説明

生体関連物質検出用試験片の製造方法

【課題】 本発明は、生体関連物質検出用試験片の製造において、プローブ溶液の供給精度を簡単に行い、試験片の製造における歩留まり向上を容易に行うことを可能にする方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、プローブを含んだ溶液を、担体への供給前に当該担体とは異なる媒体へ供給し、当該媒体上の溶液供給部分における色調の変化を検出することにより上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体関連物質検出用試験片の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、DNAチップやDNAマイクロアレイと呼ばれる技術が登場したことにより、遺伝子の発現情報の解析が飛躍的に進歩することが期待されている。DNAチップやDNAマイクロアレイは、1cm程度の担体表面上に高密度に任意のオリゴヌクレオチドを固相化したものであり、当該オリゴヌクレオチドと相補的な配列を有する核酸分子の検出を行うものである。DNAチップは、シリコンチップをフォトリソグラフィー技術によって多くの区画に分割し、それぞれの区画上に特定の塩基配列を持った一本鎖DNAを直接合成したものである。DNAマイクロアレイは、従来メンブレンであった担体をスライドグラスにし、メンブレン担体上の各スポットのスポットサイズが約300μm以上であったものを、約200μm以下にまでしたものである。そのため、DNAマイクロアレイを利用すると、一度に数多くの試料を解析することが容易になった。
【0003】
しかしながら、DNAマイクロアレイ等を用いた解析においては、マイクロアレイ作製上の精度がその解析精度を決定する側面があり、既存の方法においては、いまだ多くの問題点を抱えているのが実情である。
【0004】
DNAマイクロアレイの作製方法としては、例えばスポット装置で、オリゴDNAやcDNAからなるプローブを基板上にスポットするものが挙げられる。スポット方法としては、スライドグラス上にピンを直接接触させてプローブを配置する「接触プリンティング法」や、スライドグラス上にインクジェット技術を用いて、プローブをブロットする「非接触プリンティング法」がある。
【0005】
上記したスポット装置を用いた方法においては、スポット装置の精度の限界に起因した問題が存在する。例えば、予め定めておいた一定量のプローブが担体へ供給されず、場合によっては基板に全くプローブが供給されない「吐出抜け現象」が生じることがある。また、所定のスポットへ供給したメインの液滴とは別個のサブ液滴が担体へ供給されてしまう「サテライト現象」が生じることもある。これらの現象は何れも、マイクロアレイを用いた解析の精度に悪影響を及ぼすことから、製品の品質を保証するための品質検査工程の必要性が生じる。
【0006】
このような問題を解決するための方法としては、例えばCCDカメラを利用したドロップモニターで、担体へ供給された液滴の状態等をモニターする方法(特許文献1)や、担体にスポットするプローブに蛍光化合物からなる標識をコンジュゲートして、担体へ供給された液滴(プローブ)の状態等をモニターする方法(特許文献2)などが知られている。
【特許文献1】特表2003-529751号公報
【特許文献2】特開2004-29009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法を使用する場合、マイクロアレイの製造装置とは別に、マイクロアレイの製造における液滴のスポット精度を検査する検査装置が別途必要になる。特許文献2の方法においては、蛍光化合物を利用していることから、蛍光化合物を検出するための蛍光顕微鏡などの装置が別途必要になるのみならず、プローブ自体に蛍光化合物を標識するという手間がかかるため、コスト及び手間の両面において問題が存在している。
【0008】
特許文献2に記載の方法における、より具体的な問題としては以下のことが挙げられる。即ち、プローブには担体へ固相化するための-NHや-SH等の反応性基を付与しておく必要がある。しかしこのことは、担体と結合させるための反応性基に加えて蛍光化合物をプローブ分子に付与する必要が生じることを意味する。これは、蛍光化合物に起因するコスト面のみならず、手間において問題である。多数種類のプローブを担体へ固相化することを特徴とするマイクロアレイシステムにおいては、この問題は顕著である。
【0009】
また、蛍光化合物を利用したシステムにおいては、担体へのプローブの供給を行うステージと、その供給状態の検査を行うステージとをそれぞれ別個の装置で行う必要が生じる。そのため、担体を移動させる必要が生じる。プローブ供給工程後の検査工程において、担体上の特定スポットにおいて液滴が供給されなかったこと等が判明した場合、これを補償するには再度プローブ供給工程に担体を戻すことが必要である。更には担体が戻された当該プローブ供給工程においては、担体上のどのスポットにおいて液滴が供給されなかったのかを特定することが必要になる。従って担体の移動に関する精度の良いシステムと、担体上のスポットの位置を精度よく指定するシステムとが要求される。現実には、このようなシステム構築は、非常に困難であることから、担体上に少なくとも一定数以上の不良スポットが生じたものについては、不良品として扱われる場合が多く、歩留まりの問題が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は斯かる問題点に鑑みてなされたものであり、以下のような構成をとる。
【0011】
(1)担体へのプローブの供給をスポット装置により行う、生体関連物質検出用試験片の製造において、当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液を、担体への供給前に当該担体とは異なる媒体へ供給し、当該媒体上の溶液供給部分における色調の変化を検出する、生体関連物質検出用試験片の製造方法。
【0012】
(2)前記色調の変化の検出が、前記媒体へ供給した溶液によって当該媒体上に形成されるスポットの有無、大きさ、形状、媒体上でのスポットの配置、又は複数スポット間の配列についての検出である、(1)に記載の製造方法。
【0013】
(3)前記担体を一定数の担体毎に前記媒体を挟んで規則的に配置し、前記スポット装置により前記担体及び前記媒体へのプローブ供給を、当該規則的な配置に沿って連続して行う、(1)又は(2)に記載の製造方法。
【0014】
(4)前記担体と前記媒体を対にして同数個並列に配置し、媒体への溶液供給と、当該媒体と対になった担体への溶液供給を連続して行う、(1)又は(2)に記載の製造方法。
【0015】
(5)担体へのプローブの供給をスポット装置により行う、生体関連物質検出用試験片の製造において、担体の上面に、溶液透過性を有する媒体を接触させて配置し、当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液を当該媒体の所定のスポットに供給し、当該媒体上における当該溶液による色調の変化を検出する、生態由来物質検出用試験片の製造方法。
【0016】
(6)担体へのプローブの供給をスポット装置により行う、生体関連物質検出用試験片の製造において、溶液透過性を有する担体の下面に、媒体を接触させて配置し、当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液を当該担体上の所定のスポットに供給し、当該媒体が当該担体と接する面又はその裏面における、当該溶液による色調の変化を検出する、生態由来物質検出用試験片の製造方法。
【0017】
(7)担体へのプローブの供給をスポット装置により行う、生体関連物質検出用試験片の製造において、溶液透過性を有する担体の上面に溶液透過性を有する媒体を接触して配置し、当該担体の下面に媒体を接触させて配置し、当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液を担体上面の媒体上の所定のスポットに供給し、当該担体上面の媒体上、及び/又は当該担体下面の媒体上における、当該溶液による色調の変化を検出する、生態由来物質検出用試験片の製造方法。
【0018】
(8)前記色調の変化の検出が、前記媒体又は担体へ供給した溶液によって当該媒体上に形成されるスポットの有無、大きさ、形状、媒体上でのスポットの配置、又は複数スポット間の配列についての検出である、(5)乃至(7)の何れか一つに記載の製造方法。
【0019】
(9)前記媒体が、前記のプローブを含んだ溶液に反応してその色調を変化させるものである、(1)、又は(5)乃至(7)の何れか一つに記載の製造方法。
【0020】
(10)前記媒体が、水に反応してその色調を変化させるものである、(9)に記載の製造方法。
【0021】
(11)前記媒体が、前記のプローブを含んだ溶液のpHに対して、その色調を変化させるものである、(9)に記載の製造方法。
【0022】
(12)前記のプローブを含んだ溶液に反応してその色調の変化を生じる試薬と、中性樹脂又は塩基性樹脂とを混合した媒体適用組成物に、媒体の基材を含浸するか、又は当該媒体適用組成物を当該基材に塗布又は噴霧して作製した媒体を使用する、(9)に記載の製造方法。
【0023】
(13)前記媒体が感水性媒体である(10)に記載の製造方法。
【0024】
(14)担体へのプローブの供給をスポット装置により行う、生体関連物質検出用試験片の製造において、当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液に反応してその色調が変化する材質からなる担体、又は当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液に反応してその色調が変化する材質を含んでなる担体を使用する、生体関連物質検出用試験片の製造方法。
【0025】
(15)前記材質が、水に反応してその色調を変化させるものである、(14)に記載の製造方法。
【0026】
(16)前記材質が、前記のプローブを含んだ溶液のpHに対して、その色調を変化させるものである、(14)に記載の製造方法。
【0027】
(17)前記のプローブを含んだ溶液に反応して色調の変化を生じる試薬と、中性樹脂又は塩基性樹脂とを混合した組成物に、担体の基材を含浸するか、又は当該溶液を当該基材に塗布又は噴霧して作製した担体を使用する、(14)に記載の製造方法。
【0028】
(18)当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液を前記担体又は前記媒体へ供給した際の当該担体又は当該媒体上の溶液供給部分の色調の変化を検出することにより、プローブ供給工程の精度管理を行う、(1)、(5)乃至(7)、及び(14)の何れか一つに記載の製造方法。
【0029】
(19)当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液を前記担体又は前記媒体へ供給した際の当該担体又は当該媒体上の溶液供給部分の色調の変化を検出することにより、試験片の品質管理を行う、(1)、(5)乃至(7)、及び(14)の何れか一つに記載の製造方法。
【0030】
(20)前記の色調の変化の値を表す色差Δが0.5以上である、(1)、(5)乃至(7)、及び(14)の何れか一つに記載の生体関連物質検出用試験片の製造方法。
【0031】
(21)(1)乃至(20)の何れか一つに記載の方法により製造される、生体関連物質検出用試験片。
【0032】
(22)前記試験片がDNAマイクロアレイ又はDNAチップである、(21)に記載の試験片。
【発明の効果】
【0033】
本発明の生体関連物質検出用試験片の製造方法によれば、担体自体をその色調変化を呈する材質にするか、又は担体とは別個の媒体を担体と一体化させるか若しくは担体と同一ステージ内に配置し、当該媒体又は担体の色調変化を検出しているので、担体へのプローブ溶液供給の精度管理を容易に行うことができる。
【0034】
更に本発明の生体関連物質検出用試験片の製造方法によれば、プローブ溶液供給の精度管理が容易になったことに起因して、試験片の製造における歩留まりを向上させることが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(定義)
本願において「生体関連物質」とは、生体(動物、植物、微生物などの細胞のみならず、これらに寄生しなければ増殖できないウイルス等をも含む)に存在・由来する種々の物質であって、天然のもの及び人工的(例えば遺伝子工学的)に合成されたものの何れもが含まれる。例えばDNA、cDNA、RNAなどの核酸類;種々のホルモン類、腫瘍マーカー、酵素、抗体、抗原などのタンパク質類;及びPNAなどの複合体などを挙げることができる。
また本願において「色調」とは、担体や媒体が示す色の濃淡、強弱であり、光学的性質の差異として認識されるものである。その差異の認識には、装置を使用するもの及び肉眼で行えるものの両方が含まれる。
【0036】
本発明の製造方法は、担体へのプローブの供給をスポット装置により行う、生体関連物質検出用試験片の製造において、当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液を、担体への供給前に当該担体とは異なる(別個の)媒体へ供給し、当該媒体上の溶液供給部分における色調の変化を検出することを特徴としている。
【0037】
本発明の製造方法において使用する「スポット装置」としては、当該技術分野で知られる、数pl〜数μlレベルの範囲で液体を供給できるものであり、生体関連物質検出用試験片の製造において使用される通常のものを挙げることができる。
【0038】
本発明の製造方法において使用する「担体」としては、スライドガラスやシリコンウェハー等の液体が透過しないもの、メンブレンフィルターや多孔質ガラス、多孔質シリコン、多孔質金属酸化膜等の液体が透過するものを使用することができる。媒体を担体の下に配置する場合には、担体は液体が透過する必要がある。
【0039】
本発明の製造方法においては、媒体上の溶液供給部分における色調の変化を検出している。検出方法としては、以下のものを検出する方法を挙げることができる:媒体へ供給した溶液によって当該媒体上に形成される
・スポットの有無、
・スポットの大きさ、
・スポットの形状、
・スポットの媒体上での配置、及び
・複数スポット間の媒体上での配列。
【0040】
プローブを含んだ溶液を媒体に供給すると、スポット装置が正常に動作した場合には、当該媒体表面には予め設定しておいた量からなる当該溶液のスポットが形成される。媒体へ供給する溶液の量、組成、媒体の表面の物理化学的性質等に依存して、スポットの大きさや形状が変化し、更にその部分の光学的性質が変化する。そのため、この変化を光学的なスペクトルの測定や肉眼により検出すれば、スポットが正確に形成されたか、即ち溶液の供給が正確に行われたかどうかを確認することができる。溶液の供給が正確に行われれば、プローブ分子の担体への固相化は、化学反応論的に進行するので、適切且つ精度よく溶液供給を行えば、一定比率でプローブの固相化は成功するものと考えられる。従って、担体へのプローブ固相化の成功率は、溶液供給の精度に大きく依存するものと考えられる。
【0041】
通常、試験片の製造においては、プローブを固相化する担体へのプローブのスポッティング操作は、非常に狭い範囲内で精度よく行われている。そして担体とは異なる別個の媒体へのスポッティング操作も、同一の溶液供給システムを使用する限り、同様に精度よく行われる。そのため、スポット自体の有無や大きさの確認のみならず、媒体上でのスポットの配置の正確性を確認するか、複数のスポットに溶液供給を行う場合には当該複数のスポット間の配列の正確性を確認することにより、媒体への溶液供給が精度よく行われているかを確認することが可能である。そして媒体へのスポッティングの正確性を確認することにより、媒体へのスポッティングと相前後して行われる担体へのスポッティングの正確性を推定することができる。そしてその正確性の推定は、担体上のスポットを無駄にすることなく行うことが可能である。
【0042】
このようにして、媒体へのスポッティングの精度を容易に検出することを通して、担体へのスポッティング精度の推定が行える。そのため溶液供給において異常が生じた場合に、その後の試験片製造工程において問題が生じている可能性のある担体を、どのようにして取り扱うかを試験片製造工程中に決定することが可能である。取り扱い方法としては、媒体において溶液供給に異常が見られた場合に、当該媒体と、当該媒体の直前の媒体との間に配置される担体の一部又は全てを不良品として処理することが可能である。また、当該担体の特定スポットを不良スポットとして以後取り扱うことも可能である。
【0043】
スポット装置の溶液供給に異常が発生し、これを媒体へのスポッティング操作において発見した場合には、異常発生の前後に行われた、担体へのスポッティング操作においても、同様の問題が生じていた可能性が一定率で存在する。本発明の製造方法においては、この場合の処置を、予め定めておいた基準に従ってシステマチックに行うことが可能である。
【0044】
本発明の製造方法においては、前記担体を一定数の担体毎に前記媒体を挟んで規則的に配置し、前記スポット装置による前記担体及び前記媒体へのプローブ供給を、当該規則的な配置に沿って連続して行うことができる。1個の担体毎に1個の媒体を配置することも可能であり、あるいは2、3、・・・n個(nは自然数)の担体毎に1個の媒体を配置することもできる。そして、異常を見つけた媒体の直前にスポッティングを行った担体において、同様の異常が生じている確率は、統計的に求めることができる。
【0045】
上記の配置では一定数の担体ごとに媒体を挟んでいるが、不特定数の担体ごとに媒体を挟むことももちろん可能である。その場合には、同一ステージに配置される担体の総数あたりの媒体総数の平均値から大きくずれない範囲で、当該不特定数を設定することが好ましい。
【0046】
本発明の製造方法においては、前記担体と前記媒体を対にして同数個並列に配置し、媒体への溶液供給と、当該媒体と対になった担体への溶液供給を連続して行うこともできる。これは上記のnが1である場合の特殊な形態を表すものである。即ちこの態様においては、担体へのスポットと、次の担体へのスポットの間に、必ず媒体へのスポットが行われ、尚且つ各媒体が担体と対となって、担体の上又は下側に配置されている。そのため、媒体へのスポッティングにおいて異常が見られた場合に、同じく異常が生じているはずの担体がどれなのかがすぐに判明する。
【0047】
担体と媒体に関してこのような何れかの配置を取らせることにより、溶液供給について問題が生じている可能性のある担体を容易に同定することが可能である。また、媒体間の担体の数をどのような値に設定するかは、製造する製品の所望の歩留まりと、スポット装置のスポッティング操作における精度との兼ね合いにより設定することができる。
【0048】
本発明の製造方法は、担体へのプローブの供給をスポット装置により行う、生体関連物質検出用試験片の製造において、担体の上面に、溶液透過性を有する媒体を接触させて配置し、当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液を当該媒体の所定のスポットに供給し、当該媒体上における当該溶液による色調の変化を検出することを特徴とする。
【0049】
この態様においては、溶液透過性の媒体を担体の上面(溶液を受ける面)に接触させて配置している。プローブを含んだ十分量の溶液が媒体に供給されて当該媒体中を浸透した後、担体に溶液が到達し、そこでプローブの固相化が行われる。従って、溶液供給の精度は、担体の上面に接触して配置された媒体の溶液供給部分の色調の変化を検出することにより行うことができる。
【0050】
本発明の製造方法は、担体へのプローブの供給をスポット装置により行う、生体関連物質検出用試験片の製造において、溶液透過性を有する担体の下面に、媒体を接触させて配置し、当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液を当該担体上の所定のスポットに供給し、当該媒体が当該担体と接する面又はその裏面における、当該溶液による色調の変化を検出することを特徴とする。
【0051】
本発明のこの態様においては、担体に溶液透過性のものを利用する。溶液透過性の担体としては、多孔質構造を有し、上面と下面の間(厚み)において、連通する構造を有している担体や、メンブレンフィルター等を挙げることができる。多孔質構造を有する担体としては、ガラス製、シリコン製、及び金属酸化物製のものが挙げられ、特に陽極酸化により作製された酸化アルミニウム膜、例えばWhatman社の商品名Anodiscを挙げることができる。
【0052】
この態様においては、担体に溶液透過性のものを利用しているため、十分量の溶液を担体に供給すると、担体内を透過した溶液が、担体下面に接触して配置された媒体へと達する。そしてこの媒体表面の溶液供給部分の色調の変化を検出することにより、担体への溶液供給が精度よく行われたか否かを判定することが可能である。ここで使用する媒体としては、担体を透過してきた溶液が接触すると、担体との非接触面にまで溶液が浸透して、色調の変化を示す性質のものが好ましい。
【0053】
本発明の製造方法は、担体へのプローブの供給をスポット装置により行う、生体関連物質検出用試験片の製造において、溶液透過性を有する担体の上面に溶液透過性を有する媒体を接触して配置し、当該担体の下面に媒体を接触させて配置し、当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液を担体上面の媒体上の所定のスポットに供給し、当該担体上面の媒体上、及び/又は当該担体下面の媒体上における、当該溶液による色調の変化を検出することを特徴とする。
【0054】
この態様においては、担体の両面に媒体を接触して配置している。従って、担体への溶液供給の精度判定は、担体の上面の媒体の色調の変化の検出により行い、一方、溶液浸透性の担体内部に十分量の溶液が供給されたかどうかについては、担体の下面で接触している媒体の色調の変化を検出することにより行うこといが可能である。
【0055】
担体の上面及び/又は下面に媒体を接触させる上記の3つの態様(本願発明の(5)〜(7))においては、担体と媒体とを接触させずに平面状に配置する上記の別の態様(本願発明の(1)〜(4))と同様にして、媒体又は担体へ供給した溶液によって当該媒体上に形成されるスポットの有無、大きさ、形状、媒体上でのスポットの配置、又は複数スポット間の配列についての検出を行うことにより、色調の変化として検出することができる。これらの検出を行うことにより、担体への溶液供給の精度を確認することができる。
【0056】
本発明の上記の何れの態様においても、媒体の色調の変化は、プローブを含んだ溶液に反応するか、水に反応するか、又はプローブを含んだ溶液のpHに対して色調を変化させるものとすることができる。
【0057】
媒体の色調の変化を上記の反応等により生じさせるため、本発明の製造方法においては、前記のプローブを含んだ溶液に反応してその色調の変化を生じる試薬と、中性樹脂又は塩基性樹脂とを混合した媒体適用組成物に、媒体の基材を含浸するか、又は当該媒体適用組成物を当該基材に塗布又は噴霧して作製した媒体を使用することができる
【0058】
本発明のこの態様において使用する、プローブを含んだ溶液に反応してその色調の変化を生じる試薬としては、遷移金属塩の塩、種々の色素を挙げることができる。これらの物質は、必要な場合、樹脂成分と混合して、又は溶媒に溶解して媒体適用組成物(インキ組成物)とし、当該組成物に媒体を含浸するか、又は当該組成物を媒体に塗布若しくは噴霧することができる。ここで使用することができる色素の例としては、pH指示薬として用いられている、チモールブルー、メチルオレンジ、ブロムクレゾールグリーン、メチルレッド、リトマス、パラニトロフェノール、ブロムチモールブルー、フェノールフタレイン、トロペオリンOなどがある。これらのpH指示薬は、プローブを含んだ溶液のpHに合わせて、当業者が適宜選択することが可能である。その他の色素の例としては、フルオロセイン、フルオロセインナトリウム、ローダミンB、インドフェノールブルー等が挙げられ、水分による吸光度の変化を色調の変化として検出することができる。遷移金属塩の例としては、水に反応して無色から青色に色調変化を示す銅の塩、例えば硫酸銅無水物、塩化銅無水物等が挙げられる。他には、塩化コバルト無水物や、硫酸鉄カリウム(鉄ミョウバン)が挙げられる。塩化コバルト無水物は、無色からピンクへ変化し、硫酸鉄カリウム(鉄ミョウバン)は、一水塩は無色、四水塩は褐黄色、12水塩は、淡紫色に変化する。その他の例としては、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、バナジウム、クロム等の遷移金属の塩を挙げることができる。
【0059】
中性樹脂の例としては、親水性溶剤に溶解する置換基を有しない非イオン系の樹脂を挙げることができる。より具体的には、ポリビニルピロリドン樹脂、コポリビドン樹脂(ビニルピロリドン+酢酸ビニル)、コポリマー樹脂、ヒドロキシプロピルセルロース樹脂、エチルセルロース樹脂等を挙げることができる。これらの中性樹脂を単一で使用することも、又は二種類以上を混合して使用することも可能である。これらの中では種々の試薬の溶解性に優れ、吸湿性であるという点において、コポリビドン樹脂が特に好ましい。
【0060】
塩基性樹脂の例としては、親水性溶剤に溶解する塩基性の置換基を有する樹脂を挙げることができる。より具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル・コポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル・コポリマー、ポリビニルアセタール・ジエチルアミノアセテート等を挙げることができる。これらの塩基性樹脂は、単一で使用することも、又は二種類以上を混合して使用することも可能である。
【0061】
上記の中性樹脂又は塩基性樹脂は、上記のプローブを含んだ溶液に反応してその色調の変化を生じる試薬と、溶媒中で混合する。混合用溶媒としては、親水性の溶剤のみ、又は親水性溶剤とその他の、親水性溶媒と混合可能な溶剤からなる混合溶媒とすることができる。親水性溶剤の例としては、エタノール、2-プロパノール等のアルコール類、2-メトキシエタノール等のセルソルブ系溶媒、ジクロロメタン等を挙げることができる。
【0062】
媒体の基材の例としては、色調変化を生じる試薬を溶解した溶媒に溶解することなく、試薬を定着することができれば、特に限定されることはない。また、色調変化を生じる試薬を樹脂成分と混合して媒体適用組成物とした場合には、上記の溶媒に溶解することなく、試薬及び適宜、中性又は塩基性の樹脂を定着できる性質のものであれば特に限定されることはない。好適な媒体の基材の例としては、厚さが数十μmから数百μmの種々のフィルタや紙が挙げられる。また、担体として用いることができるメンブレンフィルターや多孔質ガラス、多孔質シリコン、多孔質金属酸化膜等も、媒体を構成する基材として用いることができる。
【0063】
本発明の製造方法においては、前記媒体を感水性媒体とすることができる。感水性媒体を利用することにより、水に反応してその色調を変化させて、これを検出することでスポット装置の精度の確認を行うことが可能である。
【0064】
上記の態様においては、プローブを固相化するための担体とは別個の媒体を使用して、スポット装置の溶液供給の精度を判定したが、これに代わって、担体自体を、プローブが含まれる溶液に反応してその色調が変化する材質からなるものとすることにより、上記の態様と同等の効果を得ることが可能になる。
【0065】
即ち本発明の製造方法においては、担体へのプローブの供給をスポット装置により行う、生体関連物質検出用試験片の製造において、当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液に反応してその色調が変化する材質からなる担体、又は当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液に反応してその色調が変化する材質を含んでなる担体を使用することができる。
【0066】
この態様においては、当該材質を、水に反応してその色調が変化するものとしたり、又は当該材質を、前記のプローブを含んだ溶液のpHに対してその色調が変化するものとすることも可能である。
【0067】
上記の態様を実施するためには、本発明の製造方法において、前記のプローブを含んだ溶液に反応して色調の変化を生じる試薬と、中性樹脂又は塩基性樹脂とを溶解した溶液に、担体の基材を含浸するか、又は当該溶液を当該基材に塗布して作製した担体を使用することができる。ここで使用する試薬、中性樹脂、及び塩基性樹脂の種類については、本質的に上記の「媒体」に適用したものと同様のものを利用することができる。
【0068】
上記した何れの態様においても、当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液を前記担体又は前記媒体へ供給した際の当該担体又は当該媒体上の溶液供給部分の色調の変化を検出することにより、プローブ供給工程の精度管理を行うことが可能である。即ち本発明の製造方法においては、試験片の製造途中においてスポット装置によるプローブ供給工程の精度管理を行いつつ、問題が生じた場合には、予め定めておいた基準に従い、問題を生じていると判定した担体の取り扱いを行い、当該取り扱いの後、製造工程を継続することが可能になっている。
【0069】
上記した何れの態様においても、当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液を前記担体又は前記媒体へ供給した際の当該担体又は当該媒体上の溶液供給部分の色調の変化を検出することにより、試験片の品質管理を行うことが可能である。即ち本発明の製造方法においては、試験片の製造工程中にスポット装置の溶液供給の精度確認の工程を行うが、試験片製造のための全ての工程が終了した後に、プローブ供給工程の精度の判定結果を利用して、試験片の品質管理を行うことも可能である。この場合には、判定結果に基づいて問題のある試験片を不良品として処理するか、問題の生じているスポットを特定し、その情報を試験片に付随させる製品情報とし、製品の利用時に当該スポットを利用しないようにすることも可能である。
【0070】
本発明の何れの態様においても、色調の変化の値を表す色差Δが0.5以上とすることができる。ここで色差の値としては、NBS単位を使うことができる。この色差Δが0.5以上あれば、画像処理により変色、着色などの形態として検出することができる。Δが1.5以上であれば、肉眼により色調の変化を検出することができ、その場合には画像処理装置や、その他の光学的スペクトル検出系を使用する必要はない。
【0071】
本発明においては、上記の何れかの製造方法により製造される生体関連物質検出用試験片が提供される。斯かる方法により製造された試験片は、プローブの供給精度の判定が容易なシステムにより製造されたものであり、尚且つ、プローブ供給精度判定のために蛍光化合物などをプローブに結合することはないので、製造コスト面での利点がある。また、製造工程中にスポット装置の溶液供給精度の判定を行ったり、製造後に判定を行うことが容易であるので、製造される試験片が不良品を含む確率を、効率的に低くすることが可能である。
【0072】
本発明においては、上記の試験片をDNAマイクロアレイ又はDNAチップとすることが可能である。
【実施例1】
【0073】
(媒体を利用した溶液供給精度の確認1)
担体として、表面を10%ポリ-L-リジン溶液で前処理した76mm×26mm×1mmのスライドガラスを用いた。プローブとしては、塩基配列が既知のアミノ標識オリゴDNAを用いた。媒体としては、担体と略同一の形状・大きさを有する感水紙(Syngenta社製、water-sensitive paper)を用いた。担体と媒体との配置の仕方は二種類とした。一方においては、4つの担体毎に1つの媒体を配置し、且つ図1に示されるように配列の両端に媒体を配置した。もう一方においては、図2に示されるように、同一数の担体及び媒体を、並列して配置した。スポット装置を用いて、プローブを含む溶液100plのスポッティングを行った。図1に示される配置の場合には、一列の配列の端から順次、スポッティングを行った。図2に示される配置の場合には、媒体へのスポッティング後、当該媒体の下に配置された担体へのスポッティングを行い、次いでその隣の媒体-担体の対へと移動して順次、スポッティングを行った。
媒体として使用した感水紙は、表面にプローブ溶液がスポッティングされると、黄色から青色に変化するものである。この色調の変化を、CCDカメラを有する顕微鏡(オリンパス社製BX-51)により確認し、各スポットの大きさ、形状、媒体上の配置を計測した。この計測結果を画像解析にかけて、予め定めておいた基準の範囲内であるかどうかを確認した。
図1及び図2の媒体の何れにおいても、プローブ溶液の供給の精度を非常に簡単に確認することができた。
上記のスポッティングにより製造されたプローブ固相化済担体(生体関連物質検出用試験片)と、プローブに相補的な配列を有し、且つ蛍光標識が付されたオリゴDNAとを使用して、ハイブリダイゼーションを行わせた。ハイブリダイゼーション反応後、各スポットからの蛍光シグナルを測定することにより、スポット自体の有無、各スポットの大きさ、担体上での配置を確認し、これを上記の媒体の色調の変化の検出結果と比較した。両者は何れの点においても略一致していた(一致率は、96.0〜98.0%であった)。
【実施例2】
【0074】
(媒体を利用した溶液供給精度の確認2)
実施例1と同様の媒体及び担体を使用して、担体の上面及び下面に媒体を接触したものを調製した。これを10組用意して、スポット装置により100plのプローブ溶液のスポッティングを行い、媒体についてはその色調の変化を検出し、単体については、ハイブリダイゼーションによりスポットの検出を行った。媒体の色調の変化の検出結果と担体のスポットの検出結果とは100%の一致率であった。
【実施例3】
【0075】
(担体の作製)
溶剤としてエタノール100gに、中性樹脂としてBASF社製コポリビドン(商品名:VA64)5g、及び色調の変化を示す試薬としてウラニン7gを加えて溶解した。更に同じく中性樹脂として信越化学社製の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース基材(400メッシュ通過品;商品名:LH−31)、又はメタルカラー藻類研究所製多孔性ナイロン基材(商品名:SNP-613)20gを加えて、高粘度用ホモミキサー羽(特殊機化社製ホモミキサーを使用)を用いて、12,000rpmで5分間、分散処理を行った。これをろ過にかけて回収し、更に真空オーブンを用いて乾燥を行い、ウラニン含有基材を調製した。このウラニン含有基材20gに対して、80gのドライオフセット用メジウムを加えて、3本ロールを用いて30分間、練合し、ドライオフセット用インキ組成物を調製した。このインキ組成物をナイロンメンブレンにドライオフセット機で印刷し、生体関連物質検出用試験片の製造に供する担体を製造した。
【実施例4】
【0076】
(試験片の製造及びスポッティング精度の確認)
実施例3で作製した担体を、スポット装置の設置台上に配置し、実施例1と同様のプローブ溶液を使って、200plのスポッティングを行った。スポッティングにより、溶液供給部分の色調は橙赤色から黄色に変化し、その色差Δ値は約40であった。供給された溶液が乾燥した後も各スポットは黄色を呈しており、色調の変化を肉眼で検出することができた。スポッティングが正常に精度よく行われた良品と、吐出不良品との分別を容易に行うことができた。
【実施例5】
【0077】
(良品・不良品の確認)
上記実施例4で良品及び不良品として認定されたそれぞれの試験片を使い、ハイブリダイゼーション実験を行った。実施例1と同様にして、ハイブリダイゼーション実験を行った。実施例4で良品と判定された全ての試験片においては、吐出抜けがなく、すべて所定のレイアウトどおりに試験片が製造されていることを確認することができた。一方、実施例4で不良品と判定された試験片については、色調の変化による溶液供給精度の判定結果と一致して、ハイブリダイズが見られず、吐出抜けが確認された。
【実施例6】
【0078】
(担体の作製)
硫酸銅水溶液に、酸化アルミ基板表面を一晩含浸し、これを減圧乾燥機を使用して200℃で一晩減圧乾燥し、担体を作製した。
【実施例7】
【0079】
(試験片の製造及びスポッティング精度の確認)
実施例6で作製した担体を、スポット装置の設置台上に配置し、実施例1と同様のプローブ溶液を使って、200plのスポッティングを行った。スポッティングにより、溶液供給部分の色調は白色から青色に変化した。この色調の変化を、画像処理解析にかけて、溶液供給(吐出)が、所定の範囲内であるかを判定した。この試験片を利用して、スポッティングが正常に精度よく行われた良品と、吐出不良品との分別を容易に行うことができた。
【実施例8】
【0080】
上記実施例7で良品及び不良品として認定されたそれぞれの試験片を使い、ハイブリダイゼーション実験を行った。実施例1と同様にして、ハイブリダイゼーション実験を行った。実施例7で良品と判定された全ての試験片においては、吐出抜けがなく、すべて所定のレイアウトどおりに試験片が製造されていることを確認することができた。一方、実施例4で不良品と判定された試験片については、色調の変化による溶液供給精度の判定結果と一致して、ハイブリダイズが見られず、吐出抜けが確認されたり、あるいはサテライト等に起因する異常なスポット(吐出不良)が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の製造方法によれば、スポット装置からの担体への溶液供給の精度をより簡単に判定することが可能であり、歩留まりの問題を効果的に制御できる、生体関連物質検出用試験片を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】この図は、一定数の担体毎に媒体と1つ配置した例を示すものである。
【図2】この図は、媒体と担体とを対にして、上下に配置した例を示すものである。
【符号の説明】
【0083】
1・・・媒体、2・・・担体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体へのプローブの供給をスポット装置により行う、生体関連物質検出用試験片の製造において、当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液を、担体への供給前に当該担体とは異なる媒体へ供給し、当該媒体上の溶液供給部分における色調の変化を検出する、生体関連物質検出用試験片の製造方法。
【請求項2】
前記色調の変化の検出が、前記媒体へ供給した溶液によって当該媒体上に形成されるスポットの有無、大きさ、形状、媒体上でのスポットの配置、又は複数スポット間の配列についての検出である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記担体を一定数の担体毎に前記媒体を挟んで規則的に配置し、前記スポット装置により前記担体及び前記媒体へのプローブ供給を、当該規則的な配置に沿って連続して行う、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記担体と前記媒体を対にして同数個並列に配置し、媒体への溶液供給と、当該媒体と対になった担体への溶液供給を連続して行う、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
担体へのプローブの供給をスポット装置により行う、生体関連物質検出用試験片の製造において、担体の上面に、溶液透過性を有する媒体を接触させて配置し、当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液を当該媒体の所定のスポットに供給し、当該媒体上における当該溶液による色調の変化を検出する、生態由来物質検出用試験片の製造方法。
【請求項6】
担体へのプローブの供給をスポット装置により行う、生体関連物質検出用試験片の製造において、溶液透過性を有する担体の下面に、媒体を接触させて配置し、当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液を当該担体上の所定のスポットに供給し、当該媒体が当該担体と接する面又はその裏面における、当該溶液による色調の変化を検出する、生態由来物質検出用試験片の製造方法。
【請求項7】
担体へのプローブの供給をスポット装置により行う、生体関連物質検出用試験片の製造において、溶液透過性を有する担体の上面に溶液透過性を有する媒体を接触して配置し、当該担体の下面に媒体を接触させて配置し、当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液を担体上面の媒体上の所定のスポットに供給し、当該担体上面の媒体上、及び/又は当該担体下面の媒体上における、当該溶液による色調の変化を検出する、生態由来物質検出用試験片の製造方法。
【請求項8】
前記色調の変化の検出が、前記媒体又は担体へ供給した溶液によって当該媒体上に形成されるスポットの有無、大きさ、形状、媒体上でのスポットの配置、又は複数スポット間の配列についての検出である、請求項5乃至7の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記媒体が、前記のプローブを含んだ溶液に反応してその色調を変化させるものである、請求項1、又は5乃至7の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記媒体が、水に反応してその色調を変化させるものである、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記媒体が、前記のプローブを含んだ溶液のpHに対して、その色調を変化させるものである、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記のプローブを含んだ溶液に反応してその色調の変化を生じる試薬と、中性樹脂又は塩基性樹脂とを混合した媒体適用組成物に、媒体の基材を含浸するか、又は当該媒体適用組成物を当該基材に塗布又は噴霧して作製した媒体を使用する、請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
前記媒体が感水性媒体である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項14】
担体へのプローブの供給をスポット装置により行う、生体関連物質検出用試験片の製造において、当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液に反応してその色調が変化する材質からなる担体、又は当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液に反応してその色調が変化する材質を含んでなる担体を使用する、生体関連物質検出用試験片の製造方法。
【請求項15】
前記材質が、水に反応してその色調を変化させるものである、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記材質が、前記のプローブを含んだ溶液のpHに対して、その色調を変化させるものである、請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
前記のプローブを含んだ溶液に反応して色調の変化を生じる試薬と、中性樹脂又は塩基性樹脂とを溶解した溶液に、担体の基材を含浸するか、又は当該溶液を当該基材に塗布して作製した担体を使用する、請求項14に記載の製造方法。
【請求項18】
当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液を前記担体又は前記媒体へ供給した際の当該担体又は当該媒体上の溶液供給部分の色調の変化を検出することにより、プローブ供給工程の精度管理を行う、請求項1、5乃至7、及び14の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
当該生体関連物質に対するプローブを含んだ溶液を前記担体又は前記媒体へ供給した際の当該担体又は当該媒体上の溶液供給部分の色調の変化を検出することにより、試験片の品質管理を行う、請求項1、5乃至7、及び14の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記の色調の変化の値を表す色差Δが0.5以上である、請求項1、5乃至7、及び14の何れか一項に記載の生体関連物質検出用試験片の製造方法。
【請求項21】
請求項1乃至20の何れか一項に記載の方法により製造される、生体関連物質検出用試験片。
【請求項22】
前記試験片がDNAマイクロアレイ又はDNAチップである、請求項20に記載の試験片。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−162504(P2006−162504A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356512(P2004−356512)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】