドフィルム、デラウェア州ウィルミントンのデュポン・ドゥ・ヌムール(Dupont de Nemours,Wilmington,DE))、過フッ素化ポリマー(例えばデラウェア州ウィルミントンのデュポン・ドゥ・ヌムールのテフロン(登録商標))、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、例えば、ペンシルバニア州フィラデルフィアのアトフィナ(Atofina,Philadelphia,PA)よりKynar(登録商標名)で販売される約59%フッ素含有半結晶質ポリマー)、PEEK(以下で定義される)、ポリエステル、UHMWPE(以下で説明する)、ポリプロピレンまたはポリスルホン)、ソーダ石灰ガラス、またはホウケイ酸ガラス、または上記のいずれかが金属でコーティングされたものである。この金属は生体適合性膜(例えば両親媒性分子の単層または二重層)を固定するために使用することができる。この金属コーティングは、アノード区画とカソード区画の間で短絡の原因となる導電性経路となりやすいあらゆる結合部から離すことができる。本発明の特に好ましい態様においては、有孔基体42は誘電材料でできている。
【0089】
ポリペプチド62は、酸化反応の触媒部位を、アノード区画と接続してプロトンを非対称ポンプ輸送するように適切に配向させて、生体適合性膜中に固定することができる。しかし、ポリペプチドが非対称に配向されない場合、逆方向のポリペプチドは状況に応じて種々の理由で有害とならない。第1に、燃料電池のアノード側で生じた電荷の不均衡によって、プロトン濃度勾配がある場合でさえも、プロトンがカソード側に輸送される。ポンプ輸送が、還元された電子伝達体の使用と関係している場合では、アノード区画41中で電子伝達体が実質的に孤立するため、逆方向のポンプ輸送はこのような伝達体を有さない(「実質的に孤立した」より、当業者であれば、燃料電池を動作させるのに十分に孤立していることを理解できるであろう)。
【0090】
図4a〜4cに示される一実施形態においては、生体適合性膜61は架橋性部分を含み、面取り端部を有する開口部にわたって基体42に形成されている。面取りの程度は、生体適合性膜の安定性を増加させるどの程度であってもよい。架橋ブロックコポリマーの剛性が比較的低い場合、安定性を増加させるためにより大きな面取りを使用することができ、一方、より剛性の高い架橋ブロックコポリマーの場合は、より小さな量の面取りが適切となり得る。図示されるように、多数の面取り形状が、安定性の増加に寄与し得る。
【0091】
本発明によるさらに別の実施形態においては、ポリペプチドおよび合成ポリマー材料を含有する溶液を、図2bに示されるような有孔材料ではなく多孔質支持材料の表面にわたって配置することができる。プロトンが例えば膜を通ってポンプ輸送されると、それらは支持バリア材料の細孔を介して移動することができる。
【0092】
基体が有孔でも多孔質でも、膜が表面全体にわたって形成される必要はない。例えば、有孔基体の表面全体にわたって膜が形成されると好都合な場合があるが、ポリペプチドおよび合成ポリマー材料を含有する溶液を穿孔中、または単に穿孔を通過するように単に選択的に導入することが好ましい場合もある。
【0093】
本発明による生体適合性膜の厚さは、特定の寸法の細孔、穿孔、皿、またはトレイなどに導入される体積を制御することなどの公知の方法によって調整することができる。膜の厚さは、その組成および機能に大きく依存する。複合体Iのような膜透過プロトン輸送複合体を含むことが意図された膜は、酵素複合体を十分支持し配向させるのに十分な厚さが必要である。しかし、膜を通過するプロトンの効率的な輸送を妨害するほど厚くなるべきではない。前述のMeier et al.,の論文の1つに記載される、約100個の開口部の配列中の直径約100μmの開口部または穿孔、および約7%w/vのポリ(2−メチルオキサゾリン)−ブロック−ポリ(ジメチルシロキサン)−ブロック−ポリ(2−メチルオキサゾリン)−トリブロックコポリマーを含有するコポリマー溶液中に約4マイクロリットルの量の複合体Iを含む溶液の場合、好適な厚さの膜を得ることができる。膜の厚さは、その要求される寿命、その機能などに依存して大きく変動させることができる。プロトン輸送が意図されている膜は、例えば、何かを酸化することができる酵素が取り付けられている膜よりも薄い場合が多い。しかし、一般に、膜は、約10ナノメートル〜100マイクロメートルの範囲であり、さらにはより厚くなる。実際、燃料電池におけるプロトン輸送に有用な生体適合性膜は、10ナノメートルから最大10マイクロメートルの厚さで成功している。この場合も、より厚い膜が可能である。
【0094】
燃料電池の製造に特に有用である本発明のある実施形態においては、本発明の生体適合性膜は、pH勾配に逆らってプロトンを輸送することができる。この概念については本明細書でさらに議論する。しかし、概念的には、生体適合性膜のカソード側において、あらゆる媒体、電解質などのpHは酸性であってよく、膜のアノード側においてはpHは塩基性であってよい。これは、ほとんどの燃料電池において見られる場合の反対である。一般に、このような条件は、プロトンに富む酸性側から比較的プロトンの少ない塩基性側へのプロトンの移動に好都合となる。しかし本発明による膜の使用によって、プロトンの少ない側からプロトンに富む側に流れに逆らってポンプ輸送することができる。これは本発明の別の態様の重要部分であり、このことが特に有用となり得る。本発明の膜は、両側のpH条件が比較的大きく変動するにもかかわらず、能動的で機能的となることもできる。例えば、本発明による膜は、アノード区画中のpHがカソード区画中のpHよりも少なくとも0.5pH単位高い場合に、プロトン移動を触媒することができる。
【0095】
多くの燃料電池においては、アノード区画中のpHは、プロトン濃度がより高いため、カソード区画中に見られるpHよりも低い。しかし、本発明により製造された燃料電池は、プロトン濃度差に依拠して拡散によりプロトンが膜を通過する必要はない。電子伝達体および/または電子移動媒介物質として使用される化学種は比較的アルカリ性のpHにおいてより効率的に機能するため、このことは特に重要な利点となり得る。燃料酸化反応もこのようなpH条件下でより効率的となり得る。使用される電解質などに基づくpH差は、燃料電池の有効寿命中に調整する必要がない。あるいは、緩衝系、および必要に応じて追加の緩衝剤を、動作中にアノード区画および/またはカソード区画に加えることができる。一実施形態においては、アノード区画は、カソード区画中のpHよりも、少なくとも約1pH単位高い、より好ましくは2pH単位高いpHを有する。別の実施形態においては、アノード区画のpHは8以上であり、カソード区画のpHは5以下である。実施例59を参照されたい。実際に、金属アノードを使用する場合、陽極液は好ましくは少なくとも約10、好ましくは12、最も好ましくは約14以上のpHを有し、一方カソード区画は酸性であってよい。
【0096】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の生体適合性膜を使用して製造される燃料電池である。当分野で知られている他の適切な定義に限定されるものではないが、燃料電池は、燃料の化学変換によって電気エネルギーを発生する装置である。使用される燃料の種類、電子輸送化学種の種類(電子伝達体、可溶性酵素、移動媒介物質など)、または使用される電解質、使用される電極の種類などに関する特定の燃料電池の種類は広範囲で変動し、それらが適切な基準に適合可能であれば、全てが検討される。例えば、使用される系は、生体適合性膜に適合性となるべきである。それらが、例えば膜に対して腐食性であれば、燃料電池の寿命が非常に短くなることがある(8時間未満の有効寿命)。使用される材料が十分に不安定となれば、そのことも、例えば特定の燃料が本発明による使用に有用とならない理由となり得る。携帯型電子デバイス、例えばコンピュータ、PDA、携帯電話、ポケットベル、個人向け娯楽システム、プレイステーション2、ゲームボーイ、ポータブルDVDプレイヤー、動力工具、玩具、ステレオ装置、ラジオ、カメラおよびビデオレコーダー、デジタルレコーダーおよびデジタルカメラ、フラッシュライト、車、トラック、ボート、飛行機などに使用するのに十分小型および軽量である燃料電池が特に好ましい。本発明の燃料電池は、好ましくは「環境に優しく」、すなわち容易に廃棄することができ、その理由は、これらが燃料または廃棄物のいずれかとして腐食性または危険な化学物質を含まないからである。さらに、これらの燃料電池は再充填(追加の燃料の添加など)が可能となる場合もあるし、一回使用して廃棄できる場合もある。
【0097】
図1に示されるように、本発明による燃料電池は、アノード4を有するアノード区画1と、カソード5を有するカソード区画3とを含むことができる。この組立体は、誘電性有孔基体または多孔質基体2も含む。この燃料電池は、前述の少なくとも1つの生体適合性膜61も含む(図1には示されていない)。アノード4は導線または電気接点6を有し、カソード5は導線または電気接点7を有し、これらは、負荷または抵抗を介して電気回路に電気的接続または接続することができ、それによってこれらが電気的接触状態となる。生体適合性膜61は、アノード区画内、カソード区画内、またはアノード区画とカソード区画との間に配置することができる。生体適合性膜は一般にアノードとカソードとの間に配置され、アノード区画とカソード区画との間の境界を画定すると考えることができる。通常、燃料電池は、2つの電極の間に回路を形成するための電気接点を含む。アノードおよびカソードは、好ましくは、前述したように、金属、またはカソードの場合の炭素のような他の材料でできている。アノードおよびカソードの寸法および形状は、燃料電池の必要な寸法に適合し、種々の化学種が通過できるように選択される。金属を使用する場合、溶媒に露出する表面積によって、所与のpHにおいてアノードからイオン化可能な金属の最大量が決定される。pHが高いほど、面積当たりのイオン化速度が大きくなる。一般に、セル中に貯蔵されるエネルギーの制限がアノード燃料であるなら、全体的に金属が多くなると、セルの動作が長くなる。しかし、電荷の不均衡が生じるのは、溶液中の金属イオンの全量ではなく、イオン化過程であり、すなわち亜鉛原子が陽極液中のアノード金属およびヒドロキシドイオンとの錯体からイオン化する。陽極液中のpHが、例えばアノード表面から可溶化する亜鉛またはアルミニウムイオンの錯体形成を支持するのに十分高い限り、陽極液中の金属イオン濃度の有意な影響は見られない。
【0098】
外部回路を開くと、電子の引き抜きが不足するためにアノード金属のイオン化が妨害され、金属イオンの可溶化が起こらないことに注意されたい。アノード中の不均衡な電荷は、膜によって迅速に散逸され、膜によってプロトンの移動も停止する。
【0099】
図2aに示されるように、生体適合性膜の支持システムの一部として電極が使用される場合、その電極は、分子、原子、プロトン、または電子が通過できるように十分な穿孔またはその他のアクセス手段を有する必要がある。燃料電池が図2bと類似の構成を有する場合でも、電極が完全に固体であることが可能である。しかし、燃料または燃料電池の他の成分が電極の内部および周囲を通過できることがなお望ましい場合があり、そのため、いずれにしても、穿孔を設けることが可能である。
【0100】
本発明による燃料電池に有用な生体適合性膜は既に議論している。本発明の生体適合性膜は好ましくは、ポリペプチドを有さない同じ膜を使用して得られる量よりも多い量の電流の通過を促進する。より好ましくは、本発明の生体適合性膜は、少なくとも約10ミリアンペア/cm2、より好ましくは少なくとも約50ミリアンペア/cm2、最も好ましくは少なくとも約100ミリアンペア/cm2の流れを促進する。最も単純な実施形態においては、生体適合性膜が自立型であり、それ自体で支持することができるか、または周囲構造によって支持され、アノードとカソードとの間に配置される。この場合、生体適合性膜自体が誘電性であり、かつアノード区画とカソード区画との間のある種の成分、例えば、陰極液、電解質、カソード燃料、検体アノード燃料、その他のイオン、および特にアノードからの金属または金属イオン、が自由に流れるのを膜が防止することも重要である。
【0101】
次に単純な実施形態は、同様の生体適合性膜の使用を含むが、これは、必要な化学種の完全な混合を防止できないか、又は誘電性ではないかのいずれかである。このような場合、追加のバリアが必要となることがある。このようなバリアは前述の、または図2aおよび2bに記載の基体42の製造に使用した材料と同じ材料で製造することができ、膜は基体42の穿孔または細孔の内部または上部のいずれかに配置することができる。基体に有用な材料およびその製造方法は既に議論している。
【0102】
アノード電極またはアノード44は、前述したように1種類以上の金属から製造される。好ましくは、これらの金属は、発熱性であるか、またはアノード区画の条件(一般に塩基性条件)において自己イオン化性であるかである。これは、その金属がある程度自発的に電子を失い、そのため正電荷を有するようになることを意味する。
M>Mn+(水性)+ne-
【0103】
この場合、Mは金属原子であり、nは失われる電子数であり、金属イオンによって得られる正電荷数である。例えば亜鉛は2個の電子を失うことができる。したがって、Mが亜鉛(Zn)>Zn2+(水性)+2e-となる。この金属イオンは、特に塩基性条件下に維持された水性媒体中に見られるヒドロキシ基と反応して、金属水酸化物を生成する。多くの場合、金属水酸化物は沈殿する。この過程の間、金属酸化物および種々の他の形態が生じることも可能である。しかし、本発明の場合に最も重要な事項は、正電荷の金属イオンの生成である。
【0104】
金属種は、膜またはバリアの一部を形成するプロトンポンピングポリペプチドに電荷を移動させることができる。このようなプロトンポンピングは、アノード側の比較的多い量の正電荷によって促進することができ、カソードは酸性条件下に維持することができる。したがって、濃度勾配に逆らって膜を通過するプロトンの輸送も行うことができる。実質的には、このようなセルは登り勾配でポンプ輸送している。
【0105】
アノード中に保持される過剰電荷の量は、膜タンパク質が示すエネルギーバリアと反比例する。このタンパク質は電界(電荷の不均衡によって生じる)がなければプロトンを移動させないので、このようなバリアはゼロでない量で存在する必要がある。しかし、イオン化工程は、アノードから回路を介してカソードまで電子を移動させることを含むので、電荷の不均衡が生じ、アノードがカソードに対して正電荷を有するようになる。このような場合、発生した電界によって、タンパク質含有膜の構造をプロトンが通過する。プロトンは、タンパク質が結合し移動させることができる唯一のイオンであると推定されるので、これが電荷の差に応答して、金属イオンよりも優先して移動する。したがって、金属イオンはヒドロキシル基と錯体形成するが、このような基(主として水中のプロトン)と錯体形成したイオンは自由になり不均衡状態となる。アノード区画が過剰電荷を維持する能力は、陽極液のイオン強度、アノード区画の組成物に使用される材料(分極率)などにも依存する。アノード区画のキャパシタンスで表現すると、100マイクロファラッド、および2ボルトであり、正味電荷は最大200マイクロクーロンとなり得る。しかし、これは1ミリアンペアの電流によって200ミリ秒で散逸する。
【0106】
金属と、金属イオンと、アノード区画内部で金属と他の成分との反応から得られる化合物とは、アノード区画内部に実質的に含まれる。電荷のみが膜を透過してカソード区画に移動し、電子はアノードとカソードとの間の電気回路を介して移動する。
【0107】
本発明により製造される燃料電池の一部は、停止可能であるという利点を有する。例えば、亜鉛金属は、電流の流れが停止するとアノード区画中で最終的に平衡に到達する。この平衡によって、金属アノードの完全な消費が防止され、電流の流れを慎重な時間間隔で開始および停止することができ、燃料電池の有効寿命は比較的わずかに消費されるだけである。他の金属では同じことを実現できない。しかし、例えば、アルミニウムは亜鉛よりもはるかに大きなエネルギーを生じることができる。
【0108】
一般に自発的に正電荷を生成できる一般に発熱性の金属を使用することが好ましいが、他の金属を使用することも可能である。しかし、そのような場合、ある形態の推進力を使用して反応過程を開始させる必要が生じる場合がある。この推進力は、例えば、エネルギーをアノードまたはアノード区画に与えてイオンを生成することであってもよい。実際、アノード区画内に金属イオンを生成するあらゆる方法を使用することができる。好ましくは、このような方法は持続して行う必要はなく、金属イオン生成の開始のみに使用することができる。さらに、好ましくは、金属イオンの生成を誘導する手段は、燃料電池から得られるエネルギー出力よりも少ないエネルギー入力を必要とする。
【0109】
金属イオンを発生させるための他の可能な機構は、電荷の不均衡の導入である。CaO2、NaO2、またはMgO2のような強力な酸化剤をカソード区画内で使用することで、効率的に電子をカソードから引き抜くことができる。これによって電荷の不均衡が生じ、これよりアノード区画内の金属イオンおよび正電荷の生成を誘導することができる。アノード区画内で電荷を発生させて金属イオン生成を開始または促進するために有用なあらゆる他の技術が考慮される。実際、好ましい一実施形態においては、複数の技術が使用される。例えば、亜鉛またはアルミニウムのアノードを使用することができ、これは発熱性であり容易に金属イオンを生成する。同時に、CaO2などの強力な酸化剤をカソード区画内で使用することができる。このようなセルにおいては、カソード区画のpHは好ましくは5以下であり、より好ましくは1〜2の間である。アノードのpHは好ましくは10以上であり、より好ましくは12以上であり、さらにより好ましくは14以上である。この構成においては、最大1%までの過酸化水素がカソード区画内で使用される。酸化剤の量は約0.1%〜1.5%の範囲とすることができ、強アルカリ性緩衝剤、好ましくは非電気分解性の強アルカリ性緩衝剤(TMA−OHが好ましいが、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを使用することもできる)が存在することができる。
【0110】
本発明のある実施形態では、従来の形態のアノード/カソードバリアである、プロトンを受動的に伝導することができるものから選択されるポリマー膜を、本発明の生体適合性膜と併用することができる。プロトン勾配に逆らってポンプ輸送するのに効果的であるので、従来のアノード/カソードバリアは有用である。
【0111】
二重膜を、アノード/カソードバリアの穿孔または細孔にわたっておよび/またはそれらの内部に配置することができ、あるいはアノード区画とカソード区画との間に配置することができる。これらの膜は従来の組成物または生体適合性膜であってよい。このような二重膜が観察される状況の1つは、細孔が比較的小さな直径である場合である。別の状況は、アノードカソードバリアが重ね合わされた材料で形成されており、そのため異なる材料の間の別々の結合部が、細孔にわたって分離した生体適合性膜を形成するための核となる場合である。
【0112】
理論に限定しようとするものではないが、第1の生体適合性膜からのポンプ輸送によって高プロトン濃度が得られることでカソード区画への受動輸送が起こるため、第2の、よりカソードに接近した生体適合性膜は、ある程度受動的に動作すると考えられている。したがって、輸送タンパク質の損傷が予期される過酸化物をカソード区画が含有する範囲で、能動輸送機能が損傷し得るが、第2の生体適合性膜が第1の生体適合性膜を、より高濃度の過酸化物から絶縁する。
【0113】
一実施形態においては、二重膜の利点が1種類以上の生体適合性膜を用いて得られ、その第1の膜(アノード側にある)は、生体適合性膜に向かって移動する過酸化物を制限するためカソード室側に取り付けられたプロトン伝導性ポリマー膜およびポリペプチドを含む。この場合も、生体適合性膜とプロトン伝導性ポリマー膜との間の中間ゾーンが、能動輸送のために高プロトン濃度となり、濃度勾配によってカソード区画内にさらに移動される。
【0114】
一実施形態においては、細孔が形成されている基体は、誘電性カプトン、伝導性カプトン(混入した黒鉛の存在によって伝導性である)のサンドイッチ構造となる。伝導性カプトンは、アノード電極の形態であってもよいし、アノード電極を形成するために適切に金属化することもできる。これら3層は、比較的親水性、比較的疎水性、続いて比較的親水性となる。
【0115】
カソード区画のカソードにおける反応は、生成した電子と共に有用なレドックス電位を消費するどの反応であってもよい。酸素を使用する場合、例えば、反応は、
【化2】

となることができる。
【0116】
反応2を使用すると、陰極溶液(カソード区画内で使用される電解質)は緩衝されて水素イオンを消費することができ、燃料電池の動作中に水素イオン供与化合物を供給することができ、より好ましくは、アノード区画とカソード区画との間のバリアが、中和する水素イオン(水素イオンまたはプロトン)を供給するのに十分効果的となる。
【0117】
一実施形態において、カソードでの対応する反応は、
【化3】

である。
【0118】
このカソード反応によって、正味で水が生成され、その量が多い場合には、例えば、あふれ出る液体のための空間を設けるか、または気相排気装置を設けることによって処理することができる。多数の電子受容分子は作動温度において固体であることが多く、またはキャリア液体中の溶質であり、この場合、カソード室は、非気体材料などを移動できるように適合させるべきである。
【0119】
電子受容分子として過酸化水素が使用される場合、この電子受容分子は、生体適合性膜のポリペプチド、およびアノード室内の他のあらゆる化学種を損傷することがあり、このような電子受容分子の捕捉剤を燃料電池中で使用して、過酸化物または損傷を与える電子受容分子が、アノード室に入るのを防止することができる。このような捕捉剤は、特に、アノード電極における条件が電子のO2への移動を触媒するのに効果的ではない場合に、例えば酵素カタラーゼ(2H22 TM 2H2O+O2)であってよい。あるいは捕捉剤は任意の貴金属、例えば、金または白金、であってもよい。このような捕捉剤は、酵素の位置で、固体支持体材料に共有結合することができる。あるいは、アノード室とカソード室との間にバリアが設けられて、過酸化水素に対する浸透性が最大限に制限される。
【0120】
過酸化カルシウム、過塩素酸カリウム(KClO4)、または過マンガン酸カリウム(KMnO4)のような固体酸化剤を電子受容体として使用することができる。
【0121】
本発明の燃料電池は、ある温度範囲内で、ポリペプチドまたはプロトントランスポーターを操作する。この温度範囲は典型的には、酵素の安定性、および酵素の供給源と共に変動する。適切な温度範囲を増加させるために、火口または温泉から単離された微生物などの好熱性生物由来の適切なレドックス酵素を選択することができる。さらに、遺伝子改変された酵素を使用することができる。
【0122】
にもかかわらず、少なくとも第1の電極の好ましい作動温度は約80℃以下、好ましくは60℃以下である。
【0123】
図1に示されるように、本発明による好ましい燃料電池10は、アノード区画1、カソード区画3、アノード4、およびカソード5を含み、さらに、膜の一方の側から他方にプロトンを移動させるのに関与することができるポリペプチドを含む本明細書に記載の生体適合性膜2(および場合によりバリア)を含む。回路の完成を促進するために導線6および7も提供される。他の支持構造または誘電材料を使用する場合も使用しない場合もある本発明の生体適合性膜は、アノード区画とカソード区画との間の種々の成分の通過を防止するバリアを形成している。実際、このバリア構造は一般に、アノード区画とカソード区画との間の界面を画定し、それらの間に配置される。生体適合性膜および任意の支持構造、例えばバリアは、プロトンまたは他の正電荷を移動させ、好ましくはアノード区画からカソード区画にポンプ輸送する。しかしこれらは、金属、および特に金属イオンのアノード区画からカソード区画への通過を妨害する。
【0124】
好ましくは、アノード区画とカソード区画との両方が電解質を含有する(アノード区画の場合は陽極液、カソード区画の場合は陰極液)。アノード区画は燃料も含有し、この場合、それは、金属アノード自体である。本発明の燃料電池は、有効寿命全体にわたって、好ましくは少なくとも約10ミリワット/cm2、より好ましくは少なくとも約50ミリワット/cm2、および最も好ましくは少なくとも約100ミリワット/cm2を生じることができる(寿命の最後に近づくとある程度出力が低下する)。本発明の燃料電池は、好ましくは燃料が最終的になくなるまで、一般には少なくとも8時間、好ましくは1週間、より好ましくは1か月、最も好ましくは6か月以上であるが、それまでこのような出力密度を発生する(再充填可能でない場合)。
〔実施例1〕
【0125】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を以下のように調製した。7%w/v(70mg)の、平均分子量2KD−5KD−2KDを有するブロックコポリマー、ポリ(2−メチルオキサゾリン)−ポリジメチルシロキサン−ポリ(2−メチル(オキサゾリン)を、マグネチックスターラーを使用して撹拌しながら、95%v/v/5%v/vのエタノール/水溶媒混合物中に溶解した。この溶液6マイクロリットルを取り出し、0.015%w/vのドデシルマルトシド、40マイクログラムの複合体I(10mg/ml)を水中に含有する溶液4マイクロリットルと混合した。次いで、これを混合する。これより得られた溶液は、4.2%w/vのポリマー、55%v/vのEtOH、45%v/vのH2O、0.06%w/vのドデシルマルトシドを含有し、タンパク質/ポリマー比は6%w/wである。
〔実施例2〕
【0126】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ実施例1に記載の通りであるが以下のように変更して調製した。0.015%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して1.5%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られるように、より少ないポリペプチド溶液を使用した。
〔実施例3〕
【0127】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ実施例1に記載の通りであるが以下のように変更して調製した。0.03%w/vのドデシルマルトシドを含む最終溶液であり、合成ポリマー材料に対して3.0%w/wのポリペプチドを含む最終溶液が得られるように、より少ないポリペプチド溶液を使用した。
〔実施例4〕
【0128】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ実施例1に記載の通りであるが以下のように変更して調製した。0.045w/vのドデシルマルトシドを含む最終溶液であり、合成ポリマー材料に対して4.5%w/wのポリペプチドを含む最終溶液が得られるように、より少ないポリペプチド溶液を使用した。
〔実施例5〕
【0129】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ実施例1に記載の通りであるが以下のように変更して調製した。0.0075w/vのドデシルマルトシドを含む最終溶液であり、合成ポリマー材料に対して0.75%w/wのポリペプチドを含む最終溶液が得られるように、より少ないポリペプチド溶液を使用した。
〔実施例6〕
【0130】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ実施例5に記載の通りであるが以下のように変更して調製した。合成ポリマー材料が最初から5.0%w/vの溶液として存在した。0.0075%w/vのドデシルマルトシドと合成ポリマー材料に対して0.75%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られるように、実施例1に記載される種類のポリペプチド溶液を十分な量加えた。
〔実施例7〕
【0131】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ実施例6に記載の通りであるが以下のように変更して調製した。0.015%w/vのドデシルマルトシドを含む最終溶液であり、合成ポリマー材料に対して1.5%w/wのポリペプチドを含む最終溶液が得られるように、実施例1に記載されるポリペプチド溶液を十分な量加えた。
〔実施例8〕
【0132】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ実施例6に記載の形式であるが以下のように変更して調製した。0.03%w/vのドデシルマルトシドを含む最終溶液であり、合成ポリマー材料に対して3%w/wのポリペプチドを含む最終溶液が得られるように、実施例1に記載されるポリペプチド溶液を十分な量加えた。
〔実施例9〕
【0133】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ実施例6に記載の形式であるが以下のように変更して調製した。0.045%w/vのドデシルマルトシドを含む最終溶液であり、合成ポリマー材料に対して4.5%w/wのポリペプチドを含む最終溶液が得られるように、実施例1に記載されるポリペプチド溶液を十分な量加えた。
〔実施例10〕
【0134】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ実施例6に記載の形式であるが以下のように変更して調製した。0.06%w/vのドデシルマルトシドを含む最終溶液であり、合成ポリマー材料に対して6.0%w/wのポリペプチドを含む最終溶液が得られるように、実施例1に記載されるポリペプチド溶液を十分な量加えた。
〔実施例11〜15〕
【0135】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、各溶液中に使用した合成ポリマー材料量が最初に10%w/vであったことを除けばほぼ実施例1〜5に記載の通りにそれぞれ調製した。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合して、それぞれ、0.06、0.15、0.03、0.045、および0.0075%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して6.0、1.5、3.0、4.5、および0.75%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液を得た。
〔実施例16〕
【0136】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ実施例3に記載されるように調製したが、ただし、合成ポリマー材料を溶解するのに使用した溶媒が、エタノール、25%v/vメタノール、および実施例3に示される量の水を含んだ。0.03%w/vのドデシルマルトシドと合成ポリマー材料に対して3.0%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液を得るために、十分なポリペプチド溶液を使用した。
〔実施例17〕
【0137】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ実施例2に記載されるように調製したが、ただし、合成ポリマー材料を溶解するのに使用した溶媒が、47.5%v/vのエタノール、2.5%v/vの水、25%v/vのテトラヒドロフラン(「THF」)、25%v/vのジクロロメタンを含んだ。0.015%w/vのドデシルマルトシドと合成ポリマー材料に対して1.5%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液を得るために、十分なポリペプチド溶液を使用した。
〔実施例18〕
【0138】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ実施例6に記載されるように調製することができるが、ただし、合成ポリマー材料を溶解するのに使用した溶媒が、9.5%v/vのエタノール、0.5%v/vの水、40%v/vのアセトン、および40%v/vのヘキサンを含んだ。
〔実施例19〜24〕
【0139】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ前述の実施例11〜15に記載されるように調製したが、ただし、ドデシルマルトシドの最終濃度は0.15%w/vであった。
〔実施例25〕
【0140】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ前述の実施例4に記載されるように調製することができるが、ただし、ポリペプチド溶液中に使用した界面活性剤の残部がドデシルβ−D−グルコピラノシドであり、界面活性剤の最終濃度が0.15%w/vである。
〔実施例26〕
【0141】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ前述の実施例9に記載されるように調製したが、ただし、ポリペプチド溶液中に使用した界面活性剤が、ドイツ、ルードヴィクスハーフェンのBASFより登録商標名PLURONIC L101、ロットWPDX−522Bで販売されるポリマー界面活性剤と、実施例9に指定したのと同じ濃度のドデシルマルトシドとの混合物を含んだ。このポリマー界面活性剤は、最終溶液中、供給時の濃度の0.1%v/vにまで希釈された。
〔実施例27〕
【0142】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ前述の実施例2に記載されるように調製したが、ただし、ポリペプチド溶液中に使用した界面活性剤が、コネチカット州ウォリンフォード(Wallingford CT)のBYCケミーより登録商標名DISPERPLAST、ロット番号31J022で販売されるポリマー界面活性剤と、実施例2に指定されたのと同じ濃度のドデシルマルトシドとの混合物を含んだ。このポリマー界面活性剤は、最終溶液中、供給時の濃度の0.135%v/vに希釈された。
〔実施例28〜32〕
【0143】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例6〜10に記載されるように調製することができるが、ただし、使用した合成ポリマー材料が、3kD−7kD−3kDの平均分子量を有するポリ(2−メチルオキサゾリン)−ポリジメチルシロキサン−ポリ(2−メチルオキサゾリン)(5%w/v)であってよい。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.0075、0.015、0.030、0.045、および0.060%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75、1.5、3.0、4.5、および6.0%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られる。
〔実施例33〜38〕
【0144】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例1〜5に記載されるように調製したが、ただし、使用した合成ポリマー材料が、どちらもポリ(2−メチルオキサゾリン)−ポリジメチルシロキサン−ポリ(2−メチルオキサゾリン)である2種類のブロックコポリマーの混合物(合計7%w/v)であり、その一方の平均分子量が2kD−5kD−2kDであり、他方が1kD−2kD−1kDであり、第2に対する第1のブロックコポリマーの比率が、使用した全ポリマーw/wの約67%対33%であった。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.06、0.015、0.030、0.045、および0.0075%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75、1.5、3.0、4.5、および6.0%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られた。
〔実施例39〜43〕
【0145】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例11〜15に記載されるように調製することができるが、ただし、使用した合成ポリマー材料が、どちらもポリ(2−メチルオキサゾリン)−ポリジメチルシロキサン−ポリ(2−メチルオキサゾリン)である2種類のブロックコポリマーの混合物(10%w/v)であってよく、その一方の平均分子量が1kD−2kD−1kDであり、他方が3kD−7kD−3kDであり、第2に対する第1のブロックコポリマーの比率が、使用した全ポリマーw/wの約33%対67%である。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.075、0.15、0.30、0.45、および0.60%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75、1.5、3.0、4.5、および6.0%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られる。
〔実施例44〜48〕
【0146】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例6〜10に記載されるように調製することができるが、ただし、使用した合成ポリマー材料が、どちらもポリ(2−メチルオキサゾリン)−ポリジメチルシロキサン−ポリ(2−メチルオキサゾリン)である2種類のブロックコポリマーの混合物(5%w/v)であってよく、その一方の平均分子量が2kD−5kD−2kDであり、他方が3kD−7kD−3kDであり、第2に対する第1のブロックコポリマーの比率が使用した全ポリマーw/wの約33%対67%である。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.0075、0.015、0.030、0.045、および0.060%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75、1.5、3.0、4.5および6.0%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られる。
〔実施例49〜53〕
【0147】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例1〜5に記載されるように調製することができるが、ただし、使用した合成ポリマー材料が、どちらもポリ(2−メチルオキサゾリン)−ポリジメチルシロキサン−ポリ(2−メチルオキサゾリン)である2種類のブロックコポリマーの混合物(7%w/v)であってよく、その一方の平均分子量が2kD−5kD−2kDであり、他方が3kD−7kD−3kDであり、第2に対する第1のブロックコポリマーの比率が、使用した全ポリマーw/wの約67%対33%である。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.06、0.015、0.030、0.045、および0.0075%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して6.0、1.5、3.0、4.5、および0.025%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られる。
〔実施例54〜58〕
【0148】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例1〜5に記載されるように調製することができるが、ただし、使用した合成ポリマーが、エタノール95%/水5%の溶媒中の平均分子量2kD−5kD−2kDを有するポリ(2−メチルオキサゾリン)−ポリジメチルシロキサン−ポリ(2−メチルオキサゾリン)(7%w/v)と、平均分子量約3,300ダルトンである23.5%w/vポリエチレングリコール水溶液とを、トリブロックコポリマー溶液85v/v%、ポリエチレングリコール溶液15%v/vの割合で混合した混合物であってよい。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.06、0.015、0.030、0.045、および0.0075%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して6.0、1.5、3.0、4.5、および0.75%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られる。
〔実施例59〜63〕
【0149】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ実施例12に記載されるように調製したが、ただし、使用した合成ポリマーが、平均分子量が2kD−5kD−2kDでありエタノール95%/水5%の溶媒中のポリ(2−メチルオキサゾリン)−ポリジメチルシロキサン−ポリ(2−メチルオキサゾリン)10%w/vと、平均分子量が約8,000ダルトンである23.5%w/vポリエチレングリコール水溶液とを、トリブロックコポリマー溶液85%v/v、ポリエチレングリコール溶液15%v/vの割合で混合した混合物であった。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、0.15%w/vのドデシルマルトシドと合成ポリマー材料に対して1.5%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液を得た。実施例11および13〜15の手順を使用して同様の溶液を調製することができる。
〔実施例64〜68〕
【0150】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例28〜32に記載されるように調製することができるが、ただし、使用した合成ポリマーが、平均分子量が3kD−7kD−3kDであり、エタノール95%/水5%の溶媒中のポリ(2−メチルオキサゾリン)−ポリジメチルシロキサン−ポリ(2−メチルオキサゾリン)5%w/vと、平均分子量が約3,300ダルトンである23.5%w/vポリエチレングリコール水溶液とを、トリブロックコポリマー溶液85%v/v、ポリエチレングリコール溶液15%v/vの割合で混合した混合物であってよい。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.0075、0.015、0.030、0.045、および0.060%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75、1.5、3.0、4.5、および6.0%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られる。
〔実施例69〜73〕
【0151】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例1〜5に記載されるように調製することができるが、ただし、使用した合成ポリマーが、平均分子量が3kD−7kD−3kDであり、エタノール95%/水5%の溶媒中のポリ(2−メチルオキサゾリン)−ポリジメチルシロキサン−ポリ(2−メチルオキサゾリン)7%w/vと、平均分子量が約8,000ダルトンである23.5%w/vポリエチレングリコール水溶液とを、トリブロックコポリマー溶液85v/v%、ポリエチレングリコール溶液15%v/vの割合で混合した混合物であってよい。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.060、0.015、0.030、0.045、および0.0075%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して6.0、1.5、3.0、4.5、および0.75%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られる。
〔実施例74〜78〕
【0152】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例6〜10に記載されるように調製することができるが、しかし使用した合成ポリマーが、平均分子量が2kD−5kD−2kDであり、アセトン50%v/v/ヘプタン50%v/vの溶媒中のポリ(2−メチルオキサゾリン)−ポリジメチルシロキサン−ポリ(2−メチルオキサゾリン)5%w/vと、アセトン50%v/v/オクタン50%v/v中の分子量約250,000の5%w/vポリスチレン溶液とを、ブロックコポリマー80%v/v、ポリスチレン20%v/vの割合で混合した混合物であってよい。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.0075、0.015、0.030、0.045、および0.060%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75、1.5、3.0、4.5、および6.0%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られる。
〔実施例79〜83〕
【0153】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例1〜5に記載されるように調製することができるが、ただし、使用した合成ポリマーが、平均分子量が2kD−5kD−2kDであり、エタノール95%/水5%の溶媒中のポリ(2−メチルオキサゾリン)−ポリジメチルシロキサン−ポリ(2−メチルオキサゾリン)7%w/vと、平均分子量が4kD−8kD−4kDであり、THF50%v/v/ジクロロメタン50%v/vの溶媒中の5%w/vポリメタクリル酸メチル−ポリジメチルシロキサン−ポリメタクリル酸メチル溶液とを、それぞれ66%v/v対33%v/vの割合で混合した混合物であってよい。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.06、0.015、0.030、0.045、および0.0075%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して6.0、1.5、3.0、4.5、および0.075%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られる。
〔実施例84〜88〕
【0154】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例11〜15に記載されるように調製したが、ただし、使用した合成ポリマー材料が、フロリダ州オデッサのダイス・アナリティック(Dais Analytic,Odessa,FL)よりProtolyte(登録商標名)A700、ロット番号LC−29/60−011として供給され、供給時のままの溶媒中の10%w/vのスルホン化スチレン/エチレン−ブチレン/スルホン化スチレンを、5%v/vの水を含有するエタノールで50%v/vに希釈したものであった。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.0075、0.015、0.030、0.045、および0.060%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75、1.5、3.0、4.5および6.0%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られた。
〔実施例89〕
【0155】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ実施例84に記載されるように調製することができるが、ただし、合成ポリマー材料を希釈するために使用した溶媒が、50%v/vのテトラヒドロフラン(「THF」)、50%v/vのジクロロメタンを含むことができる。
〔実施例90〜94〕
【0156】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ前述の実施例84〜88に記載されるように調製したが、ただし、ドデシルマルトシドの最終濃度が0.15%w/vであった。
〔実施例95〕
【0157】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ前述の実施例85に記載されるように調製することができるが、ただし、ポリペプチド溶液中に使用した界面活性剤が、ドデシルβ−D−グルコピラノシドと、ドデシルマルトシドとの混合物を含むことができ、界面活性剤の最終濃度が0.15%w/vである。
〔実施例96〕
【0158】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ前述の実施例87に記載されるように調製することができるが、ただし、ポリペプチド溶液中に使用した界面活性剤が、ドイツ、ルードヴィクスハーフェンのBASFより登録商標名PLURONIC L101、ロットWPDX−522Bで販売されるポリマー界面活性剤と、実施例87に指定されたのと同じ濃度のドデシルマルトシドとの混合物を含んだ。このポリマー界面活性剤は、最終溶液中、供給時の濃度の0.1%v/vに希釈された。
〔実施例97〕
【0159】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、ほぼ前述の実施例88に記載されるように調製することができるが、ただし、ポリペプチド溶液中に使用した界面活性剤が、コネチカット州ウォリンフォードのBYKケミーより登録商標名DISPERPLAST、ロット番号31J022で販売されるポリマー界面活性剤と、実施例88で指定されたのと同じ濃度のドデシルマルトシドとの混合物を含んだ。このポリマー界面活性剤の最終濃度は、最終溶液中、供給時の濃度の0.135%v/vに希釈された。
〔実施例98〜102〕
【0160】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例84〜88に記載されるように調製したが、ただし、使用した合成ポリマー材料が、2種類のブロックコポリマーの混合物であり、その一方が、フロリダ州オデッサのダイス・アナリティックよりProtolyte(登録商標名)A700、ロット番号LC−29/60−011として供給され、供給時のままの溶媒中の10%w/vのスルホン化スチレン/エチレン−ブチレン/スルホン化スチレンを、5%v/vの水を含有するエタノールで50%v/vに希釈したものであり、他方が、平均分子量が2kD−5kD−2kDであるポリ(2−メチルオキサゾリン)−ポリジメチルシロキサン−ポリ(2−メチルオキサゾリン)5%w/vであり、第2に対する第1のブロックコポリマーの比率が、使用した全ポリマーw/wの約67%対33%であった。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.0075、0.015、0.030、0.045、および0.060%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75、1.5、3.0、4.5および6.0%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られた。
〔実施例103〜107〕
【0161】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例84〜88に記載されるように調製したが、ただし、使用した合成ポリマー材料が、2種類のブロックコポリマーの混合物であり、その一方が、フロリダ州オデッサのダイス・アナリティックよりProtolyte(登録商標名)A700、ロット番号LC−29/60−011として供給され、供給時のままの溶媒中の10%w/vのスルホン化スチレン/エチレン−ブチレン/スルホン化スチレンを、5%v/vの水を含有するエタノールで50%v/vに希釈したものであり、他方が、平均分子量が2kD−5kD−2kDであるポリ(2−メチルオキサゾリン)−ポリジメチルシロキサン−ポリ(2−メチルオキサゾリン)5%w/vであり、第2に対する第1のブロックコポリマーの比率が、使用した全ポリマーw/wの約33%対67%であった。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.0075、0.015、0.030、0.045、および0.060%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75、1.5、3.0、4.5、および6.0%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られた。
〔実施例108〜112〕
【0162】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例103〜107に記載されるように調製することができるが、ただし、使用した合成ポリマー材料が、2種類のブロックコポリマーの混合物であってよく、その一方が、フロリダ州オデッサのダイス・アナリティックよりProtolyte(登録商標名)A700、ロット番号LC−29/60−011として供給され、供給時のままの溶媒中の10%w/vのスルホン化スチレン/エチレン−ブチレン/スルホン化スチレンを、5%v/vの水を含有するエタノールで50%v/vに希釈したものであり、他方が、平均分子量が4kD−8kD−4kDであり、THF50%v/v/ジクロロメタン50%v/vの溶媒混合物中のポリメタクリル酸メチル−ポリジメチルシロキサン−ポリメタクリル酸メチル5%w/vであり、第2に対する第1のブロックコポリマーの比率が、使用した全ポリマーw/wの約67%対33%である。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.0075、0.015、0.030、0.045、および0.060%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75、1.5、3.0、4.5および6.0%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られる。
〔実施例113〜117〕
【0163】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例103〜107に記載されるように調製することができるが、ただし、使用した合成ポリマー材料が、2種類のブロックコポリマーの混合物であってよく、その一方が、フロリダ州オデッサのダイス・アナリティックよりProtolyte(登録商標名)A700、ロット番号LC−29/60−011として供給され、供給時のままの溶媒中の10%w/vのスルホン化スチレン/エチレン−ブチレン/スルホン化スチレンを、5%v/vの水を含有するエタノールで50%v/vに希釈したものであり、他方が、平均分子量が4kD−8kD−4kDであり、THF50%v/v/ジクロロメタン50%v/vの溶媒混合物中のポリメタクリル酸メチル−ポリジメチルシロキサン−ポリメタクリル酸メチル5%w/vであり、第2に対する第1のブロックコポリマーの比率が、使用した全ポリマーw/wの約33%対67%である。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.0075、0.015、0.030、0.045、および0.060%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75、1.5、3.0、4.5、および6.0%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られる。
〔実施例118〜122〕
【0164】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例84〜88に記載されるように調製したが、ただし、使用した合成ポリマー材料が、フロリダ州オデッサのダイス・アナリティックよりProtolyte(登録商標名)A700、ロット番号LC−29/60−011として供給され、供給時のままの溶媒中の10%w/vのスルホン化スチレン/エチレン−ブチレン/スルホン化スチレンを、5%v/vの水を含有するエタノールで50%v/vに希釈したものと、平均分子量約3,300ダルトンである23.5%w/vポリエチレングリコール水溶液とを、トリブロックコポリマー溶液85%v/v、ポリエチレングリコール溶液15%v/vの割合で混合した混合物であった。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.0075、0.015、0.030、0.045、および0.060%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75、1.5、3.0、4.5、および6.0%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られた。
〔実施例123〜127〕
【0165】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例84〜88に記載されるように調製したが、ただし、使用した合成ポリマー材料が、フロリダ州オデッサのダイス・アナリティックよりProtolyte(登録商標名)A700、ロット番号LC−29/60−011として供給され、供給時のままの溶媒中の10%w/vのスルホン化スチレン/エチレン−ブチレン/スルホン化スチレンを、5%v/vの水を含有するエタノールで50%v/vに希釈したものと、平均分子量が約8,000ダルトンである23.5%w/vポリエチレングリコール水溶液とを、トリブロックコポリマー溶液85%v/v、ポリエチレングリコール溶液15%v/vの割合で混合した混合物であった。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.0075、0.015、0.030、0.045、および0.060%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75、1.5、3.0、4.5、および6.0%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られた。
〔実施例128〜132〕
【0166】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例6〜10に記載されるように調製することができるが、ただし、使用した合成ポリマー材料が、平均分子量が4kD−8kD−4kDであり、THF50%v/v/ジクロロメタン50%v/vの混合溶媒中のポリメタクリル酸メチル−ポリジメチルシロキサン−ポリメタクリル酸メチル5%w/vであってよい。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.0075、0.015、0.030、0.045、および0.060%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75、1.5、3.0、4.5および6.0%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られる。
〔実施例133〜134〕
【0167】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例6および7に記載されるように調製したが、ただし、使用した合成ポリマー材料が、ドイツ、ルードヴィクスハーフェンのBASFよりStryolux(登録商標名)3G55、ロット7453064Pとして供給される、アセトンおよびヘキサンの50%/50%v/vの混合物中の、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン3.2%w/vであった。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.0075および0.015%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75および1.5%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られた。
〔実施例135〜136〕
【0168】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例6および7に記載されるように調製したが、ただし、使用した合成ポリマー材料が、ドイツ、ルードヴィクスハーフェンのBASFよりStryolux(登録商標名)3G55、ロット7453064Pとして供給される、アセトンおよびヘプタンの50%/50%v/vの混合物中の、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン3.2%w/vであった。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.0075および0.015%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75および1.5%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られた。
〔実施例137〜138〕
【0169】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例135および136に記載されるように調製したが、ただし、使用した合成ポリマー材料が、ドイツ、ルードヴィクスハーフェンのBASFよりStryolux(登録商標名)3G55、ロット7453064Pとして供給される、アセトンおよびヘプタンの50%/50%v/vの混合物中の、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン5%w/vであった。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.0075および0.015%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75および1.5%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られた。
〔実施例139〜141〕
【0170】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例6〜8に記載されるように調製することができるが、ただし、使用した合成ポリマー材料が、ドイツ、ルードヴィクスハーフェンのBASFよりStryolux(登録商標名)3G55、ロット7453064Pとして供給される、アセトンおよびヘキサンの50%/50%v/vの混合物中の、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン5%w/vと、同じ溶媒中の平均分子量2kD−5kD−2kDのポリ(2−メチルオキサゾリン)−ポリジメチルシロキサン−ポリ(2−メチルオキサゾリン)5%w/vとの、それぞれ約80%v/v対20%v/vの比率の混合物であってよい。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.0075、0.015、および0.030%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75、1.5および3.0%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られる。
〔実施例142〜145〕
【0171】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例139〜141に記載されるように調製することができるが、ただし、使用した合成ポリマー材料が、ドイツ、ルードヴィクスハーフェンのBASFよりStryolux(登録商標名)3G55、ロット7453064Pとして供給される、アセトンおよびヘキサンの50%/50%v/vの混合物中の、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン5%w/vと、同じ溶媒中の平均分子量3kD−7kD−3kDのポリ(2−メチルオキサゾリン)−ポリジメチルシロキサン−ポリ(2−メチルオキサゾリン)5%w/vとの、それぞれ約80%v/v対20%v/vの比率の混合物であってよい。その溶液の6マイクロリットルを実施例1に記載される種類の十分なポリペプチド溶液と混合すると、それぞれ、0.0075、0.015、および0.030%w/vのドデシルマルトシドと、合成ポリマー材料に対して0.75、1.5および3.0%w/wのポリペプチドとを含む最終溶液が得られる。
〔実施例146〜290〕
【0172】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例1〜145に記載されるように調製することができるが、ただし、合成ポリマーと混合したポリペプチド溶液が、10mg/mlのスクシネート:ユビキノンオキシドレダクターゼ(複合体II)水溶液であってよく、これはインディアナ州インディアナポリスのロシュ(Roche,Indianapolis,IN)より市販されているテシット(Thesit)(ポリオキシエチレン(9)ドデシルエーテル、C129)0.15%も含むことができる。この界面活性剤が、一般に実施例1〜145のドデシルマルトシドと同様の濃度で置き換えられる。
〔実施例291〜435〕
【0173】
本発明による生体適合性膜を製造するのに有用な溶液を、それぞれほぼ実施例1〜145に記載されるように調製することができるが、ただし、合成ポリマーの希釈に使用したポリペプチド溶液が、10mg/mlニコチンアミドヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼ水溶液であってよく、これは0.15%のトリトン(Triton)X−100も含むことができる。この界面活性剤が、一般に実施例1〜145のドデシルマルトシドと同様の濃度で置き換えられる。さらに、ドデシルβ−D−グルコピラノシドを含む実施例1〜145においては、この界面活性剤を、同様の濃度のノニデットP−40で置き換えることができる。
〔実施例436〕
【0174】
膜を誘電性有孔支持体上に形成する。この支持体は、デュポンより市販のカプトン(厚さ1ミル)でできており、直径100マイクロメートルおよび深さ1ミルの開口部がレーザー穿孔されている。開口部配列は、1,700個/cm2までの密度を有することができる。詳細に前述したPEG8000/プロトライトA700膜を使用して、生体適合性膜を開口部にわたって形成する。結果として得られるブロックコポリマー、安定化ポリマー、およびポリペプチドを含有する最終溶液を次に、ピペットで1回に4マイクロリットル滴下することで、開口部を完全に覆うようにして、基体上に付着させる。フード下で室温において溶媒を蒸発させた。膜−支持体組立体を、使用前は真空室中に保管した。
【0175】
この場合は燃料電池である試験装置を、デルラン(DELRAN)プラスチックから作製した。上述のように作製した膜−支持体組立体を、燃料電池内部にゴム製ガスケットで所定の位置に封止して、アノード区画およびカソード区画の2つのチャンバーを形成した。次にアノードおよびカソード区画に、水性電解質(アノード区画内は1MのTMA−ホルメート、pH10、カソード区画内は100mMのTMA−スルフェート、pH2.0、1%過酸化水素を含有)を満たした(各20ml)。チタン箔アノードを、電子的に変動する負荷に対して並列に接続した。アナログ/デジタルボードを有するコンピュータを使用して、電流および電圧出力を測定した。これらの要素をカソード区画内の黒鉛カソード電極まで配線することによって回路を完成させた。
【0176】
チタン箔アノードを陽極液中に浸漬した。アノード区画内には、燃料としての5%v/vのメタノールも含まれ、12.5mMのNAD+を電子伝達体として使用し、1Mのヒドロキノンを電子移動媒介物質として使用し、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ(5,000単位)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(10単位)、およびギ酸デヒドロゲナーゼ(100単位)を可溶性酵素として使用した。電流および電圧が発生し、これは、プロトン濃度勾配に逆らってさえもプロトンをアノード区画からカソード区画へ移動させることにおける、生体適合性膜中に組み込まれた複合体Iの機能と矛盾しない。ピーク電流密度は158mA/cm2であった。この膜は約3日間安定であった。
【0177】
膜形成溶液がPEG8000を含有しなかったこと以外は上記と同じ成分および濃度を使用して別のセルを形成して比較すると、ピーク電流密度は類似していた。しかし、膜の完全性は10〜12時間に限定された。膜の破壊は、カソード区画内部への媒介物質の流れを見ることで評価した。
【0178】
膜中に複合体Iがなくても、プロトライトブロックコポリマーから膜が形成されるが、プロトンに対する透過性が低い。燃料電池中に複合体Iを使用せずに形成したこのような膜を使用して、ヒドロキシキノンの代わりに電子移動媒介物質としてアノード中に300mMのPMSが存在すること以外は上記と同様に作製すると、最大4mA/cm2が発生し、約5分ほどで出力が急速に低下した。
〔実施例437〕
【0179】
開口部直径が110μmの1050個の開口部(六角形の細密充填構造で30個の開口部の35個の列)で構成される4つの下部構造を含むアレイを、1ミルのポリスルホンフィルムにレーザー穿孔で形成した。200mg/mlを超える濃度のTHFに溶解したポリスチレンを接着剤として使用して、このアレイを、15ミルのポリスチレン支持体(2.5インチ×2.25インチ)に開けられた3/4インチの開口部にわたって結合させた。アレイ周囲で液密封止となるような方法で結合を実施した。
【0180】
製造元から供給されたプロトライトA700溶液(ダイス・アナリティック)を、エタノールで50%に希釈した。この溶液36マイクロリットルに、10mg/mlの大腸菌複合体I、50mMのMES−pH6.0、50mMのNaCl、および0.15%ドデシルマルトシドを含有する溶液4マイクロリットルを加えた。ピペットで上下させて混合した後、開口部を完全に覆うようにアレイ上に混合部物を付着させ、開口部を覆う膜を形成させた後、ドラフト内で溶媒を蒸発させた。この膜をドラフト内で風乾した後、真空オーブンに入れて、さらに15分間乾燥させた。
【0181】
次いで、以下の層を互いにねじで止めることによって、膜支持体を組み立てて燃料電池を作製した。ポリスルホン板(3.25インチ×3インチ×1/2インチ)、アノードとの電気接点として機能するポリスルホンブロックの上端を超えて延在する3.5インチの部分を有するアルミニウムシート(2.25インチ×3.5インチ×0.075mm)、シリコーンゴムガスケット(2.5インチ×2.25インチ×0.25インチ、中央で2.25インチ×2インチの領域が切り取られている)、膜/支持体、もう1つのシリコーンゴムガスケット(厚さ0.125インチであるがその他は第1のガスケットと同様)、黒鉛カソード(2.5インチ×2.25インチ×15ミル、ポコ・グラファイト(Poco Graphite))、および第2のポリスルホン板。銀系エポキシを使用して黒鉛ブロックに電線を接着し、電圧および電流の読み取りが銀エポキシの酸化によって妨害されないようにするため、ブロックの一部の上では、セル動作中に乾燥が維持されるようにした。
【0182】
このセルに、2.3Mのギ酸テトラメチルアンモニウム(TMA)(pH8.0)と20体積%の2.6Mの水酸化TMA(最終pH約14)との混合物からなる陽極液約6mlと、100mMの硫酸TMA(pH7.0)、0.1Mの硫酸、および1体積%の過酸化水素の混合物からなる陰極液3mlとを満たした。これらの液体は、アルミニウムアノードおよび黒鉛カソード中の配列した開口部を通るポリスルホンブロックの上部付近の小さな開口部に通して導入した。セルの動作中は開口部を封止しなかったが、そのような手順は可能であり簡単である。
【0183】
2オーム抵抗器および開回路電圧2.2ボルトで、セルは100ミリアンペアを発生した。ピーク出力は約50ミリワットであった。
〔実施例438〕
【0184】
直径100μmの開口部100個の4つのアレイからなる、10×10の正方形の1組の開口部を、約1インチ×2インチの寸法の1ミルのカプトン基体にレーザー穿孔した。ポリマーペレットをTHF(アルドリッチ(Aldrich))に最終濃度50mg/mlまで溶解して、ポリスチレン−ポリ(1−4ブタジエン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(Styrolux 3G55、BASF)の溶液を調製した。
【0185】
このポリマー溶液12.8マイクロリットルと、10mg/mlの大腸菌複合体I、50mMのMES−pH6.0、50mMのNaCl、および0.15%のドデシルマルトシドを含有する溶液2.8マイクロリットルとの混合物を、開口部を完全に覆うようにアレイ上に付着させ、開口部にわたって膜を形成した後、ドラフト内で溶媒を蒸発させた。膜を有する支持体を真空オーブンに入れて、室温でさらに15分間乾燥させた。
【0186】
以下の層を互いにねじで止めることによって、燃料電池を組み立てた。ポリスルホンブロック(2インチ×2.5インチ×3/8インチ)、電気接点として機能するためにポリスルホンブロック上に突出する亜鉛部分を有するアノードとしての1インチ×2.5インチ×0.25mmの亜鉛シート(グッドフェロー(Goodfellow))、シリコーンゴムガスケット(1インチ×1.75インチ×3/8インチ;厚さ0.25インチのU字型に切断され、セル上部への液体の充填経路を形成する)、膜/支持体構造、厚さ0.125インチの第2のガスケット(その他は第1のガスケットと同様)、1インチ×2.25インチ×15ミルの黒鉛カソード(ポコ・グラファイト)、第2のポリスルホン板。
【0187】
前実施例に記載の800マイクロリットルの陽極液と、500マイクロリットルの陰極液とをセルに満たした。5Ωの抵抗器を通って電流出力13ミリアンペアで、このセルは開回路電圧2.0ボルトを発生した。最大電気出力は約6ミリワットであった。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明は、燃料としての金属アノードと生体適合性膜とを含む、燃料電池および再充電可能な燃料電池などの電池における用途を有する。
【0189】
特定の実施形態を参照しながらここに本発明を説明してきたが、これらの実施形態は本発明の原理および用途の単なる説明であることを理解されたい。したがって、実施形態に対する多数の修正を行うことができ、添付の請求項により定義される本発明の精神および範囲から逸脱せずに他の構成を考案することが可能であることを理解されたい。
【0190】
本明細書に引用されている全ての特許および特許ではない刊行物は、本発明が関係する当業者の技術レベルを示している。これらの刊行物および特許出願の全ては、それぞれの刊行物または特許出願がそれぞれ具体的かつ個別にその記載内容全体が参照することにより本明細書に組み込まれる場合と同じ程度に、本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】本発明による燃料電池を示している。
【図2a】本発明による膜の一実施形態であり、これが誘電体基板中に含まれる穿孔内部に配置されているのが概略的に示されている。
【図2b】本発明による膜の第2の実施形態であり、これが誘電体基板中に含まれる穿孔内部に配置されているのが概略的に示されている。
【図3a】面取り端部と生体適合性膜とを有する開口部の断面図である。
【図3b】面取り端部と生体適合性膜とを有する開口部の断面図である。
【図3c】面取り端部と生体適合性膜とを有する開口部の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと金属燃料とを含むアノード区画と、
カソードを含むカソード区画と、
前記アノード区画内部、前記カソード区画内部、または前記アノード区画と前記カソード区画との間にあり、金属および金属イオンの通過に対して不透過性であり、アノード側およびカソード側を含む合成ポリマー材料の少なくとも1つの層と、それと関連する少なくとも1種類のポリペプチドとを有する生体適合性膜少なくとも1つと
を含む燃料電池であって、
前記ポリペプチドが、化学反応に関与でき、前記少なくとも1つの層の前記アノード側から前記少なくとも1つの層の前記カソード側へのプロトンの輸送に関与でき、またはそのような反応または輸送を促進する分子構造の形成へ関与することができる、燃料電池。
【請求項2】
前記アノードおよび前記カソードが、回路であるが電気的に接触すると、10ミリワット/cm2を発生する、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記アノードおよび前記カソードが、回路であるが電気的に接触すると、50ミリワット/cm2を発生する、請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記アノードおよび前記カソードが、回路であるが電気的に接触すると、100ミリワット/cm2が発生する、請求項3に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記アノードが金属でできている、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記アノードが前記金属燃料である、請求項5に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、前記生体適合性膜の前記アノード側の一方の側から、前記生体適合性膜の前記カソード側へのプロトンの輸送に関与することができる、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記少なくとも1つの生体適合性膜が前記アノードと前記カソードとの間に配置される、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記アノードと前記カソードとの間にあり、前記アノード区画から前記カソード区画へプロトンを流すことができる誘電材料をさらに含む、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項10】
燃料として機能する金属アノードを含むアノード区画と、
カソードを含むカソード区画と、
前記アノード区画内部、前記カソード区画内部、または前記アノード区画と前記カソード区画との間にあり、金属および金属イオンの通過に対して不透過性であり、アノード側およびカソード側を含む合成ポリマー材料の少なくとも1つの層と、それと関連する少なくとも1種類のポリペプチドとを有する生体適合性膜少なくとも1つと
を含む燃料電池であって、
前記ポリペプチドが、前記少なくとも1つの層の前記アノード側から前記少なくとも1つの層の前記カソード側へのプロトンの輸送に関与でき、前記合成ポリマー材料が、少なくとも1種類のブロックコポリマーと、任意には少なくとも1種類の添加剤とからなる、燃料電池。
【請求項11】
前記アノードおよび前記カソードが、回路であるが電気的に接触すると、10ミリワット/cm2を発生する、請求項10に記載の燃料電池。
【請求項12】
前記アノードおよび前記カソードが、回路であるが電気的に接触すると、50ミリワット/cm2を発生する、請求項11に記載の燃料電池。
【請求項13】
前記アノードおよび前記カソードが、回路であるが電気的に接触すると、100ミリワット/cm2が発生する、請求項2に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−502540(P2006−502540A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541676(P2004−541676)
【出願日】平成15年10月3日(2003.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/031457
【国際公開番号】WO2004/032306
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
ポケットベル
【出願人】(504225747)パワーザイム,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】