説明

生分解性に優れた熱成形材料及びその製造方法、並びに熱成形体

【課題】 本発明は、生分解性及び熱成形性に優れると共に、弾性率の改善された熱成形体を成形可能な熱成形材料を提供すると共に、該熱成形材料の製造方法及び該熱成形体を提供することをその課題とする。
【解決手段】 本発明の熱成形材料は、天然物質由来の含水酸基物質を基材とし、脂肪族ポリエステル鎖をグラフト鎖とする生分解性熱可塑性重合体(成分A)と、天然物質の粉末(成分B)との混合物からなり、該成分Bの割合が、該成分A100重量部当たり5〜900重量部であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性に優れた熱成形材料及びその製造方法と、生分解性に優れる熱成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然物質由来の含水酸基物質を基材とし、脂肪族ポリエステル鎖をグラフト鎖とする生分解性熱可塑性重合体は知られている(特許文献1、特許文献2)。
このような熱可塑性重合体は、生分解性及び熱成形性に優れたものであるが、本発明者の研究によれば、その熱成形体は弾性率の点で不満足なもので、例えば、農業用フィルム、ゴミ袋、食品ラップ用フィルムとしては未だ満足できるものではなかった。
【0003】
【特許文献1】特開平9−12588号公報
【特許文献2】特開平11−71401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、生分解性及び熱成形性に優れると共に、弾性率の改善された熱成形体を与える熱成形材料を提供すると共に、該熱成形材料の製造方法及び熱成形体を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば以下に示す発明が提供される。
〔1〕 天然物質由来の含水酸基物質を基材とし、脂肪族ポリエステル鎖をグラフト鎖とする生分解性熱可塑性重合体(成分A)と、天然物質の粉末(成分B)との混合物からなり、該成分Bの割合が、該成分A100重量部当たり5〜900重量部であることを特徴とする熱成形材料。
〔2〕 天然物質の粉末(成分B)が、セルロース粉末、キチン粉末、木粉から選択される天然高分子物質の粉末であることを特徴とする前記〔1〕に記載の熱成形材料。
〔3〕前記成分Bの平均粒子寸法が、12メッシュ寸法以下であることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の熱成形材料。
〔4〕 天然物質由来の含水酸基物質を、溶解状態において、脂肪族ポリエステル鎖形成成分とグラフト重合反応させて生分解性熱可塑性重合体(成分A)を形成するグラフト重合反応工程と、天然物質の粉末(成分B)を、該成分Aの熱溶融物と混合する混合工程からなり、該成分Bの割合が、該成分A100重量部当たり5〜900重量部であることを特徴とする熱成形材料の製造方法。
〔5〕 前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の熱成形材料を熱成形してなしたるフィルム成形体。
【発明の効果】
【0006】
本発明の熱成形材料によれば、熱成形により、フィルム、シート、ブロック等の成形品を容易に得ることができる。そして、この場合の成形品は、生分解性に著しく優れたものである。さらに、本発明の熱成形材料より得られる熱成形体は、高弾性率を有するという特徴を有する。
本発明のフィルム成形体は、生分解性に優れると共に、弾力性に富み、農業用フィルム、ゴミ袋、食品ラップ用フィルム等として好適のものである。また、本発明のフィルム成形体は、生分解性に優れていることから、その使用後は埋め立て処理することも可能なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の熱成形材料及びその製造方法について詳細に説明する。
本発明の熱成形材料は、生分解性熱可塑性重合体(成分A)と、天然物質の粉末(成分B)との混合物からなるものであり、その生分解性熱可塑性重合体(成分A)は、天然物質由来の含水酸基物質(以下、単に天然物質ともいう。)を基材とし、該基材に脂肪族ポリエステル鎖がグラフト重合したグラフト重合体である。
【0008】
本発明においては、生分解性熱可塑性重合体(グラフト重合体:成分A)を得るための基材として、天然物質由来の含水酸基物質(天然物質)を用いる。このような基材としては、リグニン系物質(クラフトリグニン、アルコリシスリグニン、加水分解リグニン、リグノスルホン酸塩等)、糖系物質(単糖類、二糖類、オリゴ糖、多糖(セルロース系物質、デンプン系物質、キチン系物質、キトサン系物質等の多糖物質))等が挙げられる。
【0009】
本発明においては、天然物質基材に対するグラフト重合体鎖材料として、脂肪族ポリエステル形成材料が用いられる。このようなものとしては、環状ラクトン、オキシカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの混合物等が挙げられる。
【0010】
環状ラクトンとしては、メチルε−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0011】
オキシカルボン酸としては、乳酸やα- オキシ酪酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、マンデル酸、トロパ酸、グルコ糖酸等及びその誘導体 等が挙げられる。
【0012】
脂肪族系のジカルボン酸とジオールとの混合物を構成するジカルボン酸成分、ジオール成分としては、次のものが挙げられる。
ジカルボン酸成分としては、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、セバシン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタール酸、2,2−ジメチルグルタール酸、アゼライン酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、などを用いることができる。
ジオール成分としてはエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0013】
本発明で用いられる生分解性熱可塑性重合体(成分A)は、天然物質由来の含水酸基物質(天然物質基材)に対し、グラフト重合体鎖材料(脂肪族ポリエステル鎖材料)をグラフト重合反応させることにより得ることができる。この場合、天然物質基材は、溶解状態に保持してグラフト重合体鎖材料と反応させる。天然物質基材を溶解状態に保持するには、天然物質基材をグラフト重合体鎖材料に可溶化させる方法や、天然物質基材を溶解する有機溶媒、例えば、N−メチルピロリドン、アセトン、ジオキサン等に溶解させる方法等がある。
なお、天然物質基材を多価アルコールの存在下で、環状ラクトンなどのグラフト重合体鎖材料と反応させることもできる。
【0014】
前記グラフト重合反応は、室温〜180℃、好ましくは30〜170℃の重合温度で実施される。反応時間は1〜24時間、好ましくは2〜20時間である。天然物質基材を有機溶媒に溶解させる場合、有機溶媒の使用量は、天然物質基材100重量部当り、100〜1000重量部、好ましくは200〜500重量部である。
【0015】
前記グラフト重合反応により、下記一般式(I)で表されるグラフト重合体が得られる。
【化1】

【0016】
前記一般式(I)において、Zは糖類やリグニンなどの天然物質由来の含水酸基物質残基(天然物質残基)を示し、Rはアルキレン基を示し、nは天然物質中に含まれる水酸基の総数を示し、pは含水酸基物質中のエステル化される水酸基数であって、1以上で、nより小さい数を示し、qは1以上、好ましくは3以上の数を示す。qの上限値は100程度である。なお、n−pはエステル化されず残存する含水酸基物質残基中の水酸基数であって、0〜(n−1)の範囲の数を示す。
【0017】
天然物質基材中に含まれる水酸基の置換率p/nは1/100〜100/100、好ましくは5/100〜100/100である。また、pとqの積は、天然物質中の水酸基に付加したポリエステル鎖形成成分(ラクトン、オキシカルボン酸又はジカルボン酸)の数を示す。
【0018】
なお、前記Zが糖類に由来するものである場合、糖類としては、例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、ガラクトース等の単糖類、シュークロース、セロビオース、マルトース等の二糖類、セロトリオース等のオリゴ糖、セルロース粉末、デンプン、グリコーゲン、カロニン、ラミナラン、デキストラン、イヌリン、レバン、マンナン、キシラン、ペクチン酸、アルギン酸、キチン粉末、グアラン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、メスキットガム、ガッチガム、アラビアゴム、植物粘質物、細菌多糖類等の多糖類が挙げられる。また、これらの混合物である糖蜜を利用しても良い。糖蜜は、サトウキビ、テンサイ等から得られるものであり、精製糖蜜、氷糖蜜であっても、また、製糖後に得られる廃糖蜜であってもよいが、経済性の面からは廃糖蜜が有利である。
【0019】
本発明において、生分解性熱可塑性重合体(成分A)を製造する場合、その天然物質中に含まれる水酸基1モル当たり、グラフト鎖形成成分(ラクトン、オキシカルボン酸又はジカルボン酸)を1〜100モル、好ましくは4〜70モルの割合にするのがよい。また、本発明において用いるポリエステル形成用触媒としては、慣用のもの例えば、(例えば錫、鉛、マンガン、アルミ等の金属アルコラート、金属カルボキシレート、アルキル金属、キレート金属等の触媒、より具体的には、例えばジラウリン酸ジ−n−ブチル錫、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫、チタニウムテトライソプロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド)等が用いられる。
【0020】
なお、前記したグラフト重合体に関しては、特許文献1及び2に詳述されている。
【0021】
本発明の熱成形材料において、成分Bとしては、各種天然物質の粉末が用いられる。好ましい成分Bの例としては、例えば、セルロース粉末、キチン粉末、木粉などの天然高分子物質の粉末や、例えば、シリカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の天然無機物の粉末が挙げられる。これらの固体粉は2種以上混合して使用することもできる。
但し、使用後に埋め立て処理した場合、土壌中で全体が生分解するので、環境に対する負担が小さいという観点から、セルロース粉末、キチン粉末、木粉などの天然高分子物質が好ましい。
【0022】
本発明においては、成分Aと成分Bとは混合される。この場合、成分Aの加熱溶融液に、成分Bを混入する方法を好ましく用いることができる。この場合、成分Bの混合割合は、成分A100重量部当り、5〜900重量部、好ましくは10〜800重量部、より好ましくは15〜80重量部である。成分Aと成分Bとを混合する場合、成分Bの割合が少なすぎると、得られる熱成形体の弾性率が満足するものとならない。一方、成分Bの割合が多すぎると、均一な混合物が得られなくなり、更に得られる熱成形材料の熱性形成が悪くなるので好ましくない。
【0023】
成分Aに成分Bを混合させる場合、好ましくは50〜250℃、より好ましくは60〜180℃に成分Aを加熱して溶融させる。50℃未満の加熱では、成分Aが溶融しない虞がある。一方、250℃超に加熱すると、熱分解が起こる可能性がある。
【0024】
成分Bの粒子寸法は、得られる成形体の弾性率を向上させるという観点から、好ましくは12メッシュ寸法(L=1.397mm)以下、より好ましくは60メッシュ寸法(L=0.246mm)以下、更に好ましくは250メッシュ寸法(L=0.061mm)以下のものが好ましい。その下限の粒子寸法は特に制限されないが、入手容易性の点から、通常、400メッシュ寸法(L=0.033mm)程度である。なお、前記メッシュ寸法は、タイラメッシュ寸法である。
【0025】
成分Bとして木粉を用いる場合、種類を問わず使用することができる。例えば、松、杉、桧などの針葉樹、ラワン、カポール、栗、ポプラなどの広葉樹から得られるものを使用することができる。
【0026】
成分Bとしてセルロース粉末を用いる場合、容易に入手できる高純度セルロース粉末を用いることもできれば、木材等の夾雑物を含むセルロース粉末を用いることもできる。具体的には、コットンリント、コットンリンターや精製パルプ等が挙げられる。また、ホヤセルロース粉末、バクテリアセルロース粉末或いは再生セルロース粉末でもよい。
【0027】
成分Bとしてキチン粉末を用いる場合、カニやエビの甲殻から得られるものが容易に入手できるので好ましいが、これらに限られず、昆虫、イカ、貝類、キノコ等から得られるものであってもよい。
【0028】
本発明の熱成形材料は、天然物由来の含水酸基物質をグラフト重合体基材とし、脂肪族ポリエステル鎖をグラフト重合体鎖とするグラフト重合体(成分A)と、天然物質の粉末(成分B)とからなり、その成分Aは生分解性に優れたものであることから、全体として優れた生分解性を有することを特徴とする。そして、本発明の熱成形材料は、熱成形性のグラフト重合体(成分A)をマトリックス相(連続相)中に粉末状の成分Bを分散させたものであるため、熱成形性を有し、熱成形性においても優れたものになっている。更に、本発明の熱成形材料は、グラフト重合体中に天然物質粉末を分散させた構造となっているため、高弾性率を有し、機械的強度において優れたものとなっている。例えば、成分Aのみからなる熱成形体と、成分Aと成分Bとからなる熱成形体とを比較した場合、成分Aと成分Bとからなる本発明の熱成形体は、その引張弾性率(JIS K7113)は2倍程度になり、その圧縮強度(JISK7113 )は2.3倍以上となり、非常に優れたものとなっている。
【0029】
本発明の熱成形材料は熱成形性に優れたものであるが、この場合の熱成形法には、熱プレス、押出成形、射出成形、発泡成形等が包含される。また、本発明の熱成形材料から得られる熱成形体には、フィルム、シート、板体、ペレット、各種の容器各種のブロック体等が包含される。
【0030】
本発明の熱成形材料の熱成形温度は、50〜250℃、好ましくは60〜180℃である。

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の熱成形材料は、熱成形可能な生分解性材料であることから農業用フィルム、食品ラップ用フィルムとして用いることができ、其の使用後には埋立処理をすることができる。特に光透過性に優れるものは廃棄が容易な農業用フィルム、ゴミ袋、食品ラップ用フィルムとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0032】
次に、本発明を実施例により詳述する。なお、以外において示す部及び%はいずれも重量基準である。
【0033】
実施例1〜3
木材糖化工程の残渣として得られた加水分解リグニン(HL1)をベンゼンとの共沸により脱水した。次に、該脱水した加水分解リグニン(HL1)1重量部と、該加水分解リグニン(HL1)中の水酸基量の100倍モル(79.9重量部)のカプロラクトンモノマーとを、触媒量のジラウリン酸ジブチル錫の存在下に、170℃で5時間グラフト重合を行い、HLポリカプロラクトン誘導体(HL1−PCL:成分A)を得た。
【0034】
次に、60℃に加熱溶融させたHL1−PCL80重量部に、天然物質の粉末(成分B)としてセルロース粉末a(250メッシュ寸法(繊維長L=0.061mm)以下)20重量部を用いて熱成形材料を調製した(実施例1)。天然物質の粉末(成分B)としてキチン粉末a(60メッシュ寸法(L=0.246mm)以下)20重量部を用いて熱成形材料を調製し(実施例2)、天然物質の粉末(成分B)として木粉a(60メッシュ寸法(L=0.246mm)以下)20重量部を用いて熱成形材料を調製した(実施例3)。実施例1〜3で得られた熱成形材料をホットプレス(加熱温度:120℃)でシート(厚み:1.0mm、長さ:100mm、幅:100mm)に成形した。
なお、前記メッシュ寸法は、タイラメッシュ寸法である(以下、実施例において同様)。
【0035】
比較例1
実施例1と同様にして得られたHLポリカプロラクトン誘導体(HL1−PCL)を、ホットプレス(加熱温度:120℃)でシート(厚み:1.0mm、長さ:100mm、幅:100mm)に成形した。
【0036】
実施例1〜3、比較例1で得られたシートについて、JIS K7113(プラスチックの引張試験方法)に準拠して引張試験を行い、引張強度(σ)、引張弾性率(E)を測定した。また、窒素気流中で、熱重量分析(昇温速度10℃/min)を行い熱分解温度(低温側Td1及び高温側Td2)を求めた。表1に結果を示す。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例4
実施例1とは異なる木材糖化工程の残渣として得られた加水分解リグニン(HL2)をベンゼンとの共沸により脱水した。次に、該脱水した加水分解リグニン(HL2)1重量部と、該加水分解リグニン(HL2)中の水酸基量の100倍モル(79.9重量部)のカプロラクトンモノマーとを、触媒量のジラウリン酸ジブチル錫の存在下に、170℃で5時間重合を行い、HLポリカプロラクトン誘導体(HL2−PCL:成分A)を得た。
【0039】
次に、60℃に加熱溶融させたHL2−PCL80重量部に、天然物質の粉末(成分B)としてセルロース粉末a(250メッシュ寸法(繊維長L=0.061mm)以下)20重量部を混合して熱成形材料を調製した。得られた熱可塑性重合体をホットプレス(加熱温度:120℃)でシート(厚み:1.0mm、長さ:100mm、幅:100mm)に成形した。
【0040】
比較例2
実施例4と同様にして得られたHLポリカプロラクトン誘導体(HL2−PCL)を、ホットプレス(加熱温度:120℃)でシート(厚み:1.0mm、長さ:100mm、幅:100mm)に成形した。
【0041】
実施例4、比較例2で得られたシートについて、JISK7113(プラスチックの引張試験方法)に準拠して引張試験を行い、引張強度(σ)、引張弾性率(E)を測定した。また、窒素気流中で、熱重量分析(昇温速度10℃/min)を行い熱分解温度(低温側Td1及び高温側Td2)を求めた。表2に結果を示す。
【0042】
【表2】

【0043】
実施例5
廃糖蜜(ML)をベンゼンとの共沸により脱水した。次に、該脱水した廃糖蜜(ML)1重量部と、該廃糖蜜(ML)中の水酸基量の100倍モル(131重量部)のカプロラクトンモノマーとを、触媒量のジラウリン酸ジブチル錫の存在下に、170℃で5時間重合を行い、MLポリカプロラクトン誘導体(ML−PCL:成分A)を得た。
【0044】
次に、60℃に加熱溶融させたML−PCL80重量部に、混合材(成分B)として木粉(60メッシュ寸法(L=0.246mm)以下)20重量部を混合して熱成形材料を調製した。得られた熱成形材料をホットプレス(加熱温度:120℃)でシート(厚み:1.0mm、長さ:100mm、幅:100mm)に成形した。
【0045】
比較例3
実施例5と同様にして得られたMLポリカプロラクトン誘導体(ML−PCL)を、ホットプレス(加熱温度:120℃)でシート(厚み:1.0mm、長さ:100mm、幅:100mm)に成形した。
【0046】
実施例5、比較例3で得られたシートについて、JIS K7113(プラスチックの引張試験方法)に準拠して引張試験を行い、引張強度(μm)、引張弾性率(E)を測定した。また、窒素気流中で、熱重量分析(昇温速度10℃/min)を行い熱分解温度(低温側Td1及び高温側Td2)を求めた。表3に結果を示す。
【0047】
【表3】

【0048】
実施例6〜16
スクロース(S)をベンゼンとの共沸により脱水した。次に、該脱水したスクロース(S)1重量部と、該スクロース(S)中の水酸基量の100倍モル(267重量部)のカプロラクトンモノマーを触媒量のジラウリン酸ジブチル錫の存在下に、170℃で5時間重合を行い、S−ポリカプロラクトン誘導体(S−PCL:成分A)を得た。
【0049】
次に、60℃に加熱溶融させたS−PCLに、表4に示す天然物質の粉末(成分B)を、表4に示す配合で混合して熱成形材料を調製した。得られた熱成形材料をホットプレス(加熱温度:120℃)でシート(厚み:1.0 mm、長さ:100mm、幅:100mm)に成形した。なお、表4に示す天然物質の粉末(セルロースa、キチンa、木粉a)は、実施例1〜3と同じものである。また、水酸化アルミニウムは270メッシュ寸法(L=0.053mm)以下である。
【0050】
比較例4
実施例6〜14と同様にして得られたS−PCLを、ホットプレス(加熱温度:120℃)でシート(厚み:1.0mm、長さ:100 mm、幅:100mm)に成形した。
【0051】
実施例6〜16、比較例4で得られたシートについて、JIS K7113(プラスチックの引張試験方法)に準拠して引張試験を行い、引張強度(σ)、引張弾性率(E)を測定した。また、窒素気流中で、熱重量分析(昇温速度10℃/min)を行い熱分解温度(低温側Td1及び高温側Td2)を求めた。表4に結果を示す。
【0052】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然物質由来の含水酸基物質を基材とし、脂肪族ポリエステル鎖をグラフト鎖とする生分解性熱可塑性重合体(成分A)と、天然物質の粉末(成分B)との混合物からなり、該成分Bの割合が、成分A100重量部当たり5〜900重量部であることを特徴とする熱成形材料。
【請求項2】
天然物質の粉末(成分B)が、セルロース粉末、キチン粉末、木粉から選択される天然高分子物質の粉末であることを特徴とする請求項1に記載の熱成形材料。
【請求項3】
前記成分Bの平均粒子寸法が、12メッシュ寸法以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱成形材料。
【請求項4】
天然物質由来の含水酸基物質を、溶解状態において、脂肪族ポリエステル鎖形成成分とグラフト重合反応させて生分解性熱可塑性重合体(成分A)を形成するグラフト重合反応工程と、天然物質の粉末(成分B)を、該成分Aの熱溶融物と混合する混合工程からなり、該成分Bの割合が、該成分A100重量部当たり5〜900重量部であることを特徴とする熱成形材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱成形材料を熱成形してなしたるフィルム成形体。

【公開番号】特開2009−263414(P2009−263414A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111361(P2008−111361)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(390013815)学校法人金井学園 (20)
【Fターム(参考)】