説明

生体間接触データ測定装置及び生体間接触データ測定システム及び生体間接触データ測定方法

【課題】本発明は各測定対象の動きに応じた接触様式を測定することを課題とする。
【解決手段】本発明の生体間接触データ測定装置10は、測定対象の任意の箇所に装着される装着ベルトと、装着ベルトの内側に形成された電極20と、予め当該測定対象固有の識別データを時系列的に記憶するメモリ70と、識別データを電極20を介して任意の時間間隔毎に送信する送信部130と、当該測定対象が他の測定対象に接触することにより電極20を介して他の測定対象から送信された識別データを受信する受信部150と、受信した識別データの受信レベルを測定する受信レベル測定部162と、受信した識別データ及び受信レベルを時系列な接触データとしてメモリ70に記憶させる制御手段と、メモリ70に記憶させた接触データを外部制御装置に出力する出力部90とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体間接触データ測定装置及び生体間接触データ測定システムに係り、特に人体間あるいは人体と動物間の接触データを測定する生体間接触データ測定装置及び生体間接触データ測定システム及び生体間接触データ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コミュニケーションの技術として、携帯電話機や携帯情報端末機などによるインターネットを利用したソーシャルネットワーキングサービスが提案されている。一方、人間同士が直接的にコミュニケーションを図ることの重要性についても再認識されつつあり、そのための測定装置やシステムの開発が進められている。
【0003】
例えば、通信機能付き電子機器が装着された複数の人間同士が互いに手と手を触れることで一方の人に装着された電子機器から送信された電気信号が他方の人に装着された電子機器に受信され、互いの情報を交換する情報交換システムがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、脳障害を持った子供を教育する施設、あるいは脳障害の子供を診療する病院などでは、同じ部屋に複数の子供を入れて、各人の言動を観察して教育方法や治療方法を研究している。
【0005】
このような研究においては、各子供が協調せずに単独行動を行う場合が多く、子供同士で直接触れ合うことが少ない。ところが、遊びとして各子供に互いに触れ合うように指示すると、最初は離れていても互いに接触する回数が増えると共に、一緒に遊ぶように変化することもある。
【0006】
このように、子供同士が触れ合う接触回数や接触様式(手と手の触れる方向や接触位置などの差違を分類したもの)などの接触データを蓄積することでより効率の良く教育方法や治療方法を研究することが可能になると共に、蓄積された接触データから新しい方法を見いだすことも可能であると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−185174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の特許文献1に記載された方法では、人と人とが手を結ぶ回数をカウントすることができるが、2人がどのような形で接触したかを判別することができないので、接触様式を判別してデータベース化することができず、例えば、複数の子供同士が鬼ごっこを行い、鬼になった子供が他の子供とどのように接触したかを測定することできないので、新しい教育方法や治療方法を研究する際の実験データを正確に得ることが難しかった。
【0009】
また、複数の子供同士のそれぞれの動きが複雑で各人の動きに個性がある場合、各人の動きの差違(個体差)も測定できることが望まれている。
【0010】
また、複数の子供同士がゲーム(例えば、各人が自由に動き回るようなゲーム)をすることで接触データを蓄積する方法が考えられている場合、新しいルールを考えることで、子供達の行動パターンが変化して接触様式も多様に変化することが推定されるものの、そのときの接触様式の変化を接触データとして取得することが難しかった。
【0011】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決した生体間接触データ測定装置及び生体間接触データ測定システム及び生体間接触データ測定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
(1)本発明は、測定対象の任意の箇所に装着される装着ベルトと、
当該装着ベルトの内側に形成され、当該測定対象に接触する電極と、
前記装着ベルトに取付けられ予め当該測定対象固有の識別データを時系列的に記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された識別データを前記電極を介して任意の時間間隔毎に送信する送信手段と、
当該測定対象が他の測定対象に接触することにより前記電極を介して前記他の測定対象から送信された識別データを受信する受信手段と、
前記受信手段により受信した前記識別データの受信レベルを測定する受信レベル測定手段と、
前記受信手段により受信した前記識別データ及び前記受信レベルを時系列な接触データとして前記記憶手段に記憶させる制御手段と、
前記記憶手段に記憶させた接触データを外部制御装置に出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする。
(2)本発明は、さらに、通信状態を送信モードまたは受信モードに交互に切り替える送受信切替手段と、
前記送受信切替手段による切替タイミングを経時的に変化させる切替タイミング設定手段と、
前記送信モードのとき送信信号の周波数を変化させる周波数変調手段と、
前記周波数変調手段により周波数を変化させながら送信した識別データが到達した前記受信モードの他の生体間接触データ測定装置までの距離を測定する距離測定手段と、
を備えたことを特徴とする。
(3)本発明の前記装着ベルトは、加速度センサを備え、
前記記憶手段は、前記加速度センサにより検出された加速度データを時系列的に記憶し、
前記出力手段は、前記加速度データを前記識別データ及び前記受信レベルと共に前記接触データとして出力することを特徴とする。
(4)本発明の前記装着ベルトは、外側の表面に発光部材を備え、
前記制御手段は、前記電極を介して他の前記測定対象から送信された他の前記識別データが入力された際に前記発光部材を発光させることを特徴とする。
(5)本発明の前記制御手段は、前記他の識別データの受信レベルに応じて前記発光部材の発光強度及び発光色を調整することを特徴とする。
(6)本発明の前記装着ベルトは、スピーカを備え、
前記制御手段は、前記電極を介して他の前記測定対象者から送信された他の前記識別データが入力された際に前記スピーカより音を発することを特徴とする。
(7)本発明の前記制御手段は、前記他の識別データの受信レベルに応じて異なる音を前記スピーカから発することを特徴とする。
(8)本発明の前記制御手段は、前記識別データの受信レベルに応じた受信強度を判別し、当該判別結果に応じて前記発光部材の発光強度及び発光・消灯の点灯パターン、又は/及び前記スピーカの音量を調整する調整手段を有することを特徴とする。
(9)本発明は、(1)乃至(8)の何れかに記載された複数の生体間接触データ測定装置と、前記複数の生体間接触データ測定装置により測定された接触データを分析する外部制御装置とを有する生体間接触データ測定システムであって、
前記外部制御装置は、
前記複数の生体間接触データ測定装置の出力手段により出力された接触データを格納する第1のデータベースと、
前記第1のデータベースに格納された複数の識別データごとの各接触データを分析し、各接触データに含まれる接触回数、前記他の識別データの受信レベル及び/または加速度データに応じた当該測定対象と前記他の測定対象との接触方法を示す接触様式を分析する分析手段と、
前記分析手段により分析された分析結果を各識別データ別に格納する第2のデータベースと、
前記第2のデータベースから読み出された各分析結果を表示させる表示手段と、
を備えたことを特徴とする。
(10)本発明は、(1)乃至(8)の何れかに記載された生体間接触データ測定装置を複数の測定対象に装着し、前記複数の測定対象同士が互いに接触と非接触とを繰り返すことで各測定対象の識別データを送受信させて各測定対象の接触データを前記生体間接触データ測定装置の記憶手段に記憶させ、前記記憶手段に記憶された各測定対象の接触データを外部制御装置に出力することを特徴とする。
(11)本発明は、前記生体間接触データ測定装置を同一の測定対象の複数箇所に装着し、複数の前記生体間接触データ測定装置のそれぞれが前記識別データを送信すると共に、他の測定対象に装着された前記生体間接触データ測定装置から送信された識別データを受信することを特徴とする。
(12)本発明の前記複数の測定対象に装着された複数の前記生体間接触データ測定装置は、複数の測定対象の接触の形態によって規定される任意のメッシュネットワークを形成し、前記複数の測定対象の接触位置に応じて前記メッシュネットワークを構成する親ノード又は子ノードとして機能すると共に、各ノードが前記複数の測定対象の動いた位置に応じて各測定対象間の接触関係が変化するのに伴って親ノード又は子ノードに切り替わり、且つ、変化する各接触データを記憶手段に時系列的に記憶させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、受信手段により受信した識別データ及び受信手段により受信した識別データの受信レベルを時系列な接触データとして記憶手段に時系列的に記憶させ、記憶手段に記憶させた接触データを外部制御装置に出力するため、外部制御装置において、取得した接触データを分析し、各測定対象者の接触様式、接触回数をデータベースに格納して各測定対象の行動に基づく症状や治療方法等を検討するための各測定対象ごとの検討資料を提供することができる。
また、送信モードまたは受信モードに交互に切り替える切替タイミングを経時的に変化させると共に、送信モードのとき送信信号の周波数を変化させて識別データが到達した生体間接触データ測定装置までの距離を測定するため、複数の測定対象が接触した際の生体間接触データ測定装置間の距離を自動的に測定することができる。
さらに、加速度センサにより得られる加速度データに基づいて各測定対象が接触したときの角度や動きなどを含む接触様式を正確に測定することが可能になり、測定データの信頼性をより高めることが可能になる。
【0014】
また、測定対象が接触する接触様式に応じて発光部材の発光強度及び点灯パターン、又は/及びスピーカからの音を調整するため、本発明の生体間接触データ測定装置を用いることで可能になる新たなゲーム、例えば、当該生体間接触データ測定装置を装着した複数の測定対象が手を繋いだり、追いかけて他の測定対象に触れるといったゲームを楽しみながら各接触様式に対応した接触データを取得することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による生体間接触データ測定装置の一実施例の使用状態を模式的に示す図である。
【図2A】生体間接触データ測定装置を正面側からみた斜視図である。
【図2B】生体間接触データ測定装置を背面側からみた斜視図である。
【図3A】生体間接触データ測定装置を装着した人同士の接触パターン1を示す図である。
【図3B】生体間接触データ測定装置を装着した人同士の接触パターン2を示す図である。
【図3C】生体間接触データ測定装置を装着した人同士の接触パターン3を示す図である。
【図3D】生体間接触データ測定装置を装着した人同士の接触パターン4を示す図である。
【図4】複数の人や動物との接触パターンを模式的に示す図である。
【図5A】複数の人が互いに移動しながら接触する場合の行動パターン1を模式的に示す図である。
【図5B】複数の人が互いに移動しながら接触する場合の行動パターン2を模式的に示す図である。
【図5C】複数の人が互いに移動しながら接触する場合の行動パターン3を模式的に示す図である。
【図5D】複数の人が互いに移動しながら接触する場合の行動パターン4を模式的に示す図である。
【図5E】複数の人が互いに移動しながら接触する場合の行動パターン5を模式的に示す図である。
【図6A】生体間接触データ測定装置の構成を示すブロック図である。
【図6B】生体間接触データ測定装置間の送受信切替タイミングを説明するためのタイムチャートである。
【図7】外部制御装置の構成を示すブロック図である。
【図8】生体間接触データ測定装置による接触データ測定の制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】生体間接触データ測定装置における接触データの出力割り込み処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】外部制御装置の制御処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0017】
〔生体間接触データ測定装置の使用形態〕
本発明による生体間接触データ測定装置の一実施例の使用状態を模式的に示す図である。図1に示されるように、生体間接触データ測定装置10は、例えば、各測定対象者の手首に装着されるように構成されている。生体間接触データ測定装置10が装着された測定対象者同士が手12と手14を接触させた場合、2人の生体間接触データ測定装置10間で予め登録された識別データ(ID)の送受信が行われる。
【0018】
その際、一方の生体間接触データ測定装置10の電極20A、20A’から送信された識別データは、手(人体)12、14を伝送路として送信されて他方の生体間接触データ測定装置10の電極20B、20B’に受信される。このように一対の生体間接触データ測定装置10は、人体を介して各測定対象者の識別データを送受信することが可能である。また、生体間接触データ測定装置10は、受信した識別データを返信する機能も有しており、自分の識別データと相手の識別データとを合わせて送信する。これにより、生体間接触データ測定装置10は、自ら送信した識別データを受信することで互いに接触したことを認識する。
【0019】
生体間接触データ測定装置10による生体間の通信方式としては、例えば、電波を人体に伝送する通信方式でも良いし、あるいは微弱な電流を人体に伝送する通信方式、あるいは電界を用いた通信方式でも良い。また、電波や電界を用いた通信方式の場合、伝送損失を軽減できると共に、例えば、だっこやおんぶ、腕組みといった様々な接触様式の接触データも測定することが可能になる。さらに、本実施例では、後述するように周波数の差違による信号伝播可能距離が異なる特性を用いた距離測定方法が用いられ、例えば、高周波5MHz〜10MHzの範囲で適宜周波数変調を行うことで一対の生体間接触データ測定装置10間の距離を求める。
【0020】
また、電波を用いた通信方式によれば、携帯電話機で採用された直交波周波数分割多重変調方式(OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式)を採用できるので、各人体による周波数特性の変化を解消することができる。直交波周波数分割多重変調方式では、直交性を利用し、周波数軸上でのオーバーラップを許容することで複数の搬送波を一部重なりあいながらも互いに干渉することなく密に並べ、狭い周波数の範囲を効率的に利用した広帯域伝送が可能になる。尚、本実施例では、どの通信方式を用いても良いので、各通信方式から適宜選択しても良い。
【0021】
また、人体を伝送路として利用する通信方式では、各人体が有するインピーダンスと一対の生体間接触データ測定装置10の距離Lによって伝送損失が決まる。そのため、手12と手14の接触位置の違いによりインピーダンス特性及び距離Lが変化することから、2人の測定対象者の接触様式(測定対象者のどの部位にどのように接触したか)を判別することが可能になる。
〔生体間接触データ測定装置10の構成〕
図2Aは生体間接触データ測定装置10を正面側からみた斜視図である。図2Bは生体間接触データ測定装置10を背面側からみた斜視図である。図2A及び図2Bに示されるように、生体間接触データ測定装置10は、測定対象者の手首あるいは肘、腕などの任意の部位に装着される装着ベルト30と、装着ベルト30に保持された測定ユニット40と、装着ベルト30の外側表面に取付けられた複数の発光部材50とを有する。
装着ベルト30は、装着脱操作が簡単に行えるように各端部の表面にマジックテープ(登録商標)32,34が設けられている。発光部材50は、例えば、発光ダイオードからなり、受信した識別データの信号レベルの強さ(電圧値)に応じて任意の発光強度、点灯パターン、発光色が切り替えられる。
【0022】
測定ユニット40は、下面に識別データを送受信するための一対の電極20が設けられている。また、測定ユニット40の上面には、タッチパネル42が設けられている。タッチパネル42は、送受信された識別データを記号で表示する表示装置と、各種操作釦(スタート釦、停止釦、モード選択釦など)を表示する入力装置として機能する。尚、タッチパネル42は、測定ユニット40に設けても良いし、あるいは測定ユニット40の代わりに複数のマイクロスイッチを設ける構成としても良いのは勿論である。
複数の発光部材50は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)よりなり、他の測定対象者からの識別データを受信した際、発光して接触されたことを報知する。また、接触状態が継続している場合、各発光部材50は接触時間の経過と共に、発光色を徐々に変化させることで、測定対象者同士が接触状態を継続していることを周囲の人たちに報知する。
【0023】
尚、生体間接触データ測定装置10によって、発光色が異なるように設定してあり、例えば、男性は緑色に発光し、女性は赤色に発光する。そして、男性と女性が接触した状態が継続されると、両者の生体間接触データ測定装置10は、発光部材50の発光色を中間色である黄色に変化させて両者の接触状態が継続していることを表示する。また、発光部材50を発光させる際は、接触データの受信レベルに応じて発光強度、発光・消灯の点灯パターンを適宜変更させることも可能である。
〔接触様式について〕
接触様式とは、測定対象者同士がどのような形で接触したかを区別するため、接触パターンごとのインピーダンス特性を測定してメモリ及びデータベースに登録する。
【0024】
図3Aに示されるように、接触パターン1は、二人の測定対象者の手12、14が握手した場合で、一対の生体間接触データ測定装置10、10間の距離LAのときのインピーダンスZ1を測定し、生体間接触データ測定装置10のメモリ及びデータベースに時系列的に記憶させる。
【0025】
図3Bに示されるように、接触パターン2は、測定対象者同士の二つの手12、14の指先が接触した場合で、一対の生体間接触データ測定装置10、10間の距離LBのときのインピーダンスZ2を測定し、生体間接触データ測定装置10のメモリ及びデータベースに時系列的に記憶させる。
【0026】
図3Cに示されるように、接触パターン3は、一方の測定対象者の肘16に他方の測定対象者の手14が接触した場合で、一対の生体間接触データ測定装置10、10間の距離LC(=L1+L2)のときのインピーダンスZ3を測定し、生体間接触データ測定装置10のメモリ及びデータベースに時系列的に記憶させる。
【0027】
図3Dに示されるように、接触パターン4は、一方の測定対象者の肩18に他方の測定対象者の手14が接触した場合で、一対の生体間接触データ測定装置10、10間の距離LC(=L1+L2+L3)のときのインピーダンスZ4を測定し、生体間接触データ測定装置10のメモリ及びデータベースに時系列的に記憶させる。
【0028】
このように、各接触パターン毎のインピーダンス特性をメモリやデータベースに予め登録しておくことにより、各測定対象者の接触パターンを容易に判別することが可能になる。尚、接触パターンの種類としては、上記接触パターン1〜4に限らず、他の接触パターンを登録しておくことで、判別可能な接触パターンの種類を20〜30種に増加させることが可能であり、よりきめ細かな接触パターンが判別可能になる。従って、相手から送信された識別データの受信レベル(受信強度)を測定し、受信レベル(測定値)と各インピーダンス特性毎の閾値と比較することで、接触パターンの判別が可能になる。
〔複数の側手対象者の接触パターンについて〕
図4に示されるように、例えば、測定対象としての3人の測定対象者N1〜N3は、両手首に生体間接触データ測定装置10が装着されている。そして、各測定対象者N1〜N3が夫々手を繋ぐゲームで遊ぶ場合、手を繋ぐときに各生体間接触データ測定装置10間で識別データの送受信が行われる。その際、生体間接触データ測定装置10の制御装置は、後述する制御処理を行なって手を繋いだ人の識別データを取得すると共に、自分の識別データを相手に送信する。
【0029】
また、各測定対象者N1〜N3の両手首に装着された各生体間接触データ測定装置10は、右手首に装着されたものと左手首に装着されたものとで伝搬経路の距離Lが異なる。そこで、本発明では、送信される高周波信号の周波数によって到達距離が異なることを利用して周波数変調を行うことで一方の生体間接触データ測定装置10から他方の生体間接触データ測定装置10までの距離を測定する。従って、周波数変調を行いながら送受信を繰り返すことで、左右どちらの手首の生体間接触データ測定装置10に受信された識別データかを判別することできる。
【0030】
例えば、測定対象者N1〜N3が一列になって手を繋ぐと、隣りの人の識別データを相互に送受信すると共に、測定対象者N1とN3との間では中間の測定対象者N2を介して識別データの送受信が行われる。尚、図4では、各測定対象者N1〜N3が互いに手と手とを接触させる場合を一例として示しているが、各人の接触様式としては、これに限らず、前述したように肘や肩、背中、腰、足など身体のどの部位に接触しても良い。
【0031】
また、犬D(測定対象)の首に生体間接触データ測定装置10が装着されることで、測定対象者N3が犬Dの頭部に接触すると、犬Dの識別データが送受信される。そのため、手を繋いだ測定対象者N1〜N3の各生体間接触データ測定装置10と犬Dに装着された生体間接触データ測定装置10との間で識別データの送受信が行われる。
【0032】
各測定対象者N1〜N3に接触方法等のルールを与えることで、各人の相対位置を変化させながら他の測定対象者に接触したり、犬Dに接触したり、様々な接触パターンが行われ、各測定対象者N1〜N3と犬Dの動作に応じた接触データをリアルタイムで測定することが可能になる。
【0033】
このように、各々が生体間接触データ測定装置10を装着することにより、複数の測定対象者N1〜N3及び犬Dとの接触回数や接触様式などの接触データを測定して記録することが可能になる。また、犬以外の動物をペットとして飼っている場合、例えば、猫やハムスターやポニー(小さい馬)などに生体間接触データ測定装置10を装着することで、犬以外のペットを測定対象として、ペットとの接触様式や接触回数などの接触データも測定して記録することができる。
〔メッシュネットワークの形成〕
次に複数の測定対象者N1〜N5が自由に移動しながら接触してメッシュネットワークを形成する場合について説明する。
【0034】
図5Aに示されるように、測定対象者N1〜N5が同じ部屋にいる場合、通常は、互いに接触しない状態でいることが多い。尚、図5A〜図5Eにおいて、各測定対象者N1〜N5を「○」で表わし、各測定対象者N1〜N5の腕を「○」の外周から半径方向に伸びる「−」で表わし、且つ各測定対象者N1〜N5の手を「・」で表わしている。
【0035】
各測定対象者N1〜N5が非接触状態では、各測定対象者N1〜N5に装着された生体間接触データ測定装置10は、識別データの送受信を行っていない。ここで、観察者は、測定対象者N1〜N5に対して一つのルールを与える。例えば、隣りの人と手を繋ぐように指示して、2人ずつのグループを作らせる。
【0036】
図5Bに示されるように、例えば、測定対象者N1とN2が手を繋ぎ、他の測定対象者N4とN5が手を繋ぐ。そして、測定対象者N3は、誰とも手を接触させない。この状態では、手を繋いだ測定対象者N1とN2の各生体間接触データ測定装置10が識別データの送受信を行って受信した識別データを時系列的に記憶する。また、別の測定対象者N4とN5の各生体間接触データ測定装置10が識別データの送受信を行って受信した識別データを時系列的に記憶する。測定対象者N3の生体間接触データ測定装置10は、識別データの送受信を行わない。各生体間接触データ測定装置10は、発光部材50を有するため、他の識別データを受信すると共に、発光部材50を発光して周囲の人に接触していることを表示する。これにより、各測定対象者N1〜N5は、手を繋いだ人と繋いでいない人とを視覚的に認識することができるので、よりゲーム感覚で楽しみながら接触ゲームに参加することができる。
【0037】
ここで、観察者は、例えば、手を繋いだ人が、手を繋がない人を追いかけて捕まえてと指示して、ルールを変化させる。
【0038】
すると、測定対象者N1〜N5は、図5Cに示されるように、測定対象者N3が逃げて、他の測定対象者N1、N2、N4、N5は手を繋いだまま、測定対象者N3を追いかけて捕まえる。このときの各測定対象者N1〜N5の動きと、接触状態の変化は、生体間接触データ測定装置10の発光部材50の発光強度、点灯パターン、発光色とスピーカからの音量によって表わされ、各測定対象者N1〜N5が動きながら眼と耳で反応して接触と非接触とを繰り返す。従って、測定対象者が聴力の弱い人、あるいは視力の弱い人でもゲームに参加することができる。
さらに、観察者は、測定対象者N1〜N5に対して全員が手を繋ぐように指示してルールを変える。すると、各測定対象者N1〜N5は、図5Dに示されるように、接触していない手同士を接触させようとして輪になる。測定対象者N1〜N5に装着された各生体間接触データ測定装置10は、各測定対象者を介して自分が送信した識別データを受信することで、各測定対象者N1〜N5が輪になったことを認識し、そのデータをメモリに時系列的に記録する。
【0039】
また、図5Eに示されるように、10人の測定対象者N1〜N10に生体間接触データ測定装置10を装着して各人が自由にグループを形成することを指示すると、複数のグループに分散して互いに接触と非接触とを繰り返しながら、接触パターンを変化させる。
【0040】
このように複数の測定対象者が動きながら接触と非接触を行うことで各人に装着された生体間接触データ測定装置10は、メッシュネットワークMNを形成する。メッシュネットワークMNでは、各測定対象者の生体間接触データ測定装置10が親ノード(送信側)と子ノード(受信側)に入れ替わりながら識別データを送受信することになる。
【0041】
従って、本発明の生体間接触データ測定方法では、複数の測定対象者N1〜N10に装着された複数の生体間接触データ測定装置10が、複数の測定対象者N1〜N10の接触の形態によって規定される任意のメッシュネットワークMNを形成する。そのため、複数の測定対象者N1〜N10に装着された各生体間接触データ測定装置10は、接触位置に応じてメッシュネットワークMNを構成する親ノード又は子ノードとして機能すると共に、各ノードが複数の測定対象者N1〜N10の動いた位置に応じて各測定対象間の接触関係が変化するのに伴って親ノード又は子ノードに切り替わると共に、変化する各接触データをデータベース(記憶手段)に時系列的に記憶させる。
【0042】
このように、生体間接触データ測定装置10を用いることで可能になる新たなゲーム、例えば、当該生体間接触データ測定装置10を装着した複数の測定対象が手を繋いだり、追いかけて他の測定対象に触れるといったゲームを楽しみながら各接触様式に対応した接触データを取得することが可能になる。
〔生体間接触データ測定装置10の構成〕
図6Aは生体間接触データ測定装置10の構成を示すブロック図である。図6Aに示されるように、生体間接触データ測定装置10は、発光部材(LED)50と、制御装置60と、加速度センサ62と、メモリ70と、スピーカ80と、出力部90と、バッテリ190とを有する。
制御装置60は、制御回路100と、切替タイミング設定部110と、送受信切替部120と、送信部130と、周波数変調部140と、受信部150と、周波数復調部160と、受信レベル測定部162と、距離測定部164と、光調整部170と、音調整部180とを有する。尚、制御装置60は、生体間接触データ測定装置10の測定ユニット40に設ける構成としても良いし、あるいは手首にかかる装置質量を軽減したい場合には、測定ユニット40と別体に設け、例えば、衣服のポケットや腰ベルトなどに保持させる構成としても良い。
【0043】
加速度センサ62は、装着ベルト30に設けられ、測定対象者が手を動かして他の測定対象者に接触する際の加速度データを測定する。例えば、測定対象者が他の測定対象者に接触するための動作をゆっくりと行った場合、あるいは走りながら接触した場合、あるいは手を大きく伸ばして接触した場合など各動作毎の加速度データを予め測定してメモリやデータベースに登録する。これにより、測定された加速度データと登録された加速度データとを対比させて、当該測定者の動きをより正確に推定することが可能になる。よって、加速度センサにより得られる加速度データに基づいて各測定対象が接触したときの角度や動きなどを含む接触様式を正確に測定することが可能になり、測定データの信頼性をより高めることが可能になる。
【0044】
メモリ(記憶手段)70は、識別データの送受信及び、接触様式データの記録、接触した相手の生体間接触データ測定装置10との距離の測定を行うための各制御プログラムと、予め入力された当該測定対象者の識別データと、他の生体間接触データ測定装置10から受信した識別データ及び接触回数、接触日時、信号レベル(受信強度)などが時系列的に記憶されている。
スピーカ80は、他の生体間接触データ測定装置10から受信した識別データを受信した際、任意の音を発して当該測定対象者に報知する。
【0045】
出力部90は、外部制御装置にメモリ70に蓄積された接触データ(他の生体間接触データ測定装置10から受信した識別データ及び、接触様式データ、接触回数、接触日時、信号レベル(受信強度)、加速度データなど)を有線通信又は無線通信により送信する。尚、出力部90は、電極20と接続されることで、人体通信を用いて外部制御装置200に接触データを送信させることも可能である。
【0046】
制御回路100は、メモリ70に格納された各制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)よりなる。
【0047】
切替タイミング設定部(切替タイミング設定手段)110は、生体間通信を行う場合に他の生体間接触データ測定装置10との間の信号伝搬経路が送信と受信とで兼用されるため、任意の時間間隔で送信モードと受信モードとを切り替える。図6Bに示されるように、例えば、測定対象者N1とN2の各送信モード、受信モードの継続時間t1、t2をランダムに変化させる。尚、図6Bにおいて、送受信状態を破線矢印で示している。
【0048】
送受信の切替タイミングの設定方法としては、例えば、送信モードをt1=15msecに設定し、次の受信モードをt2=40msecに設定し、次の送信モードをt1=20msecに設定し、次の受信モードをt2=35msecに設定するといった具合に異なる時間間隔をランダムに設定する。尚、各モードの時間間隔としては、任意の時間間隔を設定することが可能であるので、各時間間隔を予め登録された任意のn段階に増加することにより、接触データの測定結果をよりきめ細かいデータとして蓄積することが可能になる。
【0049】
このように、切替タイミング設定部110では、異なる時間間隔をランダムに切り替えることで一対の生体間接触データ測定装置10の通信モードが同じにならないように経時的に送信モードと受信モードとの時間間隔をずらしている。そのため、一対の生体間接触データ測定装置10では、通信モードが一時的に送信モードまたは受信モードで同じになっても、僅かな待ち時間でどちらか一方が送信モード、他方が受信モードあるいは一方が受信モード、他方が送信モードになって双方向で送受信可能となる。
【0050】
送受信切替部(送受信切替手段)120は、切替タイミング設定部110により設定された時間間隔で送信モードまたは受信モードに切り替える。
【0051】
送信部(送信手段)130は、メモリ70に予め記憶された識別データ(ID)を電極20へ送信する。また、送信部130では、測定対象者間の接触により受信部150が他の識別データを受信した場合、当該自分の識別データと受信部150で受信された他の識別データとを合わせて送信し、接触相手の生体間接触データ測定装置10に当該接触相手の識別データを受信したことを知らせる。
【0052】
周波数変調部140は、周波数によって人体を伝搬する距離が異なることを利用して接触した相手の生体間接触データ測定装置10までの距離を測定するため、送信部130から送信される識別データの周波数を例えば5MHz〜10MHzの範囲で自動的に変調している。尚、人体を伝搬する識別データの伝搬距離は、例えば周波数が5MHzの場合の距離に比べて、周波数が10MHzの場合の距離の方が長くなる。よって、人体を伝搬する周波数と伝搬距離との関係を予め測定することで、送受信された周波数に対応する送信側から受信側までの距離が求まる。尚、周波数の範囲としては、5MHz〜10MHzに限らないのは勿論である。
受信部150は、接触した相手の生体間接触データ測定装置10から送信された識別データを電極20を介して受信する。
【0053】
周波数復調部160は、受信部150で受信した識別データの周波数が変調されているので、受信した識別データを元の周波数に復調する。
【0054】
受信レベル測定部162は、周波数復調部160を介して復調された識別データの受信レベル(受信強度)を測定する。受信レベル測定部162により測定された識別データの受信レベルは、人体のインピーダンス特性によって決まる数値であるので、接触様式を判別するためのパラメータとして利用することができる。
距離測定部(距離測定手段)164は、周波数変調部140によって変調された周波数のうち接触した相手の生体間接触データ測定装置10から返信された自分自身の識別データを受信することで、周波数に基づく距離を測定する。
【0055】
光調整部170は他の識別データを受信したとき、発光部材50を発光させ、発光強度及び発光・消灯の点灯パターンを調整する。また、光調整部170は、例えば、相互の接触により発光開始当初は発光強度を徐々に上げて明るくし、接触を止めることにより発光強度を徐々に減少させて消灯させる。また、接触後、予め設定された所定時間が経過すると、発光色を接触相手の発光色との中間色に変更すると共に、接触を止めることにより発光強度を徐々に減少させて消灯させても良い。
【0056】
音調整部180は、他の識別データが受信されたとき、予め設定された任意の音をスピーカ80より発生させる。また、音調整部180は、接触回数又は識別データの受信レベルに応じて異なる音あるいは音階を異ならせるように設定することも可能である。
【0057】
バッテリ190は、充電式バッテリからなり、非使用時に充電される。
〔外部制御装置200の構成〕
外部制御装置200は、複数の生体間接触データ測定装置10から提供された接触データを分析し、複数の生体間接触データ測定装置10と共に生体間接触データ測定システムを構成する。また、外部制御装置200は、携帯型端末装置を用いた場合には、測定対象者が所持することも可能であり、あるいはパーソナルコンピュータを用いた場合には、10人以上の多数の生体間接触データ測定装置10と通信ネットワークで接続されて大量の接触データを同時に測定することも可能になる。
【0058】
図7に示されるように、外部制御装置200は、制御部210と、入力部220と、第1のデータベース230と、分析部240と、第2のデータベース250と、表示装置260とを有する。
制御部210は、複数の生体間接触データ測定装置10から入力部220に入力された各識別データ及び距離データ、接触様式データなどを接触データを第1のデータベース230に格納する。また、分析部(分析手段)240は、第1のデータベース230に格納された識別データ及び距離データ、接触様式データなどを各接触データの分析処理と行い、分析結果を第2のデータベース250に格納する。すなわち、分析部240は、第1のデータベース230に格納された複数の識別データごとの各接触データを分析し、各接触データに含まれる接触回数、他の識別データの受信レベル及び/または加速度データに応じた当該測定対象と他の測定対象との接触方法を示す接触様式を分析する。
【0059】
制御部210は、第1のデータベース230及び第2のデータベース250に格納された各接触データ及び分析結果を表示装置260に表示する。観察者は、表示装置260に表示された分析結果から各測定対象者への指導方法や治療方法などを検討することができる。
〔接触データ測定の制御処理〕
図8は生体間接触データ測定装置10による接触データ測定の制御処理を説明するためのフローチャートである。生体間接触データ測定装置10の制御装置60は、図8のS11で送信モードと受信モードとの切替タイミングの設定処理を行う(切替タイミング設定手段)。送受信の切替タイミングは、前述した送信継続モード時間t1、受信モード時間t2を任意の時間に設定することにより適宜変更される。例えば、各モードの時間間隔T1=15msec、T2=20msec、・・・Tn=Xmsecなどの複数の時間データが予め登録されており、継続モード時間t1、受信モード時間t2をT1〜Tnの何れかをランダムに選択することで切替タイミングを適宜変更する。
【0060】
次のS12では、予め設定された切替タイミングに達した時点で送信モードから受信モードへ、あるいは受信モードから送信モードへ切り替える(送受信切替手段)。
【0061】
続いて、S13では、現在の通信モードが送信モードか否かをチェックしており、送信モードの場合(YESの場合)はS14に進む。S14では、送信部30から送信される識別データの周波数を5MHz〜10MHzの範囲で自動的に変調する(周波数変調手段)。すなわち、識別データの周波数によって人体(または動物)を伝搬する距離が異なることから、識別データが相手の生体間接触データ測定装置10に到達するまでの距離を変更するため、識別データの周波数を適宜変調する。
【0062】
次のS15では、送信部30から変調された周波数の識別データを送信させる。これにより、例えば、当該測定対象者の手が他の測定対象者の手に接触している場合(図3A〜図3D参照)、人体間を伝搬した識別データが相手の測定対象者の生体間接触データ測定装置10に受信される。
【0063】
S16では、送信モードが終了したか否かをチェックしており、送信モードが終了していない場合(NOの場合)、S15の当該識別データの送信処理が繰り返される。また、S16において、送信モードが終了した場合(YESの場合)、今回の処理を終了してS11の処理に戻る。
【0064】
また、上記S13において、現在の送信モードが受信モードの場合(NOの場合)、S17に進み、識別データを受信部150で受信したか否かをチェックする。S17において、識別データを受信部150で受信した場合(YESの場合)、S18に進み、受信された識別データが当該測定対象者の識別データか否かをチェックする。
S18において、受信された識別データが当該測定対象者の識別データである場合(YESの場合)、S19に進み、当該識別データの周波数から接触した相手の生体間接触データ測定装置10までの距離L(図1参照)を演算し、演算結果をメモリ70に時系列的に記憶させる(距離測定手段)。この後は、今回の処理を終了してS11の処理に戻る。
【0065】
また、上記S18において、受信された識別データが他の測定対象者の識別データである場合(NOの場合)、S20に進み、受信した識別データを読み込んで時系列的な接触データとしてメモリ70に時系列的に記憶させる。また、S20では、識別データと共に、接触回数、距離データ、加速度センサ62により測定された加速度データも接触データとしてメモリ70に時系列的に記憶させる。
【0066】
続いて、S21では、受信した識別データの受信レベル(受信強度)を判定し、判定結果をメモリ70に時系列的に記憶させる(受信レベル測定手段)。後述するように外部制御装置200では、この受信レベルの判定結果に基づいて接触パターン(図3A〜図3D参照)を判定することが可能になる。
【0067】
そして、S22に進み、受信レベルに応じて発光部材50の発光強度及び発光色及び発光・消灯の点灯パターンを調整する。発光部材50の発光強度及び発光色及び発光・消灯の点灯パターンの調整値は、予め受信レベルに応じた調整値がメモリ70に登録されており、メモリ70から受光レベルに対応した発光強度、点灯パターン及び発光色の調整値を抽出して発光部材50に出力する。
【0068】
次のS23では、受信レベルに応じてスピーカ80から発する音の種別及び音量を調整する。音の種別及び音量の調整値は、予め受信レベルに応じた調整値がメモリ70に登録されており、メモリ70から受光レベルに対応した発光強度及び発光色の調整値を抽出して発光部材50に出力する。そして、S24に進み、受信モードが設定された所定時間(時間間隔T1〜Tnの何れか)が経過したか否かをチェックしており、所定時間が経過していないとき(NOの場合)は上記S17に戻り、S17以降の処理を行う。また、S24において、受信モードの所定時間(時間間隔T1〜Tnの何れか)が経過したときは(YESの場合)、今回の処理を終了してS11の処理に戻る。
〔接触データの出力割り込み処理〕
図9は生体間接触データ測定装置10における接触データの出力割り込み処理を説明するためのフローチャートである。図9のS31では、外部制御装置200からメモリ70に蓄積された接触データの要求信号が入力されたか否かをチェックしており、データ要求信号が入力された場合(YESの場合)、S32に進み、メモリ70に蓄積された各接触データ(識別データ、受信レベル、接触回数、距離データ、加速度データなど)を出力部90から外部制御装置200に有線または無線により送信する。尚、出力部90は、人体通信を用いて外部制御装置200に接触データを送信させることも可能である。
【0069】
次のS33では、メモリ70をリセットするか否かをチェックしており、リセットの指示がある場合(YESの場合)、S34に進み、メモリ70に蓄積された各接触データを消去する。また、S33でリセットの指示がない場合(NOの場合)、S34の処理を省略する。
〔外部制御装置200の制御処理〕
図10は外部制御装置200の制御処理を説明するためのフローチャートである。図10に示されるように、外部制御装置200は、S41で各測定対象者に装着された複数の生体間接触データ測定装置10に対して接触データの転送を要求するデータ要求信号を送信する。
【0070】
次のS42で所定の待機時間が経過したか否かをチェックし、所定の待機時間が経過するまでS41によるデータ要求を行う。続いて、S42において、所定の待機時間が経過した場合(YESの場合)、S43に進み、指定した全ての生体間接触データ測定装置10から接触データの入力があったか否かをチェックする。S43において、指定した全ての生体間接触データ測定装置10から接触データが入力されていない場合(NOの場合)、S41に戻り、まだデータを送信していない生体間接触データ測定装置10に対して接触データの転送を要求するデータ要求信号を送信する。
【0071】
また、S43において、全ての生体間接触データ測定装置10から接触データが入力された場合(YESの場合)、S44に進み、各生体間接触データ測定装置10から転送された接触データ(識別データ、受信レベル、接触回数、距離データ、加速度データなど)を第1のデータベース230に格納する。
【0072】
続いて、S45に進み、第1のデータベース230に格納された接触データ(識別データ、受信レベル、接触回数、距離データ、加速度データなど)を分析する(分析手段)。すなわち、S45では、各接触データに含まれる接触回数、他の識別データの受信レベル及び/または加速度データに応じた当該測定対象と他の測定対象との接触方法を示す接触様式を分析し、各測定対象者の接触様式を判別する。
【0073】
この接触データの分析処理では、人体のインピーダンス特性を利用して接触パターン(図3A〜図3D)を判別すると共に、高周波の周波数変調により距離データを測定しているため、各測定対象者の接触様式を正確に判別することが可能になる。さらに、分析結果には加速度データが含まれているので、観察者は各測定対象者の動作速度も分かり、接触回数と共に、各測定対象者の行動特性をより正確に観察できる。
次のS46では、分析結果(接触様式、接触回数、距離データ、加速度データ)を第2のデータベース250に格納する。続いて、S47に進み、分析結果を表示装置260に表示させる。このように、表示装置260に各測定対象者の分析結果が表示されるため、観察者は各測定対象者の行動が分析結果から分かり、特に分析結果(接触様式、接触回数、距離データ、加速度データ)を数値化することで各測定対象者の性格やその変化を正確に把握できる。
【0074】
次のS48では、指定された全ての生体間接触データ測定装置10から転送された接触データを分析したか否かをチェックしており、一部の接触データが分析されていない場合(NOの場合)、上記S44に戻り、S44〜S48の処理を繰り返す。
【0075】
また、S48において、全ての生体間接触データ測定装置10から転送された接触データを分析が完了した場合、S49に進み、分析結果に基づいて各生体間接触データ測定装置10が形成するメッシュネットワークMN(図5E参照)の模式図を作成する。続いて、S50では、メッシュネットワークMNの模式図のデータを第2のデータベース250に格納すると共に、表示装置260にメッシュネットワークMNの模式図を表示させる。
【0076】
観察者は、表示装置260に表示されたメッシュネットワークMNの模式図における各人の動きから複数の測定対象者の全体的な動きが分かり、各測定対象者の個性(例えば、速い動き、遅い動き、チームワーク、リーダシップ、協調性など)の変化を視覚的にチェックすることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
上記実施例では、複数の測定対象者に生体間接触データ測定装置10を装着して各測定対象者の行動に伴う接触様式や接触回数、加速度を測定する場合について説明したが、これに限らず、例えば、相撲、レスリング、柔道、サッカー、ラクビーなどのスポーツを行う場合に各選手の接触様式、接触回数を測定することも可能になる。
【符号の説明】
【0078】
10 生体間接触データ測定装置
12、14 手
16 肘
18 肩
20、20A、20A’、20B、20B’ 電極
30 装着ベルト
40 測定ユニット
42 タッチパネル
50 発光部材
60 制御装置
62 加速度センサ
70 メモリ(記憶手段)
80 スピーカ
90 出力部
100 制御回路
110 切替タイミング設定部(切替タイミング設定手段)
120 送受信切替部(送受信切替手段)
130 送信部(送信手段)
140 周波数変調部(周波数復調手段)
150 受信部(受信手段)
160 周波数復調部
162 受信レベル測定部(受信レベル測定手段)
164 距離測定部(距離測定手段)
170 光調整部
180 音調整部
190 バッテリ
200 外部制御装置
210 制御部
220 入力部
230 第1のデータベース
240 分析部
250 第2のデータベース
260 表示装置
N1〜N5 測定対象者(測定対象)
D 犬(測定対象)
MN メッシュネットワーク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の任意の箇所に装着される装着ベルトと、
当該装着ベルトの内側に形成され、当該測定対象に接触する電極と、
前記装着ベルトに取付けられ予め当該測定対象固有の識別データを時系列的に記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された識別データを前記電極を介して任意の時間間隔毎に送信する送信手段と、
当該測定対象が他の測定対象に接触することにより前記電極を介して前記他の測定対象から送信された識別データを受信する受信手段と、
前記受信手段により受信した前記識別データの受信レベルを測定する受信レベル測定手段と、
前記受信手段により受信した前記識別データ及び前記受信レベルを時系列な接触データとして前記記憶手段に記憶させる制御手段と、
前記記憶手段に記憶させた接触データを外部制御装置に出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする生体間接触データ測定装置。
【請求項2】
通信状態を送信モードまたは受信モードに交互に切り替える送受信切替手段と、
前記送受信切替手段による切替タイミングを経時的に変化させる切替タイミング設定手段と、
前記送信モードのとき送信信号の周波数を変化させる周波数変調手段と、
前記周波数変調手段により周波数を変化させながら送信した識別データが到達した前記受信モードの他の生体間接触データ測定装置までの距離を測定する距離測定手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の生体間接触データ測定装置。
【請求項3】
前記装着ベルトは、加速度センサを備え、
前記記憶手段は、前記加速度センサにより検出された加速度データを記憶し、
前記出力手段は、前記加速度データを前記識別データ及び前記受信レベルと共に前記接触データとして出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の生体間接触データ測定装置。
【請求項4】
前記装着ベルトは、外側の表面に発光部材を備え、
前記制御手段は、前記電極を介して他の前記測定対象から送信された他の前記識別データが入力された際に前記発光部材を発光させることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の生体間接触データ測定装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記他の識別データの受信レベルに応じて前記発光部材の発光強度及び発光色を調整することを特徴とする請求項4に記載の生体間接触データ測定装置。
【請求項6】
前記装着ベルトは、スピーカを備え、
前記制御手段は、前記電極を介して他の前記測定対象から送信された他の前記識別データが入力された際に前記スピーカより音を発することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の生体間接触データ測定装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記他の識別データの受信レベルに応じて異なる音を前記スピーカから発することを特徴とする請求項6に記載の生体間接触データ測定装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記識別データの受信レベルに応じた受信強度を判別し、当該判別結果に応じて前記発光部材の発光強度及び発光・消灯の点灯パターン、又は/及び前記スピーカの音量を調整する調整手段を有することを特徴とする請求項4乃至7の何れかに記載の生体間接触データ測定装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載された複数の生体間接触データ測定装置と、前記複数の生体間接触データ測定装置により測定された接触データを分析する外部制御装置とを有する生体間接触データ測定システムであって、
前記外部制御装置は、
前記複数の生体間接触データ測定装置の出力手段により出力された接触データを格納する第1のデータベースと、
前記第1のデータベースに格納された複数の識別データごとの各接触データを分析し、各接触データに含まれる接触回数、前記他の識別データの受信レベル及び/または加速度データに応じた当該測定対象と前記他の測定対象との接触方法を示す接触様式を分析する分析手段と、
前記分析手段により分析された分析結果を各識別データ別に格納する第2のデータベースと、
前記第2のデータベースから読み出された各分析結果を表示させる表示手段と、
を備えたことを特徴とする生体間接触データ測定システム。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れかに記載された生体間接触データ測定装置を複数の測定対象に装着し、前記複数の測定対象同士が互いに接触と非接触とを繰り返すことで各測定対象の識別データを送受信させて各測定対象の接触データを前記生体間接触データ測定装置の記憶手段に記憶させ、前記記憶手段に記憶された各測定対象の接触データを外部制御装置に出力することを特徴とする生体間接触データ測定方法。
【請求項11】
前記生体間接触データ測定装置を同一の測定対象の複数箇所に装着し、複数の前記生体間接触データ測定装置のそれぞれが前記識別データを送信すると共に、他の測定対象に装着された前記生体間接触データ測定装置から送信された識別データを受信することを特徴とする請求項10に記載の生体間接触データ測定方法。
【請求項12】
前記複数の測定対象に装着された複数の前記生体間接触データ測定装置は、複数の測定対象の接触の形態によって規定される任意のメッシュネットワークを形成し、前記複数の測定対象の接触位置に応じて前記メッシュネットワークを構成する親ノード又は子ノードとして機能すると共に、各ノードが前記複数の測定対象の動いた位置に応じて各測定対象間の接触関係が変化するのに伴って親ノード又は子ノードに切り替わり、且つ、変化する各接触データを記憶手段に時系列的に記憶させることを特徴とする請求項10又は11に記載の生体間接触データ測定方法。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−254112(P2012−254112A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127427(P2011−127427)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】