説明

生分解性レジンコンクリートから成る仮設資材を用いた既設廃棄管の撤去工法及び装置

【課題】既設廃棄管が有害物質を拡散させたりすることなく、安全な作業が行えると共に、工事終了後、設置前の自然の地盤状態に復元することができる既設廃棄管の撤去工法を提供する。
【解決手段】既設廃棄管を破砕することなく撤去するか、あるいは既設廃棄管内にあらかじめエアモルタルを充填し、該廃棄管を周辺土砂と共に掘削し、掘進機に装備されたフード管内にて該廃棄管を破砕し、破砕廃棄管、充填モルタルおよび掘削土砂を周辺地盤と隔離した状態で排出しながら撤去すると共に、撤去空間内に仮設資材としての掘削外径とほぼ同径の生分解性レジンを使用した生分解性レジンコンクリート管9を敷設し、敷設した仮設資材である生分解性レジンコンクリート管9の内部に、生分解を促す砂質充填材11を圧送充填することにより、生分解が進行してレジンコンクリート管の固結強度が劣化しても、一定の支持力を保持しながら閉塞状態を持続できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋設石綿管などの地下に埋設された不要な既設配管や老朽化した既設配管である既設廃棄管を撤去処理する工法に係わる。特に、生分解性レジンコンクリートから成る仮設資材を用いた仮設工法により、既設廃棄管を開削することなく、無破壊で回収撤去する工法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下に埋設された既設廃棄管を撤去処理するに際して、既設廃棄管が石綿管である場合には、石綿管は、健康障害をもたらす有害物質(アスベスト)であるため撤去作業に当たっては、石綿障害予防規則(以下、石綿則という)に順じて適正に処理する必要がある。そして、石綿管が埋設された時期はかなり古く、配管敷設後の土地利用の変化に伴い、整備された配管の上部の土地に家屋やビニールハウスなどの農業施設や工場などの事業施設が建設されているケースも多くなっている。
【0003】
そのため、石綿管などの既設廃棄管では、開削工法では撤去不能な場合が多く、従来の工法では、既設廃棄管を埋設土中に於いて破壊し回収する方法が行われており、石綿則に準じた適正な処理ができていないのが現状である。よって、有害物質(アスベストを含む石綿管)は埋設土中及び掘削残土内に拡散し作業員も曝露しやすい環境となり非常に有害で有り、更に掘削残土の産業廃棄物処理量(石綿則に準ずる)も増加してしまう。
【0004】
また、既設石綿管を撤去後においても従来の工法(一般的な改築推進工法)の場合には施工に用いる仮設部材としての推進管が残置となり、施工場所が民地内の場合等は、土中に不要な仮設資材(管路)が残置されることになる。
【0005】
このような仮設資材が残置されるのを防ぐために、生分解性プラスチックで構成した推進管を用いる工法が提案されている(特許文献1を参照)。しかしながら、この工法では推進管自体を生分解性プラスチックで構成しているために、推進管として機能を発揮するための十分な強度を有するためには、その肉厚も厚くする必要があった。また、生分解性プラスチックの地中での生分解速度は、埋設される場所の地質により大きく左右されるため、肉厚の厚い推進管の生分解は、埋設場所によっては完全ではないこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−286076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、既設廃棄管を撤去する工法において、既設廃棄管が石綿管であっても有害物質(アスベスト)を拡散させたりすることなく、安全な作業が行えると共に、工事終了後、構築設置した仮設資材が残留し地盤への影響を及ぼすことなく、設置前の自然の地盤状態に復元することができる既設廃棄管の撤去工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の既設廃棄管の撤去工法においては、生分解性レジンを使用した生分解性レジンコンクリートから成る仮設資材と生分解を促す砂質充填材とを密着配置して敷設することで構築される掘削土留用仮設構造を用いる。
【0009】
さらに、既設廃棄管の撤去工法は、既設廃棄管を破砕することなく原型を保持しながら撤去するか、あるいは既設廃棄管内にあらかじめエアモルタルを充填し、該廃棄管を周辺土砂と共に掘削し、掘進機に装備されたフード管内にて該廃棄管を破砕し、破砕廃棄管、充填モルタルおよび掘削土砂を周辺地盤と隔離した状態で排出しながら撤去すると共に、撤去空間内に仮設資材としての掘削外径とほぼ同径の生分解性レジンを使用した生分解性レジンコンクリート管を、押込み方式にて敷設し、敷設した仮設資材である生分解性レジンコンクリート管の内部に、生分解を促す砂質充填材を圧送充填することにより、砂質充填材が適度に圧密され、生分解が進行してレジンコンクリート管の固結強度が劣化しても、一定の支持力を保持しながら閉塞状態を持続することのできる掘削土留用仮設構造を構築することを特徴とする。
【0010】
既設廃棄管を破砕することなく撤去する工法の好ましい具体的な態様としては、
発進立坑と到達立坑を既設廃棄管の撤去区間各端部に構築し、
最外周側より順にアウター管、オーガー管、インナー管によって構成され、オーガー管の先端にカッターヘッドと外壁にスクリューコンベヤーとが装備され、アウター管およびインナー管は回転せず、オーガー管のみが回転する構造の3重管を有する推進式掘削装置の推進架台を前記発進立坑内に設置し、
インナー管内に既設廃棄管を周囲の埋設土砂と共に取り込み、オーガー管を回転させて、カッターヘッドにて前面埋設土砂を掘削しながら、オーガー管外壁に装備のスクリューコンベヤーにて掘削した埋設土砂を発進立坑まで管内輸送する3重管掘削方法にて推進し、
所定長掘進により到達立坑内にカッターヘッドが到着後、前記3重管の後端部に推進力伝達アダプターを接続設置することで、該3重管とインナー管内に内包された既設廃棄管が共に到達立抗内に押出され、既設廃棄管を破砕することなく、原型を保持しながら到達立坑内に送り出し、
続いて、推進力伝達アダプターの反対側に、推進力伝達管を内管とし、生分解性レジンコンクリート管を外管とした2重管を接続することで、該推進力伝達管に前記推進架台より押出し推進力が伝達され、既設廃棄管を内包した前記3重管を到達立坑内に押出し、アウター管、オーガー管、インナー管、既設廃棄管と順次繰り返して取り外し撤去していくことで、該2重管と置き換わるように順次押込み敷設し、
所定長進行後、内管の推進力伝達管を撤去して敷設終了した生分解性レジンコンクリート管の内部に、生分解性を促す砂質充填材を圧縮空気駆動によるサンドプレーサーにて圧送充填し、閉塞状態を持続することのできる掘削土留用仮設構造を構築することを特徴とする既設廃棄管の撤去工法である。
【0011】
また、既設廃棄管を破砕して撤去する工法の好ましい具体的な態様としては、
発進立坑と到達立坑を既設廃棄管の撤去区間各端部に構築し、
既設廃棄管の管内破砕を行うためのフード管付き特殊面盤を装備した泥濃式掘進機の架台を前記発進立坑内に設置し、
掘進機後尾に推進力伝達アダプターを設置し、さらに推進力伝達アダプターの後続には推進力伝達管を内管とし、生分解性レジンコンクリート管を外管とした2重管を接続し、掘進機に推進力を伝達しながら、前面埋設土砂の掘削および既設廃棄管の破砕をしながら推進し、
所定長掘進により到達立坑内に掘進機が到着後、掘進機本体を分割し、推進力伝達アダプターと共に回収し、
発進立抗内にて、管内設備および推進力伝達管を引き抜きながら分割回収し、発進架台も併せて撤去して、生分解性レジンコンクリート管を敷設し、
該生分解性レジンコンクリート管の内部に、生分解性を促す砂質充填材を圧縮空気駆動によるサンドプレーサーにて圧送充填し、閉塞状態を持続することのできる掘削土留用仮設構造を構築することを特徴とする既設廃棄管の撤去工法である。
【0012】
さらに、上記の生分解性を促す砂質充填材としては生分解性レジンに相性が良いバクテリアが活着した粒竹炭と、砂質土との混合物であることが好ましく、既設廃棄管が石綿管である場合に、本発明の工法が好ましく適用できる。また、上記の掘削土留用仮設構造は前記した発進立坑と到達立坑の構築に際しても用いることができる。この場合の仮設構造の構築は、これら両立坑の掘削後、立坑の径とほぼ同径の生分解性レジンコンクリート管を敷設し、又は立坑の周壁に沿って生分解性レジンコンクリート製のパネルを敷設し、該コンクリート管又はパネルの外壁と切羽との間に生分解を促す砂質充填材を充填するか、両立坑の埋め戻しに際して、この砂質充填材を用いて埋め戻すことで行うことができる。
【0013】
また本発明では、上記の既設廃棄管を破砕することなく撤去する工法に使用される装置であって、最外周側より順にアウター管、オーガー管、インナー管によって構成され、オーガー管の先端部には前面埋設土砂を掘削するためのカッターヘッドと管外壁には掘削埋設土砂を排出輸送するためのスクリューコンベヤーとが装備され、アウター管およびインナー管は回転せず、オーガー管のみが回転する構造の3重管を有し、3重管の後端部に続接設置可能な推進力伝達アダプターと、該アダプターの後端部に設置可能な推進力伝達管とを有することを特徴とする推進式掘削装置も提案される。
【0014】
尚、生分解性レジンとはバクテリアなどの微生物により水と炭酸ガスとに分解される特性を持つレジンであり、生分解性レジンコンクリートとは砂利や砂などの骨材を結合材としての生分解性レジンで固化したレジンコンクリートである。この生分解性レジンコンクリートは、生分解性レジンコンクリート管やパネルなどに固化成形され、仮設資材として使用される。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、既設廃棄管を破砕することなく原型を保持しながら撤去するか、あるいは既設廃棄管内にあらかじめエアモルタルを充填し、該廃棄管を周辺土砂共に掘削し、掘進機に装備されたフード管内にて該廃棄管を破砕し、破砕廃棄管、充填モルタルおよび掘削土砂を周辺地盤と隔離した状態で排出しながら撤去する工法のため、既設廃棄管が石綿管であっても、有害物質(アスベスト)を拡散させたりすることなく、安全な作業が行え、石綿則に準じた適正な処理ができる。
【0016】
さらに、掘削土留用仮設構造として、生分解性レジンコンクリートにて成形された管体などの仮設資材に生分解を促す砂質充填材を充填し、両者を密着配置して敷設しているため、敷設する場所の地質に左右されることなく、確実に生分解が進行する。そして、砂質充填材が適度に圧密した状態で充填されているため、この仮設構造は、土留用構造体として一定期間機能を保持した後は、結合材である生分解性レジンが分解劣化し、骨材のみが残り自然界と同等の地盤状態に復元し、地盤の中には障害物としての存在がなくなる。その上、地盤の支持力は維持されるため、上部地盤や地上の構築物に悪影響を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】既設廃棄管の非破砕の撤去工法における工程前半の作業フローである。
【図2】図1に続く、工程後半の作業フローである。
【図3】既設石綿菅を封入した推進式掘削装置の3重管の断面説明図である。
【図4】既設廃棄管を破砕する撤去工法における工程前半の作業フローである。
【図5】図4に続く、工程後半の作業フローである。
【図6】既設廃棄管を破砕する撤去工法に用いる掘削機本体等の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明の詳細を作業フローと共に説明する。図1と図2は、既設石綿菅を破砕することなく撤去する工程の作業フローであり、番号順に工程が進行する。図1は、構築した発進立坑21の中に推進機20を装備した発進架台1の設置から、到達立坑22に到達した部材の撤去までの1〜6工程を示し、図2は、到達立坑22に到達した既設石綿菅6の撤去から、発進および到達立坑の埋め戻しまでの7〜11工程を示す。
【0019】
図1に示す設置工程では、発進架台1の形状寸法に適した規模で発進立坑21と、撤去する石綿管6の撤去長さに応じた規模で到達立坑22とを、既設石綿管6の両端に構築し、発進立坑21の中に推進機20を装備した発進架台1を設置する。
【0020】
発進工程では、発進坑口リングを設置し、推進機20に最外周側より順にアウター管3、オーガー管2、インナー管5によって構成される3重管を取り付け、オーガー管2の先端に装着したカッターヘッド4を既設石綿管6の芯に合わせる。そして、到達立坑22内での既設石綿管6の設置状況を事前調査して、掘進角度を決定し、推進機20を稼動させて発進させる。上記3重管では、オーガー管2の外壁にはスクリューコンベヤーが装備され、先端にカッターヘッド4が装着され、アウター管3およびインナー管5は回転せず、オーガー管2のみが回転する構造となっている。
【0021】
掘削工程では、既設石綿管6に対して平行にインナー管5を圧入させ3重管を設置して、推進機20によりオーガー管2を回転させながら掘削する。掘削時には、オーガー管2に内蔵した注入口より、気泡材、粘土、ベントナイト材等からなる加泥材を、既設石綿管6とインナー管5との間に注入し、カッターヘッド4にまで送り、掘削することで切羽を保持しながら、掘削した土砂を加泥材と混合させ流動性を増加させ、オーガー管3の外壁に装備したスクリューにより発進立抗21に排土することができる。また、アウター管3は掘削時には回転せず、固定しているので施工精度が安定する。
【0022】
カッターヘッド到達工程から到達部材撤去工程では、到達立坑22にカッターヘッド4が到達したら、推進力伝達アダプター7を3重管と推進機20との間に接続設置してさらに押し出し、到達立坑22に押し出されたカッターヘッド4等の部材を、既設石綿管6より撤去する。
【0023】
図2に示す既設石綿管撤去工程では、推進力伝達アダプター7の後続設備として、推進力伝達管8と生分解性レジンコンクリート管9からなる2重管構造とし、推進機20により押し出す推進力荷重は内管である推進力伝達管8に伝え、前記3重管を含む全管を押し出す。この場合、外管としての生分解性レジンコンクリート管9には推進力荷重は伝達されず押し出しが継続する。到達立坑22に押し出された3重管及び内包された既設石綿管6の外周囲にある3重管を解体撤去し(図2では回収部材13として示す)、既設石綿管6の接続部が確認できたら、既設石綿管6の接続部より取り外して回収しビニールシートなどの廃棄石綿管包装シート14にて全体を包み込み搬出する。包装した既設石綿管6の廃棄処理方法については石綿則に準じて適正処理する。
【0024】
生分解性レジンコンクリート管の敷設工程では、3重管および既設石綿管6を回収しながら、仮設資材である生分解性レジンコンクリート管9は内部に推進力伝達管8を装着し、押し込み方式で挿入敷設される。推進力伝達アダプター7が到達立坑22に到達し、敷設が完了したら、推進力伝達アダプター7及び推進力伝達管8を回収撤去し、掘進機架台も撤去する。撤去後、図2の生分解性レジンコンクリート管内砂充填工程に示すように、注入パイプ10から砂質充填材11を生分解性レジンコンクリート管9の内部に、サンドプレーサーを使用し圧縮空気にて圧送充填する。
【0025】
充填される砂質充填材11は、仮設資材である生分解性レジンコンクリート管9の分解劣化を促進させるため、透気、透水性がある砂質土と生分解性レジンと相性の良いバクテリアを活着した粒竹炭との混合物である。粒竹炭は、木炭と比較して内部に有する孔の数が多く、バクテリアを活着するには好ましく、竹を焼成し粒状として砂質土と混合させられる。このような生分解性を促す砂質充填材11を内部に充填された生分解性レジンコンクリート管9は、生分解性レジンの分解が促進され、早期にコンクリート中の骨材分だけが残置し土砂状に帰化して、自然界と同等の地盤状態に復元するものである。
【0026】
最終の工程として、発進立坑21および到達立坑22の埋め戻しを行う。この時、立坑埋め戻し土砂12は、立坑掘削時の発生土砂が透気、透水性の良好な状態であれば、その土砂を再利用して埋め戻しを行うが、そうでない場合は、透気、透水性の良好な良質土にて埋め戻しを行う。
【0027】
図4と図5は、既設石綿管を破砕して撤去する工程の作業フローであり、前記の工程と同様に番号順に工程が進行する。図4は、構築した発進立坑21と到達立坑22とを利用した既設石綿管6の測量から、掘進機16及び推力伝達管8の撤去までの1〜6工程を示し、図5は、生分解性レジンコンクリート管9の敷設完了から、発進及び到達立坑の埋め戻しまでの7〜10工程を示す。
【0028】
図4に示した測量工程は、図1では図示を省略した既設石綿管6の設置状況の事前調査で、測量機16を用いて発進管口より到達管口を測量し、掘進高さと掘進勾配及び掘進方向を決定する。次いで、エアモルタル充填工程にて、既設石綿管6の管内をエアモルタル15で充填する。そして、発進架台、掘進機設置工程では、測量して決めた掘進高さ等に合わせて、発進架台1を設置し、推進機20及び掘進機17を設置する。
【0029】
改築推進及び生分解性レジンコンクリート管押し込み工程では、掘進機17の最後尾に推進力伝達アダプター7を設置し、このアダプター7の後続には、推進力伝達管8を内管とし生分解性レジンコンクリート管9を外管とする二重構造の管体を設置し、推進機20と接続する。推進機20による押し出す推進力は、内管である推進力伝達管8に伝えられ、外管である生分解性レジンコンクリート管には推進力は伝達されずに、推進力伝達アダプター7を経由して掘進機本体17に伝達され、図6に示す掘進が行われる。
【0030】
掘進機本体には小口径泥濃式掘進機を使用し、既設廃棄管の管内破砕を目的とするフード管付き特殊面盤を装備する。図6に掘進状況、掘進機本体の部分断面説明図及び正面説明図を示す。掘進は、加泥材注入口33より加泥材を圧入しながら、エアモルタル15で管内を充填された既設石綿管6を、掘進機先端のメタルクラウン32にて周辺土砂と共に掘削し、フード管であるロングフード31の内部において、ローラーカッター35にて既設石綿管6を破砕しながら、破砕石綿管、土砂及び加泥材とを混合し、混合された全ての排泥19を、排泥管18を経由して吸引回収して、土中に残置させずに処分する。排泥管18は掘進機本体から、推進力伝達アダプター7に後続して設置される推進力伝達管8(図4に示す)の内部にも設置されており、図示されていない外部に設置の排泥回収処理設備に集められ処分される。このように本工法では、既設石綿管6の破砕はフード管内にて行われ周辺地盤と隔離した状態であるために、掘削完了後にも埋設土中への影響がなく、埋設土中破壊式の改築推進工法の中で既設石綿管撤去工法には最も適している。
【0031】
図4に示した掘進機到達工程と掘進機到達回収及び推進力伝達管発進回収工程では、到達立坑22に到達した掘進機17を分割回収し、推進力伝達アダプター7も到達立坑22にて回収する。排泥管18などの管内設備及び推進力伝達管8は、発進立坑21にて生分解性レジンコンクリート管9から引き抜き分割回収する。
【0032】
図5には生分解性レジンコンクリート管の敷設工程から発進、到達立抗埋め戻し工程までを示す。生分解性レジンコンクリート管9の敷設後、発進架台を回収し(工程8)、生分解性レジンコンクリート管9の内部に、砂質充填材11を注入パイプ10からサンドプレーサーを使用して圧縮空気にて圧送充填する(工程9)。充填される砂質充填材11は、前記したように、仮設資材である生分解性レジンコンクリート管9の分解劣化を促進させるため、透気、透水性がある砂質土と生分解性レジンと相性の良いバクテリアを活着した粒竹炭との混合物である。ついで、最終工程として、発進立坑21および到達立坑22の埋め戻しを行う。埋め戻し土砂12は前記したものと同じである。
【0033】
また、発進立坑と到達立坑の構築に際しては、これら両立坑の掘削に伴う仮設土留材として、生分解性レジンコンクリート製の分割組立型リング状土留壁を鋼製リング支保工と共に敷設し、又は立坑の周壁に沿って生分解性レジンコンクリート製のパネルを鋼製支保工材と共に敷設し、工事終了後は段階的に鋼製支保工材を撤去し、共に該コンクリート製リング状土留壁又はパネルの内壁と埋戻し土との間に生分解を促す砂質充填材を層状に充填することにより、生分解性レジンが促進分解し、骨材分だけが残置し土砂状に帰化するように使用する事もできる。地山に接している生分解性の仮設土留材をそのまま残置することで、土留材撤去の際問題となり易い地山の緩みを発生させずに埋戻し作業が終了できる。両立坑の掘削工事による周辺地盤への影響をほとんど発生させない土留効果が得られる。
【0034】
生分解性レジンコンクリートでは、砂利や砂などの骨材の結合材として生分解性レジンが用いられる。加熱溶融などにより流動性のある状態とした生分解性レジンを骨材と混合し、冷却してレジンを硬化させることで骨材を結合して固化させ、管体や分割組立型リング状及びパネルなどに成形して生分解性レジンコンクリートによる仮設資材とすることができる。そして、使用する骨材の種類や粒度などの調整により、一般のモルタル、コンクリートから透水性コンクリートと同等の性状の生分解性レジンコンクリートとすることができる。
【0035】
生分解性レジンとしては公知の各種の生分解性レジンを用いることができるが、ブタンジオールなどの脂肪族ジオールとコハク酸やアジピン酸などの脂肪族二塩基酸から合成される脂肪族ポリエステルからなる生分解性レジンが好ましい。脂肪族ポリエステルはバクテリアなどの微生物により生分解されるだけでなく、水分による加水分解もあり、地中に埋設した場合に分解劣化し易いため好ましい。
【0036】
本発明においては、生分解性レジンコンクリートから成る仮設資材は砂質充填材と密着配置して敷設される。この砂質充填材は生分解を促進するだけでなく、砂質であるため透水性も良く、加水分解なども促進する。
【0037】
以上、既設配管として、石綿管について説明したが、本発明の仮設構造及び工法や装置は、既設の不用な廃棄配管全てに適用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 発進架台
2 オーガー管
3 アウター管
4 カッターヘッド
5 インナー管
6 既設石綿管
7 推進力伝達アダプター
8 推進力伝達管
9 生分解性レジンコンクリート管
10 注入パイプ
11 砂質充填材
12 立坑埋め戻し土砂
13 回収部材
14 廃棄石綿管包装シート
15 エアモルタル
16 測量機
17 掘進機
18 排泥管
20 推進機
21 発進立坑
22 到達立坑
31 ロングフード(フード管)
32 メタルクラウン
33 加泥材注入口
34 注入口保護ビット
35 ローラーカッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設廃棄管の撤去工法において、生分解性レジンを使用した生分解性レジンコンクリートから成る仮設資材と生分解を促す砂質充填材とを密着配置して敷設することで構築される掘削土留用仮設構造。
【請求項2】
既設廃棄管を破砕することなく原型を保持しながら撤去すると共に、撤去空間内に仮設資材としての掘削外径とほぼ同径の生分解性レジンを使用した生分解性レジンコンクリート管を、押込み方式にて敷設し、敷設した仮設資材である生分解性レジンコンクリート管の内部に、生分解を促す砂質充填材を圧送充填することにより、砂質充填材が適度に圧密され、生分解が進行してレジンコンクリート管の固結強度が劣化しても、一定の支持力を保持しながら閉塞状態を持続することのできる掘削土留用仮設構造を構築することを特徴とする既設廃棄管の撤去工法。
【請求項3】
既設廃棄管内にあらかじめエアモルタルを充填し、該廃棄管を周辺土砂と共に掘削し、掘進機に装備されたフード管内にて該廃棄管を破砕し、破砕廃棄管、充填モルタルおよび掘削土砂を周辺地盤と隔離した状態で排出しながら、既設廃棄管を撤去すると共に、撤去空間内に仮設資材としての掘削外径とほぼ同径の生分解性レジンを使用した生分解性レジンコンクリート管を、押込み方式にて敷設し、敷設した仮設資材である生分解性レジンコンクリート管の内部に、生分解を促す砂質充填材を圧送充填することにより、砂質充填材が適度に圧密され、生分解が進行してレジンコンクリート管の固結強度が劣化しても、一定の支持力を保持しながら閉塞状態を持続することのできる掘削土留用仮設構造を構築することを特徴とする既設廃棄管の撤去工法。
【請求項4】
発進立坑と到達立坑を既設廃棄管の撤去区間各端部に構築し、
最外周側より順にアウター管、オーガー管、インナー管によって構成され、オーガー管の先端にカッターヘッドと外壁にスクリューコンベヤーとが装備され、アウター管およびインナー管は回転せず、オーガー管のみが回転する構造の3重管を有する推進式掘削装置の推進架台を前記発進立坑内に設置し、
インナー管内に既設廃棄管を周囲の埋設土砂と共に取り込み、オーガー管を回転させて、カッターヘッドにて前面埋設土砂を掘削しながら、オーガー管外壁に装備のスクリューコンベヤーにて掘削した埋設土砂を発進立坑まで管内輸送する3重管掘削方法にて推進し、
所定長掘進により到達立坑内にカッターヘッドが到着後、前記3重管の後端部に推進力伝達アダプターを接続設置することで、該3重管とインナー管内に内包された既設廃棄管が共に到達立坑内に押出され、既設廃棄管を破砕することなく、原型を保持しながら到達立坑内に送り出し、
続いて、推進力伝達アダプターの反対側に、推進力伝達管を内管とし、生分解性レジンコンクリート管を外管とした2重管を接続することで、該推進力伝達管に前記推進架台より押出し推進力が伝達され、既設廃棄管を内包した前記3重管を到達立坑内に押出し、アウター管、オーガー管、インナー管、既設廃棄管と順次繰り返して取り外し撤去していくことで、該2重管と置き換わるように順次押込み敷設し、
所定長進行後、内管の推進力伝達管を撤去して敷設終了した生分解性レジンコンクリート管の内部に、生分解性を促す砂質充填材を圧縮空気駆動によるサンドプレーサーにて圧送充填し、閉塞状態を持続することのできる掘削土留用仮設構造を構築することを特徴とする請求項2に記載の既設廃棄管の撤去工法。
【請求項5】
発進立坑と到達立坑を既設廃棄管の撤去区間各端部に構築し、
既設廃棄管の管内破砕を行うためのフード管付き特殊面盤を装備した泥濃式掘進機の架台を前記発進立坑内に設置し、
掘進機後尾に推進力伝達アダプターを設置し、さらに推進力伝達アダプターの後続には推進力伝達管を内管とし、生分解性レジンコンクリート管を外管とした2重管を接続し、掘進機に推進力を伝達しながら、前面埋設土砂の掘削および既設廃棄管の破砕をしながら推進し、
所定長掘進により到達立坑内に掘進機が到着後、掘進機本体を分割し、推進力伝達アダプターと共に回収し、
発進立坑内にて、管内設備および推進力伝達管を引き抜きながら分割回収し、発進架台も併せて撤去して生分解性レジンコンクリート管を敷設し、
該生分解性レジンコンクリート管の内部に、生分解性を促す砂質充填材を圧縮空気駆動によるサンドプレーサーにて圧送充填し、閉塞状態を持続することのできる掘削土留用仮設構造を構築することを特徴とする請求項3に記載の既設廃棄管の撤去工法。
【請求項6】
生分解性を促す砂質充填材は生分解性レジンに相性が良いバクテリアが活着した粒竹炭と、砂質土との混合物であることを特徴とする請求項1に記載の掘削土留用仮設構造。
【請求項7】
生分解性を促す砂質充填材は生分解性レジンに相性が良いバクテリアが活着した粒竹炭と、砂質土との混合物であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の既設廃棄管の撤去工法。
【請求項8】
発進立抗と到達立坑の構築に際して、請求項1もしくは6に記載の掘削土留用仮設構造を構築することを特徴とする請求項4もしくは5に記載の撤去工法。
【請求項9】
既設廃棄管は石綿管であることを特徴とする請求項2〜5、7もしくは8のいずれか一項に記載の既設廃棄管の撤去工法。
【請求項10】
請求項2もしくは4に記載の撤去工法に使用される装置であって、
最外周側より順にアウター管、オーガー管、インナー管によって構成され、オーガー管の先端部には前面埋設土砂を掘削するためのカッターヘッドと管外壁には掘削埋設土砂を排出輸送するためのスクリューコンベヤーとが装備され、アウター管およびインナー管は回転せず、オーガー管のみが回転する構造の3重管を有し、
3重管の後端部に続接設置可能な推進力伝達アダプターと、該アダプターの後端部に設置可能な推進力伝達管とを有することを特徴とする推進式掘削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−100705(P2013−100705A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246114(P2011−246114)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(596119571)サン・シールド株式会社 (7)
【出願人】(591287222)株式会社サンレック (10)
【出願人】(511272990)株式会社光計画設計事務所 (1)
【出願人】(593132814)キザイテクト株式会社 (6)
【Fターム(参考)】